JP5510025B2 - 伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主としてプレス加工されて使用される自動車等の足回り部品や構造材料に好適な伸びと穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法に関するものである。
自動車の車体構造に使用される鋼板には高いプレス加工性と強度が要求される。プレス加工性と高強度とを兼備した高強度薄鋼板として、フェライト・マルテンサイト組織、フェライト・ベイナイト組織からなるもの、あるいは組織中に残留オーステナイトを含有するものなどが知られている。
なかでも、残留オーステナイトを含む混合組織鋼板は強度と伸びを高いレベルで両立することが可能である。この残留オーステナイト鋼において、さらに伸びを高めるべく、例えば、特許文献1では、残留オーステナイトの分率を高く確保しつつ、2種類のフェライト(ベイニティックフェライト、ポリゴナルフェライト)を制御して均一伸びを確保する技術が開示されている。特許文献2では、伸びと形状凍結性を確保する目的で、オーステナイト相の形状をアスペクト比で規定する技術が開示されている。さらに、特許文献3では、オーステナイト相の分布を最適化することにより、より高い伸びが確保できるとしている。
一方で、残留オーステナイト鋼は加工硬化中に加工誘起マルテンサイト変態を引き起こし、このフェライトとマルテンサイトの界面に大きな応力集中が発生してしまうため局部延性が低い。この応力集中を抑制する技術として、特許文献4〜6に開示されているように、フェライトとマルテンサイトの混合組織において、フェライト相を析出強化する技術がある。
ところが、今日の自動車の更なる軽量化、部品の複雑形状化の要求に対応するためには、従来よりも高い伸びと局部延性に優れた混合組織鋼板が要求されている。
特許文献7にはフェライト相と硬質第二相(マルテンサイト、残留オーステナイト)からなる組織において、熱延後の冷却の際に、フェライト相中に合金炭化物を析出させることでフェライト相を強化した鋼に関わる技術が開示されている。しかしながら、析出物の分散に起因する局部延性や打ち抜き加工性の劣化が懸念される。
特開2006−274418号公報 特開2007−154283号公報 特開2008−56993号公報 特開2002−180188号公報 特開2002−180189号公報 特開2002−180190号公報 特開2009−84648号公報
R. W. K. Honeycombe: Metall. Trans. A, 7A, (1976), 915.
本発明は、従来の問題点を解決するためになされたものであって、非特許文献1に示されるように、オーステナイトからフェライトへの変態中にその相界面において主に粒界拡散にて起こる析出現象(以後、相間界面析出と記載する)によって析出分布が制御された析出強化フェライトと残留オーステナイトの混合組織を用いて、伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
残留オーステナイトを鋼組織に持つ残留オーステナイト鋼は、 TRIP効果を利用して、高強度であるにも関わらず、非常に高い伸びをもつことが知られている。一方で、局部延性は組織の均一性に依存する特性である。組織内の硬度差の大きなフェライト相とマルテンサイト相の混合組織が一般に局部延性を劣化させる。このため、加工中に加工誘起マルテンサイトを生じる残留オーステナイトも同様に局部延性を劣化させる。したがって、高伸びで高局部延性と高強度を達成するには、フェライト相の硬さを増加させることがポイントとなる。
これまで、析出強化を使ったフェライト相の強化が検討されているが、残留オーステナイト相を鋼中に残留させるためには、極めて狭い範囲で巻取り温度を制御しなくてはならず、析出制御は巻取り前の熱延の冷却処理中に実施しなくてはならない。これまで、析出物のサイズ制御に関わる技術は検討されているものの、これだけでは、析出物の分散状態を適切に制御することができず、効果的な局部延性の向上効果は得ることができなかった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、析出物のサイズに加え、析出物分布(配列)の制御こそが、局部延性を効果的に向上させうるものであり、加えてこの分散制御は、高伸びを達成するために必須である、TRIP効果を損なうことがないことを見出した。また、その析出物の分布の制御方法についても、鋭意検討を重ねた結果、極めて限られた温度域における、徐冷と急冷の組み合わせによって達成できることを見出して、この発明を完成するに至った。
即ち、本発明の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板は、
(1) 質量%にて、
C:0.08%以上、0.30%以下、
Si:0.005%以上、2.0%以下、
Al:0.010%以上、2.0%以下、
Mn:0.3%以上、3.0%以下、
P:0.08%以下、
S:0.010%以下、
N:0.010%以下を含有し、
さらに、Nb:0.01%以上、0.10%以下、Ti:0.01%以上、0.20%以下の1種または2種を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成と、30%以上のフェライト相と、3%以上の残留オーステナイト相を含有する鋼組織を有する高強度薄鋼板であって、
前記フェライト相中に炭窒化物が相間界面析出により析出されており、前記フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下であり、相間界面析出の列内の平均炭窒化物サイズが6nm以下であることを特徴とする伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
) 前記相間界面析出の面内の析出物密度が1×10個/mm以上、5×10個/mm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
) 鋼組成中にさらに、質量%にて、V:0.005%以上、0.10%以下、Mo:0.02%以上、0.5%以下、Cr:0.1%以上、5.0%以下、W:0.01%以上、5.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(または(2)に記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
) 鋼組成中にさらに、Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を、質量%にて、0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする上記(1)〜(3の何れかに記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
) 鋼組成中にさらに、質量%にて、Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記()〜()の何れかに記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
) 上記(1)〜()の何れかに記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法であって、熱間圧延後の冷却の際に、780℃以下、620℃以上の間の温度範囲において、1.5秒以上の空冷を行い、更に、800℃以下、600℃以上の温度範囲の空冷以外の領域の平均冷却速度が15℃/秒以上となるように冷却を行い、200℃以上、450℃未満の温度で巻き取って熱延鋼板となすことを特徴とする伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
) 上記()に記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法において、更に、連続鋳造後、そのまま、または、再加熱により、熱延前のスラブ温度を1100℃以上とし、次いで、粗圧延を1050℃以上で終了し、熱延仕上げ温度をAr3以上、970℃以下として熱間圧延を行い、熱間圧延後の冷却の際、更に、800℃以上の温度域を10℃/以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
本発明の高強度薄鋼板は、フェライト相中の析出物による析出強化により、充分な強度を確保できる。加えて、残留オーステナイトを残すことでTRIP効果により高い伸びを得ることが可能となる。また、本発明の根本となる、相間界面析出を使った析出物の分布制御にて、短時間でフェライト相中に均一に析出物を分散させることが可能となり、局部延性の著しい上昇とこれに起因する効果的な穴拡げ率の向上が高強度鋼において可能とできる。
この効果は、熱延板の組織を著しく壊す後工程での熱処理を行わない限り継続させることができる。すなわち、熱延鋼板のみならず、これを原板とする熱延めっき鋼板においても同様の効果を得ることができる。
本発明の鋼板と比較例の鋼板の穴拡げ性を比較して示す図である。 本発明の鋼板と比較例の鋼板の局部延性を比較して示す図である。
本発明の高強度薄鋼板は、穴拡げ性を高めるフェライト相と残留オーステナイト相を含む混合組織において、フェライト相中の析出物の分散状態に着目したもので、鋭意検討を重ねた結果、以下に説明するような特定の分散状態のときに、強度と伸びと局部延性を高いレベルで両立できることを見出した。
本発明においては、組織は30%以上のフェライト相と3%以上の残留オーステナイト相を含有する混合組織とする。このように、フェライト相を含み、残留オーステナイト相のTRIP効果を使うことで、高強度でかつ高い伸びが達成できる。
このとき、フェライト相が30%未満では、強度は確保できるものの伸びが劣化する。また、残留オーステナイト相が3%未満ではTRIP効果が小さく、伸び改善の効果が小さい。組織がベイナイト単相やフェライト単相では伸びの劣化を招く。
フェライト相中に析出する炭窒化物の分散は本発明において最も重要なもののひとつである。炭窒化物は、分散制御を容易に行うために、少なくとも相間界面析出により析出させるようにする。このとき、周期的に析出の起こる析出面の面間隔は20nm以上、60nm以下とする。20nm未満で析出させる場合、高密度に析出するため、伸びが劣化するか、析出面内の析出物密度を著しく低下させるために、析出面が局部的に弱くなり、局部延性の低下を起こす。一方で、60nm超では、フェライト相の強化が不十分で、希望の強度を確保することができない。
さらに、フェライト相を十分に硬くし、局部延性を向上させるためには、上記20nm以上60nm以下の面間隔を持つ領域がフェライト相の40%以上存在することが必要である。この値未満では、フェライト相の硬化が不十分で局部延性の向上効果を十分に得ることができない。
相間界面析出により析出する炭窒化物の平均サイズは6nm以下とすることが望ましい。平均サイズが6nm超では、析出物の密度が十分に確保できず、鋼の強度が低下する。
また、析出面内の炭窒化物の析出物密度も重要であり、鋼板の強度を確保するためには、1×108個/mm2以上であることが望ましい。析出物密度が1×10個/mm未満では、析出面が少ないために最弱面となり、応力の集中を引き起こすことで局部延性の低下をおこす。一方で、5×10個/mm超では、多量の析出物が析出面の脆化を引き起こし局部延性の低下を引き起こすため、5×10個/mm以下とする。
炭窒化物を形成するには、合金元素として、NbまたはTiのいずれか、または両方を含むようにする。Nb、Tiはフェライト相中での炭窒化物の析出の駆動力が高い元素であり、添加量によって、析出面の面間隔、析出面の面内析出物密度を制御しやすくする。また、Ti、Nbによる炭窒化物は析出強化能も高いため、これらを含有する炭窒化物とする。但し、Ti、Nbを含有していれば、その他の炭化物生成元素が含有されていても、その駆動力を大きく低下させることはないので本発明の効果を損なうことはない。
以下に本発明の高強度薄鋼板で用いる鋼の化学成分について説明する。含有量の%は、質量%である。
Nb、Tiは、相間界面析出によって微細な炭窒化物を析出して鋼を強化するため有効な元素である。相間界面析出によって、Ti、Nbとも0.01%未満では析出能が低く、狙いの析出分布を得ることができない。一方で、Nbで0.10%、Tiで0.20%を超えても、熱延前の加熱においての析出物溶解が不十分で、相間界面析出量に優位性が出ないばかりでなく、解け残りの粗大炭窒化物が局部延性を劣化させる。
Cは、穴拡げ性を劣化させる元素であるため添加量が低いことが望ましい。しかしながら炭窒化物を生成し、強度を高めるのに有効な元素である。Cの含有量が0.08%未満では強度を十分高めることができない。一方、0.30%を超えると伸びの低下が大きくなるので、Cの範囲は、0.08%以上、0.30%以下とする。なお、局部延性の要求が高い場合にはCの上限は、0.20%とするのが望ましい。
Siは、有害な炭化物の生成を押さえフェライト相を生成させるのに有効な元素である。しかし、2.0%を超える添加により延性が低下するほか化成処理性も低下するので、Siの添加量は2.0%以下とする。なお、化成処理性の要求が高い場合には、Siは1.3%以下とするのが望ましい。また、Siは脱酸のために添加されるが、0.01 %未満では脱酸効果が十分でないので、Siの下限は、0.005%以上とするのが望ましい。
Alは、脱酸剤として添加される。この目的のためにはAlは0.010%以上添加する必要がある。一方、Alを添加すると、Siと同様にフェライト相を生成させる効果があり、この点から添加してもよい。ただし、2.0%を超える添加は脆化を招くため、その上限を2.0%とした。なお、化成処理性の要求が高い場合には、1.5%以下とするのが望ましい。
Mnは焼入れ性を高めて鋼を強化するのに有効な元素である。Mnが0.3%未満では、強度を十分高めることができない。しかし、Mnが3.0%を超えると、焼入れ性が必要以上に高まりフェライト相を十分に確保できず、相間界面析出を得ることができないため、Mnの添加量は3.0%以下とする。
Pは含有量が多いと粒界へ偏析するために局部延性を劣化させるとともに、溶接性を劣化させる。従って、上限を0.08%とする。なお、Pをいたずらに低減させることは、精錬時のコストアップにつながるので、下限は0.001%とするのが望ましい。
Sは、MnSを形成して局部延性、溶接性を著しく劣化させる元素である。従って、上限を0.010%とする。また、精錬コストの問題から下限を0.0005%とするのが望ましい。
Nは、AlN等を析出して結晶粒を微細化するのに有効であるが、Nが0.010%を超えて含有すると固溶窒素が残存して延性が低下することとなるので、上限を0.010%とする。なお、精錬時のコストの問題から下限を0.0010%とするのが望ましい。
鋼はさらに、V、Mo、Cr、Wの1種または2種以上を含有することができる。これらはTiやNbと複合にて炭窒化物を生成させる元素である。この目的のためにはV:0.005%以上、Mo:0.02%以上、Cr:0.1%以上、W:0.01%以上、の1種または2種以上を含有させるのがよい。しかし、V:0.10%超、Mo:0.5%超、Cr:5.0%超、W:5.0%超を添加しても、強度上昇の効果は飽和するのみならず、局部延性の低下をもたらすこととなる。したがって、V:0.10%以下、Mo:0.5%以下、Cr:5.0%以下、W:5.0%以下を上限とする。
鋼はさらに、Ca、Mg、Zr、REM(希土類元素)の1種または2種以上を、単独または合計で0.0005%以上、0.05%以下含有することができる。Ca、Mg、Zr、REMは、硫化物や酸化物の形状を制御して局部延性や穴拡げ性を向上させる。この目的のためには、これらの元素の1種または2種以上を単独または合計で0.0005%以上添加するのがよい。しかし、過度の添加は加工性を劣化させるため、その上限を0.05%とした。
鋼はさらに、Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することができる。これらの元素は焼入れ性を向上させて鋼の強度を高めることができるが、Cu:0.04%未満、Ni:0.02%未満、B:0.0003%未満では焼入れ性が弱く、高温でフェライト形成を促すために、必要な相間界面析出を得ることができない。一方で、この範囲を超えた添加では、焼き入れ性が強くなりすぎて、相間界面析出に必要なフェライト変態を遅らせてしまう。
鋼は、以上の元素のほかSn、Asなどの不可避的に混入する元素を含み、残部鉄からなる。
本発明の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板は、フェライトを主体とするフェライト・ベイナイトの混合組織に3%以上の残留オーステナイト相を含む組織からなる。このように、フェライト相を含み、残留オーステナイト相のTRIP効果を使うことで、高強度でかつ高い伸びが達成できる。
フェライト相は、その量が少ないと延性の低下が大きくなるため、フェライト相分率を30%以上とすることが望ましい。フェライト相が多いと残留オーステナイト相中のC濃化が困難となり、また、残留オーステナイトが多量に残る場合、残留オーステナイト相中のC濃化が不十分になることから伸びが低下する。このためには、フェライト相が80%以下、残留オーステナイト相は30%以下が望ましい。
なお、5%以下であれば、マルテンサイトを存在させても本発明の効果は損なわれない。また、不可避的にパーライトを含む場合があるが、パーライトは5%以下であれば材質を著しく劣化させることはないので、5%以下であることが望ましい。
以下に本発明に係る高強度薄鋼板の製造方法について説明する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の高強度薄鋼板を製造するに際しては、熱間圧延後、所定の温度域の冷却制御によって、相間界面析出の分布制御が可能であることを見出した。具体的には、800℃以下、600℃以上の領域において変態速度は大きく変化し、これにより、相界面析出分布は大きく変化することを利用する。
必要な相間界面析出を実現するためには780℃以下、620℃以上の温度域で空冷を実施する必要がある。これより高い温度での実施では、析出面の面間隔が大きくなりすぎて、強度の低下を引き起こす。一方、これより低い温度での実施では、変態速度が高くなりすぎてしまい、面間隔が小さくなりすぎるか、相間界面析出が起こらないため、局部延性や伸びが劣化する。
空冷する時間は、それが1.5秒未満では相間界面析出の発生領域が十分ではなく、局部延性の向上効果が得られないことから、1.5秒以上とする。空冷時間が長いとパーライトが生成されるため、空冷時間は15秒以下であることが望ましい。
さらに、800℃以下、600℃以上の温度域において相間界面析出の析出状況は大きく変化するため、この間の冷却速度は非常に重要である。空冷域を除く、この間の平均冷却速度は15℃/秒以上であることが必要である。この速度未満だと面間隔、析出サイズ、面内析出物密度が組織間で大きく変化し、組織の不均一性から穴拡げ性や局部延性が劣化する。
加えて、第二相の形態により、この相間界面析出の効果は大きく影響される。具体的には、巻取り温度を200℃から450℃未満とし、第二相をベイナイト化するとともに、残留オーステナイト相を残存させることで、組織最適化と相間界面析出による組織硬度差の低減を達成して、伸びと局部延性い優れた高強度薄鋼板を得る。
巻取り温度が200℃未満ではマルテンサイト変態が起こり、局部延性が劣化する。一方で、450℃以上であると、セメンタイトの析出が活発となり、残留オーステナイト相が残存できなくなる他、パーライト相の発生により強度、局部伸びが低下する。
本発明においては、以上のように熱延条件により制御可能なものであり、鋳造条件により影響を受けるもではない。例えば、鋳造方法、スラブ厚の違いによる影響は少なく、常法にしたがってスラブを製造すればよい。
熱間圧延前のスラブは、連続鋳造後そのまま、または、再加熱により1100℃以上とする。一方、1300℃超ではスケールの生成が大きくなって鋼板の表面性状を良好なものとすることができないため、1300℃以下であることが望ましい。加熱温度が1100℃未満では、炭窒化物の溶解が不十分で、強度と局部延性の低下を起こす。その後、仕上げ温度が低い粗圧延から仕上げ圧延前までに炭窒化物の析出が起こり、強度の低下を引き起こすため、粗圧延は1050℃以上で終了する。
次いで、仕上げ温度をAr以上、970℃以下としてスラブを熱間圧延する。仕上げ温度が、Ar未満では(α+γ)2相域圧延となり、延性の低下をもたらすからであり、970℃を超えるとオーステナイト粒径が粗大になって、フェライト相分率が小さくなって、延性が低下するからである。
熱間圧延後の冷却は仕上げ圧延後、800℃以上の温度域の平均冷却速度を10℃/秒とする。あまり、冷却速度が低いと相間界面析出の発生温度域に達する前にフェライト変態、パーライト変態が起こってしまい、強度が低下する。
冷却後は、上記のように200℃以上450℃未満の温度範囲で巻き取って、熱延鋼板とする。なお、熱延後は、めっきなどの表面処理を必要に応じて実施する。
以上によって、本発明の高強度薄鋼板を製造することができる。
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
表1に示した成分組成を有する鋼を製造し、冷却凝固後の鋼片を1200℃まで再加熱し、1080℃にて粗圧延を終了し、表2、3に示す条件にて熱延を実施した。なお、800℃までの平均冷却速度は50℃/秒とした。
得られた鋼板の組織を観察するとともに、特性を調べた。
析出物の観察は薄膜サンプルを作成し、加速電圧200kVのFE-TEMを用いて、STEMモードにて行った。
相間界面析出の面間隔の測定、及び、20nm以上60nm以下の面間隔を持つ領域の発生率(相間界面析出発生率)の測定は、ランダムにフェライト粒を抽出し、抽出した結晶粒中の相間界面析出をSTEMにて観察して、その面間隔を測定するとともに、上記の面間隔を満たす領域の割合を測定する。この測定を少なくとも50粒子以上行い、これを平均することで発生率を計算した。
引張特性は、JIS5号引張試験片のC方向引張にて評価した。
局部延性は、JIS5号試験片を用いて、引張試験を行い、破断後のサンプルの断面の板厚t、板幅wを測定し、元板厚t0、元板幅w0から、
RA=−(ln(t/t0)+ln(w/w0))
を、L、C、45°のそれぞれの方向に対して求め、
局部延性=(RA(L方向)+RA(C方向)+2×RA(45方向))/4
から求めた。
鋼A〜gのうち、比較鋼であるa、bはそれぞれC上限、下限を満足していない。c、d、eはそれぞれ、S、Si、Mnの上限を満足していない。fはSiとAlの添加量が共に下限を下回っている。gはAl、Tiの上限を満足していない。hはNbの上限を超えている。iはNb、Tiが共に範囲外にある。
表2、3に、鋼A〜gを用いて得られた鋼板A1〜g1の製造条件及び特性を示すが、表1の発明鋼を使用した例のうち、A2、B2は巻取温度が範囲外であり、オーステナイト分率が範囲外である。D2は仕上げ温度がAr3以下で、オーステナイト分率が範囲外である。G2は空冷時間が下限を下回っており、フェライト分率と相間界面析出発生率が低い。K2、K3はそれぞれ、空冷開始温度が上限、下限を満足しておらず、前者はフェライト分率、相間界面析出発生率、析出物サイズ、密度、後者はフェライト分率、相間界面析出発生率、密度が範囲外にある。P2は800℃から600℃までの冷却速度が下限を下回っており、析出物サイズと密度が範囲外にある。
図1、2にこれらの材質を示すが、発明鋼の鋼板のみが優れた伸びと局部延性を両立するものであり、比較鋼の鋼板に比べ、共に極めて高い値を示しており、本発明の目的を達成している。
Figure 0005510025
Figure 0005510025
Figure 0005510025

Claims (7)

  1. 質量%にて、
    C:0.08%以上、0.30%以下、
    Si:0.005%以上、2.0%以下、
    Al:0.010%以上、2.0%以下、
    Mn:0.3%以上、3.0%以下、
    P:0.08%以下、
    S:0.010%以下、
    N:0.010%以下を含有し、
    さらに、Nb:0.01%以上、0.10%以下、Ti:0.01%以上、0.20%以下の1種または2種を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成と、30%以上のフェライト相と3%以上の残留オーステナイト相を含有する鋼組織を有する高強度薄鋼板であって、
    前記フェライト相中に炭窒化物が相間界面析出により析出されており、前記フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下であり、相間界面析出の列内の平均炭窒化物サイズが6nm以下であることを特徴とする伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  2. 前記相間界面析出の面内の析出物密度が1×10個/mm以上、5×10個/mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  3. 鋼組成中にさらに、質量%にて、
    V:0.005%以上、0.10%以下、Mo:0.02%以上、0.5%以下、Cr:0.1%以上、5.0%以下、W:0.01%以上、5.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  4. 鋼組成中にさらに、
    Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を、質量%にて、0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  5. 鋼組成中にさらに、質量%にて、
    Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  6. 請求項1〜の何れかに記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法であって、
    熱間圧延後の冷却の際に、780℃以下、620℃以上の間の温度範囲において、1.5秒以上の空冷を行い、更に、800℃以下、600℃以上の温度範囲の空冷以外の領域の平均冷却速度が15℃/秒以上となるように冷却を行い、200℃以上、450℃未満の温度で巻き取ることを特徴とする伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
  7. 請求項に記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法において、更に、連続鋳造後、そのまま、または、再加熱により、熱延前のスラブ温度を1100℃以上とし、次いで、粗圧延を1050℃以上で終了し、熱延仕上げ温度をAr以上、970℃以下として熱間圧延を行い、熱間圧延後の冷却の際、更に、800℃以上の温度域を10℃/以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
JP2010097251A 2010-04-20 2010-04-20 伸びと局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 Active JP5510025B2 (ja)

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