本発明においては、ハンダを介してプリント基板に実装した状態で通電を繰り返した場合でも、チップ抵抗器とハンダとの間の接合部にクラックが発生するのを十分防止することができるチップ抵抗器を提供するという目的を以下のようにして実現した。なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。
本発明に基づくチップ抵抗器P1は、図1に示すように構成され、絶縁基板(基板)10と、抵抗体20と、一対の電極部30と、カバーコート(一次コート)70と、保護膜(二次コート)80と、を有している。
ここで、絶縁基板10は、含有率96%程度のアルミナにて形成された絶縁体である。この絶縁基板10は、直方体形状を呈しており、平面視すると、略長方形形状を呈している。この絶縁基板10は、上記チップ抵抗器P1の基礎部材、すなわち、基体として用いられている。なお、絶縁基板10の大きさは、平面視において、長辺が1.0mm〜7.0mm、短辺が0.5mm〜3.5mmとなっていて、具体的には、長辺が1.6mmで短辺が0.8mm、長辺が3.2mmで短辺が1.6mm、長辺が5.0mmで短辺が2.5mm、長辺が2.0mmで短辺が1.25mmの場合が挙げられる。
また、抵抗体20は、図1に示すように、絶縁基板10の上面に層状に設けられ、長手方向(X1−X2方向)(電極間方向(抵抗体20における一対の上面電極32との接続位置を結ぶ方向、他においても同じ)、通電方向としてもよい))に帯状に形成されていて、平面視において略長方形状に形成されている。この抵抗体20の電極間方向の端部は絶縁基板10の端部までは形成されておらず、抵抗体20の電極間方向の端部と絶縁基板10の電極間方向の端部との間には所定の間隔が形成されている。また、抵抗体20の幅方向(Y1−Y2方向)の端部は絶縁基板10の端部までは形成されておらず、抵抗体20の幅方向の端部と絶縁基板10の幅方向の端部との間には所定の間隔が形成されている。この抵抗体20は、図1に示すように、全体に方形状(具体的には、長方形状)を呈し、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜により形成されている。
また、電極部30は、絶縁基板10における電極間方向の端部にそれぞれ設けられ、上面電極32と、下面電極40と、側面電極50と、メッキ60とを有している。
上面電極32は、絶縁基板10の上面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に層状に一対形成されていて、平面視において略方形状を呈している。つまり、一方の上面電極32は、絶縁基板10の上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、他方の上面電極32は、絶縁基板10の上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。また、上面電極32の幅方向の幅は、抵抗体20の幅方向の幅よりも大きく、絶縁基板10の幅方向の幅よりも小さく形成され、上面電極32と絶縁基板10の端部には隙間が形成されているが、絶縁基板10の幅方向の幅と略同一に形成してもよい。この上面電極32は、具体的には、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
また、上面電極32の抵抗体20側の端部領域は、抵抗体20の端部領域の上面に積層して形成されている。つまり、上面電極32における外側の領域(絶縁基板10の端部(電極間方向の端部)側の領域)は、絶縁基板10の上面に形成されているが、内側の領域は、抵抗体20の上面に積層して形成されている。なお、抵抗体20の端部領域が上面電極32の端部領域の上面に積層した構成としてもよい。
また、下面電極40は、図1に示すように、上記絶縁基板10の下面の長手方向の両端部領域に層状に一対形成されていて、底面視において略方形状を呈している。この下面電極40の長さ(電極間方向の長さ)は、上面電極32の長さより長く形成されているが、下面電極40の長さは任意としてもよい。また、下面電極40の幅方向(Y1−Y2方向)の長さは、絶縁基板10の幅方向の長さと略同一に形成されている。この下面電極40は、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。なお、この下面電極40の構成を省略して、側面電極50の下側部分により下面電極の代わりとしてもよい。
また、側面電極50は、上面電極32の一部と、保護膜80の一部と、下面電極40の一部と、絶縁基板10の側面(つまり、X1側の側面と、X2側の側面)を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。この側面電極50は、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。この側面電極50は、樹脂銀系厚膜により形成され、略均一の厚膜に形成されていて、20〜30μmの厚みに形成されている。
この側面電極50は、樹脂と銀粉末とを含む樹脂銀系厚膜であり、具体的には、エポキシ樹脂と銀粉末とを均一に混練してなる側面電極用ペーストにより構成された熱硬化型の樹脂・銀系厚膜である。ここで、側面電極50全体における樹脂と銀との比率は、重量比で、樹脂が10〜25%(好適には、14〜16%)で、銀粉末が75〜90%(好適には84〜86%)であり、容積比では、樹脂が55〜65%で、銀粉末が35〜45%となっている。
なお、側面電極50を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂には限られず、フェノール樹脂でもよく、また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを混合したもの等他の樹脂であってもよい。
また、メッキ60は、側面電極50の外側と下面電極40の露出領域の外側に側面電極50と下面電極40の露出部分とを被覆して形成されている。つまり、メッキ60は、側面電極50の外側と下面電極40の露出領域の外側に側面電極50と下面電極40の露出部分とを被覆して形成された銅メッキ(Cuメッキ)62と、銅メッキ62の外側に銅メッキ62を被覆して形成されたニッケルメッキ(Niメッキ)64と、ニッケルメッキ64の外側にニッケルメッキ64を被覆して形成された錫メッキ(Snメッキ)66とから構成されていて、X1側の端部領域とX2側の端部領域にそれぞれ設けられている。つまり、チップ抵抗器の電極部の表面にメッキ60が設けられていて、内側層が銅メッキで、中間層がニッケルメッキで、外側層が錫メッキとなっている。銅メッキ62とニッケルメッキ64と錫メッキ66とは、それぞれ略均一の厚膜に形成されている。銅メッキ62とニッケルメッキ64と錫メッキ66は、例えば、電気メッキにより形成される。なお、メッキ60の保護膜80側の端部は、保護膜80に積層している。
ここで、銅メッキ62は、10〜30μmの厚みに形成されている。また、ニッケルメッキ64は、上面電極32等の内部電極のはんだ食われを防止するために形成され、4〜12μmの厚みに形成されている。また、錫メッキ66は、3〜15μmの厚みに形成されている。なお、錫メッキ66の代わりに、ハンダメッキとしてもよい。
また、カバーコート70は、抵抗体20の上面に層状に形成され、抵抗体20へのトリミング時の熱衝撃を緩和するために形成される。このカバーコート70は、電極間方向には、トリミング溝形成位置の領域を被覆するとともに上面電極32に接して形成し、これにより、抵抗体20は、上面電極32とカバーコート70により被覆される。また、カバーコート70の幅方向の長さは、絶縁基板10の幅方向の長さと略同一に形成する。このカバーコート70は、ガラス系材料により形成され、具体的には、ホウ珪酸鉛ガラス系厚膜により形成される。なお、抵抗体20とカバーコート70には、トリミング溝90が形成されている。
また、保護膜80は、カバーコート70と、上面電極32の一部を被覆するように設けられている。この保護膜80の形成位置をさらに詳しく説明すると、幅方向には、絶縁基板10の幅と略同一に形成され、さらに、電極間方向には、抵抗体20の長さと略同一に形成され、保護膜80の電極間方向の端部位置は、抵抗体20の電極間方向の端部位置と水平方向において略同一の位置となっている。この保護膜80は、エポキシ樹脂系厚膜により形成されている。以上のように、保護膜80は、主として、抵抗体20を保護するものである。なお、保護膜80の厚み(最大厚み)は、20〜40μmとなっている。
上記構成のチップ抵抗器P1の製造方法について説明すると、まず、上面に一次スリットと二次スリットとが形成されたアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数のチップ抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものであり、平板状のグリーンシート(含有率96%程度のアルミナを含有するグリーンシート)を予め焼成したものである)(基板素体)を用意し、このアルミナ基板の裏面(すなわち、底面)に下面電極を形成する(下面電極形成工程)。つまり、下面電極用のペースト(例えば、銀系メタルグレーズ等の銀系ペースト)を印刷し、乾燥・焼成する。この銀系ペーストとしては、例えば、焼成温度が約850℃の銀系ペーストとする。なお、この下面電極の形成に際しては、一枚のスクリーンで縦横に複数個印刷する。
次に、上記アルミナ基板の上面に抵抗体20を形成する(抵抗体形成工程)。つまり、抵抗体ペースト(例えば、酸化ルテニウム系ペースト(具体的には、酸化ルテニウム系メタルグレーズペースト))を印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体20を形成する。
次に、アルミナ基板の上面に上面電極32を形成する(上面電極形成工程)。すなわち、上面電極ペーストをその一部が抵抗体に積層するように印刷し、乾燥・焼成する。この場合の上面電極ペーストは、銀系ペースト(例えば、銀系メタルグレーズペースト)である。この銀系ペーストとしては、例えば、焼成温度が約850℃の銀系ペーストとする。なお、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。
次に、トリミングによる抵抗値調整の前にカバーコート70を形成する。つまり、ホウ珪酸鉛ガラス系のガラスペーストを印刷して焼成し、カバーコート70を形成する。この場合、カバーコート70は、電極間方向とは直角の方向であるカバーコート形成方向に帯状に形成し、該カバーコート形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度にカバーコートを形成して、チップ抵抗器複数個分のカバーコートを帯状に連続して形成してもよい。
次に、抵抗体20にトリミング溝を形成してトリミングを行なうことにより抵抗値を調整する(抵抗体調整工程)。つまり、レーザートリミングにより抵抗体20にトリミング溝を形成する。
次に、保護膜80を形成する(保護膜形成工程)。つまり、カバーコート70の全体と上面電極32の一部(内側の領域)とを覆うように保護膜を形成する。つまり、保護膜用ペースト(エポキシ系の樹脂ペースト)を印刷し、乾燥・硬化させる。この場合、保護膜は、電極間方向とは直角の方向である保護膜形成方向に帯状に形成し、該保護膜形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度に保護膜を形成する。その後は、一次スリットに沿って一次分割して短冊状基板とする(一次分割工程)。
次に、上記短冊状基板に対して、側面電極50を形成する(側面電極形成工程)。つまり、側面電極用ペースト(樹脂銀ペースト)を短冊状基板に印刷し、乾燥・硬化させる。樹脂銀ペーストとしては、例えば、乾燥温度が約200℃の樹脂銀ペーストを用いる。
その後、二次スリットに沿って二次分割する(二次分割工程)。次に、メッキ60を形成する(メッキ工程)。つまり、厚さが10〜30μmの銅メッキを形成し、厚さが4〜12μmのニッケルメッキを形成し、その後、厚さが3〜15μmの錫メッキを形成する。以上のようにして、チップ抵抗器P1を形成する。
本実施例のチップ抵抗器P1の使用状態について説明すると、通常のチップ抵抗器と同様に、配線基板(プリント基板としてもよい)に実装して使用する。配線基板への実装においては、図2に示すように、チップ抵抗器P1は、配線基板200上に形成されたランド202に下面電極40がランド202側としてランド202に対向するようにして、ハンダフィレット210を介して実装される。なお、チップ抵抗器P1をハンダフィレット210を介して実装した状態では、錫メッキ66はハンダフィレット210と一体になるので、図2において、錫メッキ66は描かれていない。
本実施例のチップ抵抗器P1においては、メッキ60の内側層が銅メッキ62により形成されているので、熱応力を緩和することができ、さらに、銅メッキ62の内側の面に樹脂銀系厚膜により形成された側面電極50が接して積層しているので、より熱応力が緩和され、ハンダフィレットを介してプリント基板に実装した状態で通電を繰り返した場合でも、チップ抵抗器とハンダとの間の接合部にクラックが発生するのを防止することができる。つまり、銅メッキ62を構成する銅はヤング率が約13×1010Paと低いので、銅メッキ62を10〜30μmの厚みに形成することにより、熱応力を緩和することができる。さらに、側面電極50には、樹脂が含まれていることにより柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、銅メッキ62と側面電極50とが積層していることによる相乗効果により、熱応力を緩和することができる。特に、側面電極50を20〜30μmの厚みに形成することにより、さらに、熱応力を緩和することができる。特に、側面電極50と側面電極50の表面に形成された銅メッキ62とが、下面電極40から上面電極32にまで広く形成されているので、下面電極40の周辺以外の部分においてもクラックの発生を防止できる。
例えば、銅メッキ62の厚み10μm未満の場合には、クラックの発生のおそれがあり、銅メッキ62の厚みを10〜30μmとすることにより、クラックの発生を小さくできるという結果となった。また、銅メッキ62の厚みを10〜30μmとした場合でも、側面電極50を樹脂銀系厚膜に形成することにより、よりクラックの発生を小さくでき、特に、側面電極50の厚みを20〜30μmに形成することにより、よりクラックの発生を小さくできる結果となった。なお、銅メッキ62の厚みが30μmを超える場合や、側面電極50の厚みが30μmを超える場合には、銅メッキ62の厚みが20〜30μmの場合や側面電極50の厚みが20〜30μmの場合と比較すると、クラックの発生率が同等であるという結果となり、銅メッキ62や側面電極50を必要以上に厚くしても、メッキ時間やペースト量の点等でコスト増となってしまう。
なお、本実施例における上記の説明においては、電極部30を絶縁基板10の短辺側に形成するとしたが、電極部30を絶縁基板10の長辺側に形成してもよい。
また、本実施例における上記の説明において、側面電極50は、樹脂銀系厚膜により形成されているとしたが、これには限らず、カーボン、ルテニウム、ニッケルにおける少なくともいずれかの導電性物質を混合した樹脂を用いてもよい。つまり、側面電極50は、樹脂系の導電ペーストにより構成されたものであればよい。
次に、実施例2のチップ抵抗器について説明する。実施例2のチップ抵抗器P2は、実施例1のチップ抵抗器P1と略同様の構成であるが、実施例2のチップ抵抗器P2が多連チップ抵抗器である点が異なる。
チップ抵抗器P2は、図3、図4に示すように構成され、絶縁基板(基板)110と、複数の抵抗体120と、複数対の電極部130と、カバーコート(一次コート)170と、保護膜(二次コート)180と、を有している。
ここで、絶縁基板110は、含有率96%程度のアルミナにて形成された絶縁体である。この絶縁基板110は、直方体形状における長手方向の側面に直方体形状の切欠部112が設けられた形状を呈し、平面視において、長方形状の長手辺に沿って方形状の凹部を形成した形状を呈している。これにより、切欠部112が形成されていない箇所に凸状部110aが形成されている。つまり、図3の例では、一つの長手方向の側面に沿って3つの切欠部112が間隔を介して形成され、4つの凸状部110aが形成されている。この絶縁基板110は、上記チップ抵抗器P2の基礎部材、すなわち、基体として用いられている。なお、絶縁基板110の大きさは、平面視において、長辺が2.0〜3.2mm、短辺が1.0mm〜1.6mmとなっていて、具体的には、長辺が3.2mmで短辺が1.6mm、長辺が2.0mmで短辺が1.0mmの場合が挙げられる。
また、抵抗体120は、図3に示すように、絶縁基板110の上面に層状に設けられ、電極間方向(X1−X2方向)(抵抗体120における一対の上面電極132との接続位置を結ぶ方向、(他においても同じ)、通電方向としてもよい)に帯状に形成されていて、平面視において略長方形状に形成されている。この電極間方向は、絶縁基板110においては、短手方向となる。つまり、抵抗体120は、絶縁基板110の上面における一対の凸状部110a間の領域に形成されている。この抵抗体120の電極間方向の端部は絶縁基板110の端部までは形成されておらず、抵抗体120の電極間方向の端部と絶縁基板110の電極間方向の端部との間には所定の間隔が形成されている。また、抵抗体120の幅方向(Y1−Y2方向)の長さは、凸状部110aの幅方向の長さよりも短く形成されている。この抵抗体120は、図3に示すように、全体に方形状(具体的には、長方形状)を呈し、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜により形成されている。
また、電極部130は、絶縁基板110における切欠部112が設けられている辺部における切欠部112が設けられていない箇所(つまり、凸状部分)に一対ずつ設けられ、図3に示す例では、計4対の電極部130が設けられている。
各電極部130は、上面電極132と、下面電極140と、側面電極150と、メッキ160とを有している。
上面電極132は、絶縁基板110の上面の短手方向(X1−X2方向(図3参照))の両端部領域に層状に一対形成されていて、平面視において略方形状を呈している。つまり、一方の上面電極132は、絶縁基板110の凸状部110aの上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、他方の上面電極132は、絶縁基板110の凸状部110aの上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。また、上面電極132の幅方向の幅は、絶縁基板110の凸状部110aの幅よりも短く形成されている。この上面電極132は、具体的には、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
また、上面電極132の端部領域の上面には、抵抗体120の端部領域が積層して形成されている。なお、上面電極132の端部領域が抵抗体120の端部領域の上面に積層した構成としてもよい。
また、下面電極140は、図4に示すように、上記絶縁基板110の下面の両端部領域に層状に一対形成されていて、一方の下面電極140は、凸状部110aの下面のX1側の端部から所定の長さに形成され、他方の下面電極140は、凸状部110aの下面のX2側の端部から所定の長さに形成されている。この下面電極140の長さ(電極間方向の長さ)は、上面電極132の長さと略同一に形成されているが、下面電極140の長さは任意としてもよい。また、下面電極140の幅方向(Y1−Y2方向)の長さは、絶縁基板110凸状部110aの幅方向の長さよりも短く形成されている。この下面電極140は、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。なお、この下面電極140の構成を省略して、側面電極150の下側部分により下面電極の代わりとしてもよい。
また、側面電極150は、上面電極132の一部と、保護膜180の一部と、下面電極140の一部と、絶縁基板110の側面(つまり、X1側の側面と、X2側の側面)を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。この側面電極150は、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。この側面電極150は、実施例1の側面電極50と同様の構成であり、樹脂銀系厚膜により形成され、略均一の厚膜に形成されていて、20〜30μmの厚みに形成されている。
この側面電極150は、樹脂と銀粉末とを含む樹脂銀系厚膜であり、具体的には、エポキシ樹脂と銀粉末とを均一に混練してなる側面電極用ペーストにより構成された熱硬化型の樹脂・銀系厚膜である。ここで、側面電極150全体における樹脂と銀との比率は、重量比で、樹脂が10〜25%(好適には、14〜16%)で、銀粉末が75〜90%(好適には84〜86%)であり、容積比では、樹脂が55〜65%で、銀粉末が35〜45%となっている。
なお、側面電極150を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂には限られず、フェノール樹脂でもよく、また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを混合したもの等他の樹脂であってもよい。
また、メッキ160は、実施例1のメッキ60と同様の構成であり、側面電極150の外側に側面電極150を被覆して形成された銅メッキ(Cuメッキ)162と、銅メッキ162の外側に銅メッキ162を被覆して形成されたニッケルメッキ(Niメッキ)164と、ニッケルメッキ164の外側にニッケルメッキ164を被覆して形成された錫メッキ(Snメッキ)166とから構成されていて、X1側の端部領域とX2側の端部領域にそれぞれ設けられている。つまり、チップ抵抗器の電極部の表面にメッキ160が設けられていて、内側層が銅メッキで、中間層がニッケルメッキで、外側層が錫メッキとなっている。銅メッキ162とニッケルメッキ164と錫メッキ166とは、それぞれ略均一の厚膜に形成されている。なお、メッキ160の保護膜180側の端部は、保護膜180に積層している。
ここで、銅メッキ162は、10〜30μmの厚みに形成されている。また、ニッケルメッキ164は、上面電極132等の内部電極のはんだ食われを防止するために形成され、4〜12μmの厚みに形成されている。また、錫メッキ166は、3〜15μmの厚みに形成されている。なお、錫メッキ166の代わりに、ハンダメッキとしてもよい。
また、カバーコート170は、抵抗体120の上面に層状に形成され、抵抗体120へのトリミング時の熱衝撃を緩和するために形成される。このカバーコート170の形成位置は、幅方向(Y1−Y2方向)には、絶縁基板110のY1−Y2方向の幅と略同一に形成され、電極間方向には、図4に示すように、抵抗体120の長さよりも短く形成され、上面電極132に接しないように形成されている。つまり、カバーコート170は、Y1−Y2方向に帯状に形成されている。このカバーコート170は、ガラス系材料により形成され、具体的には、ホウ珪酸鉛ガラス系厚膜により形成される。なお、抵抗体120とカバーコート170には、トリミング溝190が形成されている。
また、保護膜180は、カバーコート170と、抵抗体120の露出部分と、上面電極132の一部を被覆するように設けられている。この保護膜180の形成位置をさらに詳しく説明すると、幅方向(Y1−Y2方向)には、絶縁基板110のY1−Y2方向の幅と略同一に形成され、さらに、電極間方向には、絶縁基板110の切欠部112が形成された位置におけるX1−X2方向の幅よりも若干短く形成され、平面視において方形状に形成されている。つまり、保護膜180は、Y1−Y2方向に帯状に形成されている。この保護膜180は、エポキシ樹脂系厚膜により形成されている。以上のように、保護膜180は、主として、抵抗体120を保護するものである。なお、保護膜180の厚み(最大厚み)は、20〜40μmとなっている。
上記構成のチップ抵抗器P2の製造方法について説明すると、まず、上面に一次スリットと二次スリットとが形成され、一次スリットに沿って四角柱状の穴部(一次スリットにより基板が分割されることにより、穴部が切欠部112となる。)を有するアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数のチップ抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものであり、平板状のグリーンシート(含有率96%程度のアルミナを含有するグリーンシート)を予め焼成したものである)(基板素体)を用意し、このアルミナ基板の裏面(すなわち、底面)に下面電極を形成する(下面電極形成工程)。つまり、下面電極用のペースト(例えば、銀系メタルグレーズ等の銀系ペースト)を印刷し、乾燥・焼成する。この銀系ペーストとしては、例えば、焼成温度が約850℃の銀系ペーストとする。なお、この下面電極の形成に際しては、一枚のスクリーンで縦横に複数個印刷する。
次に、アルミナ基板の上面に上面電極132を形成する(上面電極形成工程)。すなわち、上面電極ペーストを絶縁基板110の上面に印刷し、乾燥・焼成する。この場合の上面電極ペーストは、銀系ペースト(例えば、銀系メタルグレーズペースト)である。この銀系ペーストとしては、例えば、焼成温度が約850℃の銀系ペーストとする。なお、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。
次に、上記アルミナ基板の上面及び一対の上面電極132の上面に抵抗体120を形成する(抵抗体形成工程)。つまり、抵抗体ペースト(例えば、酸化ルテニウム系ペースト(具体的には、酸化ルテニウム系メタルグレーズペースト))を印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体120を形成する。
次に、トリミングによる抵抗値調整の前にカバーコート170を形成する。つまり、ホウ珪酸鉛ガラス系のガラスペーストを印刷して焼成し、カバーコート170を形成する。この場合、カバーコート170は、電極間方向とは直角の方向であるカバーコート形成方向に帯状に形成し、該カバーコート形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度にカバーコートを形成して、チップ抵抗器複数個分のカバーコートを帯状に連続して形成してもよい。
次に、抵抗体120にトリミング溝を形成してトリミングを行なうことにより抵抗値を調整する(抵抗体調整工程)。つまり、レーザートリミングにより抵抗体120にトリミング溝を形成する。
次に、保護膜180を形成する(保護膜形成工程)。つまり、カバーコート170の全体と上面電極132の一部(内側の領域)とを覆うように保護膜を形成する。つまり、保護膜用ペースト(エポキシ系の樹脂ペースト)を印刷し、乾燥・硬化させる。この場合、保護膜は、電極間方向とは直角の方向である保護膜形成方向に帯状に形成し、該保護膜形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度に保護膜を形成する。その後は、一次スリットに沿って一次分割して短冊状基板とする(一次分割工程)。この一次分割により、基板に設けられた穴部が分割されて、切欠部112となる。
次に、上記短冊状基板に対して、側面電極150を形成する(側面電極形成工程)。つまり、側面電極用ペースト(樹脂銀ペースト)を短冊状基板に印刷し、乾燥・硬化させる。樹脂銀ペーストとしては、例えば、乾燥温度が約200℃の樹脂銀ペーストを用いる。
その後、二次スリットに沿って二次分割する(二次分割工程)。次に、メッキ160を形成する(メッキ工程)。つまり、厚さが10〜30μmの銅メッキを形成し、厚さが4〜12μmのニッケルメッキを形成し、その後、厚さが3〜15μmの錫メッキを形成する。以上のようにして、チップ抵抗器P2を形成する。
本実施例のチップ抵抗器P2の使用状態について説明すると、通常のチップ抵抗器と同様に、配線基板(プリント基板としてもよい)に実装して使用する。配線基板への実装においては、図5に示すように、チップ抵抗器P2は、配線基板200上に形成されたランド202に下面電極140がランド202側としてランド202に対向するようにしてハンダフィレット210を介して実装される。なお、チップ抵抗器P2をハンダフィレット210を介して実装した状態では、錫メッキ166はハンダフィレット210と一体になるので、図5おいて、錫メッキ166は描かれていない。
本実施例のチップ抵抗器P2においては、メッキ160の内側層が銅メッキ162により形成されているので、熱応力を緩和することができ、さらに、銅メッキ162の内側の面に樹脂銀系厚膜により形成された側面電極150が接して積層しているので、より熱応力が緩和され、ハンダフィレットを介してプリント基板に実装した状態で通電を繰り返した場合でも、チップ抵抗器とハンダとの間の接合部にクラックが発生するのを防止することができる。つまり、銅メッキ162を構成する銅はヤング率が約13×1010Paと低いので、銅メッキ162を10〜30μmの厚みに形成することにより、熱応力を緩和することができる。さらに、側面電極150には、樹脂が含まれていることにより柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、銅メッキ162と側面電極150とが積層していることによる相乗効果により、熱応力を緩和することができる。特に、側面電極150を20〜30μmの厚みに形成することにより、さらに、熱応力を緩和することができる。特に、側面電極150と側面電極150の表面に形成された銅メッキと162が、下面電極140から上面電極132にまで広く形成されているので、下面電極140の周辺以外の部分においてもクラックの発生を防止できる。
また、特に、多連チップ抵抗器の場合には、図11に示す従来例のようなチップ抵抗器と比べて、絶縁基板が横方向に大型となり、また、複数の素子(抵抗体)が隣接していることから発熱量が大きいので、その分絶縁基板の熱膨張の度合いが大きく、また、電極部の形成領域は絶縁基板の切欠部によって縮小されるのに伴い電極部に形成されるハンダフィレットの体積も小さくなるので、熱応力によりチップ抵抗器とハンダとの間の接合部にクラックが発生するおそれが高いといえるが、本実施例のように、銅メッキ162と樹脂銀系厚膜により形成された側面電極150を設けることにより、熱応力を緩和して、チップ抵抗器とハンダとの間の接合部にクラックが発生するのを防止することができる。
例えば、銅メッキ162の厚み10μm未満の場合には、クラックの発生のおそれがあり、銅メッキ162の厚みを10〜30μmとすることにより、クラックの発生を小さくできるという結果となった。また、銅メッキ162の厚みを10〜30μmとした場合でも、側面電極150を樹脂銀系厚膜に形成することにより、よりクラックの発生を小さくでき、特に、側面電極150の厚みを20〜30μmに形成することにより、よりクラックの発生を小さくできる結果となった。なお、銅メッキ162の厚みが30μmを超える場合や、側面電極150の厚みが30μmを超える場合には、チップ抵抗器P2としての強度が弱くなるという結果となった。
なお、上記の説明において、側面電極150は、樹脂銀系厚膜により形成されているとしたが、これには限らず、カーボン、ルテニウム、ニッケルにおける少なくともいずれかの導電性物質を混合した樹脂を用いてもよい。つまり、側面電極150は、樹脂系の導電ペーストにより構成されたものであればよい。
なお、上記の説明においては、絶縁基板110に切欠部112が形成されていて、凸状部110aが形成された形状のものを例にとって説明したが、図6に示すように、絶縁基板110に切欠部が設けられておらず、絶縁基板110が直方体形状の多連チップ抵抗器であってもよい。なお、図6に示すチップ抵抗器P2’におけるC−C断面も図4に示すように構成されるとともに、配線基板への実装状態は図5に示すように構成され、特に、側面電極150とメッキ160は、チップ抵抗器P2における上記側面電極150やメッキ160と同様に構成されている。
次に、実施例3のチップ抵抗器について説明する。本発明に基づくチップ抵抗器P3は、図7に示すように構成され、絶縁基板(基板)10と、抵抗体20と、一対の電極部30と、カバーコート(一次コート)70と、保護膜(二次コート)80と、を有している。
ここで、絶縁基板10は、実施例1の絶縁基板10と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。
また、抵抗体20は、図7に示すように、絶縁基板10の上面に層状に設けられ、電極間方向(X1−X2方向)(抵抗体20における一対の上面電極32との接続位置を結ぶ方向、(他においても同じ)、通電方向としてもよい)に帯状に形成されていて、平面視において略長方形状に形成されている。この抵抗体20の電極間方向の端部は絶縁基板10の端部までは形成されておらず、抵抗体20の電極間方向の端部と絶縁基板10の電極間方向の端部との間には所定の間隔が形成されている。また、抵抗体20の幅方向の端部は絶縁基板10の端部までは形成されておらず、抵抗体20の幅方向の端部と絶縁基板10の幅方向の端部との間には所定の間隔が形成されている。この抵抗体20は、図7に示すように、全体に方形状(具体的には、長方形状)を呈し、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜により形成されている。
また、電極部30は、絶縁基板10における電極間方向の端部にそれぞれ設けられ、上面電極32と、補助電極34と、下面電極40と、側面電極50と、メッキ60とを有している。
上面電極32は、絶縁基板10の上面の長手方向(X1−X2方向(図7参照))の両端部領域に層状に一対形成されていて、平面視において略方形状を呈している。つまり、一方の上面電極32は、絶縁基板10の上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、他方の上面電極32は、絶縁基板10の上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。また、上面電極32の幅方向の幅は、絶縁基板10の幅よりも小さく、抵抗体20の幅よりも若干大きく形成されている。この上面電極32は、具体的には、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
また、上面電極32の端部領域の上面には、抵抗体20の端部領域が積層して形成されている。なお、上面電極32の端部領域が抵抗体20の端部領域の上面に積層した構成としてもよい。
また、補助電極34は、上面電極32の上面と保護膜80に積層して層状に一対形成されていて、平面視において略方形状を呈している。つまり、一方の補助電極34は、上面電極32の上面のX1側の端部から保護膜80の上面にまで形成され、他方の補助電極34は、上面電極32の上面のX2側の端部から保護膜80の上面にまで形成され、一対の補助電極34の内側の端部間には間隔が形成され、一方の補助電極34の表面に形成されたメッキ60と他方の補助電極34の表面に形成されたメッキ60とが接しないように形成されている。なお、補助電極34の幅方向の幅は、上面電極32の幅方向の幅と略同一となっているが、絶縁基板10の幅と略同一としてもよい。この補助電極34は、樹脂銀系厚膜により形成され、略均一の厚膜に形成されていて、10〜30μmの厚みに形成されている。
この補助電極34は、実施例1の側面電極50や実施例2の側面電極150と同様に、樹脂と銀粉末とを含む樹脂銀系厚膜であり、具体的には、エポキシ樹脂と銀粉末とを均一に混練してなる補助電極用ペーストにより構成された熱硬化型の樹脂・銀系厚膜である。ここで、補助電極34全体における樹脂と銀との比率は、重量比で、樹脂が10〜25%(好適には、14〜16%)で、銀粉末が75〜90%(好適には84〜86%)であり、容積比では、樹脂が55〜65%で、銀粉末が35〜45%となっている。
なお、補助電極34を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂には限られず、フェノール樹脂でもよく、また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを混合したもの等他の樹脂であってもよい。
なお、この補助電極34は、抵抗体20とは保護膜80により絶縁されているが、上面電極32において保護膜80から露出している領域と電気的に接続している。
また、側面電極50は、補助電極34の一部と、絶縁基板10の上面の一部と、下面電極40の一部と、絶縁基板10の側面(つまり、X1側の側面と、X2側の側面)を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。この側面電極50は、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。この側面電極50は、樹脂銀系厚膜により形成され、略均一の厚膜に形成されていて、20〜30μmの厚みに形成されている。
この側面電極50は、実施例1の側面電極50や実施例2の側面電極150と同様に、樹脂と銀粉末とを含む樹脂銀系厚膜であり、具体的には、エポキシ樹脂と銀粉末とを均一に混練してなる側面電極用ペーストにより構成された熱硬化型の樹脂・銀系厚膜である。ここで、側面電極50全体における樹脂と銀との比率は、重量比で、樹脂が10〜25%(好適には、14〜16%)で、銀粉末が75〜90%(好適には84〜86%)であり、容積比では、樹脂が55〜65%で、銀粉末が35〜45%となっている。
なお、側面電極50を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂には限られず、フェノール樹脂でもよく、また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを混合したもの等他の樹脂であってもよい。
また、メッキ60は、実施例1のメッキ60と同様の構成であり、側面電極50と下面電極40の露出部分とを被覆して形成された銅メッキ(Cuメッキ)62と、銅メッキ62の外側に銅メッキ62を被覆して形成されたニッケルメッキ(Niメッキ)64と、ニッケルメッキ64の外側にニッケルメッキ64を被覆して形成された錫メッキ(Snメッキ)66とから構成されていて、X1側の端部領域とX2側の端部領域にそれぞれ設けられている。つまり、チップ抵抗器の電極部の表面にメッキ60が設けられていて、内側層が銅メッキで、中間層がニッケルメッキで、外側層が錫メッキとなっている。銅メッキ62とニッケルメッキ64と錫メッキ66とは、それぞれ略均一の厚膜に形成されている。なお、メッキ60の保護膜80側の端部は、保護膜80に積層している。
ここで、銅メッキ62は、10〜30μmの厚みに形成されている。また、ニッケルメッキ64は、上面電極32等の内部電極のはんだ食われを防止するために形成され、4〜12μmの厚みに形成されている。また、錫メッキ66は、3〜15μmの厚みに形成されている。なお、錫メッキ66の代わりに、ハンダメッキとしてもよい。
また、カバーコート70は、抵抗体20の上面に層状に形成され、抵抗体20へのトリミング時の熱衝撃を緩和するために形成される。このカバーコート70は、電極間方向には、トリミング溝形成位置の領域を被覆するとともに上面電極32に接して形成し、これにより、抵抗体20はカバーコート70により被覆される。また、カバーコート70の幅方向の長さは、絶縁基板10の幅方向の長さと略同一に形成する。このカバーコートは、ガラス系材料により形成され、具体的には、ホウ珪酸鉛ガラス系厚膜により形成される。なお、抵抗体20とカバーコート70には、トリミング溝90が形成されている。
また、保護膜80は、カバーコート70と、上面電極32の一部を被覆するように設けられている。この保護膜80の形成位置をさらに詳しく説明すると、幅方向には、絶縁基板10の幅と略同一に形成され、さらに、電極間方向には、絶縁基板10の長さよりも短く、抵抗体20の長さよりも長く形成され、保護膜80の電極間方向の端部位置は、抵抗体20の電極間方向の端部位置よりもやや外側となっている。この保護膜80は、エポキシ樹脂系厚膜により形成されている。以上のように、保護膜80は、主として、抵抗体20を保護するものであり、抵抗体20をカバーコート70を介して覆っている。なお、保護膜80の厚み(最大厚み)は、20〜40μmとなっている。
上記構成のチップ抵抗器P3の製造方法は、実施例1のチップ抵抗器P1の製造方法と略同一であるが、補助電極34を形成する工程があるのが異なる。
まず、上面に一次スリットと二次スリットとが形成されたアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数のチップ抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものであり、平板状のグリーンシート(含有率96%程度のアルミナを含有するグリーンシート)を予め焼成したものである)(基板素体)を用意し、このアルミナ基板の裏面(すなわち、底面)に下面電極を形成する(下面電極形成工程)。つまり、下面電極用のペースト(例えば、銀系メタルグレーズ等の銀系ペースト)を印刷し、乾燥・焼成する。この銀系ペーストとしては、例えば、焼成温度が約850℃の銀系ペーストとする。なお、この下面電極の形成に際しては、一枚のスクリーンで縦横に複数個印刷する。
次に、アルミナ基板の上面に上面電極32を形成する(上面電極形成工程)。すなわち、上面電極ペーストをその一部が抵抗体に積層するように印刷し、乾燥・焼成する。この場合の上面電極ペーストは、銀系ペースト(例えば、銀系メタルグレーズペースト)である。この銀系ペーストとしては、例えば、焼成温度が約850℃の銀系ペーストとする。なお、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。
次に、上記アルミナ基板の上面及び一対の上面電極32の上面に抵抗体20を形成する(抵抗体形成工程)。つまり、抵抗体ペースト(例えば、酸化ルテニウム系ペースト(具体的には、酸化ルテニウム系メタルグレーズペースト))を印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体20を形成する。
次に、トリミングによる抵抗値調整の前にカバーコート70を形成する。つまり、ホウ珪酸鉛ガラス系のガラスペーストを印刷して焼成し、カバーコート70を形成する。この場合、カバーコート70は、電極間方向とは直角の方向であるカバーコート形成方向に帯状に形成し、該カバーコート形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度にカバーコートを形成して、チップ抵抗器複数個分のカバーコートを帯状に連続して形成してもよい。
次に、抵抗体20にトリミング溝を形成してトリミングを行なうことにより抵抗値を調整する(抵抗体調整工程)。つまり、レーザートリミングにより抵抗体20にトリミング溝を形成する。
次に、保護膜80を形成する(保護膜形成工程)。つまり、カバーコート70の全体と上面電極32の一部(内側の領域)とを覆うように保護膜を形成する。つまり、保護膜用ペースト(エポキシ系の樹脂ペースト)を印刷し、乾燥・硬化させる。この場合、保護膜は、電極間方向とは直角の方向である保護膜形成方向に帯状に形成し、該保護膜形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度に保護膜を形成する。
次に、上面電極32及び保護膜80の上面に補助電極34を形成する(補助電極形成工程)。つまり、補助電極用ペースト(樹脂銀ペースト)を上面電極32及び保護膜80の上面に印刷し、乾燥・硬化させる。樹脂銀ペーストとしては、例えば、乾燥温度が約200℃の樹脂銀ペーストを用いる。その後は、一次スリットに沿って一次分割して短冊状基板とする(一次分割工程)。
次に、上記短冊状基板に対して、側面電極50を形成する(側面電極形成工程)。つまり、側面電極用ペースト(樹脂銀ペースト)を短冊状基板に印刷し、乾燥・硬化させる。樹脂銀ペーストとしては、例えば、乾燥温度が約200℃の樹脂銀ペーストを用いる。
その後、二次スリットに沿って二次分割する(二次分割工程)。次に、メッキ60を形成する(メッキ工程)。つまり、厚さが10〜30μmの銅メッキを形成し、厚さが4〜12μmのニッケルメッキを形成し、その後、厚さが3〜15μmの錫メッキを形成する。以上のようにして、チップ抵抗器P3を形成する。
本実施例のチップ抵抗器P3の使用状態について説明すると、配線基板に実装して使用するが、図8に示すように、チップ抵抗器P3の上面側、つまり、抵抗体20や上面電極32や補助電極34が設けられている側を配線基板200のランド202側としてランドに対向するようにして、ハンダフィレット210を介して実装される。なお、チップ抵抗器P3をハンダフィレット210を介して実装した状態では、錫メッキ66はハンダフィレット210と一体になるので、図8において、錫メッキ66は描かれていない。
本実施例のチップ抵抗器P3においては、メッキ60の内側層が銅メッキ62により形成されているので、熱応力を緩和することができ、さらに、銅メッキ62の内側の面に樹脂銀系厚膜により形成された側面電極50が接して積層しているので、より熱応力が緩和され、さらには、樹脂銀系厚膜により形成された補助電極34と、樹脂により形成された保護膜80とが設けられているので、ハンダフィレットを介してプリント基板に実装した状態で通電を繰り返した場合でも、チップ抵抗器とハンダとの間の接合部にクラックが発生するのを防止することができる。
つまり、銅メッキ62を構成する銅はヤング率が約13×1010Paと低いので、銅メッキ62を10〜30μmの厚みに形成することにより、熱応力を緩和することができる。さらに、側面電極50には、樹脂が含まれていることにより柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、銅メッキ62と側面電極50とが積層していることによる相乗効果により、熱応力を緩和することができる。特に、側面電極50を20〜30μmの厚みに形成することにより、さらに、熱応力を緩和することができる。
また、チップ抵抗器P3には補助電極34が設けられていて、チップ抵抗器P3の配線基板への実装状態において、補助電極34が絶縁基板10とハンダフィレット210間に広く配置され、補助電極34は、樹脂が含まれていることにより柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、この補助電極34によっても熱応力を緩和することができる。
さらに、チップ抵抗器P3においては、チップ抵抗器P3の配線基板への実装状態において、保護膜80が絶縁基板10とハンダフィレット210間に広く配置され、保護膜80が樹脂製で柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、この保護膜80によっても熱応力を緩和することができる。
なお、本実施例における上記の説明においては、電極部30を絶縁基板10の短辺側に形成するとしたが、電極部30を絶縁基板10の長辺側に形成してもよい。
また、本実施例における上記の説明において、側面電極50や補助電極34は、樹脂銀系厚膜により形成されているとしたが、これには限らず、カーボン、ルテニウム、ニッケルにおける少なくともいずれかの導電性物質を混合した樹脂を用いてもよい。つまり、側面電極50や補助電極34は、樹脂系の導電ペーストにより構成されたものであればよい。
次に、実施例4のチップ抵抗器について説明する。実施例4のチップ抵抗器P4は、実施例1のチップ抵抗器P1と略同様の構成であるが、絶縁基板10の下面の全面に樹脂系の絶縁膜12が設けられている点が異なる。
すなわち、図9に示すように、絶縁膜12が絶縁基板10の下面の全面に層状に形成されている。この絶縁膜12は、樹脂系の絶縁体であり、樹脂系厚膜(例えば、エポキシ樹脂系厚膜)により形成されており、その厚みは、30〜100μmに形成されている。なお、絶縁膜12は、エポキシ樹脂に限らず、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂における少なくともいずれか等の他の樹脂であってもよい。
また、下面電極40は、上記絶縁膜12の下面の長手方向の両端部領域に層状に一対形成されていて、底面視において略方形状を呈している。この下面電極40の長さ(電極間方向の長さ)は、上面電極32の長さより長く形成されているが、下面電極40の長さは任意としてもよい。また、下面電極40の幅方向(Y1−Y2方向)の長さは、絶縁基板10の幅方向の長さと略同一に形成されている。下面電極40は、略均一の厚膜に形成されていて、20〜30μmの厚みに形成されている。
この下面電極40は、上記側面電極50、150と同様に、樹脂と銀粉末とを含む樹脂銀系厚膜であり、具体的には、エポキシ樹脂と銀粉末とを均一に混練してなる側面電極用ペーストにより構成された熱硬化型の樹脂・銀系厚膜である。ここで、下面電極40全体における樹脂と銀との比率は、重量比で、樹脂が10〜25%(好適には、14〜16%)で、銀粉末が75〜90%(好適には84〜86%)であり、容積比では、樹脂が55〜65%で、銀粉末が35〜45%となっている。なお、下面電極40は、樹脂銀系厚膜により形成されているとしたが、これには限らず、カーボン、ルテニウム、ニッケルにおける少なくともいずれかの導電性物質を混合した樹脂を用いてもよい。つまり、下面電極40は、樹脂系の導電ペーストにより構成されたものであればよい。
なお、この下面電極40の構成を省略して、側面電極50の下側部分により下面電極の代わりとしてもよい。
また、側面電極50は、上面電極32の一部と、保護膜80の一部と、下面電極40の一部と、絶縁基板10の側面(つまり、X1側の側面と、X2側の側面)と絶縁膜12の側面(つまり、X1側の側面と、X2側の側面)を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。この側面電極50は、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。この側面電極50は、樹脂銀系厚膜により形成され、略均一の厚膜に形成されていて、20〜30μmの厚みに形成されている。
この側面電極50は、樹脂と銀粉末とを含む樹脂銀系厚膜であり、具体的には、エポキシ樹脂と銀粉末とを均一に混練してなる側面電極用ペーストにより構成された熱硬化型の樹脂・銀系厚膜である。ここで、側面電極50全体における樹脂と銀との比率は、重量比で、樹脂が10〜25%(好適には、14〜16%)で、銀粉末が75〜90%(好適には84〜86%)であり、容積比では、樹脂が55〜65%で、銀粉末が35〜45%となっている。
なお、側面電極50や下面電極40を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂には限られず、フェノール樹脂でもよく、また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを混合したもの等他の樹脂であってもよい。
実施例4のチップ抵抗器P4における上記以外の構成は実施例1と同様であるので、詳しい説明を省略する。
上記構成のチップ抵抗器P4の製造方法について説明すると、まず、上面に一次スリットと二次スリットとが形成されたアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数のチップ抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものであり、平板状のグリーンシート(含有率96%程度のアルミナを含有するグリーンシート)を予め焼成したものである)(基板素体)を用意し、このアルミナ基板の上面に抵抗体20を形成する(抵抗体形成工程)。つまり、抵抗体ペースト(例えば、酸化ルテニウム系ペースト(具体的には、酸化ルテニウム系メタルグレーズペースト))を印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体20を形成する。
次に、アルミナ基板の上面に上面電極32を形成する(上面電極形成工程)。すなわち、上面電極ペーストをその一部が抵抗体に積層するように印刷し、乾燥・焼成する。この場合の上面電極ペーストは、銀系ペースト(例えば、銀系メタルグレーズペースト)である。この銀系ペーストとしては、例えば、焼成温度が約850℃の銀系ペーストとする。なお、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。
次に、トリミングによる抵抗値調整の前にカバーコート70を形成する。つまり、ホウ珪酸鉛ガラス系のガラスペーストを印刷して焼成し、カバーコート70を形成する。この場合、カバーコート70は、電極間方向とは直角の方向であるカバーコート形成方向に帯状に形成し、該カバーコート形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度にカバーコートを形成して、チップ抵抗器複数個分のカバーコートを帯状に連続して形成してもよい。
次に、抵抗体20にトリミング溝を形成してトリミングを行なうことにより抵抗値を調整する(抵抗体調整工程)。つまり、レーザートリミングにより抵抗体20にトリミング溝を形成する。
次に、保護膜80を形成する(保護膜形成工程)。つまり、カバーコート70の全体と上面電極32の一部(内側の領域)とを覆うように保護膜を形成する。つまり、保護膜用ペースト(エポキシ系の樹脂ペースト)を印刷し、乾燥・硬化させる。この場合、保護膜は、電極間方向とは直角の方向である保護膜形成方向に帯状に形成し、該保護膜形成方向にチップ抵抗器複数個分を有する形成領域に一度に保護膜を形成する。
次に、アルミナ基板の裏面(すなわち、底面)の全面に絶縁膜を形成する(絶縁膜形成工程)。つまり、アルミナ基板の裏面の全面に樹脂系の絶縁膜用ペーストを印刷し、乾燥・硬化させる。
次に、絶縁膜の裏面に下面電極40を形成する(下面電極形成工程)。つまり、下面電極用のペースト(樹脂銀ペースト)を印刷し、乾燥・硬化させる。樹脂銀ペーストとしては、例えば、乾燥温度が約200℃の樹脂銀ペーストを用いる。なお、この下面電極の形成に際しては、一枚のスクリーンで縦横に複数個印刷する。
その後は、一次スリットに沿って一次分割して短冊状基板とする(一次分割工程)。
次に、上記短冊状基板に対して、側面電極50を形成する(側面電極形成工程)。つまり、側面電極用ペースト(樹脂銀ペースト)を短冊状基板に印刷し、乾燥・硬化させる。樹脂銀ペーストとしては、例えば、乾燥温度が約200℃の樹脂銀ペーストを用いる。
その後、二次スリットに沿って二次分割する(二次分割工程)。次に、メッキ60を形成する(メッキ工程)。つまり、厚さが10〜30μmの銅メッキを形成し、厚さが4〜12μmのニッケルメッキを形成し、その後、厚さが3〜15μmの錫メッキを形成する。以上のようにして、チップ抵抗器P4を形成する。
本実施例のチップ抵抗器P4の使用状態について説明すると、通常のチップ抵抗器と同様に、配線基板(プリント基板としてもよい)に実装して使用する。配線基板への実装においては、図10に示すように、チップ抵抗器P4は、配線基板200上に形成されたランド202に下面電極40がランド202側としてランド202に対向するようにして、ハンダフィレット210を介して実装される。なお、チップ抵抗器P4をハンダフィレット210を介して実装した状態では、錫メッキ66はハンダフィレット210と一体になるので、図10において、錫メッキ66は描かれていない。
本実施例のチップ抵抗器P4においては、メッキ60の内側層が銅メッキ62により形成されているので、熱応力を緩和することができ、さらに、銅メッキ62の内側の面に樹脂銀系厚膜により形成された側面電極50が接して積層しているので、より熱応力が緩和され、さらには、樹脂により形成された絶縁膜12が設けられているので、ハンダフィレットを介してプリント基板に実装した状態で通電を繰り返した場合でも、チップ抵抗器とハンダとの間の接合部にクラックが発生するのを防止することができる。
つまり、銅メッキ62を構成する銅はヤング率が約13×1010Paと低いので、銅メッキ62を10〜30μmの厚みに形成することにより、熱応力を緩和することができる。さらに、側面電極50には、樹脂が含まれていることにより柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、銅メッキ62と側面電極50とが積層していることによる相乗効果により、熱応力を緩和することができる。特に、側面電極50を20〜30μmの厚みに形成することにより、さらに、熱応力を緩和することができる。特に、側面電極50と側面電極50の表面に形成された銅メッキ62とが、下面電極40から上面電極32にまで広く形成されているので、下面電極40の周辺以外の部分においてもクラックの発生を防止できる。
また、チップ抵抗器P4には絶縁膜12が設けられていて、チップ抵抗器P4の配線基板への実装状態において、絶縁膜12が絶縁基板10とハンダフィレット210間に広く配置され、絶縁膜12は樹脂製であることから柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、この絶縁膜12によっても熱応力を緩和することができる。
さらに、チップ抵抗器P4の配線基板への実装状態において、下面電極40が絶縁基板10とハンダフィレット210間に配置され、下面電極40が樹脂が含まれていることにより柔軟性がある(すなわち、ヤング率が低い)ので、絶縁膜12と下面電極40と側面電極50と銅メッキ62とが積層していることによる相乗効果により、熱応力を緩和することができる。
なお、上記の説明においては、絶縁膜12は絶縁基板10の下面の全面に形成されているとしたが、下面電極40の領域のみに形成してもよい。つまり、絶縁基板10の下面における電極間方向の少なくとも端部領域に形成し、その絶縁膜の下面に下面電極40を形成してもよい。
なお、本実施例における上記の説明においては、電極部30を絶縁基板10の短辺側に形成するとしたが、電極部30を絶縁基板10の長辺側に形成してもよい。
また、本実施例における上記の説明において、側面電極50や下面電極40は、樹脂銀系厚膜により形成されているとしたが、これには限らず、カーボン、ルテニウム、ニッケルにおける少なくともいずれかの導電性物質を混合した樹脂を用いてもよい。つまり、側面電極50や下面電極40は、樹脂系の導電ペーストにより構成されたものであればよい。
上記各実施例(実施例1〜4)において、保護膜80や保護膜180は、エポキシ樹脂系厚膜により形成されるとしたが、エポキシ樹脂に限らず、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂における少なくともいずれか等の他の樹脂であってもよい。
また、実施例1、2、4においては、保護膜80は、樹脂に限らず、ホウ珪酸鉛ガラス系厚膜により形成してもよい。