JP5591100B2 - 表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法 - Google Patents

表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無機酸化物皮膜よりなる耐水層を有する窒化アルミニウム粉末の新規な製造方法に関する。詳しくは、上記表面処理された窒化アルミニウム粉末を、高い分散性を維持した状態で得ることが可能な製造する方法を提供するものである。
窒化アルミニウムは電気絶縁性に優れ、かつ高熱伝導性を有することから、その焼結体、あるいは粉末を充填した樹脂やグリース、接着剤、塗料等の材料は、高い熱伝導性を有する放熱材料として期待される。
しかし、窒化アルミニウムは、耐水性が極めて悪く、上記放熱材料にフィラーとして充填した場合、徐々に分解し、アンモニアを発生し、水酸化アルミニウムに変質してしまう場合がある。そのため、耐水性を有する窒化アルミニウム粉末が強く要望されている。
そこで、窒化アルミニウム粉末の耐水性を向上させるために、様々な方法が検討されている。例えば、公知の窒化アルミニウム粉末を、シリケート処理剤およびシランカップリング剤を含む溶媒中で処理し、得られた処理物より溶媒を除去した後、熱処理することによって窒化アルミニウム粉末表面にSi及びOを含む無機酸化物被膜を形成する方法(特許文献1)、窒化アルミニウム粉末をアルコキシシランまたはシリカゾル等を含む溶媒中で処理し、上記の処理が施された窒化アルミニウム粉末より溶媒を除去した後、熱処理することによって窒化アルミニウム粉末表面に酸化ケイ素膜を形成させ、さらに有機ケイ素膜で処理する方法(特許文献2)、窒化アルミニウム粉末を溶剤に分散させ、攪拌下の分散液に無機リン酸化合物を滴下して、無機リン酸化合物と窒化アルミニウム粉末を反応させた後、溶剤を除去し、加熱処理する方法(特許文献3)が提案されている。
しかしながら、これらの方法で耐水性を有する窒化アルミニウム粉末は得られるが、表面処理を行うために使用する溶媒を除去する際に、窒化アルミニウム粉末が強く凝集したり、また、加熱により無機酸化物皮膜を形成する際においても、窒化アルミニウム粉末同士が癒着したりすることにより、得られる表面処理された窒化アルミニウム粉末は凝集体を多く含有してしまい、その分散性において改良の余地があった。
特開2004−83334号公報 特開平7−315813号公報 特開平2−141409号公報
従って、本発明の目的は、従来の方法と比較して、凝集体の少ない、分散性が良好な耐水性窒化アルミニウム粉末を効率よく製造することが可能な、表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、還元窒化法による窒化アルミニウム粉末の製造において、反応に使用したカーボン粉末が残存した状態で前記表面処理を行うことにより、窒化アルミニウム粉末の表面に表面処理剤を付着させる際や、無機酸化物被膜の形成のための加熱処理の際における窒化アルミニウム粉末の強い凝集が防止され、分散性の良好な表面処理された窒化アルミニウム粉末を得ることができること、また、上記無機酸化物被膜の形成のための加熱処理を、残存カーボンの除去のための加熱と兼ねることが可能であり、従来の方法と比較して生産性良く、表面処理された窒化アルミニウム粉末が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アルミナ粉末を窒素雰囲気中、カーボン粉末の存在下で加熱して窒化アルミニウム粉末を得る還元窒化工程、上記還元窒化工程より得られる窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で、ケイ素(Si)又はリン(P)を含有する化合物である表面処理剤と接触させる処理剤付着工程、および、前記表面処理剤が付着された窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で加熱して窒化アルミニウム粉末表面へのシリカ皮膜又はリン酸アルミニウム皮膜よりなる耐水性皮膜の形成を行うと共に、前記残存カーボンの熱分解を行う加熱処理工程を含むことを特徴とする表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、凝集体が少なく、分散性の良好な、表面処理された窒化アルミニウム粉末を生産性よく得ることができる。また、かかる本発明で得られる表面処理された窒化アルミニウム粉末は、耐水性が高く、高熱伝導性を有することから、樹脂やグリース、接着剤、塗料等に充填して放熱性を向上させるための放熱材料用フィラーとして好適に使用することができる。
〔アルミナ粉末〕
本発明において、後述する還元窒化工程で使用するアルミナ粉末は、α、γ、θ、δ、η、κ、χ等の結晶構造を持つアルミナやベーマイトやダイアスポア、ギブサイト、バイヤライト、トーダイト、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム粉末など加熱により脱水転移して最終的に全部又は一部がα−アルミナに転移するアルミナが全て利用可能である。これらは単独或いは種類の異なるものが混合された状態で用いても良いが、特に反応活性が高く、制御が容易なα−アルミナ、γ−アルミナ、ベーマイトが好適に用いられる。
本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末に用いるアルミナ粉末の粒子径は特に制限されないが、特に、2μm以下の粒子径を有するものが好ましい。
〔カーボン粉末〕
また、本発明において、後述する還元窒化工程で使用するカーボン粉末は、カーボンブラック、黒鉛粉末が使用できる。本発明において、カーボンブラックはファーネス法、チャンネル法などのカーボンブラックおよび、アセチレンブラックが使用できる。これらのカーボンブラックの比表面積は、任意であるが、0.01〜500m/gのものを用いるのが好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フランフェノール樹脂等の合成樹脂縮合物やピッチ、タール等の炭化水素化合物や、セルロース、ショ糖、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレン等の有機化合物などのカーボン源、水素、一酸化炭素、アンモニアなどの還元性ガスを前記カーボン粉末と併用することができる。
〔原料混合〕
本発明において、アルミナ粉末と、カーボン粉末とを混合する方法としては、アルミナ粉末、カーボン粉末が均一になるような方法であればいずれの方法でも良いが、通常混合手段はブレンダー、ミキサー、ボールミルによる混合が好適である。
本発明において、アルミナ粉末に対するカーボン粉末の配合量は、特に制限されないが、還元窒化を効果的に行うと共に、還元窒化後に残存するカーボン粉末の量を確保するため、アルミナ粉末100質量部に対して、35質量部〜100質量部、好ましくは、40質量部〜75質量部、さらに好ましくは、45質量部〜65質量部の範囲で使用することが好ましい。
尚、カーボン粉末と共に、前記カーボン源を使用した場合は、その量も勘案して上記使用量を決定すればよい。
また、本発明の効果を妨げない範囲内で、アルミナ粉末とカーボン粉末以外の粉末、たとえば、酸化イットリウム粉末に代表される希土類金属化合物粉末や、酸化カルシウム粉末に代表されるアルカリ土類金属粉末を添加してもよい。
〔還元窒化工程〕
本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法において、還元窒化工程は、アルミナ粉末を窒素雰囲気中、カーボン粉末の存在下で加熱することにより、還元窒化反応を行わせしめ、窒化アルミニウム粉末を製造する工程である。
上記還元窒化反応の条件は、公知の温度および時間で保持することにより実施される。一般的には、1300℃〜1900℃、2時間〜50時間である。また、保持温度への昇温速度は、いかなる速度でもよいが、一般には、5〜20℃/分が好ましい。
前記還元窒化を行う方法としては、アルミナ粉末と、カーボン粉末との混合粉末中に、窒素が十分に拡散するような方法であればいずれの方法でも良く、例えば、上記混合粉末をカーボン製のセッター等に充填し窒素を流通させる方法、ロータリーキルンを用いる方法、流動層を用いる方法が挙げられる。これらのうち、カーボン製のセッター等に充填し窒素を流通させる方法が好適である。
〔処理剤付着工程〕
本発明の特徴は、前記還元窒化工程において得られた窒化アルミニウム粉末を、反応に使用したカーボンを残した状態で表面処理することにあり、処理剤付着工程は、上記還元窒化工程より得られる窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で無機酸化物皮膜形成用の表面処理剤と接触させる工程である。
尚、従来の還元窒化法による窒化アルミニウム粉末の製造において一般に実施される、残存カーボンの除去後に、別途カーボン粉末を添加して処理剤付着工程に付することも考えられるが、後添加されたカーボン粉末は、窒化アルミニウム粉末中への均一分散や馴染みの点において前記残存カーボン粉末に劣り、本発明の効果を十分発揮することが困難である。また、カーボンの除去を二重に行う必要があり、経済的にも劣るものである。
本発明の処理剤付着工程において使用される無機酸化物皮膜形成用の表面処理剤は、加熱により無機酸化物被膜を形成可能なものであれば、公知のものが特に制限無く使用することができる。たとえば、加熱によって無機酸化物を生成すると共に被膜を形成する化合物、加熱によって重合して無機酸化物の被膜を形成する金属酸化物のゾルが挙げられる。具体的には、前記化合物としては、アルコキシシラン、燐酸化合物等の化合物が、また、ゾルとしては、シリカゾル等が挙げられる。また、アルコキシシランとしては、たとえば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン等のシリケート類、また、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドアミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
また、燐酸化合物としては、たとえば、燐酸アンモニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸アルミニウム、オルト燐酸、ピロ燐酸、ポリ燐酸,亜燐酸、次亜燐酸、メタ燐酸等の無機燐酸化合物、メチルアシッドホスフェート,エチルアシッドホスフェート,ブチルアシッドホスフェート,2-エチルヘキシルアシッドホスフェート,ラウリルアシッドホスフェート,パルミチルアシッドホスフェート,ステアリルアシッドホスフェート,オレイルアシッドホスフェート,フェニルアシッドホスフェート,ノニルフェニルアシッドホスフェート等の有機燐酸化合物が挙げられる。
これらの無機酸化物皮膜形成用の表面処理剤は、それぞれ単独で用いても良いし、併用して用いても良い。
前記表面処理剤の窒化アルミニウム粉末への付着方法は、何等制限されず、水系溶媒や有機溶媒を使用した湿式法、或いは乾式法で行なうことができる。湿式法としては、ボールミルにて、前記残存カーボンを含む窒化アルミニウム粉末と、表面処理剤を混合後、ろ過、乾燥により溶媒を除去する方法が、また、乾式法としては、前記残存カーボンを含む窒化アルミニウム粉末を、高速攪拌機に投入し、攪拌しながら表面処理剤を液下あるいはスプレーにて添加する方法が好適である。
本発明において、前記表面処理は、窒化アルミニウム粉末表面に十分な耐水性を付与できる程度に行なえばよく、表面処理剤の使用量は、窒化アルミニウム粉末100質量部に対して0.01質量部から100質量部が一般的である。
一般的に、還元窒化法により製造した窒化アルミニウム粉末は、その製造工程において、余剰のカーボン粉末を除去するための加熱処理(脱炭処理)を実施するため、窒化アルミニウム粉末表面に官能基がほとんど存在しておらず、表面処理剤による処理を実施しても、容易に処理剤が反応しない。これに対して、本発明の製法では、加熱処理を行う前に表面処理を実施するため、多くの官能基を有する窒化アルミニウム粉末表面と表面処理剤とを容易に反応させることができるというメリットをも有する。
〔溶媒除去工程〕
上記処理剤付着工程において、湿式法により処理を行った場合、該処理剤付着工程より得られる混合物より溶媒を除去する溶媒除去工程を設けることが好ましい。溶媒除去工程は、溶媒が除去できる条件下で適宜実施することができるが、減圧或いは常圧下で、加熱して行うことが好ましい。また、静置乾燥、流動乾燥も自由に採用できる。
上記溶媒除去工程においても、残存カーボンは、窒化アルミニウム粉末の強力な凝集を防止する上で有効に作用し、分散性の良好な表面処理された窒化アルミニウム粉末を得ることができる。
尚、溶媒除去工程は、後述する加熱処理工程における昇温過程において、窒化アルミニウム粉末の加熱処理と同時に行うことも可能である。
〔加熱処理工程〕
本発明において、加熱処理工程は、前記表面処理剤が付着された窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で加熱して窒化アルミニウム粉末表面への無機酸化物皮膜の形成を行うと共に、前記残存カーボンの熱分解を行う工程である。
上記窒化アルミニウム粉末表面への無機酸化物皮膜の形成は、残存カーボンを含んだ状態で加熱することを除けば、公知の方法を特に制限無く適用することができる。たとえば、アルコキシシランを使用する場合は、アルコキシシランが酸化ケイ素に分解され、酸化ケイ素皮膜を形成し得る温度と時間が、シリカゾルを使用する場合は、シリカゾルが重合、析出し、酸化ケイ素皮膜を形成し得る温度と時間が、また、燐酸化合物を使用する場合は、燐酸アルミニウムを生成して、燐酸アルミニウム被膜を形成し得る温度と時間が適宜決定される。
上記加熱処理において、Siを含有する化合物で処理した場合はシリカ皮膜、Pを含有する化合物で処理した場合は燐酸アルミニウム皮膜が形成される。これらの被膜の厚みは、前記表面処理剤の使用量によって調整され、窒化アルミニウム粉末の耐水性と熱伝導率を考慮して適宜決定される。たとえば、処理剤がケイ素化合物またはリン化合物の場合、Si元素またはP元素の含有量で、100ppm〜100000ppmの処理量が好ましく、1000ppmから10000ppmの処理量がより好ましい。
尚、本発明において、Si元素、P元素の含有量は、ICP発光分析計を用いて測定した値である。
加熱処理は、無機酸化被膜の形成と、炭素の除去を行うため、雰囲気ガスとしては、空気、酸素など炭素を除去できるガスが好適に使用される。特に、経済性を考慮して、空気が好適である。また、加熱処理温度は一般的に500〜900℃が好適であるが、強固な被膜を形成するために、600℃〜900℃で処理することが望ましい。
加熱処理工程において、カーボン粉末は、表面処理剤による無機酸化皮膜の形成時に窒化アルミニウム粉末の分散剤として作用し、粒子の凝集を効果的に防止しているものと推定される。その結果、かかる加熱処理によって、凝集体の少ない、分散性の良好な耐水性を有する窒化アルミニウム粉末を得ることができる。また、残存カーボンは、無機酸化皮膜の形成後の加熱によって炭酸ガスとして揮散する。
本発明の加熱処理工程においては、無機酸化物被膜を形成する工程と、カーボンを分解する工程を同時に実施するため、従来の方法と比較して、製造工程が少なく、コスト面で有利である。
〔後処理〕
本発明において、加熱処理工程後の表面処理された窒化アルミニウム粉末は、必要に応じて粉砕、分級を実施することができる。また、本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末は、さらなる耐水性や、樹脂との相溶性を向上させるため、窒化アルミニウム粒子の表面を公知の方法で処理することができる。具体的には、シリコーンオイル、シリル化剤、シランカップリング剤などの有機珪素化合物、リン酸や又はリン酸塩、脂肪酸による処理、ポリアミド樹脂などの高分子による皮膜処理、アルミナ、シリカなどの無機質皮膜処理などが挙げられる。
〔用途〕
本発明の方法により得られた表面処理された窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウムの性質を生かした種々の用途、特に放熱シート、放熱グリース、放熱接着剤、塗料、熱伝導性樹脂などの放熱材料用フィラーとして広く用いることができる。
ここで放熱材料のマトリックスとなる樹脂、グリースは、エポキシ樹脂、メソゲン基を導入したエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂、またシリコーンゴム、EPR、SBR等のゴム類、シリコーンオイルが挙げられる。
これらのうち、放熱材料のマトリックスとしては、例えばエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂が好適であり、高柔軟性放熱部材とするには付加反応型液状シリコーンゴムが望ましい。
放熱材料の熱伝導性を向上させるため、樹脂、ゴム又はオイル100質量部あたり、フィラーを150〜1000質量部添加するのが良い。このような放熱材料には、本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末以外に、窒化アルミニウム粉末、破砕状アルミナ、球状アルミナ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭化珪素、グラファイトなどのフィラーを一種、あるいは数種類充填しても良く、放熱材料の特性や用途に応じて、本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末とそれ以外のフィラーの形状、粒径を選択すれば良い。例えば、高熱伝導の高い放熱材料を得ようとする場合、他の方法で得られる数種類のAlN粉末と組み合わせて使用することもできる。具体的には、樹脂への高充填化が可能となるように、本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末と粒径が0.1μmから100μm程度の還元窒化法や直接窒化法で得られたAlN粉末、それらを噴霧乾燥して得たAlN顆粒を焼結させた、いわゆる焼結顆粒を組み合わせて用いることができる。
また、樹脂へのフィラー高充填化を図る場合、本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末と数種類の平均粒子径が10〜100μmの球状アルミナとを併用する方法が好適に採用される。放熱材料の熱伝導性に異方性を付与したい場合には、本発明の表面処理された窒化アルミニウム粉末と数種類の平均粒子径が1〜50μmの窒化ホウ素を組み合わせて使用することもできる。これらのフィラーは、例えばシランカップリング剤で表面処理したものを用いても良い。また、放熱材料における表面処理された窒化アルミニウム粉末とそれ以外のフィラーの混合比は、1:99〜99:1の範囲で適宜調整できる。また、放熱材料には、可塑剤、加硫剤、硬化促進剤、離形剤等の添加剤をさらに添加しても良い。
上記の樹脂組成物は、ブレンダーやミキサーで混合することによって製造することができ、また放熱材料は、プレス成形法、押出成形法、ドクターブレード法によって樹脂組成物を成形し、それを加熱硬化、光硬化することによって製造することができる。
以下、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例における各種物性は、下記の方法により測定した。
(1)平均粒子径
平均粒子径(D50)は、試料をホモジナイザーにてピロリン酸ソーダ中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて測定した。
(2)比表面積
比表面積はBET一点法にて測定を行った。
(3)Si元素、P元素の含有量
窒化アルミニウム粉末のSiおよび/またはPの含有量は、窒化アルミニウム粉末をアルカリ溶融後、酸で中和し、ICP発光分析計(島津製作所製ICPS−7510)を使用して定量した。
(4)エポキシ樹脂シートの熱伝導率
エポキシ樹脂シートを10cm×6cmの大きさに切断し、熱伝導率計(京都電子工業製QTM−500)を用いて熱伝導率を測定した。
実施例1
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m/gのαアルミナ粉末100質量部に、カーボン粉末として、比表面積125m/gのカーボンブラック50質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件でアルミナ粉末を還元窒化した。
上記工程で得られた、窒化アルミニウム粉末における残存カーボン粉末を定量するために、該粉末を脱炭処理して重量変化を測定したところ、粉末中の残存カーボン粉末の含有量は、16重量%であった。
次いで、前記還元窒化によって得られた、残存カーボン粉末と窒化アルミニウム粉末の混合物に、該窒化アルミニウム粉末100質量部に対する割合で、1000質量部の無水エタノールを混合して分散液を調製し、さらに、該分散液に20質量部のテトラエトキシシラン、1000質量部の水、10質量部の酢酸を添加して混合液を調製した。該混合液をボールミルに投入し、1時間攪拌した後に、ろ過し、溶媒を自然乾燥させ、表面処理剤が付着した窒化アルミニウム粉末の乾燥物を得た。得られた乾燥物を、空気雰囲気下において700℃で12時間、加熱処理を行って、無機酸化膜被膜(酸化ケイ素被膜)が形成された、表面処理された窒化アルミニウム粉末を得た。
上記表面処理された窒化アルミニウム粉末について、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を、温度60℃・湿度80%RHに保った恒温恒湿器中にいれ、24時間保持した後に、110℃で3時間乾燥し、乾燥後の粉末の重量を測定した。恒温恒湿器にいれる前の窒化アルミニウム粉末の重量からの、乾燥後の粉末の重量増加率を算出し、重量増加率を耐水性の目安とした。結果を表1に示す。
さらに、表面処理された窒化アルミニウム粉末100質量部、エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製jER807)27.6質量部、硬化剤(三菱化学株式会社製jERキュア113)8.8質量部を、適量のメチルセロソルブとともに乳鉢にて混練した。次いで、バーコーターを用いて、混練物をPETフィルム上に塗布し、80℃1時間の条件で乾燥、150℃3時間の条件で樹脂を硬化した。得られたシートは前述の方法にて、熱伝導率を測定した。結果を表1に併せて示す。
実施例2
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m/gのαアルミナ100質量部に、カーボン粉末として、比表面積125m/gのカーボンブラック60質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件でアルミナ粉末を還元窒化した。
上記工程で得られた、窒化アルミニウム粉末における残存カーボン粉末を定量するために、該粉末を脱炭処理して重量変化を測定したところ、粉末中の残存カーボン粉末の含有量は、20重量%であった。
次いで、前記還元窒化によって得られた、残存カーボン粉末と窒化アルミニウム粉末の混合物に、該窒化アルミニウム粉末100質量部に対する割合で、1000質量部の0.5%燐酸水溶液を混合して分散液を調製し、混合液を調製した。該混合液をボールミルに投入し、1時間攪拌したのちに、ろ過し、溶媒を自然乾燥させ、表面処理剤が付着した窒化アルミニウム粉末の乾燥物を得た。得られた乾燥物を、空気雰囲気下において700℃で12時間、加熱処理を行って、無機酸化膜被膜(燐酸アルミニウム被膜)が形成された、表面処理された窒化アルミニウム粉末を得た。
上記表面処理された窒化アルミニウム粉末について、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて、耐水性を見るための重量増加率の測定およびシートの熱伝導率を測定した。結果を表1に併せて示す。
比較例1
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m/gのαアルミナ100質量部、比表面積125m/gのカーボンブラック50質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件で窒化後、空気雰囲気下において700℃で12時間、脱炭処理を行い、窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、1000質量部の無水エタノールを混合して分散液を調製し、さらに該分散液に20質量部のテトラエトキシシラン、1000質量部の水、10質量部の酢酸を添加して混合液を調製した。該混合液をボールミルに投入し、1時間攪拌したのちに、ろ過し、溶媒を自然乾燥させ表面処理剤が付着した窒化アルミニウム粉末の乾燥物を得た。さらに、得られた乾燥物を、空気雰囲気下において700℃で12時間、加熱処理を行って、無機酸化膜被膜(酸化ケイ素被膜)が形成された、表面処理された窒化アルミニウム粉末を得た。
上記表面処理された窒化アルミニウム粉末は、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
さらに、得られた窒化アルミニウム粉末を、温度60℃・湿度80%RHに保った恒温恒湿器中にいれ、24時間保持した後に、110℃で3時間乾燥し、乾燥後の粉末の重量を測定した。恒温恒湿器にいれる前の窒化アルミニウム粉末の重量からの、乾燥後の粉末の重量増加率を算出し、重量増加率を耐水性の目安とした。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて、耐水性を見るための重量増加率の測定およびシートの熱伝導率を測定した。結果を表1に併せて示す。
参考例(表面処理なし)
平均粒子径1.2μm、比表面積10.7m/gのαアルミナ100質量部、比表面積125m/gのカーボンブラック50質量部を混合した後、グラファイトのセッターに充填した。ついで、窒素雰囲気下において、保持温度1650℃、保持時間5時間の条件で窒化した。得られた微粉末を、空気雰囲気下において700℃で12時間、熱処理を行って窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末は、前述の方法にて、平均粒子径測定、比表面積測定、SiおよびPの含有量測定を実施した。結果を表1に示す。
また、表面処理された窒化アルミニウム粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて、耐水性を見るための重量増加率の測定およびシートの熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005591100
本発明で得られる表面処理された窒化アルミニウム粉末は、耐水性、高熱伝導性を有していることから、樹脂やグリースなどのマトリックスに対して充填した場合、高い化学的安定性を有する熱伝導率の高い放熱シート、放熱ゲル、放熱グリース、放熱接着剤、フェーズチェンジシート、メタルベース基板の絶縁層を得ることができる。その結果、MPUやパワートランジスタ、トランス等の発熱性電子部品からの熱を放熱フィンや放熱ファン等の放熱部品に効率よく伝達することができる。

Claims (1)

  1. アルミナ粉末を窒素雰囲気中、カーボン粉末の存在下で加熱して窒化アルミニウム粉末を得る還元窒化工程、上記還元窒化工程より得られる窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で、ケイ素(Si)又はリン(P)を含有する化合物である表面処理剤と接触させる処理剤付着工程、および、前記表面処理剤が付着された窒化アルミニウム粉末を、残存カーボンを含んだ状態で加熱して窒化アルミニウム粉末表面へのシリカ皮膜又はリン酸アルミニウム皮膜よりなる耐水性皮膜の形成を行うと共に、前記残存カーボンの熱分解を行う加熱処理工程を含むことを特徴とする表面処理された窒化アルミニウム粉末の製造方法。
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