JP5514098B2 - 後眼部到達用リポソーム及び後眼部疾患用医薬組成物 - Google Patents

後眼部到達用リポソーム及び後眼部疾患用医薬組成物 Download PDF

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Description

本発明は、後眼部到達性を有するリポソーム及びそれを用いた後眼部疾患用医薬組成物に関するものである。
従来、後眼部疾患に対する薬剤治療には、結膜下や硝子体内への注射等の侵襲的な方法が汎用されている。
その理由としては、点眼等の眼局所投与では、涙等によって、薬剤の滞留時間が短くなることや、角結膜上皮細胞における薬剤透過性が低いこと等が挙げられる。
しかしながら、注射では、簡便性に欠ける他、硝子体出血や網膜剥離等の合併症の懸念がある等の問題があり、眼局所投与のような非侵襲的な投与方法によっても、後眼部到達性の高い薬剤が求められている。
一方、リポソームを眼局所投与用に利用しようとする試みが、いくつかなされているが、それらは、例えば角膜表面での滞留時間の延長(特許文献1)を目的とするもの等に止まり、リポソームの眼局所投与によって、後眼部まで薬剤を到達させることに成功した例は無かった。
特許文献2では、網膜細胞内への到達を目的とするリポソーム製剤が開示されており、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)や、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む、特定のリポソームに“封入したDNA”が、網膜神経節細胞に到達し得たことが報告されているが、化学物質を封入したリポソームでは無い。
この特許文献2の「発明の詳細な説明」においては、各種のリポソームの組成や製法が開示されているが、リン脂質を用いたリポソームで、実際に、封入したDNAの網膜神経節細胞への到達確認に用いたのは、いずれもマルチラメラリポソーム(multi lamellar vesicle:以下、MLVと記載する。)であった。
一方、本発明者等が独自に進めてきたリポソームの研究・開発の結果、MLVでは、リポソーム自体は、後眼部に到達し得ないことが分かってきた。
つまり、この特許文献2では、リポソームに封入したDNAは後眼部に到達しているものの、リポソームそのものは途中で崩壊し、後眼部に達成していなかった可能性がある。
このことは、封入したDNAの後眼部到達の割合は、必ずしも高いとは言えないことを意味している。
特許第3624418号公報 特許第3963506号公報
そこで、本発明者等が後眼部到達可能なリポソームについて更に鋭意検討した結果、リポソームの平均粒子径をサブミクロンサイズとすることで、後眼部疾患の予防又は治療に有効な薬剤であっても、後眼部到達が可能なリポソーム製剤が製造可能であることを見いだし、本発明に到達したものであって、その目的とするところは、眼局所投与によっても後眼部に到達し、かつ細胞毒性も無い、新規組成のリポソーム,及びそれを用いた後眼部疾患用医薬組成物を提供するにある。
上述の目的は、下記第一の発明から第十の発明によって、達成される。
<第一の発明>
下記(A)と、(B)及び/又は(C)を構成成分として含み、細胞膜透過性を有する堅さを有し、平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする、後眼部到達用リポソーム。
(A)リン脂質
(B)電荷物質
(C)膜強化物質
<第二の発明>
細胞膜透過性を有する堅さが、下記の式(I)によって表されるH/Pの値で0.15〜1.0であることを特徴とする、第一の発明記載の後眼部到達用リポソーム。
H/P・・・・・・・・(I)
H:原子間力顕微鏡によって測定される、基板に吸着させたリポソームの高さ
P:動的光散乱によって測定される、リポソームの平均粒子径
<第三の発明>
平均粒子径が、600nm以下であることを特徴とする、第一又は第二の発明記載の後眼部到達用リポソーム。
<第四の発明>
(A)の、アシル基の炭素数が、12〜18であることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれかに記載の、後眼部到達用リポソーム。
<第五の発明>
(A)が、ジステアロイルフォスファチジルコリン,ジパルミトイルフォスファチジルコリン,ジミリストイルフォスファチジルコリン,ジラウロイルフォスファチジルコリン,エッグフォスファチジルコリン,水素添加フォスファチジルコリンからなる群から選択される、少なくとも1種以上を含むものであることを特徴とする、第一の発明乃至第四の発明のいずれかに記載の後眼部到達用リポソーム。
<第六の発明>
リポソーム粒子のゲル液晶転移温度が、20℃以上であることを特徴とする、第一の発明乃至第五の発明のいずれかに記載の後眼部到達用リポソーム。
<第七の発明>
(B)が負電荷物質であることを特徴とする、第一の発明乃至第六の発明のいずれかに記載の、後眼部到達用リポソーム。
<第八の発明>
(C)がステロイド骨格を有する化合物であることを特徴とする、第一の発明乃至第七の発明のいずれかに記載の、後眼部到達用リポソーム。
<第九の発明>
第一の発明乃至第八の発明のいずれかに記載の後眼部到達用リポソームに、後眼部疾患の予防又は治療に有効な薬剤が封入されていることを特徴とする、後眼部疾患用医薬組成物。
<第十の発明>
剤形が点眼剤である、第九の発明記載の後眼部疾患用医薬組成物。
本発明のリポソームは、後眼部に到達可能であって、かつ細胞毒性も無いという利点を有している。そのため、本発明の後眼部疾患用医薬組成物は、注射等の煩わしさも無く、点眼等の簡便な眼局所投与方法によって、後眼部疾患の予防又は治療が可能となる。
後眼部到達確認試験における、眼球からの凍結切片の摘出部位を示す図である。 実施例3,4及び比較例1,2のリポソームの、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 図2の蛍光強度を数値化した図である。 実施例3〜7のリポソームについての、細胞とリポソームの相互作用(細胞によるリポソームの取り込み量)確認試験の結果を示す図である。 実施例3,4及び比較例1,2のリポソームについての、毒性確認試験(MTS試験)の結果を示す図である。 実施例3のリポソームについての、ウサギを用いた後眼部到達確認試験の結果を示す、蛍光顕微鏡観察の図である。 図6の蛍光強度を数値化した図である。 実施例8のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例9のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例10のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例11のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例12のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例13のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例14のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例15のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例16のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 比較例3のFITC標識ポリスチレン粒子についての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例5のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。 実施例6のリポソームについての、後眼部到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡観察の図である。
[本発明の後眼部到達用リポソーム]
本発明の後眼部到達用リポソームは、下記(A)と、(B)及び/又は(C)を構成成分として含み、細胞膜透過性を有する堅さを有し、平均粒子径が1μm以下であることを特徴とするものである。
(A)リン脂質
(B)電荷物質
(C)膜強化物質
[本発明の後眼部到達用リポソームの構成成分]
以下、各構成成分について詳述する。
(A)リン脂質
本発明の後眼部到達用リポソームに用いられるリン脂質としては、リポソーム粒子を堅くできるものであれば、特に限定されないが、例えば、アシル基の炭素数が12〜18のように、ある程度長いものが好ましく、具体的には、ジステアロイルフォスファチジルコリン(DSPC),ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC),ジミリストイルフォスファチジルコリン (DMPC),ジラウロイルフォスファチジルコリン(DLPC),エッグフォスファチジルコリン(EPC),水素添加フォスファチジルコリン(HyPC)等が挙げられるが、中でも、DSPCが、硬い粒子を形成し易い点で好ましい。
また、これらのリン脂質は、単独又は組み合わせて用いることができる。
本発明のリポソームは、(A)に加えて、下記の(B)及び/又は(C)を含むことが必要であるが、中でも、(B)を含むことが好ましく、(B),(C)の両方を含むことが特に好ましい。
(B)電荷物質
本発明の後眼部到達用リポソームに用いられる電荷物質としては、リポソーム粒子の分散安定性を向上させるものであれば、特に限定されない。
電荷物質には、正電荷物質と負電荷物質があるが、細胞毒性が、より低い傾向にあるという点で、負電荷物質が好ましい。
正電荷物質としては、例えば、ステアリルアミン(SA)や、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド (DDAB),及びこれらの誘導体等が挙げられる。
負電荷物質としては、例えば、ジセチルフォスフェート(DCP)及び ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール (DPPG)及びこれらの誘導体等が挙げられるが、中でもDCPまたはその誘導体等が、好ましいものとして挙げられる。
また、電荷物質は、1種又は2種以上の併用であっても良い。
尚、リポソームの表面を、電荷を有するポリマーで修飾することによって、電荷を付与することもできる。
本発明における、(B)の電荷物質の添加量は、リン脂質1に対して、モル比で0.02〜0.3が好ましく、特に0.1〜0.3が好ましい。
(C)膜強化物質
本発明の後眼部到達用リポソームに用いられる膜強化物質としては、リポソーム粒子の堅さを強化し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、ステロイド骨格を有する化合物が、好ましいものとして挙げられる。
また、膜強化物質は、1種又は2種以上の併用であっても良い。
ステロイド骨格を有する化合物としては、コレステロール(Chol.)やその誘導体等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロコレステロール,コレステロールエステル,コレスタノール,デヒドロコレステロール,ラノリン脂肪酸コレステリル,イソステアリン酸コレステリル,12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル,リシノール酸コレステリル,マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル,フィトステロール,シトステロール,スチグマステロール,カンペステロール,ラノステロール,2,4−ジヒドロラノステロール,1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシド,1−O−ステロールガラクトシド等が挙げられる。
本発明における、(C)膜強化物質の添加量は、リン脂質1に対して、モル比で0.1〜0.3が好ましい。
(C)膜強化物質には、リポソーム成分として加えることによって、均一なリポソームが得られ易くなるという利点がある。
尚、本発明のリポソームには、リポソームの堅さを維持できる限り、他の成分を適宜添加することができる。
[本発明の後眼部到達用リポソームの粒子の堅さ]
本発明のリポソームの粒子は、細胞膜透過性を有する堅さを有することを必要としている。
この、「細胞膜透過性を有する堅さ」とは、リポソームが崩壊せずに、細胞に取り込まれ得る程の堅さを意味し、例えば、ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)との相互作用をin vitroで調べること等によって、確認することができる。
具体的には、不死化ヒト角膜上皮細胞を播種した容器に、リポソーム溶液を添加し、一定温度下、一定時間インキュベーションを行った後、洗浄し、細胞を溶解し、リポソームに導入した蛍光物質等の標識を定量することによって、細胞による、リポソームの取り込み量,つまり、細胞膜透過性を有するか否かを調べることができる。
この蛍光物質等の取り込み量が、コントロールより多く確認できれば、細胞膜透過性があると言うことができる。
尚、より具体的な試験方法は、実施例に記載する。
また、この細胞膜透過性を有する堅さは、具体的には、例えば下記の論文に掲載された方法等によっても評価することができる。
International Journal of Pharmaceutics,355(1-2), P.203-209, 2008 May 1,(電子公表2007 Dec. 23)
上記論文に掲載された方法は、原子間力顕微鏡(AFM)及び動的光散乱(DLS法:Dynamic Light Scattering )を利用して、リポソームの堅さを評価する方法である。
具体的には、リポソームを懸濁した溶液を、例えば雲母(マイカ)等のような基板に吸着させ、10μm×10μmのエリア内の、リポソームの高さ(H)の最頻値(amplitude mode)によって、視覚化する。
リポソームの高さ(H)は、基板表面の10μm×10μmのスケール内の、全てのリポソームの深さを、AFMによって測定し、この装置のソフトウェアの使用によって、ヒストグラムのピークトップから求めた最頻値とする。
AFMは、最大10μm×10μm×2.5μmの範囲の測定が可能な、E−スキャナとともに使用するのが好ましく、例えば、デジタル・インスツルメント・イン・コーポレイテッド社製の、Nanoscope(登録商標) IIIa システム・コントローラ等を用いることができる。
尚、Hの測定に際しては、10μm×10μmのスケール内に、ある程度の数のリポソームが吸着していることが、より正確なHを得るのに好ましく、例えば、最低数十個/(10μm×10μm)以上であることが好ましいが、予め、ある程度サイズ調整したものを用いる場合には、これより少なくても構わない。
このような数のリポソームを吸着させるためには、例えば、リポソーム懸濁液中のリポソーム濃度を調整すれば良い。
また、リポソーム懸濁液を基板に滴下した後、例えば30分程度静置することが好ましい。
平均粒子径(P)は、リポソームを基板表面に吸着させる前に、0.6〜6000nmまでの粒子を測定できるZETASIZER 3000HSA (MALVERN INSTRUMENT Ltd., UK)によって、DLS法を使って測定しておく。
コロイド粒子のζ電位は、Zetamaster(MALVERN INSTRUMENT Ltd., UK)を用いたレーザードップラー法によって測定する。
そして、リポソーム粒子の堅さは、下記の式(I)によって、算出することができる。
H/P・・・・・・・・(I)
本発明の後眼部到達用リポソームとしては、このH/Pの値が、0.15〜1.0であることが好ましく、より好ましくは、0.3〜1.0である。
この堅さを達成するには、例えば、リポソームを構成するリン脂質として、上述した様に、アシル基の炭素数が12〜18のものを使用することや、(B)の電荷物質及び/又は(C)の膜強化物質を使用すること、あるいは、リポソーム粒子の、ゲル液晶転移温度を、特定の値とすること等によって達成することができる。
このゲル液晶転移とは、リン脂質二重膜の状態を表す言葉であるが、その相変化が起こる温度を、ゲル液晶転移温度(Tc)と言い、Tcが環境温度より高いほど、その環境温度においてリン脂質二重膜がカプセル状の粒子状態を維持しやすくなる。
従って、このTcが高いほど、生体環境において本発明のリポソームが堅い傾向にあると言うことができる。
本発明においては、このTcが20℃以上のものが好ましく、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは、50℃以上である。
尚、DSPCのTcは、約54〜55℃,DPPCの場合には、約41〜42℃,DMPCの場合には、約23〜24℃,EPCの場合には、約−15〜−7℃である。
[本発明の後眼部到達用リポソームの平均粒子径]
本発明のリポソームの平均粒子径は、1μm以下であることが必要であるが、600nm以下であることが好ましく、より好ましくは、80〜250nm,更に好ましくは90〜220nm,特に好ましくは、100〜200nmである。
尚、リポソームの平均粒子径は、上述のDLS法によって測定した値である。
具体的には、パスツールピペットで採取したリポソーム懸濁液一滴を、大過剰の分散溶媒(HEPES 緩衝液)で希釈した後、ZETASIZER 3000HSA (MALVERN INSTRUMENT Ltd., UK)により測定した値である。
[本発明の後眼部到達用リポソームの構造]
本発明のリポソームは、主に、SUV(small uni-lamella vesicle)と呼ばれる一層構造を取っているものと考えられるが、必ずしもこれに限られるものでは無い。
[本発明のリポソームの製造方法]
本発明のリポソームの製造方法は、特に限定されるものでは無く、下記の(1)及び(2)を適宜組み合わせる方法等が挙げられるが、中でも薄膜水和−エクストルージョン法が好ましい。
(1)薄膜水和法,逆層蒸発法,エタノール注入法,又は脱水−再水和等(MLVの製造)
この(1)の中では、例えば実施例で用いた6−クマリンのような、疎水性の薬剤を封入する際には、薄膜水和法が、均一な封入ができるという点で好ましい。
(2)リポソームをメンブランフィルターに高圧下で通すエクストルージョン法,超音波照射法,凍結融解法,フレンチプレス法,ホモジナイゼーション法等による、MLVの微細化
(ssLip(submicron sized small uni-lamella vesicle (liposome))の製造)
この(2)の中では、リポソームの微細化には、超音波照射法や、エクストルージョン法が好ましいが、特にエクストルージョン法が、リポソームをより均一に微細化できるため、好ましい。
エクストルージョン法や、超音波照射法は、粒子サイズを調整し易い点で好ましい。
薄膜水和法とは、リポソーム膜を構成する基本成分を、クロロホルム等の有機溶媒に溶解後、ロータリーエバポレーターにかけ、加熱・減圧下、溶媒を留去することによって、エバポレーターの内側に薄膜を形成させ、その後薄膜を温水浴中で、リン酸緩衝液や、HEPES−HBSS溶液等で水和する方法である。
リポソームの膜内又はリポソームの内側の空間に封入するための薬剤は、水溶性の場合は、水和用の溶液に,水不溶性の場合には、リポソーム構成成分と共に、有機溶媒に溶解することによって、リポソーム内に封入することができる。
HEPESとは、4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acidである。
HBSSとは、ハンクス平衡塩溶液(Hank’s balanced salt solution)である。
[本発明の後眼部疾患用医薬組成物]
本発明の後眼部疾患用医薬組成物は、本発明の後眼部到達用リポソームに後眼部疾患の予防又は治療に有効な薬剤を封入したものである。後眼部疾患の予防又は治療に有効な薬剤が、本発明の後眼部到達用リポソームの構成成分である(A)リン脂質、(B)電化物質または(C)膜強化物質としてのいずれかの効力を有する場合は、それらの全部または一部を兼ねることができる。
本発明の後眼部到達用リポソームに封入して、本発明の後眼部疾患用医薬組成物とすることのできる薬剤は、特に限定されるものでは無いが、例えば以下のような、後眼部疾患の予防又は治療に有効な薬剤が挙げられる。
塩酸ブナゾシン,マレイン酸チモロール,塩酸カルテオロール,塩酸ベタキソロール,ニプラジロール,イソプロピルウノプロストン,プロスタグランジン製剤(ラタノプロスト,タフルプロスト等),塩酸ジベフリン,エピネフリン,塩酸ピロカルピン,カルバコール,塩酸ドルゾラミド,アセタゾラミド,チオプロニン,パロチン,ピレノキシン,グルタチオン,メマンチン,ステロイド製剤(フルオロメトロン,プレドニゾロン,ベタメタゾン,デキサメタゾン等),非ステロイド製剤(インドメタシン,ジクロフェナックナトリウム,ブロムフェナックナトリウム等),緑内障の予防又は治療剤,白内障の予防又は治療剤,ブドウ膜炎の予防又は治療剤,視神経保護剤,眼循環改善剤,網膜循環改善剤,糖尿病性網膜症の予防又は治療剤,加齢黄斑変性症の予防又は治療剤,VEGF阻害薬(VEGF抗体,VEGFアプタマーなど),血管新生阻害剤,硝子体混濁の予防又は治療剤
後眼部疾患としては、加齢黄斑変性症,糖尿病性網膜症,ブドウ膜炎(交感性眼炎),緑内障,白内障,硝子体混濁等が挙げられるが、これらに限定されるものでは無く、後眼部に病変あるいは疾患の原因を有する疾患が、すべて該当するものである。
本発明の後眼部疾患用医薬組成物は、緩衝剤(リン酸緩衝剤,ホウ酸緩衝剤,クエン酸緩衝剤,酒石酸緩衝剤,酢酸緩衝剤,アミノ酸等),等張化剤(ソルビトール,グルコース,マンニトール等の糖類,グリセリン,プロピレングリコール等の多価アルコール類,又は塩化ナトリウム等の塩類等),賦形剤,滑沢剤,結合剤,崩壊剤,安定剤,矯味矯臭剤,希釈剤,界面活性剤,乳化剤,可溶化剤,吸収促進剤,保湿剤,吸着剤,充填剤,増量剤,付湿剤,防腐剤(塩化ベンザルコニウム,塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩,パラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸エチル等のパラオキシ安息香酸エステル類,ベンジルアルコール,フェネチルアルコール,ソルビン酸,およびそれらの塩,チメロサール,クロロブタノール等),粘稠剤(ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,メチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,カルボキシメチルセルロース等)等の添加剤を用いて周知の方法で製剤化することができる。
本発明の後眼部疾患用医薬組成物は、薬理効果を阻害しない範囲で、他の有効成分を含有させることができる。
(本発明の後眼部疾患用医薬組成物の投与経路)
本発明の後眼部疾患用医薬組成物の投与経路としては、後眼部への注射等の侵襲的方法や、点眼や眼軟膏塗布等による眼局所投与のような非侵襲的方法が挙げられるが、本発明のリポソームは、点眼によっても後眼部到達が可能であるため、点眼等の眼局所投与において最もその価値を発揮し得る。
(本発明の後眼部疾患用医薬組成物の投与形態)
従って、本発明の後眼部疾患用医薬組成物の形態としては、例えば点眼剤,眼軟膏,注射剤等が挙げられる。
(本発明の後眼部疾患用医薬組成物中のリポソームの含有量)
本発明の後眼部疾患用医薬組成物中の、リポソームの含有量は、剤形やリポソームに封入される薬剤の種類や薬剤の封入量等によって様々であり、一概に限定できず、各種剤形化が可能な範囲で、薬剤の投与量との関係で適宜選択すれば良いが、例えば、リポソームの、医薬組成物中の含有量としては、医薬組成物全体に対し、0.01〜20.0(w/w%:固形分中の割合)の範囲が好ましく、特に、0.1〜1.0(w/w%:固形分中の割合)が好ましい。
尚、医薬組成物の総量中、薬剤成分が、好ましくは0.0001〜10(w/v%),より好ましくは0.001〜5(w/v%),特に注射剤の場合、好ましくは0.0002〜0.2(w/v%),より好ましくは0.001〜0.1(w/v%),点眼剤の場合、好ましくは0.01〜50(w/w%),より好ましくは0.02〜20(w/w%)等となるように調製することが好ましいが、必ずしもこの範囲に限定されるものでは無い。
(本発明の後眼部疾患用医薬組成物の投与量)
本発明の後眼部疾患用医薬組成物の投与量は、投与経路,症状,年齢,体重,医薬組成物の形態等によって異なるが、例えば、後眼部疾患用医薬組成物中のリポソームが内包している薬剤の量が、処置を必要としている対象体重1kg当たり好ましくは0.005〜500mg,より好ましくは、0.1〜100mg,但し、成人に対して1日あたり、下限として好ましくは0.01mg(より好ましくは0.1mg),上限として、好ましくは20g(より好ましくは2000mg,更に好ましくは500mg,特に好ましくは100mg)となるように、1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが望ましい。
[実施例1〜2]
表1の組成のリポソームの構成材料を、約40℃の減圧下、ロータリーエバポレーターにかけ、エバポレーターの内側に薄膜を形成させ、その後薄膜を約60〜70℃の水浴中で、HEPES−HBSS溶液等で水和し、MLVを製造した。
得られたMLVをエクストルージョンにかけ、ssLipを含む溶液を得た(実施例1〜2)。
尚、本発明において、実施例でエクストルージョンに用いたメンブランフィルターは、Nuclepore Track-Etch Membrane, Whatman(Schleicher & Schuell)社製の、ポリカーボネート製のものである。
これらのリポソームの堅さ(H/P)を、上述の方法で測定した。
(AP処理マイカの調製)
尚、測定に先だって、基板として用いたマイカを、次の文献に従って前処理した。
Thomson, 2000, Langmuir 16(11), 4813-4818
具体的には、次のようにして行った。
乾燥させたシャーレ中に、劈開したマイカと3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane(以下、APと記載する。), 分子量221.4, 2μl)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(N, N-diisopropylethylamine(DI), 分子量129.2, 1μl)を入れ、十分に密封した状態で室温下、指定時間放置した。このとき2つの反応溶液は、直接マイカに滴下するのでは無く、乾燥した遠心チューブのふたを切り取りその中に添加し、気相中の反応によって、マイカ表面にAPを修飾した。その後、シャーレからふたごとAPを取り出し、窒素ガスを用いてシャーレ内に充分量の窒素を充満させ保存した。調製したAP処理マイカは24時間以内に使用した。
(AFMによるリポソームの形状観察)
蒸留水を用いて脂質濃度として0.02mMに希釈したリポソーム懸濁液200μlを上述のAP処理マイカに吸着させ、常温で30分間静置した。その後、蒸留水を用いて未吸着の微粒子を除去し観察を行った。測定時のカンチレバーとして、DNP-S20(Length: 120 μm, narrow, nominal spring constant:0.32N/m)を使用した。カンチレバーを液中セルに固定し、液中タッピングモードにて微粒子の形状観察を行った。スキャンスピードはスキャンサイズによって1.0もしくは2.5Hzで観察した。
その結果、これらのリポソーム粒子の堅さ(H/P)は、それぞれ0.81(実施例1),0.31(実施例2)であり、好ましい堅さを有する本発明のリポソームを製造することができた。
[実施例3〜7,比較例1〜2]
(1)MLVの調製
実施例1,2のような硬いssLipに、更に薬剤を封入させた、実施例3,4のssLipを製造した。
具体的には、リポソームの構成材料と封入薬剤(6−クマリン)を、表2の組成で、約40℃の減圧下、ロータリーエバポレーターにかけ、エバポレーターの内側に薄膜を形成させ、その後薄膜を約60〜70℃の水浴中で、HEPES−HBBS溶液等で水和し、MLVを製造し、これを比較例とした(比較例1,2)。
(2)サブミクロンサイズのリポソームの調製
(1)で得られた比較例のMLVをエクストルージョンにかけ、平均粒子径が各々111.7nm(実施例3),112.9nm(実施例4)のリポソーム(ssLip)を含む、リポソーム溶液を得た。
尚、リポソームの平均粒子径は、上述した通り、ZETASIZER 3000HSA (MALVERN INSTRUMENT Ltd., UK)による、DLS法によって、測定した。
また、同様の方法で、(A)リン脂質の種類を変えて、各種のリポソーム溶液を得た(実施例5:DPPC ssLip,実施例6:DMPC ssLip,実施例7:HyPC ssLip)
これらのリポソームは、いずれも(B)電荷物質としては、DCPを用い、(C)膜強化物質としては、コレステロールを用いた。
また、これらのリポソームの製造時における、構成成分の配合比は、A:B:C=8:2:1=1:0.25:0.125(モル比)とした。
尚、実施例5〜7のリポソーム溶液中のリポソーム濃度(リン脂質濃度)は、いずれも実施例3,4と同じ20.4mMであった。
これらの実施例及び比較例のリポソーム溶液を用い、下記(I)から(IV)の各種試験を行い、結果を図2〜6に示した。
《(I)後眼部到達確認試験》
実施例3,4又は比較例1,2の各リポソーム溶液の3μlを、6週齢雄ddy系クリーンマウスの角膜表面に点眼投与した(各群3匹)。
一定時間後(30分,1時間,3時間)に、眼球を摘出し、図1に示す、後眼部に相当する眼球部分の凍結切片標本(厚さ10μm)を作成し、網膜の眼底に到達した6−クマリンの蛍光を蛍光顕微鏡下、励起波長470〜490nm,検出波長515〜550nmで観察し、結果を図2に示した。
図2には実施例3,4又は比較例1,2それぞれのリポソーム溶液を点眼した後、30分後、1時間後及び3時間後の典型例を示した。
また、単位ピクセルあたりの蛍光強度を定量した結果を、図3に示した。
図3中の「non」とは、点眼剤を点眼しなかった場合のコントロールである。
具体的には、各群(図の各カラム)において、それぞれ3例の検討を行った。
視神経乳頭の中心より500μm(耳側及び鼻側の2ヵ所)にて、網膜神経節細胞層及び内網上層を含む50μm平方の単位ピクセルあたりの、平均蛍光強度を測定した。
その2ヵ所の平均値を、各サンプルの定量値として解析した。
値は平均値±標準誤差,n=3である。
図2,3から分かる通り、実施例3のDSPC ssLipや実施例4のEPC ssLipのように、平均粒子径が1μm以下のサブミクロンサイズのもののみで、後眼部への到達が確認できた。
また、データは示していないが、DSPC等、リン脂質自体のTcが高いリポソームの場合には、(B)電荷物質と(C)膜強化物質の、いずれか一方のみを用いた場合にも、実施例3ほどでは無いが、同様の傾向が見られた。
尚、実施例で用いた、6−クマリンは、リポソーム膜中に混在しているものと考えられ、このことから、本発明のリポソームは、「リポソームそのもの」が後眼部に到達した可能性が極めて高いと考えられる。
《(II)細胞とリポソームの相互作用(細胞によるリポソームの取り込み量)確認試験》
ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を用いて、in vitroで評価した。
不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T,Cell No. RCB1384,理研セルバンク)を播種(6.3×10 cells/cm)した容器に、実施例3〜7の、平均粒子径が1μm以下の各種のリポソーム溶液を添加し(0.5ml)、37℃で180分間インキュベーションを行った。
次に、4℃に冷却したHBSS-Hepes buffer(0.5ml)で、2回、培養細胞の洗浄を行った。
その後、HEPESで希釈し、NaOHで細胞を溶解し、リポソームに導入した蛍光物質(6−クマリン)を定量することによって、細胞による、リポソームの取り込み量を調べた結果を、図4に示す。
尚、蛍光強度は、実施例3のリポソームの蛍光強度を1とした際の、相対強度で評価した。
図4から分かる通り、高い後眼部到達を示したリポソームほど、相対的に高い、細胞との相互作用が検出された。
また、実施例3のDSPCのTcは約54〜55℃,実施例5のDPPCのTcは約41〜42℃,実施例6のDMPCのTcは約23〜24℃であること等から、Tcが高いほど、後眼部到達性が向上する傾向が見られた。
尚、実施例4のEPCの場合には、Tcが約−15〜−7℃と低い割に、後眼部到達性が高いのは、EPC自体の、リポソームの構造を維持し易い性質や、封入した蛍光物質(6−クマリン)を保持し易い性質が、Tcの影響よりも大きいためと考えられる。
《(III)毒性確認試験(MTS試験)》
不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T,Cell No. RCB1384,理研セルバンク)を播種(3.15×10 cells/cm)した容器に、実施例3,4又は比較例1,2のリポソーム溶液をそれぞれ添加し(0.5ml)、37℃で180分間インキュベーションを行った。
その後、HBSSで洗浄し、MTS試薬20μl+培養液100μlを添加した後に、492nmの吸光度を測定することによって、細胞生存率を調べた結果を図5に示す。
尚、図5中の、「control」とは、HBSS-Hepes bufferを表し、「Suspension」とは、6−クマリンのみの懸濁液を表す。
尚、MTS試薬とは、下記のものを意味する。
(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetorazolium inner salt)
MTS試験とは、ミトコンドリアが産生するホルマザン生成物の量が、培養中の生細胞数に正比例することを利用するものである。
培養細胞に細胞維持液(HEPES-HBSS)のみを添加したコントロールの、ホルマザン生成物の量を[A]controlとし、被験物(実施例又は比較例のリポソーム)を添加した場合のホルマザン生成物の量[A]testの割合を、下記式によって求め、これを細胞生存率(%)として評価するというものである。
尚、ホルマザン生成物の量は、490nmの吸光度によって測定する。
[A]test/[A]control×100
図5から分かる通り、いずれのリポソームも、細胞障害性はほとんど認められず、細胞障害が後眼部到達の理由ではないことが示唆された。
また同時に、この結果は、本発明のリポソームを薬物キャリアーとして用いた場合の、安全性も示すものである。
《(IV)ウサギによる後眼部到達確認試験》
家ウサギ(日本白色,雄,2.5kg,18羽)の眼に、各々50μlずつの、実施例3のリポソーム溶液(DSPC ssLip)を点眼した。
点眼前(未点眼),10分後,30分後,1時間後,2時間後,及び6時間後に眼球を摘出し、薄切標本を作製し、6−クマリンによる蛍光強度を観察した。
結果を図6に示す。
また、単位ピクセルあたりの蛍光強度を定量した結果を、図7に示した。
具体的には、各群(図の各カラム)において、それぞれ3例の検討を行った。
視神経乳頭の中心より500μm(耳側及び鼻側の2ヵ所)にて、網膜神経節細胞層及び内網上層を含む50μm平方の単位ピクセルあたりの、平均蛍光強度を測定した。
その2ヵ所の平均値を、各サンプルの定量値として解析した。
値は平均値±標準誤差,n=3である。
図6,7から分かる通り、平均粒子径が1μm以下のDSPCリポソームは、ウサギにおいても、後眼部に到達していることが確認できた。
[実施例8〜11]
上述の実施例等の方法に倣って、DSPC/DCP/Chol. = 8/2/1=1/0.25/0.125のモル比で、リポソームを作製した。このリポソーム精製過程において、エクストルージョンに用いるメンブランフィルターの孔径を変更することによって、平均粒子径116.8nm(実施例8),174.8nm(実施例9),300.6nm(実施例10),561.0nm(実施例11)の、各種の平均粒子径のリポソームを含む溶液を得た。
これらのリポソームを含む溶液中のリポソーム濃度(リン脂質濃度)は、いずれも20.4mMであった。
これらのリポソーム溶液で、上述の(I)後眼部到達確認試験を行ったところ、いずれも後眼部に移行したが、その到達量は、平均粒子径の大きさに依存する傾向が見られた(図8〜11)。
つまり、これらの結果は、リポソームの後眼部到達性は、リポソームの平均粒子径が、小さいほど高まる傾向にあることを示すものである。
[実施例12]
上述の実施例等の方法に倣って、EPC/SA/Chol. = 7/1/3≒1/0.14/0.43の組成比(モル比)で、H/P=0.15のリポソーム(H=15.3±1.17,P=103.6±0.85)を含む溶液を得た。
このリポソームで、上述の(I)後眼部到達確認試験を行ったところ、後眼部に到達したことが確認された(図12)。
[実施例13〜16]
上述の実施例等の方法に倣って、表3の組成比で、各種のリポソームを含む溶液を得た。
これらのリポソームで、上述の(I)後眼部到達確認試験を行ったところ、後眼部に到達したことが確認されたが、(C)膜強化物質の無い実施例14や、(B)電荷物質の無い実施例16に比べて、(B),(C)のいずれも含む実施例13,15の方が、到達率は高かった(図13〜16)。
[比較例3]
リポソームに変えて、FITCで蛍光標識したポリスチレン粒子(Micromer-greenF(登録商標),コアフロント株式会社製,平均粒子径110.7nm)にグルコース50%(w/v)溶液を10%(v/v)加え、懸濁液中のグルコースの最終濃度が5%(w/v)となるようにして、等張としたものを、使用した。
このポリスチレン粒子の堅さ(H/P)は、約1.0であった。
しかし、このポリスチレン粒子を用いて、上述の(I)後眼部到達確認試験を行ったところ、後眼部には、全く移行していなかった(図17)
この結果は、後眼部到達を可能にするためには、粒子の堅さや大きさだけでは無く、粒子を構成する成分が重要であることを示すものである。
《(V)後眼部到達確認試験−2》
実施例5(DPPC ssLip,114.1nm),実施例6(DMPC ssLip,124.7nm)のリポソーム溶液各々3μlを、(I)の後眼部到達確認試験と同様の方法でマウスに点眼した後、30分後の蛍光顕微鏡観察の結果を、図18及び図19に示した。
これらの図から分かる通り、実施例3〜7のリポソームの中でも細胞との相互作用の低い(図4参照)、実施例5(DPPC ssLip)や、実施例6(DMPC ssLip)のリポソームについても、マウスの生体において、後眼部に到達していることが確認できた。
本発明のリポソームは、後眼部到達性を有するため、後眼部疾患用医薬組成物として、点眼等を含む眼局所投与のような、非侵襲的な予防又は治療に好適に利用される。

Claims (9)

  1. 下記(A)、(B)及び(C)を構成成分として含み、細胞膜透過性を有する堅さを有し、平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする、後眼部到達用リポソームであって:
    (A)が、ジステアロイルフォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、ジミリストイルフォスファチジルコリン、エッグフォスファチジルコリン及び水素添加フォスファチジルコリンからなる群から選択される少なくとも1種以上を含むリン脂質であり;
    (B)が、ステアリルアミン、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジセチルフォスフェート、及びジパルミトイルフォスファチジルグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種を含む電荷物質であり;
    (C)が、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、コレスタノール、及びデヒドロコレステロールからなる群から選択される少なくとも1種以上のステロイド骨格を有する化合物であり;
    細胞膜透過性を有する堅さが、下記の式(I)によって表されるH/Pの値で0.15〜1.0であり、
    H/P----(I)
    H:原子間力顕微鏡によって測定される、基板に吸着させたリポソームの高さ
    P:動的光散乱によって測定される、リポソームの平均粒子径;および
    リポソームがsubmicron sized small uni-lamella vesicleである、
    後眼部到達用リポソーム。
  2. 平均粒子径が、600nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の後眼部到達用リポソーム。
  3. (A)が、ジステアロイルフォスファチジルコリン、エッグフォスファチジルコリンからなる群から選択される、少なくとも1種以上を含むものである、請求項1又は2に記載の後眼部到達用リポソーム。
  4. (B)がステアリルアミン、及びジセチルフォスフェートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の、後眼部到達用リポソーム。
  5. (C)がコレステロールである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の、後眼部到達用リポソーム。
  6. (A)1モルに対する(B)の添加量が0.02〜0.3モルである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の、後眼部到達用リポソーム。
  7. (A)1モルに対する(C)の添加量が0.1〜0.3モルである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、後眼部到達用リポソーム。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の後眼部到達用リポソームに、後眼部疾患の予防又は治療に有効な薬剤が封入されていることを特徴とする、後眼部疾患用医薬組成物。
  9. 剤形が点眼剤である、請求項8記載の後眼部疾患用医薬組成物。
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