以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[第1実施形態]
本実施形態に係る回路基板は、表面に樹脂被膜を形成し、前記樹脂被膜の外表面を基準として前記樹脂被膜の厚み分を超える深さの凹部を形成することによって、所望の形状及び深さの回路溝を形成し、前記回路溝の表面及び前記樹脂被膜の表面にめっき触媒又はその前駆体を被着させ、前記樹脂被膜を剥離することによって形成された絶縁基材と、前記絶縁基材に無電解めっきを施すことによって、前記回路溝上に形成された無電解めっき膜とを備え、前記無電解めっき膜の厚みが、前記回路溝の深さに対して、0.5以下であることを特徴とする。
まず、本発明の第1実施形態に係る回路基板を製造する方法について説明する。具体的には、絶縁基材表面に樹脂被膜を形成する被膜形成工程と、前記樹脂被膜の外表面を基準として前記樹脂被膜の厚み分を超える深さの凹部を形成することにより、前記絶縁基材に所望の形状及び深さの回路溝を形成する回路溝形成工程と、前記回路溝の表面及び前記樹脂被膜の表面にめっき触媒又はその前駆体を被着させる触媒被着工程と、前記絶縁基材から前記樹脂被膜を除去する被膜除去工程と、前記樹脂被膜が除去された絶縁基材に無電解めっきを施して、無電解めっき膜を形成するめっき処理工程とを備え、前記めっき処理工程において、前記無電解めっき膜の厚みが、前記回路溝の深さに対して、0.5以下となるように無電解めっき膜を形成する製造方法である。
まず、本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法について説明する。図1は、第1実施形態に係る回路基板の製造方法における各工程を説明するための模式断面図である。
はじめに、図1(A)に示すように、絶縁基材1の表面に樹脂被膜2を形成させる。なお、この工程は、被膜形成工程に相当する。
次に、図1(B)に示すように、前記樹脂被膜2の外表面を基準として前記樹脂被膜2の厚み分以上の深さの回路溝3を形成させる。また、必要に応じて、前記絶縁基材1に、前記回路溝3の一部として、貫通孔4を形成するための穴あけを行ってもよい。また、前記回路溝3によって、無電解めっきによって無電解めっき膜が形成される部分、すなわち、電気回路が形成される部分が規定される。なお、この工程は、回路溝形成工程に相当する。
次に、図1(C)に示すように、前記回路溝3の表面及び前記回路溝3が形成されなかった前記樹脂被膜2の表面にめっき触媒又はその前駆体5を被着させる。なお、この工程は、触媒被着工程に相当する。
次に、図1(D)に示すように、前記絶縁基材1から前記樹脂被膜2を除去させる。そうすることによって、前記絶縁基材1の、前記回路溝3が形成された部分の表面にのみめっき触媒又はその前駆体5を残留させることができる。一方、前記樹脂被膜2の表面に被着されためっき触媒又はその前駆体5は、前記樹脂被膜2に担持された状態で、前記樹脂被膜2とともに除去される。なお、この工程は、被膜除去工程に相当する。
次に、前記樹脂被膜2が除去された絶縁基材1に無電解めっきを施す。そうすることによって、前記めっき触媒又はその前駆体5が残存する部分にのみ無電解めっき膜6が形成される。すなわち、図1(E)に示すように、前記回路溝3が形成された部分に、電気回路6となる無電解めっき膜が形成される。そして、この電気回路6は、この無電解めっき膜からなるものであってもよいし、前記無電解めっき膜にさらに無電解めっき(フィルアップめっき)を施して、さらに厚膜化させたものであってもよい。具体的には、前記無電解めっき膜6の厚みが、前記回路溝3の深さに対して、0.5以下となるように無電解めっき膜6を形成すればよい。すなわち、前記無電解めっき膜6の厚み/前記回路溝3の深さが、0.5以下となるように無電解めっき膜6を形成すればよい。また、前記無電解めっき膜6の厚みが、前記回路溝3の深さに対して、0.25以上となるように無電解めっき膜6を形成することが好ましい。すなわち、前記無電解めっき膜6の厚み/前記回路溝3の深さが、0.25以上となるように無電解めっき膜6を形成することが好ましい。なお、この工程は、めっき処理工程に相当する。
上記各工程によって、図1(E)に示すような回路基板10が形成される。このように形成された回路基板10は、前記絶縁基材1上に高精度に前記電気回路6が形成されたものである。
上述したような、回路基板の製造方法において、前記回路溝3及び前記無電解めっき膜(電気回路)6の形状や大きさは、以下のようになる。図2は、前記回路溝形成工程後と前記めっき処理工程後の絶縁基材1の状態を説明するための図面である。なお、図2(A)は、前記回路溝形成工程後を示し、図2(B)は、前記めっき処理工程後を示す。
まず、前記回路溝3の形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記回路溝3の長手方向に対して垂直な断面が、矩形状であってもよいし、図2(A)に示すようなU字状であってもよいが、U字状であることが、配線(電気回路)の断面積に対する配線の周の長さが長くなり、伝播損失、特に高周波信号の伝播損失が低減できる点から好ましい。
また、前記無電解めっき膜6の厚みTは、前記回路溝3の深さDに対して、所定の関係を満たす厚みであれば、特に限定されない。具体的には、T/Dが0.5以下となるような厚みであれば、特に限定されない。また、前記無電解めっき膜6の厚みTは、T/Dが0.25以上となるような厚みであることが好ましい。
前記無電解めっき膜6の厚みTが薄すぎると、電気回路(配線)の電気抵抗が増大する傾向がある。また、前記無電解めっき膜6の厚みTが厚すぎると、前述した、伝播損失、特に高周波信号の伝播損失が低減できるというメリットが低下する傾向がある。
前記回路溝3の深さDに対する前記無電解めっき膜6の厚みT(T/D)が小さすぎると、電気回路(配線)の電気抵抗が増大し、熱履歴等によるオープン不良の危険性が高まる傾向がある。また、T/Dが大きすぎると、前述した、伝播損失、特に高周波信号の伝播損失が低減できるというメリットが低下する傾向がある。
また、前記無電解めっき膜6の具体的な厚みTは、前記回路溝3の深さDによって異なるが、例えば、0.1〜10μmであることが好ましい。
また、前記回路溝3の深さDは、上記T/Dの関係を満たせば、特に限定されないが、具体的には、例えば、1〜5μmであることが好ましい。
また、前記回路溝3及び前記無電解めっき膜(電気回路)6の大きさは、具体的には、例えば、前記無電解めっき膜6の具体的な厚みTが5μmである場合、前記回路溝3の深さDが20μmや10μmであることが考えられる。このときの前記T/Dは、0.25や0.5となる。
なお、前記回路溝3及び前記無電解めっき膜(電気回路)6の大きさは、例えば、前記回路溝3の長手方向に対して垂直な断面をSEM観察することによって、測定することができる。
以下、本実施形態の各構成について、説明する。
<被膜形成工程>
被膜形成工程は、上述したように、絶縁基材1の表面に樹脂被膜2を形成させる工程である。
(絶縁基材)
前記被膜形成工程において用いる絶縁基材1は、回路基板の製造に用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、樹脂を含む樹脂基材等が挙げられる。
前記樹脂基材としては、回路基板、例えば、多層回路基板の製造に用いられうる各種有機基板が特に限定なく採用可能である。有機基板の具体例としては、従来から多層回路基板の製造に使用される、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂等からなる基板が挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、回路基板の製造に用いられうる各種有機基板を構成するエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、難燃性を付与するために、臭素化又はリン変性した、上記エポキシ樹脂、窒素含有樹脂、シリコーン含有樹脂等も挙げられる。また、前記エポキシ樹脂及び樹脂としては、上記各エポキシ樹脂および樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記各樹脂で基材を構成する場合、一般的に、硬化させるために、硬化剤を含有させる。前記硬化剤としては、硬化剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミノトリアジンノボラック系硬化剤、シアネート樹脂等が挙げられる。前記フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラック型、アラルキル型、テルペン型等が挙げられる。更に難燃性を付与するためリン変性したフェノール樹脂または、リン変性したシアネート樹脂等もあげられる。また、前記硬化剤としては、上記各硬化剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また特に限定されないが、レーザ加工により回路パターンを形成することから、100〜400nm波長領域でのレーザ光の吸収率が良い樹脂等用いることが好ましい。例えば、具体的には、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、前記絶縁基材(絶縁層)には、フィラーを含有していてもよい。前記フィラーとしては、無機微粒子であっても、有機微粒子であってもよく、特に限定されない。フィラーを含有することで、レーザ加工部にフィラーが露出し、フィラーの凹凸によるメッキと樹脂との密着をあげることが可能である。
前記無機微粒子を構成する材料としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ(SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化チタン(TiO2)等の高誘電率充填材;ハードフェライト等の磁性充填材;水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)2)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、五酸化アンチモン(Sb2O5)、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブテン化合物、スズ酸亜鉛等の無機系難燃剤;タルク(Mg3(Si4O10)(OH)2)、硫酸バリウム(BaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、雲母等が挙げられる。前記無機微粒子としては、上記無機微粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの無機微粒子は、熱伝導性、比誘電率、難燃性、粒度分布、色調の自由度等が高いことから、所望の機能を選択的に発揮させる場合には、適宜配合及び粒度設計を行って、容易に高充填化を行うことができる。また特に限定はされないが、絶縁層の厚み以下の平均粒径のフィラーを用いるのが好ましく、更には0.01〜10μm、更に好ましくは、0.05μm〜5μmの平均粒径のフィラーを用いるのがよい。
また、前記無機微粒子は、前記絶縁基材中での分散性を高めるために、シランカップリング剤で表面処理してもよい。また、前記絶縁基材は、前記無機微粒子の、前記絶縁基材中での分散性を高めるために、シランカップリング剤を含有してもよい。前記シランカップリング剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、エポキシシラン系、メルカプトシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系、スチリルシラン系、メタクリロキシシラン系、アクリロキシシラン系、チタネート系等のシランカップリング剤等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、上記シランカップリング剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記絶縁基材は、前記無機微粒子の、前記絶縁基材中での分散性を高めるために、分散剤を含有してもよい。前記分散剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、アルキルエーテル系、ソルビタンエステル系、アルキルポリエーテルアミン系、高分子系等の分散剤等が挙げられる。前記分散剤としては、上記分散剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(樹脂被膜)
前記樹脂被膜2は、前記被膜除去工程で除去可能なものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、有機溶剤やアルカリ溶液により容易に溶解しうる可溶型樹脂や、後述する所定の液体(膨潤液)で膨潤しうる樹脂からなる膨潤性樹脂被膜等が挙げられる。これらの中では、正確な除去が容易である点から膨潤性樹脂被膜が特に好ましい。また、前記膨潤性樹脂被膜としては、例えば、前記液体(膨潤液)に対する膨潤度が50%以上であることが好ましい。なお、前記膨潤性樹脂被膜には、前記液体(膨潤液)に対して実質的に溶解せず、膨潤により前記絶縁基材1表面から容易に剥離するような樹脂被膜だけではなく、前記液体(膨潤液)に対して膨潤し、さらに少なくとも一部が溶解し、その膨潤や溶解により前記絶縁基材1表面から容易に剥離するような樹脂被膜や、前記液体(膨潤液)に対して溶解し、その溶解により前記絶縁基材1表面から容易に剥離するような樹脂被膜も含まれる。
前記樹脂被膜2の形成方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記絶縁基材1の表面に、樹脂被膜を形成しうる液状材料を塗布した後、乾燥させる方法や、支持基板に前記液状材料を塗布した後、乾燥することにより形成される樹脂被膜を絶縁基材1の表面に転写する方法等が挙げられる。なお、液状材料を塗布する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、従来から知られたスピンコート法やバーコータ法等が挙げられる。
前記樹脂被膜2の厚みとしては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。一方、前記樹脂被膜2の厚みとしては、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。前記樹脂被膜2の厚みが厚すぎる場合には、前記回路溝形成工程におけるレーザ加工又は機械加工によって形成される回路溝や貫通孔等の精度が低下する傾向がある。また、前記樹脂被膜2の厚みが薄すぎる場合は、均一な膜厚の樹脂被膜を形成しにくくなる傾向がある。
次に、前記樹脂被膜2として好適な膨潤性樹脂被膜を例に挙げて説明する。
前記膨潤性樹脂被膜としては、膨潤液に対する膨潤度が50%以上である樹脂被膜が好ましく用いられうる。さらに、膨潤液に対する膨潤度が100%以上である樹脂被膜がより好ましい。なお、前記膨潤度が低すぎる場合には、前記被膜除去工程において膨潤性樹脂被膜が剥離しにくくなる傾向がある。
前記膨潤性樹脂被膜の形成方法は、特に限定されず、上述した樹脂被膜2の形成方法と同様の方法であればよい。具体的には、例えば、前記絶縁基材1の表面に、膨潤性樹脂被膜を形成しうる液状材料を塗布した後、乾燥させる方法や、支持基板に前記液状材料を塗布した後、乾燥することにより形成される膨潤性樹脂被膜を絶縁基材1の表面に転写する方法等が挙げられる。
前記膨潤性樹脂被膜を形成しうる液状材料としては、例えば、エラストマーのサスペンジョン又はエマルジョン等が挙げられる。前記エラストマーの具体例としては、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体等のジエン系エラストマー、アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマー等が挙げられる。このようなエラストマーによれば、サスペンジョン又はエマルジョンとして分散されたエラストマー樹脂粒子の架橋度又はゲル化度等を調整することにより所望の膨潤度の膨潤性樹脂被膜を容易に形成することができる。
また、前記膨潤性樹脂被膜としては、特に、膨潤度が膨潤液のpHに依存して変化するような被膜であることが好ましい。このような被膜を用いた場合には、前記触媒被着工程における液性条件と、前記被膜除去工程における液性条件とを異なるものにすることにより、触媒被着工程におけるpHにおいては膨潤性樹脂被膜は絶縁基材に対する高い密着力を維持し、被膜除去工程におけるpHにおいては容易に膨潤性樹脂被膜を剥離させることができる。
さらに具体的には、例えば、前記触媒被着工程が、例えば、pH1〜3の範囲の酸性めっき触媒コロイド溶液(酸性触媒金属コロイド溶液)中で処理する工程を備え、前記被膜除去工程がpH12〜14の範囲のアルカリ性溶液中で膨潤性樹脂被膜を膨潤させる工程を備える場合には、前記膨潤性樹脂被膜は、前記酸性めっき触媒コロイド溶液に対する膨潤度が50%未満、さらには40%以下であり、前記アルカリ性溶液に対する膨潤度が50%以上、さらには100%以上、さらには500%以上であるような樹脂被膜であることが好ましい。
このような膨潤性樹脂被膜の例としては、所定量のカルボキシル基を有するエラストマーから形成されるシートや、プリント配線板のパターニング用のドライフィルムレジスト(以下、DFRとも呼ぶ)等に用いられる光硬化性のアルカリ現像型のレジストを全面硬化して得られるシートや、熱硬化性やアルカリ現像型シート等が挙げられる。
カルボキシル基を有するエラストマーの具体例としては、カルボキシル基を有するモノマー単位を共重合成分として含有することにより、分子中にカルボキシル基を有する、スチレン−ブタジエン系共重合体等のジエン系エラストマー;アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル系エラストマー;及びポリエステル系エラストマー等が挙げられる。このようなエラストマーによれば、サスペンジョン又はエマルジョンとして分散されたエラストマーの、酸当量,架橋度またはゲル化度等を調整することにより所望のアルカリ膨潤度を有する膨潤性樹脂被膜を形成することができる。エラストマー中のカルボキシル基はアルカリ水溶液に対して膨潤性樹脂被膜を膨潤させて、絶縁基材表面から膨潤性樹脂被膜を剥離する作用をする。また、酸当量とは、1当量のカルボキシル基当たりのポリマー重量である。
カルボキシル基を有するモノマー単位の具体例としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、及びマレイン酸無水物等が挙げられる。
このようなカルボキシル基を有するエラストマー中のカルボキシル基の含有割合としては、酸当量で100〜2000、さらには100〜800であることが好ましい。酸当量が小さすぎる場合には、溶媒または他の組成物との相溶性が低下することにより、めっき前処理液に対する耐性が低下する傾向がある。また、酸当量が大きすぎる場合には、アルカリ水溶液に対する剥離性が低下する傾向がある。
また、エラストマーの分子量としては、1万〜100万、さらには、2万〜6万であることが好ましい。エラストマーの分子量が大きすぎる場合には剥離性が低下する傾向があり、小さすぎる場合には粘度が低下するために膨潤性樹脂被膜の厚みを均一に維持することが困難になるとともに、めっき前処理液に対する耐性も悪化する傾向がある。
また、前記樹脂被膜としては、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と(b)前記(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体を重合させることで得られる重合体樹脂又は前記重合体樹脂を含む樹脂組成物からなるものが挙げられる。
前記樹脂組成物としては、メイン樹脂として前記重合体樹脂を必須成分とし、オリゴマー、モノマー、フィラーやその他添加剤の少なくとも1種類を添加してもよい。メイン樹脂は、熱可塑的性質を持ったリニア型のポリマーが良い。流動性、結晶性等をコントロールするためにグラフトさせて枝分かれさせることもある。その分子量としては、重量平均分子量で1000〜500000程度であり、5000〜50000が好ましい。分子量が小さすぎると、膜の屈曲性やめっき核付け薬液耐性(耐酸性)が低下する傾向がある。また、分子量が大きすぎると、アルカリ剥離性やドライフィルムにした場合の貼り付け性が悪くなる傾向がある。さらに、めっき核付け薬液耐性向上やレーザ加工時の熱変形抑制、流動制御のために架橋点を導入してもよい。
メイン樹脂としての前記重合体樹脂の組成としては、上述したように、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の単量体と(b)前記(a)単量体と重合しうる単量体を重合させることで得られる。公知技術としては、例えば、特開平7−281437号公報や特開2000−231190号公報、特開2001−201851号公報に記載のもの等が挙げられる。
(a)の一例として、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、単独、もしくは2種類以上を組み合わせても良い。
(b)の例としては、非酸性で分子中に重合性不飽和基を(一個)有するものが一般的であり、その限りではない。めっき工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert.−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類がある。また酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等がある。また上記の重合性不飽和基を分子中に一個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらには、3次元架橋できるように、重合体に用いる単量体に複数の不飽和基を持つ単量体を選定する、分子骨格にエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、ビニル基などの反応性官能基を導入することができる。樹脂中に含まれるカルボキシル基の量は酸当量で100〜2000が良く、100〜800が好ましい。ここで酸当量とはその中に1当量のカルボキシル基を有するポリマーの重量をいう。その酸当量が低すぎる場合、溶媒または他の組成物との相溶性の低下やめっき前処理液耐性が低下する傾向がある。また、酸当量が高すぎる場合、剥離性が低下する傾向がある。また(a)単量体の組成比率は5〜70質量%である。
モノマーやオリゴマーとしては、めっき核付け薬液への耐性やアルカリで容易に除去できるようなものであれば何でも良い。またドライフィルム(DFR)の貼り付け性を向上させるために粘着性付与材として可塑剤的に用いることが考えられる。さらに各種耐性をあげるために架橋剤を添加する。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert.−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類がある。また酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等がある。また上記の重合性不飽和基を分子中に一個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらに、多官能性不飽和化合物を含んでも良い。上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。上記のモノマー以外に他の光重合性モノマーを二種類以上含むことも可能である。モノマーの例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等がある。上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。
さらに、フィラーを含有してもよい。フィラーは特に限定されないが、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、酸化亜鉛、タルク、マイカ、ガラス、チタン酸カリウム、ワラストナイト、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、有機フィラー等が挙げられる。またレジストの厚みは、一般的に1〜10μmと薄いため、フィラーサイズも小さいものが好ましい。平均粒径が小さく、粗粒をカットしたものを用いることが良いが、分散時に砕いたり、ろ過で粗粒を除去することもできる。
その他の添加剤としては、例えば、光重合性樹脂(光重合開始剤)、重合禁止剤、着色剤(染料、顔料、発色系顔料)、熱重合開始剤、エポキシやウレタンなどの架橋剤等が挙げられる。
本発明のプリント板加工プロセスでは、例えば、レーザ加工が用いられる場合があるが、レーザ加工の場合、レジスト材料にレーザによるアブレーション性を付与することが必要である。レーザ加工機は炭酸ガスレーザやエキシマレーザ、UV−YAGレーザなどが選定される。これらのレーザ加工機は種々の固有の波長を持っており、この波長に対して吸収率の高い材料にすることで、生産性を向上させることができる。そのなかでもUV−YAGレーザは微細加工に適しており、レーザ波長は3倍高調波355nm、4倍高調波266nmであるため、これらの波長に対して、吸収率が高いことが望ましい。一方、吸収率がある程度低い材料のほうが好ましい場合もある。具体的には、例えば、UV吸収率の低いレジストを用いると、UV光がレジストを透過するので、下地の絶縁層加工にエネルギを集中させることができる。すなわち、レーザ光の吸収率によって、利点が異なるので、状況に応じて、レジストのレーザ光の吸収率を調整したレジストを用いることが好ましい。
また、DFRとしては、所定量のカルボキシル基を含有する、アクリル系樹脂;エポキシ系樹脂;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;ウレタン系樹脂等を樹脂成分とし、光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物のシートが用いられうる。このようなDFRの具体例としては、特開2000−231190号公報、特開2001−201851号公報、特開平11−212262号公報に開示されたような光重合性樹脂組成物のドライフィルムを全面硬化させて得られるシートや、アルカリ現像型のDFRとして市販されている、例えば、旭化成株式会社製のUFGシリーズ等が挙げられる。
さらに、その他の膨潤性樹脂被膜の例としては、カルボキシル基を含有する、ロジンを主成分とする樹脂(例えば、吉川化工株式会社製の「NAZDAR229」)やフェノールを主成分とする樹脂(例えば、LEKTRACHEM社製「104F」)等が挙げられる。
膨潤性樹脂被膜は、絶縁基材表面に樹脂のサスペンジョン又はエマルジョンを従来から知られたスピンコート法やバーコータ法等の塗布手段を用いて塗布した後、乾燥する方法や、支持基板に形成されたDFRを真空ラミネータ等を用いて絶縁基材表面に貼りあわせた後、全面硬化することにより容易に形成することができる。
また、前記樹脂被膜としては、上記のものに加えて、以下のようなものが挙げられる。例えば、前記樹脂被膜を構成するレジスト材料としては、以下のようなものが挙げられる。
前記樹脂被膜を構成するレジスト材料に必要な特性としては、例えば、(1)後述の触媒被着工程で、樹脂被膜が形成された絶縁基材を浸漬させる液体(めっき核付け薬液)に対する耐性が高いこと、(2)後述の被膜除去工程、例えば、樹脂被膜が形成された絶縁基材をアルカリに浸漬させる工程によって、樹脂被膜(レジスト)が容易に除去できること、(3)成膜性が高いこと、(4)ドライフィルム(DFR)化が容易なこと、(5)保存性が高いこと等が挙げられる。
めっき核付け薬液としては、後述するが、例えば、酸性Pd−Snコロイドキャタリストシステムの場合、全て酸性(pH1〜2)水溶液である。また、アルカリ性Pdイオンキャタリストシステムの場合は、触媒付与アクチベーターが弱アルカリ(pH8〜12)であり、それ以外は酸性である。以上のことから、めっき核付け薬液に対する耐性としては、pH1〜11、好ましくはpH1〜12に耐えることが必要である。なお、耐えうるとは、レジストを成膜したサンプルを薬液に浸漬した際、レジストの膨潤や溶解が充分に抑制され、レジストとしての役割を果たすことである。また、浸漬温度は、室温〜60℃、浸漬時間は、1〜10分間、レジスト膜厚は、1〜10μm程度が一般的であるが、これらに限定されない。
被膜除去工程に用いるアルカリ剥離の薬液としては、後述するが、例えば、NaOH水溶液や炭酸ナトリウム水溶液が一般的である。そのpHは、11〜14であり、好ましくはpH12から14でレジスト膜が簡単に除去できることが望ましい。NaOH水溶液濃度は、1〜10%程度、処理温度は、室温〜50℃、処理時間は、1〜10分間で、浸漬やスプレイ処理をすることが一般的であるが、これらに限定されない。
絶縁材料上にレジストを形成するため、成膜性も重要となる。はじき等がない均一性な膜形成が必要である。また、製造工程の簡素化や材料ロスの低減等のためにドライフィルム化されるが、ハンドリング性を確保するためにフィルムの屈曲性が必要である。また絶縁材料上にドライフィルム化されたレジストをラミネーター(ロール、真空)で貼り付ける。貼り付けの温度は、室温〜160℃、圧力や時間は任意である。このように、貼り付け時に粘着性が求められる。そのために、ドライフィルム化されたレジストはゴミの付着防止も兼ねて、キャリアフィルム、カバーフィルムでサンドイッチされた3層構造にされることが一般的であるが、これらに限定されない。
保存性は、室温での保存できることがもっとも良いが、冷蔵、冷凍での保存ができることも必要である。このように低温時にドライフィルムの組成が分離したり、屈曲性が低下して割れたりしないようにすることが必要である。
レジスト材料の樹脂組成は、メイン樹脂(バインダー樹脂)を必須成分とし、オリゴマー、モノマー、フィラーやその他添加剤の少なくとも1種類を添加してもよい。
メイン樹脂は熱可塑的性質を持ったリニア型のポリマーが良い。流動性、結晶性などをコントロールするためにグラフトさせて枝分かれさせることもある。その分子量としては、数平均分子量で1000〜500000程度であり、5000〜50000が好ましい。分子量が小さすぎると、膜の屈曲性やめっき核付け薬液耐性(耐酸性)が低下する傾向がある。また、分子量が大きすぎると、アルカリ剥離性やドライフィルムにした場合の貼り付け性が悪くなる傾向がある。さらに、めっき核付け薬液耐性向上やレーザー加工時の熱変形抑制、流動制御のために架橋点を導入してもよい。
メイン樹脂の組成としては、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸または酸無水物の単量体と(b)(a)単量体と重合しうる単量体を重合させることで得られる。公知技術としては、例えば、特開平7−281437号公報、特開2000−231190号公報、及び特開2001−201851号公報に記載のもの等が挙げられる。(a)の一例として、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、単独、もしくは2種類以上を組み合わせても良い。(b)の例としては、非酸性で分子中に重合性不飽和基を(一個)有するものが一般的であり、その限りではない。めっき工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert.−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。また、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等が挙げられる。また、上記の重合性不飽和基を分子中に一個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらには、3次元架橋できるように、重合体に用いる単量体に複数の不飽和基を持つ単量体を選定する、分子骨格にエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、ビニル基などの反応性官能基を導入することができる。樹脂中にカルボキシル基が含まれる場合、樹脂中に含まれるカルボキシル基の量は、酸当量で100〜2000が良く、100〜800が好ましい。ここで酸当量とはその中に1当量のカルボキシル基を有するポリマーの重量をいう。その酸当量が低すぎる場合、溶媒または他の組成物との相溶性の低下やめっき前処理液耐性が低下する傾向がある。また、酸当量が高すぎる場合、剥離性が低下する傾向がある。また、(a)単量体の組成比率は、5〜70重量%である。
モノマーやオリゴマーとしては、めっき核付け薬液への耐性やアルカリで容易に除去できるようなものであれば何でも良い。またドライフィルム(DFR)の貼り付け性を向上させるために粘着性付与材として可塑剤的に用いることが考えられる。さらに各種耐性をあげるために架橋剤を添加する。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert.−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。また、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等も挙げられる。また、上記の重合性不飽和基を分子中に一個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらに、多官能性不飽和化合物を含んでも良い。上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。上記のモノマー以外に他の光重合性モノマーを二種類以上含むことも可能である。このモノマーの例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。
さらに、フィラーを含有してもよい。フィラーは特に限定されないが、具体的には、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、酸化亜鉛、タルク、マイカ、ガラス、チタン酸カリウム、ワラストナイト、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、有機フィラー等が挙げられる。またレジストの厚みは、一般的に1〜10μmと薄いため、フィラーサイズも小さいものが好ましい。平均粒径が小さく、粗粒をカットしたものを用いることが良いが、分散時に砕いたり、ろ過で粗粒を除去することもできる。
その他の添加剤としては、例えば、光重合性樹脂(光重合開始剤)、重合禁止剤、着色剤(染料、顔料、発色系顔料)、熱重合開始剤、エポキシやウレタンなどの架橋剤等が挙げられる。
本発明のプリント板加工プロセスでは、例えば、レーザ加工が用いられる場合があるが、レーザ加工の場合、レジスト材料にレーザによるアブレーション性を付与することが必要である。レーザ加工機は炭酸ガスレーザやエキシマレーザ、UV−YAGレーザなどが選定される。これらのレーザ加工機は種々の固有の波長を持っており、この波長に対して吸収率の高い材料にすることで、生産性を向上させることができる。そのなかでもUV−YAGレーザは微細加工に適しており、レーザ波長は3倍高調波355nm、4倍高調波266nmであるため、これらの波長に対して、吸収率が高いことが望ましい。一方、吸収率がある程度低い材料のほうが好ましい場合もある。具体的には、例えば、UV吸収率の低いレジストを用いると、UV光がレジストを透過するので、下地の絶縁層加工にエネルギを集中させることができる。すなわち、レーザ光の吸収率によって、利点が異なるので、状況に応じて、レジストのレーザ光の吸収率を調整したレジストを用いることが好ましい。
<回路溝形成工程>
回路溝形成工程は、絶縁基材1に回路溝3を形成する工程である。
前記回路溝3を形成する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記樹脂被膜2が形成された絶縁基材1に、前記樹脂被膜2の外表面側から、レーザ加工、及びダイシング加工等の切削加工や型押加工等の機械加工等を施すことにより、所望の形状及び深さの回路溝3を形成させる方法等が挙げられる。高精度の微細な回路を形成する場合には、レーザ加工を用いることが好ましい。レーザ加工によれば、レーザの出力等を変化させることにより、切削深さ等を自由に調整することができる。また、型押加工としては、例えば、ナノインプリントの分野において用いられるような微細樹脂型による型押加工が好ましく用いられうる。
また、前記回路溝3の一部として、ビアホール等を形成するための貫通孔4を形成してもよい。
この工程により、前記回路溝3の形状及び深さや前記貫通孔4の径及び位置等が規定される。また、前記回路溝形成工程は、前記樹脂被膜2の厚み分以上掘り込めばよく、前記樹脂被膜2の厚み分掘り込んでもよいし、前記樹脂被膜2の厚み分を超えて掘り込んでもよい。
前記回路溝形成工程で形成される回路溝3の幅は特に限定されない。なお、レーザ加工を用いた場合には、線幅20μm以下のような微細な回路も容易に形成できる。また、回路溝の深さは、フィルアップめっきにより、電気回路と絶縁基材とに段差をなくした場合には、本実施形態で形成する電気回路の深さとなる。
<触媒被着工程>
触媒被着工程は、前記回路溝3の表面及び前記樹脂被膜2の表面にめっき触媒又はその前駆体を被着させる工程である。このとき、貫通孔4が形成されている場合、貫通孔4内壁表面にもめっき触媒又はその前駆体を被着される。
前記めっき触媒又はその前駆体5は、前記めっき処理工程において無電解めっきにより無電解めっき膜を形成したい部分にのみ無電解めっき膜を形成させるために付与される触媒である。めっき触媒としては、無電解めっき用の触媒として知られたものであれば特に限定なく用いられうる。また、予めめっき触媒の前駆体を被着させ、樹脂被膜の除去後にめっき触媒を生成させてもよい。めっき触媒の具体例としては、例えば、金属パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)等、または、これらを生成させるような前駆体等が挙げられる。
めっき触媒又はその前駆体5を被着させる方法としては、例えば、pH1〜3の酸性条件下で処理される酸性Pd−Snコロイド溶液で処理した後、酸溶液で処理するような方法等が挙げられる。具体的には、例えば、次のような方法が挙げられる。
はじめに、回路溝3及び貫通孔4が形成された絶縁基材1の表面に付着している油分等を界面活性剤の溶液(クリーナー・コンディショナー)中で所定の時間湯洗する。次に、必要に応じて、過硫酸ナトリウム−硫酸系のソフトエッチング剤でソフトエッチング処理する。そして、pH1〜2の硫酸水溶液や塩酸水溶液等の酸性溶液中でさらに酸洗する。次に、濃度0.1%程度の塩化第一錫水溶液等を主成分とするプリディップ液に浸漬して絶縁基材1表面に塩化物イオンを吸着させるプリディップ処理を行う。その後、塩化第一錫と塩化パラジウムを含む、pH1〜3の酸性Pd−Snコロイド等の酸性めっき触媒コロイド溶液にさらに浸漬することによりPd及びSnを凝集させて吸着させる。そして、吸着した塩化第一錫と塩化パラジウムとの間で、酸化還元反応(SnCl2+PdCl2→SnCl4+Pd↓)を起こさせる。これにより、めっき触媒である金属パラジウムが析出する。
なお、酸性めっき触媒コロイド溶液としては、公知の酸性Pd−Snコロイドキャタリスト溶液等が使用でき、酸性めっき触媒コロイド溶液を用いた市販のめっきプロセスを用いてもよい。このようなプロセスは、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社からシステム化されて販売されている。
このような触媒被着処理によって、前記回路溝3の表面、前記貫通孔4の内壁表面、及び前記樹脂被膜2の表面にめっき触媒又はその前駆体5を被着させることができる。
<被膜除去工程>
被膜除去工程は、前記触媒被着工程を施した絶縁基材1から前記樹脂被膜2を除去する工程である。
前記樹脂被膜2を除去する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、所定の溶液(膨潤液)で前記樹脂被膜2を膨潤させた後に、前記絶縁基材1から前記樹脂被膜2を剥離させる方法、所定の溶液(膨潤液)で前記樹脂被膜2を膨潤させ、さらに一部を溶解させた後に、前記絶縁基材1から前記樹脂被膜2を剥離させる方法、及び所定の溶液(膨潤液)で前記樹脂被膜2を溶解させて除去する方法等が挙げられる。前記膨潤液としては、前記樹脂被膜2を膨潤させることができるものであれば、特に限定されない。また、前記膨潤又は溶解は、前記樹脂被膜2で被覆された前記絶縁基材1を前記膨潤液に所定時間浸漬させること等によって行う。そして、その浸漬中に超音波照射することにより除去効率を高めてもよい。なお、膨潤させて剥離するときには、軽い力で引き剥がしてもよい。
また、前記樹脂被膜2として、前記膨潤性樹脂被膜を用いた場合について、説明する。
前記膨潤性樹脂被膜2を膨潤させる液体(膨潤液)としては、前記絶縁基材1、及び前記めっき触媒又はその前駆体5を実質的に分解又は溶解させることなく、前記膨潤性樹脂被膜2を膨潤又は溶解させることができる液体であれば特に限定なく用いられうる。また、前記膨潤性樹脂被膜2を容易に剥離される程度に膨潤させうる液体が好ましい。このような膨潤液は、膨潤性樹脂被膜2の種類や厚みにより適宜選択されうる。具体的には、例えば、膨潤性樹脂被膜がジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマーや、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と(b)前記(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体を重合させることで得られる重合体樹脂又は前記重合体樹脂を含む樹脂組成物、カルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されている場合には、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液が好ましく用いられうる。
なお、触媒被着工程において上述したような酸性条件で処理するめっきプロセスを用いた場合には、膨潤性樹脂被膜2が、酸性条件下においては膨潤度が50%未満、好ましくは40%以下であり、アルカリ性条件下では膨潤度が50%以上であるような、例えば、ジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマー、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と(b)前記(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体を重合させることで得られる重合体樹脂又は前記重合体樹脂を含む樹脂組成物、カルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されていることが好ましい。このような膨潤性樹脂被膜は、pH12〜14であるようなアルカリ水溶液、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等により容易に膨潤し、剥離する。なお、剥離性を高めるために、浸漬中に超音波照射してもよい。また、必要に応じて軽い力で引き剥がすことにより剥離してもよい。
膨潤性樹脂被膜2を膨潤させる方法としては、膨潤液に、膨潤性樹脂被膜2で被覆された絶縁基材1を所定の時間浸漬する方法が挙げる。また、剥離性を高めるために、浸漬中に超音波照射することが特に好ましい。なお、膨潤のみにより剥離しない場合には、必要に応じて軽い力で引き剥がしてもよい。
<めっき処理工程>
めっき処理工程は、前記樹脂被膜2を除去した後の前記絶縁基材1に無電解めっき処理を施す工程である。
前記無電解めっき処理の方法としては、部分的にめっき触媒又はその前駆体5が被着された絶縁基材1を無電解めっき液に浸漬して、めっき触媒又はその前駆体5が被着された部分のみに無電解めっき膜(めっき層)を析出させるような方法等が用いられうる。
無電解めっきに用いられる金属としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。これらの中では、Cuを主成分とするメッキが導電性に優れている点から好ましい。また、Niを含む場合には、耐食性や、はんだとの密着性に優れる点から好ましい。
めっき処理工程により、絶縁基材1表面のめっき触媒又はその前駆体5が残留する部分のみに無電解めっき膜が析出する。そのために、回路溝を形成したい部分のみに正確に導電層を形成することができる。一方、回路溝を形成していない部分に対する無電解めっき膜の析出を抑制することができる。従って、狭いピッチ間隔で線幅が狭いような微細な回路を複数本形成するような場合でも、隣接する回路間に不要なめっき膜が残らない。そのために、短絡の発生やマイグレーションの発生を抑制することができる。
<検査工程>
本実施形態に係る回路基板の製造方法において、前記樹脂被膜2が蛍光性物質を含有するものであり、前記被膜除去工程の後、前記蛍光性物質からの発光を用いて被膜除去不良を検査するための検査工程をさらに備えていてもよい。すなわち、前記樹脂皮膜2に蛍光性物質を含有させることにより、被膜除去工程の後、検査対象面に紫外光や近紫外光を照射することによる蛍光性物質からの発光を用いて、被膜除去不良の有無や被膜除去不良の箇所を検査することができる。本実施形態の製造方法においては、線幅及び線間隔が極端に狭い電気回路を形成することができる。
線幅及び線間隔が極端に狭い電気回路を形成するような場合、例えば、図3に示すように、絶縁基材1表面に形成された、隣り合う電気回路8の間に、樹脂被膜が完全に除去されずに残留することが懸念される。このような場合には、その部分に無電解めっき膜が形成されてしまい、マイグレーションや短絡等の原因になりうる。このような場合であっても、上記検査工程を備えていれば、被膜除去不良の有無や被膜除去不良の箇所を検査することができる。なお、図3は、樹脂被膜に蛍光性物質を含有させて、蛍光性物質からの発光を用いて被膜除去不良を検査するための検査工程を説明するための説明図である。
前記検査工程に用いられる、樹脂皮膜2に含有させうる蛍光性物質は、所定の光源により光を照射することにより発光特性を示すものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、Fluoresceine、Eosine、Pyronine G等が挙げられる。
本検査工程により蛍光性物質からの発光が検出された部分は、樹脂皮膜2の残渣2aが残留する部分である。従って、発光が検出された部分を除去することにより、その部分に無電解めっき膜が形成されることを抑制できる。これにより、マイグレーションや短絡等の発生を未然に抑制することができる。
<デスミア処理工程>
また、本実施形態に係る回路基板の製造方法において、前記めっき処理工程を施した後、具体的には、フィルアップめっきを施す前又は施した後に、デスミア処理を施すデスミア処理工程をさらに備えていてもよい。デスミア処理を施すことによって、無電解めっき膜に付着してしまった不要な樹脂を除去することができる。また、得られた回路基板を備える多層回路基板を想定した場合、前記絶縁基材の、無電解めっき膜が形成されていない部分の表面を粗し、前記回路基板の上層等との密着性を向上させることができる。さらに、ビア底にデスミア処理を施してもよい。そうすることによって、ビア底に付着してしまった不要な樹脂を除去することができる。また、前記デスミア処理としては、特に限定されず、公知のデスミア処理を用いることができる。具体的には、例えば、過マンガン酸溶液等に浸漬する処理等が挙げられる。
上記のような工程を経て、図1(E)に示すような回路基板10が形成される。
[第2実施形態]
前記第1実施形態では、平面の絶縁基材上に電気回路を形成して得られる回路基板について説明したが、本発明は、特に、それに限定されない。具体的には、絶縁基材として、段差状の立体面を有するような三次元形状の絶縁基材を用いても、正確な配線の電気回路を備える回路基板(立体回路基板)が得られる。
以下、第2実施形態に係る立体回路基板を製造する方法について説明する。
図4は、第2実施形態に係る立体回路基板を製造する各工程を説明するための模式断面図である。
はじめに、図4(A)に示すように、段差部分を有する立体絶縁基材51の表面に樹脂被膜2を形成させる。なお、この工程は、被膜形成工程に相当する。
前記立体絶縁基材51としては、従来から知られた立体回路基板の製造に用いられうるような各種樹脂成形体が特に限定なく用いられうる。このような成形体は射出成形により得ることが、生産効率の点から好ましい。樹脂成形体を得るための樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、各種ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられる。
前記樹脂被膜2の形成方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1実施形態の場合と同様の形成方法等が挙げられる。
次に、図4(B)に示すように、前記樹脂被膜2の外表面を基準として前記樹脂被膜2の厚み分以上の深さの回路溝3を形成させる。回路溝3の形成方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1実施形態の場合と同様の形成方法等が挙げられる。前記回路溝3によって、無電解めっきによって無電解めっき膜が形成される部分、すなわち、電気回路が形成される部分が規定される。なお、この工程は、回路溝形成工程に相当する。
次に、図4(C)に示すように、前記回路溝3の表面及び前記回路溝3が形成されなかった前記樹脂被膜2の表面にめっき触媒又はその前駆体5を被着させる。めっき触媒又はその前駆体5を被着させる方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1実施形態の場合と同様の方法等が挙げられる。なお、この工程は、触媒被着工程に相当する。このような触媒被着処理により、図4(C)に示すように、回路溝3の表面、及び樹脂被膜2の表面にめっき触媒又はその前駆体5を被着させることができる。
次に、図4(D)に示すように、前記立体絶縁基材51から前記樹脂被膜2を除去させる。そうすることによって、前記立体絶縁基材51の前記回路溝3が形成された部分の表面にのみめっき触媒又はその前駆体5を残留させることができる。一方、前記樹脂被膜2の表面に被着されためっき触媒又はその前駆体5は、前記樹脂被膜2に担持された状態で、前記樹脂被膜2とともに除去される。また、前記樹脂被膜2を除去する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1実施形態の場合と同様の方法等が挙げられる。なお、この工程は、被膜除去工程に相当する。
次に、図4(E)に示すように、前記樹脂被膜2が除去された立体絶縁基材51に無電解めっきを施す。そうすることによって、前記めっき触媒又はその前駆体5が残存する部分にのみ無電解めっき膜6が形成される。すなわち、前記回路溝3や前記貫通孔4が形成された部分に、電気回路となる無電解めっき膜6が形成される。無電解めっき膜6の形成方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1実施形態の場合と同様の形成方法等が挙げられる。なお、この工程は、めっき処理工程に相当する。
上記各工程によって、図4(E)に示すような、三次元形状の立体絶縁基材51に電気回路6が形成された回路基板60が形成される。このように形成された回路基板60は、絶縁基材上に形成される電気回路の線幅及び線間隔が狭くても、電気回路を高精度に形成できる。また、本実施形態に係る回路基板は、立体回路基板の段差部を有する面にも、正確且つ容易に回路形成されている。
以下、本実施形態の製造方法を実施例により、さらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施例により何ら限定されて解釈されるものではない。
(実施例1)
厚み100μmのエポキシ樹脂基材(パナソニック電工(株)製のR1766)の表面に2μm厚のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)の被膜を形成した。なお、被膜の形成は、前記エポキシ樹脂基材の主面に、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)のメチルエチルケトン(MEK)サスペンジョン(日本ゼオン(株)製、酸当量600、粒子径200nm、固形分15%)を塗布し、80℃で30分間乾燥することにより行った。
そして、被膜が形成されたエポキシ樹脂基材に対して、レーザ加工により幅20μm、深さ20μmの、図1(B)に示すような形状の溝形成加工を行った。なお、レーザ加工にはUV−YAGレーザを備えたESI社製のMODEL5330を用いた。
次に、溝形成されたエポキシ樹脂基材をクリーナーコンディショナー(界面活性剤溶液、pH<1:ローム&ハース電子材料(株)製C/N3320)中に浸漬し、その後、水洗した。そして、過硫酸ナトリウム−硫酸系のpH<1のソフトエッチング剤でソフトエッチング処理した。そして、PD404(シプレイ・ファーイースト(株)製、pH<1)を用いてプリディップ工程を行った。そして、塩化第一錫と塩化パラジウムを含むpH1の酸性Pd−Snコロイド溶液(CAT44、シプレイ・ファーイースト(株)製)に浸漬することにより、無電解銅めっきの核となるパラジウムをスズ−パラジウムコロイドの状態でエポキシ樹脂基材に吸着させた。
次に、pH<1のアクセラレータ薬液(ACC19E、シプレイ・ファーイースト(株)製)に浸漬することにより、パラジウム核を発生させた。そして、エポキシ樹脂基材を、pH14の5%水酸化ナトリウム水溶液中に超音波処理しながら10分間浸漬した。これにより、表面のSBR被膜は膨潤し、きれいに剥離された。このとき、エポキシ樹脂基材表面にSBR被膜の断片等が残っていなかった。そして、エポキシ樹脂基材を無電解めっき液(CM328A,CM328L、CM328C、シプレイ・ファーイースト(株)製)に浸漬させて無電解銅めっき処理を行った。
無電解銅めっき処理により、厚み5μmの無電解銅めっき膜が析出した。な無電解銅めっき処理されたエポキシ基材表面をSEM(走査型顕微鏡)により観察したところ、切削加工された部分のみに、正確に無電解めっき膜が形成されていた。
なお、膨潤性樹脂被膜の膨潤度は、以下のように求めた。
離型紙上に膨潤性樹脂被膜を形成するために塗布したSBRサスペンジョンを塗布し、80℃で30分間乾燥した。これにより2μm厚の樹脂被膜を形成した。そして、形成された被膜を強制的に剥離することにより、試料を得た。
そして、得られた試料0.02g程度を秤量した。このときの試料重量を膨潤前重量m(b)とする。そして、秤量された試料を20±2℃の水酸化ナトリウム5%水溶液10ml中に15分間浸漬した。また、別の試料を同様にして、20±2℃の塩酸5%水溶液(pH1)10ml中に15分間浸漬した。
そして、遠心分離器を用いて1000Gで約10分間遠心分離処理を行い、試料に付着した水分等を除去した。そして、遠心分離後の膨潤した試料の重量を測定し、膨潤後重量m(a)とした。得られた、膨潤前重量m(b)及び膨潤後重量m(a)から、「膨潤度SW=(m(a)−m(b))/m(b)×100(%)」の式から、膨潤度を算出した。なお、その他の条件は、JIS L1015 8.27(アルカリ膨潤度の測定方法)に準じて行った。
このとき、pH14の水酸化ナトリウム5%水溶液に対する膨潤度は750%であった。一方、pH1の塩酸5%水溶液に対する膨潤度は3%であった。
(実施例2)
スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)のメチルエチルケトン(MEK)サスペンジョン(日本ゼオン(株)製、酸当量600、粒子径200nm、固形分15%)の代わりに、カルボキシル基含有重合体(日本ゼオン(株)製、酸当量500、重量平均分子量25000、固形分20%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
このとき、pH14の水酸化ナトリウム5%水溶液に対する膨潤度は1000%であった。一方、pH1の塩酸5%水溶液に対する膨潤度は30%であった。
以上のように、本実施形態に係る製造方法を用いれば、膨潤性樹脂被膜を剥離することにより、基材表面の回路形成したい部分のみにめっき触媒を被着させることができる。従って、めっき触媒を被着させた部分のみに正確に無電解めっき膜が形成される。また、膨潤性樹脂被膜は膨潤作用により容易に剥離させることができるために、被膜除去工程も容易かつ正確に行うことができる。
そして、上記のようにして得られた回路基板の、形成された回路溝の長手方向に対して垂直な断面を、SEM(走査型顕微鏡)を用いて観察した。その形成された無電解めっき膜の厚みTは、約5μmであり、回路溝の深さDは、約20μmであった。このとき、T/Dは、約0.25であった。