JP5589254B2 - カダベリン塩の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カダベリン塩等に関し、より詳しくは、3官能以上の有機物の含有量が少ないカダベリン塩等に関する。
プラスチック原料として、その殆どがいわゆる化石原料が用いられている。再生利用する場合を除き、プラスチックを廃棄する場合、燃焼等による廃棄は炭酸ガスの放出を招くことから近年問題となりつつある。そこで、地球温暖化防止及び循環型社会の形成に向けて、プラスチックの製造原料をバイオマス由来の原料に置き換えることが嘱望されている。このようなニーズは、フィルム、自動車部品、電気・電子部品、機械部品等の射出成形品、繊維、モノフィラメント等、多岐にわたる。
ところで、ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性等に優れており、いわゆるエンジニアリングプラスチックスの1つとして多くの分野で用いられている。中でもフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルム等に比べ、優れた機械的特性、耐熱性、透明性、ガスバリア性等の特徴を有しており、食品、医薬品、雑貨等の包装用フィルムとして広く利用されている。
ポリアミド樹脂のフィルムは強度やガスバリア性を付与するため、二軸延伸等の延伸処理を施して使用される場合が多い。この際、フィッシュアイと称される粒状欠陥があると、それを起点に延伸破断を起こし生産性を損なうだけでなく、フィルムの外観を悪化させ商品価値を著しく損なう。このため、フィッシュアイを極力低減することが求められている。
また、ポリアミド樹脂はその優れた性能を生かし、繊維やモノフィラメントの分野でも広く用いられている。これらの用途でも、上述のフィルム同様、フィッシュアイは成形時の延伸破断や表面外観の悪化を招くため、その低減が求められている。
一方、ポリアミド樹脂からなる射出成形品には、自動車部品、電気・電子部品、機械部品等が挙げられる。いずれの場合も、部品のコンパクト化や軽量化を目的に薄肉化が望まれている。この場合、ポリアミド樹脂本来の物性を維持するため分子量(数平均分子量)を下げることなく、高い流動性を有するポリアミド樹脂が必要となる。
バイオマス由来の原料を使用して製造されるポリアミド樹脂としては、カダベリンを原料とするものが知られている。例えば、特許文献1、特許文献2にはその原料であるカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法、精製方法が提案されている。
特開2004−208646号公報 特開2005−006650号公報
ところが、前記特許文献には、3官能以上の有機物含有量とフィルムのフィッシュアイや射出成形時の流動性との関連性については何ら言及されていない。
本発明は、上述したバイオマス由来の原料から得られたポリアミド樹脂における課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、カダベリン塩の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、バイオマス由来の原料から得られたカダベリン塩中の3官能以上の有機物の含有量、或いはアミノ酸含有量、リジン含有量、アルギニン含有量を制御することにより、著しくフィッシュアイが少なく表面外観に優れたポリアミド樹脂フィルムを得ることが可能であり、且つ、著しく射出成形時の流動性が優れることを見出し、斯かる知見に基づき本発明を完成した。
かくして本発明によれば、カダベリン塩水溶液の晶析により得られ、カダベリン塩の晶析率が10重量%〜35重量%であり、前記カダベリン塩水溶液中の前記カダベリン塩の濃度が、50重量%〜67重量%であることを特徴とするカダベリン塩の製造方法が提供される。
またカダベリン塩水溶液中のカダベリン塩が、カダベリン・アジピン酸であることが好ましい。
さらに、カダベリンが、リジンからリジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは細胞の処理物を用いて得られたものであることが好ましい。
本発明のカダベリン塩を用いて、フィッシュアイが少なく表面外観に優れたポリアミド樹脂のフィルムが得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について詳細に説明する。尚、以下に記載する説明は、本発明の実施の形態の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
(カダベリン)
本実施の形態におけるカダベリンは、例えば、リジン溶液に、同溶液のpHが酵素的脱炭酸反応に適したpHに維持されるように酸を加えながら、リジンの酵素的脱炭酸反応を行うことにより、製造することができる。
ここで用いる酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸等の有機酸が挙げられる。得られた反応生成液から、通常の分離精製方法を用いて遊離カダベリンを採取することができる。
更には、上記酸としてジカルボン酸を用いて、直接ポリアミドの製造原料となるカダベリン・ジカルボン酸塩を採取することも可能である。
(カダベリン・アジピン酸塩の製造方法)
以下に、酸としてアジピン酸を用いて、リジンの酵素的脱炭酸反応により、カダベリン・アジピン酸塩を製造する方法について詳細に説明する。
原料として用いるリジンは、通常、遊離塩基(リジンベース。即ち、遊離リジン。)であることが好ましいが、リジンのアジピン酸塩であってもよい。リジンは、酵素的脱炭酸反応によりカダベリンを生成するものであれば、L−リジン、D−リジンのいずれであってもよいが、通常は入手のしやすさからL−リジンが好ましい。
また、リジンは、精製されたリジンであってもよく、酵素的脱炭酸反応により生成するカダベリンがアジピン酸と塩を形成することが可能であれば、リジンを含む発酵液であってもよい。
リジン溶液を調製する溶媒としては、好適には水が用いられる。反応液のpHは、アジピン酸によって調整するため、他のpH調整剤や緩衝剤を用いる必要はないが、前記溶媒として緩衝液を用いてもよい。
このような緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液等が挙げられる。但し、カダベリンとアジピン酸との塩を形成させるという点からは、緩衝剤等は用いないか、用いる場合であっても低濃度に抑えることが好ましい。
リジンとして遊離リジンを用いる場合は、リジン溶液にアジピン酸を加えて酵素的脱炭酸反応に適したpHとなるように調整する。具体的には、pHとしては、通常4.0以上、好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上で、通常8.0以下、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.5以下が挙げられる。
尚、リジンとして、リジンのアジピン酸塩を用いる場合は、反応液調製時にアジピン酸を加える必要はない。以下、このように、反応液のpHを酵素的脱炭酸反応に適したpHに調整することを、「中和」と称す場合がある。
リジンの酵素的脱炭酸反応の際には、生産速度及び反応収率向上のため、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサル及びピリドキサルリン酸から選ばれる少なくとも1種のビタミンB6を配合することが好ましく、なかでもピリドキサルリン酸が特に好ましい。
ビタミンB6を添加する方法には特に制限はない。反応中に適宜添加しても良い。
リジンの酵素的脱炭酸反応は、例えば、上記のようにして中和されたリジン溶液にリジン脱炭酸酵素(LDC)を添加することによって行うことができる。
LDCとしては、リジンに作用してカダベリンを生成させるものであれば特に制限はない。LDCとしては、精製酵素を用いてもよいし、LDCを産生する微生物、植物細胞又は動物細胞等の細胞を用いてもよい。LDC又はそれを産生する細胞は、1種でもよく、2種以上の混合物であってもよい。
また、細胞をそのまま用いてもよく、LDCを含む細胞処理物を用いてもよい。細胞処理物としては、細胞破砕液及びその分画物が挙げられる。
前記微生物としては、E.coli等のエシェリヒア属細菌、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)等のコリネ型細菌、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)等のセラチア属細菌等の細菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の真核細胞が挙げられる。これらの中では細菌、特にE.coliが好ましい。
前記微生物は、LDCを産生する限り、野生株でもよく、変異株であってもよい。また、LDC活性が上昇するように改変された組換え株であってもよい。植物細胞又は動物細胞も、LDC活性が上昇するように改変された組換え細胞を用いることができる。組換え細胞については、後述する。
リジン溶液にLDCを添加して反応を開始した後は、反応の進行に伴い、リジンから遊離される炭酸ガスが反応液から放出され、pHが上昇する。従って、反応液のpHが前記範囲となるように、アジピン酸を反応液に添加する。アジピン酸は連続的に添加してもよく、pHが前記範囲に維持される限り、分割して添加してもよい。
反応温度は、LDCがリジンに作用してカダベリンを生成させる温度であれば特に制限はないが、温度は、通常20℃以上、好ましくは30℃以上で、通常60℃以下、好ましくは40℃以下で行う。
原料のリジン又はリジン・アジピン酸塩は、反応開始時に反応液に全量添加してもよく、LDC反応の進行に応じて、分割して添加してもよい。
酵素反応は、バッチ式によって行うと、アジピン酸の添加を容易に行うことができる。また、LDC、LDCを産生する細胞又はその処理物を固定化した担体を用いた移動床カラムクロマトグラフィーによって、反応を行うこともできる。
その場合は、反応系のpHが所定の範囲に維持されたまま反応が進行するように、リジン及びアジピン酸をカラムの適当な部位に注入すればよい。
上記のようにして、リジンの酵素的脱炭酸反応によるカダベリン生成に伴って上昇するpHを、アジピン酸を用いて逐次中和することにより、酵素反応が良好に進行する。このようにして生成するカダベリンは、アジピン酸塩として反応液中に蓄積する。
LDC反応により得られたカダベリン・アジピン酸塩は、反応液から公知の方法を組み合わせることによって単離、精製することができる。カダベリン・アジピン酸塩は、使用態様に応じて、溶液のままであってもよく、結晶であってもよい。上記のようにして得られる結晶は、カダベリンとアジピン酸を等モルで含んでいるため、ポリアミド樹脂製造の原料として好適であり、必要に応じて乾燥して使用することができる。
次に、一例として晶析法にて、本実施の形態におけるカダベリン・アジピン酸塩水溶液からカダベリン・アジピン酸塩を得る方法を具体的に説明する。
バイオマス原料から得られたカダベリン・アジピン酸塩水溶液は着色しているため、晶析前に脱色することが好ましく、脱色剤としては活性炭、合成吸着剤、活性白土、シリカ、ゼオライト等が挙げられ、中でも活性炭が好ましい。
脱色は、脱色剤を充填した塔にカダベリン・アジピン酸塩水溶液を通液する方法や、カダベリン・アジピン酸塩水溶液中に脱色剤を添加、撹拌する方法等が挙げられ、中でも前者が好ましい。
脱色後のカダベリン・アジピン酸塩水溶液は、窒素バブリングにより溶存酸素を追い出した後、カダベリン・アジピン酸塩濃度が50重量%〜69重量%、好ましくは60重量%〜67重量%まで濃縮する。カダベリン・アジピン酸塩濃度が過度に小さい場合は晶析後の収率が低くなり、過度に大きいとカダベリン・アジピン酸塩に混入する不純物濃度が高くなるので好ましくない。具体的には、リジン、アルギニン等の3官能以上のアミノ酸等の含有量が高くなるので好ましくない。
濃縮は、カダベリン・アジピン酸塩水溶液の温度50℃〜70℃、減圧度150Torr以下で行うのが好ましい。温度が過度に低いと濃縮時間が長くなり、温度が過度に高いとカダベリン・アジピン酸塩が分解するので好ましくない。また、減圧度が150Torrを超えると濃縮時間が長くなるので好ましくない。
晶析は、冷却してカダベリン・アジピン酸塩を析出させて行う。この場合、冷却している降温途中で種晶を添加することが好ましい。種晶は、種晶としての効果が得られるものであれば特に限定されない。中でも、析出するカダベリン・アジピン酸塩が好ましい。
冷却時の降温速度は、通常1℃/h以上、好ましくは2℃/h以上、さらに好ましくは3℃/h以上、又通常30℃/h以下、好ましくは20℃/h以下、さらに好ましくは10℃/h以下である。降温速度が過度に遅いと晶析に時間を要する傾向となるので好ましくない。降温速度が過度に早いと結晶サイズが小さくなる傾向となり、精製度合いが低下する傾向となるので好ましくない。
晶析終了温度は、通常1℃以上、好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上、又通常30℃以下、好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。晶析終了温度が過度に高いと収率が低くなる傾向となるので好ましくない。晶析終了温度が過度に低いと、カダベリン・アジピン酸塩スラリーを移送する際に、配管を閉塞しやすくなるので好ましくない。
晶析率は、濃縮液のカダベリン・アジピン酸塩濃度と晶析終了温度により決められ特に限定されないが、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。また、通常46重量%以下、好ましくは39重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下に制御することが好ましい。晶析率が過度に低いと収率が低くなる傾向となるので好ましくない。晶析率が過度に高いとカダベリン・アジピン酸塩に混入するリジン、アルギニン等の3官能以上のアミノ酸等の不純物濃度が高くなるので好ましくない。
晶析後のカダベリン・アジピン酸塩スラリーは、常法に従い固液分離して、結晶として得られる。例えば、遠心濾過を行う場合は、母液を振り切った後に、遠心濾過器が回転している状態で少量の脱塩水をシャワー状にふりかけ、カダベリン・アジピン酸塩に付着している母液をさらに洗い流すと精製度が上がり好ましい。
脱塩水量はwetケーキ(若干の水を含んだカダベリン・アジピン酸塩)に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上である。また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。脱塩水量が過度に少ないと洗浄効果が小さくなる傾向となるので好ましくない。脱塩水量が過度に多いと、収率が低下する傾向となるので好ましくない。このようにして得られた結晶を1番晶と称する。
固液分離後の母液や洗浄液は回収して、再度、濃縮、晶析、固液分離を行い、2番晶を得る。同様にして、3番晶、4番晶等を得ることができる。
本実施の形態におけるカダベリン塩中の3官能以上の有機物の合計含有量は、90ppm以下であり、好ましくは60ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。3官能以上の有機物の含有量が90ppmを超えると、架橋してゲルの原因となり、射出成形品においては流動性や機械物性の低下、フィルム、繊維、モノフィラメントにおいてはF/E(フィッシュアイ)発生による表面外観の低下や延伸時の破断原因となるため好ましくない。
ここで、3官能以上の有機物とは、架橋してゲルの原因となり得る官能基を3つ以上有する有機物が挙げられる。このような官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、水酸基、ヒドラジド基、エポキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アルコキシル基等が挙げられる。
本実施の形態における3官能以上の有機物の一例として、アミノ酸、オリゴ糖、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
本実施の形態が適用されるカダベリン塩中の3官能以上のアミノ酸の合計含有量は、90ppm以下が好ましく、さらに好ましくは60ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。3官能以上のアミノ酸含有量が90ppmを超えると、架橋してゲルの原因となり、射出成形品においては流動性や機械物性の低下、フィルム、繊維、モノフィラメントにおいてはF/E発生による表面外観の低下や延伸時の破断原因となるため好ましくない。
3官能以上のアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン等のモノアミノジカルボン酸;リジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン等のジアミノモノカルボン酸が挙げられる。これらのアミノ酸はL体でもD体でも構わない。
本実施の形態が適用されるカダベリン塩中のリジンは、L−リジンでもD−リジンでも良く、その含有量は50ppm以下が好ましく、さらに好ましくは30ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。リジンが50ppmを超えると、架橋してゲルの原因となり、射出成形品においては流動性や機械物性の低下、フィルム、繊維、モノフィラメントにおいてはF/E発生による表面外観の低下や延伸時の破断原因となるため好ましくない。
カダベリン塩中のリジン含有量は常法により測定することができる。例えば、アミノ酸分析計等を用いて測定することができる。
リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは該細胞の処理物を使用して、リジンからカダベリンを産出する場合には、リジンが残存しやすくなるが、できるだけ残存リジン量を低くすることが望ましい。残存リジン量が多いと、その後の精製工程への負荷が大きくなり、経済性が低下するので好ましくない。
本実施の形態におけるカダベリン塩中のアルギニンは、L−アルギニンでもD−アルギニンでも良く、その含有量は40ppm以下が好ましく、さらに好ましくは20ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。アルギニンが40ppmを超えると、架橋してゲルの原因となり、射出成形品においては流動性や機械物性の低下、フィルム、繊維、モノフィラメントにおいてはF/E発生による表面外観の低下や延伸時の破断原因となるため好ましくない。アルギニン含有量は常法により測定することができる。例えば、アミノ酸分析計等を用いて測定することができる。
次に、微生物を、LDC活性が上昇するように改質する方法について例示する。尚、他の細胞についても、それに適するように下記の方法を適宜改変することによって、同様にLDC活性を上昇させることができる。
LDC活性は、例えば、LDCをコードする遺伝子(LDC遺伝子)の発現を増強することによって上昇する。LDC遺伝子の発現の増強は、LDC遺伝子のコピー数を高めることによって達成される。例えば、LDC遺伝子断片を、微生物で機能するベクター、好ましくは、マルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これを適当な宿主に導入して形質変換すればよい。
LDC遺伝子のコピー数を高めることは、LDC遺伝子を微生物の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。微生物の染色体DNA上に遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。
染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。或いは、特開平2−109985号公報に開示されているように、目的遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。
LDC活性の上昇は、上記の遺伝子増幅による以外に、染色体DNA上又はプラスミド上のLDC遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することによっても達成される。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。
また、国際公開第00/18935号パンフレットに開示されているように、遺伝子のプロモーター領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強力なものに改変することも可能である。これらのプロモーター置換又は改変によりLDC遺伝子の発現が強化され、LDC活性が上昇する。これら発現調節配列の改変は、遺伝子のコピー数を高めることと組み合わせてもよい。
発現調節配列の置換は、例えば、温度感受性プラスミドを用いた遺伝子置換と同様にして行うことができる。E.coliの温度感受性複製起点を有するベクターとしては、例えば、国際公開第99/03988号パンフレットに記載されたプラスミドpMAN997等が挙げられる。また、λファージのレッド・リコンビナーゼ(Red recombinase)を利用した方法(Datsenko,K.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97(12),6640−6645)によっても、発現調節配列の置換を行うことができる。
LDC遺伝子としては、コードされるLDCが、リジンの脱炭酸反応に有効利用できるものであれば特に制限されないが、例えば、バクテリウム カダベリス、E.coli等の細菌や、ガラス豆等の植物、さらには、特開2002−223770号公報に記載の微生物のLDC遺伝子が挙げられる。
宿主微生物としてE.coliを用いる場合は、E.coli由来のLDC遺伝子が好ましい。
E.coliのLDC遺伝子としては、cadA遺伝子及びldc遺伝子(米国特許第5,827,698号)が知られているが、これらの中ではcadA遺伝子が好ましい。
E.coliのcadA遺伝子は配列が知られており(N.Watson et al.,Journal of bacteriology(1992)vol.174,p.530−540;S.Y.Meng et al.Journal of bacteriology(1992)vol.174,p.2659−2668;GenBank accession M76411)、その配列に基づいて作成したプライマーを用いたPCRにより、E.coli染色体DNAから単離することができる。
このようなプライマーとしては、配列番号1(配列;GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG)及び配列番号2(配列;ACCAAGCTGATGGGTGAGATAGAGAATGAGTAAG)に示す塩基配列を有するプライマーが挙げられる。
取得されたLDC遺伝子とベクターを連結して組換えDNAを調製するには、LDC遺伝子の末端に合うような制限酵素でベクターを切断し、T4 DNAリガーゼ等のリガーゼを用いて前記遺伝子とベクターを連結すればよい。
E.coli用のベクターとしては、pUC18、pUC19、pSTV29、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pBR322、pACYC184、pMW219等が挙げられる。
LDC遺伝子は、野生型であってもよいし、変異型であってもよい。例えばcadA遺伝子は、コードされるLDCの活性が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むLDCをコードするものであってもよい。
ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には2個〜50個、好ましくは2個〜30個、より好ましくは2個〜10個である。
上記のようなLDCと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加又は逆位を含むようにcadA遺伝子の塩基配列を改変することによって得られる。
また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、変異処理前のDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及び変異処理前のDNAを保持する微生物、例えばエシェリヒア属細菌を、紫外線又はN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくはエチルメタンスルホン酸(EMS)等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
上記のような変異を有するDNAを、適当な細胞で発現させ、発現産物の活性を調べることにより、LDCと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。
また、変異を有するLDCをコードするDNA又はこれを保持する細胞から、例えば、cadA遺伝子(GenBank accession M76411)のコード領域の配列、又は同配列の一部を有するプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、LDCと同等の活性を有するタンパク質をコードするDNAが得られる。
ここで言う「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それにより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、或いは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
プローブとしてcadA遺伝子の一部の配列を用いることもできる。そのようなプローブは、公知のcadA遺伝子の塩基配列に基づいて作成したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、cadA遺伝子を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。プローブとして、300bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件は、50℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられる。
LDCと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAとして具体的には、公知のcadA遺伝子がコードするアミノ酸配列と、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有し、かつLDC活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
組換えDNAを微生物に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリ K−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))があり、バチルス・サチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Ducan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E.,Gene,1,153(1997))がある。
或いは、バチルス・サチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラスト又はスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang,S.and Choen,S.N.,Molec,Gen.Genet.,168,111(1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature,274,398(1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75 1929(1978))も応用できる。また、電気パルス法(特開平2−207791号公報)によっても、微生物の形質転換を行うことができる。
LDCを産生する微生物又は細胞を得るための培養は、用いる微生物又は細胞に応じて、LDCの産生に適した方法によって行えばよい。
例えば、培地は、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地でよい。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物等の糖類;グリセロール、マンニトールやソルビトール等のアルコール類;グルコン酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物等の有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
有機微量栄養素としては、ビタミンB1等のビタミン類、アデニンやRNA等の核酸類等の要求物質又は酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
培養は、エシェリヒア・コリの場合は、好気的条件下で16時間〜72時間程度実施するのがよく、培養温度は30℃〜45℃に、培養中のpHは5〜8に制御する。尚、pH調整には無機或いは有機の酸性又はアルカリ性物質、アンモニアガス等を使用することができる。
尚、LDC遺伝子が、誘導可能なプロモーターによって発現が調節されている場合には、誘導剤を培地に添加する。
培養後、細胞は、遠心分離機や膜により集めることにより、培養液から回収することができる。細胞は、そのまま用いてもよいが、LDCを含むそれらの処理物を用いる場合は、細胞を超音波、フレンチプレス、又は酵素的処理により破砕し酵素を抽出させ、無細胞抽出液とし、さらにそこからLDCを精製する場合には、常法に従い、硫安塩折、各種クロマトグラフィーを使用することによって精製することができる。
(ポリアミド樹脂)
本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂は、カダベリン単位、ジカルボン酸単位を構成成分として含み、本発明の効果を損なわない範囲において、それ以外の共重合成分が含有されていてもよい。
この場合、共重合成分としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;
エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
また、本実施の形態で使用するジカルボン酸は、前述した芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸と同様の化合物を挙げることができる。
これらの共重合成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(ポリアミド樹脂の製造方法)
本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂の製造方法としては、公知の方法が使用でき、具体的には「ポリアミド樹脂ハンドブック」(日刊工業社出版:福本修編)等に開示されている。例えば、ポリアミド56の製造方法としては、カダベリン・アジピン酸塩を、水の共存下で混合し、加熱して脱水反応を進行させる方法(加熱重縮合)が好ましい。
尚、本実施の形態における上記加熱重縮合とは、ポリアミド樹脂の製造における重合反応物の最高到達温度を200℃以上に上昇させる製造プロセスである。最高到達反応温度の上限としては、重合反応時の熱安定性を考慮して、通常300℃以下である。重合方式には特に制限は無く回分式、連続方式が採用できる。
上記の方法で製造されたポリアミド樹脂は加熱重縮合後に更に固相重合することができる。これにより、ポリアミド樹脂の分子量を高くすることができる。固相重合は、例えば、100℃以上融点以下の温度で真空中、或いは不活性ガス中で加熱することにより行うことができる。
本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂の重合度は特に制限がなく、濃度0.01g/mlとした98%硫酸溶液の25℃における相対粘度(η)が1.5〜8.0であることが好ましく、2.0〜5.5であることがさらに好ましい。
相対粘度(η)が過度に低いと、実用的強度が不十分であり、一方、相対粘度(η)が過度に高いと、流動性が低下し、成形加工性が損なわれるので好ましくない。
相対粘度(η)は、成形性の観点から、フィルム、繊維、モノフィラメント等の押出成形では3.0〜5.5、射出成形では2.0〜3.5が特に好ましい。
本実施の形態におけるポリアミド樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を、ポリアミド樹脂の重合から成形までの任意の段階で配合することができる。
このような他の成分としては、例えば、酸化防止剤や熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系及びこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等);耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等);離型剤及び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等);顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等);染料(ニグロシン、アニリンブラック等);可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等);
帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等の非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等);難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂又はこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等);他の重合体(他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)が挙げられる。
これらの他の成分は、ドライブレンド又は押出機を用いて溶融混練するのが好ましい。
また、本実施の形態のポリアミド樹脂をフィルム用途に用いる場合には、滑り性向上のため、タルク、カオリン、焼成カオリン、シリカ、ゼオライト等の無機フィラー、特に微粒子状の無機フィラーを配合することが好ましい。更に好ましくは、無機フィラーと離型剤及び/または滑剤とを併用する態様が挙げられる。
無機フィラーの配合量としては、ポリアミド樹脂100重量部当り0.005重量部〜0.1重量部が好ましく用いられる。また、離型剤及び/または滑剤は、ポリアミド樹脂100重量部当り0.01重量部〜0.5重量部が好ましく用いられる。
また、本実施の形態のポリアミド樹脂は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、ブロー成形、真空成形等の任意の成形方法により、所望の形状に成形することができる。成形品としては、例えば、射出成形品、フィルム、シート、フィラメント、テーパードフィラメント、繊維等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂は、接着剤、塗料等にも使用することができる。
また、本実施の形態のポリアミド樹脂の具体的な用途例としては、自動車・車両関連部品として、例えば、インテークマニホールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成形品)、結束バンド、レゾネーター、エアークリーナー、エンジンカバー、ロッカーカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタンク、ラジエータータンク、インタークーラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、電動パワステギヤ、オイルストレーナー、キャニスター、エンジンマウント、ジャンクションブロック、リレーブロック、コネクター、コルゲートチューブ、プロテクター等の自動車用アンダーフード部品;ドアハンドル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレールレグ、ドアミラーステー、バンパー、スポイラー、ホイールカバー等の自動車用外装部品;カップホルダー、コンソールボックス、アクセルペダル、クラッチペダル、シフトレバー台座、シフトレバーノブ等の自動車用内装部品が挙げられる。
さらに、本実施の形態のポリアミド樹脂は、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、DIPスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、コネクタ、コネクタのハウジング、コネクタのシェル、ICソケット類、コイルボビン、ボビンカバー、リレー、リレーボックス、コンデンサーケース、モーターの内部部品、小型モーターケース、ギヤ・カム、ダンシングプーリー、スペーサー、インシュレーター、キャスター、端子台、電動工具のハウジング、スターターの絶縁部分、ヒューズボックス、ターミナルのハウジング、ベアリングリテーナー、スピーカー振動板、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品等各種用途に使用することができる。
(ポリアミド樹脂フィルムの成形方法)
本実施の形態におけるポリアミド樹脂フィルムは、公知の方法で成形することができる。例えば、ポリアミド樹脂に離型剤や滑剤等をドライブレンドしたポリアミド樹脂組成物の溶融体を連続的にT−ダイより押出し、キャスティングロールにて冷却しながらフィルム状に成形するT−ダイ法;環状のダイスより連続的に押出し、水を接触させて冷却する水冷インフレーション法;同じく環状のダイスより押出し、空気によって冷却する空冷インフレーション法等が用いられる。また、これらの成形法で他の材料を同時に押し出す共押出法で多層のフィルムを得ることもできる。
必要に応じて一軸または二軸延伸フィルムとして使用することも可能である。延伸方法は公知の方法が応用できる。例えば、T−ダイ法にて成形したフィルムの場合、縦延伸(一軸延伸)はロール方式を用いる。さらに横方向に延伸する際には、テンター方式を使用した逐次二軸延伸法が挙げられる。環状ダイより成形したチューブ状フィルムについては、上記の逐次二軸延伸法以外に縦横同時に延伸できるチューブラー延伸法が用いられる。
共押出しフィルムについても同様の方法で各層を同時に延伸(共延伸)することができる。尚、延伸倍率は縦方向、横方向とも2倍〜4倍、好ましくは2倍〜3.5倍である。
本実施の形態におけるポリアミド樹脂のフィルムの厚みは、好ましくは1μm〜70μmである。フィルムの厚みが過度に小さいと強度が不充分になりやすく、過度に大きいと繰り返し屈曲疲労性が低下しやすい。
フィルムがポリアミド樹脂単層フィルムの場合、より好ましくは5μm〜50μm、更に好ましくは10μm〜30μmであり、多層フィルムの場合、ポリアミド樹脂層としての厚みは、より好ましくは2μm〜50μm、更に好ましくは5μm〜30μmである。
本実施の形態におけるポリアミド樹脂のフィルムは、印刷性の改良や、ラミネート性(接着性)の改良のために片面、または両面にコロナ処理した後使用することもできる。
本実施の形態では、射出成形方法により、所望の形状に成形されたポリアミド樹脂の射出成形品を得ることができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に限定されるものではない。
[アミノ酸分析]
日立アミノ酸分析計L−8900を用いて、リジン、アルギニン等のアミノ酸分析を行った。先ず、試料溶液を限外濾過(MWCO 10,000)して、濾液を分析試料とした。分析条件は生体アミノ酸分離条件、分析法はニンヒドリン発色法(570nm、440nm)とした。標準品には和光アミノ酸混合液ANII型及びB型を希釈したものを用い、試料注入量は10μLとした。定量計算として、Proは440nm、他のアミノ酸は570nmのピーク面積から一点外部標準法にてアミノ酸含量を算出した。
[相対粘度(η)]
試料を98%濃硫酸に溶解して濃度0.01g/mlとし、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行い、(試料溶液の落下時間)/(濃硫酸の落下時間)を相対粘度(η)とした。
[DSC(示差走査熱量測定)]
セイコー電子工業製ロボットDSCを用い、窒素雰囲気下、試料約5mgを採取し、次の条件で測定した。
ポリアミド樹脂を完全に融解させて3分間保持した後、20℃/分の降温速度で、30℃まで降温したときに現れる発熱ピークの温度(降温結晶化温度Tc)と、これに続いて、30℃で3分間保持した後、30℃から20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点Tm)を求めた。吸熱ピークが複数の場合は、最も高い温度を融点Tmとした。
[静止摩擦係数(滑り性)]
相対湿度65%、温度23℃の条件下、平行移動式により静止摩擦係数を測定した。
[F/E(フィッシュアイ)数]
ポリアミド樹脂原料を、押出機シリンダー径が30mmφのT−ダイ式製膜機を用いて40μm厚みのポリアミド樹脂フィルムを製膜する。製膜条件は、押出機のシリンダー設定温度が280℃、ポリアミド樹脂フィルムを巻き取る冷却ロール温度が90℃、吐出量が2kg/時である。
面積が900cm中における、大きさが50μm以上の粒状欠陥をフィッシュアイとし、当該フィッシュアイの数を数えた(単位:個/900cm)。
[数平均分子量]
(1)末端アミノ基
ポリアミド樹脂の試料0.1g〜2gを正確に秤量し、フェノール50ml中に溶解した後、自動滴定装置(三菱化学株式会社製、GT−06)を用いて0.1N塩酸で滴定し、算出した(単位:eq/g)。
(2)末端カルボキシル基
ポリアミド樹脂の試料0.1g〜2gを正確に秤量し、ベンジルアルコール50ml中に溶解した後、自動滴定装置(三菱化学株式会社製、GT−06)または通常のビュレット型滴定装置を用いて0.1N水酸化ナトリウムで滴定し算出した(単位:eq/g)。
(3)数平均分子量
上記(1)、(2)の方法で求めた末端の総数から次式に従って算出した。
Figure 0005589254
[スパイラル流動長]
(スパイラルフロー試験片の成形)
日本製鋼所社製J75EII型射出成形機を使用し、樹脂温度265℃、金型温度75℃、射出圧力50MPa、スパイラルフロー試験片厚み3mmにて行った。スパイラルフロー試験片の長さを測定し、スパイラル流動長とした(単位:mm)。
[リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)増強株の作製]
(A)大腸菌DNA抽出
LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5gを蒸留水1Lに溶解]10mLに、大腸菌(Eschericia coli)JM109株を対数増殖期後期まで培養し、得られた菌体を10mg/mLのリゾチームを含む10mM NaCl/20mM トリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。
次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10℃〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15,000×g、2分間)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mM トリス緩衝液(pH7.5)−1mM EDTA・2Na溶液5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
(B)cadAのクローニング
大腸菌cadAの取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大腸菌K12−MG1655株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA(配列番号1(配列;GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG)及び配列番号2(配列;ACCAAGCTGATGGGTGAGATAGAGAATGAGTAAG))を用いたPCRによって行った。
(反応液組成)
鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mMMgSO、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
(反応温度条件)
DNAサーマルサイクラー(MJResearch社製PTC−200)を用い、94℃で20秒間、60℃で20秒間、72℃で2.5分間からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒間、最終サイクルの72℃での保温は10分間とした。
図1は、cadAのクローニングの手順を説明する図である。
図1に示すように、PCR反応終了後、増幅産物をエタノール沈殿により精製した後、制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断した。このDNA標品を、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することによりcadAを含む約2.6kbの断片を検出し、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて目的DNA断片の回収を行った。
回収したDNA断片を、大腸菌プラスミドベクターpUC18(宝酒造製)を制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断して調整したDNA断片と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAを用いて大腸菌(JM109株)を形質転換した。
この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mL アンピシリン、0.2mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)及び50μg/mL X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断することにより、約2.5kbの挿入断片が認められることを確認し、これをpCAD1、pCAD1を含む大腸菌株をJM109/pCAD1とそれぞれ命名した。
[カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製(1)]
以下の実施例で使用した反応液(カダベリン・アジピン酸塩水溶液)は、cadA増幅株を用い、リジン・アジピン酸塩を原料とし、以下の方法で調製した。
(1)cadA増幅株の培養
E.coli JM109/pCAD1をLB培地入りフラスコ10本で前培養した後、1Lの培養液を99LのLB培地が入った200L容ジャーファーメンターに接種し、通気量0.5vvm、35℃、250rpmで通気撹拌培養を行った。
培養開始6時間後、この培養液全量を、3mの2×LB培地が入った5m容培養タンクに接種して更に培養を行った。5m容培養タンクでの培養条件は、通気量0.5vvm、35℃であった。撹拌回転数は溶存酸素濃度が十分高い値になるように60rpm〜100rpmの範囲で調節した。培養4時間目に、滅菌したIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を終濃度で0.5mMになるように添加し、その後14時間培養を継続した。
(2)菌体の分離
6,400rpm、フィード速度750L/hrの条件下で、アルファラバル分離機により培養液からの菌体回収を行った。回収された菌体の湿重量は36.9kgであった。この湿菌体を10mMの酢酸ナトリウム溶液160Lに懸濁した後、15,000rpm、フィード速度1.0L/minの条件下でシャープレス遠心機により再度菌体回収を行い、18.7kgの湿菌体を取得した。
(3)カダベリン・アジピン酸塩の製造
50%(w/v)リジンベース溶液(協和醗酵工業株式会社製)にpHが6.0となるようにアジピン酸を添加して、リジン・アジピン酸塩の濃厚溶液を調製した。リジン濃度で60g/Lとなるように基質溶液(3m)を作成し、5m容培養タンクにはり込んだ。ピリドキサルリン酸を0.1mMとなるように基質溶液に添加し、さらにE.coli JM109/pCAD1の菌体をOD660が0.5になるように添加して反応を開始した。
反応条件は、37℃、0.5vvm通気、70rpmとした。反応中の溶液のpHは、250kgのアジピン酸をイオン交換水400Lに懸濁したスラリーを添加し、6.5になるように制御した。
また、リジン濃度318g/Lの基質濃厚溶液(600L)を開始から約130L/hで連続的にフィードし、約4.5時間で全量を添加した。さらに反応を継続して計22時間反応させた。
反応終了時には、リジン残存濃度が0.03g/L以下であり、ほぼ100%のリジンがカダベリンに変換されていた。
反応後の溶液(約4m)は、菌体の不活化処理(80℃、30min)を実施したのち、分子量13,000以上をカットするUF膜モジュールACP−3053(旭化成工業株式会社製)を通して高分子量体の不純物除去を行った。
UF処理による回収率は99.3%であった。以上のようにして、ほぼカダベリンとアジピン酸をほぼ等モル含むカダベリン・アジピン酸塩水溶液を取得した。
[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)]
(1)活性炭による脱色
直径700mmの活性炭塔に三菱化学カルゴン株式会社製活性炭MM−11(105kg、約440L)を仕込み、2日間脱塩水を通水した。次に、前記カダベリン・アジピン酸塩水溶液(約4m)を1.32m/hの速度で通液し、最後に500Lの脱塩水を通水した。初期460Lをパージした後、活性炭処理したカダベリン・アジピン酸塩水溶液を採取した。
活性炭処理前はカダベリン・アジピン酸塩水溶液4076.5kg、含有するカダベリン・アジピン酸塩603.9kgであった。活性炭処理後はカダベリン・アジピン酸塩水溶液5029kg、含有するカダベリン・アジピン酸塩603.7kgであった。
(2)濃縮
PPプリーツカートリッジフィルターTCP−JXを通して、前記活性炭処理後のカダベリン・アジピン酸塩水溶液を2m撹拌槽に仕込み、ジャケット温度110℃、内温57℃、真空度140Torr〜150Torrにて濃縮を開始し、適宜、活性炭処理後のカダベリン・アジピン酸塩水溶液を仕込みながら濃縮を行った。
濃縮液の重量は918.4kg、カダベリン・アジピン酸塩濃度は63.5重量%であった。
尚、上記濃縮液等のカダベリン・アジピン酸塩水溶液中のカダベリン濃度は、1N−HCl水溶液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量から算出した。同様に上記濃縮液等のカダベリン・アジピン酸塩水溶液中のアジピン酸濃度は、1N−NaOH水溶液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量から算出した。滴定には、自動滴定装置(三菱化学株式会社製GT−06型)を使用した。
(3)晶析
次に、同一の2m撹拌槽にて晶析を行った。撹拌翼は3枚後退翼、撹拌速度は40rpm、降温速度は8℃/hである。
内温37.4℃のときに、予め作成したカダベリン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温10.5℃で晶析終了として、カダベリン・アジピン酸塩スラリーを得た。尚、種晶としてのカダベリン・アジピン酸塩は、本実施例に準じてラボスケールにて準備した。
(4)遠心濾過
直径1.22mの遠心濾過器を用い、前記カダベリン・アジピン酸塩スラリーを3回に分けて遠心濾過した。回転数は980rpm、母液振り切り時間は15分、母液振り切り後に10℃の脱塩水約12kg(脱塩水約12kgは、予想wetケーキ重量の約20重量%分)をシャワー状に振りかけて洗浄し、その脱塩水の振り切り時間は15分間とした。
1番晶として得られたwetケーキは194.3kg(カダベリン・アジピン酸塩として165.2kg、濃縮液に対する晶析率は28.3重量%)であった。遠心濾過後に回収した1番母液は644kg、同じく回収した1番洗浄水は91.1kg(カダベリン・アジピン酸塩が溶けて量が増えた)であった。
尚、上記カダベリン・アジピン酸塩重量は、wetケーキの水分量を水分計(三菱化学株式会社製、電量滴定式水分測定装置CA−06型、及び水分気化装置VA−06型)にて測定して算出した。
(5)2番晶
前記回収した1番母液と1番洗浄水とを2m撹拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以下に示した以外は、前述した(2)濃縮〜(4)遠心濾過と同様の操作により濃縮、晶析、遠心濾過を行った。
2番晶析品としてwetケーキ142.6kg(カダベリン・アジピン酸塩として121.4kg、晶析率30.6重量%)を得た。回収した2番母液は414kg、回収した2番洗浄水は76.3kgであった。
1番晶との相違点として、濃縮工程では、濃縮液の重量は610.5kg、カダベリン・アジピン酸塩濃度は65.0重量%であった。
晶析工程では、内温40℃において、予め作成したカダベリン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温10.0℃で晶析を終了した。遠心濾過工程では、カダベリン・アジピン酸塩スラリーを2回に分けて遠心濾過を行い、母液振り切り後に10℃の脱塩水約16kgをシャワー状に振りかけて洗浄した。
(6)3番晶析
前記回収した2番母液と2番洗浄水を、2m撹拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以下に示した以外は、前述した(2)〜(4)と同様の操作により濃縮、晶析、遠心濾過を行った。
3番晶析品としてwetケーキ80.4kg(カダベリン・アジピン酸塩として68.2kg、晶析率24.5重量%)を得た。回収した3番母液と3番洗浄水の合計は418kgであった。
1番晶との相違点として、濃縮工程では、濃縮液の重量は421.5kg、カダベリン・アジピン酸塩濃度は66.0重量%であった。晶析工程では、内温40℃において、予め作成したカダベリン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温12.0℃で晶析を終了した。
遠心濾過工程では、カダベリン・アジピン酸塩スラリーを2回に分けて遠心濾過を行い、各々母液振り切り後に10℃の脱塩水約10kgをシャワー状に振りかけて洗浄した。
[カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製(2)]
カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製(1)と同様の操作により、カダベリン・アジピン酸塩水溶液(約4m)を取得した。
[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(2)]
カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)の1番晶を得るのと同様の操作を実施しており、相違点のみを以下に示す。
(1)活性炭による脱色
カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)の1番晶を得るのと同様にして、活性炭処理後のカダベリン・アジピン酸塩水溶液5,001kg、含有するカダベリン・アジピン酸塩601.0kgを得た。
(2)濃縮
カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)の1番晶を得るのと同様にして、濃縮液833.5kgを得た。カダベリン・アジピン酸塩濃度は70.0重量%であった。
(3)晶析
カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)の1番晶を得るのと同様にして、内温50℃において、予め作成したカダベリン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温11.2℃で晶析終了として、カダベリン・アジピン酸塩スラリーを得た。
(4)遠心濾過
カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)の1番晶を得るのと同様にして、前記カダベリン・アジピン酸塩スラリーを5回に分けて遠心濾過した。
1番晶として得られたwetケーキは330.2kg(カダベリン・アジピン酸塩として283.3kg、晶析率48.6重量%)であった。遠心濾過後に回収した1番母液は387.5kg、同じく回収した1番洗浄水は155.8kgであった。
(5)2番晶
前記回収した1番母液と1番洗浄水を、2m撹拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以下に示した以外は(2)〜(4)と同様にして濃縮、晶析、遠心濾過を行った。2番晶析品としてwetケーキ170.4kg(カダベリン・アジピン酸塩として145.8kg、晶析率45.5重量%)を得た。
1番晶との相違点として、濃縮工程では、濃縮液の重量は452.7kg、カダベリン・アジピン酸塩濃度は70.8重量%であった。晶析工程では、内温50.3℃において、予め作成したカダベリン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温10.4℃で晶析を終了した。遠心濾過工程では、カダベリン・アジピン酸塩スラリーを2回に分けて遠心濾過を行い、母液振り切り後に10℃の脱塩水約18kgをシャワー状に振りかけて洗浄した。
[実施例1]
<カダベリン・アジピン酸塩の主な晶析条件>
上記カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶において、晶析前のカダベリン・アジピン酸塩濃度(単位:wt%)、晶析率(単位:%)、晶析回数(単位:回)を表1に示す。
<カダベリン・アジピン酸塩のアミノ酸分析>
上記カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶のアミノ酸分析を行った。結果を表1に示す。
<ポリアミド樹脂の製造>
上記カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶25kgに水25kgを添加した後、亜燐酸1.25gを添加し、窒素雰囲気下で混合物を完全に溶解させ、原料水溶液を得た。
プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。
次に、オートクレーブ内の圧力を除々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で反応終了とした。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド樹脂を得た。相対粘度(η)は3.51であった。
<フィルム成形>
得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、平均粒子径が3.0μmのタルク0.03重量部、及びエチレンビスステアリン酸アマイド(花王株式会社製、カオーワックスEB−FF)0.1重量部をドライブレンドして得たポリアミド樹脂組成物を原料として、押出機シリンダ径40mmのT−ダイ式製膜機を用い、押出機シリンダ設定温度260℃、冷却ロール温度90℃にて、厚み25μmのフィルムを製膜した。
製膜開始後、1時間目のフィルムを用い、耐熱性(融点)、滑り性(静止摩擦係数)、F/E(フィッシュアイ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の2番晶に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作により、アミノ酸分析、ポリアミド樹脂の取得(相対粘度(η)3.52)、フィルム成形、及びその評価を行った。
その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主な晶析条件を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の3番晶に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作により、アミノ酸分析、ポリアミド樹脂の取得(相対粘度(η)3.52)、フィルム成形、及びその評価を行った。
その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主な晶析条件を表1に示す。
[実施例4]
<ポリアミド樹脂の製造>
重合終了時の撹拌動力を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂を取得(相対粘度(η)2.72)した。
得られたポリアミド樹脂を用いて、末端アミノ基、末端カルボキシル基を測定して数平均分子量を算出した。結果を表1に示す。
<スパイラルフロー試験片の成形>
得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、結晶核剤として平均粒子径3.0μmのタルク0.03重量部をドライブレンドして得たポリアミド樹脂組成物を原料として、スパイラルフロー試験片の成形を行った。
成形は、日本製鋼所社製J75EII型射出成形機を使用し、樹脂温度265℃、金型温度75℃、射出圧力50MPa、スパイラルフロー試験片厚み3mmにて行った。スパイラル流動長を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(2)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、アミノ酸分析、ポリアミド樹脂の取得(相対粘度(η)3.54)、フィルム成形、及びその評価を行った。
その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主な晶析条件を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(2)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩の2番晶に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、アミノ酸分析、ポリアミド樹脂の取得(相対粘度(η)3.56)、フィルム成形、及びその評価を行った。
その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主な晶析条件を表1に示す。
[比較例3]
<ポリアミド樹脂の製造>
重合終了時の撹拌動力を変更した以外は、比較例1と同様にしてポリアミド樹脂を取得(相対粘度(η)2.82)した。得られたポリアミド樹脂を用いて、末端アミノ基、末端カルボキシル基を測定して数平均分子量を算出した。結果を表1に示す。
<スパイラルフロー試験片の成形>
実施例4と同様にして、スパイラルフロー試験片の成形を行った。スパイラル流動長を表1に示す。
Figure 0005589254
以上、説明したように、本発明のカダベリン塩は、不純物であるリジン、アルギニン等の3官能以上の有機物含有量が少ない。そのため、これを原料にしてなるポリアミド樹脂は、架橋等によるゲルの発生が少なく、フィルム、射出成形品、繊維、モノフィラメント等に極めて好適に使用することが可能である。具体的には、著しくフィッシュアイが少なく表面外観に優れたポリアミド樹脂フィルム、繊維、モノフィラメントを得る事が可能であり、且つ、射出成形時の流動性が著しく優れるものである。
さらにバイオマス由来の原料を用いることが可能であるため、地球温暖化の防止や循環型社会を形成する上で極めて有効である。
cadAのクローニングの手順を説明する図である。

Claims (3)

  1. カダベリン塩水溶液の晶析により得られ、カダベリン塩の晶析率が10重量%〜35重量%であり、前記カダベリン塩水溶液中の前記カダベリン塩の濃度が、50重量%〜67重量%であることを特徴とするカダベリン塩の製造方法。
  2. 前記カダベリン塩水溶液中の前記カダベリン塩が、カダベリン・アジピン酸であることを特徴とする請求項に記載のカダベリン塩の製造方法。
  3. カダベリンが、リジンからリジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは当該細胞の処理物を用いて得られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカダベリン塩の製造方法。
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