JP5497302B2 - 合成開口ソーナー - Google Patents

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Description

本発明は、水中の情報を可視化する合成開口ソーナーの信号処理手段及び装置に関する。
レーダー、ソーナーなどを比較的小さな移動体に搭載する場合など、巨大な送受信アレイを具備することが困難な場合の画像化において、合成開口技術を適用することが広く知られている。合成開口技術は、移動体に搭載した送受信装置において、移動によって時々刻々取得される複数のデータを、ある場所でのデータの再構成(ホログラム画像の形成)に利用することで、画像の分解能の向上を図る技術である。海水中(水中)や海底(水底)の画像化を行うソーナー技術においても、海上の船舶から曳航を受けたり、有線/無線による通信を行ったりしながら目的範囲を移動する自律型無人潜水機/無人水中航走体(AUV:Autonomous Underwater Vehicle/UUV:Unmanned Underwater Vehicle)に送受波器を搭載して、水中や海底の画像を得る合成開口ソーナー(SAS: Synthetic Aperture SONAR)技術が知られている。
図1は、合成開口処理の基本原理を説明する図である。図1において、実アレイ100は、図示していない移動体手段に搭載された、複数の送受波器群より構成されている。実アレイ100は、直線軌道101に沿って一定速度で進む間に、所定の時間周期、所定の移動間隔で送受信を反復する。送受信で得られたすべてのデータのうち、送信位置102から順に送信位置104までを、撮像領域内の点10の像の合成のために、仮想口径103として用いる。撮像領域内の点10が直線軌道101に近ければ、仮想口径103に含める口径位置の数、すなわち仮想口径103の大きさを減少させ、直線軌道101から点10が遠い場合は仮想口径の大きさを増加させる。これにより仮想口径103の中央を通り直線軌道101に垂直な線108上の像が形成される。また、送信位置105から送信位置107を使用して仮想口径106の中央を通り直線軌道101に垂直な線109上の像が形成される。このように順次、直線軌道101上で仮想口径を103,106,…と移動体の移動方向にずらすことで、線108、線109、と撮像面の隣り合う結像線が順次取得される。最後にこれらの結像線を並べて表示することで、撮像面全体の合成開口画像が作成されることになる。
図2は、合成開口ソーナーの実際の運用を説明する図である。海水20中を航行する移動手段200(例えばAUVやUUV)には送受波器201が具備される。送受波器201からは、例えば海底面21に向かって音波が照射される。海水と海底との音響インピーダンスの違いから、海底の照射投影面222からは強いエコー信号が受信される。移動手段200の移動に従って、送受波器201から順次音波が送信され、従って順次受信信号も得られる。この複数の受信信号に対して図1の合成開口処理を施すことにより、合成開口画像が生成されることとなる。合成開口画像における軸の(軸線の,軸線上の)設定は、一般的に、横軸に図2に示すアジマス方向(移動体の移動方向)をとり、縦軸にアジマス方向と直交したレンジ方向をとる。レンジ方向としては図2に図示したグランドレンジ方向(海底面に平行な方向)とスラントレンジ方向(音波の照射方向)があるが、これらは照射角度の余弦を乗除することでお互いに一対一対応する。以下、レンジ方向とは、グランドレンジ方向、スラントレンジ方向のいずれかを指す。
一方、実際の海中においては、潮流や風浪階級は一定でない。これらの外乱はソーナーの運用に対して、時に無視できないほどの影響を及ぼす。現実に実海域における合成開口処理では、ソーナーを搭載するUUVやAUVなどの航走体の運動は、ソーナーで使用する音波の波長に比べたときに十分に位置精度の高い直線運動が確保できない場合が多い。その場合、航走体(移動体)200は図2に示すように、目的の直線軌道101より変動した軌道202を描くのが常である。このとき例えば海底に存在する沈底対象物203からの受信信号は、直線軌道101の時の投影面204からの反射信号でなく、動揺がある場合の投影面205からの反射信号が受信される。そこで、実際の音波は直線軌道の時に予想される海底の投影面204と動揺がある場合の投影面205とのズレ分を修正(補正)する方法が必要となってくる。そのような修正(補正)手段を一般的に、合成開口における動揺修正(補正)技術と呼び、従来、DPCA(Displaced Phase Center Antenna)、PGA(Phase Gradient Autofocus)、MEA(Minimum Entropy Autofocus)といった方式が提案されている。
DPCA方式は、隣接した送信に対する受信信号間での相関を利用した補正方法である(例えば、特許文献1)。この補正方法の基本は、送信ごとに実アレイ100の位置を一部重畳させ、重畳部分の受信信号相関から変動量を逐次的に求める方法である(例えば特許文献2、非特許文献1)。このような受信信号生データ(受信時刻に対して受信振幅が対になったデータ形式)に対して相関を利用して補正量を推定する方式としては、そのほかに航法データから隣接送信間で重畳したと思われるアレイ部を予測した上で、ピング(Ping:ある一回の送受信)間相互相関処理を行うP2C2(Ping-to-Ping Cross Correlation)方式などがある(例えば非特許文献2)。
PGA方式は、受信信号を整相した後(合成開口処理の前段階)に補正を行うものであり(例えば非特許文献3)、動揺によって生じる位相の勾配を画像データから評価し、位相誤差関数を重み付き最小二乗誤差法や最尤推定法によって求める手法である。
MEA方式は、合成開口画像の画像全体のエントロピーを評価関数として用い、エントロピーが最小となるときに画像のコントラストが最良となるという仮定に基づく。具体的には、動揺を示す位相誤差関数を高次の直交関数系で展開し、画像のエントロピーが最小となるように、仮定した位相誤差関数の係数を求める。エントロピーの最小化には最急降下法などを用いる(例えば非特許文献4)。
また、これらの動揺修正方式に加えて、慣性動揺検出装置などを用いて、物理的にロール・ピッチ・ヨー・サージ・スウェー・ヒーブの六軸動揺量を検出し受信信号に動揺補正量として与えるという手段もとられることがある。
それぞれの修正方式とも、直線軌道101と変動軌道202との差による誤差分を求め、受信から画像表示に至る信号処理全体の中のどこかの処理ブロックにおいて補正量を与えて動揺の影響を修正する、という点においては期待される効果は同一である。その一方で、方式ごとに、補正処理を行う場所が異なるため、受信・整相・合成開口処理・画像処理というフローの中で、お互いの欠点を補完しながらより精度の高い動揺修正を行うことも原理的に可能である。例えば、受信/整相間でDPCA方式、整相/合成開口処理間でPGA方式、合成開口処理後にMEA(もしくはPGA)方式など、異なる方式の補正手段を複数組み合わせて動揺修正を行うなどの組み合わせが可能である。
さらに一方で、実際の海中での運用に際しては、対象物が海底堆積層中に埋没していることがある。埋没していることによる受信信号の誤差は、動揺修正時の誤差と同じく受信信号における位相(時間)誤差として現れる。よって、埋没した対象物の合成開口画像を取得するにあたって、上記の動揺修正方式のみでは十分な位相・時間誤差の修正ができないことがある。ここで位相誤差と時間誤差は、伝搬時間の誤差という観点において物理的に同一である。特に伝搬時間の誤差分の大きさが、音波の位相にして−π<θ<πの間に収まっていれば、時間誤差は位相誤差として取り扱うことができる。一方で、それ以上の場合は、位相としての取り扱いはできず、単純に時間誤差として処理することとなる。
図2において、海底に向かって照射された音波207は、海底の音波投影面208を形成する。この投影面208から反射した音波のみが受信されれば、音波画像中には海底面21の凹凸を反映した画像が描出される。しかしながら、海底堆積層に浸透する音波は海水中の音線の延長直線209では伝搬しない。音波は海底堆積層の密度変化により屈折した軌跡210を通り、実際の堆積層中での音波投影面は海中での音波伝搬を仮定した時の投影面211と比べて、位相/時間誤差をもった堆積層内の投影面212となる。この投影面211と212の間の誤差が受信データとして現れるときには、船体動揺時の投影面204と205の間の誤差との和算された形で位相/時間誤差として顕在化する。よって、海底堆積層内に埋没した物体206を画像化する際には、動揺修正のみならず、堆積層の影響による誤差も併せて修正することが望まれる。
図3は、対象物が埋没している場合の合成開口画像への影響を具体的に説明する図である。図2をスラントレンジ方向(移動体から海底面に向かう方向)に俯瞰でみた図となっている。図3の各図の横軸はアジマス方向(送受波器移動方向)である。撮像面とソーナーの位置関係を示す左上の説明図では、縦軸はスラントレンジ方向(音波送信方向)であり、送受波器から海底堆積層に向かって音波が照射されている。海水中に沈底対象物203が存在し、堆積層中に埋没物206が存在する。合成開口処理においては左上図のように、アジマス方向にプラットフォームが漸次移動しながら音波の送受信を繰り返す。そのときに、たとえば沈底対象物203は、それぞれのプラットフォームの場所からR1,R2,…,Rnの距離からの反射エコーを返す。これは各ピングの受信データを整相して並べたエコーグラム31の中では、それぞれの送受信のデータにおいて、R1,R2,…,Rnに対応する時間、すなわち海水中での音速をC0としたときの往復時間、T1=2R1/C0,T2=2R2/C0,…,Tn=2Rn /C0の受信時刻に沈底対象物203からのエコーが存在することになる。よってエコーグラム31中での沈底対象物203からの反射エコーは、曲率をもったカーバチャ(カーブ)304上に存在する。このカーバチャに沿って、アジマス方向のデータ圧縮を行うことで、合成開口処理画像32に示すように、沈底対象物203が結像(305)する。なお、エコーグラムの縦軸は音波の受信時刻となっている。
一方で、対象物が埋没していた場合には、このプロセスがうまく働かない場合が考えられる。左上図に示すように、埋没物206からの反射エコーは、沈底対象物203と同様に移動体の場所からr1,r2,…,rnの距離から反射エコーを返すとする。この場合、もし対象物までの音波伝搬経路が海水で満たされていれば、エコーグラム31においてもt1 =2r1/C0,t2 =2r2/C0,…,tn=2rn/C0の受信時刻に埋没対象物206からのエコーが存在することになる。しかし、埋没対象物206の周囲において音波は海底堆積層内を伝搬する。そのため、音速・伝搬経路が異なるため、実際の埋没対象物206のカーバチャ308には、dt1,dt2,…,dtnの分の伝搬時間誤差が生じる。よって、海水中での音波伝搬を仮定したカーバチャ306に基づいてアジマス方向の圧縮を行うと、合成開口画像32に示すように、対象物206の結像309には本来の結像位置310からのズレ・輪郭の歪みなどが生じることになり、結果として合成開口処理画像32の中にうまく結像しないという課題がある。
このような堆積層内の音波伝搬を算出するにあたっては、多孔質音波伝搬モデルのBiot-Stollモデルなどを利用する手段が一般的に知られている(非特許文献5,6)。また、このモデルを用いた位相・時間遅れの計算なども可能であることが既に知られている(非特許文献7)。
海底堆積層の影響を考えた技術に関して、以下のものがある。特開2002-311136号公報には、上下に2分割されたソーナーの受信信号からラグタイムの差分を求め、目標が海底面上か、海底下に埋没しているかを、閾値を用いて判別する技術が開示されている。特開平9-304527号公報には、BL(Bottom Loss)データを用いて、反射損失から堆積層の密度や減衰係数で表される音響パラメータを推定する技術が開示されている。本技術によれば、堆積層が深さ方向に均質な特性を持つと仮定したときの、密度や減衰率を推算することができる。特開平10-221444号公報には、堆積層深度方向に周波数を少しずつ変化させた音波を照射することによって、深さ方向の密度分布を測定する技術が開示されている。また、WO1999004287A1には、堆積層に埋まっている被対象物に視点をおき、対象物の音響的な歪み変形が反射音信号への非線形歪みとして表れることを用いて、堆積層に埋没した物体を探知する技術が開示されている。
特開2002-214341号公報 米国特許第4244036明細書 特開2002-311136号公報 特開平9-304527号公報 特開平10-221444号公報 WO1999004287A1
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これまで、堆積層の物理的特性を推定する技術と、予め存在するデータベースとしての堆積層の特性と音響データとを照らし合わせて音響パラメータを推算する技術が知られている。しかし、海底堆積層内の音波伝搬の影響、すなわち堆積層が存在することによって生じる合成開口処理画像のズレや歪み分を、画像処理の中で補正する手法及びそのような手法を備えた合成開口ソーナー(SAS)は知られていない。特に、非特許文献5〜7などの、海底堆積層の音波伝搬に関する知見を、合成開口処理技術として画像処理の誤差補正として利用する技術や利用した合成開口ソーナーはこれまで存在しない。同様に、前記のような埋没物に対する補正を、移動体の動揺修正と併せて行う合成開口ソーナー技術はこれまでない。さらには、一般的に既知ではない堆積層の底質のもとロバストに埋没対象物の画像処理を行う技術もこれまでにない。
このような背景に鑑み、本発明においては、対象物が海底堆積層に埋没していることによる誤差を補正し、埋没物体の画像を高精度に描出することができる合成開口信号処理手段及び合成開口ソーナーを提供する。また、ソーナーを備える船体の動揺がある場合においても、埋没物を正確に描出することのできる合成開口処理手段及び合成開口ソーナーを提供する。さらに、本発明は、上記課題に付随して海底堆積層の底質は一般的に既知ではないという課題も同時に解決する合成開口処理手段及び合成開口ソーナーを提供する。
海底堆積層の音波伝搬時間と、堆積層がない場合の音波伝搬時間との位相・時間差を、ソーナー受信信号のリサンプリング、あるいは合成開口処理におけるカーバチャ形状の補正として与える。また、得られた合成開口画像のコントラストを計算し、自動もしくは調整部を用いた半自動の処理により、最適な底質パラメータを利用した合成開口画像を生成することで、一般的に既知ではない海底堆積層の底質に対して最適な補正量を与えることを可能とする。最後に、前記コントラスト計算を利用して、対象物が埋没/非埋没であるかの判定、埋没深さの推定を行う。さらには、前記手段をDPCやMEAなどの動揺修正手段と組み合わせることで、船体の動揺がある場合にも埋没物を精度良く描出する。
本発明によると、海底堆積層が存在することによる合成開口処理後画像中の対象物の輝度・コントラスト・位置精度などの描出性能を向上させることができる。また同時に、対象物が埋没しているかどうかの判定と埋没深さの推定を行うことができる。なお、本手法においては、あらかじめ堆積層の底質は既知でなくても良い。さらには、船体の動揺がある場合にも埋没物を精度良く描出することができる。
合成開口処理の基本原理を説明する図。 合成開口ソーナー運用時の動揺修正処理及び埋没による誤差を説明する図。 合成開口処理における埋没の影響を説明する図。 本発明の合成開口処理における埋没修正の概要と効果を説明する図。 合成開口処理における埋没修正の信号処理アルゴリズムの一実施例の説明図。 埋没修正における位相・時間補正を説明する図。 埋没補正量データベースの一実施例の説明図。 受信データに対するリサンプリングによる埋没補正量の付与の一実施例の説明図。 合成開口カーバチャ形状の変形による埋没補正量の付与の一実施例の説明図。 埋没/非埋没判定手段の一実施例の説明図。 埋没深度・底質判定手段の一実施例の説明図。 ポスト処理による描出能向上手段の一実施例の説明図。 関心領域(ROI)の選択手段の一実施例の説明図。 動揺修正手段を含む埋没修正の一実施例の説明図。 動揺修正手段を含む埋没修正の一実施例の説明図。 動揺修正手段を含む埋没修正の一実施例の説明図。 本発明による合成開口ソーナーの一実施例を示す図。
図4は、本発明における合成開口処理における埋没修正の概要と効果を説明する図である。図4中の各図の横軸はアジマス方向(送受波器移動方向)であり、縦軸はレンジ方向(音波送信方向)である。本技術の背景として、図3で説明したように、埋没対象物206のカーバチャ308には、dt1,dt2,…,dtnの分の伝搬時間誤差が生じる。そこで、本発明においては、埋没対象物206の結像を行うために補正量を付与する。エコーグラム31に示すように、埋没物の実カーバチャ308は海水を仮定したカーバチャ306からdt1,dt2,…,dtnの時間誤差を生じている。そこで例えば、エコーグラム42において時間補正量を付与する。時間補正量は、実質的には−dt1,−dt2,…,−dtnとなる。これにより、埋没象物206からの反射エコーを合成開口処理における海水仮定のカーバチャ306上に乗せることができ、アジマス圧縮を行うことで、埋没修正を行った合成開口画像43のように、埋没対象物206を合成開口処理後画像において正しい位置に高いコントラストで結像(404)させることが可能となる。
なお、時間補正量の絶対値の大きさが、音波の位相で−π<θ<πの間であれば、位相誤差として取り扱うことが可能である。受信データは複素形式であることが多く、位相として処理する場合には計算量が少なくて済むという利点がある。ただし、位相誤差と時間誤差は、伝搬時間の誤差という観点において物理的に同一である。
一方、補正量を与えることで、合成開口画像43に示すように、沈底物203のカーバチャ402は歪むため、最終的な画像における沈底物体203の結像403に、位置ズレ、輪郭のぼやけ、コントラスト低下が生じることは明らかである。しかしながら、これらの変化を利用して、埋没物体と非埋没物体の判別を行うことができ、この判別も本発明の範疇である。これについては、後に図10を用いて説明する。
図5は、本発明における合成開口処理における埋没修正の信号処理アルゴリズムの一実施例を説明する図である。図5を用いて、本発明の埋没修正技術を説明する。
まず、図5の点線500内は、通常の従来技術による合成開口処理のフローである。ソーナー送受信部501によって送信・受信された受信データは、受信ピングメモリ部502に蓄えられる。受信データは、一般的には受信時刻と受信波形の振幅が対になった形式である。また受信データは、図5に図示しない手段によって整相されることもある。整相された受信データを並べたものがエコーグラムである。その後、受信データは合成開口処理部503に送られ、図1に示した合成開口処理によって合成開口ホログラム画像を生成する。合成開口画像は画像メモリ部504に蓄えられる。画像メモリ部からブラウン管・液晶ディスプレイなどの画像表示部505に送られ、合成開口画像がオペレータに対して表示される。
次に、本発明の埋没修正は、まず堆積層の初期パラメータの入力506からスタートする。この初期パラメータは、堆積層の底質を表すものであればいかなるパラメータであっても良い。例えば、砂・クレイ・泥など粒径と対応した底質であってもよいし、堆積層間隙率などの値であっても良い。また、一般的に堆積層の底質は既知ではなく、既知であっても、例えば「日本海XY湾の底質は粒径0.3mm程度の砂(サンド)が多い。」程度の曖昧なものである。よって入力506は、実際の対象とする堆積物に近い値であってもなくても良い。ここで重要なことは、入力506によって本埋没修正がスタートすることである。
入力506を受け、補正量計算データベース部507は、入力された底質に応じた補正量を出力する。この補正量は図4において説明した堆積層の影響による時間補正量である。補正量計算データベース部507は、入力506に従って、実際に堆積層内の音波伝搬計算を例えばBiot-Stollモデルなどを利用したシミュレーションによって行う計算部であっても良いし、あらかじめ、想定される入力範囲に応じた、時間補正量をテーブルとして蓄えた単なる時間補正量データベースで合っても良い。この補正量計算データベース部507に蓄えられ、出力されるデータベースについては、図7を用いて後述する。
補正量計算データベース部507から出力された時間補正量は、2通りのいずれかの方法において、合成開口処理フローの中で埋没補正量として付与される。すなわち、受信ピングメモリ部502に蓄えられた受信データのリサンプリングとして受信データに直接付与する場合と、合成開口処理ブロック503の中で、合成開口カーバチャの形状補正とする場合の2通りである。図5に示すように、前者の場合は受信ピングメモリ部502の直後に埋没ピング補正部508において受信ピングデータに対して付与され、その後、補正されたピングデータが合成開口処理部に入力される。後者の場合は、合成開口処理ブロック503の中に具備された埋没カーバチャ補正部509に入力され、合成開口処理内部の処理パラメータの補正として反映される。なお、埋没ピング補正部508の詳しい手段については図8で、埋没カーバチャ補正部509の詳しい手段については図9を用いて後述する。
その後、通常合成開口処理フローと同様に、補正を受けた合成開口画像が画像メモリ部504に入力され、画像表示部505に埋没修正後の合成開口画像が表示される。埋没ピング補正部508と埋没カーバチャ補正部509はいずれか一方を具備すればよい。
また、本発明においては、図5に図示する画像のポスト処理部510を具備してもよい。画像のポスト処理部510は、次の3つの手段のいずれか一つ、もしくは任意の複数手段の組み合わせ、を内部に具備する。3つの手段とはすなわち、合成開口画像のコントラスト計算部、参照画像と補正画像の間の差分演算部、及び参照画像と補正画像の間の相関演算部、である。これらの計算結果は、再度画像表示部505に伝達され表示することができる。なお、差分演算・相関処理による埋没画像描出能向上手段については図12を用いて後述する。
また、画像ポスト処理部510で計算された画像コントラスト計算の結果は、図5に図示する埋没状態判定部511にも伝達されてもよい。ここで、埋没状態判定部511は、対象物が堆積層に埋没しているか否かを判定する埋没非埋没判定部と、埋没している場合、埋没深度を計算する埋没深度計算部の2つのいずれか一方もしくは双方とも、を具備する。埋没非埋没判定部の機能については図10で、埋没深度計算部の詳しい機能については図11を用いて後述する。
また、本発明における合成開口処理手段及び合成開口ソーナーは、画像表示部と相互対話的に処理を行い、画像中の任意の関心領域(ROI)の画素ブロックを指定する手段である関心領域選定部515を具備していても良い。関心領域選定部515で選定された領域は、埋没している領域(埋没画像領域)として判別され、図5に図示するように、再度画像表示部505への入力として合成開口画像を伝達することができる。また、埋没画像領域の情報を持った合成開口画像としてポスト画像処理部510に伝達することも可能であり、従って、埋没画像領域として選定された関心領域(ROI)のみを埋没状態判定部511での処理対象とすることも可能である。
さらに、埋没状態判定部511における埋没非埋没判定部は、埋没か非埋没かを判定する際に、埋没修正処理のOK/NGを判別することができる(図10の説明において後述)。ここでOKと判断された場合、処理は終了し、埋没/非埋没の判定結果と埋没対象物の埋没深さが出力512される。ここで、埋没修正処理がNGと判断された場合には、自動底質調整部513へNG信号が送られる。自動底質調整部513では、NG信号に従って、補正量計算データベース部507へ入力する底質パラメータを微少量だけ増減することができる。これにより、本発明における埋没修正手段はフィードバックループが構成され、最終的に埋没状態判定部511での処理結果がOKになるまで、自動的に埋没修正がなされる。なお、本発明においては、この自動補正ループのみならず、オペレータが任意の底質を選定し、調整することのできる底質調整部514を備えていてもよい。以上に概略した、図5に示すような合成開口信号処理ブロック、及びそのようなブロックを有する合成開口ソーナーは、本発明の最適な実施例の一つである。
以下、図6から図13を用いて、図5の合成開口信号処理における具体的な信号処理手段について詳しく説明を行う。
図6は、埋没修正における位相・時間補正を説明する図であり、堆積層内の音波伝搬時間計算の概要を示すものである。海水中で海底堆積層22から高さZWに位置するソーナー(O点)から堆積層中深さZS、レンジ方向距離rのB点まで音波が伝搬する時を考える。このとき、OB間の伝搬時間t(r)は、海水中での伝搬時間t1と堆積層22中での伝搬時間t2の合計時間であり、海水中の音速C0、ソーナーの入射俯角θを用いて次式(1)で表される。
Figure 0005497302
ここでd1,d2は破線で示したOA間の音波伝播距離、実線で示したAB間の音波伝搬距離をそれぞれ表す。式(1)のように、AB間の伝搬時間tは、堆積層の深さ方向に音速プロファイルc(z)をもって伝搬する音波の、おのおのの深さzでの伝搬長さdl間の伝搬時間dl/c(z)を積分することで計算ができる。一方、堆積層が存在しないとした場合のOB間602の伝搬時間t’(r)は次式によって計算できる。
Figure 0005497302
よって、海底堆積層内の音波伝搬による音波伝搬時間の時間差分ΔTは次式で表されることになる。
Figure 0005497302
このΔTをレンジ方向の各位置rにおいて算出することにより、図4で説明した合成開口処理におけるカーバチャの時間補正量を求めることができる。
図7は、補正量計算データベース部507に蓄えられる、埋没補正量データベースの実施例の一つを説明する図である。図7は、異なる底質に対する堆積層内伝搬時間の時間補正量ΔTのBiot-Stollモデルを利用したシミュレーション計算結果である。横軸は受信データの受信時間に対応し、縦軸はその受信時間に対する時間誤差すなわち時間補正量(図4に示した、−dt1,−dt2,…,−dtn)に対応する。ここで例えば、図7において実線702が泥(粒径1マイクロメートル)の底質での結果であり実線703が砂(粒径300マイクロメートル)の底質の結果であれば、実線702から実線703に至るまでのデータをデータベースに保持していれば、すべての底質に対する時間補正量を補正量計算データベース部507に持つことができる。よって、このようなΔTのカーブを、ΔT(底質A・底質B・伝搬距離・堆積層深さ)といった関数としてテーブル化しておくことで、入力506によるいかなる底質の指定に対しても、埋没補正量を出力することができる。
なお、蓄えられるデータの形式は、前記のようにΔTの時間(時間)補正量の形でもよいし、位相の形でも良い。また、受信時刻tに対する時間補正量ΔTを図7の点線704のように、例えば次式(4)のフィッティング関数(ピングデータのサンプリング時間tに関する4次関数)で近似することもできる。
Figure 0005497302
よって、データベースのデータ形式はΔTの形だけでなく、式(4)で示すようなフィッティング関数の係数(K0,K1,・・・,Kn)の集合であっても良いし、フィッティング式は、式(4)だけでなく、他の高次多項式でも、対数関数でも指数関数でも、任意の方程式であってもかまわない。
また、ここで重要なことは、さまざまな堆積層の間隙率や粒径等の底質パラメータの値、伝搬距離、対象物の想定深さ、といった物理的な値を、埋没補正量の大きさと一対一対応させることができるということである。
図8は、受信データに対するリサンプリングによる埋没補正量の付与の実施例の一つを説明する図である。これは、前記の埋没ピング補正部508のさらに詳しい実施例について説明するものである。図8には、図7において実線702と実線703を抜き出したものを示してある。実線702は正の補正量が与えられるケースであり、実線703は負の補正量が与えられるケースである。ここで、図8において横軸は受信時刻であり、縦軸は受信信号の振幅に対応する。また、実線804は、ある受信ピングデータを抜き出したものである。このような受信ピングデータに対して、例えば実線702の補正量を与える場合は、受信データ中のサンプリング点805をそれぞれ、受信時刻に対応した時間補正量の分だけ後ろの時間にリサンプリングすることで時間補正量を付与する(破線806)。同様に、実線703の場合については、時間補正量の分だけ前の時間にリサンプリングすればよい(一点鎖線807)。このような受信信号ピングデータに対する、時間補正量の付与を、画像合成に使用するすべての受信データに対して行うことで、埋没物体が存在することによる誤差分を補正した合成開口処理画像を得ることができる。
図9は、合成開口カーバチャ形状の変形による埋没補正量の付与の実施例の一つを説明する図である。これは、前記の埋没カーバチャ補正部509のさらに詳しい実施例について説明するものである。合成開口処理においては、図9に示すように、送受波器からの距離に応じた、合成開口カーバチャ(900,901,902)が用意される。実際には様々な合成開口処理の種類があり、少しずつ、内部の処理方式は異なるが、このような合成開口カーバチャが存在することに関してはすべての方式で同じである。例えば、チャープスケーリング法の合成開口処理においては、レンジマイグレーションにおけるカーバチャが、図9のカーバチャに対応する。
図9にも、図7から実線702の時間補正量を抜き出して、グラフを90度回転させた図を示している。受信時刻は、そのまま送受波器からの距離に対応し、右側の図において、横軸はアジマス方向(移動体の移動方向)であり、縦軸はレンジ方向(音波送信方向)である。図9のA点、B点、C点においては、それぞれの送受波器からの距離に応じて、それぞれの合成開口カーバチャ900,901,902に、実線702の時間補正量に対応した、合成開口カーバチャの形状の変化を行う。その結果、新たに、補正された合成開口カーバチャ903,904,905が得られ、このカーバチャを利用して、改めて、合成開口処理ブロック509におけるホログラム画像合成を行う。図9に示した処理によって、図8の受信信号リサンプリングと同様の効果を得ることができ、埋没物体が存在することによる誤差分を補正した合成開口処理画像を得ることができる。例えば、図で示したハッチング907が、図8における受信ピングデータの一本であり、この一本一本の集合が図9となっていることからも前記は明らかである。
図10は、埋没/非埋没判定手段の一実施例を説明する図である。これは前記の埋没状態判定部511中の埋没/非埋没判定部の実施例をさらに詳しく説明するものである。図4で説明したように、本発明における埋没修正においては、埋没物体206の画質は向上する。一方で、沈底物体203の画質は埋没修正を行うことで低下する一方である。よって、図10で示すように、横軸に間隙率や粒径等の底質パラメータの値をとり、縦軸に画像ポスト処理部510で計算された画像のコントラスト値をとると、沈底対象物のコントラスト1002は、補正量を大きくしてゆくに従って、単調減少する。一方で、埋没対象物のコントラストは増加するため、埋設対象物は、極値をもつケース(点線1003)と単調増加のケース(一点鎖線1004)に限られる。よって、自動底質調整部513において、横軸の量を徐々に大きく変化させ図5のフィードバックループを回すことで、単調減少なら、非埋没物体、それ以外なら埋没物体である、というように埋没/非埋没の判別が可能である。
図10は、また、埋没修正処理のOK/NGの判別を説明するものでもある。底質パラメータを徐々に変化させていって、単調減少傾向、極値を持つケース、単調増加、といった傾向が判定されるまで、NG埋没修正処理はNGとして、フィードバックループを回すことで、埋没修正処理の効果判定を行うことができる。単調減少であれば埋没無しとして処理を終了する。また、単調増加である間は、NGとして、フィードバックループを回す。極値を判定すれば、極値のところで最適な補正量が与えられた、として、埋没修正処理はOKと判別されフィードバックループは終了する。前述のように、本発明においては堆積層の初期パラメータの入力は、いかなる底質の入力であってもよい。なぜならば、このフィードバック処理により、対象とする堆積層の底質がわからなくても、最適な埋没補正量を見つけることができるからである。すなわち、本発明においては、あらかじめ堆積層の底質が既知でなくても、最適な埋没修正を行った合成開口画像を得ることが可能である。
図11は、埋没深度判定手段の実施例の一つを説明する図である。これは前記の埋没状態判定部511中の埋没深度計算部の実施例をさらに詳しく説明するものである。図10と同様に、図11の縦軸は画像ポスト処理部510で計算された画像のコントラスト値である。本発明において、あらかじめ、埋没対象物の深さは不明である。しかしながら、補正量計算データベース507には、埋没深さの違いによる補正量の違いがあらかじめ存在している。よって、図11に示すように、想定深さの異なる補正量を画像に順次加えて図5のフィードバックループ処理を行うことで、堆積層内の浅いところに存在する対象物のコントラストカーブ1102、中程度の堆積層深さに存在する対象物のコントラストカーブ1103、堆積層内の深いところに存在する対象物のコントラストカーブ1104のように、深さに応じた特性曲線を得ることができる。よって、これらのカーブ1102,1103,1104の極値を示す時の深さの値が、対象物が埋没している深さとして特定される。
図12は、ポスト処理による描出能向上手段の一実施例を説明する図である。これは前記の画像ポスト処理部510における、差分演算部の実施例をさらに詳しく説明するものである。図12は、(a),(b)の2つの大きさの違う埋没補正量((a)は理論最大補正量の1/3程度、(b)は理論最大補正量の2/3程度の大きさ)を加えたとケースそれぞれにおいて、埋没修正を行う前の画像(1200,1203)と埋没修正を行った後の画像(1201,1204)との差分を計算したものである。差分結果はそれぞれ1202,1205に示しているが、埋没修正を単純に行った時の画像1201,1204の違いと比べて、明らかに、違いが際だっていることがわかる。図12(c)のグラフは、補正量を大きくしていった際の合成開口画像コントラストの大きさを、ただの補正画像1209と差分をとったときの補正画像1208に対してプロットしたものである。前者は最大2dBのコントラスト向上であるが、差分をとったときには最大20dB以上のコントラスト向上となっていることがわかり、補正画像と補正を行わない原画像との間でのポスト処理による描出能の向上が可能であることがわかる。
また、図12は、ポスト処理画像を利用することで、補正量に対する画像コントラストの傾向を、より感度よく計算できることを示している。すなわち、埋没状態判定部511における、埋没非埋没の判定(図10で説明)や、埋没修正処理のOK/NGを判別に対して、差分画像を利用することで、さらに感度の高い判定が行うことが可能であり、本発明の範疇である。
図13は、関心領域(ROI)の選択手段の一実施例を説明する図である。本発明の埋没修正を行った後の合成開口画像1300が、画像表示部に表示されている。ここで、沈底対象物の画像が1301に、埋没対象物の画像が1302に描出されている。一方で、沈底対象物は図10で説明した埋没/非埋没判定においては、コントラストが低下していることを利用して判定したが、埋没/非埋没が明らかになった後であれば、いたずらに、沈底対象物のコントラストを低下させる必要はない。そこで、図中の埋没対象物1302の周辺のみを関心領域(ROI)として選択することが可能なROI選択手段を備えることで、上記の不具合を解消できる。例えばここでは、合成開口画像1300はいくつかのグリッドに分割されており、関心領域1303の周辺のいくつかのグリッドを選択することで、関心領域1303を限定することができる。その上で、関心領域1303のみを、埋没修正させた画像とし、それ以外は埋没修正を行わない通常合成開口画像として、再度画像表示部に結像させたものが、右側の合成開口画像1304である。ここでは、埋没対象物1302も沈底対象物1305も最大コントラストの状態で表示されている。この時点であらかじめ、それぞれの対象物が埋没しているか、非埋没であるかはわかっているため、例えば選択した関心領域を埋没修正領域1306として明示したり、埋没表示部1307を用意したりしてもよい。このように、埋没修正、埋没/非埋没の選定後に、関心領域(ROI)選択手段によって埋没領域のみを選定して、それ以外の場所では補正を行わない原画像を再度表示させるようにしてもよい。なお、関心領域1303を構成するグリッドの大きさは任意であり実質的に埋没物の輪郭をなぞるほど小さいグリッドサイズであっても良い。
以上が、本発明における埋没修正を行った合成開口信号処理及び合成開口ソーナーの実施例の説明である。この埋没修正と既存の動揺修正技術の組み合わせも本発明の範疇である。埋没修正は、時間/位相補正量として補正量が与えられる。一方で、既存の動揺修正技術も時間/位相補正量である。そのため、お互いの補正手法のマッチングがよく、動揺修正技術のタイプに従って、図14〜図16に示す3通りの組み合わせ手法がある。埋没補正量の付与は、動揺補正量の付与の前段階にあるか、後段階にあるかのどちらかに分類され、埋没修正部の前段階もしくは後段階のいずれかに動揺修正部を具備したいかなる組み合わせも本発明の範疇である。
図14は、動揺修正手段を含む埋没修正の一実施例の説明図であり、特に動揺修正手段がDPC(Displaced Phase Center)もしくはPGA(Phase Gradient Autofocus)などの、合成開口処理の前段階における動揺修正方式と、埋没修正技術を組み合わせて用いる実施例を説明するものである。DPCなどの動揺修正手段は、受信データの生ピングデータに対して位相補正量を与えるものである。よって、合成開口処理ブロックにおいては、図14に示すように、動揺修正ブロック1400は受信ピングメモリ部502と合成開口処理部503の間に存在する。よって、埋没補正量を付与する位置としては、図14中の3箇所(1401,1402,1403)が考えられ、これらのうちのいずれか一箇所で付与すればよい。なお、1401,1402は図5における埋没ピング補正部508であり、1403は図5における埋没カーバチャ補正部509である。
図15は、動揺修正手段を含む埋没修正の実施例の一つを説明する図であり、特にMEA(Minimum Entropy Autofocus)など、合成開口処理の後段階すなわち合成開口画像そのものを利用した動揺修正方式と、埋没修正技術を組み合わせて用いる実施例を説明するものである。この場合、動揺修正ブロック1500は画像メモリ部の後段階にくるため、埋没補正量を付与する位置としては、図15中の2箇所(1501,1502)が考えられ、これらのうちのいずれか一箇所で付与すればよい。なお、1501は図5における埋没ピング補正部508であり、1502は図5における埋没カーバチャ補正部509である。
図16は、動揺修正手段を含む埋没修正の実施例の一つを説明する図であり、特に慣性動揺装置などの物理的動揺検出手段によって動揺補正量を取得する場合に、埋没修正技術を組み合わせて用いる実施例を説明するものである。この場合、図14の時とほぼ同様に、受信データの生ピングデータに対して位相補正量を与えるものである。よって、合成開口処理ブロックにおいては、図16に示すように、慣性動揺装置による動揺検出ブロック1600は受信ピングメモリ部502と合成開口処理部503の間に存在する。よって、埋没補正量を付与する位置としては、図16中の3箇所(1601,1602,1603)が考えられ、これらのうちのいずれか一箇所で付与すればよい。なお、1601,1602は図5における埋没ピング補正部508であり、1603は図5における埋没カーバチャ補正部509である。
図17は、本発明による合成開口ソーナーの一実施例を示す図である。本実施例は、機器筐体に設けられた操作部及び表示部の一例を詳細に説明するものである。筐体1700の画像表示部には、補正を行わない原画像1701と埋没修正が行われた画像1702が同時に表示されている。ここで、画像表示部に表示するのは補正画像1702だけでも良い。また、底質と深さを変化させることのできる2つのツマミ部1703を具備しており、これは底質調整部514に対応する。また、動揺修正を行うか否か、埋没修正を行うか否かを切り替えられる切替部1704を具備していても良い。また、合成開口画像中の点線部1705は関心領域選定部515を表示したもの、また、表示1706は補正量計算データベース部に入力される底質パラメータや埋没深さ計算部による計算結果を明示的に表示したものであり、さらに表示1707は埋没/非埋没の判定結果を明示的に画像表示部に表示したものである。
100 ソーナー(ソーナーアレイ)
101 直線軌道
103 仮想口径
106 仮想口径
20 海水(海水中)
21 海底面
22 海底堆積層
200 移動体
201 送受波器
202 変動軌跡
203 沈底対象物
204 直線軌道時の投影面
205 動揺がある場合の投影面
206 埋没対象物
207 照射音波
208 海底の音波投影面
31 エコーグラム
32 合成開口画像
303 受信位置
304 沈底対象物のカーバチャ
305 沈底対象物の結像
306 海水中での音波伝搬を仮定したカーバチャ
308 埋没対象物のカーバチャ
309 埋没対象物の結像
310 本来の結像位置
42 埋没修正を示す図
43 埋没修正を行った合成開口画像
400 時間補正量
501 ソーナー送受信部
502 受信ピングメモリ部
503 合成開口処理部
504 画像メモリ部
505 画像表示部
506 底質入力
507 補正量計算データベース部
508 埋没ピング補正部
509 埋没カーバチャ補正部
510 画像ポスト処理部
511 埋没状態判定部
512 埋没修正処理終了の出力
513 自動底質調整部
514 底質調整部
515 関心領域選定部
1303 関心領域(ROI)
1400 動揺修正ブロック
1500 動揺修正ブロック
1600 動揺量付与ブロック
1700 表示部筐体
1701 原画像表示部
1702 補正画像表示部
1703 つまみ部
1704 切替部

Claims (12)

  1. 海底に向けて超音波を送信する送信部と、
    送信された超音波の反射波を受信する受信部と、
    物体が海底の堆積層に埋没していることに起因して当該物体からの受信信号に含まれる位相誤差又は伝搬時間誤差を補正する埋没修正手段を有する合成開口処理部と、
    前記合成開口処理部の処理結果に基づく合成開口画像を表示する画像表示部と、
    物体が海底の堆積層に埋没しているか否かを判定する埋没判定部と、
    を備え
    前記埋没判定部は、前記埋没修正手段による補正量を変化させたとき前記合成開口画像中に描出された対象物の画像信号強度もしくは画像輝度値もしくはコントラストの変化傾向に基づいて当該対象物が海底の堆積層に埋没しているか否かを判定する
    ことを特徴とする合成開口ソーナー。
  2. 請求項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没判定部では、前記対象物の画像信号強度もしくは画像輝度値もしくはコントラストの変化傾向に基づいて埋没補正の効果を判定し、否の場合前記位相誤差又は伝搬時間誤差の微少量増減を行い、再度前記埋没修正を行った合成開口画像を生成するフィードバックループを有する、ことを特徴とする合成開口ソーナー。
  3. 請求項1または2に記載の合成開口ソーナーにおいて、堆積層に埋没している物体の埋没深さを算出する深度計算部を有し、前記深度計算部は、前記埋没修正手段による補正量を変化させたとき前記合成開口画像中に描出された対象物の画像信号強度もしくは画像輝度値もしくはコントラストが極値を示す補正量に基づいて当該対象物の埋没深さを計算することを特徴とする合成開口ソーナー。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没修正手段は、前記受信した反射波の時刻データを、埋没時の位相もしくは伝搬時間を補正するようにリサンプルすることで補正量を与えることを特徴とする合成開口ソーナー。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没修正手段は、前記合成開口処理における合成開口カーバチャの形状を埋没時の位相もしくは伝搬時間誤差に応じて変化させることで補正量を与えることを特徴とする合成開口ソーナー。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の合成開口ソーナーにおいて、対象物が埋没している堆積層の底質及び/又は埋没深さを選択する調整部を有し、前記合成開口処理部における伝搬時間差の補正として、前記調整部によって選択された底質及び/又は深さに対応した補正量を選択して付与することを特徴とする合成開口ソーナー。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没修正手段による補正を行った合成開口画像と補正を行わない合成開口画像との間での画像情報の差分処理を行った結果、を前記画像表示部に表示することを特徴とする合成開口ソーナー。
  8. 請求項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没判定部で行う前記対象物が埋没しているか否かの判定処理もしくは前記埋没補正の効果の判定処理において、前記差分処理を行った結果の画像を利用することを特徴とする合成開口ソーナー。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記合成開口画像中の任意の場所もしくは前記埋没判定部により埋没であると判定された対象物の周辺の関心領域のみを限定する選択手段を有し、前記関心領域に対応する前記受信信号の部分にのみ前記埋没修正手段による補正を行い、それ以外の領域に対する前記受信信号には前記埋没修正手段による補正を行わない合成開口処理画像を表示させることを特徴とする合成開口ソーナー。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没修正手段の前段階として、前記送信部及び受信部の動揺を補正する動揺修正部を有することを特徴とする合成開口ソーナー。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没修正手段の後段階として、前記送信部及び受信部の動揺を補正する動揺修正部を有することを特徴とする合成開口ソーナー。
  12. 請求項に記載の合成開口ソーナーにおいて、前記埋没修正手段の前段階あるいは後段階として、前記送信部及び受信部の動揺を補正する動揺修正部を有し、前記補正を行わない合成開口画像として、前記動揺修正部による動揺修正が施された合成開口画像を用いることを特徴とする合成開口ソーナー。
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