以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する部分には同一又は類似の符号を付し,重複した説明は省略する。
図1の本発明の実施の形態であるターボ冷凍機システム100を示すブロック図を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態のターボ冷凍機システム100は、複数台のターボ冷凍機101、102・・・を有する。各ターボ冷凍機は、ガイドベーン制御とインバータによる回転速度制御(インバータ制御)の両方を備え、冷凍容量(冷凍出力)を制御する。(ガイドベーン制御とインバータ制御については、図2を参照して説明する。)これらターボ冷凍機が冷凍機群を構成する。ここで、冷凍機は105までの5台を図示しているが、2台以上であればよく、5台を超えてもよい。台数が多ければ、大きな冷凍負荷にきめ細かく対応することができる。台数が例えば2台と少なければ、きめ細かさは望めないが、冷凍機の発停の頻度を抑えることができる。
本発明の実施の形態では、各ターボ冷凍機の運転状態がガイドベーン制御の領域に達すると、成績係数が特に悪化することに着目した。すなわち、ターボ冷凍機の負荷が低下して、ガイドベーン制御に移行し、さらにガイドベーン開度が大きく低下して成績係数が悪化した場合、運転台数を減じて、一台あたりの負荷を増やす。一方、冷却水温度が低いときに、冷凍機1台あたりの負荷が増加して回転速度を増速して冷凍出力を増やそうとすると、ターボ圧縮機が運転点を外れるが故に、やはり成績係数が低下する。この場合は、冷凍機の運転台数を増やして、ガイドベーン開度が低下するぎりぎりまで(まだ開度は全開)、冷凍機1台あたりの負荷を減らすことで、効率が改善される。
ここで、ガイドベーンが全開で、回転速度制御により負荷が制御されている領域である場合、その領域での最適な負荷が存在する。これは一般に、最低回転速度における出力ではなく、それよりもやや回転速度を増速した状態での出力である。すなわち、上記したように、ガイドベーンが閉じられないぎりぎりの負荷、逆に言えばガイドベーンが全開で回転速度制御が維持されうるぎりぎりの負荷まで1台あたりの負荷を減じることは、厳密に言えば効率を最大化することとはならない。しかしながら、冷凍機の台数制御は無段階制御ではなく、N台からN+1台、あるいはN−1台へと運転台数を変化させることであり、冷凍機の負荷は段階的にしか変化しない。それゆえ、最適な負荷がわかっていても、それに併せて運転台数を制御することは難しく、また、最適な負荷における効率と、ぎりぎりまで回転速度を下げた場合の効率との差異は必ずしも大きくないので、制御思想として「回転速度制御範囲のぎりぎりまで負荷を下げる」ことは、工学的に妥当であることを発明者は見出した。
そこで、本発明の実施の形態では、次のように冷凍機の運転台数を増減することにより負荷の変化に対応する。基本的に、冷凍機は冷凍機一台あたりの負荷の増減に合わせて、運転台数を増減する。これは、従来の台数増減による制御と同等の方法である。ただし、本発明の実施の形態では、冷凍機の運転状態から、基準となる圧縮機回転速度を算出する。これは、同じく冷凍機の運転状態から算出されるターボ圧縮機の最低回転速度とするのがよい。あるいは、ターボ圧縮機の圧力比から、図4を参照して後述する、圧縮機の必要仕事により決定される、基準回転速度とするのがよい。
その上で、ターボ圧縮機の回転速度と基準回転速度との差(もしくは比)を算出する。これが規定値である回転速度差閾値となったとき或いはこれを超えた場合、運転台数を増やして、冷凍機一台あたりの負荷を減ずる。
ここで、ターボ冷凍機の負荷の増減の指標として、冷水出口温度が目標値を上回った場合には負荷が増加したものと判断し、下回った場合には負荷が低下したものと判断して、運転台数を増減することとしてもよい。すなわち、冷凍負荷が低下した場合に運転台数を減らす。
また、運転台数を減らす基準として、冷水の出入り口の温度差により、温度差が拡大した場合には冷凍負荷が増加したものと判断し、温度差が縮小した場合には低下したものと判断してもよい。図1の実施の形態では、合流した冷水の出口温度検出器113−1の検出温度TL1(信号はS1−1)と、分岐前の冷水の入り口温度検出器113−2の検出温度TL2(信号はS1−2)との差で見る。
また、ターボ圧縮機のガイドベーン開度GVが基準値を下回った場合に、運転台数を減らすこととしてもよい。このとき、例えば代表の1台ではなく、複数の所定の台数のターボ圧縮機のガイドベーン開度が基準値を下回った場合としてもよい。またガイドベーン制御が複数の冷凍機で行われるようになったところで台数を減らすようにしてもよい。これらの制御は、冷凍機の特性や客先の要求等により随意に組み合わせることができる。ガイドベーン開度は、後述のように代表の冷凍機のガイドベーン開度を使うとよい。
図1に示すように、ターボ冷凍機システム100は、総合の制御装置である制御手段70を備え、これは各ターボ冷凍機101、102他を個別に制御する冷凍機制御器70−1、70−2他と、台数制御部としての台数制御器76を備える。制御手段70については、後で詳しく説明する。
図2のターボ冷凍機の構成を示す全体概略図を参照して、ターボ冷凍機システムを構成するターボ冷凍機101を代表として取り上げて説明する。ターボ冷凍機101は、冷媒液を蒸発させて冷媒ガスを発生し、その蒸発潜熱で被冷却媒体である冷水を冷却する蒸発器10と、蒸発器10で発生した冷媒ガスを吸入して圧縮し、蒸発器10から凝縮器30まで冷媒ガスを昇圧、圧縮するターボ圧縮機20とを備える。凝縮器30は、圧縮された冷媒ガスから熱を奪い、これを凝縮し、凝縮熱を冷却水に放出する。凝縮器30と蒸発器10の間には、凝縮器30から蒸発器10の圧力まで冷媒液を減圧する絞り機構(減圧装置)40を備える。
さらに、ターボ圧縮機20を駆動する可変速駆動機としての電動機21と、電動機21の起動・停止に使用する電動機起動盤60と、商用電源75から供給される電源の周波数を自在に制御して電動機21に供給するインバータ80と、電動機21に供給される電源の周波数を指示する速度指令信号C1をインバータ80に対して出力してターボ冷凍機101の運転を制御する冷凍機制御器70−1と、蒸発器10の冷水出口温度TLを検出する冷水温度検出器13と、凝縮器30の冷却水入口温度THを検出する冷却水温度検出器14と、蒸発器10内の冷媒の圧力(低圧側圧力)PLを検出する低圧側圧力検出器P1と、凝縮器30内の冷媒の圧力(高圧側圧力)PHを検出する高圧側圧力検出器P2と、を備えて構成されている。冷水温度検出器13は、蒸発器10の冷水出口配管11に設置される。冷凍負荷の増減を示す指標として冷水入口温度又は冷水出入り口温度差を用いるときは、冷水入口配管に冷水入口温度検出器(不図示)を設置する。
電動機21は、周波数変換器(スイッチングインバーター、以下「インバータ」という)80により周波数が変換される電源で駆動されることにより、可変速駆動機として作用する。ターボ圧縮機20、増速機、電動機21を含む回転体の回転速度を、主軸の危険回転速度等により定まる最高回転速度以下の速度で、任意に変更することができる。最高回転速度のリミットは、冷凍機制御器70−1内又はインバータ80内でかけるとよい。
なおターボ圧縮機20は、ケーシング内に遠心式の単段又は多段の羽根車23を内蔵し(図示は単段)、その吸込み側にガイドベーン25を設置し、また電動機21と羽根車23の間に歯車機構等からなる増速装置を設置して構成されている。遠心式の羽根車23の吸い込み側は、軸方向に向いており、冷媒ガスを軸方向に吸い込む。
ターボ圧縮機20は、ガイドベーン25の開度があまり小さくない範囲では、発生するヘッドの低下を生じさせることなく、吸い込む冷媒ガスの体積流量を調節することができる。したがって後述のサージング現象を抑えながら、冷凍容量を増減することができる。
但し、ガイドベーン開度が小さくなると、吸い込みガスを希薄化して、流入冷媒ガスの質量流量を調節するダンパ制御に近くなる。言い換えれば、ターボ圧縮機20は吸込みガイドベーン25が全開の状態で所定の吸込み能力及び仕事が得られるように設計するものであるから、吸込みガイドベーン25によって吸込み能力が減少する方向に動作すれば当然ターボ圧縮機20の効率は設計状態の運転に比較して低下し、この結果ターボ冷凍機101の省エネルギー運転の効果は低下する。
ターボ圧縮機20の吐出管は凝縮器30に接続され、ターボ圧縮機20の吸込み管は蒸発器10に接続されている。なお低圧側圧力検出器P1は蒸発器10に設置する代りにターボ圧縮機20の吸込み側(吸込み管)に設置してその吸込み圧力を検出するようにしても良い。また高圧側圧力検出器P2は凝縮器30に設置する代わりにターボ圧縮機20の吐出側(吐出管)に設置してその吐出圧力を検出するようにしてもよい。
次に、回転速度SPによる冷凍容量制御について説明する。ターボ圧縮機20の発生するヘッドHと羽根車23の吸込ガスの体積流量との関係を示す、性能曲線(HVカーブ)(不図示)においては、ヘッドHは羽根車23の回転速度SPの2乗に比例し、体積Vは回転速度SPに比例する。一方ターボ冷凍機101では、蒸発器10の蒸発温度(あるいは蒸発圧力)と凝縮器30の凝縮温度(あるいは凝縮圧力)で決まる必要ヘッドがある。したがって、ターボ圧縮機20が発生するヘッドHが前記必要ヘッド以下になるとサージング現象が起きる。そのヘッドHに対応する回転速度以下にターボ圧縮機20の回転速度を下げることはできない。ここでは、この回転速度を「最低回転速度」と呼ぶことにする。
冷凍機制御器70−1は、前記冷水温度検出器13が検出した冷水出口温度TLを表わす冷水出口温度信号S1と、低圧側圧力検出器P1が検出した低圧側圧力PLを表わす低圧側圧力信号S7と、高圧側圧力検出器P2が検出した高圧側圧力PHを表わす高圧側圧力信号S8と、ガイドベーン開度GVを表わすガイドベーン開度信号S3を入力し、これらの検出信号に基づいてインバータ80に速度指令信号(インバータ回転速度調節信号)C1を出力するとともに、ガイドベーン25にその開閉用のガイドベーン開度調節信号C2を出力する。冷凍機制御器70−1の詳細は後述する。
なお、後述の設定回転速度演算器では、蒸発器10の運転条件としての低圧側圧力信号S7(PL)と凝縮器30の運転条件としての高圧側圧力信号S8(PH)とに基づいて設定回転速度SETSPを演算するが、その代わりにやはり蒸発器10の運転条件としての冷水出口温度TLを表わす冷水出口温度信号S1と冷却水温度検出器14が検出した、凝縮器30の運転条件としての冷却水入口温度THを表わす冷却水入口温度信号S2とに基づいてもよい。
冷凍機は、上記の最低回転速度以上、かつ、インバータの最大周波数もしくは回転体の危険回転速度等により決定される最大回転速度以下の回転速度で冷凍容量制御を行うことができる。これに、ガイドベーン25の開度GVを調節することによる制御を組み合わせることもできる。
具体的には、冷凍機は回転速度により冷凍容量を制御する「回転速度制御モード(以下、「Nモード」)」と、ベーン開度により冷凍出力(冷凍容量)を制御する「ガイドベーン制御モード(以下、「Vモード」)」との2つのモードを有し、条件によりこの2つのモードを切り替えることがある。この場合、NモードからVモードへの切替は、回転速度が最低回転速度に達した場合に行い、VモードからNモードへの切替は、ベーン開度が最大開度に達したことによるのがよい。
もしくは、冷水温度(冷凍負荷を代表する)に応じて回転速度を調節すると同時に、回転速度の増減に応じてガイドベーン25を開閉することによってもよい。もしくは、冷水温度に応じてベーン開度GVを調節すると同時に、ベーン開度がほぼ最大開度となるように、回転速度を調節してもよい。
言い換えれば、本実施の形態によるターボ冷凍機システムでは、NモードとVモードを切り替え手段により切り替えるが、その代わりに、例えば図2、図3に示すように、制御手段70は、冷凍負荷に応じてガイドベーン25の開度を調節すると共に、可変速駆動機21の回転速度の調節による冷凍機出力の制御を、ガイドベーン25の開度GVの調節に優先して行うものとしてもよい。さらに具体的には、冷凍容量はNモードにより行い、Vモードは直接冷凍容量を制御するのではなく、直接的には回転速度を設定値(典型的には最低回転速度)にするようにガイドベーンの開度GVを調節する。このようにすると、冷凍負荷が十分に大きいときは冷凍容量はNモードによって行われる。そのときは、回転速度は設定値よりも高いので、ガイドベーンの開度GVは全開状態にある。冷凍負荷が小さくなると回転速度は低下して、ついには設定値を下回ろうとする。すると回転速度を設定値に維持しようとVモードが働いて、ガイドベーン開度が閉方向に調節される。このようにして、NモードとVモードは特別の切り替え手段を用いずに事実上切り替わる(モードレス制御と呼ぶこともできる)。
このように構成すると、制御手段70は、可変速駆動機21の回転速度の調節による冷凍機出力の制御を、ガイドベーンの開度GVの調節に優先して行うので、冷凍機の効率を高く維持することができる。
図3のブロック図を参照して、冷水温度に応じて回転速度を制御すると同時に、回転速度の増減に応じてガイドベーンを開閉する場合について、冷凍機制御器70−1の構成と作用を説明する。冷凍機制御器70−1は、第一の制御部としてのインバータ制御装置71を有する。インバータ制御装置71には、冷水出口温度信号S1(TL)が入力される。また冷水出口温度設定値SETTLが設定されている。冷水出口温度設定値SETTLは、信号S6として与えてもよいし、設定ダイヤルやキーボード等から人為的に与えてもよい。インバータ制御装置71からは、インバータ80に向けて、速度指令信号C1が出力される。
冷凍機制御器70−1は、さらに第二の制御部としてのガイドベーン制御装置72を有する。ガイドベーン制御装置72には、電動機21の回転速度SP(信号はS4)、ひいてはターボ圧縮機20の回転速度が入力される。電動機21の回転速度とターボ圧縮機20の回転速度は、定数である増速機の増速比だけの差があるだけで、完全な対応関係にある。したがって、電動機21の回転速度を調節すると言うときは、ターボ圧縮機20の回転速度を調節すると同義である。さらには、インバータ80の周波数を使ってもよい。実質的に電動機21の回転速度に対応するからである。
またガイドベーン制御装置72には、設定回転速度演算器73で演算された設定回転速度SETSPを表わす設定回転速度信号S5が送られる。設定回転速度演算器73には、低圧側圧力信号S7(PL)、高圧側圧力信号S8(PH)及びガイドベーン開度信号S3(GV)が入力する。設定回転速度演算器73は、低圧側圧力信号S7、高圧側圧力信号S8を受信して、最低回転速度を求め設定回転速度SETSPを演算する。また、ガイドベーン開度信号S3(GV)を使って、設定回転速度SETSPを補正する。
ここで、ターボ圧縮機20の回転速度には、下限界値すなわち最低回転速度がある。
図4の線図を参照して、サージング限界線ひいてはある状態における「最低回転速度」を求める方法を説明する。本図は、ガイドベーン25が全開の状態における、冷却水入口温度とターボ圧縮機20の回転速度(インバータ周波数)%の関係、及び冷却水入口温度とサージング限界の仕事の関係を示す図である。
本発明の実施の形態では、第二の制御部としてのガイドベーン制御装置72の設定回転速度信号SETSPは、限界回転速度(最低回転速度)に基づいて設定回転速度演算器73により演算され決められる。この境界である限界回転速度は、先ず第一に本実施の形態では蒸発器10内の圧力(又はターボ圧縮機20の吸込み圧力)(圧力信号はS7(PL))、及び凝縮器30内の圧力(又はターボ圧縮機20の吐出圧力)(圧力信号はS8(PH))の二点の情報だけで決定される。即ちターボ圧縮機20の仕事を等温仕事で表示すれば低圧側、高圧側の圧力をそれぞれPL、PHとして仕事Wcは、
Wc=PL×V1×Log(PH/PL) …式(1)
となる。ここでV1はターボ圧縮機吸込みの比容積であり、PL×V1の値はターボ冷凍機101の起動時を除き運転中にほとんど変化はない。即ちPL×V1はターボ冷凍機101の仕様が決まれば常数として設定可能であり、ターボ圧縮機20の限界仕事は低圧側と高圧側の二点の圧力PL、PHを検出すれば算出可能である。
これによってターボ圧縮機101の推奨回転速度及びこれに対応するサージング限界線が冷却水の温度(この例では冷却水入口温度TH)によって単純に決定できることが分かる。図4で示す直線関係は、圧力PL、PHの他に冷却水温度THを検知すればこれによってターボ冷凍機101の安定運転領域を決定できることを示している。
図3に戻って冷凍機制御器70−1による制御を説明する。以上のことからこのターボ冷凍機101において、冷凍負荷の増減を判断して冷凍容量制御を行う手法として、冷水温度検出器13によって冷水出口温度TLを検出し、その冷水出口温度信号S1を冷凍機制御器70−1のインバータ制御装置71に送る。この温度TLが目標値SETTLになるように、回転速度SPを調節する。
図3を参照して説明を続ける。ターボ圧縮機20のサージングを避けるための制御手段として、本発明の実施の形態のターボ冷凍機101は、第二の制御部であるガイドベーン制御装置72を備える。ガイドベーン制御装置72は、電動機21の、ひいてはターボ圧縮機20の回転速度SPを前記最低回転速度よりも低下させないように、ガイドベーン25の開度GVを調節する。
ガイドベーン制御装置72とインバータ制御装置71の関係をさらに説明する。ある回転速度SPで冷凍容量(冷凍出力)と冷凍負荷とが一致しているが、その回転速度SPが設定回転速度SETSPを下回っているとすると、ガイドベーン制御装置72が働いてベーン開度GVを下げる。すると、同一の回転速度ではターボ冷凍機の冷凍容量が冷凍負荷よりも小さくなってしまうので、インバータ制御装置71が回転速度SPを上げる方向に「負荷制御」が働く。これにより回転速度SPひいては速度比は上昇する。したがって、ベーン開度GVを操作することで、結局速度比を制御できることとなる。
設定回転速度演算器73は、先に図4を参照して説明したように、低圧側圧力信号S7(PL)、高圧側圧力信号S8(PH)を受信して、最低回転速度を求める。最低回転速度は、低圧側圧力PLと高圧側圧力PHでほぼ決めることができるが、先に説明したように、ガイドベーン25が全開から閉方向に動くにつれて、わずかながら高くなる。そこで、ガイドベーン開度信号S3(GV)を受信して、最低回転速度を補正するとよい。
設定回転速度SETSPは、求められた最低回転速度に余裕を持たせた値とするとよい。
このシステムにおいては、回転速度SPが設定回転速度SETSPよりも十分に高いときは、インバータ制御装置71が冷凍容量制御をしている。ガイドベーン制御装置72も稼働状態にあるが、回転速度SPが設定回転速度SETSPよりも十分に高いので、これは回転速度SPと設定回転速度SETSPとの偏差がプラスであり続けることを意味し、ガイドベーン25を開く方向の制御信号C2が継続的に出力される。そのため、ガイドベーン25は全開となり、事実上回転速度制御だけが働いていることと同じになり、回転速度制御部71により冷凍容量が制御される状態が続く。
以上の実施の形態では、設定回転速度演算器73には、低圧側圧力信号S7(PL)と高圧側圧力信号S8(PH)とを入力する場合で説明したが、それぞれ蒸発器10の蒸発温度信号と凝縮器30の凝縮温度信号を入力してもよい。また冷水出口温度信号S1(TL)と冷却水入口温度信号S2(TH)をそれぞれ入力してもよい。厳密に言えば、冷水出口温度TLと冷却水入口温度THでは、サージング限界が実際の限界から多少ずれるが、蒸発器10と凝縮器30の蒸発圧力・凝縮圧力、あるいは蒸発温度・凝縮温度の検出器を省略でき、装置が簡易になる。この場合、冷凍容量を検出するために用いる冷水出口温度検出器13を設定回転速度演算に兼用することができる。
最低回転速度を、蒸発器10の蒸発圧力と凝縮器30との凝縮圧力により演算するのがよいとしたが、具体的には、あらかじめ冷媒の特性により、いくつかの圧力差に応じた最低回転速度を計算して冷凍機制御器70−1の記憶部に記憶させておき、演算された圧力比における最低回転速度を記憶部から取り出して演算するとよい。なお、このときにベーン開度GVによりこの最低回転速度に補正をかけることとしてもよい点は既に説明した通りである。すなわち、ベーン開度GVが小さい場合にはサージングが発生しやすくなるので、ベーン開度GVに応じて、あらかじめ最低回転速度を高くしてもよい。
以上のように構成されるターボ冷凍機101、102・・・を備える、ターボ冷凍機システムの台数制御器76は、回転速度SP、冷水温度TL、ガイドベーン開度GVなどの情報により、ターボ冷凍機の運転台数を増減する制御を行う。
運転台数を増加する基準となる回転速度差閾値を定めるための基準回転速度は、以上で設定回転速度SETSPとして説明した最低回転速度とする。ガイドベーン開度で補正する場合は、その補正した最低回転速度とし、安全のため余裕を持たせた場合は、その余裕を持たせた最低回転速度とするのが好ましい。
ここでは、各ターボ冷凍機の回転速度特性、ベーン開度特性が所定の範囲で同一であって、各ターボ冷凍機はそれぞれ制御装置としての冷凍機制御器70−1〜70−5(図1参照)を備えるものとして説明する。また典型的には定格冷凍容量も同一である。ガイドベーン開度GV、回転速度SP、低圧側圧力(蒸発圧力)PL、高圧側圧力(凝縮圧力)PH、回転速度SPは、ターボ冷凍機101、102・・・のうち1台(ここでは101)を代表の冷凍機としてその値を使う。設定回転速度SETSP、冷水出口設定温度SETTLは共通の値とする。そしてターボ冷凍機システム100は、台数制御部としての台数制御器76(図1)を備える。なおターボ冷凍機システムは総合の制御装置(制御手段)70を備え、各冷凍機の冷凍機制御器70−1、70−2他と台数制御器76を含むものとして構成してもよい。設定回転速度SETSPは、冷凍機制御器70−1、70−2他において演算し、台数制御器76へと伝送してもよく、圧力等設定回転速度SETSPの演算に必要な物理値を伝送し、台数制御器76において演算することとしてもよい。なお、近年の冷凍機制御器(いわゆるマイコン制御盤)では、いわゆる盤間通信等を使用することで多数の物理値を随意にかつ実時間で伝送することが可能である。
ここで、代表の冷凍機101は1台運転の際に最後に残るべき冷凍機である。本発明の実施の形態では、典型的には最低回転速度は各冷凍機でほぼ同一となるが、設計上の要件等から同一とならないときは、少なくとも代表の冷凍機は、全冷凍機のうちで最低回転速度が最高となり得るものを選択する。このようにすれば他の冷凍機がガイドベーン制御に入る前に台数を減らすことができ高い効率運転を確保できる。しかしながら、代表の冷凍機は、全冷凍機のうちで最低回転速度が最低となり得るものを選択してもよい。そのときは、他の冷凍機はある程度ガイドベーンが閉の運転に入っているが、ガイドベーンの開度が全開付近では効率の低下はあまりないので実質的な損失は大きくない。そして冷凍機の発停頻度をある程度抑えることができる。
また別の実施の形態では、運転中のターボ圧縮機のうち回転速度SPが最高のものを代表として用いてもよい。このようにすると、運転台数の増加のタイミングを早めにすることができ、効率の高い運転に早めに切り替えることができる。一方、回転速度SPが最低のものを代表として用いてもよい。この場合は、運転台数を増加しても基準回転速度に対して上方向に余裕が残るので、台数の増減頻度を抑えることができる。
なお、冷凍機の台数制御では、冷凍機各ユニットの運転時間を平均化する目的で、ユニット毎の優先順位をあらかじめ定めず、運転時間の長いものを優先的に停止することがある。このような場合、もっとも最後に停止されるであろう、運転時間のもっとも短い冷凍機を代表の冷凍機とするのが好ましい。
各ターボ冷凍機の特性は同一であるものとした。定格冷凍容量も同一とするのが好ましいが、異なっても差し支えない。その場合は、冷水供給量を各定格冷凍容量に比例した量とする。そのようにすれば、各冷凍機が個別の制御器を備える場合であっても、冷水出口温度は各冷凍機で同一又はほぼ同一となるからである。但し、各冷凍機の冷水出口温度には冷水低温リミットをかけて、それ以下になりそうな場合は、回転速度やガイドベーンの開度に余裕があっても、冷凍容量を増やさないようにするとよい。各冷凍機の僅かな特性の差で冷水出口温度が下がり過ぎて凍結するのを防止するためである。
このように構成されたターボ冷凍機システムでは、原則としてターボ冷凍機の運転台数の増加は、回転速度差に基づいて行うが、冷水の出口温度TLが目標値を上回り、規定時間が経過した場合、台数制御器76により、ターボ冷凍機101、102・・・の運転台数を1台ずつ増やすこともある。このような制御は、特に冷却水温度の高い場合に、空調負荷が運転中の冷凍機の負荷を上回る状況下で行われる。このような条件下では、回転速度が最高回転速度に近く、回転速度差が一定以上には大きくならないためである。同様に、回転速度が最高回転速度で規定時間経過した場合に運転台数を増やすこととしてもよい。また、ターボ冷凍機のガイドベーン開度GVが規定値を下回り、規定時間が経過した場合に、ターボ冷凍機の運転台数を1台ずつ減らすこととする。これは、前述のように冷水の入口温度や出入り口の温度差、あるいは演算される推定の冷水負荷熱量等により行ってもよい。
ただし、従来はガイドベーン開度GVが規定値を上回った場合に、ターボ冷凍機の運転台数を増やすことがあったが、本発明ではそのような制御は行わない。なぜなら、従来(特に固定速機)ではガイドベーン開度が大きいことは、すなわち負荷が冷凍機出力の最大値に近いことを意味していたが、本発明を含む回転速度制御SPにより負荷制御が行われる場合には、ガイドベーン開度が最大となった場合でも、その後回転速度の増速により出力を増加させる余地があるので、冷凍機出力の不足を意味しないからである。また、ガイドベーン開度GVが最大開度で固定されるので、そのほうが省エネルギー上有利であるからである。これに代えて、本発明では、先に述べた回転速度差に基づいて、回転速度差が閾値を上回った場合に、冷凍機の運転台数を1台づつ増やす。
図5の「回転速度差対COP」と図6の「出力比対回転速度差」を参照して、台数制御が適切に行われる理由を説明する。発明者らは、まず、ターボ冷凍機の回転速度差(実際の運転回転速度−最低回転速度)と、ターボ冷凍機の成績係数COPとの相関を、実際のターボ冷凍機の運転データから調査した。図5はその結果を示すものである。本図では、横軸に回転速度差をとり、縦軸に、同一の冷却水温度における、ターボ冷凍機の最高成績係数に対する、実際の運転点の成績係数の比をとり、運転データをプロットした。ただし速度差は、一般化のためにターボ圧縮機の最大回転速度に対する比で表す。
その結果、図5に示すように興味深い事実が明らかとなった。すなわち、ターボ冷凍機の効率と、回転速度差とには、回転速度比が1(回転速度差はゼロ%)よりも大きい場合には強い相関があり、本例では、これは回転速度差が最大回転速度の10%程度までは大きな変化はないものの、それより増加するに従って徐々に下がり、25%程度で効率は80%程度まで低下する。なお、回転速度比が1近辺で、成績係数が大きく低下しているのは、ここでガイドベーン制御の領域に入るためである。
次に、図6を参照して、回転速度差と冷凍出力との相関について説明する。本図は回転速度差と冷凍出力との相関を調べた結果を示すものである。本図では、縦軸に回転速度差(回転速度比)をとり、横軸に、同じ冷却水温度における、ベーン全開で最低回転速度における冷凍出力と、実際の冷凍出力との比をとった。これによると、冷凍出力の増加に合わせて速度比は単調に増加し、本例では、冷凍出力が、最低回転速度における出力の2倍(2/1倍)となると、速度差が23%程度となり、1.5倍(3/2倍)であれば、13%程度、1.3倍(4/3倍)であれば、10%程度となることがわかる。
図7を参照して台数制御部としての台数制御器76の構成と作用を説明する。台数制御器76は、設定回転速度SETSP(信号はS5)、回転速度SP(信号はS4)、ガイドベーン開度GV(信号はS3)の信号を受信する。
台数制御器76は、設定回転速度SETSPと回転速度SPから回転速度差DSP(前述のように最大速度に対する比であってもよい)を演算する回転速度差演算部76−1を備える。また回転速度差閾値を設定する、回転速度差閾値設定部76−2を備える。ここには、台数増減の基準となる閾値を記憶させておく。閾値は、運転台数に応じた値である。図6で説明した例では、同一特性の冷凍機を備えるターボ冷凍機システムで、1台運転の場合の回転速度差(比)は23%であり、回転速度が上昇し、この回転速度差になったところで1台を始動する。すると2台運転となり、1台当たりの冷凍出力は始動前の半分となり、回転速度は基準回転速度である最低回転速度となる。また2台運転の場合の回転速度差(比)は13%であり、さらに冷凍負荷が増えて回転速度が上昇し、この回転速度差になったところでさらに1台を始動する。すると3台運転となり、1台当たりの冷凍出力は始動前の2/3となり、回転速度は基準回転速度である最低回転速度となる。同様に、3台で運転中であれば10%を超えたところで4台とすると、最適に近くなることを示している。同一特性でない、例えば冷凍容量の小さい冷凍機が含まれているときは、閾値をそれに応じて設定する(回転速度差(比)が小さくなる)。
ここで回転速度差閾値は、そこまで上昇したときにターボ圧縮機の運転台数を増やす基準となる回転速度である。第一の場合は、そこで運転台数を増やしてもターボ圧縮機の回転速度が、少なくとも基準回転速度を下回らないような回転速度差又は速度比として定められる。さらに言えば、そこで運転台数を増やしたとき回転速度が基準回転速度を下回らず、且つ基準回転速度近辺(近辺とはターボ圧縮機の効率が実用上問題とならない程度に高く維持できる範囲で基準回転速度に近いことを言う)になるような回転速度差又は速度比である。
なお後述のように、ガイドベーン開度にガイドベーン開度閾値を設定して、その開度以上であればガイドベーン制御を行うような運転の場合がある。その場合は、運転台数を増やす基準である回転速度差閾値は、第二の場合として、そこで運転台数を増やしたとき1台当たりの冷凍出力が減ってガイドベーン制御に入ったとき、ガイドベーン開度が前記ガイドベーン開度閾値を下回らないような回転速度差又は速度比である。これを前記の場合と区別するときは、第二の回転速度差閾値と呼ぶことがある。この場合は、ターボ圧縮機の効率が、ガイドベーン開度閾値での運転と第二の回転速度差閾値での運転でほぼ同一となるように両者を選ぶとよい。両者には適切な余裕を持たせて台数の増加と減少が頻繁に行われないようにするとよい。
台数制御器76は、回転速度差・閾値比較部76−3を備え、回転速度差演算部76−1から受信する回転速度差と回転速度差閾値設定部76−2から受信する閾値とを比較して、結果をターボ圧縮機発停部76−4に送る。ターボ圧縮機発停部76−4は、そのときの回転速度差が運転台数に応じた閾値に達したと判断したときにターボ圧縮機を1台ずつ始動する。
同様に、N台運転中である場合に、運転台数をN+1台に切り替える速度差を、出力比が((N+1)/N)となる回転速度差に基づいて、あらかじめ回転速度差閾値設定部76−2に保存しておけば、回転速度の差という非常にシンプルなパラメータを監視し、これと比較して運転台数を増加させることで、運転台数を最適に保つことができる。また、このような関係式は、実測、シミュレーション、あるいは物理モデルによりあらかじめ得ておくことで、切り替えるべき基準値は比較的容易に決定でき、また、一度決定してしまえば同一の設計による羽根車に広く適用できる。
なお増減する運転台数は1台ずつに限らず、2台又は3台を同時に増減してもよい。特にNが大のときは、同時に発停する運転台数を2台またはそれ以上とするとよい。Nが大のときは、1台に対応する回転速度差が小さくなり、微妙な発停制御が困難となる場合がある。また発停頻度が高くなり過ぎるおそれがある。例えば、先に説明したように図6によれば、回転速度差が13%以上になったところで2台運転から3台運転に運転台数を増やす。1台ずつの増加を徹底すると、3台から台数を増やすのは、回転速度差が10%のときであり、3台から4台にすることになる。それを3台から増加させる回転速度差を17%に設定して、10%に達しても台数を増加させず、17%まで回転速度差が高くなったところで、3台から5台にする。
もちろん、制御にはある程度の冗長性が必要なので、制御を安定化するために、設定値は理論上の最適値から増減するとよい。また、それほど厳密さを求めないのであれば、すべてのNについて同一の基準値(回転速度差閾値)で、切り替えることとしてもよい。例えばターボ冷凍機システムを構成するターボ冷凍機の台数が、3台の場合に、2台から3台にきりかえるのを、1台から2台にきりかえる場合と同じ回転速度差(比)23%で切り替えるようにしてもよい。但しこのばあいは、2台から3台にきりかえた際のターボ冷凍機の回転速度は目標とする最低回転速度よりも多少高いのでCOPの点では多少不利となるが、台数増減の操作が簡便となる。すなわち、2台、3台の場合の基準回転速度を1台、2台の場合と同一の23%とするのであるが、これも運転台数に応じて基準回転速度を設定する一形態である。なお、本実施の形態では、回転速度差演算部76−1を、台数制御器76に設けているが、これを個々の冷凍機制御器70−1〜4に設け、冷凍機制御器70から台数制御器76に、回転速度差DSPを伝送することとしてもよい。
以上説明したように本実施の形態では、台数制御器76は典型的には、運転台数を増加した後の回転速度SPが基準回転速度としての最低回転速度(設定回転速度SETSP)になるように、回転速度SPと最低回転速度との差又は比に基づいて、ターボ圧縮機20の運転台数を増加する。最低回転速度になるようにとは、最低回転速度またはできるだけ最低回転速度に近い回転速度とすることを言う。効率を高く維持できる範囲で偏差があってもよい。さらに言えば、最低回転速度を下回らない範囲でほぼ最低回転速度にするのが好ましい。
以上に述べたように、回転速度制御を行うターボ冷凍機であっても、最低回転速度を基準回転速度として使って、これと実際の回転速度との差、あるいはそれに類するパラメータに基づいて、運転台数を増やすことで、最適な運転台数とすることができる。
台数制御器76は、さらにガイドベーン開度GVに基づいてターボ冷凍機の停止を判断する、ガイドベーン開度判定部76−5を備える。ガイドベーン開度判定部76−5は、ガイドベーン開度GVの信号を受信して、ガイドベーンが閉方向にあるか否かを判定し、ガイドベーン開度閾値に達した、あるいはこれを超えて閉になったと判断すると、その結果をターボ圧縮機発停部76−4に送る。ターボ圧縮機発停部76−4は、その信号を受信すると冷凍機を1台停止する。開度閾値は、1台停止した後の冷凍負荷が、十分に小さいことが推定できる開度とすることがよい。具体的には、N台運転中に運転台数を(N−1)台とした後、ただちに(N−1)台からN台へと変更すべき負荷とならないようにする。これは、特に定速で運転する冷凍機を用いた台数制御の方法であって、運転台数を減少させる場合の判断条件と同じであり、これと同様に考慮すればよい。典型的には、最低回転速度におけるベーン最大開度における冷凍出力に対して、冷凍出力が(N−1)/Nより低い冷凍出力に対応するガイドベーン開度以下とするのがよい。このようにすると、運転台数を(N−1)台としたときに、ベーン開度が全開に近くなり、効率が良好かつ、切り替え直後に負荷が増減しても台数変更が必要となりにくい。望ましくは、切り替え直前の運転台数に応じてこの閾値を最適に定めるべきであるが、共通の固定値によっても差し支えない。この場合、冷凍出力が最大開度におけるものの1/2となる開度以下(運転台数を2台から1台へと変更する場合の最適値)とするのがよい。なお、実際の設定値は冷凍機の特性により大きく異なるが、経験的にはガイドベーン開度GVが30〜50%程度に低下した場合とすることがよい。
なお、本発明では別の方法として、下記のような方法もある。たとえば、回転速度差による1台から2台運転への切り替え直前には運転回転速度がかなり高くなる。そのときの運転状態は、ターボ圧縮機の最高効率点からはずれたものとなり、むしろガイドベーン制御よりも効率が悪くなることがある。そのような場合は、回転速度差閾値に余裕をもたせることなく逆に多少低め(例えば15%)に設定し、冷凍負荷の増減を示す前記指標をガイドベーン開度60%に設定する。このようにすると、2台運転中に冷凍負荷が低下し、運転回転速度が下限回転速度である基準回転速度にまで落ち、さらにガイドベーン開度が全開から60%まで閉側に動いたところで1台が停止され2台運転から1台運転になる。その運転中のターボ圧縮機のガイドベーンは60%開度から全開となり、その回転速度は基準回転速度から上昇して例えば12%となる。この回転速度は、回転速度差閾値15%より低いので直ちに2台運転に切り替えられることはない。ここで前記指標としてのガイドベーン開度は60%と例示したが、実際には、そこで運転台数を減らしても、運転中のターボ圧縮機の回転速度が回転速度差閾値(第二の回転速度差閾値)に達しないように多少の余裕を持たせて定めるものである。さらに具体的に言えば、第二の回転速度差閾値で運転中(ガイドベーン開度GVは全開)の冷凍出力に対して、(N−1)/Nより低い冷凍出力に対応するガイドベーン開度とする。
なお、例えば図6の例で言えば、2台運転と3台運転場合のように回転速度差閾値が13%の場合、あるいは3台と4台運転のように回転速度差閾値が10%の場合などは、ターボ圧縮機の最高効率点からはずれるにしてもその程度が低いので、ガイドベーンはできるだけ開けて、回転速度制御に依存してもよい。そのときは、ターボ圧縮機の運転台数を増やすのは、そこで増やしても運転回転速度が基準回転速度まで落ちないような余裕をもった回転速度差閾値に基づくものとする。一方、運転台数を減らすのは基準回転速度に基づいて(ここまで低下したことを検出して)、あるいはガイドベーン制御に入ったことを検出して行うものとするとよい。
なお上の例で1台から2台への切り替えの回転速度差閾値を、2台から3台への切り替えの回転速度差閾値と同一(上の例では13%)としてもよい。そのときは、2台から1台に運転台数を減らす前記指標としてのガイドベーン開度は上の例で言えば60%よりも低め例えば50%にする。
ターボ圧縮機発停部76−4は、各冷凍機に発停信号S9を送信し、冷凍機を1台ずつ始動又は停止する。
本実施の形態の変形例として、例えば図7(b)に示すように、台数制御部76は、運転時間記録部76−6と運転時間比較部76−7を備えてもよい。図7では、変更された部分のみを抽出して示している。運転時間記録部76−6は、複数のターボ圧縮機20を構成する各ターボ圧縮機20の運転時間を記録する。運転時間比較部76−7は、記録された運転時間同士を比較して起動すべきターボ圧縮機を選択する。本変形例では、運転時間比較部76−7は、運転台数を増加する際には、記録された運転時間の最も短いターボ圧縮機を起動すべきターボ圧縮機として選択する。このようにして、運転時間の短い順に起動される。運転台数を減少する際には、記録された運転時間の最も長いターボ圧縮機を停止すべきターボ圧縮機として選択する。このようにして、運転時間の長い順に停止される。このように構成すると、各ターボ圧縮機の運転時間を平均化することができる。
以上、第一の実施の形態では、代表の冷凍機の回転速度等を採用するものとしたが、それに限らない。複数のターボ圧縮機の回転速度のうち、2台以上の所定の台数の(あるいは全ての)回転速度が閾値の回転速度を超えた(達した)ところで増やしてもよい。また台数を増やす場合については、ガイドベーン開度が閉方向に移動し始めたところで判断する他、2台以上の所定の台数の(あるいは全ての)ターボ圧縮機の回転速度が下限のリミットの最低回転速度に達したところで減らすようにしてもよい。その際、ターボ圧縮機には最低回転速度に下限のリミットをかけるが、さらに取り得る最高回転速度に上限のリミットをかけるとよい。
冷凍機の運転台数の減少は、以上のガイドベーン開度による他、1台当たりの冷凍負荷が基準値を下回ったか否かに基づいても行うのが好ましい。冷凍負荷は、負荷そのものを実測してもよいし、冷凍機の冷水出入り口温度を検出し、その差により演算してもよい。そして、実測した冷凍負荷が基準値をした回ったときは、あるいは冷水出入り口温度差が基準値を下回ったときは、運転台数を減らす。冷水の凍結防止のためである。
以上、第一の実施の形態では、制御装置70−1、70−2他、インバータ80−1、80−2他は、各ターボ冷凍機が個別に備える場合で説明したが、それに限らない。変形例として、全ての冷凍機につき共通の制御装置を備えるものとすることもできる。
共通の制御装置を備える場合、冷水温度TLは全てのターボ冷凍機101、102・・・の冷水が合流した後の温度とし、冷却水入口温度THも、共通の供給源の冷却水温度とし、各電動機も共通のインバータで回転速度を指定するものとするが、冷水温度は凍結しないように冷凍機毎に最低温度にリミットをかける。また回転速度にも冷凍機毎に最低回転速度にリミットをかけるようにしてもよい。
この場合、運転台数の増加は、共通のインバータで回転数制御をしているので、その回転速度が基準回転速度(又は閾値速度)になったところで増加すればよい。
次に、図8を参照して、第二の実施の形態のターボ冷凍機システム200を説明する。本実施の形態は、共通の蒸発器210と凝縮器230に2台以上(2台の場合を図示)のターボ圧縮機220−1、220−2を搭載したターボ冷凍機システムである。ターボ圧縮機220−1、220−2には、それぞれ駆動機である電動機221−1、221−2が連結されている。本実施の形態では、第一の実施の形態の変形例として説明した冷凍機システムと同様に、共通の1台のインバータ81に、遮断器81aを介して電動機221−1、221−2が接続されている。圧縮機220−1、220−2の吐き出しには、それぞれ仕切り弁220−1a、220−2aが装備されており、遮断器81aと仕切り弁220−1a、220−2aとを操作することで、2台の圧縮機220−1、220−2のいずれか一方のみを運転することができる。
このように、ターボ圧縮機220−1、220−2及び駆動機である電動機221−1、221−2が複数で、その他の構成部品、特に蒸発器、凝縮器、インバータ81を共通とする冷凍機であっても、前記した実施の形態と同様に考えればよい。すなわち、冷凍機の運転停止を、すなわち圧縮機の運転停止と考えれば、同様である。この場合は熱交換器である蒸発器と凝縮器の伝熱面積の全体を、ターボ圧縮機の運転台数が減ったときでも利用できるので成績係数の点から有利である。またインバータ等の大型構成要素も共通化できるので、装置の簡素化の観点から利点がある。
図9を参照して、第三の実施の形態を説明する。本実施の形態のターボ冷凍機システム300は、複数(2つの場合を図示)の冷凍サイクル301、302の蒸発器310−1、310−2と凝縮器330−1、330−2とを、それぞれ冷水および冷却水の流路で直列に連絡した、いわゆる多重(二重の場合を図示)冷凍サイクルの冷凍機システムである。
ターボ冷凍機システム300では、第一の冷凍サイクル301は、蒸発器310−1、ターボ圧縮機320−1(駆動の電動機321−1)、凝縮器330−1を備える。同様に、第二の冷凍サイクル302は、蒸発器310−2、ターボ圧縮機320−2(駆動の電動機321−2)、凝縮器330−2を備える。冷水流路は蒸発器310−2を上流側とし、蒸発器310−2から蒸発器310−1にこの順に直列に接続される。冷却水流路は凝縮器330−1を上流側とし、凝縮器330−1から凝縮器330−2にこの順に直列に接続される。
いいかえれば、冷水の流路に沿って蒸発温度の高い蒸発器から低い蒸発器の順にならべたとき、それぞれの蒸発器に組合わさる凝縮器は冷却水の流路に沿って凝縮温度が高い凝縮器から低い凝縮器を順に並べることする。
これは、一台の冷凍機と同様な冷凍機システムとして扱われるが、先の実施の形態と同様に、2つのターボ冷凍機の組合せと考えて制御すればよい。やや異なるのは、二重冷凍サイクルでは、ターボ圧縮機が2台運転されている場合にはそれぞれの冷凍サイクルにおいて蒸発温度と凝縮温度とが有利な側に変化するので、1台運転に比べてさらに効率が向上することである。従って、1台運転から2台運転へと切り替える回転速度差等の値は、実際の性能の向上に比べて、小さめ(早め)となる。それ以外には、台数の切り替えに関しては特段の考慮をする必要はない。
以上の制御方式によれば、ごく単純なパラメータと設定値に基づいて、冷凍機もしくは冷凍機の圧縮機の運転台数を適切に制御することが可能となる。