自動車用等の車両シートでは、手動により背もたれ部を初期回転位置から折畳み回転位置に、またその逆に回転させる場合に、背もたれ部の回転位置に応じた背もたれ部の自重による回転力(回転モーメント)の変化で手動力を変化させることになり、特に、背もたれ部を折畳み回転位置から初期回転位置に向かって回転させる際には、大きな手動力を必要とする。
背もたれ部に初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置から折畳み回転位置に近づくに連れて増大しかつ折畳み回転位置に向かう方向の回転に抗する弾性的回転力を一端部で付与する渦巻きばねを設けて、背もたれ部の自重による回転力に影響されないで手動による背もたれ部の回転を軽快に行わせる場合に、弾性力を付与する一端部と反対側の渦巻きばねの他端部をしっかりと保持しないと上記機能を得られない虞が生じるが、この渦巻きばねの他端部での反力の受容を単独で行うと、反力受容部に早急な疲労が生じる虞がある。
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、背もたれ部の自重による回転力に影響されないで手動による背もたれ部の回転を軽快に行わせることができる上に、渦巻きばねの機能を長期に渡って確実に得るようにした車両シート用のロータリダンパを提供することにある。
本発明による車両シート用のロータリダンパは、車両用シートの座部及び当該座部に初期回転位置と折畳み回転位置との間で回転できるように回転自在に連結された背もたれ部のうちの一方に固定されると共に円筒状の内周面を有した収容体と、この収容体の円筒状の内周面と当該内周面に同心の円筒状の外周面との間で粘性流体を収容する空間を形成するように収容体の内部に収容体に対して相対的に回転自在に配されていると共に車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固定される回転体と、背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転では、粘性流体に大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転に対して反対方向である他方の方向の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるべく、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間に配されたベーン手段と、一端部で車両用シートの座部に連結される一方、他端部で車両用シートの背もたれ部に連結されると共に背もたれ部に初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置から折畳み回転位置に近づくに連れて増大しかつ折畳み回転位置に向かう方向の回転に抗する弾性的回転力を付与する渦巻きばねと、所定回転位置から折畳み回転位置までにおける背もたれ部への初期回転位置に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばねの一端部で生じる反力を受容する一方、所定回転位置から初期回転位置までにおける背もたれ部への折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばねの一端部で生じる反力を受容すると共に渦巻きばねを囲繞して渦巻きばねの一定以上の拡径を規制する規制面を有した反力受容手段とを具備している。
斯かる本発明の車両シート用のロータリダンパによれば、渦巻きばねが背もたれ部に初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置から折畳み回転位置に近づくに連れて増大しかつ折畳み回転位置に向かう方向の回転に抗する弾性的回転力を付与するようになっており、ベーン手段が背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転では、粘性流体に大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転に対して反対方向である他方の方向の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるようになっているために、背もたれ部を初期回転位置から所定回転位置まで回転させる際には、ベーン手段により背もたれ部の回転に適度の制動を与えることができ、背もたれ部を所定回転位置から折畳み回転位置まで回転させる際には、折畳み回転位置に近づくに連れて増大する背もたれ部の自重に基づく折畳み回転位置に向かう方向の回転力がこれに抗する渦巻きばねの回転力により打ち消されて、背もたれ部を同方向に緩慢に折畳み回転位置まで回転させることができる一方、背もたれ部が手動により折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向に回転される際には、ベーン手段により小さな制動が背もたれ部の回転に与えられると共に渦巻きばねの回転力も徐々に減少するために、背もたれ部を小さな手動力により所定回転位置まで容易に回転させることができ、而して、手動による背もたれ部の折畳み回転位置及び初期回転位置への回転を軽快に行うことができる上に、折畳み回転位置での背もたれ部の激突を回避できる。
また、本ロータリダンパによれば、所定回転位置から折畳み回転位置までにおける背もたれ部への初期回転位置に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばねの一端部で生じる反力を受容する一方、所定回転位置から初期回転位置までにおける背もたれ部への折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばねの一端部で生じる反力を受容すると共に渦巻きばねを囲繞して渦巻きばねの一定以上の拡径を規制する規制面を有した反力受容手段を具備しているために、渦巻きばねの一端部で生じる反力を一定値に抑えることができて渦巻きばね及び反力受容手段の早急な疲労を回避でき、渦巻きばねの機能を長期に渡って確実に得ることができる。
本発明の好ましい例では、渦巻きばねは、一端部で反力受容手段を介して収容体に連結されていると共に他端部で回転体に連結されており、反力受容手段は、所定回転位置から折畳み回転位置までにおける背もたれ部への初期回転位置に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばねの一端部で生じる反力を受容するべく、収容体に固着された第一のピン部材と、所定回転位置から初期回転位置までにおける背もたれ部への折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力の付与において一端部で生じる反力を受容するべく、収容体に固着された第二のピン部材とを具備している。
本発明では、渦巻きばねは、所定回転位置から折畳み回転位置までにおいて背もたれ部に初期回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与する一方、所定回転位置から初期回転位置までにおいて背もたれ部に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与するようになって、渦巻きばねの一端部は、第一のピン部材と第二のピン部材との間に介在されていても、所定回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の背もたれ部の回転において背もたれ部の自重に基づく折畳み回転位置に向かう方向の背もたれ部に生じる漸次増大する回転力に抗する漸次増大する弾性的回転力を背もたれ部に付与するようになっていてもよい。
ベーン手段は、一つの例では、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間を二室に区画すると共に回転体の外周面に一体的に形成された一対の弾性的可撓ベーンと、この一対の弾性的可撓ベーンにより区画された二室のうちの少なくとも一方の室を更に二室に区画すると共に収容体の内周面に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーンとを有しており、この場合、他の弾性的可撓ベーンは、収容体の内周面に一体的に形成された基部と、この基部に一体的に形成されていると共に回転体の外周面に対面した円弧状面を有した弾性的に可撓性の舌部とを有しているとよい。
斯かる他の弾性的可撓ベーンの夫々においても、舌部は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において対峙した一対の楔空間を回転体の外周面との間で形成する円弧状凹面を有していてもよく、この円弧状凹面は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凹面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が当該隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が当該隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、他の弾性的可撓ベーンの夫々を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっていてもよい。
他の弾性的可撓ベーンも、上述の弾性的可撓ベーンと同様に作用して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を発揮させることができる。
好ましい例では、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、一端部では回転体の外周面に連接すると共に収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転と反対方向に向かって凸となった湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端部では回転体の外周面に連接すると共に凸面に沿って延びている湾曲状の凹面とを具備しており、凸面は、その他端部側で、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において対峙した一対の楔空間を収容体の内周面との間で形成する円弧状凸面となっており、この円弧状凸面は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、一対の弾性的可撓ベーンの夫々を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっており、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、初期回転位置から所定回転位置を介する折畳み回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において他方の室から一方の室に狭められた一対の楔空間を通って流れて当該狭められた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置から所定回転位置を介する初期回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において一方の室から他方の室に広げられた一対の楔空間を通って流れて当該広げられた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている。
本発明による車両シート用のロータリダンパによれば、背もたれ部が初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向に回転されて、一方の室を拡大すると共に他方の室を縮小するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性的可撓ベーンの凹面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体及び回転体のうちの他方に近づいて一対の楔空間を縮小するように弾性的可撓ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は縮小された一対の楔空間を通って他方の室から一方の室に流れて、この縮小された一対の楔空間を通過する粘性流体の流動抵抗による大きな制動が収容体に対する回転体の回転に与えられると共に折畳み回転位置に近づくに連れて増大する背もたれ部の自重に基づく折畳み回転位置に向かう方向の回転力が初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置から折畳み回転位置に近づくに連れて増大する初期回転位置に向かう方向の渦巻きばねの回転力により打ち消されて、背もたれ部は同方向に緩慢に折畳み回転位置まで回転される一方、背もたれ部が手動により折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向に回転されて、一方の室を縮小すると共に他方の室を拡大するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性的可撓ベーンの湾曲状の凸面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体及び回転体のうちの他方から離れて一対の楔空間を広げるように弾性的可撓ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は広げられた一対の楔空間を通って一方の室から他方の室に流れて、この広げられた一対の楔空間を通過する粘性流体の比較的小さな流動抵抗による小さな制動が収容体に対する回転体の回転に与えられると共に折畳み回転位置から所定回転位置に近づくに連れて減少する背もたれ部の自重に基づく折畳み回転位置に向かう方向の回転力に抗する渦巻きばねの回転力も徐々に減少するために、背もたれ部は、小さな手動力により所定回転位置まで容易に回転されると共に所定回転位置から初期回転位置までは渦巻きばねによる徐々に増大する弾性的制動をもって回転されるようになっており、而して、手動による背もたれ部の折畳み回転位置及び初期回転位置への回転を軽快に行うことができる上に、折畳み回転位置及び初期回転位置での背もたれ部の激突を回避できると共に背もたれ部の初期回動力を渦巻きばねに予め蓄えることができる。
また、本発明による車両シート用のロータリダンパによれば、一対の弾性的可撓ベーンの夫々により分割されていると共に収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において隣接する二室において、収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転と逆の他方の方向の相対回転側に位置した一方の室を拡大すると共に収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転側の他方の室を縮小するように収容体に対して回転体が回転される場合には、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の凹面に粘性流体の圧力が付与されるために、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の他端部側が収容体の内周面に近づいて一対の楔空間を縮小するように一対の弾性的可撓ベーンの夫々が弾性変形される結果、粘性流体は縮小された一対の楔空間を通って他方の室から一方の室に流れて、この縮小された一対の楔空間を通過する粘性流体による大きな制動が回転体の回転に与えられる一方、一方の室を縮小すると共に他方の室を拡大するように収容体に対して回転体が回転される場合には、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の湾曲状の凸面に粘性流体の圧力が付与されるために、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の他端部側が収容体の内周面から離れて一対の楔空間を広げるように一対の弾性的可撓ベーンの夫々が弾性変形される結果、粘性流体は広げられた一対の楔空間を通って他方の室から一方の他方の室に流れて、この広げられた一対の楔空間を通過する粘性流体による小さな制動が回転体の回転に与えられて、一方向ダンパとして動作するようになっている。
そして、一方向ダンパとして機能する本発明によるロータリダンパによれば、温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体が収容体に対する回転体の回転において一対の楔空間を通過する場合において、例えば、低温下で常温(20℃)時よりも粘度が増加した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力増大により弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体及び回転体のうちの他方から離れるように弾性的可撓ベーンが弾性変形されて一対の楔空間が広げられる結果、粘性流体自体の粘度増加と一対の楔空間の拡大による流動抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時よりも粘度が低下した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力減少により弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体及び回転体のうちの他方に近づくように弾性的可撓ベーンが弾性変形されて一対の楔空間が狭められる結果、粘性流体自体の粘度低下と一対の楔空間の縮小による流動抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる。
好ましい例では、凹面は、凸面の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面に近づくように凸面に沿って延びており、円弧状凸面は、円筒状内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している。
本発明では、初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置は、背もたれ部の回転可能範囲において背もたれ部の自重に基づく折畳み回転位置に向かう方向の回転力が背もたれ部に生じ始める位置であるとよく、渦巻きばねは、斯かる所定回転位置から折畳み回転位置まで背もたれ部に初期回転位置に向かう方向の漸次増大する弾性的回転力を付与するようになっているとよい。
本発明に係る粘性流体としては、シリコーンオイルを好ましい例として挙げることができるが、その他の粘性流体であってもよく、また、収容体は、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、回転体もまた、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、各弾性的可撓ベーンは、回転体とは別体にして回転体に溶接、嵌着、接着等により固着してもよいが、好ましくは回転体又は収容体本体と一体形成されており、回転体又は収容体本体と弾性的可撓ベーンとが一体形成される場合には、回転体又は収容体は、弾性的可撓ベーンに適度な弾性が付与される合成樹脂素材が用いられるのが好ましい。
本発明では、収容体を背もたれ部に連結する一方、回転体を座部に連結して、背もたれ部の回転に応じて収容体を回転体に対して回転させてもよく、逆に、収容体を座部に連結する一方、回転体を背もたれ部に連結して、背もたれ部の回転に応じて回転体を収容体に対して回転させてもよく、また、背もたれ部への収容体又は回転体の連結は、直接的に又は回転軸、歯車等を介して間接的に行ってもよい。
本発明によれば、背もたれ部の自重による回転力に影響されないで手動による背もたれ部の回転を快適に行わせることができる上に、渦巻きばねの機能を確実に得るようにした車両シート用のロータリダンパを提供することができる。
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
図1から図12において、本例の車両シート用のロータリダンパ1は、円筒状の内周面2を有した合成樹脂製の収容体3と、内周面2と当該内周面2に回転軸心Oに関して同心の円筒状の外周面4との間でシリコーンオイル等からなって温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体5を収容する空間6を形成するように収容体3の内部に収容体3に対して回転軸心Oを中心として相対的にR1及びR2方向に回転自在に配されている合成樹脂製の回転体7と、収容体3に対する回転体7の一方の方向の相対的回転、本例では収容体3に対する回転体7のR1方向の回転では、粘性流体5に大きな流動抵抗を、収容体3に対する回転体7の一方の方向の相対的回転に対して反対方向の他方の方向の相対的回転では、本例では収容体3に対する回転体7のR2方向の回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるべく、空間6に配されたベーン手段8と、一端部9で車両用シート10の座部11に連結される一方、他端部12で車両用シートの背もたれ部13に連結されると共に背もたれ部13に初期回転位置P0と折畳み回転位置P2との間の所定回転位置P1から折畳み回転位置P2に近づくに連れて増大しかつ折畳み回転位置P2に向かう方向であるR1方向の回転に抗する弾性的回転力を付与する渦巻きばね14と、所定回転位置P1から折畳み回転位置P2までにおける背もたれ部13への初期回転位置P0に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばね14の一端部9で生じる反力を受容する一方、この反力の受容とは独立して、所定回転位置P1から初期回転位置P0までにおける背もたれ部13への折畳み回転位置P2に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばね14の一端部9で生じる反力を受容すると共に渦巻きばね14を囲繞して渦巻きばね14の一定以上の拡径を規制する規制面23を有した反力受容手段24とを具備している。
座部11及び当該座部11に初期回転位置P0と折畳み回転位置P2との間で回転できるようにR1及びR2方向に回転自在に連結、支持された背もたれ部13のうちの一方、本例では座部11に固定される収容体3は、円筒状の内周面2を有している筒部15と、筒部15の軸心方向であるA方向の一方の環状の端部16に径方向内方に向かって一体的に形成されていると共に貫通孔17を規定した内周面18を有した鍔部19と、筒部15のA方向の他方の環状の端部20に複数のねじ21により固着された蓋体22とを具備している。
鍔部19は、A方向の一方の側面25で空間6のA方向の一方を規定しており、蓋体22は、中央に貫通孔31を有していると共にA方向の一方の側面32で空間6のA方向の他方を規定した楕円形の板体からなる蓋体本体33と、蓋体本体33の側面32に一体的にA方向に突出して形成された円環状の小径の突起34と、側面32に一体的にA方向に突出して且つ突起34と同心に形成されていると共に突起34よりも大径の突起35とを具備しており、筒部15のA方向の他方の環状の端部20に複数のねじ21により固着された蓋体本体33は、両端に貫通孔36を有しており、貫通孔36を通ったねじ37により座部11に固定されており、収容体3は、斯かる蓋体本体33を介して座部11に固定されている。
内周面2との間で空間6を形成する外周面4と中空部41を規定する内周面42とを有すると共に座部11及び背もたれ部13のうちの他方、本例では背もたれ部13に固定される中空の回転体7は、軸方向Aの円環状の各端部43及び44で収容体3の鍔部19の内周面18と突起34の外周面とにR1及びR2方向に回転自在となるように支持されており、中空部41を規定する内周面42は、六角形となっており、回転体7の斯かる六角形の内周面42には回転軸51の一端部52側の断面六角形の端部53が嵌合しており、回転軸51は、その他端部側で座部11及び座部11にR1及びR2方向に回転自在に連結された背もたれ部13のうちの他方、本例では背もたれ部13に固着されており、回転軸51を介して、より詳細には、六角形の内周面42に嵌合する回転軸51の端部53を介して背もたれ部13に連結されている回転体7は、回転軸51のR1及びR2方向の回転、延いては背もたれ部13のR1及びR2方向の回転で同方向に回転されるようになって、こうして、回転体7は、背もたれ部13に固定されている。
回転軸51は、六角形の外周面に有していると共に中空部41に配された一端部52側の端部53を有した大径部55と、貫通孔31を通って蓋体本体33のA方向の他方の側面56から突出していると共に大径部55と一体な一端部52側の小径部57と、小径部57に形成されたスリット58とを具備しており、小径部57は、貫通孔31における蓋体本体33にR1及びR2方向に摺動回転自在に接触して支持されており、小径部57の先端部59は、スリット58により二股状になっている。
鍔部19の内周面18と回転体7の軸方向Aの端部43との間、筒部15の端部20と端部20に嵌合された突起35との間及び回転体7の軸方向Aの端部44と突起34との間の夫々には、空間6から収容体3及び回転体7の外部への粘性流体5の漏出を防止するシールリング60が配されている。
背もたれ部13の初期回転位置P0から折畳み回転位置P2に向かう方向であるR1方向の回転では、粘性流体5に大きな流動抵抗を、背もたれ部13の折畳み回転位置P2から初期回転位置P0に向かう方向であるR2方向の回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるベーン手段8は、収容体3の円筒状の内周面2と内周面2に同心の回転体7の円筒状の外周面4との間の粘性流体5を収容する収容体3の内部の円環状の空間6を二室61及び62に区画すると共に回転体7の外周面4に一体的に形成された一対の弾性的可撓ベーン63及び64と、一対の弾性的可撓ベーン63及び64により区画された二室61及び62のうちの少なくとも一方の室、本例では二室61及び62の夫々を更に二室65及び66並びに67及び68に区画すると共に収容体3の内周面2に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーンとしての一対の弾性的可撓ベーン69及び70とを有している。
弾性的可撓ベーン63及び64並びに69及び70において、弾性的可撓ベーン63と弾性的可撓ベーン64と、そして、弾性的可撓ベーン69と弾性的可撓ベーン70とは、回転軸心Oに関して対称の形状をもって互いに同様に形成されているので、以下、弾性的可撓ベーン63及び弾性的可撓ベーン69を詳細に説明し、弾性的可撓ベーン64及び弾性的可撓ベーン70については、弾性的可撓ベーン63及び弾性的可撓ベーン69の符号と同一の符号をもって説明、図示する。
室66と室67とを区画する弾性的可撓ベーン63は、一端部では回転体7の外周面4に連接すると共にR2方向に向かって凸となった湾曲状の凸面71と、凸面71に対応して一端部では回転体7の外周面4に連接すると共に凸面71の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面71に近づくように凸面71に沿って延びて凸面71の終端と共に終端している湾曲状の凹面72とを具備している。
凸面71は、その他端部側で、収容体3に対する回転体7の相対的回転の回転方向RでもあるR1及びR2方向において対峙した一対の楔空間73及び74を筒部15の内周面2との間で形成すると共に内周面2の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している円弧状凸面75となっており、円弧状凸面75は、室66に連通する一方の楔空間73の径方向であるB方向の幅が回転方向Rにおいて当該円弧状凸面75を間にして隣接する二室66及び67のうちの他方の室67に連通する他方の楔空間74に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間73の径方向の幅を決定していると共に室67に連通する他方の楔空間74のB方向の幅が回転方向Rにおいて当該円弧状凸面75を間にして隣接する二室66及び67のうちの一方の室66に連通する楔空間73に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間74のB方向の幅を決定しており、一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5は、弾性的可撓ベーン63を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間73及び74のB方向の幅を決定するようになっている。
凸面71及び凹面72を有すると共に外周面4から内周面2に向かって漸次減少する厚みをもった弾性的可撓ベーン63は、回転体7に連接された基部76と、円弧状凸面75を有する自由端部77とを有して円弧状に一体形成されている。
一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5は、収容体3に対する回転体7のR1方向の回転において他方の室67から一方の室66に狭められた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該狭められた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する大きな流動抵抗を発生するようになっている一方、収容体3に対する回転体7のR2方向の回転において一方の室66から他方の室67に広げられた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該広げられた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する小さな流動抵抗を発生するようになっている。
室65と室68とを区画する弾性的可撓ベーン64も弾性的可撓ベーン63と同様に形成されており、弾性的可撓ベーン64における一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5も、弾性的可撓ベーン64を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間73及び74のB方向の幅を決定するようになっており、而して、弾性的可撓ベーン64における一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5は、収容体3に対する回転体7のR1方向の回転において他方の室65から一方の室68に狭められた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該狭められた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する大きな流動抵抗を発生するようになっている一方、収容体3に対する回転体7のR2方向の回転において一方の室68から他方の室65に広げられた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該広げられた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する小さな流動抵抗を発生するようになっている。
而して、一対の弾性的可撓ベーン63及び64の夫々は、初期回転位置P0から所定回転位置P1を介する折畳み回転位置P2への背もたれ部13の座部11に対するR1方向の回転において他方の室67及び65の夫々から一方の室66及び68の夫々に狭められた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該狭められた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体5に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置P2から所定回転位置P1を介する初期回転位置P0への背もたれ部13の座部11に対するR2方向の回転において一方の室66及び68の夫々から他方の室67及び65の夫々に広げられた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該広げられた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体5に発生させるようになっている。
室61を弾性的可撓ベーン63及び64と協働して回転方向Rにおいて隣接する二室65及び66に区画する弾性的可撓ベーン69は、弾性的可撓ベーン63の凸面71と相補的な円弧状の凹面81を当該弾性的可撓ベーン63の凸面71に回転方向Rにおいて対面して有している一方、断面V若しくはU状の凹面82を弾性的可撓ベーン64の凹面72に回転方向Rにおいて対面して有している基部83と、基部83の先端からR2方向に伸びて基部83に一体的に形成されていると共に円弧状面84で回転体7の外周面4に対面した弾性的に可撓性の舌部85とを有しており、回転体7の外周面4と外周面4の曲率半径よりも大きな曲率半径を有した舌部85の円弧状面84との間には、一対の楔空間73及び74と同様の楔空間が形成されるようになっており、基部83からR2方向に一体的に延びた舌部85の円弧状面84において一対の楔空間73及び74と同様の楔空間を形成する弾性的可撓ベーン69は、弾性的可撓ベーン63と同様に、収容体3に対する回転体7のR1方向の相対的回転では、当該一対の楔空間を介する室65から室66への粘性流体5の流動に大きな抵抗をもって許容する一方、収容体3に対する回転体7のR2方向の相対的回転では、室66から室65への粘性流体5の流動に小さな抵抗をもって許容するようになっている。
室62を弾性的可撓ベーン63及び64と協働して回転方向Rにおいて隣接する二室67及び68に区画する弾性的可撓ベーン70も、弾性的可撓ベーン69と同様に形成されており、回転体7の外周面4と舌部85の円弧状面84との間に一対の楔空間を形成する弾性的可撓ベーン70は、弾性的可撓ベーン69と同様に、R1方向の収容体3に対する回転体7の相対的回転では、当該一対の楔空間を介する室67から室68への粘性流体5の流動に大きな抵抗をもって許容する一方、R2方向の収容体3に対する回転体7の相対的回転では、室68から室67への粘性流体5の流動に小さな抵抗をもって許容するようになっている。
弾性的可撓ベーン63及び64のA方向の一方の端面は、鍔部19の側面25にR1及びR2方向に滑り移動自在に密に接触しており、弾性的可撓ベーン63及び64のA方向の他方の端面も、蓋体本体33の側面32にR1及びR2方向に滑り移動自在に密に接触しており、基部83が筒部15の内周面2に一体的に形成された弾性的可撓ベーン69及び70の部位は、A方向の一方の端面で鍔部19の側面25に一体的に形成されており、基部83が突起35の内周面に一体的に形成された弾性的可撓ベーン69及び70の部位は、A方向の一方の端面88で、基部83が筒部15の内周面2に一体的に形成された弾性的可撓ベーン69及び70の部位のA方向の他方の端面89にぴったりと液密に接触しており、A方向の他方の端面で蓋体本体33の側面32に一体的に形成されている。
弾性手段としての渦巻きばね14は、その一端部9が反力受容手段24を介して収容体3の蓋体本体33に係止されており、その他端部12がスリット58に嵌め込まれて、蓋体本体33の他方の側面56に沿って巻かれている。
渦巻きばね14は、一端部9で収容体3及び回転体7のうちの一方である収容体3の蓋体本体33に当該一端部9を挟持したねじ37及びピン部材90を介して連結されていると共に他端部12で収容体3及び回転体7のうちの他方である回転体7に回転軸51を介して連結されており、背もたれ部13が所定回転位置P1から折畳み回転位置P2にR1方向に回転されて回転軸51も同方向に回転される場合には、縮径方向に巻かれてR1方向の回転に抗する漸次増大する弾性力を発生する一方、背もたれ部13が折畳み回転位置P2から所定回転位置P1に回転されて回転軸51も同方向に回転される場合には、拡径方向に巻き戻されてR1方向の回転に抗する弾性力を漸次減少するようになっており、更に、背もたれ部13が所定回転位置P1から初期回転位置P0にR2方向に回転されて回転軸51も同方向に回転される場合には、更に拡径されてR2方向の回転に抗する漸次増大する弾性力を発生する一方、背もたれ部13が初期回転位置P0から所定回転位置P1にR1方向に回転されて回転軸51も同方向に回転される場合には、縮径方向に巻かれてR2方向の回転に抗する弾性力を漸次減少するようになっており、而して、所定回転位置P1では弾性力を発生しない渦巻きばね14は、背もたれ部13の座部11に対する所定回転位置P1から折畳み回転位置P2までにおいて、背もたれ部13の自重に起因する所定回転位置P1から折畳み回転位置P2に向かうに連れて漸次増大するように変化する折畳み回転位置P2に向かう方向であるR1方向の回転力に抗するR2方向の弾性的回転力を背もたれ部13の座部11に対する回転に付与するようになっている。
而して、渦巻きばね14は、所定回転位置P1から折畳み回転位置P2まで背もたれ部13に初期回転位置P0に向かう方向であるR2方向の漸次増大する弾性的回転力を付与する一方、所定回転位置P1から初期回転位置P0まで背もたれ部13に折畳み回転位置P2に向かう方向であるR1方向の弾性的回転力を付与するようになっている。
反力受容手段24は、所定回転位置P1から折畳み回転位置P2までにおける背もたれ部13への初期回転位置P0に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばね14の一端部9で生じる反力を受容するべく、渦巻きばね14の一端部9が巻きつけられていると共に貫通孔36を通ったピン部材としてのねじ37と、所定回転位置P1から初期回転位置P0までにおける背もたれ部13への折畳み回転位置P2に向かう方向の弾性的回転力の付与において一端部9で生じる反力を受容するべく、収容体3の蓋体本体33に一体形成されて固着された円柱状のピン部材90と、規制面23で渦巻きばね14を囲繞してねじ92により蓋体本体33の側面56に固着されていると共に渦巻きばね14の拡径において渦巻きばね14に接触して渦巻きばね14の一定以上の拡径を規制する規制面23を有した蓋部材93とを具備している。ピン部材90と円柱状のねじ37との間に介在されている渦巻きばね14の一端部9は、本例では、ねじ37に巻き付けられているが、ピン部材90と円筒状のねじ37とにより一端部9を挟持する場合には、一端部9をねじ37に特に巻き付ける必要はない。
蓋部材93は、内周面に規制面23を有した側壁部95と、側壁部95に一体的に形成されていると共に蓋体本体33と実質的に同形の蓋部96と、蓋部96に形成されていると共に各ねじ37が貫通する貫通孔97と、蓋部96の中央部に形成された貫通孔98とを具備している。
ピン部材90と円柱状のねじ37との間に介在されている渦巻きばね14の一端部9は、本例では、ねじ37に巻き付けられているが、ピン部材90と円筒状のねじ37とにより一端部9を挟持する場合には、一端部9をねじ37に特に巻き付ける必要はなく、また、側壁部95は、蓋体本体33に一体形成されてもよく、蓋部96、貫通孔97及び貫通孔98は必ずしも設ける必要はない。
自動車の車体91に取り付けられた座部11と座部11にR1及びR2方向に回転自在に連結された背もたれ部13とを具備している車両用シート10においては、背もたれ部13は、自動車の前後方向に対して直交すると共に回転軸心Oを通る鉛直面に対して所定角度α、例えばα=25°だけ後方に傾いた初期回転位置P0から同じく自動車の前後方向に対して直交すると共に回転軸心Oを通る鉛直面に対して所定角度β、例えばβ=90°だけ前方に傾いた折畳み回転位置P2まで回転軸心Oを中心としてR1及びR2方向に回転自在に座部11に連結されており、初期回転位置P0では、図示しないロック解除自在なロック機構によりR1方向及びR2方向の回転を禁止されるようになっており、折畳み回転位置P2では、図示しない停止部材により折畳み回転位置P2を越えるR1方向の回転を禁止されるようになっており、ロック機構のロック解除で、初期回転位置P0から回転軸心Oを通る鉛直面に位置する所定回転位置P1までは一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的大きな粘性流体5の流動抵抗に抗して渦巻きばね14の縮径弾性回転力によりR1方向に回転されるようになっており、所定回転位置P1から折畳み回転位置P2までは、一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的大きな粘性流体5の流動抵抗と背もたれ部13の自重に基づく漸次増大するR1方向の回転力に抗する渦巻きばね14のR2方向の拡径弾性回転力とに抗して自重によりR1方向に回転するようになっている一方、折畳み回転位置P2から所定回転位置P1までは、背もたれ部13の自重に基づく漸次減少するR1方向の回転力に抗する渦巻きばね14のR2方向の漸次減少する拡径弾性回転力の助力の下で、一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的小さな粘性流体5の流動抵抗に抗して手動によりR2方向に回転されるようになっており、所定回転位置P1から初期回転位置P0までは、一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的小さな粘性流体5の流動抵抗と徐々に増加する渦巻きばね14のR1方向の縮径弾性回転力に抗して手動によりR2方向に回転されるようになっていると共に渦巻きばね14に縮径弾性回転力を蓄えさせるようになっている。
一方向ロータリダンパとして機能する以上の車両シート用のロータリダンパ1では、図11に示す回転体7の回転位置(初期回転位置P0に相当)で、ロック機構のロック解除により背もたれ部13が渦巻きばね14の縮径弾性力の援助の下でR1方向に回転されて、室65及び67を縮小する一方、室66及び68を拡大するように収容体3に対して回転体7がR1方向に回転される際には、弾性的可撓ベーン63及び64の凹面72及び弾性的可撓ベーン69及び70の凹面82に粘性流体5の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーン63及び64の他端部側である自由端部77側が収容体3の内周面2に、弾性的可撓ベーン69及び70の舌部85側が回転体7の外周面4に夫々近づいて一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を縮小するように弾性的可撓ベーン63及び64並びに弾性的可撓ベーン69及び70が弾性変形される結果、粘性流体5は縮小された一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通って室65及び67の夫々から室68及び66の夫々及び室66及び68の夫々に流れて、この縮小された楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する粘性流体5の比較的大きな流動抵抗による大きな制動を回転体7のR1方向の回転に与えて背もたれ部13を同方向にゆっくりと所定回転位置P1まで回転させ、所定回転位置P1から折畳み回転位置P2まで背もたれ部13がR1方向に回転される際には、渦巻きばね14が漸次縮径されて背もたれ部13の自重に基づく折畳み回転位置P2に向かうに連れて漸次増加するR1方向の回転力が渦巻きばね14の漸次増大するR2方向の拡径弾性回転力により打ち消されて背もたれ部13のR1方向の回転が縮小された一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する粘性流体5の比較的大きな流動抵抗による大きな制動でもって行われる一方、図12に示す回転体7の回転位置(折畳み回転位置P2に相当)で、折畳み回転位置P2から所定回転位置P1まで背もたれ部13が手動によりR2方向に回転されて、室65及び67を拡大する一方、室66及び68を縮小するように収容体3に対して回転体7がR2方向に回転される際には、弾性的可撓ベーン63及び64の各湾曲状の凸面71及び弾性的可撓ベーン69及び70の凹面81に粘性流体5の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーン63及び64の各自由端部77側が収容体3の内周面2から、そして弾性的可撓ベーン69及び70の舌部85が回転体7の外周面4から夫々離れて一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を広げるように弾性的可撓ベーン63及び64並びに弾性的可撓ベーン69及び70が弾性変形される結果、粘性流体5は広げられた一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通って室66及び68の夫々から室67及び65の夫々及び室65及び67の夫々に流れて、この広げられた一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する粘性流体5の比較的小さな流動抵抗による小さな制動と渦巻きばね14の漸次減少するR2方向の拡径弾性回転力とが回転体7のR2方向の回転に与えられて折畳み回転位置P2から所定回転位置P1まで背もたれ部13が手動によりR2方向に回転される結果、背もたれ部13は、小さな手動力により所定回転位置P1まで回転させることができ、所定回転位置P1から初期回転位置P0まで背もたれ部13が手動により更にR2方向に回転されて、室65及び67を更に拡大する一方、室66及び68を更に縮小するように収容体3に対して回転体7がR2方向に回転される際には、広げられた一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する粘性流体5の比較的小さな流動抵抗による小さな制動と渦巻きばね14に縮径弾性回転力を蓄えるための渦巻きばね14による徐々に増大する弾性的制動とを手動力によるR2方向の回転において受けるようになっている。
斯かるロータリダンパ1によれば、背もたれ部13を所定回転位置P1から折畳み回転位置P2まで回転させる際には、背もたれ部13の自重に基づく折畳み回転位置P2に向かうに連れて漸次増加する回転力による急激な背もたれ部13の回転を渦巻きばね14により防止できると共に、背もたれ部13を初期回転位置P0から折畳み回転位置P2まで回転させる際には、ベーン手段8により粘性流体5に大きな流動抵抗を生じさせることができる結果、背もたれ部13の折畳み回転位置P2に向かう方向の回転に適度の抵抗を与えることができて折畳み回転位置P2での背もたれ部13の停止部材への激突を避けることができる一方、背もたれ部13を手動により折畳み回転位置P2から所定回転位置P1まで回転させる際には、渦巻きばね14による補助に加えて、ベーン手段8により生じる粘性流体5の流動抵抗を低下させることができる結果、背もたれ部13を手動により折畳み回転位置P2から初期回転位置P1まで容易に回転させることができる。
本ロータリダンパ1によれば、所定回転位置P1から折畳み回転位置P2までにおける背もたれ部13への初期回転位置P0に向かう方向の弾性的回転力の付与において、渦巻きばね14の一端部9で生じる反力をねじ37で受容する一方、ねじ37による反力の受容とは独立して、所定回転位置P1から初期回転位置P0までにおける背もたれ部13への折畳み回転位置P2に向かう方向の弾性的回転力の付与において、渦巻きばね14の一端部9で生じる反力をピン部材90で受容する反力受容手段24を具備しているために、渦巻きばね14の一端部9で生じる互いに反対方向の反力をねじ37とピン部材90とで個別に受容して反力受容部である反力受容手段24の早急な疲労を回避でき、渦巻きばね14の機能を長期に渡って確実に得ることができる上に、所定回転位置P1から初期回転位置P0までにおける背もたれ部13への折畳み回転位置P2に向かう方向の弾性的回転力の付与において渦巻きばね14を囲繞して渦巻きばね14の一定以上の拡径を規制する規制面23を有しているために、渦巻きばね14の大きな拡径を防止できて渦巻きばね14の一端部9で生じる反力を一定値に抑えることができ、而して、渦巻きばね14及びピン部材90の早急な疲労を回避でき、渦巻きばね14の機能を長期に渡って確実に得ることができる。
また、一方向ダンパとして機能するロータリダンパ1では、温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体5が回転体7のR1及びR2方向の回転において一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過するようになっているために、例えば、低温下で常温時より粘度が増加した粘性流体5が楔空間73及び74を通過する場合には、楔空間73及び74での粘性流体5の圧力増大により弾性的可撓ベーン63の自由端部77側が収容体3の内周面2から常温時よりより離れるように弾性的可撓ベーン63が大きく弾性変形されて楔空間73及び74が常温時と比較して大きく広げられる結果、粘性流体5自体の粘度増加による流動抵抗の増大と楔空間73及び74の拡大による流動抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時より粘度が低下した粘性流体5が楔空間73及び74を通過する場合には、楔空間73及び74での粘性流体の圧力減少により弾性的可撓ベーン63の自由端部77側が収容体3の内周面2に常温時より近づくように弾性的可撓ベーン63が小さく弾性変形されて楔空間73及び74が狭められる結果、粘性流体5自体の粘度低下による流動抵抗の減少と楔空間73及び74の縮小による流動抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができると共に背もたれ部13の自重による回転力を渦巻きばね14により軽減することができる結果、背もたれ部13を折畳み回転位置P2に衝撃なしにもたらすことができると共に小さな手動力により背もたれ部13を所定回転位置P1まで戻し回転させることができる。
以上のロータリダンパ1は、二対の弾性的可撓ベーン63及び64並び69及び70を有しているが、本発明のロータリダンパは、一対の弾性的可撓ベーン63及び64と弾性的可撓ベーン69又は70を有していてもよく、また、三対以上の弾性的可撓ベーンを有していてもよい。
また、上記のロータリダンパ1は、渦巻きばね14の一端部9で生じる反力をピン部材90で受容するようにしたが、図15に示すように、蓋体本体33に一体的に形成された又はねじ止めされた角形状の部材100で渦巻きばね14の一端部9で生じる反力を受容するようにしてもよい。