JP5483175B2 - 荷電粒子加速方法及び荷電粒子加速装置、粒子線照射装置、医療用粒子線照射装置 - Google Patents

荷電粒子加速方法及び荷電粒子加速装置、粒子線照射装置、医療用粒子線照射装置 Download PDF

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本発明は、レーザー光を気体に照射してプラズマ化し、このプラズマ中で電子やイオン等の荷電粒子を加速して高エネルギーの電子ビームやイオンビームとして出力させる荷電粒子加速方法、荷電粒子加速装置に関する。また、これらによって加速された荷電粒子を試料に照射する粒子線照射装置、患者の患部に照射する医療用粒子線照射装置に関する。
電子やイオン(プロトン:陽子を含む)を高エネルギーに加速した電子ビーム、イオンビームを利用して加工、成膜、分析、医療行為等を行う技術として各種が知られている。こうした技術においては、安定して高強度の電子ビームやイオンビームを発生させることが必要である。ところが、一般に、高エネルギーの電子ビームやイオンビームを発生して照射する装置においては、特にその加速機構に大がかりな設備を必要とするため、装置全体が大型化する。特に医療用途等にはこうした荷電粒子を加速する粒子加速装置、あるいは粒子線照射装置は、有効であることが明らかであるにもかかわらず、こうした理由により、充分に普及しているとは言い難い状況にある。
こうした状況の中で、小型化が可能な粒子加速装置の一種として、レーザー駆動型のものが知られている。レーザー駆動型の粒子加速装置は、例えば非特許文献1に記載されている。この技術においては、気体中に高出力の超短パルスレーザー光を照射することにより、この気体をプラズマ化し、このプラズマ中にプラズマ波(プラズマ密度の波動)を生じさせる。このプラズマ波の伝搬に荷電粒子ビームを同期させることにより、従来より用いられている高周波加速空洞と同様に、荷電粒子を加速することができる。この方式においては、高周波加速空洞等を用いた従来の加速装置と比べて、装置全体を小型化できるというメリットがある。従って、医療用等、様々な分野への応用が期待されている。また、高周波加速空洞以上に荷電粒子を高エネルギーに加速できることも期待されている。
図8は、レーザー駆動型の荷電粒子加速装置(レーザープラズマ加速装置)90の原理および構成を単純化して示す図である。図において、ここで加速される荷電粒子である電子は、電子ビーム発生装置(荷電粒子発生機構)101から電子ビーム102の形態で放射される。この電子ビーム102と共に、レーザー光源91から、高出力の超短パルスで構成されるパルスレーザー光92がチャンバ94内の集光光学系93を介して集光される。チャンバ94内の雰囲気は真空であるが、ガス供給機構95によってガス(例えば10気圧程度のHe)96が局所的に存在している。集光されて高強度となったパルスレーザー光92の照射によって、ガス96は電離してプラズマ化する。特にこのパルスを制御することにより、このプラズマ中でプラズマ波を発生させることができ、加速場97が生成されるため、加速場97によって電子ビーム102中の電子を加速して、加速された電子ビーム103として出力することができる。なお、電子ビームを発生させる場合には、特に外部に電子ビーム発生装置101を設けず、プラズマ中の電子を加速して電子ビーム103として出力する形態とすることも可能である。また、集光光学系93のレイリー長は、プラズマ中で有効な加速が行われるように適宜設定される。
こうしたレーザー駆動型の加速装置の開発は近年盛んに行われており、例えば非特許文献2に記載されるように、7MeV程度の単色電子ビームもこれによって得られるようになった。更なる高エネルギー化の研究開発も進められている。
小方厚、プラズマ・核融合学会誌、第81巻第4号、245頁、2005年 独立行政法人産業技術総合研究所、プレスリリース(2004年8月4日)、「レーザープラズマ加速で単色電子ビームの発生に世界で初めて成功」[2009年10月14日検索]、インターネット(URL:http://www.aist_j/press_release/pr20040804/pr20040804.html)
しかしながら、実際のレーザー駆動型の粒子加速装置においては、ビーム軸が不安定であるという問題がある上、未だその到達エネルギーは充分ではなかった。これらの問題は、主に高密度プラズマ中におけるレーザー光の相対論的自己集束に起因する。この相対論的自己集束とは、プラズマ中に高強度のレーザー光が照射された場合には、高強度の超短パルスレーザー光と高密度プラズマとの相互作用により、レーザー光がプラズマ中で集束される現象であり、例えばA.B.Borisov、A.V.Borovskiy、O.B.Shiryaev、V.V.Korobkin、A.M.Prokhorov、J.C.Solem、T.S.Luk、K.Boyer、 and C.K.Rhodes、「Relativistic and charge−displacement self−channeling of intense ultrashort laser pulses in plasmas」、Physical Review A、vol.45、5830(1992)に記載されている現象として知られている。この相対論的自己集束が一旦発生すると、プラズマ中でのレーザー光の強度は更に高強度となり、これが更にこの相対論的自己集束を助長するという現象が生ずる。これにより、相対論的自己集束後の加速場98は、図8中に示されるように、その大きさは本来の加速に有効であった加速場97と比べて小さくなる。また、自己集束後の加速場98は不安定でもある。
レーザープラズマ加速された荷電粒子ビームのビーム軸の安定性は、加速場の長さをL、直径をdとするとd/Lに比例する。集束性を抑制する機構を伴わない相対論的自己集束が形成されると、強力な集束性によって加速場の破壊が短距離で生じるため、加速場98の長さLが短くなり、その結果安定性が制限を受けビームは不安定になる。また、Lが短くなることは到達エネルギーが不充分となる原因ともなる。
すなわち、小型化が可能な構成で、高いビーム制御性で、安定して荷電粒子を高エネルギーに加速することは困難であった。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の荷電粒子加速方法は、パルスレーザー光を気体に照射してプラズマを生成し、当該プラズマ中に生成された加速場を利用して荷電粒子を加速する荷電粒子加速方法であって、前記パルスレーザー光の出力波形を、第1の電離度まで前記気体を電離し、かつ前記パルスレーザー光が前記プラズマ中で相対論的自己集束された際に前記第1の電離度よりも高い第2の電離度まで前記気体を電離する強度となるように設定された強度をもつ主部を具備するパルス形状とすることを特徴とする
本発明の荷電粒子加速方法において、前記気体は、窒素、酸素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素を含む化合物、酸素を含む化合物、炭素を含む化合物、のいずれかを主成分とすることを特徴とする。
本発明の荷電粒子加速方法において、前記荷電粒子は、電子又はイオンであることを特徴とする。
本発明の荷電粒子加速装置は、パルスレーザー光を気体に照射してプラズマを生成し、当該プラズマ中に生成された加速場を利用して荷電粒子を加速する荷電粒子加速装置であって、前記気体を噴射するガス供給機構と、第1の電離度まで前記気体を電離し、かつ前記パルスレーザー光が前記プラズマ中で相対論的自己集束された際に前記第1の電離度よりも高い第2の電離度まで前記気体を電離する強度となるように設定された強度をもつ主部を具備するパルス形状をもつパルスレーザー光を前記気体に照射するレーザー光源と、を具備することを特徴とする
本発明の荷電粒子加速装置は、前記気体における前記パルスレーザー光が照射された箇所に対して前記荷電粒子を照射する荷電粒子発生機構を具備することを特徴とする。
本発明の荷電粒子加速装置において、前記気体は、窒素、酸素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素を含む化合物、酸素を含む化合物、炭素を含む化合物、のいずれかを主成分とすることを特徴とする。
本発明の荷電粒子加速装置において、前記荷電粒子は、電子又はイオンであることを特徴とする。
本発明の粒子線照射装置は、前記荷電粒子加速装置によって加速された荷電粒子を試料に対して照射する構成を具備することを特徴とする。
本発明の医療用粒子線照射装置は、前記荷電粒子加速装置によって加速された荷電粒子を患部に対して照射する構成を具備することを特徴とする。
本発明は以上のように構成されているので、小型化が可能な構成で、高いビーム制御性で、安定して荷電粒子を高エネルギーに加速することができる。
本発明の実施の形態となる荷電粒子加速方法において用いられるパルスレーザー光の時間波形を示す図である。 窒素とヘリウムにおける、波長800ナノメートルのレーザー光の照射強度と、トンネルイオン化による電離との関係を示す図である。 本発明の実施の形態となる荷電粒子加速方法によって形成される加速場の概要を示す図である。 実施例(窒素を用いた場合)において得られた電子ビームの位置広がりを測定した結果である。 比較例(ヘリウムを用いた場合)において得られた電子ビームの位置広がりを測定した結果である。 実施例(窒素を用いた場合)において得られた電子ビームのエネルギースペクトルを測定した結果である。 比較例(ヘリウムを用いた場合)において得られた電子ビームのエネルギースペクトルを測定した結果である。 レーザープラズマ加速装置の原理および構成の概要を示す図である。
以下、本発明の実施の形態に係る荷電粒子加速方法について説明する。この荷電粒子加速方法は、図8に示されたレーザー駆動型の荷電粒子加速装置におけるレーザー光源91から発せられるパルスレーザー光92のパルス波形を、ガスのイオン化特性に合わせて設定したことに特徴を有する。すなわち、この荷電粒子加速方法を実現する荷電粒子加速装置は、図8に示された荷電粒子加速装置90と同様の構成をもつが、ガス供給機構から発せられるガス(気体)種の特性に応じて以下に説明されるように設定されたパルスレーザー光がレーザー光源から照射される。あるいは、このパルスレーザー光による作用が充分に発揮されるようにガス種が設定される。また、荷電粒子や荷電粒子発生機構についても、図8に示された荷電粒子加速装置90と同様である。
図1は、この荷電粒子加速方法において用いられるパルスレーザー光の出力波形の概要を示す図である。この波形の特徴は、低強度(I)かつその継続時間(t)が長い前駆部と、その後の高強度(I)かつその継続時間(半値幅t)が短い主部とからなる。なお、ここで、荷電粒子とは、電荷の正負を問わず電磁気力によって加速できる粒子、例えば電子や正負のイオンに代表されるが、ここでは電子を加速するものとする。
ここで、このパルス出力中で最も高い強度をもつ主部の強度Iは、第1の電離度までこのガスを電離できるだけの強度である。ただし、Iの強度を持つパルスレーザー光がプラズマ中で相対論的自己集束された際には、第1の電離度よりも高い第2の電離度までこのガスが電離されるように、Iは設定される。この主部によって、充分な長さの加速場をプラズマ中で形成することができる。また、この主部の前に、Iよりも低い強度Iをもつ前駆部が存在する。前駆部の強度Iは、第1の電離度よりも低い第3の電離度までこのガスを電離できるだけの強度とする。この前駆部によって、主部が照射される前のプラズマ中において、光導波路構造が形成される。主部の照射においては、パルスレーザー光をこの光導波路構造中において伝搬させることができるため、充分な長さの加速場をより安定して形成することができる。
この波形のパルスレーザー光をガスに照射した際の作用を以下に説明する。まず、このパルスの前駆部が照射された場合には、強度Iのレーザー光がtの時間だけ照射される。ここで、I<<Iであり、その強度は低いため、この照射によってガスは電離されてプラズマ化するが、その電離度は低く、プラズマ温度も低い。この電離度を第3の電離度とする。ただし、このプラズマが拡散することにより、中央部でプラズマ密度が低く、周辺で高い状態が実現される。この状態は、プラズマ光導波路(例えば、日本原子力研究所プレスリリース、1999年8月24日、インターネット(URL:http://www.jaea.go.jp/jaeri/jpn/open/press/990824/index.html)としての作用をする。すなわち、この構造中をレーザー光が効率的に通過することができる。なお、前駆部の時間tは、プラズマ光導波路が充分に形成されるために必要な時間に設定する。
従って、次に照射される主部において、パルスレーザー光は、この光導波路中を高効率で伝搬することができる。この主部における強度IはIよりも高いため、これが照射され、第3の電離度よりも高い第1の電離度にまでガスは電離され、プラズマ温度を上昇させる。ただし、この際のIの値は、以下の範囲となるように設定される。
図2は、ヘリウム(He)と窒素(N)にパルスレーザー光を照射した場合のそれぞれのガスのトンネルイオン化によるイオン価数と、パルスレーザー光強度との関係を示す。どちらのガスにおいても、パルスレーザー光強度が高いほどトンネルイオン化によって内殻電離が進み、イオンの価数が高くなる。ただし、図2の範囲において、Heは1価から2価までの範囲しかとらないのに対して、Nは1価から7価までの広い範囲をとる。なお、図2は、トンネルイオン化による価数変化について示しており、実際のイオン化はトンネルイオン化以外のメカニズムでも生じる。このため、例えば、図2において1価に対応したエネルギーよりも低いエネルギーでも実際には1価のイオンは生成される。価数の大きなところではトンネルイオン化の寄与が大きく、実際の価数変化は図2の結果と近くなる。
ここで、ガスを窒素とし、前記のIの値は、プラズマ中における強度が図2におけるIを超えるように設定する。すなわち、この強度のパルスレーザー光が照射された場合には、第3の電離度(図2の窒素においては1)よりも高い第1の電離度(図2の窒素においては5)まで電離が進む。ただし、このパルスレーザー光(主部)が照射された場合には、プラズマ中での相対論的自己集束が発生する。相対論的自己集束が発生すると、プラズマ中でのパルスレーザー光の強度は実質的に増大する。この増大した際の強度が、図2におけるIを超えるように設定すれば、相対論的自己集束が発生した場合には、ガス(窒素)においては5価から7価にまで急激にイオンの価数が増大する、すなわち、第1の電離度(図2の窒素においては5)よりも高い第2の電離度(図2の窒素においては7)まで電離度が高くなる。第2の電離度は、具体的には内殻電離に対応する。従って、相対論的自己集束が発生した場合には、急激にプラズマ密度が高くなる。すなわち、前記の光導波路構造の中心部において、プラズマ密度の高い領域が生成される。なお、この効果を高めるためには、前駆部におけるIの値は、1価の電離ができる程度とする、すなわち、第3の電離度は1価とすることが好ましい。
相対論的自己集束効果によってレーザー光のエネルギー密度は高くなり、実効的に凸レンズ形状と同等の効果をもたらす一方で、プラズマ密度が高くなった領域では、プラズマ密度の低い領域に比べて相対的に屈折率が低くなる。この屈折率の低下のため、この領域では凹レンズと同等の効果が生ずる。従って、パルスレーザー光はこのような条件において発散する。すなわち、パルスレーザー光のビーム径は、相対論的自己集束とは逆の方向に制御される。
従って、Iを上記の範囲に設定することにより、相対論的自己集束によるパルスレーザー光の集束が進んだ段階で、これを停止させることができる。この際、Iと図2に示されたI、Iとの関係を上記のとおりとした場合には、ガスとして窒素を用いた場合には上記の効果が得られるが、ヘリウムを用いた場合には上記の効果は得られないことは明らかである。また、Iが高すぎ、前駆部でガスの内殻電離が進んだ(イオン価数が高くなった)場合においても、上記の効果が得にくくなることは明らかである。従って、I、Iの設定は、ガスの種類に応じて適宜行われるが、図2より、同じエネルギー範囲では広い価数範囲をとる窒素の方が、ヘリウムよりも好ましく用いられる。ただし、上記と同様に、I、Iを設定することが可能であり、加速場を形成することが可能であれば、窒素以外のガスを用いて同様の作用を生じさせて荷電粒子を加速させることが可能である。
この場合に形成される加速場の構造を概念的に示したのが図3である。前記のパルスレーザー光10が集光光学系11を介してガス20に照射された際、前記のとおりに、パルスレーザー光の主部が照射された場合、光導波路構造において、相対論的自己集束が発生したためにレーザー光強度が高まった第1の加速場31が形成される。この強度がガスの内殻電離を起こす強度を超えると、前記の凹レンズ効果が発生してレーザー光強度が低下した第2の加速場32となる。ただし、凹レンズ効果によってレーザー光強度の低下が進み、これが図2における内殻電離の閾値であるIi,Z=6を下回ると、凹レンズの効果は失われるため、相対論的自己集束の効果が大きくなり、再びレーザー光強度は高まる。従って、相対論的自己集束が支配的である第1の加速場31と、凹レンズ効果が支配的である第2の加速場32とが交互に形成された構成の加速場30が形成される。
凹レンズ効果が支配的である第2の加速場32が形成されず、相対論的自己集束が支配的な第1の加速場31が形成されるだけである場合、集束が一方的に進むだけであるため、最終的には加速場は破壊される。従って、加速場の長さLは短くなり、その直径dも不安定となる。
これに対して、上記の構成においては、レーザー光強度が内殻電離を起こす強度を超えた際に相対論的自己集束が止まるため、結局、図3に示されるように、第1の加速場31と第2の加速場32とが交互に形成される。従って、加速場の直径dを第1の加速場31及び第2の加速場が形成される範囲内に留まらせることができ、これらが交互に形成された加速場30を得ることができる。従って、この加速場30中に入射された低エネルギーの電子、あるいはプラズマ中の電子を加速し、高エネルギーの電子ビーム40を出力することができる。
また、加速場の直径dの範囲を限定させることにより、電子ビームの安定性が高まり、その制御性が高まる。また、第1の加速場31と第2の加速場32とが交互に形成されることによって全体の加速場の長さLが大きくなることにより、電子の到達エネルギーを高めることができる。また、光導波路構造が形成されない場合においても、図3に示された構造の加速場30がパルスレーザー光の主部によって形成されることは明らかであるが、パルスレーザー光をより深く透過させ、安定的にこの加速場30を形成するためには、前駆部を用いて光導波路構造を形成することがより好ましい。
なお、加速される荷電粒子は電子に限らず、イオン等、レーザープラズマ加速が可能である荷電粒子であれば同様の効果を奏することは明らかである。
なお、上記においては、加速場の形成やその幾何学的特徴についての議論を行った。実際の荷電粒子加速においては、加速場の単なる幾何学的特徴だけでなく、加速場中において加速をもたらす静電場の影響も考慮する必要がある。相対論的自己集束を停止させる内殻電離の際に放出される電子数が多いと、この静電場の位相速度の低下が生じる。従って、効率的に加速を行うためには、パルスレーザー光の前駆部と主部の強度とガスのトンネルイオン化による電離度との関係を上記のとおりにするだけでなく、内殻電離の際に放出される電子数が少なくなるガスを用いることが好ましい。こうしたガスとしては、前記の窒素(N)の他に、酸素(O)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等が好ましい。また、窒素、酸素や炭素(C)を含む化合物ガスも有効であり、こうしたガス種としては、CO、CH、NH、NO等がある。
また、上記の荷電粒子加速装置においては、照射するパルスレーザー光の出力波形を上記の構成とする、あるいはガス種を上記の作用が行われるように設定することにより、上記の効果が得られる。このため、従来より知られるレーザー駆動型の荷電粒子加速装置と装置構成自身を大きく変えずにこれを実現することができる。従って、他の種類の加速装置と比べて装置全体を小型化することが可能であり、医療用等、様々な分野への応用が可能である。
また、この荷電粒子加速装置によって加速された荷電粒子線(電子ビーム、イオンビーム)を試料に照射する構成とすれば、電子や各種のイオンを粒子線として照射する粒子線照射装置とすることができる。従来の粒子線照射装置においては、荷電粒子線を加速するサイクロトロンや高周波空洞等を用いた機構が大型化するために、装置全体を小型化することが困難であった。これに対し、この粒子線照射装置においては、上記のとおり、この加速機構を小型化することが可能であるため、装置全体を小型化することができる。従って、この粒子線照射装置を各種の施設、例えば医療施設等に導入することも容易であり、医療用粒子線照射装置として特に好ましく用いることができる。
また、単に小型化が可能であるだけでなく、粒子線の高エネルギー化が可能である点(Lを大きく取れる点)についても、特に広いエネルギー範囲が要求される医療用途においては、有効である。更に、医療用途においては、特定の箇所(患者の患部)にのみ粒子線を照射することが必要になるが、この点においても、d/Lを小さくでき、ビーム軸制御性、安定性を向上させることができる点は極めて有効である。なお、粒子線を試料(患者の患部等)に照射する際の線量の制御や具体的な試料の形態については、従前の医療用粒子線照射装置と同様に行うことが可能である。
(実施例)
実際に上記のパルスレーザー光を用いてレーザープラズマ加速を行い、得られた電子ビームの特性を評価した。
パルスレーザー光の主部を、超短パルスレーザー光として、中心波長800nm、出力4TW、メインレーザーのパルス幅t=40fs(半値全幅)、ビーム径3cmを発するTキューブレーザーを用いて作成した。また、パルスの前駆部としては、このレーザー光源から、パルス幅t=500ps、強度10MWとしたものを用い、前記のパルスレーザー光とした。また、集光光学系としては、f=650mmの軸外し放物面鏡を用いた。ガスとしては、窒素(実施例)とヘリウム(比較例)を用いた。この構成により、集光点におけるレーザ光の強度としては、I=2×1012W/cm、I=9×1017W/cmとなった。この前駆部においては、トンネルイオン化以外のメカニズムにより窒素は1価に電離され、主部の強度Iは、図2に示されたIとIの範囲内の強度となっている。
この構成により加速された電子ビームを蛍光板に照射し、その蛍光を撮像装置で撮像することにより、電子ビームの空間分布(広がり)を測定した。また、加速された電子ビームに対して分析用磁石で磁場を印加して分光を行った後の空間分布から、電子ビームのスペクトル(エネルギー分布)を算出した。
図4は、上記のガスとして窒素を用いた場合の電子ビームの空間分布を測定した結果である。ここでは、特に1MeVを超える電子について50回の測定結果が示されている。この結果より得られた電子ビームの平均自乗法より算出したビーム軸安定性は1.7mradであった。
一方、図5は、同様の構成、パルスレーザー光で、上記のガスとしてヘリウムを用いた場合の測定結果である。ガス以外は同様であるにも関わらず、ビーム軸の分布が大きく、その位置広がりは9.8mradであった。従って、窒素を用いた場合には、ビーム軸安定性が大幅に向上することが確認できた。これは、上記の構成によって、加速場が長く、かつその幅(直径)が安定していることに対応する。
また、図6、7は、それぞれ窒素、ヘリウムを用いた場合に測定された電子スペクトルである。ヘリウムを用いた場合のエネルギーのピーク値が22MeV程度であるのに対して、窒素を用いた場合にはこのピーク値が50MeV程度と大きく向上している。これは、上記の構成によって加速場が長くなったことに対応している。
以上より、実際に窒素ガスと上記の構成のパルスレーザー光の組み合わせを用いて、高エネルギーの電子ビームを高いビーム制御性で得られることが確認された。
10、92 パルスレーザー光
11、93 集光光学系
20、96 ガス
30、97 加速場
31 第1の加速場
32 第2の加速場
40、103 加速された電子ビーム
90 荷電粒子加速装置(レーザープラズマ加速装置)
91 レーザー光源
94 チャンバ
95 ガス供給機構
98 相対論的自己集束後の加速場
101 電子ビーム発生装置(荷電粒子発生機構)
102 電子ビーム

Claims (9)

  1. パルスレーザー光を気体に照射してプラズマを生成し、当該プラズマ中に生成された加速場を利用して荷電粒子を加速する荷電粒子加速方法であって、
    前記パルスレーザー光の出力波形を、
    第1の電離度まで前記気体を電離し、かつ前記パルスレーザー光が前記プラズマ中で相対論的自己集束された際に前記第1の電離度よりも高い第2の電離度まで前記気体を電離する強度となるように設定された強度をもつ主部を具備するパルス形状とする
    ことを特徴とする荷電粒子加速方法。
  2. 前記気体は、窒素、酸素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素を含む化合物、酸素を含む化合物、炭素を含む化合物、のいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項に記載の荷電粒子加速方法。
  3. 前記荷電粒子は、電子又はイオンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子加速方法。
  4. パルスレーザー光を気体に照射してプラズマを生成し、当該プラズマ中に生成された加速場を利用して荷電粒子を加速する荷電粒子加速装置であって、
    前記気体を噴射するガス供給機構と、
    第1の電離度まで前記気体を電離し、かつ前記パルスレーザー光が前記プラズマ中で相対論的自己集束された際に前記第1の電離度よりも高い第2の電離度まで前記気体を電離する強度となるように設定された強度をもつ主部を具備するパルス形状をもつパルスレーザー光を前記気体に照射するレーザー光源と、を具備することを特徴とする荷電粒子加速装置。
  5. 前記気体における前記パルスレーザー光が照射された箇所に対して前記荷電粒子を照射する荷電粒子発生機構を具備することを特徴とする請求項に記載の荷電粒子加速装置。
  6. 前記気体は、窒素、酸素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素を含む化合物、酸素を含む化合物、炭素を含む化合物、のいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の荷電粒子加速装置。
  7. 前記荷電粒子は、電子又はイオンであることを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の荷電粒子加速装置。
  8. 請求項から請求項までのいずれか1項に記載の荷電粒子加速装置によって加速された荷電粒子を試料に対して照射する構成を具備することを特徴とする粒子線照射装置。
  9. 請求項から請求項までのいずれか1項に記載の荷電粒子加速装置によって加速された荷電粒子を患部に対して照射する構成を具備することを特徴とする医療用粒子線照射装置。
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