JP5489325B2 - 高周波誘導加熱方法及び高周波誘導加熱装置 - Google Patents

高周波誘導加熱方法及び高周波誘導加熱装置 Download PDF

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Description

本発明は、軸状であって、外形形状や横断面の形状が一様ではないワークを誘導加熱する高周波誘導加熱方法及び高周波誘導加熱装置に関するものである。
鉄鋼材料で作られたワークを焼き入れ処理した後、多くの場合焼戻しが行われる。焼戻しは、主として硬さ調整と、内部応力の除去及び靱性の付与を目的とするものである。焼戻しは、ワークを焼き入れ温度より低い温度に昇温し、その後に除冷する熱処理である。すなわち公知の通り、鉄鋼材料を昇温すると鉄鋼の組織がオーステナイトに変態する。そしてこれを急冷すると硬いマルテンサイトに変態し、焼き入れが行われる。
しかしながら焼き入れによって生じたマルテンサイトは硬くて脆く、また内部応力を内包する。そこでワークを再度昇温し、その後に除冷することによって、硬さ調整と、内部応力の除去及び靱性の付与を行う。
高周波誘導加熱を利用して焼き入れを行う場合には、焼き入れ用の誘導加熱コイルによってワークを焼き入れ温度(A1変態点以上の温度)まで昇温し、これを急冷して焼き入れ処理を終え、その後に別の誘導加熱コイルによって焼戻しを行う。すなわち焼き入れ用とは別に、焼戻し専用の誘導加熱コイルを使用し、焼き入れによる急冷後に、焼戻し専用の誘導加熱コイルでワークを再度昇温する。
この様に高周波誘導加熱による焼き入れを行う場合には、焼戻し専用の誘導加熱コイルによって焼戻しが行われるのが通例である。例えば、特許文献1には、焼戻し専用の加熱コイルに関する発明が開示されている。
これに対して極めて稀であるが、焼き入れと焼戻しに同一の誘導加熱コイルを使用する例もある。すなわち同一の誘導加熱コイルを使用する表面焼き入れ・焼戻し方法が、特許文献2に開示されている。特許文献2に記載の発明は、焼き入れの際の残留応力を緩和するために、焼き入れ部分だけでなく、焼き入れ部分の周囲についても焼戻しを行うことを目的としている。すなわち焼き入れした領域よりも広い領域に渡って焼戻しを行う。そのため、一旦焼き入れした後に、再度同一の誘導加熱コイルを焼き入れ部分に近接して昇温し、その後に誘導加熱コイルをずらして焼き入れ部分以外の部分を同一の誘導加熱コイルで昇温する。
すなわち特許文献2に記載の発明で採用する誘導加熱コイルは、図14(特許文献の図2)の様に円形のワンターンコイルであり、軸方向の全長が極めて短い。特許文献2に記載の発明では、焼き入れの際には、ワークの焼き入れ希望箇所F(図13)及び薄肉部との境界部分に誘導加熱コイルを近接して焼き入れ希望箇所Fを昇温する(図14b)。そして当該部分を急冷して焼き入れ作業を終える(図14c)。
続いて焼戻し作業を行うが、特許文献2に記載の発明では、焼き入れの際と同一の誘導加熱コイルを使用して焼戻し作業を行う。すなわち前記した誘導加熱コイルを、再度ワークの焼き入れ希望箇所Fに誘導加熱コイルを近接し、焼き入れ希望箇所Fを昇温する(図14d)。そして誘導加熱コイルをずらして前記した焼き入れ希望箇所Fから外れた位置にまで誘導加熱コイルを移動させる(図14e)。このとき、先に焼戻しのために昇温された部位は、温度降下が始まり、焼戻しの為の除冷が始まる。
一方、新たに誘導加熱コイルが移動された部位では、誘導加熱コイルによって新たに昇温される。また当該部位についても、一定温度まで昇温された後に、除冷が行われる。
特開2008−150661号公報 特開昭63−238212号公報
前記した様に、一般に、ワークを焼入する誘導加熱コイルと、焼戻しする誘導加熱コイルは別に設けられる。
ところが、昨今は装置の小型化や簡素化のために、焼入用の加熱コイルと焼戻し用の加熱コイルとを共用したいという要望が出てきた。
ここでワークの形状が、単純な円筒形等の形状である場合には、焼入用の加熱コイルを使用して焼戻しを行っても、特に不具合は生じない。
例えば特許文献1に開示した方策では、本来焼き入れを行う部位は、図13のF領域であり、表面は単純な円筒形状である。
そのため、焼き入れの際の温度上昇カーブと焼戻しの際の温度上昇カーブは同一であり、目標の焼戻し温度に図13のF領域を昇温することができる。
しかしながら、外形形状が異形であって肉厚が著しく異なるワークに対して焼き入れ・焼戻しを行う場合に、焼入用の加熱コイルと焼戻し用の加熱コイルの共用を試みたところ、焼戻し後の表面硬度に予期しないばらつきが生じた。
例えば、図1,2に示すワーク100の様に、一部に直径が大きい部位101があり、他の部位については直径が細いワークである場合の様に、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり、昇温困難な部位Aと昇温容易な部位Bとを有するワークに対し高周波焼き入れ・焼戻しを行うと、昇温容易な部位Bと昇温困難な部位Aで硬度にばらつきが生じた。
この問題を解決するために本発明者らが調査したところ、ワークを焼戻しする際に、ワークの表面温度にばらつきが生じ、この温度ばらつきが原因で表面硬度がばらつくことが判明した。
すなわち焼き入れ時においては、昇温困難な部位Aと昇温容易な部位Bの温度差に大きな相違は無かったが、焼戻しの際における昇温時には、昇温容易な部位Bの温度と昇温困難な部位Aの温度に相当の温度差があった。
より具体的には、昇温困難な部位Aの温度が昇温容易な部位Bの温度に比べて著しく高いものとなっていた。
すなわち焼戻しの際には、断面積等が大きくて昇温し難い部位Aの方が温度が高く、昇温容易であるはずの部位Bの温度が低くなる傾向にある。
本発明者らの実測によると、両者の間の温度差は、摂氏200度程度であり、無視できない温度差であった。
すなわち焼戻しには、高温焼戻しと称される焼戻しと低温焼戻しと称される焼戻しがあり、前者は、摂氏150度から摂氏200度程度に昇温され、後者は摂氏550度から摂氏650度程度に昇温される。この様に焼戻しは目的によって昇温させる目標温度が相違し、かつ理想的に焼戻しを行い得る温度幅は、摂氏50度程度と狭い。
そのため摂氏200度もの温度ばらつきが生じると、焼戻し後の表面硬度が目標値から外れてしまう懸念がある。
そこで本発明者らは、焼き入れの際に温度ばらつきが小さいにも係わらず、焼戻しの際に大きな温度ばらつきが生じてしまう原因についてさらに調査研究した。
その結果、高周波誘導加熱を行う場合、常温からA1変態点を越える温度まで昇温すると、全体の温度ばらつきが小さくなり、かつ昇温時間のばらつきも小さいが、常温からA1変態点未満の昇温カーブだけに注目すると、昇温容易な部位Bと昇温し難い部位Aとの間に僅かに差異があり、この昇温カーブの相違が焼戻しの際に大きな温度ばらつきが生じてしまう原因であることが判明した。
以下、この理由について説明する。
前記した図1,2の様な、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり、昇温困難な部位Aと昇温容易な部位Bとを有するワーク100に対し高周波焼き入れを行う場合は、昇温容易な部位Bを通過する磁力線密度が低く、昇温困難な部位Aを通過する磁力線密度が高い特性を有する誘導加熱コイル120が使用される。
すなわちワークの温度が均一になる様に、昇温容易な部位Bを通過する磁力線密度が低く、昇温困難な部位Aを通過する磁力線密度が高い特性を有する誘導加熱コイル120が使用される。
より具体的には、図3に示すような、焼入を希望する部位の長さL及び再加熱を希望する部位の長さLに応じた全長Lを有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルが使用される。
すなわち図3に示す焼き入れ用誘導加熱コイル120は、半開放鞍形コイルであり、直線部102,103と、大径曲線部105及び小径曲線部106を有した形状であり、これらが直列形状に接続された構造をしている。
また大径曲線部105と直線部102,103との間には、段部110、111が設けられている。
さらに大径曲線部105と段部110、111には、複数のコア121が設けられている。
従って誘導加熱コイル120は、大径曲線部105及び段部110、111たる軸方向a領域で発生する磁力線の強度が高く、直線部102,103たる軸方向b領域で発生する磁力線の強度が弱い。
そして図3に示す焼き入れ用誘導加熱コイル120は、図5に示す位置関係となる様に、ワーク100に近接される。すなわち発生する磁力線の強度が高いa領域は、ワーク100の昇温困難な部位Aを覆い、発生する磁力線の強度が弱いb領域は、ワーク100の昇温容易な部位Bを覆う。
その結果、焼き入れ時においては、ワーク100の昇温困難な部位Aにより強い磁力線が通過し、全体の温度が均一となる。
しかしながら、ワークの昇温困難な部位Aと昇温容易な部位Bの昇温カーブをより詳細に観察すると、図6の様に僅かながら差異を有するものであった。
ここで図6は、軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークに対し、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを使用して焼き入れした場合のワークの温度変化を模式的に表したグラフである。
図3に示す様な誘導加熱コイル120を使用して図1に示すようなワークを昇温すると、供給される磁力線密度が高いA部が先行して昇温し、わずかに遅れて供給される磁力線密度が高いB部が昇温する。すなわちA部とB部との間で温度上昇の傾きが相違し、供給される磁力線密度が高いA部の方が、B部よりも高い傾きで温度上昇する。
ところが、先に昇温したA部が変態点A1の温度を越えると、ワーク中のフェライト組織がオーステナイトに変態し、透磁率が著しく低下する。その結果、ワーク100のA部を流れる誘導電流が急激に低下し、温度上昇カーブが鈍化する。
これに対して、先に昇温したA部が変態点A1の温度を越えると、他の部位に流れる誘導電流が増大し、B部の温度上昇カーブが上向きとなり、短時間の内にB部についても、変態点A1の温度に達する。その後は、A部、B部共に同様の上昇カーブを描いて温度上昇する。そして急冷されて両者ともに温度降下する。
そのためワーク100のA部とB部の最終的な温度は略同一の温度となる。また所望の焼き入れ温度に達する時間についても大差は無い。そのため焼き入れの際にはワークの表面硬度にばらつきは生じない。
ところが、同じ誘導コイル120を使用して焼戻しを行うと、図7の様な温度変化を遂げる。
すなわち前記した様に、図3に示す様な誘導加熱コイル120を使用して図1に示すようなワークを昇温すると、当初、供給される磁力線密度が高いA部の温度上昇勾配が高く、供給される磁力線密度が高いB部の温度上昇勾配が低いものとなる。
例えば図6,7のグラフで、B部側の温度が摂氏300度の場合、昇温し難い部位Aの温度は、摂氏450度に達している。
そのためB部側の温度が摂氏300度となった状態で、誘導加熱コイル120に対する通電を停止しても、昇温し難い部位Aの温度は、既に摂氏450度となっており、加熱し過ぎの状態となっている。
なお前記した特許文献1の様に、円形のワンターンコイルを使用し、ワンターンコイルを昇温困難な部位Aに近接させて当該部位Aを昇温した後に、ワンターンコイルを昇温容易な部位Bに移動させて当該B部位を昇温させれば、焼戻し時の温度ばらつきが解消し、硬度ばらつきも減少するが、全体の作業時間が著しく伸び、実用的ではない。
すなわち、円形のワンターンコイルを使用し、ワンターンコイルを昇温困難な部位Aに近接させて当該部位Aを昇温した後に、ワンターンコイルを昇温容易な部位Bに移動させて当該B部位を昇温させた場合は、図8に示すような昇温カーブを描き、部位Aを昇温している間は部位Bの温度上昇がない。そのため昇温工程を実質的に2回くり返すこととなり、作業時間が著しく延びる。
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、焼き入れと焼戻しを一つの誘導加熱コイルで行い、且つ焼戻し時におけるワークの温度ばらつきを抑制して硬度ばらつきの少ない、高周波誘導加熱方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークに対し高周波誘導加熱を行う方法であって、軸方向に相当の長さを有する領域を所定の焼入温度まで昇温した後に急冷する焼入工程と、その後に前記焼入温度よりも低い温度まで昇温した後に徐冷する再加熱工程を有する高周波誘導加熱を行う方法において、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを使用し、前記焼入工程及び再加熱工程においては、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、ワークの昇温困難な部位に近接させ、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が低い部位を、ワークの昇温容易な部位に近接させて、ワークの焼入及び再加熱を希望する部位を全体的に昇温させワークの温度上昇は、昇温困難な部位が昇温容易な部位よりも先行するものであり、再加熱工程におけるワークの昇温の最中に、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度の低い部位を、ワークの昇温容易な部位に対向させながら、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位をワークの昇温困難な部位から離すことを特徴とする高周波誘導加熱方法である。
請求項1の発明では、焼入工程においては、発生する磁界の磁力線密度が高い部位をワークの昇温困難な部位に近接し、焼入を希望する部位を全体的に焼入温度に昇温して焼入するので、ワークの温度が一様に上昇し易い。その結果、ワークに一様な深さの焼入を施すことができる。
また、再加熱工程においては、焼入工程と同一の誘導加熱コイルを使用するので、焼入工程と再加熱工程とで誘導加熱コイルを入れ代える必要がない。
また再加熱工程においては、焼入工程と同一の誘導加熱コイルを使用するので、前記した様に、ワークの昇温困難な部位Aが先行して昇温する。しかしながら、本発明では、昇温の最中に誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離すので、昇温の途中で、昇温困難な部位Bの温度上昇カーブが鈍化する。その結果、図9のグラフに示すように、当初、ワークの昇温困難な部位Aの温度上昇勾配が高く、部位Aが急速に昇温するが、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離すと、昇温困難な部位のAの温度上昇カーブは急速に鈍化する。一方、誘導コイルは、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有しているから、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更しても、昇温容易な部位のBの温度上昇カーブは変化しない。そのため昇温容易な部位のBの温度が、昇温困難な部位のAの温度に追いつき、両者の間の温度ばらつきが減少する。
この状態で、誘導加熱コイルに対する通電を停止すれば硬度ばらつきを起こさずにワークの熱処理を行うことができる。
また、本発明では、ワークの温度上昇を、昇温困難な部位が昇温容易な部位よりも先行するようにした。ここで昇温困難な部位とは、熱容量が大きく、昇温させるのに要する熱量(誘導電流)が多いことを意味する。この昇温困難な部位の昇温を先行させて、焼き入れ時においては、組成が変化する磁気変態点に差し掛かると、誘導電流が流れにくくなって温度上昇の仕方が小さくなる。そして、昇温困難な部位に流れるべき誘導電流の一部が昇温容易な部位に流れ、昇温容易な部位の温度上昇の仕方が向上し、比較的早期に昇温容易な部位の温度も磁気変態点に到達し、昇温困難な部位の温度に昇温容易な部位の温度が近付く。よって、ワークの焼入部位の全領域を均一に焼入することができる。
請求項に記載の発明は、再加熱工程の加熱を開始してから所定時間が経過した後に、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、昇温困難な部位から離すことを特徴とする請求項に記載の高周波誘導加熱方法である。
請求項の発明では、再加熱工程の加熱を開始してから所定時間が経過した後に、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離すので、再加熱工程において加熱中のワークの熱処理部の温度が均一化される。その結果、ワークの熱処理部の硬度と粘り強さを均一化することができる。
請求項の発明は、再加熱工程の加熱を開始し、昇温困難な部位の温度が所定温度に達すると、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、昇温困難な部位から離すことを特徴とする請求項に記載の高周波誘導加熱方法である。
請求項の発明では、再加熱工程中に、昇温困難な部位の温度が所定温度に達すると、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離すので、再加熱工程において加熱中のワークの熱処理部の温度が均一化される。その結果、ワークの熱処理部の硬度と粘り強さを均一化することができる。
請求項の発明は、ワークとしてアクスルチューブを加熱することを特徴とする請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の高周波誘導加熱方法である。
請求項の発明では、アクスルチューブを良好に焼入及び焼戻し等することができる。すなわち、アクスルチューブには軸方向の位置によって直径が異なる部位が存在し、段が形成されている。この段部分には応力が集中し易いが、請求項の発明を実施すると、同一の誘導加熱コイルで誘導加熱することによって、アクスルチューブにおける応力が集中し易い段部分に、所望する硬度及び粘り強さを提供することができる。
請求項の発明は、軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークを誘導加熱する高周波誘導加熱装置であって、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波交流電力を供給する高周波電源と、ワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させる移動手段を備え、ワークを所定の焼入温度に加熱する第1加熱モードが実行され、それに続いて前記第1加熱モードよりも低い温度に加熱する第2加熱モードが自動的に実行され、前記第1加熱モード及び第2加熱モードによる加熱の際には、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、ワークの昇温困難な部位に近接させ、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が低い部位を、ワークの昇温容易な部位に近接させて、ワークの焼入及び再加熱を希望する部位を昇温させ、ワークの温度上昇は、昇温困難な部位が昇温容易な部位よりも先行するものであり、前記第2加熱モードによる加熱の最中に、前記移動手段によってワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させて、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度の低い部位を、ワークの昇温容易な部位に対向させながら、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位をワークの昇温困難な部位から離す離反動作を行うことを特徴とする高周波誘導加熱装置である。
請求項の発明の高周波誘導加熱装置は、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを備えているので、誘導加熱コイルに高周波電流を通じると、ワーク上には磁力線密度に応じた誘導電流が流れ、ワークを昇温させることができる。
またワークを焼入温度又は焼入温度以上に加熱する第1加熱モードから、前記第1加熱モードよりも低い温度に加熱する第2加熱モードに自動的に移行するので、焼入と焼戻し等の再加熱を同じ誘導加熱コイルで実施することができる。
また、第2加熱モードによる加熱の際には、前記移動手段によってワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させて誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して磁界の磁力線密度が高い部位を昇温困難な部位から離す離反動作を行う。そのため前述した理由により、ワークの温度が均一化し、ワークの偏った昇温を防止することができる。
請求項に記載の発明は、ワークの前記昇温困難な部位の温度を検出する温度検出手段を設け、第2加熱モードにおいて、前記温度検出手段が検出した温度が所定温度に達するか、又は加熱する時間が所定時間になると、前記離反動作を実行させる制御機構を設けたことを特徴とする請求項に記載の高周波誘導加熱装置である。
請求項に記載の発明では、ワークの昇温困難な部位の温度を検出する温度検出手段を設け、第2加熱モードにおいて、温度検出手段が検出した温度が所定温度に達すると、移動手段を作動させる制御機構を設けたので、ワークの昇温困難な部位の過剰な昇温を回避でき、ワークの加熱部位の温度の均一化を図ることができる。
また、請求項の発明では、第2加熱モードにおいて、誘導加熱コイルのうち発生する磁界の磁力線密度が高い部位で、ワークの昇温困難な部位を加熱する時間が所定時間になると、移動手段を作動させる制御機構を設けたので、ワークの昇温困難な部位の加熱時間が制約され、当該部位の過剰な昇温を防止できると共に、ワークの加熱部位の温度の均一化を図ることができる。
請求項の発明は、前記誘導加熱コイルは、半開放鞍型コイルであることを特徴とする請求項又は請求項に記載の高周波誘導加熱装置である。
請求項の発明では、誘導加熱コイルが半開放鞍型コイルであるので、ワークに誘導加熱コイルを対向配置させ易く、また、装置の小型化を図ることができる。
本発明の高周波誘導加熱方法を実施すると、焼入工程においては、発生する磁界の磁力線密度が高い部位をワークの昇温困難な部位に近接して焼入を希望する部位を全体的に焼入温度以上に昇温して焼入するので、ワークの温度が一様に上昇し易い。その結果、ワークに一様な深さの焼入を施すことができる。
また、再加熱工程においては、焼入工程と同一の誘導加熱コイルを使用するので、焼入工程と再加熱工程とで誘導加熱コイルを入れ代える必要がない。また、ワークの昇温の際に誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更するので、ワークが一様に昇温し易くなる。そのため望ましい状態で熱処理を行うことができる。
本発明の高周波誘導加熱装置では、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを備えているので、誘導加熱コイルに高周波電流を通じると、ワーク上には磁力線密度に応じた誘導電流が流れ、ワークを昇温させることができる。
また、ワークを焼入温度又は焼入温度以上に加熱する第1加熱モードから、前記第1加熱モードよりも低い温度に加熱する第2加熱モードに自動的に移行するので、焼入と焼戻し等とを同じ誘導加熱コイルで実施することができる。
さらに、第2加熱モードにおいて、ワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させる移動手段を備えたので、誘導加熱コイルとワークの対向する部位が移動する。その結果、ワークの偏った昇温を防止することができ、良好に焼入と焼戻し等とを実施することができる。
本発明によって焼き入れ及び焼戻しを行うワークの一例を示す斜視図である。 図1のワークの断面図である。 本発明の実施形態で採用する誘導加熱コイルの斜視図である。 図3の誘導加熱コイルを反対側から観察した斜視図である。 図3,4の誘導加熱コイルを図1に示すワークに近接した状態を示す斜視図である。 軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークに対し、焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを使用して焼き入れした場合のワークの温度変化を模式的に表したグラフである。 図6と同様のグラフであり、ワークの昇温容易な部位が一定温度に達した後にワークを除冷した場合の温度変化を模式的に表したグラフである。 特許文献1に開示された方策を応用して焼き入れ・焼戻しを行った場合の温度変化を模式的に表したグラフである。 本発明の実施形態を採用してワークの昇温容易な部位が一定温度の至った後にワークを除冷した場合の温度変化を模式的に表したグラフである。 本発明を実施するための誘導加熱コイルと、誘導加熱されるワークの側面図であり、(a)はワークを焼入される第1モード時の状態を示し、(b)はワークを再加熱する第2モード時の状態を示し、(c)は熱処理後のワークの断面を示す。 本発明の高周波誘導加熱装置の信号系統図である。 本発明の高周波誘導加熱方法を実施する手順を示す流れ図である。 特許文献2の第1図を再掲した断面図である。 (a)〜(e)は、各々特許文献2の第2図(a)〜(e)を再掲した断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
以下の実施例では、ワーク10として自動車の車軸に使用されるアクスルチューブを例に挙げて、本発明の構成及び実施方法を説明する。
高周波誘導加熱装置1は、ワーク10に対向配置して誘導加熱を行う誘導加熱コイル2と、加熱コイル移動装置8,高周波電力供給装置9,ワーク回転駆動装置6,ワーク移動装置7,ワーク温度検出装置11,タイマー12,及び制御装置13を備えている。
ワーク10は、軸状であって、直径が異なる部位を有する。すなわち、ワーク10は、大径部15と小径部16を有している。この大径部15と小径部16の接続部分にはコーナ部10aが形成されている。小径部16の直径は、多少の差があるものの、全長(図10で見て左右方向の長さ)に渡ってほぼ同じである。図10に示すように小径部16は、軸方向に相当な長さを有している。
コーナ部10aは、ワーク10の他の部位(小径部16)よりも昇温が困難な部位である。すなわち、加熱されたコーナ部10aの熱は、大径部15の内部方向へ移動するために、他の部位よりも昇温しにくくなるものと考えられる。
そのためワーク10を軸方向の領域に分けて観察したとき、図10(a)のA領域は昇温困難な部位であり、B領域は、昇温容易な部位である。
また、ワーク10は、熱処理時には両端がワーク支持部材5によって着脱可能に挟持される。ワーク支持部材5には、ワーク回転駆動装置6とワーク移動装置7(図11)が接続されている。すなわち、ワーク回転駆動装置6を動作させるとワーク10はワーク支持部材5と一体に回転する。また、ワーク10は、ワーク移動装置7によって水平方向(図10で見て左右方向)に移動可能である。ワーク回転駆動装置6とワーク移動装置7の動作は、制御装置13(図11)によって制御される。
本発明で使用される誘導加熱コイル2は半開放鞍型コイルであり、制御装置13によって動作が制御される加熱コイル移動装置8(図11)によって上下方向及び水平方向に移動可能である。誘導加熱コイル2は、導電が良好な銅製の管で構成されており、管内部に冷却液を流すことができる。また、誘導加熱コイル2には、高周波電力供給装置9(高周波電源)から高周波の交流電流が供給可能である。高周波電力供給装置9から電力が供給されると、対向するワーク10の表面に誘導電流を生じさせ、ワーク10を加熱(誘導加熱)することができる。
また、誘導加熱コイル2は、両端に半円形部2a,2bが配置され、両端の半円形部2a,2bの間には直線部2cが配置されている。半円形部2aには複数のコア3が所定等角度毎に設置されており、直線部2cには複数のコア4が所定間隔毎に配置されている。
コア3及びコア4は、誘導加熱コイル2に電流が流れた際に、周囲に生じさせる磁気の磁力線密度を密にする機能を有している。すなわち、誘導加熱コイル2に対向するワーク10のうち、コア3又はコア4に近接する部位は、特に大きい誘導電流が流れる。
本実施形態では、半円形部2aのコア3の間隔が直線部2cのコア4の間隔よりも狭く、半円形部2aの方がコア3が密に取り付けられている。またコア4よりもコア3の方が、透磁率が高くなるように設定されている。そのため誘導加熱コイル2を軸方向の領域に分けて観察したとき、図10(a)のa領域は発生する磁気の磁力線密度が大きく、b領域は発生する磁気の磁力線密度が小さい。
高周波電力供給装置9は、制御装置13によってワーク10への電力の供給が制御される。すなわち、供給する電力量や電力供給時間が、制御装置13によって後述する第1加熱モード(焼入工程)や、第2加熱モード(再加熱工程)に設定され制御される。
制御装置13(制御機構)は、図示しないCPUやメモリ等を備えたコンピュータで構成されており、ワーク温度検出装置11やタイマー12から適宜信号を受信したり、加熱コイル移動装置8,高周波電力供給装置9,ワーク回転駆動装置6及びワーク移動装置7に制御信号を送信し、各装置を動作させる。
次に、ワーク10の誘導加熱(熱処理)の仕方を、図12を参照しながら説明する。図12に示すように、本発明の高周波誘導加熱方法は、ステップ1からステップ5までのステップで構成される。
まず、ステップ1において、ワーク10がワーク支持部材5で支持されると共に、ワーク移動装置7によって所定の位置まで搬送されて待機する。また、誘導加熱コイル2は、加熱コイル移動装置8によって所定の焼入実施位置まで搬送され、ワーク10に対向配置される。その際、誘導加熱コイル2のコア3は、図10(a)に示すようにワーク10のコーナ部10aに近接している。すなわち昇温困難な部位たる部位Aに、誘導加熱コイル2の磁力線密度が大きいa領域を近接させる。また昇温容易な部位たる部位Bには、誘導加熱コイル2の磁力線密度が小さいb領域が近接する。
次にステップ2に移行し、ワーク10がワーク回転駆動装置6によって回転駆動されると共に、誘導加熱コイル2は高周波電力供給装置9から電力の供給を受ける。ステップ2では、第1加熱モード(焼入工程)でワーク10が誘導加熱され、焼入される。すなわち、第1加熱モードでは、ワーク10の温度がA1変態点を越えるまで昇温する。その際、コーナ部10aにはコア3が近接しているので、コーナ部10aには他の部位よりも誘導電流が多く流れ、一部の熱が大径部15側や内部方向に移動するが、良好に焼入される。すなわち昇温困難な部位たる部位Aに、誘導加熱コイル2の磁力線が強い(磁力線密度が大きい)a領域が近接され、昇温容易な部位たる部位Bに、誘導加熱コイル2の磁力線が弱い(磁力線密度が大きい)b領域が近接されているので、ワーク10は略均一に昇温される。ただしワーク10の各部位の昇温状況を詳細に観察すると、前記した図6のグラフの様に、昇温困難な部位たる部位Aの温度上昇勾配が大きく、A1変態点を越えると部位Aの昇温カーブが鈍化し、同時期に部位Bの昇温カーブが上向いてワーク10の温度が均一化する。
そして誘導加熱が完了すると、制御装置13は高周波電力供給装置9の電力供給を停止させると共に、図示しない冷却ジャケットから冷却液を噴射させ、ワーク10を急冷する。これにより第1加熱モード(焼入工程)が終了し、ワーク10の焼入が完了する。
次に、ステップ3へ移行し、第2加熱モード(再加熱工程)が実施される。第2加熱モードでは、第1加熱モードよりも高周波電力供給装置9の供給電力が小さくなるように制御装置13によって制御され、ワーク10の加熱量は少ない。すなわち、第2加熱モードでは、ステップ3においてワーク10が再加熱されるが、ワーク10の硬度と粘り強さが、所望する値(又は所望する程度)になるようにワーク10の昇温が制御される。
ステップ3における再加熱時にもワーク10はワーク回転駆動装置6によって回転駆動されており、誘導加熱コイル2のコア3は、ワーク10のコーナ部10aに近接している。
そしてステップ4に移行し、再加熱が開始されてから所定時間が経過したか否か、又はワーク10のコーナ部10a(昇温困難な部位たる部位A)の温度が所定温度に達したか否かが判定される。制御装置13は、タイマー12やワーク温度検出装置11から信号を受信し、ステップ4の判定を行う。
再加熱が開始されてから所定時間が経過していなかったり、ワーク10のコーナ部10aの温度が所定温度に達していない場合には、再加熱が開始されてから所定時間が経過するまで、又はワーク10のコーナ部10aの温度が所定温度に達するまでステップ4に留まる。
再加熱における各部の昇温カーブは、前記した様にワーク10のコーナ部10a(昇温困難な部位たる部位A)が先行する。従ってワーク10のコーナ部10aの温度が所定温度に達した際の、ワーク10の小径部16(部位B)の温度は、コーナ部10aよりも低い。
そして、タイマー12の経時が、再加熱が開始されてから所定時間が経過するか、又はワーク温度検出装置11によって検出されたワーク10のコーナ部10aの温度が所定温度に達したと制御装置13が判定すると、ステップ5へ移行する。
ステップ5では、制御装置13は、ワーク移動装置7に制御信号を送り、ワーク10を所定距離だけ移動させる。すなわち、ワーク10は、熱処理(誘導加熱)されながら、ワーク移動装置7によって図10(a)に示す位置から図10(b)に示す位置まで矢印Aで示す方向に所定距離を移動し、ワーク10のコーナ部10a(昇温困難な部位たる部位A)から誘導加熱コイル2の半円形部2a(発生する磁気磁力線が強いa領域)を離す(離反動作)。
ここで、ワーク10を矢印Aで示す方向に移動させる代わりに、加熱コイル移動装置8で誘導加熱コイル2を矢印Aで示す方向と反対方向に移動させてもよい。
ステップ4における判定がYESになると、ワーク10は図10(b)に示す位置まで移動しながら誘導加熱される。その結果、最も温度が高いコーナ部10aは温度上昇が鈍化する。一方、誘導加熱コイル2は相当の全長を持つので、ワーク10との軸方向の相対位置が多少変化しても、ワーク10の小径部16(部位B)については依然として同じペースで昇温され続ける。
なおワーク10の移動は、予め設定された時間をかけて行われ、移動が完了すると同時に高周波電力供給装置9による電力供給も停止され、誘導加熱も終了する。その後、ワーク10は徐々に冷却され、再加熱工程である第2加熱モード(再加熱工程)が完了する。
その結果、図10(c)において、左上から右下に傾斜するハッチング領域で示す良好な焼入パターン14が得られる。すなわち、応力が集中し易いコーナ部10aにも十分な深さの焼入が施される。
図12のステップ4における所定時間,所定温度,ステップ5におけるワーク10の移動距離及び移動時間は、ワーク10の形状や大きさによって任意に設定可能である。例えば、ワーク10の内径を50mmとし、大径部15の直径(外径)を120mm、小径部16の直径(外径)を90mmとすると、ステップ4における所定時間は、例えば1〜3秒であり、所定温度は、例えば摂氏200度〜300度とすることができる。
また、ステップ5におけるワーク10の移動距離は、コア4の配置間隔の半分程度(例えば30mm〜50mm)であり、移動時間は6〜10秒とすることができる。例えば、コア3がコーナ部10aに近接してワーク10を誘導加熱する時間を2秒、移動時間を8秒として、全体の再加熱時間は10秒(2秒+8秒)とすることができる。このようにワーク10を誘導加熱コイル2で再加熱することにより、ワーク10には良好な焼入及び焼戻しが施される。
本発明者が実験した結果、ワークの表面硬度の許容範囲は550Hv〜720Hvであるところ、図12のステップ5でワーク10を移動させずに再加熱を実施すると、ワーク10の表面硬度は570Hv〜700Hvとなり、許容範囲内には入っているもののばらつきが大きかった。しかし、本発明を実施してステップ5でワーク10を移動させると、ワーク10の表面硬度は、610Hv〜670Hvの範囲に収まるという極めて良好な結果が得られた。
すなわち、本発明を実施すると、ワークの表面硬度は、許容範囲に収まるだけではなく、許容範囲内のさらに狭い範囲の値に仕上げることができる。本発明者が実験した結果では上述の通りであるが、ワーク毎に図12におけるステップ4の所定時間,所定温度,ステップ5の移動時間,移動距離をチューニングすることで、さらに良好な結果が得られるものと予想できる。
1 高周波誘導加熱装置
2 誘導加熱コイル
3 誘導加熱コイルの半円形部に設けられるコア
4 誘導加熱コイルの直線部に設けられるコア
7 ワーク移動装置
8 加熱コイル移動装置
9 高周波電力供給装置(高周波電源)
10 ワーク
11 ワーク温度検出装置
12 タイマー

Claims (7)

  1. 軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークに対し高周波誘導加熱を行う方法であって、
    軸方向に相当の長さを有する領域を所定の焼入温度まで昇温した後に急冷する焼入工程と、その後に前記焼入温度よりも低い温度まで昇温した後に徐冷する再加熱工程を有する高周波誘導加熱を行う方法において、
    焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルを使用し、
    前記焼入工程及び再加熱工程においては、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、ワークの昇温困難な部位に近接させ、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が低い部位を、ワークの昇温容易な部位に近接させて、ワークの焼入及び再加熱を希望する部位を全体的に昇温させ
    ワークの温度上昇は、昇温困難な部位が昇温容易な部位よりも先行するものであり、
    再加熱工程におけるワークの昇温の最中に、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度の低い部位を、ワークの昇温容易な部位に対向させながら、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位をワークの昇温困難な部位から離すことを特徴とする高周波誘導加熱方法。
  2. 再加熱工程の加熱を開始してから所定時間が経過した後に、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、昇温困難な部位から離すことを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱方法。
  3. 再加熱工程の加熱を開始し、昇温困難な部位の温度が所定温度に達すると、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、昇温困難な部位から離すことを特徴とする請求項に記載の高周波誘導加熱方法。
  4. ワークとしてアクスルチューブを加熱することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波誘導加熱方法。
  5. 軸方向に相当の長さを有し、且つ、軸方向の位置によって外形形状及び断面形状が異なり昇温容易な部位と昇温困難な部位を有するワークを誘導加熱する高周波誘導加熱装置であって、
    焼入を希望する部位の長さ及び再加熱を希望する部位の長さに応じた全長を有し、且つ、軸方向の部位によって発生する磁力線密度が異なる部位を有する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波交流電力を供給する高周波電源と、ワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させる移動手段を備え、
    ワークを所定の焼入温度に加熱する第1加熱モードが実行され、それに続いて前記第1加熱モードよりも低い温度に加熱する第2加熱モードが自動的に実行され、
    前記第1加熱モード及び第2加熱モードによる加熱の際には、
    誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位を、ワークの昇温困難な部位に近接させ、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が低い部位を、ワークの昇温容易な部位に近接させて、ワークの焼入及び再加熱を希望する部位を昇温させ、
    ワークの温度上昇は、昇温困難な部位が昇温容易な部位よりも先行するものであり、
    前記第2加熱モードによる加熱の最中に、前記移動手段によってワークと誘導加熱コイルとを軸方向に相対的に所定距離だけ移動させて、誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度の低い部位を、ワークの昇温容易な部位に対向させながら、誘導加熱コイルとワークの軸方向の相対位置を変更して誘導加熱コイルの発生する磁界の磁力線密度が高い部位をワークの昇温困難な部位から離す離反動作を行うことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
  6. ワークの前記昇温困難な部位の温度を検出する温度検出手段を設け、第2加熱モードにおいて、前記温度検出手段が検出した温度が所定温度に達するか、又は加熱する時間が所定時間になると、前記離反動作を実行させる制御機構を設けたことを特徴とする請求項5に記載の高周波誘導加熱装置。
  7. 前記誘導加熱コイルは、半開放鞍型コイルであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の高周波誘導加熱装置。
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