JP5515082B2 - 磁場応答性リポソーム及び磁場応答性薬剤放出システム - Google Patents
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Description
特許文献1は、特定の膜構成成分を有するリポソームが、動脈硬化や再狭窄などの血管平滑筋の異常増殖に起因する血管疾患部位に集積する性質を利用して、特定の膜構成成分を有するリポソームに、造影剤として通常用いられる磁性粒子を保持させ、血管疾患の造影剤として用いている。
このリポソームは、体内に投与された後に、体外から加えられた磁場により所望の位置に移動し、次いで回転磁場が加えられることにより磁性粒子が振動してリポソーム膜を破壊することにより、内包された薬物を放出することが、特許文献2に記載されている。
また、本発明は、上記の磁場応答性リポソームと薬剤とからなる磁場応答性薬剤放出システムも提供する。
本発明の磁場応答性リポソームは、磁性ナノ粒子の発熱によりリポソーム自体の温度を上昇させることによりリポソームから内容物を放出させるものであり、リポソーム周囲の温度はあまり上昇させないので、体内に投与したときに、温度上昇による意図しない体組織の損傷を防いで、リポソームから内容物を放出させることができる。また、磁場は体の深部まで到達できるので、レーザ照射などの直接加熱により温度感受性リポソームの温度を上昇させることが困難な体の深部にリポソームにより薬物を送達しようとする場合に好適である。
なお、本明細書において、粒子及びリポソームの粒径は、以下の実施例に記載の方法により測定される。
本発明の磁場応答性リポソームに用いることができる温度感受性リポソームは、当該技術分野において知られる温度感受性リポソームであれば特に限定されない。このような温度感受性リポソームとしては、例えば膜構成脂質の組成により温度感受性を有するリポソーム(M.B. Yatvinら、Science 202、1290-1292 (1978);J.N. Westeinら、Science 204 188-191 (1979); D. Needhamら、Cancer Research 60, 197-1201 (2000)に記載されたもの等)を挙げることができる。
このような温度感受性リポソームは公知であり、例えば特許第4247361号公報、特開2006−306794号公報、特開2009−269846号公報などに記載されるものを用いることができる。
上記の感熱応答性ビニル系モノマーが有する水和可能なヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子などが挙げられる。水和可能なヘテロ原子の数の上限は、重合を行える範囲であれば特に限定されない。水和可能なヘテロ原子を含む基としては、−CH2−CH2−O−、−CO−、−COO−、−CONH−、−NHCOO−などが挙げられる。
疎水性ビニル系モノマーとしては、炭素数3〜40個程度、特に炭素数4〜30個程度の各種の脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素基を有するビニル系モノマーを使用できる。
R1−(A)m−(B)n−R4 (I)
(式中、R1は重合開始剤に由来する基であり、Aは水和可能なヘテロ原子を1個以上含む感熱応答性ビニル系モノマーに由来する基であり、Bは疎水性ビニル系モノマーに由来する基であり、R4は水素原子及び炭素数1〜10のアルコキシ基から選択される重合停止剤に由来する基であり、mは5〜500、nは1〜10である)で表されるブロック共重合体が好ましい。
また、重合開始剤は、特開2009−269846号公報に記載されるような、ポリオキシエチレン基を含む基を側鎖に有する重合可能な単量体とトリフルオロ酢酸などのプロトン酸とを混合して調製される重合開始種であってもよい。
R1基としての重合開始剤に由来する基の好ましい例は、以下の一般式:
R11のPEGに由来する基は、120〜12000、より好ましくは350〜12000、さらに好ましくは350〜5000の分子量を有するPEGに由来する基が好ましい。
00〜25,000程度、特に好ましくは11,000〜22,000程度である。この範囲の数平均分子量であることにより、リポソーム膜構造の崩壊温度をより狭い温度範囲とすることができる。
本発明に用いられる高分子化合物の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれ以下の実施例に記載の方法により測定した値である。
上記の高分子化合物の好適な具体例としては、以下の式(II):
R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、アルデヒド基、フェニル基、ビフェニル基又は炭素数7〜14のアラルキル基であり、
R3は炭素数4〜30の炭化水素基であり、
yは0〜4である。)
で表される化合物が挙げられる。
なお、上記の式(III)〜(V)の化合物は、式(III)〜(V)における側鎖としてのオクタデシルオキシ基がドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基又はヘキサデシルオキシ基で置換された化合物が少量混合していてもよい。
重合において用いられる各モノマーの量は、特許第4247361号公報、特開2006−306794号公報、特開2009−269846号公報などに記載されることと同様である。
及び1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパンなどの第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの脂質は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の磁場応答性リポソームの構成成分である磁性ナノ粒子は、上記の直径を有する磁性金属又は金属酸化物粒子であれば、特に限定されず、従来公知の磁性金属又は金属酸化物ナノ粒子を用いることができる。磁性金属又は金属酸化物ナノ粒子としては、酸化鉄(マグネタイト、マグヘマイトなど)、フェライト(MIIO・Fe2O3 (MIIはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Cdなどの2価の金属を表す);例えばFe3O4、CoFe2O4、MnFe2O4、NiFe2O4、MgFe2O4、CuFe2O4、ZnFe2O4など)、磁性合金(FePtなど)からなるものが知られている。なかでも、磁性ナノ粒子は、酸化鉄及びフェライトからなる群より選択される金属酸化物を含むことが好ましい。磁性ナノ粒子は、上記の金属又は金属酸化物の1種又は2種以上を含むことができる。
本発明の磁場応答性リポソームは、温度感受性リポソームと磁性ナノ粒子とを構成成分として、磁性ナノ粒子が温度感受性リポソームの膜に保持されてなるものである。
本発明の磁場応答性リポソームは、粒径が0.05〜10μm程度であればよく、目的に応じて種々の粒径とすることができる。例えば、薬剤として抗癌剤を磁場応答性リポソームに内包して、癌細胞に抗癌剤を送達しようとする場合、磁場応答性リポソームの粒径は、通常、0.05〜0.2μm程度、特に0.05〜0.15μm程度であることが好ましい。このような粒径であれば、癌細胞周辺の微小血管に存在する0.2μm程度の穴からリポソームが漏れ出して、目的の癌細胞に到達することができる。
それ自体公知のリポソームの製造方法としては、エクストルーダー法、超音波法、フレンチプレス法などが挙げられる。これらの方法の詳細は、「リポソーム」(野島庄七、砂本順三、井上圭三編、南江堂)及び「ライフサイエンスにおけるリポソーム」(寺田弘、吉村哲郎編、シュプリンガー・フェアラーク東京)に記載されている。
上記の磁場応答性リポソームと薬剤とからなる磁場応答性薬剤放出システムも、本発明の一つである。
上記の薬剤は、親水性物質及び疎水性物質のいずれであってもよい。親水性物質である場合は、薬剤は、磁場応答性リポソームの内部の閉鎖空間の親水性領域に内包され、疎水性物質である場合は、磁場応答性リポソーム膜に保持されることとなる。
上記の薬剤の量は特に限定されず、薬剤の種類などにより適宜選択することができる。
上記の錠剤及びカプセルは、通常の方法により腸溶コーティングを施すことが望ましい。腸溶コーティングとしては、当該分野において通常用いられるものを利用できる。また、カプセルは粉末又は液体のいずれを含有することもできる。
よって、本発明は、治療又は予防を必要とする対象者に、上記の磁場応答性薬剤放出システムの有効量を経口又は非経口的に投与し、一定期間経過後に対象者に磁場を印加することを含む、疾患の治療又は予防方法も提供する。
上記の一定期間は、磁場応答性薬剤放出システムの投与後少なくとも3時間が好ましく、より好ましくは3〜48時間、さらに好ましくは6〜24時間、さらにより好ましくは6〜12時間である。
磁場の印加は、当該分野で通常用いられる磁場照射装置を用いて行うことができる。磁場照射装置は市販されており、例えば高周波磁場印加装置(HI-HEATER 5010、第一高周波工業株式会社製)などを用いることができる。
磁場の印加は、対象者への悪影響が可能な限り低いことを条件として、1回又は2回以上行うことができる。
以下の実施例で製造した物質は、次の測定方法により特性を決定した。
<分子量の測定方法>
高分子化合物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、それぞれゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)の結果から算出した。GPCは、高速液体クロマトグラフ(TSKgelカラムG-200HXL+G-3000 HXL+G-4000HXL(東ソー社製)、溶離液:クロロホルム)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、被験化合物の分子量をポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算Mw及びMnとして求めた。
リン脂質の定量は、リン脂質Cテストワコー(和光純薬(株))を用いて行った。試料溶液(リポソーム分散液)及び標準溶液をそれぞれ発光溶液とよく混合し、37℃で5分間加温した。波長600nmで試料溶液の吸光度を、日本分光(株)製V-520型紫外・可視分光光度計を用いて測定し、得られた吸光度より試料溶液の脂質濃度を決定した。
リポソームの粒径は動的光散乱法によって求めた。内水相としてPBS(10mMリン酸、140mM NaCl、pH 7.4)を有するリポソームを作製し、その平均粒径と粒径分布を、リポソーム分散液とPBSを3mlになるようにセルに加えて、動的光散乱(DLS-600、大塚電子(株)製)を用いて25℃又は45℃において測定した。
磁性ナノ粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって求めた。磁性ナノ粒子のヘキサン分散液を、エラスチックカーボン支持膜付銅製グリッドに5μl滴下し、一晩乾燥させたものを、TEM (透過型電子顕微鏡(TEM;H-800、日立ハイテク製)により観察した。TEM観察は、加速電圧200 kVで行った。得られたTEM像から粒子の平均粒径を算出した。
1.FeCl3・6H2O(キシダ化学製)2.33 mmolとFeCl2・4H2O(キシダ化学製)1.17 mmolとを超純水15 mlに溶解した。
2.オレイン酸ナトリウム(東京化成製)0.300 mmolをミリQ水15 mlに溶解した。
3.工程1及び2で得られた溶液を混合し、25%のアンモニア水(キシダ化学製)5 mlを加えた。
4.テフロン(登録商標)容器(容積50 ml)に工程3の混合液を入れ、ステンレス製オートクレーブ(四国理化製)に密封して、200℃にて3時間水熱反応させた。
5.その後、反応液を室温で冷却し、遠心分離して上澄み液を除去した。
6.沈殿物にヘキサン(キシダ化学製)40 mlを加え、遠心分離して上澄み液を回収した。
7.上澄み液にエタノール(ナカライテスク製)約40 mlを加えて粒子を凝集させ、遠心分離した。
8.上澄み液を捨てて、沈殿物を回収した。
9.工程6、7及び8をさらに2回繰り返した。
10.得られたマグネタイト磁性ナノ粒子(Fe3O4)を、ヘキサン(キシダ化学製)に分散させた。
特開2006−306794号公報に記載される手順に従って、温度感受性高分子化合物を製造した。製造した温度感受性高分子化合物は、感熱応答性ビニル系モノマーとしての2−(2−エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル(EOEOVE)と、疎水性ビニル系モノマーとしてのオクタデシルビニルエーテル(ODVE)とを共重合させたものであった。得られた高分子化合物のNMRにより測定した組成比は、EOEOVE:ODVE=87/4.5であり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)及びMnは、それぞれMw/Mn=1.04、Mn=1.4×104であった。
合成は、工業用ドライヤーでベーキングした後に室温まで冷ました三方活栓付きシュレンク内、乾燥窒素下で行った。トルエン、1,4-ジオキサン(1.2 mol/L)、開始種の1-イソブトキシエチルアセテート[CH3CH(OiBu)OCOCH3](4 mmol/L)、モノマーの2-(2-エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル (0.35 mol/L)を、それぞれガラス製注射器を用いて順にシュレンクに入れて撹拌し、0℃に冷やした。そこへ、市販のエチルアルミニウムセスキクロリドのトルエン溶液(1.0 mol/L)を20 mmol/Lになるように加えることで重合を開始した。23分後、第1モノマーがほぼ消費された重合溶液に、第2モノマーのオクタデシルビニルエーテルを開始種に対して5当量加えた。さらに12分後に開始種量に対して大過剰の0.1 vol%アンモニア水含有のメタノールを加えて重合を停止した。重合溶液はジクロロメタンで希釈後、イオン交換水で10回分液して触媒残渣を取り除き、溶媒をエバポレートして目的のポリマーを得た。
以下の手順により、リポソーム膜脂質としての卵黄ホスファチジルコリン(EYPC)、上記の温度感受性高分子化合物、及び上記の磁性ナノ粒子で構成される磁場応答性リポソームを製造した。この磁場応答性リポソームは、脂質EYPCの重量に対して10重量%の磁性ナノ粒子を含有する。
なお、このリポソームには、内包物として蛍光色素パイラニンを含有させて、内包物の放出について試験できるようにした。
3)得られたリポソームの凍結/融解を5回繰り返した。
4)孔径100nmのフィルタを装着したエクストルーダー(HAMILTON社製、GASTIGHT#1001)を用いて、リポソームの粒径を調節した。
5)分子量カットオフ12,000〜16,000の透析膜(三光純薬株式会社製)を用いて、PBSに対して透析を行うことにより、リポソームに内包されなかったパイラニンを除去した。
6)4℃、55,000 rpmにて超遠心して、リポソームを精製した。
磁性ナノ粒子が、脂質EYPCの重量に対して30重量%含まれるようにした以外は、実施例1と同様にして磁場応答性リポソームを作製した。
磁性ナノ粒子を含まない以外は実施例1と同様にして、温度感受性リポソームを作製した。
温度感受性高分子化合物を含まない以外は実施例1と同様にして、磁性ナノ粒子と非温度感受性リポソームとからなるリポソームを作製した。
温度感受性高分子化合物を含まない以外は実施例2と同様にして、磁性ナノ粒子と非温度感受性リポソームとからなるリポソームを作製した。
温度感受性高分子化合物も磁性ナノ粒子も含まないこと以外は実施例1と同様にして、リポソームを作製した。
A)平均粒径
実施例1及び2並びに比較例1及び2で得られたリポソームの平均粒径(nm)を、25℃において、動的光散乱(DLS)により測定した。結果を以下の表1に示す。
実施例1の磁場応答性リポソームを、透過型電子顕微鏡(TEM;H-800、日立ハイテク製)により観察した。
リポソーム分散液5μlを、ポリビニルホルマール膜付銅製グリッドに滴下し、一晩乾燥させた後に観察を行った。観察の際に、重金属塩を用いたネガティブ染色は行っていない。TEM観察は、加速電圧200 kVで行った。
図1の左側の写真で見られる小さい粒子は、粒径約5nmの磁性ナノ粒子であり、これが約140nmの凝集体を形成していることがわかる。この凝集体のサイズは、DLSにより求められた実施例1のリポソームの粒径とほぼ一致することから、実施例1のリポソームが磁性ナノ粒子を含有することが確認できる。また、磁性ナノ粒子は疎水性の表面を有するので、磁性粒子がリポソーム膜に疎水性相互作用により保持されていると考えられる。
リポソームの温度を変化させることによるリポソームからのパイラニン放出の変化をモニターした。以下の実験では、パイラニン(励起:416nm;蛍光:512nm)の蛍光強度を、蛍光分光光度計(FP-6200ST、日本分光株式会社製)を用いて測定した。
1)蛍光セルにPBS(pH 7.4)を2995μl入れ、所定の温度に設定した。
2)脂質濃度が1.0μMとなるように、リポソームをそれぞれ加えた。パイラニンの蛍光強度の測定を開始した。
3)30分後、界面活性剤であるTriton X-100(キシダ化学株式会社製)10μlを加えて、リポソームを破壊した。
R(%)=(Ft−F0)/(F100−F0)×100
また、図3は、10℃(丸)、30℃(ひし形)及び45℃(方形)における実施例2及び比較例1のリポソームからのパイラニン放出の経時変化を示すグラフである。図3では、実施例2:白抜きの記号、比較例1:塗りつぶした記号で表す。
図4の結果から、いずれの温度においてもパイラニンの放出が起こらず、図2及び3で示されたリポソームからのパイラニンの放出が、温度感受性高分子化合物の存在により引き起こされたものであることが確認できた。
C)の試験と同様に、蛍光分光高度計を用いて、磁場印加によるリポソームからのパイラニンの放出の変化について調べた。
2)蛍光セルに、工程1)で磁場を所定時間印加したリポソーム分散液4μlとPBS2995μlとを入れ、蛍光強度の測定を開始した。
3)30分後、界面活性剤であるTriton X-100 25μlを加えて、リポソームを破壊した。
4)上記のC)工程4)と同様にしてパイラニンの放出割合R(%)を求めた。
図6は、磁場を印加せずに経過した時間とパイラニンの放出割合R(%)との関係を示すグラフである。図6では、実施例1:●、実施例2:▲及び比較例1:○の結果を表す。
図7は、図5及び図6のようにしてパイラニンの放出割合を測定したときの、リポソーム分散液の温度変化を示すグラフである。図7では、実施例1:●、実施例2:▲及び比較例1:○の結果を表す。
図8は、比較例2〜4のリポソーム、すなわち温度感受性高分子化合物を含まずに磁性ナノ粒子を含むか又は含まないリポソームに対して磁場を印加した時間と、パイラニンの放出割合との関係を示すグラフである。図8では、比較例2:●、比較例3:▲及び比較例4:○の結果を表す。
一方、磁場を印加しない場合、これらのリポソームからのパイラニンの放出は観察されなかった(図6)。よって、本発明の磁場応答性リポソームからの内容物の放出のためには、磁場の印加が必要であることがわかる。
また、温度感受性高分子化合物を含有しない非温度感受性リポソームに磁性ナノ粒子を含有させたリポソームからは、磁場を印加してもパイラニンが全く放出されなかった(図8)。この結果から、磁場応答性リポソームが磁場に応答して内容物を放出するためには、温度感受性リポソームを用いることが必要であることがわかる。
一方、図5の結果からわかるように、1時間の磁場照射後のパイラニンの放出割合は、実施例1及び2でそれぞれ約55%及び約80%であった。これを、図2の35℃付近でのパイラニン放出割合(実施例1及び2:それぞれ約50%及び65%)と比較すると、図5においてより高い放出割合が得られたことがわかる。
この結果から、磁性ナノ粒子が存在するリポソーム膜の近傍の温度は、リポソーム分散液の水温に比較して高く、そのために、リポソーム膜に保持されている温度感受性高分子化合物がリポソーム膜をより強く不安定化させていることが示唆される。つまり、磁場の照射により、リポソーム自体の温度が、その周囲の温度と比較して、より上昇していると考えられる。
Claims (4)
- 温度感受性リポソームと磁性ナノ粒子とを含み、前記磁性ナノ粒子の少なくとも一部分が前記温度感受性リポソームのリポソーム膜を構成する膜脂質成分中に埋め込まれて前記磁性ナノ粒子が前記リポソーム膜に保持されてなり、
交流磁場の印加により、前記リポソーム膜で囲まれた閉鎖空間に内包された内容物の一部又は全部をリポソーム膜外に放出できることを特徴とする磁場応答性リポソーム。 - 前記磁性ナノ粒子が、酸化鉄及びフェライトからなる群より選択される金属酸化物を含む請求項1に記載のリポソーム。
- 請求項1又は2に記載のリポソームと、薬剤とからなる磁場応答性薬剤放出システム。
- 薬物が、抗癌剤である請求項3に記載の磁場応答性薬剤放出システム。
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