以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、ステアリングローラの回転周期でステアリングローラが周期的な傾動を繰り返す限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
したがって、ステアリング制御されるベルト部材を搭載した画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/記録材搬送型/転写ベルト型の区別無く実施できる。感光ベルト、転写ベルト、定着ベルト等のベルト部材を備えた画像形成装置でも実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置、およびステアリング制御に関する一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置1は、中間転写ベルト31に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部22、23、24、25を配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
画像形成部22では、感光ドラム30にイエロートナー像が形成されて、中間転写ベルト31に一次転写される。画像形成部23では、感光ドラム30にマゼンタトナー像が形成されて、中間転写ベルト31上のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部24、25では、それぞれ感光ドラム30、30にシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、同様に、中間転写ベルト31に順次重ねて一次転写される。
ベルト部材の一例である中間転写ベルト31は、支持回転体の一例である駆動ローラ34、張架ローラ32、ステアリングローラ35、および対向ローラ36に掛け渡して支持される。二次転写ローラ37は、対向ローラ36に内側面を支持された中間転写ベルト31に当接して二次転写部T2を形成している。
中間転写ベルト31に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。記録材カセット41から引き出された記録材Pは、分離ローラ45によって1枚ずつに分離され、レジストローラ46によって二次転写部T2へ送り出される。トナー像と重ねて記録材Pが二次転写部T2を挟持搬送される過程で、二次転写ローラ37に直流電圧が印加されることにより、トナー像が中間転写ベルト31から記録材Pへ転写される。
四色のトナー像を転写された記録材Pは、中間転写ベルト31から曲率分離して定着装置47へ送り込まれ、加熱加圧を受けて表面に画像を定着された後、機体外へ排出される。中間転写ベルト31の表面に残った転写残トナーは、ベルトクリーニング装置39によって回収される。
画像形成部22、23、24、25は、それぞれの現像装置28で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、イエローの画像形成部22について説明し、他の画像形成部23、24、25については、対応する構成部材に同一符号を付して重複する説明を省略する。
画像形成部22は、感光ドラム30の周囲に、コロナ帯電器26、露光装置29、現像装置28、一次転写ローラ33、およびドラムクリーニング装置27を配置している。像担持体の一例である感光ドラム30は、帯電極性が負極性の感光層を形成され、300mm/secのプロセススピードで矢印R1方向に回転する。
コロナ帯電器26は、感光ドラム30の表面を、一様な暗部電位VDに帯電させる。露光装置29は、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを用いて、感光ドラム30に画像の静電像を書き込む。
現像装置28は、トナーとキャリアを含む二成分現像剤を用いて感光ドラム30の静電像をトナー像に反転現像する。一次転写ローラ33は、中間転写ベルト31の内側面を押圧して、感光ドラム30と中間転写ベルト31の間に一次転写部T1を形成する。一次転写ローラ33に正極性の電圧を印加することで、感光ドラム30に担持されたトナー像が中間転写ベルト31へ一次転写される。ドラムクリーニング装置27は、感光ドラム30に残った転写残トナーを回収する。
ところで、画像形成装置は、中間転写体又は記録材搬送体としてベルト機構を採用した結果、数多くの機能の向上が図られた反面、ベルト機構に特有の欠点である駆動時のベルト部材の寄り移動を抑制する手段が必要不可欠である。
ベルト部材の寄り移動は、ベルト駆動機構を始め、ベルト自身の機械的精度、ベルト部材の特性変化、記録材がベルト部材に突入することによって生じる衝撃等、外部から加えられる様々な力等によって発生する。そして、ベルト部材の寄り移動が生じた場合に元に戻す方法としては、ベルト部材の寄り方向の位置を検出し、その検出された位置に応じてステアリングローラの傾動量を制御するローラステアリング方式がある。
特許文献1では、ステアリングローラの軸方向の一端を固定端、他端を可動端として傾動可能とし、ステアリングローラの固定端側にベルト寄り量を検知するエッジセンサが配置される。ステアリングローラの固定端側は、ステアリングローラの傾動による位置変動が小さいため、ベルト部材の撓み(ねじれ)や振動などの影響を小さく保ってベルト部材のエッジ位置を検出可能である。
また、特許文献2では、ベルト部材の絶対的な寄り位置ではなく、ベルト部材を張架するローラ上でのベルト部材の傾斜を検知することによって、ベルト部材の蛇行を補正する提案がされている。ここでは、ベルト部材の寄り移動の原因であるステアリングローラ上でのベルト部材のねじれ量を直接検知するため、ベルト部材の寄り移動が発生してからステアリングローラの傾動量が修正されるまでの時間が短縮される。そして、ステアリングローラ上におけるベルト部材の傾斜量を検知して、その状態量をもとにベルト蛇行制御を実施するため、ベルト部材のねじれ量に影響を受けないでベルト部材の寄り補正が可能である。しかし、特許文献2の制御では、ベルト部材の寄り位置を基に寄り補正を行っていないため、ある一定のベルト寄り位置を目標とした目標値一定制御が難しく、ベルト部材の幅方向の位置ずれを抑える目的には不向きである。
<ステアリング機構>
図2はステアリング機構の説明図である。図1に示すように、画像形成装置1は、ステアリングローラ35の傾動量を変更することによって、中間転写ベルト31を幅方向の所定位置に位置決める。画像形成装置1は、画像形成モードでは、ステアリングローラ35を矢印E、F方向に傾動させて、中間転写ベルト31に幅方向の寄り速度を発生させてベルト寄りを補正する。
図2に示すように、ステアリングローラ35は、軸受ホルダ107によって回転自在に支持されている。軸受ホルダ107は、スライドレール106の可動側部材に固定され、スライドレール106の可動側部材の同じ面にスライダ105が固定されている。スライドレール106の固定側部材は、可動側部材の内側に配置されて、ステアリングアーム101に固定されている。したがって、スライダ105は、スライドレール106によってステアリングアーム101上をスライドする。
また、スライダ105は、ステアリングアーム101にかけられたバネ42によって矢印T方向に付勢されている。ステアリングローラ35は、テンションローラを兼ねており、中間転写ベルト31の内側から外側へ向かってバネ42によって加圧されることにより、中間転写ベルト31に一定の張力を付与する。
紙面奥側のステアリングアーム(不図示)はユニット側面に固定して揺動不能とされる一方、紙面手前側のステアリングアーム101は、揺動軸104を中心にして揺動可能に軸支されている。ステアリングアーム101上には、揺動軸104に対してステアリングローラ35とは反対側の揺動端に、フォロワー102が軸支されている。また、フォロワー102に当接するように、カム103が設けられ、カム103は、ステアリングモータ123によって回転可能に構成されている。
ここで、カム103が矢印A方向に回動すると、ステアリングアーム101のフォロワー102側は、揺動軸104を中心にして矢印C方向に回動する。その結果、ステアリングアーム101のステアリングローラ35側が矢印E方向に回動して、ステアリングローラ35の傾動状態が変更される。そして、ステアリングローラ35の傾動状態が矢印E方向に変移すると、中間転写ベルト31は紙面奧側に移動する。
これとは逆に、カム103が矢印B方向に回動すると、ステアリングアーム101のフォロワー102側は、揺動軸104を中心にして矢印D方向に回動する。その結果、ステアリングアーム101のステアリングローラ35側が矢印F方向に回動して、ステアリングローラ35の傾動状態が変更される。そして、ステアリングローラ35の傾動状態が矢印F方向に変移すると、中間転写ベルト31は紙面手前側に移動する。
なお、ここでは、ステアリングローラ35がバネ42によって外側へ付勢され、中間転写ベルト31に一定のテンションを付与しているが、ステアリング機能とテンション付与機能とは分離させて、別構成としてもかまわない。
また、紙面奥側のステアリングアームを固定とせず、紙面奥側にも紙面手前側と同様の機構を用いて前奥共に揺動可能な構成としてもよい。その場合、紙面手前側と奥側とでステアリングアームの揺動方向を逆にし、なおかつ揺動量の絶対値を一致させれば、ステアリングローラ35の長手方向の中央を揺動中心として、揺動させることが可能である。
ところで、傾動されたステアリングローラにベルト部材が螺旋状に巻き付くと、ベルト部材の巻き付き始まり位置と巻き付き終わり位置とがステアリングローラの長手方向にずれてしまう(図14の(b)参照)。このため、ステアリングローラの近傍にエッジセンサを配置する場合、ベルト部材の巻き付き始まり側でベルトエッジを検出した場合とベルト部材の巻き付き終わり側でベルトエッジを検出した場合とでベルトエッジの位置検出誤差が発生する(図8参照)。
また、ベルトエッジの検出位置をもってベルト部材の寄り量としてしまうと、ステアリングローラの傾動量に応じたベルト部材の幅方向の移動量が重畳されて誤差となり、寄り制御の安定性に悪影響を及ぼす(図9の従来技術の欄参照)。
ここで、ベルト部材の撓みが生じにくいステアリングローラの固定端側にエッジセンサを配置すれば、ステアリングローラの傾動時に生じるベルト部材の幅方向の移動量は少し小さくなる。しかし、ステアリングローラの固定端とベルトエッジまでには間隔がある場合がほとんどであり、固定端側であったとしてもベルト部材のねじれの影響は依然残っている。
そこで、第1のステアリング制御に際して、以下の第1のセンサ配置〜第3のセンサ配置を採用することで、ステアリングローラの傾動時に生じるベルト部材のねじれの影響を排除している。
<第1のセンサ配置>
図3は中間転写ベルトのステアリング制御系の説明図である。図4はエッジセンサの構成の説明図である。図5は中間転写ベルトの幅方向の位置とエッジセンサの出力の関係の説明図である。図6はステアリングローラの傾動量と中間転写ベルトの寄り速度との関係の説明図である。図7はベルト寄り量演算部における演算のフローチャートである。図8は2台のエッジセンサの出力の説明図である。図9はエッジセンサを2台配置する効果の説明図である。
図3中、(a)はエッジセンサの配置の説明図、(b)は第1のステアリング制御のブロック図である。図3の(a)に示すように、検出手段の一例であるエッジセンサ38Aは、一次転写面の下流側を張架する張架ローラ32とステアリングローラ35の間に配置されて、ステアリングローラ35の上流側におけるベルト寄り量を検出する。そして、別の検出手段の一例であるエッジセンサ38Bは、ステアリングローラ35と対向ローラ(36:図1)の間に配置されて、ステアリングローラ35の下流側におけるベルト寄り量を検出する。
エッジセンサ38Aは、中間転写ベルト31がステアリングローラ35に巻き付き始める位置から距離L1を隔てて配置され、エッジセンサ38Bは、中間転写ベルト31がステアリングローラ35から巻き付き終わる位置から距離L2を隔てて配置される。エッジセンサ38A、38Bは、図2の紙面奥側、すなわちステアリングアームの固定側に設置している。
図3の(b)に示すように、エッジセンサ38A、38Bは、ベルト寄り量演算部121に接続され、ベルト寄り量演算部121は、ベルト寄り制御コントローラ122に接続されている。寄り量演算手段の一例であるベルト寄り量演算部121は、エッジセンサ38Aによって検出されるベルトエッジ位置から、ステアリングローラ35の傾動量に応じた中間転写ベルト31の幅方向の移動量が除かれた正味のベルト寄り量を求める。第1の制御手段の一例であるベルト寄り制御コントローラ122は、ベルト寄り量演算部121が演算した正味のベルト寄り量に対してPID演算処理を行ってステアリングローラ35に設定すべき傾動量を演算する。
図4に示すように、エッジセンサ38Aとエッジセンサ38Bは同一に構成されている。エッジセンサ38Aは、中間転写ベルト31の幅方向の端部に当接して中間転写ベルト31の幅方向の輪郭位置を測定する。中間転写ベルト31の幅方向の端部には、スプリング154の引っ張り力をもって反時計回りに付勢されたセンサアーム151の一端側が当接状態に保持される。スプリング154によるセンサアーム151の当接力は、中間転写ベルト31を座屈変形させない程度の適度な大きさに設定されている。
センサアーム151は、中間部を支軸152によって回動自在に支持され、支軸152を境にしたセンサアーム151の他端側に、光学式の変位センサ153が対向状態で配設されている。このため、蛇行時の中間転写ベルト31の矢印y方向の移動がセンサアーム151の回転変位に置き換えられ、センサアーム151の変位量に対応して、中間転写ベルト31の幅方向の位置が連続的に測定される。中間転写ベルト31が幅方向に蛇行すると、センサアーム151が揺動し、変位センサ153によって測定される距離Dが変動して、変位センサ153の出力レベルが変動する。
図5に示すように、変位センサ153は、距離Dに応じて所定の電圧を出力する。いま、中間転写ベルト31のエッジ位置が基準位置X0から手前側へ移動してX1へ動いたとする。このとき、センサアーム151と変位センサ153との距離Dが変動し、エッジセンサ38Aの出力は、電圧V0から電圧V1に変化する。
図3の(b)に示すように、ベルト寄り量演算部121は、図5の直線の傾きを事前に取得しておくことによって、エッジセンサ38Aから出力された電圧値を中間転写ベルト31のエッジ位置に換算可能である。
図6に示すように、一般的に、ステアリングローラ35の傾動量と中間転写ベルト31の定常寄り速度との間には略比例関係が存在する。ステアリングローラ35に傾動量を与えると、傾動量に応じた寄り速度が中間転写ベルト31に生じる物理現象を応用して、中間転写ベルト31の寄り量を補正している。
図3の(b)に示すように、ベルト寄り制御コントローラ122は、ベルト寄り量演算部121で演算されたベルト寄り量を入力とし、その入力から比例微積分(PID)動作に基づいて、ステアリングモータ123の駆動パルス数P1を決定する。
駆動パルス数P1は、ステアリングモータ123に送られ、ステアリングモータ123が駆動パルス数P1だけ回転する。図2に示すように、ステアリングモータ123の出力軸先端部に設けられたカム103が回動して、ステアリングローラ35の紙面手前側が上昇又は下降し、ステアリングローラ35に所望の傾動量が設定される。ステアリングローラ35に傾動量が設定されると、図6に示す関係によって、中間転写ベルト31にステアリングローラ35に沿った一方向の寄り速度が生じ、中間転写ベルト31が幅方向に移動する。このようなプロセスを実施することによって、中間転写ベルト31は、ベルト寄り制御コントローラ122に設定された目標位置を保ったまま回転し続ける。
図3を参照して図7に示すように、ベルト寄り量演算部121は、2つのエッジセンサ38A、38Bからそれぞれ一定の時間間隔で電圧値V1、V2を取得する(S1、S2)。そして、エッジセンサ38A、38Bからステアリングローラ35までの距離L1、L2と、取得した電圧値V1、V2とから、ステアリングローラ35の傾動に伴う誤差(ベルトねじれ量)を除いたベルト寄り量PSKEWを以下の式で求める(S3)。
PSKEW=(L1*PEDGE1+L2*PEDGE2)/(L1+L2)・・(1)
ここに、PEDGE1、PEDGE2は、それぞれエッジセンサ38A、38Bから得られたベルトエッジ位置であり、図5の直線の傾きCVMを用いて、電圧値V1、V2から以下の式で換算できる。
PEDGE1=V1*CVM・・(2)
PEDGE2=V2*CVM・・(3)
ここで、(1)式の導出の根拠について説明する。いま、PSKEWはベルト寄り量、PTORTION1、PTORTION2はエッジセンサ38A、38Bの位置において観測されるベルトねじれ量であるとする。ベルトねじれ量とは、ステアリングローラの傾動に伴って中間転写ベルト31のステアリングローラ35に対する巻き付き始まり位置と巻き付き終わり位置との軸方向の距離である。ベルトねじれ量は、ステアリングローラ35の傾動量に応じた中間転写ベルト31の幅方向の移動量に対応している。このとき、エッジセンサ38A、38Bから取得されるベルトエッジ位置PEDGE1、PEDGE2は、以下の式で表される。
PEDGE1=PSKEW+PTORTION1・・(4)
PEDGE2=PSKEW−PTORTION2・・(5)
ここで、ベルト寄り量PSKEWは、中間転写ベルト31が寄り方向に平行移動した量であるから、エッジセンサ38A、38Bにおいて同一の値が測定される。一方、ベルトねじれ量PTORTIONは、エッジセンサ38A、38Bの設置位置がステアリングローラ35に近いほど大きくなり、ステアリングローラ35の上流と下流とでは符号(方向)が正負逆転する。
すなわち、エッジセンサ38A(38B)を用いて測定されるベルトねじれ量PTORTION1(2)の大きさは、ステアリングローラ35からエッジセンサ38A(38B)までの距離D1(D2)の逆数に比例する。したがって、PTORTION1とPTORTION2との間には以下の関係式が成り立つ。
PTORTION1:PTORTION2=1/L1:1/L2・・(6)
(6)式をPTORTION1について整理すると、以下の式になる。
PTORTION1=L2/L1*PTORTION2・・(7)
(7)式を(4)式に代入し、さらに(5)式と連立させてPTORTION2を消去すると以下の式になる。
L1*PEDGE1+L2*PEDGE2=(L1+L2)*PSKEW・・(8)
(8)式をPSKEWについて整理すると、(1)式を得ることができる。
PSKEW=(L1*PEDGE1+L2*PEDGE2)/(L1+L2)・・(1)
なお、エッジセンサ38A、38Bがステアリングローラ35から等距離に配置されている場合、L1=L2・・(9)となって、(1)式は以下の式に簡略化される。
PSKEW=(PEDGE1+ PEDGE2)/2・・(10)
つまり、エッジセンサ38A、38Bから得られたそれぞれのベルトエッジ位置を平均処理すればよい。
図3の(a)に示すように、(9)式が成立する2箇所の位置にエッジセンサ38A、38Bを配置して、それぞれからベルトエッジ位置を取得して、(10)式の演算によってベルトねじれ量の影響を低減したベルト寄り量を演算した。
図8に示すように、時刻TPでステアリングローラ35をステップ状に揺動させた場合、平均化処理によって、エッジセンサ38A、38Bの出力に共通に現れるベルトねじれ量の影響は低減される。エッジセンサ38A、38Bからそれぞれ取得したベルトエッジ位置には、ベルトねじれ量による位置ずれが正負対称のステップ状に重畳されていることがわかる。一方で、(10)式の演算によるベルト寄り量には、ベルトねじれによる位置ずれはほぼみられなくなっていることがわかる。
図9は、エッジセンサ38A一箇所での測定値を用いてベルト寄り制御を実施した場合と、図3の(a)に示すように、エッジセンサ38A、38Bの出力の平均値を用いてベルト寄り制御をした場合とを比較した結果である。
図9に示すように、PIDコントローラのゲインを上げていくと、エッジセンサ38A一箇所の場合は、ゲインを15としたときに制御が発散してしまう。しかし、エッジセンサ38A、38Bの出力の平均値を用いた場合は、発散せずに安定して制御が実施できていることがわかる。ここで、ゲインは、入力をステアリング量(単位:mm)、出力をベルト寄り量(単位:mm)とした時の値である。積分ならびに微分項は両比較で同一の値としている。
第1の制御手段の一例である第1のステアリング制御では、ステアリングローラ35の傾動によるベルトねじれの影響を低減したベルト寄り量を検出して、その状態量を用いてベルト寄り制御を行う。これにより、ベルトねじれの影響を無視して、エッジセンサ38Aのみでベルト寄り量を検出する場合よりも発散しにくく安定的にベルト位置ずれを補正することができる。
なお、中間転写ベルト31の幅方向の位置を測定するセンサは、エッジ接触式のセンサでも、ベルト面に描かれたマークや直線をベルト上方より読み取る非接触式のセンサでもかまわない。
また、ベルトねじれ量の影響を低減したベルト寄り量を精度よく求めるためには、ベルトエッジが精度良くベルト搬送方向に対して平行に切り揃えられていることが望ましい。しかし、実際にはベルトエッジの加工誤差(以下、ベルトエッジプロファイルと呼称)がある。このため、演算精度への影響を極力小さくするためには、ベルトエッジプロファイルを予め測定しておき、エッジセンサ38A、38Bの出力に対してベルトエッジプロファイル補正を実施することが望ましい。
<第2のセンサ配置>
図10は第2のセンサ配置の説明図である。図11は第2のセンサ配置における第1のステアリング制御のフローチャートである。
図1に示す画像形成装置1において、図3に示すエッジセンサ38A、38Bの配置を図10のように変更して、図11に示すように(1)式の演算式を変更して、第1のステアリング制御を行わせた。それ以外は、上記の第1のステアリング制御で説明したとおりであるため、共通する構成には共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図10の(a)に示すように、エッジセンサ38A、38Bをステアリングローラ35と張架ローラ32の間に配置して、その検知量からベルトねじれ量の影響を低減したベルト寄り量を演算する。エッジセンサ38A、38Bは、紙面奥側にステアリングローラ35から上流側へそれぞれ距離L1、L2の距離を離して設置している。
エッジセンサ38A、38Bは、ベルト寄り量演算部121に接続され、図10の(b)に示すように、ベルト寄り量演算部121には、ベルト寄り制御コントローラ122が接続されている。
図10を参照して図11に示すように、ベルト寄り量演算部121は、ベルトのねじれ影響の低減演算を実行する。ベルト寄り量演算部121は、エッジセンサ38A、38Bからそれぞれ一定の時間間隔で電圧値V1、V2を取得する(S11、S12)。次に、エッジセンサ38A、38Bからステアリングローラ35までの距離(図11のL1、L2)と、取得した電圧値から、ベルトねじれを低減したベルト寄り量PSKEWを以下の式で求める(S13)。
PSKEW=(L1*PEDGE1−L2*PEDGE2)/(L1−L2)・・(11)
ここに、PEDGE1、PEDGE2は、それぞれエッジセンサ38A、38Bから得られたベルトエッジ位置であり、図5の直線の傾きCVMを用いて、電圧値V1、V2から以下の式で換算できる。
PEDGE1=V1*CVM・・(2)
PEDGE2=V2*CVM・・(3)
ここで、(11)式の導出の根拠について説明する。いま、エッジセンサ38A、38Bから取得されるベルトエッジ位置PEDGE1、PEDGE2が以下の式で表されると仮定する。
PEDGE1=PSKEW+PTORTION1・・(12)
PEDGE2=PSKEW+PTORTION2・・(13)
ただし、PSKEWはベルト寄り量、PTORTION1、PTORTION2はエッジセンサ38A、38Bの位置において観測されるベルトねじれ量である。ベルト寄り量PSKEWは、ベルトが寄り方向に平行移動した量であるから、エッジセンサ38A、38Bにて略同一の値が測定される。一方で、ベルトねじれ量PTORTIONはステアリングローラ35に近いほど大きくなる。
また、ステアリングローラの上流側にエッジセンサ38A、38Bを配置しているため、ベルトねじれ量の方向はエッジセンサ38A、38Bの位置においては同一となる。ここで、測定されるベルトねじれ量PTORTIONの大きさが、ステアリングローラ35からエッジセンサ38A、38Bまでの距離の逆数に比例すると仮定すると、PTORTION1とPTORTION2との間には以下の関係式が成り立つ。
PTORTION1:PTORTION2=1/L1:1/L2・・(14)
(14)式をPTORTION1について整理すると、
PTORTION1=L2/L1*PTORTION2・・(15)
(15)式を(12)式に代入し、さらに(13)式と連立させてPTORTION2を消去すると以下の式になる。
L1*PEDGE1−L2*PEDGE2=(L1−L2)*PSKEW・・(16)
(16)式をPSKEWについて整理すると、(11)式を得ることができる。
<第3のセンサ配置>
図12は第3のセンサ配置の説明図である。図13は第3のセンサ配置における第1のステアリング制御のフローチャートである。図14は第1のステアリング制御の別の例のフローチャートである。図12中、(a)はセンサ配置、(b)は制御系のブロック図である。図13は、中間転写ベルト31の寄りを補正する際の、ベルトエッジ位置検知からステアリングローラの補正動作までの流れを示している。
図1に示す画像形成装置1において、図3に示すセンサ配置を図12のように変更して、図13に示すように、第1のステアリング制御を行わせた。それ以外は、上記の第1のセンサ配置、第3のセンサ配置で説明したとおりであるため、図12中、図3と共通する構成には共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図12の(a)に示すように、1個のエッジセンサ38をステアリングローラ35と張架ローラ32の間に配置して、その検知量からベルトねじれの影響を低減したベルト寄り量が演算される。エッジセンサ38は、紙面奥側、すなわちステアリングアームの固定側に設置している。エッジセンサ38はベルト寄り量演算部121に接続され、ベルト寄り量演算部121は、ベルトねじれ量記憶部125とベルト寄り制御コントローラ122に接続されている。
図12の(b)に示すように、エッジセンサ38から、ベルトエッジ位置に対応した電圧値Vが所定の時間間隔ごとに出力される。ベルト寄り量演算部121は、エッジセンサ38からの電圧値Vと、ベルトねじれ量記憶部125から取得したベルトねじれ量プロファイルとをもとに、ベルトのねじれの影響を低減したベルト寄り量を演算する。
ベルト寄り制御コントローラ122は、ベルト寄り量演算部121にて演算されたベルト寄り量を入力とし、その入力から比例微積分(PID)動作に基づいてステアリングモータ123の駆動パルス数P1を決定する。駆動パルス信号P1は、ステアリングモータ123に送られ、ステアリングモータ123はパルス数P1だけ回転する。これに伴い、図2に示すように、ステアリングモータ123の出力軸先端部に設けられたカム103も回動し、ステアリングローラ35の傾動量は変移する。
その結果、図6に示すステアリングローラ35の傾動量(ミスアライメント量)と中間転写ベルト31の平均寄り速度との略比例関係によって、中間転写ベルト31の一方向に寄り速度が生じ、中間転写ベルト31はベルト幅方向に移動する。このプロセスを一定時間間隔において繰り返し実施することによって、中間転写ベルト31は、ベルト寄り制御コントローラ122に設定された目標位置を保ったまま搬送される。
図12を参照して図13に示すように、ベルト寄り量演算部121におけるベルトのねじれ影響の低減演算が実行される。ベルト寄り量演算部121は、エッジセンサ38からそれぞれ一定の時間間隔で電圧値Vを取得する(S21)。
ベルト寄り量演算部121は、ステアリングローラ35の傾動量(カム103の回転位置)ごとに予め設定された補正データを用いて中間転写ベルト31の正味の寄り量を求める。最初に、ベルト寄り量演算部121は、ベルト寄り制御コントローラ122から、ステアリングカムへの指令位置θを取得する(S22)。ベルトねじれ量記憶部125には、事前に、ステアリングカム位置θRとその位置に対応するベルトねじれ量プロファイルTが関連付けられて複数組が記憶されている。
ベルト寄り量演算部121は、取得したθに最も近いθRを選択し、そのθRに対応するベルトねじれ量プロファイルTを取得する(S23)。最後に、電圧値Vとベルトねじれ量プロファイルTから、ベルトねじれを低減したベルト寄り量PSKEWを以下の式で求める(S24)。これにより、ステアリングローラ35の傾動量に応じた中間転写ベルト31の幅方向の移動量を相殺する。
PSKEW=PEDGE−T・・(17)
なお、第3のセンサ配置では、ベルトねじれを低減したベルト寄り量PSKEWを以下の式で求めてもよい。
PSKEW=PEDGE−T*θ/θR・・(18)
ここで、(18)式の導出の根拠を説明する。ベルトのねじれ量は、ステアリングローラの傾斜角が微小の場合、ステアリングローラ35の傾斜角と略比例関係にある。
また、一方で、ステアリングローラ35のカム103の回転角度と、ステアリングローラ35の傾斜角とは略比例関係になるように設計されている。よって、カム103の回転角度とベルトねじれ量とは略比例関係となる。
したがって、ベルト寄り制御コントローラ122から取得した指令カム位置θと、ベルトねじれ量記憶部に記憶されているθRとの比をとり、その結果をθRに対応するベルトねじれ量プロファイルTに掛け合わせる。これにより、指令カム位置θに対応するベルトねじれ量プロファイルを算出することができる。
<ベルト部材の蛇行振幅>
図14はベルト部材の蛇行振幅の説明図である。図14の(a)に示すように、中間転写ベルト31とステアリングローラ35の位置関係が設定されて、ステアリングローラ35による第1のステアリング制御(ベルト寄り制御)が実行されているとする。また、並行して、図14の(b)に示すように、第2のステアリング制御が実行され、ステアリングローラ35の回転周期でステアリングローラ35が振られたとする。このとき、図14の(c)に示すように、ステアリングローラ35を保持するローラ保持部材51のガタやにテアリングローラ35そのものの撓みにより、ステアリングローラ35のズレが発生する。
そこで、以下の実施例では、ステアリングローラの周期外乱を相殺するようにステアリングローラを揺動させて周期外乱の影響を軽減させる蛇行補正を行っている。そして、周期外乱の残差をさらに削減するために、ステアリングローラの傾動によるベルトねじれ量の影響を低減したベルト寄り量を検出している。ベルトねじれ量の影響を低減した状態量を用いてベルト部材の蛇行補正を行うことにより、振幅を極力抑えて、安定的にベルト部材の位置ずれを補正することができるからである。
同時に、ステアリング制御時に発生するステアリング保持部材のガタやステアリングローラの撓み等の影響を受けずにローラに起因する定常的に発生する蛇行を補正することができる。
<実施例1>
図15は実施例1におけるステアリング制御の説明図である。図16はフィルタ回路のゲイン特性を示すボード線図である。図17はエッジセンサ出力の説明図である。図18は比較例のステアリング制御の説明図である。図19はエッジセンサ出力の周波数解析結果の説明図である。図20はステアリングローラのガタつきの説明図である。図21は実施例1のステアリング制御のフローチャートである。
図15の(a)に示すように、実施例1では、図3を参照して説明した第1のセンサ配置を用いて、第1のステアリング制御と並行して、第2のステアリング制御を実行する。
第1のセンサ配置では、第1の検知部材の一例であるエッジセンサ38Aは、中間転写ベルト31が回転方向の一端側をステアリングローラ35に支持された位置で、中間転写ベルト31の幅方向の位置を検出する。第2の検知部材の一例であるエッジセンサ38Bは、ステアリングローラ35を起点としたエッジセンサ38Aとは異なる位置で中間転写ベルト31の幅方向の位置を検出する。そして、エッジセンサ38Aは、中間転写ベルト31の回転方向におけるステアリングローラ35の上流側に配置され、エッジセンサ38Bは、ステアリングローラ35の下流側に配置される。エッジセンサ38A、38Bからは、それぞれベルトエッジ位置に対応した電圧値V1、V2が所定の時間間隔ごとに出力される。
第1の設定部の一例である第1のステアリング制御では、上述したように、ステアリング制御時に発生するベルトねじれ量の影響を除いてベルト寄り量を求めて、ベルト寄り量に応じた制御量でステアリングローラの傾動量を制御する。
図15の(b)に示すように、第1の設定部の一例であるベルト寄り制御コントローラ63は、中間転写ベルト31に発生した幅方向の寄り移動を停止させるように、エッジセンサ38A、38Bの出力に基づいてステアリングローラ35を傾動させる。ベルト寄り量演算手段の一例であるベルト寄り量演算部61は、エッジセンサ38A、38Bによって検出される中間転写ベルト31の幅方向の位置から、ステアリングローラ35の傾動量に応じた幅方向の移動量を除いてベルト寄り量を求める。
ベルト寄り制御コントローラ63は、中間転写ベルト31に発生した寄り速度を幅方向の所定位置で収束させるように、エッジセンサ38A、38Bの出力に基づいてステアリングローラ35の傾動状態を制御する。ベルト寄り制御コントローラ63は、ベルト寄り量演算部61が求めたベルト寄り量に対して、PID演算処理を行うことにより、ステアリングローラ35の傾動量を求める。
言い換えれば、ベルト寄り量演算部61は、第1のステアリング制御を行うために、エッジセンサ38A、38Bからの電圧値V1、V2をもとに、中間転写ベルト31のねじれ量の影響を除いた正味のベルト寄り量を演算する。ベルト寄り制御コントローラ63は、ベルト寄り量演算部61にて演算されたベルト寄り量を入力とし、その入力の比例成分、微分成分、積分成分にゲインを振り分けるPID演算処理を行って、ステアリングモータ123の制御量P1を決定する。
一方、第2の設定部の一例である第2のステアリング制御では、ステアリング制御時に発生するベルトねじれ量の影響を除いて中間転写ベルト31の蛇行振幅を求める。そして、ステアリングローラ35の回転周期で発生している蛇行振幅に応じた揺動振幅でステアリングローラ35を揺動させる。これにより、中間転写ベルト31に定常的に発生しているステアリング保持部材のガタやステアリングローラ35の撓み等に起因して定常的に発生している蛇行振幅が補正される。
第2の設定部の一例であるベルト蛇行量演算部62は、エッジセンサ38A、38Bによって検出される中間転写ベルト31の幅方向の位置から、ステアリングローラ35の傾動量に応じた幅方向の移動量を除いて蛇行振幅を求める。ベルト蛇行量演算部62は、エッジセンサ38A、38Bがそれぞれ検出した中間転写ベルト31の幅方向の検出位置を用いて、ステアリングローラ35の傾動量に応じた移動量を相殺する。
第2の設定部の一例であるベルト蛇行制御コントローラ64は、ステアリングローラ35の回転周期でステアリングローラ35を傾動させて、ステアリングローラ35の回転周期で中間転写ベルト31に発生する蛇行振幅を相殺する。ベルト蛇行制御コントローラ64は、ベルト蛇行量演算部62が求めた蛇行振幅の残差に対して、ステアリングローラ35の回転周波数にゲインのピークを持たせた制御量の演算処理を行う。
言い換えれば、ベルト蛇行量演算部62は、第2のステアリング制御を行うために、エッジセンサ38A、38Bからの電圧値V1、V2をもとに、中間転写ベルト31のねじれ量の影響を除いた正味の蛇行振幅を演算する。ベルト蛇行制御コントローラ64は、ステアリングローラ35の回転周期で中間転写ベルト31に発生する定常的な蛇行振幅を抽出し、その蛇行振幅に応じてステアリングモータ123の制御量P2を決定する。
ベルト蛇行制御コントローラ64は、特定の周波数選択特性を持つことで、ステアリング保持部材のガタやステアリングローラ35の撓み等の影響を受けずに、中間転写ベルト31の蛇行振幅を演算することができる。ベルト蛇行制御コントローラ64は、ベルト蛇行量演算部62にて演算されたベルト蛇行振幅を入力とし、その入力から特定周波数にゲインを要するコントローラ(ピークフィルタ)に基づいて、ステアリングモータ123の制御量P2を演算する。
ベルト寄り制御コントローラ63で演算された制御量P1とベルト蛇行制御コントローラ64で演算された制御量P2は、加算されてステアリングモータ123に送られ、ステアリングモータ65は、制御量(P1+P2)回転する。これに伴い、図2に示すように、ステアリングモータ123の出力軸先端部に設けられたカム103が回動し、ステアリングローラ35の紙面手前側のアライメントが調整される。
その結果、図6に示すようなステアリングローラ35の傾動量(ミスアライメント量)と中間転写ベルト31の平均寄り速度との略比例関係によって、中間転写ベルト31に寄り速度が生じて中間転写ベルト31が一方向に移動する。
このプロセスを一定時間間隔において繰り返し実施することによって、中間転写ベルト31はベルト寄り制御コントローラ63及びベルト蛇行制御コントローラ64に設定された目標位置を保ったまま搬送される。
ここで、ベルト寄り量演算部61及びベルト寄り制御コントローラ63は、第1のセンサ配置において説明したPID動作による寄り位置補正プロセスと同様に動作する。このため、以下では、実施例1で新たに付加した蛇行振幅の補正プロセスについて説明する。
ベルト蛇行制御コントローラ64は、図16のボード線図に示すゲイン特性を有するフィルタである。ベルト蛇行制御コントローラ64にて、サンプリング時間tsec時において、f(Hz)の周期にゲインのピークを有する時の、ゲインをKとした時のフィルタの伝達関数は(19)式で表される。
図16に示すように、ステアリングローラ35の回転周波数にゲインのピークを持たせたフィルタ演算を行うことで、ステアリングローラ35が発生させる蛇行振幅の残差を選択的に相殺する傾動量が演算される。
結果的に、エッジセンサ38Aの出力からステアリングローラ35の回転位相を検出して、回転位相に応じた傾動量を設定して、ステアリングローラ35の回転周期でステアリングローラ31を揺動させることができる。
図17は、第1のステアリング制御のみを実行した際に、エッジセンサ38Aが実測したベルトの寄り方向の位置データである。図18の(b)に示す比較例のステアリング制御系において、ベルト寄り制御コントローラ63のみを使用し、エッジセンサ38Aの入力からPID制御に基づいてステアリングモータ123を制御した際のベルト寄り位置データである。
図17の実計測したデータをフーリエ解析すると、図19の(a)に示すような強い周波数成分が現れる結果となる。ここで、ピークが立っている周波数は、寄り制御を司るステアリングローラ35の偏心成分の周期であった。
次に、図18の(b)に示すベルト寄り制御コントローラ63とベルト蛇行制御コントローラ64とを両方作動させてステアリングモータ123を制御した。この時、特定周波数にゲインを要する蛇行制御コントローラ64は、図16に示すゲインのピークの周波数が図19の(a)に示すステアリングローラ35の回転周波数に一致するように設計している。
ベルト寄り制御コントローラ63がエッジセンサ38Aの入力によりPID演算処理を行うのと並行して、蛇行制御コントローラ64が特定周波数にゲインを有するピークフィルタ動作の演算処理を行った。そして、その演算結果を用いて、ステアリングモータ123を制御しつつベルトの寄り方向の位置データをエッジセンサ38Aにより実計測して、同様に寄り方向の位置データを周波数解析したところ、図19の(b)に示す結果が得られた。
図19の(b)に示すように、特定周波数にゲインを要するコントローラにより、ステアリングローラ35の回転周波数の成分がかなり減衰しているが、蛇行振幅に残差が残っていた。蛇行振幅の残差は、図14の(b)に示すように、揺動されるステアリングローラ35の傾動に伴う中間転写ベルト31の幅方向の往復の移動量dが蛇行振幅の検出誤差として残っているためと考えられる。また、ステアリングローラ35の撓みやローラ保持部材51のガタ成分に起因しても、蛇行振幅の検出誤差が増大していると考えられる。エッジセンサ38Aのみで計測した中間転写ベルト31の寄り方向の位置データには、図14の(b)、(c)に示すガタ成分が残っていて、ステアリングローラ35の回転周期成分の除去に悪影響を与えていると考えられる。
そこで、実施例1では、図15の(a)に示すように、エッジセンサ38A、38Bを配置して、第1のステアリング制御と同様に、ステアリングローラ35の傾動に伴う中間転写ベルト31の幅方向の移動量dを相殺した。ステアリングローラ35の撓みやローラ保持部材51のガタ成分に起因する蛇行振幅の検出誤差を取り除いて、図14の(b)、(c)に示すガタ成分がステアリングローラ35の回転周期成分の除去に影響しないようにした。
ここで、ステアリングローラ35に対する中間転写ベルト31の巻き付き始まり位置からエッジセンサ38Aまでの距離をL1とし、エッジセンサ38Aが検出した中間転写ベルト31の寄り量をP1とする。そして、ステアリングローラ35に対する中間転写ベルト31の巻き付き終わり位置からエッジセンサ38Bまでの距離をL2とし、エッジセンサ38Bが検出した中間転写ベルト31の寄り量をP2とする。
このとき、ベルト寄り量演算部61は、寄り量=(L1*P1+L2*P2)/(L1+L2)の関係を用いてステアリングローラ35の傾動量に応じた移動量を除かれた正味のベルト寄り量を求める。また、ベルト蛇行量演算部62は、蛇行振幅=(L1*P1−L2*P2)/(L1+L2)の関係を用いてステアリングローラ35の傾動量に応じた移動量を除かれた正味の蛇行振幅を求める。
すなわち、ベルト寄り制御コントローラ63へは、ベルト寄り量として以下の式(20)に表せる計測値を入力する。ベルト寄り量は、実施形態1で述べた算出方法と同様である。
ベルト寄り量=(L1*P1+L2*P2)/(L1+L2)・・・(20)
一方、ベルト蛇行制御コントローラ64へは、ベルト蛇行量として以下の式(21)に表せる計測値を入力する。
ベルト蛇行量=(L1*P1−L2*P2)/(L1+L2)・・・(21)
ベルト寄り制御コントローラ63では制御量P1が算出され、ベルト蛇行制御コントローラ64では制御量P2が算出され、制御量P1と制御量P2とを加算した値がステアリングモータ123に送られて、ステアリングモータ123を作動させる。
図20の(a)に示すように、エッジセンサA(38A)、エッジセンサB(38B)で計測されるベルト寄り位置には、ガタ成分と、ステアリングモータ123の上流側と下流側に配置されているため位相が180°反転する蛇行成分とが含まれている。このため、実施例1では、前述の式(21)から算出されるガタ成分を除いたベルト蛇行量のみを抽出することができる。
このように、ベルト寄り制御コントローラ63には、式(20)で表されるベルト寄り量から制御量P1を算出し、ベルト蛇行制御コントローラ64には、式(21)で表されるベルト蛇行量から制御量P2を算出し、ステアリングモータ123を制御する。
以上の制御により、エッジセンサ38Aが実計測した中間転写ベルト31の寄り方向の位置データを周波数解析すると、図19の(c)に示すように、ステアリングモータ65の偏心による蛇行を無くして安定したベルト走行が可能となる。
以上の一連の計測制御をフローチャ−トで表したものが図21である。図15を参照して図21に示すように、エッジセンサAは、中間転写ベルト31のエッジ位置を計測し(S41)、エッジセンサBは、中間転写ベルト31のエッジ位置を計測する(S42)。
次に、ベルト寄り量演算部61は、エッジセンサA及びエッジセンサBで計測された中間転写ベルト31のエッジ位置から、式(20)を用いて、ベルト寄り量を算出する(S43)。また、ベルト蛇行量演算部62は、エッジセンサA及びエッジセンサBで計測された中間転写ベルト31のエッジ位置から、式(21)を用いて、ベルト蛇行量を算出する(S44)。
次に、ベルト寄り制御コントローラ63は、ベルト寄り量を入力されて、PID制御コントローラによりベルト寄り量に応じた制御値P1を算出する(S45)。また、ベルト蛇行制御コントローラ64は、ベルト蛇行量を入力されて、ピークフィルタ制御コントローラによりベルト蛇行量(残差)に応じた制御値P2を算出する(S46)。
最後に制御値P1と制御値P2を加算してステアリングモータ123が駆動される(S47)。以上の一連のフローを制御期間中は繰り返し実行する。
<実施例2>
図22は実施例2におけるステアリング制御の説明図である。図23は実施例2のステアリング制御のフローチャートである。
実施例2では、上述した第3のセンサ配置における第1のステアリング制御と同様に、1つのエッジセンサを用いて第2のステアリング制御も併せて実行する。1つのエッジセンサを用いてベルト寄り位置の計測、ベルト寄り制御、及びステアリングローラの回転周期の蛇行振幅の除去を実行する。そして、ステアリング制御時に発生するステアリング保持部材のガタやステアリングローラの撓み等の影響を受けずに、ステアリングローラに起因して定常的に発生する誤差を排除して、ベルト寄り制御と蛇行振幅の補正制御を実行する。
図22の(b)に示すように、中間転写ベルト31の寄りを補正する際のベルトエッジ位置検出からステアリングローラの補正動作までの流れが示される。エッジセンサ38は、ベルトエッジ位置に対応した電圧値Vを所定の時間間隔ごとに出力する。
ベルト蛇行量演算部62は、ステアリングローラ35の傾動量に応じた中間転写ベルト31の移動量を相殺するためにステアリングローラ35の傾動量ごとに予め設定された補正データを用いて中間転写ベルト31の蛇行振幅を求める。
ベルト寄り量演算部61は、エッジセンサ38からの電圧値Vと、ベルトねじれ量記憶部67から取得したベルトねじれ量プロファイルとをもとに、中間転写ベルト31のねじれの影響を低減したベルト寄り量を演算する。図14の(b)に示すステアリングローラ35の傾動に伴うエッジ位置検出誤差を除いた中間転写ベルト31の正味の寄り位置を演算する。ベルト寄り制御コントローラ63は、ベルト寄り量演算部61にて演算された正味のベルト寄り量を入力とし、その入力からPID制御コントローラによりステアリングモータ123の駆動パルス数P1を決定する。
ベルト蛇行量演算部62は、エッジセンサ38からの電圧値Vと、ベルトガタ量記憶部69から取得したベルトガタ量プロファイルとをもとに、中間転写ベルト31のガタの影響を低減した蛇行振幅を演算する。図14の(b)に示すステアリングローラ35の傾動に伴うエッジ位置検出誤差を除いた中間転写ベルト31の正味の蛇行振幅の残差を演算する。ベルト蛇行制御コントローラ64は、ベルト蛇行量演算部62にて演算された正味の蛇行振幅の残差から特定周波数にゲインを要するコントローラ(ピークフィルタ等)に基づいてステアリングモータ123の制御量P2を決定する。
ベルト寄り制御コントローラ63で演算された制御量P1とベルト蛇行制御コントローラ64で演算された制御量P2は加算されてステアリングモータ123に送られ、ステアリングモータ123は、制御量P1+P2だけ回転する。これに伴い、図2に示すように、ステアリングモータ123の出力軸先端部に設けられたカム103が回動し、ステアリングローラ35の紙面手前側のアライメントが修正される。
その結果、図6に示すステアリングローラ35の傾動量(ミスアライメント量)と中間転写ベルト31の平均寄り速度との略比例関係によって中間転写ベルト31の一方向に寄り速度が生じて中間転写ベルト31は幅方向に移動する。
このプロセスを一定時間間隔において繰り返し実施する。これによって、中間転写ベルト31は、ベルト寄り制御コントローラ63及びベルト蛇行制御コントローラ64に設定された目標位置を保ったまま、ステアリングローラ35の偏心による蛇行を無くして安定したベルト走行を実現する。
図22を参照して図23に示すように、エッジセンサ38は、中間転写ベルト31のエッジ位置Pを計測する(S51)。
ベルト寄り量演算部61は、ベルト寄り制御コントローラ63からステアリング位置Sを取得し(S52)、ベルトねじれ量記憶部67からステアリング位置Sに対応するベルトねじれ量プロファイルTを取得する(S53)。そして、次式(22)によりベルト寄り量を演算する。
ベルト寄り量=S−T・・・(22)
ベルト蛇行量演算部62は、ベルト寄り制御コントローラ63からステアリング位置Sを取得し(S52)、ベルトガタ量記憶部69からステアリング位置Sに対応するベルトガタ量プロファイルGを取得する(S54)。そして、次式(23)によりベルト蛇行量(正味の蛇行振幅)を演算する。
ベルト蛇行量=ベルト寄り量−G・・・(23)
ベルト寄り制御コントローラ63は、ベルトエッジ位置Pとベルトねじれ量プロファイルTとに基づくベルト寄り量を入力されて制御値P1を算出する(S55)。また、ベルト蛇行制御コントローラ64は、ベルトエッジ位置Pとベルトガタ量プロファイルGとに基づくベルト蛇行量を入力されて制御値P2を算出する(S56)。そして、制御値P1と制御値P2とを加算した制御量でステアリングモータ123が駆動される(S57)。以上の一連のフローが制御期間中に繰り返し実行される。
なお、補正データは、ステアリングローラ35の回転位相ごとに予め準備して補正に用いてもよい。ベルト蛇行量演算部62は、ステアリングローラ35の所定の回転位相で発生する中間転写ベルト31の幅方向の移動量を相殺するためにステアリングローラ35の回転位相ごとに予め設定された補正データを用いて中間転写ベルト31の蛇行振幅を求める。
また、ステアリングローラに起因して発生するベルト部材の幅方向の周期的な蛇行やガタつきに対してステアリングローラの揺動の位相を同期させる方法は、実施例1、2で説明した図16のピークフィルタには限られない。ステアリングローラに回転位相を検出するためのエンコーダを取り付け、検出されたステアリングローラの回転位相に応じて揺動振幅を変化させる制御としてもよい。