JP5523023B2 - 路面状態の推定方法とその装置、及び、車両制御方法 - Google Patents

路面状態の推定方法とその装置、及び、車両制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、走行中の路面がWET状態であるか否かを推定するとともに、そのWET状態が浅いWET状態か深いWET状態か、ハイドロプレーニング現象の発生が予測される状態か否かを推定する方法とその装置、及び、車両制御方法に関するものである。
自動車の走行安定性を高めるため、走行中の路面の状態を精度良く推定し、車両制御へフィードバックすることが求められている。走行中の路面の状態を推定することができれば、制駆動や操舵といった危険回避の操作を起こす前に、例えば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、安全性が一段と高まることが予想される。
走行中の路面の状態を推定する方法としては、例えば、走行中のタイヤの振動を検出し、この検出されたタイヤの振動の時系列波形から、踏み込み位置より前の時間領域(踏み込み前領域)の振動を抽出するとともに、この振動の低周波領域(1kHz〜2kHz帯域)の振動成分の大きさに対する高周波領域(3kHz〜5kHz帯域)の振動成分の大きさの比である振動レベル比Rを算出し、この振動レベル比Rから路面状態が高μ路面であるか低μ路面であるかを推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、走行中のタイヤから発生するタイヤ発生音を検出し、この検出されたタイヤ発生音の波形をウェーブレット変換処理し、各ウェーブレット成分を時間−周波数分析して、タイヤ発生音のホッピングノイズ成分の大きさ、ゴム衝突ノイズ成分の大きさ、及び、タイヤボディノイズ成分の大きさを比較することにより、路面が乾燥アスファルト路面か、湿潤アスファルト路面か、氷路面か、圧雪路面かを推定する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
WO 2006/135090 A1 特開2004−168286号公報
しかしながら、タイヤの振動から路面状態を推定する方法では、路面が水深の深いWET路面であるか否かについては精度よく推定できるが、図4に示すように、路面がやや濡れたような浅いWET路面であるか否かの判定を行うことが難しかった。
一方、タイヤ発生音から路面状態を推定する方法では、路面が浅いWET路面であるか否かについては精度よく推定できるが、水深の深いWET路面では、音検出装置へ水が飛散することを防ぐことが困難であるだけでなく、図7に示すように、深いWET路面では水の跳ね上げが大きいため、波形がホワイトノイズに埋もれてしまい、路面に特徴的な音を観測することができないといった問題点があった。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、走行中の路面状態を精度よく推定することのできる方法とその装置、及び、路面の状態に基づいて車両の走行状態を制御する方法を提供することを目的とする。
本願の請求項に記載の発明は、走行中の路面温度と、タイヤ振動の大きさと、タイヤ発生音の大きさとから、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測される状態にあるか否かを推定する方法であって、路面温度が予め設定された基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさが予め設定された振動閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されるWET状態である第1の路面状態にあると判定し、路面温度が予め設定された前記基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさが予め設定された音圧閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されないWET状態である第2の路面状態にあると判定することを特徴とする。
このように、路面温度とタイヤ振動とタイヤ発生音とから路面状態を推定するようにしたので、タイヤ振動のみによる推定もしくはタイヤ発生音のみによる推定に比較して、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測される状態にあるか否かを正確に推定することができる。また、路面のWET状態を、水深が深くハイドロプレーニング現象の発生し易い第1の路面状態と、水深が浅くハイドロプレーニング現象の発生が予測されない第2の路面状態とを明確に区別できるので、ハイドロプレーニング現象の発生の予測を確実に行うことができる。
なお、タイヤ振動は走行中の路面からタイヤに入力する振動であり、タイヤ発生音はタイヤが路面に接地する際にタイヤ接地面付近に発生する音をいう。
また、ハイドロプレーニング現象は、水膜が形成された路面を車両が高速で走行した場合に、タイヤと路面との間に水が入り込んでしまって、ハンドルやブレーキが効きにくくなる現象で、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるWET状態とは、水膜の厚さである水深が所定の値(1mm〜3mm)を超えている路面の状態を指す。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の路面状態の推定方法において、第1の路面状態を、路面に2mmを超えた厚さの水膜が形成されている状態とし、第2の路面状態を、路面に厚さが2mm以下の水膜が形成されている状態としたもので、これにより、タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさと第1の路面状態との対応が更に明確になるとともに、前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさと第2の路面状態との対応が更に明確になるので、路面状態の推定精度を更に向上させることができる。
請求項に記載の発明は、請求項または請求項に記載の路面状態の推定方法において、車輪速度を計測するとともに、路面が第1の路面状態にあると判定された場合には、前記車輪速度と予め設定された警告速度とを比較し、前記車輪速度が前記警告速度を超えている場合に、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されると判定することを特徴とする。このように、予め警告速度を設定しておくことにより、後述するように、運転者に警告を発したり、走行速度を抑制するなどの制御を行うことができるので、車両の走行安全性を向上させることができる。
請求項に記載の発明は、請求項〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法において、路面が第1の路面状態にあるか否かを判定した後に、第2の路面状態にあるか否かを判定することを特徴とする。このように、タイヤ振動による判定を先に行って路面が第1の路面状態にあるか否かを判定した方が、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測される状態であるか否かの判定を精度よく行うことができる。
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法において、前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさを、走行中のタイヤの振動の振動波形の踏み込み位置より前の踏み込み前領域に対応する時間範囲の信号を抽出し、この抽出された時間範囲の信号を周波数解析して得られる周波数スペクトルを用いて算出するようにしたものである。これにより、路面状態との相関の高いタイヤ振動の振動成分の大きさを精度よく算出できるので、路面状態の推定精度が向上する。
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法において、前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさを、前記音圧信号をN分の1オクターブ解析して得られる周波数スペクトルを用いて算出するようにしたものである。これにより、路面状態との相関の高いタイヤ発生音の音圧成分の大きさを精度よく算出できるので、路面状態の推定精度が向上する。
また、請求項に記載の発明は、車両の走行状態を制御する方法であって、請求項1〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法により推定した路面状態に基づいて車両の走行状態を制御することを特徴とする。このように、推定された路面状態に基づいて、ABSブレーキ等を制御して車両の走行状態を制御すれば、車両の安全性を更に高めることができる。
請求項に記載の発明は、走行中の路面の状態を推定する装置であって、走行中の路面温度を計測する路面温度計測手段と、タイヤ発生音を検出するタイヤ発生音検出手段と、タイヤ振動を検出するタイヤ振動検出手段と、車輪速度を検出する車輪速検出手段と、前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさを算出する振動成分算出手段と、前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさを算出する音圧成分算出手段と、前記計測された路面温度と、前記振動成分の大きさと、前記音圧成分の大きさとから、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測される状態にあるか否かを推定する路面状態推定手段と、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるか否かを推定する予測手段と、を備え、前記路面状態推定手段は、路面温度が予め設定された基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさが予め設定された振動閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されるWET状態である第1の路面状態にあると判定し、路面温度が予め設定された前記基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさが予め設定された音圧閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されないWET状態である第2の路面状態にあると判定し、前記予測手段は、路面が前記第1の路面状態にあると判定された場合には、前記車輪速検出手段で検出した車輪速度と予め設定された警告速度とを比較して、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるか否かを推定することを特徴とする。
このような構成を採ることにより、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるか否かを精度よく推定することができる。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の路面状態の推定装置であって、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されると推定された場合に、運転者に警報を発する警報装置を備えたことを特徴とする。これにより、ハイドロプレーニング現象の発生予測を運転者に認識させることができるので、車両の走行安定性を向上させることができる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
本実施の形態に係る路面状態推定装置の構成を示す機能ブロック図である。 センサーの配置を示す図である。 タイヤ振動波形における踏み込み前領域、接地面領域、蹴り出し後領域を示す図である。 踏み込み前領域におけるタイヤ振動の周波数スペクトルを示す図である。 乾燥路面走行時のタイヤ発生音のオクターブ分布波形を示す図である。 浅いWET路面走行時のタイヤ発生音のオクターブ分布波形を示す図である。 深いWET路面走行時のタイヤ発生音のオクターブ分布波形を示す図である。 本実施の形態に係る路面状態の推定方法を示すフローチャートである。 乾燥路面走行時におけるタイヤ振動の振動レベル差と振動閾値のdBG値との差と、音圧信号の音圧レベル差の時間変化を示す図である。 浅いWET路面走行時におけるタイヤ振動の振動レベル差と振動閾値のdBG値との差、音圧信号の音圧レベル差の時間変化を示す図である。 深いWET路面走行時におけるタイヤ振動の振動レベル差と振動閾値のdBG値との差、音圧信号の音圧レベル差の時間変化を示す図である。 本発明による路面状態の推定方法を示すフローチャートである。 本発明による路面状態の推定方法による路面状態の推定結果を示す表である。 従来の路面状態の推定方法による路面状態の推定結果を示す表である。
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施の形態に係る路面状態推定装置10の機能ブロック図である。
路面状態推定装置10は、路面温度計測手段としての赤外線温度センサー11と、振動検出手段としての加速度センサー12と、音圧信号検出手段としてのマイクロフォン13と、回転速度検出手段としての車輪速センサー14と、振動レベル算出手段15と、音圧レベル算出手段16と、路面状態推定手段17と、警報手段18とを備える。
赤外線温度センサー11と加速度センサー12とマイクロフォン13と車輪速センサー14とは路面状態推定装置10のセンサー部10Aを構成する。振動レベル算出手段15と音圧レベル算出手段16と路面状態推定手段17とは演算処理部10Bを構成する。
赤外線温度センサー11は、図2(a)に示すように、車体20のフロントのバンパー21の下部に設置されて、路面から放射される、波長が赤外線領域の熱放射を計測して当該路面の温度を計測する。赤外線温度センサー11の出力は、路面状態推定手段17に入力される。
加速度センサー12は、図2(b)に示すように、前輪22Fのタイヤ22Tのインナーライナー部23のタイヤ気室24側のほぼ中央部に配置されて、当該タイヤ22Tのトレッド25に入力する振動を検出する。なお、本例では、上記加速度センサー12の検出方向をタイヤ周方向になるように配置して、路面から入力するタイヤ周方向のトレッド振動を検出する。加速度センサー12の出力は、振動レベル算出手段15に入力される。
本例では、加速度センサー12の出力を車体側の演算処理部10Bに送信する送信機12zを設けるとともに、演算処理部10Bに受信機10zを設けることで、タイヤ22Tに取付けられた加速度センサー12の出力であるタイヤ振動のデータを無線伝送により、演算処理部10Bの振動レベル算出手段15に送信するようにしている。
送信機12zは加速度センサー12と一体にインナーライナー部23に配置されるが、送信機12zをタイヤ22Tのバルブ22vに取付ける構成としてもよい。
マイクロフォン13は、図2(a)に示すように、車体20の、後輪22R前方のフレーム26の下部に取付けられて、走行時に後輪22Rのタイヤ22Tが路面に接地する際にタイヤ接地面付近に発生するタイヤ発生音の音圧信号を検出する。マイクロフォン13の出力は、音圧レベル算出手段16に入力される。
車輪速センサー14は、車輪の回転速度(以下、車輪速という)を検出するもので、本例では、外周部に歯車が形成され車輪とともに回転するローターと、このローターと磁気回路を構成するヨークと、磁気回路の磁束変化を検出するコイルとを備え、車輪(ここでは、前輪22F)の回転角度を検出する周知の電磁誘導型の車輪速センサーを用いている。ヨークとコイルとは図示しないナックルに装着される。車輪速センサー14の出力は、振動レベル算出手段15と路面状態推定手段17とに入力される。
なお、車輪速センサー14としては、リング多極マグネットと磁気抵抗素子とを組み合わせたものなど、他の構成の車輪速センサーを用いてもよい。あるいは、図示しないトランスミッションの回転速度を検出し、これを車輪速としてもよい。
演算処理部10Bを構成する、振動レベル算出手段15、音圧レベル算出手段16、及び、路面状態推定手段17は、それぞれ、マイクロコンピュータのソフトウェアにより構成される。演算処理部10Bは、車体20の後輪22R前方のフレーム26上に取付けられる。
振動レベル算出手段15は、振動波形検出部151と、振動レベル分布演算部152と、時間領域信号抽出部153と、周波数分析部154と、振動レベル算出部155と、振動レベル比演算部156とを備え、送信機12zから送信され受信機10zで受信した加速度センサー12の出力であるタイヤ振動のデータから、振動レベル演算値を求めて、これを路面状態推定手段17に出力する。
振動波形検出部151は、加速度センサー12の出力信号の大きさである振動レベルを時系列に配列した振動波形を求める。
振動レベル分布演算部152は、車輪速センサー14からの出力パルスを用いて、前記振動波形をタイヤの所定の位置に対応する振動波形に変換し、図3に示すような、タイヤ振動レベルの分布を求める。
時間領域信号抽出部153は、タイヤ接地面近傍に現れるタイヤ振動のピーク位置から、当該タイヤ22Tの正確な踏み込み点Aと蹴り出し点Bとを特定するとともに、振動レベル分布のデータを、踏み込み前領域、接地面領域、蹴り出し後領域の3つの領域のデータに分割し、これらの領域のうち、踏み込み前領域における振動レベルの時系列波形を抽出する。
周波数分析部154は、前記時系列波形を、例えば、FFTアナライザーを用いて周波数分析し、図4のグラフに示すような、踏み込み前領域のタイヤ振動の周波数スペクトルを求める。周波数スペクトルの横軸は周波数(Hz)で、縦軸は振動レベル(dBG)である。同図の細い実線が乾燥アスファルト路面走行時、破線が浅いWET路面(ここでは、やや水で濡れている状態の路面;セミウェット)走行時、太実線が深いWET路面(ここでは、水深2mm路面)走行時の周波数スペクトルである。
深いWET路面が第1の路面状態に対応する路面状態で、浅いWET路面が第2の路面状態に対応する路面状態である。
振動レベル算出部155は、図4に示す踏み込み前領域における周波数スペクトルから、低周波帯域(例えば、1〜2kHz帯域)の振動成分の大きさGLと高周波帯域(例えば、3〜5kHz帯域)での振動成分の大きさGHとを算出する。
振動レベル比演算部156は、低周波帯域の振動成分の大きさGLと高周波帯域の振動成分の大きさGHとから振動レベル演算値を算出する。本例では、振動レベル演算値を、低周波帯域の振動成分の大きさGLに対する高周波帯域の振動成分の大きさGHとの比である振動レベル比Rとした。R=(GH/GL)である。
なお、GLとGHとをデシベル単位(dBG)で表した時には、振動レベル比Rは、GLのdBG値とGHのdBG値との差になる。
音圧レベル算出手段16は、周波数分析部161と、音圧レベル算出部162と、音圧レベル比演算部163とを備え、マイクロフォン13から出力されるタイヤ発生音の音圧信号のデータから音圧レベル演算値を求めて、これを路面状態推定手段17に出力する。
周波数分析部161は、タイヤ発生音の音圧信号をN分の1オクターブ分析して、図5〜図7に示すような、音圧信号の分布波形(オクターブ分布波形)を求める。オクターブ分布波形は、N分の1オクターブの帯域に区切ったオクターブバンド毎に音圧レベル(バンドパワー)を測定して求めるもので、本例では、N=3とした。
オクターブ分布波形の横軸は周波数(Hz)で、縦軸はバンドパワー(dB)である。図5が乾燥路面走行時、図6がセミウェット路面(浅いWET路面)走行時、図7が水深2mm路面(深いWET路面)走行時のオクターブ分布波形である。
音圧レベル算出部162は、オクターブ分布波形から、低周波帯域(例えば、500Hz)でのバンドパワー値PAと高周波帯域(例えば、8000Hz)でのバンドパワー値PBとを算出する。
音圧レベル比演算部163は、低周波帯域のバンドパワー値PAと高周波帯域のバンドパワー値PBとから音圧レベル演算値を算出する。本例では、音圧レベル演算値を、低周波帯域のバンドパワー値PAに対する高周波帯域のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Qとした。Q=(PB/PA)である。
なお、PAとPBとをデシベル単位(dB)で表した場合、音圧レベル比QはPBのdB値とPAのdB値との差になる。
路面状態推定手段17は、赤外線温度センサー11から入力される路面温度Tのデータと、振動レベル算出手段15から入力される振動レベル比Rのデータと、音圧レベル算出手段16から入力される音圧レベル比Qのデータと、車輪速センサー14から入力される車輪速Vのデータとを用いて、路面の状態がWET状態にないか、浅いWET状態か、あるいは、深いWET状態かを判定するとともに、その判定結果を、ABSブレーキなどの制御を行って車両の走行状態を制御する車両制御装置30に出力する。
また、路面状態推定手段17が、路面が深いWET状態であると判定した時には、車輪速度と予め設定された警告速度とを比較し、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるか否かを判定し、この判定結果を警報手段18に出力する。
なお、判定の手順については、後述する。
警報手段18は運転席近傍に設置されて、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるという信号が入力されたときに、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーにハイドロプレーニング現象の発生が予測されることを認識させる。
なお、警報用のブザーを駆動し、警報音により、ドライバーにハイドロプレーニング現象の発生が予測されることを認識させるようにしてもよいし、警報用のブザーとLEDとを併用してもよい。
また、注意用のLEDや警告用のLEDを設けて、路面が浅いWET状態であるという信号が入力されたときには注意用のLEDを点灯させて注意を促し、路面が深いWET状態であるという信号が入力されたときには警告用のLEDを点灯させて警告を発するようにしてもよい。
次に、本実施の形態に係る路面状態推定装置10を用いて走行中の路面の状態を推定する方法について説明する。
まず、センサー部10Aの各センサー(赤外線温度センサー11,加速度センサー12,マイクロフォン13,車輪速センサー14)により、走行中の路面温度T、タイヤ22Tの振動、タイヤ発生音、及び、車輪速Vをそれぞれ計測する。
路面温度Tのデータは直接路面状態推定手段17に出力される。
タイヤ22Tの振動のデータである加速度センサー12の出力は、送信機12zから送信され、演算処理部10Bの受信機10zで受信されて振動レベル算出手段15に入力される。
タイヤ発生音を含むタイヤ接地面付近の音のデータであるマイクロフォン13の出力は音圧レベル算出手段16に出力される。
車輪速Vのデータは振動レベル算出手段15と路面状態推定手段17とに出力される。
そして、振動レベル算出手段15に入力された加速度センサー12の出力と車輪速Vのデータから、踏み込み前領域における振動レベルの時系列波形を抽出してこれを周波数分析して周波数スペクトルを求め、この周波数スペクトルから、1〜2kHz帯域の振動成分の大きさGLと3〜5kHz帯域での振動成分の大きさGHとを算出した後、低周波帯域の振動成分の大きさGLと高周波帯域の振動成分の大きさGHとの比である振動レベル比R=(GH/GL)を演算する。振動レベル比Rは路面状態推定手段17に出力される。
一方、マイクロフォン13の出力である音圧信号をN分の1オクターブ分析してオクターブ分布波形を求め、このオクターブ分布波形から、基準点A(500Hz)のバンドパワー値PAと基準点B(8000Hz)のバンドパワー値PBとを算出した後、低周波帯域のバンドパワー値PAと高周波帯域のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Q=(PA/PB)を演算する。音圧レベル比Qは路面状態推定手段17に出力される。
そして、路面状態推定手段17にて、路面温度Tのデータと、振動レベル比Rのデータと、音圧レベル比Qのデータと、車輪速Vのデータとを用いて、路面状態を推定する。
以下、路面状態推定手段17における路面状態の推定方法について、図8のフローチャート(以下、フロー1という)を参照して説明する。
始めに、路面上の水分が凍っているか否かを判断する。具体的には、路面温度Tのデータと予め設定された基準温度T0とを比較する(ステップS11)。本例では、基準温度T0をT0=−3℃とした。
計測された路面温度Tが基準温度T0以下の場合には、路面が凍っている状態、すなわち、WET状態ではないと判定する。
計測された路面温度Tが基準温度T0を超えている場合には、ステップS12に進む。
ステップS12では、タイヤ振動から路面が深いWET状態であるか否かを判定する。具体的には、踏み込み前領域の周波数スペクトルから算出した1〜2kHz帯域の振動成分の大きさGLに対する3〜5kHz帯域での振動成分の大きさGHとの比である振動レベル比R=(GH/GL)と予め設定された振動閾値Kpとを比較し、振動レベル比R=(GH/GL)と予め設定された振動閾値Kpとの比が1を超えたときに深いWET状態であると判定する。
本例では、図4のグラフに示すように、低周波帯域の振動成分の大きさGLと高周波帯域の振動成分の大きさGHとをともにdBG単位としているので、振動レベル比Rに代えて、振動レベル差R’(dBG)=GH(dBG)−GL(dBG)と振動閾値Kpとを比較し、振動レベル差R’と振動閾値KpのdBG値との差が0を超えたときに深いWET状態である判定する。本例では、KpのdBG値を−20(dBG)とした。
図9〜図11の上段のグラフは、乾燥アスファルト路面走行時、セミウェット路面走行時、及び、水深2mm路面走行時におけるタイヤ振動の振動レベル差R’と振動閾値KpのdBG値との差の時間変化を示したもので、各グラフを比較してわかるように、路面状態が深いWET状態にある水深が2mmの路面における周波数スペクトルでは、振動レベル差R’とKpのdBG値との差が0dBGをはるかに超えている。これに対して、路面状態が浅いWET状態(セミウェット)の場合、及び、路面状態が乾燥路の場合には、振動レベル差R’とKpのdBG値との差は0dBGに達していない。したがって、振動レベル差R’と予め設定された振動閾値KpのdBG値との差から路面状態が深いWET状態にあるか否かを判定することができる。
路面状態が深いWET状態である場合には、ハイドロプレーニング現象が発生する可能性がある。そこで、路面状態が深いWET状態であると判定された場合には、ステップS13に進んで、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるか否かを判定する。
すなわち、車両が、水深が2mm以上である深いWET状態の路面を走行すると、タイヤの排水能力が低下して、タイヤ22Tと裏面との間に水が入り込んでしまうため、ハンドルやブレーキが効きにくくなる、いわゆる、ハイドロプレーニング現象(アクアプレーニング現象ともいう)が発生する恐れがある。このハイドロプレーニング現象は、車輪速Vが大きくなるほど発生しやすいことが知られている。
そこで、ステップS13では、計測された車輪速Vと予め設定された基準となる車輪速である警告速度V0とを比較する。本例では、警告速度V0をV0=40km/hとした。
計測された車輪速Vが警告速度V0を超えた場合には、ハイドロプレーニング現象の発生は予測されると判定し、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるという信号を警報手段18に出力して、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーにハイドロプレーニング現象の発生が予測されることを認識させる。
一方、計測された車輪速Vが警告速度V0以下の場合には、路面状態が深いWET状態にはあるが、ハイドロプレーニング現象の発生は予測されないと判定する。但し、運転者がスピードを上げる可能性もあるので、路面が深いWET状態であるという信号を警報手段に出力して、警告用のLEDを点灯させて警告を発するようにすることが好ましい。
路面状態が深いWET状態にないと判定された場合には、ステップS14に進んで、路面状態が浅いWET状態にあるか否かを判定する。具体的には、検出された音圧レベルの演算値である音圧レベル比Qと予め設定された音圧閾値Kqとを比較する。なお、本例では、音圧閾値をKq=1、すなわち、本例では、音圧レベル比Qそのもので、路面状態が浅いWET状態にあるか否かを判定する。
路面が乾燥アスファルト路面の場合には、図5に示すように、基準点A(500Hz)のバンドパワー値PAが基準点B(8000Hz)のバンドパワー値PBよりも高いので、音圧レベル比Qは1以上になる。一方、セミウェット路面走行時には、図6に示すように、音圧レベル比Qは1未満となる。したがって、音圧レベル比Qから、路面が浅いWET路面であるか否かを判定することができる。
なお、路面が深いWET路面である場合には、図7に示すように、スペクトルがホワイトノイズで満たされるため、正しい判定はできない。
図9〜図11の中段のグラフは、乾燥アスファルト路面走行時、セミウェット路面走行時、及び、水深2mm路面走行時におけるタイヤ発生音の音圧レベル比QをdB単位で測定した音圧レベル差Q’の時間変化を示したもので、各グラフを比較してわかるように、路面状態が乾燥路である場合には、音圧レベル差Q’が0dBGを超えている。これに対して、路面状態が浅いWET状態(セミウェット)の場合には、音圧レベル差Q’は0dBGに達していない。したがって、音圧レベル差Q’から路面状態が浅いWET状態にあるか否かを判定することができる。なお、路面が深いWET路面である場合には、スペクトルがホワイトノイズで満たされることから、音圧レベル差Q’も0dBGの前後にばらついしまい、正しい判定はできない。
路面状態が浅いWET状態にある場合でも、雨が降り続くと路面状態が深いWET状態に移行する可能性があるので、路面が浅いWET状態であるという信号を警報手段に出力して、注意用のLEDを点灯させて注意を促すようにすることが好ましい。
このように本実施の形態では、赤外線温度センサー11,加速度センサー12,マイクロフォン13,車輪速センサー14により、走行中の路面温度T、タイヤ22Tの振動、タイヤ発生音、及び、車輪速Vをそれぞれ計測するとともに、タイヤ22Tの振動のデータである加速度センサー12の出力と車輪速Vのデータとから、踏み込み前領域における振動の周波数スペクトルの1〜2kHz帯域の振動成分の大きさGLと3〜5kHz帯域での振動成分の大きさGHとの比である振動レベル比R=(GH/GL)を演算し、マイクロフォン13の出力である音圧信号をN分の1オクターブ分析してオクターブ分布波形から基準点A(500Hz)のバンドパワー値PAと基準点B(8000Hz)のバンドパワー値PBとの比である音圧レベル比Q=(PA/PB)を演算し、路面温度Tのデータと、振動レベル比Rのデータと、音圧レベル比Qのデータと、車輪速Vのデータとを用いて、路面状態を推定するようにしたので、路面の状態を精度良く推定することができる。
具体的には、路面温度Tのデータと予め設定された基準温度T0とを比較して、路面がWET状態か否かを判定し、路面がWET状態にあるときには、タイヤ振動から路面が深いWET状態であるか否かを判定する。そして、路面状態が深いWET状態である場合には、計測された車輪速Vと予め設定された基準となる車輪速である警告速度V0とを比較し、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されか否かを判定する。そして、ハイドロプレーニング現象の発生が予測される場合には、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーにハイドロプレーニング現象の発生が予測されることを認識させる。
また、路面状態が深いWET状態にないと判定された場合には、タイヤ発生音から、路面が浅いWET路面であるか否かを判定する。
したがって、本発明の路面状態推定装置10で推定された路面状態の情報を車両制御手段30に出力して、車両の走行状態を制御するようにすれば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、車両の安全性を更に高めることができる。
なお、前記実施の形態では、踏み込み前領域における振動レベルの時系列波形をFFT分析して得られた踏み込み前領域における周波数スペクトルから、低周波帯域の振動成分と高周波帯域の振動成分を算出したが、前記時系列波形を、低周波帯域の振動成分と高周波帯域の振動成分をそれぞれ抽出するためのバンドパスフィルを通過させて、蹴り出し前領域における低周波振動レベルのパワー値と高周波振動レベルのパワー値とをそれぞれ算出するようにしてもよい。
また、上記例では、踏み込み前領域の周波数スペクトルから算出した1〜2kHz帯域の振動成分の大きさGLと3〜5kHz帯域での振動成分の大きさGHとから路面状態を推定したが、路面状態の推定に用いる周波数帯域はこれに限るものではない。また、路面状態の推定に用いる周波数帯域を3つ以上してもよい。この場合も、予め、3つ以上の周波数帯域の振動成分の大きさと路面状態との関係を求めておいて、これらの周波数帯域の振動成分の大きさの比などから路面状態を推定してもよい。
なお、踏み込み前領域の周波数スペクトルから算出した3〜5kHz帯域での振動成分の大きさGHと予め設定された閾値KHとを比較してもよい。この場合、振動レベルは車輪速Vにより変化するので、閾値KHは、車輪速Vに応じて可変とすることが好ましい。
また、前記例では、タイヤ振動の時系列波形から、踏み込み前領域の時系列波形を抽出して路面状態を推定したが、踏み込み位置より後の踏み込み領域に対応する時間範囲の信号を抽出して路面状態を推定してもよい。あるいは、踏み込み前領域と接地面領域に対応する時間範囲の信号を抽出して路面状態を推定してもよい。
また、前記例では、タイヤ発生音の音圧信号をN分の1オクターブ分析してオクターブ分布波形を求め、このオクターブ分布波形の基準点A(500Hz)のバンドパワー値PAと基準点B(8000Hz)のバンドパワー値PBとから音圧レベル比Qを演算したが、音圧信号をFFT分析して、基準点A(500Hz)での音圧レベルと基準点B(8000Hz)での音圧レベルを算出して音圧レベル比Qを演算してもよい。
また、上記例では、2つの基準点のバンドパワー値から路面状態を推定したが、3個以上のバンドパワー値の比から路面状態を推定してもよい。
なお、基準点A(500Hz)のバンドパワー値PAもしくは基準点B(8000Hz)のバンドパワー値PBと予め設定された閾値Krとを比較して路面状態を推定することも可能であるが、マイクロフォン13には、タイヤ発生音以外の音も入力するので、本例のように、2つの基準点のバンドパワー値の比から推定する方が推定精度は向上する。
なお、基準点を1個とした場合には、音圧レベルは車輪速Vにより変化するので、閾値Krは、車輪速Vに応じて可変とすることが好ましい。
また、オクターブ分布波形を求める際のNとしては、N=3に限定されるものではないが、音圧分布の均一性と分解能との関係から、N=3とすることが好ましい。
また、上記例では、タイヤ振動から路面が深いWET状態であるか否かを判定した後に、音圧信号から路面状態が浅いWET状態にあるか否かを判定したが、図12のフローチャート(以下、フロー2という)に示すように、音圧信号から路面状態が浅いWET状態にあるか否かを判定した後に、タイヤ振動から路面が深いWET状態であるか否かを判定するようにしてもよい。
このフロー2では、まず、路面温度Tのデータと予め設定された基準温度T0とを比較して、路面がWET状態にあるか否かを判定する(ステップS21)。
路面がWET状態にあると判定された場合には、ステップS22に進んで、音圧レベル比Qと予め設定された音圧閾値Kqとを比較し、路面状態が浅いWET状態にあるか否かを判定する。
路面状態が浅いWET状態にないと判定された場合には、ステップS23に進んで、タイヤ振動から路面が深いWET状態であるか否かを判定する。そして、路面状態が深いWET状態である場合には、ハイドロプレーニング現象が発生する可能性があるので、ステップS24に進んで、計測された車輪速Vと予め設定された基準となる車輪速である警告速度V0とを比較し、計測された車輪速Vが警告速度V0を超えた場合には、ハイドロプレーニング現象の発生は予測されると判定し、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるという信号を警報手段18に出力して、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーにハイドロプレーニング現象の発生が予測されることを認識させる。
一方、計測された車輪速Vが警告速度V0以下の場合には、路面状態が深いWET状態にあると判定する。
また、ステップS23で、路面が深いWET状態にはないと判定された場合には、路面が凍っている状態でもなく、また、浅いWET状態でも深いWET状態でもない(ここでは、乾燥路面)であるので、WET以外の状態と判定する。
なお、判定方法の詳細については、フロー1の場合と同様であるので、省略した。
[実施例]
試験車両である4輪駆動車のバンパーに赤外線温度センサーを取付けるとともに、左前輪インナーライナー部に加速度センサーを取付け、左後輪前方車両下部にマイクロフィルムを取付けた車両を準備し、乾燥路面、浅いWET路面、及び、深いWET路面を走行させて、路面状態を図8のフロー1を用いて推定した結果を図9〜図11に示す。なお、タイヤサイズは、265/65R17で、走行速度は60km/hである。
乾燥路面及び浅いWET路面(セミウェット路)は、北海道の一般道で、深いWET路面は、水深2mmのテストコースを用いた。
各図において、浅いWET路面を走行したときの計測ポイント数は216ポイント、深いWET路面を走行したときの計測ポイント数は157ポイント、WET以外の路面(乾燥路面)を走行したときの計測ポイント数は251ポイントである。また、これらの計測ポイントで推定した推定結果が正しかった確率を示す判定率(%)を図13(a)の表にまとめた。また、参考のため、図12のフロー2を用いて推定した推定結果を図13(b)の表に示す。
図9に示す乾燥路面走行時においては、タイヤ振動から求めた振動レベル差R’と振動閾値KpのdBG値との差は全て0dBG以下であり、音圧レベル差Q’は全て0dBG以上である。すなわち、図13(a)に示すように、判定結果は全てWET以外であることを示している。これにより、WET以外の路面については、確実にWET以外であると判定できることが確認された。なお、フロー2を用いて推定した結果も同様である。
図10に示すセミウェット路面走行時においては、タイヤ振動から求めた振動レベル差R’と振動閾値KpのdBG値との差は殆どが0dBG以下であり、音圧レベル差Q’は全て0dBG以下である。これを図13(a)の表で見ると、浅いWETを正しく判定した判定率は97.7%であり、路面が浅いWET状態であることを正確に推定できることが確認された。なお、フロー2を用いて推定した場合には、判定率は100%であった。
図11に示す水深2mm路面(深いWET路面)走行時においては、タイヤ振動から求めた振動レベル差R’と振動閾値KpのdBG値との差は全て0dBGを超えている。一方、音圧レベル差Q’は0dBG未満のものが少しある。フロー1では、先に深いWET状態か否かを判定するので、図13(a)の表では、深いWETを正しく判定した判定率が100%となる。したがって、路面が深いWET状態であることを正確に推定できることが確認された。
一方、先に浅いWET状態か否かを判定するフロー2では、図13(b)の表に示すように、深いWET状態の判定率が88.5%と、フロー1に比較して推定精度が低かったことから、先に深いWET状態か否かを判定する方が好ましいことがわかる。
なお、比較のため、音のみで判定を行った場合と、タイヤ振動のみで判定を行った場合についての結果を図14(a),(b)の表に示す。
図14(a)の表に示すように、音のみの判定では浅いWET状態については確実に判定できるが、深いWET状態については、判定率が88.5%と低かった。
一方、図14(b)の表に示すように、タイヤ振動のみの判定では深いWET状態については確実に判定できるが、浅いWET状態については、判定率が97.7%であった。したがって、音のみの判定、もしくは、タイヤ振動のみの判定よりは、音とタイヤ振動の両方を用いて路面状態を推定することで推定精度が向上することが確認された。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
以上説明したように、本発明によれば、走行中の路面の状態を精度よく推定することができるので、この推定された路面状態に基づいて車両の走行状態を制御するようにすれば、車両の走行安全性を向上させることができる。
10 路面状態推定装置、10A センサー部、10B 演算処理部、
10z 受信機、11 赤外線温度センサー、12 加速度センサー、12z 送信機、13 マイクロフォン、14 車輪速センサー、15 振動レベル算出手段、
151 振動波形検出部、152 振動レベル分布演算部、
153 時間領域信号抽出部、154 周波数分析部、155 振動レベル算出部、
156 振動レベル比演算部、16 音圧レベル算出手段、161 周波数分析部、
162 音圧レベル算出部、163 音圧レベル比演算部、17 路面状態推定手段、
18 警報手段、20 車体、21 バンパー、22F 前輪、22R 後輪、
22T タイヤ、23 インナーライナー部、24 タイヤ気室、25 トレッド、
26 フレーム、30 車両制御装置。

Claims (9)

  1. 走行中の路面温度と、タイヤ振動の大きさと、タイヤ発生音の大きさとから、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測される状態にあるか否かを推定する方法であって、
    前記路面温度が予め設定された基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさが予め設定された振動閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されるWET状態である第1の路面状態にあると判定し、
    路面温度が予め設定された前記基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさが予め設定された音圧閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されないWET状態である第2の路面状態にあると判定することを特徴とする路面状態の推定方法。
  2. 第1の路面状態は、路面に2mmを超えた厚さの水膜が形成されている状態であり、第2の路面状態は、路面に厚さが2mm以下の水膜が形成されている状態であることを特徴とする請求項に記載の路面状態の推定方法。
  3. 車輪速度を計測するとともに、路面が第1の路面状態にあると判定された場合には、前記車輪速度と予め設定された警告速度とを比較し、前記車輪速度が前記警告速度を超えている場合に、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されると判定することを特徴とする請求項または請求項に記載の路面状態の推定方法。
  4. 路面が第1の路面状態にあるか否かを判定した後に、第2の路面状態にあるか否かを判定することを特徴とする請求項〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法。
  5. 前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさは、
    走行中のタイヤの振動の振動波形の踏み込み位置より前の踏み込み前領域に対応する時間範囲の信号を抽出し、この抽出された時間範囲の信号を周波数解析して得られる周波数スペクトルを用いて算出されることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法。
  6. 前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさは、
    前記音圧信号をN分の1オクターブ解析して得られる周波数スペクトルを用いて算出されることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法。
  7. 車両の走行状態を制御する際に、請求項1〜請求項のいずれかに記載の路面状態の推定方法により推定した路面状態に基づいて車両の走行状態を制御することを特徴とする車両制御方法。
  8. 走行中の路面の状態を推定する装置であって、
    走行中の路面温度を計測する路面温度計測手段と、
    タイヤ発生音を検出するタイヤ発生音検出手段と、
    タイヤ振動を検出するタイヤ振動検出手段と、
    車輪速度を検出する車輪速検出手段と、
    前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさを算出する振動成分算出手段と、
    前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさを算出する音圧成分算出手段と、
    前記計測された路面温度と、前記振動成分の大きさと、前記音圧成分の大きさとから、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測される状態にあるか否かを推定する路面状態推定手段
    ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるか否かを推定する予測手段と、
    を備え、
    前記路面状態推定手段は、
    路面温度が予め設定された基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ振動の2kHz〜10kHz帯域の振動成分の大きさが予め設定された振動閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されるWET状態である第1の路面状態にあると判定し、
    路面温度が予め設定された前記基準温度を超えており、かつ、前記タイヤ発生音の10Hz〜10kHz帯域の音圧成分の大きさが予め設定された音圧閾値を超えている場合には、路面がハイドロプレーニング現象の発生が予測されないWET状態である第2の路面状態にあると判定し、
    前記予測手段は、
    路面が前記第1の路面状態にあると判定された場合には、前記車輪速検出手段で検出した車輪速度と予め設定された警告速度とを比較して、ハイドロプレーニング現象の発生が予測されるか否かを推定することを特徴とする路面状態の推定装置。
  9. ハイドロプレーニング現象の発生が予測されると推定された場合に、運転者に警報を発する警報装置を備えたことを特徴とする請求項に記載の路面状態の推定装置。
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