以下、火災を感知して警報音を鳴動するとともに電波を媒体とし且つ火災感知メッセージを含む無線信号を送信する火災警報器を無線局とした無線通信システム(火災警報システム)に本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。但し、以下の説明では、特許文献1記載の従来システムを「旧システム」と呼び、特許文献2記載の従来システムを「新システム」と呼ぶ。
図1は本実施形態のシステム構成図であり、複数台(図示は2台のみ)の火災警報器TRで火災警報システムが構成されている。なお、以下の説明では、火災警報器TRを個別に示す場合は火災警報器TR1,TR2,…,TRnと表記し、総括して示す場合は火災警報器TRと表記する。
火災警報器TRは、制御部1、無線送受信部2、アンテナ3、火災感知部4、警報部5、操作入力受付部6、電池電源部7を具備している。無線送受信部2は、アンテナ3から電波を媒体とした無線信号を送信するとともに他の火災警報器TRが送信した無線信号をアンテナ3で受信する。警報部5は、音(ブザー音や音声メッセージなど)による火災警報(以下、「警報音」と呼ぶ。)を報知(スピーカから鳴動)する。制御部1は、マイコンや書換可能な不揮発性の半導体メモリなどからなるメモリ部1aを主構成要素とする。この制御部1は、火災感知部4で火災を感知したときに警報部5に警報音を鳴動させるとともに他の火災警報器TRに対して火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる。操作入力受付部6は1乃至複数のスイッチ(例えば、押釦スイッチ)を有しており、スイッチが操作されることで各スイッチに対応した操作入力を受け付けるとともに当該操作入力に対応した操作信号を制御部1に出力する。電池電源部7は、乾電池等の電池を電源として各部に動作電源を供給する。なお、各火災警報器TRi(i=1,2,…,n)には、その製造段階において固有の識別符号が割り当てられてメモリ部1aに格納されている。
無線送受信部2は、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送受信する。また火災感知部4は、例えば、火災に伴って発生する煙や熱、炎などを検出することで火災を感知する。但し、無線送受信部2並びに火災感知部4については従来周知であるから、その構成並びに動作の詳細な説明を省略する。
制御部1は、図示しないメモリ(ROMあるいはEEPROMなど)に格納されたプログラムをマイコンで実行することによって後述する各種の機能を実現している。火災感知部4で火災の発生が感知されると、制御部1は警報部5が備えるブザーを駆動して警報音を鳴動させたり、あるいは予めメモリ(あるいはメモリ部1a)に格納されている警報用の音声メッセージ(例えば、「火事です」など)をスピーカに鳴動させることで火災警報を報知する。さらに制御部1は、他の火災警報器TRにおいても火災警報を報知させるため、火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる。また、他の火災警報器TRから送信された無線信号を無線送受信部2で受信することにより火災警報メッセージを受け取ったときも、制御部1が警報部5を制御して警報音を鳴動させる。つまり、制御部1では火災感知部4が火災を感知したときに警報部5から警報音を鳴動させて火災警報を報知するとともに火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる機能を有している。
ここで、電波法施行規則の無線設備規則第49条の17「小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備」では、無線信号を連続して送信してもよい期間(送信期間)が3秒以下、送信期間と送信期間の間に設けられた、無線信号を送信してはいけない期間(休止期間)が2秒以上とすることが規定されている(同条第5号参照)。このために本実施形態における制御部1では、上記無線設備規則に適合する送信期間に無線信号を送信させるとともに休止期間に送信を停止し且つ受信可能な状態としている。
また電池電源部7の電池寿命をできるだけ長くするため、制御部1ではマイコンに内蔵するタイマ(タイマ手段)で所定の間欠受信間隔(但し、間欠受信間隔は前記送信期間よりも長い時間とする)を繰り返しカウントしている。そして、制御部1は、間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックし、当該電波が捉えられなければ直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させることで平均消費電力を大幅に低減している。なお、電波の受信チェックは、無線送受信部2から出力される、受信信号強度の大小に比例した直流電圧信号である受信信号強度表示信号(Receiving Signal Strength Indication:RSSI信号)に基づいて制御部1が行っており、詳細については従来周知であるから省略する。
さらに特定の火災警報器TR1(以下、親局と呼ぶ。)の制御部1では、定期的(例えば、24時間毎)に無線送受信部2を起動して他の火災警報器TR2,TR3,…(以下、子局と呼ぶ。)が正常に動作しているか否かの確認(定期監視)を行うために定期監視メッセージを含む無線信号を送信させる。子局TRj(j=2,3,…,n)においては、制御部1が火災感知部4の故障の有無及び電池電源部7の電池切れの有無を一定周期で(例えば、1時間毎に)監視するとともに、その監視結果(故障の有無及び電池切れの有無)をメモリ部1aに記憶している。そして、子局TRjの制御部1では、親局TR1から定期監視メッセージを受け取ったときに、メモリ部1aに記憶している監視結果を通知するための通知メッセージを含む無線信号を親局TR1に返信する。親局TR1の制御部1は、通知メッセージを含む無線信号を送信した後、無線送受信部2を受信状態に切り換えて各子局TRjから送信される無線信号を受信する。そして、親局TR1の制御部1は、定期監視メッセージを含む無線信号を送信してから所定時間内に通知メッセージを含む無線信号を送信してこない子局TRjがあったり、あるいは、何れかの子局TRjが送信してきた通知メッセージが故障有り若しくは電池切れ有りの監視結果を通知するものである場合に、警報部5が備えるブザーを駆動して報知音を鳴動させるなどして子局TRjに異常(通信不可や故障有り、電池切れなど)が発生したことを知らせる。なお、親局TR1及び子局TRjの制御部1は、故障若しくは電池切れが生じていると判断した場合、直ちに警報部5から異常(故障若しくは電池切れ)の発生を知らせるための警告音(ブザー音や音声メッセージなど)を警報部5のスピーカから鳴動させる。
また親局TR1の制御部1は、火災感知部4が火災を感知して警報部5から警報音を鳴動させるとともに各子局TRjに火災警報メッセージを送信した後、若しくは何れかの子局TRjから火災警報メッセージを受信した後においては、無線送信部2に一定周期で同期ビーコンを送信させる。この同期ビーコンは、複数の火災警報器TR同士でTDMA(時分割多元接続)方式の無線通信(以下、「同期通信」と呼ぶ。)を行うために必要なタイムスロットを規定する信号である。同期ビーコンの1周期(サイクル)が複数のタイムスロットに分割され、全ての子局TRjにそれぞれ互いに異なるタイムスロットが1つずつ割り当てられる。そして、親局TR1から子局TRjへのメッセージは同期ビーコンに含めて送信され、子局TRjから親局TR1へのメッセージを含む無線信号は、各子局TRjに割り当てられているタイムスロットに格納されて送信される。故に、複数台の火災警報器TR(親局TR1並びに子局TRj)から送信される無線信号の衝突を確実に回避することができる。なお、各火災警報器TRに対するタイムスロットの割当は固定であってもよいが、親局TR1から送信する同期ビーコンによってタイムスロットの割当情報を各子局TRjに通知しても構わない。
図2は火災警報器TRが送受信する無線信号のフレームフォーマットを示しており、同期ビット(プリアンブル:PA)、フレーム同期パターン(ユニークワード:UW)、ヘッダHD、データData、CRC符号で1フレームが構成されている。ヘッダHDには、親局TR1の識別符号(以下、「親局ID」と呼ぶ。)、後述する登録カウンタのカウント値RC、送信元アドレスSA、送信先アドレスDAが含まれている。
ここで、送信先アドレスDAとして各火災警報器TRに割り当てられる機器番号(後述する)を指定すれば当該機器番号の火災警報器TRのみが無線信号を受信してデータ(メッセージ)を取得することになる。一方、送信先アドレスDAとして何れの機器番号とも異なる特殊なビット列(例えば、すべてのビットを1としたビット列)を設定することで無線信号を同報(マルチキャスト)して全ての火災警報器TRにメッセージを取得させることができる。例えば、火災警報メッセージを含む無線信号が親局TR1から全ての子局TRjに同報される。
ところで、旧システムにおいては、各火災警報器TR(親局TR1並びに子局TRj)が動作を開始する(タイマが間欠受信間隔のカウントを開始する)タイミングは通常一致しない。そのため、制御部1が無線送受信部2を起動して電波を受信するタイミング(図3における下向きの矢印参照)も不揃いとなる。そのために旧システムの火災警報器TR(親局TR1並びに子局TRj)は、無線信号を送信する際に、同一内容の無線信号を数回(2〜3回)間欠的に送信している。
これに対して新システムおよび本実施形態の火災警報システムでは、各火災警報器TR(親局TR1並びに子局TRj)においてタイマが間欠受信間隔Txのカウントを完了するタイミングを揃え、間欠受信間隔Txのカウント完了に同期して無線信号を送信している。つまり、親局TR1の無線送受信部2から定期的(例えば、数時間毎)に送信される同期信号が子局TRjの無線送受信部2で受信されると、子局TRjの制御部1がタイマによる間欠受信間隔Txのカウントを中止させるとともに同期信号の終了時点(t=t0)から一定の待機時間Twが経過した時点でタイマによる間欠受信間隔Txのカウントを再開させる。したがって、同期信号を受信した後は、各火災警報器TR(親局TR1並びに子局TRj)においてタイマが間欠受信間隔Txのカウントを完了するタイミングが揃うことになる(図3参照)。
例えば、子局TR2において火災感知部4が火災を感知すると、子局TR2の制御部1は警報部5より警報音を鳴動させる。さらに子局TR2の制御部1は、タイマによる間欠受信間隔Txのカウント完了前に無線送受信部2を起動し、当該カウント完了時点を含む送信期間内に火災警報メッセージを含む無線信号を他の全ての火災警報器TR(親局TR1及び他の子局TR3,…)に宛てて送信する。この際、送信元の子局TR2の制御部1は、送信期間内で送信可能なフレーム数だけ無線信号を連続して送信し、送信期間後の休止期間(受信期間)には無線送受信部2を受信状態に切り換える。なお、各火災警報器TRにおいて間欠受信間隔Txのカウントが完了するタイミングが揃っているので、1回の送信期間で火災警報メッセージを含む無線信号を受信することができる。
ここで、小電力無線を利用すれば、無線通信距離としては通常の住宅ひとつのエリア内であれば十分カバーできるので、火災元の子局TR2が、他の火災警報器TR(親局TR1及び他の子局TR3,…)に対しメッセージを送信することは通常は十分可能である。上述したように親局TR1は各子局TR2〜TR4に対して定期監視を行っており、親局TR1と各子局TR2〜TR4との間では通信パスの正常性が確認されている。しかしながら、子局TR2〜TR4間の通信パスは確認されていないため、例えば障害物などの影響によって、ある子局にはメッセージが届いていない可能性もある。
そこで、火災警報メッセージを受信した親局TR1の制御部1は、送信元の子局TR2を除く他の子局TR3,TR4に対して火災警報メッセージを含む無線信号を、タイマによる間欠受信間隔Txのカウント完了時点を含む送信期間に送信する。他の子局TR3,TR4の制御部1では、子局TR2又は親局TR1から送信された火災警報メッセージを受け取ると直ちに警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2より火災警報メッセージの受信を確認する応答メッセージ(ACK)を無線信号によって返信する。なお、このように少なくとも1台の火災警報器TRで火災が感知されることで全ての火災警報器TRが火災警報を報知(警報音を鳴動)することを、以下では「火災連動」と呼ぶ。ここで、本実施形態の火災警報システムでは、他の子局TR3,TR4の制御部1がほぼ同時に火災警報メッセージを受け取って火災警報を報知するので、複数の子局TR3,TR4のスピーカから同じ警報音(例えば、「ほかの部屋で火事です。」というような音声メッセージ)が同じタイミングで鳴動される。そのため、人に聞こえる警報音の音圧(音量)が大きくなって、火災警報に気付き易くなるという利点がある。
親局TR1の制御部1は、他の全ての子局TR3,TR4からACKを受け取れば、タイムスロットを規定するための同期ビーコンを一定の周期で無線送受信部2から送信させる。なお、本実施形態では先頭のタイムスロットTS1を子局TR2に、2番目のタイムスロットTS2を子局TR3に、3番目のタイムスロットTS3を子局TR4にそれぞれ割り当てている。
ここで、親局TR1は各子局TR2〜TR4に対して定期監視を行っており、親局TR1と各子局TR2〜TR4との間では通信パスの正常性が確認されているが、子局TR2〜TR4間の通信パスは確認されていない。したがって、子局TRjが多数配置された場合、子局TRj間の通信パスの数は非常に多くなる為、子局TRj間の通信パスの正常性の確認を行うと電池消耗が激しくなる。しかしながら、上述のように親局TR1から各子局TRjに火災警報メッセージやその他のメッセージ(後述する)を通知することにより、相互に通信パスが確立できない子局が存在する場合でも確実に火災連動させることができる。
また、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動することにより連動が開始されると、上述のように親局TR1から一定周期で同期ビーコンが送信されてTDMA方式の同期通信に移行する。この同期通信において、親局TR1の制御部1は、同期ビーコンに含めることで火災警報メッセージを一定周期で全ての子局TRjに繰り返し送信している。そして、各子局TRjの制御部1は、親局TR1から送信される火災警報メッセージを受け取る度に警報部5の状態を確認し、仮に警報部5が停止していたとしたら警報部5に再度警報音を鳴動させる。したがって、全ての火災警報器TRで火災警報が報知され始めてからは特定の火災警報器(親局)TR1が送信する同期ビーコンによって規定される複数のタイムスロットに他の全ての火災警報器(子局)TRjを割り当てて時分割多元接続(TDMA)による無線通信を行うことで衝突を回避することができる。さらに、特定の火災警報器(親局)TR1から他の全ての火災警報器(子局)TRjに対して火災警報メッセージを同期ビーコンに含めて周期的に送信することで確実に火災警報を報知することができる。その結果、無線信号の衝突を回避しつつ複数の火災警報器TRを効果的に連動させることができる。
ところで、本実施形態の火災警報システムは、何れの火災警報器TRにおいても火災が検出されていない状態(待機状態)と、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動している状態(連動鳴動状態)と、後述するように火災を検出している(火元の)火災警報器TRのみが警報音を鳴動し、火元以外の火災警報器TRが警報音を停止している状態(連動停止状態)との間で動作状態を遷移させている。すなわち、待機状態において少なくとも何れか1台の火災警報器TR(例えば、子局TR2)で火災が検出されると、上述したように火元の子局TR2並びに親局TR1から他の全ての子局TR3,…に火災警報メッセージが送信されることで親局TR1と子局TR2,…を含む全ての火災警報器TRで警報音が鳴動されて連動鳴動状態に遷移する。
そして、連動鳴動状態において何れかの火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音の鳴動を停止するための操作入力が受け付けられた場合、当該火災警報器TRが親局TR1であれば親局TR1から全ての子局TRjに対して警報音の停止を要求するメッセージ(警報停止メッセージ)を送信する。あるいは、当該火災警報器TRが子局TRjであれば当該子局TRjから警報停止メッセージを受け取った親局TR1が他の子局TRjに対して警報停止メッセージを送信する。そして、当該警報停止メッセージが受信されることにより、火元以外の火災警報器TRで警報音が停止されて連動停止状態に遷移する。但し、火元の火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音停止の操作入力が受け付けられた場合、当該火元の火災警報器TRにおいても警報音を停止する。ここで、親局TR1の制御部1はメモリ部1aに親局TR1並びに各子局TRj毎の火災検出状況を随時更新しながら保持しており、全ての火災警報器TRで火災が検出されなくなったときに火災連動状態から待機状態に遷移する。
また、連動鳴動状態から連動停止状態に遷移した場合、親局TR1の制御部1では所定の警報音停止時間(例えば、5分間)の限時を開始する。そして、警報音停止時間が経過したのち、親局TR1の制御部1はメモリ部1aに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ、同期ビーコンによって復旧通知のメッセージを送信することで火災連動状態から待機状態に遷移する。仮に少なくとも1台の火災警報器TRで火災を検出していれば、同期ビーコンによって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。なお、連動停止状態において何れかの火災警報器TRが新たに火災を検出した場合にも親局TR1の制御部1が同期ビーコンによって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
ところで、上述したように、イベント(火災)が発生していない待機状態において、旧システムでは各無線局(火災警報器)が非同期で間欠受信間隔をカウントし、新システムでは各無線局(火災警報器TR)が同期して間欠受信間隔をカウントしている。つまり、新システムの無線局と旧システムの無線局とは、待機状態における送受信制御の制御内容(制御モード)が異なっている。
そこで本実施形態では、各無線局(火災警報器TR)の制御部1が、待機状態における送受信制御の制御内容を、新システムに対応した第1の送受信制御モードと旧システムに対応した第2の送受信制御モードから択一的に選択して実行するようにしている。つまり、本実施形態の無線局(火災警報器TR)のみで無線通信システム(火災警報システム)が構成されている場合、全ての無線局(火災警報器TR)の制御部1は第1の送受信制御モードを選択して実行する。一方、旧システムの無線局(火災警報器)が1台でも含まれている場合、本実施形態の無線局(火災警報器TR)の制御部1は第2の送受信制御モードを選択して実行する。具体的には、第1の送受信制御モードのプログラムと第2の送受信制御モードのプログラムの双方が親局TR1のメモリ部1aに記憶されており、旧システムの無線局(子局TRj)が同じシステムに存在するか否かによって、制御部1のマイコンがメモリ部1aに記憶されている2種類の送受信制御モードのプログラムを択一的に選択して実行するのである。なお、第1の送受信制御モードと第2の送受信制御モードとは、次のような点で相違している。まず、親局TR1については、第1の送受信制御モードで同期信号を送信して第2の送受信制御モードでは同期信号を送信しない点である。また、親局TR1と子局TRjについては、第1の送受信制御モードでは間欠受信間隔のカウントが完了するタイミングで無線信号を送信するのに対し、第2の送受信制御モードでは前記タイミングと無関係に同一の無線信号を数回送信する点である。
したがって、本実施形態の無線局(火災警報器TR)は、本実施形態の無線局(火災警報器TR)のみで構成される無線通信システム(火災警報システム)に使用できるだけでなく、別型の無線局(旧システムの無線局)が混在した無線通信システム(火災警報システム)にも使用できる。但し、旧システムの無線局と混在される場合、本実施形態の無線局(火災警報器TR)の制御部1は、見かけ上、旧システムの無線局(火災警報器)として動作する。このように本実施形態の火災警報器TR(無線局)及び火災警報システム(無線通信システム)では、使い勝手の向上が図れるものである。
ところで、既に説明したように親局TR1並びに子局TRjには製造段階において親局と子局の区別無くユニークな(固有の)識別符号が割り当てられてメモリ部1aに記憶されている。しかしながら、無線信号の送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAとして識別符号を指定した場合、ヘッダHDのビット長が相対的に長くなることで無線信号の送受信時間が増えるために電池の消耗が早くなってしまう。そこで本実施形態では、特許文献1記載の旧システムと同様に、1台の親局TR1と1乃至複数台の子局TRjからなる1つの火災警報システムを識別するために親局TR1の識別符号(親局ID)がヘッダHDに含められている。さらに、各子局TRjに固有の機器番号が割り当てられ、送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAに指定される機器番号と親局IDとの組み合わせにより、同一システム内の各火災警報器TRが識別されて無線信号が送受信できるようになっている。なお、本実施形態ではタイムスロットの順番に対応したスロット番号1,2,…が機器番号として用いられており、子局TR2〜TR4に各々「1」〜「3」の機器番号(スロット番号)が割り当てられるとともに、親局TR1には「0」の機器番号が割り当てられている。
ここで、旧システム及び新システムの何れにおいても、システムの運用開始前に、親局TR1に子局TRjの識別符号(以下、「子局ID」と呼ぶ。)を記憶させるとともに各子局TRjに対して重複の無いように機器番号を割り当てる処理(以下、「登録」と呼ぶ。)が行われる。以下、図4のシーケンス図を参照しながら、旧システムにおける登録の手順を説明する。但し、以下の説明では、便宜上、本実施形態の無線局(火災警報器TR)において旧システムの登録手順を実行するものと仮定している。
まず、親局TR1の操作入力受付部6で登録を行うためのモード(登録モード)に切り換える操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から登録モードへの切換の操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1が登録モードに移行する。一方、登録対象の子局(例えば、TR2)の操作入力受付部6で登録メッセージを送信するための操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から登録メッセージの送信を指示する操作信号が制御部1に出力される。当該操作信号を受け取った制御部1は、自己の子局IDを送信元アドレスSAとし、マルチキャストのアドレスを送信先アドレスDAとし、登録メッセージをデータDataとした無線信号を無線送受信部2から送信させる。
親局TR1の制御部1は、子局TR2から登録メッセージを受け取ると、送信元アドレスSAに指定されている子局IDに対して機器番号(例えば、スロット番号の「1」)を割り当てるとともに当該子局IDと機器番号を対応付けてメモリ部1aに記憶する。ここで親局TR1の制御部1は、後述するように登録内容(メモリ部1aに記憶した子局IDと機器番号)を消去する毎にインクリメントされる登録カウンタを有しており、送信元アドレスSAを親局IDとし、送信先アドレスDAを登録メッセージの送信元である子局TR2の子局IDとし、割り当てた機器番号及び登録カウンタのカウント値(初期値は0)からなる登録メッセージをデータDataとする無線信号を子局TR2に対して無線送受信部2より送信させる。但し、データDataの先頭部分には機器番号の割当であることを示す情報(以下、「登録モード情報」と呼ぶ。)が含まれている。
子局TR2の制御部1は、無線送受信部2で受信する無線信号のデータDataの先頭部分に登録モード情報が含まれていれば、当該無線信号の送信元アドレスSAである親局IDと、無線信号で受け取った登録メッセージに含まれている機器番号並びに登録カウンタのカウント値とを対応付けてメモリ部1aに記憶する。その結果、親局TR1の制御部1が子局TR2の子局IDと機器番号並びに登録カウンタのカウント値をメモリ部1aに記憶し、子局TR2の制御部1が親局TR1の親局IDと機器番号並びに登録カウンタのカウント値をメモリ部1aに記憶することで親局TR1に対する子局TR2の登録が完了する。尚、他の子局TR3,…についても同様の手順で登録される。また、親局TR1の操作入力受付部6で登録モードから通常の動作モードへ復帰させるための操作入力が受け付けられて操作入力受付部6から制御部1に操作信号が出力されれば、制御部1は登録モードを終了して通常の動作モードに切り換わる。但し、新システムにおける登録の手順及び処理内容も上述した旧システムとほぼ共通である。
ここで、登録モードにおいて親局TR1と子局TRjとの間で無線信号を送受信する際、送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAに子局TRjの識別符号(子局ID)を指定しているので、例えば、複数台の子局TRjから登録メッセージがほぼ同時に送信された場合においてもこれら複数台の子局TRjに対して同一の機器番号が重複して割り当てられるのを防ぐことができる。
ところで、一旦登録された親局IDや子局ID、機器番号、カウント値をメモリ部1aから消去することも可能である。図4に示すように、親局TR1の操作入力受付部6で登録内容を消去するためのモード(消去モード)に切り換える操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から消去モードへの切換の操作信号が制御部1に出力される。当該操作信号を受け取った制御部1は消去モードに移行する。この消去モードにおいて、親局TR1の操作入力受付部6で消去確定の操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から消去確定の操作信号が制御部1に出力される。当該操作信号を受け取った制御部1がメモリ部1aに記憶している子局ID並びに機器番号を消去するとともに登録カウンタのカウント値をインクリメントする。そして、親局TR1の操作入力受付部6で消去モードから通常の動作モードへ復帰するための操作入力が受け付けられて操作入力受付部6から制御部1に操作信号が出力されれば、制御部1は消去モードを終了して通常の動作モードに切り換わる。
一方、子局TRjの操作入力受付部6で消去の操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から消去の操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1がメモリ部1aに記憶している親局ID並びに機器番号とカウント値を消去する。
而して、親局TR1の登録内容を消去したにも関わらず、登録されていた子局TRjの登録内容を消去しなかった場合であっても、新たに登録される子局TRjに対しては登録カウンタのカウント値がインクリメントされて変更されているため、異なる子局TRjに同一の機器番号が割り当てられたとしても、親局TR1の登録カウンタのカウント値によって現在有効である機器番号を特定することができる。故に、登録内容が消去されずに残っている子局TRjは、親局TR1から送信される無線信号のヘッダHDに含まれるカウント値が一致しないために当該無線信号を受信することがないから、複数の子局TRjが同時に応答メッセージを含む無線信号を返信して衝突が生じるといった不具合が回避できる。
而して、既に説明した通常の動作モードにおいては、図2に示すようにヘッダHDの親局IDに親局TR1の親局IDを指定するとともにカウント値RCに親局TR1及び子局TRjのメモリ部1aに記憶しているカウント値を指定し、送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAにはそれぞれ割り当てられた機器番号を指定した無線信号を送受信する。故に、各火災警報器TRに予め割り当てられている固有の識別符号のみを用いて送信元並びに送信先のアドレスを指定する場合と比較して、識別符号よりも充分に情報量が少なくてもよい機器番号(例えば、識別符号が通常48ビットであるのに対して、機器番号は4〜8ビットでよい)を使用することで1フレームの長さが相対的に短くなり、その結果、無線信号の送信時間が短縮されて電池の消耗を抑えることができる。
次に、図5のタイムチャートを参照して、本実施形態の無線局(火災警報器TR)の登録手順について説明する。
まず、親局TR1の登録スイッチ(図示せず)が押操作され、親局TR1の操作入力受付部6が登録モードの操作入力を受け付けて操作信号(登録モードの操作信号)を出力する。当該操作信号を受け取った親局TR1の制御部1は、無線送受信部2を起動して無線信号の受信待ち状態となる。但し、登録スイッチの押操作が中止されて操作入力受付部6から登録モードの操作信号が出力されなくなると、親局TR1の制御部1は、所定の継続時間をタイマで限時し、当該継続時間の限時が終了した時点で登録モードから通常モードに復帰する。
さらに、何れかの子局TRj(例えば、子局TR2)の登録スイッチ(図示せず)が押操作され、子局TR2の操作入力受付部6から登録モードの操作信号が出力される。そして、この操作信号を受け取った子局TR2の制御部1は、無線送受信部2を起動して登録メッセージを含む2種類の無線信号R1,R2を続けて送信させる。これら2種類の無線信号R1,R2は、何れも自己の子局IDを送信元アドレスSAとし、マルチキャストのアドレスを送信先アドレスDAとしている点で共通している。しかしながら、一方の無線信号R1では、本実施形態の親局TR1に対する登録メッセージ(第1の登録メッセージ)をデータDataとし、他方の無線信号R2では、旧システムの親局に対する登録メッセージ(第2の登録メッセージ)をデータDataとしている点で相違する。
親局TR1の制御部1は、操作入力受付部6から登録モードの操作信号を受け取っている間、若しくはタイマが継続時間を限時している間に無線送受信部2で無線信号R1又は無線信号R2を受信した場合にのみ、登録の処理を行う。但し、親局TR1の制御部1が行う登録処理は、上述した旧システムの親局における登録処理とほぼ共通であって、子局TR2の子局IDを送信先アドレスDAとし、登録メッセージをデータDataとする無線信号Qを無線送受信部2から送信させる。
子局TR2の制御部1は、無線信号R1,R2の送信後に無線送受信部2を受信状態に切り換えており、親局TR1から送信される無線信号Qを無線送受信部2で受信する。そして、子局TR2の制御部1は、無線信号Qの送信元アドレスSAである親局IDと、無線信号Qで受け取った登録メッセージに含まれている機器番号並びに登録カウンタのカウント値とを対応付けてメモリ部1aに記憶する。さらに子局TR2の制御部1は、登録メッセージを受信したことに対する応答メッセージをデータDataとする無線信号Wを無線送受信部2から親局TR1へ送信させる。親局TR1の制御部1は、子局TR2から返信される無線信号Wが無線送受信部2で受信されると、当該子局TR2の子局IDと機器番号を対応付けてメモリ部1aに記憶し、1台の子局TR2の登録処理を完了する。また、親局TR1の無線送受信部2が受信待ち状態のときに別の子局(例えば、子局TR3)で登録スイッチが押操作されれば、上述した手順で子局TR3の登録処理が行われる。なお、親局TR1の制御部1が登録処理を完了する際、登録済みの子局の台数を警報部5のスピーカから鳴動させ、作業者に登録済みの子局の台数を知らせるようにしてもよい。
ここで、旧システムの子局で登録スイッチが押操作された場合、旧システムの子局からは1種類の無線信号R2しか送信されてこない。したがって、親局TR1の制御部1は、無線送受信部2で無線信号R1を受信した場合は本実施形態の無線局(子局TRj)であると判断し、無線送受信部2で無線信号R2のみを受信した場合は旧システムの無線局(子局)であると判断し、その判断結果(子局の種別)をメモリ部1aに記憶する。但し、親局TR1の無線送受信部2が受信状態となるタイミングによっては、親局TR1の無線送受信部2が、子局TRjから送信される2種類の無線信号R1,R2のうちの後の無線信号R2のみしか受信できない場合が有る。この場合、本実施形態の子局TRjが本実施形態の親局TR1に対して、誤って旧システムの子局として登録されてしまう虞がある。そこで、本実施形態の子局TRjの制御部1は、本実施形態の子局TRjであることを示す符号を無線信号R2のデータDataに追加している。したがって、親局TR1の制御部1は、1種類の無線信号R2のみを受信した場合であっても、当該無線信号R2のデータDataに前記符号が含まれていれば、当該無線信号R2の送信元の子局TRjを旧システムの子局として登録しない。その結果、上述した誤登録が防止できる。
上述のようにして子局TRjが登録された後、親局TR1の制御部1は、メモリ部1aに記憶されている子局の種別が全て本実施形態の子局TRjであれば、第1の送受信制御モードを選択して実行し、初めに無線送受信部2から同期信号を送信させる。子局TRjの制御部1は、無線送受信部2で同期信号を受信することにより、第1の送受信制御モードを選択して実行する。その結果、親局TR1と子局TRjを含む全ての火災警報器TR(無線局)の制御部1が第1の送受信制御モードを選択して実行することになる。
一方、親局TR1の制御部1は、メモリ部1aに記憶されている子局の種別に旧システムの子局が含まれていれば、第2の送受信制御モードを選択して実行し、同期信号の送信を行わない。したがって、本実施形態の子局TRjの制御部1は、無線送受信部2で同期信号を受信しないことにより、第2の送受信制御モードを選択して実行する。その結果、親局TR1と子局TRj並びに旧システムの子局を含む全ての火災警報器TR(無線局)の制御部1が第2の送受信制御モードを選択して実行することになる。
ここで、従来例(特許文献1記載の旧システム)においては、登録スイッチが押操作されることで制御部が登録モードに移行し、その後は登録スイッチが押操作されていなくても制御部の登録モードが維持され、所定時間経過後に自動的に制御部が登録モードから通常モードに復帰していた。この場合、登録を行う作業者には、登録モードが何時終了したのかの判断が難しかった。これに対して本実施形態の無線局(火災警報器TR)では、上述したように登録スイッチが押操作されている間だけ登録モードに移行するため、作業者が登録モードの終了を容易に判断できる。但し、親局TR1の登録スイッチの押操作が中止されても、所定の継続時間の間は親局TR1の制御部1が登録モードを継続しているので、作業者が誤って親局TR1の登録スイッチから指を離してしまっても、親局TR1の制御部1が登録作業を行うことができる。
ここで、親局TR1並びに子局TRjの制御部1は、電源が投入された時点で操作入力受付部6で登録スイッチの押操作入力が受け付けられている場合、メモリ部1aに記憶している登録情報を全て消去して初期値に戻す。なお、登録情報とは、親局TR1の場合は子局IDと機器番号と登録カウンタのカウント値と子局の種別であり、子局TRjの場合は親局IDと機器番号と登録カウンタのカウント値である。このように簡単な操作でメモリ部1aに記憶されている登録情報を削除することができる。なお、登録情報が削除された後、親局TR1並びに子局TRjの制御部1は、新たに登録がされるまで無線信号の送受信を行わない。