JP5565020B2 - ポリエステルフィルム、およびそれを用いた太陽電池 - Google Patents
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Description
1.ジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分およびカルボン酸基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)を有するポリエステルを用いたポリエステル層(P層)を有するポリエステルフィルムであって、P層における該構成成分(p)の含有量が、P層中の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%以下であり、かつP層の面配向係数が0.15以上、かつカルボキシル基末端基数が20等量/t以下、かつフィルム面内の最も屈折率の高い方向の屈折率nmaxとその方向に対しフィルム面に平行で90°方向の屈折率nminの差Δnが0以上0.025以下、かつ温度125℃、湿度100%Rhの条件下72時間放置後の最大屈折率方向と最小屈折率方向についての伸度保持率が40%以上であるポリエステルフィルム。
2.前記構成成分(p)のカルボン酸基数(a)が3以上および/または水酸基数(b)が3以上である1記載のポリエステルフィルム。
3.前記構成成分(p)のカルボン酸基数(a)が3以上であり、かつ芳香環を有する1または2に記載のポリエステルフィルム。
4.前記構成成分(p)の水酸基数(b)が3以上であり、かつ脂肪族系である1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
5.前記P層の固有粘度(IV)が0.65以上である1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
6.前記P層が、緩衝剤をP層全体に対して0.1モル/t以上5.0モル/t含有する1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
7.P層のポリエステル中のアルカリ金属元素含有量W1が2.5ppm以上125ppm以下であり、かつアルカリ金属元素含有量W1とリン元素含有量W2の比W1/W2が0.01以上1以下である1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
8.太陽電池バックシート用である1〜7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
9.少なくとも一方の表面の表面比抵抗R0が106Ω/□以上1014Ω/□以下である1〜8のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
10.1〜9のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた太陽電池。
11.1〜9のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法であって、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を重縮合してなるポリエステルが、カルボン酸基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である成分(p)を共重合してなるポリエステルであり、かつ該共重合量が、ポリエステルの全重合成分に対して0.005モル%以上2.5モル%であり、該ポリエステルを用いたポリエステル層(P層)を有するポリエステルシートを二軸延伸した後、下記式(1)を満たす温度範囲で熱処理を施すポリエステルフィルムの製造方法。
40℃≦Tm−Th≦90℃ (1)
Tm:ポリエステルの融点(℃)
Th:熱処理温度(℃)
をその骨子とするものである。
12.面積延伸倍率14倍以上、フィルム長手方向の延伸倍率E(MD)と幅方向の延伸倍率E(TD)の比E(MD)/(TD)が
1)同時二軸延伸の場合は0.7以上1.5以下
2)逐次二軸延伸の場合は0.95以下
である請求項11に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
一般的なポリエステルフィルムは結晶性ポリエステルから構成され、フィルム中にはポリエステルの結晶部と非晶部が存在する。また、かかる結晶性ポリエステルを二軸延伸して得られるポリエステルフィルム中には、配向によりポリエステルが結晶化した部分(以下、配向結晶化部とする)と非晶部が存在する。ここで、非晶部は、結晶部、配向結晶部に比べて密度が低く、平均の分子間距離が大きい状態にあると考えられる。ポリエステルフィルムが湿熱雰囲気下に曝された場合、水分(水蒸気)は密度の低いこの非晶部の分子間を通って内部に進入し、非晶部を可塑化させ分子の運動性を高める。また、ポリエステルのカルボキシル基末端のプロトンを反応触媒として、分子運動性の高まった非晶部を加水分解する。加水分解され、低分子量化したポリエステルは、分子運動性が更に高まり、結晶化が進行する。これが繰り返される結果、フィルムの脆化が進行し、最終的には僅かな衝撃でも破断に至る状態となる。
本発明では、ジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分およびカルボン酸基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)を有するポリエステルを用いたポリエステル層(P層)を有するポリエステルフィルムであって、該構成成分(p)の含有量が、P層中の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%とすることによって、P層中の特に非晶部に架橋構造を形成させ、絡み合いを強くさせることが出来る。それにより、非晶部への水分の進入を抑制させることができる。また、水が分子間に進入した場合においても、非晶部の可塑化の抑制と、カルボキシル基末端の運動抑制により、加水分解反応確率を低減させることが出来る。また、加水分解反応後の結晶化の進行を抑制させることが出来る。また、P層の面配向係数を0.15以上とすることで、分子の運動性をより抑えることが可能となり、また、カルボキシル基末端基数が20等量/t以下とすることで、加水分解反応触媒となるプロトン量が低減される。
以上の効果をすべて付与することで、ポリエステルの湿熱雰囲気下での加水分解反応と、反応後の脆化の両方を抑えることができた結果、従来のポリエステルフィルムでは得られないような高い耐湿熱性を得ることが出来たというものである。
以下、本発明のポリエステルフィルムについて詳細に説明する。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)のポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるポリエステルである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが複数個連なったものなどが例としてあげられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、水酸基数(b)が3以上の構成成分(p)の例としては、三官能の芳香族構成成分としては、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシカルコン、トリヒドロキシフラボン、トリヒドロキシクマリン、三官能の脂肪族アルコール構成成分(p)として、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロパントリオール、四官能の脂肪族アルコール構成成分として、ペンタエリスリトール等の化合物、また、上述の化合物の水酸基末端にジオール類を付加させた構成成分(p)も好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、その他構成成分(p)として、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸など、一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有するオキシ酸類のうち、かつカルボン酸基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上であるものが挙げられる。また上述の構成成分のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)には、該構成成分(p)の含有量が、P層中の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%であることが必要である。より好ましくは0.020以上1以下、更好ましくは0.025以上1以下、更に好ましくは0.035以上0.5以下、更に好ましくは0.05以上0.5以下、特に好ましくは0.1以上0.25以下である。ポリエステル層(P層)の、該構成成分(p)の含有量が、P層中の全構成成分に対して0.005モル%以下であると耐湿熱性の向上効果が確認されない場合があり、また2.5モル%を越えると、樹脂がゲル化して溶融押出が困難となる等の理由で現実化困難であり、できたとしてもゲルが異物として存在し、フィルムにした場合の二軸延伸性が低下したり、延伸して得たフィルムが異物欠点を多数有する場合がある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)中の該構成成分(p)の含有量が、P層中の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%とすることで、溶融押出性を維持しながら、耐湿熱性を高めることが可能となり、また、二軸延伸時の延伸性や、得られたフィルムの品質を維持することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層中のポリエステル中の全ジカルボン酸構成成分中の芳香族ジカルボン酸構成成分の割合は、90モル%以上100モル%以下が好ましい。より好ましくは95モル%以上100モル%が好ましい。更に好ましくは98モル%以上100モル%以下、特に好ましくは99モル%以上100モル%以下、最も好ましくは100モル%、すなわちジカルボン酸構成成分全てが芳香族カルボン酸構成成分であるのがよい。90モル%に満たないと、耐湿熱性、耐熱性が低下したりする場合がある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層中のポリエステル中の全ジカルボン酸構成成分中の芳香族ジカルボン酸構成成分の割合を90モル%以上100モル%以下とすることで、耐湿熱性、耐熱性を両立することが可能となる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層中の前記構成成分(p)は、カルボン酸基数(a)が3以上でありかつカルボン酸を有する化合物が芳香族系であるか、または、水酸基数(b)が3以上でありかつ水酸基を有する化合物が脂肪族系であるのが好ましい。ポリエステル層(P層)の配向特性を落とすことなく、架橋構造を形成することが可能となり、分子運動性を更に低下させることが可能となり、耐湿熱性を更に高めることが可能となる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)を構成するポリエステルのカルボン酸末端基数は20等量/t以下であることが必要である。さらに好ましくは18等量/t以下、より好ましくは16等量/t以下であることが好ましい。20等量/tを超えると、架橋構造を形成したとしても、カルボン酸末端基のプロトンによる触媒作用が強く、加水分解が促進されてしまい劣化が進行しやすくなる。なお、カルボン酸末端基数を20等量/t以下とするには、1)ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分とのエステル化反応をさせ、溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出、ストランド化、カッティングを行い、チップ化したのち、固相重合する方法、2)緩衝剤をエステル交換反応またはエステル化反応終了後から重縮合反応初期(固有粘度が0.3未満)までの間に添加する方法、等の組み合わせ等により得ることができる。また、緩衝剤や末端封止剤を成形時に添加することによっても得ることができる。
なお、上記固有粘度とするには、溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出、ストランド化、カッティングを行い、チップ化する方法と、目標より低めの固有粘度で一旦チップ化し、その後固相重合を行う方法がある。これらのうち、熱劣化を抑えられ、かつカルボン酸末端基数を低減できるという点で、目標より低めの固有粘度で一旦チップ化し、その後固相重合を行うのが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル層(P層)には、緩衝剤を0.1モル/t以上5.0モル/t以下含有することが好ましい。本発明の緩衝剤とは、本発明のポリエステルを構成するジオール構成成分、たとえばエチレングリコールなどに可溶性であり、かつ溶解後解離してイオン性を示す物質のことである。本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層に緩衝剤を含むませることによって、初期のカルボキシル基末端数をより低減させることが出来、加水分解反応を抑制できる。また加水分解反応により新たに発生したカルボキシル基末端の、加水分解反応の触媒として作用するプロトンを中和させることにより、加水分解反応をより抑えることが出来る結果、ポリエステルフィルムの湿熱劣化をより抑制することが可能となる。
緩衝剤の具体例としては、重合反応性、耐湿熱性の点から緩衝剤がアルカリ金属塩であることが好ましく、例えば、フタル酸、クエン酸、炭酸、乳酸、酒石酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリアクリル酸などの化合物とのアルカリ金属塩を挙げることができる。中でも、アルカリ金属元素として、カリウム、ナトリウムであることが触媒残渣による析出物を生成しにくい点から好ましく、具体的には、フタル酸水素カリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。
また、下記式で示されるアルカリ金属塩であることがポリエステル樹脂の重合反応性や、溶融成形時の耐熱性の点で好ましく、さらにはアルカリ金属がナトリウム、および/またはカリウムであることが重合反応性、耐熱性、耐湿熱性の点で好ましく、特にリン酸とナトリウムおよび/またはカリウムの金属塩であることが重合反応性、耐湿熱性の点で好ましい。
POxHyMz ・・・(I)
(ここで、xは2〜4の整数、yは1または2、zは1または2であり、Mはアルカリ金属である。)
緩衝剤の含有量はP層に対して、0.1モル/t以上5.0モル/t以下であることが好ましい。更に好ましくは0.3モル/t以上3.0モル/tである。0.1モル/t未満の場合、十分な耐湿熱性が得られず、長期使用時には徐々に加水分解が進行して機械特性低下の原因となる。5.0モル/tを超えると、過剰なアルカリ金属によって分解反応が促進されるため、分子量が低下し、耐湿熱性や機械特性低下の原因となる。
緩衝剤はP層を構成するポリエステルの重合時に添加しても、溶融成形時に添加してもいずれも構わないが、緩衝剤のフィルム中への均一分散の点から、重合時に添加することが好ましい。重合時に添加する場合、添加時期は、ポリエステルの重合時のエステル化反応、またはエステル交換反応終了後から、重縮合反応初期(固有粘度が0.3未満)までの間であれば任意の時期に添加することができる。緩衝剤の添加方法としては、粉体を直接添加する、エチレングリコール等のジオール構成成分へ溶解させた溶液を調整して添加する、いずれも構わないが、エチレングリコール等のジオール構成成分へ溶解させた溶液として添加することが好ましい。その場合の溶液濃度は場合も10質量%以下に希釈して添加すると、添加口付近への緩衝剤の付着が少なく、添加量の誤差が小さくなる点、及び反応性の点で好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)を構成するポリエステルは、重合時の副生物であるジエチレングリコールの含有量が2.0質量%未満であることが耐熱性、耐湿熱性の点から好ましく、さらには1.0質量%未満であることが好ましい。
ここで、本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル(P層)を形成するポリエステルは分岐構造を有するため、分岐構造を有さない直鎖状のポリエステルに比べて規則性が低く、また溶融状態から急冷した未配向状態での分子鎖の絡み合いが強いため、分岐構造を有さない直鎖状のポリエステルに比べて配向させることが困難である。面配向係数を0.15以上とするためには1)同時二軸延伸の場合はポリエステル樹脂のガラス転移温度Tg以上Tg+15℃以下の範囲の温度、2)逐次二軸延伸の場合は、第1軸目の延伸をポリエステル樹脂のガラス転移温度Tg以上Tg+15℃以下(より好ましくはTg+10℃以下)の温度とし、第二軸目の延伸をガラス転移温度+5以上25℃以下の範囲の温度で、面積延伸倍率を12倍以上(より好ましくは13倍以上、更に好ましくは14倍以上、特に好ましくは15倍以上、最も好ましくは16倍以上)となるように延伸することによって得ることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、フィルム面内の最も屈折率の高い方向の屈折率nmaxとその方向に対しフィルム面に平行で90°方向の屈折率nminの差Δn(=nmax−nmin)は0以上0.025以下が好ましい。より好ましくは0以上0.015以下である。本発明のポリエステルフィルムにおいて、屈折率差Δnが0.025以上であると、屈折率の低い方向の配向が不十分であったり、架橋構造がフィルム面内に十分な広がりを持たずに形成されてしまったりして、耐湿熱性が低下することがあるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、フィルム面内の屈折率差Δnを0以上0.025以下とすることによって、高い耐湿熱性を得ることができる。
ここで、ポリエステル(P層)を形成するポリエステルは分岐構造を有し、分子鎖の絡み合いが強いため、直鎖状のポリエステル樹脂と比べて、配向させるのが困難であるが、一旦配向が形成されるとその構造は固定される。そのため、延伸の方法によっては、一方向に偏って配向が形成されやすく、それによって耐湿熱性の方向による依存性が大きくなる。面内に均一に延伸させて、フィルム面内の屈折率差Δnを上述の範囲とするためには、面積延伸倍率を12倍とした上で、フィルム長手方向(逐次二軸延伸の場合は第一段階目の延伸方向)の延伸倍率E(MD)と幅方向(逐次二軸延伸の場合は第二段階目の延伸方向)の延伸倍率E(TD)の比E(MD)/E(TD)を1)同時二軸延伸の場合は0.7以上1.5以下(より好ましくは0.8以上1.25以下、更に好ましくは0.9以上1.1以下、特に好ましくは0.95以上1.05以下)、2)逐次二軸延伸の場合は0.95以下(より好ましくは0.9以下、更好ましくは0.85以下)、となるように延伸することにより得ることができる。
さらには、本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層を構成するP層のTmetaPは160℃以上TmP―40℃(ただし、TmP−40℃>160℃)以下であるのが好ましい。より好ましくは170℃以上TmP―50℃(ただし、TmP−50℃>170℃)以下、更に好ましくはTmetaPが180℃以上TmP―55℃(ただし、TmP−55℃>180℃)以下である。TmetaPが160℃に満たないとフィルムの熱収縮が大きくなりすぎて、例えば、本ポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いる場合は、組み込む際の貼り合わせ工程にて、貼り合わせが困難となったり、貼り合わせができたとしても、太陽電池に組み込んで長期間使用した際に太陽電池のそりが大きく発生することがあるため好ましくない。
本発明のポリエステルフィルムは、上記P層のみからなる場合、他の層との積層構成とする場合(以下、その他の層をP2層と略すことがある)、何れも好ましく用いられる。積層構成とする場合には、上記ポリエステル層の高い耐湿熱性の効果を発揮するためには、P層の割合がポリエステルフィルム全体の40%以上とすることが好ましい。より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。ポリエステル層(P層)の割合が40%に満たないと、ポリエステル層(P層)による耐湿熱性向上効果が、発現されないことがあるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、積層構成とした場合、ポリエステル層(P層)の割合を40%以上とすることによって、従来のポリエステルフィルムと比べて高い耐湿熱性を得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)の厚みは、厚みは10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましい。更に好ましくは、25μm以上200μm以下である。厚みが10μm未満の場合、フィルムの耐湿熱性が低下しすぎる場合がある。一方、500μmより厚い場合、例えばこれを用いた太陽電池バックシートの厚みが厚くなりすぎて、その結果太陽電池全体の厚みが大きくなりすぎることがある。
また、本発明のポリエステルフィルム全体の厚みは10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましい。更に好ましくは、25μm以上200μm以下である。厚みが10μm未満の場合、フィルムの平坦性を確保することが困難となる。一方、500μmより厚い場合、例えばこれを用いた太陽電池バックシートの厚みが厚くなりすぎて、その結果太陽電池全体の、厚みが大きくなりすぎることがある。
伸度保持率(%)=E1/E0×100 (2)
なお、E1は試料を測定片の形状に切り出した後、温度125℃、湿度100%Rhの条件下72時間処理を施したものを用いて測定した値である。より好ましくは、上述の方法にて求められた伸度保持率が20%以上、更に好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上、最も好ましくは50%以上である。本発明のポリエステルフィルムにおいて、伸度保持率が20%に満たないと、例えば太陽電池バックシート用として用いた場合に、そのフィルムを含むバックシートの耐湿熱性が不十分となり、バックシートを搭載した太陽電池を長期間使用した際に劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがあるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、伸度保持率を20%以上とすることによって、例えば太陽電池バックシート用として用いる場合に、長期使用時のバックシートの耐久性を高めることができる。
第二の工程は、エステル化反応、またはエステル交換反応が実質的に終了した後から、固有粘度が0.4に達するまでの間に重合触媒や緩衝剤などの添加物を添加する工程である。好ましくは、通常ポリエステルの重縮合が完結する以前の任意の段階に置いて、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物、緩衝剤を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。重合触媒としてアンチモン化合物、および/またはゲルマニウム化合物を用いる場合は、そのアンチモン元素、ゲルマニウム元素として50ppm以上300ppm以下であることが重縮合反応性、固相重合反応性の点から好ましく、さらには50以上200ppm以下であることが耐熱性、耐湿熱性の点から好ましい。300ppmを超えると重縮合反応性、固相重合反応性は向上するものの、再溶融時の分解反応も促進されるため、カルボン酸末端基が増加し、耐熱性、耐湿熱性が低下する原因となることがある。好適に使用されるアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物としては、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムを挙げることができ、それぞれ目的に応じて使い分けることができる。例えば、色調が最も良好となるのはゲルマニウム化合物であり、固相重合反応性が良好となるのはアンチモン化合物、環境面を配慮し、非アンチモン系で製造する場合には、チタン触媒が重縮合反応や固相重合の反応性が良好となる点で好ましい。
また、緩衝剤を添加する場合は、あらかじめエチレングリコールなどのジオール構成成分に溶解し、混合して添加することがポリエステルの分散性、および長期の耐加水分解性の点から好ましい。特に、このときの混合液のpHを2.0以上6.0以下の酸性に調整することが異物生成抑制の点から好ましく、さらには4.0以上6.0以下であることが好ましい。また、緩衝剤は重合触媒と添加間隔を5分以上あけて添加することが重合反応性の点から好ましく、添加時期は重合触媒の添加後でも添加前でも構わない。
POxHyMz ・・・(I)
(ここで、xは2〜4の整数、yは1または2、zは1または2であり、Mはアルカリ金属である。)。
伸度保持率(%)=E1’/E0’×100 (2’)
なお、E1’は試料を測定片の形状に切り出した後、温度125℃、湿度100%Rhの条件下72時間処理を施したものを用いて測定した値である。より好ましくは、上述の方法にて求められた伸度保持率が25%以上、更に好ましくは35%以上、特に好ましくは45%以上である。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、伸度保持率が15%に満たないと、例えばバックシートを搭載した太陽電池を長期間使用した際に劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがあるため好ましくない。本発明の太陽電池バックシートにおいて、伸度保持率を15%以上とすることによって、長期使用時の太陽電池の耐久性を高めることができる。
[特性の評価方法]
A.ポリエステルの組成分析
P層をアルカリにより加水分解し、各成分をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーにより分析し、各成分のピーク面積より組成比を求めた。以下に一例を示す。
ジカルボン酸構成成分や、カルボン酸基を有する構成成分(p)は高速液体クロマトグラフィーにて測定を行った。測定条件は既知の方法で分析することができ、以下に測定条件の一例を示す。
カラム:YMC−Pack ODS−A 150×4.6mm S−5μm
120A
カラム温度:40℃
流量:1.2ml/min
検出器:UV 240nm
ジオール構成成分や、水酸基を有する構成成分(p)の定量はガスクロマトグラフィーを用いて既知の方法で分析することができる。以下に測定条件の一例を示す。
カラム:SUPELCOWAX−10 キャピラリーカラム30m
カラム温度:140℃〜250℃(昇温速度5℃/min)
流量 :窒素 25ml/min
検出器:FID
B.固有粘度IV
オルトクロロフェノール100mlにP層を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(3)により、[η]を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とした。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C ・・・(3)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
C.カルボキシル基末端基数
Mauliceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960))。
原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)にて定量を行った。
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定した。
F.面配向係数fn Δn
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの面方向の屈折率、厚み方向屈折率を測定する。次にサンプルを10°毎回転させ、同様の測定を、360°実施する。得られた屈折率の面内分布から最大屈折率の屈折率をNmaxと、その方向から面内90°方向の屈折率をNmin、それぞれの厚み方向の屈折率の平均値をNzとして、下記式(4)から面配向係数(fn)を、下記式(5)で屈折率差Δnを算出した。
・面配向係数 fn=(Nmax+Nmin)/2−Nz ・・・(4)
・屈折率差 Δn=Nmax−Nmin ・・・(5)
また、フィルムが積層構成である場合は、研磨などを実施し、P層のみとしてから、測定を実施した。また、測定はn=3で実施し、その平均値でもってそれぞれfn、Δnとした。
G.破断伸度、伸度保持率
ポリエステルフィルムの破断伸度はASTM−D882(1999)に基づいて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、測定は5サンプルについて測定を実施しその平均値でもって破断伸度E0とした。また、伸度保持率は、試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーにて、125℃、湿度100%Rhの条件下72時間処理を行った後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1999)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、測定は5サンプルについて測定を実施しその平均値でもって破断伸度E1とした。得られた破断伸度E0,E1を用いて、下記式(2)により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E1/E0×100 (2)
なお、測定はフィルムのP層の最大屈折率方向と最小屈折率方向について(P層の屈折率の測定が困難な場合は、長手方向(縦方向)と幅方向(横方向)について)それぞれ実施した。
また、バックシートの破断伸度は、上記と同様に処理前のバックシートの破断伸度E0’,温度125℃、湿度100%Rhの条件下72時間放置後の破断伸度をE1’を求めて、下記式(2’)により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E1’/E0’×100 (2’)
なお、測定はバックシートを構成するP層の最大屈折率方向と最小屈折率方向について(P層の屈折率の測定が困難な場合は、長手方向(縦方向)と幅方向(横方向)について)それぞれ実施した。
H.表面比抵抗R0、R1、R2、R3
フィルムの表面比抵抗R0、R2、およびバックシートのA面とは反対側の表面比抵抗R3はデジタル超高抵抗微小電流計R8340(株)アドバンテスト製((株)アドバンテスト製)で測定を実施した。ただし、表面比抵抗が105Ω/□以下の場合は、ASPプローブを備えたロレスターEP((株)ダイアインスツルメンツ製)を用いた。なお、測定はフィルム面内において任意の10カ所で測定を実施し、その平均値でもって、表面比抵抗R0とした。また、測定試料は23℃、65%Rhの室内で一晩放置したものを用いて測定を実施した。
また、表面比抵抗R1はフィルムをタバイエスペック(株)製プレッシャークッカーにて、温度125℃、湿度100%Rhの条件下24時間処理を行った後、処理後のサンプルの表面比抵抗R1を上述と同じ方法で測定した。なお、測定はフィルム面内において任意の10カ所で測定を実施し、その平均値でもって、表面比抵抗R1とした。また、測定試料は処理後プレッシャークッカーから取り出した後、温度23℃、湿度65%Rhの室内で一晩放置したものを用いて測定を実施した。
P層の微少吸熱ピーク温度TmetaP,融点TmPは、JIS K7122(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて測定を実施した。サンプルパンにP層を5mgずつ秤量し、昇温速度は20℃/min1stRUNで樹脂を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って測定を行った。得られた1stRUNの示差走査熱量測定チャートにおける結晶融解ピーク前の微少吸熱ピーク温度でもってTmetaP、また2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもってP層のTmPとした。
また、フィルム積層構成である場合は、P層のみを削りだして、測定を実施した。
部分放電試験器KPD2050(菊水電子工業(株)製)を用い、部分放電電圧を求めた。なお試験条件は下記のとおりとする。
・出力シートにおける出力電圧印加パターンは、1段階目が0Vから所定の試験電圧までの単純に電圧を上昇させるパターン、2段階目が所定の試験電圧を維持するパターン、3段階目が所定の試験電圧から0Vまでの単純に電圧を降下させるパターンの3段階からなるパターンのものを選択する。
・周波数は50Hzとする。試験電圧は1kVとする。
・1段階目の時間T1は10sec、2段階目の時間T2は2sec、3段階目の時間T3は10secとする。
・パルスカウントシートにおけるカウント方法は「+」(プラス)、検出レベルは50%とする。
・レンジシートにおける電荷量はレンジ1000pcとする。
・プロテクションシートでは、電圧のチェックボックスにチェックを入れた上で2kVを入力する。また、パルスカウントは100000とする。
・計測モードにおける開始電圧は1.0pc、消滅電圧は1.0pcとする。
なお、測定は、A面側を上部電極側とする場合、A面側を下部電極側にする場合、それぞれについてフィルム面内において任意の10カ所で測定を実施し、その平均値を求め、それぞれの平均値のうちより高い方の値でもって、部分放電電圧V0とした。また、測定試料は、温度23℃、湿度65%Rhの室内で一晩放置したものを用いて測定を実施した。
K.押出性
製膜時において、押出機に原料置換し原料置換による濾圧変化が終了した際の初期濾圧P(0)(MPa)と10kg押出時の濾圧P(20)(MPa)を測定し、下記式(6)により濾圧変化量ΔP(MPa/kg)を求めた
ΔP=(P(10)−P(0))/20 ・・・(6)
得られたΔPについて下記の通り判定した
S:ΔPが0.02MPa/kg以下
A:ΔPが0.02MPa/kgより大きく0.05MPa/kg以下
B:ΔPが0.05MPa/kgより大きく0.1MPa/kg以下
C:ΔPが0.1MPa/kgより大きい。
D:初期濾圧P(0)が高く、押出不可であった。
(実施例1)
第一工程として、テレフタル酸ジメチル100質量部、トリメリット酸トリメチル(テレフタル酸ジメチル/トリメリット酸トリメチル=99.7/0.3のモル比となるように添加)、エチレングリコール57.5質量部、酢酸マグネシウム0.06質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。第二工程として、エステル交換反応終了後、リン酸0.019質量部(1.9モル/t相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.027質量部(1.5モル/t相当)をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液(PH5.0)を添加した。第三工程として、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.54、カルボキシル基末端基数13等量/tのポリエステルを得た。第四工程として、得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、9時間の固相重合を行い、構成成分(p)が0.15モル%、固有粘度0.90、カルボキシル基末端基数12等量/t、融点255℃、ガラス転移温度Tg83℃のポリエステルを得た。得られたポリエステルの特性を評価した結果を表1に示す。
得られたポリエステルを180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機に供給し、窒素雰囲気下、280℃の温度で溶融させ、Tダイ口金に導入した。このときの押出機のフィルターは400メッシュの金網を使用した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融単層シートとし、該溶融単層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。続いて、該未延伸単層フィルムを85℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、87℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3.7倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の80℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に4.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーン1で200℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに熱処理ゾーン2で150℃の熱処理を行い、熱処理ゾーン3で100℃の温度で熱処理を行った。なお、熱処理に際し、熱処理ゾーン1−熱処理ゾーン2間で4%の弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚さ100μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に優れたフィルムであることが分かった。次にこのフィルムを第1層として用い、接着層として“タケラック(登録商標)”A310(三井武田ケミカル(株)製)90質量部、“タケネート(登録商標)”A3(三井武田ケミカル(株)製)を塗布し、その上に第2層として厚さ75μm二軸延伸ポリエステルフィルム“ルミラー(登録商標)”S10(東レ(株)製、両面とも表面比抵抗は4.5×1015Ω/□であった)を貼り合わせた。次に第2層上に上述の接着層を塗布し、厚さ12μmバリアロックス“HGTS”(東レフィルム加工(株)製のアルミナ蒸着PETフィルム)を蒸着層が第2層と反対側になるように貼り合わせ、厚さ188μmのバックシートを形成した。得られたバックシートの耐湿熱性の評価を実施した。結果を表1に示す。高い耐湿熱性を有することが分かった。
(実施例2〜5、10〜12、41、参考例6〜9)
表1の組成となるようにポリエステルを重合した以外は実施例1と同様で、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの特性を評価した結果を表1に示す。実施例10〜12については押出時に経時で濾圧上昇が確認された。
得られたポリエステル、フィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例2〜4については耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例5、41については実施例1に比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例13、15、参考例14、16〜18)
延伸倍率を表1の倍率とした以外は実施例1と同様の方法で、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例19)
実施例1と同じポリエステルを、180℃の温度で3時間真空乾燥した後に主押出機に供給した。また、主押出機とは別に副押出機を用い、この副押出機に、共重合成分であるトリメリット酸トリメチルと緩衝剤を添加しないこと以外は実施例1と同様の方法で重合した、固有粘度0.9、カルボキシル基末端数12等量/tのポリエステル(ガラス転移温度83℃、融点255℃)を、3時間真空乾燥した後に副押出機に供給した。それぞれ、窒素雰囲気下280℃の温度で溶融させ、次いで主押出機に供給した成分層の両側表層に副押出機に供給した成分層が厚み比率で、副押出機の成分層:主押出機の成分層:副押出機の成分層=1:6:1、となるよう合流させ、Tダイ口金内より、溶融3層積層共押出しを行い、積層シートとし、表面温度20℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未配向(未延伸)積層シートを得た。得られた積層シートを実施例1と同様の方法で二軸延伸、熱処理を実施し、厚さ100μm、P層厚み75μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例20,参考例21)
厚み比率をそれぞれ、副押出機の成分層:主押出機の成分層:副押出機の成分層=1:2.4:1、:1.6:1とした以外は実施例19と同じ方法で実施例20はフィルム全体厚み100μm、P層厚み55μm、参考例21はフィルム全体厚み100μm、P層厚み45μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例19には劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例19には劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例22、24、参考例23)
第4工程での固相重合時間をそれぞれ7時間、6時間、9時間とした以外は実施例1と同様の方法でポリエステルを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。次に実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例22,参考例23については、実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例24については、フィルムの厚みムラが大きく品位が劣るものであった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例22,参考例23については、実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例24については、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例25,26)
実施例25については第3工程での固有粘度を0.52とし、第4工程での固相重合時間を9.5時間としたこと、実施例26については、第3工程での固有粘度を0.59とし、第4工程での固相重合時間を8.5時間としたこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。次に実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例25については耐湿熱性に優れることが分かった。また実施例26については、実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例25については、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例26については、実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例27〜28、参考例29)
緩衝剤の添加量を表1の通りとした以外は実施例1と同様にポリエステルを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。次に実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例28については耐湿熱性に優れることが分かった。また実施例27、参考例29については、実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例22,23については、実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例24については、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例30、32、参考例31)
実施例30については緩衝剤を添加しないこと、参考例31については緩衝剤を添加しないことと、第3工程での固有粘度を0.52とし、第4工程での固相重合時間を9.5時間としたこと、実施例32については緩衝剤を添加しないことと、第3工程での固有粘度を0.50とし、第4工程での固相重合時間を9.75時間としたこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステルを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。次に実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。
(参考例33,34)
それぞれ、熱処理ゾーン1の温度を表1の温度とした以外は実施例1と同様の方法で、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例35、37〜38、参考例36)
表1の共重合成分、組成となるようにポリエステルを重合した以外は実施例1と同様で、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの特性を評価した結果を表1に示す。また、得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例38については耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例35、37、参考例36については実施例1に比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例38については、耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例35、37、参考例36については、実施例1と比べて劣るものの、耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例39,40)
実施例39については、テレフタル酸ジメチルの代わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを用い、第3工程での固有粘度を0.50とし、第4工程での固相重合時間を7時間としたこと、実施例40については、テレフタル酸ジメチルの代わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを用い、緩衝剤を添加せず第3工程での固有粘度を0.50とし、第4工程での固相重合時間を7時間としたこと、以外は実施例1と同様にポリエステルを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度120℃、融点265℃であり、得られたポリエステルの特性を表1に示す。得られたポリエステルを用いて、押出温度を290℃、縦延伸温度を135℃、横延伸温度を140℃とした以外は実施例1と同様の方法で、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に優れることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に優れることが分かった。
(実施例1−2〜1−8)
それぞれ、一軸延伸したフィルムにコロナ処理を施した後、下記表2に示す塗剤を#6のメタリングバーにて塗布した以外は実施例1の方法と同様の方法で、P2層として導電性を有する層が膜厚0.15μmで形成された厚さ100μmの二軸延伸フィルムを得た。
<実施例1−2〜実施例1−5の塗剤原料>
・塗剤原料1(導電性材料):非水溶性カチオン系導電性材料の水分散体:“BONDEIP−PM(登録商標)”(コニシ油脂(株)製、固形分30%)
・塗剤原料2(バインダー樹脂):アクリル系樹脂水分散体:メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=62/35/2/1(質量比)共重合アクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に固形分10%で水に分散させたもの。
・塗剤原料3(架橋剤):オキサゾリン基含有化合物水分散体: “エポクロス(登録商標)“WS−500(日本触媒(株)製、固形分40%)
・塗剤原料4(界面活性剤):アセチレンジオール系界面活性剤:“オルフィン(登録商標)”EXP4051F(日信化学工業(株)製)
・塗剤原料5:水
<実施例1−6〜実施例1−8の塗剤原料>
・塗剤原料1(導電材料):非水溶性ポリチオフェン系導電性高分子水分散体:“Baytron(登録商標)”P(Bayer社/H.C.Stark社(ドイツ国)製、固形分1.2%)
・塗剤原料2(バインダー樹脂):非水溶性ポリエステル系樹脂:酸成分としてテレフタル酸/イソフタル酸/5―スルホイソフタル酸ナトリウム=60/30/10とジオール構成成分としてエチレングリコール/ジエチレングリコール/ポリエチレングリコール=95/3/2とを共重合したポリエステル樹脂(ガラス転移温度48℃)を10質量%の濃度で分散させたもの。
・塗剤原料3(架橋剤):エポキシ系架橋剤:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤EX−512(分子量約630)(ナガセケムテックス(株)製)。
・塗剤原料4(界面活性剤):アセチレンジオール系界面活性剤:“オルフィン(登録商標)”EXP4051F。
・塗剤原料5:水
得られたフィルムの特性を表2に示す。実施例1と同様の耐湿熱性が得られると共に、実施例1より部分放電電圧が高いことが分かった。次にこのフィルムを第1層として用い、実施例1と同様の方法にてバックシートを作成した。なお、第1層についてはP2層が内側(第2層と対向)になるように貼り合わせた。得られたバックシートの特性を表2に示す。実施例1と同様の耐湿熱性が得られると共に、実施例1より部分放電電圧が高いことが分かった。
(比較例1、2)
比較例1については、共重合成分であるトリメリット酸トリメチルを添加しないこと、比較例2については、共重合成分としてトリメリット酸トリメチルと緩衝剤を添加しないこと以外は実施例1と同様でポリエステルを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。得られたポリエステルを用いて、実施例1と同様の方法で、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に劣ることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例1と比べて耐湿熱性に劣ることがわかった。
(比較例3〜5)
表1の組成となるようにポリエステルを重合した以外は実施例1と同様の方法で、製膜を実施した。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。比較例4については溶融押出ができなかったが、比較例3,4については、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に劣ることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に劣ることが分かった。
(比較例6、7)
比較例6については、第3工程での固有粘度を0.70とし、第4工程での固相重合時間を5時間としたこと、実施例26については、緩衝剤を添加しないことと第3工程での固有粘度を0.70とし、第4工程での固相重合時間を5時間としたこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度83℃、融点255℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。次に実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に劣ることが分かった。また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。耐湿熱性に劣ることが分かった。
(比較例8、9)
共重合成分としてトリメリット酸トリメチルを添加しないこと以外はそれぞれ実施例39,40と同様の方法で100μm厚のポリエステルフィルムを得た。いずれのポリエステルもガラス転移温度120℃、融点265℃であり、得られたポリエステルの物性を表1に示す。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1に示す。実施例39,40に比べて耐湿熱性に劣ることが分かった。
また、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートを得た。得られたバックシートの特性を評価した結果を表1に示す。実施例39,40に比べて耐湿熱性に劣ることが分かった。
2:透明充填剤
3:発電素子
4:透明基板
5:太陽電池バックシートの樹脂層2側の面
6:太陽電池バックシートの樹脂層2と反対側の面
Claims (12)
- ジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分およびカルボン酸基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)を有するポリエステルを用いたポリエステル層(P層)を有するポリエステルフィルムであって、P層における該構成成分(p)の含有量が、P層中の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%以下であり、かつP層の面配向係数が0.15以上、かつカルボキシル基末端基数が20等量/t以下、かつフィルム面内の最も屈折率の高い方向の屈折率nmaxとその方向に対しフィルム面に平行で90°方向の屈折率nminの差Δnが0以上0.025以下、かつ温度125℃、湿度100%Rhの条件下72時間放置後の最大屈折率方向と最小屈折率方向についての伸度保持率が40%以上であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- 前記構成成分(p)のカルボン酸基数(a)が3以上および/または水酸基数(b)が3以上である請求項1記載のポリエステルフィルム。
- 前記構成成分(p)のカルボン酸基数(a)が3以上であり、かつカルボン酸を有する化合物が芳香族系である請求項1または2に記載のポリエステルフィルム
- 前記構成成分(p)の水酸基数(b)が3以上であり、かつ水酸基を有する化合物が脂肪族系である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム
- 前記P層の固有粘度(IV)が0.65以上である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- 前記P層が、緩衝剤をP層全体に対して0.1モル/t以上5.0モル/t含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム
- P層のポリエステル中のアルカリ金属元素含有量W1が2.5ppm以上125ppm以下であり、かつアルカリ金属元素含有量W1とリン元素含有量W2の比W1/W2が0.01以上1以下である請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- 太陽電池バックシート用である請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- 少なくとも一方の表面の表面比抵抗R0が106Ω/□以上1014Ω/□以下である請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた太陽電池。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法であって、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を重縮合してなるポリエステルが、カルボン酸基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である成分(p)を共重合してなるポリエステルであり、かつ該共重合量が、ポリエステルの全重合成分に対して0.005モル%以上2.5モル%であり、該ポリエステルを用いたポリエステル層(P層)を有するポリエステルシートを二軸延伸した後、下記式(1)を満たす温度範囲で熱処理を施こすポリエステルフィルムの製造方法。
40℃≦Tm−Th≦90℃ (1)
Tm:ポリエステルの融点(℃)
Th:熱処理温度(℃) - 面積延伸倍率14倍以上、フィルム長手方向の延伸倍率E(MD)と幅方向の延伸倍率E(TD)の比E(MD)/(TD)が
1)同時二軸延伸の場合は0.7以上1.5以下
2)逐次二軸延伸の場合は0.95以下
である請求項11に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
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