一般に、液晶表示装置(LCD)は薄型軽量・低消費電力といった特徴を有する。特に、縦横のマトリックス状に配列した個々の画素を能動素子によって駆動するアクティブマトリックス型液晶表示装置(AM−LCD)は、高画質のフラットパネル・ディスプレイとして認知されており、中でも個々の画素をスイッチングする能動素子として薄膜トランジスタ(Thin-Film Transistor、TFT)を用いたもの(TFT−LCD)が広く普及している。
多くのAM−LCDは、ツイステッドネマチック(Twisted Nematic、TN)型液晶の電気光学効果を利用しており、2枚の基板間に挟持された液晶に当該基板面に概ね垂直な電界を印加して、当該液晶の分子を変位させることにより画像を表示する。これを「縦電界方式」という。一方、当該基板面に概ね平行な電界により、当該基板面に概ね平行な面内で液晶分子を変位させることによって画像を表示する「横電界方式」の液晶表示装置も、以前から知られている。この横電界方式の液晶表示装置についても、縦電界方式と同様に種々の改良がなされて来ており、そのいくつかを例示すると、以下のとおりである。
特許文献1(米国特許第3807831号明細書、1974年発行)には、横電界方式の液晶表示装置において、相互に噛合する櫛歯状電極を用いる構成が開示されている(クレーム1、FIG.1〜4、FIG.11を参照)。
特許文献2(特公昭63−21907号公報)には、TN型の電気光学効果を利用したAM−LCDにおける共通電極とドレインバスライン、あるいは共通電極とゲートバスラインとの間の寄生容量の低減を目的として、相互に咬合する櫛歯電極を用いた方式が開示されている(特許請求の範囲第1項、第7図、第9図〜第13図を参照)。
特許文献3(特開平7−036058号公報)には、TFTを用いたアクティブマトリックス型液晶表示装置において、横電界方式を実現する技術が開示されている。この技術では、共通電極と映像信号電極または共通電極と液晶駆動電極を、絶縁膜を介して互いに異なる層に形成すると共に、共通電極または液晶駆動電極の平面形状をリング型、十字型、T字型、Π字型、エ字型あるいは梯子型といった形に形成している(特許請求の範囲第1項、第5項、図1〜23を参照)。
特許文献4(特開平10−307295号公報)には、横電界を発生させる電極を屈曲させ、その屈曲部をもって電界作用時の液晶の駆動(回転)方向を領域ごとに異ならせ、斜め視野での表示の着色を軽減する技術が開示されている(請求項5、図4、図6を参照)。
図10および図11は、特許文献4に開示された横電界方式の液晶表示装置の構成の一例を示す。図10はその液晶表示装置のアクティブマトリックス基板の平面図であり、図11は図10のA−A'線に沿った断面図である。これらの図はいずれも、一つの画素領域についてのみ示している。
図10および図11に示した従来のアクティブマトリックス基板では、同図の横(左右)方向に延在する複数本のゲートバスライン55と、屈曲しながら同図の縦方向(上下)に延在する複数本のドレインバスライン56とが形成されており、それらゲートバスライン55およびドレインバスライン56に囲まれる領域内に、画素領域がそれぞれ形成されている。複数の画素領域は、全体として縦横のマトリックス状に配置されている。また、ゲートバスライン55に沿って平行に、複数の共通バスライン52が形成されている。共通バスライン52は、各画素領域の上下端部に1本ずつ配置されており、したがって、各画素領域には2本の共通バスライン52が存在する。複数のゲートバスライン55と複数のドレインバスライン56の交点の近傍には、複数の薄膜トランジスタ45が形成されている。各画素領域には、1個の薄膜トランジスタ45が存在する。
ゲートバスライン55と共通バスライン52は直線状であるが、ドレインバスライン56は各画素領域において屈曲している。したがって、図10に示すように、各画素領域はV字形に屈曲した平面形状を有している。
各画素領域には、液晶駆動電界を発生させる液晶駆動電極として、画素電極71と共通電極72が配置されている。画素電極71と共通電極72は、いずれも、透明導電体によって形成されている。
各画素領域において、画素電極71は、対応する薄膜トランジスタ45のソース電極42に対して電気的・機械的に接続されており、図10に示すように横向きの梯子型形状を有していて、その梯子段の各々を構成する部分(梯子段部分)がドレインバスライン56に沿ってV字形に屈曲している。共通電極72は、当該画素領域の上下にある2本の共通バスライン52に対して電気的・機械的に接続されているが、これも図10に示すように横向きの梯子型形状を有していて、その梯子段の各々を構成する部分(梯子段部分)がドレインバスライン56に沿ってV字形に屈曲している。
画素電極71は、V字形の梯子段部分を3本有しており、共通電極72は、V字形の梯子段部分を4本有している。画素電極71と共通電極72は、それらの梯子段部分が図10の横方向に交互に等間隔で並ぶように配置されている。画素電極71と共通電極72の梯子段部分の屈曲位置において、当該画素領域は、同図の上側の第1サブ領域1と、同図の下側の第2サブ領域2に分割されている。
画素電極71と共通電極72の梯子段部分は、第1サブ領域1においては、図10の縦方向に対して時計回りに所定角度だけずれており、第2サブ領域2においては、反時計回り方向に同じ角度だけずれている。
薄膜トランジスタ45のソース電極42は、上述したように、対応する画素電極71に電気的・機械的に接続されているが、同薄膜トランジスタ45のドレイン電極44は、対応するドレインバスライン56に電気的・機械的に接続され、そのゲート電極(図示せず)は、対応するゲートバスライン55に電気的・機械的に接続されている。ドレイン電極44とソース電極42は、同薄膜トランジスタ45の半導体膜43の両側にそれぞれ、部分的に重なった状態で配置されている。
図11に示すように、共通電極72は、透明基板11の表面に直接形成されており、第1透明基板11の表面に形成された層間絶縁膜57により覆われている。図11には示していないが、ゲートバスライン55と共通バスライン52、そして薄膜トランジスタ45のゲート電極も、透明基板11の表面に直接形成されていて、層間絶縁膜57により覆われている。画素電極71とドレインバスライン56は、層間絶縁膜57上に形成されている。したがって、画素電極71とドレインバスライン56は、層間絶縁膜57によって、共通電極72とゲートバスライン55と共通バスライン52とゲート電極から電気的に絶縁されている。
画素電極71と共通電極72は、層間絶縁膜57を介して、部分的に重畳しており、この重畳部分によって付加容量を形成している。
図11には示していないが、薄膜トランジスタ45のソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43も、層間絶縁膜57上に形成されている。したがって、ソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43は、層間絶縁膜57によって、共通電極72とゲートバスライン55と共通バスライン52とゲート電極から電気的に絶縁されている。
層間絶縁膜57上には、保護絶縁膜59が形成されており、層間絶縁膜57上にある画素電極71とドレインバスライン56、そして薄膜トランジスタ45のソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43は、保護絶縁膜59によって覆われている。
保護絶縁膜59の上には、有機高分子膜からなる配向膜31が形成されている。その配向膜31の表面には、所定の配向処理が施されている。
一方、上記アクティブマトリックス基板と組み合わされる対向基板では、透明基板12上に、各画素領域に対応してR、G、Bの3原色からなるカラーフィルター(図示せず)が設けられており、各画素領域に対応する領域以外には遮光用のブラックマトリックス(図示せず)が設けられている。カラーフィルターとブラックマトリックスの上には、平坦化膜(図示せず)が設けられており、さらに柱状のスペーサー(図示せず)が設けられている。そして、上記平坦化膜の上には、スペーサーを覆うように有機高分子膜からなる配向膜32が形成されている。その配向膜32の表面には、所定の配向処理が施されている。
以上の構成を持つアクティブマトリックス基板と対向基板は、配向膜31および32が形成された面を内側にして、所定の間隔をおいて重ね合わされている。両基板の間には、液晶20が封入されていて、液晶層22を構成している。両基板の外側面には、一対の偏光板(図示せず)が配置されている。
図10に示すように、配向膜31および32の表面は、無電界時に液晶分子21が同図の縦方向(上下方向)に沿って平行に配向するように、一様に配向処理が施されている。なお、この例は、ポジ型液晶を用いた場合を示しているが、ネガ型の液晶を用いる場合には、同図の横方向に沿って配向するように、配向膜31および32の表面に配向処理を施せばよい。
前記一対の偏光板の透過軸の方向は、互いに直交しており、一方の偏光板の透過軸は、液晶分子21の初期配向方位(無電界時の配向方向)と一致している。
次に、図10および図11に示した従来の横電界方式の液晶表示装置の製造工程の一例を説明する。
アクティブマトリックス基板については、まず、ガラスからなる透明基板11上にクロム(Cr)膜を形成した後、これをパターン化して、ゲートバスライン55と共通電極72を形成する。次に、これらを覆うように窒化シリコン(SiNx)膜を形成して層間絶縁膜57とする。続いて、層間絶縁膜57上に、薄膜トランジスタ45の能動層である半導体膜を形成してからこれをパターン化し、層間絶縁膜57を介して対応するゲートバスライン55に重なる位置に、島状の半導体膜43を形成する。さらに、層間絶縁膜57上にCr膜を形成してからこれをパターン化し、ソース電極42とドレイン電極44とドレインバスライン56と画素電極71を形成する。次に、これらを覆うようにSiNx膜を形成して保護絶縁膜59とする。
対向基板については、ガラスからなる透明基板12上に、カラーフィルターおよび遮光用ブラックマトリックスを形成した後、それらを覆うように平坦化膜を形成し、さらに、平坦化膜上に柱状スペーサーを形成する。
その後、上記のように構成されたアクティブマトリックス基板および対向基板の表面に、ポリイミドからなる配向膜31および32をそれぞれ形成し、配向膜31および32の表面に一様に配向処理を施す。その後、両基板を4.0μmの間隔をあけて重ね合わせてから、その隙間に屈折率異方性が0.075のネマチック液晶を真空チャンバー(図示せず)内で注入する。最後に、両基板の外側面に偏光板が貼りあわせる。こうして、図10および図11に示した液晶表示装置が製造される。
図10および図11に示した従来の液晶表示装置では、電圧印加時の液晶駆動電界は、第1サブ領域1では、図10の真横方向に対して若干時計回り方向に傾いた方向に発生し、第2サブ領域2では、図10の真横方向に対して若干反時計回り方向に傾いた方向に発生する。よって、無電界時に図10の縦方向(上下方向)に沿って一様に配向していた液晶分子21は、前記液晶駆動電界により、第1サブ領域1では反時計回り方向に、第2サブ領域2では時計回り方向に、それぞれ回転する。このようにして、第1および第2のサブ領域1、2における液晶分子の回転方向を互いに異ならせることにより、視角変化による表示の色づきを抑制することができるのである。
しかしながら、図10および図11に示した従来の横電界方式の液晶表示装置においては、次のような問題がある。
すなわち、図10および図11に示した従来の構成では、第1および第2のサブ領域1、2の境界部を安定化するための構造が存在しないため、液晶ドメインの乱れが生じ易い。特に、画素の高精細化等により、各液晶ドメインのサイズを微小化した場合には、隣接する液晶ドメインが不定形に融合したり、あるべき液晶ドメインが消滅してしまったりするなど、液晶ドメインに乱れが生じ易くなる。その結果、表示がざらついたり、表示にムラが生じたりしてしまうという問題が生じるのである。特に、パネルを指押ししたとき等に、この問題が顕著になる。指押し等によりいったん液晶ドメインが乱れてしまうと、それを回復させるためには、液晶表示装置の動作を停止(電源遮断)してしばらく放置する、といった処置が必要となる。
この問題に対しては、特許文献4に開示された横電界方式の液晶表示装置の別の一例による構成が有効である。その構成を図12に示す。
図12に示した従来の構成では、アクティブマトリックス基板の画素電極71と共通電極72が、それらの屈曲部73、74に、第1および第2のサブ領域1、2の境界に沿って突出したヒゲ状の境界安定化電極95、96を有している点を除き、図10および図11に示した構成と同一である。したがって、同一部分に同一符号を付して、同一構成の部分に関する説明は省略する。対向基板の構成は、図10および図11に示したものと同一である。
図12の構成では、境界安定化電極95、96を設けているため、画素電極71と共通電極72のV字形の屈曲部73、74(第1サブ領域1と第2サブ領域2の境界)の周辺で、第1および第2のサブ領域1、2の各々における液晶分子21の回転が、所望の回転方向に対して逆方向になることがなく、安定するから、均一で安定した表示を行うことができる。
図12の境界安定化電極を使用した他の構成例を、図13および図14に示す。図13は、その構成を示す平面図、図14は図13のB−B'線に沿った断面図である。両図に示したこの構成は、特許文献5(特開2002−323706号公報)に開示された技術を利用したものである(図68〜69、段落0426〜0430を参照)。
図13および図14に示した従来の横電界方式の液晶表示装置の構成は、以下の点を除き、図10および図11に示した構成と同一である。したがって、同一部分に同一符号を付して、同一構成の部分に関する説明は省略する。
図13および図14の構成の相違点は、(a)アクティブマトリックス基板の液晶駆動電極である画素電極71と共通電極72が、いずれも櫛歯状であって、相互に噛合するように配置されていると共に、ゲートバスライン55やドレインバスライン56よりも上層(液晶層20に近い層)に配置された透明導電膜により形成されている点と、(b)画素電極71と共通電極72の屈曲部73と74にそれぞれ重畳して、電気的にフローティング状態にある境界安定化電極95aと96aが配置されており、それら境界安定化電極95aと96aは、ゲートバスライン55あるいはドレインバスライン56と同層に配置された金属膜により形成されている点である。
図13および図14の構成を詳述すると、この構成では、図10および図11に示した構成と同様に、透明基板11の表面に層間絶縁膜57と保護絶縁膜59がこの順に積層形成されているが、それらに加えて保護絶縁膜59上に層間絶縁膜60が積層されている。画素電極71と共通電極72は、図10および図11に示した構成とは異なり、いずれも層間絶縁膜60上に形成されている。画素電極71は、V字形に屈曲しているドレインバスライン56に沿ってV字形に延在する櫛歯状部分を3本有している。共通電極72は、V字形に屈曲しているドレインバスライン56に沿ってV字形に延在する櫛歯状部分を4本有している。画素電極71と共通電極72の櫛歯状部分は、ゲートバスライン55に沿って所定の間隔をあけて交互に配置されていて、互いに噛合した形になっている。
透明基板11の表面には、ゲートバスライン55と共通バスライン52と薄膜トランジスタ45のゲート電極に加えて、共通補助電極72aが形成されており、これらは層間絶縁膜57によって覆われている。共通補助電極72aは、各画素領域に2本ずつ設けてあり、当該画素領域の両側にある2本のドレインバスライン56の各々の近傍において、それらドレインバスライン56に沿って延在している。共通補助電極72aは、層間絶縁膜60上に形成された共通電極72と、透明基板11の表面上に形成された共通バスライン52とを、電気的に相互接続するための電極である。
層間絶縁膜57上には、ドレインバスライン56と、薄膜トランジスタ45のソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43に加えて、画素補助電極71aが形成されており、これらは層間絶縁膜60によって覆われている。画素補助電極71aは、各画素領域に1本ずつ設けてあり、当該画素領域の中央部にある画素電極71の櫛歯状部分と重なり合っている。画素補助電極71aは、層間絶縁膜60上に形成された画素電極71と、層間絶縁膜57上に形成されたソース電極42とを、電気的に相互接続するための電極である。このため、画素補助電極71aは、当該画素領域にあるソース電極42に電気的・機械的に接続されている。
各画素領域において、画素電極71は、保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を貫通するコンタクトホール61と、画素補助電極71aとを介して、対応する薄膜トランジスタ45のソース電極42に電気的に接続されている。共通電極72は、層間絶縁膜57と保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を貫通するコンタクトホール62と、共通補助電極72aとを介して、対応する共通バスライン52に電気的に接続されている。
ドレイン電極44は、対応するドレインバスライン56に電気的・機械的に接続され、ゲート電極は、対応するゲートバスライン55に電気的・機械的に接続されている点は、図10および図11に示した構成と同じである。層間絶縁膜60上に有機高分子膜からなる配向膜31が形成されており、その配向膜31の表面に所定の配向処理が施されている点も、図10および図11に示した構成と同じである。
対向基板の構成は、図10および図11に示したものと同一である。
図13および図14に示した従来の横電界方式の液晶表示装置においても、電気的にフローティング状態とした境界安定化電極95a、96aを備えているので、第1および第2のサブ領域1、2の境界を挟んだ両側で液晶分子21の回転方向を安定化することができ、結果として、均一で安定した表示を行うことができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明の第1実施形態の横電界方式の液晶表示装置を示す。図1は、その液晶表示装置のアクティブマトリックス基板の平面図であり、一つの画素領域の構成を示している。図2は、そのアクティブマトリックス基板上の画素電極71と共通電極72にそれぞれ設けられた境界安定化電極75と76の近傍の構成を示す部分拡大平面図である。
本第1実施形態の液晶表示装置の構成は、従来技術で説明した図10〜図12の液晶表示装置の構成と共通する部分が多いので、当該従来構成と同一部分には同一符号を付して、適宜その説明を省略する。
本第1実施形態の液晶表示装置のアクティブマトリックス基板は、図1に示すように、同図の横(左右)方向に延在する複数本のゲートバスライン55と、屈曲しながら同図の縦方向(上下)に延在する複数本のドレインバスライン56とを有しており、それらゲートバスライン55およびドレインバスライン56に囲まれる領域内に、画素領域がそれぞれ形成されている。複数の画素領域は、全体として縦横のマトリックス状に配置されている。また、ゲートバスライン55に沿って平行に、複数の共通バスライン52が形成されている。共通バスライン52は、各画素領域の上下端部に1本ずつ配置されており、したがって、各画素領域には2本の共通バスライン52が存在する。複数のゲートバスライン55と複数のドレインバスライン56の交点の近傍には、複数の薄膜トランジスタ45が形成されている。各画素領域には、1個の薄膜トランジスタ45が存在する。
ゲートバスライン55と共通バスライン52は直線状であるが、ドレインバスライン56は各画素領域においてV字形に屈曲している。したがって、図1に示すように、各画素領域はV字形に屈曲した平面形状を有している。
各画素領域には、液晶駆動電界を発生させる液晶駆動電極として、画素電極71と共通電極72が配置されている。画素電極71と共通電極72は、いずれも透明導電体によって形成されている。
各画素領域において、画素電極71は、対応する薄膜トランジスタ45のソース電極42に対して電気的・機械的に接続されており、図1に示すように横向きの梯子型形状を有していて、その梯子段の各々を構成する部分(梯子段部分)がドレインバスライン56に沿ってV字形に屈曲している。共通電極72は、当該画素領域の上下にある2本の共通バスライン52に対して電気的・機械的に接続されており、これも横向きの梯子型形状を有していて、その梯子段の各々を構成する部分(梯子段部分)がドレインバスライン56に沿ってV字形に屈曲している。
画素電極71は、V字形の梯子段部分を3本有しており、共通電極72は、V字形の梯子段部分を4本有している。画素電極71と共通電極72は、それらの梯子段部分が図1の横方向に交互に等間隔で並ぶように配置されている。それらの梯子段部分の屈曲部は、同一直線上に並んでいる。この直線は、図1の上側の第1サブ領域1と、図1の下側の第2サブ領域2とを区画する境界線となっている。こうして、当該画素領域は、画素電極71と共通電極72の梯子段部分の屈曲部にある境界線により、第1サブ領域1と第2サブ領域2に分割されている。画素電極71と共通電極72の梯子段部分は、第1サブ領域1においては、図1の縦方向に対して時計回りに所定角度だけずれており、第2サブ領域2においては、反時計回り方向に同じ角度だけずれている。
図2に詳細に示したように、画素電極71の梯子段部分の屈曲部73の各々には、ヒゲ状の境界安定化電極75が形成されている。この境界安定化電極75は、第1および第2のサブ領域1、2の境界線に沿って引いた対称線81に沿って左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出している。境界安定化電極75は、その基部が対称線81上に位置していて、対称線81に平行に延在している。境界安定化電極75は、その中央部付近より、対称線81から下側(第2サブ領域2の側)に向かって逸れるように斜めに屈曲されている。また、境界安定化電極75は、画素電極71の屈曲部73から突出した突起として当該画素電極71と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極75の先端縁77は、対称線81(屈曲部73)に対して第2サブ領域2の側にずれて配置されている。
一方、共通電極72の梯子段部分の屈曲部74の各々には、ヒゲ状の境界安定化電極76が形成されている。この境界安定化電極76は、境界安定化電極75と同様に、第1および第2のサブ領域1、2の境界線に沿って引いた対称線81に沿って左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出している。境界安定化電極76は、その基部が対称線81上に位置していて、対称線81に平行に延在している。境界安定化電極76は、その中央部付近より、対称線81から上側(第1サブ領域1の側)に向かって逸れるように斜めに屈曲されている。また、境界安定化電極76は、共通電極72の屈曲部74から突出した突起として当該共通電極72と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極76の先端縁78は、対称線81(屈曲部74)に対して第1サブ領域1の側にずれて配置されている。つまり、境界安定化電極76の屈曲した向きが、境界安定化電極75のそれとは逆になっている。境界安定化電極76の屈曲の角度は、境界安定化電極75のそれと同じである。
このように、第1サブ領域1と第2サブ領域2の境界線に沿って引いた対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)に向かって屈曲された、共通電極72の境界安定化電極76と、対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)に向かって屈曲された、画素電極71の境界安定化電極75とが、対称線81に沿って交互に配置されている。
また、画素電極71の各境界安定化電極75の先端縁77は、隣接する共通電極72の基端縁72f(第2サブ領域2にあるもの)に近接していると共に、その基端縁72fに対して略平行になっている。共通電極72の各境界安定化電極76の先端縁78は、隣接する画素電極71の基端縁71f(第1サブ領域1にあるもの)に近接していると共に、その基端縁71fに対して略平行になっている。
図1および図2に示した本第1実施形態の構成においては、上述した梯子型形状を持つ画素電極71と共通電極72を各画素領域内に配置して、当該画素領域を第1サブ領域1と第2サブ領域2に分割しているので、電圧印加時の液晶駆動電界は、第1サブ領域1では、境界線(対称線81)に対して若干、時計回り方向に傾いた方向に発生し、第2サブ領域2では、境界線(対称線81)に対して若干、反時計回り方向に傾いた方向に発生する。よって、無電界時に図1の縦方向(上下方向)に一様に初期配向していた液晶分子21は、上記液晶駆動電界によって、第1サブ領域1では反時計回り方向に、第2サブ領域2では時計回り方向に、それぞれ回転する。このため、第1サブ領域1と第2サブ領域2における液晶分子21の回転方向が互いに異なり、したがって、視角変化による表示の色づきを抑制することができる。
また、本第1実施形態の構成では、下側に向かって屈曲した画素電極71の境界安定化電極75と、上側に向かって屈曲した共通電極72の境界安定化電極76とが、第1サブ領域1と第2サブ領域2の境界線(すなわち境界安定化電極75および76の対称線81)に沿って交互に配置されているため、境界安定化電極75の上を通るディスクリネーション101は、境界安定化電極75の屈曲形状(形状のずれ)に沿って下側に曲がるルートをとり、境界安定化電極76の上を通るディスクリネーション101は、境界安定化電極76の屈曲形状(形状のずれ)に沿って上側に曲がるルートをとりやすい傾向を持つ。その結果、機械的変形を受けない場合には、図2に示すように、ディスクリネーション101の下側に曲がるルートと上側に曲がるルートとが、対称線81に沿って交互に並ぶことになる。
よって、本第1実施形態の液晶表示装置のアクティブマトリックス基板が、指押し等により機械的変形を受けた場合、境界安定化電極75または76の屈曲形状(形状のずれ)に沿って延在する上記ディスクリネーション101のルートは、図2の状態から一時的にずれる(揺らぐ)ことはあるが、指を離した直後に、あるいは長くても数十秒程度以内に、元の図2の状態に復帰する。結果として、液晶表示装置の表面を指等で押した場合にも、第1サブ領域1と第2サブ領域2の境線界の近傍が指押し等による機械的変形を受けた場合でも、上記ディスクリネーション101のルートを安定して維持することができる。
上記アクティブマトリックス基板の断面構造は、図11に示した従来のアクティブマトリックス基板の断面構造と同じである。すなわち、図11に示すように、共通電極72は、透明基板11の表面に直接形成されており、第1透明基板11の表面に形成された層間絶縁膜57により覆われている。図11には示していないが、ゲートバスライン55と共通バスライン52、そして薄膜トランジスタ45のゲート電極も、透明基板11の表面に直接形成されていて、層間絶縁膜57により覆われている。画素電極71とドレインバスライン56は、層間絶縁膜57上に形成されている。したがって、画素電極71とドレインバスライン56は、層間絶縁膜57によって、共通電極72とゲートバスライン55と共通バスライン52とゲート電極から電気的に絶縁されている。
画素電極71と共通電極72は、層間絶縁膜57を介して、部分的に重畳しており、この重畳部分によって付加容量を形成している。
図11には示していないが、薄膜トランジスタ45のソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43も、層間絶縁膜57上に形成されている。したがって、ソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43は、層間絶縁膜57によって、共通電極72とゲートバスライン55と共通バスライン52とゲート電極から電気的に絶縁されている。
層間絶縁膜57上には、保護絶縁膜59が形成されており、層間絶縁膜57上にある画素電極71とドレインバスライン56、そして薄膜トランジスタ45のソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43は、保護絶縁膜59によって覆われている。
保護絶縁膜59の上には、有機高分子膜からなる配向膜31が形成されている。その配向膜31の表面には、所定の配向処理が施されている。
上記アクティブマトリックス基板と組み合わされる対向基板の構造も、図11に示したものと同じである。したがって、対向基板に関する説明は省略する。
以上の構成を持つ本第1実施形態の液晶表示装置は、例えば、次のようにして製造される。
アクティブマトリックス基板については、まず、ガラスからなる透明基板11上にCr膜を形成した後、これをパターン化して、ゲートバスライン55と共通電極72を形成する。次に、これらを覆うようにSiNx膜を形成して層間絶縁膜57とする。続いて、層間絶縁膜57上に、薄膜トランジスタ45の能動層である半導体膜を形成してからこれをパターン化し、層間絶縁膜57を介して対応するゲートバスライン55に重なる位置に、島状の半導体膜43を形成する。さらに、層間絶縁膜57上にCr膜を形成してからこれをパターン化し、ソース電極42とドレイン電極44とドレインバスライン56と画素電極71を形成する。次に、これらを覆うようにSiNx膜を形成して保護絶縁膜59とする。
また、対向基板については、ガラスからなる透明基板12上に、カラーフィルターおよび遮光用ブラックマトリックスを形成した後、それらを覆うように平坦化膜を形成し、さらに、平坦化膜上に柱状スペーサーを形成する。
その後、上記のように構成されたアクティブマトリックス基板および対向基板の表面に、ポリイミドからなる配向膜31および32をそれぞれ形成し、配向膜31および32の表面に一様に配向処理を施す。その後、両基板を4.0μmの間隔をあけて重ね合わせてから、その隙間に屈折率異方性が0.075のネマチック液晶を真空チャンバー(図示せず)内で注入する。最後に、アクティブマトリックス基板および対向基板の外側面にそれぞれ偏光板が貼りあわせる。こうして、図1および図2示した本第1実施形態の液晶表示装置が製造される。
以上述べたように、本第1実施形態の液晶表示装置では、アクティブマトリックス基板に設けられた液晶駆動電極である共通電極71と画素電極72とが、それぞれ屈曲部73と74を有しており、屈曲部73の各々に境界安定化電極75が、屈曲部74の各々に境界安定化電極76が設けられている。そして、境界安定化電極75の先端は、屈曲部73の対称線81から第2サブ領域2の側にずれており、境界安定化電極76の先端は、屈曲部74の対称線81から第1サブ領域1の側にずれている。このため、境界安定化電極75の上を通るディスクリネーション101のルートは、境界安定化電極75の先端のずれ(形状のずれ)に応じて第2サブ領域2の側に曲がりやすくなる。また、境界安定化電極76の上を通るディスクリネーション101のルートは、境界安定化電極76の先端のずれ(形状のずれ)に応じて第1サブ領域1の側に曲がりやすくなる。
したがって、当該液晶表示装置の画面が、指押し等による機械的変形を受けた場合、ディスクリネーション101のルートが一時的に揺らぐことがあっても、そのディスクリネーション101のルートは境界安定化電極75または76の先端のずれた側に復帰しようとするから、短時間で図2に示した元のルートに復元されて安定する。その結果、指押し等の機械的変形を受けた場合にも、表示の乱れ(指押し痕)が長時間残ることなく、均一で安定した表示を実現することができる。
特に、従来の技術ではどうしても解決できなかった、斜め観察をした時にかすかに認識できる程度の軽微な指押し痕さえも、完全に抑制することが可能である。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態の液晶表示装置において、アクティブマトリックス基板上の画素電極と共通電極にそれぞれ設けられた境界安定化電極の近傍の構成を示す部分拡大平面図である。本第2実施形態では、上記第1実施形態の構成と共通する部分に同一符号を付して説明する。
本第2実施形態は、ヒゲ状の境界安定化電極75と境界安定化電極76が、すべて、上側(第1サブ領域1の側)に屈曲している点のみが異なっており、他の構成は上記第1実施形態と同じである。
すなわち、図3に示すように、画素電極71の梯子段部分の屈曲部73の各々に形成された境界安定化電極75は、第1および第2のサブ領域1、2の境界線に沿って引いた対称線81に沿って左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出していると共に、その対称線81から上側(第1サブ領域1の側)に向かって逸れるように斜めに屈曲している。また、境界安定化電極75は、画素電極71の屈曲部73から突出した突起として当該画素電極71と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極75の先端縁77は、対称線81(屈曲部73)に対して第1サブ領域1の側にずれて配置されている。
共通電極72の梯子段部分の屈曲部74の各々に形成された境界安定化電極76は、境界安定化電極75と同様に、対称線81に沿って左側に突出していると共に、その対称線81から上側(第1サブ領域1の側)に向かって逸れるように斜めに屈曲されている。また、境界安定化電極76は、共通電極72の屈曲部74から突出した突起として当該共通電極72と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極76の先端縁78は、対称線81(屈曲部74)に対して第1サブ領域1の側にずれて配置されている。つまり、境界安定化電極76の屈曲した向きが、境界安定化電極75のそれと同じになっている。境界安定化電極76の屈曲の角度は、境界安定化電極75のそれと同じである。
このように、対称線81に沿って交互に配置されている共通電極72の境界安定化電極76と画素電極71の境界安定化電極75が、いずれも、対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)に向かって屈曲されているのである。
画素電極71の各境界安定化電極75の先端縁77は、隣接する共通電極72の基端縁72f(第2サブ領域2にあるもの)に近接していると共に、その基端縁72fに対して略平行になっている。共通電極72の各境界安定化電極76の先端縁78は、隣接する画素電極71の基端縁71f(第1サブ領域1にあるもの)に近接していると共に、その基端縁71fに対して略平行になっている。
本第2実施形態の構成では、画素電極71の境界安定化電極75と共通電極72の境界安定化電極76のすべてが、上側(第1サブ領域1の側)に向かって屈曲されているので、境界安定化電極75の上を通るディスクリネーション101と、境界安定化電極76の上を通るディスクリネーション101とは、いずれも、境界安定化電極76の屈曲形状(形状のずれ)に沿って上側に曲がるルートをとりやすい傾向を持つ。その結果、機械的変形を受けない場合には、図3に示すように、ディスクリネーション101の上側に曲がるルートが対称線81に沿って並ぶことになる。
よって、本第2実施形態の液晶表示装置の画面が、指押し等による機械的変形を受けた場合、ディスクリネーション101のルートが一時的に揺らぐことがあっても、そのディスクリネーション101のルートは境界安定化電極75または76の先端のずれた側に復帰しようとするから、短時間で図3に示した元のルートに復元されて安定する。その結果、指押し等の機械的変形を受けた場合にも、表示の乱れ(指押し痕)が長時間残ることなく、均一で安定した表示を実現することができる。
特に、従来の技術ではどうしても解決できなかった、斜め観察をした時にかすかに認識できる程度の軽微な指押し痕さえも、完全に抑制することが可能である。
なお、図3に示したものとは逆に、画素電極71の境界安定化電極75と共通電極72の境界安定化電極76とが、対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)に向かって屈曲されてもよいことは言うまでもない。
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態の液晶表示装置において、アクティブマトリックス基板上の画素電極と共通電極にそれぞれ設けられた境界安定化電極の近傍の構成を示す部分拡大平面図である。本第3実施形態では、上記第1実施形態の構成と共通する部分に同一符号を付して説明する。
本第3実施形態は、ヒゲ状の境界安定化電極75と境界安定化電極76が、上述した第1及び第2の実施形態のように屈曲されておらず、上側(第1サブ領域1の側)または下側(第2サブ領域2の側)に全体的にずれている(シフトしている)点のみが異なっており、他の構成は上記第1実施形態と同じである。
すなわち、図4に示すように、画素電極71の梯子段部分の屈曲部73の各々に形成された境界安定化電極75は、第1および第2のサブ領域1、2の境界線に沿って引いた対称線81に平行に左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出していると共に、その全体が対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)に平行にずれている。また、境界安定化電極75は、画素電極71の屈曲部73から突出した突起として当該画素電極71と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極75の先端縁77だけでなく、境界安定化電極75の全体が、対称線81(屈曲部73)に対して第2サブ領域2の側にずれて配置されている。
共通電極72の梯子段部分の屈曲部74の各々に形成された境界安定化電極76は、境界安定化電極75と同様に、対称線81に平行に左側に突出していると共に、その全体が対称線81から上側(第1サブ領域1の側)に平行にずれている。また、境界安定化電極76は、共通電極72の屈曲部74から突出した突起として当該共通電極72と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極76の先端縁78だけでなく、境界安定化電極76の全体が、対称線81に対して第1サブ領域1の側にずれて配置されている。つまり、境界安定化電極76のずれの向きは、境界安定化電極75のそれとは逆になっている。境界安定化電極76のずれの距離は、境界安定化電極75のそれと同じである。
このように、第1サブ領域1と第2サブ領域2の境界線に沿って引いた対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)に向かってずれた、共通電極72の境界安定化電極76と、対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)に向かってずれた、画素電極71の境界安定化電極75とが、対称線81に沿って交互に配置されている。
画素電極71の各境界安定化電極75の先端縁77は、隣接する共通電極72の基端縁72f(第2サブ領域2にあるもの)に近接している。共通電極72の各境界安定化電極76の先端縁78は、隣接する画素電極71の基端縁71f(第1サブ領域1にあるもの)に近接している。各境界安定化電極75の先端縁77は、画素電極71の梯子段部分と同様に、略「く」字状(山型)に形成されている。各境界安定化電極76の先端縁78も、共通電極72の梯子段部分と同様に、略「く」字状(山型)に形成されている。
本第3実施形態の構成では、画素電極71の境界安定化電極75の全体が、対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)にずれて配置され、共通電極72の境界安定化電極76の全体が、対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)にずれて配置されているので、境界安定化電極75の上を通るディスクリネーション101は、境界安定化電極75の位置ずれに応じて下側に曲がるルートをとりやすい傾向を持ち、境界安定化電極76の上を通るディスクリネーション101は、境界安定化電極76の位置ずれに応じて上側に曲がるルートをとりやすい傾向を持つ。その結果、機械的変形を受けない場合には、図4に示すように、ディスクリネーション101の下側に曲がるルートと上側に曲がるルートとが、対称線81に沿って交互に並ぶことになる。
よって、本第3実施形態の液晶表示装置の画面が、指押し等による機械的変形を受けた場合、ディスクリネーション101のルートが一時的に揺らぐことがあっても、そのディスクリネーション101のルートは境界安定化電極75または76の位置ずれの側に復帰しようとするから、短時間で図4に示した元のルートに復元されて安定する。その結果、指押し等の機械的変形を受けた場合にも、表示の乱れ(指押し痕)が長時間残ることなく、均一で安定した表示を実現することができる。
特に、従来の技術ではどうしても解決できなかった、斜め観察をした時にかすかに認識できる程度の軽微な指押し痕さえも、完全に抑制することが可能である。
なお、画素電極71の境界安定化電極75と共通電極72の境界安定化電極76を、すべて、対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)または下側(第2サブ領域2の側)にずらして配置してもよい。
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態の液晶表示装置において、アクティブマトリックス基板上の画素電極と共通電極にそれぞれ設けられた境界安定化電極の近傍の構成を示す部分拡大平面図である。本第4実施形態では、上記第1実施形態の構成と共通する部分に同一符号を付して説明する。
本第4実施形態は、上記第1実施形態と第3実施形態を組み合わせたものに相当する。すなわち、図5に示すように、画素電極71の境界安定化電極75の各々は、対称線81に平行に左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出していると共に、その全体が対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)に平行にずれている。また、境界安定化電極75は、画素電極71の屈曲部73から突出した突起として当該画素電極71と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極75の大部分が、対称線81(屈曲部73)に対して第2サブ領域2の側にあり、境界安定化電極75の残りの部分が第1サブ領域1の側にある。
共通電極72の境界安定化電極76の各々は、対称線81に平行に左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出していると共に、その全体が対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)に平行にずれている。また、境界安定化電極76は、共通電極72の屈曲部74から突出した突起として当該共通電極72と一体的に形成されている。その結果、境界安定化電極76の大部分が、対称線81(屈曲部73)に対して第1サブ領域1の側にあり、境界安定化電極76の残りの部分が第2サブ領域2の側にある。
このように、対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)に向かってずれた、共通電極72の境界安定化電極76と、対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)に向かってずれた、画素電極71の境界安定化電極75とが、対称線81に沿って交互に配置されている。
画素電極71の各境界安定化電極75の先端縁77は、隣接する共通電極72の基端縁72fに近接している。各境界安定化電極75の先端縁77は、画素電極71の梯子段部分と同様に、略「く」字状(山型)に形成されており、その頂点は対称線81上に位置している。先端縁77の第2サブ領域2内にある部分が対称線81に対してなす角度は、90゜に近いが、その先端縁77の第1サブ領域1内にある部分が対称線81に対してなす角度は、それよりはるかに小さく(30゜程度)とされている。先端縁77の角度をその頂点の両側でこのように異ならせることにより、上述した第1実施形態のように、先端縁77を対称線81に対して第2サブ領域2の側にずらしたのと同等の作用が得られるため、図5に示すように、境界安定化電極75の上を通るディスクリネーション101は、境界安定化電極75の位置ずれに応じて下側に曲がるルートをとりやすい傾向を持つ。
共通電極72の各境界安定化電極76の先端縁78は、隣接する画素電極71の基端縁71fに近接している。各境界安定化電極76の先端縁78は、共通電極72の梯子段部分と同様に、略「く」字状(山型)に形成されており、その頂点は対称線81上に位置している。先端縁78の第1サブ領域1内にある部分が対称線81に対してなす角度は、90゜に近いが、その先端縁78の第2サブ領域2内にある部分が対称線81に対してなす角度は、それよりはるかに小さく(30゜程度)とされている。先端縁78の角度をその頂点の両側でこのように異ならせることにより、上述した第1実施形態のように、先端縁78を対称線81に対して第1サブ領域1の側にずらしたのと同等の作用が得られるため、図5に示すように、境界安定化電極76の上を通るディスクリネーション101は、境界安定化電極76の位置ずれに応じて上側に曲がるルートをとりやすい傾向を持つ。
したがって、機械的変形を受けない場合には、図5に示すように、ディスクリネーション101の下側に曲がるルートと上側に曲がるルートとが、対称線81に沿って交互に並ぶことになる。
よって、本第3実施形態の液晶表示装置の画面が、指押し等による機械的変形を受けた場合、ディスクリネーション101のルートが一時的に揺らぐことがあっても、そのディスクリネーション101のルートは境界安定化電極75または76の位置ずれの側に復帰しようとするから、短時間で図5に示した元のルートに復元されて安定する。その結果、指押し等の機械的変形を受けた場合にも、表示の乱れ(指押し痕)が長時間残ることなく、均一で安定した表示を実現することができる。
特に、従来の技術ではどうしても解決できなかった、斜め観察をした時にかすかに認識できる程度の軽微な指押し痕さえも、完全に抑制することが可能である。
なお、画素電極71の境界安定化電極75と共通電極72の境界安定化電極76を、すべて、対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)または下側(第2サブ領域2の側)にずらして配置してもよい。その場合、ディスクリネーション101のルートは、上述した第2実施形態(図3を参照)のようになる。
(第5実施形態)
図6および図7は、本発明の第5実施形態の横電界方式の液晶表示装置を示す。図6は、その液晶表示装置のアクティブマトリックス基板の平面図であり、一つの画素領域の構成を示している。図7は、そのアクティブマトリックス基板上の画素電極71と共通電極72にそれぞれ設けられた境界安定化電極75aと76aの近傍の構成を示す部分拡大平面図である。
本第5実施形態の液晶表示装置の構成は、従来技術で説明した図13および図14の液晶表示装置の構成と共通する部分が多いので、当該従来構成と同一部分には同一符号を付して、適宜その説明を省略する。
本第5実施形態の液晶表示装置のアクティブマトリックス基板の平面構造は、図6に示すとおりであるが、その断面構造は、図14に示した従来のアクティブマトリックス基板の断面構造と同じである。
すなわち、本第5実施形態では、上記第1実施形態の構成(図1と図2を参照)と同様に、透明基板11の表面に層間絶縁膜57と保護絶縁膜59がこの順に積層形成されているが、それらに加えて保護絶縁膜59上に層間絶縁膜60が積層されている(図14を参照)。画素電極71と共通電極72は、上記第1実施形態の構成とは異なり、いずれも層間絶縁膜60上に形成されている。画素電極71は、V字形に屈曲しているドレインバスライン56に沿ってV字形に延在する櫛歯状部分を3本有している。共通電極72は、V字形に屈曲しているドレインバスライン56に沿ってV字形に延在する櫛歯状部分を4本有している。画素電極71と共通電極72の櫛歯状部分は、ゲートバスライン55に沿って所定の間隔をあけて交互に配置されていて、互いに噛合した形になっている。
透明基板11の表面には、図14に示したように、ゲートバスライン55と共通バスライン52と薄膜トランジスタ45のゲート電極に加えて、共通補助電極72aが形成されており、これらは層間絶縁膜57によって覆われている。共通補助電極72aは、各画素領域に2本ずつ設けてあり、当該画素領域の両側にある2本のドレインバスライン56の各々の近傍において、それらドレインバスライン56に沿って延在している。共通補助電極72aは、層間絶縁膜60上に形成された共通電極72と、透明基板11の表面上に形成された共通バスライン52とを、電気的に相互接続している。
層間絶縁膜57上には、ドレインバスライン56と、薄膜トランジスタ45のソース電極42とドレイン電極44と半導体膜43に加えて、図14に示したように、画素補助電極71aが形成されており、これらは層間絶縁膜60によって覆われている。画素補助電極71aは、各画素領域に1本ずつ設けてあり、当該画素領域の中央部にある画素電極71の櫛歯状部分と重なり合っている。画素補助電極71aは、層間絶縁膜60上に形成された画素電極71と、層間絶縁膜57上に形成されたソース電極42とを、電気的に相互接続している。このため、画素補助電極71aは、当該画素領域にあるソース電極42に電気的・機械的に接続されている。
各画素領域において、画素電極71は、保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を貫通するコンタクトホール61と、画素補助電極71aとを介して、対応する薄膜トランジスタ45のソース電極42に電気的に接続されている。共通電極72は、層間絶縁膜57と保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を貫通するコンタクトホール62と、共通補助電極72aとを介して、対応する共通バスライン52に電気的に接続されている。
ドレイン電極44は、対応するドレインバスライン56に電気的・機械的に接続され、ゲート電極は、対応するゲートバスライン55に電気的・機械的に接続されている点は、上記第1実施形態の構成と同じである。層間絶縁膜60上に有機高分子膜からなる配向膜31が形成されており、その配向膜31の表面に所定の配向処理が施されている点も、図1および図2に示した構成と同じである。
本第5実施形態では、画素電極71と共通電極72が層間絶縁膜60上に形成されていて、ゲートバスライン55やドレインバスライン56よりも上層(液晶層20に近い側)にある。境界安定化電極75aと境界安定化電極76aは、いずれも、ゲートバスライン55またはドレインバスライン56と同層の金属膜により形成されている。ゲートバスライン55と同層の金属膜により形成される場合、境界安定化電極75aと境界安定化電極76aは、透明基板11の表面に配置され、層間絶縁膜57により覆われる。ドレインバスライン56と同層の金属膜により形成される場合、境界安定化電極75aと境界安定化電極76aは、層間絶縁膜57の上に配置され、保護絶縁膜59により覆われる。境界安定化電極75aと境界安定化電極76aは、共通バスライン52あるいは他の電極またはバスラインなどとは接続されておらず、電気的にフローティングとなっている。
上記アクティブマトリックス基板と組み合わされる対向基板の構造は、図14(及び図11)に示したものと同じである。したがって、対向基板に関する説明は省略する。
図7に示すように、境界安定化電極75aの各々は、層間絶縁膜57と保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を介して、あるいは保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を介して、対応する画素電極71の屈曲部73と部分的に重畳するように配置されている。それらの重畳時の平面形状は、上述した第1実施形態において一体的に形成された画素電極71と境界安定化電極75の平面形状(図2を参照)と同じである。つまり、境界安定化電極75aの基端側に形成された「く」字状の重畳屈曲部79が、対応する画素電極71の屈曲部73に重畳しており、その境界安定化電極75aの屈曲した突出部が、第1および第2のサブ領域1、2の境界線に沿って引いた対称線81に沿って左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出していると共に、その対称線81から下側(第2サブ領域2の側)に向かって逸れるように斜めに屈曲している。
境界安定化電極76aの各々は、層間絶縁膜57と保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を介して、あるいは保護絶縁膜59と層間絶縁膜60を介して、対応する共通電極72の屈曲部74と部分的に重畳するように配置されている。それらの重畳時の平面形状は、上述した第1実施形態において一体的に形成された共通電極72と境界安定化電極76の平面形状(図2を参照)と同じである。つまり、境界安定化電極76aの基端側に形成された「く」字状の重畳屈曲部80が、対応する共通電極72の屈曲部74に重畳しており、その境界安定化電極76aの屈曲した突出部が、対称線81に沿って左側(つまり梯子段部分の屈曲した側)に突出していると共に、その対称線81から上側(第1サブ領域1の側)に向かって逸れるように斜めに屈曲している。
このように、対称線81に対して上側(第1サブ領域1の側)に向かって屈曲された、共通電極72用の境界安定化電極76aと、対称線81に対して下側(第2サブ領域2の側)に向かって屈曲された、画素電極71用の境界安定化電極75aとが、対称線81に沿って交互に配置されている。
画素電極71用の各境界安定化電極75aの先端縁77は、隣接する共通電極72の基端縁72f(第2サブ領域2にあるもの)に近接していると共に、その基端縁72fに対して略平行になっている。共通電極72用の各境界安定化電極76aの先端縁78は、隣接する画素電極71の基端縁71f(第1サブ領域1にあるもの)に近接していると共に、その基端縁71fに対して略平行になっている。
本第5実施形態では、上記第1実施形態と同様に、境界安定化電極75aの上を通るディスクリネーション101のルートは、境界安定化電極75aの先端のずれ(形状のずれ)に応じて第2サブ領域2の側に曲がりやすくなる。また、境界安定化電極76aの上を通るディスクリネーション101のルートは、境界安定化電極76の先端のずれ(形状のずれ)に応じて第1サブ領域1の側に曲がりやすくなる。したがって、上記第1実施形態と同様の効果が得られることが明らかである。
図8は、本第5実施形態の構成による設計値の具体例を示す図である。
図8に示されるように、例えば、画素電極71と共通電極72の横方向の幅(図8中の左右方向に測った長さ)Wを3.5μm、これら電極71、72の横方向の間隔(図8中の左右方向に測った長さ)Kを9.5μmとした時、境界安定化電極75a、76aの先端側の長さが約6.0μmの部分を約15゜の角度で屈曲させた。つまり、境界安定化電極75a、76aの屈曲寸法Sを約6.0μmとし、屈曲角度を約15゜とした。その結果、境界安定化電極75a、76aの先端77、78は、対称線81から約1.5μmずれていた。つまり、ずらし量Zが約1.5μmとなった。
画素電極71と共通電極72の櫛歯状部分の延在する方向は、対称線81を境界として、図中の縦方向(上下方向)に対して、それぞれ+15度および−15度の方向であった。液晶層22の厚みは、4.0μmであった。
本発明の効果は、境界安定化電極75a、76aの先端77、78のずらし量Zが0.5μm程度であっても得られる。しかし、図8を参照して示した設計値の具体例に示すように、ずらし量Zを液晶層22の厚みのおよそ1/3程度以上に設定することによって、本発明の効果をいっそう確実に得ることができる。ただし、ずらし量Zを、液晶層22の厚みの2倍を超える程度まで大きくすると、ディスクリネーション101のルートが境界安定化電極75a、76a上から逸脱してしまい、そのルートが不安定になってしまう恐れがある。そこで、ずらし量Zは、液晶層22の厚みの1/3程度以上、2倍程度以下であることが好ましい。そうすれば、ディスクリネーション101のルートが安定するからである。
(第6実施形態)
図9は、本発明の第6実施形態の液晶表示装置において、アクティブマトリックス基板上の画素電極と共通電極にそれぞれ設けられた境界安定化電極の近傍の構成を示す部分拡大平面図である。本第6実施形態では、上記第5実施形態の構成と共通する部分に同一符号を付して説明する。
本第6実施形態は、上記第5実施形態の構成において、画素電極71の櫛歯状部分の各々に、突起状の境界安定化電極75bを付加し、共通電極72の櫛歯状部分の各々に、突起状の境界安定化電極76bを付加したものである。
境界安定化電極75bは、画素電極71の櫛歯状部分から対称線81に平行に左側(つまり櫛歯状部分の屈曲した側)に突出していると共に、その中心軸が対称線81上に位置している。境界安定化電極76bは、共通電極72の櫛歯状部分から対称線81に平行に左側(つまり櫛歯状部分の屈曲した側)に突出していると共に、その中心軸が対称線81上に位置している。このような構成にすることにより、上記第5実施形態よりも、画素電極71の櫛歯状部分と境界安定化電極75bの重畳部の面積と、共通電極72の櫛歯状部分と境界安定化電極76bの重畳部の面積が増加するため、上記第5実施形態と同じ効果が得られるだけでなく、上記第5実施形態よりもいっそう確実にディスクリネーション101の制御を行うことができる、という効果が得られる。
本第6実施形態の構成では、境界安定化電極75bおよび76bについても、上記第1〜第4実施形態と同様に、それらの形状を対称線81から逸れるように変形させた形状とすることも可能である。
(他の実施形態)
なお、上記第1〜6の実施形態は、本発明の好適な例を示すものである。本発明はこれら実施形態に限定されず、種々の変形が可能なことは言うまでもない。
例えば、上記第1〜6の実施形態では、アクティブマトリックス基板に設けられた液晶駆動電極である共通電極71の屈曲部73の各々に境界安定化電極75が設けられると共に、同アクティブマトリックス基板に設けられた液晶駆動電極である画素電極72の屈曲部74の各々に境界安定化電極76が設けられているが、本発明はこれに限定されない。共通電極71の境界安定化電極75及び画素電極72の境界安定化電極76の少なくとも一方が存在すれば本発明の効果は得られるため、境界安定化電極75または76を省略してもよいし、図12の従来構成に示した境界安定化電極95または96のように、位置及び形状のずれのない直線状のものとしてもよい。
また、上記第1実施形態(図2を参照)では、境界安定化電極75の基部が対称線81上に位置していると共に、その中央部付近より対称線81から下側(第2サブ領域2の側)に向かって逸れるように屈曲されていて、境界安定化電極75の先端縁77が対称線81に対して第2サブ領域2の側にずれているが、本発明はこれに限定されない。図2において、各境界安定化電極75を共通電極71に対して上側(第1サブ領域1側)に少しずらすことにより、その先端縁77の中心を対称線81に重ねると共に、各境界安定化電極75の基部を対称線81から上側にずらしてもよい。この場合、各境界安定化電極76を画素電極72に対して下側に少しずらすことにより、その先端縁78の中心を対称線81に重ねると共に、各境界安定化電極76の基部を対称線81から下側にずらすことになる。この点は、上記第3実施形態(図3を参照)、上記第5実施形態(図7を参照)及び上記第5実施形態(図7を参照)についても同様に適用することができる。