JP5467312B2 - バイオセンサ、バイオセンサを用いた生体物質の検出方法、及びそのキット - Google Patents

バイオセンサ、バイオセンサを用いた生体物質の検出方法、及びそのキット Download PDF

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Description

本発明は、バイオセンサに関し、特に、細胞糖鎖由来のシアル酸の検出・解析に利用することができるバイオセンサに関するものである。
近年、遺伝子やタンパク質の構造機能解析を中心とするポストゲノム研究に続くポスト・ポストゲノム研究として、細胞の糖鎖解析が注目されている。糖鎖は、細胞間の相互作用に深く関わり、その構造は、様々な疾患、免疫や発生における異常、老化といった「細胞の状態」を反映して変化するため、しばしば「細胞の顔」とも形容される。また、腫瘍マーカーに代表されるバイオマーカーの多くは糖鎖であると考えられているため、癌の発生など生物機能と密接に関連した機能糖鎖を探索することが急務とされている。
さらに、医療現場においても、患者の医療方針を迅速に決定するために、バイオマーカーとしての糖鎖を解析することによって、多量の目的細胞の状態を迅速に解析することが求められている。
このような糖鎖解析の手段としては、従来から、UVや蛍光等によって細胞中の糖鎖を標識する方法が採られていた。例えば、非特許文献1では、シアリダーゼ又は酸で遊離した糖鎖由来のシアル酸を、蛍光試薬である1,2−diamino−4,5−methylenedioxybenzene(DMB)で誘導体化し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてシアル酸を定量している。また、遊離させたシアル酸をシアル酸アルドラーゼによってN−アシルマンノサミンに変換し、そのN−アシルマンノサミンを酸加水分解することによって、シアル酸を定量する方法も開発されている(特許文献1)。
特開2000−333698号公報
Analytical Biochemistry 179,162−166(1989)
ところで、上述のような糖鎖を標識する糖鎖解析の方法は、目的の細胞を標識するために、標識専用の機器や標識のための施設を用意しなければならない。このような機器や施設は、多くの場合、大型であり且つ高価であるため、糖鎖解析をするためには経済的な負担が大きい。
また、解析対象となる細胞をまず標識化し、その後、解析を行うという二段階の工程を経る必要があるため、医療現場などで求められる糖鎖解析の高速化・ハイスループット化に応えることができない。
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、従来の糖鎖解析方法では不可能であった蛍光等の標識を用いない非侵襲な、且つ簡便に使用することのできるリアルタイム細胞診断ツール、及びそれを用いて目的細胞の糖鎖を検出する方法を提供することを目的とする。
本願発明の第1の主要な観点によれば、検出表面を有し、この検出表面が、細胞糖鎖由来のシアル酸と結合するフェニルボロン酸基で被覆されていることを特徴とするバイオセンサが提供される。
このような構成によれば、上記細胞糖鎖由来のシアル酸との結合により、上記検出表面に物理的変化を生じさせることができるため、たとえば、電界効果トランジスタ、光導波部材、又は圧電部材を利用してシアル酸を検出することができる。
本発明の一の実施形態によれば、このバイオセンサは、金属層と、この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基とを有するものである。
ここで、前記バイオセンサは、前記検出表面にシアル酸が結合することによる光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的特性のいずれか1以上の変化を検出するための検出媒体を有し、前記検出表面はこの検出媒体に形成されているのが好ましい。
例えば、前記検出媒体は、電界効果トランジスタのゲートであっても良く、この場合、このバイオセンサは、ゲート上に設けられた金属層と、この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基とを有することが好ましい。
また同様に、前記検出媒体が電界効果トランジスタのゲートである場合、このバイオセンサは、前記ゲート上に設けられた第1の金属層と、前記ゲートから離間して設けられ、前記第1の金属層と導電性配線を介して接続された第2の金属層と、この第2の金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記基板とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸とを有するものであっても良い。
また、前記検出媒体は、その外面に前記検出面が形成されてなる光導波部材または圧電部材であっても良く、この場合、前記シアル酸が前記フェニルボロン酸基に結合した際に、前記光導波部材または圧電部材と検出面との境界部分での光学特性及び/又は振動特性が変化させるものであることが好ましい。
また、この発明の第2の主要な観点によれば、細胞糖鎖由来のシアル酸を検出する方法であって、細胞糖鎖を含有する被験試料を用意する工程と、検出表面を有し、この検出表面が、前記被験試料中のシアル酸と結合するフェニルボロン酸基で被覆されているバイオセンサを用意する工程と、前記用意した被験試料を前記バイオセンサに接触させる工程と、前記被験試料中のシアル酸と前記フェニルボロン酸基とが反応することによって変化する光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的信号を検出する工程と、を有するものであることを特徴とする方法が提供される。
このような構成によれば、上述した第1の観点に係るバイオセンサを用いた、細胞糖鎖由来のシアル酸を検出する方法が提供される。
本発明の一の実施形態によれば、上記第2の観点に係る方法において、前記バイオセンサは、金属層と、この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基とを有するものである。
ここで、この方法において、前記検出する工程は、前記検出表面にシアル酸が結合することによる光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的特性のいずれか1以上の変化を検出するための検出媒体を介して行われ、前記検出表面はこの検出媒体に形成されているものであることが好ましい。
例えば、前記検出する工程は、前記検出媒体としての電界効果トランジスタのゲートを介して行われても良く、この場合、前記バイオセンサは、ゲート上に設けられた金属層と、この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基とを有するものであることが好ましい。
また同様に、前記検出する工程が前記検出媒体としての電界効果トランジスタのゲートを介して行われる場合、このバイオセンサは、前記ゲート上に設けられた第1の金属層と、前記ゲートから離間して設けられ、前記第1の金属層と導電性配線を介して接続された第2の金属層と、この第2の金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記基板とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸とを有するものであっても良い。
また、この方法において、前記検出する工程は、外面に前記検出表面が形成されてなる光導波部材または圧電部材である検出媒体を介して行われ、前記シアル酸が前記フェニルボロン酸基に結合した際の、前記光導波部材または圧電部材と検出表面との境界部分での光学特性及び/又は振動特性の変化を検出するものであることが好ましい。
また、この発明の第3の主要な観点によれば、上述の第1の主要な観点に係るバイオセンサを有する、細胞糖鎖由来のシアル酸を検出するための検出キットが提供される。
このような構成によれば、上述した第1の観点に係るバイオセンサを用いた、細胞糖鎖由来のシアル酸を検出するための検出キットが提供される。
また、この発明の第4の主要な観点によれば、生体由来の試料中における疾患細胞の存否を判定する方法であって、細胞糖鎖を含有する被験試料を前記生体から採取する工程と、検出表面を有し、この検出表面が、前記被験試料中のシアル酸と結合するフェニルボロン酸基で被覆されているバイオセンサを用意する工程と、前記採取した被験試料を前記バイオセンサに接触させる工程と、前記被験試料中のシアル酸と前記フェニルボロン酸基とが反応することによって変化する光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的信号を検出する工程と、前記検出した物理的信号と、正常細胞を前記バイオセンサに供した際に得られる物理的信号とを比較する工程と、前記比較した結果に基づいて、前記被験試料が疾患細胞であるか否かを判定する工程とを有することを特徴とする、方法が提供される。
このような構成によれば、上述した第1の観点に係るバイオセンサを用いた、生体由来の試料中における疾患細胞の存否を判定する方法が提供される。
この場合、前記疾患は、糖尿病、肺癌、食道癌、胃癌、直腸癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、皮膚癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、膣癌、白血病、骨肉腫、脳腫瘍、脊髄腫瘍、神経芽細胞腫、甲状腺癌、前立腺癌、外陰癌から成る群から選択されるものであることが好ましい。
また第4の主要な観点に係る方法において、前記判定する工程は、
前記検出した物理的信号に係る値/前記正常細胞における物理的信号に係る値
によって得られる値が0.9以下、または1.1以上である場合に疾患細胞であると判定するものであることが好ましい。
また、本発明の一の実施形態によれば、上記第3の観点に係る方法において、上記第2の観点に係る方法と同様に、前記バイオセンサは、金属層と、この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基とを有するものである。
ここで、この方法において、前記検出する工程は、前記検出表面にシアル酸が結合することによる光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的特性のいずれか1以上の変化を検出するための検出媒体を介して行われ、前記検出表面はこの検出媒体に形成されているものであることが好ましい。
例えば、前記検出する工程は、前記検出媒体としての電界効果トランジスタのゲートを介して行われても良く、この場合、前記バイオセンサは、ゲート上に設けられた金属層と、この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基とを有するものであることが好ましい。
また同様に、前記検出する工程が前記検出媒体としての電界効果トランジスタのゲートを介して行われる場合、このバイオセンサは、前記ゲート上に設けられた第1の金属層と、前記ゲートから離間して設けられ、前記第1の金属層と導電性配線を介して接続された第2の金属層と、この第2の金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜の上記基板とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸とを有するものであっても良い。
また、この方法において、前記検出する工程は、外面に前記検出表面が形成されてなる光導波部材または圧電部材である検出媒体を介して行われ、前記シアル酸が前記フェニルボロン酸基に結合した際の、前記光導波部材または圧電部材と検出表面との境界部分での光学特性及び/又は振動特性の変化を検出するものであることが好ましい。
なお、上記した以外の本発明の特徴及び顕著な作用・効果は、次の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るバイオセンサを用いた検出システムを示す全体模式図である。 図2は、本発明の第1の実施形態に係るバイオセンサの検出表面におけるシアル酸とフェニルボロン酸基との結合を示す模試図である。 図3は、シアル酸とフェニルボロン酸基との反応の化学反応式を示す図である。 図4は、本発明の第1の実施形態に係るバイオセンサによって検出したフリーのシアル酸を示すグラフである。 図5は、本発明の第1の実施形態に係るバイオセンサによって検出したウサギ赤血球表面シアル酸を示すグラフである。 図6は、肺転移癌モデルマウスの作製を示す図である。 図7は、転移度の異なる肺転移癌モデルマウスを示す図である。 図8は、本発明に係るバイオセンサを用いて得られる閾値値電圧と癌転移度の関係を示すグラフである。 図9は、本発明の第2の実施形態に係るバイオセンサを示す模式図である。 図10は、本発明の第3の実施形態に係るバイオセンサを用いた検出システムを示す全体模式図である。 図11は、本発明の第4の実施形態に係るバイオセンサを用いた検出システムを示す全体模式図である。
以下、本願発明の一実施形態および実施例を、添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、この発明の第1の実施形態を図1〜図5を参照して説明する。
この第1の実施形態は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)を用いて本発明のバイオセンサを構成した例である。
図1は、バイオセンサを用いた検出システム1を示す全体模式図である。
この検出システム1は、例えば、プリント実装基板2上に、バイオセンサ部3と、このバイオセンサ部3に信号を与えて駆動させるセンサ駆動回路部4と、基板全体に電源を供給する給電部5と、前記バイオセンサ部3からの出力を処理して検出信号を出力する検出回路部6と、前記検出信号を外部に出力するための出力インタフェース(出力IF)部7と、が一体的に形成され、集積化されてなる。
上記バイオセンサ部3に設けられたバイオセンサ8は、半導体基板9の表面に形成されたソース10及びドレイン11と、この半導体基板9上に形成されたゲート12とからなる電界効果トランジスタ(FET)構造を有する。そして、前記ゲート12の表面には金属層13を介して、フェニルボロン酸基14が被覆され、この発明の検出表面16を構成している。この検出表面16は測定セル壁15で囲まれ、これにより検出領域が区画されている。
このようなバイオセンサ8によれば、上記ゲート12に対して例えば参照電極17を用いて電圧を印加し、この状態で上記検出表面16に細胞糖鎖由来のシアル酸試料(細胞そのもの又は細胞由来の糖鎖)を導入すると、試料中のシアル酸が検出表面16に被覆されたフェニルボロン酸基14と結合することにより、ソース10とドレイン11との間を流れる電流値に変化が生じる。この電流の変化は電流計18でサンプリングされ、前記検出回路部6で処理され所定の検出信号として出力IF部7から取り出されるようになっている。
なお、この例では、上記バイオセンサ部3に電源19が含まれるように図示されているが、実際には、上記プリント実装基板2上に実装されたセンサ駆動回路部4によって駆動されるようになっており、このセンサ駆動回路部4に給電するための給電部5も同様に実装されている。
この実施形態は、バイオセンサ部3を含めてすべての構成を単一のプリント実装基板2上に集積化することが可能であり、非常に小型でかつ簡便な構成により細胞糖鎖由来のシアル酸を検出することができるバイオセンサ及びバイオセンサシステムを得ることができる。
また、電界効果トランジスタ(FET)は、検出表面16上に捉えた分子固有電荷をトランジスタ特性変化と同期させて検出する全くの非侵襲・非標識計測法であり、リアルタイム計測であること、レーザーや光学系が不要なため安価で小型化に有利であること、また半導体加工技術による高密度・超並列化が容易に行える点など、ハイスループットシステム化において求められる主要要件を潜在的に網羅する。
次に、図2を参照して、前記検出表面16の構成を詳細に説明する。
図2は、細胞糖鎖20由来のシアル酸21と、前記検出表面16に被着されたフェニルボロン酸基14との結合を示す模式図である。
前述したように、この発明は、バイオセンサの検出表面16が細胞糖鎖20由来のシアル酸21と結合するフェニルボロン酸基14で被覆されてなり、シアル酸21とフェニルボロン酸基14の結合により生じる前記検出表面の物理変化、すなわち図2中の負電荷22の発生を検出することを要旨とするものである。
このような検出表面16を構成するため、この実施形態では、ゲート12上に、金属層13としてのAu蒸着薄膜を形成し、この蒸着薄膜上に、化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜(SAM)23を形成する。そして、この自己組織化単分子膜23の上記金属層13とは反対側の末端に、縮合反応等によってフェニルボロン酸基14を導入している。
このような自己組織化単分子膜23を用いた構成によれば、フェニルボロン酸基14とシアル酸21の結合が生じる検出表面16をFETのゲート12に非常に近い位置に構成することがきる。このことで、FET内でシアル酸−フェニルボロン酸基の結合による検出表面16の物理変化、この例では検出表面16の電荷22の変化、を精度よくかつ容易に検出行うことができる。
図3は、上記のようなシアル酸とフェニルボロン酸基との結合によって負電荷が発生することを示す化学反応式である。この例では、3−プロピオンアミドフェニルボロン酸とシアル酸との結合を示す。pH7.4の水溶液中においては、ボロン酸−シアル酸間の結合が、他の糖化合物との結合に対して支配的となる(H.Otsuka et al.,J.Am.Chem.Soc.125,3493,(2003))。ここで、シアル酸はカルボキシル基に由来する負電荷を有しており、本願発明に係るバイオセンサ8では、検出表面16上において、この負電荷をFETで検出するようにしている。
なお、ここで、本明細書中「シアル酸」とは、以下の化学式を有し、ノイラミン酸(neuraminic acid)のアミノ基やヒドロキシ基が置換された物質を総称するファミリー名を指すものとする。
Figure 0005467312
シアル酸は、糖鎖中に最も高頻度に、そして糖鎖末端に多く存在する分子であり、その密度や分布は、細胞の疾病(癌、転移、生活習慣病、自己免疫病)や発生、分化など種々細胞現象と強く相関する。また糖鎖シアル酸にはいくつかの誘導体が知られるが、癌化した細胞ではそれらの密度や組成が顕著に異なることが報告されている(Hakomori,S.CancerRes.1985,45,2405−2414)。さらに特筆すべきことに、これらシアル酸誘導体とフェニルボロン酸の相互作用の強さは、フェニルボロン酸基のフェニル環置換基構造により制御することが可能である。ごく最近では、特殊な置換基導入により特定の糖鎖構造に対する認識能を獲得したフェニルボロン酸分子設計の例も報告されている(Dowlut,M.;Hall,D.G.J.Am.Chem.Soc.2005,128,4226−4227)。
したがって、この発明のバイオセンサを用いることにより、癌、転移、生活習慣病、自己免疫病の検知、予防及び治療を非侵襲・非標識法により簡便に行うことが可能になる。
また、前記シアル酸は、細胞糖鎖中に存在している状態のものでも良く、又は酵素等によって細胞から採取された糖鎖試料中に存在するシアル酸であっても良い。
また、本願明細書において使用する「フェニルボロン酸基」とは、以下の化学式を指す。
Figure 0005467312
なお、この実施形態では、検出表面を構成するフェニルボロン酸基として、3−acrylamidophenylboronic acidの例を示すが、上記構造式を有する化合物であれば、任意の化合物でも良い。
また、FETは、従来のバイオセンサまたは相補型金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor:CMOS)素子などに使用されるどんなFETも使用可能で、n−MOSやp−MOSのいずれも使用可能である。このFETは、キャリア(自由電子または正孔)を供給するソース、前記ソースで供給されたキャリアが到達するドレイン、および前記ソースとドレインとの間のキャリアの流れを制御するためのゲートから構成されているものであればよい。
また、ゲート上に形成される前記金属層は、前記SAMとフェニルボロン酸基とが導入されることのできる任意の材質であっても良いが、好ましくは、Au、SiO、TiO、およびAlからなる群から選択されたいずれか一種の材質からなることが好ましい。
以下、この第1の実施形態による実施例を説明する。
(実験方法)
FETのゲート12として金蒸着基板を用い、ここへ10−carboxy−1−decanethiolによる自己組織化単分子膜(SAM)をあらかじめ形成した。SAMのカルボキシル基末端へ、縮合反応により3−acrylamidophenylboronic acidを導入することでバイオセンサである「シアル酸認識トランジスタ」を作成した。作成したゲート12上に種々の単糖、ウサギ赤血球(未処理およびシアリダーゼ処理)を所定濃度(pH7.4 PBS−0.9% NaCl)で添加しながら、リアルタイムFET計測装置を用いてゲート表面電位変化の観測を行った。
(結果)
作成したバイオセンサによるフリーのシアル酸検出結果を図4に示す。添加シアル酸濃度300−900μMの領域においてゲート表面電位は顕著に変化し、900μM以上の濃度では飽和した。図4で観測される負方向への電位シフトはシアル酸中のカルボキシル基に対応している。対照として行ったボロン酸を導入していないゲートを用いた測定、またコントロール単糖として、グルコース、ガラクトース、マンノースを添加して行った測定においては、いずれも全く(10mMまで確認)検出されなかった。以上のように、作製したトランジスタは100μM程度の感度でフリーのシアル酸を特異的に感受することが明らかとなった。
図5は、FETのゲート12上にウサギ赤血球を連続的に播種した際の赤血球濃度と電位変化の関係を示している。シアリダーゼ処理によりシアル酸ユニットを部分的に切断した場合、未処理に比べて小さな電位変化が観測された。これは主に糖鎖末端部におけるシアル酸除去により、フェニルボロン酸基との特異的な結合を介した赤血球のゲート表面への接着性が減じるためと考えられる。
(結論)
「シアル酸認識トランジスタ」を作成し、細胞表面上の糖鎖シアル酸密度の差異を非侵襲かつ非標識に検出することに成功した。シアル酸を「細胞の顔」と見立て、これを糖鎖プロファイリング(特徴抽出)のターゲットとすることで、従来よりも簡便で安価かつ迅速な細胞診断技術の創出に発展させることができる。
(第1の実施形態を用いた方法)
上記実施例において、特定の細胞におけるシアル酸を検出する方法を提供することができることを説明したが、本実施形態に係るFETを用いることによって、さらに、特定の疾患細胞の存否を判定する方法を提供することができる。この場合、シアル酸を検出する方法と同様に、本実施形態に係るFETの検出表面に、糖鎖を有する細胞を播種することによって、当該細胞が特定の疾患に罹患しているか否かを判定する。
ここで、上記判定は、特定の疾患に罹患した細胞表面の糖鎖では、正常細胞の表面の糖鎖よりもシアル酸量が少ない又は多いことを利用して行う。例えば、ある種の糖尿病に罹患した患者の赤血球では細胞表面のシアル酸量が減少していることが知られている。また、癌化に伴い糖鎖修飾の変異が生じることも知られており、ある種の癌に罹患した患者の当該疾患細胞の糖鎖ではシアル酸量が増加していることが知られている。このような現象を利用して、正常細胞におけるシアル酸量と疾患細胞におけるシアル酸量とを比較して、正常細胞におけるシアル酸量よりも疾患細胞におけるシアル酸量が有意差を持って増加または減少している場合に、疾患細胞と判定することができる。
正常細胞におけるシアル酸量と疾患細胞におけるシアル酸量とを比較する場合には、その量的関係から、単純に、一方の測定値を他方の測定値で除法し、その結果の値が0.9以下、または1.1以上である場合に疾患細胞であると判定することもできる。好ましくは、前記結果の値が0.7以下、または1.3以上である場合に疾患細胞であると判定する。さらに好ましくは、前記結果の値が0.5以下、または1.5以上である場合に疾患細胞であると判定する。なお、この場合、前記除法をする前に、必要に応じて前記測定値を標準化処理しても良い。
なお、上述のように、疾患に伴う細胞糖鎖修飾の構造的変化を基に判定を行うことができることに加え、さらに、疾患細胞において、例えばルシフェラーゼやGFP等の蛍光物質等が発現するように構成しておき、その発現頻度と照合することによって、補足的に、シアル酸の発現(増加又は減少)を確認するようにしても良い。
また、上述した特定の疾患細胞の存否を判定する方法において、当該疾患は、その疾患によって細胞糖鎖修飾が変異または構造的に変化することが知られている疾患であれば、いずれの疾患であっても良い。特に、その疾患によって細胞糖鎖におけるシアル酸量が変化することが知られている疾患であることが好ましい。例えば、上記したように、糖尿病やある種の癌ではその細胞糖鎖におけるシアル酸量が増加又は減少することが知られている。その他、細胞増殖能に異常が見られる白血病、骨肉腫、神経芽細胞腫などにおいても適用可能である。
また、特定の疾患細胞の存否を判定する方法では、特定の細胞におけるシアル酸を検出する方法に用いるFETと同様のものを使用できる。例えば、上述した図1で示したように、上記2つの方法で用いるFETにおいては、ゲート12の表面には金属層13を介してフェニルボロン酸基14が被覆され、また検出表面16は測定セル壁15で囲まれ、これにより検出領域が区画されている。
さらに、上述した特定の疾患細胞の存否を判定する方法を用いることによって、癌の転移度を測定することもできる。この場合、試料として生体から採取した全細胞当たりの疾患細胞であると判定された細胞を算出することで転移度を求めることができる。なお、本願明細書において使用する「転移度」とは、ある臓器若しくは部位における癌細胞の割合を指すものであり、転移度を測定する臓器若しくは部位とは別の臓器若しくは部位に存在する癌由来の癌がどれくらい転移したかを特定するものである。
また、上記した方法において、本実施形態に係るFETに細胞を播種する前に、当該細胞をセルストレイナーによって濾過し、凝集した細胞塊を除去することが好ましい。このセルストレイナーによる濾過によって、被験対象となる各細胞がバラバラになり、より正確に当該細胞におけるシアル酸量を検出することができる。
また、被験対象となる細胞は、疾患毎に異なる種類の細胞を用いることができる。この場合、その細胞の選択基準は、例えば、各疾患においてその疾患状態を適切に反映し得る細胞であることであり、選択される細胞としては、例えば、糖尿病であれば全血における赤血球であり、肺癌であれば肺細胞が挙げられる。
以下に、本実施形態に係るFETを用いて特定の疾患細胞の存否を判定した場合の実験例を、図6〜8を用いて説明する。
(特定の疾患細胞の存否を判定する方法に係る実験方法およびその結果)
まず、高転移性のルシフェラーゼ発現マウス黒色腫として、metastatic murine melanoma expressing luciferase(B16−F10−Luc−G5)を作製し、健常マウス(BALB/c nu/nu)の尾に皮下注射(10 cells/mL)した。この黒色腫は肺に転移するように作製した。
図6は、実際に肺転移癌モデルマウスを作製できたことを示す図である。metastatic murine melanoma expressing luciferase(B16−F10−Luc−G5)を皮下注射した肺転移癌モデルマウスに対して、ルシフェリン処理を行い、IVIS imaging system(Xenogen)を用いて化学発光を定量した。この図の左部に示される写真は、尾にmetastatic murine melanoma expressing luciferase(B16−F10−Luc−G5)を皮下注射した肺転移癌モデルマウスをIVIS imaging systemを用いて撮影したものである。この写真に示されるように、尾に皮下注射した黒色腫は肺に転移することができる。また、この図の右部に示されるグラフは、横軸に細胞数、縦軸に発光量をとったグラフである。このグラフに示されるように、またその発光量に比例して細胞数も増加する。
続いて、この肺転移癌モデルマウスから肺細胞を採取し、セルストレイナーによって濾過し、細胞集塊を除去した。その後、本願発明に係るシアル酸検出FET(バイオセンサ)を用いて種々の細胞数で閾電圧値変化(ΔV,mV)を測定した。
図7は、ルシフェラーゼ発現マウス黒色腫(B16−F10−Luc−G5)をマウス肺に対して異なる転移度(0%、15%、30%)で転移させた検体のバイオルミネッセンス画像、摘出肺の肉眼画像、及び種々の細胞数における閾電圧値変化(ΔV,mV)を示すグラフである。この図で示されるように、皮下注射からの日数を経るごとに、肺への転移を示す発光量が増加し、種々の細胞数における閾電圧変化(ΔV,mV)も増加することがわかる。
図8は、本願発明に係るシアル酸検出FETを用いて得られる閾値値電圧と癌転移度の関係を示すグラフである。図8Aは本願発明に係るシアル酸検出FETを用いて得られる閾値電圧であり、図8Bは従来の方法によって得られた、肺転移癌モデルマウスにおけるシアル酸量を示すグラフである。図8Aに示されるように、種々の細胞数において、肺への転移度が増加するにつれて閾値電圧が増加することがわかる。このことは、肺への転移度が増加するにつれて当該細胞におけるシアル酸量が増加することを示す。また、同じ転移度で比較した場合にも、細胞数が増加するにつれて閾値電圧が増加している。この結果は、細胞数が増加するにつれてシアル酸量が増加することを示す。同じ実験系を用いて従来の方法でシアル酸を定量した結果が図8Bである。このグラフは、種々の細胞数におけるデータが図8Aのそれとよく一致し、本願発明に係るシアル酸検出FETが細胞糖鎖におけるシアル酸量を正確に測定できることを証明するものである。また、同様に、これらの結果は、本願発明に係るシアル酸検出FETを用いることで、特定の細胞が疾患細胞であるかどうかを判定することができることを示すものである。
(結論)
以上のように、本願発明に係るシアル酸検出FETが細胞表面上の糖鎖シアル酸を検出し、これにより、特定の細胞における疾患の有無を判別することができる。また、採取した全細胞当たりの疾患細胞と判断された細胞数を計算することで、癌細胞の特定の組織または部位への転移度を測定することもできる。
(本実施形態の変形例)
なお、この発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
(第2の実施形態)
例えば、上述した第1の実施形態では、フェニルボロン酸基14で被覆された検出表面16が、ゲート12上に直接形成されている構成を説明したが、検出表面16はゲート12としての検出媒体から離間して形成されてもよい。
図9は、そのような例の模式図を示すものである。すなわち、この例では、ゲート上に第1の金属層25が設けられ、この第1の金属層25と配線を介して接続された第2の金属層26に、上記のような検出表面16が形成されてなる。なお、ここで説明した以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
このような構成によっても、上記第1の実施形態と全く同様の効果を得ることができる。
(第3、第4の実施形態)
また、上述した第1、第2の実施形態では、FETを用いた例であったが、本願発明はこれに限定されるものではい。第3、第4の実施形態では、他の例として、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)、及びQuartz Crystal Microbalance(QCM)をそれぞれ用いている。
なお、以下に説明する第3および第4の実施形態では、説明の便宜上、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は簡略した。
図10は、第3の実施形態として、前記SPRを用いた場合の例を示す模式図である。
SPRとは、固相基板28の一端面から金属層13に臨界角以上の角度でレーザー光Lを入射させ、これにより、金属層13と、この金属層13の表面に被覆された試料との境界面に表面プラズモンを発生させるものである。
この例では、固相基板28上に設けられた金属層13にフェニルボロン酸基14を被覆させ、この固相基板28の一端面から測定光照射手段29によって臨界角以上の角度でレーザー光Lを入射している。そして、これによって生じる反射光強度の変化を反射光測定手段30によって検出し、その光学強度の減衰からフェニルボロン酸基被覆面の屈折率を求め、被検試料、すなわち細胞糖鎖由来のシアル酸を分析する。
本願発明に係るバイオセンサ8としてSPRを用いる場合、表面プラズモン共鳴を起こす方法としては光ファイバー、プリズム、回折格子、光導波路等を用いる光学系を使用することができ、その材料、即ちバイオセンサにおける固相基板材料としては、ガラス、ポリマー樹脂、プラスティック等を使用することができる。表面プラズモン共鳴における測定の対象は、光の波長であっても入射反射の角度であってもよく、光源としてはLED、LD、白色光等を、反射光測定手段30としてはCCD、PD、光位置センサ等を用いることができる。
図11は、第4の実施形態として、前記QCMを用いた場合の例を示す模式図である。
QCMセンサ33とは、水晶振動子34の共振周波数変化から、水晶振動子34表面に吸着または結合した微量物質の質量を測定できる小型で高感度な質量検出器である。このQCMセンサ33を用いた検出システムでは、フェニルボロン酸基14が被覆された電極表面35がシアル酸試料(溶液又はガス)に接着するようにQCMセンサ33を配置している。そして、フェニルボロン酸基14とシアル酸試料との結合することによる電気的特性の変化、例えば、発振回路部36の発振周波数等の変化を計測部37によって計測する。
QCMセンサをシアル酸検出に利用する場合は、シアル酸に結合するフェニルボロン酸基14を水晶振動子34の電極表面34上に形成したものを固相として用いることが好ましい。この水晶振動子34をバッファー溶液で満たした容器の中に設置し、次にシアル酸を含む試料(細胞、又は細胞から得た糖鎖試料を)を添加する。シアル酸は、水晶振動子34の電極表面35上の固相に形成したフェニルボロン酸基14に結合して質量負荷となり、水晶振動子34の共振周波数を低下させる。QCMセンサの利点は、周波数変化量から直接、質量変化量が得られるので検量線が不要な点である。
1…検出システム
2…プリント実装基板
3…バイオセンサ部
4…センサ駆動回路部
5…給電部
6…検出回路部
7…出力インタフェース部
8…バイオセンサ
9…半導体基板
10…ソース
11…ドレイン
12…ゲート
13…金属層
14…フェニルボロン酸基
15…測定セル壁
16…検出表面
17…参照電極
18…電流計
19…電源
20…糖鎖
21…シアル酸
22…負電荷
23…自己組織化単分子膜(SAM)
25…第1の金属層
26…第2の金属層
28…固相基板
29…測定光照射手段
30…反射光測定手段
33…QCMセンサ
34…水晶振動子
35…電極表面
36…発振回路部
37…計測部
L…レーザー光

Claims (16)

  1. 検出表面を有し、この検出表面が、細胞糖鎖由来のシアル酸と結合するフェニルボロン酸基で被覆されている
    ことを特徴とするバイオセンサであって、
    金属層と、
    この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、
    この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基と
    を有するものであり、
    前記自己組織化単分子膜に結合した前記フェニルボロン酸基は、メタ−アミド置換基構造を有するものである
    ことを特徴とするバイオセンサ。
  2. 請求項1記載のバイオセンサにおいて、
    前記検出表面にシアル酸が結合することによる光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的特性のいずれか1以上の変化を検出するための検出媒体を有し、
    前記検出表面はこの検出媒体に形成されている
    ことを特徴とするバイオセンサ。
  3. 請求項2記載のバイオセンサにおいて、
    前記検出媒体は、電界効果トランジスタのゲートである
    ことを特徴とするバイオセンサ。
  4. 請求項3記載のバイオセンサにおいて、
    前記ゲート上に前記金属層が設けられていること
    を特徴とするバイオセンサ。
  5. 請求項3記載のバイオセンサにおいて、
    前記金属層は、
    前記ゲート上に設けられた第1の金属層と、
    前記ゲートから離間して設けられ、前記第1の金属層と導電性配線を介して接続された第2の金属層とを有するものであり、
    前記検出表面は前記第2の金属層に形成されている
    ことを特徴とするバイオセンサ。
  6. 請求項2記載のバイオセンサにおいて、
    前記検出媒体は、その外面に前記検出表面が形成されてなる光導波部材または圧電部材であり、
    前記シアル酸が前記フェニルボロン酸基に結合した際に、前記光導波部材または圧電部材と検出表面との境界部分での光学特性及び/又は振動特性が変化される
    ものであることを特徴とするバイオセンサ。
  7. 細胞糖鎖由来のシアル酸を検出する方法であって、
    細胞糖鎖を含有する被験試料を用意する工程と、
    検出表面を有し、この検出表面が、前記被験試料中のシアル酸と結合するフェニルボロン酸基で被覆されているバイオセンサを用意する工程と、
    前記用意した被験試料を前記バイオセンサに接触させる工程と、
    前記被験試料中のシアル酸と前記フェニルボロン酸基とが反応することによって変化する光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的信号を検出する工程と、
    を有するものである方法であって、
    前記バイオセンサは、
    金属層と、
    この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、
    この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基と
    を有するものであり、
    前記フェニルボロン酸基は、メタ−アミド置換基構造を有するものである
    ことを特徴とする方法。
  8. 請求項7記載の方法において、
    前記検出する工程は、
    前記検出表面にシアル酸が結合することによる光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的特性のいずれか1以上の変化を検出するための検出媒体を介して行われ、
    前記検出表面はこの検出媒体に形成されているものである
    ことを特徴とする方法。
  9. 請求項8記載の方法において、
    前記検出する工程は、前記検出媒体としての電界効果トランジスタのゲートを介しておこなわれるものである
    ことを特徴とする方法。
  10. 請求項9記載の方法において、
    前記バイオセンサは、
    ゲート上に金属層が設けられている
    ことを特徴とする方法。
  11. 請求項9記載の方法において、
    このバイオセンサは、
    前記ゲート上に設けられた第1の金属層と、
    前記ゲートから離間して設けられ、前記第1の金属層と導電性配線を介して接続された第2の金属層を有するものであり、
    この第2の金属層上には、化学吸着により形成された有機分子の前記自己組織化単分子膜と、
    前記自己組織化単分子膜の上記基板とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基と
    を有するものであることを特徴とする方法。
  12. 請求項8記載の方法において、
    前記検出する工程は、外面に前記検出表面が形成されてなる光導波部材または圧電部材である検出媒体を介して行われ、
    前記シアル酸が前記フェニルボロン酸基に結合した際の、前記光導波部材または圧電部材と検出表面との境界部分での光学特性及び/又は振動特性の変化を検出するものである
    ことを特徴とする方法。
  13. 請求項1記載のバイオセンサを含む、細胞糖鎖由来のシアル酸を検出するための検出キット。
  14. 生体由来の試料中における疾患細胞の存否を判定する方法であって、
    生体から採取された糖鎖を含有する被検試料を用意する工程と、
    検出表面を有し、この検出表面が、前記被験試料中のシアル酸と結合するフェニルボロン酸基で被覆されているバイオセンサを用意する工程と、
    前記採取した被験試料を前記バイオセンサに接触させる工程と、
    前記被験試料中のシアル酸と前記フェニルボロン酸基とが反応することによって変化する光特性、振動特性、電気的特性を含む物理的信号を検出する工程と、
    前記検出した物理的信号と、正常細胞を前記バイオセンサに供した際に得られる物理的信号とを比較する工程と、
    前記比較した結果に基づいて、前記被験試料が疾患細胞であるか否かを判定する工程と
    を有するものであり、
    前記バイオセンサは、
    金属層と、
    この金属層上に化学吸着により形成された有機分子の自己組織化単分子膜と、
    この自己組織化単分子膜の上記金属層とは反対側の面に導入され前記検出表面を構成するフェニルボロン酸基と
    を有するものであり、
    前記フェニルボロン酸基は、メタ−アミド置換基構造を有するものである
    ことを特徴とする方法。
  15. 請求項14記載の方法において、
    前記疾患は、糖尿病、肺癌、食道癌、胃癌、直腸癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、皮膚癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、膣癌、白血病、骨肉腫、脳腫瘍、脊髄腫瘍、神経芽細胞腫、甲状腺癌、前立腺癌、外陰癌から成る群から選択されるものである、方法。
  16. 請求項14記載の方法において、
    前記判定する工程は、
    前記検出した物理的信号に係る値/前記正常細胞における物理的信号に係る値
    によって得られる値が0.9以下、または1.1以上である場合に疾患細胞であると判定するものである、方法。
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