請求項1に記載の光ピックアップ装置は、第1波長λ1の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(λ2>λ1)の第2光束を射出する第2光源と、対物レンズと、少なくとも前記第1光束と前記第2光束が通過するカップリングレンズと、前記カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータとを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有する第2光ディスクの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置であって、
前記対物レンズの光学面は、中央領域と、前記中央領域の周りの中間領域とを少なくとも有し、
前記中央領域は第1光路差付与構造を有し、
前記中間領域は第2光路差付与構造を有し、
前記対物レンズは、前記中央領域を通過する前記第1光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物レンズは、前記中間領域を通過する前記第1光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、
前記第1基礎構造は、前記第1基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記Xは、奇数の整数であり、
前記第1基礎構造はブレーズ型構造であり、
前記第2基礎構造は、前記第2基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記Lは、偶数の整数であり、
前記第2基礎構造はブレーズ型構造であり、
前記第1光束が通過するときは、前記アクチュエータによって前記カップリングレンズが光軸方向に変位可能とされており、
前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生を行う際に前記第2光束が通過するときには、前記カップリングレンズは、光軸方向の位置を固定されていることを特徴とする。
請求項2に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記光ピックアップ装置は、第3波長λ3(λ3>λ2)の第3光束を射出する第3光源を有し、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生を行い、
前記対物レンズの光学面は、前記中間領域の周りに周辺領域を有し、
前記対物レンズは、前記中央領域を通過する前記第3光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記第1基礎構造は、前記第1基礎構造を通過した第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第2基礎構造は、前記第2基礎構造を通過した第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすることを特徴とする。
例えば、複数の情報記録層を有する第1光ディスクに対応するために、第1光ディスクの使用時には、カップリングレンズを光軸方向に変位して、各情報記録層への記録/再生に対応させることが考えられる。そのような場合、既にカップリングレンズを光軸方向に変位させる機能は必須であるが、第2光ディスク使用時においては、カップリングレンズを光軸方向に変位させず、固定させておきたい、という場合がある。その理由としては、第1光ディスク使用時にはフレアが発生しないが、第2光ディスク使用時にはフレアが発生するため、カップリングレンズを変位させることにより、そのフレアの収差が変化し、結果としてそのフレアが記録/再生に悪影響を与える可能性が生じるという理由や、第2光ディスクの種類を判別するために、カップリングレンズの初期位置を常に一定にしておきたいという理由や、単純にドライブの方でカップリングレンズを変位させるためのファームウェアのコストを少しでも削減したいという理由などが挙げられる。そのような課題に対して、本発明にかかる対物レンズを利用すれば、第2光ディスク使用時の温度特性や波長特性を良好にすることが可能となる。その結果として、第2光ディスク使用時にカップリングレンズを光軸方向に変位させるべき要因が解消し、カップリングレンズを固定した状態でも、第2光ディスクの情報記録面に対して情報の記録/再生を良好に行うことができる光ピックアップ装置となるので、上述の課題を解決することができる。
また、BD/DVD/CDの3種類の何れの光ディスクに対しても高い光利用効率を維持できる、光利用効率のバランスが取れた対物レンズを提供することも可能となる。
請求項3に記載の光ピックアップ装置は、請求項1又は2に記載の発明であって、少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることを特徴とする。
更に本発明者は、青紫色レーザの光束における回折次数が奇数次数となる基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保することが可能となることも見出した。さらに、第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた前記第1光路差付与構造において、光軸方向の段差量を低減でき、それにより波長変動時の回折効率の低下を抑制できる。
請求項4に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明であって、
前記中間領域は、ブレーズ型構造である第3基礎構造とブレーズ型構造である第4基礎構造とを重畳させた第2光路差付与構造を有し、
前記第3基礎構造は、前記第3基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第3基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第4基礎構造は、前記第4基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第4基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすることを特徴とする。
第1基礎構造と第3基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数を一致させ、且つ第2基礎構造と第4基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数を一致させることで、中央領域と中間領域を通過する光束について、球面収差を連続と出来、その結果、温度や波長変化時においても、高次収差の発生を抑えることができ好ましい。
請求項5に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明であって、X,Y,L,Mは、それぞれ、
|X|=1
|Y|=1
|L|=2
|M|=1
を満たすことを特徴とする。
互換を行う基礎構造として、1/1/1(第1光束、第2光束、及び第3光束のいずれにおいても、1次回折光を最も多く発生)を第1基礎構造とし、2/1/1(第1光束において2次回折光を最も多く発生し、第2光束及び第3光束においては、1次回折光を最も多く発生)を第2基礎構造とする組み合わせを選択すると、段差量(段差の光軸方向の高さ)の低いブレーズ構造を利用することで波長や温度変化時の効率低下を防止でき、影の効果や製造誤差に起因する光利用効率の低下も抑制できるため好ましく、また、3波長全てが高い回折効率を有するという点でも好ましい。
請求項6に記載の光ピックアップ装置は、請求項2に記載の発明であって、前記第2光路差付与構造を通過した前記第3光束は、前記第3光ディスクの情報記録面でオーバーの球面収差を発生させることを特徴とする。
例えばCD使用時のフレアをオーバーとすると、DVDの使用時の温度特性(温度変化時の球面収差量の変化)も波長特性(波長変化時の球面収差量の変化)も良好にすることができ、さらに、BDの使用時の波長特性も良好にできるため好ましい。尚、図3(a)に、フレアがオーバーな球面収差の例を示し、(b)にフレアがアンダーな球面収差の例を示す。
請求項7に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明であって、
前記中間領域は、ブレーズ型構造である第3基礎構造とブレーズ型構造である第4基礎構造とを重畳させた第2光路差付与構造を有し、
前記第3基礎構造は、前記第3基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第3基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第4基礎構造は、前記第4基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第4基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
X,Y,L,Mは、それぞれ、
|X|=1
|Y|=1
|L|=2
|M|=1
を満たし、
前記第1基礎構造、前記第2基礎構造、前記第3基礎構造及び前記第4基礎構造のピッチは、基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向いている場合は正の符号とし、基礎構造の段差が光軸の方向を向いている場合は負の符号としたときに、
前記中央領域と前記中間領域との境界を挟んで、前記第2基礎構造の最も前記境界に近い位置のピッチP2、及び、前記第4基礎構造の最も前記境界に近い位置のピッチP4は、その符号を考慮して、以下の式(1)を満たすことを特徴とする。
P4−P2<0 (1)
但し、
前記基礎構造を定義する光路差関数をΦ(h)=Σ(C2ih2i×λ×m/λB)で表したとき、
ピッチP(h)=λB/(Σ(2i×C2i×h2i-1))とする。
ここで、λ:使用波長、m:回折次数、λB:製造波長、h:光軸から光軸垂直方向の距離である。
以下、本発明について説明するが、便宜上、第1光ディスクをBD、第2光ディスクをDVD、第3光ディスクをCDとして説明する。第1基礎構造と第3基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数を一致させ、且つ第2基礎構造と第4基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数を一致させることで、中央領域と中間領域を通過する光束について、球面収差を連続と出来、その結果、温度や波長変化時においても、高次収差の発生を抑えることができ好ましい。しかしながら、更に、中央領域又は中間領域に、CD使用時にフレア出しを行うための基礎構造を重畳させることなく、CD使用時のフレア出しを、どのようにして行うかという問題が残る。
先ず、本発明者は、互換を行う基礎構造として、1/1/1(第1光束、第2光束、及び第3光束のいずれにおいても、1次回折光を最も多く発生)を第1及び第3基礎構造とし、2/1/1(第1光束において2次回折光を最も多く発生し、第2光束及び第3光束においては、1次回折光を最も多く発生)を第2及び第4の基礎構造とする組み合わせが好ましいことを見出した。その理由は、第一に、段差量(段差の光軸方向の高さ)の低いブレーズ構造を利用することで波長や温度変化時の効率低下を防止でき、影の効果や製造誤差に起因する光利用効率の低下も抑制できること、第二に、3波長全てが高い回折効率を有すること、が挙げられる。さらに、これらの2つの基礎構造において、境界を挟んで中央領域側のピッチと中間領域側のピッチとの大小関係と、段差の向きとの関係とをある関係に規定することにより、第3の光ディスク使用時に中間領域を通過した光束にオーバーの球面収差を与えることができ、他の基礎構造を重畳することなくフレア出しを行えることを発見した。即ち、中央領域におけるBD/DVD/CD互換を、(a)凸レンズである対物レンズの母非球面で生じたオーバーな球面収差、(b)中央領域の第1基礎構造及び中間領域の第3基礎構造のアンダーな球面収差、(c)中央領域の第2基礎構造及び中間領域の第4基礎構造のアンダーな球面収差を足しわせることで行う場合、中央領域と中間領域との境界を挟んで、第2基礎構造の最も境界に近い位置のピッチP2、及び、第4基礎構造の最も境界に近い位置のピッチP4が、P4−P2<0を満たすことにより、中間領域のパワーが中央領域よりパワーが小さくなるため、中央領域に比して、中間領域においては球面収差補正効果が小さい((c)の球面収差が小さい)ことになる。よって、中間領域においては(a)のオーバーな球面収差が残留し、CD使用時にフレア出しさせることができるのである。
CD使用時にオーバーな球面収差を発生させる、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせについて説明する。図12、図13、図14は、参考例1〜3について、縦軸にピッチP(mm)を取り、横軸に光軸からの高さh(mm)を示したグラフであり、境界BNを境に左側が中央領域、右側が中間領域を表している。ここで、便宜上、第2基礎構造と第4基礎構造を(2/1/1)回折構造と称する。尚、ピッチの符号が負(−)である場合、それは基礎構造の段差が光軸側を向いていることを示し、ピッチの符号が正(+)である場合、それは基礎構造の段差が光軸と反対側を向いていることを示す。
本発明者は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1を所定範囲に分けて、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを検討した。図13は、焦点距離f1が1.0〜1.8mmと非常に短い場合において、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせの一例を示している。より具体的には、図13に示す場合、(2/1/1)回折構造では、│P2│>│P4│であり、且つピッチの符号は正である。従って、(2/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4]−[符号込みの中央領域の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2]=P4−P2<0となる。つまり、(1)式を満たす。
図12は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1が1.2〜2.5mmと比較的短い場合において、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせの一例を示している。より具体的には、図12に示す(2/1/1)回折構造では、│P2│<│P4│であり、且つピッチの符号は負である。従って、(2/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4]−[符号込みの中央領域の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2]=(−│P4│)−(−│P2│)<0となる。つまり、(1)式を満たす。
図14は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1が2.0〜3.5mmと比較的長い場合において、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを示している。より具体的には、図14に示す(2/1/1)回折構造では、│P2│<│P4│であり、且つピッチの符号は負である。従って、(2/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第4基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP4]−[符号込みの中央領域の第2基礎構造の境界に最も近い位置のピッチP2]=(−│P4│)−(−│P2│)<0となる。つまり、(1)式を満たす。即ち、焦点距離f1の大きさに関わらず、式(1)を満たすことで、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させることができることが分かる。
このように境界に最も近い位置のピッチの符号は焦点距離に対して変化するが、これはCD使用時のワーキングディスタンスを確保するために2/1/1構造の近軸パワーを利用しているためであり、焦点距離が短いほど正の近軸パワーが大きくなるためである。
さらに、上述の本発明の構成によって、CD使用時のフレアをオーバーとできるため、DVDの使用時の温度特性(温度変化時の球面収差量の変化)も波長特性(波長変化時の球面収差量の変化)も良好にすることができ、さらに、BDの使用時の波長特性も良好にできることを、本発明者は見出した。これにより、DVD使用時にカップリングレンズを固定して用いることができる。
即ち、本発明によれば、3種類の異なる光ディスクを互換使用可能であり、かつ中間領域を通過した第3光束をフレアとすることで第3光ディスクに対して適切に集光スポットを形成できる対物レンズでありながら、中央領域と中間領域において1/1/1と2/1/1の基礎構造を重畳して用いることで、温度特性と波長特性とのバランスを確保できるように対物レンズを設計できる設計自由度を高めることができる。中央領域と中間領域の両方において、1/1/1と2/1/1という同じ回折次数の基礎構造を用いることで、温度や光源の波長が変化した際に、球面収差が不連続となることが抑制され高次球面収差が発生することを抑制できる。さらに、中間領域に第3光束をフレア化する回折構造等を重畳する必要がなくなり、成形が容易で製造容易性が向上し、結果として光の利用効率を高めることができる。
請求項8に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、
前記中間領域は、ブレーズ型構造である第3基礎構造とブレーズ型構造である第4基礎構造とを重畳させた第2光路差付与構造を有し、
前記第3基礎構造は、前記第3基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第3基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第4基礎構造は、前記第4基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第4基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
X,Y,L,Mは、それぞれ、
|X|=1
|Y|=1
|L|=2
|M|=1
を満たし、
前記第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅をΔT2,前記第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅をΔT4とし、
前記第1基礎構造、前記第2基礎構造、前記第3基礎構造及び前記第4基礎構造の輪帯の幅は、基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向いている場合は正の符号とし、基礎構造の段差が光軸の方向を向いている場合は負の符号としたときに、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1乃至6に記載の対物レンズ。
ΔT4−ΔT2<0 (2)
上記の条件を満たす場合であって、更に、中央領域と中間領域の境界を挟んだ中央領域側の第2基礎構造のピッチと中間領域側の第4基礎構造のピッチの差が大きく、また境界の両側の第2基礎構造と第4基礎構造の輪帯が理想的な形状である場合には、ピッチの差は輪帯幅の差に表れる。(ここでいう理想的な形状とは、1つの輪帯の開始位置と終了位置で付与される位相の差が2πの整数倍又はそれに近い値となるものを指す。ところが、複数の回折構造を重畳する形状の場合、通常、それぞれの回折構造の段差位置の違いが僅かであると、成形加工が難しくなってしまうため、一方の段差位置を他方に一致させるように設計を変更する、あるいは、その中間位置に設定するように設計を変更することから、理想的な形状とならないことがある。)このように、ピッチの差が輪帯幅の差に表れる場合、上述の式(2)を満たすことになる。言い換えると、式(2)を満たせば、必ず式(1)を満たすが、式(1)を満たしたとしても、式(2)を満たさない場合があるということである。
尚、式(2)について以下に、より詳細に説明する。
CD使用時にオーバーな球面収差を発生させる、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせについて説明する。図1は、第2基礎構造及び第4基礎構造の光軸方向断面を模式的に示した図である。ここで、便宜上、第2基礎構造と第4基礎構造を(2/1/1)回折構造と称する。又、中央領域と中間領域との境界をBNとし、第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅を│ΔT2│,第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅を│ΔT4│とする。更に、基礎構造の段差が光軸側(図1で下側)を向いている場合のピッチの符号を負(−)、基礎構造の段差が光軸と反対側(図1で上側)を向いている場合のピッチの符号を正(+)とする。
本発明者は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1を所定範囲に分けて、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを検討した。図1(a)は、焦点距離f1が1.0〜1.8mmと非常に短い場合において、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを示している。より具体的には、図1(a)に示す(2/1/1)回折構造では、│ΔT2│>│ΔT4│であり、且つピッチの符号は正である。従って、(2/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4]−[符号込みの中央領域の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2]=ΔT4−ΔT2<0となる。つまり、(2)式を満たす。尚、(1)式も満たす。
図1(b)は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1が1.2〜2.5mmと比較的短い場合において、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを示している。より具体的には、図1(b)に示す(2/1/1)回折構造では、│ΔT2│<│ΔT4│であり、且つピッチの符号は負である。従って、(2/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4]−[符号込みの中央領域の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2]=(−│ΔT4│)−(−│ΔT2│)<0となる。つまり、(2)式を満たす。また、(1)式も満たす。
図1(c)は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1が2.0〜3.5mmと比較的長い場合において、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2と中間領域側の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを示している。より具体的には、図1(c)に示す(2/1/1)回折構造では、│ΔT2│<│ΔT4│であり、且つピッチの符号は負である。従って、(2/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第4基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT4]−[符号込みの中央領域の第2基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT2]=(−│ΔT4│)−(−│ΔT2│)<0となる。つまり、(2)式を満たす。(1)式も満たす。即ち、焦点距離f1の大きさに関わらず、式(2)を満たすことで、CD使用時にオーバーな球面収差を発生させることができることが分かる。
このように境界に最も近い輪帯の幅ΔT(同様にピッチPも)の符号は焦点距離に対して変化するが、これはCD使用時のワーキングディスタンスを確保するために2/1/1構造の近軸パワーを利用しているためであり、焦点距離が短いほど正の近軸パワーが大きくなるためである。
(2)式を満たすことで、第2基礎構造と第4基礎構造による回折パワーを大きく変えるため、CDの情報記録面におけるフレアを特に飛ばすことができる。
更に、前記中央領域と前記中間領域との境界を挟んで、前記第1基礎構造の最も前記境界に近い位置のピッチP1、及び、前記第3基礎構造の最も前記境界に近い位置のピッチP3は、その符号を考慮して、以下の式(3)を満たすと好ましい。
P3−P1<0 (3)
こうすることにより、第3光ディスク使用時のフレア出しを、重畳する基礎構造のそれぞれの回折パワーを変えることで行うため、個々のパワー変化量は小さくすることができる。つまり、第3光ディスク使用時にオーバーのフレア出しを行うために、2/1/1構造のパワーを変えるだけでなく、1/1/1構造のパワーも変えてフレア出しを行うため、2/1/1構造,1/1/1構造、それぞれのパワー変化量を小さく抑えつつ、第3光ディスク使用時のオーバーのフレア出しを可能とできる。このため、波長や温度変化時に収差の不連続量が小さく、高次収差の発生を抑えることができる。
中央領域におけるBD/DVD/CD互換を、(a)凸レンズである対物レンズの母非球面で生じたオーバーな球面収差、(b)中央領域の第1基礎構造及び中間領域の第3基礎構造のアンダーな球面収差、(c)中央領域の第2基礎構造及び中間領域の第4基礎構造のアンダーな球面収差を足しわせることで行う場合、中央領域と中間領域との境界を挟んで、第2基礎構造の最も境界に近い位置のピッチP2、及び、第4基礎構造の最も境界に近い位置のピッチP4が、P4−P2<0を満たし、さらに、P3−P1<0を満たすことにより、中間領域のパワーが中央領域よりパワーがさらに小さくなるため、中央領域に比して、中間領域においては球面収差補正効果が小さい((b)、(c)の球面収差が小さい)ことになる。よって、中間領域においては(a)のオーバーな球面収差がより大きく残留し、CD使用時により遠くにフレア出しさせることができるのである。
この関係について、請求項7と同様な観点から、中央領域と中間領域の境界を挟んだ中央領域側の第1基礎構造のピッチと中間領域側の第3基礎構造のピッチの差が大きく、また境界の両側の第1基礎構造と第3基礎構造の輪帯が理想的な形状であって、ピッチの差が輪帯幅の差に表れた場合に基づいて、以下に説明する。
図2は、第1基礎構造及び第3基礎構造の光軸方向断面を模式的に示した図である。ここで、便宜上、第1基礎構造と第3基礎構造を(1/1/1)回折構造と称する。又、中央領域と中間領域との境界をBNとし、第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅を│ΔT1│、第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅を│ΔT3│とする。更に、基礎構造の段差が光軸側(図2で下側)を向いている場合のピッチの符号を負(−)、基礎構造の段差が光軸と反対側(図2で上側)を向いている場合のピッチの符号を正(+)とする。
本発明者は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1を所定範囲に分けて、中央領域側の第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT1と中間領域側の第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT3との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを検討した。図2(a)は、焦点距離f1が1.0〜1.8mmと非常に短い場合において、(1)式又は(2)式の関係と共働してCD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT1と中間領域側の第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT3との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを示している。より具体的には、図2(a)に示す(1/1/1)回折構造では、│ΔT1│>│ΔT3│であり、且つピッチの符号は正である。従って、(1/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT3]−[符号込みの中央領域の第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT1]=ΔT3−ΔT1<0となる。尚、(3)式も満たす。
図2(b)は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1が1.2〜2.5mmと比較的短い場合において、(1)式又は(2)式の関係と共働してCD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT1と中間領域側の第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT3との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを示している。より具体的には、図2(b)に示す(1/1/1)回折構造では、│ΔT1│>│ΔT3│であり、且つピッチの符号は正である。従って、(1/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT3]−[符号込みの中央領域の第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT1]=ΔT3−ΔT1<0となる。また、(3)式も満たす。
図2(c)は、第1光束における対物レンズの焦点距離f1が2.0〜3.5mmと比較的長い場合において、(1)式又は(2)式の関係と共働してCD使用時にオーバーな球面収差を発生させ得る、中央領域側の第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT1と中間領域側の第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT3との大小関係と、段差の向きの関係との組み合わせを示している。より具体的には、図2(c)に示す(1/1/1)回折構造では、│ΔT1│<│ΔT3│であり、且つピッチの符号は負である。従って、(1/1/1)回折構造における[符号込みの中間領域の第3基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT3]−[符号込みの中央領域の第1基礎構造の境界に最も近い輪帯の幅ΔT1]=(−│ΔT3│)−(−│ΔT1│)<0となる。また、(3)式も満たす。即ち、焦点距離f1の大きさに関わらず、上記関係を満たすことで、(1)式又は(2)式の関係と共働してCD使用時にオーバーな球面収差を発生させることができることが分かる。
このように境界に最も近い輪帯の幅ΔT(同様にピッチPも)の符号は焦点距離に対して変化するが、これはCD使用時のワーキングディスタンスを確保するために1/1/1構造の近軸パワーを利用しているためであり、焦点距離が短いほど正の近軸パワーが大きくなるためである。
請求項9に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明であって、前記第1基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化し、
前記第2基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化することを特徴とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、前記第1基礎構造と前記第2基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化するようにしたことで、光ピックアップ装置の温度の上昇により前記対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、前記対物レンズの屈折率の変化による球面収差の変化を補正して、適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できることを見出したのである。これにより、特に対物レンズがプラスチック製である場合に、温度変化時においても安定した性能を維持できる対物レンズを提供することが可能となる。又、DVD使用時にカップリングレンズを固定して用いることができる。
請求項10に記載の対物レンズは、請求項9に記載の発明において、前記第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化し、
前記第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化することを特徴とする。
これにより、少なくとも前記第3基礎構造と前記第4基礎構造とを重ね合わせた前記第2光路差付与構造においても、光ピックアップ装置の温度上昇により前記対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく環境温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、前記対物レンズの屈折率の変化による球面収差の劣化を補正するため、環境温度の変化時により適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できる。
請求項11に記載の対物レンズは、請求項9に記載の発明において、前記第3基礎構造と前記第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化することを特徴とする。
かかる場合、前記第3基礎構造と前記第4基礎構造のうち何れか一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化するので、第2光路差付与構造が、第3基礎構造と第4基礎構造のみからなっていても、CD使用時のフレア出しを容易に行うことが出来る。従って、CD使用時のフレア出しを、単純な形状の第2光路差付与構造で行えるため、影の効果による光利用効率の低下を抑制し、更に、製造誤差による光利用効率の低下も抑制し、結果として光利用効率を向上させることが可能となる。尚、これにより前記中間領域においてはBD使用時の温度特性補正効果が小さくなるが、前記中央領域の第1基礎構造と第2基礎構造が共に長波長において補正不足であるため、温度特性が悪くなりすぎることを防止でき、またBD使用時の波長特性補正効果を大きくすることができる。加えて、DVD使用時においては、DVDの温度特性及び波長特性を共により一層良好にすることができる。そのため、DVD使用時においてコリメータ等のカップリングレンズを固定させることが、より容易に行えるようになる。
請求項12に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至11の何れかに記載の発明であって、前記対物レンズは、プラスチック製の単玉レンズであることを特徴とする
対物レンズがプラスチック製である場合、DVD使用時における温度変化の問題等が大きいが、本発明の光ピックアップ装置を用いることにより、DVD使用時にカップリングレンズを固定していても、良好な記録再生性能を得ることができる。
請求項13に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至12の何れかに記載の発明であって、前記第1光ディスクは複数の情報記録層を有し、前記カップリングレンズが光軸方向に変位することにより、前記第1光ディスクの各情報記録層への記録及び/又は再生を行うことを特徴とする。
請求項14に記載の光情報記録再生装置は、請求項1〜13のいずれかに記載の光ピックアップ装置を有することを特徴とする。
本発明に係る光ピックアップ装置は、第1光源、第2光源、第3光源の少なくとも3つの光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第1光束を第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、第2光束を第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、第3光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、第1光ディスク、第2光ディスク又は第3光ディスクの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
第1光ディスクは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。第2光ディスクは厚さがt2(t1<t2)の保護基板と情報記録面とを有する。第3光ディスクは、厚さがt3(t2<t3)の保護基板と情報記録面とを有する。第1光ディスクがBDであり、第2光ディスクがDVDであり、第3光ディスクがCDであることが好ましいが、これに限られるものではない。なお、第1光ディスク、第2光ディスク又は第3光ディスクは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm 程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3に関しては、以下の条件式(4)、(5)、(6)を満たすことが好ましいが、これに限られない。尚、ここで言う、保護基板の厚さとは、光ディスク表面に設けられた保護基板の厚さのことである。即ち、光ディスク表面から、表面に最も近い情報記録面までの保護基板の厚さのことをいう。
0.050mm ≦ t1 ≦ 0.125mm (4)
0.5mm ≦ t2 ≦ 0.7mm (5)
1.0mm ≦ t3 ≦ 1.3mm (6)
本明細書において、第1光源、第2光源、第3光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1光源から出射される第1光束の第1波長λ1、第2光源から出射される第2光束の第2波長λ2(λ2>λ1)、第3光源から出射される第3光束の第3波長λ3(λ3>λ2)は以下の条件式(7)、(8) を満たすことが好ましい。
1.5・λ1 < λ2 < 1.7・λ1 (7)
1.8・λ1 < λ3 < 2.0・λ1 (8)
また、第1光ディスク、第2光ディスク、第3光ディスクとして、それぞれ、BD、DVD及びCDが用いられる場合、第1光源の第1波長λ1は好ましくは、350nm 以上、440nm以下、より好ましくは、390nm以上、415nm以下であって、第2光源の第2波長λ2は好ましくは570nm以上、680nm以下、より好ましくは、630nm以上、670nm以下であって、第3光源の第3波長λ3は好ましくは、750nm以上、880nm以下、より好ましくは、760nm以上、820nm以下である。
尚,レーザ光源が高周波重畳を行うタイプであると,クロストーク等が発生する危険性が生じるが,軸上色収差を0.9μm/nm以下にすることによって,そのような高周波重畳を行うレーザ光源であっても,クロストークなどの発生を防止できるため好ましい。又,出射される光束の波長スペクトルの半値全幅(ピーク値の半値における波長スペクトルの全幅)が0.5nm以上のレーザ光源(好ましくは波長の異なる3つの光源全て)を用いると,クロストークなどの課題はより大きなものとなるが,軸上色収差を0.9μm/nm以下にすることによって,問題なく使用できるため好ましい。
また、第1光源、第2光源、第3光源のうち少なくとも2つの光源をユニット化してもよい。ユニット化とは、例えば第1光源と第2光源とが1パッケージに固定収納されているようなものをいう。また、光源に加えて、後述する受光素子を1パッケージ化してもよい。
受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物レンズを移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光素子を有していてもよい。
集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズの他にコリメータ等のカップリングレンズを有していることが好ましい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータは、カップリングレンズの一種で、コリメータに入射した光を平行光にして出射するレンズである。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。対物レンズは、二つ以上の複数のレンズ及び/又は光学素子から構成されていてもよいし、単玉のレンズのみからなっていてもよいが、好ましくは単玉の凸レンズからなる対物レンズである。また、対物レンズは、ガラスレンズであってもプラスチックレンズであっても、又は、ガラスレンズの上に光硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂などで光路差付与構造を設けたハイブリッドレンズであってもよい。対物レンズが複数のレンズを有する場合は、ガラスレンズとプラスチックレンズを混合して用いてもよいが、好ましくは単玉のプラスチック製対物レンズである。対物レンズが複数のレンズを有する場合、光路差付与構造を有する平板光学素子と非球面レンズ(光路差付与構造を有していてもいなくてもよい)の組み合わせであってもよい。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
また、対物レンズをガラスレンズとする場合は、ガラス転移点Tgが500℃以下、更に好ましくは400℃以下であるガラス材料を使用することが好ましい。ガラス転移点Tgが500℃以下であるガラス材料を使用することにより、比較的低温での成形が可能となるので、金型の寿命を延ばすことが出来る。このようなガラス転移点Tgが低いガラス材料としては、例えば(株)住田光学ガラス製のK−PG325や、K−PG375(共に製品名)がある。
ところで、ガラスレンズは一般的に樹脂レンズよりも比重が大きいため、対物レンズをガラスレンズとすると、重量が大きくなり対物レンズを駆動するアクチュエータに負担がかかる。そのため、対物レンズをガラスレンズとする場合には、比重が小さいガラス材料を使用するのが好ましい。具体的には、比重が4.0以下であるのが好ましく、更に好ましくは比重が3.0以下であるものである。
加えて、ガラスレンズを成形して製作する際に重要となる物性値の一つが線膨脹係数aである。仮にTgが400℃以下の材料を選んだとしても、プラスチック材料と比較して室温との温度差は依然大きい。線膨脹係数aが大きい硝材を用いてレンズ成形を行った場合、降温時に割れが発生しやすくなる。硝材の線膨脹係数aは、200(10E−7/K)以下にあることが好ましく、さらに好ましくは120以下であることである。
また、対物レンズをプラスチックレンズとする場合は、環状オレフィン系の樹脂材料等の脂環式炭化水素系重合体材料を使用するのが好ましい。また、当該樹脂材料は、波長405nmに対する温度25℃ での屈折率が1.54乃至1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃ -1) が−20×10-5乃至−5×10-5(より好ましくは、−10×10-5乃至−8×10-5)の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。また、対物レンズをプラスチックレンズとする場合、カップリングレンズもプラスチックレンズとすることが好ましい。
脂環式炭化水素系重合体の好ましい例を幾つか、以下に示す。
第1の好ましい例は、下記式(I)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(II)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(III)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有し、前記ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率a(モル%)と、前記ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率b(モル%)との関係がa>bであるブロック共重合体からなる樹脂組成物である。
(式中、R1 は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
(式中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
(式中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
次に、第2の好ましい例は、少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(IV)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(A)と、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(V)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(B)とを含む樹脂組成物である。
〔式中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、括弧内の単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16と、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
〔式中、R19〜R26はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。〕
樹脂材料に更なる性能を付加するために、以下のような添加剤を添加してもよい。
(安定剤)
フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれた少なくとも1種の安定剤を添加することが好ましい。これらの安定剤を適宜選択し添加することで、例えば、405nmといった短波長の光を継続的に照射した場合の白濁や、屈折率の変動等の光学特性変動をより高度に抑制することができる。
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ)−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
これらの各安定剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部であることが好ましい。
(界面活性剤)
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、樹脂組成物の白濁を防止することが可能となる。
界面活性剤の親水基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。
このような界面活性剤としては、より具体的には、例えば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物またはアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、温度、湿度の変動に伴なう成形物の白濁を効果的に抑え、成形物の光透過率を高く維持するという観点から、脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.01〜10質量部添加されることが好ましい。界面活性剤の添加量は脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.05〜5質量部とすることがより好ましく、0.3〜3質量部とすることが更に好ましい。
(可塑剤)
可塑剤は共重合体のメルトインデックスを調節するため、必要に応じて添加される。
可塑剤としては、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、共重合体の透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
これらの樹脂としては、シクロオレフィン樹脂が好適に用いられ、具体的には、日本ゼオン社製のZEONEXや、三井化学社製のAPEL、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のTOPAS、JSR社製ARTONなどが好ましい例として挙げられる。
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、50以上であることが好ましい。
対物レンズについて、以下に記載する。
φ1を、対物レンズの第1光ディスク使用時の有効径(mm)としたときに、以下の式を満たす対物レンズであると、いわゆるスリムタイプの光ピックアップ装置に好適に用いられる。但し、それ以外の光ピックアップ装置に用いても良い。
1.9≦φ1≦3.0 (9)
CD等の第3光ディスクにおけるワーキングディスタンスを確実に確保するという観点では、以下の式を満たすことが好ましい。
2.0≦φ1≦3.0 (9)´
更に対物レンズの少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有する。中央領域は、対物レンズの光軸を含む領域であることが好ましいが、光軸を含む微小な領域を未使用領域や特殊な用途の領域とし、その周りを中心領域(中央領域ともいう)としてもよい。中央領域、中間領域、及び周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図4に示されるように、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。また、対物レンズの中央領域には第一光路差付与構造が設けられ、中間領域には第二光路差付与構造が設けられている。周辺領域は屈折面であってもよいし、周辺領域に第三光路差付与構造が設けられていてもよい。中央領域、中間領域、周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。
対物レンズの中央領域は、第1光ディスク、第2光ディスク及び第3光ディスクの記録/再生に用いられる第1、第2、第3光ディスク共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中央領域を通過する第1光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第2光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、中央領域を通過する第3光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。また、中央領域に設けられた第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過する第1光束及び第2光束に対して、第1光ディスクの保護基板の厚さt1と第2光ディスクの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差/第1光束と第2光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。さらに、第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過した第1光束及び第3光束に対して、第1光ディスクの保護基板の厚さt1と第3光ディスクの保護基板の厚さt3との違いにより発生する球面収差/第1光束と第3光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
対物レンズの中間領域は、第1光ディスク、第2光ディスクの記録/再生に用いられ、第3光ディスクの記録/再生に用いられない第1、第2光ディスク共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中間領域を通過する第1光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中間領域を通過する第2光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、中間領域を通過する第3光束を、第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの中間領域を通過する第3光束は、第3光ディスクの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。図5に示すように、対物レンズを通過した第3光束が第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部SCN、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部SMD、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部SOTを有することが好ましい。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録/再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録/再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。但し、スポット中心部の周りにスポット中間部が存在せずスポット周辺部があるタイプ、即ち、集光スポットの周りに薄く光が大きなスポットを形成する場合も、そのスポット周辺部をフレアと呼んでもよい。つまり、対物レンズの中間領域を通過した第3光束は、第3光ディスクの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましいとも言える。
対物レンズの周辺領域は、第1光ディスクの記録/再生に用いられ、第2光ディスク及び第3光ディスクの記録/再生に用いられない第1光ディスク専用領域と言える。即ち、対物レンズは、周辺領域を通過する第1光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、周辺領域を通過する第2光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せず、周辺領域を通過する第3光束を、第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの周辺領域を通過する第2光束及び第3光束は、第2光ディスク及び第3光ディスクの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。つまり、対物レンズの周辺領域を通過した第2光束及び第3光束は、第2光ディスク及び第3光ディスクの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。
第1光路差付与構造は、対物レンズの中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第2光路差付与構造は、対物レンズの中間領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造が、中間領域の全面に設けられていることである。周辺領域が第3光路差付与構造を有する場合、第3光路差付与構造は、対物レンズの周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第3光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称である。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。本発明の光路差付与構造は回折構造であることが好ましい。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、光路差付与構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
また、本明細書でいう回折構造とは、段差を有し、回折によって光束を収束あるいは発散させる作用を持たせる構造の総称である。例えば、単位形状が光軸を中心として複数並ぶことによって構成されており、それぞれの単位形状に光束が入射し、透過した光の波面が、隣り合う輪帯毎にズレを起こし、その結果、新たな波面を形成することによって光を収束あるいは発散させるような構造を含むものである。回折構造は、好ましくは段差を複数有し、段差は光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、回折構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、回折構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ回折次数の回折光を発生させる回折構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
ところで、光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、一般に、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状) をとり得、光軸を含む断面形状がブレーズ型構造と階段型構造とに大別される。
ブレーズ型構造とは、図6(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということである。尚、図6の例においては、上方が光源側、下方が光ディスク側であって、母非球面としての平面に光路差付与構造が形成されているものとする。ブレーズ型構造において、1つのブレーズ単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図6(a)、(b)参照)また、ブレーズの光軸に平行方向の段差の長さを段差量Bという。(図6(a)参照)
また、階段型構造とは、図6(c)、(d)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、小階段状のもの(階段単位と称する)を複数有するということである。尚、本明細書中、「Vレベル」とは、階段型構造の1つの階段単位において光軸垂直方向に対応する(向いた)輪帯状の面(以下、テラス面と称することもある)が、段差によって区分けされV個の輪帯面毎に分割されていることをいい、特に3レベル以上の階段型構造は、小さい段差と大きい段差を有することになる。
例えば、図6(c)に示す光路差付与構造を、5レベルの階段型構造といい、図6(d)に示す光路差付与構造を、2レベルの階段型構造(バイナリ構造ともいう)という。2レベルの階段型構造について、以下に説明する。光軸を中心とした同心円状の複数の輪帯を含み、対物レンズの光軸を含む複数の輪帯の断面の形状は、光軸に平行に延在する複数の段差面Pa、Pbと、隣接する段差面Pa、Pbの光源側端同士を連結する光源側テラス面Pcと、隣接する段差面Pa、Pbの光ディスク側端同士を連結する光ディスク側テラス面Pdとから形成され、光源側テラス面Pcと光ディスク側テラス面Pdとは、光軸に交差する方向に沿って交互に配置される。
尚、光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。 ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
光路差付与構造が、ブレーズ型構造を有する場合、単位形状である鋸歯状の形状が繰り返された形状となる。図6(a)に示されるように、同一の鋸歯状形状が繰り返されてもよいし、図6(b)に示されるように、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に鋸歯状形状のピッチが長くなっていく形状、又は、ピッチが短くなっていく形状であってもよい。加えて、ある領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側とは逆を向いている形状とし、他の領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側を向いている形状とし、その間に、ブレーズ型構造の段差の向きを切り替えるために必要な遷移領域が設けられている形状としてもよい。なお、このようにブレーズ型構造の段差の向きを途中で切り替える構造にする場合、輪帯ピッチを広げることが可能となり、光路差付与構造の製造誤差による透過率低下を抑制できる。
光路差付与構造が、階段型構造を有する場合、図6(c)で示されるような5レベルの階段単位が、繰り返されるような形状等があり得る。さらに、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に階段単位のピッチが長くなっていく形状や、徐々に階段単位のピッチが短くなっていく形状であってもよい。
また、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造は、それぞれ対物レンズの異なる光学面に設けてもよいが、同一の光学面に設けることが好ましい。更に、第3光路差付与構造を設ける場合も、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造と同じ光学面に設けることが好ましい。同一の光学面に設けることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの光ディスク側の面よりも、対物レンズの光源側の面に設けられることが好ましい。別の言い方では、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの曲率半径の絶対値が小さい方の光学面に設けることが好ましい。
次に、中央領域に設けられる第1光路差付与構造について説明する。第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造を重ね合わせた構造である。第1光路差付与構造は、第1基礎構造と第2基礎構造のみを重ね合わせた構造であることが好ましい。
第1基礎構造は、ブレーズ型構造であることが好ましい。また、第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。但し、|X|=1、|Y|=1、|Z|=1であると好ましい。これを(1/1/1)構造という。これにより、第1基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。
また、第1基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていても良いし、光軸とは逆の方向を向いていてもよい。また、図10(a),(b)のように、中央領域の途中で第1基礎構造の段差の向きが入れ替わっていてもよい。図10(a)は光軸に近い位置では段差が光軸の方を向いているが、途中で段差の向きが入れ替わり、光軸から遠い位置では段差が光軸と逆の方向を向いた例である。図10(b)は光軸に近い位置では段差が光軸と逆の方を向いているが、途中で段差の向きが入れ替わり、光軸から遠い位置では段差が光軸の方向を向いた例である。また、第1基礎構造の段差の向きは、第3基礎構造の段差の向きと一致していることが望ましいが、一致していなくてもよい。「段差が光軸の方向を向いている」とは、図7(a)のような状態を言い、「段差が光軸とは逆の方向を向いている」とは、図7(b)のような状態を言う。
但し、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いていることが好ましい。「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1基礎構造とは、(1/1/1)構造の段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する(1/1/1)構造の段差が、光軸とは逆の方向を向いていることである。
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第1基礎構造は、段差が光軸の方向を向いていてもよい。即ち、図10(b)に示すように、第1基礎構造が光軸付近では段差が光軸とは逆の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では第1基礎構造の段差が光軸の方を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第1基礎構造の全ての段差が光軸とは逆の方向を向いていることである。
このように、第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保することが可能となる。
BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保するという観点からは、第1基礎構造が第1光束に対して近軸パワーを持つことが好ましい。ここで、「近軸パワーを持つ」とは、第1基礎構造の光路差関数を後述する数2式で表した場合、C2が0でないことを意味する。
また、第2基礎構造も、ブレーズ型構造であることが好ましい。第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。但し、|L|=2、|M|=1、|N|=1であると好ましい。これを(2/1/1)構造という。これにより、第2基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸の方向を向いている」とは、図7(a)のような状態を言う。また、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第2基礎構造とは、(2/1/1)構造の段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。好ましくは、少なくとも光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する(2/1/1)構造の段差が光軸の方向を向いていることである。
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第2基礎構造は、段差が光軸とは逆の方向を向いていてもよい。即ち、図10(a)に示すように、第2基礎構造が光軸付近では段差が光軸の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では第2基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第2基礎構造は、全ての段差が光軸の方向を向いていることである。
(1/1/1)構造である第1基礎構造と、(2/1/1)構造である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造にすると、段差の高さを非常に低くできる。従って、より製造誤差を低減させることが可能となり、光量ロスを更に抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動をより抑えることが可能となる。
さらに、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸とは逆の方向を向いている第1基礎構造と、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸の方向を向いている第2基礎構造を重ね合わせることにより、第1基礎構造と第2基礎構造の段差の向きが同じになるように重ね合わせた場合に比べて、重ね合わせた後の段差の高さが高くなることをより一層抑制でき、それに伴い、製造誤差などに因る光量ロスをより抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動もより抑えることが可能となる。
また、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を可能とするだけでなく、BD/DVD/CDの3種類の何れの光ディスクに対しても、高い光利用効率を維持できる光利用効率のバランスが取れた対物レンズを提供することも可能となる。例えば、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を60%以上、波長λ3に対する回折効率を50%以上とする対物レンズを提供することも可能となる。更には、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を70%以上、波長λ3に対する回折効率を60%以上とする対物レンズも提供することができる。加えて、第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、波長が長波長側に変動した際に収差をアンダー(補正不足)の方向に変化させることがより容易に行える。
段差が光軸とは逆を向いている第1基礎構造と段差が光軸の方を向いている第2基礎構造とを重ね合わせた後の第1光路差付与構造の形状と段差量という観点から、(1/1/1)構造である第1基礎構造と、(2/1/1)構造である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造を以下のように表現することができる。少なくとも中央領域の光軸付近に設けられている第1光路差付与構造は、光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸の方向を向いている段差とを共に有し、光軸とは逆の方向を向いている段差の段差量d11と、光軸の方向を向いている段差の段差量d12とが、以下の条件式(16)、(17)を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(16)、(17)を満たすことである。尚、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面の凸レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。下記条件式において上限に1.5を乗じているのは、当該段差量の増加を加味した故である。但し、nは、第1の波長λ1における対物レンズの屈折率を表す。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (16)
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(2λ1/(n−1)) (17)
尚、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1光路差付与構造とは、少なくとも光軸に最も近い光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸に最も近い光軸の方向を向いている段差とを共に有する光路差付与構造をいう。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する段差を有する光路差付与構造である。
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.39μm<d11<1.15μm (18)
0.39μm<d12<2.31μm (19)
更に、第1基礎構造と第2基礎構造の重ね合わせ方としては、第1基礎構造と第2基礎構造のピッチを合わせ、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせるか、第1基礎構造の全ての段差の位置と、第2基礎構造の段差の位置を合わせることが好ましい。
上述のように第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせて重ね合わせた場合、第1光路差付与構造のd11、d12は以下の条件式(16)、(17)を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(16)、(17)を満たすことである。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (16)
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (17)
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.39μm<d11<1.15μm (18)´
0.39μm<d12<1.15μm (19)´
更に好ましくは、以下の条件式(16)´、(17)´を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(6)´、(7)´を満たすことである。
0.9・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (16)´
0.9・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (17)´
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.59μm<d11<1.15μm (18)´´
0.59μm<d12<1.15μm (19)´´
また、(1/1/1)構造である第1基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には、球面収差が補正不足方向(アンダー)に変化し、(2/1/1)構造である第2基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には、球面収差が補正不足方向(アンダー)に変化する。このような構成により、光ピックアップ装置の温度の上昇により対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく環境温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、対物レンズの屈折率の変化による球面収差の変化を補正して、適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できる。これにより、対物レンズがプラスチック製であっても、温度変化時においても安定した性能を維持できる対物レンズを提供することができる。
第2基礎構造に比べて、第1基礎構造の寄与率が支配的であることが好ましい。第2基礎構造に比べて、第1基礎構造の寄与率を支配的にするという観点からは、第1基礎構造の平均ピッチが、第2基礎構造の平均ピッチに比べて小さいことが好ましい。尚、CDにおけるワーキングディスタンスを確保しながら、軸上色収差を小さくし、光源が高周波重畳を起こしていても、良好な光スポットを形成させ、しかも、光ディスクが複数の情報記録面を有する場合の、迷光の問題を低減させるためには、第1光路差付与構造において、第2基礎構造の光軸に最も近い輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が2〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることが好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造全体において、第2基礎構造の輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が2〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることである。即ち、第1基礎構造の平均ピッチが、第2基礎構造の平均ピッチの1/5以上、1/2以下(特に好ましくは、1/3以上、1/2以下)であることが好ましい。
また、対物レンズの軸上色収差が0.3μm/nm以上、0.6μm/nm以下とすることが好ましい。このような構成とするためには、上述したように、第1光路差付与構造において、第2基礎構造の光軸に最も近い輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が2〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれるようにすることが好ましい。軸上色収差を上述の範囲にすることによって、CDにおけるワーキングディスタンスを確保しながら、光ディスクが複数の情報記録面を有する場合の、迷光の問題を低減させることができるため好ましい。
第1光路差付与構造を通過した第3光束によって、第3光束が形成するスポットの光強度が最も強い第1ベストフォーカス位置と、第3光束が形成するスポットの光強度が次に強い第2ベストフォーカス位置とが、以下の条件式(28)を満たすことが好ましい。なお、ここでいうベストフォーカス位置とは、ビームウェストが、或るデフォーカスの範囲でビームウェストが極小となる位置を指すものである。第1ベストフォーカス位置が第3光ディスクの記録/再生に用いられる必要光のベストフォーカス位置であり、第2ベストフォーカス位置が第3光ディスクの記録/再生に用いられない不要光のうち、最も光量が多い光束のベストフォーカス位置である。
0.05≦L/f13≦0.35 (10)
但し、f13[mm]は、第1光路差付与構造を通過し、第1ベストフォーカスを形成する第3光束の焦点距離を指し、L[mm]は、第1ベストフォーカスと第2ベストフォーカスの間の距離を指す。
より好ましくは、以下の条件式(28)´を満たすことである。
0.10≦L/f13≦0.25 (10)´
以上述べた第1光路差付与構造の好ましい例をいくつか図8(a)、(b)、(c)として示す。尚、図8は、便宜上、第1光路差付与構造ODS1が平板状に設けられたものとして示されているが、単玉非球面の凸レンズ上に設けられていてもよい。(2/1/1)回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされている。図8(a)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BSの段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。更に、第1基礎構造BS1と第2基礎構造BS2のピッチを合わせ、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置が合っていることがわかる。この図8(a)は、図1(b)の構造と図2(b)の構造を重畳した際にも当てはまる。次に、図8(b)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BSの段差も光軸OAの方向を向いている。更に、第1基礎構造BS1と第2基礎構造BS2のピッチを合わせ、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置が合っていることがわかる。この図8(b)は、図1(c)の構造と図2(c)の構造を重畳した際にも当てはまる。次に、図8(c)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAと逆の方向を向いており、第2基礎構造BSの段差も光軸OAと逆の方向を向いている。更に、第1基礎構造BS1と第2基礎構造BS2のピッチを合わせ、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置が合っていることがわかる。この図8(c)は、図1(a)の構造と図2(a)の構造を重畳した際にも当てはまる。
次に、中間領域に設けられる第2光路差付与構造について説明する。第2光路差付与構造は、第3基礎構造と第4基礎構造の2つの基礎構造のみを重ね合わせた構造であると好ましい。
第3基礎構造も第4基礎構造も、ブレーズ型構造であることが好ましい。また、第3基礎構造は、第3基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすると好ましい。又、第3基礎構造を通過した第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすると好ましい。但し、|X|=1、|Y|=1、|Z|=1であると好ましい。|X|=1、|Y|=1とした構造を(1/1)構造という。また、第4基礎構造は、第4基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすると好ましい。又、第4基礎構造を通過した第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。但し、|L|=2、|M|=1、|N|=1であると好ましい。|L|=1、|M|=1とした構造を(2/1)構造という。これにより、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた第2光路差付与構造において、光軸方向の段差量を低減でき、それにより波長変動時の回折効率の低下を抑制できる。また、第1基礎構造と第3基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数が一致し、且つ第2基礎構造と第4基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数が一致しているため、中央領域と中間領域を通過する光束について、球面収差を連続と出来、その結果、温度や波長変化時においても、高次収差の発生を抑えることができる。
第2光路差付与構造は第3、第4基礎構造に加えて、第5基礎構造を重ね合わせた構造としてもよいが、構造を単純にし、製造誤差による光利用効率の低下を抑えるためにも、第2光路差付与構造は、第3基礎構造及び第4基礎構造のみからなることが好ましい。
尚、第5基礎構造を重ね合わせる場合、第5基礎構造は、第5基礎構造を通過した第1光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第2光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第3光束のG次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする構造であることが好ましい。この様な第5基礎構造を重ね合わせることにより、対物レンズの中間領域を通過する第1光束、第2光束に悪影響を与えることなく、且つ、中央領域と中間領域との間で位相ずれを生じさせることなく、第3光束のみに、CDの情報記録面上でフレアを光スポットから遠い位置に形成させる作用を容易に与えることが可能となる。
好ましくは、Gが±1である。Gが±1である場合に、第5基礎構造は、図6(d)に示すような2レベルの階段型構造(バイナリ構造とも言う)であることが好ましい。
また、第3基礎構造を通過した第1光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし((3/2)構造とも言う)、第4基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする((2/1)構造とも言う)ようにしてもよい。このような構成であると、BDにおける回折効率をより高めることができる。
尚、第3基礎構造と第4基礎構造が、(1/1)構造と(2/1)構造の組み合わせである場合も、(3/2)構造と(2/1)構造の組み合わせである場合も、少なくとも中間領域の、中央領域に最も近い位置に設けられる第3基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、少なくとも中間領域の、中央領域に最も近い位置に設けられる第4基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることが好ましい。より好ましくは、中間領域におけるすべての第3基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向いており、中間領域におけるすべての第4基礎構造の段差が光軸の方向をなっていることである。
第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化するようにしてもよい。
このような構成とすると、第2光路差付与構造においても、光ピックアップ装置の温度上昇により対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく環境温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、対物レンズの屈折率の変化による球面収差の劣化を補正するため、環境温度の変化時に、より適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できる。
一方で、第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化するようにしてもよい。尚、補正過剰(オーバー)と補正不足(アンダー)については、図11を用いて説明する。図11は、縦軸が光軸から光軸垂直方向の高さを表し、横軸が収差を示す。横軸の左側が負であり、右側が正である。このとき、補正過剰とは、図11のBのような状態であり、補正不足とは、図11のAのような状態をいう。
第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化するようにすると、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の3次球面収差の変化量を、−30mλrms以上、+50mλrms以下にすることができるため好ましい。尚、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の3次球面収差の変化量を、−10mλrms以上、+10mλrms以下にすることがより好ましい。尚、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の5次球面収差の変化量は、−20mλrms以上、20mλrms以下であることが好ましい。より好ましくは、−10mλrms以上、+10mλrms以下である。
このような構成とすると、第3基礎構造と第4基礎構造のうち何れか一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化するので、第2光路差付与構造が、第3基礎構造と第4基礎構造のみからなっていても、CD使用時のフレア出しを容易に行うことが出来る。従って、CD使用時のフレア出しを、単純な形状の第2光路差付与構造で行えるため、影の効果による光利用効率の低下を抑制し、更に、製造誤差による光利用効率の低下も抑制し、結果として光利用効率を向上させることが可能となる。尚、これにより中間領域においてはBD使用時の温度特性補正効果が小さくなるが、中央領域の第1基礎構造と第2基礎構造が共に長波長において補正不足であるため、温度特性が悪くなりすぎることを防止でき、またBD使用時の波長特性補正効果を大きくすることができる。加えて、DVD使用時においては、DVDの温度特性及び波長特性を共に良好にすることができる。
なお、第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化すると、CD使用時にフレアをより遠くに飛ばしやすくできるため、好ましい。
第2光路差付与構造において、第4基礎構造の中央領域に最も近い輪帯1つ分に、第3基礎構造の輪帯が1〜3個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることが好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造全体において、第4基礎構造の輪帯1つ分に、第3基礎構造の輪帯が1〜3個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることである。即ち、第3基礎構造の平均ピッチが、第4基礎構造の平均ピッチと等しいか、1/2以下(特に好ましくは、1/3以上、1/2以下)であることが好ましい。
周辺領域に第3光路差付与構造を設ける場合、任意の光路差付与構造を設けることが可能である。第3光路差付与構造は、第5基礎構造を有することが好ましい。第5基礎構造は、第5基礎構造を通過した第1光束のP次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第2光束のQ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第3光束のR次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。尚、波長変動時の回折効率の変動を抑えるためにも、Pが5以下であることが好ましい。より好ましくはPが2以下であることである。
第1光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA1とし、第2光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA2(NA1>NA2)とし、第3光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA3(NA2>NA3)とする。NA1は、0.75以上、0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8以上、0.9以下である。特にNA1は0.85であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。また、NA3は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。特にNA3は0.45又は0.53であることが好ましい。
対物レンズの中央領域と中間領域の境界は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中央領域と中間領域の境界が、NA3に相当する部分に形成されていることである。また、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界は、第2光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
対物レンズを通過した第3光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光する場合に、球面収差が少なくとも1箇所の不連続部を有することが好ましい。その場合、不連続部は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に存在することが好ましい。
また、対物レンズは、以下の条件式(11)を満たすことが好ましい。
0.8≦d/f1≦1.5 (11)
但し、dは、対物レンズの光軸上の厚さ(mm)を表し、f1は、第1光束における対物レンズの焦点距離を表す。
BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、条件式(11)を満たすことにより非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。
また、対物レンズの軸上厚が厚めの厚肉対物レンズになるため、CDの記録/再生時におけるワーキングディスタンスが短くなりがちになるので、条件式(11)の上限の値を超えないことが好ましい。
さらに、第3光ディスクにおける十分なワーキングディスタンスを確保するという意味では、対物レンズに形成された輪帯の数RNは、150以上250以下であることが好ましい。
第1光束、第2光束及び第3光束は、平行光として対物レンズに入射してもよいし、発散光若しくは収束光として対物レンズに入射してもよい。トラッキング時においても、コマ収差が発生することを防止するためには、第1光束、第2光束、及び第3光束を全て平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが好ましい。本発明の第1光路差付与構造を用いることによって、第1光束、第2光束及び第3光束の全てを平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが可能となるため、本発明の効果がより顕著となる。第1光束が平行光又は略平行光になる場合、第1光束が対物レンズに入射する時の対物レンズの結像倍率m1が、下記の式(12)を満たすことが好ましい。
−0.003≦m1≦0.003 (12)
また、第2光束を平行光又は略平行光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(13)を満たすことが好ましい。
−0.003≦m2≦0.003 (13)
一方で、第2光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(14)を満たすことが好ましい。
−0.02≦m2<−0.003 (14)
また、第3光束を平行光束又は略平行光束として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(15)を満たすことが好ましい。
−0.003≦<m3≦0.003 (15)
一方で、第3光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(15)´を満たすことが好ましい。
−0.02≦m3<−0.003 (15)’
また、第3光ディスクを用いる際の対物光学素子のワーキングディスタンス(WD)は、0.15mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。好ましくは、0.19mm以上、0.7mm以下である。次に、第2光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.2mm以上、0.7mm以下であることが好ましい。さらに、第1光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.25mm以上、0.7mm以下であることが好ましい。
光ピックアップ装置は、カップリングレンズが、少なくとも第1光束と第2光束が通過するものであって、カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータ―を有する。特に、BDが2層や3層以上など複数の情報記録面を持っている場合には、或る層の記録/再生から他の層の記録/再生を行う際には、透明基板厚に差が生じるため、当該厚みの差に起因して発生する球面収差を補正しなければならない。カップリングレンズを光軸方向に移動させ、対物レンズの倍率を変えることによって、当該発生する球面収差を補正することが考えられる。また、温度変化や波長変化の際に発生する球面収差も、カップリングレンズを光軸方向に移動させ、対物レンズの倍率を変えることによって補正することができる。
しかしながら、例え、BD使用時にカップリングレンズを光軸方向に移動させて各種球面収差を補正する光ピックアップ装置であっても、DVD使用時においては、カップリングレンズの光軸方向の位置が固定されていることが好ましい。
その理由としては、BD使用時には、フレアが発生しないが、DVD使用時には、フレアが発生するため、カップリングレンズを変異させることにより、そのフレアの収差が変化し、結果としてそのフレアが記録/再生に悪影響を与える可能性が生じるという理由や、DVDの種類を判別するために、カップリングレンズの初期位置を常に一定にしておきたいという理由や、単純にドライブの方でカップリングレンズを変位させるためのファームウェアのコストを少しでも削減したいという理由などが挙げられる。
DVD使用時にカップリングレンズの光軸方向の位置を固定させるためには、対物レンズの第2光路差付与構造を構成する第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化させるようにすることで、DVD使用時の温度特性と波長特性を共に良好にすることができ、結果として、DVD使用時に、第2光束が通過するときにカップリングレンズを光軸方向の位置を固定した状態でも、DVDの情報記録面に対して情報の記録/再生を行うことができるようになるため好ましい。
本発明に係る光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有する。
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体ごと、外部に取り出される方式とがある。
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。