以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本発明の導電膜形成用組成物について説明する。
本発明の導電膜形成用組成物は、貴金属微粒子、銅塩、還元剤、及びモノアミン類を含有するもの、又は貴金属微粒子、還元力を有するカルボン酸との銅塩、及びモノアミン類を含有するものである。
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、貴金属微粒子、銅塩、還元剤、及びモノアミン類を溶剤に添加し、溶解させた後、脱溶剤することで、また、貴金属微粒子、還元力を有するカルボン酸との銅塩、及びモノアミン類を溶剤に添加し、溶解させた後、脱溶剤することで、簡便に調製することができる。
本発明の導電膜形成用組成物において、貴金属微粒子は、導電膜形成用組成物を基材に塗布し、非酸化性雰囲気下で加熱した際、銅塩に含まれる銅イオンの還元を促す触媒の役割を果たす。
本発明の導電膜形成用組成物において、貴金属微粒子としては、特に限定するものではないが、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、及びオスミウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属種を含有するものが挙げられる。これらの金属種は、単体であってもその他の金属との合金であっても差し支えない。これらの中でもコスト面、入手の容易さ、及び導電膜形成時の触媒能から、金、銀、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属種を含有することが好ましく、銀及び/又はパラジウムを含有することがさらに好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、これら貴金属以外の金属の微粒子を使用しても差し支えないが、銅塩に含まれる銅イオンにより金属の微粒子が酸化を受けたり、触媒能が発現せず、銅イオンから金属銅への還元析出速度が低下するおそれがある。
本発明の導電膜形成用組成物において、貴金属微粒子はその平均粒子径が1〜400nmの範囲のものである。貴金属微粒子の粒子径が1nm未満になると、微粒子表面の活性が非常に高くなり、酸化されたり、溶解するおそれがある。また、400nmを超えると、長期保存した場合に貴金属微粒子が沈降することがある。よって、上記範囲内であることが望ましい。
本発明において、貴金属微粒子の粒子径の測定方法としては、一般的な粒子の測定方法を用いることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM),電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM),電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等を適宜使用することができる。平均粒子径の値は、上記装置を用いて測定し、観測された視野の中から、粒子径が比較的そろっている箇所を3箇所選択し、粒径測定に最も適した倍率で撮影する。各々の写真から、一番多数存在すると思われる粒子を100個選択し、その直径をものさしで測り、測定倍率を除して粒子径を算出し、これらの値を算術平均することにより、求めることができる。
本発明の導電膜形成用組成物において、貴金属微粒子は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。公知の合成方法としては、例えば、スパッタリング法やガス中蒸着法等、物理的な手法で合成反応を行う気相法(乾式法)や、基金属化合物溶液を表面保護剤の存在下、還元して貴金属微粒子を析出させる等の液相法(湿式法)等が一般的に知られている。これらの中でも、一般的に用いられる液相法の例としては、保護剤としてのポリビニルアルコールを含む水とメタノールやエタノール等との混合溶媒に溶解した金属錯イオンを加熱することにより、貴金属微粒子を得る方法(例えば、「Journal of Macromolecular Science:Part A. Pure & Applied Chemistry」,1979年,第13巻,p.727参照)や、エチレングリコールやジエチレングリコール等のポリオールを溶媒に用い、それらの沸点近傍またはそれ以下で加熱することにより、緩やかに金属イオンを還元析出させ、貴金属微粒子を得る方法(例えば、「MRS Bulletin」,1989年,第14巻,p.29参照)等を挙げることができる。
本発明の導電膜形成用組成物において、貴金属微粒子の金属としての純度については特に限定するものではないが、あまりにも低純度であると導電性薄膜とした際に、導電性に悪影響を与えるおそれがあるため、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
貴金属微粒子としては、貴金属微粒子同士の凝集や、貴金属微粒子の酸化を抑制するため、一般に、配位性化合物がその金属表面に配位したものを使用する。したがって、本発明の導電膜形成用組成物中に、このような配位性化合物が混入しても一向に差し支えない。
上記した配位性化合物としては、例えば、チオール基、ニトリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、又はヒドロキシカルボニル基からなる群より選ばれる一種又は二種以上の極性官能基を有する単分子化合物や、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる群より選ばれる一種又は二種以上のヘテロ原子を分子構造内に有するポリマー等が挙げられる。
上記した単分子化合物としては、例えば、アルカンチオール、脂肪族アミン、芳香族アミン、又は脂式カルボン酸が挙げられ、また、上記したポリマーとしては、例えば、ポリヒドラゾン化合物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンオキシド等が挙げられる。
一般的に、上記した配位性化合物は貴金属微粒子の重量に対して0〜200重量%の範囲で貴金属微粒子の表面に配位しているため、本発明の導電膜形成用組成物における、上記した配位性化合物の混入量も、貴金属微粒子の添加重量に対して0〜200重量%の範囲となりうる。
本発明の導電膜形成用組成物において、銅塩に含まれる銅イオンは、加熱処理することにより、還元剤により還元され、金属銅となり、形成される導電膜の導電性を発現させる役割を果たす。
本発明の導電膜形成用組成物において、銅塩としては、銅イオンを含有する化合物であればよく、特に限定するものではないが、例えば、銅イオンと、無機アニオン種及び/又は有機アニオン種とからなる銅塩が挙げられ、中でも、溶解度の面から、銅カルボン酸塩、及び銅とアセチルアセトン誘導体との錯塩からなる群より選ばれる一種又は二種以上を用いることが好ましい。
例えば、銅カルボン酸塩としては、具体的には、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、イソ酪酸銅、2−メチル酪酸銅、2−エチル酪酸銅、吉草酸銅、イソ吉草酸銅、ピバリン酸銅、ヘキサン酸銅、ヘプタン酸銅、オクタン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、ノナン酸銅等の脂式カルボン酸との銅塩、マロン酸銅、コハク酸銅、マレイン酸銅等のジカルボン酸との銅塩、安息香酸銅、サリチル酸銅等の芳香族カルボン酸との銅塩、ギ酸銅、ヒドロキシ酢酸銅、グリオキシル酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、酒石酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅等の還元力を有するカルボン酸との銅塩等が好適なものとして挙げられる。
また、銅とアセチルアセトン誘導体との錯塩としては、具体的には、アセチルアセトナト銅、1,1,1−トリメチルアセチルアセトナト銅、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチルアセチルアセトナト銅、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナト銅、又は1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト銅等が好適なものとして挙げられる。
これらの中でも、コスト性、溶解性、及び加熱時の除去性の面から、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、イソ酪酸銅、2−メチル酪酸銅、ピバリン酸銅、ギ酸銅、ヒドロキシ酢酸銅、グリオキシル酸銅、シュウ酸銅、アセチルアセトナト銅、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナト銅、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト銅等の銅塩が好ましい。
上記した製造方法において、これら以外の銅塩を使用しても差し支えないが、入手が困難であったり、高価であったりするため、工業的に不利な場合がある。また、銅塩としては、市販のもの、公知の方法により合成したものでも良く、さらには、銅イオンを含む化合物と無機アニオン種、及び/又は有機アニオン種を混合することにより、系中で形成させたものでも何ら差し支えなく使用することができ、特に限定されない。また、銅塩として、還元力を有するカルボン酸との銅塩を用いた場合、対アニオンである還元力を有するカルボン酸が還元剤として作用するため、別途、還元剤を加えなくても差し支えない。
上記した製造方法において、銅塩の純度については特に限定するものではないが、あまりにも低純度であると導電膜とした際に、導電性に悪影響を与えるおそれがあるため、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、還元剤は、導電膜形成用組成物を基材に塗布し、非酸化性雰囲気下で加熱した際に、銅塩を還元し、金属銅を析出させる。
本発明の導電膜形成用組成物において、還元剤としては、加熱処理することで、銅イオンを金属銅まで還元できる程度の還元力を有する化合物であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒドラジン類、ジオール類、ヒロドキシルアミン類、α−ヒドロキシケトン類、還元力を有するカルボン酸等が挙げられ、これらの中でも比較的低温でも高い還元力を有する、ヒドラジン類、還元力を有するカルボン酸が好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、還元剤として使用されるヒドラジン類としては、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(1)
[上記一般式(1)中、R
1、R
2は各々独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、炭素数5〜10の芳香族基、メチル基で芳香環上の水素原子が1〜3置換された炭素数5〜10の芳香族基、又はフェニル基で水素原子が1〜3置換されたメチル基を表す。ただし、R
1、R
2が同時に水素原子となることはない。]
で示される化合物が好適なものとして挙げられる。
これらのうち、銅塩の溶解度、還元力、さらには導電膜形成時の除去性を考慮すると、上記一般式(1)において、基R1、R2が各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、又はベンジル基である(ただし、R1、R2が同時に水素原子となることはない。)化合物がさらに好ましい。
上記一般式(1)において、置換基R1が水素原子であるヒドラジン類としては、具体的には、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、n−プロピルヒドラジン、i−プロピルヒドラジン、n−ブチルヒドラジン、i−ブチルヒドラジン、t−ブチルヒドラジン、n−ペンチルヒドラジン、n−ヘキシルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、n−ヘプチルヒドラジン、n−オクチルヒドラジン、2−エチルヘキシルヒドラジン、n−ノニルヒドラジン、n−デシルヒドラジン、n−ウンデシルヒドラジン、n−ドデシルヒドラジン、フェニルヒドラジン、4−メチルフェニルヒドラジン、ベンジルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がメチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジメチルヒドラジン、1−エチル−2−メチルヒドラジン、1−n−プロピル−2−メチルヒドラジン、1−i−プロピル−2−メチルヒドラジン、1−n−ブチル−2−メチルヒドラジン、1−i−ブチル−2−メチルヒドラジン、1−t−ブチル−2−メチルヒドラジン、1−n−ペンチル−2−メチルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−メチルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−メチルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−メチルヒドラジン、1−n−オクチル−2−メチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−メチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−メチルヒドラジン、1−n−デシル−2−メチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−メチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−メチルヒドラジン、1−フェニル−2−メチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−メチルヒドラジン、1−ベンジル−2−メチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がエチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジエチルヒドラジン、1−n−プロピル−2−エチルヒドラジン、1−i−プロピル−2−エチルヒドラジン、1−n−ブチル−2−エチルヒドラジン、1−i−ブチル−2−エチルヒドラジン、1−t−ブチル−2−エチルヒドラジン、1−n−ペンチル−2−エチルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−エチルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−エチルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−エチルヒドラジン、1−n−オクチル−2−エチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−エチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−エチルヒドラジン、1−n−デシル−2−エチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−エチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−エチルヒドラジン、1−フェニル−2−エチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−エチルヒドラジン、1−ベンジル−2−エチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−プロピル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−プロピルヒドラジン、1−i−プロピル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−ブチル−2−n−プロピルヒドラジン、1−i−ブチル−2−n−プロピルヒドラジン、1−t−ブチル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−ペンチル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−n−プロピルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−オクチル−2−n−プロピルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−ノニル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−デシル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−プロピルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−プロピルヒドラジン、1−フェニル−2−n−プロピルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−プロピルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−プロピルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がi−プロピル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−i−プロピルヒドラジン、1−n−ブチル−2−i−プロピルヒドラジン、1−i−ブチル−2−i−プロピルヒドラジン、1−t−ブチル−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−ペンチル−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−i−プロピルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−オクチル−2−i−プロピルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−ノニル−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−デシル−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−i−プロピルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−i−プロピルヒドラジン、1−フェニル−2−i−プロピルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−i−プロピルヒドラジン、1−ベンジル−2−i−プロピルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−ブチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−ブチルヒドラジン、1−i−ブチル−2−n−ブチルヒドラジン、1−t−ブチル−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−ペンチル−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−n−ブチルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−オクチル−2−n−ブチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−デシル−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−ブチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−ブチルヒドラジン、1−フェニル−2−n−ブチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−ブチルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−ブチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がi−ブチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−i−ブチルヒドラジン、1−t−ブチル−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−ペンチル−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−i−ブチルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−オクチル−2−i−ブチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−デシル−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−i−ブチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−i−ブチルヒドラジン、1−フェニル−2−i−ブチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−i−ブチルヒドラジン、1−ベンジル−2−i−ブチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がt−ブチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−t−ブチルヒドラジン、1−n−ペンチル−2−t−ブチルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−t−ブチルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−t−ブチルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−t−ブチルヒドラジン、1−n−オクチル−2−t−ブチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−t−ブチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−t−ブチルヒドラジン、1−n−デシル−2−t−ブチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−t−ブチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−t−ブチルヒドラジン、1−フェニル−2−t−ブチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−t−ブチルヒドラジン、1−ベンジル−2−t−ブチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−ペンチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−ペンチルヒドラジン、1−n−ヘキシル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−n−オクチル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−n−ペンチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−n−デシル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−フェニル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−ペンチルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−ペンチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−ヘキシル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−ヘキシルヒドラジン、1−シクロヘキシル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−n−オクチル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−n−ノニル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−n−デシル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−フェニル−2−n−ヘキシルヒドラジン、1−(4−メチル)−2−n−ヘキシルフェニルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−ヘキシルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がシクロヘキシル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジシクロヘキシルヒドラジン、1−n−ヘプチル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−n−オクチル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−n−ノニル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−n−デシル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−フェニル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−シクロヘキシルヒドラジン、1−ベンジル−2−シクロヘキシルヒドラジン等が例示される。
また上記一般式(1)において、置換基R1がn−ヘプチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−ヘプチルヒドラジン、1−n−オクチル−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−n−デシル−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−フェニル−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−ヘプチルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−ヘプチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−オクチル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−オクチルヒドラジン、1−(2−エチルヘキシル)−2−n−オクチルヒドラジン、1−n−ノニル−2−n−オクチルヒドラジン、1−n−デシル−2−n−オクチルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−オクチルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−オクチルヒドラジン、1−フェニル−2−n−オクチルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−オクチルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−オクチルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1が2−エチルヘキシル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ビス−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1−n−ノニル−2−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1−n−デシル−2−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1−n−ドデシル−2−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1−フェニル−2−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1−ベンジル−2−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−ノニル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−ノニルヒドラジン、1−n−デシル−2−n−ノニルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−ノニルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−ノニルヒドラジン、1−フェニル−2−n−ノニルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−ノニルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−ノニルヒドラジン等が例示される。
また上記一般式(1)において、置換基R1がn−デシル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−デシルヒドラジン、1−n−ウンデシル−2−n−デシルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−デシルヒドラジン、1−フェニル−2−n−デシルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−デシルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−デシルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−ウンデシル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−ウンデシルヒドラジン、1−n−ドデシル−2−n−ウンデシルヒドラジン、1−フェニル−2−n−ウンデシルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−ウンデシルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−ウンデシルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がn−ドデシル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジ−n−ドデシルヒドラジン、1−フェニル−2−n−ドデシルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−n−ドデシルヒドラジン、1−ベンジル−2−n−ドデシルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1がフェニル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ジフェニルヒドラジン、1−(4−メチル)フェニル−2−フェニルヒドラジン、1−ベンジル−2−フェニルヒドラジン等が例示される。
また、上記一般式(1)において、置換基R1が(4−メチル)フェニル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,2−ビス(4−メチル)フェニルヒドラジン、1−ベンジル−2−(4−メチル)フェニルヒドラジン等が例示される。
そして、上記一般式(1)において、置換基R1がベンジル基であるヒドラジン類としては、具体的には、1,1−ジベンジルヒドラジン等が例示される。
これらのヒドラジン類のうち、上記一般式(1)において、置換基R1、R2の炭素数が各々4〜8のものがさらに好ましい。置換基R1、R2の炭素数が4未満であると還元力が強すぎるため、銅塩と混合した際に、加熱する前に銅イオンを還元し、金属銅が析出してしまうおそれがある。また、置換基R1、R2の炭素数が8を超えると、導電膜形成を行う際の加熱時における分解生成物である炭化水素類の沸点が高くなり、蒸発、気散することができずに銅薄膜内に残存するおそれがあり、金属銅としての純度や、形成した銅薄膜の導電性に悪影響を与える場合がある。さらに製造又は入手のコストを考慮すると、これらのヒドラジン類のうち、上記一般式(1)において、置換基R1、R2の置換基は同一の置換基であることが好ましい。
以上の点を考慮すると、本発明の導電膜形成用組成物において、ヒドラジン類としては、1,2−ジ−n−ブチルヒドラジン、1,2−ジ−t−ブチルヒドラジン、1,2−ジ−n−ペンチルドラジン、1,2−ジ−n−ヘキシルヒドラジン、1,2−ジシクロヘキシルヒドラジン、1,2−ジ−n−ヘプチルヒドラジン、1,2−ジ−n−オクチルヒドラジン、1,2−ジ−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1,2−ジフェニルヒドラジン、及び1,2−ジベンジルヒドラジンからなる群より選ばれる一種又は二種以上を用いることが特にに好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、ヒドラジン類は、市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、ヒドラジン類の水素原子を、例えば、アシル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、n−ブチルアミノカルボニル基等の保護基で置換したものも、本発明におけるヒドラジン類に含まれる。
ヒドラジン類の公知の合成方法としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩を亜硫酸塩や塩化スズ(II)等の還元剤で還元する方法、ヒドラゾンやアジンを白金触媒を用いて接触還元する方法、アシルヒドラジンの還元、N−ニトロソアミンの還元、高後続ニトロ化合物の還元的カップリング、ヒドラジンやアジンのアルキル化及びアリール化、アミンとクロラミンの反応(Reasching反応)等の方法が挙げられる。
本発明の導電膜形成用組成物において、ヒドラジン類の純度は、特に限定するものではないが、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、還元剤として使用される還元力を有するカルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、ギ酸、ヒドロキシ酢酸、グリオキシル酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
本発明の導電膜形成用組成物において、還元力を有するカルボン酸は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。
本発明の導電膜形成用組成物において、還元力を有するカルボン酸の純度は、特に限定するものではないが、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、モノアミン類は、銅塩に含まれる銅イオンと錯体を形成し、銅イオンを安定化させ、銅塩の溶解性を向上させる。
本発明の導電膜形成用組成物において、モノアミン類としては、例えば、脂肪族モノアミン、芳香族モノアミン、環状モノアミン等が好適なものとして挙げられ、これらの中でも、脂肪族モノアミンが特に好ましい。このような脂肪族モノアミンとしては、具体的には、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ベンジルアミン等が例示される。
本発明の導電膜形成用組成物において、モノアミン類は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよい。
本発明の導電膜形成用組成物において、モノアミン類の純度は、特に限定するものではないが、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、貴金属微粒子、銅塩、還元剤、及びモノアミン類の組成比は、基材への塗布量にもより、特に限定するものではないが、例えば、導電膜形成用組成物全量に対し、貴金属微粒子の濃度が1重量ppm〜50重量%の範囲、銅塩の濃度が0.1〜80重量%の範囲、還元剤の濃度が0.1〜80重量%の範囲、及びモノアミン類の濃度が0.1〜80重量%の範囲であることが好ましく、貴金属微粒子の濃度が1重量ppm〜20重量%の範囲、銅塩の濃度が1〜60重量%の範囲、還元剤の濃度が0.1〜60重量%の範囲、及びモノアミン類の濃度が0.1〜60重量%の範囲であることがさらに好ましい。
貴金属微粒子の濃度が1重量ppm未満では、触媒能が発現しないおそれがあり、銅イオンから金属銅への還元析出速度が起こらないか、又は著しく低下する場合があり、50重量%を超えると、導電膜形成用組成物の粘度上昇又は固化が起こり作業性が低下する場合がある。
銅塩の濃度が0.1重量%未満では、銅イオンから生じる金属銅の量が少なく、十分な膜厚を有する導電膜を形成できない場合があり、80重量%を超えると、導電膜形成用組成物の粘度上昇又は固化が起こり作業性が低下する場合がある。
還元剤の濃度が、80重量%を超えて使用しても使用しただけの効果が得られないばかりではなく、導電膜形成用組成物の単位重量当たりの金属銅の含有量が低下し、工業的に不利となるおそれがある。
モノアミン類の濃度が0.1重量%未満では、銅塩の濃度にもよるが、銅塩を十分に溶解できない恐れがあり、80重量%を超えて使用しても使用しただけの効果が得られないばかりではなく、導電膜形成用組成物全量における銅の濃度が低下し、所望する膜厚の導電膜を得るための導電膜形成用組成物の塗布量が増加し、工業的に不利となるおそれがある。
また、本発明の導電膜形成用組成物において、貴金属微粒子、還元力を有するカルボン酸との銅塩、及びモノアミン類の組成比は、基材への塗布量にもより、特に限定するものではないが、例えば、導電膜形成用組成物全量に対し、貴金属微粒子の濃度が1重量ppm〜50重量%の範囲、還元力を有するカルボン酸との銅塩の濃度が0.1〜80重量%の範囲、及びモノアミン類の濃度が0.1〜80重量%の範囲であることが好ましく、貴金属微粒子の濃度が1重量ppm〜20重量%の範囲、還元力を有するカルボン酸との銅塩の濃度が1〜60重量%の範囲、及びモノアミン類の濃度が0.1〜60重量%の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物においては、上記成分に加えて、導電膜平滑化剤、濃度調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤等の添加剤を含有しても一向に差し支えない。
本発明の導電膜形成用組成物において、導電膜平滑化剤としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル等の含酸素化合物を挙げることができ、これらより選ばれる一種又は二種以上を用いることが好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物において、濃度調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤としては、特に限定するものではないが、例えば、各成分が溶解し、反応しない有機溶媒が挙げられ、それを所望の濃度、表面張力、粘度となるように適宜添加すればよい。このような有機溶媒としては、例えば、アルコール類、グリコール類、エーテル類、エステル類、脂肪族炭化水素類、及び芳香族炭化水素類からなる群より選ばれる一種、又は相溶性のある二種以上の混合物が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が挙げられる。
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素類としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
本発明の導電膜形成用組成物において、上記した添加剤の濃度は特に限定するものではないが、導電膜形成用組成物全量に対し、添加剤の濃度が0〜50重量%の範囲であることが好ましく、0〜20重量%の範囲とするのがさらに好ましい。添加剤の濃度が50重量%を超えて使用しても、使用しただけの効果は得られないだけでなく、導電膜形成用組成物の単位重量当たりの金属銅の含有量が低下し、工業的に不利となるおそれがある。
次に本発明の導電膜形成用組成物の製造方法について説明する。
本発明の導電膜形成用組成物は、例えば、上記した貴金属微粒子、銅塩、還元剤、及びモノアミン類を混合することで、また、上記した貴金属微粒子、還元力を有するカルボン酸との銅塩、及びモノアミン類を混合することで、簡便に調製することができる。
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法において、混合方法に特に制限はなく、公知の方法を利用できる。混合する順序については、特に限定するものではないが、配位性化合物に、貴金属化合物、銅塩を添加し、十分に溶解させた後に還元剤を添加し、混合することが好ましい。配位性化合物に対する銅塩の溶解が不十分な場合、還元剤の添加時に、配位性化合物により、安定化されていない溶解残渣が還元剤と反応して粗大粒子が形成され、均一分散性が損なわれるおそれがある。
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法において、その製造工程では溶媒を添加してもよい。添加する溶媒としては、貴金属化合物、銅塩、配位性化合物、及び還元剤を混合後、それらを溶解し、それらと反応しないものであれば、特に限定するものではないが、例えば、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、脂肪族炭化水素類、及び芳香族炭化水素類からなる群より選ばれる一種又は相溶性のある二種以上の混合物が挙げられる。
具体的には、アルコール類としては、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素類としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
これらの中でもコスト、及び安全性の面から、ヘキサノール、ターピネオール、メチル−t−ブチルエーテル、及びγ−ブチロラクトンからなる群より選ばれる一種、又は相溶性のある二種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法においては、加熱しながら配位性化合物、貴金属化合物、及び銅塩を混合してもよい。加熱温度は、上記した各成分が凝固する温度以上であって、各成分が分解、沸騰又は反応する温度以下であればよく、特に限定するものではないが、通常30〜100℃の範囲、好ましくは30〜80℃の範囲である。
一方、還元剤の添加時には冷却しながら添加、混合を行うことが好ましい。冷却温度は特に限定するものではないが、通常−50〜10℃の範囲、好ましくは−20〜0℃の範囲である。冷却温度が10℃を超えると還元剤の添加時に還元反応が激しく進行し、粗大粒子が形成され、均一性が損なわれるおそれがあり、−50℃未満であると配位性化合物、貴金属化合物、及び銅塩が完全に固化し、還元剤との混合が困難となるおそれがある。
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法において、混合方法としては、特に限定するものではないが、例えば、攪拌羽による攪拌、スターラー及び攪拌子による攪拌、沸盪器による攪拌、超音波(ホモジナイザー)による攪拌等が挙げられる。攪拌条件としては、例えば、攪拌羽による攪拌の場合、攪拌羽の回転速度が、通常1〜1000rpmの範囲、好ましくは10〜400rpmの範囲である。
本発明の導電膜形成用組成物は、可能な限り高濃度の金属を含むもの(例えば、インクジェット用インクとしては、少なくとも5重量%以上)が要求されるため、本発明の導電膜形成用組成物の製造方法において、脱溶剤を行ってもよい。
次に本発明の導電膜形成用組成物を用いた導電膜形成方法について説明する。
本発明の導電膜形成用組成物を基材に塗布し、非酸化性雰囲気下で加熱することにより、当該基材上に導電膜を容易に形成することができる。加熱することによって、貴金属微粒子及び銅塩が還元剤により還元され、同時に、有機物は分解、揮発することにより除去される。
本発明の導電膜形成方法において、基材としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、金属、ガラス、樹脂、紙、木材等が挙げられる。具体的には、銅板、鉄板、アルミ板等の金属基材、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、石英ガラス等のガラス基材、アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、ITO(インジウム錫オキサイド)等の基材等が挙げられるが、本発明の導電膜形成方法は、比較的低温で導電膜の形成が可能であることから、これらの中でも、特に樹脂、紙、木材等の非耐熱性基材に好適に適用することができる。
本発明の導電膜形成方法において、非耐熱性基材としては、特に限定するものではないが、例えば、耐熱温度が200℃以下のものが挙げられ、具体的には、非塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)、特殊印刷用紙、コピー用紙(PPC用紙)、未晒包装紙(重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙)、晒包装紙(晒クラフト紙、純白ロール紙)、コートボール、チップボール段ボール等の紙や、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、ポリアセタール樹脂、セルロース誘導体等の非耐熱性樹脂を好適に用いることができる。これらの非耐熱性基材は、必要に応じて表面処理を行ったものであっても差し支えなく、例えば、導電膜形成用組成物受容層を形成することができる。
本発明の導電膜形成方法において、導電膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、公知の方法によって行うことができ、特に限定するものではないが、例えば、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、インクジェット法、ディスペンサーでの塗布法等が挙げられる。塗布膜の形状としては面状であっても、ドット状であっても、問題はなく、特に限定されない。導電膜形成用組成物を基材に塗布する塗布量としては、所望する導電膜の膜厚に応じて適宜調整すればよいが、通常、乾燥後の導電膜形成用組成物の膜厚が0.01〜5000μmの範囲、好ましくは0.1〜1000μmの範囲となるよう塗布すれば良い。
本発明の導電膜形成方法において、加熱は、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気としては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。これらの中でも安価なことから、窒素を用いることが好ましい。また、不活性ガス中には、貴金属微粒子の酸化に大きな影響を与えない程度ならば酸素を含んでいても良く、その濃度は、通常2000ppm以下であり、500ppm以下がさらに好ましい。
本発明の導電膜形成方法において、加熱温度は、銅塩に含まれる銅イオンが還元剤により還元され、金属以外の成分が分解、揮発する温度であれば、特に制限はないが、通常60〜180℃の範囲であり、80〜150℃の範囲がさらに好ましい。加熱温度が60℃未満であると、銅前駆体の還元が完全に進行せず、また有機物の残存が顕著になる場合があり、180℃を超えると、上記した非耐熱性樹脂等の基材として利用できなくなるおそれがある。
本発明の導電膜形成方法において、加熱時間は、導電膜形成用組成物の塗布量や、加熱温度に依存するため、特に限定するものではないが、150℃程度の加熱温度を設定した場合には、通常1〜60分の範囲であり、好ましくは10〜30分の範囲である。1分未満では、銅イオンが完全に還元されなかったり、有機成分の分解、揮発が不十分となる恐れがあり、60分を超えても超過に見合う効果が無く、作業効率の低下をもたらす。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
なお、以下の実施例において、貴金属微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で、観測した視野の中から、ランダムに3箇所選択し、1,000,000倍の倍率で撮影を行い、それぞれの写真から、粒子を計100個選択し、その直径をものさしで測り、測定倍率を除して粒子径を算出し、これらの値を算術平均することにより求めた。TEMは日本電子社製、商品名「JEM−2000FX」を使用した。また、元素分析はパーキンエルマー社製全自動元素分析装置「2400II」により測定し、1H−NMRはVarian者製「Gemini−200」により測定した。
調製例1 銀微粒子の調製.
アニリン10gに酢酸銀1.67gを加え、固形物が完全に溶解し、均一溶液となるまで約10分間40℃で攪拌した。続いて、水素化ホウ素ナトリウム0.37gを水1.63gに溶解させた溶液を、室温で30分間かけて滴下した。さらに室温で30分間攪拌し、窒素気流下分液ロートに移液した。相分離した下部の無色透明な水相を除去した後、10gのイオン交換水で洗浄し再び相分離した下部の水相を除去することで、黒色の銀微粒子分散体を得た。この銀微粒子分散体をTEMで観測し平均粒子径を求めたところ、9.2nm(標準偏差4.2、変動係数46%)であった。銀微粒子分散体を減圧下(120Pa)、80℃に加熱し留出物を除くことにより、銀微粒子を2.19g得た。元素分析の結果、得られた銀微粒子は46wt%の銀と、54wt%の有機成分から構成され、1H−NMRによる解析結果より有機物の主成分はアニリンであった。
調製例2 パラジウム微粒子の調製.
2−エチルヘキシルアミン10gに酢酸パラジウム1.12gを加え、固形物が完全に溶解し、均一溶液となるまで約10分間40℃で攪拌した。続いて、水素化ホウ素ナトリウム0.37gを水1.63gに溶解させた溶液を、室温で30分間かけて滴下した。さらに室温で30分間攪拌し、窒素気流下分液ロートに移液した。相分離した下部の無色透明な水相を除去した後、10gのイオン交換水で洗浄し再び相分離した下部の水相を除去することで、黒色のパラジウム微粒子分散体を得た。この銀微粒子分散体をTEMで観測し平均粒子径を求めたところ、7.4nm(標準偏差2.2、変動係数30%)であった。パラジウム微粒子分散体を減圧下(120Pa)、80℃に加熱し留出物を除くことにより、パラジウム微粒子を1.19g得た。元素分析の結果、得られたパラジウム微粒子は42wt%のパラジウムと、58wt%の有機成分から構成され、1H−NMRによる解析結果より有機物の主成分は2−エチルヘキシルアミンであった。
実施例1 銀微粒子、酢酸銅、n−ヘキシルアミン及び1,2−ジ−n−ヘキシルヒドラジンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに実施例1で得られた銀微粒子を0.14g加え、酢酸銅無水物を1.8g、n−ヘキシルアミンを4.1g順次添加した。40℃に加熱した後、完全に溶解するまで10分間攪拌した。次に0℃まで冷却し、1,2−ジ−n−ヘキシルヒドラジンを2.4g添加し、0℃のまま30分間攪拌し、均一な溶液とした。この溶液を、0.5μmメンブランフィルターで濾過した後、得られた濾液中のテトラヒドロフランを、減圧濃縮により脱溶剤して、導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「塗布液A」と称する)。
実施例2 パラジウム微粒子、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト銅、n−ブチルアミン、及びギ酸を含有する導電膜形成用組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに実施例2で得られたパラジウム微粒子を0.14g加え、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト銅を4.8g、n−ブチルアミンを3.1g順次添加した。60℃に加熱した後、完全に溶解するまで10分間攪拌した。次に0℃まで冷却し、ギ酸を1.08g添加し、0℃のまま30分間攪拌し、均一な溶液とした。この溶液を、0.5μmメンブランフィルターで濾過した後、得られた濾液中のテトラヒドロフランを、減圧濃縮により脱溶剤して、導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「塗布液B」と称する)。
実施例3 銀微粒子、ギ酸銅、及びn−オクチルアミンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに実施例1で得られた銀微粒子を0.14g加え、ギ酸銅無水物を1.5g、n−オクチルアミンを5.2g順次添加した。室温で、完全に溶解するまで10分間攪拌し、均一な溶液とした。この溶液を、0.5μmメンブランフィルターで濾過した後、得られた濾液中のテトラヒドロフランを、減圧濃縮により脱溶剤して、導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「塗布液C」と称する)。
比較例1 銀微粒子、酢酸銅、及び1,2−ジ−n−ヘキシルヒドラジンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに実施例1で得られた銀微粒子を0.14g加え、酢酸銅無水物を1.8g添加した。40℃に加熱した後、10分間攪拌したが完全には溶解しなかった。次に0℃まで冷却し、1,2−ジ−n−ヘキシルヒドラジンを2.4g添加し、0℃のまま30分間攪拌したところ、黄土色のスラリーとなった。このスラリー中のテトラヒドロフランを、減圧濃縮により脱溶剤して、導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「塗布液D」と称する)。
比較例2 銀微粒子、及びギ酸銅を含有する導電膜形成用組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに実施例1で得られた銀微粒子を0.14g加え、ギ酸銅無水物を1.5g添加した。室温で、10分間攪拌したが、均一な溶液とはならなかった。このスラリー中のテトラヒドロフランを、減圧濃縮により脱溶剤して、導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「塗布液E」と称する)。
比較例3 ギ酸銅、及びn−オクチルアミンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gにギ酸銅無水物を1.5g、n−オクチルアミンを2.7g順次添加した。室温で、完全に溶解するまで10分間攪拌し、均一な溶液とした。この溶液を、0.5μmメンブランフィルターで濾過した後、得られた濾液中のテトラヒドロフランを、減圧濃縮により脱溶剤して、導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「塗布液F」と称する)。
比較例4 ギ酸銅、及び3−メトキシプロピルアミンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gにギ酸銅無水物を1.5g、3−メトキシプロピルアミンを1.8g順次添加した。室温で、完全に溶解するまで10分間攪拌し、均一な溶液とした。この溶液を、0.5μmメンブランフィルターで濾過した後、得られた濾液中のテトラヒドロフランを、減圧濃縮により脱溶剤して、導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「塗布液G」と称する)。
実施例4〜実施例9、比較例5〜比較例8 導電膜形成、及び導電膜評価.
紙(コピー用紙、厚さ0.08mm)又はPVC板(ポリ塩化ビニル板、厚さ1mm)をそれぞれ30mm×80mmのサイズにカットし、基材とした。これら基材上に、実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3で調製した導電膜形成用組成物(塗布液A〜F)を、バーコーター(番線の番号:No.80)を使用して、それぞれ均一に塗布し、5mm×50mm、膜厚約180μmの均一な塗布膜とした。次に、窒素ガスを6L/分の流量で流通した加熱炉を用い、これら各導電膜形成用組成物が塗布された各基材を20分間、110℃で加熱処理を行った。
続いて、形成された各導電膜について、表面抵抗値を四探針抵抗測定機(商品名「ロレスタGP」、三菱化学社製)にて測定した。
また、形成された各導電膜を切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各導電膜の平均膜厚を評価した。膜厚は各導電膜において、走査型電子顕微鏡(SEM)で、観測した視野の中から、ランダムに3箇所選択し、5000倍の倍率で撮影を行い、それぞれの写真において、膜厚を計測し、これらの値を撮影倍率で除し、3箇所の膜厚を算術平均することにより求めた。SEMは日本電子社製、商品名「JSM T220A」を使用した。
導電性の評価は、各薄膜において、表面抵抗値と、走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果から得られた平均膜厚から算出した体積抵抗値の比較により行った。
導電膜形成用組成物、基材の組み合わせ、及びその評価結果を表1に併せて示す。
表1から明らかなとおり、実施例4〜実施例9は、本発明の導電膜形成用組成物を用いて導電膜を形成した例であるが、いずれも良好な導電性を示した。
これに対し、比較例5、比較例6は、モノアミン類を含有しない導電膜形成用組成物を用いて導電膜を形成した例であるが、比較例5で形成された導電膜は、著しい導電性の低下が見られ、比較例6においては銅の還元反応が全く進行せず、導電膜が形成できなかった。また、貴金属微粒子を含有しない導電膜形成用組成物を用いた比較例7、比較例8においては、銅の還元反応が完全には進行せず、導電性の低下が見られた。