以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
すなわち、図1、図2及び図6は本発明に係る高圧用メカニカルシール装置の第1の実施形態を示すもので、図1は当該メカニカルシール装置の要部の縦断側面図であり、図2は当該メカニカルシール装置の全体構成を示す系統図であり、図6は当該メカニカルシールに使用される均圧器の一例を示す縦断側面図である。
図1及び図2に示す高圧流体用メカニカルシール装置(以下「第1メカニカルシール装置」という」は、液状の高圧流体(例えば、高圧水等)Kを扱う竪型の回転機器(例えば、縦軸高圧ポンプ等)の軸封手段として使用されるもので、機内領域である被密封流体領域Aと機外領域である大気領域Bとを軸線方向に直列配置した第1及び第2メカニカルシール1a,2aにより遮蔽シールするように構成されたタンデムシールであり、被密封流体領域Aと両メカニカルシール1a,2a間に形成された中間領域Cとを均圧器4aを介して連通接続すると共に、中間領域Cに被密封流体領域Aの圧力つまりシールすべき高圧流体(被密封流体)Kの圧力より若干低圧のシール液Lを充填・封入して、被密封流体領域Aと大気領域Bとを中間領域Cを介してシールするように構成されている。なお、シール液Lはシール条件に応じて選定されるが、この例では清水が使用されている。
第1メカニカルシール1aは、図1に示す如く、シールケース5に固定した静止密封環11とその被密封流体領域側(下方側)に配してシールケース5を洞貫する回転軸6に軸線方向移動可能に保持された回転密封環12と回転密封環12を静止密封環11へと押圧附勢するスプリング13とを具備して、両密封環11,12の対向端面たる密封端面の相対回転摺接作用により、当該相対回転摺接部分の外周側領域を含む被密封流体領域Aとその内周側領域を含む中間領域Cとを遮蔽シールするように構成された端面接触形のメカニカルシールである。なお、回転軸6は軸本体6aとこれに適宜のスリーブ固定手段(この例ではシュリンクリング)6cにより挿通固定したスリーブ6bとで構成されている。
回転密封環12は基端部にドライブカラー12aを連結したものであり、回転軸6のスリーブ6bにOリング14を介して軸線方向移動可能に嵌合保持されている。回転軸6のスリーブ6bには、回転密封環12の被密封流体領域側に配してスプリングリテーナ15が固定されると共にスプリングリテーナ15の被密封流体領域側近傍位(下方近傍位)に配して循環リング16が固着されている。循環リング16の外周部は上方へ突出し且つシールケース5の内周面に近接する円筒状部16aに構成されており、円筒状部16aにはこれを径方向に貫通する複数の循環孔16bが形成されている。被密封流体領域Aは、図1に示す如く、外周にラビリンスを形成した循環リング16により、両密封環11,12の相対回転摺接部分の外周側領域である第1メカニカルシール1の配設領域(以下「第1フラッシング領域」という)A1とそれ以外の領域とに区画されている。回転密封環12とスプリングリテーナ15との間には、回転密封環12を静止密封環11へと押圧接触させるべく附勢するスプリング13及び回転密封環12の回転軸6に対する相対回転を阻止するドライブピン17が介装されている。
第2メカニカルシール2aは、図1に示す如く、第1メカニカルシール1aの大気領域側(上方側)に第1メカニカルシール1aとタンデム形態をなして配置されており、シールケース5に固定した静止環21と静止環21の被密封流体領域側に配して回転軸6に軸線方向移動可能に保持された回転環22と両環21,22間に挟圧保持された遊動環23と回転環22を静止環21へと押圧附勢するスプリング24とを具備して、回転環22と遊動環23との対向端面である密封端面の相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域を含む中間領域Cとその内周側領域を含む大気領域Bとを遮蔽シールするように構成された端面接触形のメカニカルシール(遊動環形メカニカルシール)である。
回転環22は基端部にドライブカラー22aを連結したもので、回転軸6のスリーブ6bにOリング25を介して軸線方向移動可能に嵌合保持されている。回転軸6のスリーブ6bには、回転環22の被密封流体領域側(下方側)に配してスプリングリテーナ26が嵌合固定されている。スプリングリテーナ26の基端部(被密封流体領域側の端部)には循環リング27が一体形成されている。循環リング27の外周部は上方へ突出し且つシールケース5の内周面に近接する円筒状部27aに構成されており、円筒状部27aにはこれを径方向に貫通する複数の循環孔27bが形成されている。中間領域Cは、循環リング27により両環22,23の相対回転摺接部分の外周側領域である第2メカニカルシール2aの配設領域(以下「第2フラッシング領域」という)C1とそれ以外の領域とに区画されている。回転環22とスプリングリテーナ26との間には、回転環22を遊動環23へと押圧接触させるべく附勢するスプリング24及び回転環22の回転軸6に対する相対回転を阻止するドライブピン28が介装されている。遊動環23は、スプリング24による附勢力によって静止環21と回転環22との間に挟圧保持されており、静止環21との間及びシールケース5との間には夫々Oリング29a,29bが装填されている。遊動環23にはこれを軸線方向に貫通する適当数の連通孔23a及び係合孔が形成されており、静止環21に突設したドライブピン21aを当該係合孔に係合させることにより遊動環23の静止環21(及びシールケース5)に対する相対回転が阻止されている。
シールケース5は円形内周面を有する筒状のもので、図1及び図2に示す如く、被密封流体領域Aに開口する高圧流体口51a及び中間領域Cに開口する低圧流体口51bが形成されている。高圧流体口51aは被密封流体領域Aに開口されるが、この例では、図1に示す如く、第1フラッシング領域A1を除く被密封流体領域Aの適所であって循環リング16の近傍位に開口されており、低圧流体口51bは第2フラッシング領域C1の適所であって遊動環23と循環リング27との間に開口されている。
而して、両圧力口51a,51bは、図1及び図2に示す如く、均圧器4aを介して連通接続されており、この均圧器4aは、図6に示す如く、シリンダ41内にピストン42を装填してなるもので、一般的なピストン・シリンダと同様構造をなすものである。
すなわち、シリンダ41は上下方向に伸びる円筒状の密閉容器である。ピストン42は、一端面たる上面の中心部に上方へと延びるピストンロッド42aを連結してなる円盤状のものであり、ピストンロッド42aをシリンダ41の上壁に貫通支持させることにより、シリンダ41内に進退自在(軸線方移動自在)に装填されている。なお、ピストン42とシリンダ41の内壁面との接触部及びピストンロッド42aとこれが貫通するシリンダ41の上壁との接触部はOリングにより相対運動自在にシールされている。
シリンダ41内の密閉空間は、ピストン42により、ピストンロッド42aが存在する高圧流体用空間43aとピストンロッド42aが存在しない低圧流体用空間43bとに仕切られており、ピストン受圧面積つまりピストン42における流体用空間43a,43b内の流体圧力を受ける面積はピストンロッド42aの存否により異なることになる。すなわち、低圧流体用空間43bにおけるピストン受圧面積S2はシリンダ41の内部空間断面積に一致するが、高圧流体用空間43aにおけるピストン受圧面積S1はシリンダ41の内部空間断面積つまり上記ピストン受圧面積S2からピストンロッド42aの断面積S3を差し引いた値となっており、低圧流体用空間43bにおけるピストン受圧面積S2より小さくなっている。
シリンダ41には、図6に示す如く、高圧流体用空間43aの上端部に開口する高圧流体口41a及び低圧流体用空間43bの下部に開口する低圧流体口41bが形成されており、図2に示す如く、夫々シールケース5に形成した高圧流体口51a及び低圧流体口51bに連通接続されている。すなわち、高圧流体口41a,51a間を高圧流体用配管71aで接続すると共に低圧流体口41b,51b間を低圧流体用配管71bで接続してあって、高圧流体用配管71aから高圧流体用空間43aに高圧流体である被密封流体領域Aの流体(被密封流体)Kが導入されると共に、低圧流体用配管71bから低圧流体用空間43bに低圧流体である中間領域Cの流体(シール液)Lが導入されるようになっている。
ところで、被密封流体Kの圧力をP1とし、シール液Lの圧力をP2とすると、均圧器4aにおいては、ピストン42の両側の圧力P1,P2(P1>P2)と前記ピストン受圧面積S1,S2(S1<S2)との間にはパスカルの原理によりP1・S1=P2・S2の関係が成立することになる。すなわち、低圧流体(シール液)Lの圧力P2に対する高圧流体(被密封流体)Kの圧力P1の比率 (以下「圧力比」という)P1/P2と高圧流体用空間43aにおけるピストン受圧面積S1に対する低圧流体用空間43bにおけるピストン受圧面積S2の比率(以下「ピストン受圧面積比ξ」という)S2/S1とが等価となる関係(P1/P2=S2/S1)が成立することになる。一方、ピストン受圧面積比ξ(=S2/S1)は、ピストンロッド42aの断面積S3のみを変更することによって任意に設定することができる。
而して、均圧器4aにあっては、ピストン受圧面積比ξが第1メカニカルシール装置の設計段階ないし運転開始段階で設定される被密封流体Kの圧力(以下「被密封流体設定圧P1a」という」とこれより所定圧(若干圧)低く設定される中間領域Cの圧力(以下「シール液設定圧P2a」という)との圧力比P1a/P2aとなる(ξ=S2/S1=P1a/P2a)ように設定されている。また、運転開始段階(P1=P1a,P2=P2aである場合)において、ピストン42が、図6(A)に示す如く、シリンダ41の上下方向中間位置(以下「基準位置」という)に位置されるように設定されている。
したがって、回転機器の運転状況の変化によって被密封流体領域Aの圧力P1が上昇した場合や第2メカニカルシール2aから大気領域Bへのシール液漏洩等によって中間領域Cの圧力P2が低下した場合には、図6(B)に示す如く、ピストン42が低圧流体用空間43bの容積を減少させる方向に移動し(例えば、基準位置(図6(A)に示す位置)から下方に移動し)、この低圧流体用空間43bの容積減少量に応じた増加圧力が低圧流体用配管71bから中間領域Cへと伝播され、中間領域Cの圧力P2が上昇することになる。そして、ピストン42は、その両側に作用する流体圧力による押圧力がバランスされた位置で静止するが、このとき、高圧流体用空間43aの圧力P1と低圧流体用空間43bの圧力P2との圧力比P1/P2はピストン受圧面積比ξ(=P1a/P2a)と等価となり、変化しない。すなわち、被密封流体領域Aの圧力P1が中間領域Cの圧力P2に対して必要以上に高くなるようなことがなく、その圧力比P1/P2は当該圧力変動前と同一に保持されて、つまり一定(P1/P2=ξ)に保持される。
このように、被密封流体領域Aの圧力P1が上昇し及び/又は中間領域Cの圧力P2が下降した場合にも、両圧力P1,P2の差圧が予め設定された差圧(P1a−P2a)に比して必要以上に増大することがなく、第1メカニカルシール1aに過大な負荷が作用せず、第1メカニカルシール1aによるシール機能が良好に発揮される。
また、回転機器の運転状況の変化によって被密封流体領域Aの圧力P1が低下した場合や第1メカニカルシール1から中間領域Cへの被密封流体漏洩等によって中間領域Cの圧力P2が上昇した場合には、図6(C)に示す如く、ピストン42が低圧流体用空間43bの容積を増大させる方向に移動し(例えば、前記基準位置から上方に移動し)、この低圧流体用空間43bの容積増大量に応じた圧力減少が低圧流体用配管42から中間領域Cへと伝播され、中間領域Cの圧力P2が低下することになる。そして、ピストン42は、その両側に作用する流体圧力による押圧力がバランスされた位置で静止するが、このとき、高圧流体用空間43aの圧力P1と低圧流体用空間43bの圧力P2との圧力比P1/P2は、上記した場合と同様に、ピストン受圧面積比ξ(設定された圧力比P1a/P2a)と等価となり、一定である。
したがって、被密封流体領域Aの圧力P1が下降し及び/又は中間領域Cの圧力P2が上昇した場合にも、両圧力P1,P2の差圧が予め設定された差圧(P1a−P2a)に比して必要以上に減少したり両圧力P1,P2の関係が逆転する逆圧現象(P1<P2)が生じたりすることがなく、第1メカニカルシール1aによるシール機能が良好に発揮される。
このように、第1メカニカルシール装置にあっては、被密封流体領域Aの圧力P1及び/又は中間領域Cの圧力P2が増減変化した場合にも、これらの圧力比P1/P2が常に一定に保持される(P1/P2=ξ)ことになり、当該圧力比P1/P2が異常に増減したり逆圧現象(P1<P2)を生じることによる第1メカニカルシール1aのシール機能低下はこれが確実に防止される。
ところで、均圧器4aにあっては、上記した如く、被密封流体領域Aの圧力P1と中間領域Cの圧力P2との圧力比P1/P2を一定に保持すべくピストン42がシリンダ41内を移動(上下移動)するが、この移動量ないし移動位置を検知する検知装置を均圧器4aに付設しておくことにより回転機器異常ないしメカニカルシール異常を検知することや回転機器ないしメカニカルシールの運転状況をモニタリングすることが可能となる。このようなピストン42の移動量ないし移動位置を検知する検知装置としては種々のものが考えられるが、この例では、当該検知装置として、図6に示す如く、均圧器4aにピストン42の上下移動における上下限位置をシリンダ41から上方に突出するピストンロッド42aによってON,OFF作動されるリミットスイッチ45a,45b及びピストン42の移動量を当該ピストンロッド42aの上端位置で視認検知するメジャー46を付設してある。すなわち、シリンダ41の上面部に、ピストン42が前記基準位置から所定量上昇した上限位置(図6(C)の鎖線位置)に位置されたときにおいてピストンロッド42aの上端(又はピストンロッド42aに設けた作動子)によりON作動(又はOFF作動)される上限リミットスイッチ45a及びピストン42が前記基準位置から所定量下降した下限位置(図6(A)の鎖線位置)に位置されたときにおいてピストンロッド42aの上端(又はピストンロッド42aに設けた作動子)によりOFF作動(又はON作動)される下限リミットスイッチ45bを支持させて、ピストン42が上限位置又は下限位置まで移動したことを検知するようになっている。したがって、上限リミットスイッチ45aがON作動(又はOFF作動)されることにより被密封流体Kの圧力P1が異常に下降したこと或いは中間領域Cの圧力P2が異常に上昇したことを検出でき、また下限リミットスイッチ45bがOFF作動(又はON作動)作動されることにより被密封流体Kの圧力P1が異常に上昇したこと或いは中間領域Cの圧力P2が異常に下降したことを検出でき、リミットスイッチ45a,45bの上記作動によって何らかの対応処置(例えば、回転機器の停止等)を人為的に行うこと(例えば、リミットスイッチ45a,45bの作動により適宜の警報を発し、これにより作業者が対応処置を人為的に行う)或いは自動的に行うことができ、回転機器やメカニカルシールの致命的なトラブル発生を未然に回避することができる。
また、シリンダ41の上壁に、図6に示す如く、ピストンロッド42aの上端(又はピストンロッド42aに設けた指針)によりピストン42の移動量を視認検知するメジャー46を立設して、被密封流体領域Aの圧力変動ないし中間領域Cの圧力変動を視覚的にモニタリングすることができ、これによって回転機器やメカニカルシールの運転状況を作業者が的確に把握できるように工夫してある。なお、このようなモニタリングは、ピストンロッド42aの移動量を電気的に検出してモニター画面に表示することにより行うようにすることも可能である。
ところで、第1メカニカルシール装置にあっては、中間領域Cに所定圧P2aのシール液Lを充填・封入させるにすぎないから、かかるシール液Lの充填・封入手段としてはハンドポンプ等の簡易なポンプを使用すれば足り、冒頭で述べたように所定圧のシール液を循環供給させる場合のような高性能ポンプ等を有するプレッシャユニットはこれを必要としない。したがって、プレッシャユニットを設ける場合に比して、均圧器4aが簡易なピストン・シリンダ構造をなすものであることとも相俟って、メカニカルシール装置のイニシャルコスト,ランニングコストが大幅に低減されると共に装置構造も大幅に簡略化、小型化することができる。しかも、シール液Lの充填・封入は運転開始時に行われるのみであるから、充填・封入手段としてハンドポンプを使用する場合は勿論、電源を必要とするポンプを使用する場合にも、均圧器4aが電源を必要としないものであることとも相俟って、停電等によるポンプ停止により中間領域の圧力が適正に維持されなくなって過負荷によるシール破損につながるといった問題は生じない。
而して、この例では、シール液Lの充填・封入手段として、図2に示す如く、ハンドポンプ71cを使用しており、運転開始時において、ハンドポンプ71cにより低圧流体用配管71bから所定圧P2aのシール液Lを中間領域C(及び均圧器4aの低圧流体用空間43b)に充填・封入するようにしている。なお、必要に応じて、高圧流体用配管71aには圧力計71d等が設けられ、低圧流体用配管71bには、圧力トランスミッタ71e、安全弁71f、圧力計71g及びアキュムレータ71h等が設けられる。
また、第1メカニカルシール装置にあっては、図1及び図2に示す如く、シールケース5に第1フラッシング領域A1に開口する第1給排液口51c,51d及び第2フラッシング領域C1に開口する第2給排液口51e,51fを設けると共に、図2に示す如く、第1及び第2給排液口51c,51d及び51e,51f間を夫々クーラ51g,51hを有する循環路51i,51jで接続して、第1メカニカルシール1aのシール部分(両密封環11,12の相対回転摺接部分)及び第2メカニカルシール2aのシール部分(両環22,23の相対回転摺接部分)をフラッシングするように工夫されている。フラッシング液としては一般に清水等が使用されるが、この例では、第1メカニカルシール1aに対しては第1フラッシング領域C1に充満する被密封流体Kの一部が使用され、第2メカニカルシール2aに対しては第2フラッシング領域C1に充満するシール液Lの一部が使用されている。なお、第2給液口51eは静止環21と遊動環23との間に向けて開口されており、第2給液口51eから当該両環21,23間に供給されたフラッシング液Lは、遊動環23の連通孔23を通過して第2メカニカルシール2aのシール部分に到達する。また、フラッシング済みの液K,Lは、循環リング16,27によるポンピング作用により、フラッシング領域A1,C1からその下方領域(第1フラシング領域A1を除く被密封流体領域部分又は第2フラッシング領域C1を除く中間領域部分)に流入することなく、フラッシング領域A1,C1から排液口51d,51fへと排出される。すなわち、給液口51c,51eからフラッシング領域A1,C1に供給されたフラッシング液K,Lは、循環リング16,27に受け止められて、その回転による遠心力により円筒状部16a,27aへと誘導され、円筒状部16a,27aの循環孔16b,27bからこれに対向して開口する排液口51d,51fへと排出される。
また、図3、図4及び図6は本発明に係る高圧用メカニカルシール装置の第2の実施形態を示すもので、図3は当該メカニカルシール装置の要部の縦断側面図であり、図4は当該メカニカルシール装置の全体構成を示す系統図であり、図6は当該メカニカルシールに使用される均圧器の一例を示す縦断側面図である。
図3及び図4に示す高圧流体用メカニカルシール装置(以下「第2メカニカルシール装置」という」は、第1メカニカルシール装置と同様に、液状の高圧流体(例えば、高圧水等)を扱う竪型の回転機器(例えば、縦軸高圧ポンプ等)の軸封手段として使用されるもので、被密封流体領域側の第1メカニカルシール1bと大気領域側の第3メカニカルシール3bと両メカニカルシール1b,3b間に位置する第2メカニカルシール2bとを第1メカニカルシール装置におけるものと同様構造をなすシールケース5と回転軸6との間に配して軸線方向に直列配置してなり、第1及び第2メカニカルシール1b,2b間に形成される第1中間領域Dに被密封流体(被密封流体領域Aの高圧液体)より高圧の第1シール封液L1を充填・封入すると共に第2及び第3メカニカルシール2b,3b間に形成される第2中間領域Eに第1中間領域Dより低圧の第2シール液L2を充填・封入して、機内領域である被密封流体領域Aと機外領域である大気領域Bとを第1及び第2中間領域D,Eを介してシールするように構成されたトリプルシールである。なお、シール液L1,L2としては、第1メカニカルシール装置と同様に、清水が使用されている。
第1メカニカルシール1bは、図3に示す如く、シールケース5に固定した静止密封環31とその大気領域側(上方側)に配してシールケース5を洞貫する回転軸6に軸線方向移動可能に保持された回転密封環32と回転密封環32を静止密封環31へと押圧附勢するスプリング33とを具備して、両密封環31,32の対向端面たる密封端面の相対回転摺接作用により、当該相対回転摺接部分の内周側領域を含む被密封流体領域Aとその外周側領域を含む第1中間領域Dとを遮蔽シールするように構成された端面接触形のメカニカルシールである。回転密封環32は回転軸6のスリーブ6bにOリング34を介して軸線方向移動可能に嵌合保持されている。回転軸6のスリーブ6bには回転密封環32の大気領域側に配してスプリングリテーナ35が固定されており、このスプリングリテーナ35と回転密封環32との間には、回転密封環32を静止密封環31へと押圧接触させるべく附勢するスプリング33及び回転密封環32の回転軸6に対する相対回転を阻止するドライブピン37が介装されている。なお、第1メカニカルシール1bと後述する第2メカニカルシール2bとは、上下方向における密封環配置を逆にするダブルシール構造をなしている。
第2及び第3メカニカルシール2b,3bは、第1メカニカルシール装置の第1及び第2メカニカルシール1a,1bと同様構造をなすタンデムシールである。したがって、第2及び第3メカニカルシール2b,3bの構成部材であって前記第1及び第2メカニカルシール1a,2aの構成部材と同一のものについては、図3及び図4において図1及び図2と同一の符号を付することによって、その詳細は省略することとする。
第2メカニカルシール2bは、図3に示す如く、前記第1メカニカルシール1aと同様構造をなすものであり、両密封環11,12の対向端面たる密封端面の相対回転摺接作用により、当該相対回転摺接部分の外周側領域を含む第1中間領域Dとその内周側領域を含む第2中間領域Eとを遮蔽シールするように構成された端面接触形のメカニカルシールである。第2メカニカルシール1bのスプリングリテーナ15の基端部には循環リング38が形成されている。この循環リング38は前記第2メカニカルシール2bの循環リング27と同様構成をなすものであり、その外周部は上方へ突出し且つシールケース5の内周面に近接する円筒状部38aに構成されており、円筒状部38aにはこれを径方向に貫通する複数の循環孔38bが形成されている。第1中間領域Dは、循環リング38により両密封環11,12の相対回転摺接部分の外周側領域である第2メカニカルシール2bの配設領域(以下「第1フラッシング領域」という)D1とそれ以外の領域とに区画されている。
第3メカニカルシール3bは、図3に示す如く、前記第2メカニカルシール2aと同一構造をなすものであり、両環22,23の対向端面たる密封端面の相対回転摺接作用により、当該相対回転摺接部分の外周側領域を含む第2中間領域Eとその内周側領域を含む大気領域Bとを遮蔽シールするように構成された端面接触形のメカニカルシールである。第2中間領域Eは、スプリングリテーナ26に一体形成された循環リング27により、両環22,23の相対回転摺接部分の外周側領域である第3メカニカルシール3bの配設領域(以下「第2フラッシング領域」という)E1とそれ以外の領域とに区画されている。
シールケース5は円形内周面を有する筒状のもので、図3及び図4に示す如く、被密封流体領域Aに開口する第1低圧流体口52a、第1中間領域Dに開口する高圧流体口52b及び第2中間領域Eに開口する第2低圧流体口52cが形成されている。高圧流体口52bは第1フラッシング領域D1を除く第1中間領域Dの適所であって循環リング38の近傍位に開口されており、第2低圧流体口52cは第2フラッシング領域E1の適所であって遊動環23と循環リング27との間に開口されている。
而して、高圧流体口52bと第1低圧流体口52a及び第2低圧流体口52cとは、図3及び図4に示す如く、第1及び第2均圧器4b,4cを介して連通接続されていて、被密封流体領域Aの圧力(被密封流体Kbの圧力)P3と第1中間領域Dの圧力(第1シール液L1の圧力)P4との圧力比P4/P3及び第1中間領域Dの圧力P3と第2中間領域Eの圧力(第2シリンダ液L2の圧力)P5との圧力比P4/P5を夫々一定に保持するように構成されている。
各均圧器4b,4cは、図6に示す如く、シリンダ41内にピストン42を装填してなるものであり、ピストン受圧面積比(高圧流体用空間43aにおけるピストン受圧面積S1に対する低圧流体用空間43bにおけるピストン受圧面積S2の比率(S2/S1))を除いて前記均圧器4aと同一構成をなすものである。
シールケース5の高圧流体口52bは、図4に示す如く、第1高圧流体用配管72aにより第1均圧器4bの高圧流体口41aに連通接続されると共に第2高圧流体用配管73aにより第2均圧器4cの高圧流体口41aに連通接続されている。また、図4に示す如く、シールケース5の第1低圧流体口52aは第1低圧流体用配管72bにより第1均圧器4bの低圧流体口41bに連通接続されており、シールケース5の第2低圧流体口52cは第2低圧流体用配管73bにより第2均圧器4cの低圧流体口41bに連通接続されている。
第1均圧器4bにあっては、ピストン受圧面積比ξ1が第2メカニカルシール装置の設計段階ないし運転開始段階で設定される被密封流体Kbの圧力(以下「被密封流体設定圧P3a」という」とこれより所定圧(若干圧)高く設定される第1中間領域Dの圧力(以下「第1シール液設定圧P4a」という)との圧力比P4a/P3aと等価となる(ξ1=S2/S1=P4a/P3a)ように設定されている。また、運転開始段階(P3=P3a,P4=P4aである場合)において、ピストン42が、図6(A)に示す如く、シリンダ41の上下方向中間位置(以下「基準位置」という)に位置されるように設定されている。
第2均圧器4cにあっては、ピストン受圧面積比ξ2が第2メカニカルシール装置の設計段階ないし運転開始段階で第1シール液設定圧P4aより所定圧低く設定される第2中間領域Eの圧力(以下「第2シール液設定圧P5a」という)と第1シール液設定圧P4aとの圧力比P4a/P5aと等価となる(ξ2=S2/S1=P4a/P5a)ように設定されている。また、運転開始段階(P4=P4a,P5=P5aである場合)において、ピストン42が、図6(A)に示す如く、シリンダ41の上下方向中間位置(以下「基準位置」という)に位置されるように設定されている。
第2高圧流体用配管73a(又は第1高圧流体用配管72a)には、運転開始時において所定圧P4aの第1シール液L1を第1中間領域Dに充填させるための簡易ポンプ(この例ではハンドポンプ)73cが配設されており、更に必要に応じて圧力計73d等が設けられる。また第2低圧流体用配管73bには、運転開始時に所定圧P5aの第2シール液L2を第2中間領域Eに充填させるための簡易ポンプ(この例ではハンドポンプ)73eが配設されており、更に必要に応じて圧力トランスミッタ73f、安全弁73g、圧力計73h及びアキュムレータ73i等が設けられる。
なお、第2メカニカルシール装置にあっても、第1メカニカルシール装置と同様に、第2及び第3メカニカルシール2b,3bをフラッシングするように工夫されている。すなわち、図3及び図4に示す如く、シールケース5に第1フラッシング領域D1に開口する第1給排液口52d,52e及び第2フラッシング領域E1に開口する第2給排液口52f,52gを設けると共に、図4に示す如く、第1及び第2給排液口52d,52e及び52f,52g間を夫々クーラ52h,52iを有する循環路52j,52kで接続して、第2メカニカルシール2bのシール部分(両密封環11,12の相対回転摺接部分)及び第3メカニカルシール3bのシール部分(両環22,23の相対回転摺接部分)をフラッシングするように工夫されている。フラッシング液としては一般に清水等が使用されるが、この例では、第2メカニカルシール2bに対しては第1フラッシング領域D1に充満する第1シール液L1の一部が使用され、第3メカニカルシール3bに対しては第2フラッシング領域E1に充満する第2シール液L2の一部が使用されている。なお、フラッシング済みの液L1,L2は、第1メカニカルシール装置と同様に、循環リング27,38によるポンピング作用により、フラッシング領域D1,E1からそのまま排液口52e,52gへと排出される。
以上のように構成された第2メカニカルシール装置にあっては、回転機器の運転状況の変化によって被密封流体領域Aの圧力P3が低下した場合(例えば、被密封流体設定圧P3aより低くなった場合)には、図6(B)に示す如く、第1均圧器4bにおいてピストン42が高圧流体用空間43aの容積を増大させる方向に移動し(例えば、基準位置(図6(A)に示す位置)から下方に移動し)、この高圧流体用空間43aの容積増大量に応じた圧力減少が高圧流体用配管72aから第1中間領域Dへと伝播され、第1中間領域Dの圧力P4が下降することになる。そして、ピストン42は、その両側に作用する流体圧力による押圧力がバランスされた位置で静止するが、このとき、高圧流体用空間43aの圧力P4と低圧流体用空間43bの圧力P3との圧力比P4/P3はピストン受圧面積比ξ1(=P4a/P3a)と等価となり、変化しない。すなわち、第1中間領域Dの圧力P4が被密封流体領域Aの圧力P3に比して必要以上に高くなるようなことがなく、その圧力比P4/P3は当該圧力変動前と同一に保持されることになる。したがって、被密封流体領域Aの圧力P3が低下した場合にも、この圧力P3と第1中間領域Dの圧力P4との差圧が異常に高くなることによる問題(例えば、第1メカニカルシール1aに過大な負荷が作用する)は生じず、第1メカニカルシール1bによるシール機能が良好に発揮される。
また、回転機器の運転状況の変化によって被密封流体領域Aの圧力P3が上昇した場合や第2メカニカルシール2bから第2中間領域Eへの第1シール液L1の漏洩等により第1中間領域Dの圧力P4が下降した場合には、図6(C)に示す如く、第1均圧器4bにおいてピストン42が高圧流体用空間43aの容積を減少させる方向に移動し(例えば、前記基準位置から上方に移動し)、この高圧流体用空間43aの容積減少量に応じた圧力増加が高圧流体用配管72aから第1中間領域Dへと伝播され、第1中間領域Dの圧力P4が上昇することになる。そして、ピストン42は、その両側に作用する流体圧力による押圧力がバランスされた位置で静止するが、このとき、高圧流体用空間43aの圧力P4と低圧流体用空間43bの圧力P3との圧力比P4/P3は、上記した場合と同様に、ピストン受圧面積比ξ1(=P4a/P3a)と等価となり、一定に保持される。
したがって、被密封流体領域Aの圧力P3が上昇し及び/又は第1中間領域Dの圧力P4が低下した場合にも、両圧力P3,P4が逆転するようなことがなく、つまり逆圧(P4<P3)が第1メカニカルシール1bに作用することがなく、第1メカニカルシール1bによるシール機能が良好に発揮される。
また、第3メカニカルシール3bから大気領域Bへの第2シール液L2が漏洩する等により第2中間領域Eの圧力P5が低下した場合又は被密封流体領域Aの圧力上昇に伴い第1均圧器4bにより第2中間領域Dの圧力P4が上昇した場合には、図6(B)に示す如く、第2均圧器4cにおいてピストン42が低圧流体用空間43bの容積を減少させる方向に移動し(例えば、基準位置(図6(A)に示す位置)から下方に移動し)、この低圧流体用空間43bの容積減少量に応じた圧力増加が低圧流体用配管73bから第2中間領域Eへと伝播され、第2中間領域Eの圧力P5が上昇することになる。そして、ピストン42は、その両側に作用する流体圧力による押圧力がバランスされた位置で静止するが、このとき、高圧流体用空間43aの圧力P4と低圧流体用空間43bの圧力P5との圧力比P4/P5はピストン受圧面積比ξ2(=P4a/P5a)と等価となり、変化しない。すなわち、第1中間領域Dの圧力P4が第2中間領域Eの圧力P5に比して必要以上に高くなるようなことがなく、その圧力比P4/P5は当該圧力変動前と同一に保持されることになる。したがって、上記したような場合にも、第1中間領域Dの圧力P4と第2中間領域Eの圧力P5との差圧が異常に大きくなることによる問題(例えば、第2メカニカルシール2bに過大な負荷が作用する)は生じず、第2メカニカルシール2bによるシール機能が良好に発揮される。
また、被密封流体領域Aの圧力低下に伴い第1均圧器4bにより第1中間領域Dの圧力P4が低下した場合又は第2メカニカルシール2bから第2中間領域Eへ第1シール液L1が漏洩することにより第3中間領域Eの圧力P5が上昇した場合(或いは第1中間領域Dの圧力P4が低下した場合)には、図6(C)に示す如く、第2均圧器4cにおいてピストン42が低圧流体用空間43bの容積を増大させる方向に移動し(例えば、前記基準位置から上方に移動し)、この低圧流体用空間43bの容積増大量に応じた圧力減少が低圧高圧流体用配管73bから第2中間領域Eへと伝播され、第2中間領域Eの圧力P5が低下することになる。そして、ピストン42は、その両側に作用する流体圧力による押圧力がバランスされた位置で静止するが、このとき、高圧流体用空間43aの圧力P4と低圧流体用空間43bの圧力P5との圧力比P4/P5は、上記した場合と同様に、ピストン受圧面積比ξ2(=P4a/P5a)と等価となり、一定に保持される。
したがって、このように第1中間領域Dの圧力P4が低下し及び/又は第2中間領域Dの圧力P5が上昇した場合にも、両圧力P4,P5が逆転するようなことがなく、つまり逆圧(P4<P5)が第2メカニカルシール2bに作用することがなく、第2メカニカルシール2bによるシール機能が良好に発揮される。
このように、第2メカニカルシール装置にあっては、被密封流体領域Aの圧力P3、第1中間領域Dの圧力P4及び第2中間領域Eの圧力P5の相互間における圧力関係(圧力比)が第1及び第2均圧器4b,4cにより適正に保持されることになり、良好なシール機能が発揮される。
また、各均圧器4b,4cに設けられたピストン移動位置ないし移動量の検知装置(リミットスイッチ45a,45b及びメジャー46)により、第2メカニカルシール装置やこれを装備する回転機器の運転状況を的確に把握することができることは、前記した第1メカニカルシール装置と同様である。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良、変更することが可能である。
例えば、メカニカルシール数nを2とするメカニカルシール装置としては、第1メカニカルシール装置のようなタンデムシールに限定されず、第1メカニカルシール1aと第2メカニカルシール2aとをそれらの密封環が逆向きに配置されるダブルシールとすることも可能である。この場合、第中間領域Cに被密封流体領域Aより高圧のシール液を充填・封入させるときには、両領域A,Cを第2メカニカルシール装置における被密封流体領域Aと第1中間領域Dとを第1均圧器4bを介して連通接続させる場合と同様構成としておく。
また、メカニカルシール数nを3とするメカニカルシール装置としては、第2メカニカルシール装置のようなダブルシール構造(第1メカニカルシール1bと第2メカニカルシール2bとがなすシール構造)とタンデムシール構造(第2メカニカルシール2bと第3メカニカルシール3bとがなすシール構造)との組み合わせとせず、図5に示す如く、すべてのメカニカルシール相互がタンデムシール構造をなすように構成してもよい。
すなわち、図5に示す高圧流体用メカニカルシール装置(以下「第3メカニカルシール装置」という)にあっては、第1、第2及び第3メカニカルシール1c,2c,3cが夫々シールケース5に設けた静止密封環(又は遊動環)101と回転軸6に設けた回転密封環(又は回転環)102との相対回転摺接作用によりシール機能を発揮するように構成された端面接触形のメカニカルシールであり、各メカニカルシールとこれに隣接するメカニカルシールとがタンデムシール構造をなしており、第1及び第2メカニカルシール1c,2c間の第1中間領域Fに被密封流体領域Aより低圧の第1シール液を充填・封入すると共に第2及び第3メカニカルシール2c,3c間の第2中間領域Gに第1中間領域Fより低圧の第2シール液を充填・封入して、被密封流体領域Aと大気領域Bとを中間領域F,Gを介してシールするように構成されている。そして、この第3メカニカルシール装置にあっては、第1中間領域Fとこれに隣接する被密封流体領域A及び第2中間領域Gとの間を、第1図6に示す如く、第1及びメカニカルシール装置で使用した均圧器4a,4b,4c,と同様構造をなす均圧器4d,4eを介して連通接続してある。すなわち、図5に示す如く、被密封流体領域Aに開口するシールケース5の高圧流体口53aと第1均圧器4dの高圧流体口41aとを第1高圧流体用配管74aで接続し、第1中間領域Fに開口するシールケース5の第1低圧流体口53bと第1均圧器4dの低圧流体口41bとを第1低圧流体用配管74bで接続すると共に第1低圧流体口53bと第2均圧器4eの高圧流体口41aとを第2高圧流体用配管75aで接続し、第2中間領域Gに開口するシールケース5の第2低圧流体口53cと第2均圧器4eの低圧流体口41bとを第2低圧流体用配管75bで接続してある。第1均圧器4dにおけるピストン受圧面積比は被密封流体領域Aと第1中間領域Fとの圧力関係に応じて、また第2均圧器4eにおけるピストン受圧面積比は両中間領域F,Gの圧力関係に応じて、夫々設定される。而して、第3メカニカルシール装置にあっては、第1メカニカルシール装置において被密封流体領域Aと中間領域Cとの圧力関係が均圧器4aにより適正に保持される場合と同様の作用により、第1中間領域Fと被密封流体領域A及び第2中間領域Gとの圧力関係(圧力比)が均圧器4d,4eにより適正に保持される。なお、第2高圧流体用配管75a(又は第1低圧流体用配管74a)には、運転開始時において所定圧の第1シール液を第1中間領域Fに充填させるための簡易ポンプ(この例ではハンドポンプ)75cが配設されており、更に必要に応じて圧力計75d等が設けられる。また第2低圧流体用配管75bには、運転開始時に所定圧の第2シール液を第2中間領域Gに充填させるための簡易ポンプ(この例ではハンドポンプ)75eが配設されており、更に必要に応じて圧力トランスミッタ75f、安全弁75g、圧力計75h及びアキュムレータ75i等が設けられる。また、第3メカニカルシール装置にあっても、第1メカニカルシール装置又は第2メカニカルシール装置と同様のフラッシング手段を設けることが可能である。
また、本発明はメカニカルシール数nを4以上とする高圧流体用メカニカルシール装置にも適用することができる。この場合、各中間領域とこれに隣接する中間領域及び被密封流体領域との間を、ピストン受圧面積比(低圧流体用空間のピストン受圧面積を高圧流体用空間のピストン面積で除したもの)が予め設定された高圧流体領域と低圧流体領域との圧力比(高圧流体の圧力を低圧流体の圧力で除したもの)に一致するように構成されたn−1個の均圧器を使用して、高圧流体領域を当該均圧器の高圧流体用空間に接続すると共に低圧流体領域を当該均圧器の低圧流体用空間に接続しておくのである。
また、本発明のメカニカルシール装置は、上記した如く高圧液体を扱う竪型の回転機器の軸封手段として使用される他、高圧液体を扱う横型の回転機器や高圧気体を扱う竪型又は横型の回転機器等の軸封手段としても好適に使用することができる。