JP5593697B2 - 新規大豆たん白素材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
即ち本発明は、
(1)大豆たん白原料と還元糖を混合し、pH6.3〜8.0にて、100℃を超え170℃以下,10秒〜300秒の加熱処理を行い、続けて加水分解処理を行なう事を特徴とする、糖含有大豆たん白素材の製造方法。
(2)還元糖を大豆たん白原料の乾燥重量当たり0.5重量%以上添加する、(1)記載の糖含有大豆たん白素材の製造方法。
(3)大豆たん白素材が蛋白質を乾燥重量で80重量%以上含み、0.22M TCA溶解率が5重量%以上である、(1)記載の糖含有大豆たん白素材の製造方法。
(4)大豆たん白素材が蛋白質溶解率が80重量%以上である、(1)記載の糖含有大豆たん白素材の製造方法。
(5)蛋白質を乾燥重量で80重量%以上含み、0.22M TCA溶解率が5重量%以上且つ35重量%以下で、蛋白質1g当たり糖が180μmol以上結合している、糖含有大豆たん白素材。
(6)蛋白質中ELISA法によるβ-コングリシニン含量が35%以下である、(5)記載の糖含有大豆たん白素材。
(7)蛋白質溶解率が80重量%以上である、(5)記載の糖含有大豆たん白素材。
(8)(5)に記載の糖含有大豆たん白素材または(1)に記載の方法で得られる糖含有大豆たん白素材を用いた、飲食物。
(9)乳化組成物である、(8)に記載の飲食物。
(10)コーヒーホワイトナー,フラワーペースト,マーガリン,乳化油脂から選ばれる何れかである、(9)に記載の飲食物。
(11)酸性たん白飲料である、(8)に記載の飲食物。
(12)0.22M TCA溶解率が15重量%以上且つ30重量%以下であり、蛋白質溶解率が80重量%以上であり、SDS-PAGEによる全蛋白質中のβ-コングリシニン及びグリシニンの合計含量が30%以下の、大豆たん白素材。
(13)コーヒーホワイトナー用である、(12)記載の大豆たん白素材。
(14)(12)記載の大豆たん白素材を用いた、コーヒーホワイトナー。
(15)大豆たん白素材が分離大豆たん白である、(14)記載のコーヒーホワイトナー。
である。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明における大豆たん白原料とは、本発明品である、糖含有大豆たん白素材を調製するに当たっての、加糖加熱処理を行う対象の原料である。丸大豆や脱脂大豆等から蛋白質成分を水又は温水で抽出し、オカラ成分を除去した全脂豆乳や脱脂豆乳等であり、またはこれら豆乳から、UF膜による処理や酸を用いた等電点沈殿等で蛋白質を濃縮した分離大豆たん白等であり、またはこれを殺菌・乾燥した物である。尚、最終的に得られる糖含有大豆たん白素材が、蛋白質を乾燥重量で80重量%以上含むことが好ましいために、大豆たん白原料としては、分離大豆たん白等の素材中の蛋白質純度が高いものを用いることが良い。例えば、分離大豆たん白は以下の様に調製することができる。すなわち、脱脂大豆に水又は温水を加え、中性付近にて抽出を行い、オカラを分離して豆乳を得る。次に豆乳をpH4.5付近とし等電点沈殿物を回収する。沈殿物に水及びアルカリ剤を加え、固形分濃度5〜15重量%、pH5.7〜8.0、好ましくはpH6.8〜7.5付近の水溶液を得る。この様にして得られた分離大豆たん白は、溶液をそのまま以下の工程に用いても良いし、未殺菌の物又は殺菌した物を、乾燥後に改めて溶解して用いても良い。後述する還元糖を、予め水溶液とし、これに大豆たん白原料を溶解させることも可能である。
得られた大豆たん白原料の水溶液、例えば固形分濃度(乾燥物濃度)5〜15重量%の水溶液に還元糖を加え、一段目の加熱処理を行なう。用いる還元糖としては、単糖ではL‐アラビノース,D‐キシロース,D‐グルコース,D‐リボース,D‐フルクトースなど、二糖類ではラクトース,マルトースなど、三糖以上では還元末端を保有するデキストリンなどが例示できる。用いる還元糖の価格や最終的に得られる大豆たん白素材の乳化性から、二糖以下が好ましく、D-グルコース,D-フルクトース,ラクトース,マルトースが更に好ましく、D-グルコースが最も好ましい。これらの還元糖から1種類以上を選択し、水溶液中の大豆たん白原料の固形分に対し、好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは2重量%以上加える。また、10重量%以下が好ましい。10重量%を超えると、得られる糖含有大豆たん白素材に着色を生じることがあるし、たん白素材中の蛋白質含量の低下が大きい。また、還元糖添加の前または後に、pHを6.3〜8、好ましくは7〜8に調整する。pHが低いと得られるたん白素材の乳化性が低く、例えばコーヒーホワイトナーの保存中に離水が発生し、pHが高いとリジノアラニンが生成し得るため好ましくない。
還元糖を添加後に、該溶液に対し、100℃を超え好ましくは130℃以上、且つ170℃以下好ましくは150℃以下の加熱処理を加圧下にて行なう。加熱時間は10秒〜300秒間であり、20秒〜180秒間が好ましい。加熱温度が低い場合や加熱時間が短い場合は、得られる大豆たん白素材の乳化性が低く、加熱温度が高い場合や加熱時間が長い場合は、大豆たん白素材に着色を高め易く、また設備への負荷が増す。
続けて加熱後の水溶液について、蛋白質の加水分解を行なう。加水分解は例えば酸性下で非酵素的に行うこともできるが、プロテアーゼによる加水分解が、その後の乳化性の向上に効果的であり、好ましい。ここで用いるプロテアーゼは、プロテアーゼの分類において「金属プロテアーゼ」(Bacillus中性プロテイナーゼ,Streptomyces中性プロテイナーゼ,Aspergillus中性プロテイナーゼ,サモアーゼ等),「酸性プロテアーゼ」(ペプシン,Aspergillus酸性プロテイナーゼ,スミチームAP等),「チオールプロテアーゼ」(ブロメライン,パパイン等),「セリンプロテアーゼ」(トリプシン,キモトリプシン,ズブチリシン,Streptomycesアルカリプロテイナーゼ,Aspergillusアルカリプロテイナーゼ,アルカラーゼ,ビオプラーゼ等)に分類されるプロテアーゼの、1種または2種以上を作用させる事ができる。
プロテアーゼによる加水分解後に更に加熱を行うことが好ましい。加熱温度は110〜170℃が好ましく、130〜170℃が更に好ましい。加熱時間は3〜20秒間が好ましい。二段加熱は殺菌がその主たる目的のひとつであり、好ましい条件が設定されるが、温度が低く時間が短いと殺菌の効果に弱く、温度が高く時間が長いと、風味や着色等の問題が起き易くなる。
こうして得られる大豆たん白素材は、従来の分離大豆たん白等に比べ、高い乳化性およびたん白粒子の分散性を示し、乳化物製品の原料として非常に適しており、また以下の物性を持つ。すなわち、蛋白質を乾燥重量で80重量%以上含み、蛋白質中のELISA法によるβ-コングリシニン含量が35%以下であり、0.22M TCA溶解率が5重量%以上であり、さらに、蛋白質1g当たり糖が180μmol以上結合しているものである。そして、蛋白質溶解率が80重量%以上であると好ましく、また0.22M TCA溶解率が30重量%以下であると更に好ましく、15重量%以上であると最も好ましい。また、蛋白質中のELISA法によるβ-コングリシニン含量が30%以下であると好ましい。尚、0.22M TCA溶解率,蛋白質溶解率,蛋白質定量法,ELISA法によるβ-コングリシニン含量測定法,糖結合量はそれぞれ後述する方法にて確認することができる。
一方、コーヒーホワイトナーの使用に適した大豆たん白素材は、以下の性質を持ち、その典型は前述した糖含有大豆たん白素材である。すなわち、本発明におけるコーヒーホワイトナー用大豆たん白素材とは、丸大豆または脱脂大豆等から蛋白質成分を水または温水で抽出し、オカラ成分を除去した全脂豆乳や脱脂豆乳、またはこれら豆乳から、UF膜による処理や酸を用いた等電点沈殿等で蛋白質を濃縮した分離大豆たん白等が例示される。さらにこれを中和した物や、殺菌・乾燥した物を用いることが出来る。但し、a)大豆たん白素材の0.22M TCA溶解率が15重量%以上且つ30重量%以下、b)大豆たん白素材の蛋白質溶解率が80重量%以上、c)SDS-PAGEによる全蛋白質中のβ-コングリシニン及びグリシニンの合計含量が30%以下、で表される物性を全て持つことが必須であり、この物性に合致したコーヒーホワイトナー用大豆たん白素材のみが、フェザーリング及び保存時の離水が起こらない、良好なコーヒーホワイトナーを調製することが出来る。通常の製造工程に於て、0.22M TCA溶解率を15重量%以上にするべく加水分解を進めると、蛋白質溶解率が80重量%未満に低下してしまう。本発明の条件を満たす物性を持ったコーヒーホワイトナー用大豆たん白素材は、単なる最適化の中で得られるものではなく、またこの大豆たん白素材がコーヒーホワイトナーに適性を持つことは、これまで全く知られていなかった。尚、プロテアーゼの選択によっては、SDS-PAGEによる全蛋白質中のβ-コングリシニン及びグリシニンの合計含量が30%を超える場合があり、この場合には、コーヒーホワイトナーに適した物性を得ることはできない。
本発明の糖含有大豆たん白素材は、畜肉加工品、水産練製品、焼成菓子、各種飲料等の種々の飲食品用途に使用する事ができるが、特に乳化組成物への使用が好適である。また、飲料としては、酸性たん白飲料が適する。
本発明において液状コーヒーホワイトナーとは、成分として蛋白質,脂質,乳化剤を含み、常温で液体の水中油型乳化物を指す。好ましくは、蛋白質3〜10重量%、脂質10〜40重量%、燐酸塩0.2〜1.5重量%、乳化剤0.4〜2.5重量%の組成を持つものであり、液状コーヒーホワイトナーの好ましい粘度として60mPa・s以上が例示できる。また液状コーヒーホワイトナーを構成する蛋白質成分はとしては、全脂乳,脱脂乳,カゼイン,乳ホエー,濃縮大豆たん白,分離大豆たん白,コーングルテン,小麦グルテン,卵白,卵黄等の、種々の蛋白質原料やたん白素材が使用できるが、液状コーヒーホワイトナーを構成する蛋白質中、大豆蛋白質が30重量%以上含まれていても、本発明は従来大豆たん白素材と比較して特に効果的に保存後の離水を抑制できる。しかし、大豆蛋白質が60重量%を超えると、フェザーリングや離水が発生し易くなる。従って、本発明の大豆たん白素材を用いた液状コーヒーホワイトナーは、その蛋白質中に大豆蛋白質を30重量%以上含むことが好ましく、また60重量%以下含むことが更に好ましい。
本発明において粉末状コーヒーホワイトナーとは、成分として蛋白質、脂質、炭水化物、乳化剤を含み、常温で粉末状の乳化物を示す。好ましくは、脂質10〜50重量%、蛋白4〜20重量%、炭水化物20〜70%重量%、燐酸塩0.2〜1.5重量%、乳化剤0〜10重量%の組成を持つものである。粉末状コーヒーホワイトナーを構成する蛋白質としては、全脂乳,脱脂乳,カゼイン,乳ホエー,濃縮大豆たん白,分離大豆たん白,コーングルテン,小麦グルテン,卵白,卵黄等の、種々の蛋白質原料やたん白素材が使用できるが、粉末状コーヒーホワイトナーを構成する蛋白質中、大豆蛋白質が80重量%以上含まれていても、本発明は従来大豆たん白素材と比較してフェザーリング及び調液時の増粘を効果的に抑制する事が出来る。従って、本発明の大豆たん白素材を用いた粉末状コーヒーホワイトナーは、その蛋白質中に大豆蛋白質を80重量%以上含むことが好ましい。
液状および粉末状コーヒーホワイトナーを調製するには、これらの原料を水系にて混合し、さらに含まれた脂質を均質化する。均質化とは、水と油を含む混合液を水中油型乳化組成物とし、さらに水中油型乳化組成物の液滴を微細化することである。微細化の一つの方法としては乳化機などの装置を用いる方法がある。乳化機としては、例えば、回転羽を有する撹拌機、高速回転するディスクやローターと固定ディスクを有するコロイドミル,超音波式乳化機,一種の高圧ポンプである均質機(ホモジナイザー)などが挙げられ、中でも均質機(ホモジナイザー)が好ましい。均質化工程としては例えば、上記原料を含む水中油型乳化物を、ホモジナイザーで30〜200kg/cm2の圧力で均質化した後、110〜150℃好ましくは120〜140℃で1〜10秒好ましくは3〜7秒で殺菌処理を行い、さらにホモジナイザーを用いて150〜500kg/cm2の圧力で均質化する方法が挙げられる。
本発明の高乳化型大豆たん白素材は、以下の乳化組成物へも使用できる。
フラワーペーストとは、成分として脂質、蛋白質、乳化剤、炭水化物、酸性化剤などを含む水中油型乳化組成物である。本発明の糖含有大豆たん白素材を用いることで、耐熱保形性・保存性といった効果を得ることができる。フラワーペーストは、例えば、本発明の糖含有大豆たん白素材、通常油脂、糖類、澱粉性原料、溶解塩、酸性化剤を含み、これら原料を混合して予備乳化した後、必要ならさらにpH調整し、次いで均質化、加熱、糊化、冷却する事により得る事ができる。また、本発明の高乳化大豆たん白素材を0.1重量%〜5重量%含むことが好ましい。
本発明の高乳化型大豆たん白素材は、各種マーガリンに使用できるが、シューマーガーリンが好適である。シューマーガリンとは、成分として脂質、蛋白質、乳化剤、炭水化物、リン酸塩などを含む油中水型乳化組成物である。本発明の糖含有大豆たん白素材を用いることで、シュー生地を焼成した時の保形性・保存性といった効果を得ることができる。シューマーガリンは、本出願大豆たん白素材、糖類、食塩、粉乳、発酵乳などの水溶性成分に、脂質を混合し、予備乳化した後、パーフェクター、ボテーター、コンビネーターなどで急冷捏和する事で製造することができる。また、本発明の高乳化大豆たん白素材を1重量%〜10重量%含むことが好ましい。
乳化油脂とは、成分として脂質、蛋白質、乳化剤、炭水化物などを含む油中水型乳化組成物である。本発明の糖含有大豆たん白素材を用いることで、粉末化した時に生じるオイルオフを抑制する効果を得ることができる。乳化油脂は、水相に油相を添加し、ホモミキサー等で攪拌後、ホモジナイザーなどを使用し、30〜200kg/cm2の圧力をかけて均質化し、冷却後噴霧乾燥を行うことにより得る事ができる。本発明の高乳化大豆たん白素材を0.5重量%〜7重量%含むことが好ましい。
また、本発明の大豆たん白素材は、酸性たん白飲料に好適に使用できる。酸性たん白飲料とは、成分として炭水化物、蛋白質、安定剤(ペクチン,CMC,水溶性大豆多糖類等)を含み、pHが3〜6で液体の飲料を示す。酸性たん白飲料を構成する蛋白質としては、全脂乳,脱脂乳,カゼイン,乳ホエー,濃縮大豆たん白,分離大豆たん白,コーングルテン,小麦グルテン,卵白,卵黄等の、種々の蛋白質原料やたん白素材が使用できるが、本発明の糖含有大豆たん白素材を添加することで、保存時に沈殿物の発生を抑制するといった効果を得ることができる。本発明の高乳化大豆たん白素材を0.1重量%〜5重量%含むことが好ましい。
次に本発明で用いた測定方法を示す。
<蛋白質含量>
105℃, 12時間乾燥した大豆たん白素材重量に対して、ケルダール法により測定した窒素の質量を、乾燥物中の蛋白質含量として重量%で表す。尚、窒素係数は6.25とする。
<0.22M TCA溶解率>
大豆たん白素材試料の2重量%水溶液に、0.44M トリクロロ酢酸(TCA)を等量加え、可溶性窒素の割合をケルダール法により測定する。
<蛋白質溶解率>
大豆たん白素材試料の5重量%水溶液を、7,000×g(3,500rpm)で20分間遠心分離を行い、上清に含まれる蛋白質量をケルダール法により測定し、その割合を表す。
<ビュレット法>
約1重量%濃度の大豆たん白素材試料を1ml取り、4mlのビュレット液に混合し十分に撹拌する。30分室温で放置後、波長540nmで吸光度を測定する。定量はBSA standard solution (和光純薬株式会社)を使用し検量線を作製し定量を行う。
80容量%のプロパノール水溶液に溶解しない成分中の糖をフェノール硫酸法で定量し、糖結合量とする。すなわち、大豆たん白素材試料の5重量%水溶液1mlに対して、2-プロパノール(キシダ化学株式会社)を4ml加え十分に撹拌する。10分間室温で放置後、3,000rpmで10分間撹拌し沈殿を回収する。沈殿に対し80容量%の2-プロパノールを5ml加え沈殿を十分に分散させ、3,000rpmで10分間撹拌し沈殿を回収する。この操作をもう一度繰り返し沈殿を回収する。沈殿に対し、1M NaOHを5ml加え十分に懸濁させ、10分間加熱溶解させる。加熱溶解させたサンプルを水浴中で冷却した後、蛋白質定量法(ビュレット法)により蛋白質量を定量し、15mg/mlになるようにサンプル濃度を調整する。脱イオン水0.8mlに対して濃度調整したサンプルを0.2ml加え、5重量%フェノール水溶液を1ml加え十分に撹拌する。このサンプル懸濁液に対して濃硫酸を5ml素早く加え10分間室温で放置する。室温で放置後、十分に撹拌し水浴中で10分間放置後、波長490nmで吸光度を測定する。定量はD-グルコース(和光純薬株式会社)を使用し検量線を作製し定量を行う。また、濃度調整したサンプルの蛋白質量も定量し、糖結合量=糖濃度(μmol)/蛋白質量(g)として算出する。
β-コングリシニン含量はELISA法により定量を行う。サンプル0.1gを精秤し、50ml栓付三角フラスコ中に入れ、0.05M Tris-HCl緩衝液(pH8.2)を2.5ml及び8M Urea-DTT緩衝液7.5mlを添加する。100℃で1時間抽出する。抽出後シスチンを含む0.4M NaCl溶液(pH9.0)で再会合させた後、100mlに定容し、ろ過液をELISA用サンプルとした。ELISA用96ウェルEIAマイクロプレート(IWAKI(株)製)にサンプル及び検量線用β-conglysinin(不二製油(株)製)をそれぞれ4℃で1日間保存する事で固定化し、ブロッキング液(大日本住友製薬(株)製)を200μl加え37℃で2時間インキュベートしブロッキングする。ブロッキング後、50mMリン酸緩衝液(pH7.2)で3回洗浄する。次に、1次抗体として0.5μg/mlの抗ベータコングリシニンウサギポリクロナール抗体(タカラバイオ(株)製)を100μl添加し37℃で1時間インキュベートする。50mMリン酸緩衝液(pH7.2; 0.1%Tween20)で3回洗浄する。その後、2次抗体として0.1μg/mlのペルオキダーゼ結合抗ウサギIgG抗体(Promega(株)製)を100μl添加し37℃で1時間インキュベートする。50mMリン酸緩衝液(pH7.2; 0.1%Tween20)で3回洗浄する。洗浄後、TMB Micowell Peroxidase Substrate(KPL(株)製)を100μl加え5分間発色させる。1N硫酸を100μl加え発色反応を停止後、波長450nmで吸光度を測定する。測定後、検量線用β-コングリシニンの吸光度を用いて検量線を作製し、サンプルのβ-コングリシニン含量を算出し、ケルダールで算出した全蛋白質に対する比率を求める。
β-コングリシニン及びグリシニンの合計含量はSDS-PAGEにより行なう。すなわち、大豆たん白素材試料の1重量%水溶液100μlにSDS-PAGE用サンプルバッファー(コスモバイオ株式会社製)を100μl添加し、95℃で10分間加熱しサンプル液を調製する。調製したサンプル液を SDS-PAGE用ゲル(和光純薬工業製スーパーセップ5〜20%)に4μlづつアプライし、電気泳動を行う。その後、電気泳動後のゲルをクマシーブリリアントブルーで染色後、脱色する事により泳動ゲルを得る。
SDS-PAGEにより得られたゲルをスキャナーにて、画像データとしてPCに取り込み、Scion Image(Scion Corp製)を使用し、レーン全体並びにレーン中に含まれるβ-コングリシニン(7Sグロブリン)及びグリシニン(11Sグロブリン)のバンドの積算値を測定し、全蛋白質中の含量として解析する。
水10重量部に低変性脱脂大豆1重量部を加えて、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で撹拌しながら50℃,30分間抽出を行い、3,000×gで遠心分離してオカラを除き、脱脂豆乳を得た。これを塩酸でpH4.5に調整して等電点沈殿させ、遠心分離して酸沈カードを得た。これに4倍量の水を加えて水酸化ナトリウムでpH7.3に調整し、分離大豆たん白を含有する溶液を得た。この固形分に対して無水結晶ブドウ糖(サンエイ糖化(株)製)を1重量%添加した後、得られた溶液を90℃,110℃,140℃でそれぞれ30秒間、連続式直接加熱方式殺菌機(アルファ・ラバル(株)製)で加熱を行い、得られた溶液に対してアルカラーゼ(ノボザイムジャパン(株)製)を分離大豆たん白の固形分当たりそれぞれ、0.2重量%添加し、55℃,15分間酵素反応を行った。酵素反応後に連続式直接加熱方式殺菌機で140℃,10秒間加熱を行い、スプレードライヤーで噴霧乾燥を行い、粉末状の糖含有大豆たん白素材(A〜C)を得た。
大豆たん白素材Cと同様に処理をし、大豆たん白素材を得た。但し、分離大豆蛋白に対して、無水結晶ブドウ糖に替えて各種糖(キシロース,マルトース,ラクトース,スクロース,トレハロース)を1重量%添加して大豆たん白素材を得た。
大豆たん白素材Cと同様に処理をし、大豆たん白素材I〜Mを得た。但し、固形分に対するグルコースの添加量を0,3,6,8,10重量%に変更して処理を行った。
大豆たん白素材Cと同様に処理をし、大豆たん白素材N〜Sを得た。但し、固形分に対するグルコースの添加量を1重量%とし、プロテアーゼの添加量を固形分当たり0,0.02,0.05,0.10,0.15,0.40重量%に変更して調製した。
大豆たん白素材Cと同様に処理をし、大豆たん白素材T〜Vを得た。但し、一段加熱時のpHを7.0から6.5に変更し、140℃,30秒間の加熱時間を60秒に変更した。また、プロテアーゼの添加量を固形分当たり0.2,0.3,0.4重量%に変更して調製した。
大豆たん白素材Tと同様に処理し、大豆たん白素材W〜Yを得た。但し、グルコースは添加せず、プロテアーゼの添加量を固形分当たりそれぞれ、0.2,0.1,0.05重量%に変更して調製した。
大豆たん白素材Cと同様に処理をし、大豆たん白素材Zを得た。但し、一段加熱時のpHを7.0から6.0に変更し、140℃,30秒間の加熱時間を60秒に変更して調製した。
大豆たん白素材Cと同様に処理をし、大豆たん白素材αを得た。但し、酸沈カードの希釈液をpHを7.0とし、一段加熱は行なわずにプロテアーゼ処理を行なった。
分離大豆たん白よりβ-コングリシニンを国際公開W002/28198号公報に記載の製造方法を用いて分離し、β-コングリシニン濃縮素材を得た。このβ-コングリシニン濃縮素材を140℃,30秒間加熱後噴霧乾燥を行い、粉末状大豆たん白素材βを得た。また、このβ-コングリシニン濃縮素材を比較例4(たん白素材I)と同様にプロテアーゼ分解処理を行い、粉末状大豆たん白素材γを得た。
大豆たん白素材A〜Z,α〜γ及び、市販分離大豆たん白(TCA可溶化率:22.2重量%)フジプロCLE(不二製油(株)製)、カゼインナトリウム(ALANATE180,フォンテラ・ジャパン(株)製)をたん白素材として各々使用し液状コーヒーホワイトナーを調製した。まず、水73重量部を70℃に加熱し燐酸2カリウムを0.4重量部溶解させ、ここに、上記たん白素材とカゼインナトリウムの等量混合物をそれぞれ5重量部添加し、シュガーエステル(DKエステルF160, 第一工業製薬(株)製)を0.5重量部加えて撹拌した。さらに、この溶液に菜種硬化油(硬化菜種油(融点22℃), 不二製油(株)製)を20重量部添加して、90℃湯浴中で撹拌混合し水中油型乳化物を得た。上記のようにして得られた各水中油型乳化物を、ホモジナイザーを用いて100〜200kg/cm2の圧力で均質化させた後、これらを80℃,10分間加熱して殺菌し、再度ホモジナイザーを用いて1次ホモ圧100〜300kg/cm2、2次ホモ圧50〜100kg/cm2の圧力で2段階均質化を行った後、これらを冷却して液状コーヒーホワイトナーを得た。また、Supro710(ソレイ(株)製)を30重量%,カゼインナトリウムを70重量%の混合物を用いたコーヒーホワイトナーを比較例18として、大豆たん白素材Uを70重量%,カゼインナトリウムを30重量%の混合物を用いたコーヒーホワイトナーを比較例19として、それぞれ調製した。
<フェザーリング評価>
市販のインスタントコーヒー2gを熱湯150ml(80℃以上)で溶解し、調製したコーヒーホワイトナー5mlを静かに滴下し、30秒後に撹拌して目視にてフェザーリングの程度を確認した。表中『無し』を『−』、『少ない』を『±』、『多い』を『+』で表記した。
<液状コーヒーホワイトナー保存後離水率>
調製したコーヒーホワイトナーを200ml保存瓶にて、4℃で1週間(大豆たん白素材A〜S,Z,α〜γ)、または50℃で24時間(大豆たん白素材T〜Y,比較例15〜19,実施例15)保管し、保管後の離水率を測定した。表中『無し』を『−』、『少ない』を『±』、『多い』を『+』で表記した。また、オイルオフについても確認し、表中『無し』を『−』、『少ない』を『±』、『多い』を『+』で表記した。
<コーヒーホワイトナー粘度および乳化粒子径>
コーヒーホワイトナーの粘度は25℃にてB型粘度計(TOKIMEC社製)で、乳化粒子径はレーザー粒度分布計(島津製作所社製)で、それぞれ測定した。
大豆たん白素材A〜Z,αの物性評価を表1上段に纏めた。大豆たん白素材B〜F,J〜M,O〜Uのものが、『TCA可溶化率が15重量%〜30重量%、蛋白質溶解率が80重量%以上』の条件に合致し、コーヒーホワイトナーとしての物性に優れていた。一方で、大豆たん白素材A,G〜I,W,Zは蛋白質溶解率が、大豆たん白素材N,O,X,YはTCA可溶化率が、それぞれ低いものだった。また大豆たん白素材SおよびVはTCA可溶化率が高く、且つ蛋白質溶解率が低いものだった。
次に、大豆たん白素材D〜Fでは蛋白質溶解率が80重量%を超えているのに対して、大豆たん白素材G,Hでは蛋白質溶解率が80重量%を下回っており、且つ糖結合量も180μmol/g proteinを下回っていた事から、還元糖のみが大豆蛋白質と反応していると考えられた。また、フルクトースも蛋白質溶解率が82重量%あり、他の還元糖同様に反応していると推察された。
以上の様に、TCA可溶化率と蛋白質溶解率および7S/11Sの含量から定めたコーヒーホワイトナーの適性と、TCA可溶化率と糖結合量から定めたコーヒーホワイトナーの適性とは、非常に関連していた。
大豆たん白素材C、及びカゼインナトリウムをたん白素材とし粉末状コーヒーホワイトナーを調製した。水50重量部を70℃に加熱しリン酸2水素ナトリウムを0.8重量部溶解させ、ここに、上記たん白素材又はカゼインナトリウム等量混合物を5重量部添加し、シュガーエステル(DXエステルF160, 第一工業製薬(株)製)を1.0重量部、コーンシロップを18重量部、ブドウ糖を10重量部添加し攪拌混合した。さらに、この溶液に菜種硬化油15重量部添加して、90℃湯浴中で撹拌混合し水中油型乳化物を得た。上記のようにして得られた各水中油型乳化物を、ホモジナイザーを用いて100〜200kg/cm2の圧力で均質化させた後、これらを80℃,10分加熱して殺菌し、再度ホモジナイザーを用いて1次ホモ圧100〜300kg/cm2、2次ホモ圧50〜100kg/cm2の圧力で2段階均質化を行なった後、スプレードライヤーで噴霧乾燥し、粉末状コーヒーホワイトナーを得た。
大豆たん白素材C、フジプロCLEをたん白素材とし酸性たん白飲料を調製した。水90部に上記たん白素材を0.6重量部添加し、全脂粉乳を2重量部、グラニュー糖5重量部、ソヤファイブDH(不二製油株式会社)を0.3重量部、香料0.04重量部添加し、十分に溶解させた。上記の様に調製した溶液をクエン酸でpH4.0に調製後、ホモジナイザーを用いて100〜200kg/cm2の圧力で均質化させ、これを140℃で4秒間加熱殺菌し、酸性たん白飲料を調製した。
<遠心後沈殿量>
調製した酸性たん白飲料を、空重量を測定した50mlの遠心チューブに40g程度添加し、重量を測定する。これを3,000rpmで10分間遠心分離を行い、上清部分を捨てて、沈殿の重量を測定した。
大豆たん白素材C,フジプロCLE,または乳清たん白をそれぞれたん白素材とし、フラワーペーストを調製した。水40重量部に上記たん白素材を1重量部、パーム油を18重量部、グラニュー糖を15重量部、水飴を15重量部、脱脂粉乳を4重量部、『澱粉デリカSE』(日澱化学(株)社製)を4重量部加え、攪拌混合した。液温を50℃まで昇温後、乾燥卵黄(キューピー(株)社製)を3重量部加えて、60℃に達するまで攪拌混合し予備乳化した。これをホモジナイザーを用いて50kg/cm2の圧力で均質化させ、チーズニーダーにて80℃まで昇温し、冷却後評価を行った。さらに、フラワーペーストをパン生地中に充填し、焼成後パン内部におけるフラワーペーストの評価を行った。
大豆たん白素材C、またはカゼインナトリウムをたん白素材としシューマーガリンの調製を行った。水20重量部に上記たん白素材を3.5重量部、精製塩を0.5重量部、リン酸カリウムを0.1重量部添加し攪拌混合した。同時に、ラード75重量部を60℃程度まで加温し、これにグリセリン脂肪酸エステルを0.2重量部、大豆レシチンを0.05重量部加え混合した。これらを混合しさらに攪拌混合し、コンビネーターにより急速捏和しシューマーガリンを得た。
○シュー生地の調製
水24重量部に、上記で得られたシューマーガリンを22重量部加え攪拌させながら加熱沸騰させた。加熱終了後薄力粉を13.5重量部、強力粉を3.5重量部、炭酸アンモニウムを0.2重量部、重曹を0.1重量部加え混合した。この後、攪拌しながら全卵を37.2重量部加え、十分に攪拌混合した。上記で得られたシュー生地を200℃で15分間加熱しシューを得た。
大豆たん白素材C、フジプロCLE、またはカゼインナトリウムをそれぞれたん白素材とし粉末状乳化油脂を調製した。すなわち水40重量部に上記たん白素材を5重量部,ソルビトールを21重量部添加し攪拌混合した。同時に、菜種油20重量部を60℃程度まで加温し、エマルジーMS-A(理研ビタミン(株)社製)を10重量部、リケマールPB-100(理研ビタミン(株)社製)を2.5重量部、ポエムW-10(理研ビタミン(株)社製)を2重量部、SYグリスター(坂本薬品工業(株)社製)を0.5重量部添加し混合する。これらを混合し、さらに攪拌混合し、ホモジナイザーを用いて30〜200kg/cm2の圧力で均質化し、スプレードライヤーで噴霧乾燥した。
Claims (10)
- 大豆たん白原料と二糖以下の還元糖を混合し、pH6.3〜8.0にて、100℃を超え170℃以下、10秒〜300秒の加熱処理を行い、続けて加水分解処理を0.22M TCA溶解率が5重量%以上〜30重量%以下になるように行なうこと、及び、還元糖の添加量が大豆たん白原料の乾燥重量当たり0.5重量%以上であることを特徴とする糖含有大豆たん白素材の製造方法。
- 大豆たん白素材が蛋白質を乾燥重量で80重量%以上含む、請求項1記載の糖含有大豆たん白素材の製造方法。
- 大豆たん白素材が蛋白質溶解率が80重量%以上である、請求項1又は2記載の糖含有大豆たん白素材の製造方法。
- 請求項1〜3の何れか1項記載の方法で得られる糖含有大豆たん白素材を用いた、飲食物。
- 乳化組成物である、請求項4に記載の飲食物。
- コーヒーホワイトナー,フラワーペースト,マーガリン,乳化油脂から選ばれる何れかである、請求項5に記載の飲食物。
- 酸性たん白飲料である、請求項4に記載の飲食物。
- 0.22M TCA溶解率が15重量%以上且つ30重量%以下であり、蛋白質溶解率が80重量%以上であり、SDS-PAGEによる全蛋白質中のβ-コングリシニン及びグリシニンの合計含量が30%以下の、コーヒーホワイトナー用大豆たん白素材。
- 請求項8記載の大豆たん白素材を用いた、コーヒーホワイトナー。
- 大豆たん白素材が分離大豆たん白である、請求項9記載のコーヒーホワイトナー。
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