JP5502490B2 - 標的核酸を位置選択的に切断する方法 - Google Patents
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Description
これに対し、近年、巨大なDNAであっても、金属イオンや金属イオン錯体を用いて当該DNAを特定の位置で切断することができる方法が開発された(例えば、特開2005−143484号公報、及び特開2006−174702号公報 参照。)。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、金属イオンや金属イオン錯体を核酸(DNA等)の切断触媒として用いて標的核酸を所望の位置で切断する方法であって、位置選択性及び反応効率が高く、副反応性(非特異反応性)が低く、経済性及び簡便性にも優れた、標的核酸の切断方法を提供することにある。また、当該切断方法に用いる新規複合化合物、試薬及びキットを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行い、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)複数のホスホノ基を含有する化合物と、特定の核酸配列に結合する化合物とが、O−アルキルオキシム基を含有するリンカー部分により結合されてなる、複合化合物。
本発明の複合化合物としては、例えば、前記核酸(核酸配列)がDNA(DNA配列)であるものが挙げられる。
本発明の複合化合物において、前記特定の核酸配列に結合する化合物としては、例えば、オリゴヌクレオチド又はペプチド核酸が挙げられる。ここで、当該オリゴヌクレオチドの塩基数は、例えば7〜50塩基であり、又は当該ペプチド核酸の塩基数は、例えば5〜25塩基である。
本発明の複合化合物としては、例えば、下記式(1)で表される複合化合物が挙げられる。
(式中、R1は特定の核酸配列に結合する化合物を表し、R2は複数のホスホノ基を含有する化合物を表し、R3は単結合又は任意の基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
ここで、上記式(1)中、例えば、R1がオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であり、かつR3が下記式(3)で表される基であってもよい。
(式中、qは0〜2を表し、rは0〜30の整数を表す。)
また、上記式(1)中、R2が下記式(2)で表されるものであってもよい。
(式中、pは0〜3の整数を表す。)
本発明の複合化合物としては、例えば、前記ホスホノ基に、金属イオン又は金属錯体が結合したものが挙げられる。ここで、当該金属イオン又は金属錯体としては、例えば、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体、又はセリウム(III)イオン若しくはセリウム(III)錯体が挙げられ、特に、これら錯体としては、例えば、セリウム(IV)又はセリウム(III)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体が挙げられる。
(2)標的核酸に、上記(1)に記載の複合化合物(金属イオン等が結合したものを除く)と、金属イオン又は金属錯体とを接触させる、標的核酸の切断方法。ここで、当該金属イオン又は金属錯体としては、例えば、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体、又はセリウム(III)イオン若しくはセリウム(III)錯体が挙げられ、特に、これら錯体としては、例えば、セリウム(IV)又はセリウム(III)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体が挙げられる。
上記(2)の方法としては、例えば、上記セリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体を、標的核酸への接触前及び/又は接触以後に酸化させ、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体にすることを含む方法が挙げられる。
(3)標的核酸に、上記(1)に記載の複合化合物(金属イオン等が結合したもの)を接触させる、標的核酸の切断方法。
上記(3)の方法としては、例えば、上記複合化合物中の金属イオン又は金属錯体がセリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体であって、当該セリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体を、標的核酸への接触前及び/又は接触以後に酸化させ、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体にすることを含む方法が挙げられる。
本発明の標的核酸の切断方法(上記(2)及び(3);以下同様)において、標的核酸としては、例えばDNAが挙げられる。
本発明の標的核酸の切断方法としては、例えば、前記複合化合物として、標的核酸の標的部分の5’末端領域に結合する複合化合物(a)と、当該標的部分の3’末端領域に結合する複合化合物(b)とを使用する方法が挙げられる。ここで、複合化合物(a)が結合する標的核酸の5’末端領域と複合化合物(b)が結合する標的核酸の3’末端領域との間にギャップが存在し、当該ギャップ中に所望の切断点が存在することが好ましい。また、複合化合物(a)及び複合化合物(b)中の、前記標的部分と結合する部分としては、いずれも、例えばオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸が挙げられる。
本発明の標的核酸の切断方法としては、例えば、前記標的核酸が2本鎖であり、前記複合化合物として、標的核酸の一方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(A)と、標的核酸の他方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(B)とを使用する方法が挙げられる。ここで、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分としては、いずれも、例えばオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸が挙げられる。また、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分としては、例えば、互いに相補的な部分を有し、且つそれぞれの5’末端側及び/又は3’末端側に互いに相補的でない部分を有するものが挙げられる。
(4)上記(1)に記載の複合化合物(金属イオン等が結合したものを除く)と、金属イオン又は金属錯体とを含む、標的核酸の切断用試薬。ここで、当該金属イオン又は金属錯体としては、例えば、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体、又はセリウム(III)イオン若しくはセリウム(III)錯体が挙げられ、特に、これら錯体としては、例えば、セリウム(IV)又はセリウム(III)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体が挙げられる。
(5)上記(1)に記載の複合化合物(金属イオン等が結合したもの)を含む、標的核酸の切断用試薬。
本発明の試薬(上記(4)及び(5);以下同様)において、標的核酸としては、例えばDNAが挙げられる。
本発明の試薬としては、例えば、前記複合化合物として、標的核酸の標的部分の5’末端領域に結合する複合化合物(a)と、当該標的部分の3’末端領域に結合する複合化合物(b)とを含む試薬が挙げられる。ここで、複合化合物(a)が結合する標的核酸の5’末端領域と複合化合物(b)が結合する標的核酸の3’末端領域との間にギャップが存在し、当該ギャップ中に所望の切断点が存在することが好ましい。また、複合化合物(a)及び複合化合物(b)中の、前記標的部分と結合する部分としては、いずれも、例えばオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸が挙げられる。
本発明の試薬としては、例えば、前記標的核酸が2本鎖であり、前記複合化合物として、標的核酸の一方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(A)と、標的核酸の他方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(B)とを含む試薬が挙げられる。ここで、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分としては、いずれも、例えばオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸が挙げられる。また、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分としては、例えば、互いに相補的な部分を有し、且つそれぞれの5’末端側及び/又は3’末端側に互いに相補的でない部分を有するものが挙げられる。
(6)上記(4)又は(5)に記載の試薬を含む、標的核酸の切断用キット。
図2は、本発明の複合化合物の合成例を示すスキーム図(概略)である。
図3は、本発明の複合化合物を用いた「2本鎖DNAの切断」の概要を示す図である。具体的には、2本鎖DNAのそれぞれの鎖に相補的に結合し得るペプチド核酸(PNA)に、複数のホスホノ酸基を含有する基を結合することで、触媒(Ce(IV))が切断部位に濃縮されることを表している。
図4は、本発明の方法を用いた標的DNAの位置選択的切断(1)(実施例2;85 mer target with 5−base gap,t=114 h,50μM incubated Ce(IV)/EDTA.)の結果を示す図である。左図(A)は、20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果であり、右図(B)は、標的DNAに対して使用した本発明の各種複合化合物の種類と組み合わせ(標的DNAに対してハイブリダイゼーションさせたDNA誘導体の種類と態様)を概略的に示した図である。なお、レーン4の態様が、従来法の中では最も高いの切断活性を示すものである。
図5は、本発明の方法を用いた標的DNAの位置選択的切断(2)(実施例3;41 mer target with 1−base gap,t=67 h,20μM non−incubated Ce(IV)/EDTA.)の結果を示す図である。左図(A)は、20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果であり、右図(B)は、標的DNAに対して使用した本発明の各種複合化合物の種類と組み合わせ(標的DNAに対してハイブリダイゼーションさせたDNA誘導体の種類と態様)を概略的に示した図である。
図6は、本発明の方法を用いた標的DNAの位置選択的切断(3)(実施例4;85 mer target with 5−base gap,t=54 h,4μM incubated Ce(IV)/EDTA or Ce(III).)の結果を示す図である。左図(A)は、20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果であり、右図(B)は、標的DNAに対して使用した本発明の各種複合化合物の種類と組み合わせ(標的DNAに対してハイブリダイゼーションさせたDNA誘導体の種類と態様)を概略的に示した図である。
3:DNA切断触媒
なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2007−299747号明細書の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1.本発明の概要
DNA等の核酸を所定の位置で切断するには、(1)核酸を切断する触媒分子と、(2)核酸の所定の領域(位置)に結合して活性化する分子とを用いるのが一般的な手法である。(1)としては、本発明者が従来明らかにしているように、セリウム(IV)イオン及びその錯体が極めて有効である。しかし、これまでは、これらのイオン及びその錯体を、核酸の所定の領域に結合する分子に結合させる適当な手法がなかったため、上記(1)及び(2)の両者は独立に反応系に加えられており、そのため、切断効率が低く、切断の位置選択性も不十分であった。また、核酸を切断するために大量の触媒を必要とした。さらに細胞内で核酸を選択的に切断するには、セリウム(IV)錯体と核酸認識分子との両者をそれぞれ細胞内に導入する必要があり、これは容易に実現できるものではなかった。本発明は、このような課題を解決することを目的の一つとするものであり、水溶液中で容易に調製可能で、しかも安定で、核酸を所望の位置で効率的に切断する標的核酸の切断方法を提供するものである。
本発明の一態様は、水溶液中で容易に調製でき、しかも水溶液中で安定なリンカーを用いて、セリウム(IV)錯体と核酸認識分子とを結合し、これを用いて核酸を切断する方法である。このように、切断能を有するセリウム(IV)錯体を核酸中のターゲット領域に固定することで、核酸を所望位置のみで選択的に切断することができる(図1参照)。また、本発明の他の一態様としては、セリウム(IV)の代わりにセリウム(III)(セリウム(III)イオンやセリウム(III)錯体)を用いる方法も挙げられる。セリウム(III)は、反応系内で、空気中の酸素等と反応して自発的に酸化され、セリウム(IV)となり、DNA切断活性を有するものとなる。
2.標的核酸の切断方法
本発明の標的核酸の切断方法は、標的核酸に、所定の複合化合物と金属イオン若しくは金属錯体とをそれぞれ接触させるか、又は所定の複合化合物に金属イオン若しくは金属錯体を結合させたものを接触させる方法である。ここで、標的核酸としては、限定はされないが、例えばDNA(1本鎖及び2本鎖)が好ましい。
(1)複合化合物
本発明の方法においては、複数のホスホノ基(−P(O)(OH)2)を含有する化合物と、特定の核酸配列に結合する化合物とが、O−アルキルオキシム基(−O−N=)を含有するリンカー部分により結合されてなる複合化合物を用いることができる。
当該複合化合物としては、複数のホスホノ基(−P(O)(OH)2)を含有する化合物中のホスホノ基の数は、複数であればよく限定はされないが、例えば、2〜10が好ましく、より好ましくは3〜6である。
当該複合化合物としては、特定の核酸配列に結合する化合物が、例えばオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸(PNA)であるものが好ましい。オリゴヌクレオチドとしては、DNA、RNA及びその誘導体が挙げられる。また、PNAは、アミド結合を主鎖に、核酸塩基を側鎖に持つ高分子であり、例えば「生命科学のニューセントラルドグマ」(化学同人、平成14年発行)の第66ページに記載されているものを利用することができる。当該オリゴヌクレオチドは、塩基数が7〜50塩基であるものが好ましく、より好ましくは10〜20塩基である。また、当該ペプチド核酸は、塩基数が5〜25塩基であるものが好ましく、より好ましくは7〜15塩基である。
当該複合化合物においては、O−アルキルオキシム基(−O−N=)を含有するリンカー部分は、上述した複数のホスホノ基を含有する化合物由来の部分と、特定の核酸配列に結合する化合物由来の部分とを連結する部分である。このO−アルキルオキシム基は、O−アルキルヒドロキシアミンとアルデヒド基とから水溶液中で容易に合成することができる(図2の合成スキーム参照)。詳しくは、複数のホスホノ基を含有する化合物にアルデヒド基を導入したものと、特定の核酸配列に結合する化合物(オリゴヌクレオチド等)にO−アルキルヒドロキシアミンを導入したものを調製し、これら両者を反応させることで、O−アルキルオキシム基が形成されるとともに当該基を介した複合化合物が生成される。当該複合化合物は、標的核酸の切断条件下において容易に調製することができるものである。また、O−アルキルオキシム基は、水溶液中の標的核酸の切断条件下で、構造上十分に安定性が高いため、結果として標的核酸の切断効率を高め、非特異切断を低減することにも効果を発揮するものである。なお、O−アルキルオキシム基を含有するリンカー部分は、図2に示した構造に限定されるわけではない。本発明において、当該複合化合物は、O−アルキルオキシム基をリンカー部分に用いることにより初めて得られた、核酸切断触媒である金属イオン等と特定の核酸配列に結合する化合物とを効率的にハイブリッドさせるために使用できる化合物である。
当該複合化合物は、例えば、下記式(1)で表されるものが好ましく挙げられる。
(式中、R1は特定の核酸配列に結合する化合物を表し、R2は複数のホスホノ基を含有する化合物を表し、R3は単結合又は任意の基を表し、nは1〜10(好ましくは3〜6)の整数を表す。)
また、上記式(1)において、R1がオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であり、R3が下記式(3)で表される基である複合化合物が好ましく挙げられる。
(式中、qは0〜2(好ましくは0〜1)を表し、rは0〜30(好ましくは0〜10)の整数を表す。)
さらに、上記式(1)において、R2が下記式(2)で表されるものである複合化合物が好ましく挙げられる。
(式中、pは0〜3(好ましくは0〜1)の整数を表す。)
本発明においては、特に、上記式(1)において、R1がオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であり、R2が上記式(2)で表されるものであり、かつ、R3が上記式(3)で表される基である複合化合物が好ましい。このような複合化合物としては、例えば、下記に列挙する複合化合物等が挙げられる(但し、列挙した各複合化合物中のオリゴヌクレオチド部分(配列番号1又は2)は単なる例示であり、限定はされない。)。
本発明において、当該複合化合物としては、その含有する複数のホスホノ基に、金属イオン又は金属錯体が結合したものが好ましい態様として挙げられる。このように金属イオン等と結合した複合化合物を用いることにより、核酸の非特異的な切断を大いに低減し、切断効率及び位置選択性を飛躍的に向上させることができる。また、細胞内で標的核酸領域を選択的に切断する場合に、複合化合物と金属イオン等とをそれぞれ導入する必要がなく(通常、非常に困難である)、一度に導入するのみでよいため、細胞内の核酸を容易に切断することができる。さらには、核酸切断触媒となる金属イオン等の使用量を大きく低減することができ、経済性の点でも極めて好ましい。
上記金属イオン及び金属錯体は、核酸切断の触媒としての効果を有するものであればよく、限定はされないが、例えば、セリウム(IV)(Ce(IV))イオン、セリウム(IV)錯体、ジルコニウム(IV)イオン、ジルコニウム(IV)錯体、ランタニド(III)イオン及びランタニド(III)錯体等が好ましく、なかでもセリウム(IV)イオン及びセリウム(IV)錯体が特に好ましい。また、セリウム(IV)イオン及びセリウム(IV)錯体と同様に、セリウム(III)イオン及びセリウム(III)錯体も、特に好ましい。セリウム(III)イオン及びセリウム(III)錯体は、前述したように、標的核酸を切断する反応系において、空気中の酸素等と反応して自発的に酸化され、セリウム(IV)イオン及びセリウム(IV)錯体となり、核酸切断の触媒としての効果を有するものとなる。
セリウム(III)イオン及びセリウム(III)錯体は、中性の溶液中で水酸化物及びその沈殿を形成しにくく均一であるため、核酸切断分子として調製が容易である。また、不要なゲルとなって核酸の切断に直接に関与しない部分を構成することもないため、調製した分がほぼそのまま核酸切断に用いられるため、使用量を非常に低く抑えることができ、経済的に有利であるのみならず、反応系内での不要な核酸切断を避けることができる。さらに、細胞内での使用も容易になるという大きな利点を有する。
セリウム(IV)イオンを複合化合物のホスホノ基に結合させる場合、その反応においては、セリウム(IV)イオンは、硫酸二アンモニウムセリウム(IV)水溶液、硫酸セリウム(IV)水溶液、塩化セリウム(III)水溶液の酸化物、硫酸セリウム(III)水溶液の酸化物、過塩素酸セリウム(III)水溶液の酸化物など、セリウム(IV)イオンを含む水溶液であれば、いずれの形態であっても反応系に導入することができるが、好ましくは硫酸二アンモニウムセリウム(IV)である。
セリウム(IV)錯体は、限定はされないが、例えば、セリウム(IV)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体が特に好ましい。セリウム(IV)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体は、セリウム(IV)とポリアミン−N−ポリカルボン酸とを水中で接触することにより得ることができる(他の錯体も同様にして得られる。)。ここで、ポリアミン−N−ポリカルボン酸としては、「金属キレート、I−IV」(南江堂、昭和42年発行)に記載のものを利用することができ、例えば、エチレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸、1,4−ジアミノブタン−N,N,N’,N’−四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸などが好ましく挙げられる。
なお、セリウム(III)イオン及びセリウム(III)錯体を用いる場合も、上記のセリウム(IV)イオン及びセリウム(IV)錯体を用いる場合の記載が同様に適用できる。
(2)標的核酸の切断方法
(i)本発明の標的核酸の切断方法の一態様としては、標的核酸に対して、所定の複合化合物と金属イオン若しくは金属錯体とをそれぞれ接触させる方法が挙げられる。ここで、所定の複合化合物(金属イオン等との結合体は除く)とは、上記2.(1)項に説明した通りのものである。
(ii)また、本発明の標的核酸の切断方法の他の態様としては、標的核酸に対して、所定の複合化合物に金属イオン若しくは金属錯体を結合させたものを接触させる方法が挙げられる。ここで、所定の複合化合物に金属イオン若しくは金属錯体を結合させたもの(金属イオン等との結合体)とは、上記2.(1)項に説明した通りのものである。
上記(i)及び(ii)の切断方法においては、金属イオン又は金属錯体がセリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体である場合、当該セリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体を、標的核酸への接触前及び/又は接触以後に酸化させ、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体にすることが好ましい。ここで、セリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体を酸化させる態様としては、特に限定はされないが、例えば、空中の酸素と反応し、自発的になされる酸化が好ましく挙げられる。
また、上記(i)及び(ii)の切断方法においては、前記複合化合物として、標的核酸の標的部分の5’末端領域に結合する複合化合物(a)と、当該標的部分の3’末端領域に結合する複合化合物(b)とを使用することができる。この際、複合化合物(a)及び複合化合物(b)中の、前記標的部分と結合する部分は、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であることが好ましい。このような2種類の複合化合物を使用する場合は、複合化合物(a)が結合する標的核酸の5’末端領域と複合化合物(b)が結合する標的核酸の3’末端領域との間にギャップが存在していて、当該ギャップ領域中に所望の切断点が存在するようにすることが好ましく、極めて位置選択性が高くかつ効率的な核酸切断が可能となる。当該切断方法は、標的核酸として、1本鎖DNA、及び2本鎖DNAのいずれか一方の鎖を所望の位置で切断する際に有用な方法である。
さらに、上記(i)及び(ii)の切断方法においては、標的核酸が2本鎖であり、かつ、前記複合化合物として、標的核酸の一方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(A)と、標的核酸の他方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(B)とを使用することができる。ここで、これら2種類の複合化合物については、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分が、互いに相補的な部分を有し、且つそれぞれの5’末端側及び/又は3’末端側に互いに相補的でない部分を有するものであることが、2本鎖の標的核酸を効果的に切断することができるため好ましい。このような2種類の複合化合物を使用する場合は、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分は、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であることが好ましいが、特に、ペプチド核酸であることが好ましい。ペプチド核酸である場合、図3に示すように、複合化合物中の標的部分と結合する部分が、2本鎖である標的核酸のそれぞれの鎖に結合(ハイブリダイゼーション)するとともに両鎖間に入り込んで2本鎖を解き(invasion)、各鎖に部分的に一本鎖の領域を生じさせる。この一本鎖の領域に対して、核酸切断触媒である金属イオン又は金属イオン錯体が作用し、最終的に2本鎖の標的核酸を所望の位置で効率的に切断することができる。
(3)標的核酸の切断方法の用途
本発明の標的核酸の切断方法は、巨大な核酸鎖であっても所望の位置で選択的に切断することができる方法であるため、従来、制限酵素の位置特異性で決定されていた“核酸サイズの壁”を容易に打破することができる。すなわち、制限酵素を用いた遺伝子組換え技術において正確に操作できるのは、プラスミドDNAに限られるが、本発明の方法を用いれば、ウイルスゲノムはもちろんのこと、高等生物の巨大な核酸鎖であっても所望の位置で選択的に切断して正確な操作が可能となる。例えば、本発明の方法をin vitroで使用した場合は、従来の方法では容易に操作できなかった巨大DNA等を正確に操作することができる。また、本発明の方法をin vivoで使用し、進入したウイルスゲノムを破壊すれば抗ウイルス剤となり、ヒトの特定の遺伝子(例えば癌遺伝子)を破壊すれば、有効な癌治療薬を提供することができる。さらに、ゲノムDNA中の特定の位置を切断することにより、類似ゲノム間の交換反応(相同組換え)を促進して、ゲノムを改変することにも利用することができる。
このように、本発明の方法の有用な用途を列挙すると、以下の通りとなる。(a)有用な核酸操作ツールの供給、(b)新たなベクターの開発(アデノウイルスや各種レトロウイルス等の遺伝子操作)、(c)ターゲット能に優れた抗ウイルス剤、(d)抗癌剤の開発(テロメアの破壊等)、(e)相同組換え(生体内における遺伝子組換え)の促進(品種改良等)。ここで、上記(b)では、例えば、従来厳密な遺伝子操作が不可能であったアデノウイルス等を正確に遺伝子操作することにより優れたベクターを開発することが挙げられ、上記(c)〜(e)では、例えば、本発明の方法をin vivoで活用することが挙げられる。また、上記(c)では、生体内に侵入したウイルスのゲノムを選択的に破壊することが挙げられ、上記(d)及び(e)では、ゲノムDNAを所望の位置で切断して目的を実行することが挙げられる。
3.標的核酸の切断用試薬及びキット
(1)標的核酸切断用試薬
(i)本発明の標的核酸切断用試薬の一態様としては、所定の複合化合物と、金属イオン又は金属錯体とを含むものが挙げられる。ここで、所定の複合化合物(金属イオン等との結合体は除く)とは、上記2.(1)項に説明した通りのものである。
(ii)また、本発明の標的核酸切断用試薬の他の態様としては、所定の複合化合物に金属イオン若しくは金属錯体を結合させたものを含むものが挙げられる。ここで、所定の複合化合物に金属イオン若しくは金属錯体を結合させたもの(金属イオン等との結合体)とは、上記2.(1)項に説明した通りのものである。
上記(i)及び(ii)の試薬においては、前記複合化合物として、標的核酸の標的部分の5’末端領域に結合する複合化合物(a)と、当該標的部分の3’末端領域に結合する複合化合物(b)とを含むことができる。ここで、複合化合物(a)及び複合化合物(b)中の、前記標的部分と結合する部分は、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であることが好ましい。当該試薬は、標的核酸として、1本鎖DNA、及び2本鎖DNAのいずれか一方の鎖を所望の位置で切断する際に有用なものである。
また、上記(i)及び(ii)の試薬においては、標的核酸が2本鎖であり、かつ、前記複合化合物として、標的核酸の一方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(A)と、標的核酸の他方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(B)とを含むことができる。このような2種類の複合化合物を含む場合は、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分が、互いに相補的な部分を有し、且つそれぞれの5’末端側及び/又は3’末端側に互いに相補的でない部分を有するものであることが、2本鎖の標的核酸を効果的に切断することができるため好ましい。ここで、複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分は、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であることが好ましいが、特に、ペプチド核酸であることが好ましい。
本発明の試薬は、上述したもの以外に他の成分を含んでいてもよく、限定はされない。
(2)標的核酸切断用キット
本発明の標的核酸切断用キットは、上述した本発明の標的核酸切断用試薬を構成成分として含むものである。本発明のキットは、前述した本発明の標的核酸の切断方法に有効に利用することができ、極めて有用性及び実用性が高いものである。
本発明のキットは、上記構成成分以外に、他の構成成分を含んでいてもよい。他の構成成分としては、例えば、各種バッファ、滅菌水、エッペンドルフチューブ、核酸共沈剤、各種ゲル(粉末)及びアジ化ナトリウム等の防腐剤、並びに実験操作マニュアル(説明書)等のほか、必要に応じ、各種電気泳動装置等も挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
イソフタルイミドで水酸基を保護したホスホロアミダイトモノマーと、複数のホスホノ基を含有するベンズアルデヒド誘導体(図2上段に記載のL1−NTP及びL1−EDTP等)とは、いずれも文献既知の合成方法により合成した。
図2下段に示すように、DNA合成機により合成した所望のDNAオリゴマーに、イソフタルイミドで水酸基を保護したホスホロアミダイトモノマーを反応させて、(i)の化合物を得た。その後、当該(i)の化合物を、ヒドラジン/ピリジン/酢酸混合物(1:32:8(v/v/v))で処理してイソフタルイミド基を除去して(図2下段のaの反応ステップ)、(ii)の化合物を得た。当該(ii)の化合物を、水溶液中にて、複数のホスホノ基を含有するベンズアルデヒド誘導体(L1−NTP及びL1−EDTP等)と反応させ、反応させた両者間にO−アルキルオキシム基(−O−N=)を形成させた(図2下段のb又はcの反応ステップ)。
その結果、本発明の複合化後物として、O−アルキルオキシム基を含むリンカー部分を備えた、複数のホスホノ基を含有するDNA誘導体(iii)及び(iv)の化合物)を得た。
実施例1に記載の方法により、本発明の複合化合物として、複数のホスホノ基を含有するDNA誘導体を各種合成した。なお、各種DNA誘導体において、標的DNAに結合させる部分であるDNAオリゴマー部分(塩基数20)は、下記の配列番号1又は2に示される塩基配列からなるDNAとした。
以下に、合成した各種DNA誘導体を示した(5’−NTP(2)、3’−NTP(2)、5’−EDTP(3)、3’−EDTP(3)、5’−2NTP(4)、3’−2NTP(4)、5’−2EDTP(6)及び3’−2EDTP(6)(括弧内の数字は1分子当たりのホスホノ基の含有数))。但し、後述する実施例3及び実施例4で用いたDNA誘導体も合わせて列挙した。
また、比較対照として、DNAオリゴマーの末端にリン酸基(1個)を有するDNA誘導体や、未処理のDNAオリゴマーも準備した。
標的DNAの切断反応においては、まず、5’−末端をFAMで標識した標的DNA(塩基数85のオリゴヌクレオチド:5’−FAM−GAACTGGACCTCTAGCTCCTCAATTAGAATCAGGAATGGCTTATGGTGCAGACTGTCGACCTAAGTAGACGCAATGTCGGACGTA−3’(配列番号3;下線部は各DNA誘導体中のDNAオリゴマー部分が結合(ハイブリダイズ)する領域))の1μM水溶液(HEPES buffer 5mM,pH7、NaCl 100mM)に、2種(場合により1種)の前記DNA誘導体をそれぞれ終濃度2μMとなるように加えた。その後、90℃で1分間加熱し、室温まで徐冷して2本鎖を形成させ(ハイブリダイゼーション)、標的DNA中に5塩基のギャップ部分を作った。なお、各種DNA誘導体を用いた実験の態様は、図4の右側の概略図(B)に示す通りである。次いで、ハイブリダイゼーション後の反応系に、Ce(IV)/EDTA水溶液を終濃度50μMとなるように添加し、37℃で114時間反応させた。標的DNAの切断を確認するための分析は、20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により行った。
結果は、図4の左側の写真(A)に示す通りであった。各レーンの詳細は以下の通りである。
レーン1:未処理
レーン2:Ce(IV)・EDTA錯体のみ
レーン3:2本のDNAを未処理で用いたもの
レーン4:2本のDNAの末端にリン酸基を結合したもの
レーン5:2本のDNAの一方にのみNTP基を結合したもの
レーン6:2本のDNAの他方にのみNTP基を結合したもの
レーン7:2本のDNAの両方にNTP基を結合したもの
レーン8:2本のDNAの一方にのみEDTP基を結合したもの
レーン9:2本のDNAの他方にのみEDTP基を結合したもの
レーン10:2本のDNAの両方にEDTP基を結合したもの
2種のDNA誘導体のいずれのDNAオリゴマーにもNTP基又はEDTP基を結合した場合は、標的DNAがギャップ部分で効率よく切断された(レーン7及び10)。それに対して、未処理のDNAオリゴマーを用いた場合は(レーン3)、標的DNAの切断はほとんど観測されず、また2種のDNA誘導体のDNAオリゴマーの末端にリン酸基を結合した場合も(レーン4)、非常に弱い切断しか観測されなかった。
標的DNAとして塩基数41のオリゴヌクレオチド:5’−FAM−CAATTAGAATCAGGAATGGCNGTGCAGACTGTCGACCTAAG−3’(配列番号4;下線部は各DNA誘導体中のDNAオリゴマー部分が結合(ハイブリダイズ)する領域)を用いたこと、ギャップ部位における塩基数が1であること、Ce(IV)/EDTA濃度が20μMであること、ならびに反応時間が67時間であること以外は、基本的に実施例2(図4)と同様の操作を行った。
結果は、図5の左側の写真(A)(20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果)に示す通りであった。
2種のDNA誘導体のいずれのDNAオリゴマーにもEDTP基又は2EDTA基を結合させた場合は(それぞれレーン5,8,9,10)、標的DNAがほぼ単一の箇所のみで(ギャップ部分で)切断された。また、2種のDNA誘導体のいずれか一方のDNAオリゴマーにのみ2EDTP基を結合した場合は(レーン6,7)、レーン5,8,9,10の結果には劣るものの、十分に有効な切断が観測された。
実施例1に記載の方法により、本発明の複合化合物として、複数のホスホノ基を含有するDNA誘導体を各種合成した。具体的には、実施例2中に示した5’−EDTP(3)及び3’−EDTP(3)のDNA誘導体(括弧内の数字は1分子当たりのホスホノ基の含有数)を合成した。なお、各種DNA誘導体において、標的DNAに結合させる部分であるDNAオリゴマー部分(塩基数20)は、実施例2と同様、下記の配列番号1又は2に示される塩基配列からなるDNAとした。
また、比較対照についても、実施例2と同様に、DNAオリゴマーの末端にリン酸基(1個)を有するDNA誘導体、及び未処理のDNAオリゴマーを準備した。
標的DNAの切断反応においては、まず、5’−末端をFAMで標識した標的DNA(塩基数85のオリゴヌクレオチド:5’−FAM−GAACTGGACCTCTAGCTCCTCAATTAGAATCAGGAATGGCTTATGGTGCAGACTGTCGACCTAAGTAGACGCAATGTCGGACGTA−3’(配列番号3;下線部は各DNA誘導体中のDNAオリゴマー部分が結合(ハイブリダイズ)する領域))の1μM水溶液(HEPES buffer 5mM,pH7、NaCl 100mM)に、2種(場合により1種)の前記DNA誘導体をそれぞれ終濃度1μMとなるように加えた。その後、90℃で1分間加熱し、室温まで徐冷して2本鎖を形成させ(ハイブリダイゼーション)、標的DNA中に5塩基のギャップ部分を作った。なお、各種DNA誘導体を用いた実験の態様は、図6の右側の概略図(B)に示す通りである。次いで、ハイブリダイゼーション後の反応系に、Ce(IV)/EDTA水溶液あるいはCe(III)水溶液(具体的にはCe(NO3)3水溶液)を、終濃度4μMとなるように添加し、50℃で94時間反応させた。ここで、添加したCe(III)は、反応系内で、(空気中由来の酸素によって自発的に)酸化されCe(IV)に変化した。標的DNAの切断を確認するための分析は、20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により行った。
結果は、図6の左側の写真(A)に示す通りであった。各レーンの詳細は以下の通りである。
レーンN:未処理
レーンP4:Ce(IV)・EDTA錯体のみ
レーンP3:Ce(III)のみ
レーン1:2本のDNAの両方の末端にリン酸基を結合したもの
レーン2:1本のDNAにEDTP基を結合したもの
レーン3:1本のDNAにEDTP基を結合したもの
レーン4:2本のDNAの両方にEDTP基を結合したもの
レーン5:2本のDNAの両方の末端にリン酸基を結合したもの
レーン6:1本のDNAにEDTP基を結合したもの
レーン7:1本のDNAにEDTP基を結合したもの
レーン8:2本のDNAの両方にEDTP基を結合したもの
(レーン1〜4はCe(IV)・EDTA錯体を添加,レーン5〜8はCe(III)を添加)
Ce(IV)/EDTAを添加した反応系では(レーン1〜4)、2種のDNA誘導体のいずれのDNAオリゴマーにもEDTP基を結合した場合に(レーン4)、標的DNAのギャップ部分での切断効率が顕著に高かった。
これに対して、Ce(III)を添加した反応系では(レーン5〜8)、1種のDNA誘導体のDNAオリゴマーにEDTP基を結合した場合でも(レーン6)、ある程度高い切断効率が認められ、2種のDNA誘導体のいずれのDNAオリゴマーにもEDTP基を結合した場合は(レーン8)は、Ce(IV)/EDTAを添加した場合(レーン4)よりも相当顕著に高い切断効率が認められた。
また本発明によれば、上記本発明の切断方法に用い得る新規複合化合物、試薬及びキットを提供することができる。当該新規複合化合物は、上述のように、核酸の切断反応条件下において合成可能であるため簡便性に優れ、また合成後は、同条件下において構造上非常に安定なものであるため、標的核酸の切断効率を一層向上させることができる。
配列番号2:合成DNA
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号4:nはa、c、g又はtを表す(存在位置21)。
[配列表]
Claims (33)
- 少なくとも3つのホスホノ基を含有する化合物と、特定の核酸配列に結合する化合物とが、O−アルキルオキシム基を含有するリンカー部分により結合されてなる、複合化合物。
- 特定の核酸配列に結合する化合物が、オリゴヌクレオチド又はペプチド核酸である、請求項1記載の複合化合物。
- オリゴヌクレオチドの塩基数が7〜50塩基であり、又はペプチド核酸の塩基数が5〜25塩基である、請求項2記載の複合化合物。
- 前記核酸がDNAである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合化合物。
- 下記式(1)で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合化合物。
- R1がオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸であり、R3が下記式(3)で表される基である、請求項5記載の複合化合物。
- R2が下記式(2)で表されるものである、請求項5又は6記載の複合化合物。
- 前記ホスホノ基に、金属イオン又は金属錯体が結合したものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合化合物。
- 金属イオン又は金属錯体が、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体、又はセリウム(III)イオン若しくはセリウム(III)錯体である、請求項8記載の複合化合物。
- 錯体が、セリウム(IV)又はセリウム(III)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体である、請求項9記載の複合化合物。
- 標的核酸に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合化合物と、金属イオン又は金属錯体とを接触させる、標的核酸の切断方法。
- 金属イオン又は金属錯体が、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体、又はセリウム(III)イオン若しくはセリウム(III)錯体である、請求項11記載の方法。
- 錯体が、セリウム(IV)又はセリウム(III)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体である、請求項12記載の方法。
- セリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体を、標的核酸への接触前及び/又は接触以後に酸化させ、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体にすることを特徴とする、請求項12又は13記載の方法。
- 標的核酸に、請求項8〜10のいずれか1項に記載の複合化合物を接触させる、標的核酸の切断方法。
- 複合化合物中の金属イオン又は金属錯体がセリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体であって、当該セリウム(III)イオン又はセリウム(III)錯体を、標的核酸への接触前及び/又は接触以後に酸化させ、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体にすることを特徴とする、請求項15記載の方法。
- 標的核酸がDNAである、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複合化合物として、標的核酸の標的部分の5’末端領域に結合する複合化合物(a)と、当該標的部分の3’末端領域に結合する複合化合物(b)とを使用する、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 複合化合物(a)が結合する標的核酸の5’末端領域と複合化合物(b)が結合する標的核酸の3’末端領域との間にギャップが存在し、当該ギャップ中に所望の切断点が存在する、請求項18記載の方法。
- 複合化合物(a)及び複合化合物(b)中の、前記標的部分と結合する部分が、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸である、請求項19記載の方法。
- 標的核酸が2本鎖であり、前記複合化合物として、標的核酸の一方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(A)と、標的核酸の他方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(B)とを使用する、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分が、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸である、請求項21記載の方法。
- 複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分が、互いに相補的な部分を有し、且つそれぞれの5’末端側及び/又は3’末端側に互いに相補的でない部分を有する、請求項22記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合化合物と、金属イオン又は金属錯体とを含む、標的核酸の切断用試薬。
- 金属イオン又は金属錯体が、セリウム(IV)イオン若しくはセリウム(IV)錯体、又はセリウム(III)イオン若しくはセリウム(III)錯体である、請求項24記載の試薬。
- 錯体が、セリウム(IV)又はセリウム(III)とポリアミン−N−ポリカルボン酸との錯体である、請求項25記載の試薬。
- 請求項8〜10のいずれか1項に記載の複合化合物を含む、標的核酸の切断用試薬。
- 前記複合化合物が、標的核酸の標的部分の5’末端領域に結合する複合化合物(a)と、当該標的部分の3’末端領域に結合する複合化合物(b)とを含む、請求項24〜27のいずれか1項に記載の試薬。
- 複合化合物(a)及び複合化合物(b)中の、前記標的部分と結合する部分が、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸である、請求項28記載の試薬。
- 標的核酸が2本鎖であり、前記複合化合物が、標的核酸の一方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(A)と、標的核酸の他方の鎖の標的部分と結合する複合化合物(B)とを含む、請求項24〜27のいずれか1項に記載の試薬。
- 複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分が、いずれもオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸である、請求項30記載の試薬。
- 複合化合物(A)及び複合化合物(B)中の、前記標的部分と結合する部分が、互いに相補的な部分を有し、且つそれぞれの5’末端側及び/又は3’末端側に互いに相補的でない部分を有する、請求項31記載の試薬。
- 請求項24〜32のいずれか1項に記載の試薬を含む、標的核酸の切断用キット。
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