JP5567337B2 - ポリマー被膜及びそれらを形成させる方法 - Google Patents

ポリマー被膜及びそれらを形成させる方法 Download PDF

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Description

本発明は、様々な基材材料(有機及び無機基材を含めて)の表面を改質する方法及びプロセスに関する。一層特には、本発明は、基材の表面をポリマーで少なくとも部分的に被覆して、基材の残部の機能性質とは異なる機能性質を基材の表面に付与するようにすることに関する。たとえば、医療用途において、基材の表面に付与された機能性質は、特定の生物学的応答を誘起するべき能力であり得る。
多くの用途において、材料又は器具のバルク性質とその材料又は器具の表面性質の間に差異を設けることが重要である。バルク材料つまり基材材料は、機械的性質又は屈折性質のような予定用途に適したバルク性質のセットを与える。しかしながら、多くの用途において、基材材料の表面性質は、予定用途に適していないか又は理想的でない。従って、これらの基材材料について、基材の使用の妨げとなり得るところの基材の表面性質を遮蔽するために、表面改質が要求される。
たとえば、バルク材料の性質を遮蔽するための表面改質は、医療用途において有用である。ポリマー製角膜アンレー又は金属製股関節インプラントのようなインプラントのバルク材料は、屈折性質及び/又は機械的性質について選択される。しかしながら、バルク材料の表面性質は細胞付着のような所望の生物学的応答を妨害し得、あるいはタンパク質ファウリングのような不所望な生物学的応答を引き起こし得る。更に、表面改質は、バルク材料それ自体の性質により達成され得ないところの材料又は器具に対する生物学的応答に関して、ある程度の制御を達成するために用いられ得る。生物学的応答に関しての制御を達成し得るやり方の例は、器具の表面上のペプチド若しくは薬物のような特異性の生理活性シグナルの表示又は器具の表面と周囲の生物学的媒質の間の非特異的相互作用の防止を包含する。
バルク材料の表面性質を遮蔽するために開発された一つの表面改質技法は、基材表面上におけるポリマーの固定化である。これは、一般的に、吸着又は共有結合型結合により、様々な度合いの成功及び完全さでもって達成されてきた。
吸着は、表面上に高分子を固定化する最も簡単な方法である。しかしながら、吸着被膜は或る条件下で脱着し得、しかして様々な医療用途における表面改質技法として、吸着の適切さを限定する。たとえば、インプラントのような長期間生理的条件下にとどまるようにもくろまれた器具は、それらの機能表面被膜を失い得、しかしてそれらの環境中にポリマーを浸出させる。更に、単純吸着は広く様々な基材材料に容易には適用可能でなく、何故なら基材の性質は被膜ポリマーを引きつけそして保持するのに適していないからである。基材の性質が適切であるかどうかはまた、施用されることになっているポリマーのタイプに依存するであろう。
国際公開第03/042724号パンフレットは、吸着に基づいて材料表面を被覆するためのより精巧なプロセスであって、a)無機又は有機バルク材料を用意し、b)1種又はそれ以上のポリイオン性分子を用意し、しかもそれらの少なくとも一つはラジカル重合のための共有結合で結合されたペンダントイニシエーター部分を有し、c)工程b)のポリイオン性物質を工程a)のバルク材料に施用し、それによりバルク材料表面上に親水性層を形成させ、そしてd)このポリイオン性物質に親水性モノマー又はマクロモノマーをグラフト重合させる工程を含むプロセスを記載する。この手法の不利は、吸着表面改質技法について記載されたような被膜の脱着の可能性を含む。更に、グラフトポリマー被膜のアーキテクチャーに関しての制御は限定される。
その代わりに、ポリマーが基材の表面上に共有結合型結合により固定化される。充実基材上のグラフトポリマー被膜を得るための様々な種々のプロセスが記載されてきた。この技法のいくつかの例は、次のものを包含する。
1)欧州特許出願公開第1,095,711号明細書は、医療用基材材料の被覆のために用いられ得るところの慣用のラジカル重合イニシエーターの基材への共有結合型付着を記載する。この手法は、典型的には、基材の表面の全面にわたってのイニシエーターの不確定で一貫しない密度(しばしば望ましくない)に通じる。更に、不利なことに、この手順で達成され得るイニシエーター密度は限定される。最後に、引き続いてグラフトされる被膜のアーキテクチャーに関して、限定された制御があるにすぎない。
2)イニシエーターを含有する自己集合単分子層も用いられてきた。たとえば、Boven等[Boven,G.、Folkersma,R.、Challa,G.、Schouten,A.J.,Polym. Commun.,32(1991),50]は、ガラスビーズを3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理して表面上にアミノ官能基を得た。次いで、このg−APS改質表面と酸塩化物官能基化アゾイニシエーターとの間のアミド結合の形成を通じて、アゾイニシエーターが表面上に固定化された。引き続く表面開始ラジカル重合は、つながれたPMMA鎖を生成させた。この手法の不利もまた、基材の表面の全面にわたってのイニシエーターの不確定で一貫しない且つ限定された密度及びグラフト被膜のアーキテクチャーに関しての限定された制御を含む。更に、この手法は、その適用性及び有用性をシリカタイプの材料に限定する多工程表面被覆手法を用いる。
3)Sugawara,T.、Matsuda,T.,Macromolecules,27(1994),7809は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)基材上にポリ(アクリルアミド)をグラフトさせることを記載する。最初に、基材は、光反応性フェニルアジド基で部分的に誘導体化されたポリ(アリルアミン)で被覆される。次いで、このアミノ化ポリマーは、UV照射によりPET基材の表面に結合された。次いで、このポリアミン改質表面上に、カルボキシル化アゾイニシエーターが縮合反応を通じて固定化された。最後に、モノマー溶液中でのラジカル重合により、つながれたポリマーがもたらされた。やはり、この技法は、その適用性を限定する多工程表面被覆手法を用いる。この手法の他の不利もまた、基材の表面の全面にわたってのイニシエーターの不確定で一貫しない且つ限定された密度及びグラフト被膜のアーキテクチャーに関しての限定された制御を含む。
4)グラフト重合イニシエーターもまた、イニシエーターを含有する溶液中における単純膨潤及びイニシエーターを含有する溶液中における引き続くグラフト重合により、充実基材上に固定化されてきた。米国特許第6,358,557号明細書は、この概念を開示する。更に、国際公開第03/083040号パンフレットは、イニシエーターが組み込まれているプライマー層の使用を教示する。この方法はまた、膨潤することが可能でない充実基材に対して用いられ得る。基材依存性問題は別として、この手法の不利もまた、基材の表面の全面にわたってのイニシエーターの不確定で一貫しない且つ限定された密度及びグラフト被膜のアーキテクチャーに関しての限定された制御を含む。更に、共有結合型付着の欠如は、被膜の部分脱着に通じ得る。
ATRPイニシエーターは、表面ヒドロキシル基とのシラン反応によってシリカ表面に及びチオール基を含有するATRPイニシエーターと金表面との反応により金表面に共有結合で付着されてきた[Pyun,J.、Kowalewski,T.、Matyjaszewski,K.,Macromolecular Rapid Communications,24(2003),1043]。しかしながら、シリカ及び金のような基材の使用への依存性は、この技術の適用性を限定する。加えて、更なる不利は、シランから形成された自己集合層はいくぶん不安定である[Wang,A.等,Journal of Colloid and Interface Science,291(2005),438]及び非再現性である[Halliwell,C.M.、Cass,A.E.G.,Analytical Chemistry,73(2001),2476]と示されてきたこと、並びに金とチオールの間(非共有結合型相互作用)で形成された自己集合層は経時的に不安定である[Willey,T.M.等,Surface Science,576(2005),188]と示されてきたことを含む。更に、かかる改質表面の形成は比較的複雑であり(基材は入念に清浄に且つ乾燥されているという要件を伴う)、また表面被膜は基材上に均一に分配されていないことがあり得る。イニファーターのような他のイニシエーターの共有結合型付着もまた、シリカ(シランによって)[Lee,H.J.、Nakayama,Y.、Masuda,T.,Macromolecules,32(1999),6989]及びポリスチレン(誘導体化反応によって)[Nakayama,Y.、Matsuda,T.,Langmuir,15(1999),5560、Kawaguchi,H.、Isono,Y.、Tsugi,S.,Macromolecular Symposia,179(2002),75]のような基材上にグラフトポリマー層を形成させるために用いられてきた。しかしながら、先に論考されたように、シリカ及びポリスチレンのような特定の基材についてもくろまれた表面改質スキームは、その技術の適用性を厳しく限定する。
本明細書におけるいずれの先行技術への言及も、この先行技術がオーストラリア国若しくはどこかの他の法域において一般常識の一部を成す又はこの先行技術が当業者により関連があると確認される、理解される若しくはみなされると合理的に予期され得るという認諾又は何らかの示唆形態ではなく、そしてそのようにとられるべきでない。
本発明は、基材の表面上にポリマー被膜を形成させる代替の安定で広く適用可能な方法に関する。
有利には、本発明は、密度、均一性及び厚さのような前もって決定された表面被膜特性を信頼可能に達成するところのポリマー表面被膜を形成させる方法に関する。この利点は、第1レベルにおいて基材の表面に共有結合で結合された高分子(macromolecule)における重合イニシエーターの密度及び分布に関しての制御により、そして第2レベルにおいて重合イニシエーターからのグラフトによるペンダントポリマーの形成に関しての制御により達成される。
従って、第1の側面において、本発明は、基材の表面上に重合イニシエーターを制御可能に定着させる方法であって、該方法は高分子(macromolecule)を該表面に共有結合で結合させることを含み、しかも該高分子は複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基を含む方法を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
更なる側面において、本発明は、基材の表面上に重合イニシエーターを制御可能に定着させる方法であって、該方法は高分子を該表面に複数個の共有結合によって共有結合で結合させることを含み、しかも該高分子は複数個の重合イニシエーターを含む方法を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
更に更なる側面において、本発明は、基材の表面上に重合イニシエーターを制御可能に定着させる方法であって、該方法は前もって決定されたモル比の重合イニシエーターが共有結合で結合されている高分子を該基材の表面に共有結合で結合させることを含む方法を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを有する。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
本明細書及び請求項において用いられる場合、表面上に重合イニシエーターを定着させることに関しての用語「制御可能に」は、イニシエーターの均一性、密度及び利用可能性のような該表面上における該イニシエーターの定着又は相対定着の特性を指図するように本方法を適用するべき能力を指す。これらのような因子を調整する又は調節するべき能力の限界は、基材の改善表面改質のために、当該技術において共通限界である。これらの因子はある程度(より低い密度又は利用可能性の意味で)制御され得るけれども、これは最終製品の生じる性質を低減する傾向がある。本発明は、最終製品の改善性質のためにこれらの因子を積極的に調節することに向けられる。
本明細書及び請求項において用いられる場合、用語「重合イニシエーター」又は「イニシエーター」は、重合を開始させるところの又は重合を開始させる反応性化学種を生成することが可能であるところの任意の化合物を意味する。
本明細書及び請求項において用いられる場合、用語「前もって決定された」は、基材の表面に共有結合で結合された高分子における重合イニシエーターの所望の密度及び分布を達成するのに十分なモル比の重合イニシエーターの選択を指す。前もって決定されたモル比は、イニシエーターの比率が制御可能でありそして諸例において示されているように変動され得る且つあらかじめ決定され得ることを表す。
用語「モル比」は、高分子における重合イニシエーターの密度の尺度である。この用語は、高分子中の希釈剤モノマー単位当たりの重合イニシエーターの数の比率を指すために用いられる。
高分子中のイニシエーター基のモル比の制御は、高分子被膜を担持する基材上のイニシエーターの表面密度に関しての制御を可能にする。従って、高分子被膜中のイニシエーターの密度は、高分子中のイニシエーター基の前もって決定されたモル比により制御される。このことは有利であり、何故なら引き続くポリマー被膜に関してより大きいレベルの制御を提供し、しかしてポリマー被膜の密度はイニシエーターの予測可能な表面密度から信頼可能にもたらされることができるからである。その代わりに、基材の表面上に存在するイニシエーター基の密度は、表面に付着された高分子の量を基材の全面にわたってあるグラジエントにて変動させる(これはペンダントポリマー分子の引き続く性質に影響を与えることになる)ことにより制御され得る。
高分子は、基材の表面に複数個の共有結合によって付着され得る。高分子を基材の表面に結合させるための複数個の共有結合の使用は、高分子被膜の安定性を改善し得る。共有結合は、一つの具体的態様において、基材表面における官能基と高分子における相補的官能基との反応により形成され得る。その代わりに、高分子はレイヤー・バイ・レイヤー技術を用いて基材に施用され得、しかして引き続いて架橋されてこれらの層間の共有結合及びまた基材表面との共有結合が形成される。かかるプロセスは、単純なレイヤー・バイ・レイヤー施用と比較して、高分子被膜の安定性及び不溶性を増加する。
高分子は、基材の予定最終用途に及び高分子を施用する選ばれた方法に適した任意の高分子であり得る。
重合イニシエーターは、アニオン性、カチオン性又はフリーラジカルイニシエーターであり得る。好ましくは、イニシエーターは、リビング重合イニシエーターである。一層好ましくは、イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。かかるイニシエーターは、イニファーター、RAFT剤由来、ATRP、トリアリールメタン及びアルコキシアミン(ニトロキシド媒介)イニシエーターを包含する。
重合イニシエーターは、希釈剤モノマーとの共重合によるような重合中、組込みにより高分子に共有結合で結合され得る。その代わりに、イニシエーターは、共有結合を形成すべき予備形成高分子における官能ペンダント基と反応され得る。イニシエーターの組込みは、高分子が基材の表面に共有結合で結合される前に遂行される。
随意に、本方法は、更に、1つ又はそれ以上の重合イニシエーター定着特性を決定するという最初の工程を含む。例えば、高分子被膜中のイニシエーターの所望の密度が決定され得、しかしてこれは次いで高分子中の重合イニシエーターの適切なモル比の決定を指図することになる。
本発明の更に更なる側面は、基材の表面上に制御可能なポリマー表面被膜を作製する方法であって、該方法は高分子を該表面に共有結合で結合させ、しかも該高分子は複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基を含み、そして該重合イニシエーターの少なくともいくつかからペンダントポリマーをグラフトさせることを含む方法を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる。
一つの具体的態様において、この方法は、更に、ペンダントポリマーにグラフトされる追加的ポリマーを与えることを含む。
本発明の更に更なる側面は、基材の表面上に制御可能なポリマー表面被膜を作製する方法であって、該方法は高分子を該表面に複数個の共有結合によって共有結合で結合させ、しかも該高分子は複数個の重合イニシエーターを含み、そして該重合イニシエーターの少なくともいくつかからペンダントポリマーをグラフトさせることを含む方法を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる。
一つの具体的態様において、この方法は、更に、ペンダントポリマーにグラフトされる追加的ポリマーを与えることを含む。
本発明の更に更なる側面は、基材の表面上に制御可能なポリマー表面被膜を作製する方法であって、該方法は前もって決定されたモル比の重合イニシエーターが共有結合で結合されている高分子を該基材の表面に共有結合で結合させ、そして該重合イニシエーターの少なくともいくつかからペンダントポリマーをグラフトさせることを含む方法を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを有する。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる。
一つの具体的態様において、この方法は、更に、ペンダントポリマーにグラフトされる追加的ポリマーを与えることを含む。
本明細書及び請求項において用いられる場合、基材の表面上のポリマー表面被膜に関しての用語「制御可能な」は、上記に論考されたように該表面上におけるイニシエーターの定着を指図し、そして密度、厚さ、均一性、化学的性質及びアーキテクチャーのようなペンダントポリマー及び生じる被膜層の特性を指図することにより、ポリマー表面被膜の特性を指図するように本方法を適用するべき能力を指す。これらのような因子を調整する又は調節するべき能力の限界は、当該技術において共通限界である。本発明は、最終製品のポリマー被膜の改善性質のためにこれらの因子を積極的に調節することに向けられる。
好ましくは、重合イニシエーターはリビング重合イニシエーターであり、そして重合イニシエーターからグラフトさせるための重合プロセスはリビング重合プロセスである。そして一層好ましくは、重合イニシエーターは制御フリーラジカル重合イニシエーターであり、そして重合イニシエーターからペンダントポリマーをグラフトさせるための重合プロセスは制御フリーラジカルリビング重合プロセスである。有利なことに、リビング重合の使用は、リビング重合の特性の結果として、生じるポリマー被膜に関してのより大きい度合いの制御でもって本方法を用いることを提供する。例えば、リビング重合は、ペンダントポリマーの多分散性に関してのより大きい制御を提供する。これは、基材表面上のイニシエーターからグラフトさせることと組み合わされて、下にある基材のバルク性質を遮蔽するのに十分である制御厚さを有する均一な緻密被膜を指図するべき能力を与える。リビング重合はまた、ペンダントポリマー層のアーキテクチャーを積極的に調節する又は調整することを可能にする。例えば、リビング重合は、ペンダントポリマー層に諸ブロック又は諸グラジエントを生じさせて多数の性質又は特性を単一被膜に付与するために用いられ得る。従って、基材からペンダントポリマーをグラフトさせる際のリビング重合の使用は、制御ペンダントポリマーアーキテクチャーを含めて高制御被膜を作製するべき能力を提供する。
随意に、本方法は、更に、1つ又はそれ以上のポリマー表面被膜特性例えばポリマー被膜の所望の密度、密度グラジエント(すなわち、ある域についての密度の変動)又は被膜厚を決定するという最初の工程を含む。
更に更なる側面において、本発明は、制御可能なポリマー表面被膜であって、基材の表面に共有結合で結合される高分子であってしかも複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基を含む高分子と、該重合イニシエーターの少なくともいくつかからグラフトされたペンダントポリマーとを含む制御可能なポリマー表面被膜を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる。
制御可能なポリマー表面は、更に、ペンダントポリマーにグラフトされた追加的ポリマーを含み得る。
制御可能なポリマー表面被膜は、更に、ペンダントポリマーに付着された少なくとも1つの生物学的活性成分を含み得る。1つより多い生物学的活性成分がペンダントポリマーに付着される場合、これらの生物学的活性成分は相乗効果又は相補効果を有し得る。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御アーキテクチャーを有する。
好ましくは、ペンダントポリマーは、生物学的応答を調節する。最も好ましくは、ペンダントポリマーは、細胞接着を調節する。
好ましくは、制御可能なポリマー表面被膜は、貯蔵を含めて使用環境において長期間にわたって安定である。用語「安定」は表面被膜の使用環境に関して用いられ、そして当業者により理解されるように、表面被膜が無期限に安定であることを必ずしも意味しない。
更に更なる側面において、本発明は、制御可能なポリマー表面被膜であって、基材の表面に複数個の共有結合によって共有結合で結合される高分子であってしかも複数個の重合イニシエーターを含む高分子と、該重合イニシエーターの少なくともいくつかからグラフトされたペンダントポリマーとを含む制御可能なポリマー表面被膜を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる。
制御可能なポリマー表面は、更に、ペンダントポリマーにグラフトされた追加的ポリマーを含み得る。
制御可能なポリマー表面被膜は、更に、ペンダントポリマーに付着された少なくとも1つの生物学的活性成分を含み得る。1つより多い生物学的活性成分がペンダントポリマーに付着される場合、これらの生物学的活性成分は相乗効果又は相補効果を有し得る。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御アーキテクチャーを有する。
好ましくは、ペンダントポリマーは、生物学的応答を調節する。最も好ましくは、ペンダントポリマーは、細胞接着を調節する。
好ましくは、制御可能なポリマー表面被膜は、貯蔵を含めて使用環境において長期間にわたって安定である。用語「安定」は表面被膜の使用環境に関して用いられ、そして当業者により理解されるように、表面被膜が無期限に安定であることを必ずしも意味しない。
更に更なる側面において、本発明は、制御可能なポリマー表面被膜であって、前もって決定されたモル比の重合イニシエーターが共有結合で結合されている高分子であってしかも基材の表面に共有結合で結合される高分子と、該重合イニシエーターによって該高分子に共有結合で付着されたペンダントポリマーであってしかも均一な、緻密な及び/又は厚い層を形成するペンダントポリマーとを含む制御可能なポリマー表面被膜を提供する。
好ましくは、高分子は、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを有する。
好ましくは、重合イニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターである。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる。
制御可能なポリマー表面は、更に、ペンダントポリマーにグラフトされた追加的ポリマーを含み得る。
制御可能なポリマー表面被膜は、更に、ペンダントポリマーに付着された少なくとも1つの生物学的活性成分を含み得る。1つより多い生物学的活性成分がペンダントポリマーに付着される場合、これらの生物学的活性成分は相乗効果又は相補効果を有し得る。
好ましくは、ペンダントポリマーは、制御アーキテクチャーを有する。
好ましくは、ペンダントポリマーは、生物学的応答を調節する。最も好ましくは、ペンダントポリマーは、細胞接着を調節する。
好ましくは、制御可能なポリマー表面被膜は、貯蔵を含めて使用環境において長期間にわたって安定である。用語「安定」は表面被膜の使用環境に関して用いられ、そして当業者により理解されるように、表面被膜が無期限に安定であることを必ずしも意味しない。
用語「制御アーキテクチャー」は、重合の制御を通じて種々のタイプのポリマーを形成するべき能力を指す。当業者により知られているように、制御アーキテクチャーを備えたポリマーは、モルホロジーにおける様々なタイプ若しくは変型(線状、分枝状、星形、結合網状構造を包含するが、しかしそれらに限定されない)、組成における変型(ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ホモポリマー、グラフトコポリマー、テーパー状又はグラジエントコポリマーを包含するが、しかしそれらに限定されない)、架橋密度における変型及び/又は官能基における変型(末端、部位、特異性、テレケリック、多官能性及びマクロモノマーを包含するが、しかしそれらに限定されない)に関して設計され得る。
本明細書及び請求項において用いられる場合、用語「生物学的応答」は、生物学的応答を調節するべき制御ポリマー表面中のペンダントポリマーの性質を指す。かかる応答は、抗生応答、抗菌応答、細胞付着の促進又は阻止、タンパク質吸着の促進又は阻止を包含するが、しかしそれらに限定されない。
随意に、制御可能なポリマー表面被膜は、少なくとも1つの前もって決定された生物学的効果を奏する。
用語「制御フリーラジカル重合イニシエーター」は、制御フリーラジカル重合つまりリビングフリーラジカル重合を開始させるところの又は制御フリーラジカル重合つまりリビングフリーラジカル重合を開始させる反応性化学種を生成することが可能であるところの任意の化合物を意味する。
更に更なる側面において、本発明は、制御可能なポリマー表面被膜であって、基材の表面に複数個の共有結合によって共有結合で結合されることができる高分子であってしかも複数個の重合イニシエーターを含む高分子と、該重合イニシエーターの少なくともいくつかからグラフトされたペンダントポリマーとを含む制御可能なポリマー表面被膜を提供する。
用語「からグラフトさせる」は、つながれた重合イニシエーターからポリマー鎖を成長させることを意味する。「からグラフトさせる」は、「にグラフトさせる」(この用語は、基材の表面上の官能基への予備形成ポリマーの結合を包含する)から区別されるべきである。
次の論考において、用語「ポリマー被膜」は、重合イニシエーター及びそれらからグラフトされたペンダントポリマーを有する高分子の層を含む被膜を指す。対照的に、用語「高分子被膜」は、単に、基材に施用されそして該基材の表面に共有結合で結合されたところの重合イニシエーターを有する高分子の層であって、ペンダントポリマーのグラフトが行われる前の高分子の層を指す。
本明細書の全体を通じて、用語「リビング重合」と「制御重合」は、互換的に用いられる。リビング重合及び制御重合は、技術用語である。この重合様式に関する有用な参考文献は、Moad,G.、Solomon,D.H.,The Chemistry of Radical Polymerisation,第2版(完全改訂),Elsevier:ボストン,2006である。
本明細書及び請求項において用いられる場合、用語「含む」(又はその文法的変形)は、他の要素又は特徴の存在を排除するととられるべきでない。
諸具体的態様の詳細な記載
さて、本発明は、特定の諸具体的態様及び諸例に関して記載される。次の論考において、本発明の範囲を限定するよう意図されているものはない。
本発明のポリマー被膜は、広範囲の基材に施用され得る。適当な基材の例は、ガラス、石英、セラミック、シリカ鉱物、シリカゲル、金属、金属酸化物、木材炭素材料(グラファイト又はガラス状カーボンのような)、天然又は合成有機ポリマーのような無機又は有機基材を包含するが、しかしそれらに限定されない。ポリマー基材は、連鎖成長又は段階成長重合により作られたものを包含するが、しかしそれらに限定されない。連鎖成長ポリマーは、フリーラジカル法、基移動法、カチオン法又はアニオン法により作られたものを包含するが、しかしそれらに限定されない。連鎖成長ポリマーの例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル若しくはスチレンタイプのモノマー又はそれらの混合物から作られたものである。段階成長ポリマーは、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、チオール−エンポリマー及びポリウレタンを包含するが、しかしそれらに限定されない。これらの有機ポリマーは、シロキサンの形態のケイ素のような有意な無機成分を含有し得る。基材は、上記の材料の複合物又は積層物又は配合物であり得る。
被覆されるべき基材は、広範囲内の任意の形態をとり得る。例えば、基材は、医療用成形物若しくは工業用成形物のようなあらゆる種類及びサイズの成形物、ビーズ、顆粒、粒子(ナノ粒子及びミクロ粒子を含めて)、カプセル、チューブ、繊維、フィルム又はメンブランであり得る。基材はまた、スカフォールド、織布若しくは不織布、多孔質ポリマーモノリス又は架橋ヒドロゲルのような多孔質材料であり得る。基材の表面は、平坦状、非平坦状又は湾曲状であり得る。
ポリマー被膜は、基材に共有結合で付着される。基材上に存在する官能基は、高分子における相補官能基と反応するために用いられ得る。基材が適当な表面官能基を有していないならば、基材の表面は、官能基を導入するために当該技術において知られた方法により官能基化され得る。かかるプロセスは、プラズマ処理及びプラズマ重合を包含する。かかるプロセスにより表面に導入された官能基は、随意に、高分子における官能基を基材の表面における官能基と共有結合で結合する(直接的に又は別の分子によって)ようにするために、必要に応じて変性され得る。
本発明において用いるのに適した高分子化合物は、共有結合で結合された重合イニシエーターを含む。高分子はまた、希釈剤モノマー、及び高分子を基材の表面に共有結合で結合させるための官能基を含み得る。重合イニシエーターは、高分子が基材の表面に共有結合で結合される前に高分子に共有結合で結合される。
高分子中に存在する場合の希釈剤モノマーは、アルキル(メト)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メト)アクリレート、ハロアルキル(メト)アクリレート、アルコキシアルキル(メト)アクリレート、随意にモノ−N−置換された又はジ−N−置換されたアミノアルキル(メト)アクリレート、シクロアルキル(メト)アクリレート、フェノキシ(メト)アクリレート、アルキレングリコール(メト)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メト)アクリレート、(メト)アクリルアミド、(メト)アクリルアミドの誘導体、フマル酸のエステル、マレイン酸及びマレイン酸無水物及びマレイン酸のエステル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、並びにそれらの二つ又はそれ以上のコポリマーであり得る。用語(メト)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する。
適当な希釈剤モノマーは、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、アリルアクリレート、アクロレイン、アクリルアミド、アクリロイルクロライド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メタクリルアミド、メタクリロイルクロライド、アリルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルメタクリレート(及び他のフッ素化アルキルメタクリレート)、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルメタクリレート、4,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,9−ドデカフルオロ−2−ヒドロキシ−8−(トリフルオロメチル)ノニルメタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,8,8,8−ドデカフルオロ−7−(トリフルオロメチル)オクチルメタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,12,12,12−エイコサフルオロ−11−(トリフルオロメチル)ドデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、ブチル3−ブトキシメタクリレート、9H−カルバゾール−9−エチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、3−(ジエトキシメチルシリル)プロピルメタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、3−(ジメチルクロロシリル)プロピルメタクリレート、ディスパースレッド1メタクリレート、ディスパースレッド13メタクリレート、ディスパースイエロー7メタクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、エチレングリコールモノアセトアセテートモノメタクリレート、フルオレセイン−O−メタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)−ジメチルシリル]プロピルメタクリレート(ジメチルシリルオキシ(プロピル)メタクリレート−POSS)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチルアセトアセテート、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、2−ナフチルメタクリレート、2−(4−ニトロフェノキシ)エチルメタクリレート、ペンタブロモベンジルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2−(tert−ブチルアミノ)−エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、ZONYL(登録商標)TMフルオロモノマー、2−メチルアクリルアミド、メタクロレイン、ビニルメチルケトン、3−メチル−ブテン−2−オン、2−メチルアクリロイルクロライド、(ポリエチレングリコール)ベヘニルエーテルメタクリレート、(ポリエチレングリコール)メタクリレート、(ポリエチレングリコール)メチルエーテル、マレイミド、スチレン、スチレン系誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジメチルアクリルアミド、マレイン酸無水物、及びそれらの二つ又はそれ以上のコポリマーを包含する。
本発明で用いるのに適した重合イニシエーターは、フリーラジカル、アニオン又はカチオン伝搬段階をもたらすことになるものを包含するが、しかしそれらに限定されない。更に、重合イニシエーターは、開始が光化学刺激、化学刺激又は熱刺激により誘発されるところの化合物を包含するが、しかしそれらに限定されない。好ましくは、重合イニシエーターは、フリーラジカルイニシエーターである。一層好ましくは、フリーラジカルイニシエーターは、制御フリーラジカル重合イニシエーターつまりリビングフリーラジカル重合イニシエーターである。制御フリーラジカル重合イニシエーターは、原子移動ラジカル重合(ATRP)イニシエーター、RAFT剤由来イニシエーター、イニファーター、トリアリールメタン及びアルコキシアミン(ニトロキシド媒介)制御剤を包含する。イニファーターは、ジチオエステル、トリチオカーボネート、チオカルバメート、ジチオカルバメート(N,N−ジエチルジチオカルバメート三水和物のような)及びキサンテートのようなチオカルボニル化合物を包含する。制御フリーラジカルイニシエーターは、有利には、規定条件下で活性化される。例えば、イニファーターは、UV光での照射により始動される光イニシエーターである。ATRPイニシエーターは、銅触媒系により始動される。かかるイニシエーターは、当該技術において知られている。
重合イニシエーターは、重合により高分子中に共有結合で組み込まれ得る。この手法において、重合イニシエーターはエチレン不飽和基のような重合性基にカップリングされ、そしてこの変性モノマーは希釈剤モノマーとの共重合により高分子中に組み込まれる。重合イニシエーターは、かかる目的に適した上記に列挙された希釈剤モノマーに、共反応性官能基によって共有結合で結合され得る。例えば、イニファーターは、メタクリレート又はアクリレート基に付着され得る。イニシエーターコモノマーを高分子中に組み込むために、当該技術において知られた重合プロセスが、イニシエーターコモノマーを希釈剤モノマーと及び随意に表面に共有結合で結合させるための官能基を担持するモノマーと共重合させるために用いられ得る。例えば、イニファーター−メタクリレートモノマーとアクリレート希釈剤モノマーの重合は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)イニシエーターを用いて、熱的に開始され得る。
重合イニシエーターがこの態様で組み込まれる場合、好ましくは、ペンダント重合イニシエーターは、高分子の重合条件で活性化されない。例えば、高分子が熱開始により合成されることになっている場合は、選択されたペンダントイニシエーターは熱安定性である。その代わりに、高分子の重合が光開始によってである場合、ペンダント重合イニシエーターは光不活性である。制御フリーラジカルイニシエーターを活性化する規定条件は、高分子を重合させる時にイニシエーターの活性化を回避するのを助ける。例えば、重合イニシエーターがAIBNを用いて温和な条件下でメタクリル酸と共重合される場合は、適当な重合イニシエーターは、たいていのRAFT剤由来イニシエーターよりも、ATRP、アルコキシアミン及びイニファーターを包含する。その場合に、生じるポリマーは、高分子主鎖に沿って分布されたリビング重合イニシエーターを含むことになる。
その代わりに、高分子の重合条件は、ペンダント重合イニシエーターが活性化されるように選ばれ得る。かかる条件は、分枝構造を有する高分子をもたらすことになる。かかる手法は、伝統的イニシエーターの場合によりもペンダントリビング重合イニシエーターの場合に一層適している。その場合において、ペンダントイニシエーターが高分子の重合中反応するとしても、高分子被膜の最終機能性は影響されるはずはなく、何故なら高分子が合成されると、イニシエーターは大部分高分子に付着し直されそしてかくして引き続く活性化のために依然として利用可能になるからである。
重合イニシエーターを高分子中に組み込むためのこの手法を用いる場合、高分子中のイニシエーターのモル比は、典型的共重合技法により制御され得る。好ましくは、高分子の化学量論は、高分子鎖における1から50mol%のペンダント基がイニシエーター部分により置換される。この化学量論は、一層好ましくは1から25mol%そして更に一層好ましくは2から15mol%である。
共有結合で結合されるイニシエーターを高分子中に組み込むための代替手法は、重合イニシエーター結合部位を有する高分子を合成することである。これらの部位は、典型的には、重合イニシエーターにおける相補官能基に対して反応性であるペンダント官能基である。予備形成高分子における官能基を重合イニシエーターと反応させることにより、イニシエーターは高分子に共有結合で付着され得る。この手法を用いる場合、高分子中のイニシエーター基のモル比は、高分子の重合中官能基を有するモノマーのモル比を制御することにより制御され得る。
高分子はまた、基材の表面に高分子を共有結合で付着させるための官能基を含有し得る。これらの官能基は、希釈剤モノマーに又は高分子中に組み込まれる追加的モノマーに存在し得る。基材に高分子を共有結合で付着させるための適当な官能基は、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、フェニルアジド、スルホ、ハロゲン化、活性化カルボン酸エステル(N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのような)、イソシアネート、イソチオシアネート、グリシジル、アルキン、アルデヒド若しくはケトン基又はそれらの誘導体、あるいは「クリック(click)」型反応に参加し得る基を包含するが、しかしそれらに限定されない。かかる官能基は、カルボジイミドのような追加的カップリング剤と共に利用され得る。その代わりに、基材に高分子を結合させるのを助けるために、触媒が用いられ得る。
高分子は、線状、星形又は分枝状ポリマーとして合成され得る。それは、異なるブロックにおいて高分子とイニシエーターを結合させるための官能基を備えたランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり得る。
高分子は、基材に複数個の共有結合により共有結合で付着され得る。基材と高分子の間の複数個の共有結合の存在は、高分子被膜の安定性を増加させる。高分子と基材の間の共有結合は、わざわざその目的のための特異的反応中形成され得る。
基材に高分子を施用するための適当なプロセスの例は、アジド活性化ポリ(エチレンイミン)(PEI−A)及びポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル)コポリマーを用いての多層被膜の構築である。レイヤー・バイ・レイヤー(LBL)被膜は、暗所において充実ポリマー基材材料上に、PEI−Aでもって始めそして次いでポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル)コポリマーでもって続けることにより構築される。多層被膜の構築後、基材材料は、アジド−ニトロ安息香酸残基の光分解に因り架橋並びにLBL層の共有結合型表面固定化を誘起するがしかし高分子中に組み込まれたイニファーター分子を活性化しない波長において照射され得る。
同じ手法についての更なる例は、LBL被膜の構築の最後の被覆工程においてイニシエーター変性高分子のみの使用を含む。
その代わりに、高分子は、ペンダントポリマーの形成と同時に基材に共有結合で結合され得る。例えば、特定モル比の制御フリーラジカル重合イニシエーターを担持する誘導体化高分子(ポリ(エチレンイミン)(PEI)又はポリ(アクリル酸)(PAAC)のような)はまた、それらが特定モル比の光反応性基を担持するように誘導体化される。後者の誘導体化についての例は、ポリ(エチレンイミン)(PEI)と5−アジド−2−ニトロ安息香酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応(アジド活性化PEI(PEI−A)をもたらす)又はフェニルアジドアニリンでのPAACの誘導体化である。暗所において充実基材上におけるかかる高分子の吸着及び引き続く洗浄工程後、高分子被覆基材材料はモノマー溶液中に移され、そしてこのプロセスにおいて発生されるニトレン基によっての高分子の共有結合型表面固定化を誘起する波長において照射される。加えて、照射は、基材表面からの制御フリーラジカル重合に通じる。
高分子への重合イニシエーターの結合そして引き続いて基材への付着により、基材上の官能基とイニシエーターとの1:1の比率の必要性が除かれる。高分子における基材への多数の付着点は、数多くのイニシエーターを基材に結合させ得る。この利点により、イニシエーターでもっての基材のよりよい被覆が可能にされる。更に、高分子は細孔及び他の表面凹凸を横断し得る故、一貫した且つ均一な被膜が、多孔質基材の全面にわたってさえ得られ得る。
高分子被膜が上記に論考された様々な態様で施用されると、高分子に結合された重合イニシエーターからグラフトさせることにより、ペンダントポリマーが形成され得る。つながれたイニシエーターからグラフトさせるという技法は、表面上の官能基にグラフトさせることと比較して、より緻密でより厚いポリマー被膜が得られることを可能にし、何故ならイニシエーターからグラフトさせることは増加する密度のポリマー皮膜を通じての予備形成ポリマーの拡散を要しないからである。
従って、「からグラフトさせる」技法の使用は、生じるポリマー被膜に関して増加度合いの制御を提供する。
好ましくは、ポリマー被膜の最終構造は、低多分散性のポリマーブラシの構造であるであろう。その代わりに、多官能性モノマーがグラフト重合溶液中に用いられ得、しかしてそれらはペンダントポリマーの架橋をもたらすことになる。
ペンダントポリマーの平均分子量は、好ましくは、1,000から2,000,000である。しかしながら、ペンダントポリマーの最も好ましい平均分子量は、ポリマー被覆基材の最終用途に依存するであろう。3,000から1,000,000又は3,000から500,000の平均分子量が、典型的には有用であるであろう。
ポリマー被膜の平均厚さは、乾燥状態で2nmから1μmであるであろう。しかしながらやはり、ポリマー被膜の最も好ましい平均厚さは、基材の最終用途に依存するであろう。乾燥状態で3nmから500nm又は乾燥状態で5nmから100nmの平均厚さが、典型的には有用であるであろう。
リビング重合イニシエーターが高分子に共有結合で結合される適用において、分子重量対分子数の比率(Mw/Mn)により定義されるペンダントポリマー鎖の多分散性は、好ましくは、5より小さい。多分散性は、一層好ましくは3より小さくそして最も好ましくは1.5より小さい。
高分子被膜からペンダントポリマーをグラフトさせるためのリビング重合の使用が好ましい。ペンダントポリマーを成長させる際のリビング重合の使用は、ペンダントポリマーの分子量及び多分散性に関してのより大きいレベルの制御を可能にするので有利である。リビング重合はまた、ペンダントポリマー鎖の末端基に関しての制御を可能にする。リビング重合において、末端基は、イニシエーター(又はRAFT剤由来イニシエーター)の構造により定められる。末端基に関しての制御は、ポリマー被膜の特定アーキテクチャーに関しての制御を提供するリビング重合技法をもたらすことになる。例えば、多ブロック被膜好ましくは3つ又はそれ以下のブロックの被膜は、ペンダントポリマー鎖の端から追加的ポリマーブロックを成長させることにより合成され得る。かかる構造は、多機能性被膜アーキテクチャーが基材に施用されるのを可能にする。例えば、多ブロック被膜は、タンパク質吸着及び細胞付着を防止するところの基材に隣接した第1ブロックと特異性の生物学的活性部分の提示を可能にする第2ブロックとを含む被膜の構築を可能にする。その代わりに、グラジエントコポリマーが合成され得る。
制御フリーラジカル重合イニシエーターの更なる利点は、特異性分子がそれらに共有結合でカップリングされ得ることである。イニシエーターはペンダントポリマーの端に存在するので、生物学的活性化合物は、基材表面から遠位のペンダントポリマー鎖の端にて組み込まれる。
ペンダントポリマーを形成させる際に用いるためのモノマーの選択は、被覆基材の最終用途により指定される所望の被膜特性及び活性に依存する。
本発明の一つの適用は、基材の三次元又は二次元パターン化を適用することである。例えば、不透明基材の表面の化学的性質の三次元パターン化は、不透明な多孔質3D材料を用い、そしてこの3D構造体の全体にわたって又は表面上においてのみのどちらかにての照射によりイニシエーター含有高分子を該3D構造体の表面に共有結合で係留することにより行われ得る。引き続いてモノマー中に浸漬しそして照射するだけで、3D器具の外面上におけるポリマー被膜の形成がもたらされることになる。
フォトマスクを用いての基材の表面の化学的性質の二次元又は三次元パターン化が当該技術において知られており、そして本発明のポリマー被膜に関連して用いられ得る。フォトマスクを用いての一つのかかる適用は、二次元基材上でそれらをx方向に及びy方向にそれぞれ移動させることによることであり、しかして引き続くフリーラジカルグラフト反応中に種々のモノマー又はコモノマーを用いると、二次元グラジエント表面が生成され得る。
本発明の方法はまた、基材にグラジエント被膜を施用するために用いられ得る。基材表面上における共有結合型係留のための適当な官能基及び引き続く制御フリーラジカル重合のためのペンダントイニシエーターを有する高分子で表面改質される基材材料は、引き続いて、グラジエントポリマー被膜のグラフトを可能にする条件下でモノマーの共重合を受け得る。かかる条件は、ポリマー鎖が基材材料のより近くにおいてある組成に富みそして被膜の外面において別の組成に富むように、重合中モノマー浴の組成を変動させることを含む。かかる適用は、表面被膜内にグラジエント架橋密度を適用するために用いられ得る。かかる適用において、コモノマーの少なくとも一つは、引き続く架橋反応において利用され得る官能基を担持し、しかして基材表面に垂直な架橋密度におけるグラジエントを備えた被膜の生成をもたらすことになる。
本発明の更に更なる適用は、細胞付着を表面固定化シグナル伝達分子によって制御することにある。活性エステル基又はエポキシ基のような反応性官能基を含有するモノマーの重合又は共重合が、これらの官能基を担持する被膜をもたらすために行われ得る。引き続く工程において、共有結合型連結の形成のための適切な官能基を担持するペプチド、タンパク質及び他の生体分子が、被膜中に存在する反応性官能基と反応され得る。その代わりに、生体分子は、重合性基を含みそして共重合中ペンダントポリマー中に組み込まれるように化学的に変性され得る(例えば重合性ビオチン誘導体が、諸例において例示されている)。この場合において、生体分子の活性は、重合性基と生体分子の間における共有結合で連結されたスペーサー分子の具備により高められ得る。
生体分子は、所望の生物学的効果をもたらす分子である。一つの具体的態様において、生体分子は、ペプチド分子、抗生分子、抗菌分子又は細胞シグナル伝達分子である。
更なる適用は、重合性ビオチン被膜の生成である。基材材料は、共有結合型係留のための適当な官能基及び引き続く制御フリーラジカル重合のためのペンダントイニシエーターを有する高分子で表面改質される。ビオチンのような別の分子との高い結合定数により特徴づけられる基を含有するモノマーの引き続く重合/共重合は、これらの基を担持する被膜をもたらす。引き続く工程において、マッチング化合物が、安定な連結を形成するように被膜と共に定温放置される。一例は、ビオチニル化被膜とストレプトアビジンの間の連結の形成である。被膜への特異性分子の結合は、マッチング化合物(ストレプトアビジンのような)におけるこれらの特異性分子の固定化による又は表面に結合されたマッチング化合物(ストレプトアビジンのような)に結合し得るビオチニル化された特異性化合物を用いることによるのどちらかにより可能である。被膜は、ガラス器内で、表面に結合されたマッチング化合物(アビジンのような)又は特異性化合物の定量化により特徴づけられ得る。これは、例えば、マッチング化合物(ストレプトアビジンのような)のユウロピウム標識付け又はビオチニル化特異性化合物のユウロピウム標識付けにより達成される。
次の諸例は、本発明の更なる非制限的例示を提供する。
簡単に言えば、例1は、高分子の付着のために表面を調整するべき基材上への官能基の蒸着を示す。例2は、例3において希釈剤モノマーと共重合されて高分子にされるところの、共有結合で結合された重合性基を有するイニシエーター(イニファーター)の合成である。例4は、例3の高分子を例1の官能基化基材上に共有結合で付着させることを示す。
例5から8は、例4の高分子被覆基材から種々のホモポリマーをグラフトさせることを例示する。生じた被覆基材は、次いで、制御生物学的応答を与えるべき被膜の能力すなわち低減細胞付着の能力を示すために、例9において用いられる。
例10から14は、例4の高分子被覆基材から種々のコポリマーをグラフトさせることを例示する。特に、これらの例は、本発明を用いて達成され得る制御アーキテクチャーを示す。
例15は、被膜を作製する際に用いるための重合性ビオチン誘導体の合成を含めて、共重合ビオチンを含有する代替被膜を示す。
例16は、共重合により高分子中に組み込まれるATRPイニシエーターを用いて、本発明のある具体的態様に従って被膜を作製する方法を例示する。
例17は、共重合N−アクリルオキシスクシンイミドを含有する代替被膜の合成、及び被覆基材の細胞結合性質を調節するためにペンタペプチドを結合させるためのかかる被膜の使用を示す。
例18は、種々の密度のイニシエーター部分を含有する高分子被膜から合成されたポリマー被膜の間の比較を提供する。
例19は、本発明に従って作製された被膜の安定性を示す。
例20は、高分子被膜を形成させるために基材に高分子を結合させるための代替方法を例示する。
例21は、可逆的付加開裂型連鎖移動(RAFT)重合を用いての代替被膜の合成を示す。
例22は、星形ポリマーイニシエーターを用いての代替被膜の合成を示す。
例23は、クリック型化学を用いて分子を接合させるために有用な代替被膜の合成を示す。
例24は、グラフト重合を行う間サンプルをマスクする効果を示す。
例25は、架橋結合が組み込まれている被膜の合成を示す。
例26は、共重合オリゴペプチドを含有する代替被膜の合成を示す。
例27は、本発明に従って作製された被膜の一様性及び均一性を示す。
例28は、共重合ビオチンを含有する被膜、及びELISA実験におけるかかる被膜の使用を示す。
例29は、表面グラジエントグラフトポリマー被膜の合成を示す。
Si−HAPPサンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。 Si−HAPPサンプルの表面から得られた代表的な高分解能のN1sのXPSスペクトル。
Si−HAPP−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−HAPP−PI−P(グルコシドMA)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−HAPP−PI−P(quat−アミンMA)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
培養における24時間後の、Si−HAPP−PI−P(グルコシドMA)表面へのHeLa細胞付着を示す代表的視野。 培養における24時間後の、TCPS対照表面へのHeLa細胞付着を示す代表的視野。
(―)Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプル及び(---)Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプル及び(---)Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))−b−P(アクリルアミド)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)被覆サンプル及び(---)Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−b−PEGMA(475))被覆サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプル及び(---)Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−b−quat−アミンMA)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプル及び(---)Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))−b−(P(アクリルアミド)−コ−P(PEGMA(475)))サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−ALAPPサンプル及び(---)Si−ALAPP−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプル、(−−−)Si−ALAPP−P(アクリルアミド−コ−5%ビオチンMA)サンプル、(・・・・・・)Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)サンプル、並びに(---)NeutrAvidinTM(NA)ビオチン結合タンパク質の溶液(HEPES緩衝液中50μg/mL)への夜通しの暴露後のSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。 (―)暴露前の、(---)ヒト血清アルブミンの溶液への暴露(HSA,PBS中100μg/mL,37℃2時間)後の及び(・・・・・)NeutrAvidinTMの溶液への暴露(HEPES緩衝液中50μg/mL,室温にて夜通し)後のSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)のサンプルについて得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−HAPPサンプル、(−−−)Si−HAPP−PATRPIサンプル及び(---)Si−HAPP−PATRPI−P(PEGMA(475))サンプルの表面から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。
(―)Si−HAPP−PI(PI)(この曲線の下の点線は、曲線の当てはめがなされた成分を表す)、(・・・・・・)Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)(PAAm)、(−−−)Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%NHS A)(10%NHS)及び(---)Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)の表面から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。表示A及びBは、それぞれC=O/N−C=O及びO−C=Oと関連した結合エネルギーを指す。
培養における24時間後の、共有結合でカップリングされたKDGEAペプチドを備えたSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)表面へのBCEp細胞付着を示す代表的視野。 培養における24時間後の、共有結合でカップリングされたKDGAAペプチドを備えたSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)表面へのBCEp細胞付着を示す代表的視野。 培養における24時間後の、加水分解後のSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)表面へのBCEp細胞付着を示す代表的視野。 培養における24時間後の、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)表面へのBCEp細胞付着を示す代表的視野。
培養における24時間後の、TCPS対照表面へのBCEp細胞付着を示す代表的視野。
(―)オートクレーブ滅菌前の及び(---)オートクレーブ滅菌後のSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプルについて得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。(・・・・・・)オートクレーブ滅菌されなかったサンプルについて得られたところの曲線の当てはめがなされた成分も含められている。
PETサンプルについて得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。 PET−共有結合PI(アジド)−P(アクリルアミド)サンプルについて得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−ALAPPサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 Si−ALAPP−HDIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 Si−ALAPP−星形PEG−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 Si−ALAPP−HDI−星形PEG−PI−P(アクリルアミド)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。
Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)−TFABサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。
Si−ALAPP−PI被覆ガラス顕微鏡スライド上のPTFE円形マスク(ハッチングされた円)の位置を指摘する略図。
PTFE半球の下の領域から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。 PTFE半球を取り囲む領域から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−ALAPP−PI被覆ガラススライドの表面からのP(PEGMA(475))の
Figure 0005567337
のHeLa細胞付着を示す代表的視野(4×対物倍率)。正方形は、全スライドと比較された画像の領域を指摘する。
Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)サンプルの表面から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。 Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)−HDIサンプルの表面から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプルの表面からの代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。 Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−MA−GlyGly)サンプルの表面からの代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
Si−ALAPPサンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。 Si−ALAPP−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。 Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプルの表面から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトル。
PSサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 PS−ALAPPサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 PS−ALAPP−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 PS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 PS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。 PS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)−NAサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル。
(i)NeutrAvidinTMビオチン結合タンパク質、ビオチニル化IgG及びIg−HRP接合体(+NA,+1°Ab,+2°Ab)、(ii)ビオチニル化IgG及びIg−HRP接合体(−NA,+1°Ab,+2°Ab)、並びに(iii)Ig−HRP接合体のみ(−NA,−1°Ab,+2°Ab)が添加されたPS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)を含有するウェルのABTS発色溶液について得られた吸光度値(405nm)。
UV照射期間のSi−ALAPP−PI被覆ガラス顕微鏡スライド(透明)上のUV不透明マスク(ハッチングされた長方形)の位置を指摘する略図。矢印は、引き続くUV照射工程のためにマスクが移動された方向を指摘する。
UV照射時間の関数としてのグラジエントポリマー被覆Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))顕微鏡スライドのXPS分析から決定された元素比率(○)O/C及び(●)N/C。
UV照射を受けなかったスライドの領域(7cm)から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。 10分のUV照射を受けたところのSi−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))のグラジエントグラフト重合被膜を含有するスライドの領域(5cm)から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。 15分のUV照射を受けたところのSi−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))のグラジエントグラフト重合被膜を含有するスライドの領域(4cm)から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル。
図34: 細胞培養における18時間後の、グラジエントグラフト重合Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))表面へのHeLa細胞付着を示す代表的視野(4×対物倍率)。
視野は、UV照射に5分間暴露された領域を表す。 視野は、UV照射に10分間暴露された領域を表す。 視野は、UV照射に20分間暴露された領域を表す。 視野は、TCPS対照表面を表す。
実施例
例1
シリコンウェハー基板上におけるn−ヘプチルアミン高周波グロー放電(RFGD)薄膜の蒸着
1cm×1cmのサイズを備えたシリコンウェハー(Si)を、2%RBS界面活性剤溶液中における30分間の音波処理そして次いでMilli-QTM水及びエタノール中での完全なすすぎにより清浄にした。高速精製N2流で乾燥した後、これらのウェハーを他の所に記載された高周波グロー放電プラズマ反応器[Griesser HJ.,Vacuum,39(1989),485]中に直ちに導入した。n−ヘプチルアミンプラズマポリマー(HAPP)薄膜の蒸着を、20Wの電力、200KHzの周波数及び0.150Torrの初期モノマー圧にて30秒間行った。HAPP薄膜の蒸着の前及び後の元素比率データが、表1に示されている。これらの元素比率は、X線光電子分光法(XPS)を用いて得られた当該二つのサンプルの表面組成から算出された。第1の関心のある点は、Si/C比率が表面改質後に12.10から0.00に減少されたことであり、しかしてHAPP薄膜がXPSサンプリング深さ(おおよそ10nm)と少なくとも同じくらい厚かったこと及び被膜にピンホールがなかったことを指摘する。窒素が薄膜中に存在しており(0.086のN/C比率)、またプラズマ室からの取出し時におけるラジカルのクエンチングに因り少量の酸素も存在していた。O/C比率は、改質前のSiウェハーの表面上の自生酸化物被膜中に存在するO/C比率と比較して、薄膜中の小さい酸素原子百分率に因り、表面改質後に低減された。HAPP薄膜は特質上大部分炭素質であり、そしてその炭素はほとんど脂肪族であった(主成分が285eVの結合エネルギーに集中されていた高分解能C1sスペクトル(図1(a)参照)から推定された)。この膜中に存在する窒素は、ほぼ完全に表面アミン基の存在に因った。これは、高分解能N1sスペクトルの結合エネルギーすなわち399.39eV(図1(b)参照)から推定され得る。HAPPの表面上のアミン基の存在は、引き続く高分子の共有結合型付着のために有用である。
Figure 0005567337
例2
ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステルの合成
攪拌機、滴下漏斗及び還流凝縮器を備えたフラスコに、20mLのエタノール中のナトリウムジエチルジチオカルバメート三水和物(3.5g,1.55×10-2mol)の溶液を添加した。この溶液に0℃の温度にて0.5hの期間にわたって、4−ビニルベンジルクロライド(3.0g,1.96×10-2mol)とエタノール(5mL)の溶液を滴下的に添加した。生じた溶液を室温にて24時間撹拌してから大容量の水中に注ぎ、そしてジエチルエーテルで抽出した。エーテル相を水で3回洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥してから、最後に蒸発によりジエチルエーテルを除去した。残渣をメタノールから3回再結晶して、2.6グラム(83%)の収量がもたらされた。1H−NMR(CDCl3)δ7.36(s,4H,C64)、6.70(dd,J=11.6及び17.5Hz,1H,C=CH2)、5.73(d,J=17.5Hz,1H,CH=C 2)、5.24(d,J=11.5Hz,1H,CH=C 2)、4.54(s,2H,C 2S)、4.04(q,J=7.3Hz,2H,NC 2)、3.73(q,J=6.6Hz,2H,NC 2)、1.19(t,J=約7.0Hz,6H CH2 3)。
例3
カルボン酸部分及びイニファーター部分を含有するポリマーの合成
アクリル酸(3.0g,4.16×10-2mol,無水,Fluka)を6mLのジメチルホルムアミド(DMF)(BDH Chemicals)中に溶解し、そして次いでインヒビター・リムーバー(Inhibitor Remover)(Aldrich)を含有するカラムにこの溶液を通すことにより抑制剤を除去した。このアクリル酸溶液に1.1gのジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステル(4.38×10-3mol)(例2から)及び150mgのAIBNを添加し、そしてその後この溶液を窒素で10分間パージしそして密封した。60℃にて夜通し加熱すると、不透明な粘稠ゲルの形成がもたらされ、そしてこの粘稠ゲルを20mLのDMFの更なる添加により希釈した。次いで、コポリマーを含有するこの溶液をDMFで夜通し透析した(スペクトラム・スペクトラ/ポル(Spectrum Spectra/Por)1モレキュラーポーラスメンブランチューブ,MWカットオフ6000〜8000)。透析中、DMFを2回交換した。次いで、透析チューブの内容物をフラスコに移し、そして50mLの最終容量に作り上げた。
この最終ポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル)コポリマー(PI)を定量13C−NMRにより特性決定した(13C−NMR(DMFH7/DMFD7,500MHz,δ10.7、11.4、32.7、39.78、40.66、41.01、41.44、46.03、48.59、127.41、128.61、133.5、142.6、169.7(C=O)、171.55(C=O)、173.79(C=O)、175.67(C=O)、193.66(C=S))。ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステル残基対アクリル酸残基の相対割合を、C=S(ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステルから)残基及びC=O(アクリル酸から)残基に対応するピークを積分することにより得た。この手順により、C=S:C=Oについて1.0:10.7の比率が得られ、しかしてこれは8.5:91.5mol%のジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステル:アクリル酸を含有するポリマーに相当した。
例4
HAPP改質シリコンウェハーへのポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル)の共有結合型カップリング(Si−HAPP−PI)
約9:91mol%のジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステル:アクリル酸の前もって決定されたモル比を有するように合成された例3からのPIコポリマーの共有結合型固定化を、PIコポリマーの溶液と共に例1のHAPP被覆シリコンウェハーの定温放置により行った(下記参照)。6mLのDMF及び1mLのMilli-QTM水を含有する混合物に、8.2%(w/v)のコポリマー(PI)を含有する2mLののDMF溶液を添加した。次いで、この溶液中に100mgのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(Sigma)(EDC)を溶解し、そして新たにHAPPで被覆されたシリコンウェハーを添加した。室温における夜通しの定温放置に続いて、DMF及びMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
PIコポリマーの共有結合型固定化後のHAPP改質シリコンウェハーのXPS分析によって得られた元素比率が、HAPP改質シリコンウェハーと比較されるように表2に示されている。O/C比率は、HAPP改質シリコンウェハーについて得られたものよりも有意に高かった。これは、部分的にはHAPP層の酸化に及びまた共有結合でカップリングされたPIコポリマー内に含有されたアクリル酸残基の存在に因った。更に、N/C比率は低減され、またPIコポリマー層からの硫黄が検出された。
Figure 0005567337
Si−HAPP−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトルもまた図2に示されており、しかしてそれは下にあるHAPP基材及び共有結合で固定化されたPIコポリマー層の両方の典型的特徴、特にカルボン酸残基の存在に因るC1sスペクトルの明確な成分(289.2eVの結合エネルギー)を含有する。
例5
Si−HAPP−PI表面からのPEGMA(475)モノマーのグラフト重合
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、例4のSi−HAPP−PIサンプルを移した。Milli-QTM水中の475の分子量を備えたポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA(475))の10%(v/v)溶液(この溶液から抑制剤が除去されていた)でこの室を満たし、そしてこのモノマー溶液から酸素を除去するために精製窒素をセルに流し通した。次いで、このセルをエレクトロ−ライト(Electro-lite)EL−C800紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を30分間行った(30mW・cm-2の強度,主として365nmの波長)。照射後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。表面からのP(PEGMA(475))のグラフトの前及び後のSi−HAPP−PIサンプルのXPS分析によって得られた元素比率が、表3に示されている。ここで、グラフト後のO/C比率は、P(PEGMA(475))の組成における多量のO(理論O/C=0.667)に因り有意に増加された。N/C比率もまた、Si−HAPP−PI基材の上のP(PEGMA(475))層の存在に因り減少された。
Figure 0005567337
P(PEGMA(475))被膜(この場合におけるその厚さはXPSサンプリング深さと非常に似ていた)の存在は、高分解能C1sスペクトルにおけるエーテル(C−O)炭素の大きい寄与(286.6eVの結合エネルギーにおける図3が参照される)により確認された。
例6
Si−HAPP−PI表面からのアクリルアミドモノマーのグラフト重合
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、例4のSi−HAPP−PIサンプルを移した。Milli-QTM水中のアクリルアミドの5%(v/v)溶液でこの室を満たした。次いで、このセルをスペクトロライン(Spectroline)SB−100C/F紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を20分間行った(おおよそ280mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
Figure 0005567337
例7
Si−HAPP−PI表面からのグルコシドMAモノマーのグラフト重合
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、例4のSi−HAPP−PIサンプルを移した。Milli-QTM水中の2−メタクリルオキシエチルグルコシド(グルコシドMA,Polysciences)の10%(v/v)溶液(この溶液から抑制剤が除去されていた)でこの室を満たした。次いで、このセルをスペクトロライン(Spectroline)SB−100C/F紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を20分間行った(おおよそ280mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
Figure 0005567337
P(グルコシドMA)グラフトによっての表面改質の前及び後のSi−HAPP−PIサンプルの表面から得られた元素比率が、表5に示されている。
表面の元素比率に対するグラフト反応の影響は、O/C比率が劇的に増加された(被膜中の各グルコース残基における多数のヒドロキシル基に因り)及びN/C比率がSi−HAPP−PI基材の上のP(グルコシドMA)被膜の存在に因り低減されたことにおいて明らかである。この被覆手順の成功は、高分解能C1sスペクトル(その代表例は、図5に示されている)を得ることにより確認された。このスペクトルは、286.7eVの結合エネルギーにおけるところのヒドロキシル基に結合された炭素に因る特有の成分を含有する。
例8
Si−HAPP−PI表面からのquat−アミンMAモノマーのグラフト重合
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、例4のSi−HAPP−PIサンプルを置いた。Milli-QTM水中の[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]−トリメチルアンモニウムクロライド(quat−アミンMA,Aldrich)の10%(w/v)溶液(この溶液から抑制剤が除去されていた)でこの室を満たした。窒素ガスで10分間パージしてこのモノマー溶液から溶存酸素を除去した後、このセルをスペクトロライン(Spectroline)SB−100C/F紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を20分間行った(おおよそ280mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
P(quat−アミンMA)グラフトによっての表面改質の前及び後のSi−HAPP−PIサンプルの表面から得られた元素比率が、表6に示されている。表面の元素比率に対するグラフト反応の影響は、O/C比率が劇的に低減された及びN/C比率がSi−HAPP−PI基材の上のP(quat−アミンMA)被膜内の窒素の存在に因り増加されたことにおいて明らかである。
Figure 0005567337
この被覆手順の成功は、高分解能C1sスペクトル(その代表例は、図6に示されている)を得ることにより確認された。このスペクトルは286.6eVの結合エネルギーにおけるところのグラフト層内のC−N結合に因る特有の成分を含有し、並びにN1sスペクトル(データは示されていない)において、四級化アミンについて特有である高結合エネルギー成分を含有する。
例9
細胞培養実験
1cm×1cmのサイズを備えた一連のSiウェハー上に、HeLa細胞を播種した。表面改質当たり3つの反復試験片を用いた。細胞付着実験に先だって、サンプルを24ウェル型組織培養トレーの個々のウェルにおいて、2×ペニシリン/ストレプトマイシン(100/200μg/mL)中に4℃にて夜通し浸漬した。次いで、HeLa細胞をウェル当たり2×105細胞の密度にて播種し、そして24時間培養した。これらの3つの反復試験片は、培養の最後の4時間MTTで代謝的に標識付けした。細胞付着結果は、標準細胞培養基材である組織培養ポリスチレン(TCPS)に関して表される。
TCPS対照表面と比較して、細胞付着の有意な低減という所望の制御生物学的応答が、表7に示されているように、すべてのグラフトポリマーについて達成された。細胞数がグラフトポリマーにおいて低減されたのみならず、付着されたままにあった細胞は、それらの丸いモルホロジーにより指摘されているように(図7)、効果的に伸展することができなかった。更に、Si、Si−HAPP及びSi−HAPP−PI対照表面はすべて、高い細胞付着(TCPSに関して75.2%と86.5%の間)を示した、ということが注目されるべきである。
Figure 0005567337
例10
Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)コポリマー被膜の作製
パートA: 重合性ワルファリン誘導体(コハク酸2−[2−(2−{2−[2−(2−メチル−アクリロイルオキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エチルエステル2−オキソ−3−(3−オキソ−1−フェニル−ブチル)−2H−クロメン−4−イルエステル)(ワルファリンMA)の合成
ワルファリン(3.93g,12.8mmol)をジクロロメタン(50mL)中に室温にて懸濁した。トリエチルアミン(1.9mL,1.4g,13.9mmol)の添加により、ワルファリンの溶解がもたらされた。このワルファリン溶液にジクロロメタン(約10〜15mL)中のポリ(エチレングリコール(360))メタクリレートスクシネートの酸塩化物(5.43g,11.6mmol)を室温にて滴下的に添加し、そして約1時間撹拌した。この反応混合物を水で(未反応ワルファリンを除去するために)、希塩酸でそしてブラインで洗浄してから、乾燥(硫酸マグネシウム)した。
溶媒を蒸発によって除去すると、淡色油生成物(9.1g)が得られた。これは、微量の未反応ワルファリン及びジクロロメタンを有するように思われた。この油をエーテル及び最小限のジクロロメタン中に溶解し、そして1M水酸化ナトリウムで2回、希塩酸で2回そしてブラインで1回洗浄してから乾燥し、そして蒸発によって溶媒を除去して透明な油が得られた。1H−MNR(CDCl3,200MHz)δ1.93(s,メタクリレートメチル,3個のH)、2.14(s,メチル,3個のH)、2.82(多重,2個のH)、3.06(多重,2個のH)、3.44(d,J7.3Hz,ワルファリンCH2,2個のH)、3.62(s,PEGのCH2群)、3.72(幅広いs,PEGのCH2,2個のH)、4.26(見掛けのt,J約5Hz,PEGのCH2,2個のH)、4.80(幅広いs,1個のH)、5.54(幅広いs,=CH,1個のH)、6.10(幅広いs,=CH,1個のH)、7.16〜7.40(多重,芳香族)、7.43〜7.53(多重,芳香族)ppm。
パートB: Si−HAPP−PI表面からのPEGMA(475)とワルファリンMAの混合物のグラフト重合
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、Si−HAPP−PIサンプルを移した。20mLのDMF中の1.06g(2.23×10-3mol)のPEGMA(475)及び0.41g(5.66×10-4mol)のワルファリンMAを含有する溶液(PEGMA(475)対ワルファリンMAのモル比は8:2であった)でこの室を満たした。窒素で15分間パージした後、このセルをエレクトロ−ライト(Electro-lite)EL−C800紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV照射(30mW・cm-2,主として365nm)を用いて、重合を30分間行った。次いで、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
Figure 0005567337
表面からP(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)の被膜をグラフトする前及び後のSi−HAPP−PIサンプルのXPS分析から得られた元素比率が、表8に示されている。比較のために、グラフトP(PEGMA(475))ホモポリマー被膜から得られたデータも含められている。得られたO/C比率は、PEGMA(475)(理論O/C=0.477)及びワルファリンMA(理論O/C=0.359)の両方を含有するグラフトコポリマー層について予期され得たように、Si−HAPP−PIサンプル及びSi−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)サンプルについて得られたO/C比率の中間にあった。N/C比率に基づくと、P(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)層の脱水された厚さは、P(PEGMA(475)
)層よりわずかに小さいように思えた。
Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプル及びSi−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)サンプルの表面から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトルが、図8に示されている。O/C比率の場合のように、Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)サンプルから得られたC1sスペクトルのプロフィールは、Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプルから得られたプロフィールとSi−HAPP−PIサンプル(例4参照)から得られたプロフィールの中間にあるはずである。図7に示されたスペクトルを区別する特徴は、Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−ワルファリンMA)サンプルから得られたスペクトルへの脂肪族炭化水素寄与とエステル寄与の相対強さの増加であった。該スペクトルへの様々な寄与の一層詳細な解析により、PEGMA(475)対ワルファリンMAのモル比はモノマー供給物中に存在するモル比と似ていたことが指摘された。
例11
Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−b−アクリルアミド)ジブロックコポリマー被膜の作製
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、Si−HAPP−PIサンプルを移した。Milli-QTM水中のPEGMA(475)の10%(v/v)溶液(この溶液から抑制剤が除去されていた)でこの室を満たした。窒素で10分間パージした後、このセルをエレクトロ−ライト(Electro-lite)EL−C800紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を30分間行った(おおよそ30mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。第2段階の重合のために、Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプルを再び清浄な室中に置き、そしてMilli-QTM水中のアクリルアミドの5%(w/v)溶液で満たした。窒素で10分間パージした後、このセルを再びエレクトロ−ライト(Electro-lite)EL−C800紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を30分間行った(おおよそ30mW・cm-2の強度)。最後に、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
Figure 0005567337
XPS分析により決定された場合のサンプルの表面組成から算出された元素比率が、表9に示されている。ここで、我々は、この二段階被覆手順が予備的P(PEGMA(475))被膜(増加O/C,低減N/C)及びそれに続く第2の成功的P(アクリルアミド)被膜(減少O/C及び増加N/C)をもたらしたことが分かり得る。第1ポリマー層の上に第2ポリマー層を生成させるべき能力は、この場合における重合のリビング特質(すなわち、イニシエーターが、被覆手順の第1段階においてP(PEGMA(475))鎖の端に存在しそして第2段階においてP(アクリルアミド)鎖の重合を開始させるのに利用可能である)を示す。代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトルが、純P(PEGMA)ホモポリマー被膜と比較されるように図9に示されている。ここで、我々は、Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−b−AAm)被膜から得られたスペクトルが合理的にP(アクリルアミド)被膜を表していたが、しかしその下のP(PEGMA(475))被膜からの特徴(エーテル炭素)が依然として現れていた(これは、XPSがP(アクリルアミド)層の下のP(PEGMA(475))被膜をサンプリングしていたことを指摘する)ことが分かり得る。
例12
Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−b−PEGMA(475))ジブロックポリマー被膜の作製
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、Si−HAPP−PIサンプルを移した。Milli-QTM水中のアクリルアミドの5%(v/v)溶液でこの室を満たした。窒素で10分間パージした後、このセルをスペクトロライン(Spectroline)SB−100C/F紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を20分間行った(おおよそ280mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。第2段階の重合のために、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプルを清浄な室中に置き、そしてMilli-QTM水中のPEGMA(475)の10%(w/v)溶液(この溶液から抑制剤が除去されていた)で満たした。窒素で10分間パージした後、このセルをスペクトロライン(Spectroline)SB−100C/F紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を20分間行った(おおよそ280mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
Figure 0005567337
上記の例11に示された態様に類似した態様で、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−b−PEGMA(475))ジブロックポリマー被膜の作製に通じる二段階被覆手順のXPS分析によって決定された元素比率が、表10に示されている。この場合において、被覆手順の順序は、例11に示されたものの逆である。アクリルアミドモノマー溶液中での表面開始重合は、第1P(アクリルアミド)被膜(低減O/C及び増加N/C)をもたらした。P(PEGMA(475))での第2段階被覆は、増加O/C値及び低減N/C値をもたらした。第1ポリマー層の上に第2ポリマー層を生成させるべき能力は、この場合における重合のリビング特質(すなわち、イニシエーターが、被覆手順の第1段階においてP(アクリルアミド)鎖の端に存在しそして第2段階においてP(PEGMA(475))鎖の重合を開始させるのに利用可能であった)を示す。Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−b−PEGMA(475))被膜から得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトルが図10に示されており、そしてP(アクリルアミド)被膜のそれと比較される。ここで、我々は、そのスペクトルが合理的にP(PEGMA(475))被膜を表していたが、しかしその下のP(アクリルアミド)被膜からの特徴(より高い結合エネルギーの脂肪族炭素成分及びアミド炭素成分)が依然として現れていた(これは、XPSがP(PEGMA)層の下のP(アクリルアミド)被膜をサンプリングしていたことを指摘する)ことが分かり得る。
例13
Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−b−quat−アミンMA)ジブロックポリマー被膜の作製
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、Si−HAPP−PIサンプルを移した。Milli-QTM水中のアクリルアミドの5%(v/v)溶液でこの室を満たした。窒素で10分間パージした後、このセルをスペクトロライン(Spectroline)SB−100C/F紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を20分間行った(おおよそ280mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。第2段階の重合のために、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプルを再び清浄な室中に置き、そしてMilli-QTM水中の[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]−トリメチルアンモニウムクロライド(quat−アミンMA,Aldrich)の10%(w/v)溶液で満たした。窒素で10分間パージした後、このセルを再びスペクトロライン(Spectroline)SB−100C/F紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を再び20分間行った(おおよそ280mW・cm-2の強度)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
Figure 0005567337
P(アクリルアミド)の成功的グラフトは、第1工程における10nmの程度の脱水された層厚(0.055から0.228へのN/Cの増加により指摘される)並びにグラフト後のO/C値の低減でもって達成された、ということが表11に示されたデータの考察により示唆される。ポリ(quat−アミンMA)の層の第2段階ポリマーグラフトもまた、減少されたO/C比率及びN/C比率に基づくと成功であった。しかしながら、元素比率は、P(quat−アミンMA)の脱水された層厚が10nmより小さかったことを示唆する。図11に示されたようなSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−b−quat−アミンMA)表面のC1sの高分解能スペクトルは、P(アクリルアミド)層及びP(quat−アミンMA)層の両方の成分が存在していた(アミド及びC−N炭素)ので、様々な表面被覆段階について得られた元素比率に基づいた結論を支持する。更なる証拠は、アミド(P(アクリルアミド)層から)成分及び四級化アミン(P(quat−アミンMA)層から)成分の両方を含有する高分解能XPSのN1sスペクトル(示されていない)により与えられる。
例14
Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475)−b−(アクリルアミド−コ−PEGMA(475)))ジブロックコポリマー被膜の作製
石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、Si−HAPP−PIサンプルを移した。Milli-QTM水中のPEGMA(475)の10%(v/v)溶液(この溶液から抑制剤が除去されていた)でこの室を満たした。窒素で10分間パージした後、このセルをエレクトロ−ライト(Electro-lite)EL−C800紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を30分間行った(おおよそ30mW・cm-2の強度,主として365nmの波長)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。第2段階の重合のために、Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプルを清浄な室中に置き、そしてMilli-QTM水中の8:2のモル比のアクリルアミド及びPEGMA(475)の5%(w/v)溶液で満たした。窒素で10分間パージした後、このセルを再びエレクトロ−ライト(Electro-lite)EL−C800紫外/可視光源の下に10cmの距離にて置いた。UV重合を再び30分間行った(おおよそ30mW・cm-2の強度,主として365nmの波長)。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で完全に洗浄した。
Figure 0005567337
グラフト重合による表面改質の二つの段階からのサンプルのXPS分析によって得られた原子比率が、表12に示されている。第1段階すなわちSi−HAPP−PI−P(PEGMA(475))ホモポリマー被膜の作製について、得られたO/C比率及びN/C比率は、P(PEGMA(475))被膜がXPSサンプリング深さの程度の脱水された厚さでもって得られたことを示唆する。第2段階は、80:20のモル比のアクリルアミドとPEGMA(475)の共重合であった。得られたN/C比率の増加及びO/C比率の減少は、第1P(PEGMA)層の上における第2ブロックの成功的重合及びこの層にアクリルアミドが組み込まれたことを示唆する。両方の層中におけるPEGMAの存在に因り、第2ブロックの厚さを査定することは可能でない。元素比率データに基づいた結論は、当該二つのサンプルからの高分解能C1sスペクトル(図12参照)の比較により確認された。第2段階から得られたスペクトルは、明らかに、PEGMA(強いエーテル寄与)及びアクリルアミド(増加された脂肪族炭化水素及びアミド寄与)から予期される特徴を含有する。
例15
Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)コポリマー被膜の作製
パートA: 重合性ビオチン誘導体(2−メチル−アクリル酸2−{2−[5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾル−4−イル)−ペンタノイルアミノ]−エトキシ}−エチルエステル)(ビオチンMA)の合成
6−(5−エチル−2−オキソ−イミダゾリジン−4−イル)−6−メルカプト−ヘキサン酸[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチル]−アミド(ビオチニル化アルコール)を、文献(Qi,K等,J. Am. Chem. Soc.,2004,126,6599,支持情報セクション)に報告された態様で合成した。この化合物(1.60g,4.85mmol)、メタクリル酸(0.927g,10.77mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(1.347g,11.02mmol)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(4.056g,15.29mmol)(DCC)及びジクロロメタン(125mL)を、磁気攪拌機を備えた250mL丸底フラスコ中に入れた。この反応物を35℃にてN2下で5日間撹拌した。この反応混合物を濾過し、そして濾液をクロロホルム(200mL)とブライン(200mL)の間で分配した。クロロホルム層を分離し、乾燥(MgSO4)し、そして蒸発乾固して白色ペーストが得られた。この白色ペーストをジエチルエーテルでよく洗浄し、そして洗液を捨てた。残存する固体は、当該生成物及びいくらかのDCC−尿素副生成物を含有していた。次いで、この固体生成物を最小限の量のジクロロメタン中に溶解し、そしてクロロホルム中5%メタノールで予備調整されていたシリカゲル(シリカ9385)を含有するクロマトグラフィーカラムに通した。DCC−尿素副生成物が最初にそして次いで所望の重合性ビオチン誘導体が流され出た。用いられた溶離溶媒系は、クロロホルム中5%メタノールであった。集められたすべての画分を薄層クロマトグラフィー(シリカ,重合性ビオチンを含有する画分はヨウ素で明褐色に着色する)により分析した。純度について検査するためにすべての個々の画分について1H−NMRスペクトルを得てから、精製生成物を含有する画分を一緒にした。この段階における純生成物に安定剤(4−メトキシフェノール,ジクロロメタン中2mg)を添加してから、蒸発乾固して白色固体(1.30g,収率66.4%)が得られた。1H−NMR(MeOD,400MHz)δ1.39〜1.78(m,6H,C 2 2 2CH2CON)、1.94(s,3H,C 3)、2.20(t,J=7.27Hz,2H,C 2CON)、2.70(d,J=12.73Hz,1H,ビオチン単位のC 2Sの一つ)、2.90(dd,J=4.60Hz及び12.73Hz,1H,ビオチン単位のC 2Sの一つ)、3.173〜3.221(m,1H,ビオチン単位のCS)、3.34〜3.37(m,2H,C 2N)、3.55〜3.57(m,2H,C 2O)、3.70〜3.73(m,2H,C 2O)、4.27〜4.31(m,3H,ビオチン単位のCCHS及びC 2O)、4.47〜4.50(m,1H,ビオチン単位のCCH2S)、5.63(幅広いs,1H,C ビニル)、6.11(幅広いs,1H,C ビニル)ppm。13C−NMR(MeOD,400MHz)δ18.59、26.99、29.64、29.89、36.88、40.46、41.18、48.51、48.73、48.94、49.15、49.36、49.58、49.79、57.14、61.78、63.52、65.23、70.06、70.77ppm。
パートB: Si−ALAPP−PI表面からのアクリルアミドとビオチンMAの混合物のグラフト重合
アリルアミンをn−ヘプチルアミンの代わりに用いたこと以外は例1(Si−HAPPについて)によってのようにして、Si−ALAPP表面を作製した。アリルアミンプラズマポリマー(ALAPP)薄膜の蒸着を、20Wの電力、200kHzの周波数及び0.25Torrの初期モノマー圧にて30秒間行った。PIコポリマーの共有結合型固定化を例4によってのように行って、Si−ALAPP−PI表面を生成させた。石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、これらを置いた。この室に、(i)82mgの重合性ビオチン、300mgのアクリルアミド及び6mLのDMFを含有する溶液(5mol%,Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−5%ビオチンMA))又は(ii)174mgの重合性ビオチン、300mgのアクリルアミド及び6mLのDMFを含有する溶液(10mol%,Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA))を添加した。各場合におけるこのモノマー溶液を純窒素ガスで10分間パージして溶存酸素を除去した。パージした後、入口弁及び出口弁を閉じ、そしてエクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、サンプルをUV線(320〜500nmの波長,50mW・cm-2の強度)に暴露した。照射後、サンプルを取り出し、そしてDMF中で2時間3回洗浄し、新鮮なDMF中に夜通しそして次いで新鮮なDMF中に2日間、時々振とうしながら浸漬した。最後に、サンプルをMilli-QTM水中で5時間の期間にわたって5回洗浄した。Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)サンプルはまた、NeutrAvidinTMビオチン結合タンパク質の溶液(HEPES緩衝液中50μg/mL)に室温にて夜通し暴露し、次いで1M−NaCl中ですすぎ(2時間にわたって2回、次いで夜通し)そしてHEPES緩衝液中ですすぎ(2時間にわたって3回)、そして最後にMilli-QTM水中で半時間の期間にわたって5回すすいでから乾燥した。HEPES緩衝液は150mMのNaCl及び20mMの[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸ナトリウム塩](HEPES)を含有し、そして1M−NaOH溶液を用いてpH7.2に調整された。
Si−ALAPPサンプル及びSi−ALAPP−PIサンプルについてXPS分析によって得られた元素比率が、表13に示されている。Si−ALAPPサンプルはC、O及びNしか含有していなかったこと及び得られたO/C比率は非常に低かったことが、観察され得る。Si−ALPP表面へのイニファーター部分を含有する高分子(ポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル))の共有結合型カップリングは、有意により多い酸素(O/C=0.186)の組込み、低減窒素含有率、及びイニファーター部分の存在から硫黄の組込みをもたらした。Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−5%ビオチンMA)表面及びSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)表面について得られたO/C元素比率及びN/C元素比率は、Si−ALAPP−PI表面について得られたものより有意に高く、しかして重合反応が両方の場合において成功であったことを示唆する。加えて、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)について得られたN/C比率は、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−5%ビオチンMA)について得られたものより低く、しかして予期されたように、より少ないアクリルアミドが重合中ポリマー鎖中に組み込まれたことを示唆する。Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−5%ビオチンMA)表面及びSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)表面について得られた元素比率は、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)表面について得られたものとは有意に異なっており、しかしてビオチンが被膜中に成功的に組み込まれたことを示唆する。NeutrAvidinTMであるビオチン結合タンパク質への暴露後のSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)表面について得られた元素比率もまた、表13に含められている。グラフトポリマー鎖中に組み込まれたビオチン部分が生物学的に活性である(すなわち、リガンド受容体相互作用によってNeutrAvidinTM分子と相互作用し得る)ならば、その場合にはNeutrAvidinTM分子はSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)表面に非常に強く結合されることになる。NeutrAvidinTMと共に定温放置された前と後のSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)サンプルについて得られた元素比率の比較(増加O/C、N/C及び低減S/C)は、明らかに、有意量のNeutrAvidinTMがポリマー被膜に結合されていた(おびただしいすすぎ手順後依然として存在していた)ことを示唆する。
追加情報が、サンプルの高分解能XPS分析から得られ得る。Si−ALAPPサンプル及びSi−ALAPP−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトルが、図13に示されている。得られたピーク形は、これらの二つのサンプルについて非常に異なっていた。特に、カルボン酸に典型であるより高い結合エネルギー成分がSi−ALAPP−PIからのスペクトルに存在しており、しかしてSi−ALAPP表面へのイニファーター部分を含有する高分子(PIコポリマー)のカップリングが、上記に示された低分解能分析(表13参照)の解釈の支持で、成功であったことを指摘する。更に、様々な高分解能C1sスペクトルの間の差異を、曲線の当てはめのルーチンによっての様々なスペクトル成分の解析により定量化した(表14参照)。この表において、様々なスペクトル寄与は、C1+C2/C(炭化水素)、C3(C−O/C−N)、C4(C=O)及びC5(O−C=O)(対応的により高い結合エネルギーを備える)と称される。Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプル、Si−ALAPP−P(アクリルアミド−コ−5%ビオチンMA)サンプル、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)サンプル、並びにNeutrAvidinTM(NA)ビオチンMA結合タンパク質の溶液(HEPES緩衝液中50μg/mL)への夜通しの暴露後のSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)サンプルから得られた高分解能スペクトルの比較が、図14(a)に示されている。
Figure 0005567337
これらのサンプルの各々について得られたそして図14(a)に示されたスペクトルの形において、明らかな相違がある。たとえば、Si−ALAPP−P(アクリルアミド)サンプルは、285及び288.2eVにおける2つの主成分を有する。ビオチン部分の組込みはC3成分の増加をもたらし、しかしてこれは、組込みビオチンの量が5から10mol%へ増加された場合により顕著になった。NeutrAvidinTMの溶液へのSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%ビオチンMA)サンプルの暴露は、C3成分及びC4成分の両方の増加をもたらした(この結果は、タンパク質の存在に典型である)。これらの差異を曲線の当てはめのルーチンにより定量化し、そして比較の目的のために表14に示されている。Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)のサンプルについて、NeutrAvidinTMの溶液への暴露(HEPES緩衝液中50μg/mL,室温にて夜通し)は、高分解能C1sスペクトルを有意には変化させず(図14(b)参照)、しかしてNeutrAvidinTMの結合をもたらすことになるのは被膜中のビオチン部分の存在であることを指摘する。加えて、更に、タンパク質吸着に対するSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)の抵抗を、ヒト血清アルブミンの溶液への暴露(HSA,リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中100μg/mL,37℃2時間)により例示した。三つのスペクトル(Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)のサンプル、ヒト血清アルブミン(HSA)への暴露の前及び後のサンプル、並びにNeutrAvidinTMへの暴露の前及び後のサンプル)はほとんど完全に重なり、しかしてタンパク質吸着はXPS技法で検出可能でなかった(<約10ng/cm2)ことを指摘する、ということが図14(b)から分かり得る。
Figure 0005567337
例16
ATRP開始を用いてのSi−ALAPP−PATRPI−P(PEGMA(475))被膜の作製
パートA: 重合性ATRPイニシエーター(2−メチル−アクリル酸−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルオキシ)−エチルエステルの合成
エチルアセテート(15mL)中の2−ブロモイソブチリルブロマイド(5.79g,0.0252mol,1.1モル当量(ME))を、約0℃に予備冷却されたところの三つ口丸底フラスコ中におけるエチルアセテート(50mL)中の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(2.978g,0.02289mol,1ME)及びトリエチルアミン(2.77g,0.0275mol,1.2ME)の溶液に、N2下で滴下的に添加した。この反応混合物を室温に温め、そして夜通し撹拌した。次いで、この反応混合物を蒸発乾固し、ジクロロメタン(50mL)中に溶解し、洗浄(2%K2CO3)し、そしてシリカゲル(1.09385.1000,Merck)の充填物に通した。濾液を蒸発乾固して、透明な無色油生成物(4.3g,67.4%の収率)が得られた。4−メトキシフェノール(MEHQ)(1mg)を抑制剤として添加した。1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ1.91(s,6H,(C 32C(Br)COO−)、1.93(s,3H,C 3C(CH2)COO−)、4.40(幅広いs,4H,−OC 2 2O−)、5.57(s,1H,ビニルC)、6.12(s,1H,ビニルC)ppm。13C−NMR(CDCl3,400MHz)18.17、30.59、30.68、55.29、61.84、63.46、126.06、135.81、166.90、171.34ppm。
部分B: カルボン酸部分及びATRPイニシエーター部分を含有するコポリマー(PATRPIコポリマー)の合成
アクリル酸(1.5g,2.08×10-2mol,無水)を5mLのジメチルホルムアミド(DMF)に添加し、そして次いでインヒビター・リムーバー(Inhibitor Remover)(Aldrich)を含有するカラムにこの溶液を通すことにより抑制剤を除去した。0.581g(2.0815×10-3mol)の2−メチル−アクリル酸−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルオキシ)−エチルエステル(10mol%)及び75mgの2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の添加後、この溶液を窒素で10分間パージしそして密封した。60℃にて夜通し加熱すると、白色沈殿物がもたらされ、そしてこの沈殿物を更なる10mLのDMFの添加により溶解した。次いで、コポリマーを含有するこの溶液をDMFで夜通し透析した(スペクトラム・スペクトラ/ポル(Spectrum Spectra/Por)1モレキュラーポーラスメンブランチューブ,MWカットオフ6000〜8000)。透析中、DMFを2回交換した。次いで、透析チューブの内容物をフラスコに移し、そして25mLの最終容量に作り上げた。生じたコポリマーの定量13C−NMRスペクトルを得た。13C−NMR(DMFH7/DMFD7,500MHz)δ18.10、19.44、41.32、45.91、56.94、60.15、62.03、63.65、171.07、171.87、176.05。171.87(O=C−O)と176.05(O=C−OH)ppmにおけるカルボニルピークの積分の比率を得ることにより、このコポリマーの化学量論は、92.8:7.2のアクリル酸:ATRPイニシエーターであると分かった。
パートC: Si−HAPP表面上へのポリ(アクリル酸−コ−ATRPイニシエーター)の共有結合型カップリング(Si−HAPP−PATRPI)
20:70のH2O(pH5):ジメチルホルムアミド(DMF)及び2mg/mLのPATRPIコポリマーを含有する溶液を作製し、そして一連の清浄にされたガラスバイアル中に分与した。各バイアル中に、2.07mg/mLの溶液濃度を作るのに適切な量の1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を量り取った。これらのバイアルを穏やかに振とうして、EDCが完全に溶解されるのを確実にし、そしてSi−HAPPサンプル(例1参照)をバイエル中に置いた(HAPP薄膜は新たに蒸着された)。これらのバイアルを夜通し穏やかに振とうし、そして次いで2:7のH2O:DMF(v/v)の溶液で6回すすぎ(すすぎ間を少なくとも15分にして)、次いで4のpHにおけるMilli-QTM精製水ですすぎ、そして最後にMilli-QTM水で3回すすいだ。
Si−HAPP及びSi−HAPP−PATRPIのXPS分析の結果は、表15に示されている。ここで、Si−HAPP表面上へのPATRPIコポリマーのグラフトは多量の酸素(O/Cは0.188から0.394に変動した)並びに臭素の組込みをもたらしたことが明らかであり、しかして組み込まれた酸素の大部分はポリマー中のアクリル酸残基に由来し、そして臭素はATRPイニシエーターに由来する。Si−HAPPサンプル及びSi−HAPP−PATRPIサンプルから得られた代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトルの例が、図15に示されている。ここで、Si−HAPPサンプル及びSi−HAPP−PATRPIサンプルからのスペクトルの形の相違、特に、表面上へのアクリル酸残基の導入に対応する高結合エネルギースペクトル成分(結合エネルギーおおよそ289eV)の存在(これによりカップリング反応が成功であったことが確認される)が明らかに分かり得る。
パートD: Si−HAPP−PATRPI表面からのポリ(ポリ(エチレングリコールメタクリレート)(475))のグラフト重合
Si−HAPP−PATRPI表面の表面からのポリ(ポリ(エチレングリコールメタクリレート)(475))のグラフトのための手順を、少数の若干の改変でもって大部分文献(Feng,W.等,Macromol. Rapid Commun.,2005,26,1383)から採用した。PEGMA(475)は受け取られたまま用いられたが、しかし抑制剤を除去する樹脂(Aldrich)を含有するクロマトグラフィーカラムに通すことにより抑制剤は除去された。23.0mgのCu(I)Br(0.16mmol)及び4.6mgの2,2′−ビピリジン(0.03mmol)を含有するところのメタノール中のPEGMA(475)の溶液(2M)(全体で16mL)を作製した。この溶液中の酸素を20分間のN2の通気により除去してから、高純度N2で満たされたグローブバッグに移した。この溶液に、穏やかに混合しながら、窒素で飽和されたエチル2−ブロモイソブチレート(23.5mL,0.16mmol)を添加した。この溶液のアリコートを、Si−HAPP−PATRPI表面を含有するガラス管に移し、これらの管を施栓し、そしてグラフト反応を室温にて2時間進行させた。これらの管をグローブバッグから取り出しそしてこれらの管中にO2が導入されるようにすることにより、反応を停止させた。XPS分析のために、これらのサンプルをメタノールで4回そしてMilli-QTM水で4回すすいでから、高純度N2流で乾燥した。
Si−HAPP−PATRPI−P(PEGMA(475))サンプルについてXPS分析によって得られた元素比率及び高分解能のC1sのXPSスペクトルもまた、表15及び図15に示されている。観察されたO/C比率の増加及びN/C比率の減少に基づくと、グラフト反応は成功であった。しかしながら、窒素シグナルの存在により、生成された被膜が真空中で脱水された時に10nmより小さい厚さであったことが指摘された。Si−HAPPサンプル及びSi−HAPP−PATRPIサンプルについて得られたスペクトルと比較される場合、被膜中のC−O基の存在に因る有意な成分(結合エネルギー286.6eV)が導入されているところのSi−HAPP−PATRPI−P(PEGMA(475))サンプルからの高分解能C1sスペクトルの形により、この解釈は確認された。
Figure 0005567337
例17
重合性NHSエステルを用いてのSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−NHS A)被膜の作製
パートA: Si−HAPP−PI表面からのポリ(アクリルアミド−コ−NHS A)のグラフト重合
例1によってのようにして、Si−HAPP表面を作製した。PIコポリマー(例3から)の共有結合型固定化を例4によってのように行って、Si−HAPP−PI表面を生成させた。石英ガラス上蓋を備えた注文設計PVDFセル中に、これらを置いた。この室に、(i)59mgのN−アクリルオキシスクシンイミド(NHS A)、250mgのアクリルアミド及び5mLのDMFを含有する溶液(10mol%,Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%NHS A))又は(ii)120mgのNHS A、250mgのアクリルアミド及び5mLのDMFを含有する溶液(20mol%,Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A))を添加した。各場合におけるこのモノマー溶液を純窒素ガスで10分間パージして溶存酸素を除去した。パージした後、入口弁及び出口弁を閉じ、そしてエクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、サンプルをUV線(320〜500nmの波長,50mW・cm-2の強度)に暴露した。照射後、サンプルを取り出し、そしてDMF中で2時間3回洗浄し、新鮮なDMF中に夜通しそして次いで新鮮なDMF中にもう1日間、時々振とうしながら浸漬した。最後に、サンプルをXPS分析及び細胞培養実験(パートB参照)のために乾燥した。
Si−HAPP−PIサンプル、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%NHS A)サンプル及びSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)サンプル、並びにXPS分析及び細胞培養実験の両方のための対照として供するSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)ホモポリマーサンプルについてXPS分析によって得られた元素比率が、表16に示されている。2種のNHS A被膜について得られた元素比率とSi−HAPP−PIサンプルについて得られたものとの比較により、サンプルのグラフト被覆は成功であったことが指摘され、たとえばN/C比率は増加された(Si−HAPP−PIサンプルについての0.055から10及び20%NHS Aの場合についてのそれぞれ0.220及び0.202並びにアクリルアミドホモポリマーの場合についての0.274へ)。N/C値はまた10%の場合により高く、しかしてその被膜が20%NHS Aサンプルより多いアクリルアミドを含有していたことを示唆し、またNHS Aを含有する被膜は両方共ポリ(アクリルアミド)ホモポリマーより低いN/C比率を有していた。
Figure 0005567337
被膜に関して追加情報を得るために、高分解能のC1sのXPSスペクトルも得た。Si−HAPP−PIサンプル、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−10%NHS A)サンプル、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)サンプル及びSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプルから得られた代表的スペクトルが、図15に示されている。Si−HAPP−PIスペクトルの場合において、曲線の当てはめのルーチンによって得られた解析スペクトル成分も含められている。これらのスペクトル成分は、結合エネルギーの増加と共にC1からC5と表される。図16において、様々なスペクトルの形の明確な相違が観察され得る。たとえば、Si−HAPP−PIサンプルは、O−C=O基に対応する非常に明確な高結合エネルギー成分(C5,BE=289.25eV)を有する。他方、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)スペクトルは、C=O/N−C=O基(後者は、ポリ(アクリルアミド)について一層重要である)に対応する明確な成分(C4,BE=288.1eV)を有する。2種のNHS A被膜は、無論、両タイプの官能基の元素を含有する。NHS A被膜からのスペクトルにおいて、C4とC5成分の相対強さは、被膜中により多い又はより少ないアクリルアミド又はNHS Aがあるかどうかに依存して変わる、ということが観察され得る。高分解能C1sスペクトルのスペクトル成分の定量化が、表17に含められている。
Figure 0005567337
制御非特異的吸着性質並びに制御されたグラフト密度、分子量及びアーキテクチャーのポリマーを備えたポリマー被膜内におけるNHS反応性基の具備が、ペプチドのようなアミン含有化合物の固定化を可能にする。被膜中におけるかかるペプチドの包含は、表面と共に培養された細胞の応答に関しての制御を提供し得る(パートB参照)。
パートB: 細胞培養実験
P(アクリルアミド)被膜中へのN−アクリルオキシスクシンイミド(NHS A)の共重合後のNHS部分の反応性の効力を検査するために、ペンタペプチドLys−Asp−Gly−Glu−Ala(KDGEA)を選んだ。KDGEAはI型及びIV型コラーゲン中に見出されるα2β1インテグリンについての細胞結合認識配列であり、そしてコラーゲン擬似表面へのウシ角膜上皮(BCEp)細胞の付着を効果的に阻止すると示されてきた。細胞付着の不良な支持体であるP(アクリルアミド)表面にKDGEAを固定化するためにNHS部分を利用することにより、該表面上に播種されたBCEp細胞は係留ペンタペプチドによって付着しそして伸展することができると予期された。Lys−Asp−Gly−Ala−Ala(KDGAA)であるKDGEAの非細胞支持性類似体も、比較のために用いた。細胞付着に対するKDGEAペプチドとKDGAAペプチドの効果を識別するために、ポリマースカフォールド上における付着は低くなければならない、ということが特に重要である。これは、ポリマー鎖のグラフト密度、分子量、多分散性、組成、及びポリマー鎖のコンホメーションが容易に制御される方法論を用いてスカフォールドを製作することにより最良に達成される。本明細書内に記載された方法論は、この制御を達成するように理想的に適合される。
Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)のサンプルを組織培養ポリスチレン培養平板(TCPS,24ウェル)に移し、そして次のやり方の一つでの処理後にウシ角膜上皮(BCEp)細胞の24時間の付着及び伸展を支持するべきそれらの能力について検査した。すなわち、(a)500μg/mLのペンタペプチドLys−Asp−Gly−Glu−Ala(KDGEA)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)の溶液中に37℃にて1時間浸漬する、(b)500μg/mLのペンタペプチドLys−Asp−Gly−Ala−Ala(KDGAA)を含有するPBS(pH7.4)の溶液中に37℃にて1時間浸漬する、(c)PBS(pH8.0)の溶液中に37℃にて1時間浸漬してNHS部分を不活性化する、及び(d)TCPSを基準対照表面として用いる一方、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)対照サンプルもまたpH7.4又はpH8.0におけるPBS中に37℃にて1時間浸漬した。
これらの様々な浸漬処理後、溶液を除去し、そして各サンプルを無菌のPBS(pH7.4)で洗浄した。次いで、BCEp細胞を2×105細胞/ウェルの濃度にて各サンプルウェルに、10%(v/v)のウシ胎児血清(FBS)が補充されたところのダルベッコの改変イーグル培地/ハムのF12(DMEM/F12,50:50)で構成された培地にて添加した。次いで、これらの細胞を、空気中5%CO2の加湿雰囲気中において、37℃にて24時間定温放置した。
不透明Siウェハーをベースとしたサンプル上のこれらの細胞を視覚化するために、それらは、定温放置の最後の1時間、CellTrackerTMグリーン(Invitrogen Corp.)で標識付けした。次いで、細胞を4%ホルモル−食塩水の溶液で固定化してから、488nmの吸光波長を用いて蛍光顕微鏡法により目視検査した。各サンプルタイプに関して、細胞の代表画像をディジタル式で記録した。
よく伸展したモルホロジーと共に優秀な細胞付着が、TCPS対照表面(図18(a)及び(b))と同様に、Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)−KDGEA(図17(a),KDGEA)に関して観察された。KDGEAサンプルと比較してSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)−KDGAAサンプル(図17(b),KDGAA)に関して、最小細胞付着が、しかしペプチドが用いられなかった対照表面(図17(c)及び(d))よりわずかに多い細胞数でもって観察された。しかしながら、存在していたそれらの細胞はすべて、丸いモルホロジーを示した。これは予期されないことではなく、何故なら配列中のただ一つのアミノ酸の変更では、BCEp細胞膜α2β1インテグリンによるKDGAAに対する弱い親和力が依然としてあり得るからである。非常に低い細胞付着が、pH8.0において加水分解されたSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)サンプル(図17(c),NHS pH8.0)に関して観察された。最小細胞付着は、pH8.0にてPBSに暴露されていたSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)対照表面(図17(d),pAAm pH[8.0])に関して見出された。
Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)表面の表面密度及びコンホメーション健全性が、該表面への良好な細胞付着をもたらすような様式でKDGEAペプチドを共有結合で固定化するのに十分であった、ということをこれらの結果は指摘する。BCEpが高い数で付着したのみならず、培養における24時間後によく伸展したモルホロジーを保留しながらそうした。非細胞結合類似体KDGAAは、BCEp細胞付着のための同様な係留点を提供せず、そして非支持性の加水分解Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−20%NHS A)及びSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)対照と効果上同等であった。
例18
カルボン酸部分及びイニファーター部分を含むところの異なる組成の共有結合でカップリングされた高分子からのSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)被膜の作製
パートA: 異なるモル比のジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステルとアクリル酸(例3と比較して)を備えたポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル)コポリマーの合成
例3に概略されたものと比較してより低いモル比のアクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステルを備えたポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル)コポリマーを、例3に概略された方法に従って合成した(PI(2))。アクリル酸(4.0g,5.55×10-2mol,無水,Fluka)を8mLのジメチルホルムアミド(DMF)(BDH Chemicals)中に溶解し、そして次いでインヒビター・リムーバー(Inhibitor Remover)(Aldrich)を含有するカラムにこの溶液を通すことにより抑制剤を除去した。このアクリル酸溶液に0.60gのジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステル(2.26×10-3mol)(例2から)及び200mgのAIBNを添加し、そしてその後この溶液を窒素で10分間パージしそして密封した。60℃にて夜通し加熱すると、不透明な粘稠ゲルの形成がもたらされ、そしてこの粘稠ゲルを20mLのDMFの更なる添加により希釈した。次いで、コポリマーを含有するこの溶液をDMFで夜通し透析した(スペクトラム・スペクトラ/ポル(Spectrum Spectra/Por)1モレキュラーポーラスメンブランチューブ,MWカットオフ6000〜8000)。透析中、DMFを2回交換した。次いで、透析チューブの内容物をフラスコに移し、そして100mLの最終容量に作り上げた。
PI(2)コポリマーを定量13C−NMRにより特性決定した。その組成は、3.4:96.6mol%のジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステル:アクリル酸を含有するコポリマーに相当していた。この組成は、組成が8.5:91.5mol%のジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−フェニルエステル:アクリル酸であると分かったところの例3において合成されたコポリマー(PI(1))と比較され得る。
パートB: HAPP改質シリコンウェハーへのポリ(アクリル酸−コ−ジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステル)コポリマーの共有結合型カップリング(Si−HAPP−PI)
例1のHAPP被覆シリコンウェハーへのPI(2)コポリマーのカップリングを、例4に概略された方法に従って行った。
Si−HAPPサンプル、Si−HAPP−PI(1)(例4から)サンプル及びSi−HAPP−PI(2)サンプルのXPS分析によって決定された元素比率が、表18に示されている。このコポリマーの共有結合型カップリングは、増加O/C比率及び低減N/C比率(Si−HAPPサンプルと比較して)、Si−HAPP−PI(1)サンプルと同様なN/C並びに硫黄の存在(S/C比率により指摘されるように)により指摘されるように成功であった。得られたS/C比率は、Si−HAPP−PI(1)サンプルについて得られたものよりもSi−HAPP−PI(2)について低く、しかして共有結合でグラフトされた層がより少量の組込みイニファーター部分を含有していたことを指摘する。Si−HAPPサンプルの表面上におけるこれらの2種のコポリマーの被覆が一様であるとすると、共有結合でカップリングされたコポリマー中のジエチル−ジチオカルバミン酸4−ビニル−ベンジルエステルの低減モル比は、グラフト重合のための開始部位の間のより大きい間隔をもたらすことになる。
パートC: Si−HAPP−PI(1)表面及びSi−HAPP−PI(2)表面からのアクリルアミドモノマーのグラフト重合
Si−HAPP−PI(2)サンプルの表面からのポリ(アクリルアミド)のグラフト重合を例6に概略された方法に従って行ったが、しかしモノマー溶液を窒素流でパージした後、入口弁及び出口弁を閉じ、そしてエクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、サンプルをUV線(50mW・cm-2の強度における320〜500nmの波長)に30分間暴露した。
Si−HAPP−PI(2)−P(アクリルアミド)サンプルのXPS分析により得られた元素比率もまた、Si−HAPP−PI(1)−P(アクリルアミド)サンプルについて得られたものと比較されるように、表18に示されている。上記に概略されたように、これらの2種のSi−HAPP−PI(1)サンプル及びSi−HAPP−PI(2)サンプルは、グラフト重合のための開始部位の間の異なる間隔を有するであろう。重合反応が同様な分子量のポリマーを生成させる及びグラフト鎖間の距離がSi−HAPP−PI(1)−P(アクリルアミド)サンプルについてよりもSi−HAPP−PI(2)−P(アクリルアミド)サンプルの場合において小さいとすると、Si−HAPP−PI(2)にグラフトされたポリ(アクリルアミド)の質量は、Si−HAPP−PI(1)サンプルから得られたものより小さくなる。サンプルを乾燥しそしてXPS機器の超高真空室中に置いた後、Si−HAPP−PI(2)サンプル上のグラフト層の厚さは、Si−HAPP−PI(1)サンプル上にグラフトされたものより小さくなる。この効果は、表18に示されたXPS元素比率結果の解析により示される。ここで、Si−HAPP−PI(2)−P(アクリルアミド)サンプルについて得られたO/C比率及びN/C比率はSi−HAPP−PI(1)−P(アクリルアミド)サンプルについて得られたものより低く、しかしてSi−HAPP−PI(2)サンプル上のポリ(アクリルアミド)グラフト層の厚さはSi−HAPP−PI(1)サンプルについて得られたものより実際に低いことと一致する、ということが分かり得る。
Figure 0005567337
例19
被膜安定性: オートクレーブ滅菌の効果
Si−HAPP−PI−P(アクリルアミド)被膜を、例6に記載された方法によってのようにして作製した。これらの被覆表面のサンプルをオートクレーブ中に置き、そしてこのオートクレーブを通常の滅菌サイクルに付した。XPS分析のために、サンプルを取り出し、そしてMilli-QTM水で8回すすいでから乾燥した。比較のために、Milli-QTM水でおびただしくすすがれていたところのオートクレーブ滅菌されなかったサンプルもまた乾燥し、そしてXPSで分析した。オートクレーブ滅菌の前と後のSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)表面について得られた元素比率は非常に似ていた、ということが表19に示されたデータから明らかである。サンプルはオートクレーブ滅菌中高められた温度及び圧力に組成の変化を伴うことなく付されたので、これは、被膜が安定でありそしてたとえば滅菌時に離層しないというよい証拠である。
Figure 0005567337
オートクレーブ滅菌の前及び後のSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプルについて得られた高分解能のC1sのXPSスペクトルが、図19に示されている。得られたスペクトルは両方の場合において非常に似ており、しかしてこれによりサンプルがオートクレーブ滅菌プロセスに安定であったことが確認される。オートクレーブ滅菌前のSi−HAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプルについて得られたC1sスペクトルの曲線の当てはめがなされたスペクトル成分もまた、図19に含められている。この手順は、種々の官能基又は化学環境と関連した化学シフトから生じるところの全スペクトルへの寄与の定量化を可能にする。オートクレーブ滅菌後のサンプルについて得られたC1sスペクトルの曲線の当てはめがなされた成分は、明瞭さの理由のために図19に含められなかった。しかしながら、それらは、両方のサンプルについて表20に掲げられている。やはり、両方のサンプルについてのそれぞれの成分は非常に似ており、しかしてこれによりオートクレーブ滅菌された場合の被膜の安定性が示された。
Figure 0005567337
例20
ポリマー基材の被覆: アジドを基剤とした表面固定化
パートA: アジドアニリン塩酸塩でのPIコポリマーの誘導体化
暗室条件を働かせながら、4.1%のPIコポリマー(例3に記載された)を含有する5.0mLのDMF溶液を0.5mLのPBS緩衝剤溶液と混合した。この溶液に、100mgのアジドアニリン塩酸塩及び200mgのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を添加した。次いで、この反応混合物を、磁気撹拌機を用いて、暗室条件下で室温にて1時間撹拌した。生じたアジドアニリン変性PI[PI(アジド)]コポリマー溶液を、引き続く実験において、更なる精製なしに用いた。
パートB: PI(アジド)コポリマーの表面固定化
PI(アジド)コポリマーの表面固定化のための基材として、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムを用いた。PETフィルムを受け取られたまま用い、そして1cm×1.5cmのサイズに切り取った。次いで、例15bに記載された手順に従って、アリルアミンプラズマポリマーを蒸着させた。
次いで、サンプルを、上記に記載されたPI(アジド)含有溶液と共に、暗所において室温にて30minにわたって定温放置した。共有結合型固定化[PET−共有結合PI(アジド)]のために、サンプルを9:1(v/v)のDMF/水の溶液で短時間洗浄し、乾燥し、そして照射(エクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400,400〜500nmフィルター,50W)に10秒間暴露した。UV暴露中、PI(アジド)ポリマーは、高反応性ニトレン基の形成及びPET基材ポリマーとのそれらの反応に因り、基材表面上に共有結合で係留された。
対照サンプルは、上記に記載されたようなPI(アジド)吸着後に9:1(v/v)のDMF/水の溶液で(30分間5回)及び加えて水で(30分間5回)繰り返し洗浄されそして次いで乾燥されたサンプル[PET−吸着PI(アジド)]を含んでいた。
パートC: PET−共有結合PI(アジド)表面からのアクリルアミドモノマーのグラフト重合
PET−共有結合PI(アジド)サンプルを、次いで、5%(w/v)アクリルアミド水溶液で満たされた重合室(前の諸例に記載されたような)中に導入した。次いで、表面に結合されたイニファーター部分からのアクリルアミドのグラフト重合を、UV照射(エクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400,400〜500nmフィルター,50W)により30分間行った。UV重合後、サンプルを水で洗浄(30分間3回及び加えて16時間)してから、(PET−共有結合PI(アジド)−P(アクリルアミド))を乾燥した。
これらのサンプルについてXPSにより得られた元素比率が、表21に示されている。
Figure 0005567337
これらの結果はPETの典型的組成を示し、またサンプルが照射されなかった場合に吸着PI(アジド)が完全に洗い流されたことを明らかに示す。比較すると、PET−共有結合PI(アジド)サンプルは、PI(アジド)コポリマーの構造から予期されたように、N/C比率の有意な増加及びO/C比率の有意な減少を示した。このサンプルについての硫黄の出現は、PI(アジド)コポリマーの成功的共有結合型固定化についての更なる証拠を与える。PET−共有結合PI(アジド)−P(アクリルアミド)サンプルについて得られた分析結果は、高いO/C比率及びN/C比率並びに硫黄シグナルの不存在により指摘されるように、10nm(XPS方法の分析深さ)より大きい被膜厚さでもってのP(アクリルアミド)の成功的グラフトを指摘した。
この結果は、更に、上記に列挙されたサンプルのC1sの高分解能XPSスペクトルにより支持される。PET−共有結合PI(アジド)−P(アクリルアミド)サンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトル(図20(a)に示されている)は、厚いP(アクリルアミド)被膜の典型的特徴を示した。比較のために、PETについて得られた代表的な高分解能C1sスペクトルもまた、図20(b)に示されている。
アクリルアミド溶液中のPETサンプル及びPET−吸着PI(アジド)サンプルの照射により行われた対照実験(データはここに示されていない)は、0.016又はそれ以下のN/C比率により指摘されるように、有意なグラフトをもたらさなかった。
例21
可逆的付加開裂型連鎖移動(RAFT)重合を用いてのSi−ALAPP−PRAFT−P(アクリルアミド)グラフト被膜の作製
パートA: カルボン酸部分及び4−クロロメチルスチレン部分を含有するコポリマーの合成
アクリル酸(4.0g,5.6×10-2mol,無水,Fluka)を12mLのジメチルホルムアミド(DMF,BDH Chemicals)中に溶解し、そして次いでインヒビター・リムーバー(Inhibitor Remover)樹脂(Aldrich)を含有するカラムにこの溶液を通した。これに1−(クロロメチル)−4−ビニルベンゼン(CMVB,0.84g,5.5×10-3mol,Aldrich)を添加した。この溶液を乾燥窒素ガスで10分間パージし、そして次いで0.2gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加した。この反応混合物を含有するフラスコをゴムセプタムで密封し、乾燥窒素ガスで更に5分間パージし、そして最後に60℃にて夜通し加熱した。この重合溶液を冷却した後、透析チューブ(スペクトラム・スペクトラ/ポル(Spectrum Spectra/Por)1,分子量カットオフ6〜8kDa)に移し。そしてDMFで2日間、DMFの多数回の交換をしながら透析した。次いで、この溶液を10mmのNMR管中に入れ、そして定量13Cスペクトルを得た。13C−NMR(125.77MHz,DMF−h7)δ177.9〜172.2(8.3C,C=O)、145.3〜143.8(1C,ArC)、136.2(1H,ArC)、129.2(2C,ArCH)、128.5(2C,ArCH)、46.6(1C,CH2Cl)、42.4〜40.9(9.3,VBC主鎖CH,AA主鎖CH2)、38.5〜34.8(AA主鎖CH,VBC主鎖CH2,DMFにより部分的に不明瞭にされた)。様々なピークについて得られた積分の解析により、ポリマーのモル組成はアクリル酸残基:CMVB残基について89:11(用いられたモノマー供給物の比率とよく一致して)であったことが指摘された。
パートB: エチルトリチオカルバメートアニオンの合成
窒素雰囲気下で、エタンチオール(1.46g,23.5×10-3mol,Aldrich)及び二硫化炭素(2.69g,35.4×10-3mol,Ajax Chemicals)を、丸底フラスコ中の20mLのクロロホルムに添加した。この溶液に、トリエチルアミン(2.80g,27.7×10-3mol,Aldrich)を滴下的に添加した。この反応混合物を2時間撹拌し、次いで室温にて夜通し放置して反応させた。
パートC: カルボン酸部分及び可逆的付加開裂型連鎖移動剤部分を含有するコポリマー(PRAFTコポリマー)の合成
上記のパートAにおいて形成されたコポリマー溶液に、14mLの上記のパートBにおいて形成されたエチルトリチオカルバメート塩溶液を添加した。この反応混合物を室温にて2時間撹拌してから、透析膜(スペクトラム・スペクトラ/ポル(Spectrum Spectra/Por)1,分子量カットオフ6〜8kDa)に移し、そしてDMFで2日間、DMFの多数回の交換をしながら透析した。透析チューブ内のポリマー溶液は、色が黄であった。この色は透析の期間にわたって維持された。透析期間の終わりに、黄の色は透析液において認められなかった。次いで、透析チューブ内のポリマー溶液を取り出し、そしてその容量を追加のDMFで40mLの総容量に作り上げた。定量13C−NMR分析のために、このポリマー溶液のサンプルを取り出した。13C−NMR(125.77MHz,DMF−h7)δ225.2(1C,C=S)、178.2〜173.4(9.3C,C=O)、146.4〜144.0(1C,ArC)、133.6(1H,ArC)、130.2(2C,ArCH)、129.1(2C,ArCH)、46.6(1C,CH2Cl)、43.4〜41.2(VBR主鎖CH,AA主鎖CH2,CH2CH3)、38〜35(AA主鎖CH,VBR主鎖CH2,DMFにより部分的に不明瞭にされた)、13.7(1C,CH3)。
スペクトルから得られた積分の解析により、(i)コポリマー鎖におけるCMVB部分とエチルトリチオカルバメートアニオンとの間の反応は本質的に定量的であったこと、及び(ii)コポリマー鎖におけるアクリル酸残基とエチルトリチオカルバメート残基の間の化学量論はパートAにおいて得られたアクリル酸残基:CMVB残基の比率について得られたものと同じであったことが指摘された。
パートD: ALAPP改質シリコンウェハーへのPRAFTコポリマーの共有結合型カップリング(Si−ALAPP−PRAFT)
Si−ALAPP表面を例15によってのようにして作製し、そしてこれらのSi−ALAPP表面上へのPRAFTコポリマーの共有結合型カップリングを例4によってのように行った。手短に言うと、5片のALAPP処理シリコンウェハー(おおよそ1cm×1cm)を、DMF(4.5mL)、H2O(0.8mL)及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC,0.075g,Sigma)と共に1.5mLのパートCにおいて作製されたPRAFTコポリマーの溶液を含む溶液中に置いた。反応を夜通し進行させ、そしてその後これらのシリコンウェハー片をDMF中で洗浄(1日にわたって2回そして次いで夜通しの洗浄)しそして精製水中で洗浄(1日にわたって3回)してから、層流型キャビネット中で乾燥した。
PRAFTコポリマーがSi−ALAPP基材に共有結合でカップリングされたという確認は、XPS分析によって得られた。表22において、Si−ALAPP−PRAFTサンプルについて得られたO/C比率はSi−ALAPP対照サンプルについて得られたものよりも有意に高かった(PRAFTコポリマー中の高割合のカルボン酸残基の存在から生じる)ことが分かり得る。加えて、Si−ALAPP−PRAFTサンプルについてのN/C比率の低減(Nを含有しないところのSi−ALAPP表面の上の上層の存在を指摘する)、並びにSの存在(コポリマー中のトリチオカルバメートから)が分かり得る。更に、XPSの高分解能分光分析は、アクリル酸基を含有する高分子被膜の存在と一致して、表面上のカルボン酸基の存在を指摘した。
パートE: Si−ALAPP−PRAFT表面からのアクリルアミドのグラフト重合(Si−ALAPP−PRAFT−P(アクリルアミド))
Si−ALAPP−PRAFT処理シリコンウェハーを、10mLの5wt%アクリルアミドモノマー溶液を含有するバイアル中に置いた。これを窒素で5分間脱気してから、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(Vaso(登録商標)50,0.025g)を添加した。この溶液を窒素で更に5分間パージしてから、このバイアルを密封しそして35℃にて30分間加熱した。これらのサンプルを水で3回洗浄し、水に2日間浸漬し、そして次いでMilli-QTM精製水中で最終すすぎをした。最後に、これらのサンプルを、窒素の乾性の濾過された高速流を用いて、層流型キャビネット中で乾燥してから、XPSでの分析をした。
Si−ALAPP−PRAFT−P(アクリルアミド)サンプルのXPS分析によって得られた結果が、表22に示されている。Si−ALAPP−PRAFTサンプルの表面からのポリ(アクリルアミド)の成功的グラフトは、0.046から0.114の値へのN/C原子比率の増加により確証された。ポリ(アクリルアミド)のグラフトの前と後で、得られたS/C比率は非常に似ており、しかしてこれは同様な量のSが被膜中に依然として存在していたことを指摘する、ということも注目されるべきである。これにより重合反応がRAFTメカニズムによって起こったことが確証され、何故なら活性RAFT基をポリマー鎖の末端に残すようにアクリルアミドモノマーがポリマー鎖に付加されるからである。XPS分析中遊離された光電子の強さは上層の存在により弱められるので、Sはポリマー鎖の端に(すなわち、ポリ(アクリルアミド)被膜の極端に)あるに違いない。
Figure 0005567337
ポリ(アクリルアミド)グラフト反応が成功であったという更なる証拠は、高分解能XPS分析から得られた。Si−ALAPP−PRAFT−P(アクリルアミド)サンプルについて、高分解能の1CsのXPSスペクトルは、Si−ALAPP−PRAFTサンプルについて得られたスペクトルに存在しなかったところのアミド官能基の存在に因る成分を含有していた。ポリ(アクリルアミド)グラフト被膜の厚さは、XPSサンプリング深さの厚さより小さかった(イニファーター(例6参照)と比較してRAFT重合のより遅い速度論に因り得る)、ということが注目されるべきである。
例22
Si−ALAPP−HDI−星形PEG−PI−P(アクリルアミド)被膜の作製
パートA: 1−((ジエチルカルバモチオイルチオ)メチル)安息香酸の合成
4−クロロメチル安息香酸(4g,0.0234mol,1.0当量)を温エタノール(20mL)中に溶解した。ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩三水和物(7.92g,0.0328mol,1.5当量)もまた、温エタノール(20mL)中に別個に溶解した。次いで、カルバミン酸の該溶液をカルボン酸の該溶液に添加した。次いで、生じた混合物を40〜50℃にて2時間撹拌し、次いで室温にて夜通し撹拌した。次いで、この反応混合物を蒸発乾固し、そしてジクロロメタンとブラインの間で分離した。水性層を分離し、そして濃HClで2のpH値に酸性化した。酸性化で形成した沈殿物を濾過しそして風乾して、4.1g(収率62%)の白色固体が得られた。1H−NMR(アセトン−d6,400MHz)δ1.26,幅広いs,6H,2×CH3;3.82,幅広いs,2H,CH2N;4.5,幅広いs,2H,CH2N;4.67,s,2H,CH2S;7.56(d,J=8Hz,2H,芳香族);7.98(d,J=8Hz,2H,芳香族)ppm。13C−NMR(アセトン−d6,400MHz)δ11.78、12.98、41.53、47.55、50.45、130.26、130.45、130.69、143.74、167.40、194.94ppm。
パートB: 1−((ジエチルカルバモチオイルチオ)メチル)安息香酸クロライドの合成
1−((ジエチルカルバモチオイルチオ)メチル)安息香酸(0.1g)を、チオニルクロライド(1mL,過剰)とジクロロメタン(10mL)の溶液中で2時間還流させた。次いで、この反応物を蒸発乾固し、しかして生成物が淡黄色液体(収率100%)として得られた。OH末端星形PEG(MW116,000)との引き続く反応(下記参照)のために、この生成物をジクロロメタンで1.00mLの容量に希釈した(0.353Mの標準溶液)。更に、出発物質がジクロロメタンに部分的に不溶であった白色固体であったのに対して、生成物はジクロロメタンに完全に可溶であった淡黄色液体であったという観察により、当該カルボン酸の当該酸塩化物への転化が確証された。1H−NMR(CD2Cl2,400MHz)δ1.27〜1.29(幅広いm,6H,2×CH3)、3.76(幅広いq,J=7.0Hz,2H,CH2N)、4.04(幅広いq,J=7.0Hz,2H,CH2N)、4.66(s,2H,CH2S)、7.53(d,J=8.4Hz,2H,芳香族)、8.04(d,J=8.4Hz,2H,芳香族)ppm。13C(CD2Cl2,400MHz)δ11.8、12.9、41.3、47.5、50.5、53.5、53.7、54.0、54.3、54.5、130.4、132.0、132.5、146.6、168.4、194.3ppm。
パートC: イニファーター部分を組み込むべきOH末端星形PEGの化学的変性(星形PEG−PI)
MW116,000のヒドロキシ末端星形PEG(スター(Star)−462,24本の腕,Shearwater Polymers, Inc.)(0.5g,0.0043mmolのポリマー)をジクロロメタン(15mL)中にN2雰囲気下で溶解した。生じた溶液を氷浴中で冷却し、そしてトリエチルアミン(0.0053g,12.6当量)を添加した。次いで、この反応容器に、1−((ジエチルカルバモチオイルチオ)メチル)安息香酸クロライド(0.00171gを含有する160.5μLの0.0353M溶液)を滴下的に添加した。この反応物を夜通し撹拌しそして蒸発乾固して、淡橙色粉末が得られた。この粉末をFTIRにより分析して、星形PEGの末端OH基と酸塩化物の間の反応が反応生成物のスペクトルにおけるエステルC=O伸縮吸収帯(1720cm-1)のみの存在により確認された。星形PEG中のヒドロキシル基のモル数に関して、おおよそ0.5当量の1−((ジエチルカルバモチオイルチオ)メチル)安息香酸クロライドが反応混合物に添加され、しかして利用可能な末端ヒドロキシル基のおおよそ半分を更なる反応(下記参照)のために残した、ということが注目されるべきである。
パートD: Si−ALAPP−HDI−星形PEG−PI表面からのアクリルアミドモノマーのグラフト重合(Si−ALAPP−HDI−星形PEG−PI−P(アクリルアミド))
1cm×1cmのサイズを備えたシリコンウェハー(Si)を、例15B(Si−ALAPP)によってのようにしてALAPP薄膜で被覆した。ALAPPの蒸着の前及び後のサンプルのXPS分析からのデータ(元素比率として)が、比較の目的のために表23に示されている。Si/C比率が表面改質後に12.10から0.00に減少され、しかしてALAPP薄膜がXPSサンプリング深さ(おおよそ10nm)と少なくとも同じくらい厚かったこと及び被膜にピンホールがなかったことを指摘する、ということが注目されるべきである。窒素が薄膜中に存在しており(0.149のN/C比率)、またプラズマ室からの取出し時におけるラジカルのクエンチングに因り酸素も存在していた。O/C比率は、改質前のSiウェハーの表面上の自生酸化物被膜中に存在するO/C比率と比較して、薄膜中の小さい酸素原子百分率に因り、表面改質後に低減された。ALAPP薄膜は特質上大部分炭素質であり、そしてその炭素はほとんど脂肪族であった(主成分が285.0eVの結合エネルギーに集中されていた高分解能C1sスペクトル(図21(a)参照)から推定された)。この膜中に存在する窒素は、ほぼ完全に表面アミン基の存在に因った。これは、高分解能N1sのピーク(399.4eVにおける)(データは示されていない)の結合エネルギーから推定された。
この方法論におけるその次の段階は、Si−ALAPP表面における遊離アミン基並びにイニファーター変性星形PEG(星形PEG−PI)におけるヒドロキシル基の両方と反応し得る官能基を備えた分子を共有結合で付着させることであった。この目的のために、Si−ALAPPサンプルを生成直後に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI,Fluka)中に置いた。これらのサンプルを、水の存在を排除する密封容器中で、室温にて夜通し放置した。引き続いて、これらのサンプルを乾燥アセトニトリル(Merck)中で10分間3回洗浄し、そして窒素の流れ下で乾燥した。このHDI改質Si−ALAPP基材(Si−ALAPP−HDI)のXPS分析によって決定された元素比率により、Si−ALAPP表面へのHDIの成功的共有結合型カップリングが示された。たとえば、N/C比率の小さい増加(0.149から0.160へ)が観察された。表面上に存在するHDIの層は薄い層にすぎない故、Si−ALAPP表面とSi−ALAPP−HDI表面から得られたXPSのC1s高分解能スペクトル(図21(a)及び21(b)参照)が比較された場合、変化はほとんど検出されなかった。
Si−ALAPP−HDIサンプルの表面上へのパートCからの星形PEG−PIの共有結合型表面固定化を、新たに作製されたSi−ALAPP−HDI表面と共にアセトニトリル(Merck)中の星形PEG−PIポリマー(4mg/mL)を含有する溶液を45℃にて16時間定温放置することにより行った。未結合ポリマーを洗い流すために、サンプルを引き続いてMill-QTM精製水で1時間2回及び加えて夜通し洗浄してから、窒素の流れ下で乾燥した。
Si−ALAPP−HDI−星形PEG−PI表面のXPS分析によって得られた元素組成から算出された元素比率(表23)は、Si−ALAPP−HDI表面と比較してO/C比率の有意な増加(0.155から0.222へ)及びN/C比率の有意な減少(0.160から0.108へ)を例示し、しかして星形PEG−PIポリマーの成功的表面固定化を指摘する。(i)星形PEGが実際にイニファーター部分で化学的に官能基化されそして(ii)星形PEG−PIがSi−ALAPP−HDIサンプルの表面上に共有結合で固定化されたという更なる証拠は、星形PEG−PIの固定化後の表面上におけるSの存在(0.003のS/C比率)により与えられた。
Figure 0005567337
また、Si−ALAPP−HDI−星形PEG−PIサンプルの表面から得られた代表的な高分解能C1sスペクトルにより、Si−ALAPP−HDIサンプルの表面上への星形PEG−PIポリマーの共有結合型固定化が確認され(図21(c))、特にC−O成分(286.5eVの結合エネルギー)の有意な増加が示された。
上記からのSi−ALAPP−HDI−星形PEG−PIサンプルを、次いで、Oリングで密封された且つ石英ガラス上蓋を備えた注文設計ステンレス鋼セル中に移した。Milli-QTM水中のアクリルアミド(AAM)の5%(w/v)溶液でこの室を満たした。次いで、このモノマー溶液から溶存酸素を除去するために、この溶液を窒素ガスで15分間パージし、そして入口弁及び出口弁を閉じた。次いで、セル内のサンプルをUV照射(320〜500nmの波長,50mW・cm-2の強度)に30分間暴露した。XPS分析に先だって、この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてMilli-QTM水中で3回そして最後にMilli-QTM水中で夜通し洗浄して未結合ポリマー及び残留モノマーを除去してから、窒素流で乾燥した。
XPS分析によって得られたSi−ALAPP−HDI−星形PEG−PI−P(アクリルアミド)サンプルの表面組成から算出された元素比率もまた、表23に示されている。Si−ALA−HDI−星形PEG−PIサンプルの表面からのP(アクリルアミド)のグラフト重合後、N/C比率は増加され(0.108から0.169へ)そしてO/C比率も増加され(0.222から0.296へ)、しかして成功的グラフト重合を指摘した。更なる証拠はまた、高分解能のC1sのXPSスペクトル(図21(d)参照)から得られた。ここで、P(アクリルアミド)グラフト層の存在は、C−Oピーク(結合エネルギー286.5eV)の強さの低減、並びにグラフト重合反応前に存在しなかったところのアミドに対応するピーク(結合エネルギー288eV)の存在により指摘された。
例23
Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)被膜の作製
パートA: 4−(2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ)−4−オキソブタン酸の合成
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(25g,0.195mol)及びコハク酸無水物(19.5g,0.195mol)をジクロロメタン(200mL)に、窒素下で添加した。次いで、トリエチルアミン(28.5mL,20.72g,1.05当量)を20分にわたって滴下的に添加し、そしてこの反応混合物を1.5時間還流させた。次いで、この反応混合物をジクロロメタン(200mL)で希釈し、2M−HCl(150mL)で洗浄し、そして次いで最後にブライン(100mL)で洗浄した。有機相を水性相から分離し、乾燥(MgSO4及びNa2SO4)しそして蒸発乾固して、粘稠な無色液体(34.9g,77.8%の収率)が得られた。1H−NMR δ1.89(s,3H,C 3)、2.59〜2.67(m,4H,2×C 2CO)、4.31(幅広いs,4H,2×C 2OCO)、5.55(s,1H,ビニルC)、6.08(s,1H,ビニルC)。13C−NMR δ17.96.28.64、28.73、62.15、62.29、126.12、135.79、167.11、171.90、177.73。
パートB: 2−(メタクリロイルオキシ)エチル4−クロロ−4−オキソブタノエートの合成
上記のパートAにおいて得られたこの油生成物(4−(2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ)−4−オキソブタン酸)をチオニルクロライド(54g,33mL,0.454mol,3当量)と共に、ジクロロメタン(200mL)中で2時間還流させた。この反応混合物を蒸発乾固して、透明な淡黄色液体(37.5g,99.6%の収率)が得られた。1H−NMR δ1.92(s,3H,C 3)、2.68(t,J=6.6Hz,2H,C 2COO)、3.20(t,J=6.6Hz,2H,C 2OCl)、4.33(幅広いs,4H,2×C 2O)、5.58(s,1H,ビニルC)、6.10(s,1H,ビニルC)。13C−NMR δ18.12、29.16、41.60、62.11、62.74、126.06、135.79、166.96、170.59、172.82ppm。
パートC: 2−(メタクリロイルオキシ)エチルプロパ−2−イニルスクシネート(クリック型MA)の合成
プロパルギルアルコール(0.903g,1.0当量,0.937mL)をジクロロメタン(30mL)中に溶解した。次いで、この溶液に、トリエチルアミン(1.795g,1.1当量,2.47mL)を添加した。この溶液を<0℃に冷却し、そして次いでこの溶液にCH2Cl2(10mL)中の2−(メタクリロイルオキシ)エチル4−クロロ−4−オキソブタノエート(4.0g,0.01613mol,1当量)を滴下的に添加した。この反応混合物を室温にて夜通し撹拌し、しかも薄層クロマトグラフィーを用いて反応の進行を監視した。次いで、得られた粗製反応混合物を濾過し、そして濾液を蒸発乾固した。生じた暗黄色油をCH2Cl2中に溶解し、水(2×20mL)、希HCl(2×20mL)及びブライン(2×20mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)しそして蒸発乾固して、透明な無色油が得られた。この油を更にラジアルクロマトグラフィー(シリカ)によって精製して、所望生成物が透明な無色油(2.5g)として得られた。1H−NMR δ1.91(s,3H,CH3)、2.46(t,J=2.4Hz,1H,アルキンCH)、2.65(s,4H,2×(CH2CO)、4.32(s,4H,2×CH2OCO)、4.66(d,J=2.4Hz,2H,OCH2CCH)、5.56(幅広いs,1H,ビニルCH)、6.09(s,1H,ビニルCH)。13C−NMR δ18.19、28.76、28.78、52.16、62.26、62.41、74.99、77.40、120.01、135.87、167.02、171.31、171.74ppm。
パートD: トリフルオロ−4−(アジドメチル)ベンゾエート(TFAB)の合成
トリフルオロエタノール(1.01g,0.72mL,0.010mol,1当量)をジクロロメタン(20mL)中に、N2雰囲気下で溶解した。この溶液を0℃に冷却し、そしてトリエチルアミン(1.07g,1.48mL)を添加した。次いで、ジクロロメタン(10mL)中の4−(クロロメチル)ベンゾイルクロライド(2.0g,0.0106mol,1.05当量)を滴下的に添加し、そしてこの反応物を夜通し撹拌した。次いで、この反応混合物を水(20mL)及びブライン(20mL)で洗浄した。有機層を分離し、乾燥(MgSO4)しそして蒸発乾固して、白色固体(2.40g)が得られた(この白色固体は、1H−NMRにより95%純度である決定された)。1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ4.62(s,2H,CH2Cl)、4.70(q,J=8.4Hz,2H,CH2O)、7.50(d,J=8.4Hz,2H,芳香族)、8.07(d,J=8.4Hz,2H,芳香族)ppm。13C−NMR(CDCl3,400MHz)δ45.41(CH2Cl)、61.12(q,JCF=37.23Hz,CH2O)、123.33(q,JCF=276.72Hz,CF3)、128.57(芳香族)、128.94(芳香族)、130.70(芳香族)、143.59(芳香族)、164.68(−COO−)ppm。
上記で得られた白色固体をDMSO(30mL)中に溶解し、そしてKI(0.005g)を添加した。この反応物を室温にて撹拌し、そしてアジ化ナトリウム(2.18g,0.0336mol)を少しずつ添加した。次いで、この反応物を夜通し撹拌した。この反応物を水(200mL)の添加により仕上げた。有機成分をジクロロメタン(3×50mL)で抽出し、乾燥(MgSO4)しそして溶媒を蒸発させて、透明な無色油が得られた。この油を更にラジアルクロマトグラフィー(シリカゲル,石油スピリット:ジクロロメタン1:1)により精製して、透明な無色油が得られた。この油を最後にラジアルクロマトグラフィー(溶媒傾斜,1:1の石油スピリット40〜60°:ジクロロメタンから始めてジクロロメタン(100%)で終わる)によって精製した。得られた生成物は、透明な無色液体(2.05g)であった。1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ4.44(s,2H,CH23)、4.71(q,J=8.4Hz,2H,CH2O)、7.43(d,J=8.4Hz,2H,芳香族)、8.10(d,J=8.4Hz,2H,芳香族)。13C−NMR(CDCl3,400MHz)δ54.16(−CH23)、60.83(q,JCF=36.74,−CH2O−)、123.04(q,JCF=277.31,−CF3)、128.06(芳香族)、128.24(芳香族)、130.52(芳香族)、141.82(芳香族)、164.74(−COO−)ppm。
パートE: Si−ALAPP−PI表面からのクリック型MAモノマーのグラフト重合(Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA))
1cm×1cmのサイズを備えたSi−ALAPP−PI表面を、例15によってのようにして作製した。新たに作製されたSi−ALAPP−PIサンプルを、Oリングで密封された且つ石英ガラス上蓋を備えた注文設計ステンレス鋼セル中に移した。ジメチルスルホキシド(DMSO)中のクリック型MAモノマーの10%(w/v)溶液でこの室を満たした。次いで、このモノマー溶液から溶存酸素を除去するために、この溶液を窒素ガスで15分間パージし、そして入口弁及び出口弁を閉じた。次いで、セル内のサンプルをUV照射(320〜500nmの波長,50mW・cm-2の強度)に30分間暴露した。この時間後、サンプルをセルから取り出し、そしてDMSO中で3回洗浄し、次いでMilli-QTM水で2回洗浄しそして最後にMilli-QTM水中で夜通し洗浄して未結合ポリマー及び残留モノマーを除去してから、窒素流で乾燥した。
Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)表面のXPS分析から得られた元素組成から算出された元素比率(表24)は、Si−ALAPP−PI表面と比較してO/C比率の有意な増加(0.161から0.390へ)及びN/C比率の有意な減少(0.133から0.034へ)を例示し、しかしてクリック型MAモノマーの成功的グラフト重合を指摘する。
クリック型MAモノマーの成功的グラフト重合についての更なる証拠は、高分解能のC1sのXPSスペクトル(図22(a)参照)から得られた。ここで、グラフトポリマー層の存在は、C−Oピーク(結合エネルギー286.7eV)並びにO−C=O(エステル)ピーク(結合エネルギー289.1eV)(それらの両方共、グラフト重合反応前に存在しなかった)の存在により指摘された。
Figure 0005567337
パートF: Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)表面上におけるTFABの表面固定化(Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)−TFAB)
新たなSi−ALAPP−PI−P(クリック型MA)サンプルを、上記に記載されたようにして作製した。アスコルビン酸ナトリウム(40mM)、硫酸銅(II)(20mM)及びまたトリフルオロ−4−(アジドメチル)ベンゾエート(TFAB)を含有するところの4:1(v/v)のMilli-QTM水:DMSOの溶液中に、これらのサンプルを浸漬した。溶存酸素を除去するためにこの溶液を窒素ガスで15分間パージした後、この反応容器を密封し、そして暗所において50℃の温度にて48時間定温放置した。この反応後、サンプルを4:1(v/v)のMilli-QTM水:DMSOの溶液中で各回2時間3回洗浄し、Milli-QTM水で30分間2回洗浄しそして最後にMilli-QTM水中で夜通し洗浄してから、窒素流で乾燥した。
Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)−TFAB表面のXPS分析によって得られた元素組成から算出された元素比率(表24)は、明らかに、溶解状態のトリフルオロ−4−(アジドメチル)ベンゾエートのアジド基での表面上における末端アルキンの成功的銅媒介1,3−双極付加環化を例示する。この成功的反応は、Si−ALAPP−PI−P(クリック型MA)表面と比較してN/C比率の有意な増加(0.034から0.105へ)及びF/C比率の有意な増加(0.000から0.118へ)により例示される。
この成功的付加環化反応についての更なる証拠は、高分解能のC1sのXPSスペクトル(図22(b)参照)から得られた。表面固定化TFABのトリフルオロ基が高い結合エネルギーにおいて現れるという事実に因り、この基はXPSのC1s高分解能スペクトルにおいて明らかに視認でき、そして表面固定化反応を分析するための標識として用いられ得る。ここで、TFAB標識の表面固定化は、固定化反応前に存在しなかったCF3ピーク(結合エネルギー293.2eV)の存在により明らかに指摘された。
例24
マスクされた及びマスクされていないSi−ALAPP−PI表面からのPEGMA(475)のグラフト重合
パートA: マスクされた及びマスクされていないSi−ALAPP−PI表面からのPEGMA(475)のグラフト重合
Si−ALAPP表面を例15によってのようにして作製し、そしてこれらのSi−ALAPP表面上へのPIコポリマーの共有結合型カップリングを例4によってのように行った。しかしながら、この例において、清浄なガラス顕微鏡スライドをシリコンウェハー片の代わりに基材として用いた。手短に言うと、6枚のALAPP処理ガラス顕微鏡スライドを、9mLのPI溶液(例3参照)、DMF(27mL)、Milli-QTM精製H2O(4.5mL)及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC,0.45g,Sigma)を含む溶液中に置いた。反応を室温にて夜通し進行させ、そしてその後これらのガラス顕微鏡スライドをDMF中で洗浄(1日にわたって2回そして次いで夜通しの洗浄)しそして精製水中で洗浄(1日にわたって3回)してから、層流型キャビネット中で乾燥した。
上記で作製されたSi−ALAPP−PIスライドを、次いで、Oリングで密封された石英ガラス上蓋を備えた注文設計ステンレス鋼セル中に置いた。窒素で30分間脱気されていたモノマー溶液(脱抑制化PEGMA(475),10%w/v)をこのセルに添加した。次いで、図23に指摘されているように、各顕微鏡スライドの中心に、清浄なPTFE(18mmの直径)円形マスク(下にある表面のUV照射を防ぐのに適している)を置いた。次いで、セルを密封し、そしてエクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、サンプルをUV線(320〜500nmの波長,50mW・cm-2の強度)に30分間暴露した。照射後、サンプルを取り出し、Milli-QTM精製水でおびただしく洗浄し、間欠的に交換しながらMilli-QTM精製水中に2日間浸漬し、そして最後にMilli-QTM精製水で再びすすいだ。次いで、これらのサンプルを層流型キャビネット中で乾燥してから、XPS分析をした。
円形PTFEマスクの真下の領域のXPS分析によって決定された元素比率、並びに円形PTFEマスクを取り囲む領域から得られたものが、表25に示されている。得られた元素比率はこれらの二つの域において非常に異なっていた(すなわち、マスクの下の領域及びマスクを取り囲む領域についてそれぞれ0.202対0.447のO/C、0.122対0.013のN/C)ということが、このデータから明らかである。加えて、マスクの下の領域及びマスクを取り囲む領域について得られた元素比率は、予期されたように、Si−ALAPP−PI(例15から)サンプル及びSi−HAPP−PI−P(PEGMA(475))(例5から)サンプルについて得られたものと非常に似ていた、ということが分かり得る。
Figure 0005567337
かくして、Si−ALAPP−PI表面からのP(PEGMA(475))のグラフト重合は、PTFEマスクを取り囲む領域においてのみ起こった、ということが結論され得る。更に、グラフト重合が起こるのにUV照射が必要とされ、しかしてこれにより、Si−ALAPP表面に共有結合で付着されたPIコポリマーにおけるイニファーター基の存在がグラフト重合反応を開始させるための原因であったことが確証される、ということが結論され得る。グラフト重合がこれらの領域においてのみ起こったという更なる証拠は、サンプルの当該二つの異なる域における高分解能XPS分析から得られた。半球PTFEマスクの下の領域及び取り囲む領域から得られた高分解能C1sスペクトルが、それぞれ図24(a)及び(b)に示されている。得られたC1sプロフィールの比較から、それらが非常に異なっていることが容易に観察され得る。特に、マスクを取り囲む領域からのスペクトルは、グラフト重合被膜中の高割合のC−O官能基(すなわち、P(PEGMA(475))からのエーテル)の存在に対応するところの286.5eVの結合エネルギーにおけるスペクトル寄与が優勢であった。他方、マスクの下の域から得られたスペクトルは、主としてALAPP被膜の炭化水素分から生じるところの285.0eVの結合エネルギーを中心としたスペクトル寄与が優勢であった。
パートB: マスクされていた及びマスクされていなかったSi−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))表面の領域におけるHeLa細胞付着の相違の決定
マスクされていた領域及びマスクされていなかった領域の両方を含有するグラフトポリマー被覆ガラススライド(Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475)))を4室型培養トレー(デンマーク国ロスキレのNunc)に移し、そしてペニシリン及びストレプトマイシン(それぞれ120μg/mL及び200μg/mL)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)の無菌溶液中に各スライドを室温にて4時間浸漬した。
上記の工程からの無菌溶液を除去し、そしてHeLa細胞を1×106細胞/室の密度で、10%(v/v)のウシ胎児血清(FBS)が補充されたダルベッコの改変イーグル培地/ハムのF12(DMEM/F12,50:50)で構成された培地にて播種した。5%のCO2を含有する加湿空気中において、細胞を37℃にて24時間定温放置した。
HeLa細胞を18及び24時間の定温放置後に位相差顕微鏡法(日本国のオリンパスのオリンパス(Olympus)IX81)により目視検査し、そして代表画像をディジタル式で記録した。
(a)円形PTFEマスクの下の領域における及び(b)該マスクを取り囲む領域からの18時間の細胞培養後の細胞HeLaの細胞付着を示す代表的視野が、図25に示されている。P(PEGMA(475)のグラフト重合中マスクされたガラススライドの領域において高い細胞付着密度であったこと、並びにグラフト重合反応中マスクされなかった域において非常に低い細胞付着であったということが、これらの画像から明らかである。マスクされた領域における細胞付着及びモルホロジーは、TCPS対照の場合(図W(d) − グラジエントグラフトポリマーの例29参照)に得られたものと非常に似ていた。グラフト重合中マスクの下の表面はSi−ALAPP−PI表面と非常に似た組成及び高分解能C1sスペクトルであったこと並びにグラフト重合中マスクを取り囲む域の組成及び高分解能C1sスペクトルはSi−ALAPP−P(PEGMA(475))表面と最も似ていたことが、パートAにおいて様々な領域のXPS分析によって示された、ということが思い起こされる。加えて、HeLa細胞がSi−HAPP−PI表面上に付着しそして容易に伸展した並びにSi−HAPP−PI−P(PEGMA(475))グラフトポリマー表面上に付着又は伸展しなかったことが、例9において先に示された。かくして、HeLa細胞はグラフトP(PEGMA(475))被膜の欠如の故にマスクされていた域において付着しそして伸展する並びに厚い(乾燥状態で約10nm)グラフトP(PEGMA(475))被膜の存在の故にマスクされていなかった域において付着しそして伸展することはしない、ということが結論され得る。
例25
Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)コポリマー被膜の作製及び被膜における架橋の組込み
Si−ALAPP表面を例15によってのようにして作製し、そしてこれらのSi−ALAPP表面上へのPIコポリマーの共有結合型カップリングを例4によってのように行った。ALAPP被覆シリコンウェハー片(1cm×1cm)を、6mLのPI溶液(例3参照)、DMF(18mL)、Mill-QTM精製H2O(3mL)及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC,0.30g,Sigma)を含む溶液中に置いた。反応を室温にて夜通し進行させ、そしてその後これらのシリコンウェハー片をDMF中で洗浄(1日にわたって2回そして次いで夜通しの洗浄)しそして精製水中で洗浄(1日にわたって3回)してから、層流型キャビネット中で乾燥した。
上記で作製されたSi−ALAPP−PIサンプルを、次いで、Oリングで密封された石英ガラス上蓋を備えた注文設計ステンレス鋼セル中に置いた。モノマー(アクリルアミド及びアクリル酸,全体で5%w/v,モル比アクリルアミド:アクリル酸90:10)の溶液をこのセルに添加した。次いで、これらのモノマー溶液を窒素ガスで15分間脱酸素し、入口弁及び出口弁を閉じ、そしてエクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、これらのサンプルのUV照射を15分間行った(320〜500nmの波長,50mW・cm-2)。照射後、これらのサンプルを取り出し、Milli-QTM精製水でおびただしく洗浄し、間欠的に交換しながらMilli-QTM精製水中に2日間浸漬し、そして最後にMilli-QTM精製水で再びすすいだ。グラフトコポリマー鎖間に架橋を形成させるために、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)サンプルの一部を更にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(Fluka)と反応させた。上記からのサンプル(Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸))を乾燥DMF(サンプル当たり最終容量1mL)中に入れ替え、HDIを添加し(0.5mL)、そして反応を45℃にて夜通し進行させた。HDIが添加されていたサンプルを次いでDMF中で洗浄(×3)し、そして次いで時々掻き混ぜながらDMF中に8時間浸漬した。最後に、これらのサンプルを水中でおびただしく洗浄した。次いで、これらのサンプルを層流型キャビネット中で乾燥してから、XPS分析をした。
Figure 0005567337
Si−ALAPP−PI、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)及びSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)−HDIのXPS分析によって決定された元素比率が、表26に示されている。これらの元素比率の解析により、Si−ALAPP−PIサンプルの表面からのP(アクリルアミド−コ−アクリル酸)のグラフト重合が成功であったという確認が可能にされた。Si−ALAPP−PIサンプルについて得られた値(O/C0.158,N/C0.132)と比較して、増加O/C値及びN/C値(それぞれ0.284及び0.251)が、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)サンプルについて得られた。成功的グラフト重合の更なる証拠が、高分解能のC1sのXPSスペクトルの解析から得られた。この場合において、Si−ALAPP−PIサンプルに関して存在しなかった(Si−ALAPP−PIサンプルについての代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトルについての図13参照)ところのアミド官能基の存在に因るスペクトル成分が観察された(図26(a)参照)。
Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)サンプルへのHDIの付加後、N/C比率の小さい増加が認められた(HDIの付加前に得られた値すなわち0.251の値と比較して、0.275の値)。この観察された増加は、HDIのイソシアネート基とグラフトコポリマー鎖中のアクリル酸残基の酸基との反応からの被膜へのNの追加と一致している。O/C比率の小さい減少も認められ、しかしてこれは被膜中への追加の中性炭素(HDIのヘキサメチレン鎖から)の組込みと一致している。Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)−HDIサンプルについて得られた高分解能C1sスペクトルは、Si−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−アクリル酸)について得られたものと非常に似ており、何故ならHDIとの架橋後にアミド及び炭化水素のみしか被膜中に組み込まれず、しかもそれらの両方共が先の被膜中に存在していたからである。
例26
オリゴペプチドモノマーを用いて形成されるSi−ALAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−オリゴペプチド)グラフト被膜の作製
パートA: オリゴペプチドモノマー(メタクリロイル−glyglyつまりMA−glygly)の合成
Drobnik等の方法(Drobnik,J等,Makromol. Chem.,1976,177,2833)を用いて、重合性オリゴペプチドを合成した。手短に言うと、水酸化ナトリウム(0.1515g,0.0038mol,1.0当量)を、水(3mL)中のグリシルグリシン(glygly)(0.50g,0.0038mol,1.0当量)の溶液に添加した。生じた溶液を0℃に冷却した。次いで、この冷却溶液に、メタクリロイルクロライド(0.396g,0.0038mol,1.0当量)と水酸化ナトリウム(3mLの水中0.1515g,0.0038mol,1.0当量)を同時に滴下的に添加した。この反応混合物を室温にて更に1時間撹拌し、そして次いで濃HClで2のpH値に滴下的に酸性化した。エチルアセテート(20mL)及び水(10mL)を添加し、そしてこの混合物を分液漏斗中で振とうした。この分液漏斗中において、無色結晶が溶液から二相の界面に沈殿した。これらの結晶を濾過し、水で洗浄し、そして風乾した。少量の所望生成物(0.06g)が得られた(収率8%)。水性相から未反応グリシルグリシンを回収した。1H−NMR(DMSO−d6,200MHz)δ1.86(s,3H,CH3)、3.73(s,2H,CH2)、3.76(s,2H,CH2)、5.36(s,1H,ビニルCH)、5.72(s,1H,ビニルCH)、8.05〜8.17(幅広いs,2H,2×NH)、12.53(幅広いs,1H,COOH)ppm。13C(DMSO−d6,200MHz)δ18.97、41.04、42.56、120.15、139.89、168.00、169.77、171.58ppm。
パートB: Si−ALAPP−PI表面からのP(PEGMA(475)−コ−メタクリロイル−glygly)コポリマー被膜のグラフト重合(Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−MA−glygly)
Si−ALAPP表面を例15によってのようにして作製し、そしてPIコポリマーの共有結合型カップリングを例4によってのように行った。次いで、生じたSi−ALAPP−PI表面を、Oリングで密封された石英ガラス上蓋を備えた注文設計ステンレス鋼セル中に移した。この室に、生じるモノマーモル比が10:90のMA−glygly:PEGMA(475)になるように、42mgのMA−glygly、900mgの脱抑制化PEGMA(475)、10mLの精製水及び1mLのDMFを含有する溶液を添加した。このモノマー溶液を作り上げそしてUV重合セルに添加する前、PEGMA(475)モノマーは、インヒビター・リムーバー(Inhibitor Remover)樹脂(Aldrich)を含有するカラムに通すことによって脱抑制化された。該モノマー溶液を高純度窒素ガスで15分間パージして溶存酸素を除去した。パージした後、入口弁及び出口弁を閉じ、そしてエクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、これらのサンプルをUV照射(320〜500nmの波長,50mW・cm-2の強度)に30分間暴露した。照射後、これらのサンプルをモノマー溶液から取り出し、そして精製水で洗浄(×3)し、水中に夜通し浸漬し、そして最後に更に3回すすいだ。洗浄後、これらのサンプルを、高速の濾過された高純度N2流を用いて吹きかけて乾かし、そして層流型キャビネット中に保管してから、XPS分析をした。加えて、Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))の対照サンプルを、すなわちMA−glyglyモノマーを用いることなく、上記のようにして作製した。
Figure 0005567337
表27に示された元素比率の解析により、両方のグラフト重合が成功であったという確認が可能にされた。Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))対照サンプルの場合において、得られたO/C比率及びN/C比率は、他の例(たとえば例5参照)において得られたものと非常に似ており、しかして乾燥状態でXPSサンプリング深さより大きかったグラフトポリマー被膜を指摘する。加えて、得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル(図27(a)参照)は先に得られたものと非常に似ており、そして10nmより大きい厚さ(乾燥状態で)のP(PEGMA(475))被膜を示していた。特に、286.5eVの結合エネルギーにおける優勢なスペクトル成分は、高割合のC−Oを含有する被膜を示していた。Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−MA−glygly)グラフトコポリマー被覆サンプルについて得られた元素比率は、P(PEGMA(475))グラフトホモポリマー被覆サンプルについて得られたものとは異なっており、N/C比率の有意な増加があった。これは、ペプチドモノマー(MA−glygly)がグラフト重合反応中ポリマー鎖中に組み込まれたという証拠である。Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475)−コ−MA−glygly)グラフトコポリマー被覆サンプルについて得られた高分解能のC1sのXPSスペクトル(図27(b)参照)は、元素の組成及び比率に基づいて予期されたように、Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))被膜から得られたものと非常に似ていた。中性炭化水素領域におけるスペクトル(285eVにおいて)間に、いくつかの小さい相違があった。
例27
Si−ALAPP表面、Si−ALAPP−PI表面及びSi−ALAPP−P(PEGMA(475))表面の作製: 一様性及び均一性の検討
Si−ALAPP表面を例15によってのようにして作製し、そしてこれらのSi−ALAPP表面上へのPIコポリマーの共有結合型カップリングを例4によってのように行った。手短に言うと、シリコンウェハー片を界面活性剤溶液(2%RBS35,Pierce Biotechnology, Inc.)中で1時間超音波処理により清浄にし、Milli-QTM精製水でおびただしく洗浄し、そして高速の濾過された窒素流を用いて吹きかけて乾かした。次いで、これらのシリコンウェハー片を、例15BによってのようにしてALAPP薄膜で被覆した。次いで、3.6mLのPI溶液(例3参照)、DMF(10.8mL)、Milli-QTM精製H2O(1.8mL)及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC,0.18g,Sigma)を含む溶液のアリコート(小さいウェハー片について2mL,より大きいウェハー片について4mL)の入った清浄なテフロン(登録商標)バイアル中に、各シリコンウェハー片を置いた。室温にて穏やかに振とうしながら反応を進行させ、その後これらのシリコンウェハー片をDMF中で洗浄(1日にわたって2回そして次いで夜通しの洗浄)し、そして精製水中で洗浄(1日にわたって3回)してから、層流型キャビネット中で乾燥した。上記に概略されたのと同じ手順を用いて、ALAPP被覆対照サンプルを上記の溶液しかしEDC又はPIを有さない溶液中に置きそして洗浄した。
上記で作製されたSi−ALAPP−PIサンプルのサブセットを、次いで、Oリングで密封された石英ガラス上蓋を備えた注文設計ステンレス鋼セル中に置いた。このセルにモノマー溶液(脱抑制化PEGMA(475),10%w/v)を添加し、そしてこのセルを密封した。窒素をこのモノマー溶液に15分間通すことにより、このモノマー溶液から酸素を除去した。次いで、このセルの入口及び出口の口を密封し、そしてエクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、サンプルをUV線(320〜500nmの波長,50mW・cm-2の強度)に30分間暴露した。照射後、これらのサンプルを取り出し、Milli-QTM精製水でおびただしく洗浄し、間欠的に交換しながらMilli-QTM精製水中に夜通し浸漬し、そして最後にMilli-QTM精製水で再びすすいだ。次いで、これらのサンプルを層流型キャビネット中で乾燥してから、XPS分析をした。
Figure 0005567337
表28に示された元素比率及び標準偏差の大きさの解析により、生成サンプルが組成において均一で且つ一様であったことが示される。代表的な高分解能のC1sのXPSスペクトルが、図28に示されている。
本明細書に示された諸例の全体を通じて、示された元素比率においていくつかの小さい相違があった、ということが指摘されるべきである。これらの小さい相違は、XPSにより決定された元素組成が相対的であるという事実から生じる。すなわち、元素のすべてからの原子百分率は、合計して100パーセントにならなければならない。それ故、たとえば、ALAPP薄膜の酸化における変動は、その他の元素のすべてについて原子濃度に影響を及ぼすことになる。加えて、実験条件における変動は、たとえばS/C比率に影響があり得る。
例28
96ウェル型平板におけるSi−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)コポリマー被膜の作製並びに酵素結合イムノソルベント検定法における使用
パートA: ALAPP−PIで被覆されたポリ(スチレン)表面(PS−ALAPP−PI)からのアクリルアミド及びアクリルアミドとビオチン−MAの混合物のグラフト重合
96ウェル型の形態の組織培養ポリスチレン(PS)平板(Nunc,NunclonTMΔ処理済み,#167008)を、例15Dに示された方法に従ってALAPP薄層で被覆した。XPS分析によってPSサンプル及びPS−ALAPPサンプルについて得られた典型的元素比率は、表29に示されている。PSウェルの表面は特質上炭化水素質であったが、これらの平板の製造の際に用いられた表面改質から酸素が組み込まれていた(O/C=0.152)。ALAPP薄膜でのPS表面の被覆は、Nの導入(N/C0.155)(ALAPP層中の窒素含有基から生じた)をもたらした。加えて、O/C比率が、PS表面と比較して、ALAPP薄膜のより低い酸化度に因り低減された(0.152から0.099へ)。ポリスチレン特質(普通の酸化度を備えた)は、高分解能のC1sのXPSスペクトルの解析により確認された(図29(a)参照,より高い結合エネルギーにおける芳香族の「シェークアップ」ピークの存在が注目される)。PS表面上におけるALAPP薄膜の蒸着は、数多くのC、N及びO化学種の存在に因り、より幅広い高分解能C1sスペクトルをもたらした。ALAPP上層によってのより高い結合エネルギーにおける芳香族の「シェークアップ」ピークの消失により、XPSサンプリング深さ(10nm)の被膜全厚が確証された。
次いで、溶媒としてDMSOをDMFの代わりに用いそして共溶媒として水を添加しなかったこと以外は例15Bによってのようにして、PIコポリマーをPS−ALAPPサンプルの表面に共有結合でカップリングした。XPS分析によって得られたPS−ALAPP−PIサンプルについての典型的元素比率もまた、表29に示されている。ここで、PS−ALAPPサンプルと比較して、O/C比率が増加されそしてN/C比率が減少された(PS−ALAPP表面に共有結合でグラフトされたPIコポリマーの上層の存在と一致して)、ということが観察され得る。加えて、PIコポリマー中のセミチオカルバメート部分からのSもPS−ALAPP−PIサンプルに存在していたが、しかしPS−ALAPPサンプルに存在せず、しかしてこれにより共有結合型付着が確認される。PS−ALAPPサンプルの表面上へのPIコポリマーの成功的共有結合型カップリングの更なる証拠は、高分解能のC1sのXPSスペクトル(図29(c)参照)の解析によって得られ、しかして関心のある主特徴は、共有結合で付着されたPI上層からのカルボン酸残基の存在に因るところのスペクトルへの高結合エネルギー寄与の存在である。このスペクトル成分は、PS−ALAPPサンプルについて得られた高分解能C1sスペクトル(図29(b)参照)において存在しなかった。
96ウェル型形態のPS−ALAPP−PI被覆平板を、上記のようにして作製した。3mLのDMSO中の(i)アクリルアミドモノマーの溶液(10%w/v,3mLのDMSO中300mg)並びに(ii)アクリルアミドモノマー(150mg)及びビオチン−MA(87mg,例15Bに示された方法に従って合成された)の溶液を作製し、そして窒素ガスを用いて20分間脱酸素した。次いで、これらのモノマー溶液を含有するフラスコを密封し、そして注文設計UV重合セル(Oリングで密封された石英ガラス蓋を備えたステンレス鋼セル)及びPS−ALAPP−PI被覆96ウェル型平板と共にグローブボックス中に移した。次いで、これらのモノマー溶液のアリコート(100μL)を、ピペットによりPS−ALAPP−PI被覆96ウェル型平板のウェル中に移した。次いで、モノマー溶液を含有するこれらの96ウェル型平板をUV重合セル中に移し、このセルを密封しそしてグローブボックスから取り出した。次いで、このUV重合セル中のPS−ALAPP−PI被覆96ウェル型平板(それらのウェルはモノマー溶液で部分的に満たされていた)の各四半分(該平板の残りの三つの四半分にマスクが置かれた)を、エクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、UV光(320〜500nmの波長,50mW・cm-2)で30分間順次に照射した。平板の四つの四半分のすべてがUV光で照射された後、セルを開き、そして96ウェル型平板を取り出した。次いで、この平板の各ウェルをDMSOで2回洗浄(各洗浄について250μLのDMSOで1から1.5時間)し、そして次いでDMSO中に夜通し浸漬(各ウェル中に250μL)した。最後に、これらのウェルをMilli-QTM精製水で完全に洗浄(1〜1.5時間3回)した。次いで、これらの平板を層流型キャビネット中で乾燥してから、XPS分析をした。いくつかの場合において、ウェルをNeutrAvidinTMビオチン結合タンパク質(Pierce Biotechnology Inc.)の溶液(HEPES緩衝液中50μg/mL)で部分的に満たし(100μL)、そして室温にて夜通し定温放置した。次いで、これらのウェルを1M−NaCl中で(2時間にわたって2回、次いで夜通し)そしてHEPES緩衝液中で(2時間にわたって3回)すすぎ、そして最後にMilli-QTM精製水中で30分の期間にわたって5回すすいでから乾燥した。該HEPES緩衝液は、150mMのNaCl及び20mMの[N−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−N′−2−エタンスルホン酸ナトリウム塩](HEPES)を含有し、そして1M−NaOH溶液を用いてpH7.2に調整された。XPS分析のために、特別設計ステンレス鋼工具を用いて(平板の下から)、各ウェルの底部を平板から取り去り(汚染することなく)、そしてサンプルの帯電が避けられる特別設計XPSサンプルホルダー中に取り付けた。
PS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプル及びPS−ALAPP−PI−(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)サンプルのXPS分析から算出された元素比率が、表29に示されている。PS−ALAPP−PIサンプルの表面からのP(アクリルアミド)のグラフト重合は、P(アクリルアミド)の薄い被膜の存在と一致して、O/C比率及びN/C比率の両方の増加をもたらした。PS−ALAPP−PIサンプルの表面からのP(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)のグラフト重合は、やはり薄いグラフトコポリマー被膜の存在と一致して、N/C原子比率の増加をもたらした。加えて、S/C比率はグラフト重合反応後に増加し、しかしてこれは被膜中へのビオチン−MAモノマーからのビオチンの組込みを指摘する。グラフトポリマー被膜はXPSサンプリング深さより薄かった、ということが注目されるべきである。これは、シリコンウェハー基板上の同様な被膜のXPS分析により得られた組成(例15参照)との比較により確認された。これは、平坦なシリコンウェハー基板と比較して96ウェル型平板のウェル内のUV照射の低減強度に因り予期され得る。上記に記載されたグラフト重合反応が成功であったという確認は、高分解能XPS分光分析によって得られた。PS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)サンプル及びPS−ALAPP−PI−(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)サンプルの表面から得られた高分解能のC1sのXPSスペクトルが図29(d)及び(e)に示されている。両方のスペクトルは、グラフト重合被膜中のアミドの存在と一致した特徴(288eVの結合エネルギーにおいてアクリルアミドモノマーの重合から)を含有する。アミドピークは、被膜中のビオチンMAの存在に因り、PS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド)からのスペクトルにおいてよりもPS−ALAPP−PI−(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)サンプルからのスペクトルにおいて顕著さが小さい。この傾向は、例15においても観察された。
NA溶液中における定温放置後のPS−ALAPP−PI−(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)サンプルの表面のXPS分析から得られた元素比率もまた、表29に含められている。PS−ALAPP−PI−(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)サンプル上へのNeutraAvidinTM(NA)の結合と一致して、O/C比率及びN/C比率の顕著な増加が観察された。図29(f)に示されているところのこのサンプルの高分解能C1sスペクトルに存在する特徴は、その表面におけるタンパク質(すなわちNA)の存在に特有である。
Figure 0005567337
パートB: PS−ALAPP−PI−アクリルアミド−コ−ビオチンMA)被覆96ウェル型平板を用いての酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)
ウェルがP(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)で被覆されているところの96ウェル型形態のマイクロタイター平板を、上記に記載されたようにして作製した。検査された11のウェルのうちの三つにおいて、NeutrAvidinTMビオチン結合タンパク質(Pierce Biotechnology, Inc.)(NA)もまた、パートAにおいて記載されたように添加した。次いで、検査されるべきウェルのすべてを遮断した。TBS緩衝液(25mMの2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、136mMのNaCl、2.7mMのKCl,1M−HClで8に調整されたpH)中のウシ血清アルブミン(BSA)遮断溶液(1%BSA)のアリコート(200μL)を該平板のウェル中に入れ、そして4℃における夜通しの定温放置を行った。
結合NAを含有するウェル及びNAを含有していない四つの他のウェル(ビオチニル化IgG(1°Ab)対照)に対して、BSA遮断溶液を除去し、そして100μLのビオチン−SP接合ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch,#115−066−072)(1°Ab)溶液(トゥイーン20(0.05wt%)を含有するTBS緩衝液(TBST緩衝液)中の1wt%BSAの溶液で2μg/mLの濃度へ1000分の1に希釈されていた)を添加し、すなわち平板のウェルのいくつかに添加した。ビオチニル化IgG(1°Ab)を含有するウェルにカバーをし、そして室温にて4時間定温放置した。次いで、ビオチニル化IgG溶液、及び残りの四つのウェル(1°Abが添加されていない)からBSA遮断溶液を除去し、そしてこれらのウェルをTBST緩衝液で3回洗浄した。
次いで、11のウェルのすべてに、100μLのロバ抗ヤギIg−HRP接合体(Silenus,#UAH)溶液(1wt%BSAを含有するTBST緩衝液中に1対500にて希釈されていた)を添加した。1.5時間の定温放置後、ロバ抗ヤギIg−HRP接合体溶液を除去し、そしてこれらのウェルをTBST緩衝液で3回洗浄した。次いで、発色試薬(ABTS)のアリコート(100μL)を、検査される11のウェルのすべてに添加した。ABTS溶液は、20μLの過酸化水素が添加されたクエン酸緩衝液(10mL)中に溶解された2,2′−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)(5mg)を含んでいた。この溶液は、作製後直ちに用いられた。15分後、ABTS溶液をすべてのウェルから取り出し、そして405nmの波長においてバイオテック(Biotek)ELISA平板読取り機で読み取るために、新たなマイクロタイター96ウェル型平板に移した。
検査されたウェルを、次のように表示した。
(i)NAが結合され且つ1°Ab及び2°Abが添加されたウェル(+NA,+1°Ab,+2°Ab)。
(ii)NAを含有しない且つ1°Ab及び2°Abが添加されたウェル(−NA,+1°Ab,+2°Ab)。
(iii)NAを含有しない且つ1°Abが添加されなかったがしかし2°Abが添加されたウェル(−NA,−1°Ab,+2°Ab)。
結合NAを含有するウェルは、ビオチニル化IgG(1°Ab)を結合する及びHRP接合体(発色された溶液の吸光度をELISA平板読取り機で測定することにより検出され得る)を形成すると予期される。検査されたウェルについて得られたデータは、図30に示されている。ここで、測定吸光度は、P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)被膜上へ結合されたNAを含有するウェル(+NA,+1°Ab,+2°Ab)についてのみ高かった(1.05)。ビオチニル化IgG(1°Ab)の低い非特異的吸着は、結合NAを含有しないがしかし1°Abが添加されたウェル(−NA,+1°Ab,+2°Ab)について得られた低い吸光度(0.089)により確証された。このデータは、PS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)被膜がNAを結合した、このNAがELISA検定法で検出可能であった及び1°Abの非特異的吸着が低かったという明らかな証拠である。加えて、2°Ab対照(−NA,−1°Ab,+2°Ab)について得られた吸光度もまた低く(0.084)、しかしてこれはPS−ALAPP−PI−P(アクリルアミド−コ−ビオチンMA)被膜上への2°Abの非特異的吸着もまた低かったことを指摘する。
例29
Si−ALAPP−PI表面からのPEGMA(475)のグラジエントグラフト重合
パートA: Si−ALAPP−PI表面からのPEGMA(475)のグラジエントグラフト重合
Si−ALAPP表面を例15によってのようにして作製し、そしてこれらのSi−ALAPP表面上へのPIコポリマーの共有結合型カップリングを例4によってのように行った。しかしながら、この例において、清浄なガラス顕微鏡スライドをシリコンウェハー片の代わりに基材として用いた。手短に言うと、6枚のALAPP処理ガラス顕微鏡スライドを、9mLのPI溶液(例3参照)、DMF(27mL)、Milli-QTM精製H2O(4.5mL)及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC,0.45g,Sigma)を含む溶液中に置いた。反応を室温にて夜通し進行させ、そしてその後これらのガラス顕微鏡スライドをDMF中で洗浄(1日にわたって2回そして次いで夜通しの洗浄)しそして精製水中で洗浄(1日にわたって3回)してから、層流型キャビネット中で乾燥した。
上記で作製されたSi−ALAPP−PIスライドを、次いで、Oリングで密封された石英ガラス上蓋を備えた注文設計ステンレス鋼セル中に置いた。窒素で30分間脱気されていたモノマー溶液(脱抑制化PEGMA(475),10%w/v)をこのセルに添加した。次いで、ガラススライド域のほとんどを覆う(その長さの1.5cmが露出されたままにされる)UV不透明マスクを石英ガラス窓の上に置いた。マスクとSi−ALAPP−PIサンプルの表面との間の距離は1cmであった。エクスフォ・アーティキュア(EXFO Articure)400ランプを用いて、ガラススライドの露出域のUV照射を5分間行った(320〜500nmの波長,50mW・cm-2)。5分間の照射後、マスクをガラススライドに沿って1cm移動させそして更に5分のUV照射を行い、等により、異なる照射時間の合計7つの域が得られた(図31参照)。スライドの端において、1cmの領域は、UV照射を受けなかった。かくして、スライドの中心において、総UV照射は15分であった。照射処理のすべてが行われた後、サンプルを取り出し、Milli-QTM精製水でおびただしく洗浄し、間欠的に交換しながらMilli-QTM精製水中に2日間浸漬し、そして最後にMilli-QTM精製水で再びすすいだ。次いで、これらのサンプルを層流型キャビネット中で乾燥してから、XPS分析をした。
スライドに沿って7cmにおけるUV照射に暴露されなかった対照域及び例5からの全厚Si−HAPP−PI−P(PEGMA(475))サンプルと比較されるように、Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))被覆スライドに沿っての諸領域のXPS分析によって決定された元素比率が、表30に示されている。ここで、スライドに沿って6、5及び4cmは、それぞれ5、10及び15分のUV照射を表す。得られた元素比率は、分析された4つの領域において非常に異なっていた、ということがこれらのデータから明らかである。照射時間が増加するにつれて、O/C比率は増加しそしてN/C比率は減少した。これらの傾向は、照射時間が増加するにつれて増加する厚さのP(PEGMA(475))グラフト層の存在について予期されたとおりである。これらの傾向はまた、図32(白丸はO/C比率をそして黒丸はN/C比率を表す)に示されている。15分までの照射のスライドに沿ってのすべての点におけるP(PEGMA(475))被膜の厚さは、XPSサンプリング深さ(10nm)より小さかった、ということが指摘されるべきである(表30における例5からの全厚データとの比較が参照される)。照射時間と共にP(PEGMA(475))被膜の変動する厚さの更なる証拠はまた、高分解能C1sスペクトル(図33(a)から(c)参照)の解析により得られた。ここで、C1sプロフィールの形は、ゼロのUV照射時間におけるSi−ALAPP−PI表面について予期されたもの(図33(a)参照)から、増加するUV照射時間と共に徐々の態様で(図33(b)及び(c)参照)、XPSサンプリング深さより小さいSi−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))被膜について予期されたものへ変わった、ということが分かり得る。特に注目されることは、照射時間がゼロ(7cmにおいて)から15分(4cmにおいて)に増加されるにつれてC−O(結合エネルギー286.5)の割合の増加であった。UV照射を中止し、マスクを移動しそして次いでUV照射を続けることによりP(PEGMA(475))被膜の厚さを増加することが可能であったという事実は、このグラフト重合反応が(i)UV照射により開始された及び(ii)特質上リビングであったという直接証拠である。
Figure 0005567337
パートB: グラジエント重合Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475))表面の諸領域におけるHeLa細胞付着の相違の決定
マスクされていた領域及びマスクされていなかった領域の両方を含有するグラフトポリマー被覆ガラススライド(Si−ALAPP−PI−P(PEGMA(475)))を4室型培養トレー(デンマーク国ロスキレのNunc)に移し、そしてペニシリン及びストレプトマイシン(それぞれ120μg/mL及び200μg/mL)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)無血清培地(SFM,ダルベッコの改変イーグル培地/ハムのF12(50:50))の無菌溶液中に各スライドを室温にて3時間半浸漬した。
上記の工程からの無菌溶液を除去し、そしてHeLa細胞を1×106細胞/室の密度で、10%(v/v)のウシ胎児血清(FBS)が補充されたところのSFMで構成された培地にて播種した。5%のCO2を含有する加湿空気中において、細胞を37℃にて24時間定温放置した。
HeLa細胞を18及び24時間の定温放置後に位相差顕微鏡法(日本国のオリンパスのオリンパス(Olympus)IX81)により目視検査し、そして代表画像をディジタル式で記録した。
先の例9においてように、HeLa細胞は、Si−HAPP−PI表面上でよく付着しそして伸展する並びに厚いSi−HAPP−P(PEGMA(475))表面上でよく付着しそして伸展することはしない。この相違は、HeLa細胞の付着に抵抗するグラフトP(PEGMA(465))層の存在に帰せられ得る。図W(a)から(e)における細胞付着を示す画像から、低照射時間(図34(a))及びそれ故薄いP(PEGMA(475))被膜について、PS対照(図34(e))よりわずかに低い密度でもって有意量の細胞付着があった、ということが明らかである。更に、観察された細胞伸展は、スライドの5分のUV照射領域の両方において、PS対照と非常に似ていた。しかしながら、照射時間が増加する及びそれ故被膜の厚さが増加するにつれて、細胞付着の度合いは予期されたように減少した。更に、細胞伸展の量は、20分のUV照射領域(図34(d))上に付着された少数細胞が非常に丸いモルホロジーを有するという時点まで、照射時間が増加されるにつれて顕著に減少した。
本明細書に開示されそして定められた本発明は、本文若しくは図面に挙げられた又は本文若しくは図面から明白な個々の特徴の二つ又はそれ以上のあらゆる代替的組合わせに及ぶ、ということが理解されるであろう。これらの種々の組合わせはすべて、本発明の様々な代替的側面を構成する。
本発明に関連する発明の実施形態を、以下に列挙する。
[実施形態1]
制御可能なポリマー表面被膜であって、基材の表面に共有結合で結合される高分子(macromolecule)であってしかも複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基を含む高分子と、該重合イニシエーターの少なくともいくつかからグラフトされたペンダントポリマーとを含む制御可能なポリマー表面被膜。
[実施形態2]
高分子が、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む、請求項1に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
[実施形態3]
重合イニシエーターが、制御フリーラジカル重合イニシエーターである、請求項1又は2に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
[実施形態4]
ペンダントポリマーが、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる、実施形態1〜3のいずれか一項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
[実施形態5]
制御可能なポリマー表面被膜が、更に、ペンダントポリマーにグラフトされた追加的ポリマーを含む、実施形態1〜4のいずれか一項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
[実施形態6]
制御可能なポリマー表面被膜が、更に、ペンダントポリマーに付着された少なくとも1つの生物学的活性成分を含む、実施形態1〜4のいずれか一項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
[実施形態7]
ペンダントポリマーが、制御アーキテクチャーを有する、実施形態1〜6のいずれか一項に記載の制御可能な重合表面被膜。
[実施形態8]
ペンダントポリマーが、生物学的応答を調節する、実施形態1〜7のいずれか一項に記載の制御重合表面被膜。
[実施形態9]
ペンダントポリマーが、細胞付着を調節する、実施形態8に記載の制御重合表面被膜。
[実施形態10]
基材の表面上に重合イニシエーターを制御可能に定着させる方法であって、該方法は高分子を該表面に共有結合で結合させることを含み、しかも該高分子は複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基を含む方法。
[実施形態11]
基材の表面上に制御可能なポリマー表面被膜を作製する方法であって、該方法は高分子を該表面に共有結合で結合させ、しかも該高分子は複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基を含み、そして該重合イニシエーターの少なくともいくつかからペンダントポリマーをグラフトさせることを含む方法。
[実施形態12]
高分子が、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む、実施形態10又は11に記載の方法。
[実施形態13]
重合イニシエーターが、制御フリーラジカル重合イニシエーターである、実施形態10〜12のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態14]
制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからペンダントポリマーをグラフトさせる、実施形態11〜13のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態15]
方法が、更に、ペンダントポリマーにグラフトされる追加的ポリマーを与えることを含む、実施形態11〜14のいずれか一項に記載の方法。

Claims (13)

  1. 備形成高分子(macromolecule)とペンダントポリマーとを含み、ここで、前記予備形成高分子は、複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基が予め組み込まれており、前記予備形成高分子は前記表面結合基を介して基材表面へ共有結合され、前記ペンダントポリマーは、前記複数個の重合イニシエーターの少なくともいくつかからグラフトされる、制御可能なポリマー表面被膜であって、前記重合イニシエーターが、制御フリーラジカル重合イニシエーターである、制御可能なポリマー表面被膜
  2. 予備形成高分子が、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む、請求項1に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
  3. ペンダントポリマーが、制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからグラフトされる、請求項1又は2に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
  4. 制御可能なポリマー表面被膜が、更に、ペンダントポリマーにグラフトされた追加的ポリマーを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
  5. 制御可能なポリマー表面被膜が、更に、ペンダントポリマーに付着された少なくとも1つの生物学的活性成分を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
  6. ペンダントポリマーが、制御アーキテクチャーを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
  7. ペンダントポリマーが、生物学的応答を調節する、請求項1〜のいずれか一項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
  8. ペンダントポリマーが、細胞付着を調節する、請求項に記載の制御可能なポリマー表面被膜。
  9. 基材の表面上に重合イニシエーターを制御可能に定着させる方法であって、複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基が予め組み込まれた予備形成高分子を形成し、前記予備形成高分子を前記複数個の表面結合基の少なくともいくつかを介して前記基材表面に共有結合で結合させることを含み、そして前記重合イニシエーターが、制御フリーラジカル重合イニシエーターである、方法
  10. 基材の表面上に制御可能なポリマー表面被膜を作製する方法であって、複数個の重合イニシエーター及び複数個の表面結合基が予め組み込まれた予備形成高分子を形成し、前記予備形成高分子を前記複数個の表面結合基の少なくともいくつかを介して前記基材表面に共有結合で結合させることを含み、そして前記重合イニシエーターが、制御フリーラジカル重合イニシエーターであり、また前記複数個の重合イニシエーターの少なくともいくつかからペンダントポリマーをグラフトさせることを含む方法。
  11. 予備形成高分子が、少なくとも1%の前もって決定されたモル比の重合イニシエーターを含む、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 制御フリーラジカルリビング重合により重合イニシエーターからペンダントポリマーをグラフトさせる、請求項10又は11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 方法が、更に、ペンダントポリマーにグラフトされる追加的ポリマーを与えることを含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
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