本発明に用いるフルシラゾールは塩の形態であってもよく、当該塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
本発明に用いるフルシラゾールまたはその塩は市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
本発明の工業用抗菌剤は、上記のフルシラゾールまたはその塩に加えて、イソチアゾリン系化合物、ベンズイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、アルコキシアルキルアミン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物、キノロン系化合物およびこれらの塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の抗菌性化合物を併用してもよい。該抗菌性化合物を併用することにより、抗菌スペクトルが拡大し、かつ抗菌活性が相乗的に上昇する。
イソチアゾリン系化合物は、次の式(2)で示される。
[式中、R1は水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R2およびR3は同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(2)中、R1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜14の炭化水素基がより好ましく、たとえば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基およびアリール基等が挙げられる。
アルキル基としては、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、たとえば、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−へキセニル、2−へキセニル、3−へキセニル、4−へキセニル、5−へキセニル等の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、たとえば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−へキシニル、2−へキシニル、3−へキシニル、4−へキシニル、5−へキシニル等の炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等の炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
R1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」の置換基としては、水酸基;塩素、フッ素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等が挙げられる。当該置換基は同一または異なっていてもよく、1〜5個、好ましくは1〜3個が置換していてもよい。
R1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、無置換の炭化水素基が好ましく、その中でもアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。当該アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基およびn−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルがさらに好ましい。シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシルがより好ましい。
R1としては、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、およびn−オクチル、イソオクチル、sec−オクチル(1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル等)、tert−オクチル(1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル等)、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がさらに好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルが特に好ましい。
式(2)中、R2またはR3で示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、これらの中でも塩素原子が好ましい。
また、R2またはR3で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられ、中でも無置換の炭化水素基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
R2およびR3としては、同一または異なって、それぞれ水素原子またはハロゲン原子が好ましく、水素原子または塩素原子がより好ましい。
イソチアゾリン系化合物の具体例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらのうち、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましく、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが特に好ましい。上記イソチアゾリン系化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ベンズイソチアゾリン系化合物は、次の式(3)で示される。
[式中、A1環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Yは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(3)中、A1環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」の置換基としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」の置換基と同様のものを挙げることができ、中でも、ハロゲン原子およびメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。これらの置換基は同一または異なっていてもよく、ベンゼン環に1〜4個、好ましくは1個または2個置換されていてもよい。なお、A1環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」としては、無置換のベンゼン環が好ましい。
式(3)中、Yで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられ、中でも無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
Yとしては、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
ベンズイソチアゾリン系化合物の好適な具体例としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。上記ベンズイソチアゾリン系化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ハロアセチレン系化合物は、次の式(4)で示される。
[式中、Xはハロゲン原子を示し、R5およびR6は同一または異なって、それぞれ水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、mは0または1の整数を示す。]
式(4)中、Xで示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特にヨウ素原子が好ましい。
式(4)中、R5またはR6で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。中でも無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらにより好ましく、n−ブチルが特に好ましい。
R5およびR6の一方が置換されていてもよい炭化水素基であり、他方が水素原子であることが好ましく、R5およびR6の一方が炭素数1〜10のアルキル基であり、他方が水素原子であることがより好ましく、R5およびR6の一方が炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)であり、他方が水素原子であることが特に好ましい。
式(4)中、mは0または1の整数を示し、mが0のとき、ハロアセチレン系化合物は酸アミド誘導体となり、mが1のときは、ハロアセチレン系化合物はカーバメート誘導体となる。これらのうち、mが1であるハロアセチレン系化合物のカーバメート誘導体が好ましい。
ハロアセチレン系化合物の具体例としては、mが0である場合のハロアセチレン系化合物の酸アミド誘導体として、3−クロロプロピオール酸アミド、N−メチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−エチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−クロロプロピオール酸アミド;3−ブロモプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ブロモプロピオール酸アミド;3−ヨードプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミド等が挙げられる。これらのうち、(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミドが好ましく、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミドがより好ましい。
また、mが1である場合のハロアセチレン系化合物のカーバメート誘導体として、3−ヨード−2−プロピニル N−メチルカーバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−エチルカーバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−プロピルカーバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカーバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ヘキシルカーバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−オクチルカーバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−シクロヘキシルカーバメート等の3−ヨード−2−プロピニル N−アルキルカーバメート等が挙げられ、中でも3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカーバメートが好ましい。
上記ハロアセチレン系化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
カルバモイルイミダゾール系化合物は、次の式(5)で示される。
[式中、R7およびR8は同一または異なって、それぞれ水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、nは1〜6の整数を示す。]
式(5)中、R7またはR8で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
R7としては、無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましく、n−プロピルが特に好ましい。
R8としては、置換されているアリール基が好ましく、1〜3個の塩素で置換されているフェニルがより好ましく、3個の塩素で置換されているフェニルがさらに好ましい。
nは好ましくは2または3である。
上記のカルバモイルイミダゾール系化合物の好適な具体例としては、N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル]−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド等が挙げられる。上記カルバモイルイミダゾール系化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アルコキシアルキルアミン系化合物は、次の式(6)で示される。
[式中、R9は1個以上のアルコキシ基で置換されているアルキル基を示し、R10およびR11は同一または異なって、それぞれ水素原子またはアルキル基を示す。]
式(6)中、R9で示される「1個以上のアルコキシ基で置換されているアルキル基」のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、中でも炭素数2〜4のアルキル基が好ましい。当該アルキル基に置換しているアルコキシ基としては、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、イコシルオキシ等の炭素数10〜20のアルコキシ基が挙げられ、中でも、炭素数12〜16のアルコキシ基が好ましく、ドデシルオキシが特に好ましい。
R10またはR11で示されるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
R10およびR11としては、共に水素原子であることが好ましい。
上記のアルコキシアルキルアミン系化合物の好適な具体例としては、3−ドデシルオキシプロピルアミン等が挙げられる。上記アルコキシアルキルアミン系化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、次の式(7)で示される。
[式中、Y1、Y2、Y3およびY4は同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(7)中、Y1、Y2、Y3またはY4で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特に塩素原子が好ましい。また、Y1、Y2、Y3またはY4で表される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられ、中でもメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
Y1、Y2、Y3およびY4としては、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてがハロゲン原子であるか、Y1、Y2およびY3がハロゲン原子でかつY4が水素原子であるか、Y1およびY4がハロゲン原子でかつY2およびY3が水素原子であることが好ましく、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてがハロゲン原子であることがより好ましく、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてが塩素原子であることが特に好ましい。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物の具体例としては、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,4−ジクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド等が挙げられ、これらのうち、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドが特に好ましい。上記テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
キノロン系化合物は、次の式(8)で表される。
[式中、A3環は置換されていてもよい6員の芳香族環を示し、R12は水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
上記式(8)中、A3環で示される「置換されていてもよい6員の芳香族環」の6員の芳香族環としては、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン等が挙げられ、中でも、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンが好ましく、ベンゼンが特に好ましい。
A3環で示される「置換されていてもよい6員の芳香族環」の置換基としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」の置換基と同様のもの、およびメチレンジオキシ等の炭素数1または2のアルキレンジオキシ基;ピロリジン、ピペラジン等の環状アミノ基を挙げることができ、中でも、ハロゲン原子;メチレンジオキシ等の炭素数1または2のアルキレンジオキシ基;ピロリジン、ピペラジン等の環状アミノ基が好ましい。これらの置換基は同一または異なっていてもよく、A3環に1〜4個、好ましくは1個または2個置換されていてもよい。
A3環としては、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子);メチレンジオキシ等の炭素数1または2のアルキレンジオキシ基およびピロリジン、ピペラジン等の環状アミノ基から選択される少なくとも1個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、ベンゼン、ピリジンまたはピリミジンが好ましく、メチレンジオキシ等の炭素数1または2のアルキレンジオキシ基で置換されたベンゼンが特に好ましい。
式(8)中、R12で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したR1で示される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられ、中でも無置換の炭化水素基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、エチルが特に好ましい。
R12としては、無置換の炭化水素基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、エチルが特に好ましい。
キノロン系化合物の具体例としては、5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ−1,3−ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸(一般名:オキソリニック酸、The Pesticide Manual第10版(British Crop Protection Council発行)、第760頁に記載)、1−エチル−7−メチル−4(1H)−オキソ−1,8−ナフチリジン−3−カルボン酸(一般名:ナリジクス酸)、8−エチル−5,8−ジヒドロ−5−オキソ−2−(1−ピロリジニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−6−カルボン酸(一般名:ピロミド酸)、1−エチル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(1−ピペラジニル)−1,8−ナフチリジン−3−カルボン酸(一般名:エノキサシン)、1−エチル−4−オキソ−6−フルオロ−7−(ピペラジン−1−イル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(一般名:ノルフロキサシン)等が挙げられ、とりわけ、5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ−1,3−ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸(一般名:オキソリニック酸)が好ましい。上記キノロン系化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記のイソチアゾリン系化合物、ベンズイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、アルコキシアルキルアミン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびキノロン系化合物は、塩基性化合物の場合は酸との塩として用いてもよく、また、酸性化合物の場合は塩基との塩として用いてもよい。
酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
塩基との塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
イソチアゾリン系化合物、ベンズイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、アルコキシアルキルアミン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物、キノロン系化合物およびこれらの塩は市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
フルシラゾールまたはその塩を含有する抗菌剤は、従来のように農業用として使用される場合には、農作物等に散布するため、その有効成分の濃度が高く設定されている(たとえば39重量%)。しかし、本発明のように工業用として使用される場合には、有効成分について低濃度での効果が要求されることが多い。
本発明の工業用抗菌剤において、フルシラゾールまたはその塩の含有量は、カビ類に対して十分な抗菌活性を得るためには、0.1重量%〜30重量%が好ましく、1重量%〜30重量%がより好ましい。
上記の抗菌性化合物を併用する場合、本発明の工業用抗菌剤に、より広範な抗菌スペクトルと十分な抗菌活性を付与するためには、フルシラゾールまたはその塩と上記の抗菌性化合物(2種以上の化合物を用いる場合は各化合物の合計量)の含有量比は、9:1〜1:9(重量比)とすることが好ましく、8:2〜2:8(重量比)とすることが特に好ましい。また、剤形、適用対象や使用環境等にもよるが、フルシラゾールまたはその塩の含有量としては、0.1重量%〜30重量%が好ましく、1重量%〜30重量%がより好ましい。上記の抗菌性化合物の含有量(2種以上を用いる場合は各化合物の合計量)としては、0.1重量%〜40重量%が好ましく、1重量%〜40重量%がより好ましい。
本発明の工業用抗菌剤は、溶剤に溶解させ、または界面活性剤もしくは溶解助剤等を用いて懸濁もしくは分散させて、液剤または懸濁剤もしくは分散剤として、或いは界面活性剤により乳化して乳剤として提供することができる。その他、界面活性剤や固体担体を加えて、水和剤、フロアブル剤、粉剤等としても提供することができる。
本発明において用い得る溶剤としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、エチルビフェニル、ジエチルビフェニル、ソルベントナフサ等の芳香族系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等の極性有機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら溶剤の中では、水、低級アルコール類および多価アルコール類が好ましく用いられる。
本発明において用い得る界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチエンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において用い得る溶解助剤としては、カプリン酸、アジピン酸等のカルボン酸類;アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類;オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類等を挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において用い得る固体担体としては、カオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物質;トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物;尿素等の合成有機物;炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類;合成含水酸化珪素等の合成無機物の微粉末或いは粒状物等を挙げることができる。
本発明の工業用抗菌剤の調製は、5℃〜40℃にて行うことが好ましい。溶剤等への混合は、0.5時間〜5時間程度処理を行うことが好ましい。界面活性剤、溶解助剤または固体担体は、組成物全量に対して、それぞれ0.1重量%〜10重量%、0.1重量%〜10重量%、および30重量%〜95重量%程度配合することができる。
本発明に係る工業用抗菌剤には、組成物の抗菌活性や安定性に影響を与えない範囲で、他の防菌防黴剤や防藻剤等の他、pH調整剤、酸化防止剤、光安定化剤、消泡剤等の、一般的に製剤化に際して用いられる添加剤を添加することができる。
本発明の工業用抗菌剤は、カビ類に対して良好な抗菌活性を有する。本発明の工業用抗菌剤が有効なカビ類としては、具体的にはアスペルギルス(Aspergillus)属(コウジカビ)、ペニシリウム(Penicillium)属(アオカビ)、クロドスポリウム(Cladosporium)属(クロカビ)、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属、アルテルナリア(Alternaria)属(ススカビ)、ムコール(Mucor)属、グリオクラディウム(Gliocladium)属等が挙げられる。
本発明の工業用抗菌剤において、上記の抗菌性化合物を併用した場合、フルシラゾールまたはその塩を単独で使用する場合よりも抗菌スペクトルが広がり、カビ類のみならず、細菌類や酵母類に対しても幅広く良好な抗菌活性を有する。前記細菌類としては、大腸菌、緑膿菌、セラチア菌等のグラム陰性桿菌;クロストリジウム属等のグラム陽性桿菌;プランハメラ菌等のグラム陰性球菌;黄色ブドウ球菌等のグラム陽性球菌等が、酵母類としては、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、プロトミセス(Protomyces)属、タフリナ(Taphrina)属等の原生子嚢菌類;エンドミセス(Endomyces)属等の真正子嚢菌類;サッカロミセス(Saccharomyces)属等の半子嚢菌類;カンジダ(Candida)属等の子嚢菌酵母の不完全型;フィロバシディエラ(Filobasidiella)属等の異型担子菌類;ロドトルラ(Rhodotorula)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属等の担子菌酵母の不完全型;ロドスポリディウム(Rhodosporidium)属、スポリディオボルス(Sporidiobolus)属、キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属等の担子菌酵母等が挙げられる。
従って、本発明の工業用抗菌剤は、製紙パルプ工場、冷却水循環工程等の種々の産業用水や、塗工紙、紙用塗工液、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、印刷インキ、プラスチック製品、セメント混和剤、シーリング剤等の各種工業製品の有害微生物の防除の用途において有効に用いることができる。より具体的には、製紙パルプ工場や冷却水循環工程のスライムコントロール剤、紙製品、樹脂製品の防菌防黴剤、塗料、合成ゴムラテックス、樹脂、インキ、シリコーンシーリング剤等の防菌防黴剤等として有用である。
本発明の工業用抗菌剤は、適用対象、微生物の種類(細菌類、カビ類、酵母、藻類等)や防除期間に応じて、添加量を適宜選択すればよいが、たとえば、スライムコントロール剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌剤成分の量として0.1〜500mg、好ましくは、0.5〜100mg、防腐剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌剤成分の量として1〜5,000mg、好ましくは、10〜1,000mg、防カビ剤または防藻剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌剤成分の量として10〜50,000mg、好ましくは、100〜10,000mgとなるように添加すればよい。
以下に本発明について実施例により詳細に説明する。
[実施例1]
フルシラゾール(メチルビス(4−フルオロフェニル)(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シラン;和光純薬工業株式会社製)を、10重量%となるようにメチルカルビトールに添加して(後述の表2)、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤である工業用抗菌剤を得た。
実施例1および後述する実施例2〜28、比較例1〜9について、以下に示す方法により、抗菌活性の評価を行った。すなわち、試験菌として、細菌類では枯草菌(Bacillus subtilis IFO3513)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)、大腸菌(Escherichia coli IFO3972)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa IFO3080)、セラチア菌(Serratia marcescens IFO3735)を、カビ類では黒カビ(Aspergillus niger IFO6341)、青カビ(Penicillium citrinum IFO6352)、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides IFO6348)、アウレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans IFO6353)、アルテルナリア属(Alternaria sp.)、ムコール スピネッセンス(Mucor spinescens IFO6071)、グリオクラディウム ビレンス(Gliocladium virens IFO6355)を、酵母類ではロドトルラ ルブラ(Rhodotorula rubra IFO0907)、サッカロミセス セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae IFO0209)を用い、細菌類の場合は、実施例および比較例に係る懸濁剤をそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地(pH6.0)に、ミクロプランタ(佐久間製作所製)を用いて接種用細菌懸濁液を接種し、33℃で18時間培養した。カビ類および酵母類の場合は、前記と同様に、実施例および比較例をそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地(pH6.0)に、カビ胞子懸濁液または接種用酵母懸濁液を接種し、33℃で18時間培養し、さらに、28℃で2日間培養した。培養後、各菌の生育を観察し、最小発育阻止濃度(MIC)(μg/mL)を求めた。実施例1の結果を表1に示す。
表1より明らかなように、実施例1の工業用抗菌剤は、カビ類に対して50μg/mL以下のMICを示し、良好な抗菌活性を有することが示された。
[実施例2〜28]
本発明に係る工業用抗菌剤の実施例2〜28の組成を表2に、比較例1〜9の組成を表3に示す。なお、以下の実施例および比較例においては、フルシラゾールは、上記と同じ和光純薬工業株式会社製を用いた。
イソチアゾリン系化合物としては、「ZONEN−MT」(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン50重量%含有、株式会社ケミクレア製)、「ケーソンWT」(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物14重量%含有、ロームアンドハーズ社製)、「ケーソン893T」(2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン99.5重量%含有、ロームアンドハーズ社製)を用いた。
ベンズイソチアゾリン系化合物としては、「BIT」(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン80重量%含有、ダウケミカル社製)を用いた。
ハロアセチレン系化合物としては、「トロイサンポリフェーズP−100」(3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカーバメート99.4重量%含有、トロイケミカル社製)を用いた。
カルバモイルイミダゾール系化合物としては、「プロクロラズ」(N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル]−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
アルコキシアルキルアミン系化合物としては、3−ドデシルオキシプロピルアミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物としては、スラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)の20重量%ジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を用いた。
キノロン系化合物としては、オキソリニック酸(5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ−1,3−ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸、和光純薬工業株式会社製)を用いた。
実施例および比較例は、表2および表3に示す組成に従い、各抗菌剤成分をメチルカルビトールに添加して、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤として得た。
フルシラゾールと所定の抗菌化合物を併用する場合の抗菌活性の評価は、フルシラゾール、イソチアゾリン系化合物、ベンズイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、アルコキシアルキルアミン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびキノロン系化合物をそれぞれ単独で用いた場合(実施例1および比較例1〜9)のMIC値から、各実施例について次式によりMICの理論値を算出し、実際に測定したMIC値をそれらと比較することにより行った。MICの実測値がその理論値よりも小さくなる場合、すなわち「実測値/理論値」が1より小さくなる場合には、上記の各成分を単独で用いた場合の代数和より抗菌活性が増強されているといえるため、相乗効果が認められると評価した。
MICの理論値=CA×x/100+CB×y/100
CA;フルシラゾールを単独で用いた場合(実施例1)のMIC値
CB;イソチアゾリン系化合物、ベンズイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、アルコキシアルキルアミン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびキノロン系化合物をそれぞれ単独で用いた場合(比較例1〜9)のMIC値
x;抗菌剤成分中においてフルシラゾールの占める割合(%)
y;抗菌剤成分中において、イソチアゾリン系化合物、ベンズイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、アルコキシアルキルアミン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物またはキノロン系化合物の占める割合(%)
抗菌活性の評価結果を表4〜表12に示した。各表中の「100/0」、「75/25」、「50/50」、「25/75」および「0/100」は、フルシラゾールと、イソチアゾリン系化合物、ベンズイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、アルコキシアルキルアミン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物またはキノロン系化合物との配合重量比を示す。
上記表4は、フルシラゾールと、イソチアゾリン系化合物として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1〜4)についての評価結果を示す。実施例2について枯草菌、大腸菌、セラチア菌およびクラドスポリウム クラドスポリオイデス、実施例3について枯草菌、実施例4について大腸菌およびムコール スピネッセンスに対するMICの実測値/理論値が1を超えているが、その他は、フルシラゾールおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例1)と比べ、試験した各細菌およびカビに対して、抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表5は、フルシラゾールと、イソチアゾリン系化合物として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物とを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、5〜7)についての評価結果を示す。実施例5についてアルテルナリア属、実施例6および7について青カビに対するMICの実測値/理論値が1を超えているが、その他は、フルシラゾールと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン混合物とをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例2)と比べ、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して、抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表6は、フルシラゾールと、イソチアゾリン系化合物として、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、8〜10)についての評価結果を示す。フルシラゾールおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例3)と比べ、いずれの組成物についても、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表7は、フルシラゾールと、ハロアセチレン系化合物として、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカーバメートを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、11〜13)についての評価結果を示す。実施例11について枯草菌に対するMICの実測値/理論値が1である他は、フルシラゾールおよび3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカーバメートをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例4)と比べ、試験した細菌、カビおよび酵母に対して抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表8は、フルシラゾールと、ベンズイソチアゾリン系化合物として、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、14〜16)についての評価結果を示す。実施例14について緑膿菌、青カビおよびグリオクラディウム ビレンス、実施例16について青カビ、ロドトルラ ルブラおよびサッカロミセス セレビジアエに対するMICの実測値/理論値が1を超えているが、その他は、フルシラゾールおよび1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例5)と比べ、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して、抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表9は、フルシラゾールと、アルコキシアルキルアミン系化合物として、3−ドデシルオキシプロピルアミンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、17〜19)についての評価結果を示す。実施例17についてクラドスポリウム クラドスポリオイデス、アウレオバシディウム プルランスおよびアルテルナリア属、実施例18についてクラドスポリウム クラドスポリオイデスおよびアルテルナリア属、実施例19についてアウレオバシディウム プルランスに対するMICの実測値/理論値が1以上である他は、フルシラゾールおよび3−ドデシルオキシプロピルアミンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例6)と比べ、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して、抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表10は、フルシラゾールと、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物として、スラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、20〜22)についての評価結果を示す。実施例20、21について黒カビ、実施例22についてアウレオバシディウム プルランスに対するMICの実測値/理論値が1を超えているが、その他は、フルシラゾールおよびスラカーブをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例7)と比べ、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して、抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表11は、フルシラゾールと、カルバモイルイミダゾール系化合物として、プロクロラズ(N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル]−1H−イミダゾール−1−カルボキサミド)を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、23〜25)についての評価結果を示す。実施例25についてクラドスポリウム クラドスポリオイデスおよびムコール スピネッセンスに対するMICの実測値/理論値が1を超えているが、その他は、フルシラゾールおよびプロクロラズをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例8)と比べ、試験した各細菌およびカビに対して、抗菌活性の相乗効果が認められた。
上記表12は、フルシラゾールと、オキソリニック酸を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用抗菌剤(実施例1、26〜28)についての評価結果を示す。実施例26について黄色ブドウ球菌、大腸菌およびアウレオバシディウム プルランス、実施例28について黄色ブドウ球菌、大腸菌、クラドスポリウム クラドスポリオイデス、アウレオバシディウム プルランスおよびアルテルナリア属に対するMICの実測値/理論値が1を超えているが、その他は、フルシラゾールおよびオキソリニック酸をそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例9)と比べ、試験した各細菌およびカビに対して、抗菌活性の相乗効果が認められていた。
上述したように、本発明の実施例においては、フルシラゾールが種々のカビに対して抗菌活性を有することが認められ、また所定の抗菌性化合物を併用することで、抗菌活性が相乗的に上昇し、細菌類並びにカビおよび酵母の真菌類に対し、幅広く抗菌活性の相乗効果が認められた。