JP3707868B2 - 基材の表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性表面を有する物品および該物品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチック基材、無機材料基材等に様々な機能を付与する試みがなされてきた。例えば、プラスチック基材表面を親水化するには、火焔処理、コロナ処理、低温プラズマ処理等を行って基材表面に極性基を導入する方法が知られているが、選択的に極性基を導入することは困難であった。また、親水性能に経時変化がおこるという問題もあった。
【0003】
一方、基材表面に親水性モノマーをグラフト重合させる方法(筏義人、機能材料、2,No.7,1,1982/筏義人、工業材料、31,No.7,62,1983)によれば、導入される官能基の制御が可能であり、経時変化はほとんどないとされている。しかし、上記方法は放射線又はプラズマによって基材表面にペルオキシド等を生成させ、これを開始点として熱重合によるモノマーのグラフト重合を行わせるものであるために、製造工程が煩雑で工業的に不利であるうえに、実用可能なレベルの耐久性は得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑み、機能性モノマーのグラフト重合を利用した基材の表面処理において、耐久性に優れた各種機能を与える方法を提供する。さらに、上記グラフト重合の製造上有利な処理方法を与える。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材上に設けられた光重合開始剤を含有する下塗り層の表面に、機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射することにより、該機能性モノマーのグラフト重合反応を行わせる基材の表面処理方法に関する。
【0006】
本発明で処理を施される基材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の有機高分子のみならず、ガラス、金属等の無機物質;不飽和ポリエステル樹脂にガラスファイバーを分散させたものなど各種複合材料等の処理も可能である。上記基材には、密着性向上等の目的で前処理が施されていてもよい。上記前処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線、電子線、放射線等の電離活性線による処理、粗面化処理、化学薬品処理、プライマー処理等が挙げられる。
【0007】
上記下塗り層に含有される光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることが出来る。上記光重合開始剤としては、紫外線で活性化するソジウムメチルジチオカーバメイトサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジフェニルモノサルファイド、ジベンゾチアゾイルモノサルファイド及びジサルファイドなどのサルファイド類;チオキサントン、エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;ヒドラゾン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンジアゾニウムなどのジアゾ化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノン、ベンジルジメチルケタール、メチルフェニルグリオキシレートなどの芳香族カルボニル化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2, 2−ジエトキシアセトフェノン、2, 2−ジメトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体;4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピルなどのジアルキルアミノ安息香酸エステル類;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物;9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジンなどのアクリジン誘導体;9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジンなどのフェナジン誘導体;4,4’,4’’−トリメトキシ−2,3−ジフェニルキノキサリンなどのキノキサリン誘導体;2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィンオキシド、アシルホスフォナ−トなどのアシル化リン化合物等が挙げられる。
【0008】
また、可視光線で活性化する2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3’−カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン等を用いることもできる。
【0009】
<ラジカル開裂型の光重合開始剤>
本発明の光重合開始剤としては、開裂してラジカルを発生する化合物を用いることが好ましい。上記開裂型の光重合開始剤に、紫外線等の活性光線を照射する方法によれば、短時間の処理で機能性モノマーのグラフト重合が行われる。このため、基材に対して短時間の処理で各種機能を与えることが可能となり、工業的生産において有利である。
【0010】
上記開裂型の光重合開始剤の例として、次の一般式(I)
【化5】
で表される構造を有する化合物が挙げられる。上記構造(I)を有する化合物については、EPC出願0281941号公開公報に製法等が開示されている。
【0011】
<下塗り層>
本発明の下塗り層としては、上記光重合開始剤と各種材料の混合物を用いることが出来る。本発明の光重合開始剤とともに下塗り層を構成する材料は、光重合開始剤と機能性モノマーの重合の阻害、又は、基材と下塗り層の密着性の低下が問題とならないものであれば、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明においては、下塗り層中の光重合開始剤により機能性モノマーをグラフト重合させる。下塗り層と基材の密着性が悪いと、表面機能の耐久性が劣る結果を与えるため、基材の性質を考慮し、上記下塗り層構成材料として、基材と下塗り層の密着性を向上させる材料を選択すべきである。
【0013】
上記下塗り層構成材料としては、有機高分子、金属酸化物、有機−無機複合材料等を用いることが出来る。上記有機高分子としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。上記金属酸化物としては、所謂ゾル−ゲル法による、Si、Ti、Zr、B、Al等の金属アルコキシドの加水分解、脱水縮合による高分子量化の生成物等が挙げられる。上記有機−無機複合材料としては、上記ゾル−ゲル法による金属アルコキシドの高分子量化の際にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等のカップリング剤および任意の有機化合物を加えて得たものを用いることが出来る。
【0014】
上記基材密着性を向上させ、さらに、処理品の耐久性を向上させる手段として、前処理、添加剤等の公知の手法を利用することが出来る。上記重合阻害又は密着性低下が問題とならない範囲内であれば、処理品の用途に応じた添加物を加えることも出来る。
【0015】
なお、本発明者らによれば、高分子の光重合開始剤(繰り返し単位中に光重合開始剤構造を有する高分子化合物)を用いる方法、架橋性官能基を有する光重合開始剤を用いる方法、光重合開始剤に架橋性化合物(多官能(メタ)アクリレート等)を添加する方法、無機基材に対してシランカップリング剤兼用光重合開始剤(光重合開始剤構造と金属アルコキシド等の加水分解、脱水縮合が可能である構造を有する化合物)を用いる方法が有効であることが確認されている。
【0016】
例えば、高分子の光重合開始剤は、構造式(V)
【化6】
で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバ・ガイギー社から商品名「イルガキュアー2959」で市販されている。)を2−(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート又は(メタ)アクリル酸若しくは(メタ)アクリル酸の誘導体と反応させて一般式(VI)
【化7】
で表される重合性不飽和基を有する化合物を得て、この化合物(VI)の重合、又は、任意の重合性モノマーと共重合を行わせることによって得ることが出来る。
【0017】
上記共重合によって高分子の光重合開始剤を得る場合、分子(VI)の割合が少なすぎると機能性モノマーの表面グラフト重合が起こり難くなるため、分子(VI)を共重合させた後の下塗り層組成物中に分子(VI)が1モル%以上含まれていることが好ましく、さらに好ましくは5モル%以上である。なお、本明細書中で量に関して「下塗り層組成物」という場合、光重合開始剤に相当する化合物以外の添加物等を含んだ量をいう。
【0018】
上記高分子の光重合開始剤とする場合、分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量で5,000〜500,000の範囲であることが好ましい。
【0019】
上記分子(VI)と共重合される重合性モノマーは、特に限定されるものではなく、使用する基材、後の工程で塗布する機能性モノマーの性質に応じて選択される。例えば、上記機能性モノマーとして親水性モノマーを用いる場合は、下塗り層が水溶性であると親水性モノマーと下塗り層組成物が互いに溶解してしまうため、下塗り層組成を水に不溶とする。
【0020】
上記親水性モノマーを用いる場合の分子(VI)と共重合される重合性モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン等のスチレン類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルケトン類等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を
混合して用いてもよい。
【0021】
さらに、上記分子(VI)と共重合される重合性モノマーとして、エポキシ基、カルボキシル基、アクリロイル基、イソシアネート基、水酸基、アミノ基、メチロール基、アルコキシシリル基等の架橋性官能基を有するモノマー、重合性不飽和基を2以上有するモノマーを選択して、共重合体を合成し、側鎖に架橋性の官能基を有する高分子の光重合開始剤を用いて、当該架橋性官能基による架橋を利用して機能性表面の耐久性を向上させることが出来る。
【0022】
また、下塗り層組成物として、光重合開始剤に架橋性化合物を添加した組成物を用いる方法によっても同様に、下塗り層の架橋を行わせることが出来、耐久性の良好な処理品が得られる。
【0023】
上記架橋性化合物として好ましいものとしては、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
上記分子内に2以上の不飽和性基を有する(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。さらに、2官能以上のウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等を用いることが出来る。
【0025】
上記(メタ)アクリレートと光重合開始剤からなる下塗り層を設ける場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して光重合開始剤0.1〜20重量部であることが好ましい。光重合開始剤の割合が少なすぎるとグラフト重合が起こりにくくなり、(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると架橋が不充分で耐久性向上の目的が達成されず、黄変が発生する原因となり易い。
【0026】
また、本発明の下塗り層として、ガラス等の無機系材料からなる基材に対して一般式(III)
【化8】
で表される加水分解性シリル基を有する化合物又は該化合物の加水分解物を用いると、基材密着性が非常に良好となり、好ましい結果を与える。
【0027】
このような化合物のひとつである分子(VII)
【化9】
は、上記光重合開始剤(V)と、一般式(VIII)
【化10】
で表されるイソシアネート基を含有するシランカップリング剤の付加反応により得ることが出来る。
【0028】
上記シランカップリング剤(VIII)としては、3−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBM−9007」)、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBE−9007」)、3−ジメトキシメチルシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBM−9207」)、3−ジエトキシメチルシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBE−9207」)等が市販されているので、これを用いることが出来る。
【0029】
上記分子(VII)を合成する方法としては、従来公知のウレタン生成反応が利用可能である。例えば、上記イソシアネート基含有シランカップリング剤(VIII)と上記光重合開始剤(V)に、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズのようなウレタン合成用の触媒を少量添加して反応させることが出来る。
【0030】
上記分子(VII)又はその加水分解物からなる下塗り層を設けた後に、加熱を行って、加水分解性シリル基の反応を行わせることにより、耐久性に優れた処理品を得ることが出来る。
【0031】
上記分子(VII)とともに一般式(IX)
【化11】
で表される加水分解性シラン化合物を含有する下塗り層組成物を用いて、該加水分解性シラン化合物の加水分解、加熱によって架橋する性質を利用して機能性表面の耐久性、無機系基材との密着性をさらに向上させることが出来る。上記加水分解性シラン化合物(IX)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
上記加水分解性シラン化合物(IX)の添加量は、分子(VII)100重量部に対し、10〜400重量部であることが好ましい。少なすぎると架橋の効果が不充分で耐久性向上の目的が達成されず、多すぎて分子(VII)の割合が減少する程ではグラフト重合が
うまく進行しないためである。
【0033】
上記加水分解性シリル基を有する化合物を光重合開始剤として用いる場合にも、多官能(メタ)アクリレート等の架橋性化合物の添加によって機能性表面の耐久性を向上させることが出来る。
【0034】
本発明の下塗り層組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、界面活性剤等が添加されてもよい。
【0035】
<下塗り層形成>
上記光重合開始剤が化学的に結合した高分子からなる下塗り層組成物を、スプレーコート、バーコート、ディッピング、ロールコート、スピンコート等の方法によって基材表面に塗布して、下塗り層を設ける。
【0036】
上記下塗り層の厚みは、薄すぎると均一な層を設けることが困難であり、厚すぎると経済性が悪くなるため、乾燥状態で0.1〜20μmとすることが好ましい。
【0037】
上記塗布時に作業が容易なように、下塗り層組成物を公知の有機溶剤に溶解させて溶液として用いるとよい。
【0038】
上記分子(VII)等の加水分解性シリル基(III)を有する化合物を含有する系の場合は、基材上に当該化合物を含有する層を設けた後に加熱硬化を行うことによって、下塗り層組成物の架橋を行わせてから機能性モノマーを重合させることが好ましい。上記加熱硬化の条件は、分子(VII)等の光重合開始剤の安定性を考慮して決定されるが、50〜200℃の温度下で数分〜3時間程度の加熱が好ましい。
【0039】
上記加熱の際には、分子(VII)および/又はアルコキシシラン化合物を加水分解して用いた方が架橋反応が速やかに進行するので有利である。
【0040】
また、下塗り層が架橋性官能基、架橋剤等を含有する構成であって、当該架橋性官能基、架橋剤等を加熱により架橋させる場合の加熱硬化条件も同様である。
【0041】
本発明においては、基材上に設けられた下塗り層表面に、機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射して、当該機能性モノマーのグラフト重合反応を行わせる。
【0042】
<機能性モノマー>
機能性モノマーとしては、親水性、撥水性のものがよく知られているが、これらに限られず、グラフト重合を行う重合性不飽和基を有する構造であればよい。本発明は機能性モノマーを限定せず、光重合開始剤を構造中に有する分子を含有する層を介して、基材に直接付与できなかった性能を与えることが出来る。また、無機透明材料からなる基材に分子(VII)の下塗り層を用いる場合等のように、基材の透明性を損なうことなく、各種機能を与えることも出来る。
【0043】
上記機能性モノマーの例として、親水性モノマーを用いる場合について説明する。コロナ処理等によって、基材に親水性基を付与した場合は、当該親水性基が自発的にいわゆるもぐり込みを行って表面に存在しなくなることが知られているが、本発明においては、上記もぐり込みを起こさずに親水性モノマーを表面に存在せしめることが出来る。本発明の方法は、基材に親水性を与える手段として特に有利である。
【0044】
本発明に用いる親水性モノマーは、分子内に少なくとも1の重合性不飽和基と少なくとも
1の親水基を有するものである。上記親水基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、一級、二級、三級アミノ基又はアミド基、四級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ポリエチレングリコール鎖、モルホリノ基、硫酸塩基等が挙げられる。酸性基および塩基性基を有するものはグラフト重合の前又は後に中和反応を行わせて用いてもよい。
【0045】
上記親水性モノマーの具体例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、スチレンスルホン酸等が挙げられる。上記親水性モノマーは、単独でも2種以上を用いてもよい。
【0046】
基材に与える親水性能の優劣および耐久性という観点から、上記親水性モノマーの中で、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を有するモノマーを用いた場合が、最も好ましい結果を与える。上記スルホン酸基を有するモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸等が挙げられ、これらの塩を用いてもよい。
【0047】
また、撥水性モノマーとしては、次式で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリレート等が好適である。
【化12】
【化13】
【0048】
他に、例えば、トリフルオロエチルアクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート等の低屈折率モノマーを用いて、基材に反射防止機能を与えることが出来る。また、基材の一部分のみの屈折率を変えるために利用してもよい。
【0049】
機能性モノマーを下塗り層を設けた基材表面に接触させる方法としては、ディピング、スプレー法、ポッティング、カーテンコート等によって塗工する方法、機能性モノマーを気化させて接触させる方法等が挙げられる。
【0050】
塗布作業が容易になるように、機能性モノマーを溶媒で希釈して用いてもよい。溶媒の種類は、用いる機能性モノマーの性質に応じて選択される。上記親水性モノマーを用いた場合の溶媒としては、水又は水と極性溶媒を混合したものが好ましい。上記極性溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を用いることが出来る。
【0051】
上記機能性モノマーに、下塗り層の光重合開始剤とは別に、光重合開始剤を加えて、グラフト重合を促進することが出来る。機能性モノマーに加える光重合開始剤は、本発明の下塗り層と同じものを用いても、他に公知の光重合開始剤を用いてもよい。具体的には、下塗り層のところで例示したものから選択すればよい。機能性モノマーに光重合開始剤を加える場合の添加量は、機能性モノマー100重量部に対して0. 1〜10重量部であることが好ましい。
【0052】
<グラフト重合>
上記機能性モノマーを下塗り層の表面に接触させた状態で、紫外線等の活性光線を照射してグラフト重合を行わせる。紫外線照射が最も実用的であろう。
【0053】
上記紫外線の照射には、光源として超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハロライドランプ、キセノンランプ、低圧殺菌ランプ等が用いられる。紫外線の照射量は、機能性モノマーの種類、下塗り層中の光重合開始剤の存在量によって異なるが、100mJ/cm2〜20J/cm2が適当である。
【0054】
酸素阻害を防止するために、不活性ガス雰囲気下あるいは透明プラスチックフィルム、ガラス板等によってラミネートした状態で活性光線照射を行う事が好ましい。
【0055】
機能性モノマーの種類によっては、任意の後処理を行って重合後の官能基の安定化を行うことが好ましい。例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基を有するモノマーを用いた場合には、アルカリ処理を行って、当該カルボン酸基等をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩としておくことが好ましい。 上記アルカリ処理には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム等の水溶液又はアルコール溶液等を用いることが出来る。上記アルカリ溶液の濃度は表面層が侵されないように、0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0056】
本発明の表面処理を行った後は、水洗等によって基材上の余剰付着物を除去することが好ましい。
【0057】
本発明は、基材上に設けられた光重合開始剤を含有する下塗り層の表面に、機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射することにより、該機能性モノマーのグラフト重合反応を行わせる基材の表面処理方法であって、当該機能性モノマー100重量部に、分子内に二以上の不飽和性基を有する架橋剤2〜300重量部を添加することを特徴とする。
【0058】
上記機能性モノマーに、分子内に二以上の不飽和性基を有する架橋剤が添加された状態で
機能性モノマーのグラフト重合を行わせることにより、グラフト鎖が架橋され、機能性表面の耐久性を向上させることが出来る。
【0059】
上記分子内に二以上の不飽和性基を有する架橋剤としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−プロピレンビスアクリルアミド、ジアクリルアミドジメチルエーテル、1,2−ジアクリルアミドエチレングリコール、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品では、新中村科学社製「UA−W1」、「UA−W2」、共栄化学社製「エポキシエステル200EA」、「エポキシエステル400EA」等が挙げられる。
【0060】
上記架橋剤の添加量は、少なすぎると効果が認められず、多すぎるとクラックが発生する原因となるため、機能性モノマー100重量部に対して、2〜300重量部に限定される。
【0061】
【実施例】
参考例1
<重合性不飽和基を有する光重合開始剤(化合物(X))の合成>
【化14】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内を窒素置換を行い、テトラヒドロフラン(THF)30gを入れ、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバ・ガイギー社製、イルガキュアー2959)10.0g(4.46×10−2mol)を溶解させた。2−メタクリロキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)6.92g(4.46×10−2mol)を添加して均一な溶液とし、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ90mgを滴下しながら室温にて攪拌を行った。反応溶液の温度は数分で上昇した。3時間室温で攪拌を続けた後、反応系を50℃に保って3時間放置して、化学式(X)で示される生成物の反応を完結させた。
【0062】
減圧によってTHFを除去して固形状の生成物を得た。生成物のIRスペクトルをKBr錠剤法によって測定した。原料の2−メタクリロキシエチルイソシアネートに由来する2280cm−1付近のイソシアネート基に由来する吸収は消失し、生成物のウレタン結合中のNH基に由来する吸収が3400cm−1付近(NH伸縮)および1550cm−1付近(NH変角)に観察された。以上のことから生成物が化学式(X)で示される構造を持つことを確認した。
【0063】
<光重合開始部を有する高分子(XI)の重合>
【化15】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内を窒素置換を行い、メチルエチルケトン(MEK)80gを入れ、化合物(X)5.01g(1.32×10−2mol)を溶解させ、メタクリル酸メチル(MMA)11.87g(1.19×10−1mol)を添加して均一な溶液とした。反応系を60℃に加熱し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)85mgをMEK2gに溶解させた溶液を添加して3時間重合を行わせた。AIBNのMEK溶液を添加して3時間重合を行わせる操作を3回行い、9時間重合させて重合体(XI)を得た。反応溶液を多量のヘキサン中に投じて重合体(XI)を析出させて濾別した。メタノールで洗浄して、未反応の化学式(X)で示される生成物を除去した。得られた重合体(XI)は14.15g(収率87.6%)であった。得られた重合体(XI)をGPCによって測定した。重量平均分子量Mw=84,000、分子量分布Mw/Mn=3.0であった。 1H−NMRによって重合体(XI)における化合物(X)の導入率を調べたところ、16モル%であった。
【0064】
<親水性モノマー溶液の調製>
イオン交換水3.5gに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、以下「親水性モノマーA」という。)1.0g、界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ナカライテスク社製)0.035gを溶解させ、炭酸ナトリウム0.26gを加えて攪拌し、発生する二酸化炭素を十分に除去して親水性モノマーAの水溶液を調製した。
【0065】
<下塗り層形成>
上記操作によって得られた重合体(XI)1.0gをMEK4.0gに溶解させ、メイヤーバーを用いてアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX、3mm厚)上に塗布した。80℃で2分間乾燥させて、光重合開始部を有する高分子の層(乾燥後の厚さ4.4μm)を設けた。この層を表中、下塗り層1と示す。
【0066】
<グラフト重合>
上記親水性モノマーAの水溶液0.1mlを、下塗り層上にポッティング塗布し、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を5秒間(1J/cm2)照射して、グラフト重合を行わせた後、流水により表面の余剰付着物を洗い流して乾燥させ、基材に表面処理を施した。
【0067】
参考例2、3
基材として、アクリル板に代えて、参考例2はポリカーボネート板(旭ガラス社製、レキサン、3mm厚)、参考例3はポリ塩化ビニル板(三協化成社製、サンプレート、3mm厚)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして基材に表面処理を施した。
【0068】
参考例4、5
親水性モノマー溶液の調製において、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートの添加量を参考例4は0.0005g、参考例5は1.0gとしたこと以外は、参考例1と同様にして基材に表面処理を施した。
【0069】
参考例6
親水性モノマー溶液の調製において、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートに代えて、ドデシル硫酸ナトリウム(ナカライテスク社製)0.035gを用いたこと以外は、参考例1と同様にして基材に表面処理を施した。
【0070】
参考例7、8
親水性モノマー溶液の調製において、参考例1の親水性モノマー溶液Aの配合にジメチルエタノールアミン(ナカライテスク社製)を加えたものを用いたこと以外は、参考例1と同様にして基材に表面処理を施した。ジメチルエタノールアミンの添加量は、参考例7は0.005g、参考例8は0.35gとした。
【0071】
参考例9
下塗り層組成物を下記の通りに代えたこと以外は、参考例1と同様にして基材に表面処理を施した。
<下塗り層形成>
参考例1の操作によって得られた重合体(XI)1.0gとウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製、U−15HA)1.0gをMEK8.0gに溶解させ、メイヤーバーを用いてアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX、3mm厚)上に塗布した。80℃で2分間乾燥させて、光重合開始部を有する高分子の層を設けた。この層を表中、下塗り層2と示す。
【0072】
参考例10
参考例1の親水性モノマーAに代えて、下記の親水性モノマーBを用いたこと以外は、参考例1と同様にして基材に表面処理を施した。
【0073】
<親水性モノマーBの調製>
イオン交換水3.5gにアクリル酸(キシダ化学社製、以下「親水性モノマーB」という。)1.0g、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ナカライテスク社製)0.035gを溶解させ、炭酸ナトリウム0.74gを加えて攪拌し、発生する二酸化炭素を十分に除去して親水性モノマーBの水溶液を調製した。
【0074】
参考例11
<アルコキシシリル基を有する光重合開始剤(化合物(XII))の合成>
【化16】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内を窒素置換を行い、THF30gを入れ、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバ・ガイギー社製、イルガキュアー2959)5.0gを溶解させた。これに、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫100mg、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(信越化学工業社製、KBE9007)5.5gを添加して均一な溶液とした。3時間室温で攪拌を行った後、反応系を50℃に保って3時間放置して、化学式(XII)で示される生成物の反応を完結させた。
【0075】
減圧によってTHFを除去して生成物を得た。生成物のIRスペクトルをKBr錠剤法によって測定したところ、原料の3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネートに由来する2280cm−1付近のイソシアネート基に由来する吸収は消失していた。また、生成物の 1H−NMRを測定したところ、δ=5.1ppm付近に、化合物(XII)に由
来すると考えられる幅広いピークが観察された。以上のことから生成物が化学式(XII)で示される構造を持つことを確認した。
【0076】
<ゾル−ゲル法による下塗り層形成>
上記操作によって得られた化合物(XII)2.1gにエタノール10.4g、テトラエトキシシラン(コルコート社製)2.2g、0.4重量%HCl溶液1.1gを添加して室温で1時間攪拌して下塗り層溶液を調製した。上記下塗り層溶液を、メイヤーバーを用いてガラス板(旭硝子社製、5mm厚)上に塗布した。180℃で30分間加熱硬化させて、乾燥後の厚さ0.5μmの層を設けた。この層を表中、下塗り層3と示す。
【0077】
<親水性モノマー溶液の調製>
イオン交換水2.5gに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸1.0g、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート0.026g、炭酸ナトリウム0.26gを加えて溶解させた後に、エタノール1.0gを添加して、親水性モノマーAの水溶液を調製した。
【0078】
<グラフト重合>
上記親水性モノマーAの水溶液0.1mlを、下塗り層上にポッティング塗布した。これに1mm厚のスライドグラスをラミネートした状態で、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を15秒間(3J/cm2)照射した。スライドグラスを取り外し、流水を用いて表面の余剰付着物を洗い流した後に乾燥させ、基材に表面処理を施した。
【0079】
参考例12
参考例1で用いた親水性モノマーA溶液0.1mlを、アクリル板上にポッティング塗布した。これに1mm厚のスライドグラスをラミネートした状態で、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を1J/cm2照射した。スライドグラスを取り外し、流水を用いて表面の余剰付着物を洗い流した後に乾燥させ、基材に表面処理を施した。
【0080】
参考例13、14
親水性モノマー溶液の調製において、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを配合しなかったこと以外は、参考例1、参考例9と同様にして基材に表面処理を施したが、基材に均一に濡れ広がらず、全面処理出来なかった。
【0081】
参考例1〜14の表面処理を施した基材について、基材密着性、対水接触角、付着物除去性、呼気防曇性、熱水浸漬後(90℃、24時間)の外観及び対水接触角の評価を行った。結果を表1に示す。外観は、透明平滑なものを○とした。
【0082】
<基材密着性評価>
表面処理を施した基材の表面に、JIS−K5400に従ってカッターで傷を入れて1mm角の基盤目を100個作り、セロハン粘着テープ(積水化学社製、#252、25mm幅、SP粘着力:750gf/25mm幅)を付着させた。このテープの一端を基材の表面に直角に保ち、瞬間的に剥離して残った基盤目の数を示す。100個の基盤目全てが剥離した状態が0、全て剥離しない状態が100である。
【0083】
<対水接触角評価>
表面処理を施した基材について、室温23℃、湿度50%の室内で、接触角計(協和界面科学社製、CA−X150)を用いて液滴法によって3点測定を行った。平均値を表2に示す。なお、表面に親水性モノマーがグラフト重合される前の下塗り層1(実施例1)に紫外線を1J/cm2照射した基材について、同様に接触角を測定したところ、61.2度であった。
【0084】
<付着物除去性評価>
表面処理を施した基材の表面に、黒色マジックインキNo.500で描画して室温で5分間乾燥させた。流水下でキムワイプを用いて払拭し、インキの除去性を評価した結果を表2に示す。評価は次のように行った。
○:容易に除去 △:強くこすれば除去可能 ×:除去不可能
【0085】
削除
<呼気防曇性評価>
表面処理を施した基材の表面に呼気を吹きかけて、以下の評価を行った。
○:全く曇らない △:若干曇る ×:曇る
【0086】
【表1】
【0087】
以下の全ての実施例、比較例では、グラフト重合の際に1mm厚のスライドグラスによるラミネートを行っている。
【0088】
実施例1〜7
親水性モノマー溶液の調製において、架橋剤として実施例1〜5はウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製、UA−W2)、実施例6はウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製、UA−W1)、実施例7はN,N’−ビスメチレンアクリルアミド(和光純薬社製)を用い、表1に示す配合で親水性モノマー溶液を調製したこと以外は、参考例2と同様にして基材に表面処理を施した。なお、親水性モノマーとして、実施例1〜3、6、7は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、親水性モノマーA)、実施例4はアクリル酸(キシダ化学社製、親水性モノマーB)、実施例5はN,N’−ジメチルアクリルアミド(興人社製、親水性モノマーC)を用いた。
【0089】
実施例8、9
基材として、アクリル板に代えて、実施例8はポリカーボネート板(旭ガラス社製、レキサン、3mm厚)、実施例9はポリ塩化ビニル板(三協化成社製、サンプレート、3mm厚)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材に表面処理を施した。
【0090】
実施例10
参考例9と同様の下塗り層2、及び、実施例1と同様の親水性モノマーA溶液を用いて基材に表面処理を施した。
【0091】
実施例11
参考例11と同様の下塗り層3、及び、実施例1と同様の親水性モノマーA溶液を用いて基材に表面処理を施した。
【0092】
実施例12
下記の下塗り層4、及び、実施例1と同様の親水性モノマーA溶液を用いて基材に表面処理を施した。
<下塗り層形成>
多官能(メタ)アクリレート(新中村化学社製、U−15HA)1.0g、テトラヒドロフラン(THF)30gを入れ、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバ・ガイギー社製、イルガキュアー2959)0.02gをMEK4.0gに溶解させ、メイヤーバーを用いてアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX、3mm厚)上に塗布した。80℃で2分間乾燥させて、光重合開始部を有する高分子の層(膜厚2μm)を設けた。この層を表中、下塗り層4と示す。
【0093】
比較例1
実施例1で用いた親水性モノマーA溶液0.1mlを、アクリル板上にポッティング塗布した。これに1mm厚のスライドグラスをラミネートした状態で、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を1J/cm2照射した。スライドグラスを取り外し、流水を用いて表面の余剰付着物を洗い流した後に乾燥させ、基材に表面処理を施した。
【0094】
比較例2、3
架橋剤であるウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製、UA−W2)の添加量を、比較例2は0.01g、比較例3は4gとしたこと以外は、実施例1と同様にして基材に表面処理を施した。
【0095】
実施例1〜12及び比較例1〜3の表面処理を施した基材について、基材密着性、対水接触角、付着物除去性、呼気防曇性、払拭試験後の外観及び対水接触角の評価を行った。結果を表2に示す。
【0096】
<耐払拭性評価>
表面処理を施した基材の表面を、1cmφ単位円あたり500gの荷重をかけた状態で、キムワイプ(十條キンバリー社製)によって100払拭した。上記払拭処理を施した基材表面について、外観および対水接触角評価を行った。外観は、透明平滑なものを○とし、対水接触角は上記と同様にして測定した。
【0097】
【表2】
【0098】
参考例15
親水性モノマー溶液の調製において、連鎖移動剤としてエタノールを用い、表1に示す配合で2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、親水性モノマーA)の溶液を調製し、参考例1と同様に下塗り層1にグラフト重合を行わせ、基材に表面処理を施した。
【0099】
参考例16〜21
親水性モノマー溶液の調製において、連鎖移動剤として参考例16〜19はエタノール、参考例20、21はエチレングリコールを用い、表1に示す配合で親水性モノマー溶液を調製し、参考例11と同様に下塗り層3にグラフト重合を行わせ、基材に表面処理を施した。なお、親水性モノマーとして、参考例16〜17、20、21は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、親水性モノマーA)、参考例18はp−スチレンスルホン酸ナトリウム(和光純薬社製、親水性モノマーD)、参考例19はビニルスルホン酸ナトリウム(日精化学社製、親水性モノマーE)を用いた。
【0100】
なお、参考例11で得られる下塗り層には、光重合開始剤が30モル%含有されている。ラジカル補足剤である1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)を用い、ラジカルを補足してDPPHが結合する反応によって減少するDPPHの量を測定し、当該下塗り層の光重合開始剤の密度を求めたところ、1cm2あたり1016個のオーダーであった。
【0101】
参考例15〜22の表面処理を施した基材について、基材密着性、対水接触角、防曇性(JIS−K3040)、熱水浸漬後(80℃、24時間)の防曇性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0102】
<防曇性評価:JIS−S4030>
表面処理を施した基材において、処理を施していない面に冷却水をあてて25℃に保ちつつ、処理面に42℃の水蒸気を3分間あてた場合の曇り止め性(高温部曇り止め性)評価を行った。また、基材を5℃に冷却した後に、20℃、湿度65%の恒温室に取り出した場合の曇り止め性(低温部曇り止め性)評価を行った。評価は、JIS−S4030に添付された判定チャートに従って、以下の4段階評価を行った。
◎:1級 ○:2級 △:3級 ×:4級
【0103】
【表3】
【0104】
参考例23、24
親水性モノマー溶液の調製において、解離性の塩として塩化ナトリウムを用い、表1に示す配合で2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、親水性モノマーA)の溶液を調製し、参考例1と同様に下塗り層1にグラフト重合を行わせ、基材に表面処理を施した。
【0105】
参考例25〜29
親水性モノマー溶液の調製において、解離性の塩として塩化ナトリウムを用い、表1に示す配合で親水性モノマー溶液を調製し、参考例11と同様に下塗り層3にグラフト重合を行わせ、基材に表面処理を施した。なお、親水性モノマーとして、参考例25、26は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、親水性モノマーA)、参考例27はp−スチレンスルホン酸ナトリウム(和光純薬社製、親水性モノマーD)、参考例28はビニルスルホン酸ナトリウム(日精化学社製、親水性モノマーE)、参考例29は2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(共栄化学社製、DQ−100、親水性モノマーF)を用いた。
【0106】
参考例30、31
解離性の塩である塩化ナトリウムを添加しなかったこと以外は、参考例23、参考例29と同様にして基材に表面処理を施した。
【0107】
参考例23〜31の表面処理を施した基材について、基材密着性、対水接触角、防曇性(JIS−K3040)、熱水浸漬後(80℃、24時間)の防曇性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
参考例32〜34
以下の操作による界面活性剤を含有する下塗り層1、及び、表1に示す配合で調製した親水性モノマーの溶液を用いてグラフト重合を行わせ、基材に表面処理を施した。なお、親水性モノマーとして、参考例32、33は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、親水性モノマーA)、参考例34はアクリル酸(
キシダ化学社製、親水性モノマーB)を用いた。
<下塗り層形成>
参考例1で得られた重合体(XI)1.0gをMEK4.0gに溶解させ、更に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(ナカライテスク社製)を参考例32、参考例34は50mg、参考例33は100mg加えたものを、メイヤーバーを用いてアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX、3mm厚)上に塗布した。80℃で2分間乾燥させて、光重合開始部を有する高分子の層(乾燥後の厚さ4.4μm)を設けた。
【0110】
参考例35
界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム50mgに代えて、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ナカライテスク社製)50mgを用いたこと以外は、参考例32と同様にして基材に表面処理を施した。
【0111】
参考例36、37
以下の操作による界面活性剤を含有する下塗り層3、及び、表1に示す配合で調製した親水性モノマーの溶液を用いてグラフト重合を行わせ、基材に表面処理を施した。なお、親水性モノマーとして、参考例36は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q、親水性モノマーA)、参考例37はポリエチレングリコール#400ジアクリレート(共栄化学社製、ライトアクリレートPEG−A、親水性モノマーG)を用いた。
【0112】
<ゾル−ゲル法による下塗り層形成>
上記操作によって得られた化合物(XII)2.1gにエタノール10.4g、テトラエトキシシラン(コルコート社製)2.2g、0.4重量%HCl溶液1.1gに、さらにドデシル硫酸ナトリウム水溶液(400mg/3ml蒸留水)を添加して室温で1時間攪拌して下塗り層溶液を調製した。上記下塗り層溶液を、メイヤーバーを用いてガラス板(旭硝子社製、5mm厚)上に塗布した。180℃で30分間加熱硬化させて、乾燥後の厚さ0.5μmの層を設けた。
【0113】
参考例38〜40
下塗り層組成物に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は、参考例32、参考例36、参考例参考例と同様にして基材に表面処理を施した。
【0114】
参考例32〜40の表面処理を施した基材について、基材密着性、対水接触角、防曇性(JIS−K3040)、熱水浸漬後(80℃、24時間)の防曇性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
【発明の効果】
本発明の基材の表面処理方法において、基材上に設けられた光重合開始部を含有する下塗り層の表面に、機能性モノマーを接触させた状態で、該機能性モノマーのグラフト重合反応を行わせることによって、製造上有利な短時間の処理で、基材に親水性、撥水性、反射防止等の各種性能を与えることが出来る。また、付与した機能の耐久性に優れている。さらに、紫外線の照射を利用しているため、基材の部分毎に、選択的に処理を施すことが極めて容易である。
【0117】
本発明によれば、機能性モノマーに分子内に二以上の不飽和性基を有する架橋剤が添加された状態で機能性モノマーのグラフト重合を行わせることにより、グラフト鎖が架橋され、機能性表面の耐久性を向上させることが出来る。
Claims (2)
- 基材上に設けられた光重合開始剤を含有する下塗り層の表面に、機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射することにより、該機能性モノマーのグラフト重合反応を行わせる基材の表面処理方法であって、当該機能性モノマー100重量部に、分子内に二以上の不飽和性基を有する架橋剤2〜300重量部を添加することを特徴とする、基材の表面処理方法。
- 下塗り層が、光重合開始剤100重量部に分子内に二以上の不飽和性基を有する(メタ)アクリレート20〜300重量部を加えてなるものであることを特徴とする、請求項1に記載の基材の表面処理方法。
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JPH1017688A (ja) | 1998-01-20 |
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