JP5505806B2 - 反射エコーの弁別方法 - Google Patents
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Description
この未探傷領域の範囲を調べるために、テスト探傷用の管が用いられる。その管には、未探傷領域及び端部隣接領域に相当する管軸方向の同一位置おいて、外面人工きず及び内面人工きずを設けなければならない。
超音波探触子から外面人工きずまでの超音波の伝搬距離は、内面人工きずまでよりも長い。
そして、管の肉厚が厚いときは、その伝搬距離の差が大きくなるので、外面人工きずを検出するための探傷ゲート(以下、外面きず探傷ゲートという)及び内面人工きずを検出するための探傷ゲート(以下、内面きず探傷ゲートという)が重ならないように設定することは容易である。そして、外面きず探傷ゲートと内面きず探傷ゲートとが重なっていなければ、外面きず反射エコーと内面きず反射エコーとを容易に弁別することができる。
しかしながら、管の肉厚が薄いときは、超音波探触子から外面人工きずまでの超音波の伝搬距離と超音波探触子から内面人工きずまでの超音波の伝搬距離の差が小さくなるので、外面きず探傷ゲート及び内面きず探傷ゲートを重ならないように設定することが難しくなる。そして、外面きず探傷ゲートと内面きず探傷ゲートとが重なっていると、外面きず反射エコー及び内面きず反射エコーのいずれもが外面きず探傷ゲートと内面きず探傷ゲートとの両方に入り易くなるので、外面きず反射エコーと内面きず反射エコーとを弁別することが難しくなる。
管101が矢印A方向に回転することにより、超音波探触子102は管周方向に相対移動しながら超音波探傷する。
外面きず探傷ゲートG1と内面きず探傷ゲートG2とは重ならず、外面人工きずF1からの反射エコーE1は外面きず探傷ゲートG1に入り、内面人工きずF2からの反射エコーE2は内面きず探傷ゲートG2に入る。このために、外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2とを、弁別することができる。
図2(a)は、外面人工きず及び内面人工きずが設けられた管の超音波探傷を行っている状態を示す概略図である。
管101の中央部において管軸方向の異なる位置に外面人工きずF1と内面人工きずF2とが個別に設けられており、端部隣接領域に外面人工きずF1及び内面人工きずF2が設けられている。管101が矢印A方向に回転することにより、超音波探触子102は管周方向に相対移動しながら超音波探傷する。超音波探触子102は、外面人工きずF1又は内面人工きずF2が設けられているそれぞれの軸方向の位置に移動させられ、それぞれの人工きずを超音波探傷する。
図2(b),(c)は、図2(a)の管中央部における外面人工きずF1又は内面人工きずF2が設けられたそれぞれの位置において超音波探触子102が超音波探傷を行っているときの管101の断面と超音波探触子102の状態を示す模式図であり、図2(d)は端部隣接領域における外面人工きずF1及び内面人工きずF2が設けられた位置において超音波探触子102が超音波探傷を行っているときの管101の断面と超音波探触子102の状態を示す模式図である。図2(e),(f),(g)は、それぞれ図2(b),(c),(d)のそれぞれの超音波探傷で得られる反射エコーのチャート(Aスコープ)である。尚、図2(g)においては、別々に検出された外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2とをそれぞれの表面エコーの位置を合わせて表わしている。
同様に図2(f)に示すように、内面人工きずF2のみが設けられている位置における超音波探傷においては、内面きず探傷ゲートG2が設定され、内面きず探傷ゲートG2に入った内面きず反射エコーE2を認識できる。
しかしながら端部隣接領域においては、外面人工きずF1及び内面人工きずF2が設けられているが、管の肉厚が薄いので、超音波探触子102から外面人工きずF1までと内面人工きずF2までの伝搬距離の差が小さくなり、外面きず探傷ゲートG1と内面きず探傷ゲートG2とが重ならないように設定することができない(図2(g)参照)。
そのために、検出された反射エコーE1及び反射エコーE2の両反射エコーは、外面きず探傷ゲートG1及び内面きず探傷ゲートG2の両方に入り易くなるので、それぞれの反射エコーが外面人工きずF1からの反射エコーE1であるのか、内面人工きずF2からの反射エコーE2であるのかの弁別をすることが難しくなる。
また、端部隣接領域において管軸方向の同一位置に設けられた外面人工きずF1と内面人工きずF2からの反射エコーとを弁別するために、管軸方向の同一位置に外面人工きずF1を設けた管と、内面人工きずF2を設けた管を用いるという方法も考えられるが、2つの管を用意し、それらの管毎に超音波探傷を行わなければならないので、費用と手間がかかるという問題がある。
また、外面人工きず及び内面人工きずの管周方向の位置が管軸を挟んだ正反対の位置とは、外面きず反射エコーのピークの検出時点から内面きず反射エコーのピークの検出時点までの時間と、内面きず反射エコーのピークの検出時点から外面きず反射エコーのピークの検出時点までの時間とが同じになる外面人工き及び内面人工きずの位置をいう。
また、第2時間を「前記いずれか他方からの反射エコーを検出してから前記いずれか一方からの反射エコーを次に検出するまでの」時間としているが、この第2時間は、外面人工きずからの反射エコーと内面人工きずからの反射エコーとが交互に繰り返して検出される状態において、「いずれか他方からの反射エコーを検出してから」その次に繰り返して「いずれか一方からの反射エコー」が検出されるまでの時間をいう。
このように、管軸方向の位置が互いに同一であるように管に設けられた外面人工きず及び内面人工きずからのそれぞれの反射エコーが外面人工きずからの反射エコーであるか内面人工きずからの反射エコーであるかを弁別することができる。
特に、管の肉厚が薄いために外面きず探傷ゲートと内面きず探傷ゲートとが重なり、外面きず探傷ゲート及び内面きず探傷ゲートによって反射エコーが外面きず反射エコーであるか内面きず反射エコーであるかを弁別することができなくても、反射エコーが外面きず反射エコーであるか内面きず反射エコーであるかを弁別することができる。
検出された反射エコーが外面きず反射エコーであるか内面きず反射エコーであるかを弁別することができることにより、管の超音波探傷における未探傷領域の範囲を正確に認識できる。
図3は、超音波探傷を行っている超音波探傷装置が鋼管の超音波探傷を行っている状態を示す概略図である。
鋼管1の超音波探傷を行う超音波探傷装置2は、超音波を送受信する超音波探触子21と超音波探触子21の動作を制御する演算制御部22とを備えている。
鋼管1は、鋼管1を周方向に回転させる回転駆動部(図示せず)の上に置かれており、鋼管1が回転することによって超音波探触子21が管周方向に相対移動する。
鋼管1と超音波探触子21との間には、給水装置(図示せず)によって水が供給され、超音波が鋼管1と超音波探触子21との間を伝搬するようにされている。
また、本実施形態では、斜角探傷を行っているが、垂直探傷を行うことで、外面人工きずF1及び内面人工きずF2を検出してもよい。
尚、ノッチの長さ等は、鋼管への要求品質等から、好ましくは、長さが12mm以上で50.8mm以下であり、幅は1mm以下であり、深さは鋼管の肉厚に対して5%±12.5%である。
ここで、外面人工きずF1及び内面人工きずF2の管周方向の位置が互いに離間しているとは、超音波探傷を行ったときに、検出された外面きず反射エコーE1及び内面きず反射エコーE2のピーク位置(検出時点)が一致しない外面人工きずF1及び内面人工きずF2の位置をいう。
また、外面人工きずF1及び内面人工きずF2の管周方向の位置が管軸を挟んだ正反対の位置とは、外面きず反射エコーE1のピークの検出時点から内面きず反射エコーE2のピークの検出時点までの時間と、内面きず反射エコーE2のピークの検出時点から外面きず反射エコーE1のピークの検出時点までの時間とが同じになる外面人工きずF1及び内面人工きずF2の位置をいう。
超音波探触子21から超音波が送信され、鋼管1の回転によって超音波が外面人工きずF1と内面人工きずF2のそれぞれに交互に照射され、外面人工きずF1からの反射エコーE1と内面人工きずF2からの反射エコーE2とが交互に超音波探触子21によって検出される(第2ステップ)。
図5は、超音波探傷で得られる反射エコーのチャート(Aスコープ)である。図5においては、別々に検出された外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2とをそれぞれの表面エコーの位置を合わせて表わしている。本実施形態では、鋼管1の肉厚が薄いために、外面きず探傷ゲートG1と内面きず探傷ゲートG2とが重なって設定されている。
外面きず反射エコーE1及び内面きず反射エコーE2のそれぞれは、外面きず探傷ゲートG1又は内面きず探傷ゲートG2に入っているので、外面人工きずF1又は内面人工きずF2からの反射エコーであると認められる。
しかしながら、外面きず反射エコーE1及び内面きず反射エコーE2のそれぞれは、外面きず探傷ゲートG1及び内面きず探傷ゲートG2の両方に入っているので、外面人工きずF1からの反射エコーであるか内面人工きずF2からの反射エコーであるかの弁別をすることはできない。
図6は、外面きず探傷ゲートG1又は内面きず探傷ゲートG2に入った反射エコーを時系列に示す図である。
外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2の内のいずれか一方である反射エコーP1と、外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2の内のいずれか他方である反射エコーP2とが交互に検出されている。
この第3ステップの対比は、例えば次のように行う。
角度αと角度βの大小関係と、第1時間T1と第2時間T2の大小関係を判定する。大小関係は、例えば、大小を較べる両者の差が正になるか負になるかで判定したり、両者の比が1より大きいか1より小さいかで判定すればよい。
α<βの場合に、T1<T2であれば反射エコーP1は外面きず反射エコーE1であって反射エコーP2は内面きず反射エコーE2であり、T1>T2であれば反射エコーP1は内面きず反射エコーE2であって、反射エコーP2は外面きず反射エコーE1である。
上記とは反対にα>βの場合に、T1<T2であれば反射エコーP1は内面きず反射エコーE2であって反射エコーP2は外面きず反射エコーE1であり、T1>T2であれば反射エコーP1は外面きず反射エコーE1であって、反射エコーP2は内面きず反射エコーE2である。
特に、鋼管1の肉厚が薄いために外面きず探傷ゲートG1と内面きず探傷ゲートG2とが重なり、外面きず探傷ゲートG1及び内面きず探傷ゲートG2によって反射エコーが外面きず反射エコーE1であるか内面きず反射エコーE2であるかを弁別することができなくても、反射エコーが外面きず反射エコーE1であるか内面きず反射エコーE2であるかを弁別することができる。特に鋼管の肉厚が10mm以下のときに有効である。
検出された反射エコーが外面きず反射エコーE1であるか内面きず反射エコーE2であるかを弁別することができることにより、外面きず反射エコーE1及び内面きず反射エコーE2のそれぞれを対象として個別に超音波探傷装置2の感度調整を行うことができるので、外面人工きずF1及び内面人工きずF2の検出精度が良くなる。
そして、感度調整が行われた超音波探傷装置2を鋼管1の超音波探傷に用いることにより、未探傷領域以外における自然きずの検出精度が向上することが期待できる。
超音波探触子21が鋼管1の周囲の半周を相対移動するのに必要な時間を時間THとする。
α<βの場合に、反射エコーP1のピークを検出した時点以後の時間TH内に反射エコーP2のピークがあれば、即ちT2>TH>T1であれば、反射エコーP1は外面きず反射エコーE1あって反射エコーP2は内面きず反射エコーE2である。反射エコーP1のピークを検出する時点以前の時間TH内に反射エコーP2のピークがあれば、即ちT1>TH>T2であれば、反射エコーP1は内面きず反射エコーE2であって反射エコーP2は外面きず反射エコーE1である。
上記とは反対にα>βの場合に、反射エコーP1のピークを検出した時点以後の時間TH内に反射エコーP2のピークがあれば、即ちT2>TH>T1であれば、反射エコーP1は内面きず反射エコーE2であって反射エコーP2は外面きず反射エコーE1である。反射エコーP1のピークを検出する時点以前の時間TH内に反射エコーP2のピークがあれば、即ちT1>TH>T2であれば、反射エコーP1は外面きず反射エコーE1であって反射エコーP2は内面きず反射エコーE2である。
第3ステップにおける対比をこのように行っても、上述した対比方法と同様の効果を得ることができる。
鋼管1に、外面人工きずF1としてのノッチと内面人工きずF2としてのノッチを管軸方向の同一位置に1つずつ設けた。鋼管は外径73.0mm、肉厚5.5mmであった。また、ノッチは長さ25.4mm、幅1mm、深さ0.30mmであった。
図7は、鋼管1の断面と超音波探触子21の状態を示す図である。管軸と外面人工きずF1とを結ぶ直線から管軸と内面人工きずF2とを結ぶ直線へ超音波探触子21が移動する方向に測定した角度が90°になるようにした。
そして、鋼管1を回転駆動部によって矢印A方向に回転させながら超音波探触子21によって超音波探傷を行った。このとき、外面きず反射エコーE1及び内面きず反射エコーE2を検出するように、外面きず探傷ゲートG1及び内面きず探傷ゲートG2を設定したが、外面きず探傷ゲートG1及び内面きず探傷ゲートG2は重なった。図8は、超音波探傷で得られる反射エコーのチャート(Aスコープ)である。図8においては、別々に検出された外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2とをそれぞれの表面エコーの位置を合わせて表わしている。
超音波探傷の実施にあたっては、検出された反射エコーが人工きずからの反射エコーであると判断するための人工きず判断基準値を予め定めておき、検出された反射エコーの中の最大のエコー高さが人工きず判断基準値を超えている場合には、人工きずからの反射エコーが検出されたとして、反射エコーの解析を進める(図9(a)参照)。
続いて、ノイズを判断するためのノイズ判断基準値を反射エコーの中の最大のエコー高さに予め定めた割合を掛けて設定し、ノイズ判断基準値よりもエコー高さが低い反射エコーは、ノイズとして除去する(図9(b)参照)。
続いて、ピークのエコー高さが最大の反射エコーを選択し、その反射エコーのピークを検出した時点から超音波探触子21が鋼管1の周囲の半周を移動するのに必要な時間TH内に次に検出された反射エコーが有れば、ピークのエコー高さが最大の反射エコーが外面きず反射エコーE1であり、ピークのエコー高さが最大の反射エコーから時間TH内に検出された反射エコーが内面きず反射エコーE2である。
ピークのエコー高さが最大の反射エコーを検出した時点よりも時間TH前の間に、先に検出された反射エコーが有れば、ピークのエコー高さが最大の反射エコーが内面きず反射エコーE2であり、ピークのエコー高さが最大の反射エコーから時間TH前の間に検出された反射エコーが内面きず外面きず反射エコーE1である。このようにして1組の外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2とを弁別することができる(図9(c)参照)。
次に、弁別した1組の外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2とを除いた後の反射エコーを対象として、上記と同様にして順に1組の外面きず反射エコーE1と内面きず反射エコーE2を弁別することを繰り返し、検出した全ての反射エコーを弁別することができる(図9(d)参照)。
そして、弁別された外面きず反射エコーE1及び内面きず反射エコーE2を用いて超音波探傷装置の感度調整を行うことができる。
21・・・超音波探触子
E1・・・外面きず反射エコー
E2・・・内面きず反射エコー
F1・・・外面人工きず
F2・・・内面人工きず
T1・・・第1時間
T2・・・第2時間
Claims (1)
- 管軸方向の位置が互いに同一であり、管周方向の位置が互いに離間し、かつ、管軸を挟んだ正反対の位置とならないように、管外面に外面人工きずを設け、管内面に内面人工きずを設ける第1ステップと、
超音波探触子を管周方向に相対移動させながら該管の超音波探傷を行ない、前記外面人工きずからの反射エコーと前記内面人工きずからの反射エコーとを交互に検出する第2ステップと、
前記外面人工きず及び前記内面人工きずの内のいずれか一方からの反射エコーを検出してから該外面人工きず及び該内面人工きずの内のいずれか他方からの反射エコーを次に検出するまでの第1時間と、前記いずれか他方からの反射エコーを検出してから前記いずれか一方からの反射エコーを次に検出するまでの第2時間とを算出し、前記第1時間及び第2時間の関係と、該外面人工きずの管周方向の位置及び該内面人工きずの管周方向の位置の関係とを対比することにより、検出した前記反射エコーのそれぞれが該外面人工きずからの反射エコーであるか該内面人工きずからの反射エコーであるかを弁別する第3ステップとを含むことを特徴とする超音波探傷における人工きずからの反射エコーの弁別方法。
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