本発明は、標的細胞にオリゴヌクレオチドを導入することによって、標的細胞中のDNAの特定の部位において、ヌクレオチド配列を特異的かつ選択的に改変する方法に関する。その結果は、標的DNAの配列が、ヌクレオチドが異なる位置に変換されるような、1つまたは複数のヌクレオチドの標的改変である。さらに具体的には、本発明は、修飾オリゴヌクレオチドを使用した標的ヌクレオチド交換に関する。本発明はさらに、オリゴヌクレオチドおよびキットにも関する。本発明はさらに、その方法の適用にも関する。
遺伝子組換えは、生細胞またはその細胞が一部を形成する生物、もしくはその細胞が再生できる生物の遺伝的にコードされた生物学的特性の1つまたは複数を改善する目的で、生細胞の遺伝物質において意図的に変化を引き起こす方法である。これらの変化は、遺伝物質の一部の欠失、外来遺伝物質の付加またはこの遺伝物質の既存のヌクレオチド配列の変化の形態をとり得る。真核生物の遺伝子組換え方法は、20年以上にわたってよく知られており、農業、ヒトの健康、食品品質および環境保護の分野における改善のために、植物、ヒトおよび動物の細胞、ならびに微生物において広範な応用が発見されている。遺伝子組換えの一般的方法は、外来DNA断片を細胞のゲノムに付加することからなり、それにより、既存の遺伝子により既にコードされた特性に加えて、その細胞またはその生物に新たな特性を与えるものである(その結果、既存の遺伝子の発現が抑制される応用も含む)。多くのこのような例は所望の特性を得るために有効であるが、それにもかかわらず、これらの方法は、外来DNA断片が挿入されるゲノムの位置が調節できず(したがって、最大発現レベルを調節できず)、所望の効果は、元々の、バランスの取れたゲノムによってコードされた天然特性にわたって自ずと現れなければならないため、あまり正確ではない。一方、所定のゲノム座におけるヌクレオチドの付加、欠失または変換をもたらす遺伝子組換え方法は、既存の遺伝子の正確な改善を可能にすると思われる。
オリゴヌクレオチド指定標的ヌクレオチド交換(TNE; Oligonucleotide-directed Targeted Nucleotide Exchange)は、合成オリゴヌクレオチド(それらのWatson-Crick塩基対特性においてDNAと似ているが、化学的にDNAと異なると思われるヌクレオチド様部分の短いストレッチからなる分子)の真核細胞核への送達に基づく方法である(AlexeevおよびYoon、Nature Biotechnol. 16: 1343、1998年; Rice、Nature Biotechnol. 19: 321、2001年; Kmiec、J. Clin. Invest. 112: 632、2003年)。オリゴヌクレオチドの相同配列中のミスマッチヌクレオチドを意図的に設計することによって、ミスマッチヌクレオチドは、ゲノムDNA配列における変化を誘導できる。この方法は、標的中の1つまたは多くてもいくつかのヌクレオチドを変換することが可能であるが、既存の遺伝子中にストップコドンをつくり、それらの機能の破壊をもたらす、またはコドンを変化させ、アミノ酸組成の改変されたタンパク質をコードする遺伝子をもたらす(タンパク質工学)ために用いることができる。
標的ヌクレオチド交換(TNE)は、植物、動物および酵母細胞において記載されている。最初のTNEの報告は、染色体の標的部位の間にインターカレートするように設計された、いわゆるDNA: RNA自己相補的オリゴヌクレオチドを利用した。キメラは、染色体の標的において突然変異を導入するための鋳型を形成するDNA鎖上に、ミスマッチなヌクレオチドを含む。キメラDNA: RNAオリゴヌクレオチドを使用するTNEの最初の例は、動物細胞に由来した(Igouchevaら、2001年、Gene Therapy 8、391〜399頁に概説された)。多くの研究室による広範囲の研究により、このようなオリゴヌクレオチドを使用するTNEの頻度は変わりやすく、平均して非常に低く、標的の転写状態、細胞周期の影響および形質転換された細胞型などの因子に依存することが示されている。キメラDNA: RNAオリゴヌクレオチドを使用するTNEは、植物細胞においても実証されている(Beethamら、1999年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8774〜8778頁; Zhuら、1999年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96、8768〜8773頁; Zhuら、2000年、Nature Biotech. 18、555〜558頁; Kochevenkoら、2003年、Plant Phys . 132: 174〜184頁; Okuzakiら、2004年、Plant Cell Rep. 22: 509〜512頁)。全般に、植物および動物の双方の研究において報告された頻度は、選択不可な染色体座におけるTNEの実用化には低すぎた。
キメラオリゴヌクレオチドを使用するTNEは、再現が困難であることが発見され(Ruiterら、(2003)、Plant Mol. Biol. 53、715〜729頁)、より信頼性のある結果をもたらす別のオリゴヌクレオチドの設計が探求された。いくつかの研究室は、TNEのための一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドの使用に焦点を合わせた。これらは、植物および動物双方の細胞において、より再現可能な結果をもたらすことが発見された(Liuら、2002年、Nuc. Acids Res. 30: 2742〜2750頁; 総説、Parekh-Olmedoら、2005年、Gene Therapy 12、639〜646; Dongら、2006年、Plant Cell Rep.25: 457〜65頁)。
いくつかのグループは、TNE過程が全細胞タンパク質抽出物を使用してインビトロで模倣し得ることを示した。このようなTNE活性のためのアッセイは、無細胞アッセイと呼ばれる。
このアッセイは、細菌のレポーター遺伝子(LacZまたは抗生物質耐性遺伝子など)をこのようなレポーターを担持するプラスミドと、特定の細胞型に由来するオリゴヌクレオチドおよび細胞タンパク質と共にインキュベートすることによって、不活性化する突然変異の修復に関与する。インキュベーション後、プラスミドを、TNEの効率を測定するための読み取り系として使用される大腸菌(E. coli)にエレクトロポレーションで入れる。無細胞系は、キメラDNA: RNA(Cole-Straussら、1999年 Nucleic Acids Res. 27: 1323〜1330頁、Gamperら、2000年 Nucleic Acids Res. 28、4332〜4339頁; Kmiecら、2001年 Plant J. 27: 267〜274頁; Riceら、2001年 40: 857〜868頁; Thorpeら、2002年 J. Gene Medicine 4、195〜204頁)および一本鎖オリゴヌクレオチド(Igouchevaら、2001年 Gene Therapy 8、391〜399頁; Krenら、2003年 DNA Repair 2、531〜546頁; Olsenら、2005年 J. Gene Medicine 7、1534〜1544頁)の双方と組み合わせて使用された。
このような実験において、オリゴヌクレオチドは、通常ストップコドン(TAG)をアミノ酸を特定するコドンに変化させることによって、置換をもたらす。さらに無細胞系は、オリゴヌクレオチドを使用して、1つのヌクレオチドの挿入する可能性の研究にも使用することができる。細菌のレポーター遺伝子から1つのヌクレオチドを欠失したプラスミドを作製することができ、フレームシフト変異を起こすことができる。無細胞アッセイにおいて、欠失は、オリゴヌクレオチドにより仲介された、欠失したヌクレオチドの付加によって修復される。同様に、標的中にもともとは存在しない、1つまたは複数の追加のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドは、標的配列に1つまたは複数のヌクレオチドを導入するためにもまた使用できる。
植物などの高等生物の細胞にTNEを適用する際に直面する最も大きな問題は、今までに報告された効率が低いことである。トウモロコシにおいて、Zhuら(2000年 Nature Biotech. 18: 555〜558頁)は、変換頻度が1×10-4であることを報告した。タバコ(Kochevenkoら、2003年 Plant Phys.132: 174〜184頁)およびコメ(Okuzakiら、2004年 Plant Cell Rep. 22: 509〜512頁)におけるその後の研究により、それぞれ頻度は、1×10-6および1×10-4であることが報告された。これらの頻度は、TNEの実用化には依然として低すぎる。
キメラDNA: RNAオリゴヌクレオチドを使用するTNEは、Kmiecのさまざまな特許出願、とりわけWO01/73002、WO03/027265、WO01/87914、WO99/58702、WO97/48714、WO02/10364において記載されている。WO01/73002において、未修飾のDNAオリゴヌクレオチドを使用して得られた遺伝子改変の効率が低いのは、反応混合物または標的細胞中に存在するヌクレアーゼによる、ドナーのオリゴヌクレオチドの分解の結果であると概ね考えられることが検討されている。この問題を取り除くために、得られたオリゴヌクレオチドに、ヌクレアーゼに対する耐性を与える修飾ヌクレオチドを組み込むことが提唱される。典型的な例は、ホスホロチオエート結合または2'-O-メチル類似体を有するヌクレオチドを含む。これらの修飾は、好ましくはオリゴヌクレオチドの末端に位置し、ミスマッチヌクレオチドの周辺のDNA中央部領域から離れている。さらにこの公報は、特定の化学的相互作用が、オリゴヌクレオチドの変換と、変換にかかわるタンパク質との間に関与することを規定している。オリゴヌクレオチドにホスホロチオエート結合または2'-O-メチル類似体を組み込む以外の修飾を使用する、ヌクレアーゼ耐性末端を作製するこのような化学的相互作用の効果は、改変過程およびオリゴヌクレオチドの置換とのそれらの化学的相互作用にかかわるタンパク質は未だ公知ではなく、WO01/73002の発明者によれば予測できないので、予測不能である。
修飾一本鎖オリゴヌクレオチドを使用するTNEは、特許出願WO02/26967に記載されている。この出願は、オリゴヌクレオチドに改善されたヌクレアーゼ耐性を与える修飾ヌクレオチドの、無細胞系を使用するTNEの効率に関する効果を実証する。この出願は、ssオリゴヌクレオチドに組み込まれた場合、無細胞系を使用して特定された修飾ヌクレオチドが、哺乳動物染色体の標的においてTNEを亢進することもまた、示し続けている。このことにより、インビトロの無細胞アッセイにおいて獲得された情報が、染色体座位においてインビボで適用可能であることが確認されている。この出願は、ロックト核酸ではない、いくつかの修飾ヌクレオチド、例えばC5-プロピンピリミジンもまた、TNEの効率を改善するために使用できることをさらに請求している。著者らは、「オリゴヌクレオチドに組み込まれた修飾は、生物学的活性、この場合組換え活性および修復活性に関与する細胞機能を改変しないと思われる」ことを述べている(pg16)。対照的に、本発明者らは、WO02/26967において指定された、結合活性の亢進を示すいくつかの修飾ヌクレオチドがTNE過程において生物学的に不活性であり、それゆえTNE過程における修飾ヌクレオチドの有用性の予測は、結合親和性の亢進だけに基づいて実施することはできないことを、本出願において実証する。
TNEの現在の方法の効率は比較的低い(先に述べたように、報告されたオリゴヌクレオチドの送達率が90%と高いにもかかわらず、10-6から10-4の間)ので、より効率の高いTNEの方法の実現が当分野において必要である。したがって、本発明者らは、既存のTNE技術を改善しようと試みた。
WO01/73002
WO03/027265
WO01/87914
WO99/58702
WO97/48714
WO02/10364
WO02/26967
WO99/14226
WO00/56748
WO00/66604
WO98/39352
米国特許第6,043,060号
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WO01/92512
WO92/20702
WO92/20703
WO93/12129
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本発明者らは、A、C、TまたはGのような対応する未修飾ヌクレオチドよりアクセプターDNAにより強く結合できる修飾ヌクレオチドの組み合わせを、TNEのためのドナーオリゴヌクレオチドに組み込むことによって、TNEの比率が有意に増加され得ることを発見した。理論に縛られるものではないが、本発明者らは、修飾ヌクレオチドをドナーオリゴヌクレオチドに組み込むことによって、ドナーオリゴヌクレオチドがアクセプターDNAにより強く結合し、それゆえTNEの比率が増加すると考える。
さらに、本発明者らは、TNEを亢進する修飾ヌクレオチドの能力は、2つの重要な特性、(1)正常な未修飾DNAと比較したその標的に対するその結合親和性の亢進および(2)TNE過程に関するその生物学的活性、に依存することを発見した。アンチセンス技術もまた、オリゴヌクレオチドを利用して細胞内において効果を誘導する。この場合、オリゴヌクレオチドは、相補的標的mRNAに結合するように設計する。このDNA: RNAハイブリッドは、ハイブリッドのRNA鎖を切断するRNaseHによって認識され、遺伝子の発現が阻害される。改善された結合親和性および亢進されたヌクレアーゼ耐性といった、効果的なアンチセンス反応を得るために必要なオリゴヌクレオチドの特性もまた、TNEの頻度を亢進するために重要であることが現在発見されている特性である。多くの修飾ヌクレオチドは、結合親和性および/またはヌクレアーゼ耐性のどちらかの亢進を示す文献に報告されているが、重要なステップは、このような修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドが、TNE過程に関する生物学的活性を維持していることを実証することである。
本発明者らは、無細胞系を使用して、TNEを亢進するそれらの能力に関して多くの修飾ヌクレオチドをスクリーニングし、修飾ヌクレオチドの物理的特性の研究によってこれを予測することができないことを発見した。さらに本発明者らは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの特性を亢進するために使用した多くの修飾ヌクレオチドが、実際に無細胞系においてTNEを阻害することを発見した。したがって本発明者らは、TNEそれ自体の効率を改善するために特異的である修飾ヌクレオチドを特定した。さらに、本オリゴヌクレオチドは、有利な立体化学的配置および空間的配置を表すと考えられる。
本発明者らは、ミスマッチに近いが、(直接)隣接しない位置に、すなわち、ミスマッチから少なくとも1ヌクレオチド隔てて位置する、1つまたは複数のLNAを含むオリゴヌクレオチドが、C7-プロピン修飾プリンおよび/またはC5-プロピン修飾ピリミジンと組み合わせて(合わせてプロピニル化ヌクレオチドとして示される)、TNEの効率を、今までは期待できなかった範囲に改善する、特に、インビボでの、すなわち無細胞系においてではないが、例えばプロトプラスト系におけるTNEを改善することを発見した。
この目的を達成するために、1つまたは複数のLNAおよび1つまたは複数のプロピニル化ヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド中のさまざまな位置に組み込んだオリゴヌクレオチドを使用することの効果を、無細胞系におけるTNEの頻度に関して調査した。このようなオリゴヌクレオチドのTNE活性を、正常なDNAで構成されたオリゴヌクレオチドまたはLNAもしくはプロピニル化ヌクレオチドだけで修飾されたオリゴヌクレオチドのTNE活性と比較した。1つまたは複数のLNAを、ミスマッチから少なくとも1ヌクレオチド移動した位置に、増量したプロピニル化ヌクレオチドと組み合わせて含むオリゴヌクレオチドは、置換および挿入の双方に関するTNE効果を、無細胞アッセイにおいて今まで観察されなかったレベルまで増加させたことを発見した。特に有利な効果は、ヌクレオチドの挿入、すなわち、1つまたは複数のヌクレオチドの所定の位置への挿入により達成され、特にプロトプラスト系などのインビボ系において効率は著しく亢進された。
修飾オリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドにおいてかつてない増加をもたらしたトマトの葉のプロトプラストにおいてTNEに使用した場合、観察されたLNAの数および位置の変更によって、この亢進が改善され得ることをさらに発見した。したがって、LNAは、少なくとも2ヌクレオチド、好ましくは少なくとも3ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも4つ離れて位置する。
さらに、ヌクレオチドの導入は、トマトのゲノムを変化させることが発見された。このことは、観察された改善が遺伝子座非依存性であったことを実証し、ミスマッチと比較して特定の位置に修飾ヌクレオチドを有する本発明のオリゴヌクレオチドが、植物細胞および動物細胞などの種非依存性の方法でTNEの頻度を亢進できることを示唆している。
したがって、本発明は、所望の標的ヌクレオチド交換が、LNAにより修飾され、さらにプロピニル化オリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドの部分的(すなわち、多くても50%、好ましくは多くても40%)使用によって達成できるという、発明結果に基づく。オリゴヌクレオチドの修飾の位置、型および量は、本明細書の以下に開示する範囲内で変更できる。
したがって一態様において、本発明は、LNAにより修飾され、かつプロピニル化されたオリゴヌクレオチドを提供する。このように修飾されたss-オリゴヌクレオチドは、植物および動物またはヒトの細胞において、特定の遺伝子変化を導入するために使用できる。本発明は、生物医学研究、農業の分野に応用でき、特異的に突然変異させた植物およびヒトを含む動物を構築するために応用できる。本発明はさらに、医薬品および遺伝子療法の分野にも応用できる。
本発明のオリゴヌクレオチドの配列は、標的鎖において塩基の変更を導入するミスマッチ塩基を含む部分を除いて標的鎖に相同である。ミスマッチな塩基は、標的配列に導入される。ヌクレオチドの(既存のA、C、TまたはGと比較した)修飾を操作することによって、より具体的にはミスマッチを導入するオリゴヌクレオチドの修飾の位置および量を操作することによって、効率(またはDNA二重鎖において所望の位置でヌクレオチドの変更を成功させる程度)は改善できる。
本発明の別の態様は、親DNA二重鎖と、親鎖と比較して少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドとを接触させることによる、親DNA鎖(第1鎖、第2鎖)の標的改変の方法にあり、ドナーオリゴヌクレオチドは、標的ヌクレオチド交換を可能にするタンパク質の存在下で親(アクセプター)鎖より高い結合能力を有するために、特定の位置においてLNAにより修飾された区間を含む。
したがって、本発明の発明上の要点は、未修飾オリゴヌクレオチドと比較して修飾ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド(時としてドナーと称される)の結合能力の改善にあり、LNA修飾は、ミスマッチと隣接しない1つまたは複数の位置にあり、さらにプロピニル化ヌクレオチドが、通常既にLNAにより修飾されておらず、ミスマッチの位置ではない位置で、オリゴヌクレオチドに組み込まれている。
LNA修飾およびプロピン修飾を組み込んだ、本発明によるオリゴヌクレオチドを使用したDNAストレッチへの挿入により、有利な結果が達成された。それ自体が結合効率を改善することが知られている他の修飾オリゴヌクレオチドが、LNAおよびプロピンにより修飾されたオリゴヌクレオチドのこの組み合わせのようにTNEにおいて有効ではなかったことに気付いたことは特に驚くべきであった。
一態様において、本発明は、二重鎖DNA配列の標的改変のためのオリゴヌクレオチドに関し、この二重鎖DNA配列は第1DNA配列および第1DNA配列の相補体である第2DNA配列を含み、このオリゴヌクレオチドは第1DNA配列とハイブリダイズできるドメインを含み、このドメインは第1DNA配列に対して少なくとも1つのミスマッチを含み、またこのオリゴヌクレオチドは天然に存在するA、C、TまたはGのヌクレオチドと比較してより高い結合親和性を有する少なくとも2つの修飾ヌクレオチドを含む少なくとも1つの区間を含み、
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、少なくとも1つのミスマッチから少なくとも1ヌクレオチド離れて位置するLNAであり、場合によりこのオリゴヌクレオチドは多くても約50%のLNA修飾ヌクレオチドを含み、
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、C7-プロピンプリンまたはC5-プロピンピリミジンである。
一態様において、本発明は、二重鎖DNA配列の標的改変のための修飾オリゴヌクレオチドに関する。この二重鎖DNA配列は、第1DNA配列および第2DNA配列を含む。第2DNA配列は第1DNA配列の相補体であり、第1DNA配列と対になり二重鎖を形成する。このオリゴヌクレオチドは、改変される二重鎖DNA配列に対する少なくとも1つのミスマッチを含むドメインを含む。好ましくは、このドメインは、少なくとも1つのミスマッチを含む第1鎖に相補的なオリゴヌクレオチドの一部である。
好ましくは、このドメイン中のミスマッチは、第1DNA配列に対するものである。このオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのLNAで修飾された区間と、生物学的活性を維持しながら第2DNA配列(の対応する部分)より高い結合親和性を有する、少なくとも1つのプロピニル化ヌクレオチドにより修飾された区間を含む。好ましくは、少なくとも1つの修飾LNAヌクレオチドは、少なくとも1つのミスマッチから少なくとも1ヌクレオチド離れて位置し、より好ましくは、このオリゴヌクレオチドは少なくとも1つのプロピニル化ヌクレオチドに加えて、多くとも約50%のLNA修飾ヌクレオチドを含む。
ミスマッチを含むドメインおよび修飾されたヌクレオチド(1つまたは複数)を含む区間は、それぞれLNAであれプロピニル化であれ、重複してもよい。したがって、特定の実施形態において、ミスマッチを含むドメインは修飾を意図している区間とは異なるオリゴヌクレオチド上の位置にある。特定の実施形態において、ドメインは1つまたは複数の区間を組み込む。特定の実施形態において、区間はドメインを組み込むことができる。特定の実施形態において、このドメインおよびこの区間はオリゴヌクレオチド上の同じ位置にあり、同じ長さを有し、すなわち区間は長さおよび位置が一致してもよい。特定の実施形態において、ドメイン内に複数の区間があり得る。
本発明に関して、このことは、DNA二重鎖を改変するためのミスマッチを含むオリゴヌクレオチドの部分が、修飾されるオリゴヌクレオチドの部分とは異なる位置またはシフトした位置にあってもよいことを意味する。特に、特定の実施形態において、細胞の修復系(または少なくともこの系にかかわるタンパク質または少なくともTNEにかかわるタンパク質)は、この鎖のうちミスマッチを含むのはどれか、どの鎖をミスマッチ補正用の鋳型として使用するかを確定する。
LNAのバリエーション
ロックト核酸(LNA; Locked Nucleic Acid)は、アンチセンス遺伝子療法における使用にとって非常に興味深い特性を有するDNA類似体である。LNAは、二環性および三環性のヌクレオシドならびにヌクレオチド類似体ならびにこのような類似体を含むオリゴヌクレオチドである。LNAおよび関連類似体の基本的な構造特性および機能的特性は、WO99/14226、WO00/56748、WO00/66604、WO98/39352、米国特許第6,043,060号および米国特許第6,268,490号を含むさまざまな公報および特許に開示されており、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
特に、LNAは、正しい標的と間違った標的とを識別する能力(高特異性)と、非常に高い生物学的安定性(低代謝回転)およびかつてない親和性(標的に対する非常に高い結合強度)とを兼ね備える。実際に、LNAにより記録された親和性の増加は、低程度から中程度の範囲の先に報告されたすべての類似体の親和性を引き離している。
LNAはRNA類似体であり、中でもリボースは、2'-酸素原子および4'-炭素原子の間のメチレン架橋によって構造的に制約される。この架橋は、リボフラノース環の柔軟性を制限し、この構造を固定した二環形態にロックする。このいわゆるN型(または3'-エンド)高次構造は、二重鎖を含むLNAのTmに増加をもたらし、その結果としてより高い結合親和性およびより高い特異性をもたらす。NMRスペクトル研究は、実際にLNA糖のロックされたN型高次構造を実証しているが、LNAモノマーがそれらの未修飾な近隣のヌクレオチドをN型高次構造にねじり得ることもまた明らかにした。重要なことには、LNAの有益な特性は、核酸類似体に時として観察されるような他の重要な特性を犠牲にしては実現しない。
LNAは、DNA類似体の領域を構成する他のすべての要素と自由に混合できる。LNA塩基は、短い全LNA配列として、またはより長いLNA/DNAキメラとしてオリゴヌクレオチドに組み込むことができる。LNAは、内部、3'または5'の位置に配置できる。しかし、それらの固定した二環高次構造により、LNA残基は時として核酸鎖のらせん状のねじれを妨げる。したがって、通常2つ以上の隣接LNA残基を有するオリゴヌクレオチドを設計することはあまり好ましくない。好ましくは、LNA残基は、既存のヌクレオチド(A、C、TまたはG)などのらせん状のねじれを妨げない、少なくとも1つの(修飾)ヌクレオチドによって隔てられる。
独創的に開発された好ましいLNAモノマー(β-D-オキシ-LNAモノマー)は修飾され、新規なLNAモノマーになる。新規なα-L-オキシ-LNAは、3'エキソヌクレアーゼ活性に対して優れた安定性を示し、さらに強力なアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計においてβ-D-オキシ-LNAより強力でより用途が広い。さらに、キシロ-LNAおよびL-リボLNAもまた、WO99/14226、WO00/56748、WO00/66604に開示されるように使用できる。本発明において、上記の型の任意のLNAは、本発明の目標、すなわち、β-D-オキシ-LNA類似体を選択することによる、TNEの効率の改善を達成する上で有効であり得る。
TNEに関する技術において、LNA修飾は、TNEに使用するキメラ分子の選択肢としてオリゴヌクレオチド修飾の候補のリストに記載されている。しかし、今までのところこの技術において、LNA修飾一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが、TNE効率を、LNAがミスマッチから少なくとも1ヌクレオチド離れて位置し、かつ/またはオリゴヌクレオチドが約50%を超える(最も近い総ヌクレオチド数の概数で表す)LNAを含まない場合に、現在発見されている範囲まで有意に亢進することを示唆する指摘がない。
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは2つのLNA修飾ヌクレオチド(1つまたは複数)を含む区間を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチド上の区間は、2、3、4、5、6、7、8、9または10個を超えるLNA修飾ヌクレオチドを含み得る。
特定の実施形態において、少なくとも1つのLNAは、ミスマッチから多くても10ヌクレオチド、好ましくは多くても8ヌクレオチド、より好ましくは多くても6ヌクレオチド、さらにより好ましくは多くても4、3または2ヌクレオチド離れて位置する。より好ましい実施形態において、少なくとも1つのLNAは、ミスマッチから1ヌクレオチド離れて位置する、すなわちミスマッチとLNAの間に1つのヌクレオチドが位置する。複数のLNAを含むオリゴヌクレオチドに関する特定の実施形態において、少なくとも2つのLNAは、ミスマッチから少なくとも1ヌクレオチド離れて位置する。好ましい実施形態において、LNAは互いに隣接して位置しないが、少なくとも1つのヌクレオチド、好ましくは2つまたは3つのヌクレオチドによって隔てられている。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドの2つまたはそれ以上(さらに多くの)のLNA修飾の場合、修飾はミスマッチから(およそ)等間隔てている。言いかえると、好ましくは、LNA修飾はミスマッチの周りで対称的に位置する。例えば、好ましい実施形態において、2つのLNAはミスマッチの周りで対称的に、ミスマッチから1ヌクレオチド(かつお互いから3ヌクレオチド)離れて、すなわち...(LNA)-N-(ミスマッチ)-N-(LNA)...で位置する。
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドの修飾ヌクレオチドの多くても40%、好ましくは多くても30%、より好ましくは多くても25%、さらにより好ましくは多くても20%、最も好ましくは多くても10%はLNA誘導体、すなわちLNA対応物によって置換された既存のA、C、TまたはGである。
特定の実施形態において、複数のミスマッチは、同時に導入されてもよく、または連続して導入されてもよい。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド上の隣接した位置または離れた位置のどちらかに、複数のミスマッチを収容してもよい。この目的を達成するために、オリゴヌクレオチド中のLNAの特定の高次構造により、それらが結合能力の改善、または生物学的活性の維持に互いに干渉しない、すなわちミスマッチから1ヌクレオチド離れて、ミスマッチの周辺に間隔をあけることが好ましいという条件で、オリゴヌクレオチドは、本明細書に要約した原理に従う、LNAの第2のセットを収容するために適応できる。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、隣接しても離れていても(すなわち非隣接でも)よい、2、3、4つまたはそれ以上のミスマッチヌクレオチドを含んでよい。オリゴヌクレオチドは、これを収容したさらなるドメインおよび区間を含むことができ、特にいくつかの区間を含むことができる。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、アクセプター鎖に挿入される潜在的インサートを組み込み得る。このようなインサートは、5を超えて100ヌクレオチドまでの長さで変動してよい。同様の方法で、特定の実施形態において、同様の長さのバリエーション(1から100ヌクレオチド)の欠失が導入できる。
オリゴヌクレオチドの送達は、エレクトロポレーションまたは核もしくは細胞質のどちらかに送達できる他の既存の技術を介して達成できる。本発明の方法のインビトロ試験は、とりわけWO01/87914、WO03/027265、WO99/58702、WO01/92512に記載されたような無細胞系を使用して達成できる。
プロピン修飾
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、C7プリンおよび/またはC5ピリミジンの中から独立して選択されたプロピン修飾ヌクレオチド(1つまたは複数)を包含する区間を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチド上のこの区間は、4、5、6、7、8、9または10を超えるプロピン修飾ヌクレオチドを包含できる。特定の実施形態において、この区間は完全に修飾され、すなわち、オリゴヌクレオチド中のすべてのピリミジンがC5-プロピン置換されおよび/またはすべてのプリンがC7-プロピン置換されており、その時LNA修飾はこの区間の両側にあり得る。特定の実施形態において、LNA修飾された区間およびプロピニル修飾された区間がある。特定の実施形態において、この区間はLNAおよびプロピンの両方により修飾された区間を包含する。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つのプロピン修飾ヌクレオチド(1つまたは複数)を包含する区間を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチド上の区間は、4、5、6、7、8、9または10を超えるプロピン修飾ヌクレオチドを包含できる。特定の実施形態において、この区間は完全に修飾され、すなわち、オリゴヌクレオチド中のすべてのピリミジンがC5-プロピン置換されおよび/またはすべてのプリンがC7-プロピン置換されている。特定の実施形態において、すべてのプリンはプロピニル化されてよく、ピリミジンはLNAによって置換されてよく、または逆の場合も同じである。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチド中の少なくとも10%のヌクレオチドは、そのプロピニル化対応物で置換される。特定の実施形態において、ヌクレオチドの少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、またいくつかの場合において少なくとも90%が、それらのプロピニル化対応物で置換されることが好ましい。
C5位にプロピニル基を有するピリミジンヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドは、それらの対応するピリミジン誘導体よりも安定な二重鎖および三本鎖を形成する。7位に同じプロピン置換基を有するプリンは、さらにより安定な二重鎖を形成し、したがって好ましい。したがって、特定の好ましい実施形態において、7-プロピニルプリンヌクレオチド(8-アザ-7-デアザ-2'-デオキシグアノシンおよび8-アザ-7-デアザ-2'-デオキシアデニンの7-プロピニル誘導体)の使用を介して効率がさらに増加し、これはC5-プロピンピリミジンヌクレオチドよりさらに大幅に結合親和性を亢進する。このようなヌクレオチドは、とりわけHeおよびSeela、2002年 Nucleic Acids Res.30: 5485〜5496頁に記載されている。
特定の実施形態において、複数のミスマッチは、同時に導入されてもよく、または連続して導入されてもよい。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド上の隣接した位置または離れた位置のどちらかに、複数のミスマッチを収容してもよい。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、隣接しても離れていても(すなわち非隣接でも)よい、2、3、4つまたはそれ以上のミスマッチヌクレオチドを含んでよい。オリゴヌクレオチドは、これを収容したさらなるドメインおよび区間を含むことができ、特にいくつかの区間を含むことができる。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、アクセプター鎖に挿入される潜在的インサートを組み込み得る。このようなインサートは、5を超えて100ヌクレオチドまでの長さで変動してよい。同様の方法で、特定の実施形態において、同様の長さのバリエーション(1から100ヌクレオチド)の欠失が導入できる。
本発明の特定の有利な実施形態において、ヌクレオチドの挿入は本発明のオリゴヌクレオチドを使用して達成されている。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、アクセプター鎖に挿入される潜在的インサートを組み込み得る。このようなインサートは、1、2、3、4、5から100ヌクレオチドまでの長さで変動してよい。同様の方法で、特定の実施形態において、同様の長さのバリエーション(1から100ヌクレオチド)の欠失が導入できる。
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチド中の少なくとも10%のヌクレオチドは、そのプロピニル化対応物で置換される。特定の実施形態において、ヌクレオチドの少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、またいくつかの場合において少なくとも90%が、それらのプロピニル化対応物で置換されることが好ましい。
プロピニル基は、三重結合を有する3炭素鎖である。三重結合は、ピリミジンのC5位およびプリンヌクレオチドの7位にある、ヌクレオチドの基本構造に対する共有結合である(図2)。シトシンおよびウラシル(オリゴヌクレオチド上のチミジンを置換する)の双方は、C5-プロピニル基を備えることができ、それぞれC5-プロピニル-シトシンおよびC5-プロピニル-ウラシルをもたらす。1つのC5-プロピニル-シトシン残基は2.8℃、1つのC5-プロピニル-ウラシルは1.7℃、Tmを増加する(Froehlerら、1993年 Tetrahedron Letters 34: 1003〜6頁; Lacroixら、1999年 Biochemistry 38: 1893〜1901頁; Ahmadianら、1998年 Nucleic Acids Res. 26 3127〜3135頁; Colocciら、1994年 J. Am. Chem. Soc 116: 785〜786頁)。これは、C5位における1-プロピン基の疎水性によるものであり、プロピン基は複素環塩基に対して平面であるので、塩基のより優れた積み重ねもまた可能になる。
C5-プロピン置換ピリミジン基を含むオリゴヌクレオチドの結合親和性の改善を利用して、細胞過程を改変した。C5-プロピン基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、その標的mDNAと共により安定した二重鎖を形成し、遺伝子発現の阻害の増加をもたらす(Wagnerら、1993年 Science 260: 1510〜1513頁; Flanaganら、1996年 Nature Biotech. 14: 1139〜1145頁; Meunierら、2001年 Antisense & Nucleic Acid Drug Dev. 11: 117〜123頁)。さらにこれらの実験により、このようなオリゴヌクレオチドが生物学的に活性であり、それらは細胞に許容され得ることが実証される。TNEに関する技術において、C5-プロピンピリミジン修飾は、TNEに使用するキメラ分子の選択肢としてオリゴヌクレオチド修飾の候補のリストに記載されている。しかし、今までのところこの技術において、C5および/またはC7プロピン修飾一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが、TNE効率を、LNA修飾との組み合わせにおいて現在発見されている範囲まで有意に亢進することを示唆する指摘がない。
オリゴ設計
本発明のさらなる態様において、オリゴヌクレオチドの設計は、
アクセプター鎖の配列または交換されるヌクレオチドの周辺配列の少なくとも一部を確定するステップ。これは、ミスマッチまたは所望の挿入位置に隣接する、典型的には、好ましくはミスマッチの両側の少なくとも10 (例えば、GGGGGGXGGGGGG、式中Xがミスマッチまたは挿入位置)、好ましくは15、20、25または30ヌクレオチド程度であり得る;
ミスマッチに隣接する一方または双方の区間に相補的であり、交換される所望のヌクレオチドを含むドナーオリゴヌクレオチド(例えば、CCCCCCYCCCCCC)を設計するステップ;
所望の位置にLNAおよびプロピンによる修飾を有するドナーオリゴヌクレオチドを、(例えば合成により)提供するステップ。修飾は状況により大幅に変動してよい。例としては、CCCmCCmCYCCmCCCmC、CCCmCCCYCCCmCCC、CCCCCCYCCCmCmCmCm、CmCmCmCmCmCYCCCCCC、CCCCCmCYCCCmCCCCCなどであり、式中CmはLNAまたはプロピンにより修飾されたヌクレオチド残基を表す。異なるアクセプター配列は、例えば、ATGCGTACXGTCCATGATには、対応するドナーオリゴヌクレオチド、例えばTACGCALGYCLGGTACTA(L=LNAまたはプロピン)が設計でき、修飾は先に要約したように変動可能である;
修飾されるDNAを、ドナーオリゴヌクレオチドと、標的ヌクレオチド交換を可能にするタンパク質、例えば、具体的には細胞のミスマッチ修復機序において機能的なタンパク質の存在下で合わせるステップ
によって達成できる。
理論に縛られるものではないが、結合親和性の改善はオリゴヌクレオチドがその標的を見出し、結合を維持する可能性を増加し、したがってTNE効率を改善すると考えられる。糖骨格または塩基の多くのさまざまな化学修飾により、結合親和性の改善がもたらされる。しかし、本発明者らは、LNA修飾オリゴヌクレオチドに焦点を合わせることを選択し、それらのTNEにおける活性がオリゴヌクレオチドにおける位置に依存したことを発見した。
本明細書で使用する場合、ドナーオリゴヌクレオチドがTNEに影響する能力は、ドナーオリゴヌクレオチド中に組み込まれた修飾ヌクレオチドの型、位置、および数または相対量に依存する。この能力は、例えば、既存のヌクレオチド間の結合親和性(または結合エネルギー(Gibbsの自由エネルギー))を1に標準化する、すなわち、ATおよびGC双方の結合に関して、結合親和性を1に標準化することによって定量できる。本発明のオリゴヌクレオチドは、各修飾ヌクレオチドの相対結合親和性(RBA)が>1である。これは、以下の式で実証される。
式中、RBAは全相対結合親和性であり、RBA(修飾)は、nヌクレオチドの長さを有する修飾オリゴヌクレオチドの相対結合親和性の和であり、RBA(未修飾)は、mヌクレオチドの長さを有する未修飾オリゴヌクレオチドの相対結合親和性の和である。例えば、100bpのオリゴヌクレオチドは10の修飾を含み、それぞれ1.1の相対結合親和性を有する。その時全RBAは、RBA=[(10*1.1)+(90*1.0)]-(100*1.0)=1に等しい。
RBAの定義は、原理上は比較するヌクレオチド鎖の長さとは独立していることに留意されたい。しかし、異なる鎖のRBAを比較する場合、大体同じ長さを有する鎖または同程度の長さの区間を用いることが好ましい。RBAは、修飾が鎖上で1つにまとまり得ることは考慮に入れないことに留意されたい。したがって、B鎖と比較して特定のA鎖の修飾がより高度であるとは、RBA(A)>RBA(B)であることを意味する。上流および下流の区間では、対応する(局所)RBA値が定義でき使用できる。修飾ヌクレオチドの位置の効果を適合するために、重み因子をRBA値に導入できる。例えば、ミスマッチに隣接するドナーオリゴヌクレオチド上の修飾ヌクレオチドの効果は、ミスマッチから5ヌクレオチド離れて位置する修飾ヌクレオチドより大きくなり得る。本発明の場面において、RBA(ドナー)>RBA(アクセプター)である。
特定の実施形態において、ドナーのRBA値はアクセプターのRBAより、少なくとも0.1大きくてよい。特定の実施形態において、ドナーのRBA値はアクセプターのRBAより、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5大きくてよい。RBA値は、分子モデリング、熱力学的測定などの、ヌクレオチドの修飾結合親和性の既存の分析に由来し得る。またはRBA値は、修飾鎖と未修飾鎖とのTmの差を測定することによって確定できる。またはRBAは、測定もしくは一連のヌクレオチドのTmを計算するための既存の式を使用した計算のいずれかによって、または計算および測定の組み合わせによって、未修飾鎖と修飾鎖とのTmの差として表し得る。
本発明によるドナーオリゴヌクレオチドは、さらなる修飾を含むことができ、ドナーが、ドナーのインターカレーションを促進するほどの、標的DNA鎖に対する親和性の増加を示すようにハイブリダイゼーション特性を改善することができる。ドナーオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼに対してさらに耐性になり、三本鎖または四本鎖構造を安定させるために、さらに修飾されてもよい。本発明のLNA修飾ドナーオリゴヌクレオチドの修飾は、ホスホロチオエート修飾、2-OMe置換、オリゴヌクレオチドの3および/または5'末端におけるさらなる型のLNAの使用、PNA(ペプチド核酸)、リボヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドとアクセプター鎖とのハイブリッドの安定性を改善する、好ましくは亢進する他の塩基を含むことができる。
このような修飾の中で特に有用なのはPNAであり、これらは、オリゴヌクレオチドのデオキシリボース骨格をペプチド骨格で置換したオリゴヌクレオチド類似体である。このようなペプチド骨格の1つは、アミド結合を介して連結したN-(2-アミノエチル)グリシンの反復単位で構成される。ペプチド骨格の各サブユニットは、核酸塩基(または設計された「塩基」)に結合し、これは天然に存在する、天然に存在しない、または修飾された塩基であってもよい。PNAオリゴマーは、DNAまたはRNAのいずれかより高い親和性を有する相補的なDNAまたはRNAに配列特異的に結合する。したがって、得られたPNA/DNAまたはPNA/RNA二重鎖は、融解温度(Tm)が高い。さらに、PNA/DNAまたはPNA/RNA二重鎖のTmは、DNA/DNAまたはDNA/RNA二重鎖より塩濃度に対して感度が非常に低い。さらにPNAのポリアミド骨格は、酵素的分解に対してもより耐性が高い。PNAの合成は、例えば、WO92/20702およびWO92/20703に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他のPNAは、例えば、WO93/12129および1996年7月23日発行の米国特許第5,539,08号に例示されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、多くの科学出版物は、PNAの合成ならびにそれらの特性および使用を記載している。例えば、Patel、Nature、1993年、365、490; Nielsenら、Science、1991年、254、1497; Egholm、J. Am. Chem. Soc、1992年、114、1895; Knudsonら、Nucleic Acids Research、1996年、24、494; Nielsenら、J .Am. Chem. Soc、1996年、118、2287; Egholmら、Science、1991年、254、1497; およびEgholmら、J Am. Chem. Soc、1992年、114、9677を参照されたい。
本発明のオリゴヌクレオチドの有用なさらなる修飾は、Epoch Biosciences Germanyから入手可能なスーパーAおよびスーパーTとしても知られている。これらの修飾ヌクレオチドは、DNA二重鎖における塩基の積み重ねを改善すると考えられている、DNAの主溝にはまる追加の置換基を含む。
さらなる実施形態において、本発明による修飾オリゴヌクレオチドに加えて、アクセプター鎖に対するオリゴヌクレオチドの親和性をさらにより亢進する、さらなる修飾がオリゴヌクレオチドに導入された場合に、有利な結果が達成できる。したがって、C5-プロピン修飾ピリミジンおよび/またはC7プロピニル修飾プリンをさらに含む、本発明によるLNA修飾オリゴヌクレオチドが、TNEの効率を有意に改善することが発見された。
本発明のドナーオリゴヌクレオチドは、キメラもまた作製し、すなわち、DNA、RNA、LNA、PNAまたはこれらの組み合わせの区間もまた含むことができる。
したがって、特定の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、他の、場合により非メチル化された、修飾ヌクレオチドをさらに含む。
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドはヌクレアーゼに対して耐性である。このことは、オリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼによる分解から防ぎ、ドナーオリゴヌクレオチドがその標的(アクセプター分子)を見つけ得る機会を増大させるため、有利であり得る。
本発明の特定の実施形態において、ミスマッチの位置でオリゴヌクレオチド中のヌクレオチドを修飾できる。ミスマッチが修飾できるか否かは、標的ヌクレオチド交換の機序の正確さまたはドナー鎖とアクセプター鎖との間の親和性の差を使用する、細胞のDNA修復機序の機序の正確さに、かなりの程度まで依存する。ミスマッチの隣または近辺の他の修飾位置の正確な場所に関しても同じことが言える。しかし、本明細書に提示された開示に基づき、このようなオリゴヌクレオチドは、本明細書の他の場所に記載されたような、適切なオリゴヌクレオチドのための試験手順を考慮に入れて、容易に設計および試験できる。特定の実施形態において、ミスマッチの位置でヌクレオチドは修飾されない。特定の実施形態において、修飾はミスマッチから1ヌクレオチド離れた位置であり、好ましくは、ミスマッチから2、3、4、5、6または7ヌクレオチド離れた位置である。特定の実施形態において、修飾はミスマッチから下流の位置にある。特定の実施形態において、修飾はミスマッチから上流の位置にある。特定の実施形態において、修飾は、ミスマッチから10bpから10kB、好ましくは50から5000bp、より好ましくはミスマッチから100から500bpにある。
ドナーとして使用するオリゴヌクレオチドは、長さが変動してもよいが、一般的には10および500ヌクレオチドの長さで変動し、11から100ヌクレオチドが好ましく、好ましくは15から90、より好ましくは20から70、最も好ましくは30から60ヌクレオチドの間の長さで変動する。
一態様において、本発明は、二重鎖アクセプターDNA配列の標的改変のための方法に関し、この方法は、二重鎖アクセプターDNA配列をドナーオリゴヌクレオチドと組み合わせるステップを含み、この二重鎖アクセプターDNA配列は、第1DNA配列および第1DNA配列の相補体である第2DNA配列を含み、このドナーオリゴヌクレオチドは、改変される二重鎖アクセプターDNA配列に対して、好ましくは第1DNA配列に対して少なくとも1つのミスマッチを含むドメインを含み、このドナーオリゴヌクレオチドの区間は、少なくとも1つのLNAおよび少なくとも1つのプロピニル化ヌクレオチドで、オリゴヌクレオチド中のその位置で未修飾ヌクレオチドと比較して第1DNA配列に対して高度の親和性を表すように、標的ヌクレオチド交換ができるタンパク質の存在下で修飾され、このLNAはミスマッチに向かって少なくとも1ヌクレオチド離れて位置する。
本発明は、その最も広範な形態において、ヒト、動物、植物、魚類、爬虫類、昆虫、真菌、細菌などのすべての種類の生物に、一般的に適用可能である。本発明は、ゲノムDNA、直鎖DNA、人工染色体、核染色体DNA、オルガネラ染色体DNA、BAC、YACに由来するDNAなどの、任意の型のDNAの修飾に対して適用可能である。本発明は、インビボならびにエクスビボにおいて実施可能である。
本発明は、その最も広範な形態において、細胞の改変、野生型への回復による突然変異の修正、突然変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾に関する多くの目的に適用可能である。
本発明はさらに、細胞の改変、野生型への回復による突然変異の修正、突然変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾、ミスマッチ修復、ならびに遺伝子突然変異、標的遺伝子の修復および遺伝子のノックアウトを含む、(植物)遺伝物質の標的改変のための、原則として本明細書の先に記載したようなオリゴヌクレオチドの使用にも関する。
本発明はさらに、本明細書の他の場所に定義した、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを、場合により標的突然変異誘発を誘導できる、特にTNE可能なタンパク質と組み合わせて含むキットにも関する。
本発明はさらに、本発明の方法により得られる修飾遺伝物質、修飾遺伝物質を含む細胞および生物、そのようにして得られる植物または植物の一部にも関する。
オリゴヌクレオチドの送達は、エレクトロポレーションまたは核もしくは細胞質のどちらかに送達できる他の既存の技術を介して達成できる。本発明の方法のインビトロ試験は、とりわけWO01/87914、WO03/027265、WO99/58702、WO01/92512に記載されたような無細胞系を使用して達成できる。
本発明は、その最も広範な形態において、細胞の改変、野生型への回復による突然変異の修正、突然変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾に関する多くの目的に適用可能である。
本発明はさらに、細胞の改変、野生型への回復による突然変異の修正、突然変異の誘導、コード領域の破壊による酵素の不活性化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾、ミスマッチ修復、ならびに遺伝子突然変異、標的遺伝子の修復および遺伝子のノックアウトを含む、(植物)遺伝物質の標的改変のための、原則として本明細書の先に記載したようなオリゴヌクレオチドの使用にも関する。
本発明はさらに、本明細書の他の場所に定義した、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを、場合により標的突然変異誘発を誘導できる、特にTNE可能なタンパク質と組み合わせて含むキットにも関する。
本発明はさらに、本発明の方法により得られる修飾遺伝物質、修飾遺伝物質を含む細胞および生物、そのようにして得られる植物または植物の一部にも関する。
本発明は、植物において除草剤耐性を提供するための、本発明のLNAおよびプロピンにより修飾されたオリゴヌクレオチドを使用するTNE法の使用に特に関する。特に本発明は、除草剤、特にスルホニル尿素系除草剤(例えば、クロルスルフロン)およびグリホセートに対する耐性を提供された植物に関する。
本発明はさらに、二重鎖DNAの標的ヌクレオチド交換の効率を増加させるための方法に関し、この方法は(a)前記二重鎖の第1DNA配列とハイブリダイズできるドメインを含むオリゴヌクレオチドを得るステップであり、前記ドメインが(i)第1DNA配列に対する少なくとも1つのミスマッチ、および(ii)結合親和性が増加した少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むステップと、(b)前記修飾ヌクレオチドと前記ミスマッチとの距離を約8個以下のヌクレオチドに減少させるステップと、(c)標的ヌクレオチド交換における使用のためにオリゴヌクレオチドを回収するステップとを含む。この方法は、オリゴヌクレオチドに関して従来の技術において与えられた制限、すなわち、ミスマッチとオリゴヌクレオチドとの距離が少なくとも8ヌクレオチドでなければならないという要件は、本発明のオリゴヌクレオチドの要件ではないという観察結果に基づく。添付の実施例から理解できるように、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドは、未修飾オリゴヌクレオチドよりもTNEにおいてより有効である。
本発明はさらに、二重鎖DNAの標的改変のためのオリゴヌクレオチドに関し、前記オリゴヌクレオチドは、前記二重鎖の第1DNA配列とハイブリダイズできるドメインを含み、前記ドメインは(a)第1DNA配列に対する少なくとも1つのミスマッチ、(b)結合親和性が増加した少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む少なくとも1つの区間を含み、前記修飾ヌクレオチドはLNAまたはプロピンにより修飾されたヌクレオチドである(本明細書の他の部分に記載したように、前記修飾ヌクレオチドは、前記ミスマッチから多くても8ヌクレオチドに位置する)。特定の実施形態において、この区間は、本明細書の他の場所で記載されたようなLNAおよびプロピンにより修飾されたヌクレオチドの中から独立して選択された2つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、LNAは、ミスマッチから少なくとも1ヌクレオチドに位置するが、8ヌクレオチドを超えて位置しない。特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、前記ミスマッチから多くても8ヌクレオチドに位置する。特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、前記ミスマッチから多くても6ヌクレオチドに位置する。特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、前記ミスマッチから多くても4ヌクレオチドに位置する。特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、前記ミスマッチから多くても2ヌクレオチドに位置する。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、二重鎖の第1DNA配列とハイブリダイズできるドメインを含み、前記ドメインは2つのLNAを含む。さらに、二重鎖DNAの標的ヌクレオチド交換のためのオリゴヌクレオチドは、(a)修飾ヌクレオチドおよび(b)前記二重鎖DNAの鎖に対するミスマッチを含み、前記修飾ヌクレオチドは前記ミスマッチより約1ヌクレオチド離れて位置する。
標的ヌクレオチド交換の概略図である。交換されるヌクレオチド(X)を含むアクセプター二重鎖DNA鎖を、挿入されるヌクレオチド(Y)を含む、LNAおよびC5-プロピンピリミジンにより修飾されたドナーオリゴヌクレオチド(概略的にNNNmNNNmYNNmNNmとして示す)と接触させる。アクセプター/ドナー構造を、TNEが可能な環境に、または少なくとも、無細胞酵素混合物もしくは無細胞抽出物として知られる、TNEの実施を可能にするタンパク質に供する、または接触させる(とりわけ、WO99/58702、WO01/73002を参照されたい)。
5-プロピニル-デオキシウラシル、5-プロピニル-デオキシシトシン、2' -デオキシ-7-プロピニル-7-デアザ-アデノシンおよび2'デオキシ-7-プロピニル-デアザ-グアノシンおよびロックト核酸の化学構造を示す図である。
除草剤耐性トマトカルスから増幅したALS P186/184コドンの配列分析を示す図である。個々のPCR産物をクローン化し、今回配列決定した。
(実施例)
(実施例1)
無細胞系におけるTNE
C5-プロピンピリミジン、LNAヌクレオチドまたはこれらの組み合わせを含むオリゴヌクレオチドは、Trilink Biotech、GeneLinkまたはRibotaskから購入した。他の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドは、Eurogentecから購入した。
使用したオリゴヌクレオチドの配列を、Table1(表1)に示す。実験に使用したプラスミドは、カナマイシンおよびカルベニシリン双方に対する耐性を与える遺伝子を含むpCR2.1(Invitrogen)の誘導体であった。プラスミドKmY22stopは、カナマイシンのORF中のコドンY22において、TATをTAGに突然変異させる。プラスミドKmY22Δにおいて、Y22コドン(TAT)の第3のヌクレオチドを欠失して、フレームシフトを起こさせた。双方のプラスミドにおいて、カナマイシンのORFは同じ位置で突然変異している。したがって、1つのオリゴヌクレオチドを、KmY22stopまたはKmY22Δのいずれかと共にインキュベートすることによって、それぞれヌクレオチドの置換または挿入を起こすその効率に関して試験できる。
無細胞アッセイ
無細胞アッセイを以下のように実施した。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(生態型Col-0)からつぼみを収集し、窒素化で粉砕した。200μlのタンパク質分離バッファー(20mMのHEPES pH7.5、5mMのKCl、1.5mMのMgCl2、10mMのDTT、10%(v/v)のグリセロール、1%(w/v)のPVP)を加えた。植物の残骸を、14k RPMで30分間遠心分離器にかけることによってペレットにし、上清を-80℃で保存した。タンパク質濃度を、NanoOrange Kit (Molecular Probes, Inc)を使用して測定した。通常の分離により、およそ3〜4μg/μlのタンパク質濃度が得られた。無細胞反応液は、以下の成分を含む。1μgのプラスミドDNA(KmY22stopまたはKmY22Δ)、100ngのオリゴヌクレオチド、30μgの全植物タンパク質、4μlの断片化したサケ***DNA(3μg/μl)、2μlプロテアーゼ阻害剤混合物(50×conc: コンプリートEDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤、Roche Diagnostics)、50μlの2×無細胞反応用バッファー(400mMのTris pH7.5、200mMのMgCl2、2mMのDTT、0.4mMのスペルミジン、50mMのATP、CTP、GTP、UTPをそれぞれ2mM、dNTPをそれぞれ0.1mMおよび10mMのNAD)、水で総容量100mlに仕上げた。混合物を、37℃、1時間インキュベートした。その後、プラスミドDNAを以下のように分離した。100μlのH2Oを各反応液に加えて容量を増やし、その後200μlのアルカリ性緩衝フェノール(pH8〜10)を加えた。これを短時間ボルテックスにかけ、その後13k rpmで3分間遠心分離器にかけた。上方の水相を新しい管に移し、200μlのクロロホルムを加えた。これを短時間ボルテックスにかけ、その後13k rpmで3分間回転させ、水相を新しい管に移した。DNAを、0.7量の2-プロパノールを加えることによって沈殿させ、ペレットをTEに再懸濁した。共精製された任意のオリゴヌクレオチドを取り除くために、DNAを、Qiagen PCR精製カラムに通し、最終容量30μlのプラスミドDNAを溶出した。2μlのプラスミドDNAを、18μlのDH10B(Invitrogen)エレクトロコンピテントセルにエレクトロポレーションで入れた。エレクトロポレーション後、細胞を、SOC培地で37℃、1時間回復させた。この期間の後で、カナマイシンを100μg/mlの濃度まで加え、細胞をさらに3時間インキュベートした。エレクトロポレーション効率は、カルベニシリンを含む培地に播種した、10-4から10-5希釈のエレクトロポレーションから得たコロニーの数を数えることによって計算した。TNE効率は、カナマイシン耐性コロニーの数を、カルベニシリン耐性化コロニーの数から計算した形質転換細胞の総数で割ることによって計算した。
結果
KmY22stopを使用した無細胞実験
Table1(表1)に示したオリゴヌクレオチドに組み込まれた修飾ヌクレオチドを以下に示す。
メチルホスホン酸エステル(MP)は、天然に存在する負に帯電したリン酸ジエステル結合の代わりに、ヌクレアーゼ耐性メチルホスホン酸エステル結合を含む非イオン性核酸類似体である。メチルホスホン酸エステルは、哺乳動物細胞のアンチセンス研究において広範囲に使用されている。
C-5メチル化ピリミジンデオキシヌクレオチド(5Me-dC)は、それらの対応するピリミジン誘導体より安定した二重鎖を形成することで公知である。例えば、5-メチル-2'-デオキシシチジン(5-Me-dC)の置換は、Tmが1.3℃/置換で上昇することが示されている。5-(1-プロピニル)-2'-デオキシウリジン(pdU)および5-(1-プロピニル)-2'-デオキシシチジン(pdC)の合成は、双方の置換が二重鎖の安定性を亢進することが実証されている。ピリミジンのC5位におけるメチルと1-プロピンとの置換は、プロピン基が複素環塩基に対して平面であるため、塩基の積み重ねを向上させる。同時に、プロピンは、メチルより疎水性であり、この特性が結合の増加にさらに寄与している。二重鎖の結合は、1.7℃/pdU残基および1.5℃/pdC残基で亢進される。
モルホリノオリゴヌクレオチドは、リボースがモルホリノ部分によって置き換えられ、ホスホロアミデートのサブユニット間結合が、リン酸ジエステル結合の代わりに使用されたDNA類似体である。モルホリノオリゴヌクレオチドは、ゼブラフィッシュの遺伝子ノックアウト研究に広範囲に使用される(Genesis、Vol 30、2001年)。モルホリノオリゴヌクレオチドは、突然変異β-グロブリン前駆体mRNAの異常なスプライシングの修正にも使用されている(Lacerraら、2000年、Proc. Natl .Acad. Sci . USA 97、9591〜9596頁)。
Wengelおよび共同研究者(Koshkinら、1998年、Tetrahedron 54、3607〜3630頁; Singhら、1998年、Chem. Commun. 455〜456頁)ならびにImanishiおよび共同研究者(Okibaら、1998年、Tetrahedron Lett. 39、5401〜5404頁)により最初に記載されたロックト核酸(β-D-LNA)は、高次構造上の制限を受けたヌクレオチド誘導体である。ロックト核酸は、高次構造的柔軟性を減少させ、RNA-様のC3'-エンド高次構造をヌクレオチドの糖部分に与える、メチレン2'-O、4'-C結合を含む(Petersenら、2002年、J. Am. Chem. Soc. 124、5974〜5982頁)。これは、DNA標的に対する親和性を非常に亢進し、未修飾の二重鎖と比較して、オリゴヌクレオチドのTmを4〜9℃/導入LNAモノマーだけ改善する(Wengel, J. 2001年、Crooke, S. T. (編)、「Antisense Drug Technology: Principles, Strategies and Applications.」Marcel Dekker, Inc.、New York、Basle、pp.339〜357頁)。β-D-LNAの立体異性体であるα-L-LNAの特性が研究されている。β-D-LNAが相補的DNAによりA型にロックされているが、α-L-LNAとDNAとの間の二重鎖は、二本鎖DNAの自然な形態であるB型をとることは周知である(Nielsenら、2002年、Chem. Eur. J. 8、3001〜3009頁)。それらの結合親和性の増加により、これらのLNA型は、双方ともオリゴヌクレオチドのアンチセンス特性の改善を示していた(Kurreckら、2002年、Nuc. Acids. Res. 30, 1911〜1918頁; Friedenら、2003年、Nuc. Acids Res. 31、6365〜6372頁)。
6-クロロ-2-メトキシアクリジン分子を、末端または配列内のいずれかに担持するオリゴヌクレオチドは、二重らせんの中に効率的にインターカレートする能力を有する。したがって、このインターカレーターは、さらなる結合エネルギーを提供することによってハイブリッドの安定性を増加させる。アクリジン標識オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドのハイブリッドの安定性が重要である適用に使用されている。オリゴヌクレオチド3'末端への染料の付加もまた、オリゴヌクレオチドをエキソヌクレアーゼの分解から保護する。
チミンに結合した2-アミノアデニンは、さらなる水素結合の形成によるA: T およびG: C塩基対の安定の間の安定な中間体である。
2'-O-Meイノシンなどの2'-O-メチルヌクレオチドは、さまざまなリボヌクレアーゼおよびデオキシリボヌクレアーゼに対して対性であり、相補配列とさらにより安定なハイブリッドを形成する。
すべてのオリゴヌクレオチドは同じ配列を共有しており、TNEによってカナマイシンのORFのY22のトップコドン(TAG)をTAC(チロシン)に変換するように設計した。ミスマッチヌクレオチドは下線を引いてある。小文字は未修飾DNAを表し、一方大文字は修飾ヌクレオチド(塩基、糖もしくはリン酸骨格の修飾またはそれらの組み合わせ) およびオリゴヌクレオチド中のそれらの位置を表す。各オリゴヌクレオチド中に含まれる修飾ヌクレオチドを記載する。各オリゴヌクレオチドのTNE効率を、DNAのみのオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)のTNE効率と比較したTNEの倍数増加(または減少)として表す。各オリゴヌクレオチドに対して少なくとも4回繰り返して実施し、実験の各シリーズは、対照としてオリゴ1の複数回の繰り返しをさらに含んだ。同じヌクレオチド上にあるさまざまな型の修飾ヌクレオチドを識別するために、1つの型の修飾オリゴヌクレオチドを太字で示す(例えば、オリゴヌクレオチド9、10、21および22)。pdC、5-(1-プロピニル)-2'-デオキシシチジン; pdU、5-(1-プロピニル)-2'-デオキシウリジン; LNA、ロックト核酸; MP、メチホスホン酸エステル結合; 5Me-dC、5-メチル-デオキシシチジン。対照実験において、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質を反応から省いた場合に、カナマイシン耐性コロニーは得られなかった。
オリゴヌクレオチドは、1つのヌクレオチドの置換または挿入を、それぞれKmY22stopまたはKmY22Δのプラスミドに起こし、ORF機能を回復するように設計した。この実験により、ssオリゴヌクレオチド中のβ-D-LNAヌクレオチドの数および位置が妥当であることが実証された。β-D-LNAヌクレオチドがミスマッチヌクレオチドの隣に配置されたオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)は、未修飾オリゴヌクレオチドと比較して低いTNE活性を示す。β-D-LNAヌクレオチドの数を増やすと(オリゴヌクレオチド3および4)、生物学的に不活性なオリゴヌクレオチドをもたらす。しかし、β-D-LNAヌクレオチドが、ミスマッチヌクレオチドを含む3または4の正常なDNAヌクレオチドによって隔てられた場合(オリゴヌクレオチド5および6)、TNE効率の上昇が観察される。α-L-LNAヌクレオチドを導入したDNAの高次構造が多くなれば、それらが、β-D-LNAと同じ程度またはおそらくそれ以上にTNEを亢進するであろうことが期待できる。しかし、オリゴヌクレオチド7および8は本発明者らのアッセイにおいてほとんど活性でないことが示され、β-D-LNA立体異性体がTNEの改善には好ましいことが実証された。2'-アミノ-LNAは、さらなるDNAの相互作用を提供できるLNAヌクレオチドに追加の基を付加することにより、他のLNA型と比較して優れたDNA結合を示す(Singhら、(1998年) J. Org. Chem. 63、10035)。しかし、再度、オリゴヌクレオチド9および10の結合親和性がおそらく亢進されるが、試験した2'-アミノ-LNA誘導体はこれらのオリゴヌクレオチドのTNE活性を除去し、したがって好ましくない。オリゴヌクレオチド11、12、13および16は、それらがアンチセンスオリゴヌクレオチドを強力に亢進することとは対照的に、TNEにおいて活性でなかった。2 2'-O-Meイノシンヌクレオチドをいずれかの末端に含むオリゴヌクレオチド14は、未修飾オリゴヌクレオチドと同じくらいに活性であるが、このオリゴヌクレオチドは、2'-O-Meイノシンヌクレオチドがミスマッチヌクレオチドに隣接した場合(オリゴヌクレオチド15)、不活性になる。インターカレーターの6-クロロ-2-メトキシアクリジンもまた、オリゴヌクレオチドを不活性にする(オリゴヌクレオチド17および18)。本発明者らのデータにより、C5-プロピンピリミジンを含むオリゴヌクレオチドが、オリゴヌクレオチド中の修飾ピリミジンの数に少なくとも部分的に依存するTNEにおいて、亢進を示すことが示された。C5-メチルシトシンを含む等価のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド13)が不活性であることを考えると、この結果は驚くべきことであった。したがって、本発明者らが観察した効果は、ピリミジンのC5に結合した基に完全に依存している。最終的に、1つのオリゴヌクレオチド上において、最適な間隔をあけたβ-D-LNAヌクレオチドとC5-プロピンピリミジンとの組み合わせは、未修飾オリゴヌクレオチドのTNE頻度を上回り、TNE頻度において平均13倍の亢進を示した。
KmY22Δを使用する無細胞実験
最適なオリゴヌクレオチドの設計を、1つのヌクレオチドを挿入し、プラスミドKmY22Δ中のカナマイシンのORFの機能を回復するそれらの能力に関してさらに試験した(Table2(表2)を参照されたい)。未修飾DNAオリゴヌクレオチドを使用して、本発明者らは、TNEを介して挿入を導入するその能力が、置換を起こすその能力のおよそ5分の1であることを発見した。本発明者らが、LNAおよび/またはC5-プロピンピリミジンヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド5、19および20を、挿入を導入するその能力に関して試験した場合、置換についての本発明者らのデータに反して、これらの修飾オリゴヌクレオチドは、未修飾オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)により得られた効率を超えては、効率を亢進しなかった。しかし、オリゴヌクレオチド21または22を使用した場合、ヌクレオチド挿入効率の相乗的増加が観察された。このことは、LNAおよびC5-プロピンピリミジンの双方が、同じオリゴヌクレオチド上に双方とも存在し、ヌクレオチドが標的中に挿入されるTNEの効率を亢進することが好ましいことを実証する。さらに、オリゴヌクレオチド20とオリゴヌクレオチド21との間に見られる効率の差は、オリゴヌクレオチド中のC5-プロピンピリミジンヌクレオチドの数が、最適なヌクレオチド挿入効率を得るために最大化できることを示している。
無細胞TNE事象の配列分析
本研究において、すべてのオリゴヌクレオチドは、KmY22stop中のストップコドン(TAG)をTACに変換し、カナマイシンのORFの機能を回復するように設計した。修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの修復の忠実性を確立するために、プラスミドを、オリゴヌクレオチド1(未修飾DNA)またはすべてのピリミジンヌクレオチドがC5-プロピンピリミジンによって置換されたオリゴヌクレオチド18のいずれかにより修復された後で得られたカナマイシン耐性コロニーから精製した。TNE反応がオリゴヌクレオチド1により実施された場合、配列決定された40すべてのプラスミドが、Y22において予測されたTAC修復事象を示した。しかし、オリゴヌクレオチド20を使用した場合、28/38がY22においてTACを示したが、残りの10のプラスミドはこの位置にTATを含んだ。したがって、C5-プロピンピリミジンはTNE頻度を亢進するが、それらはまた、修復反応の結果に影響を及ぼし、エラーを起こしやすい傾向がある。
インビトロTNEアッセイの無細胞系を使用して、C5-プロピンピリミジンヌクレオチドおよびミスマッチヌクレオチドの周辺で特定の間隔をあけたLNAの双方を含むオリゴヌクレオチドが、正常なDNAオリゴヌクレオチドを使用して得られたTNE効率と比較して有意に高いTNEレベルを示すことが実証された。この亢進は14倍ほどであり得る。この亢進は、C5-プロピンピリミジンヌクレオチドの割合が最大になるような、ピリミジンに富んだ配列を標的とすることよってさらに改善できる。効率は、結合親和性をC5-プロピンピリミジンヌクレオチドよりさらに大きい程度に亢進する7-プロピニルプリンヌクレオチドの使用を介してさらに増加できる。(HeおよびSeela、2002年 Nucleic Acids Res. 30: 5485〜5496頁)。プロピンプリンおよびピリミジンの組み合わせにより、すべてのヌクレオチドが塩基上にプロピニル基を担持するオリゴヌクレオチドの作製が可能になる。
(実施例2)
タバコにおけるTNE
タバコのシュート培養
この実施例の原料物質は、インビトロシュート培養のタバコであり、ガラス瓶(750ml)において、MS20培地で、温度25/20℃(昼/夜)において無菌で成長させ、光束密度は80μE.m-2.s-1(光周期16/24時間)である。MS20培地は、2%(w/v)のショ糖、ホルモン無添加、および0.8%のDifco寒天を含む、基礎MurashigeおよびSkoog培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962年)である。シュートは、3週間ごとに新鮮な培地に継代培養する。
プロトプラストの分離
葉肉プロトプラストの分離のために、3〜6週齢のシュート培養の十分に展開した葉を収穫する。葉を1mmの厚みの薄片にスライスし、次いでこれを、30分の予備原形質分離処理用の、45mlのMDE基礎培地を含む大型(100mm×100mm)のペトリ皿に移した。MDE基礎培地は、全量900ml中に、0.25gのKCl、1.0gのMgSO4・7H2O、0.136gのKH2PO4、2.5gのポリビニルピロリドン(MW10,000)、6mgナフタレン酢酸および2mgの6-ベンジルアミノプリンを含んだ。溶液のオスモル濃度は、ソルビトールで600mOsm.kg-1に調整し、pHは5.7に調整する。
予備原形質分離処理後、5mlの酵素のストックを各ペトリ皿に加える。酵素のストックは、750mgのセルラーゼOnozuka R10、500mgのドリセラーゼおよび250mgのマセロザイムR10/100mlからなり、Whatman紙でろ過し、ろ過滅菌する。このペトリ皿を密閉し、一晩暗所で25℃において、細胞壁の消化のための運動はせずにインキュベートする。
翌朝、プロトプラスト懸濁液を、500μmおよび100μmの篩を介して250mlのエルレンマイヤーフラスコに移し、等量のKCl洗浄培地と混合し、50mlの遠心管中で、85×gで10分間遠心分離器にかける。KCl洗浄培地は、2.0gのCaCl2・2H2O/リットルおよびオスモル濃度を540mOsm.kg-1にするために十分量のKClからなった。
遠心分離ステップを2回反復し、まず、MS培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962年)の通常の半分の濃度の主要栄養素、2.2 gのCaCl2・2H2O/リットル、オスモル濃度を540 mOsm.kg-1にする量のマンニトールであるMLm洗浄培地に再懸濁したプロトプラストを用い、最後に、マンニトールをスクロースに置き換えたMLm培地であるMLs培地に再懸濁したプロトプラストを用いる。
プロトプラストをスクロース培地中で浮遊する群れから回収し、等量のKCl洗浄培地に再懸濁する。それらの密度を、血球計算器を使用して数える。続いて、プロトプラストを10mlのガラス管中で、85×gで5分間、再度遠心分離器にかけ、ペレットを、1×105の密度でエレクトロポレーション培地中に再懸濁する。すべての溶液を無菌に保ち、すべての操作は無菌状態で実施する。
ALS標的遺伝子およびオリゴヌクレオチドの設計
タバコアセト乳酸合成酵素(ALS)のSurA遺伝子(Gene Bank Accession X07644)において、P194QおよびW571Lのアミノ酸変換は、ALSタンパク質を、スルホニル尿素系除草剤のクロルスルフロンに対して非感受性にする。2つのオリゴヌクレオチドを、これらのアミノ酸をコードするSurAのコドンに塩基対突然変異を導入するために設計した。配列番号23はP194Qの突然変異を起こし、配列番号24はW571Lの突然変異を起こすであろう。双方のオリゴクレオチドにおいて、点突然変異を意図する位置に対応する、オリゴヌクレオチド配列番号231中のデオキシチミジンミスマッチヌクレオチドを除いて、すべてのCおよびT残基がプロピニル化(このようなオリゴヌクレオチドでは、デオキシチミジンが5-(l-プロピニル)-2'-デオキシウリジンによって置き換えられている)されている。プロピニル化シトシンまたはプロピニル化ウラシルのヌクレオチドは、配列番号23および配列番号24においてCpまたはUpで示す。さらに、ミスマッチヌクレオチドから両側に離れた2つのヌクレオチドの位置に、LNA残基が組み込まれている(配列番号23および配列番号24においてA^、T^、C^またはG^で示す)。対照の一本鎖オリゴヌクレオチドは、同じヌクレオチド配列を有する正常なDNA残基(C5プロピンピリミジンもLNA残基も含まない)のみからなる。
CodA標的遺伝子およびオリゴヌクレオチドの設計
特定の位置で1つの塩基を変化させることにより1つのアミノ酸の変換がもたらされ、順にスルホニル尿素系除草剤に対する耐性が提供されるので、塩基対の変換を目的とするTNEのために、ALS遺伝子は有用な選択可能なマーカー遺伝子である。1つの塩基の挿入または欠失(indel)を起こすことを目的とするTNEのために、1つの塩基のindelは、遺伝子のオープンリーディングフレームのフレームシフトを起こし、したがって非機能性タンパク質をもたらすと思われるので、ALSは選択可能なマーカー遺伝子として有用ではない。スルホニル尿素系除草剤に関する選択も、したがって不可能である。
シトシンデアミナーゼをコードする細菌遺伝子のCodAは、選択可能な陰性マーカーとして使用できる(Stougaard、Plant Journal 3: 755〜761頁、1993年)。この遺伝子を発現し、5-フルオロシトシン(5-FC)に曝された植物細胞は、CodAの遺伝子産物により触媒された5-FCの脱アミノ化により形成される、5-フルオロウラシル(5-FU)によるチミジル酸合成酵素経路の不可逆阻害により死滅するであろう。オリゴヌクレオチドの作用によりCodA配列に導入されたフレームシフト突然変異は、遺伝子を非機能性にし、このような植物細胞は5-FCに対して耐性である。
この実施例において、CodA陰性選択系を、オリゴヌクレオチドの作用によるindel突然変異を受けたタバコ細胞の選択に利用する。この目的を達成するために、Stougaard (Plant Journal 3: 755〜761頁、1993年)にあるようなアグロバクテリウム(Agrobacterium)仲介形質転換によって、CaMV 35Sプロモーターから細菌CodA遺伝子を発現する、タバコSR1植物を作製した。形質転換植物を、5-FCついての修正反応に関して試験し、上記のようにインビトロシュート培養として保存した。この実施例において、CodA遺伝子の特異型を使用し、植物細胞においてその翻訳効率を亢進するための植物コドンの使用を最適化した。コドン最適化CodA遺伝子の配列は、
である。
オリゴヌクレオチドを、CodA遺伝子の5'末端の位置に1つの塩基対の挿入を導入するように設計した。プロピニル化シトシンまたはプロピニル化ウラシルのヌクレオチドは、CpまたはUpで示す。意図する挿入に対応するヌクレオチド(挿入ヌクレオチド、下線を引いてある)から両側に2ヌクレオチド離れた位置に、LNA残基が組み込まれている(A^、T^、C^またはG^で示す)。対照の一本鎖オリゴヌクレオチドは、同じヌクレオチド配列を有する、正常なDNA残基 (C5プロピンピリミジンもLNA残基も含まない)のみからなる。
プロトプラストのエレクトロポレーション
エレクトロポレーション培地としてPHBS(10mMのHepes、pH7.2; 0.2Mのマンニトール、150mMのNaCl; 5mMのCaCl2)を使用し、エレクトロポレーション混合物中のプロトプラストの密度は約1×106/mlであり、エレクトロポレーションの設定は、電荷250V(625V cm-1)および容量800μFで、パルスと培養の間の再生時間は10分である。各エレクトロポレーションに関して、約1〜2μgのオリゴヌクレオチド/800μlエレクトロポレーション=25μg/mlを使用する。
プロトプラストの再生および選択
エレクトロポレーション処理後、プロトプラストを、再生のため30分間氷上に置き、その後、T0培養培地に1×105プロトプラストml-1の密度で再懸濁する。T0培養培地は、950mgのKNO3、825mgのNH4NO3、220mgのCaCl2・2H2O、185mgのMgSO4・7H2O、85mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、Heller培地(Heller,R.、Ann Sci Nat Bot Biol Veg 14: 1〜223、1953年)に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR. H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951年)に従ったビタミン、2%(w/v)のスクロース、3mgのナフタレン酢酸、1mgの6-ベンジルアミノプリンおよびオスモル濃度を540mOsm.kg-1にする量のマンニトールを含んだ(/リットル、pH5.7)。
T0培養培地に再懸濁したプロトプラストを、その後、等量のT0培養培地中の1.6%のSeaPlaque Low Melting Temperature Agarose溶液と混合し、液体をオートクレーブにかけた後にウォーターバスで30℃に維持する。混合後、懸濁液の2.5mlアリコートを穏やかにピペットで5cmのペトリ皿に取る。この皿を、密閉し、暗所において25/20℃(16/24時間光周期)でインキュベートする。
暗所において8〜10日インキュベートした後で、アガロース培地を6つの等しいパイ状部分に切断し、これらを、それぞれ22.5mlの液体MAP1AO培地を含む10cmのペトリ皿に移す。この培地は、950mgのKNO3、825mgのNH4NO3、220mgのCaCl2・2H2O、185mgのMgSO4・7H2O、85mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、もともとの1/10の濃度のMurashigeおよびSkoogの培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962年)に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR. H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951年)に従ったビタミン、6mgのピルビン酸塩、リンゴ酸、フマル酸およびクエン酸をそれぞれ12mg、3%(w/v)のスクロース、6%(w/v)のマンニトール、0.03mgのナフタレン酢酸および0.1mgの6-ベンジルアミノプリン(/リットル、pH5.7)からなった。TNE事象に成功したコロニーを選択する目的のために、41nMのクロルスルフロン、または250μg.ml-1の5-FCをさらに培地に加える。ペトリ皿を25/20℃で、微光(光束密度20μE.m-2.s-1)下で、光周期16/24時間においてインキュベートする。2週間後、ペトリ皿を完全光(80μE.m-2.s-1)に移す。この選択期間中、大部分のプロトプラストは死滅した。オリゴヌクレオチドの作用を介して、標的遺伝子において、除草剤または5-FCに対する耐性を授けるように塩基の変化が起きたプロトプラストのみが、***し、プロトプラスト由来の微小コロニーに増殖する。
分離の6から8週間後、プロトプラスト由来コロニーをMAP1培地に移す。この時までにアガロースビーズを十分バラバラにし、広口の滅菌ピペットを用いて微小コロニーを移す、またはそれらを1つ1つ鉗子で移す。MAP1培地は、MAP1AO培地と同じ組成を有するが、6%の代わりに3%(w/v)のマンニトールおよび46.2mg.l-1のヒスチジンを有する(pH5.7)。それを、0.8%(w/v)のDifco寒天で凝固させた。
この固体培地上における成長の2から3週間後、コロニーを、再生培地RPに、50コロニー/10cmペトリ皿に移す。RP培地は、273mgのKNO3、416mgのCa(NO3)2.4H2O、392mgのMg(NO3)2.6H2O、57mgのMgSO4・7H2O、233mgの(NH4)2SO4、271mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、公開された濃度の1/5のMurashigeおよびSkoogの培地(Murashige,T.およびSkoog,F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962年)に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel,G.およびR.H.Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951年)に従ったビタミン、0.05%(w/v)のスクロース、1.8%(w/v)のマンニトール、0.25mgゼアチンおよび41nMのクロルスルフロンまたは250μg.ml-1の5-FCからなり(/リットルpH5.7)、0.8%(w/v)のDifco寒天で凝固させた。
標的遺伝子のPCR増幅
クロルスルフロンまたは5-FCに耐性のタバコの微小コロニーから、DNeasyキット(Qiagen)を使用してDNAを分離し、PCR反応の鋳型として使用する。タバコALS遺伝子中の標的コドンの変換を、コドン194を含むこの遺伝子の776bp断片を増幅する、プライマーの5'GGTCAAGTGCCACGTAGGAT[配列番号:27]および5'GGGTGCTTCACTTTCTGCTC[配列番号:28]を使用して検出する。プライマーの5'CCCGTGGCAAGTACTTTGAT[配列番号:29]および5'GGATTCCCCAGGTATGTGTG[配列番号:30]も同様に、コドン571を含むタバコALS遺伝子の794bp断片を増幅するために使用する。5-FC耐性タバコカルス中の修飾CodA遺伝子のPCR増幅のために以下のプライマーのセット:
5'GTGGAAAAAGAAGACGTTCCAAC3'[配列番号:31]および5'AGCATCGATAGCAGAGATCTTTC3'[配列番号:32]を設計した。
ヌクレオチドの変換を証明するための配列決定
除草剤耐性タバコカルスにおけるヌクレオチドの変換を、このようなカルスのDNAから得られたPCR産物を配列決定することによって確認する。タバコALS P194コドンの変換(CCAからCAA)は、コドンの2番目の位置(C/A)に二重ピークをもたらす。最終的に、タバコALS W571コドンの変換(TGGからTTG)は、コドンの2番目の位置(G/T)に二重ピークをもたらす。
(実施例3)
マウスの胚幹細胞におけるTNE
マウス細胞におけるTNEを実証するための選択可能な系を有するために、培養下のG418に対する耐性を提供する選択可能なマーカー遺伝子(neo)を発現するが、意図的な突然変異により非機能性になった、マウスの胚幹(ES)細胞系を使用する。TNE実験の目的は、この突然変異を修復し、neo遺伝子の機能を回復し、G418中でこのような細胞の選択をもたらすことである。
マウスのES細胞系は、MC1プロモーターにより作動する、欠損neo遺伝子を導入することによってE14系(Te Rieleら、Proc. Natl. Acad. Sci . USA 89: 5128〜5132頁、1992年)に由来する。欠損neo遺伝子は、2つの追加のヌクレオチド、GTを、neoのATGスタートコドンからすぐ下流に含み、フレームシフトをもたらす(Dekkerら、Nucl . Acids Res. 31、No.6 e27、2003年)。細胞は、BRL順化培地において増殖させる。
TNE実験のために、細胞を、7×105/ウェルの密度で、6ウェルプレートに24時間分注した。その後、各ウェルに1.4mlの無血清培地、10μgのオリゴヌクレオチドおよび63μlのTransFast(商標)リポフェクション試薬(Promega)を加える。1時間後、4mlの血清含有培地を加え、細胞を一晩インキュベートする。無選択インキュベーションの24時間後、細胞を、100mg.l-1のG418を含む選択培地で増殖させる。10日後、G418耐性コロニーを数える。
フレームシフト突然変異を修復するために使用するオリゴヌクレオチドは36-merからなり、ATGスタートコドンの周辺のneo遺伝子領域のコード鎖の配列に対応するが、フレームシフト突然変異を起こすためにneoに導入されたGTヌクレオチドは含まない。さらに、すべてのシトシンまたはチミジンのヌクレオチドはプロピニル化され、以下にCpまたはTpで示す。フレームシフト挿入から両側に2ヌクレオチド離れた位置に、LNA残基が組み込まれている(A^、T^、C^またはG^で示す)。対照の一本鎖オリゴヌクレオチドは、正常なDNA残基 (C5プロピンピリミジンもLNA残基も含まない)のみからなり、GTフレームシフト突然変異を含む。このオリゴヌクレオチド配列を以下に示す:
5'TpCpTpAGAGCpCpGCpCpACpCpAT^GAT^CpACpCpGATpGCpATpCpGAG3' [配列番号:33]
DNAをG418耐性コロニーから抽出し、neoスタートコドンの周辺の領域を増幅するためにRCRに供する。次いで、PCR断片をフレームシフト突然変異の正しい修復を検証するために配列決定する。
(実施例4)
C5-プロピンおよびLNAにより修飾されたオリゴヌクレオチドを使用したトマト(ソラナム・リコペルシコン(Solanum lycopersicum))における標的ヌクレオチド交換
アセト乳酸合成酵素(ALS、アセトヒドロキシ酸合成酵素; AHASとも称する)は、分枝鎖アミノ酸のバリン、ロイシンおよびイソロイシンへの生合成経路における、第1の共通の酵素である。この経路は、植物ならびに細菌、真菌および藻類などの微生物に存在する。ALSは、スルホニル尿素(SU)、イミダゾリノン(IMI)、トリアゾロピリミジンスルホンアミド(TP)およびピリミジニルサリチル酸(PS)を含む、少なくとも4種の構造的に異なるクラスの除草剤に関する作用の主要標的部位である。トマトにおいて、ALSは、2つの完全長ESTが、Plant Transcript Database (http://planta.tigr.org)に存在するような多コピー遺伝子である。本発明者らの研究において、本発明者らは、転写産物TA37274_4081をALS1として、転写産物TA37275_4081をALS2として定義した。ALS1は、659AAのタンパク質をコードし、ALS2は657AAのタンパク質をコードする。ALS1およびALS2は、DNAおよびタンパク質のレベルにおいてそれぞれ93%および96%の同一性を示す。2種のタンパク質は、葉緑体の標的化に関与するタンパク質のシグナルペプチド領域において大いに異なる。これらの差にもかかわらず、ALS1およびALS2のタンパク質は双方とも、葉緑体に対する標的となることが予測される。先の研究により、コメのALSにおけるP171Q、W548LおよびS627Iの突然変異などの、保存残基におけるいくつかのアミノ酸の変化が、植物に、除草剤耐性を授けるために十分であることが示されている。生物間のALSの保存は、多くの生物における高度かつ同一な突然変異であり、同様の除草剤耐性の表現型をもたらす。この研究において、本発明者らは、正常なDNAオリゴヌクレオチドまたはC5-プロピンおよびLNAにより修飾されたオリゴヌクレオチドを、ALS2中のP184コドン(またはALS1中のP184)を改変するように設計したトマトの葉のプロトプラストに導入し、スルホニル尿素系除草剤のクロルスルフロンに対する耐性を発生させた。修飾および未修飾のオリゴヌクレオチドの配列は同一であり、したがって、TNE効率における任意の差は、無細胞系を使用した場合に、本発明者らが観察したような、C5-プロピンおよびLNAによる修飾のために違いない。
材料および方法
オリゴヌクレオチド
P184/186コドン(大文字)を含むALS1およびALS2の領域の配列を以下に示す。ALS1およびALS2の間の一本鎖ヌクレオチドの多型を太字で示す。
Table3(表3)のオリゴヌクレオチド44および95は、ALS2 においてP184Qの改変を起こすように設計した。双方は、ALS遺伝子の非転写鎖に相補的な「アンチセンス」オリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド80は、C5-プロピンおよびLNAにより修飾されたヌクレオチドのGATCの反復からなり、対照の役目を果たす。この設計は、末端の4ヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を含み、このような修飾は、ヌクレアーゼによる分解からオリゴヌクレオチドを部分的に保護することが知られている。
y=5-プロピニル-2'-デオキシシチジン; z=5-プロピニル-2'-デオキシウラシル; S=LNA A; V=LNA T; W=LNA C; X=LNA G; U=デオキシウラシル; *=ホスホロチオエート結合。すべてのオリゴヌクレオチドは、Eurogentecにより合成し、HPLC精製した。標的とミスマッチを形成するヌクレオチドは、下線を引いてある。
トマトの葉のプロトプラストの分離および形質転換
トマトの葉のプロトプラストの分離および形質転換は、既に記載されており(Shahin、1985年 Theor.Appl .Genet . 69: 235〜240頁; Tanら、1987年 Theor.Appl .Genet .75: 105〜108頁; Tanら、1987年 Plant Cell Rep. 6: 172〜175頁)、必要な溶液はこれらの出版物に見出すことができる。簡潔に言うと、ソラナム・リコペルシコンの種を0.1%の次亜塩素酸塩で滅菌し、滅菌MS20培地上で、光周期16/8時間で、2000ルクス、25℃および相対湿度50〜70%において成長させた。1gの新鮮に収穫した葉を、5mlのCPW9Mと共に皿に配置し、手術用メスを使用して主茎に対して垂直に1mmずつ切断した。これらを、25mlの酵素溶液(CPW9M、2%セルロースオノズカRS、0.4%のマセロザイムオノズカR10、2.4-D(2mg/ml)、NAA(2mg/ml)、BAP(2mg/ml)pH5.8を含む)の新鮮なプレートに移し、消化を、一晩25℃で暗所において継続した。その後、プロトプラストをオービタルシェーカー(40〜50rpm)に1時間かけることによって遊離させる。プロトプラストを、それらを50μmの篩を通すことによって細胞残屑から分離し、篩を2×CPW9Mで洗浄した。プロトプラストを、85gで遠心分離器にかけ、上清を廃棄し、その後半量のCPW9Mに溶解した。プロトプラストを、最終的に3mlのCPW9Mに溶解し、次いで3mlのCPW18Sを慎重に加え、2つの溶液が混合することを避けた。プロトプラストを85gで10分間回転させ、相間層に浮遊している生存プロトプラストを長いパスツールピペットを使用して収集した。プロトプラストの容量を、CPW9Mを加えることによって10mlまで増やし、回収したプロトプラストの数を、血球計算器で測定した。
オリゴヌクレオチドを、Gene Pulser(BioRad)を使用してエレクトロポレーションによってトマトのプロトプラストに導入した。プロトプラストを、エレクトロポレーション培地としてのPHBS(10mMのHEPES、pH7.2; 0.2Mのマンニトール、150mMのNaCl、5mMのCaCl2)に、0.4cmのエレクトロポレーションキュベット中1×106/mlの密度で再懸濁した。5μgのオリゴヌクレオチドを1mlのプロトプラスト懸濁液に加え、エレクトロポレーションを、250V(625C cm-1)および容量800μFで実施した。その後、プロトプラストをキュベットから慎重に取り出し、新しい管に移し、8mlの9M培地を加えた。その後、これを85gで5分間回転させ、上清を取り除き、2mlの新鮮な9Mを加えた。
プロトプラストを、再生のためにアルギン酸塩溶液に溶液に溶解した。2mlのアルギン酸塩溶液(マンニトール90g/l、CaCl2・2H2O 140mg/l、アルギン酸-Na 20g/l(Sigma A0602))を加え、反転により完全に混合した。この1mlを、Ca-寒天プレート(72.5g/1のマンニトール、7.35g/lのCaCl2・2H2O、8g/lの寒天)上に均一に層にし、重合させた。その後、アルギン酸塩の円板を、4mlのK8p培養培地を含む4cmのペトリ皿に移し、暗所で30℃において7日間インキュベートした。その後、円板を5mm幅のストリップに切断し、20nMのクロルスルフロンを含むTM-DBカルス導入培地に層にした。除草剤耐性カルスが、30℃における4から5週間のインキュベーション後に現れ、その後1つ1つをさらなる成長のためにGM-ZG培地に移した。この培地上で2〜3週間後カルスの一部を、DNAの分離のために使用した。
トマトカルスの分析
ゲノムDNAを、5週齢のカルスから、Plant DNAeasy Kit (Qiagen, #69104)を使用して分離した。プライマーを、ALS1またはALS2のいずれかを特異的に増幅するように設計した。ALS1に関して、本発明者らは、プライマー08Z769(5' GAAAGGGAAGGTGTTACGGATGTA 配列番号39)および08Z770(5' CTTGATTGCGAACACCCACC 配列番号40)を使用し、ALS2に関してプライマー08Z773(5' GAAAGGGAAGGGGTTAAGGATGTG 配列番号41)および08Z774(5' CTCGACTGTGAACACCCACC 配列番号42)を使用した。PCR増幅を、校正酵素のrTth DNAポリメラーゼXL(Roche)を使用して実施し、得られたPCR断片を直接配列決定した。ヌクレオチドの変化を確認するために、校正酵素により発生した平滑PCR断片に、Taq DNAポリメラーゼを使用して、A尾部を付加した(100ng産物(5μl)+1μlのPCRバッファー+1μlのdNTP(20mM)+1UのTaq DNAポリメラーゼ+2.8μlのH2O; 72℃において10分間)。その後、PCR断片を、PCR Purification Kit(Qiagen)を使用して精製し、10ngを、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen)にクローン化した。大腸菌に形質転換した後で、rTth DNA ポリメラーゼXL(Roche)を使用し、ベクター中の位置にアニーリングし、インサートに隣接するM13プライマーを使用して、白い、カナマイシン耐性コロニーに対してPCR反応を実施した。その後、これらのPCR産物を、M13プライマーを使用して直接配列決定した。
結果
2つの独立した実験を実施し、トマトにおけるTNEの効率が、C5-プロピンおよびLNAによる修飾を含むオリゴヌクレオチドを使用して亢進されたかどうかを試験した。結果をTable4(表4)に示す。
C5-プロピンおよびLNA双方による修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド44は、未修飾DNAからなるオリゴ95よりおよそ8倍多くのカルスを発生した。これらのオリゴヌクレオチド双方の配列は同一である。オリゴヌクレオチド80は、これもまた修飾ヌクレオチドを含む「スクランブル」オリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドは、ALS1またはALS2のいずれに対しても特異的ではなく、植物細胞中にオリゴヌクレオチドが存在するだけでは除草剤耐性カルスを発生するためには十分でないことを実証するための、対照としての役目を果たす。さらに、オリゴヌクレオチドがプロトプラスト形質転換混合物から省かれた場合、除草剤耐性カルスは観察されず、トマトのプロトプラストにおける天然に存在する除草剤耐性のレベルが、検出レベルより低いことを示唆している。
クロルスルフロン耐性カルスが、予測部位に突然変異を含まないことを実証するために、3種のカルス(1種はオリゴヌクレオチド95(D)に由来し、2種はオリゴヌクレオチド44(EおよびF)に由来する)を配列決定した。ALS1またはALS2由来のPCR産物の配列分析により、3種のカルスすべての混合ピークが標的コドンに存在したことが示された。このことは、除草剤耐性の表現型が、実際にオリゴヌクレオチドにより引き起こされたヌクレオチドの改変によるものであり、このカルスはヌクレオチドの変化に対して半接合であったことを実証する。その後、本発明者らは、ALS1またはALS2由来の個々PCR産物のクローン化および配列決定を進めた。配列分析の結果を図5に示す。カルスDおよびEは、それぞれALS2およびALS1においてCCAからTCAへの変化(P186S)を示し、一方カルスGはALS1においてCCAからTTAへの改変(P186L)を示した。タバコにおける研究により、タバコALSオルソログ(SurAまたはSurB)中の保存プロリン残基における任意のアミノ酸の変化が、クロルスルフロン耐性を授けることが示されている(Kochevenkoら、2003年 Plant Phys.132: 174〜184頁)。したがって、このような事象もまた除草剤耐性の表現型をもたらすので、予測しないヌクレオチドの変化を検出するためにALS1またはALS2のP186/184コドンが望ましい。
本発明者らの結果は、全般に、C5-プロピンおよびLNAによる修飾が、ゲノムにおいて、特にトマトのゲノムにおいてヌクレオチドの改変の発生を阻害しないことを実証している。さらに、この型の修飾は、全般に植物細胞において標的ヌクレオチド交換の効率を有意に増加し、トマトの場合はおよそ8倍である。この型の混合修飾(本明細書に記載のLNAおよびプロピン)は、LNA修飾オリゴヌクレオチドのみ、またはプロピン修飾ヌクレオチドのみを使用した先に記載の無細胞系(すなわち、インビトロ)より大きい有意な増加をインビトロで提供する。特に注目に値するのは、無細胞アッセイからインビトロアッセイへのステップである。
驚くべきことに、本発明者らは予測したヌクレオチドの変化(ALS2においてP184QのCCGからCAG)を見出さなかった。代わりに、カルスDおよびEにおいて、本発明者らは、コドン中の標的ヌクレオチドに対してヌクレオチドの5'において変化(CからT)を観察した。さらに、本発明者らのカルスGからのデータは、標的配列と1つのミスマッチを共有するオリゴヌクレオチドが、2ヌクレオチドの改変を誘導できることを示している。完全PCR産物(500 bps)の配列をALS1またはALS2の配列と比較して、標的プロリンコドンにおける変化のほかにヌクレオチドの改変は観察されなかった。したがって、オリゴヌクレオチドは、植物遺伝子の特定のコドンに突然変異の誘発を導入できる。無細胞系およびオリゴヌクレオチドを使用して引き起こされるTNE事象の分析は、実際に予測ヌクレオチドの変化を示した。さらに未修飾DNAオリゴヌクレオチドを使用して引き起こされたカルスDの本発明者らの研究において、本発明者らは予測しないヌクレオチドの変化を観察した。このことは、無細胞系において役目を果たさない、修復過程に影響を与えている、細胞中の他の因子があり得、無細胞アッセイからインビトロアッセイへのステップを容易でなくしていることを示唆する。しかし、本発明者らは、C5-プロピン修飾を含むオリゴヌクレオチドが、無細胞系において予測しないヌクレオチドの変化を起こしたことを示し、修飾ヌクレオチドそれ自体が、より「エラーが発生しやすい」修復に寄与していることが示唆される。したがって、CCAからTTAへの変化を示すカルスGが、修飾ヌクレオチドを使用して起こったことは注目に値する。
いくつかの研究により、オリゴヌクレオチドによる処理後にヒト細胞において起こったヌクレオチドの変化が、標的部位におけるオリゴヌクレオチドの統合によることが示唆された(Radeckeら、2006年 J. Gene Med.8: 217〜218頁)。しかし、オリゴヌクレオチドの統合は、本発明者らがトマトにおいて得た結果を説明できない。第1に、オリゴヌクレオチドの統合は、本発明者らが観察しなかった予測ヌクレオチドの改変(P184Q)をもたらす。第2に、本発明者らはさらに、ALS2を標的とするオリゴヌクレオチドを使用して、ALS1においてヌクレオチドの変化を発見した。ALS1におけるこのオリゴヌクレオチドの統合は、P186/184コドンの3番目のヌクレオチド中に存在する、1つのヌクレオチド多型もまた変化させる。このことが観察されなかったので、本発明者らは、オリゴヌクレオチド統合は本発明者らの結果を説明できないと結論した。このことは、動物細胞と植物細胞との間のTNE機序の差を反映している可能性がある。本発明者らは、オリゴヌクレオチドがそのゲノム標的に結合し、標的コドンにおいて突然変異誘発過程を誘導し、その後すぐ、オリゴヌクレオチドが分解するという機序を選択する。