JP5496407B2 - プロゲステロンによる外傷性脳損傷の治療のための投薬レジメン - Google Patents

プロゲステロンによる外傷性脳損傷の治療のための投薬レジメン Download PDF

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Description

連邦政府により助成された研究または開発
本発明は、National Institute of Neurological
Disorders and Stroke(NIDS),National Institute of Healthによって与えられた1R01 N5 39097−01A1のもと、米国政府の支援でなされた。
発明の分野
本発明は、中枢神経系に対する外傷性損傷の治療法に関する。
発明の背景
毎年、150万から200万のアメリカ人が外傷性脳損傷(TBI)を受けている(Anonymous,“Traumatic Brain Injury,”Center
for Disease Control and Prevention,National Center for Injury Prevention and Control,2003,Vol.2003)。米国では、TBIは、毎年、5万件の死亡例および10万件の入院例の原因になっていると推定されている(Anonymous,“Traumatic Brain Injury,”Center for Disease Control and Prevention,National Center for Injury Prevention and Control,2003,Vol.2003)。毎年、8万を超える人々が不具となり、その内約1万7千の人が、生存のために特別なケアを必要としている(Kraus(1997)“Epidemiology of Head Injury,”in Head Injury,ed.Cooper(Williams & Wilkins Co.,Baltimore)pp1−19;Selecki et al.(1982)Australian &
New Zealand Journal of Surgery 52(1):93−102)。脳に対する突然の外傷によって形成される初期の病変に加えて、生体力学的に過剰な力がかかることによって、一連の二次的な有害事象が起き、これによって最初の損傷の数日から数ヵ月後に病変部のサイズ、病変の重度、および死亡率が急激に増加し得る(McIntosh et al.(1996)Lab Invest,74(2):315−42;Stambrook et al.(1990)Can J Surg33(2):115−8)。問題の重大性にも拘わらず、ヒトにおけるTBIに対しては有効な薬理学的治療は未だに特定されていない。
持続的静脈内(IV)注入は、迅速な薬剤輸送、および、持続的で一定の血清濃度の達成を可能とするが、プロゲステロン投与のためにこのルートを使用することは、合衆国ではFDA認可されていない。米国では、IVプロゲステロン使用を含むヒトでの実験についてはこれまで僅か3例しか報告されていない。FDAの認可を受けた(IND33,580)第I相臨床治験において、Christen等は、エタノール−イントラリピッド20%脂肪乳剤に溶解したプロゲステロンを、ドキソルビシンと混合したものを、32名の癌患者にIV投与したが、毒性作用は認められなかった(非特許文献1)。2番目の実験では、Allolio等は、健康な男性ボランチアにおいて、プロゲステロンの一定の血清濃度(CSS)を達成することが可能であることを報告した(非特許文献2)。第3の実験は、Christen等によって行われた実験に倣ったものであるが、高用量のプロゲステロンをパクリタキセルと同時投与した時の、パクリタキセルの薬物動態に及ぼす作用を調べる第II相治験であった。この草稿は、プロゲステロンの薬物動態に関する詳細な情報を掲載していない。
中枢神経系に外傷性損傷が起きると、一連の生理的事象が生じ、最初の影響としてグルタメート、アセチルコリン、コリン性、GABA、およびNMDA受容体系が破壊され、例えば、炎症性免疫反応および興奮毒性などの神経の機能停止がもたらされる。さらに、外傷性CNS損傷の後には、しばしば、脳および/または脊髄の浮腫が起こり、これが、一連の損傷事象を悪化させ、二次的細胞死がさらに広範囲に及び患者の死亡率が増加する。外傷性CNS損傷において、最初の傷害に続く複雑な一連の生理的事象の続く中で、残りの中枢神経系組織に対しその後の栄養的支援を供給し、そうすることによって機能の修復および回復を有効に促進することが可能な、インビボ治療の方法が求められている。
Christen et al.(1993)Journal of Clinical Oncology 11(12):2417−2426 Allolio et al.(1995)European Journal of Endocrinology 133(6):696−700
発明の要旨
中枢神経系の外傷性損傷、より詳細には、外傷性脳損傷を有する被験体を治療する方法が提供される。本方法は、プロゲステロン、または合成プロゲスチンの一定レベル、または2段階レベル投与レジームを含む治療を含む。
さらに、ヒト被験体において脳の外傷性損傷を治療する方法が提供される。本方法は、少なくとも1サイクルの治療を、治療を要する被験体に実施することを含む。この治療サイクルは、治療的に有効な2段階レベルの静脈投与レジームでプロゲステロンまたは合成プロゲスチンを投与することを含む。この2段階レベル投与レジームは、時間当たりの注入用量のより多いプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが被験体に投与される第1期間、それに続いて、時間当たりの注入用量のより少ないプロゲステロンまた合成プロゲスチンが被験体に投与される第2期間を含み得る。個別の具体的方法では、第1期間は、約0.1mg/kgから約7.1mg/kgの、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの時間当たり用量を含む。他の方法では、第2期間は、約0.05mg/kgから約5mg/kgの、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの時間当たり用量を含む。他の方法では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームに、漸減投与(tapered administration)プロトコールを含む第3期間が加えられる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒト被験体において外傷性脳損傷を治療する方法であって、該方法は、治療を要する該被験体に、少なくとも1サイクルの治療を実施することを含み、該治療サイクルは、プロゲステロンの治療的に有効な2段階レベルの静脈投与レジームを実施することを含み、該2段階レベル投与レジームは、時間当たりの注入用量のより多いプロゲステロンが該被験体に投与される第1期間、それに続いて、時間当たりの注入用量のより少ないプロゲステロンが該被験体に投与される第2期間を含む、方法。
(項目2)
前記第1期間が、約0.1mg/kg/時から約7.1mg/kg/時のプロゲステロン注入用量を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1期間が、約0.71mg/kg/時のプロゲステロン注入用量を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記第2期間が、約0.05mg/kg/時から約5mg/kg/時のプロゲステロン注入用量を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第2期間が、約0.5mg/kg/時の注入用量を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記第2期間が、約24時間から約120時間の期間を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記第2期間が、約71時間の期間を含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記第1期間が約0.71mg/kg/時のプロゲステロン注入用量を含み、前記第2期間が約0.5mg/kg/時の注入用量を含み、該第1期間が約1時間の期間を含み、該第2期間が約71時間の期間を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記プロゲステロンの2段階レベル静脈投与レジームが、前記被験体において、約100ng/mlから約2000ng/mlの、プロゲステロン血清レベルをもたらす、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記プロゲステロン血清レベルが約350ng/mlから約450ng/mlである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記被験体にプロゲステロンを漸減投与することを含む第3期間をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記第1および第2期間が連続する、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記第1および第2期間が不連続である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記第1期間がボーラス注入を含む、項目1に記載の方法。
図1は、連続的静脈内注入によって、安定なプロゲステロン濃度が速やかに達成されることを示す。黒塗り丸は、プロゲステロンを与えられた一人の患者の血清濃度−時間プロフィールを表す。黒塗り三角は、プラシーボ注入を受けた患者の血清濃度−時間プロフィールを表す。プラシーボ注入を受けた患者のプロゲステロン濃度は、実験期間中一定のままであった。プロゲステロンを受容した患者ではCss濃度が速やかに達せられ、一旦達せられると、注入期間中安定である。 図2は、Cssの予測値と実測値の間に有意な相関のあることを示す。Cssは、注入速度とCLの比として予測した。この予測値を、同一直線に対して各ペアの値をプロットすることによって、各患者について測定したCss値と比較した。この関係式のスペアマンの順序相関係数は、0.946(p<0.001)であった。 図3は、Css予測値と実測値の間の相関に関するBland−Altman分析を示す。Css予測値対実測値プロットは、推定を下回る、または上回る系統的(偏倚)を明らかにしない場合が多々あるので、Bland−Altman分析を行った。Css予測値と実測値の平均(横軸)を、この二つの値の相対的差(縦軸)に対してプロットする。実線は、相対的差の平均値(−0.8±12.2%;平均±SD)であり、点線は、このデータの95%信頼区間を表す。このプロットは、この予測法に関連する有意な偏倚の無いことを明瞭に実証する。 図4は、Css値が、以前に報告された薬物動態パラメータに基づいて予測される値よりも一貫して低いことを示す。21名の男性(黒塗り円)および11名の女性(黒塗り三角)のCss実測値を個別にプロットする。実線および点線は、450±100ng/mLという、本発明者らの当初の標的濃度を表す。これらのデータは、TBI患者では、Css値が、以前に報告された薬物動態パラメータを用いて予測した値よりも有意に低いことを明瞭に示す。 図5は、TBI実験の患者選択のための登録プロトコールの模式図を示す。
発明の詳細な説明
添付の図面を参照しながら以下にさらに十分に本発明を説明するが、ここには、本発明の実施態様のいくつかが示されるだけで、必ずしも全てが示されるわけではない。実際、本発明は、様々な異なる形において具現することが可能であるから、本発明が本明細書に記載される実施態様に限定されるものと思量してはならない。そうではなく、これらの実施態様は、本開示が適用される法的要求を満たすために提供されるものである。明細書全体を通じて、類似の数字は類似の要素を指す。
本明細書に記載される本発明については、先行する説明および添付の図面に示される教示を受けるという恩恵を与えられて、当業者には、本発明の関与する、多くの改変およびその他の実施態様が思い浮かぶことであろう。従って、本発明は、開示される特定の実施態様に限定されるものではないこと、改変およびその他の実施態様も、添付の特許請求の範囲の範囲内に含められることが意図されることを理解しなければならない。本明細書には特異的用語が用いられているけれども、それらは単に一般的、記述的意味において使用されるのであって、限定のために使用されるものではない。
本発明は、中枢神経系の外傷性損傷、さらに詳細には脳の外傷性損傷を有するヒトの被験体を治療する方法に関する。下記にさらに詳細に述べるように、本法は、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの投与レジームを含む治療を含む。
CNSに対する外傷性損傷は、中枢神経系に対する物理的衝撃によって特徴づけられる。例えば、脳の外傷性損傷は、該脳が、物理的力(進行性の神経細胞損傷および/または細胞死をもたらす)に供される場合に起こる。外傷性脳損傷は、頭部に対する打撃によって起こり、開放性または閉鎖性いずれかの損傷として現れる。重大な脳損傷は、裂傷、頭蓋骨骨折によって起こることがあるが、逆に、頭部損傷の外部兆候が無い場合でも起こる場合がある。従って、本発明の方法は、鈍的外傷のみならず裂傷外傷を含む、脳の外傷性損傷を治療するのに使用することが可能である。
外傷性脳損傷をもたらす物理的力は、3種類の損傷、すなわち、頭蓋骨骨折、脳実質損傷、および血管損傷を誘発することによってその作用を及ぼす。脳実質損傷は、振とう、脳実質の直接損傷、および瀰漫性軸索損傷を含む。振とうは、典型的には、頭部のモーメントの変化(尖った表面に当たった際の頭部の動きの停止)による頭部損傷によってもたらされる意識変化の臨床的な症候群によって特徴づけられる。神経活動の突然の破断の病因は不明であるが、発生する生化学的、生理学的異常としては、例えば、細胞膜を横切る、興奮性アミノ酸介在性イオン流による脱分極、ミトコンドリアのアデノシン三リン酸の枯渇、および血管透過性の変化が挙げられる。振とう後症候群から、直接的脳実質損傷の兆候が示されることがあるが、損傷の兆候が無い場合もある。
打撲および挫傷は、運動エネルギーの脳への伝播、および軟部組織に見られるものと同様の皮下出血を伴う腫脹(打撲)、または、事物の侵入または組織の破断(挫傷)のいずれかによって、脳実質の直接的損傷が起こる状態である。脳表面に対する打撃は、急激な組織の移動、血管通路の破断、およびそれに続く出血、組織損傷、および浮腫をもたらす。神経細胞体における損傷の形態的兆候としては、核のピクノーゼ、細胞原形質の好酸性異常、および細胞の崩壊が挙げられる。さらに、軸索腫脹が、損傷ニューロンの近傍で、さらには衝撃部位から大きく離れたところで発達することがある。損傷組織に対する炎症反応は、マクロファージの出現に先立つ好中球による通常のコースを辿る。
本発明の方法によれば、プロゲステロン、または合成プロゲスチンが、外傷性中枢神経損傷に対する陽性治療反応を促進するために用いられる。「治療」という用語は、外傷性CNS損傷を有する被験体における任意の改善、例えば、形態的回復(すなわち、組織の生存率の向上)、および/または行動的回復の両方を含む任意の改善が意図される。改善は、外傷性CNS損傷後における行動的および解剖学的回復の速度および/または程度のいずれかの上昇として特徴づけられ得る。従って、「陽性治療反応」は、完全な反応と部分的な反応の両方を含む。起こったものが完全な治療反応か、または部分的な反応であるかを決めるための種々の方法が、本明細書の他の部分で詳細に論じられる。
神経変性とは、中枢神経系におけるニューロンの進行性喪失である。本明細書で用いる「神経保護」とは、外傷性中枢神経系損傷後における神経変性進行の停止および/または逆転である。外傷性CNS損傷後において、たくさんの生理学的事象がCNS組織の神経変性をもたらす。そのような事象として、例えば、大脳浮腫、血管統合性の破壊、免疫および炎症反応の上昇、脱ミエリン鞘、および脂質過酸化物酸化活動が挙げられる。従って、本発明の方法はまた、神経変性をもたらす生理的事象の緩和および/または予防にも用途を持つ。具体的に言うと、本発明は、中枢神経系に対する外傷性損傷後における神経細胞死、浮腫、虚血を緩和または除去するための方法を提供する。
本発明のプロゲステロンまたは合成プロゲスチン治療は、外傷性CNS損傷を有する被験体に投与される。本明細書の定義では、被験体とは、任意の哺乳動物であってよいが、好ましくはヒトである。特定の実施態様では、ヒトは成人であるが(18歳を超える)、別の実施態様では、ヒトは小児である(18歳未満)。この小児は、新生児、幼児、よちよち歩きの小児、思春期前の小児、または思春期後の小児であって、誕生間近、1ヶ月から約2ヶ月、約1歳から約5歳、約4歳から約9歳、約8歳から約14歳、または約13歳から約18歳の年齢範囲の小児であり得る。さらに、ヒトは、約55から60、60から65、65から70、70から75、75から80、80から85、85から90、90から95歳以上であり得る。
本発明は、被験体に、治療的有効量のプロゲステロンまたは合成プロゲスチンを投与することによって外傷性CNS損傷を治療する方法を提供する。「治療的有効量」とは、治療効果を発揮するのに十分な、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの濃度を意味する。従って、本発明による、投与された用量単位中のプロゲステロンまたは合成プロゲスチンの濃度は、CNSに対する外傷性損傷に続く神経損傷の治療または予防に効果的であり、従って、神経保護作用を発揮する。この治療的有効量は、多くの因子、例えば、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの比活性、外傷性損傷の重度およびパターン、その結果もたらされる神経損傷、患者の反応性、患者の体重、それと共に他の個人的変動、投与法、および、用いたプロゲステロンまたは合成プロゲスチン処方を含む因子に依存する。
治療的有効濃度のプロゲステロンまたは合成プロゲスチンを含む組成物は、当該分野で公知の、受容可能な任意の方法を用いて投与され得る。従って、例えば、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンを含む薬学的組成物は、静脈内(IV)注入、筋肉内(IM)注入、皮下(SC)注入、または膣投与を含む任意の方法によって投与され得る。本発明の特定の実施態様では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンを含む薬学的組成物は、IV注入によって投与される。静脈内に投与される場合、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンを含む薬学的組成物は、約1から約120時間の期間に亘って注入で投与することも可能である。ある実施態様では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの注入は、約48から約96時間、または約24から約120時間の期間に亘って行われる。
本発明の一つの実施態様では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンは、体重kg当たり約0.1ngから約100g、体重kg当たり約10ngから約50g、体重kg当たり約100ngから約1g、体重kg当たり約1μgから約100mg、体重kg当たり約1μgから約50mg、体重kg当たり約1mgから約500mg、および体重kg当たり約1mgから約50mgの用量で非経口投与によって投与される。あるいは、治療的に有効な用量を達成するために投与されるプロゲステロンまたは合成プロゲスチンの量は、体重kg当たり、約0.1ng、10ng、100ng、1μg、10μg、100μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、500mg、またはそれ以上である。
プロゲステロンまたは合成プロゲスチンは、一日に1回または数回投与し得る。治療の継続期間は、1日1回で、約1、2、3、4、5、6、7日以上の期間であり得る。毎日の用量は、個別の用量単位として、または、それよりも小さい、数個の用量単位として単回投与によって投与され得、あるいは、ある間隔を置いて細分化された用量の複数投与によって投与され得る。
例えば、用量単位は、損傷後、約0時間から約1時間、約1時間から約24時間、約1時間から約72時間、約1時間から約120時間、または約24時間から少なくとも約120時間に投与され得る。あるいは、用量単位は、損傷後、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、40、48、72、96、120時間以上に投与され得る。その後の用量単位は、治療効果が発揮されるよう初回投与後の任意の時間に投与され得る。例えば、追加の用量単位は、損傷後の最初の数日間において起こる可能性のある浮腫の第2波から被験体を保護するように投与され得る。
本発明の特定の実施態様では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンによる治療を受ける被験体は、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの一定の投与レジームを投与される。「プロゲステロンまたは合成プロゲステロンの一定の投与レジーム」の意図するところは、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンによる治療を受ける被験体に、治療行程を通じて、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの時間当たり、一定の合計注入用量が投与されることである。この、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの時間当たり用量は一連の等価的用量に区分けされ、これらは、投与法に依存する適切な投与スケジュールに従って投与される。プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの一定の投与レジームの継続期間は、約12、24、36、60、72、84、または120時間、または約1から24時間、約12から約36時間、約24から約48時間、約36から約60時間、約48から72時間、約60から96時間、約72から108時間、約96から120時間、または約108から136時間である。
本発明の別の実施態様では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンによる治療は、「プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの2段階レベル投与レジーム」を含む。「プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの2段階レベル投与レジーム」の意図するものは、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンが、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンによる治療を受ける被験体に対し、二つの、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与期間において投与される。二つの期間は、約12時間から約7日であって、例えば、1、2、3、4、または5日間、または約15、15、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、または144時間、または約1から24時間、約12から36時間、約24から48時間、約36から60時間、約48から72時間、約60から96時間、約72から108時間、約96から120時間、または約108から136時間の組み合わせ期間を持ってもよい。一つの実施態様では、二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームは、約1日から約5日の組み合わせ期間を有し、別の実施態様では、二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲステロン投与レジームは、約1日から約3日の組み合わせ期間を有する。
一つの実施態様では、二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームの第1および第2期間に投与されるべき、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの、時間当たり合計用量は、時間当たりの合計用量がより多いプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが第1期間において投与され、時間当たりの合計用量がより少ないプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが第2期間において投与されるように選ばれる。二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームの第1および第2期間の個別の期間は、個人の健康状態および外傷性損傷の履歴に応じて変動してよい。一般に、被験体には、1日から5日の二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームの内、少なくとも1、2、3、4、5、6、12、または24時間の間、時間当たりの合計用量がより多いプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが注入によって投与される。従って、第2期の長さは調整され、例えば、約12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、108時間、120時間、または約12から約36時間、約24から約36時間、約24から約48時間、約36時間から約60時間、約48時間から約72時間、約60時間から約84時間、約72時間から約96時間、または約108時間から約120時間の範囲に亘る。従って、例えば、二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームが3日の組み合わせ期間を持つ場合、合計用量のより多いプロゲステロンまたは合成プロゲスチンは、最初の1時間に投与され、時間当たりの合計用量がより少ないプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが2から72時間の間に投与され得る。
本明細書の下記において具体的な投与レジームが開示されるけれども、本発明は、最初に、時間当たりの用量がより多いプロゲステロンまたは合成プロゲスチンに被験体を暴露し、次いで、時間当たりの用量がより少ないプロゲステロンまたは合成プロゲスチンに暴露する二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームを達成するものである限り、任意の投与プロトコールを含むものであることが認識される。例えば、第1の、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームは、単一のボーラス注入によって投与され、次いで、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの静脈投与の第2期間が続いてもよい。
さらに別の実施態様では、二段階プロゲステロンおよび合成プロゲスチン投与レジームの第1および第2期間において投与されるべき、時間当たりの、プロゲステロンの合計注入量は、時間当たりの合計用量がより少ないプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが第1期間に投与され、時間当たりの用量がより多いプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが第2期間に投与されるように選ばれる。
曲線下面積(AUC)とは、参照プロゲステロンまたは合成プロゲスチン基準の静脈投与に続く任意の時間に亘る、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの血清濃度(nmol/L)を追跡する曲線の下の面積を指す。「参照プロゲステロンまたは合成プロゲスチン基準」の意図するものは、外傷性中枢神経系損傷を有するヒト被験体に対して、所望の陽性作用、すなわち、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの投与無しの場合に観察される状態と比べて改善されるポジティブな治療反応を達成するために、所望の一定または二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームに従って投与される、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの時間当たり合計用量の決定の基礎となるプロゲステロンまたは合成プロゲスチンの処方である。参照プロゲステロンまたは合成プロゲスチン基準のAUCの定量については、実験の節、実施例1を参照されたい。従って、一定または二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームにおいて投与される、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの時間当たり合計用量は、約100ng/mlから約1000ng/ml、約1100ng/mlから約1450ng/ml、100ng/mlから約250ng/ml、約200ng/mlから約350ng/ml、約300ng/mlから約450ng/ml、約350ng/mlから約450ng/ml、約400ng/mlから約550ng/ml、約500ng/mlから約650ng/ml、約600ng/mlから約750ng/ml、約700ng/mlから約850ng/ml、約800ng/mlから約950ng/ml、約900ng/mlから約1050ng/ml、約1000ng/mlから約1150ng/ml、約1100ng/mlから約1250ng/ml、約1200ng/mlから約1350ng/ml、約1300ng/mlから約1500ng/mlの、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの血清最終濃度を達成することが可能である。特定の実施態様では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの血清レベルは、約100ng/ml、250ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、360ng/ml、370ng/ml、380ng/ml、390ng/ml、400ng/ml、410ng/ml、420ng/ml、430ng/ml、440ng/ml、450ng/ml、500ng/ml、750ng/ml、900ng/ml、1200ng/ml、1400ng/ml、または1600ng/mlを含む。
本発明の方法はまた、一定のプロゲステロンまたは合成プロゲスチン治療、または二段階プロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームを受ける被験体が、プロゲステロンまたは合成プロゲステロン投与を中断される休薬期間を与えられる実施態様も考慮する。例えば、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームが実行される際に、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンが中断される休薬期間が、二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームの第1期間の終了時と、二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームの第2期間の開始時の間に設けられる。例えば、第1期間は、入院前状況で、例えば、外傷の現場で投与されることも考えられる。次に、第2期間は病院への到着時に開始し得る。これらの実施態様では、二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームは、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンが投与が、約15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間以上停止されるように中断される。
別の実施態様では、一定のプロゲステロンまたは合成プロゲスチン療法、または二段階プロゲステロンまたは合成プロゲステロン療法は、その間にプロゲステロンまたは合成プロゲステロンの投与が漸減する最終時期を含む。「漸減投与(tapered administration)」の意味するところは、患者に対する投与用量を下げ、ある一定時間において、または、外傷性CNS損傷に対する患者の治療反応の規則的監視に基づいて、経験的に医師の評価によって定められる時間において、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの漸減および最終的遮断を達成する投与プロトコールである。プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの漸減投与の期間は、約12、24、36、48時間以上であり得る。あるいは、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの漸減投与期間は、約1から12時間、約12から約48時間、または約24から約36時間の範囲を持っていてもよい。
使用される薬剤の漸減率は「線形」漸減であり得る。例えば、500mgからの「10%」線形漸減は、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50と進む。あるいは、指数関数的漸減を用い得る。この場合、前述のプログラムを例として使うなら、指数関数的漸減は、例えば、500、450、405、365、329、296、266、239等となろう。従って、本発明の方法には、約5%、10%、20%、30%、または40%の直線的または指数関数的漸減を用いることが可能である。さらに、約1%から5%、約6%から約10%、約11%から約15%、約16%から約20%、約21%から約25%、約26%から約30%、約31%から約35%、約36%から約40%の直線的または指数関数的漸減を用いることも可能である。あるいは、漸減スケジュールは、治療に対する患者の反応に関する医師の評価に基づいて決めることも可能である。漸減投与に関する別の方法が、例えば、2005年10月24日出願の米国仮特許出願第60/729,663号に見出される。なお、この出願の全体は参考として本明細書に援用される。
前述の投与レジームに従って治療を受けた被験体が部分的反応を示すか、または、治療の第1サイクルの終了後に再発を示した場合、部分的または完全な反応を達成するために、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン治療のその後の過程が必要とされる場合がある。従って、一定のプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームまたは二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームを含む第1治療期後の休薬期間に次いで、被験体に対し、一定の、または二段階レベルのプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームのいずれかを含む、1回以上の追加の治療期間を設けてもよい。このような、治療期間と治療期間の間の休薬期間は、本明細書では中断(discontinuance)期間と呼ばれる。中断期間の長さは、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン治療の、どれかの治療期間によって達成される被験体反応の程度(すなわち、完全対部分的)に依存することが認識される。
これら複数の治療セッションは、本明細書では、維持(maintenance)サイクルと呼ばれる。各維持サイクルは、完了した、一定または二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジームを含む。「完了した、一定または二段階レベルプロゲステロンまたは合成プロゲスチン投与レジーム」の意図するところは、被験体が、第1および第2期間のプロゲステロンまたは合成プロゲスチンの投与を受けることである。複数の維持サイクルの必要性は、患者の生理的および行動的改善を監視することによって評価することが可能である。維持サイクルと維持サイクルの間の間隔は、約1時間、15時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または、約1日から約14日の範囲内に納まる期間であり得る。
本明細書で用いる「プロゲステロン」という用語は、プロゲスチンファミリーのメンバーを指し、21個の炭素原子のステロイドホルモンを含む。プロゲステロンはまたD4−プレグネン−3,20−ジオン;δ4−プレグネン−3,20−ジオン;またはプレグン−4−エン−3,20−ジオンとも呼ばれ、その構造は下記の式(I)として与えられる。本発明の方法で使用されるプロゲステロンは天然または合成である。
Figure 0005496407
さらに本発明の方法には合成プロゲスチンが含まれる。本明細書で用いる「合成プロゲスチン」とは、その構造がプロゲステロンと関連する分子であり、合成的に得られ、プロゲステロンの生物学的活性(すなわち、外傷性CNS損傷を治療する)を保持する。代表的合成プロゲスチンとしては、例えば、17a−OHエステル(すなわち、17α−ヒドロキシプロゲステロンカプロエート)を生産する改変体の他に、プロゲステロンに6α−メチル、6−Me、6−エン、および6−クロロ置換体を導入する改変体(すなわち、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、およびクロマジノンアセテート)が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。表1はさらに、合成プロゲスチンの非限定的例を提示する。
Figure 0005496407
*−−伝統的分類は、市場導入以来の時間に基づき、構造的・生理的差または効力に準拠しない。
本発明の方法に用いられるプロゲステロンまたは合成プロゲスチンを含む組成物はさらに、無機または有機、固体または液体の、薬学的に受容可能な担体を含み得る。担体はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、安定化剤、バッファー、溶媒、および塩を含み得る。組成物は滅菌され、固体、粒子または粉末、溶液、懸濁液、または乳液として存在し得る。一つの実施態様では、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンは、エタノール、または、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンを溶解させる他の任意の担体に溶解される。
プロゲステロンまたは合成プロゲスチンは、薬学的に有用な組成物を調製するための既知の方法に従って、例えば、薬学的に受容可能な担体ビヒクルとの混合によって処方される。好適なビヒクルおよびそれらの処方は、例えば、Remington′s Pharmaceutical Sciences(16th ed.,Osol,A.(ed.),Mack,Easton PA(1980))に記載される。効果的投与のために好適な薬学的に受容可能な組成物を形成するよう、このような組成物は、有効量のプロゲステロンを、単独で、または、適切量の担体ビヒクルと共に含む。
本発明の薬学的に受容可能な担体は、薬剤の投与法に応じて変動する。使用される薬学的担体は、例えば、固体、液体、または、持続放出性であり得る。代表的固体担体は、ラクトース、テラアルバ、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、微結晶性セルロース、ポリマーヒドロゲル等である。典型的液体担体としては、シロップ、ピーナツ油、オリーブ油、シクロデキストリン、イントラリピッド、および類似の乳液が挙げられる。当業者であれば、一般に利用される投与法のそれぞれに適切な担体に精通している。さらに、治療有効量として投与されるプロゲステロンまたは合成プロゲスチンの合計量は、投与される薬学的組成物(すなわち、使用される担体)と、投与方式の両方に依存する。
一つの実施態様では、担体はシクロデキストリンを含む。例えば、調製物は、22.5%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(Sigma)に溶解したプロゲステロンまたは合成プロゲスチンを含み得る。例えば、Goss et al.(2003)Pharm.Biochem.and Behavior 76:231−242を参照されたい。なお、この論文の内容は参考として本明細書に援用される。さらにもう一つの実施態様では、担体はイントラリピッド(intralipid)を含む。一つの実施態様では、Intralipid(登録商標)20%(Fresenius Kabi pharmaceuticals,Clayton,ノースカロライナ州)が用いられる。Intralipid(登録商標)20%の親油性のために、イントラリピッド1リットル当たり最大4グラムのプロゲステロンまたは合成プロゲスチンが溶解されて溶液となる。
プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの投与は、当該分野で公知の多くの方法によって実行される。本発明は、あらゆる形態の用量投与、例えば、全身注入、非経口投与、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮的、頬内、皮下、および脳室内投与を含む投与を含むが、ただしこれらに限定されない。あるいは、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンは、任意の脳室内技術、例えば、患者の側脳室注入、腰椎穿刺、または、外科的に挿入されたシャントによる脳室注入を含む技術によって、脳または脳脊髄液中に直接投与され得る。投与法は、用量によってもよいし、または、放出調節ビヒクルによるものであり得る。
作用の期間を調節するために、さらに別の薬学的方法を用い得る。調節放出調製物が、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンと複合体を形成するか、または吸収するポリマーを用いることによって達成される。調節輸送は、適切な巨大分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニールピロリドン、エチレンビニールアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、または硫酸プロタミン)を選択することによって実行される。薬剤の放出速度は、これらの巨大分子の濃度を変えることによって調節され得る。
活性期間を調節するためのもう一つの可能な方法は、ポリマー物質(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)、または、エチレンビニールアセテート・コポリマー)の粒子の中に治療薬剤を取り込むことを含む。あるいは、治療薬剤を、微小カプセルの中に捕捉することも可能である。そのような微小カプセルは、例えば、コアセルベーション技術、または界面重合、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン微小カプセル、またはポリ(メチルメタクリレート)微小カプセルを用いることによって、または、コロイド薬剤輸送システム、例えば、リポソーム、アルブミン、微小球、微粒乳液、ナノ粒子、ナノカプセル、または巨大粒子乳液において調製される。このような教示は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)に開示される。
本発明のさらに別の実施態様では、外傷性CNS損傷後の神経保護を強化するために、少なくとも一つの別の神経保護剤が、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンと組み合わされる。そのような薬剤としては、例えば、グルタメートの興奮毒性を緩和し、神経再生を強化する化合物が挙げられる。そのような薬剤は、増殖因子を含むグループから選ばれてもよい。「増殖因子」とは、細胞の成長または増殖を刺激する、細胞外の、シグナル伝達ポリペプチド分子である。プロゲステロンまたは合成プロゲスチンが、他の薬理学的に活性な薬剤(すなわち、他の神経保護剤)と共に投与されると、さらに少量のプロゲステロンまたは合成プロゲスチンでも治療的に有効になる。
プロゲステロンまたは合成プロゲスチンは、そのまま投与し得るし、または、薬学的に受容可能な塩として投与し得る。薬剤として使用される場合、プロゲステロンまたは合成プロゲスチンの塩は、薬理学的にも、薬学的にも受容可能でなければならないが、薬学的に受容不能な塩も、遊離活性化合物、またはその薬学的に受容可能な塩の調製に好適に使用される場合があるので、本発明の範囲から排除されない。このような薬理学的および薬学的に受容可能な塩は、文献に詳細に記述される標準法を用い、有機または無機酸とプロゲステロンまたは合成プロゲスチンを反応させることによって調製される。薬学的に受容可能な塩の例は、生理的に受容可能な陰イオン、例えば、トシレート、メタンスルフェート、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩等から形成される有機酸塩である。無機酸塩は、例えば、塩酸、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、および炭酸塩から形成される。さらに、薬学的に受容可能な塩は、カルボン酸基のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩として調製され得る。
このように、本発明はさらに、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン、または薬学的に受容可能なその塩を、一種以上の薬学的に受容可能な担体、および、任意に加えられる他の治療成分、例えば、他の神経栄養物質と共に含む、家畜およびヒトの医学的使用のための製薬処方または組成物を提供する。担体は、処方の他の成分と適合するという意味で薬学的に受容可能であり、かつ、それを受容するものに対し不当に有害であってはならない。
組成物は、経口、直腸、局所、鼻腔内、眼科的、または非経口(腹腔内、静脈内、皮下、または筋肉内注入を含む)投与に好適なものを含む。組成物は、単位剤形として提示されると好都合であるが、これは、調剤技術においてよく知られる任意の方法によって調製が可能である。全ての方法は、一つ以上の副成分を構成する担体と活性剤を連合させる工程を含む。一般に、組成物は、液状担体、微細に分割した固体担体、またはその両者と共に活性化合物を均一に、密に連合させ、次いで必要な場合、製剤を所望の処方物に成形することによって調製される。
一つの実施態様では、微粉化プロゲステロンまたは合成プロゲスチンが用いられる。微粉化工程は、粒径を下げ、溶解を促進する。プロメトリアンは、プロゲステロンの微粉化処方の一つの例である。
経口投与に好適な本発明の組成物は、それぞれが指定量の活性剤を粉末または顆粒として含む、別個の単位、例えば、カプセル、カシェ剤、錠剤、ロゼンジ等として供給されてもよく、あるいは、水性液体または非水性液体に溶解した懸濁液、例えば、シロップ、エリキシル剤、乳剤、水薬(draught)等として供給され得る。
錠剤は、任意に1種以上の副成分と共に、圧縮または成形によって調製される。圧縮錠剤は、任意に結合剤、崩壊剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤、または分散剤と混合される、自由流動形の、例えば、粉末または顆粒状の活性成分を、適切な機械で圧縮することによって調製される。適切な担体と組み合わされた成形錠剤は、適切な機械で成形することによって調製される。
シロップは、例えば、スクロースのような糖、さらに、任意の副成分を加え得る糖の濃縮水溶液に活性化合物を加えることによって調製される。そのような副成分としては、芳香剤、好適な防腐剤、糖の結晶化を遅らせる薬剤、および、他の任意の成分、例えば、多価アルコール、例えば、グリセロールまたはソルビトールの可溶性を増す薬剤が挙げられる。
非経口投与に好適な処方物は、レシピエントの血液と等張な、活性化合物の滅菌水性調製物を含むと好都合である。
鼻腔噴霧処方物は、防腐剤と等張剤を有する、活性剤の精製水溶液を含む。このような処方は、鼻粘膜と適合するpHおよび等張状態に調整されることが好ましい。
直腸投与のための処方物は、適切な担体、例えば、ココアバター、または水素添加脂肪、または水素添加脂肪性カルボン酸を有する坐剤として供給され得る。
眼科処方物は、pHおよび等張因子が眼球のものに適合するように調整されることが好ましいことを除いては、鼻腔噴霧と同様の方法によって調製される。
局所処方物は、1種以上の媒体、例えば、鉱油、石油、多価アルコール、または、その他の、局所処方用の基材の中に溶解または懸濁させた活性化合物を含む。前述の他の副成分の添加が望ましい場合もある。
さらに、本発明は、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン、およびその塩のリポソーム処方を提供する。リポソーム懸濁液を形成する技法は従来技術でよく知られる。プロゲステロンまたは合成プロゲスチン、またはその塩が水溶性塩である場合、従来のリポソーム技法を用いて、同じものを脂質小胞の中に取り込んでもよい。その場合、化合物または塩の水溶性のために、化合物または塩は、リポソームの親水性中心またはコアの中に実質的に封じ込められる。用いられる脂質層は、従来の任意の組成物であり得るが、コレステロールを含むか、またはコレステロール無添加のいずれかであり得る。対象とする化合物または塩が水に不溶である場合、この場合も従来のリポソーム形成技法を用いて、リポソームの構造を形成する疎水性脂質二重層の中に塩を実質的に封じ込めてもよい。いずれの場合も、製造されるリポソームのサイズは、標準的超音波処理および均一化技術等によって小型化される。プロゲステロンまたは合成プロゲスチン、またはその塩を含むリポソーム処方は凍結されて、凍結乾燥物を生成し得る。この凍結乾燥物は、薬学的に受容可能な担体、例えば、水によって再構成されてリポソーム懸濁液を再構成し得る。
エアロゾル、または吸引投与に好適な製薬処方も提供される。これらの処方は、所望のプロゲステロンまたは合成プロゲスチン、またはその塩の溶液または懸濁液、または、化合物または塩の複数の固体粒子を含む。この所望の処方は、小さなチャンバーに納め、霧状に変えてもよい。噴霧化は、圧縮空気によって、または、超音波エネルギーによって、化合物または塩を含む、複数の液滴または固体粒子を形成することによって達成し得る。
前述の成分に加えて、本発明の組成物はさらに、希釈剤、バッファー、芳香剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(抗酸化剤を含む)等から成るグループから選ばれる、1種以上の副成分をさらに含み得る。
治療に応じた行動回復の速度および程度を定量するために行動アッセイを用い得る。神経保護作用を測定するために、患者の運動スキル、空間学習能、認識機能、感覚感受性、談話の改善、および/または発作傾向の低下を利用することも可能である。感覚・運動および反射機能を評価するために使用されるこのような機能/行動試験は、例えば、Bederson et al.(1986)Stroke 17:472−476,DeRyck et al.(1992)Brain Res.573:44−60,Markgraf et al.(1992)Brain Res.575:238−246,Alexis et al.(1995)Stroke 26:2336−2346に記載される。なお、これらの文献全てを引用することにより本明細書に含める。スカンジナビア発作スケール(SSS)またはバルトル指数を用いて、神経生存率の向上を測定し得る。
外傷性脳障害の治療は、種々の神経学的測定値を用いることによって監視することが可能である。例えば、治療に対する部分的反応は、a)毎日の、最大グラスゴー昏睡スコア;b)昏睡の期間;3)毎日の頭蓋内圧−治療強度レベル;4)連続CTスキャンで測定した脳浮腫/集塊作用;および5)人工呼吸器支援の期間において改善が見られるかどうかを決めることによって監視される。これらのアッセイのそれぞれに関する、簡単な説明が下記に与えられる。
グラスゴー昏睡スコア(GCS指数)は、意識障害の深度を反映するもので、最初の救急処置(酸素添加、水分補給、および血圧支援)の後で、鎮静剤、神経・筋遮断剤、または気管内挿管実行の前において得られるものがもっとも良い。
昏睡の期間は、損傷の時点から、被験体が、命令または機械的刺激に対し意図的に反応することができなくなった時間の数として定義される。気管挿管されない被験体の場合、GCSスコアは>8に等しい。気管挿管された患者の場合、GCSスコアは≧5に等しい。昏睡の期間は、機能的結果を予測するものであることが判明している(Uhler et al.(1994)Neurosurgery 34(1):122−8;Jiang et al.(1996)Brain Res 735(1):101−7;および、Gonzalez−Vida et al.(1998) Arch Med Res
29(2):117−24)。脳損傷以外の理由で、薬理学的に誘発された昏睡において費やされた時間は、最終分析時に差し引かなければならない。
重度のTBI患者の頭蓋内圧(ICP)は、多くの場合、頭蓋内圧装置によって監視される。ICPの監視によって脳浮腫の尺度が得られる。しかしながら、ICPの内在的変動性、およびICPの低下を意図して施される治療介入による分析の複雑さが、ICP測定値を用いること窮地に陥らせる。この介入に関して調節するために、治療強度スケールが開発された。治療強度レベル(TIL)と呼ばれるこのスケールは、上昇ICPに対する治療侵襲度を測定する(Allolio et al.(1995)European Journal of Endocrinology 133(6):696−700;Adashi et al.(1996)Reproductive endocrinology,surgery and technology Philadelphia:Lippincott−Raven;および、Beers et al.eds.(1999)The Merck manual of diagnosis and therapy.17th ed.,Merck Sharp & Dohme Research Laboratories,Rahway,N.J.)。
脳浮腫および集塊作用の程度は、CTスキャンによって定量される。例えば、焦点的病巣の容量が測定される。集塊病巣は、高密度異常であれ、混合密度異常であれ、対象領域として異常部の面積を測定し、面積に切片の厚さを掛け、同じ領域を示す連続切片について、これらの体積を加算することによって評価される。各病巣は3度測定され、平均体積が入力される。この技術は信頼度が高いことが判明した(Garcia−Estrada
et al.(1993)Brain Res 628(1−2):271−8)。
脳内病巣はさらに、位置によって特徴づけられる(前頭、側頭、頭頂、後頭、基底核、またはこれらの任意の組み合わせ)。浮腫区域が存在する場合、その体積(低密度辺縁)が測定され、別に分析される。正中線シフトは、透明中隔を正中線構造として用いて測定する。脳の肥大の程度を定量するために、脳室−脳比(VBR)を計算する。Levin et al.((1981)Archives of Neurology 38(10):623−9)は、VBRは、異なる検査者の間でも十分な信頼性を持つこと、および、急性損傷と、神経行動的結果の両方の重度に相関することを見出した(Hoffman et al.(1994)J.Neurotrauma 11(4):417−31)。
人工呼吸器支援の期間は、患者が、ポジティブな加圧性機械的換気を受けた時間の数と定義される(Uhler et al.(1994)Neurosurgery 34(1):122−8;Jiang et al.(1996)Brain Res 735(1):101−7;および、Gonzalez−Vidal et al.(1998) Arch Med Res 29(2):117−24)。脳損傷以外の理由で呼吸器支援下に費やされた時間は、最終分析時に差し引かれる。
前述の神経学的測定値に加えて、部分的治療反応はまた、各種の機能的および神経心理学的結果を通じても評価される。神経心理学的および機能的性能に関する、いくつかの標準化測定値が知られる。例えば、被験体は、グラスゴー結果スケール(GOS)/グラスゴー結果スケール拡張版(GOSE)、および/または障害評価スケール(DRS)において改善を示し得る。グラスゴー結果スコアは、世界中でもっとも広く使用される、脳損傷回復の測定値の一つである(Garcia−Estrada et al.(1999)Int J Dev Neurosci 17(2):p.145−51)。患者は、下記の五つのカテゴリーの内の一つに分類される。すなわち、死亡、持続的植物状態、重度の障害、中等度の障害、および良好な回復である。実施し、得点をつけ、高い信頼度および有効度を達成するのは容易である。
中等度の脳損傷の結果を測定する場合、損傷評価スケール(DRS)の方が、GOSよりも正確である(Goodman et al.(1996)J Neurochem 66(5):1836−44)。DRSは、覚醒および意識、日常活動、物理的依存度、および職能性に関する8項目評価から成る(Vedder et al.(1999)J Neurochem 72(6):2531−8)。DRSの総合評価に関する採点者間の信頼度は高い(0.97から0.98)。
物理的および認識障害を評価するためには、機能的独立性尺度(FIM)が使用される。これは、下記のドメインに亘る18項目を含む。すなわち、身辺自立、排便コントロール、運動性、歩行、意思疎通、および社会的認識である(Baulieu(1997)Mult Scler 3(2):105−12)。FIMは、中等および重度のTBI後の結果測定値として高い信頼度および有効度を持つことを証明した(Jung−Testas et al.(1994)J Steroid Biochem Mol Biol 48(1):145−54)。
疾病影響プロフィールは、自ら感じる健康状態を測定するための一つの方法である(Schumacher et al.(1995)Chiba Found Symp 191:p.90−112、およびKoenig et al.(1995)Science 268(5216):1500−3)。これは、下記の12の範疇に分割される136の質問から成る。すなわち、睡眠と休息、食事、仕事、家庭経営、レクリェーションおよび娯楽、歩行、移動性、身体ケアと動き、周囲とのやりとり、機敏性、行動、情動行動、および意思疎通である。この方法は、広く各種の疾病および、頭部損傷を含む損傷のために使用されている(Thomas et al.(1999)Spine 24:2134−8)。基礎SIPスコアは、損傷前の健康状態を反映し、一方、その後のスコアは損傷後の機能性を検査する。
以上で本発明の一般的説明を終えたわけであるが、本発明は、単に例示のためにのみ本発明に含まれ、本発明を限定することを全く意図することのない、いくつかの特異的実施例を参照することによってさらによく理解されよう。
実施例1
ヒトにおけるプロゲステロン治療の適用性を評価する第1ステップとして、本発明者らは、静脈注入によって与えたPGの薬物動態における急性TBIおよび頭蓋外外傷の効果を調べた。17時間PGの投与を受けた11名の女性および21名の男性外傷患者、および同じくプラシーボの投与を受けた1名の女性および3名の男性患者から、多数の血液サンプルを得た。AUC(0−72)および注入後血液サンプルを用い、CSS、CL、t1/2、およびVdを得た。CSS値は、337±135ng/mlであり、これは、標的濃度の450±100ng/mlよりも有意に低かった。このようにCSSが低いのは、予想よりもCLが高かったせいである。さらに、t1/2およびVdも予想よりも高かった。これらのパラメータのいずれにも有意な性差は見られなかった。これらの変化は、致死的損傷と関連する、速度論の適用を超える変化と一致する。本発明者らの結果から、TBI後速やかに安定なPG濃度が達成されることがわかる。
方法
患者選択
本研究は、Emory大学学内検閲委員会、薬剤安全監視委員会(NINDS)、およびFDA(IND#58,986)によって認可された。インフォームドコンセントの受領後、下記に概略する参加基準を満たした36名の患者について調べた。治療は、4:1プロゲステロン:プラシーボ比を用いてランダム化した。参加基準の要求は、各患者は≧18歳であること、鈍的外傷による、頭部の閉鎖損傷を持つこと、中等度から重度の脳損傷であること(グラスゴー昏睡スコア(GCS)が4−12)、損傷の11時間未満に救急専門科に到着し、インフォームドコンセントを提出(近親者から)したことである。排除基準は下記の通り。生存不能の損傷;神経学的活性が見られない(GCS 3);軽度のTBI(GCS 13−15);損傷の時期が不明;重度の酩酊(ETOH≧50mg%);神経欠損を伴う脊髄損傷;心肺停止;到着時癲癇状態;到着時、または、実験参加前≧5分に亘って、血圧、収縮期圧が<90;到着時、または、実験参加前≧5分に亘って、低酸素状態pO<90;妊娠している女性;活動性乳癌または生殖器癌;または、プロゲステロン、またはIntralipid(登録商標)成分(卵黄または大豆油)に対してアレルギーの既往を持つ人である。
薬剤調製
実験薬剤の溶液は、Emory保険部の実験薬剤調剤科によって下記のように調製された。プロゲステロンは、95%エタノールに溶解し、0.2μフィルターを用いてろ過し、滅菌バイアルに封入した。各溶液の分液については、最終濃度と滅菌性について定量した。プロゲステロン/プラシーボの保存液を、ランダム化治療割り当てに合致するようにキット(A、B、C、D、またはE)に包装した。各キットは6個のバイアルを含むものとした。バイアル1は、15mlのプロゲステロンまたはプラシーボを含み、これは、初回ボーラス投与量および最初の注入投与を調製するのに用いられた。残りの5個のバイアルは、残りの注入用として12mlのプロゲステロンまたはプラシーボを含むものとした。プロゲステロンは、アルコールにのみ溶けるので、プロゲステロン液と複合される希釈剤は95%エタノールとした。プラシーボキットも95%エタノールによって処方された。アルコール濃度が高いので、注入の直前に各用量の実験薬剤をイントラリピッドと混合した。各注入用量を12時間に亘って投与し、12時間おきに繰り返し、合計72時間とした。患者を無作為化した後、体重およびプロゲステロン最終濃度に基づく用量計算シートを用い、標準的負荷注入速度(14cc/時)、および維持注入(10cc/時)の最初の11時間を達成するために、イントラリピッドで希釈しなければならないバイアル#1の用量を決めた。この用量計算シートは、10cc/時の標準速度において残りの注入容器それぞれからの注入を行うためにイントラリピッドで希釈しなければならない試験薬剤の用量を計算するのにも用いた。
プロゲステロン液の安定性
全ての安定性試験のために、Segall,et al.の方法を些少の修正を加えて用いた(Segall,et al.(1999)Journal of Pharmaceutical & Biomedical Analysis,19(5):803−8)。この方法は、元々酢酸メドロキシプロゲステロンおよび吉草酸エストラジオールの錠剤の安定性を評価するために、その有効性が確かめられたものであった。これは、外部標準化を利用する、イソクラティックHPLC−UV法である。5ミクロン、4.6×250mm BDS−Hypersil C−18カラム(Keystone Scientific)を用い、分析は、フォトダイオードアレイ検出器を備えたAgilent 1100モデルHPLCシステムにおいて行った。移動相は、40% 0.07M酢酸アンモニウムバッファー、pH7.2および60%アセトニトリルから成るものとした。検出器は247nMに設定した。システムの適性をチェックしたところ、プロゲステロンピークに基づきメートル当たり2769プレート(最低要求>2500)、および0.80%の相対標準偏差(最低要求1.0%以下)が得られた。プロゲステロンピークの減衰係数は0.5であった。複数の異なる日々に実行した、同じ調製物を10回注入することによって評価した再現性は、常に10%未満であった。
各アッセイにおいて、プロゲステロン調製物は、エタノールで1から10倍に希釈し、この希釈液の1μLを注入した。上記条件下で、プロゲステロンはほぼ3.5分で溶出した。各分析について、5点検量曲線を作成した。
薬剤投与
プロゲステロン試験薬剤液の注入は、14mL/時(0.71mg/kg/時)の負荷速度で1時間行い、次いで、残りの71時間は、注入速度を10mL/時(0.5mg/kg/時)に下げた。プロゲステロンを含むイントラリピッド溶液は、最低24時間安定であることが判明したが、試験薬の貯留分を調製し、生物学的汚染の危険度を最小にするために注入期間の間12時間置きに変えた。薬剤投与に中断があった場合、または、その他プロトコールからの逸脱があった場合、それがどのようなものであれ薬剤投与フローシートに記録し、各患者に対して実際に投与されたプロゲステロンの合計ミリグラム数を計算する際に考慮に入れた。
サンプリングパラダイム
注入中下記の時点で9(5ml)サンプルが得られた。すなわち、注入前(0)、4、6、12、24、36、48、60、および72時間である。さらに5サンプルが、注入停止後下記の時点で得られた。すなわち、0.5、1、2、4、および8時間である。サンプルは凝固させ、次に遠心した。その後、血清を取り出し、分析時まで−70℃に保存した。
血清プロゲステロン分析
血清プロゲステロン濃度は、Emory大学病院、病理学教室、免疫学研究室によるImmulite(登録商標)プロゲステロン化学発光イムノアッセイを用いて測定した。アッセイ変動の、日内および日間変動係数は共に<10%であった。本発明者らは、彼らの実験室で定量した0.5から700ng/mLの範囲に亘る9サンプルの結果を、参照実験室(The Nichols,San Juan Capistrano,カリフォルニア州)によって定量されたものと比較することによって彼らのアッセイの正確であることを確かめた。
薬物動態分析
薬物動態の一次パラメータCLは、用量の、血清濃度−時間曲線下面積(AUC)に対する比として推定される。AUCは、直線台形則を用いて計算した(Veng−Pedersen(1989)Clin Pharmacokinet,17(6):424−40)。排除相の速度定数keは、注入終了後の血清濃度−時間データから計算した(WinNonin(登録商標)、Pharsight Corporation,Mountatin View,カリフォルニア州)。分布容量は、CLとkeの比として推定した。Cssは、用量とCLの比として推定した。実際のCssは、3個以上の連続サンプルの血清濃度−時間曲線の勾配がゼロではない時に達成される濃度と定義した。
統計学的分析
本発明者らの実験室によって測定されたプロゲステロン濃度を、Nichols研究所によって測定されたデータと比較するために、反復測定値用‘t’検定およびスペアマンの順序相関係数を用いた。Css予想濃度を、注入速度/クリアランスの比として計算した。Css予測値とCss測定値の差は、反復測定値用‘t’検定を用いて検定した。本法に関連して何らかの偏倚があった場合、その大きさを評価するためにBland−Altman分析を行った(Bland and Altman(1986)Lancet,1(8476):307−10)。男性および女性間の薬物動態比較は、独立手段に対する‘t’検定を用いて行った。0.05未満のp値を、帰無仮説の拒絶のための最低レベルと見なした。
結果
36名の患者について実験した。32名(男性21名および女性11名)にはプロゲステロンを与え、4名(男性3名および女性1名)にはプラシーボ注入を行った。注入前のプロゲステロン濃度において、女性(2.86±1.37ng/mL)と男性(2.53±1.73ng/mL)(p<0.5)の間に有意差は無かった。プラシーボを与えられた患者の注入前プロゲステロン濃度は、2.1±0.8ng/mLであり、プロゲステロンを与えられた患者と有意に異なっていなかった。さらに、これらの注入前測定値は、実験の84時間過程の間有意に変動しなかった。図1は、プロゲステロンを与えられた一人の患者、および、プラシーボ注入を受けた一人の患者で、共に完全なサンプリングパラダイムが可能であった患者から得た、代表的な血清濃度−時間プロフィールである。プラシーボ注入を受けた患者のプロゲステロン濃度は、実験期間を通じて一定であった。プロゲステロンを受容した患者ではCss濃度に速やかに達せられ、一旦達せられると、注入期間中安定であった。注入開始周辺時、および注入後における完全なサンプリングは、女性の7/11、男性の10/21においてのみ可能であった。これは、実験患者の受けた損傷が生命を脅かす性質のものであったためである。本研究におけるCss値は、癌患者におけるプロゲステロン注入について報告されているデータ(Christen et al.(1993)Journal of Clinical Oncology 11(12):2417−2426)に基づいて予想されたものよりも低かった。
表2は、性別で層化した、身体計測および一次薬物動態データの要約である。体重を除き、表2のパラメータのいずれについても、男性と女性の間に有意差が存在しなかった。予想されるように、男性の平均体重(81.5±16.2kg)は、女性のそれ(63.9±11.0kg)よりも有意に大きかった(p<0.003)。クリアランス(CL)値は、注入したプロゲステロンの合計用量と、AUC(0−∞)ではなく、AUC(0−72時)から計算した。これは、医学的な理由により数名の患者では注入後血液の完全なサンプリングが不可能であったためである。CLの平均値は、1.73±0.72L/kg/時であり、男性(1.66±0.67L/kg/時)と女性(1.88±0.81L/kg/時)の間に差は無かった。患者の身長を記録しなかったので、体表面積を計算できず、直接の比較は不可能であったけれども、本研究におけるCL値は、癌患者におけるプロゲステロン注入について報告されているデータ(Christen et al.(1993)Journal of Clinical Oncology 11(12):2417−2426)に基づいて予想されたものよりも高かった。今回の、血清濃度−時間データから得られたプロゲステロンCL値を用いると、R/CLから予測されるCss値(332±121ng/mL)と、実際に測定された値(337±135ng/mL)との間に統計的に有意な差は得られず、かつ、この値は、男性、または女性でも差はなかった。図2は、同一直線に対してプロットしたCss実測値と予測値の要約である。この関係式のスペアマンの順序相関係数は、0.946(p<0.001)であった。この関係式の有意性は、Css実測値と予測値の間に系統的偏倚が無いことを明らかにしたBland−Altman分析によって確かめられた。Css予測値および実測値間の相対的差は−0.8±12.2%(平均±SD)であった(図3参照)。図4は、各患者のCss測定値のプロットであり、これらの濃度が、以前の実験(Christen et al.(1993)Journal of Clinical Oncology 11(12):2417−2426;Allolio et al.(1995)European Journal of Endocrinology 133(6):696−700)から予測される標的濃度範囲よりも系統的に低いことを示す。これらのデータは、中等度から重度の頭部損傷を持つ外傷患者では、それによって生じた高度に変動的な生理的状態が、プロゲステロンクリアランスの臨床的に有意な上昇をもたらすことを示唆する。これらのデータは、本発明者らが標的とする濃度450±100ng/mLを達成するためには、維持注入率は、0.5mg/kg/時から約0.8mg/kg/時に上げなければならないことを示唆する。
終末半減期の平均値は、1.78±1.0時であることが判明した。この場合も、男性(1.60±0.95時)と女性(2.03±1.08時)の間に有意差は無かった(p<0.4)。これらの値は、癌患者において報告された値(Christen et al.(1993) Journal of Clinical Oncology 11(12):2417−2426)よりも幾分長かった。本研究における分布容量(V)は、以前の報告に基づいて予測した値よりも高い。これは、CLの上昇、および、終末の排除相速度定数の減少によるものである。男性の値がより低くなる傾向があるが、V’は、男性(3.76±2.14L/kg)と女性(5.76±4.21L/kg)の間に有意差は無かった(p<0.22)。
表2. TBI患者における、プロゲステロン濃度変化個別パラメータ
Figure 0005496407
考察
臨床家はこれまで、外傷性脳損傷後早期に患者に与えるべき、効果的な神経保護剤を長らく求めてきた。脳損傷の病理生理学は十分に理解されてはいるものの、研究者達は、細胞死、脳浮腫、従って頭蓋内圧の上昇をもたらす、病理生理的因果関係で結ばれる一連の有害作用を、高い信頼度で変調することが可能な薬剤をこれまで特定することができなかった(Chesnut,et al.(1993)Journal of Trauma−Injury Infection & Critical Care,34(2):216−22;Povlishock and Jenkins(1995)Brain
Pathology,5(4):415−26)。外傷性脳損傷の治療は主に支援性のものであり、脳の還流圧および十分な酸素補給の維持を図る努力を中心とする(Brain Trauma Foundation(1996)“Guidelines for
the Management of Severe Head Injury,”Journal of Neurotrauma,13(11):643−5;Brain
Trauma Foundation B(2000)“Management and Prognosis of Severe Traumatic Brain Injury,Parts I & II,”Journal of Neurotrauma,17(June/July):449−627)。
相当量の、かつ急速に増加しつつあるデータが、男女の脳に天然に見られる神経ステロイドホルモンの、プロゲステロンが、強力な神経保護性能を有することを示している。第1試験研究で得られ、本明細書に提示されるデータは、中等から重度の急性外傷性脳損傷(TBI)の治療におけるプロゲステロンに関する、ランダム化、コントロール設定臨床治験に関する。この病態に対し薬剤が安全で、かつ効力を有するかどうかを試験することの他に、本発明者らは、多数臓器外傷患者において静脈内プロゲステロンの薬物動態特性を定量することを求めた。
本発明者らの研究の主要な知見は、1)95%エチルアルコールに溶解したプロゲステロン溶液は、室温で最大2年安定である;2)95%エチルアルコールに溶解したプロゲステロンを含むIntralipid(登録商標)は、最短24時間安定である;3)多数臓器外傷を持つ、外傷性脳損傷の、急性危篤患者において、プロゲステロンのCss値の達成は速やかで、かつ安定に維持される;4)プロゲステロンCss値は、AUCデータから正確に予測される;5)急性外傷性脳損傷に伴う、高度に変動的な生理的状態は、プロゲステロンのCL、t1/2、およびVの著明な上昇をもたらす;6)急性外傷性脳損傷それ自体は、プロゲステロンの内因性放出を引き起こさない;および7)急性外傷性脳損傷後におけるプロゲステロンの速度論パラメータの変化は、性別依存性ではない。臨床的薬物動態においてもっとも重要な目的の一つは、適切な薬物動態パラメータについて患者固有の推定値を得ることである。モデルに依存しない方法(AUC)の使用は、患者固有CLの定量に当たってきわめて融通性に富む。薬剤が静脈注入による連続注入によって投与される場合、CLは主要な対象パラメータとなる。これは、得られる患者固有のCssが、注入率およびCLにのみ依存するためである。本研究では、プロゲステロンの安定なCss値が、静脈投与によって速やかに達成されること、従って、危機的な損傷を受けた患者の集団において、性別によらず実際的な標的濃度を達成するよう用量調節することが可能であることが示された。本研究では、プラシーボ注入を受けた患者の数は少数であったが、繰り返されたサンプリングおよび分析から、最初のプロゲステロン濃度は、実験の84時間の行程に亘って一定であることが示された。これらのデータは、プロゲステロンの内因性分泌は、外傷性脳損傷それ自体によっては著明に刺激されないことを示す。もちろん、最終的達成目標は、治療の最適効力と相関するCssを定義することである。プロゲステロンの一定の血清濃度と、臨床結果との薬物動態関係式が明らかにされたならば、本発明者らの実験で決められたパラメータを用いて、生存率および機能的回復の見込みを最善にする注入パラダイムに関して草案を提出することが可能となろう。Cssは速やかに達成され、かつ安定なのであるから、標的濃度を維持するために必要な、注入率の患者特異的調節は、早期の、最小の血液サンプルを用いることによって可能となろう。もしもこのような薬理学的介入が効果的であることが判明したならば、本発明者らの安定性データは、プロゲステロンのエタノール液は調製に手間ひまがかかるが、その保存液は最大2年まで安全に使用が可能であることを証明する。このため、神経外傷処置室は、直ちにプロゲステロン液を入手し、速やかな処置の実行を促進することが可能となる。
1993年、脳損傷基金は、外傷性脳損傷の治療のための、実証に基づくガイドラインを作成するため国際的専門家集団を召集した(Brain Trauma Foundation(1996)“Guidelines for the Management
of Severe Head Injury,”Journal of Neurotrauma,13(11):643−5;Brain Trauma Foundation B(2000)“Management and Prognosis of Severe Traumatic Brain Injury,Parts I & II,”Journal of Neurotrauma,17(June/July):449−627;Roberts,et al.(1998)J Neurol Neurosurg Psychiatry,65(5):729−33)。マンニトールおよびバルビツレート類を除き、回復を促進する薬理学的因子は特定されていない。
本研究では、これら危機的損傷を受けた患者の医学的管理を最適化するために、さらに別の薬剤を同時投与した。薬剤の組み合わせ、および投与スケジュールは、患者の特異的要求に基づいて個別化した。従って、全ての患者に対してこれらの薬剤が与えられたという均一なグループは無い。追加薬剤クラスの内のいくつか、特に、好痙攣剤およびバルビツレート類は、肝血流の増加および酸化代謝の増加を含む生理的変化をもたらす可能性があるものの、本発明者らは、プロゲステロンクリアランス値の増加が、併用薬剤投与によるものか、外傷性脳損傷によるものかをはっきりと決めることができない。最後に、本薬剤は、ジェネリック形態で市販されているので安価である。
薬剤反応効力治験から得られる将来の知見と結びつけて本研究から得られた結果を用いるならば、研究者達は、最適な一定濃度を達成するようにプロゲステロンの注入率を調節することが可能となるであろう。プロゲステロンの静脈注入が、急性脳損傷を受けたヒトにおいて効果をもたらすことが判明したならば、それは、この、一般的で、破壊的な病態の治療における大きな進歩を表すこととなろう。
実施例2
外傷性脳損傷の治療に関する第II相、ランダム化、二重盲検、コントロール設定治験が実行された。実行された投与プロトコールは、実施例1に記載した通りである。
治療反応が達成されたかどうかを決めるために、下記の終末点を監視した。
−「治療強度レベル」を計算することによって定量されるICP低下(ICP−TIL)
−昏睡の期間(明識に対する傷害);
−損傷後1ヶ月における死亡率;
−グラスゴー結果スケール(GOS)、損傷評価スケール(DRS)、およびガルベストン方向感覚および記憶喪失試験(GOAT)によって定量した、損傷1ヶ月および1年後の神経学的結果。
予備評価は下記の通り。中等から重度のTBIを有する100名の患者が実験に登録した。患者は、4:1ブロックデザイン登録によってランダム化した。男性および女性の両方に、プロゲステロン[450+/−nmol/L]の3日間静脈投与を行った。投与プロトコールおよび投与された薬学的組成物は、実施例1に詳細に記載される。病態に関する追跡調査は3日および1年に行った。
コントロール被験体は、30.4%の死亡率であったが、プロゲステロン治療を受けた被験体の死亡率は12.9%であった。プロゲステロン治療グループでは、脳死が60%低下した。表3に結果をまとめる。
Figure 0005496407
表3の有意性の検定では、2dfによるχ検定は有意であった(p=0.0471)。脳死を経験した被験体(医学的死を経験した人、または、死ななかった人に対し)の割合について治療グループを比較すると、グループAの方が、Bグループよりも有意に低い割合を持つことが認められた(フィッシャーの正確検定によってp=0.0295)。医学的死を経験した被験体(脳死を経験した人、または、死ななかった人に対し)の割合について治療グループを比較すると、両グループ間に統計的に有意な差がないことが判明した(フィッシャーの正確検定によってp=0.6622)。
実施例3
本発明者らは、急性TBIに対する治療薬としてのプロゲステロンの安全性を評価するために臨床治験を行った。このII相、ランダム化、二重盲検、プラシーボコントロール設定臨床治験は、都市部のレベルI外傷センターで行った。グラスゴー昏睡スケールのスコア4−12を持つ、鈍的TBI後11時間以内に搬送された100名の成人を代理人の同意の下に登録した。被験体は、4:1割合でプロゲステロン対プラシーボにランダムに割り当てた。投薬内容を知らされていない観察者は、有害事象の有無について患者を綿密に監視し、損傷後30日に最初の機能的結果を評価した。一次的安全性結果は、死亡率を含む有害事象率の差である。一次的活性尺度は、損傷30日後における、分岐型グラスゴー結果スケール拡張版(GOSE)である。77名の患者がプロゲステロンの投与を受け、23名がプラシーボの投与を受けた。両グループは、きわめて近似した身体計測および臨床特徴を有していた。死亡率を除き、有害事象の発生率は両グループでほぼ同様であった。実験室数値および生理学的パラメータもほぼ同様であった。プロゲステロンが原因の重大な有害事象は見られなかった。両グループの間で、GOSEおよび、その他の神経学的結果に有意差はなかったが、プロゲステロン治療被験体は、コントロールに比べ全理由を含めた30日死亡率がより低かった(発生率比0.43;95%信頼区間0.18−0.99)。この試験的実験では、プロゲステロンは、目立った害毒を起こすことはなく、TBI治療用として有望な活動兆候を示した。
序論
毎年、百5十万から2百万のアメリカ人がTBIの被害に遭う。米国だけでも、TBIは、毎年5万人の死亡例、23万5千人の入院例、および8万人の長期障害例の原因となっている。これらの犠牲者の約3万7千人が中等度の障害を経験しており(Thurman(2001)“The epidemiology and economics of head trauma,”in Head Trauma:Basic,Preclinical, and Clinical Directions,ed.Miller(Wiley and Sons);Kraus(1997)“Epidemiology of head injury,”in Head Injury,ed.Cooper(2nd ed,Williams & Willkins Co.,Baltimore);Selecki et al.(1982)Australian & New Zealand Journal of Surgery 52(1):93−102;Klauber et al.(1981)Am J Epidemiol 113(5):500−509;Max et al.(1991)Journal of
Head Trauma Rehabilitation 62(2):76−91;Gentleman et al.(1992)Injury 23(7):471−474;Jones et al.(1994)Journal of Neurosurgical Anesthesiology 6(1):4−14;Cohandon et al.(1991)Journal of the Neurological Sciences 103 Suppl:S27−31;and,Sakata et al.(1991)Brain Injury 4:411−419)、1万7千人が生活のために特別なケアを必要としている。CDCは、現在、5百3十万人のアメリカ人がTBIによる障害の下に暮らしていると推定している。TBIの生涯コストは、1年当たり560億ドルを超えると推定されている(Thurman(2001)“The epidemiology and economics of head trauma,”in Head Trauma:Basic,Preclinical,and Clinical Directions,ed. Miller(Wiley and Sons))。本発明者らは、中等から重度の急性外傷性脳損傷の犠牲者に対するプロゲステロン静脈投与の安全性と薬効の可能性を評価するために臨床治験を行った。
方法
実験設計:この第II相、ランダム化、二重盲検、プラシーボコントロール設定治験の主要目的は、男女の、急性脳損傷患者に対しプロゲステロンを静脈投与した時に生じる可能性のある有害事象を評価することである。本発明者らはまた、活性シグナルを検出することも期待した。
米国では、プロゲステロンの静脈投与は、従来三つの臨床前実験においてのみ実験的使用が認可されたに過ぎず、しかもそれらのいずれもTBIに関するものではなかった(Aebi et al.(1999)Cancer Chemotherapy & Pharmacology 44(3):259−265;Allolio et al.(1995)European Journal of Endocrinology 133(6):696−700;and,Christen et al.(1993)Journal of Clinical Oncology 11(12):2417−2426)。本研究は、TBI後に行われたプロゲステロンの静脈投与が、有害事象、または重度の有害事象の発生率増加を招くことがないことを示す。
米国食品薬品局によれば、「有害事象」とは、試験薬剤に関連するかどうかとは無関係に、どのようなものであれ、臨床治験の被験体において見られる全ての不快な医学的事象である。これは、基礎状態では見られなかった事象、または基礎状態で存在していた場合は、さらに悪化した事象を含む。「重度の有害事象」とは、死亡、危篤状態、使用または連続的使用が患者の死をもたらすかもしれないという疑惑、現在の入院期間の延長、持続的または著明な障害/不能、または先天的異常/出産異常と定義される。
有害事象を検出するために、投薬内容について盲目化された観察者は、プロゲステロン投与に関与すると当然考えられる事象を含めた、ただしそれらに限定されない、広範な有害事象を特定するために、連日各被験体についてスクリーニングを行った。そのような事象としては、全ての血栓塞栓症(深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、虚血性心筋梗塞、肺塞栓症、脳卒中または一過性虚血性発作)、肝臓酵素の上昇、体温上昇、アレルギー反応、および高血糖症が挙げられるが、ただしそれらに限定されない。治療行程時に得られた臨床検査結果は全て記録し、異常レベルまたは怪しげな傾向を検出するために分析した。有害事象が実験処置と関連しているかどうかについては、独立した内部の安全性監視員が決定した。FDA、および独立したNIH指名のデータ安全性監視委員会が、これらの決定を独立に検閲した。
有害兆候の有無について被験体を監視することに加え、本発明者らは、活性のシグナルを検出することを期待した。本発明者らは、プロゲステロンによる処置は、30日死亡率を下げ、TBI後の短期臨床結果を改善するであろうという仮設をたてていた。この予備実験で、本発明者らが対象とする主要な結果は、損傷後30日目におけるグラスゴー昏睡スケール拡張版(GOSE)であった。30日目における他の結果測定項目としては、グループ死亡率、障害等級スケールスコア、昏睡の期間、損傷後記憶喪失の期間、および頭蓋内圧上昇の緩和があった。
設定:本研究は、年間10万人の外来患者を受容する都市部の公立病院で、4百万を超える大都市人口に診療サービスを提供する地域で唯一のレベルI障害センターで行った。
参加者の選択:Grady救急室に損傷後11時間以内に到着し、安定化後の、または「指数」グラスゴー昏睡スケールスコア(iGCS)が4−12の、鈍的TBIの、連続的成人犠牲者を、本研究への登録の資格ありとした(図5)。2.5年間の登録期間(2002年5月28日から2004年9月17日)の間、参加資格の可能性がありながら逃してしまった患者は僅かに3名であった。
参加資格のありそうな候補者が特定されると、必ず実験研究者が30分以内に救急科に行き参加資格を評価した。排除基準としては、血中アルコール濃度が>250mg/dlであること;侵入創脳損傷;年齢<18歳;iGCS<4または>12;損傷発生時点が不明;妊娠;癌;脳卒中;脊髄損傷;損傷の11時間以内に代理人の同意が得られなかった場合である。
患者は自分で同意することができないので、法的に承認された代理人に手続きを求めた。代理人には、実験の原理、設計、および予想される効果および危険度を知らせた。代理人達は、実験は志願に基づくものであり、不参加が患者のケアに悪影響を及ぼすことがないことを納得した。理解を助けるため、本発明者らの同意書は8等級読み取りレベルで作製された。スペイン語版も同じように作製された。米国食品薬品局から、TBI治療のためのプロゲステロン静脈注入使用に関し新規試験薬認可を得、かつ、NIH指名DSMBからは、独立の指導および検閲を得た。病院の研究監視委員会および大学の検閲委員会は本発明者らの実験を承認した。登録開始前に、本発明者らは、いくつかの地域の協議機関のリーダーに実験内容の紹介を行った。本発明者らはまた共同体の諮問委員会とも会合した。
介入:代理人の同意後、患者を、性別(男性対女性)、人種(黒人対その他の人種全て)、およびTBIの重度(中等度対重度)によって定義される八つのサブグループの内の一つに割り当てた。各サブグループにおいて、組み合わせ式ブロックランダム化を用い、各連続する5名の患者の内4名をプロゲステロンに割り当て、残りの1名をプラシーボに割り当てた(4:1ランダム化)。この非対称法は、盲目性を維持しながら試験薬を受容する患者数を最大にするようにとの、本発明者らのNIH指名のDSMBの要請によって採用された。
試験注入を混合する病院薬剤師を含む、病院における全職員の盲目化を確保するために、現場とは別に試験薬センターを設け、そこで薬剤キットが調製された。試験薬およびプラシーボのバイアルは、外見および物理的性質が同一であった。一組のバイアルを生産するために、プロゲステロンは、95パーセントエタノールに溶解し、0.2μフィルターを用いてろ過し滅菌バイアルに移した。均一濃度と滅菌性を確かめるために分液を定量した。各試験キットは、プロゲステロンのエタノール液を含む6個のバイアル(治療)、または、エタノールのみを含む6個のバイアル(プラシーボ)のいずれかを含んでいた。
患者が登録されると、そのサブグループの順番で次のキットを用いて注入を調製した。第1バイアルをIntralipid(登録商標)20%と混合し、14ml/時の標準速度で、プロゲステロン0.71mg/kgの1時間負荷用量を輸送し、次いで、10ml/時の標準速度で0.5mg/kg/時の持続的注入を行った。残りのバイアルを用い、その後の、5回の12時間注入を調製した。これらの注入は、同じ10ml/時の標準速度で合計3日間の治療に用いられる。薬剤監視の詳細は、別の場所に報告されている(Wright et al.(2005)J Clin Pharmacol 45(6):640−648)。
本発明者らの病院における脳損傷患者治療の臨床処置は、Brain Trauma Foundationのガイドラインに基づくコンセンサスプロトコールに従う(Brain Trauma Foundation B(2000)Journal of Neurotrauma 17(June/July):449−467)。このプロトコールは、入院前背景から退院までTBI患者の治療を統制する。頭蓋内圧(ICP)上昇発作を治療するために段階的対処法が細かく規定されている。このプロトコールを採用することによって、治療グループの割り当てを除き、全ての実験参加者が、TBIに対する標準的治療を受けることが確保された。
測定法:薬剤の安全性を評価するために、実験担当者は毎日見回りを行い、有害事象(AE)、または重大な有害事象(SAE)の出現を記録した。毎時の生命徴候(血圧、心拍数、呼吸数、体温、および脈動酸素測定)、頭蓋内圧読み取り、および他のパラメータ(平均動脈圧、脳還流圧、および体液バランス)を、各患者のチャートから抜き出した。病院の情報システムから検査値を得、同時に行った投薬および介入措置も記録した。
SAEが出現した場合、独立の、委員会承認の神経外科医が、あらかじめ定義されたスケールを用いて、そのSAEと、実験処置との関係の可能性を評価した。SAEは、施設の検閲委員会(IRB)、本発明者らのNIH指名のデータ安全性監視委員会(DSMB)、および米国食品薬品局に24時間以内に報告された。他の有害事象も全て週毎に報告された。
患者がアナフィラキシー反応、重大な血栓塞栓事象、血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の原因不明の上昇、または、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の5000IUを超えるレベルの上昇、または、10mg/dlを超える血清ビリルビン総量レベルを経験した場合は、注入を停止した。本発明者らは、2回の中間分析のいずれかにおいて、一方のグループが他方に比べ、または他方が、死亡率を含め、有意に高いSAE発生率を経験した場合、早い段階で登録の停止に同意した。この規約は、O‘Brien−Flemingの境界(O’Brien and Fleming(1979)Biometrics 35(3):549−556)に基づき、該境界は、アルファ消費法(DeMets and Lan(1994)Statics in Medicine 13(13−14):1341−1352;discussion 1353−1346)を用いて構築された。
試験薬が患者に対し効果的な影響を及ぼすかどうかを定めるために、本発明者らは、様々な生理学的および機能的測定値を集めた。そのようなものとして、毎時の頭蓋内圧測定値;損傷時から覚醒時までの時間数と定義される昏睡期間(GCS>8、または運動スコア>5);および、被験体が、2回連続して、75点以上のGalveston記憶喪失および方向感覚試験スコアを達成するまでに費やされた日数と定義される、損傷後記憶喪失期間が挙げられる。各損傷事象の30日後、本発明者らは、各患者について、そのグラスゴー結果スコア拡張版(GOSE)および損傷等級スケール(DRS)を評価した。重度の障害を受けた患者は、「試験不能」に分類した。これは劣悪結果に代わるマーカーである。ある特定の測定の不実行の理由、例えば、物理的障害(例えば、半身麻痺)、認識障害(例えば、指示を理解することができない)、または酩酊を記録するために信頼性コードを用いた。1年間の結果は後日報告する予定である。
データの収集および処理:データ収集は、一定方式のデータ管理プラン、および標準操作行程マニュアルのガイドに従って行われた。ベッドサイドで集められたデータは、紙の、症例報告書(CRF)に記録され、その後、ウェブ上のORACLE(登録商標)データベースに二重入力された。入力されたCRFは、二重入力が一致し、全範囲チェックが合格と判定されるまでは有効として受容されない。分析のためSAS(登録商標)に送信するための、輸送ファイル生成用、特別編集探査プログラムが構築された。
結果測定値:本発明者らの実験の第一目標は、プロゲステロンによる治療の安全性を評価することである。本発明者らは、治療グループおよびコントロールグループが、同じ率のSAEおよびAEを経験するだろうと仮定した。本発明者らの第二目標は、いくつかの結果測定値を評価することによって薬剤活性の徴候を求めることであった。結果に関する、本発明者らの、実験前から想定した主要測定項目は、グラスゴー結果スケール拡張版(GOSE)であった(Teasdale et al.(1998)Journal of Neurotrauma 15(8):587−597)。他の結果測定項目としては、1)損傷後30日以内の死亡;2)昏睡の期間(Levin(1995)Journal of Neurotrauma 12(5):913−922);3)外傷後記憶喪失の期間(Levin et al.(1979)Journal of Nervous & Mental Disease 167(11):675−684);4)頭蓋内圧平均値、および頭蓋内圧治療強度レベル(ICP−TIL)(Maset et al.(1987)Journal of Neurosurgery 67(6):832−840)、および、5)障害等級スケール(DRS)(Hall et al.(2001)Arch Phys Med Rehabil 82(3):367−374)が挙げられる。
一次データ分析−重要な、独立の、結果予測因子が均等に分布していることを確かめるため、種々の身体計測、既往歴、および入院前特徴に関して、治療グループとプラシーボグループを比較した。次に、有害事象、および重大有害事象の発生率について二つのグループを比較した。最初の30日以内に患者当たり複数回出現した事象の発現率を比較するために、負の二項分布による一般化直線モデルを用いた(McCullagh and Nelder(1989)Generalized Linear Models(2nd ed,Chapman & Hall))。次に、30日結果におけるグループ特異的差。「良好、または中等度の回復」対他の全てのレベルに二分化したGOSEスコアを分析するためにはFisherの正確検定を用いた。グループ特異的DRSスコアの比較には、Wilcoxonの順位和検定を用いた。昏睡および外傷後記憶喪失の期間平均値および中央値は、スチューデントのt検定を用いて比較した。分析対象値は全て、脳損傷の重度(iGCS 4−8(重度)対iGCS 9−12(軽度))によってあらかじめ層化した。登録から治療4日目までに測定されたICP−TIL、および、他の毎時、または毎日の臨床測定値を分析するには、長軸混合作用モデルを用いた。
死亡率に差が観察された場合、それが何であれ、臨床的因子の混同ではなく実験処置に関連するのかどうかを確かめるために、さらに新たな多変数解析を行った。全原因死亡率、またはCNS関連死亡と独立に関連すると判定される変数、例えば、iGCS(軽度対重度に二分化)、損傷重度スコア、およびMarshall CTスコアは、段階的ロジスティック回帰分析の中に組み込んだ。GCSは、損傷の最初の数時間において変動することがよくあるので、損傷1日後に二分化GCSを用いて、別の段階的ロジスティック回帰分析を行った。
結果
スクリーニングおよび登録−合計281名の患者をスクリーニングした。参加資格の可能性を持つ3名の患者を見逃し、かつ、18名の患者は、身元不明のため、または、損傷の11時間以内に代理人と接触できなかったために登録できなかった。三つの手続き「保留」時の一つに現れた6名の参加資格可能な患者については登録することができなかった。同意後、ランダム化前に1名の患者が排除された。治療チームが、彼の損傷は生存不能と結論したためである。参加資格があるのに11名の患者は登録されなかった。代理人が同意することを拒否したためである(図1)。非参加者は、性別、人種、および損傷の原因に関して参加者と類似していた。
実験被験体の特徴−71名の患者は男性で、34名は黒人であった。平均年齢は36歳であった。72名の患者(72%)は、iGCSが4−8であった。残りのスコアは9−12であった。損傷の80%以上が、自動車の衝突事故または転落によるものであった。多くの患者は、損傷後1時間以内に病院に到着した。58%はヘリコプターによるものであった。代理人同意のための代表者の住所を特定するのにしばしば数時間を要するので、損傷から試験薬注入の開始までの平均時間は、プロゲステロングループで6.3(95%CI5.9−6.8)時間であり、プラシーボグループで6.2(95%CI5.9−6.6)時間であった。
ランダム化−77名の被験体が、プロゲステロンにランダムに割り当てられ、23名がプラシーボに割り当てられた。治療グループは、性別、年齢、人種、iGCS、損傷の原因、外傷の改定スコア、損傷重度スコア、損傷からED到着までの時間、試験治療までの時間、Marshall CTスコア(Marshall et al.(1991)J
Neurosurgery 75(suppl):S14−20),および、E.D.挙動に関して極めて近似していた(表4)。
投与およびプロトコール順守−本発明者らの薬物動態知見は別の場所に報告されている(Wright et al.(2005)J Clin Pharmacol 45(6):640−648)。プロゲステロンにランダムに割り当てられた1名の患者が、試験薬の投与開始前に死亡した。彼女は、「治療の意図あり」という範疇の下に本発明者らの分析対象とした。治療グループにおける他の全てのメンバー、およびコントロールグループでは全てのメンバーにおいて、薬剤投与時、プロゲステロンの血清レベルは高くなかった。些少のプロトコール違反、例えば、静脈注入バッグ交換における短時間の遅れは一般的であった。これらの違反が注入を中断させることがないよう十分な解決策が実施された。
6回の大きなプロトコール違反が生じた。4回は、長引いた注入中断であり、1回は、投与間違いであり、1回は、自動車衝突事故の犠牲者の不適切な登録であった。入院第2日目における反復CTスキャンによって虚血性発作が明らかになった時には、患者に対するプロゲステロン注入を速やかに中止した。その後、入院時CTスキャンを再検査してみると、微妙ではあるが、明瞭な発作の徴候が判明した。これは、総頚動脈の切創によるものであった。発作は治療前だったので、この事象は、SAEではなく、重大なプロトコール違反と分類された。
安全性−有害、および重大有害事象の集合発生率および個別発生率は、グループ間で異なっていた(表5)。これは、AEおよびSAEを、出現率で分析しても、被験体当たりの発作の平均数で分析しても同様であった。治療グループの検査値は、グループ平均で分析しても、または、ある特定の試験値が、あらかじめ定められた閾値を超えた症例の頻度で分析しても驚くほど近似していた。プロゲステロンで治療された被験体は、コントロールと比べ、注入期間中の平均体温の上昇が有意に低かった。これは、プロゲステロン治療患者対コントロール患者について、勾配=−0.0055(95%CI,−0.010から−0.001)を持つ治療対時間相互作用を分析することによって決定した。
プロゲステロン投与がその原因であると特定される唯一の有害事象は、2例に見られた、静脈注入部位における表層静脈炎であった。2例とも自然に寛解した。いずれもプロゲステロン治療を受けた3名の患者が、注入の終了後6から23日目に深部静脈血栓症を発症した。3例は全て無事に治療された。2名の患者が虚血性発作を患った。プロゲステロンに割り当てられた患者のものは、治療前に出現したものであり、重大なプロトコール違反と見なされた。他方の例は、プラシーボに割り当てられた患者に関わっていた。プロゲステロンに割り当てられた、ある患者は、試験注入が完了して2日後に心筋梗塞を起こした。その時点で、彼は、脳の還流圧を急上昇させる試みとして高用量のネオシネフリンを投与された。死後の剖検により冠状動脈内血栓症が明らかになった。
薬効シグナル−損傷後の最初の4日間、モニターを所定の場所に設置されたプロゲステロン治療被験体の頭蓋内圧(ICP)レベルの平均値は安定であったが、一方、ICPモニターを所定の場所に設置されたプラシーボ処置被験体におけるICP平均値は上昇する傾向があった。しかしながら、この傾向は統計学的に有意ではなかった。ICP−TILスコアの平均値は、グループ間に有意差は無かった(表6)。
プロゲステロンで治療された、重度のTBI患者(iGCS4−8)では、プラシーボを投与された生存者よりも、その昏睡の持続が有意に長かった(それぞれ、平均期間が10.1日(7.7、12.5)対3.9日(2.5、5.4)。損傷後の記憶喪失の期間は、グループ間で有意に異なっていた(表7)。プロゲステロンに割り当てられた77名の患者の内10名(13パーセント)が、損傷から30日以内に死亡した。一方、プラシーボに割り当てられた23名の患者の内死亡例は7名(30.4%)であった(死亡率比は0.43、95%CI0.18−0.99)。分析を、処置を受けた99名の被験体に限定すると、この差の有意性はさらに大きくなった(死亡率比0.39、95%信頼区間0.16、0.93)。神経学的原因による死亡例は、コントロールに比べ、治療グループでより低くなる傾向があった(死亡率比0.30、95%信頼区間0.08−1.12)。一方、CNS以外の死亡例には著明な差は無かった。治療グループと死亡率の間の関連は、24時間における二分化GCSに基づくいくつかの変数を含む多変数モデルでもしっかりと保存されていた(表7)。
本発明者らは、損傷後30日目の生存者の92パーセントと接触し、彼らの機能状態を評価することができた。本発明者らの主要結果測定項目、二分化GOSEは、二つのグループ間で有意差を示さなかった。重度の脳損傷を被った患者のDRSスコアも同様に近似していた。しかしながら、試験薬剤に割り当てられた、脳損傷が中等度の患者は、プラシーボに割り当てられた患者に比べ、平均して有意に優れたDRSスコアを達成した(表7)。
考察
急性外傷性脳損傷のためにプロゲステロンを使用することはこれまで無かったので、本発明者らは、毒性の可能性を評価するために、試験的な、II相実験を行った。到着する患者達を、その試験参加資格について入念にスクリーニングした。参加資格の可能性を持つ患者の99パーセントをスクリーニングし、参加基準を満たした患者の内90%が、代理人の合意を得て登録された。治療される患者およびコントロール患者は、損傷の重度、治療までの時間、および、結果に関する他の独立予測因子に関してよく一致した。
インフォームドコンセントの例外措置を求めるのではなく、代理人コンセントを確保しようと決心したことで、治療の開始が平均6.5時間遅れた。ある動物実験から、損傷後24時間という遅い時間でもプロゲステロンは治療効果を発揮する可能性のあることが明らかにされていたけれども、治療効果の大きさは、治療が損傷の2時間以内に実施された場合に最大となる(Roof et al.(1996)Exp Neurol 138(2):246−251)。
治療グループの3名が、深部静脈血栓症(DVT)を発症した。もっとも早いものは注入開始6日後であった。この頻度は、重度の外傷患者に対する、本発明者らの施設の過去のDVT発生率(未発表データ)の範囲に十分入るものであった。死亡率を除き、治療グループでもコントロールグループでも、AEおよびSAEの発生率はほぼ同じであった。両グループは、検査および生理学的数値においても極めて近似していた。
本発明者らの二次的目標は、薬剤活性の徴候を検出することであった。本発明者らは、本発明者らの一次結果測定項目としてGOSEを選んだ。それは、これが、脳損傷文献においてもっとも広く用いられる標準だからである。本発明者らは、活性を示す有望な徴候を観察した。
ICP平均値またはICP−TIL平均値には有意差は認められなかった。
損傷後記憶喪失の期間および30日GOSEに関しては、両グループ間に有意差は無かった。しかしながら、治療グループに割り当てられた被験体における30日死亡率は、コントロールグループのそれの半分未満であった。他の重要な結果予測因子を考慮に入れたとしても、この差は依然として残っていた。
治療グループにおける重度の脳損傷患者では、コントロールグループに比べ、昏睡の平均期間が長かった。これは「生存者効果」を表しているのかもしれない。もしもプロゲステロンが、この30日間の追跡期間中に幾人かの患者の死を阻止したとするならば、これら生き延びた人々が、比較的長時間昏睡状態を続けることは驚くに当たらない。1年間の結果は後日報告する予定である。
振り返ってみると、本発明者らは、インフォームドコンセントに対する例外措置を設けて患者を登録した方がよかったかも知れない。こうすれば、試験治療をもっとずっと早く開始することができたであろうし、登録期間内に法的に認可された代理人を見出すことができないために取り逃がした患者も登録することができたであろう。試験薬をもっと早く投与することができたならば、それは、活性に関してさらに顕著な徴候を示したことであろう。しかしながら、本発明者らは、これが、急性脳損傷治療という背景の下にプロゲステロンが使用される、ヒトの最初の治験であること、および、本発明者らの実験は、活性ではなく、主に薬剤の安全性を評価するために設計されたものであることを認識していた。これが、本発明者らが、できるだけたくさんの候補患者を登録するために、代理人のコンセントの下に患者を登録し、あえて重大な結果をもたらす可能性のある治療遅延を受容した理由である。安全性に関する、本発明者らの見通しの明るい知見に基づいて、本発明者らは、制限された状況下ではあるがコンセントの免除を可能とする、連邦政府の規制枠(21CFR50.24の連邦政府規制)の下でより大規模な治験を実施したいと思う。これによって、より早い治療の開始が可能となり、神経保護作用の徴候があれば、それが何であれその徴候を検出する機会を最大限に生かすことが可能となろう。
要約すると、本研究は、急性外傷性脳損傷の治療におけるプロゲステロンの有用性を評価する上で重要なステップを示す。TBIは、世界中で死亡および障害の主要原因となっている。が、これまで結果を改善することが示された薬剤は無かった。本発明者らは以前に、プロゲステロンは、TBIの犠牲者に静脈内方式において正確に投与することが可能であることを報告した(Wright et al.(2005)J Clin Pharmacol 45(6):640−648)。本分析は、この治療が何の害毒をもたらさないこと、および、疾病変調活性を有する可能性のあることを示す予備的証拠を提供する。さらに多くの被験体、1:1ランダム化、および短期の登録ウィンドウを含む臨床治験が求められている。もしそれが本発明者らの知見を裏づけることになれば、それは、脳損傷ケアにおける大きな進歩を表すことになろう。
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明細書で引用した刊行物および特許出願は全て、本発明の関連する当業者のレベルを示すものである。全ての刊行物および特許出願は、あたかも各刊行物および特許出願が、明確に個々に参考として援用されると示されているかのように、参考として本明細書に援用される。
上述の発明は、理解の明確さの目的で実例および実施例を通じていくらか詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲内において特定の変更および改変が行われ得ることは明らかである。

Claims (18)

  1. ヒト被験体における外傷性脳損傷の治療において使用するための組成物であって、該組成物は、治療有効量のプロゲステロンを含み、該組成物は、100ng/ml〜1000ng/mlの最終プロゲステロン血清レベルが達成されるように、プロゲステロンの一定の投与レジームまたは2段階レベルの投与レジームにしたがって静脈内注入により投与されることを特徴とする、組成物。
  2. 少なくとも200ng/mlの最終プロゲステロン血清レベルが達成されるように投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 950ng/ml以下の最終プロゲステロン血清レベルが達成されるように投与されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 850ng/ml以下の最終プロゲステロン血清レベルが達成されるように投与されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
  5. 少なくとも0.1mg/kg/時の時間当たりの用量で静脈内注入により送達されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 少なくとも0.5mg/kg/時の速度で注入により送達されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
  7. 少なくとも0.71mg/kg/時の速度で注入により送達されることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
  8. 少なくとも0.8mg/kg/時の速度で注入により送達されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
  9. 7.1mg/kg/時以下の速度で注入により送達されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 治療の継続期間は1〜7日である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. 損傷後、0時間〜1時間に投与されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 損傷後、1時間〜120時間に投与されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 1時間〜120時間の期間の間、注入により投与されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
  14. プロゲステロンの一定の投与レジームにしたがって投与されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
  15. 時間当たりの一定の合計注入投与レジームにしたがって投与されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
  16. 1〜136時間の継続期間を有する一定の投与レジームを使用して、注入により投与されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
  17. 前記治療は、複数の維持サイクルを含み、各維持サイクルは、完了した一定のプロゲステロン投与レジームを含み、該維持サイクルの間の継続期間は、1時間から1日の間である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
  18. エチルアルコールをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
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