JP5521222B2 - クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法 - Google Patents

クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5521222B2
JP5521222B2 JP2010194624A JP2010194624A JP5521222B2 JP 5521222 B2 JP5521222 B2 JP 5521222B2 JP 2010194624 A JP2010194624 A JP 2010194624A JP 2010194624 A JP2010194624 A JP 2010194624A JP 5521222 B2 JP5521222 B2 JP 5521222B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plate
steel plate
thick steel
thickness direction
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010194624A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012052873A (ja
Inventor
恒久 半田
公宏 西村
高宏 久保
正幸 橋本
龍至 平井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2010194624A priority Critical patent/JP5521222B2/ja
Publication of JP2012052873A publication Critical patent/JP2012052873A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5521222B2 publication Critical patent/JP5521222B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Strength Of Materials By Application Of Mechanical Stress (AREA)

Description

本発明は、優れた脆性き裂伝播停止特性を有する厚鋼板の品質管理に係り、とくにクラックアレスター用として好適な厚鋼板の簡便な選別方法に関する。
船舶や、低温貯蔵タンク、海洋構造物、ラインパイプ等の土木・建築構造物などの溶接鋼構造物では、近年、効率化のために大型化が進んでおり、それに伴って、厚肉・高強度の鋼材(鋼板)が使用されている。大型の溶接鋼構造物では、高い応力が負荷されたり、あるいは低温に晒されたりすると、溶接部等から発生した脆性き裂が、溶接部、母材を伝播して、構造物の崩壊等の重大な被害をもたらすことが考えられる。
このため、大型溶接鋼構造物では、予期せぬ脆性破壊が発生しても、被害を最小限に留めるために、優れた脆性き裂伝播停止特性を具備する鋼板を使用したり、脆性き裂伝播停止特性に優れたアレスト材を配置して、脆性き裂の伝播を阻止できる構造体とするなどの方策が提案されている。
例えば、特許文献1には、C:0.05〜0.12質量%を含み、適正量のAl、Ti、Nbを含有し、さらに表面から板厚方向に板厚の1/8〜1/4の特定の位置において、組織をベイナイトを主体とし、かつ15°以上の大傾角粒界で囲まれた領域の大きさが8μm以下である組織を有し、脆性亀裂伝播停止特性に優れた厚鋼板が記載されている。特許文献1に記載された厚鋼板は、優れた脆性亀裂伝播停止特性を有するとしているが、脆性亀裂伝播停止特性は、日本溶接協会の鋼種認定試験方法に準じて、500mm×500mmの大型試験片を用いる温度勾配型ESSO試験により、Kca値を求め、評価している。
また、例えば、大型コンテナ船やバルクキャリアー船などに用いられている船体構造では、船体の破壊安全性を考慮し、万一、溶接部から脆性破壊が発生した場合でも、脆性き裂の伝播を停止させ、船体分離を防止するため、船体の強力甲板等には高アレスト鋼板(クラックアレスター用鋼板)を用いた構造とする場合がある。
特開2010−1520号公報
船舶や、低温貯蔵タンク、海洋構造物、ラインパイプ等の土木・建築構造物などの溶接鋼構造物、とくに大型の溶接鋼構造物では、構造物の崩壊等の致命的被害を防止するために、優れた脆性き裂伝播停止特性を有する鋼板を使用したり、クラックアレスター材を配置したりして、構造物に脆性き裂の伝播を停止させる機能を保持させることが重要となっている。しかし、クラックアレスター等に使用する鋼板の脆性き裂伝播停止特性は、大型試験を実施して、把握しているのが現状である。大型試験としては、日本溶接協会の鋼種認定試験方法に規定される「脆性破壊伝播停止試験」に準じた、温度勾配型ESSO試験等がある。しかし、温度勾配型ESSO試験等の大型試験を実施するには、多大な労力と費用を要し、とくに厚肉の鋼板では簡単には実施できないという問題がある。このため、例えば、船体構造の強力甲板等に用いられる、クラックアレスター用厚鋼板の製造に際しては、脆性き裂伝播停止特性に対する品質保証という観点では問題を残していた。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、クラックアレスター用厚鋼板を製造するに当たり、対象とする厚鋼板を、大型試験片を用いることなく、小型試験片を用いた試験結果に基いて、クラックアレスター用として好適な、所望の優れた脆性き裂伝播停止特性を有する厚鋼板であるか否かを簡便に判定する、クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法を提供することを目的とする
本発明者らは、上記した目的を達成するため、図1に示すような、船体構造における強力甲板等のフランジ材とハッチサイドコーミング等のウェブ材との接合部からなる溶接構造物における脆性き裂の伝播について鋭意考察した。その結果、ウェブ材を伝播してきた脆性き裂は、材料表面からフランジ材内へ突入しフランジ材の板厚方向に進展するため、このフランジ材における脆性き裂の進展挙動は、図2に示すように、板面に平行にノッチを導入して行う「表面ノッチシャルピー衝撃試験」におけるき裂の進展挙動に近い、ということに思い至った。なお、大型試験であるESSO試験では、図3に示すように、脆性き裂(板厚貫通き裂)は、板面に平行(板厚方向に垂直方向)に進展する。
そして、本発明者らの更なる研究によれば、船体構造における強力甲板のように、溶接部等から発生した脆性き裂が鋼板の表面から突入するフランジ材のような部材においては、脆性き裂伝播停止特性の評価は、板厚貫通き裂を用いたESSO試験による評価よりも、表面ノッチを用いたシャルピー衝撃試験による評価のほうが、より良い対応があることを知見した。そして、実構造物を模した大型試験における脆性き裂の伝播・停止と表面ノッチを用いたシャルピー衝撃試験(小型試験)の特性値との比較検討をさらに繰り返し、小型試験での評価温度を(鋼材使用温度−80℃)とすることがよいことに想到した。板厚方向各位置における表面ノッチを用いたシャルピー衝撃試験により得られたエネルギー遷移温度のうちの最も低温であるエネルギー遷移温度が、前記評価温度に比べて低温となる厚鋼板であれば、鋼材の使用温度で脆性き裂の伝播停止能を有する厚鋼板であると判定できることを見出した。というのは、鋼板の板厚方向各位置のうち、どこか1箇所の特性が所望の特性以上の特性を保持する鋼板であれば、鋼板表面から突入してくる脆性き裂を停止することができると考えられるからである。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)厚鋼板の板厚方向各位置で、試験片の高さ方向が板厚方向となるようにシャルピー衝撃試験片を採取し、厚鋼板の板面に平行に2mmVノッチを導入して、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、前記板厚方向各位置におけるエネルギー遷移温度vTr(℃)を求める第一の段階と、得られた板厚方向各位置におけるエネルギー遷移温度vTrのうちから、最も低温である(vTrminを選ぶ第二の段階と、該(vTrminと(鋼材使用温度−80℃)とを比較し、該(vTrminが(鋼材使用温度−80℃)より低温である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板であると判定する第三の段階と、からなることを特徴とする、クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
(2)厚鋼板の板厚方向各位置で、試験片の高さ方向が板厚方向となるようにシャルピー衝撃試験片を採取し、厚鋼板の板面に平行に2mmVノッチを導入して、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、前記板厚方向各位置における破面遷移温度vTrs(℃)を求める第一の段階と、得られた板厚方向各位置における破面遷移温度vTrsのうちから、最も低温である(vTrs)minを選ぶ第二の段階と、該(vTrs)minと(鋼材使用温度−80℃)とを比較し、該(vTrs)minが(鋼材使用温度−80℃)より低温である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板であると判定する第三の段階と、からなることを特徴とするクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
(3)厚鋼板の板厚方向各位置で、試験片の高さ方向が板厚方向となるようにシャルピー衝撃試験片を採取し、厚鋼板の板面に平行に2mmVノッチを導入し、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度T(℃):(鋼材使用温度−80℃)における試験片3本の平均吸収エネルギー値E(J)を求める第一の段階と、得られた板厚方向各位置における平均吸収エネルギー値Eのうちの最大値(Emaxを選ぶ第二の段階と、該(Emaxと該(Emaxを示す板厚方向位置における上部棚吸収エネルギーEshelfとを比較し、該(Emaxが(Eshelf /2)以上である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板と判定する第三の段階とからなることを特徴とする、クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記板厚方向各位置を、表層位置、板厚1/4位置、板厚中央位置または(板厚中央位置+6mm)位置の3位置とすることを特徴とするクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記厚鋼板が、板厚:25mm超えであることを特徴とするクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
(6)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記厚鋼板が、板厚:50mm超えであることを特徴とするクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
本発明によれば、対象とする厚鋼板が、船体構造の強力甲板等に用いられるクラックアレスター用として、使用温度で所望の脆性き裂の伝播停止能を有する鋼板であるか否かを、小型試験で、容易に判定することができ、従来困難であった、クラックアレスター用厚鋼板の品質保証を簡便に行うことができるようになり、産業上格段の効果を奏する。
船体構造物の接合部断面形状の一例を模式的に示す説明図である。 板厚1/2位置における表面ノッチシャルピー衝撃試験片の採取要領を模式的に示す説明図である。 脆性き裂伝播停止試験(温度勾配型ESSO試験)の要領を模式的に示す説明図である。 実施例で使用した実構造物を模した脆性き裂伝播停止試験片の概略を模式的に示す説明図である。
本発明は、クラックアレスター用厚鋼板の簡便な品質管理方法であり、第一の段階と、第二の段階と、第三の段階とからなる。
本発明で対象とする厚鋼板は、好ましくは板厚25mm超、より好ましくは板厚50mm超の鋼板である。板厚25mm以下の鋼板では、大型試験(ESSO試験等)を実施するための負荷、たとえば、試験体をタブ板に溶接する作業負荷等が、板厚25mm超の鋼板に比べてあまり大きくない。そのため、板厚25mm以下の鋼板については、本発明による評価法を用いるまでもなく、大型試験(ESSO試験等)による評価を行えばよい。なお、本発明は、板厚25mm以下の鋼板に対しても適用可能なものである。
本発明における第一の段階では、対象とする厚鋼板の、板厚方向各位置からシャルピー衝撃試験片(10mm厚)を採取し、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施して、板厚方向各位置におけるエネルギー遷移温度vTr(℃)、または破面遷移温度vTrs(℃)を求める。なお、本発明では、通常とは異なり、図2に示すように、Vノッチ(2mm)を鋼板の板面に平行に導入したシャルピー衝撃試験片、いわゆる「表面ノッチシャルピー衝撃試験片」を用いる。本発明では、船体構造における甲板等のような、クラックアレスターとしての機能を要求されるフランジ材用の厚鋼板(クラックアレスター用厚鋼板)を対象とし、該厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を評価する。
通常、船体構造における甲板等のようなフランジ材には、ハッチコーミング等のウェブ材が隅肉溶接等により接合される。このような溶接構造物では、ウェブ材を伝播してきた予期せぬ脆性き裂は、フランジ材に該材料の表面から侵入し伝播する。このため、本発明では、材料(鋼板)表面から侵入した脆性き裂の伝播状況を小型試験によって再現するために、ノッチを鋼板の板面に平行に導入したシャルピー衝撃試験片を用いることにした。そして、これにより、対象とする厚鋼板の隅肉溶接部ウェブから突入する脆性き裂に対する脆性き裂伝播停止特性を、実構造物を模した大型試験を実施することなく小型試験によっても、精度よく判定することができるようになる。
そして、第二の段階では、得られた板厚方向各位置におけるエネルギー遷移温度vTrまたは破面遷移温度vTrsを比較し、最も低温となるvTrまたはvTrsを選び、(vTrminまたは(vTrs)minとする。
そして、第三の段階では、得られた(vTrminまたは(vTrs)minと(鋼材使用温度−80℃)とを比較する。(vTrminまたは(vTrs)minが(鋼材使用温度−80℃)より低温である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板であると判定する。
本発明では、鋼板の板厚方向各位置のどこか1箇所の特性、すなわち、板厚方向各位置のvTrまたはvTrsのうち、最も低温である(vTrminまたは(vTrs)minが、(鋼材使用温度−80℃)より低温である厚鋼板であれば、鋼材使用温度で、鋼板表面から突入してくる脆性き裂を停止することができると考える。本発明者らが行った、各種実構造物を模した大型の脆性き裂伝播停止試験と、表面ノッチシャルピー衝撃試験のエネルギー遷移温度vTrとの比較検討の結果から、小型試験の評価温度を、(鋼材使用温度−80℃)とすれば、表面ノッチシャルピー衝撃試験(小型試験)の結果から、鋼材使用温度において脆性き裂伝播能を有する厚鋼板であるかどうかの判定ができるという結論を得ている。すなわち、表面ノッチシャルピー衝撃試験のエネルギー遷移温度(vTrminまたは破面遷移温度(vTrs)minが、評価温度である、(鋼材使用温度−80℃)より低温であれば、鋼材使用温度で、鋼板表面から突入してくる脆性き裂を停止することができる厚鋼板であると判定することができる。該厚鋼板の(vTrminまたは(vTrs)minが、(鋼材使用温度−80℃)より高温である場合には、対象とする厚鋼板は、鋼材使用温度で鋼板表面から突入してくる脆性き裂を停止することができない厚鋼板であると判定する。なお、本発明でvTrまたはvTrsを測定する板厚方向各位置は、表層(試験片中心が表面から5mmである位置)、板厚1/4位置(試験片中心が板厚1/4位置)、板厚1/2位置(試験片中心が板厚中央位置)あるいは板厚1/2位置+6mm位置(試験片中心が板厚中心から6mmの位置)の3位置とすることが好ましい。厚鋼板では、通常、表層、板厚1/4位置および板厚1/2位置あるいは板厚1/2位置+6mm位置において、靭性値の分布はおおむね把握できるので、少なくとも上記した3位置でシャルピー衝撃試験を行っていれば、対象とする厚鋼板の、表面から裏面までの板厚方向各位置における、エネルギー遷移温度または破面遷移温度のうち、最も低いエネルギー遷移温度または破面遷移温度を十分に把握することができる。
また、本発明では、表面ノッチシャルピー衝撃試験片を用いて得られたエネルギー遷移温度vTrを用いて、脆性き裂伝播停止能を評価することを基本としているが、品質保証という観点からは、板厚方向各位置のいずれかで、エネルギー遷移温度vTrが所定の温度以下であることを確認できれば十分である。このような観点から、本発明では、板厚方向各位置で、エネルギー遷移温度(vTrminを求めることに代えて、評価温度(=鋼材使用温度−80℃)における平均吸収エネルギー値(3本の平均値)を求めて、判定してもよい。
具体的には、第一の段階では、板厚方向各位置で、評価温度(=鋼材使用温度−80℃)における、試験片3本の平均吸収エネルギー値E(J)を求める。そして、第二の段階では、得られた平均吸収エネルギー値Eのうちの最大値(Emaxを選ぶ。そして、第三の段階では、得られた(Emaxと、該(Emaxを示す板厚方向位置における上部棚吸収エネルギーEshelfとを比較し、該(Emaxが(Eshelf/2)以上である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板と判定する。評価温度(=鋼材使用温度−80℃)における、最大平均吸収エネルギー値(Emaxが(Eshelf/2)未満である厚鋼板は、エネルギー遷移温度vTrが評価温度(=鋼材使用温度−80℃)より高温となり、鋼材使用温度で鋼板表面から突入してくる脆性き裂を停止することができない厚鋼板であることになる。
表1に、引張特性、衝撃特性を示す厚鋼板(板厚:35〜65mm)について、第一の段階と、第二の段階と、第三の段階を行い、クラックアレスター用厚鋼板としての品質の良否を判定した。
Figure 0005521222
(本発明例1)
第一の段階では、対象とする厚鋼板の板厚方向各位置から、図2に示すように、表面ノッチシャルピー衝撃試験片(2mmVノッチ標準試験片:10mm厚)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して、表面ノッチシャルピー衝撃試験を実施し、板厚方向各位置のエネルギー遷移温度vTrおよび破面遷移温度vTrsを求めた。ここで、板厚方向各位置は、表層(試験片中心が表面から5mmである位置)、板厚1/4位置(試験片中心が板厚1/4位置)、および板厚1/2位置(試験片中心が板厚中央位置)または板厚1/2位置+6mm位置(試験片中心が板厚中心から6mmの位置)、の各3位置とした。
ついで、第二の段階として、各厚鋼板ごとに、得られたvTr,vTrsのうち、最も低温の(vTrmin,(vTrs)minを決定した。
そして、第三の段階として、各鋼板について、得られた(vTrmin,(vTrs)minと評価温度(=(鋼材使用温度−80℃))とを比較した。なお、鋼材使用温度は−10℃(厚鋼板No.A〜G)または−50℃(厚鋼板No.H〜I)とした。そして、(vTrmin,(vTrs)minが(鋼材使用温度−80℃)より低温である厚鋼板を、鋼材使用温度において伝播してくる脆性き裂の停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板であると判定し、○と評価した。(vTrmin,(vTrs)minが(鋼材使用温度−80℃)より高温である厚鋼板は、鋼材使用温度において伝播してくる脆性き裂を停止できずそのまま伝播し、脆性き裂の停止能が低い厚鋼板であると判定し、×と評価した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0005521222
(本発明例2)
本発明例1における、表面ノッチシャルピー衝撃試験のエネルギー遷移温度vTrに代えて、第一の段階において、評価温度(=(鋼材使用温度−80℃))での試験片3本の平均吸収エネルギー値Eを求めた。そして、第二の段階では、得られた平均吸収エネルギー値Eのうちから、平均吸収エネルギー値の最大値(Emaxを決定した。そして、第三の段階では、得られた(Emaxと、該(Emaxを示す板厚方向位置における上部棚吸収エネルギーEshelfとを比較し、(Emaxが(Eshelf/2)以上である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板と判定し、○と評価した。それ以外は×と評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005521222
次に、表1に示す厚鋼板を供試鋼板として用い、該供試鋼板に脆化鋼板を、T字型に完全溶け込みで隅肉溶接し、T字型隅肉溶接継手を作製した。この溶接継手を用いて、図4に示すようなESSO試験片として、実構造物における脆性き裂伝播停止挙動を把握する試験を実施した。なお、脆化鋼板に機械切欠き部を加工し、供試鋼板には、試験時のバランスをとるために、補助板を仮付け溶接している。試験は、試験片を温度:−10℃(厚鋼板No.A〜G)または−50℃(厚鋼板No.H〜I)に冷却し、鋼材使用応力である24kgf/mm(235MPa)を負荷応力として負荷する条件で実施した。機械切欠き部に衝撃荷重を負荷して脆性き裂を発生させ伝播させて、伝播した脆性き裂が供試鋼板内で停止するか、あるいは停止せず供試鋼板を伝播するかを調査した。
得られた結果を、比較して表2、表3に併記した。
なお、比較例として、温度勾配型ESSO試験を実施し、脆性き裂伝播停止特性Kcaを求め、脆性き裂伝播停止特性を評価した。
温度勾配型ESSO試験は、各厚鋼板から試験片(大きさ:500×500mm)を採取し、幅方向端部に切欠き部を加工し、試験に供した。試験方法は、日本溶接協会の鋼種認定試験方法に規定される「脆性破壊伝播停止試験」に準じて、行った。すなわち、試験片の両端をそれぞれタブ板に溶接したのち、試験片に温度勾配を付与し、大型引張試験機により所定の応力を負荷する。そして、試験片端部に加工した切欠部に、楔を介して衝撃荷重を与え強制的に脆性き裂を発生、伝播、停止させる。脆性き裂が伝播停止した位置のき裂長さと負荷応力とからき裂停止時の応力拡大係数Kca値を求め、脆性き裂の停止温度とKca値との関係を求めた。得られた結果を、表2、表3に併記した。
本発明例1,2は、いずれも、実構造物を模擬した溶接継手における脆性き裂伝播停止挙動とよく一致しており、本発明の品質管理方法によれば、製造される各厚鋼板が、実構造物におけるクラックアレスター用として、所望の脆性き裂伝播停止能を有するか否かを十分に評価でき、クラックアレスター用鋼板製造における、簡便な品質管理方法を提供できるといえる。
これに対し、表2、表3に示すように、温度勾配型ESSO試験による評価では、実構造物における厚鋼板の脆性き裂伝播停止挙動と一部一致しない場合もあり、十分に評価できない場合があることになる。

Claims (6)

  1. 厚鋼板の板厚方向各位置で、試験片の高さ方向が板厚方向となるようにシャルピー衝撃試験片を採取し、厚鋼板の板面に平行に2mmVノッチを導入して、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、前記板厚方向各位置におけるエネルギー遷移温度vTr(℃)を求める第一の段階と、得られた板厚方向各位置におけるエネルギー遷移温度vTrのうちから、最も低温である(vTrminを選ぶ第二の段階と、該(vTrminと鋼材使用温度−80℃とを比較し、該(vTrminが鋼材使用温度−80℃より低温である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板であると判定する第三の段階と、からなることを特徴とする、クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
  2. 厚鋼板の板厚方向各位置で、試験片の高さ方向が板厚方向となるようにシャルピー衝撃試験片を採取し、厚鋼板の板面に平行に2mmVノッチを導入して、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、前記板厚方向各位置における破面遷移温度vTrs(℃)を求める第一の段階と、得られた板厚方向各位置における破面遷移温度vTrsのうちから、最も低温である(vTrs)minを選ぶ第二の段階と、該(vTrs)minと鋼材使用温度−80℃とを比較し、該(vTrs)minが鋼材使用温度−80℃より低温である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板であると判定する第三の段階と、からなることを特徴とするクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
  3. 厚鋼板の板厚方向各位置で、試験片の高さ方向が板厚方向となるようにシャルピー衝撃試験片を採取し、厚鋼板の板面に平行に2mmVノッチを導入し、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度T(℃):鋼材使用温度−80℃における試験片3本の平均吸収エネルギー値E(J)を求める第一の段階と、得られた板厚方向各位置における平均吸収エネルギー値Eのうちの最大値(Emaxを選ぶ第二の段階と、該(Emaxと該(Emaxを示す板厚方向位置における上部棚吸収エネルギーEshelfとを比較し、該(EmaxがEshelf /2以上である場合に、該厚鋼板を、脆性き裂伝播停止特性に優れ、鋼材使用温度において脆性き裂の伝播停止能を有するクラックアレスター用厚鋼板と判定する第三の段階とからなることを特徴とする、クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
  4. 前記板厚方向各位置を、表層位置、板厚1/4位置、板厚中央位置または板厚中央位置+6mm位置の3位置とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
  5. 前記厚鋼板が、板厚:25mm超えであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
  6. 前記厚鋼板が、板厚:50mm超えであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のクラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法。
JP2010194624A 2010-08-31 2010-08-31 クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法 Active JP5521222B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010194624A JP5521222B2 (ja) 2010-08-31 2010-08-31 クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010194624A JP5521222B2 (ja) 2010-08-31 2010-08-31 クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012052873A JP2012052873A (ja) 2012-03-15
JP5521222B2 true JP5521222B2 (ja) 2014-06-11

Family

ID=45906360

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010194624A Active JP5521222B2 (ja) 2010-08-31 2010-08-31 クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5521222B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7119805B2 (ja) * 2018-09-13 2022-08-17 日本製鉄株式会社 厚鋼板の品質評価方法
KR20230159710A (ko) * 2021-06-10 2023-11-21 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 후강판의 취성 균열 전파 정지 성능의 평가 방법
KR20230162021A (ko) * 2021-07-26 2023-11-28 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 용접 구조체, 그리고 그 설계 방법 및 시공 방법

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3336877B2 (ja) * 1996-10-11 2002-10-21 住友金属工業株式会社 脆性破壊伝播停止特性と溶接性に優れた厚肉高張力鋼板の製造方法
JP3927056B2 (ja) * 2002-03-20 2007-06-06 Jfeスチール株式会社 高強度高靭性ベンド管の製造方法
JP5217391B2 (ja) * 2006-11-30 2013-06-19 Jfeスチール株式会社 板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板およびその製造方法
JP5064150B2 (ja) * 2006-12-14 2012-10-31 新日本製鐵株式会社 脆性き裂伝播停止性能に優れた高強度厚鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012052873A (ja) 2012-03-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhu et al. Effects of temperature on tensile and impact behavior of dissimilar welds of rotor steels
JP4505368B2 (ja) 脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接鋼構造物およびその製造方法
WO2011108135A1 (ja) 高強度厚鋼板の脆性き裂伝播停止性能の判定方法
JP4782084B2 (ja) 厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性の判定方法
JP2007326147A (ja) 脆性亀裂伝播停止特性に優れる溶接構造体
JP2008212992A (ja) 耐脆性破壊亀裂伝播停止特性に優れたt型溶接継手構造
Walters The effect of low temperatures on the fatigue of high-strength structural grade steels
JP6551630B1 (ja) 厚鋼板の脆性き裂伝播停止性能の評価方法
JP2010236930A (ja) 脆性き裂伝播停止特性評価方法
JP5521222B2 (ja) クラックアレスター用厚鋼板の品質管理方法
JP7188655B1 (ja) 厚鋼板の脆性亀裂伝播停止性能の評価方法
JP2005131708A (ja) 耐脆性き裂伝播性に優れた溶接構造体およびその溶接方法
JP4772922B2 (ja) 耐脆性き裂伝播性に優れた溶接構造体
Shi et al. Effect of laser beam welding on tear toughness of a 1420 aluminum alloy thin sheet
Chen et al. Dynamic tensile behaviors of welded steel joint material
JP4761746B2 (ja) 船体用大入熱突合せ溶接継手の耐脆性破壊発生特性評価方法
WO2012008056A1 (ja) 耐脆性き裂伝播性を有する溶接構造体
Qian et al. Brittle failure caused by lamellar splitting in a large-scale tubular joint with fatigue cracks
Zorc et al. Effects of welding residual stresses and phosphorus segregation on cleavage delamination fracture in thick S355 J2 G3+ N steel plate
JP6562190B1 (ja) 溶接構造体
정웅박 et al. Fracture characteristics of cryogenic steel using Weibull stress analysis
WO2019220681A1 (ja) 溶接構造体
JP2009115493A (ja) 鋼板のアレスト特性評価方法およびアレスト特性評価用鋼板
JP7299554B1 (ja) 溶接構造体、ならびにその設計方法および施工方法
Hutchings et al. Failures of jib tie-bar components of tower cranes manufactured from rimming steel

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130419

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20130605

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20130621

A072 Dismissal of procedure [no reply to invitation to correct request for examination]

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A073

Effective date: 20130723

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131206

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131217

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140304

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140317

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5521222

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250