JP5507182B2 - ホットメルトシーラント - Google Patents

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本発明は、柔軟性、加工性、耐熱性、制振性、酸素ガスバリア性を向上させた熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントに関する。
シーラントは建築、電気、自動車など幅広い産業分野で用いられている。シーラントには架橋型とホットメルト型があり、架橋型にはシリコン系シーラント、ウレタン系シーラント、ポリサルファイド系シーラント、加硫ゴム系シーラントなどが、一方ホットメルト型にはEVA系シーラント、軟質塩化ビニル系シーラント、ブチルゴム系シーラント、スチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー系シーラントなどがある。シーラントは、水密性や気密性を得るために目地に充填する材料として、自動車や建材などに幅広く使用される。シーラントには高い気密性が求められ、また使用する用途により異なるものの、多くの場合、柔軟性や高機械的強度などの特性を有することが求められる。
このような特性が要求される部位には、現状では、工場あるいは作業現場にて、シリコーン系シーラント、ウレタン系シーラント、ポリサルファイド系シーラントなどの反応性固化型シーラントが充填されたカートリッジを用いて、シール部分の組立時または組立後に前記反応性固化型シーラントの充填または接着が行われたり、天然ゴムまたは合成ゴム系の成形パッキンを用いて組立時にその取付けが行われたり、ブチルゴム系シーラントやスチレン系熱可塑性エラストマー系シーラントなどのホットメルトシーラントをシール部分の組立時に塗布した後、組立がなされたりしている。
カートリッジなどを用いて施工される反応固化型シーラントは、所望の性能を得るためには、シール部分への充填または接着後、反応固化させるために長時間静置しておく必要があり生産性が良くないほか、取付後、容易に剥離できず、不具合発生時や使用後の解体性に問題があった。また、反応固化型シーラントは、その特性上、シール部位に予め塗布しておくことはできず、組立時もしくは組立後でなければ施工することができないという問題点がある。
天然ゴムまたは合成ゴム系の成形パッキンをシール材として使用することは、解体性には問題ないものの、各々のパッキン形状に従った金型が必要であることや、高温下での使用においては該成形パッキンの圧縮永久歪みが大きく、長期にわたり気密性を保持することは困難であるという問題点を有している。また、その施工において、自動化は困難であり、人手に頼った施工、組立が必要で生産性にも問題点を有している。
一方、ブチルゴム系シーラントはホットメルトシーラントであり、シールが要求される部位に直接塗布、冷却後、短時間に加工や組立が可能であるという生産性の良さや、ガスバリア性、制振性に優れる点から、各種気密性部材の接着シール材として使用されている。しかしながら、その使用環境によっては、特に高温条件下での圧縮永久歪み性能に劣るため(70℃及び100℃での圧縮永久歪みが90%以上)、高温条件下での長期使用では、自重による変形によりシール部位が剥離したり極端な場合には破壊したりすることによって、その性能が維持できず、気密性が失われる場合があったり、弾性や機械的強度の不足が問題となることがある。
一方、ブチルゴム系シーラントの耐熱性(高温での圧縮永久歪み)を改善する目的で、ブチルゴム系シーラントにスチレン系熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を添加する方法(特許文献1参照)が提案されている。また、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上、共役ジエンからなり、該共役ジエンに由来する炭素−炭素二重結合の80%以上が水素添加されてなる重合体ブロックBを1個以上有するブロック共重合体であって、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有量が10〜50質量%であり、かつ数平均分子量が25万以上であるブロック共重合体100重量部、非芳香族系ゴム用軟化剤50〜300重量部、およびポリエチレン系樹脂10〜100重量部からなる熱可塑性重合体組成物が、耐熱性を改良した熱可塑性重合体組成物として提案されている(特許文献2参照)。
さらに、3つの重合体ブロックからなり、該3つの重合体ブロックのうちの両末端の重合体ブロックがビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックであり、該両端の重合体ブロックの中間にある重合体ブロックが、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックであるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体であって、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した重量平均分子量が25万以上の水添ブロック共重合体100重量部、40℃における動粘度が300〜500mm/secである非芳香族系ゴム用軟化剤60〜170重量部、および結晶性ポリオレフィン5〜30重量部をドライブレンドし、しかる後に混練することからなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が開示され、得られる熱可塑性エラストマー組成物は低分子量成分やオイルのブリードが少なく、低硬度で、かつ圧縮永久歪みが小さく、ハードディスク装置用ガスケットやインクジェット記録装置用弾性部材を構成する用途に好適であるとされている(特許文献3参照)。
そして、水添パラフィン系プロセスオイル、高分子量スチレン系ブロックコポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂、酸化防止剤並びに非晶性ポリアルファオレフィンが配合されていることを特徴とするホットメルト組成物が開示され、該ホットメルト組成物は難接着性のポリオレフィン系樹脂素材にも充分な接着性を有し、高温下に置かれても劣化することがなく、かつ密着性、シール性などに優れ、解体性があるとされている。ここで、高分子量スチレン系ブロックコポリマーとしては、好ましくは数平均分子量が10万以上のものが適合し、市販品としてはクラレ社製のセプトン4055等が挙げられるとされている(特許文献4参照)。
米国公開特許公報第2003/0195287号 特開2001−240720号公報 特開2002−226666号公報 特開2005−97360号公報
しかし、これら特許文献1〜4に記載された、従来のスチレン系熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を用いたシーラントでは、従来のブチルゴム系シーラントに比べて制振性、酸素ガスバリア性が低下し、かかる点でなお改良の余地がある。
本発明の課題は、従来のブチルゴム系シーラントに比べ、柔軟性、加工性、耐熱性(高温での圧縮永久歪み性)、制振性、酸素ガスバリア性を向上させた熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントを提供することにある。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、特定のスチレン系水添ブロック共重合体および軟化剤、必要に応じて粘着付与樹脂を特定の割合で含有する熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントにより上記問題点を解決できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンに由来する構造単位からなり、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000の範囲であり、かつ嵩密度が0.10〜0.40g/mlのパウダー形状である水添ブロック共重合体(a)および軟化剤(b)を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントである。
好適な実施態様では、ホットメルトシーラントを構成する熱可塑性エラストマー組成物は、さらに粘着付与樹脂(c)を含有する。
好適な実施態様では、ホットメルトシーラントを構成する熱可塑性エラストマー組成物は、さらにポリフェニレンエーテル系樹脂(d)を含有する。
好適な実施態様では、ホットメルトシーラントを構成する熱可塑性エラストマー組成物は、さらに充填剤(e)を含有する。
本発明によれば、従来のブチルゴム系シーラントに比べ、柔軟性、加工性、耐熱性(高温での圧縮永久歪み性)、制振性、酸素ガスバリア性を向上させた熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントを提供することができる。
本発明のホットメルトシーラントは、水添ブロック共重合体(a)および軟化剤(b)を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなり、該熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、さらに粘着付与樹脂(c)、ポリフェニレンエーテル樹脂(d)、充填剤(e)を含有する。以下、各構成成分について詳細に説明する。
[水添ブロック共重合体(a)]
本発明に用いる水添ブロック共重合体(a)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する構造単位からなり、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計(ビニル結合含有量の合計)が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000の範囲であり、かつ嵩密度が0.10〜0.40g/mlのパウダー形状である。
水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(芳香族ビニル化合物単位)から主として構成される。ここで、「主として」とは、重合体ブロック(A)の質量に基づいて、芳香族ビニル化合物単位が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%であることを意味する。
該重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。該重合体ブロック(A)は、前記した芳香族ビニル化合物の1種に由来する構造単位のみを含んでいてもよいし、2種以上に由来する構造単位を含んでいてもよい。その中でも、重合体ブロック(A)は、スチレンに由来する構造単位から主として構成されていることが好ましい。
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共に他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量含有していてもよい。このとき、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(A)の質量に基づいて10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどのイオン重合性単量体が挙げられる。これらの他の共重合性単量体に基づく単位の結合形態は、ランダム、テーパード状などのいずれの形態であってもよい。
水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(B)は、イソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなることが適している。これ以外の共役ジエンを使用した場合、例えばブタジエン単独の場合では、1,2−結合単位の含有量を増やしても、制振性、流動性、酸素ガスバリア性、高温での圧縮永久歪みの改善に乏しく、実用上の意義は少ない。なお、本明細書では、イソプレンに由来する構造単位における3,4−結合単位および1,2−結合単位、ブタジエンに由来する構造単位における1,2−結合単位をビニル結合単位と称し、その合計量をビニル結合含有量と称する。
重合体ブロック(B)がイソプレンに由来する構造単位のみからなる場合は、その構造単位は2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH−C(CH)=CH−CH−;1,4−結合単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH(C(CH)=CH)−CH−;3,4−結合単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH)(CH=CH)−CH−;1,2−結合単位]からなり、本発明においては、そのビニル結合含有量(3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計)は45%以上である。ビニル結合含有量は、47%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。ビニル結合含有量の上限に特に制限はないが、通常は95%以下であり、90%以下であることがより好ましい。
また、重合体ブロック(B)がイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなる場合は、その構造単位は、イソプレンに由来する2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基、ならびにブタジエンに由来する2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH−CH=CH−CH−;1,4−結合単位]およびビニルエチレン基[−CH(CH=CH)−CH−;1,2−結合単位]からなっており、ビニル結合含有量(イソプレンに由来する3,4−結合単位および1,2−結合単位ならびにブタジエンに由来する1,2−結合単位の含有量の合計)が45%以上である。ビニル結合含有量は、47%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。ビニル結合含有量の上限に特に制限はないが、通常は95%以下であり、90%以下であることがより好ましい。該共重合体ブロックでは、イソプレンに由来する構造単位とブタジエンに由来する構造単位の配置は、ランダム、ブロック、テーパード状のいずれの形態であってもよい。
重合体ブロック(B)がイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなる場合は、本発明で得られる熱可塑性エラストマー組成物の酸素ガスバリア性、制振性、流動性を良好に保つ観点から、イソプレン単位/ブタジエン単位のモル比が10/90以上であることが好ましく、30/70以上であることがより好ましく、40/60以上であることがさらに好ましい。
該重合体ブロック(B)は、本発明の目的を損なわない範囲内で、イソプレン、またはイソプレンとブタジエンに由来する構造単位と共に他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量有していてもよい。このとき、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(B)の質量に基づいて30質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましい。
他の共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどの芳香族ビニル化合物などのアニオン重合可能な単量体が挙げられる。これら他の共重合性単量体は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合体ブロック(B)がイソプレン、またはイソプレンとブタジエンに由来する構造単位以外に芳香族ビニル化合物などの他の共重合性単量体に由来する構造単位を有する場合、それらの結合形態はランダム、テーパード状のいずれでもよい。
本発明に用いられる水添ブロック共重合体(a)は、耐熱性および耐候性が良好なものとなる点から、その重合体ブロック(B)における不飽和二重結合(炭素−炭素二重結合)の一部または全部が水素添加されていることが好ましい。その際の重合体ブロック(B)の水素添加率は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。
なお、重合体ブロック(B)における不飽和二重結合の水素添加率は、重合体ブロック(B)における不飽和二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計(IR)、核磁気共鳴(H−NMR)などによって測定し、その測定値から求めることができる。
水添ブロック共重合体(a)は、本発明の主旨を損なわない限り、場合により、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基の1種または2種以上を有していてもよい。
水添ブロック共重合体(a)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1個含むブロック共重合体の水素添加物である。好ましくは、水添ブロック共重合体(a)は、重合体ブロック(A)を2個以上及び重合体ブロック(B)を1個以上含むブロック共重合体の水素添加物である。重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直線状に結合した形態が好ましく、重合体ブロック(A)をA、重合体ブロック(B)をBで表したときに、(A−B)l、A−(B−A)m、B−(A−B)n(式中、l、mおよびnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す)の結合形態であるのが好ましく、ゴム弾性、力学的特性および取り扱い性などの観点から、A−Bで表されるジブロック構造またはA−B−Aで表されるトリブロック構造の結合形態であるのが特に好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a)が重合体ブロック(A)を2個以上または重合体ブロック(B)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロック(A)およびそれぞれの重合体ブロック(B)は互いに同じ構成のブロックであっても異なる構成のブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック構造における2個の重合体ブロック(A)は、それらを構成する芳香族ビニル化合物の種類が、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
重合体ブロック(A)の含有量は、水添ブロック共重合体(a)に対して5〜70質量%の範囲が好ましく、15〜50質量%の範囲がより好ましい。重合体ブロック(A)の含有量が上記の範囲であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物がゴム弾性および柔軟性に優れる。なお、水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(A)の含有量はH−NMRスペクトルなどにより求めることができる。
水添ブロック共重合体(a)において、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は好ましくは10,000〜60,000であり、より好ましくは15,000〜45,000である。重合体ブロック(B)のピークトップ分子量は、水素添加前の状態で、好ましくは130,000〜450,000であり、より好ましくは180,000〜430,000である。
また、水添ブロック共重合体(a)の全体のピークトップ分子量(Mp)は、水素添加後の状態で250,000〜500,000であり、310,000〜500,000であることがより好ましい。水添ブロック共重合体(a)のピークトップ分子量(Mp)が上記の範囲内であると、嵩密度が0.10〜0.40g/mlの範囲のパウダー形状の水添ブロック共重合体(a)が容易に得られ、該ブロック共重合体(a)は軟化剤(b)の吸収性に優れる。さらに得られる熱可塑性エラストマー組成物は高温での圧縮永久歪みおよび軟化剤(b)の保持性に優れる。
なお、本明細書でいうピークトップ分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で求めた値である。
<水添ブロック共重合体(a)の製造>
水添ブロック共重合体(a)は、軟化剤(b)の吸収性の観点から、その嵩密度が0.10〜0.40g/mlのパウダー状であることが重要であり、0.15〜0.35g/mlの範囲内がより好ましい。嵩密度が0.10g/ml未満の場合には、取り扱い性が悪くなり、0.40g/mlを超える場合には、軟化剤(b)の吸収性が悪くなる。なお、本明細書でいう嵩密度とは、秤量したパウダー状の水添ブロック重合体(a)をメスシリンダーに入れてその容積を測定し、重合体の質量を容積で除することにより算出した値である。
水添ブロック共重合体(a)の製造方法は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などの重合方法が挙げられる。アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物(イソプレン、またはイソプレンとブタジエンの混合物)を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量を有するブロック共重合体を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることによりブロック共重合体を製造することができる。そして得られたブロック共重合体を好ましくは単離せずに引き続き不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体(a)を得ることができる。
アルキルリチウム化合物の例としては、アルキル残基の炭素原子数が1〜10のアルキルリチウム化合物が挙げられるが、特にメチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、ペンチルリチウムが好ましい。これらのアルキルリチウム化合物などの開始剤の使用量は、求める水添ブロック共重合体(a)のピークトップ分子量(Mp)により決定されるものであるが、重合に用いられる全モノマー100質量部に対し、概ね開始剤0.01〜0.2質量部の範囲で用いられる。
重合は、通常、0〜80℃の温度範囲で、0.5〜50時間の範囲で行われる。
水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(B)において、イソプレン、またはイソプレンとブタジエンの混合物からなる構造単位が、45%以上のビニル結合含有量(3,4−結合単位および1,2−結合単位の合計)とするためには、重合の際に共触媒としてルイス塩基を用いる。ルイス塩基としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン系化合物が挙げられる。これらのルイス塩基の使用量は、開始剤として用いるアルキルリチウム化合物のリチウムのモル数に対して概ね0.1〜1000倍の範囲である。
水添反応としては、水添触媒の存在下、反応および水添触媒に対して不活性な、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒に未水添状態のブロック共重合体を溶解させた状態で、分子状水素を反応させる方法が好ましく用いられる。なお、芳香族ビニル化合物、イソプレン(またはイソプレンとブタジエンの混合物)を逐次共重合させて得られた反応液をそのまま水添反応に付すことも可能である。水添触媒としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、珪藻土などの単体に担持させたものなどの不均一触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などの組み合わせからなるチーグラー系触媒などが用いられる。反応は、通常、水素圧力が0.1〜20MPa、反応温度が20℃〜250℃、反応時間が0.1〜100時間の範囲で行われる。
本発明で規定する嵩密度0.10〜0.40g/mlのパウダー形状である水添ブロック共重合体(a)は、例えば以下の方法により製造することができる。上記の水素添加反応後に濾過により水添触媒を除去した反応溶液を40〜150℃、好ましくは60〜150℃に加熱し、必要に応じて脂肪酸塩やポリオキシアルキレン誘導体などの界面活性剤を混和した状態で、100質量部/時間の速度で80〜130℃の熱水中に供給し、また同時に1MPaのスチームを40〜60質量部/時間の速度で供給し、飽和炭化水素などの不活性有機溶媒の沸点または不活性有機溶媒と水とが共沸する場合はその共沸温度以上から150℃以下の温度でスチームストリッピングした後、圧縮水絞機で含水率55質量%/WB(ウェットベース、以下同じ)以下、好ましくは45質量%/WB以下まで脱水し、スクリュー押出機型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、伝導伝熱型乾燥機、熱風乾燥機などを用いて60〜100℃で乾燥することにより、含水率0.1質量%/WB以下の所望のパウダー形状を有する水添ブロック共重合体(a)を製造できる。
[軟化剤(b)]
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性、成形加工性などを付与する目的から、軟化剤(b)を含有する。軟化剤(b)としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体などの液状ポリジエンおよびその水添物などが挙げられる。中でも、水添ブロック共重合体(a)との相容性の観点から、パラフィン系プロセスオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィンが好ましい。
軟化剤(b)の含有割合は水添ブロック共重合体(a)100質量部に対して、10〜500質量部の範囲であるのが好ましく、成形加工性の観点から、50〜400質量部の範囲であるのがより好ましい。
[粘着付与樹脂(c)]
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて、粘着付与樹脂(c)を含有させることができる。かかる粘着付与樹脂(c)は、従来より粘着性を付与する樹脂として使用されているものを特に制限なく用いることができる。例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、これらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステルなどのロジン系樹脂;α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンなどを主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などテルペン系樹脂;(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5/C9系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂などの水素添加されていてもよい石油樹脂、ポリαメチルスチレン、αメチルスチレン/スチレン共重合体、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー/αメチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー共重合体、スチレン系モノマー/スチレン系モノマー以外の芳香族系モノマー共重合体などのスチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂、クマロン−インデン系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性エラストマー組成物の着色抑制の観点から、水添テルペン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、脂肪族系石油樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。粘着付与樹脂(c)を含有させる場合、その量は水添ブロック共重合体(a)100質量部に対して10〜300質量部の範囲であるのが好ましく、耐熱性の観点からは50〜250質量部の範囲であることがより好ましい。なお、粘着付与樹脂の軟化点については、耐熱性の観点から、50℃〜150℃のものが好ましく、100℃〜150℃がより好ましい。
[ポリフェニレンエーテル系樹脂(d)]
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物には、耐熱性(高温での圧縮永久歪み)の改善の目的から、さらにポリフェニレンエーテル系樹脂(d)を含有させることができる。かかるポリフェニレンエーテル系樹脂(d)としては、例えば、下記一般式(1)で示される重合体を用いることができる。
Figure 0005507182
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、置換炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、フェノキシ基またはニトロ基を表し、mは重合度を表す正の整数である。)
好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂(d)は、上記式(1)におけるR及びRがアルキル基、特に炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R及びRが、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基である。mは通常50以上であることが好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂(d)としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジトリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。中でも特に好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂(d)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルである。またこれらは極性基を有する変性剤により変性されていてもよい。極性基としては、例えば、酸ハライド、カルボニル基、酸無水物、酸アミド、カルボン酸エステル、酸アジド、スルフォン基、ニトリル基、シアノ基、イソシアン酸エステル、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基などが挙げられる。
本発明で用いるポリフェニレンエーテル系樹脂(d)は、数平均分子量として1,000〜100,000の範囲であるのが好ましく、特に各種の物性のバランスを考慮すると6,000〜60,000の範囲であるのがさらに好ましい。
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物にポリフェニレンエーテル系樹脂(d)を含有させる場合は、柔軟性の観点から、熱可塑性エラストマー組成物全体の質量100質量部に対して20質量部以下の範囲であることが好ましい。
[充填剤(e)]
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて充填剤(e)をさらに含有させることができる。かかる充填剤(e)としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、カーボン繊維などが挙げられる。
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物に充填剤(e)を含有させる場合は、柔軟性、低反発弾性維持の観点から、熱可塑性エラストマー組成物全体の質量100質量部に対して10〜500質量部の範囲であることが好ましく、20〜300質量部の範囲であることがより好ましい。
[その他の添加剤;ポリオレフィン樹脂]
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物には、成形性などを向上させる観点から、さらにポリオレフィン樹脂を含有させてもよい。かかるポリオレフィン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ホモポリプロピレンなどのプロピレンの単独重合体、プロピレンおよびエチレンのブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)またはランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンまたはエチレンとα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。上記α−オレフィンとしては、例えば1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数20以下のα−オレフィンが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ポリオレフィン樹脂をさらに含有させる場合、その量は、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対して5〜200質量部の範囲であることが好ましく、10〜180質量部の範囲であることがより好ましく、20〜150質量部の範囲であることがさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂の含有量が5質量部未満では、得られる熱可塑性エラストマー組成物の力学的強度が低下する場合があり、200質量部を超えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の硬度が高くなり柔軟性が乏しく、さらに高温での圧縮永久歪みが劣る場合がある。
[その他の添加剤;滑剤、架橋剤、安定剤、顔料他]
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じ、各種添加剤を含有させることができる。かかる添加剤としては、例えば滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐光剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤、架橋剤、架橋助剤、補強剤、帯電防止剤、防菌剤、防かび剤、分散剤、着色剤や、イソブチレン・イソプレン共重合体、シリコーンゴム等のゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。
中でも、滑剤は熱可塑性エラストマー組成物の流動性を向上させるとともに、熱劣化を抑制する作用を有する。本発明で用いることのできる滑剤としては、例えばシリコンオイル;パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸ステアリルなどが挙げられる。
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて、有機パーオキサイドなどを用いて架橋化してもよい。また、その際に架橋助剤を併用することも可能である。
[熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントの製造]
本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば水添ブロック共重合体(a)および軟化剤(b)、そして必要に応じて粘着付与樹脂(c)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(d)、充填剤(e)、ポリオレフィン樹脂、添加剤をプレブレンドして一括混合してから一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどを用いて溶融混練する方法、水添ブロック共重合体(a)、軟化剤(b)および必要に応じて粘着付与樹脂(c)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(d)、充填剤(e)、ポリオレフィン樹脂、添加剤を別々の仕込み口から供給して溶融混練する方法などが挙げられる。なお、プレブレンドする方法としては、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合機を用いる方法が挙げられる。
このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物を、そのまま本発明のホットメルトシーラントとして用いることができる。
本発明のホットメルトシーラントの施工方法については特に制限されないが、例えばハンドガンタイプ、ブロック溶融タイプ、バルクタイプおよびフォームタイプのホットメルト塗工装置を使用することができる。
本発明のホットメルトシーラントは、その成分である熱可塑性エラストマー組成物を構成する必須成分である水添ブロック共重合体(a)が軟化剤(b)の吸収性に優れるため、流動性(MFR)に優れることに由来して成形加工性に優れ、溶融混練時のハンドリング性に優れる。また、柔軟性、制振性、軟化剤の保持性、高温での圧縮永久歪みに優れ、かつこれらの物性をバランスよく有することを特徴とする。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、参考例、実施例および比較例における物性評価は、以下に示す方法で行った。
(1)重合体ブロック(A)の含有量
水素添加後のブロック共重合体(a)をCDClに溶解してH−NMRスペクトルを測定(装置:JNM−Lambda 500(日本電子(株)製、測定温度:50℃)し、スチレンに由来するピーク強度から重合体ブロック(A)の含有量を算出した。
(2)ピークトップ分子量(Mp)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、水素添加前の重合体ブロック(A)と水素添加後の水添ブロック共重合体(a)において、ポリスチレン換算のピークトップ分子量(Mp)を求めた。
機器:東ソー株式会社製 ゲルパーミエーションクロマトグラフ「HLC−8020」
カラム:G4000HXL×2本 (東ソー株式会社製)
溶離液:テトロヒドロフラン、流量:1ml/分
注入量:150μl
濃度:5mg/10ml(ブロック共重合体/テトロヒドロフラン)、
カラム温度:40℃
検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
検出方法:示差屈折率(RI)
(3)水添ブロック共重合体(a)の水素添加率
水素添加前後におけるブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その測定値により水添ブロック共重合体(a)の水素添加率(%)を算出した。

水素添加率(%)={1−(水素添加後のブロック共重合体のヨウ素価/水素添加前のブロック共重合体のヨウ素価)}×100
(4)水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(B)のビニル結合含有量
水素添加前のブロック共重合体をCDClに溶解してH−NMRスペクトルを測定(装置:JNM−Lambda 500(日本電子(株)製、測定温度:50℃)し、イソプレン、ブタジエン、またはイソプレンとブタジエンの混合物由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン構造単位における1,2−結合単位および3,4−結合単位、ブタジエン構造単位における1,2−結合単位、またイソプレンとブタジエンの混合物の場合にはそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比からビニル結合含有量(1,2−結合単位と3,4−結合単位の含有量の合計)を算出した。
(5)嵩密度
秤量したパウダー状の水添ブロック共重合体(a)をメスシリンダーに入れてその容積を測定し、該水添ブロック共重合体(a)の質量を容積で除することにより算出した。
(6)硬度
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を、プレス成形機を使用して230℃、10MPaの圧力で、3分間加熱プレス成形することによって、縦50mm×横50mm×厚さ2mmのシート状試験片を得た。この試験片を用いて、SRIS0101−1968に準拠してType−C硬度を測定し、柔軟性の指標とした。
(7)MFR
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をJIS K 7210に準拠し、キャピラリーから吐出される単位時間当たりの熱可塑性エラストマー組成物の重量を計測して、加工性の指標とした。測定温度は200℃、荷重は21.2Nで行った。MFRの値が高い方がよく流動し、加工性に優れる。
(8)反発弾性率(制振性)
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、圧縮成形機により200℃、3分間圧縮成形し、直径29.0±0.5mm、厚さ12.5±0.5mmの円柱状試験片を作製した。この試験片を用い、JIS K 6255に準拠して、リュプケ式反発弾性試験機によって25℃の反発弾性率を測定した。反発弾性率の値が小さいほど制振性に優れる。
(9)圧縮永久歪み
以下の実施例および比較例で製造した熱可塑性エラストマー組成物を圧縮成形機により200℃、3分間圧縮成形し、直径13.0±0.5mm、厚さ6.3±0.3mmの円柱状試験片を作製した。この円柱状試験片を用い、JIS K 6262に準拠し、70℃および100℃の2点の温度それぞれにおける、25%圧縮変形を22時間保った後の圧縮永久歪みを測定した。この値が小さいほど高温での圧縮永久歪みに優れる。
(10)酸素透過係数(OTR)
JIS K 7126−1(差圧法)に準拠し、差圧式のガスクロ法により、酸素透過係数(ml・20μm/m・day・atm)を測定した。以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を圧縮成形機により230℃、2分間圧縮成形し、厚さ300μmのフィルム状試験片を作製し、該試験片を用いて、ガス透過率測定装置(「GTR−10」、柳本製作所製)を用いて酸素圧0.25MPa、測定温度35℃、測定湿度0%RHにて測定を行った。OTRの値は小さい方が、酸素ガスバリア性が高いことを示す。
参考例1(水添ブロック共重合体(a)−1の製造)
乾燥した窒素で置換された耐圧容器に、スチレン1.84kgおよび溶媒としてシクロヘキサン55.8kgを仕込んだ。この溶液に、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)45mlを加え、60℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合物にルイス塩基としてテトラヒドロフラン305gを加えた後、イソプレン8.57kgを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン1.84kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。分析用にごく少量をサンプリングした後、該反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で5時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去した後、濾液を再び80℃に加温し、これを110℃の熱水に100kg/時間の速度で供給した。また同時に1MPaのスチームを50kg/時間の速度で供給し、反応容器内温度110±2℃でスチームストリッピングを行った。得られたスラリーを圧縮水絞機により45%にまで脱水し、120℃のプレートドライヤーで加熱乾燥して、含水率0.1質量%のパウダー状のポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、水添ブロック共重合体(a)−1と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(a)−1の水素添加率は97.2%であり、重合体ブロック(A)含有量は29.4質量%、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は37,500、水添ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)は315,000、重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は55.2%、嵩密度は0.22g/mlであった。
参考例2(水添ブロック共重合体(a)−2の製造)
参考例1において、溶媒としてシクロヘキサンを55.8kg、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)53ml、ルイス塩基を加えず、重合させるモノマーとしてスチレン1.59kg、イソプレンとブタジエンの混合物[イソプレン/ブタジエン=55/45(モル比)]7.44kg、スチレン1.59kgを逐次添加して重合させた以外は参考例1と同様の方法で重合反応、水添反応、脱触媒および乾燥を行い、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た(以下、水添ブロック共重合体(a)−2と称する)。得られた水添ブロック共重合体(a)−2の水素添加率は98.9%であり、重合体ブロック(A)含有量は29.4質量%、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は27,500、水添ブロック共重合体(a)−2のピークトップ分子量(Mp)は303,000、重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は8.1%、嵩密度は0.22g/mlであった。
実施例1〜5および比較例1〜5
表1に示す各成分を、表1に示す配合にしたがって、シグマブレード型のニーダーを使用して200〜230℃で2時間混合して、熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントを調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、上記方法によりMFRを測定し、さらに上記した方法で各試験片をそれぞれ作成し、上記方法により、硬度、圧縮永久歪み、反発弾性率、酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
表1に記載されている各成分は下記のとおりである。
・軟化剤(b):ダイアナプロセスオイルPW−90(水添パラフィン系オイル、出光興産株式会社製)
・粘着付与樹脂(c):水添脂環族系炭化水素樹脂;エクソンモービル製、商品名「エスコレッツ ECR−227E」
・ポリフェニレンエーテル系樹脂(d):変性ポリフェニレンエーテル樹脂;旭化成ケミカルズ製、商品名「ザイロン500H」
・充填剤(e)−1:重質炭酸カルシウム;三共精粉(株)製、商品名「エスカロン200」
・充填剤(e)−2:ガラス中空球粉末;スリーエム製、商品名「ガラスバブルスK−37」
・ポリオレフィン樹脂:ホモポリプロピレン;日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテックPP MA3」、MFR=10g/10min
・酸化防止剤−1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤;チバスペシャルティーケミカルズ製、商品名「イルガノックス1010」
・酸化防止剤−2:リン系酸化防止剤;チバスペシャルティーケミカルズ製、商品名「イルガフォス168」
Figure 0005507182
表1から、実施例1〜5で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、比較例1〜5で得られた熱可塑性エラストマー組成物と比較して、同配合での比較において、低硬度であり柔軟性に優れ、MFRが高く加工性に優れ、また、70℃及び100℃の圧縮永久歪みの値から、耐熱性にも優れていることがわかる。さらに、実施例1〜5で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、反発弾性率が低く制振性に優れ、酸素ガスバリア性にも優れることから、振動が激しい場所へ施工した場合もシールが破損されにくく、また気密性が高いことがわかる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラントは、柔軟性を維持した上で、加工性、耐熱性、制振性、酸素ガスバリア性が向上しており、例えばハンドガンなどを使用して接続部の空隙にシールする無定形のホットメルトシーラントとして、あるいは押出成形や射出成形などを用いてひも状やパッキン状の成形シーラントを作製して、例えば、自動車用のエンジン周辺の機器類や、太陽電池パネルなどの装置の接合部などにホットメルトシーラントとして用いるなど、種々の用途に用いることができる。

Claims (4)

  1. 芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンに由来する構造単位からなり、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000の範囲であり、かつ嵩密度が0.10〜0.40g/mlのパウダー形状である水添ブロック共重合体(a)および軟化剤(b)を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなるホットメルトシーラント。
  2. さらに粘着付与樹脂(c)を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる請求項1に記載のホットメルトシーラント。
  3. さらにポリフェニレンエーテル系樹脂(d)を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる請求項1または2に記載のホットメルトシーラント。
  4. さらに充填剤(e)を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる請求項または請求項に記載のホットメルトシーラント。
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