以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1へ至る過程を説明するための図である。実施の形態を説明するに当たり、まず図1を用いていくつかの定義を行う。図1において、鋸歯状の形状、言い換えると斜めの線と、斜めの線同士をつなぐ縦の線とが、回折構造の断面形状を表している。“0.5”や“1.0”といった縦方向の高さを表す数値は、設計波長λ1を単位としたときの光路長差の係数である。言い換えると、係数は、1つの段差又は1段の硝材が生成する光路長差を波長λ1で割り算した商であり、硝材の屈折率をnbとしたときに、段差と(nb−1)との積を設計波長λ1で割り算した商と等しい。また、回折格子の一周期p0は、所望の回折方向に波長λ1の光線を1次回折させるための周期(ピッチ)である。周期p0は、あたかも一定の値のように説明するが、所望の回折方向が回折格子の位置によって異なる場合、回折方向に応じて異なる値となる。場所によって、回折構造のピッチ又は回折格子の回折方向が異なる場合、一般的にホログラム、あるいはホログラム素子と呼ぶ場合もある。さらに、回折格子が同心状であれば、ホログラムレンズと呼ぶこともある。本願はこれらのいずれにも適応可能である。
また、鋸歯状の断面の高さとは、鋸歯状の回折構造の最上位点と最下位点との間の光軸方向の高さを表し、階段状の断面の高さとは、階段状の回折構造の最上位面と最下位面との間の光軸方向の高さを表す。
また、同じ一周期でも周期p1は、所望の回折方向に波長λ1の光線を2次回折させるための周期(ピッチ)であり、周期p0の2倍ほどの長さである。
領域R10と領域R20とは、回折構造の異なる領域を表す。図1では、領域R10が波長λ1の光に1次回折光を生じさせる領域を表し、領域R20が波長λ1の光に2次回折光を生じさせる領域を表している。また、点A11と点A12とは、それぞれ鋸歯の頂点と谷とを示し、平均レベルM11は、領域R10の鋸歯の頂点と谷との平均レベルを示している。同様に、平均レベルM12は、領域R20の鋸歯の頂点と谷との平均レベルをしている。
波長が設計波長λ1からずれても両領域の平均位相にずれが生じないようにするためには、平均レベルM11と平均レベルM12とを同じにすれば良いように思われる。例えば、図2のように、領域R20を領域R10より紙面下方へ光路長差0.5波長分下げた場合、両領域の平均レベルMが一致しているので、波長が設計波長λ1からずれても両領域の平均位相にずれは生じない。しかし、この形状では、頂点A21と頂点A22との位相に不連続が生じている。領域R20を紙面下方へ光路長差0.5波長分下げたため、頂点A21と頂点A22との間の光路長差が波長の1.5倍となり、光路長差は波長の整数倍とはならない。つまり、図2の構成では、設計(中心)波長において位相が不連続になる。
このように、設計波長での位相の連続性と、波長が変化した場合の位相ずれの回避とは、簡単なことではない。
そこで、発明者らは、図3に示す格子形状を発明した。図3は、本発明の実施の形態1における回折構造を示す図である。領域R10と領域R20との間に境界帯RBが設けられている。境界帯RBの幅(周期)pkは、領域R10の周期p0と領域R20の周期p1との平均とし、ここでは周期p0の1.5倍とする。すなわち、境界帯RBの幅pkは、1次回折を起こす周期の1.5倍にする。1.5周期の幅の間に上下方向に1.5波長の光路長差を生じる高さの傾斜が設けられる。本構成では、各鋸歯の頂点と谷との間の光路長差は1波長又は2波長にすることができる。すべての光路長差を波長λ1の整数倍にすることができる。また、領域R10と領域R20との平均レベルMは一致している。なお、境界帯RBの平均レベルが、領域R10及び領域R20の平均レベルMと異なるように見えるが、斜面と平均レベルMの交点B3より紙面左側を領域R10、紙面右側を領域R20と捉えて考えれば、境界帯の平均レベルを問題にする必要はないことがわかる。
このように、1.5周期の幅の間に上下方向に1.5波長の光路長差を生じる高さの傾斜を有する境界帯RBを設けることにより、設計波長での位相の連続性と、波長が変化した場合の位相ずれの回避とを実現できるという顕著な効果を得ることができる。
上述の例では、領域R10は1次回折を起こし、領域R20は2次回折を起こす回折構造について説明してきた。より一般化して考えれば、領域R10がN次回折を起こす回折領域であり、領域R20がJ次回折を起こす回折領域であり(N及びJは、互いに異なる自然数)、1次回折を起こす周期を1周期とした場合、(N+J)/2周期の幅の間に上下方向に(N+J)/2波長の光路長差を生じる高さの傾斜を有する境界帯RBが設けられることにより、設計波長での位相の連続性と、波長が変化した場合の位相ずれの回避とを実現できるという顕著な効果を得ることができる。
レンズとの組み合わせを考えると、複合対物レンズは、回折構造を有する光学素子と、屈折型レンズとを備える。回折構造は、領域R10と、領域R20と、領域R10と領域R20との間に設けられた境界帯RBとを含む。領域R10と領域R20とには、鋸歯状の断面を有する回折構造が形成される。領域R10に形成した鋸歯状の断面の高さは、所定の波長λ0の光に対して、空気中を透過する場合に比べて所定の波長λ0のN倍の光路長差を与える。領域R20に形成した鋸歯状の断面の高さは、所定の波長λ0の光に対して、空気中を透過する場合に比べて所定の波長λ0のJ倍の光路長差を与える。境界帯RBの両端の高低差は、所定の波長λ0の光に対して、空気中を透過する場合に比べて所定の波長λ0の(N+J)/2倍(NとJとは互いに異なる自然数)の光路長差を与える。
なお、波長λ1を赤色光に対応する660nm程度に設定し、屈折率nbを赤色光に対する屈折率とし、領域R10をレンズ光軸に近い内周側に形成し、領域R20をレンズ光軸より遠い外周側に形成し、図3の上方を屈折率nb(>1)の光学素子材とし、Nを1とし、Jを2以上の自然数とする。この場合、互換対物レンズは、赤外光をコンパクトディスク(CD)の記録面上に1.2mmの透明基材を通して収束させ、赤色光をDVDの記録面上に0.6mmの透明基材を通して収束させる。これにより、設計波長からのずれにかかわらず、収差の発生を抑制することができる。
領域R10と領域R20との間に境界帯RBが設けられ、境界帯RBの両端の高低差は、波長λ1の光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1の約(1+J)/2倍の光路長差を与える。境界帯RBの幅は、波長λ1の光に1次回折を起こす周期の約(1+J)/2倍にする。
また、発明者らは、DVDとBlu−ray Discとの互換方式を特開2004−071134号公報に開示した。その中で、鋸歯状の断面形状の深さをh1、青色光の波長λ1を390nm〜415nmとし、赤色光の波長λ2を630nm〜680nmとし、深さh1を波長λ1の第1の光ビームに対して約2波長の光路差を与える深さとすれば、第1の光ビームに対しては+2次回折光が最も強く発生し、波長λ2の第2の光ビームに対しては+1次回折光が最も強く発生するので、このような鋸歯状の断面形状を有する領域をレンズ光軸に近い内周側に形成することを提案した。
本実施の形態では、このような深さh1の鋸歯形状を図3の領域R20とし、領域R10には、波長λ1の第1の光ビームに対して約1波長の光路長差を与える深さの鋸歯形状を形成する。つまり、N=1及びJ=2とし、さらに、屈折率nbを青色光に対する屈折率とし、領域R20をレンズ光軸に近い内周側に形成し、領域R10をレンズ光軸より遠い外周側に形成し、図3の下方を屈折率nb(>1)の光学素子材とする。この場合、互換対物レンズは、赤色光をDVDの記録面上に0.6mmの透明基材を通して収束させ、青色光をBDの記録面上に約0.1mm又は0.1mmより薄い透明基材を通して収束させる。これにより、設計波長からのずれにかかわらず、収差の発生を抑制することができる。なお、Nは3以上の整数としてもよく、Nを3以上の整数とすることによって、赤色光に対する開口数の違いは実現できる。
領域R10と領域R20との間に境界帯BRが設けられ、境界帯BRの両端の高低差は、波長λ1の光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1の約(N+2)/2倍の光路長差を与える。境界帯BRの幅は、波長λ1の光に1次回折を起こす周期の約(N+2)/2倍にする。
すなわち、領域R20に形成した鋸歯状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1の2倍の光路長差を与える。領域R10に形成した鋸歯状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1のN倍(Nは2以外の自然数)の光路長差を与える。境界帯RBの両端の高低差及び境界帯RBの幅の少なくとも一方は、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1の(N+2)/2倍の光路長差を与える。領域R10は、波長λ2の赤色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生する。領域R20から発生する青色光の2次回折光と、領域R10から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。領域R20から発生する赤色光の1次回折光は、厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。
これら互換レンズを実現するための回折格子は、レンズ光軸を軸中心とする同心円状でありホログラムレンズと呼ぶこともある。
さらに、鋸歯状の回折構造は、階段形状によっても、近似可能である。階段形状によって近似する場合でも、異なる次数の回折を起こす領域を設ける際には、近似する元となる鋸歯状の回折構造を仮想的に構築し、上記の境界帯BRを設けた上で、階段形状によって近似すればよい。このような考え方に基づいて、鋸歯形状を階段状形状によって近似するためには、階段の1段が与える光路長差は0.5波長以下、位相差はπ以下にする。この場合は、上述のように単に鋸歯形状を近似すればよい。
なお、本実施の形態において、領域R10が第1の領域の一例に相当し、領域R20が第2の領域の一例に相当し、境界帯RBが第1の境界帯の一例に相当する。
(実施の形態2)
発明者らは、新規な階段状の断面を有する回折構造についても、青色光と赤色光とを顕著に異なる方向に回折させる発明を特開2004−071134号公報に開示している。特開2004−071134号公報には、図4(A)に示す領域R1のような階段状の回折構造を開示している。
図4(A)、図4(B)及び図5は、本発明の実施の形態2へ至る過程を説明するための図である。図4(A)において、領域R1では、階段の一段の高さ(深さ)は、波長λ1の青色光に与える空気中を通る光線との光路長差が約1.25λ1になるように形成されている。図4(A)は、物理的な断面形状を示している。例えば、図4(A)において、下側が、回折構造又はホログラム素子の基材側又は硝材側、すなわち屈折率の高い側、上側が、空気側、すなわち屈折率の低い側であるが、逆の配置でもよい。この点は本発明の他の実施の形態でも共通である。
図4(A)において、縦方向は硝材の厚さ、あるいは高さを示している。領域R1のように矩形形状を組み合わせたような断面形状を本明細書では、階段状の断面形状と呼ぶ。青色光ビームに対するホログラム素子材料又は硝材の屈折率をnbとする。図4(A)の領域R1では、単位段差によって生じる光路長差が、青色光の波長λ1の1.25倍であることを示している。ここで、波長λ1は390nm〜415nmである。標準的には、波長λ1は405nmぐらいなので、390nm〜415nmの波長を総称して約405nmと呼び、390nm〜415nmの波長の光を青色光と呼ぶ。回折格子の階段の高さ(レベル)を単位段差の整数倍にすると、階段形状による青色光に対する位相変調量は2π+π/2の整数倍となり、実質的には、位相変調量は一段あたりπ/2になる。例えば、階段を4レベル(段差は3つ、つまり3段)形成することにより、光路長差が1波長の高さを有する鋸歯形状を近似することができる。
次に、波長λ2は630nm〜680nmとする。標準的には、波長λ2は660nmが使われることが多いので、630nm〜680nmの波長を総称して約660nmと呼び、630nm〜680nmの波長の光を赤色光と呼ぶ。波長λ2の光に対しては、図4(A)の領域R1では単位段差によって生じる光路長差が、赤色光の波長λ2の約0.75倍になる。階段形状による赤色光に対する位相変調量は2π−π/2の整数倍となり、実質的には、位相変調量は一段あたり−π/2になる。例えば、階段を4レベル(段差は3つ)形成することにより、上述の青色光に対する階段形状とは逆向きの傾斜であって光路長差が1波長の高さを有する鋸歯形状を近似することができる。
基材厚が0.6mmであり、波長λ2の光に対応する光ディスクと、基材厚が0.1mmであり、波長λ1の光に対応する光ディスクとの互換再生を行う際には、対物レンズの内周側(光軸に近い領域)に図4(A)に示す領域R1の断面形状を持つホログラムレンズを形成して、青色光を0.1mmの透明基材を通して、赤色光を0.6mmの基材を通して情報記録面上にそれぞれ収束させる。そして、対物レンズの外周側(光軸から遠い領域)を通る青色光を、内周側を通る青色光と一緒に0.1mmの透明基材を通して収束させるため、例えば、対物レンズの外周側に図4(A)に示す領域R2のような光路長差が1波長の高さを有する鋸歯形状のホログラムレンズを形成する。こうして、対物レンズは、赤色光より高い開口数(Numerical aperture:NA)によって、青色光を0.1mmの透明基材を通してBlu−ray Disc(BD)などの情報記録面上に収束させる。
青色光は、領域R1と領域R2との両方を通過するので、領域R1と領域R2との位相を合わせる必要がある。一見すると、図4(A)の領域R1の階段形状は、図4(B)のような鋸歯形状を近似していると考えられる。したがって、設計波長λ1に対して位相を合わせると共に設計波長がλ1から数nmずれた場合であっても両領域の平均位相がずれないようにするためには、図4(A)に示すように、階段形状の平均レベルMより光路長差が0.5波長分低い位置A4から、鋸歯形状の領域R2の傾斜方向へ一周期p0分傾斜するように構成すれば良いと一見思いがちである。
しかし、より詳細に位相を考察すると、図4(A)では、両領域の青色光の位相ずれが生じることに発明者らは気づいた。この位相ずれについて図5を用いて説明する。図5中の破線は、領域R1の最も右側の一段が近似する位相の傾斜を示すものである。傾きは一周期p0の間に一波長分の位相変化が起こる量である。破線と一段の平坦レベルとの交点は平坦部分の中心である。そのため、領域R1の最も右側の一段の右端では、1/8(0.125)波長分の光路長差だけ平坦レベルより点線は上に上がる。0.125波長と、領域R1の最も右側の段の高さである1.25波長と、領域R1の最も右側の段の左隣の段の高さの半分である0.625波長とを全て加えると、領域R1の最も右端では、近似される鋸歯の光路長差は、平均レベルMより2波長分、つまり4πの位相差であることがわかる。この位相差は、2πの整数倍であるから、実質平均レベルMと同じになる。結果として、近似される鋸歯の右端の位相と位置A4の位相とは0.5波長分の位相ずれが生じてしまう。一段あたりの光路長差が0.5波長を超える構成では、単純に鋸歯形状を階段形状に近似することができない。
そこで、発明者らは、図6に示す格子形状(回折構造)を発明した。図6は、本発明の実施の形態2における回折構造を示す図である。階段形状の断面を有する領域R1の右端において、領域R1の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さすなわち平均レベルMの位置B6から、鋸歯状の傾斜方向へ向かって、0.5波長分の光路長差を起こす高さを有する傾斜が0.5周期分形成される。そして、領域R2に、一周期p0の回折格子が繰り返し形成される。
上述したように、階段形状の断面を有する領域R1の右端では、領域R1は平均レベルMと同じ位相が近似されているので、領域R2と位相が整合する。また、両領域の平均位相レベルも平均レベルMにおいて一致しており波長が設計値と多少ずれても位相のずれが起こらない。各段差が近似する傾斜は、図6に示す4本の破線のようになるが、これらは互いに波長の整数倍だけ、上下方向にシフトしているだけの光路長差であり、実質的に同じ位相を青色光に与える。上から3番目の破線が、領域R2の傾斜と連続していることからも、位相が連続していることを確認することができる。
なお、必ずしも一周期が完結した時点で領域を切り替える必要はない。これについて図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態2の第1の変形例における回折構造を示す図である。
図7では、階段形状の一周期p0の領域R7に、領域R2の傾斜部を重ねて描いている。重ねて描いた傾斜は領域R2を延長したものである。領域R7の任意の位置において、階段形状から鋸歯形状に切り替え可能である。例えば、領域R7の中央部すなわち階段形状を0.5周期形成した位置C7から鋸歯形状へ切り替えても良い。このように、階段形状から鋸歯形状へ切り替える位置を変えた場合も含めて、本実施の形態2では、階段形状の一周期の右端において平均レベルMの位置から、鋸歯形状の傾斜方向へ向かって、0.5波長分の光路長差を起こす高さを有する傾斜が0.5周期分形成されると表現する。この表現は、切り替え部分を階段形状の一周期の右端に制限するものではない。領域R7が境界帯に相当する。
また、領域R2は、1次回折を起こす回折構造には限らない。領域R2にN次回折(Nは自然数)を起こす回折格子を形成する場合は、1次回折を起こす回折格子の周期を一周期と表現したとき、階段形状の右端において平均レベルMの位置から、鋸歯形状の傾斜方向へ向かって、N/2波長分の光路長差を起こす高さを有する傾斜がN/2周期分形成される。この表現は、切り替え部分を階段形状の一周期の右端に制限するものではなく、階段形状を有する領域R1側に傾斜部を延長して切り替えることも含む。
すなわち、領域R1には、階段状の断面を有する回折構造が形成される。領域R1の階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与える。領域R2には、鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面を近似する階段状の断面を有する回折構造が形成される。領域R2の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与える。領域R2に形成した鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与える。境界帯には、領域R1に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、領域R1の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから領域R2の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成される。領域R1は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。領域R2は、波長λ1の青色光に対してN次回折光を最も強く発生する。領域R1から発生する青色光の1次回折光と、領域R2から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。領域R1から発生する赤色光の−1次回折光は、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。
図8は、本発明の実施の形態2の第2の変形例における回折構造を示す図である。例えば、領域R2が波長λ1の光に対して3次回折光を最も強く発生させるよう設計する場合は図8に示すように、領域R7の右端の平均レベルMの位置から、鋸歯形状の傾斜方向へ向かって、1.5波長分の光路長差を起こす高さを有する傾斜が、1次回折を起こす回折格子の周期p0の1.5周期分(p8)形成される。そして、1次回折を起こす回折格子の周期p0の3周期分(p9)の傾斜が繰り返し形成される。
つまり、1次回折を起こす領域R1の外周側に、領域R1の一周期分の階段状の断面を有する領域R7が形成される。また、領域R7の外周側に、領域R7の右端の平均レベルMの位置から、1.5波長分の光路長差を起こす高さを有する鋸歯状の断面を有する領域R8が形成される。そして、領域R8の外周側に、領域R2が形成される。領域R7及び領域R8が境界帯に相当する。
すなわち、境界帯には、領域R1に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、領域R1の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから領域R2の鋸歯状の傾斜方向へ、3/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対して3/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成される。領域R1は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。領域R2は、波長λ1の青色光に対して3次回折光を最も強く発生する。領域R1から発生する青色光の1次回折光と、領域R2から発生する青色光の3次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。領域R1から発生する赤色光の−1次回折光は、厚さt2の透明基材を通して収束する。
このような構成にすることにより、青色光は、領域R1と領域R2とで同様の方向に回折するが、赤色光は、2次回折光又は3次回折光が強くなり、領域R1の−1次回折光とは顕著に異なる回折になる。従って、領域R2は、青色光を領域R1と共に大きな開口数で収束するように回折するとともに、領域R1とは異なる方向に赤色光を回折し、領域R2に入射した赤色光は実質的に収束されない。すなわち、青色光よりも小さな開口数で赤色光を収束できるという効果が得られる。
なお、本実施の形態において、領域R1が第1の領域の一例に相当し、領域R2が第2の領域の一例に相当し、領域R7及び領域R8が第1の境界帯の一例に相当する。
(実施の形態3)
現在広く普及しているCD(コンパクトディスク)、DVD及びBDの全てを1個のレンズによって互換再生するために用いる対物レンズ、光ヘッド装置及び光情報装置を実現するため、発明者らは、図9に示す断面構造を一周期とする構成をWO2009−016847に開示した。実施の形態3では、実施の形態2として例示した領域R1(図10の領域R4)より更に光軸に近い側の領域(R3)に、図9(A)の断面形状を有するホログラムレンズを形成する。
図9(A)は、基材上に形成した回折格子の断面形状を示す図であり、図9(B)は、図9(A)に示す断面形状によって生じる青色光に対する位相変調量を示す図であり、図9(C)は、図9(A)に示す断面形状によって生じる赤色光に対する位相変調量を示す図であり、図9(D)は、図9(A)に示す断面形状によって生じる赤外光に対する位相変調量を示す図である。
図9(A)に示すように、階段の一段は、波長λ1の青色光に与える空気中を通る光線との光路長差が、約1.25λ1になるような高さ(深さ又は段差)で形成されている。図9(A)は、物理的な断面形状を示している。例えば、図9(A)において下側が、回折構造(又は回折素子又はホログラム素子)の基材側(又は硝材側)、すなわち屈折率の高い側であり、上側が、空気側、すなわち屈折率の低い側であるとして説明するが、逆の配置でもよい。この点は本発明の他の実施の形態でも共通である。
図9(A)において、縦方向は硝材の厚さ又は高さを示している。このように矩形形状を組み合わせた断面形状を階段状の断面形状と呼ぶのは上述した他の実施の形態と同じである。図9(A)では単位段差によって生じる光路長差が、青色光の波長λ1の1.25倍であることを示している。ここで、波長λ1は390nm〜415nmである。標準的には波長λ1は405nmぐらいなので、390nm〜415nmの波長を総称して約405nmと呼び、390nm〜415nmの波長の光を青色光と呼ぶ。
回折格子の階段の高さ(レベル)を単位段差の整数倍にすると、この断面形状による青色光に対する位相変調量は2π+π/2の整数倍となり、実質的には、一段あたりの位相変調量はπ/2になる。この階段を8レベル(段差は7つ)形成することにより、光路長差が2波長の高さの鋸歯形状を近似することができる。図9(B)に示すように、図9(A)に示す回折構造は、あたかも+1次回折を起こす周期が2周期形成される働きをするので、青色光に対しては、+2次回折光が最も強く発生する。
次に、波長λ2は630nm〜680nmとする。標準的には波長λ2は660nmを使われることが多いので、630nm〜680nmの波長を総称して約660nmと呼び、630nm〜680nmの波長の光を赤色光と呼ぶ。波長λ2の光に対しては、図9(A)の断面形状では単位段差によって生じる光路長差が、赤色光の波長λ2の約0.75倍になる。この断面形状による赤色光に対する位相変調量は2π−π/2の整数倍となり、実質的には、一段あたりの位相変調量は−π/2になる。この階段を8レベル(段差は7つ)形成することにより、上記の青色光に対する鋸歯形状とは逆向きの傾斜であって光路長差が2波長の高さの鋸歯形状を近似することができる。図9(C)に示すように、図9(A)に示す回折構造は、あたかも−1次回折を起こす周期が2周期形成される働きをするので、赤色光に対しては、−2次回折が最も強く発生する。
さらに、波長λ3は770nm〜820nmとする。標準的には780nmの波長λ3の光を赤外光と呼ぶ。赤外光が、0.45〜0.5の開口数の対物レンズによって、厚さ1.2mmの透明基材を通して情報記録面に収束され、情報記録面からの反射光が受光されることにより、CDが再生される。
波長λ3の光に対しては、図9(A)に示す断面形状では単位段差によって生じる光路長差が、赤外光の波長λ3の約0.625倍になる。この断面形状による赤外光に対する位相変調量は約0.625×2πの整数倍となり、実質的には、一段あたりの位相変調量は−0.375×2πになる。この階段を8レベル(段差は7つ)形成することにより、上記の青色光に対する鋸歯形状とは逆向きの傾斜であり、赤色光に対する鋸歯形状と同じ向きの傾斜であって、光路長差が3波長の高さの鋸歯形状を近似することができる。図9(D)に示すように、図9(A)に示す回折構造は、あたかも−1次回折を起こす周期が3周期形成される働きをするので、赤外光に対しては、−3次回折が最も強く発生する。
本構成では、3つの波長の光に対する回折効率をバランス良く高めることができるという長所がある。また、赤色光と青色光との共通領域である第3の領域R3を共存させる場合、本構成の8レベルの断面形状を有する回折構造の回折次数は、青色光に対して+2次であり、赤色に対して−2次であるので、青色光の回折次数:赤色光の回折次数は、1:−1である。したがって、8レベルの断面形状を有する回折構造の回折次数は、青色光に対する回折次数が+1次であり赤色光に対する回折次数が−1次である4レベルの断面形状を有する回折構造と同じ比率になる。
このため、光学素子と屈折レンズとを組み合わせて使う場合に回折力と屈折力との比が同じになり、設計波長とは多少異なった波長の光であっても大きな収差が生じないという効果がある。
このように、青色光、赤色光及び赤外光に対する最も強い回折が、+2次、−2次及び−3次というように全く異なる次数において起こるので、青色光、赤色光及び赤外光のそれぞれで回折方向が大きく異なり、この差を利用して異なる基材厚を通して収束するように設計可能となる。
図10は、本発明の実施の形態3へ至る過程を説明するための図である。図10に示すように、図9(A)の断面形状を有するホログラムレンズが、光軸に最も近い領域R3に形成されることによって、領域R3は、青色光、赤色光及び赤外光をそれぞれ異なる厚みを有する透明基材を通して収束させる。そして、領域R3の外周部には、例えば図6の領域R1と同じ回折構造を有する領域R4が形成されて、領域R4は、青色光及び赤色光をそれぞれ異なる基材厚を通して領域R3を通った光と共に収束させる。そして、図10には図示していないが、領域R4のさらに外周部には、例えば図6〜図8の領域R2と同じ回折構造を有する領域が形成されて、当該領域(領域R2)は、青色光を内周部の領域R3及びR4を通過した光と共にBDの情報記録面上に収束させる。青色光は、全領域を通過するため、各領域間の位相を合わせることが望ましい。
なお、領域R4は、図3の領域R20の回折構造と同じであってもよく、領域R4のさらに外周部には、図3の領域R10と同じ回折構造を有する領域を設けてもよい。領域R4と領域R10との間には、図3の境界帯RBが形成される。また、領域R4と領域R2との間にも境界帯(例えば図7の領域R7又は図8の領域R7及びR8)が形成される。つまり、領域R4と、領域R4の外周側の領域とは、実施の形態1及び実施の形態2において説明した回折構造が適用可能である。
領域R3の8レベルの断面形状は、領域R4の4レベルの断面形状を2回繰り返した形状である。そのため、図10のように、領域R3の最下部と領域R4の最下部とのレベルを合わせれば、両領域の境界部での位相を連続にすることができると一見思われる。しかし、この形状では領域R3の平均レベルM91と、領域R4の平均レベルM92とが一致していないため、波長が設計中心λ1からずれると、両領域の平均位相にずれが生じ、収束品質が低下する。
そこで、実施の形態2における考察と同様に、両領域が近似している鋸歯形状について考察する。図11は、本発明の実施の形態3における回折構造を示す図である。階段形状の領域R3及び領域R4が近似している鋸歯形状は、図11に示す鋸歯形状Sa1のようになり、領域R3、領域R4及び境界帯RCの階段形状は、図11のように構成すれば、領域R3と領域R4との位相が整合することがわかった。また、両領域の平均位相レベルMも一致しており、波長が設計値と多少ずれても位相のずれが起こらない。本構成は、実施の形態1と同様に領域R3と領域R4との間に境界帯RCを設けたものと解釈できる。
領域R3の8つの階段レベルを低い側から0,1,2,3,4,5,6,7レベルと定義したときに、領域R3の中央部の2,3,4,5レベルの高さに合わせて領域R4の4つの階段レベルを形成している。
そして、境界帯RCは、領域R3の半周期である0,1,2,3レベルと、領域R4の半周期である4,5レベルとを合計した6つのレベルを形成している。
すなわち、領域R3には、7段8レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。領域R4には、3段4レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。そして、領域R3及び領域R4のそれぞれの階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与える。領域R3に形成する7段8レベルの階段状の断面の8レベルを、低い方から高い方へ順にレベル0,1,2,3,4,5,6,7と定義したとき、領域R4に形成する3段4レベルの階段状の断面形状の4レベルは、領域R3のレベル2,3,4,5と同じ高さに設定される。なお、7段8レベルとは、最下位面から最上位面までの段差の数が7つであり、最下位面から最上位面までの階段の数が8つであることを表している。
また、境界帯RCには、領域R3のレベル0,1,2,3,4,5と同じレベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。
また、領域R3は、波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生する。領域R4は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。領域R3から発生する青色光の2次回折光と、領域R4から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。領域R3から発生する赤色光の−2次回折光と、領域R4から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。領域R3から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。
一般化して考えると、N2レベル(N2は正の偶数)の回折領域と、M2レベル(M2はN2とは異なる正の偶数)の回折領域とを共存させる場合に、両領域の平均レベルをベースレベルに一致させた上、両領域の境界に(N2+M2)/2レベルの境界帯RCを設ける。これにより、領域R3と領域R4との位相を合わせることができる。
すなわち、領域R3には、(N2−1)段N2レベル(N2は正の偶数)の階段状の断面を有する回折構造が形成される。領域R4には、(M2−1)段M2レベル(M2は、N2とは異なる正の偶数であり、かつN2より小さい)の階段状の断面を有する回折構造が形成される。境界帯RCには、領域R3と領域R4との平均レベルを一致させるとともに、(N2+M2)/2レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。
領域R4の外周側に例えば図6の領域R2が形成される場合は、実施の形態2と同様にして位相を合わせればよい。また、赤色光についても領域R3と領域R4との位相を合わせる必要があるが、青色光と同様の考察により回折構造を図11に示す階段形状のように構成すれば、赤色光についても領域R3と領域R4との位相を整合させることができる。
なお、本実施の形態において、領域R4が第1の領域の一例に相当し、領域R2が第2の領域の一例に相当し、領域R3が第3の領域の一例に相当し、境界帯RCが第2の境界帯の一例に相当する。
(実施の形態4)
現在広く普及しているCD(コンパクトディスク)、DVD及びBDの全てを1個のレンズによって互換再生するために用いる対物レンズ、光ヘッド装置及び光情報装置を実現するため、発明者らは、図12に示す断面構造を一周期とする別の構成をWO2009−016847に開示した。図12は、本発明の実施の形態4に至る過程を説明するための図である。図12の領域R3の構成を有するホログラムレンズを、実施の形態2として例示した領域R1より更に光軸に近い範囲に形成する。
図12のように、領域R3の階段の一段は、波長λ1の青色光に与える空気中を通る光線との光路長差が、約1.14λ1になるような高さ(深さ又は段差)にしてある。図12は物理的な断面形状を示している。例えば、図12において下側が、回折構造(又は回折素子又はホログラム素子)の基材側(又は硝材側)、すなわち屈折率の高い側であり、上側が、空気側、すなわち屈折率の低い側であるとして説明するが、逆の配置でもよい。この点は本願の他の実施の形態でも共通である。
図12において、縦方向は硝材の厚さ又は高さを示している。このように矩形形状を組み合わせた断面形状を階段状の断面形状と呼ぶのは上述した他の実施の形態と同じである。図12では、領域R3の単位段差によって生じる光路長差が、青色光の波長λ1の1.14倍であることを示している。ここで、波長λ1は390nm〜415nmである。標準的には波長λ1は405nmぐらいなので、390nm〜415nmの波長を総称して約405nmと呼び、390nm〜415nmの波長の光を青色光と呼ぶ。
回折格子の階段の高さ(レベル)を単位段差の整数倍にすると、この断面形状による青色光に対する位相変調量は2π+0.14×2πの整数倍となり、実質的には、一段あたりの位相変調量は0.14×2πになる。この階段を7レベル(段差は6つ)形成することにより、光路長差が1波長の高さの鋸歯形状を近似することができる。図12に示す回折構造は、あたかも+1次回折を起こす周期が1周期形成される働きをするので、青色光に対しては、+1次回折が最も強く発生する。
次に、波長λ2は630nm〜680nmとする。標準的には波長λ2は660nmを使われることが多いので、630nm〜680nmの波長を総称して約660nmと呼び、630nm〜680nmの波長の光を赤色光と呼ぶ。波長λ2の光に対しては、図12の領域R3の断面形状では単位段差によって生じる光路長差が、赤色光の波長λ2の約0.7倍になる。この断面形状による赤色光に対する位相変調量は2π−0.3×2πの整数倍となり、実質的には、一段あたりの位相変調量は−0.3×2πになる。この階段を7レベル(段差は6つ)形成することにより、上記の青色光に対する鋸歯形状とは逆向きの傾斜であって光路長差が約2波長の高さの鋸歯形状を近似することができる。図12に示す回折構造は、あたかも−1次回折を起こす周期が2周期形成される働きをするので、赤色光に対しては、−2次回折が最も強く発生する。
さらに、波長λ3は770nm〜820nmとする。標準的には780nmの波長λ3の光を赤外光と呼ぶ。赤外光が、0.45〜0.5の開口数の対物レンズによって、厚さ1.2mmの透明基材を通して情報記録面に収束され、情報記録面からの反射光が受光されることにより、CDが再生される。
波長λ3の光に対しては、図12に示す領域R3の断面形状では単位段差によって生じる光路長差が、赤外光の波長λ3の約0.6倍になる。この断面形状による赤外光に対する位相変調量は0.6×2πの整数倍となり、実質的には、一段あたりの位相変調量は−0.4×2πになる。この階段を7レベル(段差は6つ)形成することにより、上記の青色光に対する鋸歯形状とは逆向きの傾斜であり、赤色光に対する鋸歯形状と同じ向きの傾斜であって、光路長差が約3波長の高さの鋸歯形状を近似することができる。図12に示す回折構造は、あたかも−1次回折を起こす周期が3周期形成される働きをするので、赤外光に対しては、−3次回折が最も強く発生する。
このように、青色光、赤色光及び赤外光に対する最も強い回折が、+1次、−2次及び−3次というように全く異なる次数において起こるので、青色光、赤色光及び赤外光のそれぞれで回折方向が大きく異なり、この差を利用して異なる基材厚を通して収束するように設計可能となる。
図12の断面形状を有するホログラムレンズが、光軸に最も近い領域R3に形成されることによって、領域R3は、青色光、赤色光及び赤外光をそれぞれ異なる厚みを有する透明基材を通して収束させる。そして、領域R3の外周部には、例えば図6の領域R1と同じ回折構造を有する領域R4が形成されて、領域R4は、青色光及び赤色光をそれぞれ異なる厚みを有する透明基材を通して領域R3を通った光と共に収束させる。そして、図12には図示していないが、領域R4のさらに外周部には、例えば図6〜図8の領域R2と同じ回折構造を有する領域が形成されて、当該領域(領域R2)は、青色光を内周部の領域R3及びR4を通過した光と共にBDの情報記録面上に収束させる。青色光は、全領域を通過するため、各領域間の位相を合わせることが望ましい。
領域R3の7レベルの断面形状の平均レベルと、領域R4の4レベルの断面形状の平均レベルとを一致させ、かつ、領域R3と領域R4との位相を連続的につなぐためには、一見図12のように高さ方向を調整すればいいように考えられる。しかし、近似される位相変化を詳細に検討すると位相ずれが生じていることがわかる。
図12において、領域R3の右端の光路長差は、平均レベルMよりも約3.5波長(=3.42+0.07)高い。つまり、実質的に0.5波長の位相ずれが生じている。
一方、領域R4の左端の光路長差は、平均レベルMよりも約2.0波長(=1.875+0.125)低い。つまり、実質的に位相ずれが生じていない。
結果として、領域R3の右端と領域R4の左端とは、実質的に0.5波長の位相ずれが生じている。
発明者らは、位相の平均レベルを一致させながら、位相ずれを解消する構成を発明した。図13は、本発明の実施の形態4における回折構造を示す図である。領域R3と領域R4との位相を合わせるため、領域R3と領域R4の間に境界帯RCを設ける。境界帯RCには、領域R3に形成される7レベルの回折構造の一周期p13の約半分の周期pk3の幅を有する4レベルの回折構造が形成される。但し、境界帯RCの右端の階段のレベル幅W1は、境界帯RCにおける他の階段のレベル幅W0に比べて約半分にする。図13の構成では、領域R3と同じ回折構造を境界帯RCに延長して形成しており、かつ、領域R3の右端の光路長は平均レベルMと一致する。また、領域R4の左端も光路長が実質的に平均レベルMと一致している。そのため、領域R3と領域R4との位相の連続性を実現できていることがわかる。
すなわち、領域R3には、6段7レベルの階段状の断面を有する第1の回折構造が形成される。領域R4には、3段4レベルの階段状の断面を有する第2の回折構造が形成される。第1の回折構造及び第2の回折構造の階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.14波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.7波長の光路長差を与える。境界帯RCは、領域R3の0.5周期分の階段を有している。
領域R3は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生する。領域R4は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。領域R3から発生する青色光の2次回折光と、領域R4から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。領域R3から発生する赤色光の−2次回折光と、領域R4から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。領域R3から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。
また、境界帯RCは、領域R4の回折構造を延長して形成してもかまわない。図14は、本発明の実施の形態4の第1の変形例における回折構造を示す図である。境界帯RCには、領域R4に形成される4レベルの回折構造の一周期p03の約半分の周期pk4の幅を有する2レベルの回折構造を形成する。図14の構成では、領域R4と同じ回折構造を境界帯RCに延長して形成しており、かつ、領域R4の左端の光路長は平均レベルMと約0.5波長の光路長差を生じている。また、領域R3の右端も光路長が実質的に平均レベルMと約0.5波長の光路長差を生じている。そのため、領域R3と領域R4との位相の連続性を実現できていることがわかる。
すなわち、領域R3には、6段7レベルの階段状の断面を有する第1の回折構造が形成される。領域R4には、3段4レベルの階段状の断面を有する第2の回折構造が形成される。第1の回折構造及び第2の回折構造の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.14波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.7波長の光路長差を与える。境界帯RCは、領域R4の0.5周期分の階段を有している。
領域R3は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生する。領域R4は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。領域R3から発生する青色光の2次回折光と、領域R4から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。領域R3から発生する赤色光の−2次回折光と、領域R4から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。領域R3から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。
更に、実施の形態4では、図13に示す回折構造と図14に示す回折構造とを組み合わせた回折構造とすることも可能である。これについて、図15及び図16を用いて説明する。図15は、本発明の実施の形態4の第2の変形例における回折構造を示す図である。図15に示す破線は、図13に示す回折構造の境界帯に、図14に示す回折構造の境界帯を重ね合わせたものである。
図13における境界帯RCは、領域R3の回折構造の断面形状を延長し、図14における境界帯RCは、領域R4の回折構造の断面形状を延長している。いずれの回折構造でも、位相を連続にすることが可能であるので、これらの中間の形態についても、位相を連続にすることが可能である。例えば、図15において、上向きの矢印Y1で示す位置を境に左側の断面形状は、実線の断面形状、すなわち領域R3の回折構造を延長した断面形状とし、右側の断面形状は、破線の断面形状、すなわち領域R4の回折構造を延長した断面形状とすることも可能である。
さらに、図15に示す境界帯RCの回折構造を領域R3側へ半周期伸ばすことも可能である。図16は、本発明の実施の形態4の第3の変形例における回折構造を示す図である。図16に示す破線は、図13に示す回折構造の境界帯に、図14に示す回折構造の境界帯を重ね合わせたものである。図16において、上向きの矢印Y2で示す位置を境に左側の境界帯RC2の断面形状は、実線の断面形状、すなわち領域R3の回折構造を延長した断面形状とし、右側の境界帯RC1の断面形状は、破線の断面形状、すなわち領域R4の回折構造を延長した断面形状としてもよい。
要は、各領域の断面形状の、最上位段と最下位段との間を一周期と定義した時に、図13のように、6段7レベルの断面形状の一周期の中央の点と、3段4レベルの最上位段又は最下位段とを一致させる。そして、具体的形状としては、図13に示す断面形状を基準として、位相変化に応じて境界帯RCにおける領域R3と領域R4との接続点を図16に示すように左右に変更することが可能である。
接続部を上記のように変更すればよい理由は、6段7レベルの断面形状の一周期の中央の点と、3段4レベルの最上位段又は最下位段とが、いずれも平均レベルMの位相に一致しているためである。一般化して考えると、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の断面形状がNE段かつ(NE+1)レベル(NEは正の偶数)の階段状の断面を有する回折構造では、最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とする。また、最上位レベルと最下位レベルとの間の断面形状がNO段かつ(NO+1)レベル(NOは正の奇数)の階段状の断面を有する回折構造では、最上位レベル又は最下位レベルの点を基準点とする。また、図3に例示したような鋸歯状の断面を有する回折構造では、最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点が平均レベルMの位相に一致するので、最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とすればよい。
従って、第1の回折構造は、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNE段かつ(NE+1)レベル(NEは正の偶数)の階段状の断面を有する。また、第2の回折構造は、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNO段かつ(NO+1)レベル(NOは正の奇数)の階段状の断面を有する。そして、第1の回折構造と第2の回折構造とを混在させる場合、第1の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第2の回折構造の最上位レベル又は最下位レベルの点を基準点とし、第1の回折構造を有する領域と第2の回折構造を有する領域との境界部分では、第1の回折構造の基準点と第2の回折構造の基準点とを一致させればよい。
また、第3の回折構造は、鋸歯状の断面を有する。第1の回折構造と第3の回折構造とを混在させる場合、第1の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第3の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第1の回折構造を有する領域と第3の回折構造を有する領域との境界部分では、第1の回折構造の基準点と第3の回折構造の基準点とを一致させればよい。
また、第2の回折構造と第3の回折構造とを混在させる場合、第2の回折構造の最上位レベル又は最下位レベルの点を基準点とし、第3の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第2の回折構造を有する領域と第3の回折構造を有する領域との境界部分では、第2の回折構造の基準点と第3の回折構造の基準点とを一致させればよい。
すなわち、領域R3と領域R4とにはそれぞれ、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNE段(NE+1)レベル(NEは正の偶数)の階段状の断面を有する第1の回折構造と、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNO段(NO+1)レベル(NOは正の奇数)の階段状の断面を有する第2の回折構造と、鋸歯状の断面を有する第3の回折構造とのうちのいずれかの回折構造が形成される。領域R3と領域R4とには、それぞれ異なる回折構造が形成される。第1の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第2の回折構造の最上位レベル又は最下位レベルの点を基準点とし、第3の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、境界帯では、領域R3の回折構造の基準点と領域R4の回折構造の基準点とを一致させる。
上記の境界帯の回折構造の作成方法を基準として、図16を用いて説明したように、領域R3と領域R4との接続点を左右(レンズの半径方向)に変更することが可能である。本実施の形態において基準点を一致させるとは、このように接続点を左右(レンズの半径方向)に変更することを含んでいる。
また、領域R4の外周側に例えば図6の領域R2を形成する場合は、実施の形態2と同様にして領域R4と領域R2との位相を合わせればよい。また、赤色光については領域R3と領域R4との位相を合わせる必要があるが、本実施の形態4では、赤色光についても領域R3と領域R4との位相を整合させることができる。
なお、これまでは、一周期の回折格子を中心に説明してきたが、図11の領域R3をホログラムレンズにしたときの概念図を図17に示す。図17は、図11の領域R3の回折構造が形成されたホログラムレンズを示す概念図である。図17において、ホログラムレンズH1は、青色光に対して凸レンズ作用を与え、赤色光及び赤外光に対して凹レンズ作用を与える構成である。ホログラムレンズH1は、CD及びDVDから情報を再生する時のレンズと光ディスク表面との間の距離を確保するために有利な構成である。なお、素子材(硝材)と空間とを逆転すれば、ホログラムレンズH1は、青色光に対して凹レンズ作用を与え、赤色光及び赤外光に対して凸レンズ作用を与える構成となる。
なお、本発明では回折格子の断面形状として鋸歯状又は階段状の断面形状を図示する際、典型的な断面形状を図示してきた。実際にレンズを作成する際には、作成誤差、作成工具の形状又は作成工法の都合により、鋸歯の頂点又は谷が丸みを帯びたり、階段の角が丸みを帯びたり、傾斜角度が多少異なったりする場合もあるが、原理的に本発明の思想に合致する境界帯の回折構造を有することにより、位相のずれを最小限に抑えることが本質であり、多少の形状差にはこだわらない。
また、回折格子の一周期とは、入射光の位相と回折光の位相との差が2πの整数倍になる長さであり、回折角度に応じて変化するものである。
さらに、レンズ性能を様々な角度で捉えたときに、位相を意識的に不連続になるよう設計する場合もある。その場合は、本発明の構成を基本とし、位相の不連続分をφとして、係数AをA=φ/2πと定義し、回折次数の絶対値をNK(NKは自然数)として、一周期に係数Aを乗算した値をNKで除算した距離だけ横軸方向(レンズの半径方向)にずらせばよい。このような場合も本発明の応用であり、変形例である。
なお、本実施の形態4において、領域R4は、図3の領域R20の回折構造と同じであってもよく、領域R4のさらに外周部には、図3の領域R10と同じ回折構造を有する領域を設けてもよい。領域R4と領域R10との間には、図3の境界帯RBが形成される。また、領域R4と領域R2との間にも境界帯(例えば図7の領域R7又は図8の領域R7及びR8)が形成される。つまり、領域R4と、領域R4の外周側の領域とは、実施の形態1及び実施の形態2において説明した回折構造が適用可能である。
なお、本実施の形態において、領域R3が第1の領域の一例に相当し、領域R4が第2の領域の一例に相当し、領域R2が第3の領域の一例に相当し、境界帯RCが第2の境界帯及び境界帯の一例に相当する。
(実施の形態5)
さらに、CD、DVD及びBDの互換レンズの構成例について図18を用いて説明する。図18は、本発明の実施の形態5における複合対物レンズの構成を示す図である。複合対物レンズ13は、光学素子131と対物レンズ14とを備える。
光学素子131は、回折型又は位相段差型の光学素子であり、屈折面を片面又は両面に形成しても良い。なお、図18に示す光学素子131は、光ディスク側の面のみに屈折面が形成されている。光学素子131には、一方の面に凹面の屈折面が形成される。凹面の屈折面と、青色光に対して凸レンズとして作用する回折構造又は位相段差素子とを組み合わせてレンズパワーを相殺することにより、光学素子131全体として青色光の基準波長に対するレンズパワーをゼロにすることができる。そうすれば、光学素子131と組み合わせて用いる屈折型の対物レンズ14を、厚さt1を有する光ディスク9の透明基材を通して所定の開口数NA1以上で収束できるよう設計すればよいので、対物レンズ14の製造時の検査を容易にできるという効果がある。
なお、光ディスク9は、例えばBDであり、厚さt1の透明基材を有する。光ディスク10は、例えばDVDであり、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を有する。光ディスク11は、例えばCDであり、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を有する。
いずれにせよ、対物レンズ14は、波長λ1の青色光ビームを、光学素子131によって変調した後、厚さt1を有する光ディスク9の透明基材を通して情報記録面9a上へさらに集光するように設計される。また、対物レンズ14は、波長λ2の赤色光ビームを、光学素子131の回折構造又は位相段差型光学素子によって変調した後、厚さt2を有する光ディスク10の透明基材を通して情報記録面10a上へさらに集光するように設計される。さらに、対物レンズ14は、波長λ3の赤外光ビームも、光学素子131によって変調した後、厚さt3を有する光ディスク11の透明基材を通して情報記録面11a上へさらに集光するように設計される。
各波長の光ビームは、波長の違いと、前述した回折次数の違いと、位相段差から与えられる位相の違いと、屈折型の対物レンズ14の波長に依存する屈折率の違い(分散)とを利用して、異なる厚さの透明基材を通過する際に情報記録面に収束されるように設計できる。
また、回折構造を対物レンズ14の表面に直接形成し、光学素子131と対物レンズ14とを一体化してもよく、この場合、部品点数を削減することができる。例えば、図6に示した格子形状を対物レンズの表面に一体形成する場合であれば、対物レンズ14の表面、すなわち屈折面に合わせて平均レベルMを変形させ、回折格子の断面形状を平均レベルMの変形と同様に変形させればよい。従って、対物レンズの表面が非球面であれば、図6において水平に描いた各階段面や、鋸歯形状の斜面部分も非球面にする。また、対物レンズの表面に段差を形成する設計であれば、図6の格子形状に更に段差を重畳した形状にする。
本実施の形態の対物レンズがフラットであると仮定した場合の格子形状と、対物レンズの表面の非球面形状とを合わせた対物レンズの形状も本発明の権利範囲内であることは言うまでもない。
CD、DVD及びBDは、それぞれ光を収束する際に適した開口数NAが異なる。BDに適した開口数NA1は0.85以上である。DVDに適した開口数NA2は0.6〜0.67程度である。CDに適した開口数NA3は0.45〜0.55程度である。開口数が上記の開口数NA1〜NA3の値より小さければ光ビームを記録面上において十分に小さく絞ることができない。また、開口数が上記の開口数NA1〜NA3の値より大きすぎれば、光ディスクが変形して傾いた場合等に大きな波面の乱れが生じ、安定した情報の記録又は再生に適さない。
開口数NA3は、開口数NA2及び開口数NA1に比べて小さくする必要があるため、光学素子131には光軸を中心とした同心円状の3つの領域を設ける。最内周の領域131Cには、上述の実施の形態3で述べた図11の領域R3と同じ回折構造が形成される。最内周の領域131Cに入射した赤外光63は、破線で示すように約1.2mmの厚さt3を有する透明基材を通して情報記録面11a上に収束される。
最内周の領域131Cの外側の領域131Bには、図11の領域R4、言い換えると、図6の領域R1と同じ回折構造が形成される。中周の領域131Bと最内周の領域131Cとに入射した赤色光62は、約0.6mmの厚さt2を有する透明基材を通して情報記録面10a上に収束される。
中周の領域131Bの外側の領域131Fには、図6の領域R2と同じ回折構造が形成される。最内周の領域131Cと中周の領域131Bと外周の領域131Fとに入射した青色光61は、約0.1mmの厚さt1を有する透明基材を通して情報記録面9a上に収束される。
このように、最内周の領域131Cは、赤外光が用いられるCD、赤色光が用いられるDVD、及び青色光が用いられるBDのすべてで兼用される領域である。最も短波長である青色光61は、屈折型の対物レンズ14の分散が大きい上に、焦点深度が浅いので軸上色収差を補正することが望ましい。軸上色収差の補正は、光学素子131の回折構造が凸レンズ作用を有するように設計することよって実現できる。
上述の実施の形態の回折素子構造を用いれば、破線で示す赤外光63又は2点鎖線で示す赤色光62は、青色光61の場合とは逆の作用を受けるので、凹レンズ作用が発揮され、焦点距離が長くなる。特に、赤外光63は赤色光62より波長が長いために凹レンズ作用を強く受ける。このため、赤色光62の焦点距離は、青色光61の焦点距離より長くなり、赤外光63の焦点距離は、赤色光62の焦点距離より長くなる。したがって、赤色光62又は赤外光63の焦点位置を対物レンズ14からより遠くへ移動させることができて、光ディスク10又は光ディスク11の厚い透明基材を通して焦点を結ぶことができる。つまり、対物レンズ14の表面と、光ディスク10又は光ディスク11の表面との間隔、すなわち作動距離(ワーキングディスタンス:WD)を確保できるという効果がある。
図19は、図18の光学素子131を示す図である。図19の上側の図は、光学素子131を示す平面図であり、図19の下側の図は、光学素子131を示す図18と同様の断面図である。図18を用いて説明したとおり、光学素子131の回折構造は、内中周境界131Aの内側の最内周の領域131Cと、内中周境界131Aと中外周境界131Eとの間の中周の領域131Bと、中外周境界131Eと光ビームの有効範囲131Dとの間の外周の領域131Fとで異なる。
内周の領域131Cは、光学素子131と光軸との交点、すなわち光学素子131の中心を含む領域である。この領域131Cは、赤外光ビームを用いて光ディスク11に情報を記録又は再生する際と、赤色光ビームを用いて光ディスク10に情報を記録又は再生する際と、青色光ビームを用いて光ディスク9に情報を記録又は再生する際とに使用される。
中周の領域131Bは、赤色光ビームを用いて光ディスク10に情報を記録又は再生する際と、青色光ビームを用いて光ディスク9に情報を記録又は再生する際とに使用される。赤外光ビームを用いて光ディスク11に情報を記録又は再生する際は、この領域131Bを通過した赤外光ビームは収束されず、開口数NA3は、開口数NA1及び開口数NA2より小さくする。
外周の領域131Fは、青色光ビームを用いて光ディスク9に情報を記録又は再生する際のみに使用される。赤色光ビームを用いて光ディスク10に情報を記録又は再生する際又は赤外光ビームを用いて光ディスク11に情報を記録又は再生する際は、この領域131Fを通過した赤色光ビーム又は赤外光ビームは収束されず、開口数NA2は、開口数NA1より小さくする。
なお、外周の領域131Fには、図6の領域R2のように、鋸歯形状の断面を有する回折構造を設けて青色光の回折効率をより高くすることが望ましい。加工の容易さを考えると、2次回折又は3次回折が起こるように、領域131Fの周期と深さとを2倍又は3倍にすることが望ましい。
また、DVDとBDとの互換再生を行い、CDとの互換再生を行わない場合は、領域131Cを省略し、領域131Bが光軸付近まで形成される。
また、青色光が回折構造によって凸レンズ作用を受けるように、回折構造を凸レンズ型にすることによって、波長λ1が、数nm程度変化した場合の焦点距離変化を低減することもできる。
また、青色光の焦点距離よりも赤色光の焦点距離が長く、かつ、赤色光の焦点距離よりも赤外光の焦点距離が長くなるように設計することにより、あるいは、赤色光及び赤外光がいずれも回折構造によって凹レンズ作用を受けるように設計することにより、対物レンズの表面と光ディスクの表面との間の空間(作動距離)をより長くすることもできる。
(実施の形態6)
図20は、本発明の実施の形態6における光ヘッド装置の概略構成を示す図である。図20において、光ヘッド装置は、レーザ光源1、リレーレンズ2、3ビーム格子3、ビームスプリッタ4、1/4波長板5、集光レンズ6、光検出器7、コリメートレンズ8、立ち上げミラー12、複合対物レンズ13、アクチュエータ15、ビームスプリッタ16、2波長レーザ光源20、リレーレンズ21、3ビーム格子22、検出回折素子31、検出レンズ32及び光検出器33を備える。複合対物レンズ13は、対物レンズ14及び光学素子131を備える。
レーザ光源1は、390nm〜415nmの範囲内であり、標準的には408nmぐらいである波長λ1の青色光を出射する。2波長レーザ光源20は、630nm〜680nmの範囲内であり、標準的には660nmである波長λ2の赤色光と、770nm〜810nmの範囲内であり、標準的には780nmである波長λ3の赤外光とを出射する。コリメートレンズ8は、光を平行光に変換する。立ち上げミラー12は光軸を折り曲げる。
光ディスク9は、基材厚みt1が約0.1mm(製造誤差を含め0.11mm以下の基材厚を約0.1mmと呼ぶ)又は0.1mmより薄い基材厚みであり、波長λ1の光ビームによって情報が記録又は再生されるBD等の第3世代の光ディスクである。光ディスク10は、基材厚みt2が約0.6mm(製造誤差を含め0.5mm〜0.7mmの基材厚を約0.6mmと呼ぶ)であり、波長λ2の光ビームによって情報が記録又は再生されるDVD等の第2世代の光ディスクである。光ディスク11は、基材厚みt3が約1.2mm(製造誤差を含め0.8mm〜1.5mmの基材厚を約1.2mmと呼ぶ)であり、波長λ3の光ビームによって情報が記録又は再生されるCD等の第1世代の光ディスクである。
図20に示す光ディスク9及び光ディスク10は、光の入射面から記録面までの基材のみを図示している。実際には、機械的強度を補強し、また、外形をCD(光ディスク11)と同じ1.2mmにするため、基材と保護板とが張り合わせられる。光ディスク10では、基材は、厚み0.6mmの保護材と張り合わされる。光ディスク9では、基材は、厚み1.1mmの保護材と張り合わされる。光ディスク11でも、基材は、薄い保護材と張り合わされる。図20では、簡単化のため、保護材は省略している。
なお、図20では、光ヘッド装置が、波長λ2と波長λ3との2波長の光を出射する2波長レーザ光源20を備える構成を示しているが、波長毎にそれぞれ別個の光源と、各光源からの光の光路を合わせるダイクロイックミラーとを備える構成であってもよい。
また、DVDとBDとの互換再生を行い、CDの互換再生を行わない場合は、赤外レーザ光源を省略することもできる。
レーザ光源1及び2波長レーザ光源20は、好ましくは半導体レーザ光源で構成することにより、光ヘッド装置、及び当該光ヘッド装置を備える光情報装置を小型、軽量及び低消費電力にすることができる。
最も記録密度の高い光ディスク9に情報を記録又は再生する際には、レーザ光源1から出射した波長λ1の青色光61がビームスプリッタ4によって反射され、コリメートレンズ8によって略平行光に変換される。略平行光に変換された青色光61は、立ち上げミラー12によって光軸が折り曲げられ、1/4波長板5によって円偏光に変換される。1/4波長板5は、波長λ1及び波長λ2の両方の光に対して、1/4波長板として作用するように設計する。さらに、円偏光に変換された青色光61は、光学素子131と対物レンズ14とによって厚さ約0.1mmの光ディスク9の透明基材を通して情報記録面9aに集光される。ここで、図面の都合上、立ち上げミラー12は光ビームを図面の上方に曲げるように記述したが、実際には図面から手前(又は奥)へ図面に対して垂直な方向へ光ビームの光軸を折り曲げる構成とする。
情報記録面9aで反射した青色光61は、もとの光路を逆にたどって(復路)、1/4波長板5によって往路とは直角方向の直線偏光に変換され、ビームスプリッタ4をほぼ全透過し、ビームスプリッタ16で全反射される。ビームスプリッタ16を反射した青色光61は、検出回折素子31によって回折され、さらに検出レンズ32によって焦点距離が伸ばされて、光検出器33に入射する。光検出器33の出力が演算されることによって、焦点制御又はトラッキング制御に用いるサーボ信号と、情報信号とが得られる。
上記のように、ビームスプリッタ4は、波長λ1の青色光61に関しては、1方向の直線偏光を全反射し、それと直角方向の直線偏光を全透過する偏光分離膜を具備する。かつ、後で述べるように、ビームスプリッタ4は、波長λ2の赤色光62又は波長λ3の赤外光63に関しては、2波長レーザ光源20から出射する赤色光62又は赤外光63を全透過する。このように、ビームスプリッタ4は、偏光特性と共に波長選択性を持った光路分岐素子である。なお、ビームスプリッタ4から偏光依存性をなくすことにより、1/4波長板5を省略することも可能である。
次に、光ディスク10に情報を記録又は再生する際には、2波長レーザ光源20から出射した略直線偏光で波長λ2の赤色光62がビームスプリッタ16とビームスプリッタ4とを透過し、コリメートレンズ8によって略平行光に変換される。略平行光に変換された赤色光62は、さらに立ち上げミラー12によって光軸が折り曲げられ、光学素子131と対物レンズ14とによって厚さ約0.6mmの光ディスク10の透明基材を通して情報記録面10aに集光される。
情報記録面10aで反射した赤色光62は、もとの光路を逆にたどって(復路)、ビームスプリッタ4をほぼ全透過し、ビームスプリッタ16で全反射される。ビームスプリッタ16を反射した赤色光62は、検出回折素子31によって回折され、さらに検出レンズ32によって焦点距離が伸ばされて、光検出器33に入射する。光検出器33の出力が演算されることによって、焦点制御又はトラッキング制御に用いるサーボ信号と、情報信号とが得られる。このように、青色光と赤色光とで共通の光検出器33から、光ディスク9及び光ディスク10のサーボ信号を得るためには、レーザ光源1の発光点と2波長レーザ光源20の赤色光の発光点とを、対物レンズ14側の共通の位置に対して結像関係にあるように配置する。こうすることにより、光検出器の数も配線数も減らすことができる。
ビームスプリッタ16は、波長λ2の赤色光62に関しては、1方向の直線偏光を全透過し、それと直角方向の直線偏光を全反射する偏光分離膜である。かつ、ビームスプリッタ16は、波長λ1の青色光61に関しては全反射する。このように、ビームスプリッタ16も、偏光特性と共に波長選択性を持った光路分岐素子である。なお、ビームスプリッタ16から偏光依存性をなくすことにより、1/4波長板5を省略することも可能である。なお、光源20と光検出器33との位置関係を入れ替える構成も可能である。
2波長レーザ光源20から赤外光63を出射させて光ディスク11に情報を記録又は再生する際の動作は、2波長レーザ光源20から赤色光62を出射させて光ディスク10に情報を記録又は再生する際の動作と同様である。
さらに、以下に、光ヘッド装置の全体構成として付加的に有効な構成例について説明する。ただし、本実施の形態の重要な点は、光ディスク9、光ディスク10及び光ディスク11の互換再生又は記録を実現するための光学素子131、あるいは光学素子131と対物レンズ14とを組み合わせた複合対物レンズ13にある。光学素子131又は複合対物レンズ13以外に説明する構成は、下記の内容を含め、すでに説明した構成でも、ビームスプリッタ、検出レンズ及び検出回折素子は必須の構成ではなく、好ましい構成としてそれぞれ効果を有するものの、それ以外の構成も適宜使用可能である。
図20において、光ヘッド装置は、レーザ光源1からビームスプリッタ4までの間に3ビーム格子(回折素子)3をさらに備えることにより、光ディスク9のトラッキングエラー信号をよく知られたディファレンシャルプッシュプル(DPP)法によって検出することも可能である。
また、光ヘッド装置は、レーザ光源1からビームスプリッタ4までの間にリレーレンズ2をさらに備えることにより、青色光61のコリメートレンズ8における光取り込み率を適正なものにすることが可能である。
さらに、光ヘッド装置は、2波長レーザ光源20からビームスプリッタ16までの間に3ビーム格子(回折素子)22をさらに備えることにより、光ディスク10のトラッキングエラー信号をよく知られたディファレンシャルプッシュプル(DPP)法によって検出することも可能である。
また、光ヘッド装置は、コリメートレンズ8を光軸方向(図20の左右方向)へ動かすことにより、光ビームの平行度を変化させることも有効である。基材が厚み誤差を有する場合や、光ディスク9が2層ディスクの場合に、層間厚みに起因する球面収差が発生するが、このようにコリメートレンズ8を光軸方向に動かすことによって、球面収差を補正することができる。
このように、コリメートレンズ8を動かすことにより、光ディスクに対する集光光の開口数が0.85の場合に数100mλ程度の球面収差を補正することが可能であり、±30μmの基材厚み誤差を補正することもできる。また、赤外光63を用いて光ディスク11に情報を記録又は再生する場合に、コリメートレンズ8を図20の左側、すなわち2波長レーザ光源20へ近い側に移動させることによって、対物レンズ14へ向かう赤外光63を発散光にする。これにより、光ディスク11に対する集光スポットをより対物レンズ14から離すと共に、基材厚みに起因する収差の一部を補正し、光学素子131に求められる収差補正量を低減して回折構造ピッチを広くし、光学素子131の作成を容易にすることもできる。
さらに、ビームスプリッタ4に入射した、レーザ光源1から出射する直線偏光の青色光の一部(例えば10%程度)を透過させ、透過した青色光をさらに集光レンズ6によって光検出器7へ導いてもよい。そして、光検出器7から得られる信号を用いてレーザ光源1の発光光量変化をモニタし、モニタされた発光光量変化をフィードバックして、レーザ光源1の発光光量を一定に保つ制御を行うこともできる。
さらに、ビームスプリッタ4に入射した、2波長レーザ光源20から出射する直線偏光の光の一部(例えば10%程度)を反射させ、反射した光をさらに集光レンズ6によって光検出器7へ導いてもよい。そして、光検出器7から得られる信号を用いて2波長レーザ光源20の発光光量変化をモニタし、モニタされた発光光量変化をフィードバックして、2波長レーザ光源20の発光光量を一定に保つ制御を行うこともできる。
(実施の形態7)
さらに、本発明の実施の形態6における光ヘッド装置を備える光情報装置について説明する。図21は、本発明の実施の形態7における光情報装置の概略構成を示す図である。光情報装置100は、駆動装置101、電気回路102、光ヘッド装置103及びモータ104を備える。
図21において、光ディスク9(又は光ディスク10又は光ディスク11)は、ターンテーブル105に載置され、ターンテーブル105とクランパー106で挟んで固定され、モータ104によって回転される。光ヘッド装置103は、実施の形態6で説明した光ヘッド装置である。駆動装置101は、光ディスク9の所望の情報の存在するトラックのところまで、光ヘッド装置103を粗動する。
光ヘッド装置103は、光ディスク9との位置関係に対応して、フォーカスエラー(焦点誤差)信号又はトラッキングエラー信号を電気回路102へ送る。電気回路102は、フォーカスエラー信号又はトラッキングエラー信号に対応して、光ヘッド装置103へ、対物レンズを微動させるための対物レンズ駆動信号を送る。光ヘッド装置103は、対物レンズ駆動信号に基づいて、光ディスク9に対してフォーカス制御又はトラッキング制御を行い、光ディスク9から情報を読み出したり、光ディスク9に情報を書き込んだり(記録したり)、光ディスク9から情報を消去したりする。
本実施の形態7の光情報装置100は、実施の形態6で上述した光ヘッド装置103を備える。したがって、単一の少ない部品点数によって構成された、小型、安価及び軽量の光ヘッド装置によって、記録密度の異なる複数の光ディスクに対応することができるという効果を有する。
(実施の形態8)
実施の形態8は、実施の形態7に記した光情報装置100を具備したコンピュータの実施の形態を示す。
上述の実施の形態7の光情報装置を具備した、あるいは、上述の記録又は再生方法を採用したコンピュータは、異なる種類の光ディスクに情報を安定に記録又は再生できるので、広い用途に使用できるという効果を有する。
図22は、本発明の実施の形態8におけるコンピュータの概略構成を示す図である。図22において、コンピュータ110は、実施の形態7の光情報装置100と、キーボード、マウス又はタッチパネルなどの情報を入力するための入力装置112と、入力装置112から入力された情報又は光情報装置100から読み出した情報などに基づいて演算を行う中央演算装置(CPU)などの演算装置111と、演算装置111によって演算された結果などの情報を表示するためのCRT(Cathode Ray Tube)モニタ又は液晶表示装置などの表示装置、又は情報を印刷するためのプリンタなどの出力装置113とを備える。演算装置111は、光情報装置100に記録する情報及び/又は光情報装置100から再生された情報を処理する。
なお、本実施の形態8において、コンピュータ110が情報処理装置の一例に相当し、演算装置111が情報処理部の一例に相当する。
(実施の形態9)
実施の形態9は、実施の形態7に記した光情報装置を具備した光ディスクプレーヤの実施の形態を示す。
上述の実施の形態7の光情報装置を具備した、あるいは、上述の記録又は再生方法を採用した光ディスクプレーヤは、異なる種類の光ディスクに情報を安定に記録又は再生できるので、広い用途に使用できるという効果を有する。
図23は、本発明の実施の形態9における光ディスクプレーヤの概略構成を示す図である。図23において、光ディスクプレーヤ120は、実施の形態7の光情報装置100と、光情報装置100から得られる情報信号を画像情報に変換するデコーダ121とを備える。デコーダ121は、光情報装置100に記録する情報及び/又は光情報装置100から再生された情報を処理する。また、本構成の光ディスクプレーヤ120は、GPS(Global Positioning System)と組み合わせるなどしてカーナビゲーションシステムとしても利用できる。また、光ディスクプレーヤ120は、液晶表示装置などの情報を表示するための表示装置122を加えた形態も可能である。
なお、本実施の形態9において、光ディスクプレーヤ120が情報処理装置の一例に相当し、デコーダ121が情報処理部の一例に相当する。
(実施の形態10)
実施の形態10は、実施の形態7に記した光情報装置を具備した光ディスクレコーダの実施の形態を示す。
上述の実施の形態7の光情報装置を具備した、あるいは、上述の記録又は再生方法を採用した光ディスクレコーダは、異なる種類の光ディスクに情報を安定に記録又は再生できるので、広い用途に使用できるという効果を有する。
図24を用いて実施の形態10の光ディスクレコーダについて説明する。図24は、本発明の実施の形態10における光ディスクレコーダの概略構成を示す図である。図24において、光ディスクレコーダ130は、実施の形態7の光情報装置100と、画像情報を、光情報装置100によって光ディスクへ記録する情報信号に変換するエンコーダ132とを備える。エンコーダ132は、光情報装置100に記録する情報及び/又は光情報装置100から再生された情報を処理する。
望ましくは、光ディスクレコーダ130は、光情報装置100から得られる情報信号を画像情報に変換するデコーダ121を備えることにより、光ディスクに既に記録した情報を再生することも可能となる。また、光ディスクレコーダ130は、情報を表示するためのPDP(プラズマディスプレイパネル)又は液晶表示装置などの表示装置、又は情報を印刷するためのプリンタなどの出力装置113を備えてもよい。
なお、本実施の形態10において、光ディスクレコーダ130が情報処理装置の一例に相当し、エンコーダ132が情報処理部の一例に相当する。
(実施の形態11)
実施の形態11は、実施の形態7に記した光情報装置を具備した光ディスクサーバの実施の形態を示す。
図25を用いて実施の形態11の光ディスクサーバについて説明する。図25は、本発明の実施の形態11における光ディスクサーバの概略構成を示す図である。図25において、光ディスクサーバ140は、実施の形態7の光情報装置100と、光情報装置100によって記録又は再生される情報の入出力を外部と行う入出力部141とを備える。
光情報装置100は、実施の形態7に記した光情報装置である。また、入出力部141は、光情報装置100に記録する情報を外部から取り込み、光情報装置100から読み出した情報を外部に出力する。入出力部141は、光情報装置100に記録する情報及び/又は光情報装置100から再生された情報を処理する。入出力部141は、有線又は無線によりネットワーク142に接続されている。入出力部141は、ネットワーク142を介して、例えば、コンピュータ、電話機又はテレビチューナーなどの複数の機器と情報を送受信する。これにより、光ディスクサーバ140は、これら複数の機器によって共有される情報サーバとして利用することが可能となる。
光ディスクサーバ140は、異なる種類の光ディスクに情報を安定に記録又は再生できるので、広い用途に使用できる効果を有する。なお、光ディスクサーバ140は、情報を表示するためのPDP又は液晶表示装置などの表示装置、又は情報を印刷するためのプリンタなどの出力装置113を備えてもよい。また、光ディスクサーバ140は、キーボード、マウス又はタッチパネルなどの情報を入力するための入力装置112を備えてもよい。
さらに、光ディスクサーバ140は、複数の光ディスクを光情報装置100に出し入れするチェンジャー143を備えてもよい。これにより、多くの情報を記録及び蓄積することができる。
なお、本実施の形態11において、光ディスクサーバ140が情報処理装置の一例に相当し、入出力部141が情報処理部の一例に相当する。
なお、上述の実施の形態8〜11において図22〜図25には出力装置113及び表示装置122を示しているが、コンピュータ110、光ディスクプレーヤ120、光ディスクレコーダ130及び光ディスクサーバ140は、それぞれ出力端子を備えて、出力装置113又は表示装置122を備えない商品形態があり得ることはいうまでもない。また、図23及び図24には入力装置は図示していないが、光ディスクプレーヤ120及び光ディスクレコーダ130は、キーボード、タッチパネル、マウス又はリモートコントロール装置などの情報を入力するための入力装置を備えてもよい。逆に、上述の実施の形態8〜11において、コンピュータ110、光ディスクプレーヤ120、光ディスクレコーダ130及び光ディスクサーバ140は、入力装置を備えず、入力端子のみを備える形態も可能である。
(実施の形態12)
実施の形態12は、実施の形態7に記した光情報装置を具備した車両の実施の形態を示す。
図26を用いて実施の形態12の車両について説明する。図26は、本発明の実施の形態12における車両の概略構成を示す図である。図26において、車両150は、光情報装置100、車体151、動力発生部152、燃料貯蔵部153、電源154、車輪155、ハンドル156、チェンジャー157、光ディスク収納部158、演算装置159、半導体メモリ160、表示装置161、アンプ162、スピーカ163、位置センサ164及び無線通信部165を備える。
光情報装置100は、実施の形態7に記した光情報装置である。車体151は、光情報装置100を搭載する。動力発生部152は、車体151を動かすための動力を発生する。また、燃料貯蔵部153は、動力発生部152へ供給する燃料を貯蔵する。電源154は、車体151内の各部に電力を供給する。このように、車体151に本実施の形態7の光情報装置100を搭載することにより、移動体の中に居ながらにして、様々な種類の光ディスクに情報を安定に記録又は再生できる。また、車両150が電車又は車である場合は、車両150は、走行のために車輪155をさらに備える。また、車両150が車であれば、車両150は、方向を変えるためのハンドル156を備える。
さらに、車両150はチェンジャー157及び光ディスク収納部158を備えることにより、手軽に多数の光ディスクを利用可能にすることができる。また、車両150は、光ディスクから得られる情報を加工して画像にする演算装置159、情報を一時的に蓄える半導体メモリ160及び情報を表示するための表示装置161を備えることにより、光ディスクから映像情報を再生することができる。演算装置159は、光情報装置100に記録する情報及び/又は光情報装置100から再生された情報を処理する。また、車両150は、アンプ162とスピーカ163とを備えることにより、光ディスクから音声又は音楽を再生することができる。
そして、車両150は、GPSなどの位置センサ164を備えることにより、光ディスクから再生した地図情報と併せて、現在位置又は進行方向を表示装置161に表示することができるとともに、現在位置又は進行方向を音声としてスピーカ163から出力することができる。さらに、車両150は、無線通信部165を備えることにより、無線通信部165を介して外部から情報が取得され、外部から取得した情報と光ディスクから再生した情報とを相補的に利用することができる。
なお、本実施の形態12において、車両150が情報処理装置の一例に相当し、演算装置159が情報処理部の一例に相当する。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る複合対物レンズは、回折構造を有する光学素子と、屈折型レンズとを備え、前記回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた第1の境界帯とを含み、前記第1の領域と前記第2の領域とには、鋸歯状又は階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第1の領域に形成した鋸歯状又は階段状の断面の高さは、所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記所定の波長のN倍の光路長差を与え、前記第2の領域に形成した鋸歯状又は階段状の断面の高さは、前記所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記所定の波長のJ倍の光路長差を与え、前記第1の境界帯の両端の高低差及び前記第1の境界帯の幅の少なくとも一方は、前記所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記所定の波長の(N+J)/2倍(NとJとは互いに異なる自然数)の光路長差を与える。
この構成によれば、複合対物レンズは、回折構造を有する光学素子と、屈折型レンズとを備える。回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、第1の領域と第2の領域との間に設けられた第1の境界帯とを含む。第1の領域と第2の領域とには、鋸歯状又は階段状の断面を有する回折構造が形成される。第1の領域に形成した鋸歯状又は階段状の断面の高さは、所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて所定の波長のN倍の光路長差を与える。また、第2の領域に形成した鋸歯状又は階段状の断面の高さは、所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて所定の波長のJ倍の光路長差を与える。さらに、第1の境界帯の両端の高低差及び第1の境界帯の幅の少なくとも一方は、所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて所定の波長の(N+J)/2倍(NとJとは互いに異なる自然数)の光路長差を与える。なお、N倍の光路長差、J倍の光路長差及び(N+J)/2倍の光路長差は、それぞれ1割程度の変動を含む。
したがって、第1の領域と第2の領域との間に設けられた第1の境界帯の両端の高低差及び第1の境界帯の幅の少なくとも一方によって、所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて所定の波長の(N+J)/2倍(NとJとは互いに異なる自然数)の光路長差が与えられるので、光源波長が設計値からずれている場合であっても、位相ずれを回避することができ、収差の発生を抑制することができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記所定の波長の光は、波長λ1の青色光であり、前記第1の領域は、前記第2の領域の外周側に形成され、前記第2の領域に形成した鋸歯状の断面の高さは、前記波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1の2倍の光路長差を与え、前記第1の領域に形成した鋸歯状の断面の高さは、前記波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1のN倍(Nは2以外の自然数)の光路長差を与え、前記第1の境界帯の両端の高低差及び前記第1の境界帯の幅の少なくとも一方は、前記波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1の(N+2)/2倍の光路長差を与え、前記第1の領域は、波長λ2の赤色光に対して1次回折光を最も強く発生し、前記波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生し、前記第2の領域から発生する青色光の2次回折光と、前記第1の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第2の領域から発生する赤色光の1次回折光は、前記厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第1の領域は、第2の領域の外周側に形成される。第2の領域に形成した鋸歯状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1の2倍の光路長差を与える。また、第1の領域に形成した鋸歯状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1のN倍(Nは2以外の自然数)の光路長差を与える。さらに、第1の境界帯の両端の高低差及び第1の境界帯の幅の少なくとも一方は、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1の(N+2)/2倍の光路長差を与える。そして、第1の領域は、波長λ2の赤色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生する。第2の領域から発生する青色光の2次回折光と、第1の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第2の領域から発生する赤色光の1次回折光は、厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。なお、2倍の光路長差、N倍の光路長差及び(N+2)/2倍の光路長差は、それぞれ1割程度の変動を含む。
したがって、第2の領域から発生する青色光の2次回折光と、第1の領域から発生する青色光のN次回折光とを、厚さt1の透明基材を通して情報記録面に収束させることができ、第2の領域から発生する赤色光の1次回折光を、厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して情報記録面に収束させることができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記回折構造は、前記第2の領域の内側に形成された第3の領域と、前記第2の領域と第3の領域との間に設けられた第2の境界帯とをさらに含み、前記第3の領域には、(N2−1)段N2レベル(N2は正の偶数)の階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第2の領域には、(M2−1)段M2レベル(M2は、N2とは異なる正の偶数であり、かつN2より小さい)の階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第2の境界帯には、前記第3の領域と前記第2の領域との平均レベルを一致させるとともに、(N2+M2)/2レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成されることが好ましい。
この構成によれば、回折構造は、第2の領域の内側に形成された第3の領域と、第2の領域と第3の領域との間に設けられた第2の境界帯とをさらに含む。そして、第3の領域には、(N2−1)段N2レベル(N2は正の偶数)の階段状の断面を有する回折構造が形成される。第2の領域には、(M2−1)段M2レベル(M2は、N2とは異なる正の偶数であり、かつN2より小さい)の階段状の断面を有する回折構造が形成される。第2の境界帯には、第3の領域と第2の領域との平均レベルを一致させるとともに、(N2+M2)/2レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。
したがって、第3の領域と第2の領域との間に設けられた第2の境界帯によって、第3の領域と第2の領域との位相を合わせることができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第3の領域には、7段8レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第2の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第3の領域及び前記第2の領域のそれぞれの階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与え、前記第3の領域に形成する前記7段8レベルの階段状の断面の8レベルを、低い方から高い方へ順にレベル0,1,2,3,4,5,6,7と定義したとき、前記第2の領域に形成する前記3段4レベルの階段状の断面形状の4レベルは、前記第3の領域の前記レベル2,3,4,5と同じ高さに設定され、前記第3の領域は、波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生し、前記第2の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生し、前記第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、前記第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、前記厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、前記厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第3の領域には、7段8レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。第2の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。そして、第3の領域及び第2の領域のそれぞれの階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与える。第3の領域に形成する前記7段8レベルの階段状の断面の8レベルを、低い方から高い方へ順にレベル0,1,2,3,4,5,6,7と定義したとき、第2の領域に形成する3段4レベルの階段状の断面形状の4レベルは、第3の領域のレベル2,3,4,5と同じ高さに設定される。第3の領域は、波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生する。第2の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、第2の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。なお、1.25波長の光路長差及び0.75波長の光路長差は、それぞれ1割程度の変動を含む。
したがって、第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、第2の領域から発生する青色光の1次回折光とを、厚さt1の透明基材を通して情報記録面に収束させることができ、第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とを、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して情報記録面に収束させることができ、第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光を、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して情報記録面に収束させることができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第2の境界帯には、前記第3の領域の前記レベル0,1,2,3,4,5と同じレベルの階段状の断面を有する回折構造が形成されることが好ましい。
この構成によれば、第2の境界帯には、第3の領域のレベル0,1,2,3,4,5と同じレベルの階段状の断面を有する回折構造が形成されるので、第3の領域と第2の領域との位相を合わせることができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第1の領域には、鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第1の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与え、前記第1の領域に形成した鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与え、前記第1の境界帯には、前記第2の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、前記第2の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから前記第1の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成され、前記第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光の1次回折光と、前記第1の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、前記第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、前記厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、前記厚さt2よりも大きい厚さt3の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第1の領域には、鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面を有する回折構造が形成される。第1の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与える。第1の領域に形成した鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与える。第1の境界帯には、第2の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、第2の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから第1の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成される。第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、第2の領域から発生する青色光の1次回折光と、第1の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2よりも大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。なお、N倍の光路長差は、1割程度の変動を含む。
したがって、第1の領域は、青色光を第2の領域と共に大きな開口数で収束するように回折するとともに、第2の領域とは異なる方向に赤色光を回折し、第1の領域に入射した赤色光は実質的に収束されないので、青色光よりも小さな開口数で赤色光を収束できる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記赤色光の焦点距離は、前記青色光の焦点距離よりも長く、かつ、前記赤外光の焦点距離は、前記赤色光の焦点距離よりも長いことが好ましい。
この構成によれば、赤色光の焦点距離は、青色光の焦点距離よりも長く、かつ、赤外光の焦点距離は、赤色光の焦点距離よりも長いので、赤色光又は赤外光の焦点位置を複合対物レンズからより遠くへ移動させることができ、光ディスクの厚い透明基材を通して焦点を結ぶことができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記赤色光及び前記赤外光は、前記回折構造によって凹レンズ作用を受けることが好ましい。
この構成によれば、赤色光及び赤外光は、回折構造によって凹レンズ作用を受けるので、赤色光及び赤外光の焦点距離を長くすることができる。
本発明の他の局面に係る複合対物レンズは、回折構造を有する光学素子と、屈折型レンズとを備え、前記回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた第1の境界帯とを含み、前記第1の領域には、階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第1の領域の階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与え、前記第2の領域には、鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面を近似する階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第2の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与え、前記第2の領域に形成した鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与え、前記第1の境界帯には、前記第1の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、前記第1の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから前記第2の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成され、前記第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生し、前記第2の領域は、波長λ1の青色光に対してN次回折光を最も強く発生し、前記第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光は、前記厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。
この構成によれば、複合対物レンズは、回折構造を有する光学素子と、屈折型レンズとを備える。回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、第1の領域と第2の領域との間に設けられた第1の境界帯とを含む。第1の領域には、階段状の断面を有する回折構造が形成されている。第1の領域の階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与える。第2の領域には、鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面を近似する階段状の断面を有する回折構造が形成されている。第2の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与える。第2の領域に形成した鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与える。第1の境界帯には、第1の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、第1の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから第2の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成されている。第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。第2の領域は、波長λ1の青色光に対してN次回折光を最も強く発生する。第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、第2の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光は、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。なお、1.25波長の光路長差、0.75波長の光路長差及びN倍の光路長差は、それぞれ1割程度の変動を含む。
したがって、階段形状の断面を有する第1の領域の一端では、第1の領域は第1の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さ、すなわち平均レベルと同じ位相に近似され、第2の領域の位相と整合させることができるので、光源波長が設計値からずれている場合であっても、位相ずれを回避することができ、収差の発生を抑制することができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記N=3であり、前記第1の境界帯には、前記第1の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、前記第1の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから前記第2の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、3/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対して3/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成され、前記第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生し、前記第2の領域は、波長λ1の青色光に対して3次回折光を最も強く発生し、前記第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光の3次回折光とは、前記厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光は、前記厚さt2の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第1の境界帯には、第1の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、第1の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから第2の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、3/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対して3/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成される。第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。第2の領域は、波長λ1の青色光に対して3次回折光を最も強く発生する。第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、第2の領域から発生する青色光の3次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光は、厚さt2の透明基材を通して収束する。
したがって、第1の領域は、青色光を第2の領域と共に大きな開口数で収束するように回折するとともに、第2の領域とは異なる方向に赤色光を回折し、第1の領域に入射した赤色光は実質的に収束されないので、青色光よりも小さな開口数で赤色光を収束できる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記回折構造は、前記第1の領域の内側に形成された第3の領域と、前記第1の領域と前記第3の領域との間に設けられた第2の境界帯とをさらに含み、前記第3の領域には、(N2−1)段N2レベル(N2は正の偶数)の階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第1の領域には、(M2−1)段M2レベル(M2は、N2とは異なる正の偶数であり、かつN2より小さい)の階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第2の境界帯には、前記第3の領域と前記第1の領域との平均レベルを一致させるとともに、(N2+M2)/2レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成されることが好ましい。
この構成によれば、回折構造は、第1の領域の内側に形成された第3の領域と、第1の領域と第3の領域との間に設けられた第2の境界帯とをさらに含む。第3の領域には、(N2−1)段N2レベル(N2は正の偶数)の階段状の断面を有する回折構造が形成される。第1の領域には、(M2−1)段M2レベル(M2は、N2とは異なる正の偶数であり、かつN2より小さい)の階段状の断面を有する回折構造が形成される。第2の境界帯には、第3の領域と第1の領域との平均レベルを一致させるとともに、(N2+M2)/2レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。
したがって、第1の領域と第3の領域との間に設けられた第2の境界帯によって、第3の領域と第1の領域との位相を合わせることができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第3の領域には、7段8レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第1の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第3の領域及び前記第1の領域のそれぞれの階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与え、前記第3の領域に形成する前記7段8レベルの階段状の断面の8レベルを、低い方から高い方へ順にレベル0,1,2,3,4,5,6,7と定義したとき、前記第1の領域に形成する前記3段4レベルの階段状の断面形状の4レベルは、前記第3の領域の前記レベル2,3,4,5と同じ高さに設定され、前記第3の領域は、波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生し、前記第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生し、前記第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、前記第1の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、前記第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、前記厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、前記厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第3の領域には、7段8レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。第1の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する回折構造が形成される。第3の領域及び第1の領域のそれぞれの階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与える。第3の領域に形成する7段8レベルの階段状の断面の8レベルを、低い方から高い方へ順にレベル0,1,2,3,4,5,6,7と定義したとき、第1の領域に形成する3段4レベルの階段状の断面形状の4レベルは、第3の領域のレベル2,3,4,5と同じ高さに設定される。第3の領域は、波長λ1の青色光に対して2次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生する。第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、第1の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。なお、1.25波長の光路長差及び0.75波長の光路長差は、それぞれ1割程度の変動を含む。
したがって、第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、第1の領域から発生する青色光の1次回折光とを、厚さt1の透明基材を通して情報記録面に収束させることができ、第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光とを、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して情報記録面に収束させることができ、第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光を、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して情報記録面に収束させることができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第2の境界帯には、前記第3の領域の前記レベル0,1,2,3,4,5と同じレベルの階段状の断面を有する回折構造が形成されることが好ましい。
この構成によれば、第2の境界帯には、第3の領域のレベル0,1,2,3,4,5と同じレベルの階段状の断面を有する回折構造が形成されるので、第3の領域と第1の領域との位相を合わせることができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第2の領域には、鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第2の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与え、前記第2の領域に形成した鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与え、前記第1の境界帯には、前記第1の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、前記第1の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから前記第2の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成され、前記第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、前記第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、前記第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、前記厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束し、前記第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、前記厚さt2よりも大きい厚さt3の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第2の領域には、鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面を有する回折構造が形成される。第2の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与える。第2の領域に形成した鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与える。第1の境界帯には、第1の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、第1の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから第2の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成される。第3の領域から発生する青色光の2次回折光と、第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、第2の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第1の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。第3の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2よりも大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。なお、N倍の光路長差は、1割程度の変動を含む。
したがって、第2の領域は、青色光を第1の領域と共に大きな開口数で収束するように回折するとともに、第1の領域とは異なる方向に赤色光を回折し、第2の領域に入射した赤色光は実質的に収束されないので、青色光よりも小さな開口数で赤色光を収束できる。
本発明の他の局面に係る複合対物レンズは、回折構造を有する光学素子と、屈折型レンズとを備え、前記回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた境界帯とを含み、前記第1の領域と前記第2の領域とにはそれぞれ、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNE段(NE+1)レベル(NEは正の偶数)の階段状の断面を有する第1の回折構造と、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNO段(NO+1)レベル(NOは正の奇数)の階段状の断面を有する第2の回折構造と、鋸歯状の断面を有する第3の回折構造とのうちのいずれかの回折構造が形成され、前記第1の領域と前記第2の領域とには、それぞれ異なる回折構造が形成され、第1の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第2の回折構造の最上位レベル又は最下位レベルの点を基準点とし、第3の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、前記境界帯では、前記第1の領域の回折構造の基準点と前記第2の領域の回折構造の基準点とを一致させる。
この構成によれば、複合対物レンズは、回折構造を有する光学素子と、屈折型レンズとを備える。回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、第1の領域と第2の領域との間に設けられた境界帯とを含む。第1の領域と第2の領域とにはそれぞれ、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNE段(NE+1)レベル(NEは正の偶数)の階段状の断面を有する第1の回折構造と、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNO段(NO+1)レベル(NOは正の奇数)の階段状の断面を有する第2の回折構造と、鋸歯状の断面を有する第3の回折構造とのうちのいずれかの回折構造が形成される。第1の領域と第2の領域とには、それぞれ異なる回折構造が形成される。第1の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第2の回折構造の最上位レベル又は最下位レベルの点を基準点とし、第3の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、境界帯では、第1の領域の回折構造の基準点と第2の領域の回折構造の基準点とを一致させる。
したがって、境界帯において、第1の領域の回折構造の基準点と第2の領域の回折構造の基準点とを一致させるので、第1の領域と第2の領域との位相の連続性を実現でき、光源波長が設計値からずれている場合であっても、位相ずれを回避することができ、収差の発生を抑制することができる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第1の領域には、6段7レベルの階段状の断面を有する前記第1の回折構造が形成され、前記第2の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する前記第2の回折構造が形成され、前記第1の回折構造及び前記第2の回折構造の階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.14波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.7波長の光路長差を与え、前記境界帯は、前記第1の領域の0.5周期分の階段を有し、前記第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生し、前記第2の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生し、前記第1の領域から発生する青色光の2次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、前記第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、前記厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、前記厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第1の領域には、6段7レベルの階段状の断面を有する第1の回折構造が形成される。第2の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する第2の回折構造が形成される。第1の回折構造及び第2の回折構造の階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.14波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.7波長の光路長差を与える。境界帯は、第1の領域の0.5周期分の階段を有している。第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生する。第2の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。第1の領域から発生する青色光の2次回折光と、第2の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。なお、1.14波長の光路長差及び0.7波長の光路長差は、それぞれ1割程度の変動を含む。
したがって、青色光、赤色光及び赤外光に対する最も強い回折が、それぞれ異なる次数で発生するので、青色光、赤色光及び赤外光のそれぞれで回折方向が大きく異なり、この差を利用して異なる基材厚を通して収束するように設計可能となる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記第1の領域には、6段7レベルの階段状の断面を有する前記第1の回折構造が形成され、前記第2の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する前記第2の回折構造が形成され、前記第1の回折構造及び前記第2の回折構造の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.14波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.7波長の光路長差を与え、前記境界帯は、前記第2の領域の0.5周期分の階段を有し、前記第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生し、前記第2の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生し、前記第1の領域から発生する青色光の2次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、前記第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、前記厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、前記厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、第1の領域には、6段7レベルの階段状の断面を有する第1の回折構造が形成される。第2の領域には、3段4レベルの階段状の断面を有する第2の回折構造が形成される。第1の回折構造及び第2の回折構造の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.14波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.7波長の光路長差を与える。境界帯は、第2の領域の0.5周期分の階段を有している。第1の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−2次回折光を最も強く発生する。第2の領域は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生する。第1の領域から発生する青色光の2次回折光と、第2の領域から発生する青色光の1次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2より大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。なお、1.14波長の光路長差及び0.7波長の光路長差は、それぞれ1割程度の変動を含む。
したがって、青色光、赤色光及び赤外光に対する最も強い回折が、それぞれ異なる次数で発生するので、青色光、赤色光及び赤外光のそれぞれで回折方向が大きく異なり、この差を利用して異なる基材厚を通して収束するように設計可能となる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記回折構造は、前記第2の領域の外側に形成された第3の領域を含み、前記第3の領域には、鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第3の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与え、前記第3の領域に形成した鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与え、前記第2の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端には、前記第2の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから前記第3の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成され、前記第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光の1次回折光と、前記第3の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、前記第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、前記厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束し、前記第1の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、前記厚さt2よりも大きい厚さt3の透明基材を通して収束することが好ましい。
この構成によれば、回折構造は、第2の領域の外側に形成された第3の領域を含む。第3の領域には、鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面を有する回折構造が形成される。第3の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与える。第3の領域に形成した鋸歯状の断面、又は鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与える。第2の領域に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端には、第2の領域の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから第3の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成される。第1の領域から発生する青色光の1次回折光と、第2の領域から発生する青色光の1次回折光と、第3の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤色光の−2次回折光と、第2の領域から発生する赤色光の−1次回折光とは、厚さt1よりも大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。第1の領域から発生する赤外光の−3次回折光は、厚さt2よりも大きい厚さt3の透明基材を通して収束する。なお、N倍の光路長差は、1割程度の変動を含む。
したがって、第3の領域は、青色光を第2の領域と共に大きな開口数で収束するように回折するとともに、第2の領域とは異なる方向に赤色光を回折し、第3の領域に入射した赤色光は実質的に収束されないので、青色光よりも小さな開口数で赤色光を収束できる。
また、上記の複合対物レンズにおいて、前記青色光は、前記回折構造によって凸レンズ作用を受けることが好ましい。この構成によれば、青色光は、回折構造によって凸レンズ作用を受けるので、軸上色収差を補正することができる。
本発明の他の局面に係る光ヘッド装置は、波長λ1の青色光を出射する第1の光源と、波長λ2の赤色光を出射する第2の光源と、前記第1の光源から出射された前記青色光を厚さt1の透明基材を通して光ディスクの記録面上へ集光するとともに、前記第2の光源から出射された前記赤色光を前記厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して光ディスクの記録面上へ集光する上記のいずれかに記載の複合対物レンズと、前記光ディスクの記録面上で反射した前記青色光又は前記赤色光を受光し、受光量に応じて電気信号を出力する光検出器とを備える。
この構成によれば、第1の光源は、波長λ1の青色光を出射する。第2の光源は、波長λ2の赤色光を出射する。上記のいずれかに記載の複合対物レンズは、第1の光源から出射された青色光を厚さt1の透明基材を通して光ディスクの記録面上へ集光するとともに、第2の光源から出射された赤色光を厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して光ディスクの記録面上へ集光する。光検出器は、光ディスクの記録面上で反射した青色光又は赤色光を受光し、受光量に応じて電気信号を出力する。したがって、上記の複合対物レンズを光ヘッド装置に適用することができる。
本発明の他の局面に係る光情報装置は、上記の光ヘッド装置と、光ディスクを回転させるモータと、前記光ヘッド装置から得られる電気信号に基づいて、前記モータ及び前記光ヘッド装置を制御する制御部とを備える。この構成によれば、上記の光ヘッド装置を光情報装置に適用することができる。
本発明の他の局面に係る情報処理装置は、上記の光情報装置と、前記光情報装置に記録する情報及び/又は前記光情報装置から再生された情報を処理する情報処理部とを備える。この構成によれば、上記の光情報装置を情報処理装置に適用することができる。
本発明の他の局面に係る光学素子は、回折構造を有する光学素子であって、前記回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた第1の境界帯とを含み、前記第1の領域と前記第2の領域とには、鋸歯状又は階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第1の領域に形成した鋸歯状又は階段状の断面の高さは、所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記所定の波長のN倍の光路長差を与え、前記第2の領域に形成した鋸歯状又は階段状の断面の高さは、前記所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記所定の波長のJ倍の光路長差を与え、前記第1の境界帯の両端の高低差及び前記第1の境界帯の幅の少なくとも一方は、前記所定の波長の光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記所定の波長の(N+J)/2倍(NとJとは互いに異なる自然数)の光路長差を与える。
本発明の他の局面に係る光学素子は、回折構造を有する光学素子であって、前記回折構造は、第1の領域R1と、第2の領域と、前記第1の領域R1と前記第2の領域との間に設けられた第1の境界帯とを含み、前記第1の領域R1には、階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第1の領域R1の階段の1段の高さdaは、波長λ1の青色光に対して1.25波長の光路長差を与え、波長λ2の赤色光に対して0.75波長の光路長差を与え、前記第2の領域には、鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面を近似する階段状の断面を有する回折構造が形成され、前記第2の領域の階段の1段の高さdsは、波長λ1の青色光に対して0.5波長未満の光路長差を与え、前記第2の領域に形成した鋸歯状の断面、又は前記鋸歯状の断面に近似する階段状の断面の高さは、波長λ1の青色光に対して、空気中を透過する場合に比べて前記波長λ1のN倍(Nは自然数)の光路長差を与え、前記第1の境界帯には、前記第1の領域R1に形成した階段状の断面を有する回折構造の一周期の一端における、前記第1の領域R1の最上位レベルと最下位レベルとの中間の高さから前記第2の領域の鋸歯状の傾斜方向へ、N/2周期分の幅を有する傾斜、及び波長λ1の青色光に対してN/2波長の光路長差を与える高低差を有する傾斜の少なくとも一方が形成され、前記第1の領域R1は、波長λ1の青色光に対して1次回折光を最も強く発生し、波長λ2の赤色光に対して−1次回折光を最も強く発生し、前記第2の領域は、波長λ1の青色光に対してN次回折光を最も強く発生し、前記第1の領域R1から発生する青色光の1次回折光と、前記第2の領域から発生する青色光のN次回折光とは、厚さt1の透明基材を通して収束し、前記第1の領域R1から発生する赤色光の−1次回折光は、前記厚さt1より大きい厚さt2の透明基材を通して収束する。
本発明の他の局面に係る光学素子は、回折構造を有する光学素子であって、前記回折構造は、第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた境界帯とを含み、前記第1の領域と前記第2の領域とにはそれぞれ、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNE段(NE+1)レベル(NEは正の偶数)の階段状の断面を有する第1の回折構造と、1段が1波長以上1.5波長以下の光路長差を与える階段から構成され、最上位レベルと最下位レベルとの間の形状がNO段(NO+1)レベル(NOは正の奇数)の階段状の断面を有する第2の回折構造と、鋸歯状の断面を有する第3の回折構造とのうちのいずれかの回折構造が形成され、前記第1の領域と前記第2の領域とには、それぞれ異なる回折構造が形成され、第1の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、第2の回折構造の最上位レベル又は最下位レベルの点を基準点とし、第3の回折構造の最上位レベルと最下位レベルとの間の中央の点を基準点とし、前記境界帯では、前記第1の領域の回折構造の基準点と前記第2の領域の回折構造の基準点とを一致させる。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。