JP5516770B1 - 成形材料、成形材料の製造方法および炭素繊維強化複合材料 - Google Patents

成形材料、成形材料の製造方法および炭素繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性に優れ、力学特性に優れた成形材料を提供すること。
【解決手段】本発明は、炭素繊維にサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維および熱可塑性樹脂からなる成形材料であって、前記サイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含み、前記サイジング剤塗布炭素繊維は、X線光電子分光法によって光電子脱出角度15°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50〜0.90であり、前記成形材料中の炭素繊維は軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ長さは前記成形材料の長さと実質的に同じであることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材および船舶部材などに好適に用いられる成形材料、成形材料の製造方法および炭素繊維強化複合材料に関するものである。
炭素繊維は、軽量でありながら、強度および弾性率に優れるため、種々のマトリックス樹脂と組み合わせた複合材料は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。炭素繊維を用いた複合材料において、炭素繊維の優れた特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂との界面接着性が優れることが重要である。
炭素繊維とマトリックス樹脂との界面接着性を向上させるため、通常、炭素繊維に気相酸化や液相酸化等の酸化処理を施し、炭素繊維表面に酸素含有官能基を導入する方法が行われている。例えば、炭素繊維に電解処理を施すことにより、界面接着性の指標である層間剪断強度を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、近年、複合材料への要求特性のレベルが向上するにしたがって、このような酸化処理のみで達成できる界面接着性では不十分になりつつある。
一方、炭素繊維は脆く、集束性および耐摩擦性に乏しいため、高次加工工程において毛羽や糸切れが発生しやすい。このため、炭素繊維にサイジング剤を塗布する方法が提案されている(特許文献2および3参照)。
例えば、サイジング剤として、脂肪族タイプの複数のエポキシ基を有する化合物が提案されている(特許文献4、5、6参照)。また、サイジング剤としてポリアルキレングリコールのエポキシ付加物を炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献7、8および9参照)。
また、芳香族系のサイジング剤としてビスフェノールAのジグリシジルエーテルを炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献2および3参照)。また、サイジング剤としてビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物を炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献10および11参照)。また、サイジング剤としてビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物にエポキシ基を付加させたものを炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献12および13参照)。
上記したサイジング剤により、炭素繊維に接着性や集束性を付与することができるものの、1種類のエポキシ化合物からなるサイジング剤では十分とは言えず、求める機能により2種類以上のエポキシ化合物を併用する手法が近年提案されている。
例えば、表面エネルギーを規定した2種以上のエポキシ化合物を組み合わせたサイジング剤が提案されている(特許文献14〜17参照)。特許文献14では、脂肪族エポキシ化合物と芳香族エポキシ化合物の組み合わせが開示されている。特許文献14では、外層に多くあるサイジング剤が、内層に多くあるサイジング剤成分に対し、大気との遮断効果をもたらし、エポキシ基が大気中の水分により開環するのを抑止するとされている。また、特許文献14では、サイジング剤の好ましい範囲について、脂肪族エポキシ化合物と芳香族エポキシ化合物との比率は10/90〜40/60と規定され、芳香族エポキシ化合物の量が多いほうが好適とされている。
また、特許文献16および17では、表面エネルギーの異なる2種以上のエポキシ化合物を使用したサイジング剤が開示されている。特許文献16および17は、マトリックス樹脂との接着性の向上を目的としているため、2種以上のエポキシ化合物の組み合わせとして芳香族エポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物の併用は限定されておらず、接着性の観点から選択される脂肪族エポキシ化合物の一般的例示がないものである。
さらに、ビスフェノールA型エポキシ化合物と脂肪族ポリエポキシ樹脂を質量比50/50〜90/10で配合するサイジング剤が開示されている(特許文献18参照)。しかしながら、この特許文献18も、芳香族エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ化合物の配合量が多いものである。
また、芳香族エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の組み合わせを規定したサイジング剤として、炭素繊維束の表面に多官能の脂肪族化合物、上面にエポキシ樹脂、アルキレンオキシド付加物と不飽和二塩基酸との縮合物、フェノール類のアルキレンオキシド付加物を組み合わせたものが開示されている(特許文献19参照)。
さらに、2種以上のエポキシ化合物の組み合わせとして、脂肪族エポキシ化合物と芳香族エポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ化合物の組み合わせが開示されている。脂肪族エポキシ化合物は環状脂肪族エポキシ化合物および/または長鎖脂肪族エポキシ化合物である(特許文献20参照)。
また、性状の異なるエポキシ化合物の組み合わせが開示されている。25℃で液体と固体の2種のエポキシ化合物の組み合わせが開示されている(特許文献21参照)。さらに、分子量の異なるエポキシ樹脂の組み合わせ、単官能脂肪族エポキシ化合物とエポキシ樹脂の組み合わせが提案されている(特許文献22および23参照)。
しかしながら、サイジング剤塗布炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料の物性向上には、前述の2種類以上を混合したサイジング剤(例えば、特許文献20〜23など)においても十分とは言えないのが実情であった。炭素繊維と熱可塑性樹脂との高い接着性を満たすには、以下の2つの要件を満たすことが必要と考えられるが、従来の任意のエポキシ樹脂の組み合わせからなるサイジング剤ではそれらの要件を満たしていなかったからと推測される。2つの要件の一つ目は、サイジング層内側(炭素繊維側)に接着性の高いエポキシ化合物が存在し、炭素繊維とエポキシ化合物とが強固に相互作用を行うこと、二つ目が、サイジング層表層(マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂側)には、内層にある炭素繊維との接着性の高いエポキシ化合物ならびに外層の熱可塑性樹脂と強い相互作用が可能な化学組成が必要であることである。
例えば、特許文献14には、炭素繊維とサイジング剤との接着性を高めるため、サイジング剤に傾斜構造を持たせることは開示されているが、特許文献14およびその他いずれの文献(特許文献15〜18など)においても、サージング剤塗布炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料において、サイジング層内層に接着性の高い成分を配置し、サイジング層表層に熱可塑性樹脂との相互作用が高い成分を配置することで炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面接着性の向上を実現する思想は皆無と言える。
また、特許文献19には、サイジング剤内層に多官能脂肪族化合物が存在し、外層に反応性の低い芳香族エポキシ樹脂および芳香族系反応物が存在するものが開示されている。しかし、脂肪族化合物と芳香族化合物が分離しているため高い接着性を実現することは困難であるといえる。
以上のように、従来の技術では、特に熱可塑性樹脂を用いた場合、炭素繊維との界面接着性は乏しく、さらなる界面接着性向上技術が必要となっている。
特開平04−361619号公報 米国特許第3,957,716号明細書 特開昭57−171767号公報 特公昭63−14114号公報 特開平07−279040号公報 特開平08−113876号公報 特開昭57−128266号公報 米国特許第4,555,446号明細書 特開昭62−033872号公報 特開平07−009444号公報 特開2000−336577号公報 特開昭61−028074号公報 特開平01−272867号公報 特開2005−179826号公報 特開2005−256226号公報 国際公開第03/010383号公報 特開2008−280624号公報 特開2005−213687号公報 特開2002−309487号公報 特開平02−307979号公報 特開2002−173873号公報 特開昭59−71479号公報 特開昭58−41973号公報
そこで本発明の目的は、上記の従来技術における問題点に鑑み、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性に優れ、湿潤下での力学特性に優れる成形材料、成形材料の製造方法および炭素繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明者らは、複数の特定の化合物を組み合わせたサイジング剤を塗布した炭素繊維のサイジング剤表面が、特定の化学組成にあるサイジング剤塗布炭素繊維と、熱可塑性樹脂から構成される柱状の成形材料において、上述した目的を達成することができることを見出した。すなわち、本発明において、個々のサイジング剤自体は、既知のサイジング剤を用いることができるが、特定の化合物の組み合わせにおいて、サイジング剤表面を特定の化学組成にすることがサイジング手法として重要なものであって、かつ新規なものであるといえるものである。
また、本発明者らは、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)を特定の割合で含むサイジング剤を炭素繊維に塗布する工程、溶融した熱可塑性樹脂中にサイジング剤を塗布した連続した炭素繊維を通過せしめ、ストランドを得る工程、前記ストランドを切断する工程をとることで、炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面接着性が高い成形材料を得ることができるとともに、該成形材料を成形した炭素繊維強化複合材料の湿潤下の物性も良好であることを見出し、本発明に想到した。
本発明は、前記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明は、炭素繊維にサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維および熱可塑性樹脂から構成される柱状をなす成形材料であって、前記サイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含むものであり、かつ、前記サイジング剤塗布炭素繊維は、該サイジング剤表面をX線源としてAlKα1,2を用い、X線光電子分光法によって光電子脱出角度15°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50〜0.90であり、前記成形材料中の炭素繊維は軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ前記成形材料中の炭素繊維の長さは前記成形材料の長さと実質的に同じであることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記サイジング剤塗布炭素繊維の水分率は、0.010〜0.030質量%であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記サイジング剤中の脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ化合物(B1)の質量比は、52/48〜80/20であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記脂肪族エポキシ化合物(A)は、分子内にエポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記脂肪族エポキシ化合物(A)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記芳香族エポキシ化合物(B1)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物あるいはビスフェノールF型エポキシ化合物であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記サイジング剤塗布炭素繊維は、該サイジング剤塗布炭素繊維を、400eVのX線を用いたX線光電子分光法によって光電子脱出角度55°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)より求められる(I)および(II)の値が、(III)の関係を満たすものであることを特徴とする。
(I)超音波処理前の前記サイジング剤塗布炭素繊維の表面の(a)/(b)の値
(II)前記サイジング剤塗布炭素繊維をアセトン溶媒中で超音波処理することで、サイジング剤付着量を0.09〜0.20質量%まで洗浄したサイジング剤塗布炭素繊維の表面の(a)/(b)の値
(III)0.50≦(I)≦0.90かつ0.60<(II)/(I)<1.0
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記成形材料を、該成形材料を構成する前記熱可塑性樹脂を溶解する溶媒中で超音波処理することで、前記サイジング剤塗布炭素繊維表面のサイジング剤付着量を0.09〜0.20質量%まで洗浄された該サイジング剤塗布炭素繊維の表面は、400eVのX線を用いたX線光電子分光法によって光電子脱出角度55°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.30〜0.70となるものであることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記脂肪族エポキシ化合物(A)の付着量は、0.2〜2.0質量%であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記炭素繊維の化学修飾X線光電子分光法により測定される表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.003〜0.015、表面水酸基濃度COH/Cは0.001〜0.050であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記炭素繊維100質量部に対して前記サイジング剤が0.1〜10.0質量部付着されてなるサイジング剤塗布炭素繊維1〜80質量%、および熱可塑性樹脂20〜99質量%を含むことを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記炭素繊維を主とする構造Yが芯構造であり、前記熱可塑性樹脂を主成分とする構造Xが鞘構造であって、前記構造Yの周囲を前記構造Xが被覆した芯鞘構造を有することを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記柱状をなす成形材料の長さが1〜50mmであることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、形態が長繊維ペレットであることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記熱可塑性樹脂は、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂およびポリオレフィン系樹脂から選ばれる一種以上であることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記熱可塑性樹脂はポリアミドであることを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、含浸助剤(D)を、炭素繊維100質量部に対して0.1〜100質量部含むことを特徴とする。
また、本発明の成形材料は、上記発明において、前記含浸助剤(D)の一部または全部が炭素繊維に含浸されてなることを特徴とする。
また、本発明は、上記のいずれか一つに記載の成形材料を製造する成形材料の製造方法であって、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して脂肪族エポキシ化合物(A)35〜65質量%と芳香族化合物(B)35〜60質量%とを少なくとも含むサイジング剤を連続する炭素繊維に塗布する塗布工程と、溶融した熱可塑性樹脂を前記塗布工程で得られた連続するサイジング剤塗布炭素繊維に含浸させ、連続したストランドを得るストランド化工程と、前記ストランド化工程で得たストランドを冷却した後、切断して柱状の成形材料を得る切断工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の成形材料の製造方法は、上記発明において、前記ストランド化工程前に、溶融した含浸助剤(D)を連続する前記サイジング剤塗布炭素繊維に含浸させる含浸工程を有することを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記のいずれか一つに記載の成形材料、または、上記に記載の方法で製造された成形材料を成形してなることを特徴とする。
本発明にかかる成形材料および成形材料の製造方法は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含むサイジング剤を炭素繊維に塗布して、サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面を特定の化学組成とすることにより、炭素繊維と、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との界面接着性を向上するとともに、湿潤下においても高い力学特性が維持できる。
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、軽量でありながら強度、弾性率が優れるため、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に好適に用いることができる。
図1は、本発明の実施の形態にかかる成形材料の一例を示す斜視図である。 図2は、本発明の実施の形態にかかる成形材料の他の一例を示す斜視図である。
以下、更に詳しく、本発明の成形材料、成形材料の製造方法および炭素繊維強化複合材料を実施するための形態について説明をする。
本発明は、炭素繊維にサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維および熱可塑性樹脂から構成される柱状をなす成形材料であって、前記サイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含むものであり、かつ、前記サイジング剤塗布炭素繊維は、該サイジング剤表面をX線光電子分光法によって光電子脱出角度15°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50〜0.90であり、前記成形材料中の炭素繊維は軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ前記成形材料中の炭素繊維の長さは前記成形材料の長さと実質的に同じであることを特徴とする成形材料である。
本発明者らの知見によれば、かかる範囲のものは、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性が高く、優れた力学特性を有するとともに、マトリックス樹脂として吸湿性が高い樹脂を使用した際にも、湿潤下での物性低下が抑制された炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
エポキシ化合物として脂肪族エポキシ化合物(A)のみからなるサイジング剤を塗布した炭素繊維は、炭素繊維とサイジング剤の相互作用が強く接着性が良好であることから、それを用いた炭素繊維強化複合材料の物性が良好になることが確認されている。そのメカニズムは確かではないが、脂肪族エポキシ化合物(A)は柔軟な骨格および自由度が高い構造に由来して、炭素繊維表面のカルボキシル基および水酸基等の官能基と、サイジング剤である脂肪族エポキシ化合物(A)が強い相互作用を形成することが可能であると考えられる。しかしながら、脂肪族エポキシ化合物(A)は、炭素繊維表面との相互作用により高い接着性を発現する一方、その構造に由来して水との相互作用が強いことから、脂肪族エポキシ化合物(A)のみからなるサイジング剤を塗布した炭素繊維は水分率が高く、特に吸湿性の高い樹脂を用いた場合には、これを含む成形材料は湿潤下での物性が若干低下する課題があることが確認されている。
一方、エポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物(B1)のみからなり、脂肪族エポキシ化合物(A)を含まないサイジング剤を塗布した炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む成形材料は、剛直な界面層を形成することができるという利点がある。また、サイジング剤の疎水性が高く炭素繊維表面の水分率を低くすることができるという利点もある。しかしながら、芳香族エポキシ化合物(B1)はその化合物の剛直さに由来して、脂肪族エポキシ化合物(A)と比較して、炭素繊維とサイジング剤の相互作用が若干劣るため、それを用いた成形材料の力学特性が若干劣ることが確認されている。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)を混合したサイジング剤を使用した場合、より極性の高い脂肪族エポキシ化合物(A)が炭素繊維側に多く偏在し、炭素繊維と逆側のサイジング層の最外層に極性の低い芳香族化合物(B)が偏在しやすいという現象が見られることが重要である。このサイジング層の傾斜構造の結果として、脂肪族エポキシ化合物(A)は炭素繊維近傍で炭素繊維と強い相互作用を及ぼし、極性の低い芳香族化合物(B)は熱可塑性樹脂と強い相互作用を行う。その結果、炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面接着性を高めることができ、得られる炭素繊維強化複合材料の物性を高くすることができる。また、外層に多く存在する芳香族化合物(B)は、成形材料または炭素繊維強化複合材料中で炭素繊維近傍の水分率を低下させる役割を果たす。このことにより、吸湿性の高い樹脂をマトリックス樹脂として用いた場合にも、湿潤下において炭素繊維近傍の水分率が低くなるため物性の低下が抑制される。そこで、X線光電子分光法によって測定されるサイジング剤表層の脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)の存在比率が重要である。
本発明において使用するサイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)とを少なくとも含む。脂肪族エポキシ化合物(A)は、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して35〜65質量%含まれることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A)が35質量%以上の割合で炭素繊維に塗布されていることで、熱可塑性樹脂との界面接着性が向上し、炭素繊維強化複合材料の物性が向上する。また、65質量%以下であることで、サイジング剤として脂肪族エポキシ化合物(A)以外の成分を用いることができ、サイジング剤と熱可塑性樹脂との相互作用が高くなり、これにより炭素繊維強化複合材料の物性が良好になる。脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は38質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。
芳香族化合物(B)は、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して35〜60質量%含まれることが好ましい。芳香族化合物(B)を35質量%以上含むことで、サイジング剤外層中の芳香族化合物(B)の組成を高く維持することができるため、熱可塑性樹脂との相互作用が強くなるとともに、炭素繊維強化複合材料中の炭素繊維近傍の水分率を低くできる。芳香族化合物(B)の割合が60質量%以下であることで、上述したサイジング剤中の傾斜構造を発現することができ、接着性を維持することができることから好ましい。芳香族化合物(B)の割合は37質量%以上がより好ましく、39質量%以上がさらに好ましい。また、芳香族化合物(B)の割合は55質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
本発明におけるサイジング剤中のエポキシ成分としては、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)である芳香族エポキシ化合物(B1)とが含まれる。サイジング剤中の脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ化合物(B1)との質量比(A)/(B1)は52/48〜80/20であることが好ましい。(A)/(B1)が52/48以上で、炭素繊維表面に存在する脂肪族エポキシ化合物(A)の比率が大きくなり、炭素繊維との界面接着性が向上する。その結果、炭素繊維強化複合材料の引張強度などのコンポジット物性が高くなるため好ましい。また、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ化合物(B1)との質量比(A)/(B1)が80/20以下とすることで、水分率の高い脂肪族エポキシ化合物が炭素繊維強化複合材料の炭素繊維表面に存在する量が少なくなるとともに、熱可塑性樹脂と相互作用が可能な芳香族化合物(B)が増えることから好ましい。(A)/(B1)の質量比は55/45以上がより好ましく、60/40以上がさらに好ましい。また、75/35以下がより好ましく、73/37以下がさらに好ましい。
また、本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)の125℃における表面張力は35〜45mJ/mであることが好ましい。表面張力が近似する脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)を組み合わせることで、2種の化合物の混合性が良好となるとともに、サイジング剤が塗布された炭素繊維の保管時に、サイジング剤成分のブリードアウト等の発生を抑制することができる。
ここで、本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)の125℃における表面張力の値は、次の手法にて白金プレートを用いたウィルヘルミ法により得ることができるものである。
各成分のみからなる125℃に温度調節したサイジング液中に白金プレートを接触させると、サイジング液が白金プレートに対してぬれ上がり、このときにプレートの周囲に沿って表面張力が働き、プレートをサイジング液中に引き込もうとする。この力を読み取り算出する。例えば、協和界面科学社製の表面張力計DY−500を用いて、静的な表面張力として測定することができる。
本発明において使用する脂肪族エポキシ化合物(A)は、芳香環を含まないエポキシ化合物である。自由度の高い柔軟な骨格を有していることから、炭素繊維と強い相互作用を有することが可能である。その結果、サイジング剤を塗布した炭素繊維との界面接着性が向上し、それを用いた炭素繊維強化複合材料の物性が向上する。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)は分子内に1個以上のエポキシ基を有する。そのことにより、炭素繊維と脂肪族エポキシ化合物(A)中のエポキシ基の強固な結合を形成することができる。分子内のエポキシ基は、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りのエポキシ基が外層の芳香族エポキシ化合物(B1)あるいは熱可塑性樹脂と共有結合または水素結合を形成することができ、接着性がさらに向上するため好ましい。エポキシ基の数の上限は特にないが、界面接着性が飽和する場合があるため10個で十分である。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)は2種以上の官能基を3個以上有するエポキシ化合物であることが好ましく、2種以上の官能基を4個以上有するエポキシ化合物であることがより好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A)が有する官能基は、エポキシ基以外に、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基から選択されるものが好ましい。分子内に3個以上のエポキシ基または他の官能基を有する脂肪族エポキシ化合物(A)であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基または他の官能基が芳香族エポキシ化合物(B1)あるいは熱可塑性樹脂と共有結合または水素結合を形成することができ、接着性がさらに向上する。エポキシ基を含む官能基の数の上限は特にないが、接着性の観点から10個で十分である。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)のエポキシ当量は、360g/eq.未満であることが好ましく、より好ましくは270g/eq.未満であり、さらに好ましくは180g/eq.未満である。エポキシ当量が360g/eq.未満であると、高密度で炭素繊維との相互作用が形成され、炭素繊維との界面接着性がさらに向上する。また、脂肪族エポキシ化合物(A)のエポキシ当量の下限は特にないが、界面接着性が飽和する場合があるため90g/eq.以上であれば十分である。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)の具体例としては、例えば、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物、複数活性水素を有するアミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ化合物、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ化合物、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。また、グリシジルエーテル型エポキシ化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、またはアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物も例示される。また、このグリシジルエーテル型エポキシ化合物として、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物も例示される。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ダイマー酸を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物が挙げられる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化させて得られるエポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ化合物が挙げられる。さらに、このエポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油が挙げられる。
本発明に使用する脂肪族エポキシ化合物(A)として、これらのエポキシ化合物以外にも、トリグリシジルイソシアヌレートのようなエポキシ化合物が使用可能である。
本発明における脂肪族エポキシ化合物(A)は、1個以上のエポキシ基と、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、カルボキシル基、エステル基およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有することが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A)の具体例として、例えば、エポキシ基と水酸基を有する化合物、エポキシ基とアミド基を有する化合物、エポキシ基とイミド基を有する化合物、エポキシ基とウレタン基を有する化合物、エポキシ基とウレア基を有する化合物、エポキシ基とスルホニル基を有する化合物、エポキシ基とスルホ基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基に加えて水酸基を有する化合物としては、例えば、ソルビトール型ポリグリシジルエーテルおよびグリセロール型ポリグリシジルエーテル等が挙げられ、具体的には“デナコール(登録商標)”EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−314およびEX−321(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基に加えてアミド基を有する化合物としては、例えば、アミド変性エポキシ化合物等が挙げられる。アミド変性エポキシは、脂肪族ジカルボン酸アミドのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基に加えてウレタン基を有する化合物としては、例えば、ウレタン変性エポキシ化合物が挙げられ、具体的には“アデカレジン(登録商標)”EPU−78−13S、EPU−6、EPU−11、EPU−15、EPU−16A、EPU−16N、EPU−17T−6、EPU−1348およびEPU−1395(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。または、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテルの末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当量の多価イソシアネートを反応させ、次いで得られた反応生成物のイソシアネート残基に多価エポキシ化合物内の水酸基と反応させることによって得ることができる。ここで、用いられる多価イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基に加えてウレア基を有する化合物としては、例えば、ウレア変性エポキシ化合物等が挙げられる。ウレア変性エポキシは脂肪族ジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
本発明で用いる脂肪族エポキシ化合物(A)は、上述した中でも高い接着性が得られる観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、またはアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物がより好ましい。
上記の中でも本発明における脂肪族エポキシ化合物(A)は、高い接着性の観点から、分子内にエポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物が好ましい。
また、脂肪族エポキシ化合物(A)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、またはアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物であることがより好ましい。
本発明において、脂肪族エポキシ化合物(A)は、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルがさらに好ましい。
本発明において、芳香族化合物(B)は、分子内に芳香環を1個以上有する化合物である。芳香環とは、炭素のみからなる芳香環炭化水素でも良いし、窒素あるいは酸素などのヘテロ原子を含むフラン、チオフェン、ピロール、イミダゾールなどの複素芳香環でも構わない。また、芳香環はナフタレン、アントラセンなどの多環式芳香環でも構わない。サイジング剤が塗布された炭素繊維と熱可塑性樹脂とからなる炭素繊維強化複合材料において、炭素繊維近傍のいわゆる界面層は、炭素繊維あるいはサイジング剤の影響を受け、熱可塑性樹脂とは異なる特性を有する場合がある。芳香族化合物(B)が芳香環を1個以上有すると、剛直な界面層が形成され、炭素繊維と熱可塑性樹脂との間の応力伝達能力が向上し、炭素繊維強化複合材料の引張強度等の力学特性が向上する。特に、熱可塑性樹脂として芳香環あるいは炭化水素系を多く含む疎水性の高い樹脂を用いた場合には、サイジング剤に含まれる芳香族化合物(B)との相互作用が高く接着性が向上するため好ましい。また、芳香環を有するエポキシ化合物は耐熱性が高いため、ポリアリーレンスルフィド樹脂に代表されるような成形温度が高い熱可塑性樹脂の場合でも熱分解により消失することなく、本来の炭素繊維表面の酸素含有官能基との反応および熱可塑性樹脂との相互作用の機能を保つことが可能である。また、芳香環により疎水性が向上することにより、炭素繊維近傍の水分率を低下させることができるため、吸湿性の高い熱可塑性樹脂を用いた場合にも湿潤下での炭素繊維複合材料の物性低下が抑制されるため好ましい。芳香環を2個以上有することで、芳香環による上述の効果が高まるため好ましい。芳香環の数の上限は特にないが、10個あれば力学特性が飽和することがあるため十分である。
本発明において、芳香族化合物(B)は分子内に1種以上の官能基を有することができる。また、サイジング剤に使用する芳香族化合物(B)は、1種類であっても良いし、複数の化合物を組み合わせて用いても良い。サイジング剤に複数の芳香族化合物(B)を使用する場合、使用する芳香族化合物(B)の中の少なくとも1種を分子内に1個以上のエポキシ基と1個以上の芳香環を有する芳香族エポキシ化合物(B1)とする。芳香族化合物(B)が分子内に有する官能基は、エポキシ基以外に、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、カルボキシル基、エステル基またはスルホ基から選択されるものが好ましく、1分子内に2種以上含んでいても良い。エポキシ基あるいはエポキシ基以外の官能基を用いることで、熱可塑性樹脂と相互作用をもつことができて好ましい。サイジング剤に使用する芳香族化合物(B)は、芳香族エポキシ化合物(B1)以外には、化合物の安定性、高次加工性を良好にすることから、芳香族エステル化合物、芳香族ウレタン化合物が好ましく用いられる。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)のエポキシ基は、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。また、10個以下で十分である。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)は2種以上の官能基を3個以上有するエポキシ化合物であることが好ましく、2種以上の官能基を4個以上有するエポキシ化合物であることがより好ましい。芳香族エポキシ化合物(B1)が有する官能基は、エポキシ基以外に、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基から選択されるものが好ましい。分子内に3個以上のエポキシ基および他の官能基を有するエポキシ化合物であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基または他の官能基が熱可塑性樹脂と共有結合、水素結合などの相互作用を形成することができ、熱可塑性樹脂との界面接着性がさらに向上する。エポキシ基を含む官能基の数の上限は特にないが、界面接着性が飽和する点から10個で十分である。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)のエポキシ当量は、360g/eq.未満であることが好ましく、より好ましくは270g/eq.未満であり、さらに好ましくは180g/eq.未満である。芳香族エポキシ化合物(B1)のエポキシ当量が360g/eq.未満であると、高密度で共有結合が形成され、炭素繊維、脂肪族エポキシ化合物(A)あるいは熱可塑性樹脂との界面接着性がさらに向上するため好ましい。芳香族エポキシ化合物(B1)のエポキシ当量の下限は特にないが、90g/eq.以上であれば界面接着性が飽和する観点から十分である。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)の具体例としては、例えば、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物、複数活性水素を有するアミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ化合物、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ化合物、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、およびテトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。また、グリシジルエーテル型エポキシ化合物として、ビフェニルアラルキル骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物も例示される。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。
さらに、例えば、グリシジルアミン型エポキシ化合物として、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、および4−アミノ−3−メチルフェノールのアミノフェノール類の水酸基とアミノ基の両方を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物が挙げられる。
本発明に使用する芳香族エポキシ化合物(B1)として、これらのエポキシ化合物以外にも、上に挙げたエポキシ化合物を原料として合成されるエポキシ化合物、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンジイソシアネートからオキサゾリドン環生成反応により合成されるエポキシ化合物が挙げられる。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)は、1個以上のエポキシ基以外に、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、カルボキシル基、エステル基およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)が好ましく用いられる。例えば、エポキシ基と水酸基を有する化合物、エポキシ基とアミド基を有する化合物、エポキシ基とイミド基を有する化合物、エポキシ基とウレタン基を有する化合物、エポキシ基とウレア基を有する化合物、エポキシ基とスルホニル基を有する化合物、エポキシ基とスルホ基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基に加えてアミド基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば、グリシジルベンズアミド、アミド変性エポキシ化合物等が挙げられる。アミド変性エポキシ化合物は、芳香環を含有するジカルボン酸アミドのカルボキシル基に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基に加えてイミド基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば、グリシジルフタルイミド等が挙げられる。具体的には“デナコール(登録商標)”EX−731(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基に加えてウレタン基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテルの末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当量の芳香環を含有する多価イソシアネートを反応させ、次いで得られた反応生成物のイソシアネート残基に多価エポキシ化合物内の水酸基と反応させることによって得ることができる。ここで、用いられる多価イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基に加えてウレア基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば、ウレア変性エポキシ化合物等が挙げられる。ウレア変性エポキシはジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有する芳香環を含有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基に加えてスルホニル基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ化合物等が挙げられる。
エポキシ基に加えてスルホ基を有する芳香族エポキシ化合物(B1)としては、例えば、p−トルエンスルホン酸グリシジルおよび3−ニトロベンゼンスルホン酸グリシジル等が挙げられる。
本発明において、芳香族エポキシ化合物(B1)は、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、またはテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ビスフェノールA型エポキシ化合物あるいはビスフェノールF型エポキシ化合物であることが好ましい。これらの芳香族エポキシ化合物(B1)は、エポキシ基数が多いため、エポキシ当量が小さく、これにより、炭素繊維、脂肪族エポキシ化合物(A)、および熱可塑性樹脂との相互作用が強く、界面接着性を向上させて炭素繊維強化複合材料の引張強度等の力学特性を向上させるとともに、芳香環の割合が高いことから湿潤時の力学特性が良好になることで好ましい。芳香族エポキシ化合物(B1)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物あるいはビスフェノールF型エポキシ化合物であることがより好ましい。
さらに、本発明で用いられるサイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)である芳香族エポキシ化合物(B1)以外の成分を1種類以上含んでも良い。炭素繊維とサイジング剤との接着性を高める接着性促進成分や、サイジング剤が塗布された炭素繊維に収束性あるいは柔軟性を付与することで取扱い性、耐擦過性および耐毛羽性を高め、熱可塑性樹脂の含浸性を向上させる収束剤を配合することができる。また、本発明にかかる炭素繊維強化材料の物性を向上させる目的で、分散剤および界面活性剤等の補助成分を添加しても良い。
本発明で用いられるサイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ化合物(B1)以外に、分子内にエポキシ基を持たないエステル化合物(C)を、2〜35質量%含有することができる。含有割合は、15〜30質量%であることがより好ましい。サイジング剤がエステル化合物(C)を含有することで、炭素繊維の収束性が向上して取り扱い性が向上する。また、エステル化合物(C)として芳香族エステル化合物(C1)を用いた場合には、炭素繊維近傍の疎水性が高くなり、湿潤下での力学特性が高くなるため好ましい。なお、芳香族エステル化合物(C1)は、分子内にエポキシ化合物を持たないエステル化合物(C)に含まれるのと同時に、本発明における芳香族化合物(B)に含まれる(この場合(B)の全てが(C1)となることはなく、前述のとおり(B)は(B1)と(C1)を含んで構成されることになる)。エステル化合物(C)として芳香族エステル化合物(C1)を用いると、サイジング剤が塗布された炭素繊維の取り扱い性が向上するため好ましい。また、エステル化合物(C)は、エステル基以外の官能基を有することができ、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、カルボキシル基、およびスルホ基を有するエステル化合物(C)が好ましい。芳香族エステル化合物(C1)として、具体的にはビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と不飽和二塩基酸との縮合物からなるエステル化合物を用いるのが好ましい。不飽和二塩基酸としては、酸無水物低級アルキルエステルを含み、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などが好ましく使用される。ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物としてはビスフェノールのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが好ましく使用される。上記縮合物のうち、好ましくはフマル酸またはマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキシドまたは/およびプロピレンオキシド付加物との縮合物が使用される。
ビスフェノール類へのアルキレンオキシドの付加方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。上記の不飽和二塩基酸には、必要により、その一部に飽和二塩基酸や少量の一塩基酸を、また、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物には、通常のグリコール、ポリエーテルグリコールおよび少量の多価アルコール、一価アルコールなどを、接着性等の特性が損なわれない範囲で加えることもできる。ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と不飽和二塩基酸との縮合法は、公知の方法を用いることができる。
本発明において、炭素繊維とサイジング剤成分中のエポキシ化合物との接着性を高め、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性を高める目的で、接着性を促進する成分を用いることが好ましい。接着性を促進する成分としては、3級アミン化合物および/または3級アミン塩、カチオン部位を有する4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を用いることができる。該化合物は、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、0.1〜25質量%添加されることが好ましい。2〜10質量%がより好ましい。
脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)に上記の3級アミン化合物および/または3級アミン塩、カチオン部位を有する4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を併用したサイジング剤を、炭素繊維に塗布し、特定の条件で熱処理することにより接着性が向上する。そのメカニズムは確かではないが、まず、接着性を促進する成分である化合物が本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基に作用し、これらの官能基に含まれる水素イオンを引き抜きアニオン化した後、このアニオン化した官能基と脂肪族エポキシ化合物(A)または芳香族エポキシ化合物(B1)成分に含まれるエポキシ基が求核反応するものと考えられる。これにより、本発明で用いられる炭素繊維とサイジング剤中のエポキシ基の強固な結合が形成され、接着性が向上する。
接着性を促進する具体的な化合物としては、N−ベンジルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、または、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)およびその塩であることが好ましく、特に1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、または、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)およびその塩が好適である。
上記のDBU塩としては、具体的には、DBUのフェノール塩(U−CAT SA1、サンアプロ株式会社製)、DBUのオクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ株式会社製)、DBUのp−トルエンスルホン酸塩(U−CAT SA506、サンアプロ株式会社製)、DBUのギ酸塩(U−CAT SA603、サンアプロ株式会社製)、DBUのオルソフタル酸塩(U−CAT SA810)、およびDBUのフェノールノボラック樹脂塩(U−CAT SA810、SA831、SA841、SA851、SA881、サンアプロ株式会社製)などが挙げられる。
本発明において、トリブチルアミンまたはN,N−ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンであることが好ましく、特にトリイソプロピルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロピルエチルアミンが好適である。
上記以外にも、界面活性剤などの添加剤として例えば、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、高級アルコール、多価アルコール、アルキルフェノール、およびスチレン化フェノール等にポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドが付加した化合物、およびエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。また、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、ポリエステル樹脂、および不飽和ポリエステル化合物等を添加してもよい。
次に本発明で使用する炭素繊維について説明する。
本発明において、炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系およびピッチ系の炭素繊維が挙げられる。なかでも、強度と弾性率のバランスに優れたPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
本発明において、得られた炭素繊維束のストランド強度が、3.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPa以上である。また、得られた炭素繊維束のストランド弾性率が、220GPa以上であることが好ましく、より好ましくは240GPa以上であり、さらに好ましくは280GPa以上である。
本発明において、上記の炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めることができる。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、130℃、30分を用いる。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
本発明において用いられる炭素繊維は、表面粗さ(Ra)が6.0〜100nmであることが好ましい。より好ましくは15〜80nmであり、30〜60nmが好適である。表面粗さ(Ra)が6.0〜60nmである炭素繊維は、表面に高活性なエッジ部分を有するため、前述したサイジング剤のエポキシ基等との相互作用が向上し、炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面接着性を向上することができ好ましい。また、表面粗さ(Ra)が6.0〜100nmである炭素繊維は、表面に凹凸を有しているため、サイジング剤のアンカー効果によって界面接着性を向上することができ好ましい。
炭素繊維の表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いることにより測定することができる。例えば、炭素繊維を長さ数mm程度にカットしたものを用意し、銀ペーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定し、原子間力顕微鏡(AFM)によって各単繊維の中央部において、3次元表面形状の像を観測すればよい。原子間力顕微鏡としてはDigital Instruments社製NanoScope IIIaにおいてDimension3000ステージシステムなどが使用可能であり、以下の観測条件で観測することができる。
・走査モード:タッピングモード
・探針:シリコンカンチレバー
・走査範囲:0.6μm×0.6μm
・走査速度:0.3Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温、大気中
また、各試料について、単繊維1本から1箇所ずつ観察して得られた像について、繊維断面の丸みを3次曲面で近似し、得られた像全体を対象として、炭素繊維の表面粗さ(Ra)を算出し、単繊維5本について、炭素繊維の表面粗さ(Ra)を求め、平均値を評価することが好ましい。
本発明において炭素繊維の総繊度は、400〜3000テックスであることが好ましい。また、炭素繊維のフィラメント数は好ましくは1000〜100000本であり、さらに好ましくは3000〜50000本である。
本発明において、炭素繊維の単繊維径は4.5〜7.5μmが好ましい。7.5μm以下であることで、強度と弾性率の高い炭素繊維を得られるため、好ましく用いられる。6μm以下であることがより好ましく、さらには5.5μm以下であることが好ましい。4.5μm以上で工程における単繊維切断が起きにくくなり生産性が低下しにくく好ましい。
本発明において、炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が、0.05〜0.50の範囲内であるものが好ましく、より好ましくは0.06〜0.30の範囲内のものであり、さらに好ましくは0.07〜0.25の範囲内のものである。表面酸素濃度(O/C)が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の酸素含有官能基を確保し、熱可塑性樹脂との強固な界面接着性を得ることができる。また、表面酸素濃度(O/C)が0.50以下であることにより、酸化による炭素繊維自体の強度の低下を抑えることができる。
炭素繊維の表面酸素濃度は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めたものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着している汚れなどを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定した。光電子脱出角度90°で測定した。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピーク(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。表面酸素濃度O/Cは、上記O1sピーク面積の比を装置固有の感度補正値で割ることにより算出した原子数比で表す。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用いる場合、上記装置固有の感度補正値は2.33である。
本発明に用いる炭素繊維において、化学修飾X線光電子分光法により測定される炭素繊維表面のカルボキシル基(COOH)と炭素(C)の原子数の比で表される表面カルボキシル基濃度(COOH/C)は、0.003〜0.015の範囲内であることが好ましい。より、好ましい範囲は、0.004〜0.010である。また、化学修飾X線光電子分光法により測定される炭素繊維表面の水酸基(OH)と炭素(C)の原子数の比で表される表面水酸基濃度(COH/C)は、0.001〜0.050の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.010〜0.040の範囲である。
炭素繊維の表面カルボキシル基濃度、水酸基濃度は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求められるものである。
表面水酸基濃度OH/Cは、次の手順に従って化学修飾X線光電子分光法により求められる。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットして白金製の試料支持台上に拡げて並べ、0.04モル/リットルの無水3弗化酢酸気体を含んだ乾燥窒素ガス中に室温で10分間さらし、化学修飾処理した後、X線光電子分光装置に光電子脱出角度を35゜としてマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F1sピーク面積[F1s]は、 682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。また、同時に化学修飾処理したポリビニルアルコールのC1sピーク分割から反応率rが求められる。
表面水酸基濃度(COH/C)は、下式により算出した値で表される。
COH/C={[F1s]/(3k[C1s]−2[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり、米国SSI社製モデルSSX−100−206を用いる場合、上記装置固有の感度補正値は3.919である。
表面カルボキシル基濃度COOH/Cは、次の手順に従って化学修飾X線光電子分光法により求められる。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットして白金製の試料支持台上に拡げて並べ、0.02モル/リットルの3弗化エタノール気体、0.001モル/リットルのジシクロヘキシルカルボジイミド気体及び0.04モル/リットルのピリジン気体を含む空気中に60℃で8時間さらし、化学修飾処理した後、X線光電子分光装置に光電子脱出角度を35゜としてマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。また、同時に化学修飾処理したポリアクリル酸のC1sピーク分割から反応率rを、O1sピーク分割からジシクロヘキシルカルボジイミド誘導体の残存率mが求められる。
表面カルボキシル基濃度COOH/Cは、下式により算出した値で表した。
COOH/C={[F1s]/(3k[C1s]−(2+13m)[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり、米国SSI社製モデルSSX−100−206を用いる場合の、上記装置固有の感度補正値は3.919である。
本発明に用いられる炭素繊維としては、表面自由エネルギーの極性成分が8mJ/m以上50mJ/m以下のものであることが好ましい。表面自由エネルギーの極性成分が8mJ/m以上であることで脂肪族エポキシ化合物(A)がより炭素繊維表面に近づくことでサイジング層を構成する成分が偏在化した構造が得られ、界面接着性が向上するため好ましい。50mJ/m以下で、炭素繊維間の熱可塑性樹脂への含浸性が良好になるため、複合材料として用いた場合に用途展開が広がり好ましい。
該炭素繊維表面の表面自由エネルギーの極性成分は、より好ましくは15mJ/m以上45mJ/m以下であり、最も好ましくは25mJ/m 以上40mJ/m以下である。炭素繊維の表面自由エネルギーの極性成分は、炭素繊維を水、エチレングリコール、燐酸トリクレゾールの各液体において、ウィルヘルミ法によって測定される各接触角をもとに、オーエンスの近似式を用いて算出した表面自由エネルギーの極性成分である。
本発明に用いられる脂肪族エポキシ化合物(A)は、表面自由エネルギーの極性成分が9mJ/m以上、50mJ/m以下のものであることが好ましい。また、芳香族エポキシ化合物(B1)は表面自由エネルギーの極性成分が0mJ/m以上、9mJ/m未満であることが好ましい。
脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)の表面自由エネルギーの極性成分は、脂肪族エポキシ化合物(A)または芳香族エポキシ化合物(B1)のみからなる溶液に炭素繊維束を浸漬して引き上げた後、120〜150℃で10分間乾燥後、上述の通り、水、エチレングリコール、燐酸トリクレゾールの各液体において、ウィルヘルミ法によって測定される各接触角をもとに、オーエンスの近似式を用いて算出した表面自由エネルギーの極性成分である。
本発明において、炭素繊維の表面自由エネルギーの極性成分ECFと脂肪族エポキシ化合物(A)、芳香族エポキシ化合物(B1)の表面自由エネルギーの極性成分E、EB1がECF≧E>EB1を満たすことが好ましい。
次に、本発明に好ましく用いられるPAN系炭素繊維の製造方法について説明する。
炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸方法としては、湿式、乾式および乾湿式等の紡糸方法を用いることができる。高強度の炭素繊維が得られやすいという観点から、湿式あるいは乾湿式紡糸方法を用いることが好ましい。乾湿式紡糸方法を用いることで、強度の高い炭素繊維を得ることができることから好ましく、湿式紡糸方法を用いることで表面粗さが大きくなり炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性がさらに向上するため好ましい。界面接着性と炭素繊維の強度のバランスにより、紡糸方法は適宜選択することができる。
紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合体を溶剤に溶解した溶液を用いることができる。溶剤としてはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの有機溶剤や、硝酸、ロダン酸ソーダ、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液を使用する。ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドが溶剤として好適である。
上記の紡糸原液を口金に通して紡糸し、紡糸浴中、あるいは空気中に吐出した後、紡糸浴中で凝固させる。紡糸浴としては、紡糸原液の溶剤として使用した溶剤の水溶液を用いることができる。紡糸原液の溶剤と同じ溶剤を含む紡糸液とすることが好ましく、ジメチルスルホキシド水溶液、ジメチルアセトアミド水溶液が好適である。紡糸浴中で凝固した繊維を、水洗、延伸して前駆体繊維とする。得られた前駆体繊維を耐炎化処理と炭化処理し、必要によってはさらに黒鉛化処理をすることにより炭素繊維を得る。炭化処理と黒鉛化処理の条件としては、最高熱処理温度が1100℃以上であることが好ましく、より好ましくは1400〜3000℃である。
得られた炭素繊維は、熱可塑性樹脂との界面接着性を向上させるために、通常、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられるが接着性の観点からアルカリ性電解液中で液相電解酸化した後、サイジング剤を塗布することがより好ましい。
酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。
アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において用いられる電解液の濃度は、0.01〜5モル/リットルの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1モル/リットルの範囲内である。電解液の濃度が0.01モル/リットル以上であると、電解処理電圧が下げられ、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の濃度が5モル/リットル以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において用いられる電解液の温度は、10〜100℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40℃の範囲内である。電解液の温度が10℃以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の温度が100℃未満であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、液相電解酸化における電気量は、炭素繊維の炭化度に合わせて最適化することが好ましい。
本発明において、液相電解酸化における電流密度は、電解処理液中の炭素繊維の表面積1m当たり1.5〜1000アンペア/mの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜500アンペア/mの範囲内である。電流密度が1.5アンペア/m以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電流密度が1000アンペア/m以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、電解処理の後、炭素繊維を水洗および乾燥することが好ましい。洗浄する方法としては、例えば、ディップ法とスプレー法を用いることができる。なかでも、洗浄が容易であるという観点から、ディップ法を用いることが好ましく、さらには、炭素繊維を超音波で加振させながらディップ法を用いることが好ましい態様である。また、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易いため、できる限り低い温度で乾燥することが望ましく、具体的には乾燥温度が好ましくは250℃以下、さらに好ましくは210℃以下で乾燥することが好ましい。
次に、上述した炭素繊維にサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維について説明する。
本発明におけるサイジング剤として、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)である芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含み、それ以外の成分を含んでも良い。
炭素繊維へのサイジング剤の塗布方法としては、溶媒に、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含む芳香族化合物(B)、ならびにその他の成分を同時に溶解または分散したサイジング剤含有液を用いて、1回で塗布する方法や、各化合物(A)、(B1)、(B)やその他の成分を任意に選択し個別に溶媒に溶解または分散したサイジング剤含有液を用い、複数回において炭素繊維に塗布する方法が好ましく用いられる。本発明においては、サイジング剤を塗布した炭素繊維の表面の組成を特定の値にするために、サイジング剤の構成成分をすべて含むサイジング剤含有液を、炭素繊維に1回で塗布する1段付与を採用することが効果および処理のしやすさからより好ましく用いられる。
本発明において、サイジング剤を溶媒で希釈してサイジング液として用いることができる。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドが挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、界面活性剤で乳化させた水分散液あるいは水溶液が好ましく用いられる。
溶解の順番は、芳香族化合物(B)を少なくとも含む成分を界面活性剤で乳化させることで水エマルジョン液を作成し、脂肪族エポキシ化合物(A)を少なくとも含む溶液を混合してサイジング液をつくることが好ましい。この時に、脂肪族エポキシ化合物(A)が水溶性の場合には、あらかじめ水に溶解して水溶液にしておき、芳香族化合物(B)を少なくとも含む水エマルジョンと混合する方法が、乳化安定性の点から好ましく用いられる。また、脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族化合物(B)およびその他の成分を界面活性剤で乳化させた水分散剤を用いることが、サイジング剤の長期安定性の点から好ましく用いることができる。
サイジング液におけるサイジング剤の濃度は、サイジング液の付与方法および付与した後に余剰のサイジング液を絞り取る絞り量の調整等によって適宜調節する必要があるが、通常は0.2質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
サイジング剤の炭素繊維への付与(塗布)手段としては、例えば、ローラを介してサイジング液に炭素繊維を浸漬する方法、サイジング液の付着したローラに炭素繊維を接する方法、サイジング液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがある。また、サイジング剤の付与手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましく用いられる。この際、炭素繊維に対するサイジング剤の有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度および糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に、炭素繊維を超音波で加振させることも好ましい態様である。
サイジング液の液温は、溶媒蒸発によるサイジング剤の濃度変動を抑えるため、10〜50℃の範囲であることが好ましい。また、サイジング液を付与した後に、余剰のサイジング液を絞り取る絞り量を調整することにより、サイジング剤の付着量および炭素繊維内への均一付与ができる。
本発明においては、炭素繊維にサイジング剤を塗布した後、160〜260℃の温度範囲で30〜600秒間熱処理することが好ましい。熱処理条件は、好ましくは170〜250℃の温度範囲で30〜500秒間であり、より好ましくは180〜240℃の温度範囲で30〜300秒間である。熱処理条件が、160℃以上および/または30秒以上であると、サイジング剤のエポキシ化合物と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の相互作用が促進され、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性が十分となるため好ましい。一方、熱処理条件が、260℃以下および/または600秒以下の場合、サイジング剤の分解および揮発を抑制でき、炭素繊維との相互作用が促進され、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性が十分となるため好ましい。
また、前記熱処理は、マイクロ波照射および/または赤外線照射で行うことも可能である。マイクロ波照射および/または赤外線照射によりサイジング剤を塗布した炭素繊維を加熱処理した場合、マイクロ波が炭素繊維内部に侵入し、吸収されることにより、短時間に被加熱物である炭素繊維を所望の温度に加熱できる。また、マイクロ波照射および/または赤外線照射により、炭素繊維内部の加熱も速やかに行うことができるため、炭素繊維束の内側と外側の温度差を小さくすることができ、サイジング剤の接着ムラを小さくすることが可能となる。
本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維は、サイジング剤表面をX線源としてAlKα1,2を用い、光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)が0.50〜0.90である。好ましくは、比率(a)/(b)が0.55以上、さらに好ましくは0.57以上である。また、好ましくは比率(a)/(b)が0.80以下、より好ましくは0.74以下である。(a)/(b)が大きいということは、サイジング剤表面近傍に芳香族由来の化合物が多く、脂肪族由来の化合物が少ないことを示す。したがって、本発明においては、この(a)/(b)が、特定の範囲に入るときに、炭素繊維とサイジング剤との接着性に優れ、またサイジング剤と熱可塑性樹脂との相互作用が高くなる。その結果、炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面接着性に優れ、得られる炭素繊維強化複合材料の物性が良好になる。また、該炭素繊維を用いた場合に、吸湿性の高い熱可塑性樹脂を用いた場合にも、得られる炭素繊維強化複合材料の湿潤下での力学特性も良好になることを見出してなされたものである。
X線光電子分光法とは、超高真空中で試料のサイジング剤塗布炭素繊維にX線を照射し、炭素繊維の表面から放出される光電子の運動エネルギーをエネルギーアナライザーとよばれる装置で測定する分析手法のことである。この試料の炭素繊維表面から放出される光電子の運動エネルギーを調べることにより、試料の炭素繊維に入射したX線のエネルギー値から換算される結合エネルギーが一意的に求まり、その結合エネルギーと光電子強度から、試料の最表面(〜nm)に存在する元素の種類と濃度、その化学状態を解析することができる。
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の(a)、(b)のピーク比は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求められるものである。サイジング剤が塗布された炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定が行われる。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を286.1eVに合わせる。このときに、C1sのピーク面積は282〜296eVの範囲で直線ベースラインを引くことにより求められる。また、C1sピークにて面積を求めた282〜296eVの直線ベースラインを光電子強度の原点(零点)と定義して、(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さ(cps:単位時間あたりの光電子強度)と(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め、(a)/(b)が算出される。
本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維は、炭素繊維に塗布したサイジング剤表面を400eVのX線を用いたX線光電子分光法によって光電子脱出角度55°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)より求められる(I)および(II)の値が、(III)の関係を満たすことが好ましい。
(I)超音波処理前のサイジング剤塗布炭素繊維の表面の(a)/(b)の値
(II)サイジング剤塗布炭素繊維をアセトン溶媒中で超音波処理することで、サイジング剤付着量を0.09〜0.20質量%まで洗浄したサイジング剤塗布炭素繊維の表面の(a)/(b)の値
(III)0.50≦(I)≦0.90かつ0.60<(II)/(I)<1.0
超音波処理前のサイジング剤塗布炭素繊維表面の(a)/(b)値である(I)が上記範囲に入ることは、サイジング剤の表面に芳香族由来の化合物が多く、脂肪族由来の化合物が少ないことを示す。超音波処理前の(a)/(b)値である(I)は好ましくは、0.55以上、さらに好ましくは0.57以上である。また、超音波処理前の(a)/(b)値である(I)が、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.74以下である。
超音波処理前後のサイジング剤塗布炭素繊維表面の(a)/(b)値の比である(II)/(I)が上記範囲に入ることは、サイジング剤表面に比べて、サイジング剤の内層に脂肪族由来の化合物の割合が多いことを示す。(II)/(I)は好ましくは0.65以上である。また、(II)/(I)は0.85以下であることが好ましい。
(I)および(II)の値が、(III)の関係を満たすことで、マトリックス樹脂との接着性に優れ、マトリックス樹脂に用いている熱可塑性樹脂との相互作用が高く良好な物性の熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、ここで説明される超音波処理とは、サイジング剤塗布炭素繊維2gをアセトン50ml中に浸漬させて超音波洗浄30分間を3回実施し、続いてメタノール50mlに浸漬させて超音波洗浄30分を1回行い、乾燥する処理を意味する。
本発明において、炭素繊維へのサイジング剤の付着量は、炭素繊維100質量部に対して、0.1〜10.0質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0質量部の範囲である。サイジング剤の付着量が0.1質量部以上であると、サイジング剤を塗布した炭素繊維を熱可塑性樹脂に配合する際に、通過する金属ガイド等による摩擦に耐えることができ、毛羽発生が抑えられ、炭素繊維シートの平滑性などの品位が優れる。一方、サイジング剤の付着量が10.0質量部以下であると、サイジング剤を塗布した炭素繊維の周囲のサイジング剤膜に阻害されることなく熱可塑性樹脂が炭素繊維内部に含浸され、得られる炭素繊維強化複合材料のボイド生成が抑えられ、品位が優れ、同時に機械物性が優れるため好ましい。
炭素繊維へのサイジング剤の付着量は、サイジング剤が塗布された炭素繊維を約2±0.5g採取し、窒素雰囲気中450℃にて加熱処理を15分間行ったときの該加熱処理前後の質量の変化を測定して求められ、サイジング剤を塗布された炭素繊維100質量部あたりの質量変化量をサイジング剤の付着量(質量部)とする。
本発明において、炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量は350〜550g/eq.であることが好ましい。550g/eq.以下であることで、サイジング剤を塗布した炭素繊維および熱可塑性樹脂の界面接着性が向上し、炭素繊維強化複合材料の物性が向上するため好ましい。また、350g/eq.以上であることで、接着性の点から十分である。
本発明におけるサイジング剤を塗布した炭素繊維のエポキシ当量とは、サイジング剤塗布炭素繊維をN,N−ジメチルホルムアミドに代表される溶媒中に浸漬し、超音波洗浄を行うことで繊維から溶出させたのち、塩酸でエポキシ基を開環させ、酸塩基滴定で求めることができる。エポキシ当量は360g/eq.以上が好ましく、380g/eq.以上がより好ましい。また、530g/eq.以下が好ましく、500g/eq.以下がより好ましい。なお、炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量は、塗布に用いるサイジング剤のエポキシ当量および塗布後の乾燥での熱履歴などにより、制御することができる。
本発明において、炭素繊維への脂肪族エポキシ化合物(A)の付着量は、炭素繊維100質量部に対して、0.05〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0質量部の範囲である。さらに好ましくは0.3〜1.0質量部である。脂肪族エポキシ化合物(A)の付着量が0.05質量部以上であると、炭素繊維表面に脂肪族エポキシ化合物(A)でサイジング剤が塗布された炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面接着性が向上するため好ましい。
本発明において、炭素繊維に塗布され乾燥されたサイジング剤層の厚さは、2.0〜20nmの範囲内で、かつ、厚さの最大値が最小値の2倍を超えないことが好ましい。このような厚さの均一なサイジング剤層により、安定して大きな接着性向上効果が得られ、さらには、安定して優れた高次加工性が得られる。
また、本発明において、サイジング剤が塗布された炭素繊維をアセトニトリル/クロロホルム混合溶媒により溶出した際、溶出される脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、サイジング剤が塗布された炭素繊維100質量部に対し2.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部以下である。特に、脂肪族エポキシ化合物(A)の溶出量が0.3質量部以下であると、本発明のサイジング剤を塗布した炭素繊維を熱可塑性樹脂に混合した時に、炭素繊維表面の水分率が低下すること、熱可塑性樹脂との相互作用が強くなることから好ましい。かかる観点から、前記の溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、サイジング剤が塗布された炭素繊維100質量部に対し、0.1質量部以下がより好ましく、0.05質量部以下がさらに好ましい。
溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合は、サイジング剤が塗布された炭素繊維の試験片を、アセトニトリル/クロロホルム混合液(体積比9/1)に浸漬し、20分間超音波洗浄を行ない、サイジング剤をアセトニトリル/クロロホルム混合液に溶出した溶出液について、液体クロマトグラフィーを用いて下記条件で分析することができる。
・分析カラム:Chromolith Performance RP−18e(4.6×100mm)
・移動相:水/アセトニトリルを使用し、分析開始から7分で、水/アセトニトリル=60%/40%からアセトニトリル100%とした後、12分までアセトニトリル100%を保持し、その後12.1分までに水/アセトニトリル=60%/40%とし、17分まで水/アセトニトリル=60%/40%を保持した。
・流量:2.5mL/分
・カラム温度:45℃
・検出器:蒸発光散乱検出器(ELSD)
・検出器温度:60℃
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維の水分率は、0.010〜0.030質量%であることが好ましい。サイジング剤塗布炭素繊維の水分率が0.030質量%以下であることで、湿潤下においても炭素繊維強化複合材料の高い力学特性が維持できる。サイジング剤塗布炭素繊維の水分率は、好ましくは0.024質量%以下であり、さらに好ましくは0.022質量%以下である。また、水分率の下限は0.010質量%以上であることで、炭素繊維に塗布されたサイジング材の均一塗布性が向上するため好ましい。0.015質量%以上がより好ましい。サイジング剤塗布炭素繊維の水分量の測定は、サイジング剤塗布炭素繊維を約2g秤量し、三菱化学アナリテック社製KF−100(容量法カールフィッシャー水分計)等の水分計を用いて測定できる。測定時の加熱温度は150℃で実施した。
続いて、本発明にかかる成形材料および炭素繊維強化複合材料について説明する。本発明にかかる成形材料は、上述のサイジング剤塗布炭素繊維と熱可塑性樹脂とから構成される。図1に示すように、本発明の成形材料1は、円柱状をなし、複数の炭素繊維2が、円柱の軸心方向にほぼ平行に配列し、炭素繊維の周囲は熱可塑性樹脂3で覆われている。すなわち、炭素繊維2が円柱の芯構造を主として構成し、熱可塑性樹脂3が炭素繊維2からなる芯構造を被覆する鞘構造の主成分をなしている。本発明の成形材料1は、炭素繊維2と熱可塑性樹脂3とにより芯鞘構造を構成すれば、円柱状のほか、角柱状、楕円柱状等その形状を問うものではない。なお、本明細書において、「ほぼ平行に配列」とは、炭素繊維の長軸の軸線と、成形材料1の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を意味し、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。
また、本発明の成形材料1において、炭素繊維の長さと成形材料の長さLが実質的に同じである長繊維ペレットであることが好ましい。なお、本明細書において、「長さが実質的に同じ」とは、ペレット状の成形材料1において、ペレット内部の途中で炭素繊維2が切断されていたり、成形材料1の全長よりも有意に短い炭素繊維2が実質的に含まれたりしないことを意味している。特に、成形材料1の長さLよりも短い炭素繊維の量について限定する必要はないが、成形材料1の長さLの50%以下の長さの炭素繊維の含有量が30質量%以下である場合には、成形材料1の全長よりも有意に短い炭素繊維束が実質的に含まれていないと評価する。さらに、成形材料1の全長の50%以下の長さの炭素繊維の含有量は20質量%以下であることが好ましい。なお、成形材料1の全長とは成形材料1中の炭素繊維配向方向の長さLである。炭素繊維2が成形材料1と同等の長さを持つことで、成形品中の炭素繊維長を長くすることが出来るため、優れた力学特性を得ることができる。
本発明の成形材料は、好ましくは1〜50mmの範囲の長さに切断して用いられる。前記の長さに調製することにより、成形時の流動性、取扱性を十分に高めることができる。また、本発明の成形材料は、連続、長尺のままでも成形法によっては使用可能である。例えば、熱可塑性ヤーンプリプレグとして、加熱しながらマンドレルに巻き付け、ロール状成形品を得たりすることができる。
本発明の成形材料に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、酸変性ポリエチレン(m−PE)、酸変性ポリプロピレン(m−PP)、酸変性ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンスルフィド樹脂;ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN);ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;液晶ポリマー(LCP)」等の結晶性樹脂、「ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等のポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、未変性または変性されたポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」等の非晶性樹脂;フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、さらにポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、ポリイソプレン系エラストマー、フッ素系樹脂およびアクリロニトリル系エラストマー等の各種熱可塑エラストマー等、これらの共重合体および変性体等から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。なお、熱可塑性樹脂としては、本発明の目的を損なわない範囲で、これらの熱可塑性樹脂を複数種含む熱可塑性樹脂組成物が用いられても良い。
また、本発明の成形材料として、炭素繊維2と熱可塑性樹脂3との間に含浸助剤を設けたものが好適に使用できる。図2は、本発明に係る成形材料1Aの斜視図である。成形材料1Aは、複数の炭素繊維2が、円柱の軸心方向にほぼ平行に配列し、炭素繊維2の周囲を含浸助剤4で覆うとともに、含浸助剤4の周囲を熱可塑性樹脂3で被覆する構成をなす。成形材料を成形して得た成形品の力学特性を向上するためには、一般に高分子量の熱可塑性樹脂を使用することが好ましいが、高分子量の熱可塑性樹脂は、溶融粘度が高く、炭素繊維束中に含浸し難いという問題を有している。一方、炭素繊維束中への熱可塑性樹脂の含浸性を向上するためには、溶融粘度が低い低分子量の熱可塑性樹脂を使用することが好ましいが、低分子量の熱可塑性樹脂を使用した成形品は力学特性が大幅に低下してしまう。
そこで、比較的低分子量の樹脂(プレポリマー)を含浸助剤4として炭素繊維2束中に含浸させた後、比較的高分子量の熱可塑性樹脂3をマトリックス樹脂として使用することにより、力学的特性に優れた成形材料を生産性よく製造することができる。
以下、含浸助剤を使用する成形材料についての好適な形態を説明する。
含浸助剤(D)は、炭素繊維100質量部に対して0.1〜100質量部となることが好ましい。より好ましくは10〜70質量部、さらに好ましくは15〜30質量部である。含浸助剤(D)が炭素繊維100質量部に対して0.1〜100質量部とすることにより、高力学特性の炭素繊維強化複合材料を生産性良く製造することができる。
熱可塑性樹脂としてポリアリーレンスルフィド樹脂を使用する場合、含浸助剤(D)として、質量平均分子量が10,000以上であり、かつ質量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下であるポリアリーレンスルフィド[d](以下、PASと略する)を使用することが好ましい。
含浸助剤であるPASの分子量は、質量平均分子量で10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上である。質量平均分子量が10,000未満では、より高温(例えば、360℃)での成形加工時に低分子量成分が熱分解反応を起こし、分解ガスを発生させて成形設備周辺の環境汚染を引き起こす場合がある。質量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000以下を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下であり、この範囲内では高い含浸性、ならびに成形加工性を得ることができる。
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を使用する場合、含浸助剤(D)として、フェノール系重合体[e]を使用することが好ましい。
含浸助剤として使用するフェノール系重合体[e]としては、例えば、フェノールもしくはフェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重結合を2個有する炭化水素(前駆体b)の縮合反応により得られるフェノール系重合体が挙げられる。
上記前駆体aとしては、フェノールのベンゼン環上に、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基より選ばれる置換基を1〜3個有するものが好ましく用いられる。具体的には、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クロロクレゾール、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノールなどの例が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用しても良い。特に、フェノール、クレゾールが好ましく用いられる。
上記前駆体bとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、テトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、単環式モノテルペン(ジペンテン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、フェランドレン)、二環式セスキテルペン(カジネン、セリネン、カリオフィレン)などの脂環式炭化水素が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用しても良い。特に、単環式モノテルペン、ジシクロペンタジエンが好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合、含浸助剤(D)として、テルペン系樹脂[f]を使用することが好ましい。
含浸助剤(D)として使用するテルペン系樹脂[f]として、有機溶媒中でフリーデルクラフツ型触媒存在下、テルペン単量体単独若しくは、テルペン単量体と芳香族単量体等と共重合体して得られる重合体からなる樹脂が挙げられる。
テルペン系樹脂[f]は、ポリオレフィン系樹脂よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体であり、射出成形やプレス成形などの最終形状への成形工程において、樹脂組成物の粘度を下げ、成形性を向上することが可能である。この際、テルペン系樹脂[f]は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良いことから、効果的に成形性向上することができる。
テルペン単量体としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類等の単環式モノテルペンが挙げられる。また、芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
中でも、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネンがポリオレフィン系樹脂との相溶性がよく好ましく、さらに、該化合物の単独重合体がより好ましい。また、該テルペン系樹脂を水素添加処理して得られた水素化テルペン系樹脂が、よりポリオレフィン系樹脂との相溶性がよくなるため好ましい。
さらに熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合、含浸助剤(D)成分として、第1のプロピレン系樹脂[g]、およびアシル基を側鎖に有する第2のプロピレン系樹脂[h]の混合物を使用することが好ましい。
含浸助剤(D)として使用する第1のプロピレン系樹脂[g]は、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合体が挙げられる。
α−オレフィンを構成する単量体繰り返し単位には、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンを構成する単量体繰り返し単位にはブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられ、これらその他の単量体繰り返し単位には、1種類または2種類以上を選択することができる。
第1のプロピレン系樹脂[g]の骨格構造としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと前記その他の単量体のうちの1種類または2種類以上のランダムあるいはブロック共重合体、または他の熱可塑性単量体との共重合体等を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。
第2のプロピレン系樹脂[h]の原料としては、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体で代表される、プロピレンとα−オレフィンの単独または2種類以上との共重合体に、中和されているか、中和されていないアシル基を有する単量体、および/またはケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体を、グラフト重合することにより得ることができる。上記プロピレンとα−オレフィンの単独または2種類以上との共重合体の単量体繰り返し単位および骨格構造は、第1のプロピレン系樹脂[g]と同様の考えで選定することができる。
ここで、中和されているか、中和されていないアシル基を有する単量体、およびケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、たとえば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物が挙げられ、またこれらのエステル、さらにはオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物なども挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示され、その無水物としては、ナジック酸(登録商標)(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
本発明にかかる成形材料1および1Aにおいて、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であれば、芳香族化合物(B)との相互作用が大きく、サイジング剤と熱可塑性樹脂の相互作用が強くなることで強固な界面を形成できるため好ましい。
また、本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点からは、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が好ましい。寸法安定性の観点からは、ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。摩擦・磨耗特性の観点からは、ポリオキシメチレン樹脂が好ましい。強度の観点からは、ポリアミド樹脂が好ましい。表面外観の観点からは、ポリカーボネートやポリスチレン系樹脂のような非晶性樹脂が好ましい。軽量性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
より好ましくは、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリオレフィン系樹脂から選ばれる一種以上あるいはポリアミドである。ポリアリーレンスルフィド樹脂は耐熱性の点から、ポリオレフィン系樹脂は軽量性の点から特に好ましい。
また、ポリアミドなどに代表される吸水性の高い樹脂を用いた場合には、炭素繊維表面の芳香族化合物(B)による水分率低下の効果により、吸水時にも物性が維持されるため好ましい。特にポリアミド樹脂は強度が高く好ましい。
なお、熱可塑性樹脂としては、本発明の目的を損なわない範囲で、これらの熱可塑性樹脂を複数種含む熱可塑性樹脂組成物が用いられても良い。
本発明において、上記好ましい熱可塑性樹脂を用いた場合のサイジング剤との相互作用について説明する。
本発明において、サイジング剤に含まれる炭素繊維との相互作用に関与しない残りのエポキシ基、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基は、熱可塑性樹脂の主鎖にあるエーテル基、エステル基、スルフィド基、アミド基、側鎖にある酸無水物基、シアノ基、および末端にある水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基と共有結合や水素結合などの相互作用を形成し、界面接着性を向上させるものと考えられる。特に、サイジング剤の外層に多く存在する芳香族化合物(B)の官能基が熱可塑性樹脂と相互作用を形成し、界面接着性を高めると考えられる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂をマトリックス樹脂として使用する場合、ポリアリーレンスルフィド樹脂の末端にあるチオール基やカルボキシル基と、サイジング剤のエポキシ基との共有結合等の相互作用、主鎖にあるスルフィド基とサイジング剤、特に芳香族化合物(B)に含まれるエポキシ基や水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。特に、熱可塑性樹脂中の芳香環とサイジング剤の芳香族化合物(B)との相互作用により高い接着性が得られると考えられる。
また、ポリアミド樹脂をマトリックス樹脂として使用する場合、ポリアミド樹脂の末端にあるカルボキシル基やアミノ基と、サイジング剤に含まれるエポキシ基との共有結合などの相互作用、主鎖にあるアミド基とサイジング剤、特に芳香族化合物(B)に含まれるエポキシ基、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。
また、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート樹脂をマトリックス樹脂として使用する場合、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート樹脂の末端にあるカルボキシル基や水酸基と、サイジング剤に含まれるエポキシ基との共有結合などの相互作用、主鎖にあるエステル基と、サイジング剤、特に芳香族化合物(B)に含まれるエポキシ基や水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。特に、熱可塑性樹脂中の芳香環とサイジング剤の芳香族化合物(B)との相互作用により高い接着性が得られると考えられる。
本発明の成形材料を、該成形材料を構成する前記熱可塑性樹脂を溶解する溶媒中で超音波処理することで、前記サイジング剤塗布炭素繊維表面のサイジング剤付着量を0.09〜0.20質量%まで洗浄された該サイジング剤塗布炭素繊維の表面は、400eVのX線を用いたX線光電子分光法によって光電子脱出角度55°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.30〜0.70となるものであることが好ましい。(a)/(b)が0.30以上であることで熱可塑性樹脂とサイジング剤の相互作用が向上するため好ましい。より好ましくは0.35以上である。また、(a)/(b)が0.70以下であることで、炭素繊維とサイジング剤の接着性が向上することからコンポジットの物性が良好になることで好ましい。より好ましくは0.60以下である。なお、成形材料の熱可塑性樹脂及びサイジング剤を溶出する溶媒は、熱可塑性樹脂を溶解可能かつ洗浄後のサイジング剤の付着量が上記範囲になれば良く、限定されない。例えば、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合には、蟻酸が好ましく、ポリカーボネート樹脂を用いる場合には、ジクロロメタンが好ましく用いられる。
次に本発明の成形材料および炭素繊維強化複合材料を製造するための好ましい態様について説明する。
本発明における成形材料の製造方法では、溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、脂肪族エポキシ化合物(A)35〜65質量%と芳香族化合物(B)35〜60質量%とを少なくとも含むサイジング剤を、連続する炭素繊維に塗布する塗布工程、溶融した熱可塑性樹脂中をサイジング剤塗布炭素繊維に含浸させ、連続したストランドを得るストランド化工程、および前記ストランドを冷却した後、切断して柱状の成形材料を得る切断工程を有することが好ましい。
サイジング剤が塗布された炭素繊維は上述のサイジング剤を炭素繊維に塗布する塗布工程によって得ることができる。本発明の第1工程で得られるサイジング剤塗布炭素繊維は、サイジング剤表面を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50〜0.90である。
また、本発明において、熱可塑性樹脂をサイジング剤が塗布された炭素繊維に含浸する方法としては限定されないが、例えば、サイジング剤を塗布した炭素繊維を引きながら熱可塑性樹脂を炭素繊維に含浸させる引き抜き成形法(プルトルージョン法)が例示される。引き抜き成形法では、熱可塑性樹脂に必要に応じて樹脂添加剤を加えて、連続炭素繊維をクロスヘッドダイを通して引きながら、熱可塑性樹脂を押出機から溶融状態でクロスヘッドダイに供給して連続炭素繊維に、熱可塑性樹脂を含浸させ、溶融樹脂が含浸した連続炭素繊維を加熱し、冷却する。冷却したストランドを、引き抜き方向と直角に切断して成形材料1を得る。成形材料1は、長さ方向に炭素繊維が同一長さで平行配列している。引き抜き成形は、基本的には連続した炭素繊維束を引きながら熱可塑性樹脂を含浸するものであり、上記クロスヘッドの中を炭素繊維束を通しながら押出機等からクロスヘッドに熱可塑性樹脂を供給し含浸する方法の他に、熱可塑性樹脂のエマルジョン、サスペンジョンあるいは溶液を入れた含浸浴の中を、炭素繊維束を通し含浸する方法、熱可塑性樹脂の粉末を炭素繊維束に吹きつけるか粉末を入れた槽の中を炭素繊維束を通し、炭素繊維に熱可塑性樹脂粉末を付着させたのち熱可塑性樹脂を溶融し含浸する方法等も使用することができる。特に好ましいのはクロスヘッド方法である。また、これらの引き抜き成形における樹脂の含浸操作は1段で行うのが一般的であるが、これを2段以上に分けてもよく、さらに含浸方法を異にして行ってもかまわない。
プルトルージョン法では、炭素繊維を均一に配列することができ、力学特性に優れた炭素繊維強化複合材料を得ることができるため好ましい。
また、含浸助剤(D)を有する成形材料は、含浸助剤(D)をサイジング剤塗布炭素繊維に含浸させた後、含浸助剤(D)が含浸したサイジング剤塗布炭素繊維を熱可塑性樹脂に含浸することが好ましい。例えば、上記の引き抜き成形法(プルトルージョン法)により熱可塑性樹脂で被覆することにより製造される。
本発明の成形材料には、力学特性を阻害しない範囲で、用途等に応じて、上記以外の他の成分が含まれていてもよく、また、充填剤や添加剤等が含まれていてもよい。充填剤あるいは添加剤としては、無機充填剤、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、発泡剤およびカップリング剤などが挙げられる。
添加剤として、特に、難燃性が要求される用途向けには難燃剤の添加や、導電性が要求される用途向けには導電性付与剤の添加が好ましく採用される。難燃剤としては、例えば、ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、窒素化合物、シリコーン化合物、フッ素化合物、フェノール化合物および金属水酸化物などの難燃剤を使用することができる。中でも、環境負荷を抑えるという観点から、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドおよび赤リンなどのリン化合物を好ましく使用することができる。
導電性付与剤としては、例えば、カーボンブラック、アモルファスカーボン粉末、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、ピッチマイクロビーズ、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブ等を採用することができる。
本発明の成形材料は、長繊維ペレットの形態で使用することが好ましい。本発明にかかる成形材料の成形方法としては、例えば、射出成形(射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形およびインサート成形など)、押出成形、プレス成形が挙げられる。中でも、生産性の観点から射出成形が好ましく用いられる。これらの成形方法により、炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明の成形材料を成形してなる炭素繊維強化複合材料の用途としては、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などが挙げられる。特に、航空機部材、風車の羽根、自動車外板および電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどに好ましく用いられる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。次に示す実施例の成形材料の作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気で行ったものである。
(1)サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面のX線光電子分光法(X線源:AlKα1,2
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の(a)、(b)のピーク比は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めた。サイジング剤塗布炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち、光電子脱出角度15°で測定を行った。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を286.1eVに合わせた。この時に、C1sのピーク面積は282〜296eVの範囲で直線ベースラインを引くことにより求めた。また、C1sピークにて面積を求めた282〜296eVの直線ベースラインを光電子強度の原点(零点)と定義して、(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さ(cps:単位時間あたりの光電子強度)と(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め、(a)/(b)を算出した。
なお、(b)より(a)のピークが大きい場合には、C1sの主ピークの結合エネルギー値を286.1eVに合わせた場合、C1sのピークが282〜296eVの範囲に入らない。その場合には、C1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせた後、上記手法にて(a)/(b)を算出した。
(2)サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤の洗浄
サイジング剤塗布炭素繊維を2gをアセトン50ml中に浸漬させて超音波洗浄30分間を3回実施した。続いてメタノール50mlに浸漬させて超音波洗浄30分を1回行い、乾燥した。
(3)サイジング剤塗布炭素繊維の400eVでのX線光電子分光法
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の(a)、(b)のピーク比は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めた。サイジング剤塗布炭素繊維およびサイジング剤を洗浄したサイジング剤塗布炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源として佐賀シンクトロトン放射光を用い、励起エネルギーは400eVで実施した。試料チャンバー中を1×10−8Torrに保ち測定を行った。なお、光電子脱出角度55°で実施した。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を286.1eVに合わせた。この時に、C1sのピーク面積は282〜296eVの範囲で直線ベースラインを引くことにより求めた。また、C1sピークにて面積を求めた282〜296eVの直線ベースラインを光電子強度の原点(零点)と定義して、(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さ(cps:単位時間あたりの光電子強度)と、(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め、(a)/(b)を算出した。
なお、(b)より(a)のピークが大きい場合には、C1sの主ピークの結合エネルギー値を286.1に合わせた場合、C1sのピークが282〜296eVの範囲に入らない。その場合には、C1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせた後、上記手法にて(a)/(b)を算出した。
(4)炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率
炭素繊維束のストランド引張強度とストランド弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いた。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
(5)炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)
炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従いX線光電子分光法により求めた。まず、溶媒で表面に付着している汚れを除去した炭素繊維を、約20mmにカットし、銅製の試料支持台に拡げる。次に、試料支持台を試料チャンバー内にセットし、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保った。続いて、X線源としてAlKα1,2を用い、光電子脱出角度を90°として測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sのメインピークの(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせた。C1sピーク面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、O1sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
(6)炭素繊維の表面カルボキシル基濃度(COOH/C)、表面水酸基濃度(COH/C)
表面水酸基濃度(COH/C)は、次の手順に従って化学修飾X線光電子分光法により求めた。
溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットして白金製の試料支持台上に拡げて並べ、0.04モル/リットルの無水3弗化酢酸気体を含んだ乾燥窒素ガス中に室温で10分間さらし、化学修飾処理した後、X線光電子分光装置に光電子脱出角度を35゜としてマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、同時に化学修飾処理したポリビニルアルコールのC1sピーク分割から反応率rを求めた。
表面水酸基濃度(COH/C)は、下式により算出した値で表した。
COH/C={[F1s]/(3k[C1s]−2[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり、米国SSI社製モデルSSX−100−206での、上記装置固有の感度補正値は3.919であった。
表面カルボキシル基濃度(COOH/C)は、次の手順に従って化学修飾X線光電子分光法により求めた。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットして白金製の試料支持台上に拡げて並べ、0.02モル/リットルの3弗化エタノール気体、0.001モル/リットルのジシクロヘキシルカルボジイミド気体及び0.04モル/リットルのピリジン気体を含む空気中に60℃で8時間さらし、化学修飾処理した後、X線光電子分光装置に光電子脱出角度を35゜としてマウントし、X線源としてAlKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、同時に化学修飾処理したポリアクリル酸のC1sピーク分割から反応率rを、O1sピーク分割からジシクロヘキシルカルボジイミド誘導体の残存率mを求めた。
表面カルボキシル基濃度COOH/Cは、下式により算出した値で表した。
COOH/C={[F1s]/(3k[C1s]−(2+13m)[F1s])r}×100(%)
なお、kは装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値であり、米国SSI社製モデルSSX−100−206を用いた場合の、上記装置固有の感度補正値は3.919であった。
(7)サイジング剤のエポキシ当量、炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量
サイジング剤のエポキシ当量は、溶媒を除去したサイジング剤をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、塩酸でエポキシ基を開環させ、酸塩基滴定で求めた。炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量は、サイジング剤塗布炭素繊維をN,N−ジメチルホルムアミド中に浸漬し、超音波洗浄を行うことで繊維から溶出させたのち、塩酸でエポキシ基を開環させ、酸塩基滴定で求めた。
(8)サイジング付着量の測定方法
約2gのサイジング付着炭素繊維を秤量(W1)(少数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、W1−W2によりサイジング付着量を求める。このサイジング付着量を炭素繊維束100質量部に対する量に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着したサイジング剤の質量部とした。測定は2回行い、その平均値をサイジング剤の質量部とした。
(9)サイジング剤塗布炭素繊維の水分率測定
サイジング剤塗布炭素繊維を約2g秤量し、三菱化学アナリテック社製KF−100(容量法カールフィッシャー水分計)を用いて水分率を測定した。測定時の加熱温度は150℃で実施した。
(10)溶出された脂肪族エポキシ化合物(A)の割合
サイジング剤塗布炭素繊維の試験片を0.1g秤量し、該試験片を数cmに切断した。切断した試験片を、アセトニトリル/クロロホルム混合液(体積比9/1)10mLに浸漬し、20分間超音波洗浄を行ない、サイジング剤をアセトニトリル/クロロホルム混合液に溶出した。溶出液を5mL採取し、採取した溶出液を窒素パージして溶媒を留去した。溶媒留去後の残留物にアセトニトリル/クロロホルム混合液(体積比9/1)0.2mLを加えて分析用サンプルを調整した。脂肪族エポキシ化合物(A)の分析は液体クロマトグラフィーを用いて下記条件で行なった。
・分析カラム:Chromolith Performance RP−18e(4.6×100mm)
・移動相:水/アセトニトリルを使用し、分析開始から7分で、水/アセトニトリル=60%/40%からアセトニトリル100%とした後、12分までアセトニトリル100%を保持し、その後12.1分までに水/アセトニトリル=60%/40%とし、17分まで水/アセトニトリル=60%/40%を保持した。
・流量:2.5mL/分
・カラム温度:45℃
・検出器:蒸発光散乱検出器(ELSD)
・検出器温度:60℃
(11)射出成形品の曲げ特性評価方法
サイジング剤塗布炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料を射出成形して得られた射出成形品から、長さ130±1mm、幅25±0.2mmの曲げ強度試験片を切り出した。ASTM D−790(2004)に規定する試験方法に従い、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分で曲げ強度を測定した。なお、本実施例においては、試験機として“インストロン(登録商標)”万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。測定数はn=5とし、平均値を曲げ強度とした。
(12)射出成形品の水吸収時の曲げ強度の低下率
熱可塑性樹脂としてポリアミドを用いて得た成形品について、25℃の水中に試験片を浸漬して試験片に対して水を2.5%吸水させた時の曲げ特性評価を実施した。その結果、(8)で得た曲げ強度に対し、低下率が60%以下を好ましい範囲として○、60%より大きいときを低下率が大きいとして×とした。
(13)炭素繊維の表面粗さ(Ra)
炭素繊維の表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。炭素繊維を長さ数mm程度にカットしたものを用意し、銀ペーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定し、原子間力顕微鏡(AFM)によって各単繊維の中央部において、3次元表面形状の像を観測した。原子間力顕微鏡としてはDigital Instuments社製 NanoScope IIIaにおいてDimension 3000ステージシステムを使用し、以下の観測条件で観測した。
・走査モード:タッピングモード
・探針:シリコンカンチレバー
・走査範囲:0.6μm×0.6μm
・走査速度:0.3Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温、大気中
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製:D−1>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(E)を得た。このスラリー(E)を376kgのNMPで希釈しスラリー(F)を得た。80℃に加熱したスラリー(F)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(G)を10kg得た。スラリー(G)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100〜160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3質量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(G)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の質量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200〜260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2〜11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの質量比は9:1であることがわかった。
(参考例2)
<プロピレン系樹脂の混合物PPの調整:D−3>
第1のプロピレン系樹脂(g)として、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(g−1)(プロピレンから導かれる構成単位(以下「C3」とも記載する)=66モル%、Mw=90,000)91質量部、第2のプロピレン系樹脂(h)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(C3=98モル%、Mw=25,000、酸含有量=0.81ミリモル当量)9質量部、界面活性剤として、オレイン酸カリウム3質量部を混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出した樹脂混合物を、同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは固形分濃度:45%であった。
なお、無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(C3=98モル%、Mw=25,000、酸含有量=0.81ミリモル当量)は、プロピレン・エチレン共重合体 96質量部、無水マレイン酸 4質量部、および重合開始剤としてパーヘキシ25B(日本油脂(株)製)0.4質量部を混合し、加熱温度160℃、2時間で変性を行って得られた。
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は、下記のとおりである。
・(A)成分:A−1〜A−2
A−1:“デナコール(登録商標)”EX−611(ナガセケムテックス(株)製)
ソルビトールポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:167g/eq.、
A−2:“デナコール(登録商標)”EX−521(ナガセケムテックス(株)製)
ポリグリセリンポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:183g/eq.、125℃での表面張力37mJ/m
・(B1)成分:B−1〜B−4
B−1:“jER(登録商標)”152(三菱化学(株)製)
フェノールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:175g/eq.、125℃での表面張力40mJ/m
B−2:“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:189g/eq.、125℃での表面張力38mJ/m
B−3:“jER(登録商標)”1001(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:475g/eq.、125℃での表面張力38mJ/m
B−4:“jER(登録商標)”807(三菱化学(株)製)
ビスフェノールFのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:167g/eq.、125℃での表面張力40mJ/m
・熱可塑性樹脂
ポリアリーレンスルフィド(PPS)樹脂ペレット:“トレリナ(登録商標)”A900(東レ(株)製)
ポリアミド6(PA6)樹脂ペレット:“アミラン(登録商標)”CM1001(東レ(株)製)
ポリプロピレン(PP)樹脂ペレット(ポリオレフィン系樹脂):未変性PP樹脂ペレットと酸変性PP樹脂ペレットの混合物、未変性PP樹脂ペレット:“プライムポリプロ(登録商標)”J830HV((株)プライムポリマー製)50質量部、酸変性PP樹脂ペレット:“アドマー(登録商標)”QE800(三井化学(株)製)50質量部
ポリカーボネート(PC)樹脂ペレット:“レキサン(登録商標)”141R(SABIC)
・(D)成分:D−1〜D−4
D−1:参考例1で調整したポリフェニレンスルフィドプレポリマー
D−2:テルペン樹脂(主成分としてα−ピネン、β−ピネンを用いて重合された重合体からなる樹脂、ヤスハラケミカル(株)製YSレジンPX1250樹脂)
D−3:参考例2で調整したプロピレン系樹脂の混合物
D−4:テルペンフェノール重合体(単環式モノテルペンフェノールとフェノールの付加物、ヤスハラケミカル(株)製YP902)
(実施例1)
本実施例は、次の第I〜IVの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を乾湿式紡糸し、焼成し、総フィラメント数24,000本、総繊度1,000テックス、比重1.8、ストランド引張強度5.9GPa、ストランド引張弾性率295GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.1モル/リットルの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維1g当たり50クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。このとき表面酸素濃度O/Cは、0.14、表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.004、表面水酸基濃度COH/Cは0.018であった。このときの炭素繊維表面粗さ(Ra)は2.9nmだった。これを炭素繊維Aとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(B1)成分として(B−2)を20質量部、(C)成分20質量部および乳化剤10質量部からなる水分散エマルジョンを調合した後、(A)成分として(A−1)を50質量部混合してサイジング液を調合した。なお、(C)成分として、ビスフェノールAのEO2モル付加物2モルとマレイン酸1.5モル、セバチン酸0.5モルの縮合物、乳化剤としてポリオキシエチレン(70モル)スチレン化(5モル)クミルフェノールを用いた。なお(C)成分、乳化剤はいずれも芳香族化合物であり、(B)成分に該当することにもなる。サイジング液中の溶液を除いたサイジング剤のエポキシ当量は表1−1の通りである。このサイジング剤を浸漬法により表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で75秒間熱処理をして、サイジング剤が塗布された炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、サイジング剤を塗布した炭素繊維に対して0.6質量%となるように調整した。続いて、炭素繊維に塗布されたサイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤塗布炭素繊維の水分率、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定、溶出された脂肪族エポキシ化合物の割合を測定し、結果を表1−1にまとめた。この結果、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りであることが確認できた。
・第IIIの工程:長繊維ペレットを製造する工程
単軸押出機の先端部分に、連続したサイジング剤塗布炭素繊維が通過可能な波状に加工したクロスヘッドダイを装着した。次いで、連続したサイジング剤塗布炭素繊維を5m/分の速度でクロスヘッドダイに通して引きながら、PPS樹脂ペレットを押出機から溶融状態でクロスヘッドダイに供給して、連続したサイジング剤塗布炭素繊維にPPS樹脂を含浸させ、冷却後、引き抜き方向と直角に7mmに切断して、炭素繊維が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ炭素繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じである長繊維ペレット(形態A)を得た。なお、押出機は、バレル温度320℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。PPS樹脂ペレットの供給は、サイジング剤塗布炭素繊維が20質量部に対して、PPS樹脂80質量部になるように調整した。
・第IVの工程:射出成形工程
前工程で得られた長繊維ペレットを、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:330℃、金型温度:100℃で特性評価用試験片を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。結果を表1−1にまとめた。この結果、曲げ強度が284MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例2〜10)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)、(B1)成分の種類、量、(C1)、その他の成分の量を表1−1の通りに用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤が塗布された炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤塗布炭素繊維の水分率、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を測定した。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りであることがわかった。結果を表1−1に示す。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1−1にまとめた。この結果、曲げ強度が274〜291MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例11)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1の第IIの工程と同様にしてサイジング剤を調整し、実施例1と同様の方法でサイジング剤が塗布された炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1.0質量部であった。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1−1にまとめた。この結果、曲げ強度が283MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例12)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
電解液として濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を用い、電気量を炭素繊維1g当たり8クーロンで電解表面処理したこと以外は、実施例1と同様とした。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.08、表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.003、表面水酸基濃度COH/Cは0.003であった。これを炭素繊維Bとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)、(B1)成分の種類、量、(C1)、その他の成分の量を表1−1の通りに用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤塗布炭素繊維の水分率、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を行った。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りだった。結果を表1−1に示す。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1−1にまとめた。この結果、曲げ強度は問題ないことがわかった。
(実施例13)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を湿式紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、総繊度447テックス、比重1.8、ストランド引張強度5.6GPa、ストランド引張弾性率300GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維1g当たり40クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。このときの炭素繊維の表面粗さ(Ra)は23nm、表面酸素濃度O/Cは、0.13、表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.005、表面水酸基濃度COH/Cは0.018であった。このときの炭素繊維表面粗さ(Ra)は2.9nmだった。これを炭素繊維Cとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)、(B1)成分の種類、量、(C1)、その他の成分の量を表1−1の通りに用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤塗布炭素繊維の水分率、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を行った。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りだった。結果を表1−1に示す。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1−1にまとめた。この結果、曲げ強度は問題ないことがわかった。
(実施例14)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)成分、(B1)成分を表1−1の通りに用い、(A)、(B1)をジメチルホルムアミド溶液にして塗布した以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤塗布炭素繊維の水分率、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を行った。サイジング剤のエポキシ当量、サイジング剤表面の化学組成ともに期待通りだった。結果を表1−1に示す。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1−1にまとめた。この結果、曲げ強度は高いことがわかった。
(比較例1)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)成分を用いず(B1)成分の種類、量、その他の成分の量を表1−2の通りに用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を行ったところ、表1−2に示す通り本発明の範囲から外れていた。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表1−2に示す通りで力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例2)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(B1)成分を用いず(A)成分の種類、量を表1−2の通りに用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を行ったところ、表1−2に示す通り本発明の範囲から外れていた。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表1−2に示す通りで力学特性が若干低いことがわかった。
(比較例3)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)、(B1)成分の種類、量、(C1)、その他の成分の量を表1−2の通りに用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を行ったところ、表1−2に示す通り本発明の範囲から外れていた。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表1−2に示す通りで力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例4)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)、(B1)成分の種類、量、(C1)、その他の成分の量を表1−2の通りに用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。続いて、サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を行ったところ、表1−2に示す通り本発明の範囲から外れていた。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表1−2に示す通りで力学特性が若干低いことがわかった。
(比較例5)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
(A)成分として(A−2)の水溶液を調整し、浸漬法により表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で75秒間熱処理をして、サイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、最終的に得るサイジング剤塗布炭素繊維に対して0.30質量%となるように調整した。続いて、(B1)成分として(B−2)を20質量部、(C)成分20質量部および乳化剤10質量部からなる水分散エマルジョンを調合した。なお、(C)成分として、ビスフェノールAのEO2モル付加物2モルとマレイン酸1.5モル、セバチン酸0.5モルの縮合物、乳化剤としてポリオキシエチレン(70モル)スチレン化(5モル)クミルフェノールを用いた。なお(C)成分、乳化剤はいずれも芳香族化合物であり、(B)成分に該当することにもなる。このサイジング剤を浸漬法により(A)成分を塗布した炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で75秒間熱処理をして、サイジング剤を塗布した炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、最終的に得るサイジング剤塗布炭素繊維に対して0.30質量部となるように調整した。サイジング剤表面のX線光電子分光法測定を測定した。サイジング剤表面を光電子脱出角度15°でX線光電子分光法によって測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.90より大きく、本発明の範囲から外れていた。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表1−2に示す通りで力学特性が低いことがわかった。
Figure 0005516770
Figure 0005516770
(実施例15)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様とした。
・第IIIの工程:長繊維ペレットを製造する工程
参考例1で調整した含浸助剤(D−1)を、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターから含浸助剤(D−1)を塗布し、被膜を形成させた。このロール上にサイジング剤塗布炭素繊維を接触させながら通過させて、サイジング剤塗布炭素繊維の単位長さあたりに一定量の含浸助剤(D−1)を付着させた。
含浸助剤(D−1)を付着させたサイジング剤塗布炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させて含浸助剤(D−1)をサイジング剤塗布炭素繊維に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。なお、巻き取った炭素繊維ストランドから、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1−クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの質量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの質量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。また、含浸助剤(D−1)の付着量は、炭素繊維100質量部に対して20質量部であった。
続いて、PPS樹脂を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、含浸助剤(D−1)を含浸させたサイジング剤塗布炭素繊維も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給(速度:30m/分)することによって、溶融したPPS樹脂を含浸助剤(D−1)を含浸させたサイジング剤塗布炭素繊維に被覆した。次いで、冷却後、引き抜き方向と直角に7mmに切断して、炭素繊維が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ炭素繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じである芯鞘構造の長繊維ペレット(形態B)を得た。PPS樹脂ペレットの供給は、サイジング剤塗布炭素繊維が全体に対して20質量%になるように調整した。
・第IVの工程:射出成形工程
前工程で得られた長繊維ペレットを、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:330℃、金型温度:100℃で特性評価用試験片を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。この結果、曲げ強度が282MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例16〜20)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例15の第IIの工程で、(A)成分と(B1)成分を表2に示すように変更したこと以外は、実施例15と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.6質量部であった。
・第III、IVの工程:
実施例15と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。この結果、曲げ強度が275〜289MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例6)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例1と同様とした。
・第III〜IVの工程:
実施例15と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表2に示す通りで力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例7)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例2と同様とした。
・第III〜IVの工程:
実施例15と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表2に示す通りで力学特性が若干低いことがわかった。
Figure 0005516770
(実施例21)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様とした。
・第IIIの工程:長繊維ペレットを製造する工程
単軸押出機の先端部分に、連続したサイジング剤塗布炭素繊維が通過可能な波状に加工したクロスヘッドダイを装着した。次いで、連続したサイジング剤塗布炭素繊維を5m/分の速度でクロスヘッドダイに通して引きながら、PC樹脂ペレットを押出機から溶融状態でクロスヘッドダイに供給して、連続したサイジング剤塗布炭素繊維にPC樹脂を含浸させ、溶融含浸物を加熱し、冷却後、引き抜き方向と直角に7mmに切断して、炭素繊維が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ炭素繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じである長繊維ペレット(形態A)を得た。なお、押出機は、バレル温度300℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。PC樹脂ペレットの供給は、サイジング剤塗布炭素繊維が20質量部に対して、PC樹脂が80質量部になるように調整した。
・第IVの工程:射出成形工程:
前工程で得られた長繊維ペレットを、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:320℃、金型温度:70℃で特性評価用試験片を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。この結果、曲げ強度が206MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例22〜26)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例21の第IIの工程で、(A)成分と(B1)成分を表3に示すように変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.6質量部であった。
・第III、IVの工程:
実施例21と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。この結果、曲げ強度が200〜208MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例8)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例1と同様とした。
・第III〜IVの工程:
実施例21と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表3に示す通りで力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例9)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例2と同様とした。
・第III〜IVの工程:
実施例21と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表3に示す通りで力学特性が若干低いことがわかった。
Figure 0005516770
(実施例27)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様とした。
・第IIIの工程:長繊維ペレットを製造する工程
含浸助剤(D−2)を、190℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。180℃に加熱されたロール上にキスコーターから含浸助剤(D−2)を塗布し、被膜を形成させた。このロール上にサイジング剤塗布炭素繊維を接触させながら通過させて、サイジング剤塗布炭素繊維の単位長さあたりに一定量の含浸助剤(D−2)を付着させた。含浸助剤(D−2)を付着させたサイジング剤塗布炭素繊維を、180℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させて(含浸助剤(D−2)をサイジング剤塗布炭素繊維に十分に含浸させた。含浸助剤(D−2)の付着量は、炭素繊維100質量部に対して20質量部であった。
続いて、PP樹脂を240℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、含浸助剤(D−2)を含浸させたサイジング剤塗布炭素繊維も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給(速度:30m/分)することによって、溶融したPP樹脂で含浸助剤(D−2)を含浸させたサイジング剤塗布炭素繊維を被覆した。次いで、冷却後、引き抜き方向と直角に7mmに切断して、炭素繊維が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ炭素繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じである芯鞘構造の長繊維ペレット(形態B)を得た。PP樹脂ペレットの供給は、サイジング剤塗布炭素繊維が全体に対して20質量%になるように調整した。
・第IVの工程:射出成形工程
前工程で得られた長繊維ペレットを、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:240℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。結果を表4にまとめた。この結果、曲げ強度が152MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例28〜32)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例27の第IIの工程で、(A)成分と(B1)成分を表4に示すように変更したこと以外は、実施例27と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.6質量部であった。
・第III、IVの工程
実施例27と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表4にまとめた。この結果、曲げ強度が145〜157MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例10)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例1と同様とした。
・第III〜IVの工程
実施例27と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表4に示す通りで力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例11)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例2と同様とした。
・第III〜IVの工程:
実施例27と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表4に示す通りで力学特性が若干低いことがわかった。
Figure 0005516770
(実施例33)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様とした。
・第IIIの工程:長繊維ペレットを製造する工程
含浸助剤(D−3)のエマルジョンを固形分濃度27質量%に調整してローラ含浸法にてサイジング剤塗布炭素繊維に付着させた後、210℃で2分間乾燥し、水分を除去してサイジング剤塗布炭素繊維と第1および第2のプロピレン系樹脂との複合体を得た。含浸助剤(D−3)の付着量は、炭素繊維100質量部に対して20質量部であった。
続いて、PP樹脂を300℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、含浸助剤(D−3)を付着させたサイジング剤塗布炭素繊維も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給(速度:30m/分)することによって、溶融したPP樹脂で含浸助剤(D−3)を付着させたサイジング剤塗布炭素繊維を被覆した。次いで、冷却後、引き抜き方向と直角に7mmに切断して、炭素繊維が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ炭素繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じである芯鞘構造の長繊維ペレット(形態B)を得た。PP樹脂ペレットの供給は、サイジング剤塗布炭素繊維が全体に対して20質量%になるように調整した。
・第IVの工程:射出成形工程
前工程で得られた長繊維ペレットを、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:240℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。結果を表5にまとめた。この結果、曲げ強度が152MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例34〜38)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例33の第IIの工程で、(A)成分と(B1)成分を表5に示すように変更したこと以外は、実施例33と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.6質量部であった。
・第III、IVの工程
実施例33と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表5にまとめた。この結果、曲げ強度が146〜158MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例12)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例1と同様とした。
・第III〜IVの工程
実施例33と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表5に示す通りで力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例13)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例2と同様とした。
・第III〜IVの工程
実施例33と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表5に示す通りで力学特性が若干低いことがわかった。
Figure 0005516770
(実施例39)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1と同様とした。
・第IIIの工程:長繊維ペレットを製造する工程
含浸助剤(D−4)を、190℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。180℃に加熱されたロール上にキスコーターから含浸助剤(D−4)を塗布し、被膜を形成させた。このロール上にサイジング剤塗布炭素繊維を接触させながら通過させて、サイジング剤塗布炭素繊維の単位長さあたりに一定量の含浸助剤(D−4)を付着させた。含浸助剤(D−4)を付着させたサイジング剤塗布炭素繊維を、180℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させて含浸助剤(D−4)をサイジング剤塗布炭素繊維に十分に含浸させた。含浸助剤(D−4)の付着量は、炭素繊維100質量部に対して20質量部であった。
続いて、PA6樹脂を300℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、含浸助剤(D−4)を含浸させたサイジング剤塗布炭素繊維も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給(速度:30m/分)することによって、溶融したPA6樹脂を含浸助剤(D−4)を含浸させたサイジング剤塗布炭素繊維に被覆した。次いで、冷却後、引き抜き方向と直角に7mmに切断して、炭素繊維が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ炭素繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じである芯鞘構造の長繊維ペレット(形態B)を得た。PA6樹脂ペレットの供給は、サイジング剤塗布炭素繊維が全体に対して30質量%になるように調整した。
・第IVの工程:射出成形工程:
前工程で得られた長繊維ペレットを、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:300℃、金型温度:70℃で特性評価用試験片を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。結果を表6にまとめた。この結果、曲げ強度が362MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例40〜44)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例39の第IIの工程で、(A)成分と(B1)成分を表6に示すように変更したこと以外は、実施例39と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.6質量部であった。
・第III、IVの工程
実施例39と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表6にまとめた。この結果、曲げ強度が365〜368MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例14)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例1と同様とした。
・第III〜IVの工程
実施例39と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表6に示す通りで力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例15)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
比較例2と同様とした。
・第III〜IVの工程
実施例39と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。この結果、曲げ強度が表6に示す通りで力学特性が若干低いことがわかった。
Figure 0005516770
(実施例45)
実施例1で得られたサイジング剤塗布炭素繊維2gをアセトン50ml中に浸漬させて超音波洗浄30分間を3回実施した。続いてメタノール50mlに浸漬させて超音波洗浄30分を1回行い、乾燥した。洗浄後に残っているサイジング剤付着量を測定したところ、表7の通りだった。
続いて、洗浄前のサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面、および洗浄により得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め、(I)洗浄前のサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の(a)/(b)、(II)洗浄後のサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の(a)/(b)を算出した。(I)および(II)/(I)は表7に示す通りだった。
(実施例46〜47)
実施例45と同様に実施例2、実施例3で得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて洗浄前後の400eVのX線を用いたX線光電子分光法によってC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)を求めた。結果を表7に示す。
(比較例16)
実施例45と同様に比較例1で得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて洗浄前後の400eVのX線を用いたX線光電子分光法によってC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)を求めた。結果を表7に示すが、(II/I)が大きく、サイジング剤に傾斜構造が得られていないことが分かった。
(比較例17)
実施例45と同様に比較例2で得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて洗浄前後の400eVのX線を用いたX線光電子分光法によってC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)を求めた。結果を表7に示すが、(II/I)が大きく、サイジング剤に傾斜構造が得られていないことが分かった。
(比較例18)
実施例45と同様に比較例5で得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて洗浄前後の400eVのX線を用いたX線光電子分光法によってC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)を求めた。結果を表7に示すが、(II/I)が小さいことが分かった。
Figure 0005516770
(実施例48)
実施例21で得られた成形材料10gを円筒濾紙に入れてジクロロメタン300mlを用いてソックスレー抽出を行い熱可塑性樹脂及びサイジング剤を溶出した。その後、80℃で30分乾燥して溶媒を乾燥した。洗浄後に残っている炭素繊維のサイジング剤付着量を測定したところ、表8の通りだった。
洗浄により得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を算出した。(a)/(b)は表8に示す通りだった。
(実施例49)
実施例23で得られた成形材料を用いて実施例48と同様に洗浄し得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を求めた。洗浄後に残っているサイジング剤付着量及び(a)/(b)は表8に示す通りだった。
(実施例50)
実施例39で得られた成形材料10gをビーカー入れて蟻酸250mlで超音波洗浄30分間を3回実施し、最後にメタノール250mlで超音波洗浄30分間を1回実施した。その後、80℃で30分乾燥して溶媒を乾燥した。洗浄により得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を求めた。洗浄後に残っているサイジング剤付着量及び(a)/(b)は表8に示す通りだった。
(実施例51)
実施例41で得られた成形材料を用いて実施例50と同様に洗浄し得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を求めた。洗浄後に残っているサイジング剤付着量及び(a)/(b)は表8に示す通りだった。
(比較例19)
比較例8で得られた成形材料を用いて実施例48と同様に洗浄し得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を求めた。洗浄後に残っているサイジング剤付着量及び(a)/(b)は表8に示す通りで大きい値となった。
(比較例20)
比較例9で得られた成形材料を用いて実施例48と同様に洗浄し得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面の400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を求めた。洗浄後に残っているサイジング剤付着量及び(a)/(b)は表8に示す通りで小さい値となった。
(比較例21)
比較例14で得られた成形材料を用いて実施例50と同様に洗浄し得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を求めた。洗浄後に残っているサイジング剤付着量及び(a)/(b)は表8に示す通りで大きい値となった。
(比較例22)
比較例15で得られた成形材料を用いて実施例50と同様に洗浄し得られたサイジング剤塗布炭素繊維のサイジング剤表面400eVでのX線光電子分光法で(b)C−O成分に帰属される結合エネルギー286.1eVのピークの高さと(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー284.6eVの成分の高さ(cps)を求め(a)/(b)を求めた。洗浄後に残っているサイジング剤付着量及び(a)/(b)は表8に示す通りで小さい値となった。
Figure 0005516770
本発明の成形材料、成形材料の製造方法および炭素繊維強化複合材料は、軽量でありながら強度、弾性率が優れるため、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に好適に用いることができる。
1、1A 成形材料
2 炭素繊維
3 熱可塑性樹脂
4 含浸助剤

Claims (21)

  1. 炭素繊維にサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維および熱可塑性樹脂から構成される柱状をなす成形材料であって、
    前記サイジング剤は、脂肪族エポキシ化合物(A)および芳香族化合物(B)として芳香族エポキシ化合物(B1)を少なくとも含むものであり、かつ、前記サイジング剤塗布炭素繊維は、該サイジング剤表面をX線源としてAlKα1,2を用い、X線光電子分光法によって光電子脱出角度15°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.50〜0.90であり、
    前記成形材料中の炭素繊維は軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ前記成形材料中の炭素繊維の長さは前記成形材料の長さと実質的に同じであることを特徴とする成形材料。
  2. 前記サイジング剤塗布炭素繊維の水分率は、0.010〜0.030質量%であることを特徴とする請求項1に記載の成形材料。
  3. 前記サイジング剤中の脂肪族エポキシ化合物(A)と芳香族エポキシ化合物(B1)の質量比は、52/48〜80/20であることを特徴とする、請求項1または2に記載の成形材料。
  4. 前記脂肪族エポキシ化合物(A)は、分子内にエポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の成形材料。
  5. 前記脂肪族エポキシ化合物(A)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物であることを特徴とする、請求項4に記載の成形材料。
  6. 前記芳香族エポキシ化合物(B1)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物あるいはビスフェノールF型エポキシ化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の成形材料。
  7. 前記サイジング剤塗布炭素繊維は、該サイジング剤塗布炭素繊維を、400eVのX線を用いたX線光電子分光法によって光電子脱出角度55°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)との比率(a)/(b)より求められる(I)および(II)の値が、(III)の関係を満たすものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の成形材料。
    (I)超音波処理前の前記サイジング剤塗布炭素繊維の表面の(a)/(b)の値
    (II)前記サイジング剤塗布炭素繊維をアセトン溶媒中で超音波処理することで、サイジング剤付着量を0.09〜0.20質量%まで洗浄したサイジング剤塗布炭素繊維の表面の(a)/(b)の値
    (III)0.50≦(I)≦0.90かつ0.60<(II)/(I)<1.0
  8. 前記成形材料を、該成形材料を構成する前記熱可塑性樹脂を溶解する溶媒中で超音波処理することで、前記サイジング剤塗布炭素繊維表面のサイジング剤付着量を0.09〜0.20質量%まで洗浄された該サイジング剤塗布炭素繊維の表面は、400eVのX線を用いたX線光電子分光法によって光電子脱出角度55°で測定されるC1s内殻スペクトルの(a)CHx、C−C、C=Cに帰属される結合エネルギー(284.6eV)の成分の高さ(cps)と、(b)C−Oに帰属される結合エネルギー(286.1eV)の成分の高さ(cps)の比率(a)/(b)が0.30〜0.70となるものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の成形材料。
  9. 前記脂肪族エポキシ化合物(A)の付着量は、0.2〜2.0質量%であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の成形材料。
  10. 前記炭素繊維の化学修飾X線光電子分光法により測定される表面カルボキシル基濃度COOH/Cは0.003〜0.015、表面水酸基濃度COH/Cは0.001〜0.050であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の成形材料。
  11. 前記炭素繊維100質量部に対して前記サイジング剤が0.1〜10.0質量部付着されてなるサイジング剤塗布炭素繊維1〜80質量%、および熱可塑性樹脂20〜99質量%を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の成形材料。
  12. 前記サイジング剤塗布炭素繊維を主とする構造Yが芯構造であり、前記熱可塑性樹脂を主成分とする構造Xが鞘構造であって、前記構造Yの周囲を前記構造Xが被覆した芯鞘構造を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の成形材料。
  13. 前記柱状をなす成形材料の長さが1〜50mmであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の成形材料。
  14. 形態が長繊維ペレットであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の成形材料。
  15. 前記熱可塑性樹脂は、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂およびポリオレフィン系樹脂から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の成形材料。
  16. 前記熱可塑性樹脂はポリアミドであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の成形材料。
  17. 含浸助剤(D)を、炭素繊維100質量部に対して0.1〜100質量部含むことを特徴とする、請求項1〜16に記載の成形材料。
  18. 前記含浸助剤(D)の一部または全部が炭素繊維に含浸されてなることを特徴とする、請求項17に記載の成形材料。
  19. 請求項1〜18のいずれか一つに記載の成形材料を製造する成形材料の製造方法であって、
    溶媒を除いたサイジング剤全量に対して、脂肪族エポキシ化合物(A)35〜65質量%と芳香族化合物(B)35〜60質量%とを少なくとも含むサイジング剤を連続する炭素繊維に塗布する塗布工程と、
    溶融した熱可塑性樹脂を前記塗布工程で得られた連続するサイジング剤塗布炭素繊維に含浸させ、連続したストランドを得るストランド化工程と、
    前記ストランド化工程で得たストランドを冷却した後、切断して柱状の成形材料を得る切断工程と、
    を含むことを特徴とする成形材料の製造方法。
  20. 前記ストランド化工程前に、溶融した含浸助剤(D)を連続する前記サイジング剤塗布炭素繊維に含浸させる含浸工程を有することを特徴とする請求項19に記載の成形材料の製造方法。
  21. 請求項1〜18のいずれか一つに記載の成形材料、または、請求項19または20に記載の方法で製造された成形材料を成形してなることを特徴とする、炭素繊維強化複合材料。
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