JP5513817B2 - 医療用ドレープ - Google Patents

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Description

本発明は、手術等で利用される医療用ドレープに係わり、特に放射線の被曝の有無を発光により確認することが可能な医療用ドレープに関する。
X線透視下のカテーテル手術では、術者は患者の傍らでX線透視しながらカテーテルを操作するため、放射線発生領域に近づくことが多い。X線源からの直接放射されるX線は直接目で見ることができないだけでなく、副次的に生じる散乱放射線によっても放射線被曝してしまうことから、放射線からの回避行動をとることは非常に難しい。このため、術者等が誤って放射線を被曝してしまうおそれがあった。
そこで術者を放射線被曝から守るために、従来から放射線被曝に対していくつかの警告を出す装置が提案されてきた。例えば、放射線被曝警告装置を搭載したX線透視装置が考えられた。この装置は、放射線発生領域と一致する場所に可視光線が当たるようにするための光学式インジケータ(可視光線照明)をX線透視装置に付加する。また、X線発生領域と一致する場所に赤外線などを当て、それをビデオカメラ等で監視することで、その領域に術者の身体の一部が侵入したときに音響警告を与える。放射線被について前者は、術者に対し視覚的に注意を喚起し、後者は聴覚的に注意を喚起する(特許文献1参照)。
更に、従来から放射線を検出する警報器が種々市販されている。例えば、米国NukAlert社製の携帯型の放射線検出警報器(商品名:NukAlert )がある。この装置は、「放射線モニター&アラームが可能」、「モニタリングは24時間ON状態で寿命10年(バッテリー搭載)」、「人間の生命に危険を及ぼす 1mSV/h〜1000mSV/hあたりのレンジで検出、10段階のアラーム(1mSV/h の場合、約35秒に1回アラームが鳴る;2mSV/h の場合、約30秒に2回アラームが鳴る;500mSV/h以上(最大)の場合、アラーム鳴り続ける)」等の特徴を持っている。
特開2001−112750号公報
しかしながら特許文献1開示の技術では、X線透視装置に予め、X線によって横切られる領域の擬視覚化のための光学式インジケータ手段と、放射線領域中への介入をモニターする光学式モニタリング手段と、放射線領域に侵入した際に音響警告信号を発生する音響警告手段とを付加しておく。したがってこれらを付属していないX線透視装置ではこのような警告はできない。また、放射線は物質を透過するが、光学式インジケータが発する可視光線は殆ど物体を透過しないので、光学式インジケータと術者の身体の一部との間に遮蔽物体があると“手暗がり”の状態が発生し、正しく警告を発することができなくなってしまうという問題点がある。
また、放射線検出警報器では、この放射線検出器に照射された放射線は検出可能であるが、放射線発生領域全体を把握しようとすると、この検出器を空間的に複数設置して測定するしかなく現実的ではないという問題点がある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、新たに放射線検出警報器や放射線検出器を用いることなく、容易に、術者に対して放射線被曝回避のための視覚的警告を与えることのできる医療用ドレープを提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、耐放射線性と弾力性を有する基材シート上に、可視光を反射する金属から成る反射層と、照射するX線の強度に応じて発光輝度の変化する第1の領域と、照射するX線強度によらず、ほぼ一定の輝度となる第2の領域の少なくともどちらか一方から構成されて成り、エネルギーが10eV以上を有するX線励起により可視光を発する発光層と、を有することを特徴とする医療用ドレープが提供される。
本発明によれば、新たに放射線検出警報器や放射線検出器を用いることなく容易に、術者に対して放射線被曝回避のための視覚的警告を与えることができる。
さらに、本発明では、X線透視装置等の変更を不要にできるので低コストで警告を可能にできるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態に係る医療用ドレープの斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る医療用ドレープの断面構造を示す図である。 本発明の実施形態に係る医療用ドレープの量子ドットにおいて、オージェ失活過程を説明する図である。(a)は励起光が紫外線の場合、(b)は励起光がX線の場合である。 CIE標準で規定される波長に対する比視感度を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る医療用ドレープの斜視図である。 本発明の実施形態に係る医療用ドレープの輝度の経時変化を模式的に描いた図である。(a)は、励起光の強度変化、(b)は蛍光輝度の時間変化、(c)は燐光輝度の時間変化を示す。 本発明の第3の実施形態に係る医療用ドレープの斜視図である。 本発明の第3の実施形態に係る医療用ドレープの断面構造を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る医療用ドレープに形成する判定領域形状の変形例を示す図である。
本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。X線透視下でカテーテル手術などの手術を行う場合、衛生的観点から患者を医療用ドレープで覆うことがほとんどである。本実施形態は、放射線で発光する医療用ドレープを示しており、放射線被曝の有無を術者に対して視覚的に、且つ簡便に警告することができる。特に本実施形態においては、使用する放射線として10eV以上のエネルギーを持つX線に適用する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る医療用ドレープの斜視図であり、図2は、この実施形態に係る医療用ドレープの断面構造を示す図である。
図1は、医療用ドレープ11と星印で示す放射線源(X線源)12を示している。X線源12を点光源とすると、放射線は円錐状に広がり、医療用ドレープ11上で円形状の被領域13となる。この実施形態の医療用ドレープ11は、放射線の照射により発光するよう形成されているので、放射線の被領域13は、可視光を発光する。このように医療用ドレープは、本来の医療用ドレープとしての機能の他に、放射線の被の有無を判定できる機能が付加されることとなる。さらに放射線強度は発光部分の輝度に比例するので放射線強度を判別できる。
図2は、図1のA-B線に沿って切断した断面図を示している。本発明の医療ドレープ11は、ドレープの生地となる基材シート21と、その上に可視光線を反射させる反射層22と、さらにその上部に放射線24を受けて可視光線25を発光する発光層23から構成される。
基材シート21は、通常のドレープに用いる衛生上の特性の他に、耐放射線性が要求され、かつ被験者を覆う必要があることから可撓性のある材料が選択される必要がある。例えば、耐放射線性ゴムの薄いシート等が好適である。
反射層22は、発光層23で発光した可視領域の光を反射させるために必要であり、金属から成る反射層を設ける。この反射層22は、可撓性の要求から十分可視光を反射できるならば、出来るだけ薄い厚みの方がよい。反射層22は金属箔から形成され、金属蒸着などの方法で直接基材シート21上に形成することが可能である。反射層22としては可視光を反射する金属材料であれば何でもよいが、蒸着可能で反射率を高くすることができる比較的安価な金属として、例えばアルミニウムを使用する。
ここで蒸着金属としてアルミニウムを用いた場合、反射層22がどの位の厚さになるかを試算してみる。可視光は400[THz]〜750[THz]の周波数を持つ電磁波であり、アルミニウムの導電率σは、40×10[S/m]、また透磁率は、4π×10−7である。可視光の1番長い波長の場合を考えて電磁波の侵入深さ(skin depth)を計算すると、400[THz](赤色)においては、skin depthは約4.0[nm]にしかならないことが分かる。よって余裕を持って10倍の40[nm]の厚みを持たせれば十分反射層として機能することが可能である。このように見積もられた反射層22の厚みは、非常に薄くすることが出来るので上記アルミニウムなどの金属を蒸着した基材シート21は、可撓性に何ら問題を生じないことが分かる。本実施形態では、蒸着によって反射層22を形成する例を示したが、金属箔と基材シート21とを接合するなどの他の方法でも形成可能である。
次に、発光層23は、この反射層22の上に、放射線を励起光とした時に、可視光領域で蛍光を発生する直接遷移型半導体材料からなる量子ドット26を積層することにより形成される(図2(a)に発光層23の拡大図を示す)。量子ドット単体の発光強度は非常に小さいので、可視光25の輝度を目視で確認することが可能なレベルまで積層すればよい。量子ドット26は充填材料27と混合され塗布される。また、可撓性を保持するための溝28は必要に応じて形成される。
量子ドットとは、通常粒子径が数ナノ〜数10ナノメートルの無機化合物からなるナノ粒子のことで、励起光が同じ波長の場合、量子ドットにおいても、形成する化合物材料の組成比率を変えることにより蛍光の波長をコントロールすることができる。さらに量子ドットでは、電子が3次元的に閉じ込められる3次元井戸型ポテンシャル構造になっているので、使用する化合物材料に発光利得がある波長領域では、量子ドットの粒子径を変化させることで、電子のバンドギャップ構造を変化させ、発光する蛍光自体の波長をコントロールできるという著しい特徴がある。
半導体材料を使用した量子ドットとして、CdSe、CdTeなどを使ったものがいち早く実用化されているが、カドミウム(Cd)は特定有害物質であるので、特に医療用ドレープとして使用することは好ましくない。
そこで、医療用ドレープとしてはCdを使わない材料が求められる。例えば、大阪大学、名古屋大学、IDECのグループが開発した、(AgIn)Zn(1−2X)S(銀・インジウム・亜鉛・イオウ)という組成の半導体ナノ粒子がある。この半導体ナノ粒子は光エッチング法で作成しており、波長350[nm]の紫外線光を照射した場合、2〜3[nm]の範囲で粒子径を制御することで、緑色から赤色までの12段階に蛍光を発光させることに成功している。
この量子ドットの量子効率は、波長350nmの紫外線が励起光の場合、0.4と比較的高い量子効率であるが、本実施形態のようにX線励起の場合、励起光のエネルギーが紫外線に比べ非常に大きいため後述するオージェ失活過程が生じ、さらに量子効率を増大させることができる特徴を有する。
図3は、半導体内で起こるオージェ失活過程について説明するための図である。(a)は励起光が紫外線の場合、(b)は励起光がX線の場合である。図3(a)に示すように、紫外線を量子ドットに照射することで価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯にホールが生成されていることを示している。この場合、量子効率の増大はない。
一方、図3(b)の場合では、オージェ失活過程による量子効率の増大が見込まれる。紫外線よりも非常にエネルギーの大きいX線を量子ドットに照射することにより、価電子帯の基底状態である1s軌道から連続帯まで電子が励起される。この時、1s軌道に生じたホールに対して電子が次々と価電子帯の浅い準位に遷移するが、これと同時に、エネルギー保存則により他の電子が次々と価電子帯から伝導帯へ励起されることを示している。これがオージェ失活過程である。
このことから、本発明一例の医療用ドレープでは、量子ドットを使用することで発光効率を著しく増大させることが出来、さらに有害物質を含まない化合物材料を選択して形成することができる。
この量子ドット26自体をそのまま積層することは困難であるので、充填材料27に量子ドット26を形成する半導体ナノ粒子を混合する。さらにこの充填材料27は、反射層22と接合するための足場材料との機能を有する。このときの充填材料27としては、耐放射線性があり且つ可視光領域で透明に近いポリカーボネートなどを使用することが好ましい。
量子ドット26を充填材料27に混合して医療用ドレープ11全体に塗布した場合、塗布厚にもよるが、この医療用ドレープが可撓性を失う可能性がある。そこでこの可撓性を維持するため、医療用ドレープに対して例えば縦横に複数本の溝28を設けておくことも考えられる。このように量子ドット26と充填材料27を積層しない溝28を作成することにより基材シート21の可撓性は確保され、さらに溝28を畳みやすくなるように設けることにより、医療用ドレープ11を清潔に保管、収納することが可能となる。
量子ドット26は、十分な輝度を確保するため積層する必要があるが、以下、その積層厚に関して試算してみることにする。
例えば、非特許文献(「放射線ものがたり」森内和之 著、(株)裳華房、P.191)によれば、「胸部のX線撮影の場合、X線のエネルギーが平均で70keVの単色光子群と仮定すれば5×10〜1.5×10[個/cm]のオーダーのフォトンが照射される」と記述されており、通常、成人の胸部X線撮影の撮影時間は25〜40[msec]であるといわれている。そこで上記文献に示されたフォトン数の平均値を使うと、3.1×1014[個/m・sec]の程度のフォトンが人体に照射されることが分かる。
上記に示した(AgIn)Zn(1−2X)S(銀・インジウム・亜鉛・イオウ)という化合物組成の量子ドットの場合は、量子効率が0.4であるので(3.1×1014)×0.4=1.24×1014[個/m・sec]の程度の蛍光が生じる計算になる(オージェ失活過程は後で考慮する)。
これが立体角4π[sr]に放射することになるので、1.24×1014÷(4π)=0.98×1013[個/sr・m・sec]の蛍光フォトンが、医療用ドレープ11から放射されることになる。
一方、比視感度が最大になる波長が555[nm]の光が立体角当たり1/683[W]のエネルギーを放出するときに1[cd]と定義されている。555[nm]の波長を持つフォトン1個のエネルギーは3.24×10−19[J]であることから、1[cd]の点光源からは0.453×1016[個/sr・sec]のフォトンが放射される計算になる。輝度の単位は[cd/m]であり、例えば高輝度液晶モニターの代表的輝度は500[cd/m]といわれていることから、500[cd/m]の輝度をこの積層した量子ドットで達成しようとすると、500×0.453×1016=2.27×1018[個/sr・m・sec]の蛍光フォトンが必要となることを意味する。
量子ドットを積層した時に、その厚みが非常に薄いので輝度はX線強度に対し線形に増加すると考える。更に反射層による効果を2倍、オージェ失活過程による寄与が1桁以上期待できるので、いま仮に10倍とすると、積層数は(2.27×1018)÷(0.98×1013)÷2÷10=1.16×10となり、これから算出される厚みは、量子ドットの直径を例えば3[nm]として積層数に掛けることにより(3×10−9)×(1.16×10)=34.8[μm]程度で済む計算になる。
即ち、代表的なX線強度で被験者を透視した場合、放射線被の際に十分に視認できる輝度で発光する医療用ドレープを実現できる。
図4は、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)標準で規定される波長に対する比視感度を示すグラフである。横軸が波長、縦軸が比視感度を示している。波長555nmの時、比視感度は1.0となる。また、この図から量子ドットの蛍光色として緑から黄色、波長で言えば500nm〜600nmの範囲内で設定することが効率上好ましい。
また、波長が555[nm]は、黄緑色であるが、緑色は医療現場では血液の色と対照となる色であり、色比視感度が最大であるので、量子ドット26の蛍光波長を555[nm]近傍か、さらに緑色側に設定しても全く構わない。
以上説明したように、実用的な量子ドットの積層厚で、本発明の第1の実施例を実現することは十分可能である。
第1の実施形態の医療用ドレープによれば、放射線を受けて可視光線を発光する構造となっているので、X線透視下で行われる手術、例えばカテーテル導入を伴うカテーテル手術などにおいて、不可視な放射線を術者が誤って被曝した場合、医療用ドレープの放射線被領域を発光させることによって術者に警告することが可能となる。さらに、X線透視装置等の変更を不要にできるので低コストで警告を可能にできるという効果を奏する。
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る医療用ドレープの斜視図である。第2の実施形態では、医療用ドレープ11の量子ドット26の積層部分の形状を医療ドレープ11全面ではなく、一部分だけに限定した場合の変形例を示す図である。
第1の実施形態においては発光物質を医療用ドレープ11全面に塗布する場合を示したが、放射線発生領域を視覚的に確認できれば十分なので、第2の実施形態では発光層23を一部分にして視覚パターンによる警告も行う。図5(a)では、医療用ドレープ11の一部を拡大して示す。ここでは発光層23が矩形状51の繰り返しパターンで形成されている。
この形成方法としては、基材シート21上に反射層22を形成し、その後、パターンマスクを用意して、量子ドット26が混合された充填材料27を医療用ドレープ11全体に塗布する。このようにパターンマスクを用意することで、医療用ドレープ11の一部分に発光層23のパターンを形成することができる。
以上述べたように第2の実施形態によれば、発光部分のパターンを作ることにより、医療用ドレープとしての可撓性を向上することが可能となり、且つ、発光色の他にパターン柄により術者に警告を与えることが可能である。
第1および第2の実施形態は、放射線発生の有無を簡易判定することができるだけでなく、放射線強度に比例した輝度の“蛍光”を放射することから、おおよその放射線強度も主観的に簡易判定することが可能である。しかし、人が知覚する輝度は周囲環境の照度などに多大の影響を受けるため、実はあまり定量的な判定ができない。従って第3の実施形態では放射線強度の判定が目視により可能な医療用ドレープを実現する。
<第3の実施形態>
本実施形態では、放射線強度の判定のために燐光という発光プロセスを使用する。まず初めに蛍光と燐光の違いを説明する。量子ドットを構成する直接遷移型半導体の電子が、スピン禁制則に則って励起と失活を行うときに放射されるのが蛍光で、その寿命は数ns〜数μsである。スピン禁制則に違反する失活は全く起こらないとわけではなく、非常に長い間、伝導帯に滞留した後、失活する場合は、燐光と呼ばれ、その寿命は数ms〜数sに及ぶ。一般に、燐光を発生する物質は蓄光材料として知られており、代表的な材料としてはアルミ酸ストロンチウム等がある。また蓄光材料は、輝度は多少下がるものの、着色により発光色を変更することも可能である。
図6は、蛍光、燐光の輝度の時間変化を模式的に描いた図である。図6(a)は、励起光の強度変化を示しており、縦軸はX線強度、横軸は時間を表している。励起光となるX線の強度を大、中、小の3種類とし、それぞれ実線、太線、破線で示す。また励起光の照射時間を0からT1までとする。図6(b)は、図6(a)のX線励起光に対して発光する蛍光物質の輝度の時間変化を示している。蛍光の場合は、その輝度は励起光と比例した時間波形となる。一方、図6(c)は燐光輝度の時間変化を示すが、蛍光とは違い、励起光の強度にほとんどよらず、一定の輝度となる。燐光の場合、励起光がT1以降0となっても、しばらくの間は発光し続けることがわかる。
この燐光の特性を利用すれば、一定時間以上のX線を照射された燐光物質は、X線強度が変化しても輝度が変化しないため、基準の輝度を発する発光体として利用できることが理解できる。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る医療用ドレープの斜視図である。また、図8は、図7のC,D線での断面構造を示す図である。
本実施形態の医療ドレープは、第1の実施形態と同様に、医療用ドレープの生地となる基材シート21と、その上に可視光線を反射させる反射層22と、さらにその上部に放射線を受けて可視光線を発光する発光層23から構成される。
図7(a)の拡大図に示すように、発光層23は励起光の強度に比例して発光する蛍光材料を積層した領域71と、励起光の強度によらず一定の光を発光する燐光材料を積層した領域72とが二重丸のように円形状に隣接した構造に配置されており、この円形構造が繰り返し医療用ドレープ11上に形成されている。この円形構造によって放射線被量の判定を目視にて行うことが可能となる。以下、この円形構造を判定領域73と呼ぶことにする。
通常のX線透視条件で使われる放射線強度では、単位面積当たりのX線フォトン数が単位面積当たりの量子ドット数よりはるかに少なく、且つ蛍光寿命が非常に小さいため、蛍光材料を積層した領域71は、放射線強度に比例して蛍光フォトンを発することが可能である。これにより放射線強度に比例して輝度が変化することができる。
また燐光材料を積層した領域72は、燐光物質の発光波長はその材料で決まってしまうが、蛍光材料を積層した領域71は量子ドットの粒子径を調整することで蛍光波長を制御することができる。
したがって燐光材料を積層した領域72の発光波長と一致するように、蛍光材料を積層する領域71の量子ドット26の粒子径を制御し、さらに或る一定の放射線強度において、蛍光の輝度と燐光の飽和輝度とが一致するように積層厚を制御する。
これにより、或る一定の放射線強度以下では蛍光材料を積層した領域71が燐光材料を積層した領域72より暗く光り、逆にそれ以上のときは、より明るく光ることになり簡単にX線強度を目視にて判定することが可能になる。
この判定領域73は、輝度比較を容易にするために領域71と領域72は近接していることが望ましく、且つ燐光材料を積層した領域72が何処(どちら)であるか一目で判別できるような形状に設計されていることが好ましい。即ち、領域71と領域72は異なる形状であることが好ましい。また、図8では判定領域73以外の場所に、蛍光材料からなる発光層を設けているが、判定領域73だけで十分警告を与えられる場合は設けなくとも構わない。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る医療用ドレープに形成する判定領域73の形状変形例を示す図である。図9(a)は、上述した円形のパターンであり、(b)は矩形のパターンである。図9(b)では燐光で発光する領域91と、蛍光で発光する領域92からなり、燐光材料を積層した領域がどちらであるかを識別するため、この2つの形状は同じでないものを採用する。これら判定領域73の形状変形例は種々考えることが可能であるが、同形でなく、点対称でも線対称でもない形状であることがX線強度の識別を容易にするという点で好ましい。
第3の実施形態によれば、所定の基準レベルの放射線強度より多いか少ないかを発光輝度により判定できる領域を医療用ドレープの一部に設けることによって、放射線強度が目視により判定できる効果を有する。
本発明による医療用ドレープによれば、X線透視下で行われる手術、例えばカテーテル導入を伴うカテーテル手術などにおいて被検者に覆うために使用している医療用ドレープに、放射線照射領域を発光させることによって警告することにより、不可視な放射線を術者が誤って被曝するのを防止できる。
また、この医療用ドレープはそれ自身の光により警告を行うので、手術器具等の遮蔽による放射線被爆の見落としも減らすことができる。さらにX線透視装置等を変更する必要がないので低コストで警告を可能にできるという効果を奏する。
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。本発明の技術思想を用いる限り、これらの変形例も本発明に含まれる。
11…医療用ドレープ、12…X線源、21…基材シート、22…反射層、23…発光層、24…放射線、25…可視光線、26…量子ドット、27…充填材料、28…溝、73…判定領域。

Claims (4)

  1. 耐放射線性と弾力性を有する基材シート上に、
    可視光を反射する金属から成る反射層と、
    照射するX線の強度に応じて発光輝度の変化する第1の領域と、照射するX線強度によらず、ほぼ一定の輝度となる第2の領域の少なくともどちらか一方から構成されて成り、エネルギーが10eV以上を有するX線励起により可視光を発する発光層と、
    を有することを特徴とする医療用ドレープ。
  2. 前記発光層の第1の領域に使用する発光物質は、X線に対して蛍光を発する生物毒性のない材料であり、第2の領域では、X線に対して燐光を発する生物毒性のない材料であることを特徴とする請求項記載の医療用ドレープ。
  3. 前記発光層の第1の領域に使用する発光物質は、発光波長が粒子径で制御可能な半導体量子ドットであって、所望の発光波長になるように予め粒子径が調整されて成ることを特徴とする請求項2記載の医療用ドレープ。
  4. 前記発光層は、耐放射線性と可視光領域で透明性を有する充填材料内に前記量子ドットを混合し、これを塗布することにより形成されて成ることを特徴とする請求項記載の医療用ドレープ。
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