JP5472534B2 - 熱電変換構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は熱電変換構造体およびその製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、環境温度差を利用する発電素子などに利用される熱電変換構造体およびその製造方法に関する。
近年、振動や熱といった散逸されるのみであった廃エネルギーから電力を回収する技術、いわゆる、エナジーハーベスティングが精力的に研究されている。例えば、自動車のタイヤ圧モニタやユビキタスセンサネットワークのための電力源として振動発電を活用することが期待されている。これに対し熱電発電は、例えば人体と環境との温度差を利用した時計など、ニッチな分野に応用されるにとどまっている。その原因には、熱電素子に使用されている熱電変換材料の性能が低いことが挙げられる。ここで、熱電変換材料の性能指数(figure of merit)は、
Z=S/(ρ・κ) 式1
によって表わされる。ただし、Sはゼーベック係数(μV/K)、ρは抵抗率(Ωcm)、κは熱伝導率(W/(m・K))である。なお、性能指数Zの単位はK−1となり、熱電変換材料を用いる熱電素子の効率としては、それに使用温度T(K)を乗じた値すなわちZTを用いて表わされることが多い。ちなみに、熱電変換材料としてバルク材料を用いる従来の熱電素子の効率ZTは1程度である。この効率ZTが3を越す熱電変換材料を作製することができれば、例えば冷蔵庫に使用されるコンプレッサー等の冷却システムを置き換えることも可能になると言われている。
熱電変換材料として良好なものは、ゼーベック係数Sが大きく、抵抗率および熱伝導率がともに小さい材料である。現在使用されている代表的な熱電変換材料は、半金属であるBiTeである。しかしながらBiTe系材料は毒性があり環境負荷も高い。そこで、より安全な熱電変換材料となりうる酸化物が最近注目を集めている。なかでも、ABO構造で表わされるペロフスカイト型酸化物であるSrTiOにおいてAサイトにLaをドープした酸化物熱電変換材料がよく知られている(非特許文献1:T. Okuda et al, Phys. Rev. B vol.63, 113104 (2001))。この材料は、導電型がn型の縮退半導体でもある。
また、熱電素子の効率ZTを向上させるために熱電変換材料のナノスケールでの構造を低次元化する手法が理論的に提唱されている。実際にも、超格子を用いることによって二次元化された構造やウィスカーを利用した一次元化構造を有するような熱電変換材料も試作されている。これらの熱電変換材料においては、その材料の微視的な構造を低次元化して導電キャリアの状態密度分布を操作することにより、ゼーベック係数Sの増大と抵抗率ρの低減とが両立されている。さらに、熱電変換材料の微視的な構造を低次元化するとフォノン散乱が増大して熱伝導率κも低減する。つまり、低次元化された微視的な構造を有する熱電変換材料においては、上記性能指数Zの値の増大が達成される。特に熱電変換材料としてBiTeを採用して二次元化した構造を作製することにより、効率ZTが2を超えることも報告されている。
また、熱電変換材料として酸化物を採用した場合にも、二次元化した構造を利用することによって効率ZTが増大されることが報告されている(非特許文献2:H. Ohta et al, Nature Mater. vol.6, 129)。非特許文献2において報告されているのは、SrTiOのBサイトにNbをドープしたn型熱電変換材料とSrTiOの絶縁体とからなる超格子が約0.3程度の効率ZTを示すこと、特に超格子界面だけに限ると2を超える効率ZTが得られること、そして、CaCo(p型熱電変換材料)ウィスカーが約1程度の効率ZTを示すことである。近年の薄膜技術の発展により、酸化物の熱電変換材料であっても、上記のような超格子(二次元構造)を酸化物を用いて作製することには問題はない。ところが、酸化物を採用して高効率の熱電変換素子を作製しようとすると、いくつかの問題が生じる。まず、酸化物を採用すると二次元より低次元の一次元構造を作製することは困難である。具体的には、酸化物において一次元構造を作製するために、基板のステップ・テラス構造のステップをテンプレートとして利用した量子細線を採用することが考えられる。ただしそのためには、ステップフローモードと呼ばれる成膜が実現するように作製条件を制御しなければならない。この作製条件は、常にステップ部のみから薄膜成長を行なわせるような条件であるため、プロセスウインドウが狭く精密な条件制御を必要とする。別の問題として、基板のステップの直線性が常に保証されるわけではなくこれをテンプレートとすることによって作製された量子細線も同様に直線性が保証されないという点も挙げられる。
これらの問題を解決しうる手法として、任意の面方位から微小角(0.2〜15°)傾斜した単結晶基体を利用する方法が特許文献1(特開2004−296629号公報)に開示されている。その手法においては、その単結晶基体上において形成される、傾斜方向に垂直なステップバンチングが利用される(例えば、特許文献1、段落0013)。しかし、その開示内容を参照する限り、特許文献1に開示されている傾斜した単結晶基体表面に形成されているのは、通常のステップであってバンチしたステップではない。特許文献1には、バンチしたステップを形成する具体的な手段として、微小角(0.2〜15°)傾斜した単結晶基体上に作製した非導電材料の緩衝層表面を利用すること、そして、形成されたステップバンチングを利用して細線構造の熱電変換材料が作製できることが記載されている。ただし、特許文献1の開示においては、微小角(0.2〜15°)だけ傾斜した単結晶基体上にバンチしたステップが形成される理由は開示されていない。
特開2004−296629号公報
上記特許文献1の手法には次のような問題がある。すなわち、(1)基体上にステップバンチが形成されていないため、緩衝層を形成しなければならない。また、(2)緩衝層上に形成されるバンチしたステップの延びる方向の直線性は、通常のステップにてその直線性が保証されないのと同様に、保証されない。このため、バンチしたステップが形成されたとしても、特許文献1の手法では細線形状が必ずしも安定して決定されるわけではない。さらに、(3)バンチしたステップに沿って延びる熱電変換材料からなる熱電変換部材を細線形状に形成するためには、ステップフローモードのように作製条件を精密に制御する必要がある。具体的には、熱電変換材料が、ステップエッジだけではなくテラスの表面からも二次元的に成長してしまうと、熱電変換部材の細線間隔が乱れたり、ステップがマージしたりすることによって細線幅が変化する、といった問題が生じかねない。これらを防止してステップフローモードにより成長を行なわせるためには、熱電変換材料の作製条件を高い精度で制御する必要がある。
本発明は上記いずれかの課題に鑑みてなされたものである。本発明は、簡易かつ再現性よく作製可能な擬一次元構造すなわち細線構造の熱電変換部材を有する熱電変換構造体を提供することにより、その熱電変換構造体を採用する熱電素子の性能を高めることに貢献するものである。
本願の発明者は、上記課題を吟味し、微小角(0.2〜15°)だけ傾斜した単結晶基体上の緩衝層上に形成されるステップを高くしたステップバンチングでは本質的な解決にならないものと考えた。そして、発明者は、酸化物の熱電変換材料を用いて再現性のよい細線構造を容易に作製するためには基板の表面に結晶軸および結晶面で規定された凹凸構造を形成することが有効であることに気付き、さらにそのためには、(210)面方位SrTiOを基板として利用することが有効であることを見出した。
すなわち、本発明のある態様においては、(210)面の基板面を有しており、(100)面によるテラス部と該基板面の面内[001]軸に延びるステップ部とを含む凹凸構造を有するSrTiOの基板と、該凹凸構造の少なくとも一部の表面に配置されている熱電変換材料とを備えている熱電変換構造体が提供される。
本態様においては、SrTiOの(210)面である基板面に、(100)面によるテラス部と面内[001]軸に延びるステップ部とによる凹凸構造が形成される。その凹凸構造は、例えば12ユニットセル分にも及ぶ高低差を持つ。そのうえ、この凹凸構造をなす微小な面は、(100)面からなるテラス部と[001]軸に沿って延びるステップ部、すなわち結晶軸と結晶面によって規定される。そしてこの凹凸構造が、熱電変換部材のためのテンプレートとして利用される。つまり、凹凸構造の少なくとも一部の表面に熱電変換部材が形成される。その際、緩衝層などの形成は不要である。また、その凹凸構造では、熱電変換部材をなす熱電変換材料の形状の直線性が担保される。これは、ステップ部が[001]軸に沿うように形成されているためである。
このような熱電変換部材においては、二次元電子系からさらに低次元化された電子の分布が熱電変換部材において得られる。つまり、例えば従来の一次元超格子(多層膜)構造によって形成される二次元電子系においては面内[001]軸の方向と面内においてそれに垂直な方向との両者は等価であった。これに対し、本態様の熱電変換構造体における熱電変換部材の電子構造にとってはそれら二つの方向は凹凸構造の影響によって等価ではない。この面内異方性は、熱電変換部材のマクロスコピックな電気伝導特性に差異を生じさせる。そして、本願の発明者の検討によれば、その電気伝導特性の差異はゼーベック係数にも影響を及ぼす。しかも、その電気伝導特性に表われる異方性の影響は、低温のみならず、室温(例えば300K程度)の温度域でも十分に検出可能なものである。以下、本態様の凹凸構造のように、二次元電子系をさらに低次元化することによってマクロスコピックな電気伝導特性に差異を生じさせる任意の構造を擬一次元構造という。
なお、(210)面方位の基板とは、基板面が、その基板の結晶格子の面指数の表現で(210)面である基板を意味する。ここでの基板面とは、基板の注目する表面が概して延びている平面である。例えば、基板の注目する表面に何らかの微視的な構造が形成されている場合には、その微視的構造を画定する個別の微小な面の向きではなく、基板全体としての表面を画定する面が基板面となる。また、例えばミスカット角など、作製上残留してしまう誤差による方位のズレは、基板面の決定のためには許容される。具体例によって(210)面方位の基板を説明すれば、(210)配向の基板とは、基板面を指定するミラー指数が(210)面となるように結晶格子の配向(以下、「配向」と記す)が定まっている基板である。
また、本態様の基板における結晶格子の(100)面は、基板面である(210)面から約26.6°と大きく傾斜している。すなわち、[1−20]軸方向に基板の表面をたどると、(100)面によるテラス部が短い長さの多数の断片へと区切られており、各テラス部の間に大きな高低差の段差がステップ部などとして形成される。このため、(100)面において二次元成長させたとしても、成長した熱電変換材料はその段差の位置にて途切れたり膜が折れ曲がる。こうして、基板の凹凸構造の上において成長した熱電変換材料は、例えば(100)面に二次元成長条件によって形成されていても、実質的には一次元構造の熱電変換部材をなすこととなる。この機構の詳細については実施例にて後述する。したがって、本態様においては、二次元構造を作製するのと同様の簡便さによって、再現性よく一次元化構造が作製可能となる。これにより、本態様においては酸化物熱電変換材料の性能指数Zを増大させることが可能となる。
また、本発明のある態様においては、前記熱電変換材料を覆うように5ユニットセル以上の厚みで形成されており、前記凹凸構造に対応して形成された追加の凹凸構造を表面に有するSrTiOの被覆層と、該被覆層の表面の該追加の凹凸構造の少なくとも一部の表面に配置されている追加の熱電変換材料とをさらに備えている上記態様の熱電変換構造体が提供される。
本態様により、(210)面方位SrTiO基板表面の凹凸構造の上に配置され、細線構造をとっている熱電変換部材を、多層構造を取ることによって直接接触させることなく集積することが可能となる。なお、熱的な観点からは、被覆層を10単位胞以上の厚みにすればより好適である。
さらに、本発明のある態様においては、前記熱電変換材料の厚みが、前記基板の[100]軸方向に測ったときに3ユニットセル以下である上記態様の熱電変換構造体が提供される。
本態様により、低次元化による効果がより強く発現した、より高い性能指数Zの熱電変換構造体が実現される。
加えて、本発明のある態様においては、前記熱電変換材料が、La、Pr、Ndの少なくともいずれかをAサイトにドープしたSrTiO、または、NbをBサイトにドープしたSrTiOのいずれかである上記態様の熱電変換構造体が提供される。
本態様により、熱電変換材料の格子定数が基板の材質であるSrTiOのものと近くなるため、結晶性の良好な細線構造の熱電変換部材とそれを絶縁するSrTiOとを多層にも積層することが可能となる。これにより、高い性能指数Zを維持しながら、単位体積あたりの熱電変換部材のラインの数、すなわち集積度を高めることが可能となる。
加えて、本発明のある態様においては、熱電変換構造体の製造方法が提供される。すなわち、(210)面の基板面を有するSrTiOの基板を大気中にてアニールすることにより、(100)面によるテラス部と該基板面の面内[001]軸に延びるステップ部とを含む凹凸構造を形成する工程と、該凹凸構造の少なくとも一部の表面に熱電変換材料を配置する工程とを含む熱電変換構造体の製造方法が提供される。
さらに、本発明のある態様においては、SrTiOの被覆層を前記熱電変換材料を覆うように形成することにより、前記凹凸構造に対応して形成された追加の凹凸構造を該被覆層の表面に形成する工程と、該被覆層の表面の該追加の凹凸構造の少なくとも一部の表面に、追加の熱電変換材料を配置する工程とをさらに含んでいる熱電変換構造体の製造方法が提供される。
なお、本発明の各態様においてAサイトとは、ABOと表記したペロフスカイト型の結晶格子において、酸素八面体をなす各酸素を面心の位置に有する立方体、より一般には平行六面体を考え、その立方体等の頂点に位置する格子点である。
本発明のいずれかの態様においては、細線構造または擬一次元構造からなる熱電変換構造体が提供される。これにより、高い性能指数Zを示す熱電変換構造体およびそれを用いる熱電変換素子が実現される。
本発明のある実施形態における熱電変換素子の概略断面図である。 本発明のある実施形態の基板であるSrTiO立方晶ペロフスカイト構造において、(210)面方位の結晶格子を示す概略側面図である。図2(a)は面内[1−20]軸、図2(b)は面内[001]軸からみた側面図である。 本発明のある実施形態における1180℃で12時間、大気中にてアニールした後のSrTiO基板の(210)面方位基板表面のAFM像である。 本発明のある実施形態における1180℃で12時間、大気中にてアニールした後のSrTiO(210)面方位の基板表面に形成された(100)面のテラス部と[001]軸方向に平行なステップ部とからなる凹凸構造を示す図である。 本発明のある実施形態において、SrTiO(210)面方位基板表面の(100)面のテラス部と[001]軸方向に平行なステップ部とからなる凹凸構造上に擬一次元構造になるように形成されたLaドープSrTiO(熱電変換材料)からなる熱電変換部材をもつ熱電変換素子の構造の概略断面図である。 本発明のある実施形態において、凹凸構造上に別の態様の擬一次元構造になるように形成されたLaドープSrTiO(熱電変換材料)からなる熱電変換部材をもつ熱電変換素子の構造の概略断面図である。 本発明のある実施形態において、SrTiO(210)面方位基板表面の(100)面のテラス部と[001]軸方向に平行なステップ部とからなる凹凸構造上に擬一次元構造になるように形成され集積化されたLaドープSrTiO(熱電変換材料)からなる熱電変換部材をもつ熱電変換構造体の概略断面図である。 本発明のある実施形態における熱電変換構造体の作製手順を示すフローチャートである。
以下、本発明に係る熱電変換構造体の実施形態を説明する。以下の説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。
<第1実施形態>
以下、本実施形態の熱電変換構造体の実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは(210)面方位のSrTiOの基板の表面において、[001]軸と(100)面により規定される凹凸構造を形成し、その表面上に作製したLaドープSrTiOを熱電変換材料として作製される細線構造の熱電変換部材による熱電変換構造体について説明する。特に本実施形態では、その凹凸構造を利用して作製された擬一次元構造を有する熱電変換部材がいかに再現性よく簡単に形成されるかが説明される。
[1 構造]
[1−1 全体構造]
まず始めに、本実施形態の熱電変換構造体の構成について説明する。図1は、本実施形態の熱電変換構造体100の構成を示す概略断面図である。熱電変換構造体100は、基板10と、その基板10の表面に形成された熱電変換部材20とによって構成される。このうち、基板10は、後述するように、微細に見ると凹凸構造となっている表面を備えているSrTiOからなる基板である。そのSrTiO基板の表面に接するように熱電変換部材20が形成されている。なお、図1においては、紙面の上下方向が基板面に垂直になり、左右方向が基板面に平行になるように描いている。熱電変換部材20は、LaドープSrTiOの熱電変換材料から構成されており、基板10のSrTiOとほとんど同じ格子定数であり基板10の表面に対してエピタキシャル成長している。
[1−2 結晶構造]
次に、図2を参照して、立方晶ペロフスカイト構造における(210)面方位を説明する。この立方晶ペロフスカイト構造は、本実施形態においては、SrTiO基板である基板10と、熱電変換部材20であるLaドープSrTiOの熱電変換材料22との双方の結晶構造である。ペロフスカイト構造はABOと表記され、Aは頂点、Bは体心、O(酸素)は面心の各位置を占める。本実施形態の説明において、頂点のサイトをAサイトとよび、そこを占める原子をA原子と呼ぶ。紙面縦方向を基板面に垂直な方向(以降「面直方向」と呼ぶ)とし、図2(a)は面内[001]軸、図2(b)はそれと直交する面内[1−20]軸からみた断面図である。この立方晶ペロフスカイト構造において(210)面から測った(100)面の角度は式2で表わされる。
θ=arctan(1/2) 式2
すなわちθは約26.6度であり、面直方向にAO−BO−AO・・・と交互に原子面が積み重なっている。SrTiO(210)の基板10では、面直方向(210)面の面間隔は
d(210)=a・sinθ 式3
から求められ、約0.1746nmとなる。なお、aはSrTiOの格子定数(=0.3905nm)である。また、立方晶のユニットセルが(100)面方位から約26.6度傾いたという見方をすると、面直方向の間隔は3d(210)は約0.5238nmである。なお、面内原子位置周期性まで考慮した面直方向の長さは5d(210)は約0.873nmとなる。これらの格子定数は、熱電変換部材20をなす熱電変換材料22においてもほとんど同一である。
[1−3 基板の表面構造]
次に基板10であるSrTiO(210)面方位基板表面の構造について説明する。図3は、本実施形態の熱電変換構造体100に用いる基板10の表面のAFM像を示す。また、図4は、基板10の表面付近の構造を拡大して示す概略断面図である。図4に示すように、基板10には、(100)面によるテラス部が、頂部テラス部12と底部テラス部14とに形成されている(以下「頂部」「底部」の記載は明示しない)。また、基板10には、基板面の面内[001]軸に延びるステップ部16を含む凹凸構造が形成される。
熱電変換構造体100において、単結晶面の(100)面のテラス部12、14と面内[001]軸方向に平行に延びるステップ部16とは、購入段階の基板10では形成されていない。つまり、購入段階での基板10の単結晶の表面は、nmレベルでは平坦であり、何らの規則的構造は見られない。ところが、そのSrTiO(210)の基板を大気中1180℃で12時間アニール処理すると、図3および図4に示されるような凹凸構造が観察される。具体的には、図3に示すように、基板10の表面には、[001]軸方向に1μm以上の長さで延びる幅Wが約20nmの細いテラス部12、14が形成される。[1−20]軸方向にこの表面をたどった場合の高低差Lを測定すると約6nmである。形成されたこの高低差Lは、基板10の材質であるSrTiOの単位胞に換算しておよそ12個程度となる。そして、図4に示すように、基板10の表面においては、多数のテラス部12、14がすべて(100)面を露出させて形成されており、それらの多数のテラス部12、14が互いにステップ部16と、逆向きのステップ部18によりつながっている。これらのステップ部のうち、ステップ部16は[010]面により構成されている。これに対し、逆向きのステップ部18の面が結晶軸とどのような関連を持つように形成されているかは定かではない。ただし、大きな高低差Lをもたらすような凹凸構造がテラス部12、14とステップ部16、18を組み合わせることによって形成されていることは確かであり、ステップ部18は、ステップ部16に対して逆向きの傾斜を有しているようではある。このテラス部12、14とステップ部16、18とは、ともに[001]軸方向に延びており、[1−20]軸方向に並ぶように配列されている。なお、ステップ部18の面との比較においてステップ部16は、(010)面という結晶格子と明確な関連があるため、ステップ部16はステップ部18に比べて[001]軸方向に、より高い確度で延びている。
[1−4 熱電変換部材の構造]
図5に、基板10に形成される熱電変換部材20の構成を断面図として示している。すなわち、熱電変換構造体100は、SrTiO(210)面方位基板表面の(100)面のテラス部12、14と[001]軸方向に平行なステップ部16、18とからなる凹凸構造上に擬一次元構造になるように形成されたLaドープSrTiO(熱電変換材料22)を含む熱電変換部材20を有している。熱電変換部材20は、典型的には、熱電変換材料22の細長のストリップを多数並べた構造となっている。そして、熱電変換材料22は、SrTiO(210)面方位の基板表面の(100)面からなるテラス部12、14と(100)面のステップ部16とが形成されている凹凸構造の表面に形成されている。熱電変換材料22は、その凹凸構造の表面の少なくとも一部を覆っている。
図5は、[001]軸方向に延びる熱電変換部材20の熱電変換材料22の細長のストリップそれぞれを、[001]軸に垂直な面によって切断した場合の断面図である。熱電変換部材20をなす熱電変換材料22には、その長手方向つまり図4および図5における紙面に垂直な向きに電流が流されて熱電変換が行なわれる。そして、上述した基板10の表面の凹凸構造の上に形成されているために、熱電変換材料22は、擬似的に一次元的な構造(擬一次元構造)となっている。この擬一次元構造のために、熱電変換構造体100の効率ZTは良好な値が得られる。つまり、熱電変換材料22の細長のストリップそれぞれが電子リッチな縮退半導体となることにより、電子の空間的な分布にも擬一次元構造が導入される。この異方性の高い電子構造によって、熱電変換構造体100の効率ZTが上昇するのである。
熱電変換構造体100の別の典型的な熱電変換部材20では、図5に示したような熱電変換材料22のように細長のストリップに分離していない場合もある。例えば、図6には、図5と同様の凹凸構造の表面に接するようにして形成された擬一次元構造をとる別の構造の熱電変換部材220を有する熱電変換構造体102を示している。熱電変換構造体102では、熱電変換部材220が、凹凸構造をなすテラス部12、14およびステップ部16、18を覆うように形成された熱電変換材料222を含んでいる。このような熱電変換材料222は、凹凸構造に沿って形成された膜であるため、その影響を受けて電子の伝導特性が[001]軸(紙面に垂直方向)と、[1-20]軸(紙面の左右方向)とで大きく異なっている。このような効果は、熱電変換材料222の厚みが、例えば(100)面のテラス部12において[100]軸方向に測って定義したときに、3ユニットセル程度までの薄い場合に顕著に表われる。このように、本実施形態の熱電変換構造体においては、凹凸構造の面に接している熱電変換材料が、図5に示した熱電変換材料22のように凹凸構造の表面に不連続となるギャップが形成されていることは必ずしも要さない。
[1−5 熱電変換部材の変形例]
図7に、本実施形態の変形例である熱電変換構造体110を概略断面図により示す。図7に示すように、本実施形態の熱電変換構造体110においては、熱電変換部材20aのように、基板10に形成されているテラス部12A、14A、ステップ部16A、18Aを利用して集積化された熱電変換材料22(22A〜22C)を採用することができる。この熱電変換構造体110を作製するためには、図5に示した熱電変換構造体100と同様に、LaドープSrTiOによる熱電変換材料22Aが、テラス部12A、14Aとステップ部16Aを含む凹凸構造の少なくとも一部の表面に形成される。その後にその熱電変換材料22Aを覆うようにSrTiOの被覆層24Aが形成される。
ここで、典型的な被覆層24Aは、5ユニットセル以上の厚みで形成されている。被覆層24Aを、熱電変換材料22Aに連続した結晶をなすように成長させることによって、基板10の凹凸構造に対応する追加の凹凸構造を形成する。つまり、SrTiOの被覆層24Aは、LaドープSrTiOの熱電変換材料22Aに対してエピタキシャルに成長される。その被覆層24Aを形成する最初の段階では、熱電変換材料22Aの隙間が被覆層24Aによって埋められる。その後、被覆層24Aがある程度形成されると熱電変換材料22Aの隙間が埋まるため、あたかも、テラス部12A、14Aや、ステップ部16A、18Aが形成されている凹凸構造と同様の構造が、同質の材質により形成されているかのような凹凸構造が形成される。それに続けて被覆層24Aを形成すると、被覆層24Aが熱電変換材料22Aを覆い、被覆層24Aの材質のみが表面に位置する追加の凹凸構造が得られる。この追加の凹凸構造には、テラス部12B、14Bや、ステップ部16B、18Bが含まれている。このため、追加の凹凸構造を下地として利用することにより、追加の熱電変換材料22Bを形成することが可能である。その場合にも、追加の熱電変換材料22Bを覆うように被覆層24Bを形成すれば、繰り返しによってさらに追加の熱電変換材料22Cを形成することが可能となる。
本変形例においてLaドープSrTiOである熱電変換材料22A〜22Cの構造は、3単位胞以下の膜厚に相当する場合には特に、実質的に擬一次元構造となる。これは、(100)面が(210)面から約26.6°だけ傾斜しており、(100)面のテラス部12、14をたどった場合の形状が直線的ではないため、テラス部12、14の表面と段差の谷底、側面に形成された3単位胞以下の膜厚に相当するLaドープSrTiOが切断されるためである。そして、このような集積された構造の熱電変換部材20aを採用すると、熱電変換構造体110全体の効率ZTが高められる利点がある。なお、熱電変換構造体110においても、熱電変換部材20aをなす熱電変換材料22A〜22Cによって熱電変換が行なわれる際にも、熱電変換材料22A〜22Cの長手方向つまり図7における紙面に垂直な向きに電流が流される。
[2 製造方法]
次に、本実施形態の熱電変換構造体100および熱電変換構造体110の製造方法について説明する。図8は、その作製手順を示すフローチャートである。熱電変換構造体100の製造は、まず、上述したように大気中において基板をアニール処理することによって、凹凸構造が形成されている基板10を作成することから開始する(S102)。
次に、レーザーアブレーション法によって、熱電変換材料を当該凹凸構造の上に形成する(S104)。より具体的には、形成される熱電変換材料22の熱電変換材料として、LaドープSrTiOを凹凸構造の表面に成長させる。この際、ターゲットとしては、Laドープ量が10%となるように固相反応法で作製した多結晶材料をφ20mm×5mmの円筒形に成形したものを用いる。その詳細な手順は、まず、SrTiO(210)基板である基板10を真空チャンバー内に取り付け、3×10−9Torr(4×10−7Pa)以下に真空排気する。その後、高純度の酸素ガスを真空チャンバー内に100mTorr(13.3Pa)導入し、すでに凹凸構造が形成されている基板10を到達温度750℃に加熱する。なお、この成膜時の基板10の温度は、基板アニール温度は凹凸構造を形成する際の1180℃よりも低いため、基板10の表面に形成された凹凸構造は、レーザーアブレーション法の際の上記基板加熱による影響を受けない。続いて波長248nmのKrFエキシマレーザを、チャンバーのレーザー光導入ポートを介してターゲットに135パルス照射し、3単位胞分の膜厚に相当するLaドープSrTiOを凹凸構造の上に成長させる。なお、これらの条件は、平坦な表面を有するSrTiO(100)基板上にてLaドープSrTiO単位胞一層分を二次元成長させるために、エキシマレーザを照射45パルスすれば良いことを事前に確認して決定したものである。
この熱電変換材料22の成長は、SrTiOである基板10に対して、SrTiOとほぼ同じ格子定数を持つ熱電変換材料22をエピタキシャル成長させるような条件が選択されている。このため、熱電変換材料22の成長における結晶性を確認するために、RHEED(反射高速電子線回折)によるその場観察を行うことが有効である。つまり、(210)基板である基板10は異方的であり、面内[001]軸に平行に電子線を入射すると(1−20)面に関する回折が得られる。実際にこのような観察を行なうと、例えば(100)面と(010)面からの回折パターンが見られる。その回折パターンは、熱電変換材料22の薄膜が基板10表面の凹凸構造と同様に、(100)面によるテラス部12、14と(010)面によるステップ部16とを含む面の構成を保って、つまり、基板10の凹凸構造をテンプレートとすることによって形成されることが確認できる。同様に、RHEEDパターンでは、面内[1−20]軸に平行に入射することによって、面内(001)面に関する情報も得られる。[1−20]軸に平行に電子線を入射するとストリークからなるRHEEDパターンが観察され、[001]軸方向には段差が形成されずnmレベルで平坦かつ基板にエピタキシャルに成長した擬一次元構造が得られることが確認される。
その後、in−situで400℃でアニールを行い、酸素を充填した(S108)。凹凸構造は、上述したように、十分に大きな高低差を有するように形成されているため、その上に形成される熱電変換部材20において、基板10の凹凸構造の表面に形成される熱電変換材料22は、面直方向には膜厚によって厚みが規定される。また、[1−20]方向には隣合う熱電変換材料22同士が、凹凸構造のステップ部16、18の作る高低差によって互いに切り離される。このようにして、擬一次元構造が実現される。
以上の工程(S102、S104、S108)によって熱電変換構造体100を作製することが可能である。ここで、上述した変形例の熱電変換構造体110を作製する場合には、工程S104に引き続き、被覆層を形成する工程(S106)が実施される。その場合、同一真空槽において、SrTiOターゲットを用いて同様に10単位胞分に相当する被覆層24Aが形成される。被覆層24Aは、熱電変換材料22Aとともに、基板10の凹凸構造の上にエピタキシャルに結晶格子を形成する。この工程S104とS106のシーケンスを3回繰り返すと、図7に示すような断面図の熱電変換構造体110が形成される。
[3 実施例]
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順、要素または部材の向きや具体的配置等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することかできる。したがって、本発明の範囲は以下の具体例に限定されるものではない。上述した熱電変換構造体110と同一の構造の実施例サンプルを作製し、実施例サンプルの熱電変換構造体の性能指数Zを求めた。具体的には、実施例サンプルの[001]軸方向の両端にAl電極を形成し、そのAl電極を通じて熱電変換部材20aの示すゼーベック係数S、抵抗率ρ、および熱伝導率κを室温(300K)で測定する。するとNbドープしたSrTiOとSrTiOからなる超格子で報告されている効率ZTが約0.3(超格子界面だけに限ればZT>2)よりもはるかに優れた効率ZTである約4.6の効率ZTが測定される(T=300K)。このような特性が得られた理由として、本願の発明者は、本発明により熱電変換材料であるLaドープしたSrTiOの電子状態が実質的に擬一次元化されたためであると考えている。また、上記と同様にAサイトにPr及びNdを10%ドープした試料の効率ZTについても、5.8、4.3とそれぞれ優れた値が得られる(T=300K)。Prをドープした場合に最も優れた効率が得られる理由としては、Laと比べてPrのイオン半径が小さいためにTiOからなる酸素八面体の歪が大きくなることが考えられる。すなわち、歪によって生じる移動度の向上による抵抗率の減少と熱伝導率の減少とが効率ZTの向上に寄与するものと考えられる。一方、BサイトにNbを10%ドープした試料では、2.9の効率ZT、つまり、Aサイトにドープした場合よりも小さいながらも優れた効率が得られることを付記しておく(T=300K)。
以上説明したように、(210)面方位SrTiO基板表面の[001]軸にのびるステップ部と(100)面のテラス部とにより規定される凹凸構造の表面に形成された熱電変換材料(ここではLaドープSrTiO)においては、擬一次元構造が形成される。さらに、その熱電変換材料の上にSrTiO絶縁層を形成し、このシーケンスを繰り返すことにより、擬一次元構造の熱電変換材料を集積化することも可能である。しかも、既に説明したように、大きな高低差の凹凸構造は(210)面方位SrTiO基板を大気中でアニールするだけで簡便に再現性よく形成される。その理由は、結晶軸と結晶表面により自律的に段差が形成されるためである。さらに本凹凸構造は通常のステップ部やバンチングしたステップ部とは異なりテラス部上での高さが[1−20]軸方向に一様ではないため、二次元成長条件で熱電変換材料を堆積するだけで段差部にて不連続となる。このため、凹凸構造は容易にかつ確実に作製することができる。このため二次元構造作製と比較して特段の設備やプロセスを要することなく擬一次元構造つまり細線構造が作製されるため、性能向上が可能な熱電変換材料が得られる。なお、本実施形態で例示した熱電変換材料の組成、膜厚、形成方法等は、上記実施形態に限定されるものではない。
本実施形態で例示した薄膜や基板の材料やその組成、膜厚、形成方法等は、上記実施形態に限定されるものではない。また、説明のために記載したペロフスカイト結晶に対する軸や面の名称は、当業者に知られているように、等価な別の表現に基づいて表現することも可能である。例えば、基板面に延びる結晶軸を[001]軸と表現する場合であっても、その軸の設定は互いに反転指せた関係となる二通りが考えられる。さらに[001]軸の各設定に対して、[100]軸と[010]軸との設定にも任意性がある。このため、例えば右手系のある軸の取り方により(m10)面と表現された面は、右手系を保った別の軸の取り方の表現によれば、(1m0)面となり、互いに等価な面が別の表現となることには注意が必要である。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の各実施形態および実施例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、請求の範囲に含まれるものである。
本発明は、環境の温度差を利用して発電する熱電変換素子のための熱電変換構造体として利用可能である。
100、102、110 熱電変換構造体
10 基板
12、12A、12B、12C (100)面(頂部テラス部)
14、14A、14B、14C (100)面(底部テラス部)
16、16A、16B、16C ステップ部((010)面)
18、18A、18B、18C ステップ部(逆向き)
20、20a、220 熱電変換部材
22、222、22A、22B、22C LaドープSrTiO(擬一次元構造の熱電変換材料)
24、24A、24B、24C 被覆層

Claims (6)

  1. (210)面の基板面を有しており、(100)面によるテラス部と該基板面の面内[001]軸に延びるステップ部とを含む凹凸構造を有するSrTiOの基板と、
    該凹凸構造の少なくとも一部の表面に配置されている熱電変換材料と
    を備えている
    熱電変換構造体。
  2. 前記熱電変換材料を覆うように5ユニットセル以上の厚みで形成されており、前記凹凸構造に対応して形成された追加の凹凸構造を表面に有するSrTiOの被覆層と、
    該被覆層の表面の該追加の凹凸構造の少なくとも一部の表面に配置されている追加の熱電変換材料と
    をさらに備えている
    請求項1に記載の熱電変換構造体。
  3. 前記熱電変換材料の厚みが、前記基板の[100]軸方向に測ったときに3ユニットセル以下である
    請求項2に記載の熱電変換構造体。
  4. 前記熱電変換材料が、La、Pr、Ndの少なくともいずれかをAサイトにドープしたSrTiO、または、NbをBサイトにドープしたSrTiOのいずれかである
    請求項3に記載の熱電変換構造体。
  5. (210)面の基板面を有するSrTiOの基板を大気中にてアニールすることにより、(100)面によるテラス部と該基板面の面内[001]軸に延びるステップ部とを含む凹凸構造を形成する工程と、
    該凹凸構造の少なくとも一部の表面に熱電変換材料を配置する工程と
    を含む
    熱電変換構造体の製造方法。
  6. SrTiOの被覆層を前記熱電変換材料を覆うように形成することにより、前記凹凸構造に対応して形成された追加の凹凸構造を該被覆層の表面に形成する工程と、
    該被覆層の表面の該追加の凹凸構造の少なくとも一部の表面に、追加の熱電変換材料を配置する工程と
    をさらに含む
    請求項5に記載の熱電変換構造体の製造方法。
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