JP5541684B2 - アルミニウム合金の中空押出形材のプレス曲げ加工方法 - Google Patents
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Description
応力腐食割れは、素材を加工したときに生じる残留応力に依存しており、素材強度に対して引張残留応力が高いほど発生しやすくなる。アルミニウム合金製中空形材は、車体フレームや補強材などに適用する際に、曲げ加工が要求される場合も多く、その曲げ加工後に残留する応力に起因して、前記応力腐食割れが発生する場合がある。
なお、鋼や銅合金など、他の金属材料についても同様の問題がある。
しかし、これらの素材を用いても、加工条件によっては、一部に引張応力が残留し、応力腐食割れが発生する場合がある。これに対して、表面にショットピーニング加工を施すことで残留応力を低減する対策も見られるが(特許文献4参照)、後加工追加によるコストアップが問題になる。
しかし、T1調質材は、室温中でも自然時効するために、素材特性が変化しやすく、加工タイミングによってスプリングバック量が変化し、製品形状にバラツキが生じる。特に曲げ半径の大きい製品では、スプリングバック量自体が大きくなり、製品形状精度の確保が難しいという問題が生じる。
本発明は、残留応力低減の面で有利なプレス曲げ加工により、アルミニウム合金等の金属製形材の長手方向に曲率を付与する場合において、曲げ加工後の残留応力をさらに小さくして、曲げ加工製品の耐SCC(耐応力腐食割れ)性能を向上することを目的とする。
本発明は、応力腐食割れ性に対する感受性が比較的高い6000系又は7000系アルミニウム合金製中空押出形材を素材とする場合に、特に好適である。
また、本発明の方法で製造したプレス曲げ加工製品を、自動車用ドア補強材、バンパー補強材、又はルーフ補強材等の自動車用エネルギー吸収部材に適用した場合、経時変化に伴う応力腐食割れが防止されることで、き裂発生に伴う衝突性能の低下抑制という効果を得ることができる。
図1(c)に、曲げ金型7が後退して無負荷状態となり、スプリングバックが生じた中空押出形材(以下、中間材1Aという)を示す。中間材1Aは、スプリングバックにより、曲率半径が図1(b)の状態よりかなり大きくなっている。なお、8,8は後述する第2工程のプレス曲げ加工における支持ローラである。
中間材1Aの曲げ高さd1と、曲げ加工製品の曲げ高さの基準値d0との差が、ずれ量Δd(=d1−d0)である。このずれ量Δdの大きさは、初期の条件出しにおいて適宜設定すればよいが、アルミニウム合金形材であれば、0.1≦(Δd/d0)≦0.25程度の範囲に設定することで、残留応力軽減及び生産性の面でよい結果が得られる。すなわち、Δd/d0が余り小さいと残留応力軽減の効果が少なく、余り大きいと曲げ金型7のストロークが(後述する2回目の曲げ金型9,9のストロークも)大きくなり、生産性が低下する(プレス曲げ加工の時間が多く掛かる)。
図1(e)に、曲げ金型9,9が後退して無負荷状態となり、スプリングバックが生じた中空押出形材(以下、曲げ加工製品1Bという)を示す。曲げ加工製品1Bは、スプリングバックにより、曲率半径が図1(d)の状態よりかなり小さくなっている。
本発明では、このように2段階のプレス曲げ加工(プレス曲げ及び曲げ戻し)を行うことにより、一度のプレス曲げ加工で所定の曲げ形状(曲げ半径)を得る従来法に比べて、曲げ加工製品1Bの残留引張応力を大幅に軽減することができる。
2回目のプレス曲げ加工後の曲げ加工製品1Bの曲げ高さd2を、目標曲げ高さの範囲内(d0−α≦d2≦d0+α)で安定して得るには、1回目のプレス曲げ加工後の中間材1Aの曲げ高さのずれ量Δd(=d1−d0)の大きさに応じて、2回目のプレス曲げ加工の曲げ金型9,9の押し込み量Sを調整することが望ましい。
なお、前記押し込み量Sとして、例えば、2回目のプレス曲げ加工における曲げ金型9,9の全ストローク(上端の待機位置(定位置)から加工を停止するまでの移動距離)、あるいは曲げ金型9,9が中空押出形材1に当接してから押し込みを停止するまでのストロークを選定することができる。
また、上記の例では、2工程のプレス曲げ加工を行って、目標値から所定の寸法公差範囲内(曲げ高さd0±α)の曲げ形状を得たが、2回目のプレス曲げ加工後の曲げ加工製品1Bの曲げ高さd2を測定したとき、万一、曲げ高さd2が目標曲げ高さの範囲内でなかった場合(d2>d0+α)、再度、曲げ金型9,9によるプレス曲げ加工(3回目のプレス曲げ加工)を行うことができる。このときの曲げ金型9,9の押し込み量Sは、前記対応関係に基づいて算出すればよい。4回目以降のプレス曲げ加工が必要になった場合も同様である。
No.3,6は比較例であり、同じプレス曲げ加工装置を用い、1回目のプレス曲げ加工を図1(b)に示す態様で行い、2回目のプレス曲げ加工を同じく図1(b)に示す態様で行った。No.3,6とも、1回目のプレス曲げ加工(順曲げ)の押し込み量は15mm、2回目のプレス曲げ加工(追加順曲げ)の押し込み量(この場合はストロークの増分)を10mmとした。
なお、測定方法は、歪みゲージによる切断開放法を用いた。曲げ内側フランジの前記測定位置1,2,3表面にそれぞれ歪みゲージを瞬間接着剤で貼り着け、歪みゲージのリード線を歪み計に接続した後、歪みゲージ周辺を切断して応力開放し、切断前後の歪み量の差を歪み計で測定し、その測定値と形材のヤング率から残留応力値を算出した。
2,3 フランジ
4,5 ウエブ
6,8 支持ロール
7,9 曲げ金型
Claims (5)
- アルミニウム合金の中空押出形材を1回目のプレス曲げ加工で一方向に過剰に曲げ加工した後、2回目のプレス曲げ加工で逆方向に曲げ戻しを行い、これにより前記中空押出形材について目標とする曲げ形状を得るプレス曲げ加工方法において、1回目のプレス曲げ加工後の中空押出形材の曲げ形状の基準値からのずれ量に応じて、2回目のプレス曲げ加工における曲げ金型の押し込み量を調整するもので、曲げ形状を表す指標として中空押出形材の両端を水平に置いたときの長さ方向中央部の高さが選定され、量産開始前の初期の条件出しとして、前記ずれ量と、2回目のプレス曲げ加工で目標とする曲げ形状が得られる曲げ金型の押し込み量の対応関係を予め求め、量産開始後は、量産対象の個々の中空押出形材について、1回目のプレス曲げ加工後に前記ずれ量を測定し、2回目のプレス曲げ加工において前記対応関係に基づいて決まる押し込み量で曲げ加工を行うことを特徴とするプレス曲げ加工方法。
- 2回目のプレス曲げ加工後に、曲げ形状の前記基準値からのずれ量を測定し、2回目のプレス曲げ加工と同じ曲げ金型により同方向に前記対応関係に基づいて決まる押し込み量で追加のプレス曲げ加工を行い、これにより前記中空押出形材について目標とする曲げ形状を得ることを特徴とする請求項1に記載されたプレス曲げ加工方法。
- 追加のプレス曲げ加工後、さらに、曲げ形状の基準値からのずれ量の測定と、2回目のプレス曲げ加工と同じ曲げ金型による同方向への追加のプレス曲げ加工を前記対応関係に基づいて決まる押し込み量で1回以上繰り返し行い、これにより前記中空押出形材について目標とする曲げ形状を得ることを特徴とする請求項2に記載されたプレス曲げ加工方法。
- 前記中空押出形材がJIS6000系又は7000系アルミニウム合金のT5又はT6調質材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたプレス曲げ加工方法。
- 前記基準値をd 0 とし、前記ずれ量をΔdとしたとき、0.1≦Δd/d 0 ≦0.25であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたプレス曲げ加工方法。
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