1.1. まず、第1の実施形態に係る発光装置100について説明する。
図1は、発光装置100を概略的に示す平面図であり、図2は、図1のIII−III線断面図である。ここでは、発光装置100がInGaAlP系(赤色)の半導体発光装置である場合について説明する。
発光装置100は、図1および図2に示すように、第1クラッド層106と、活性層108と、第2クラッド層110と、第1電極120と、第2電極122と、溝部150と、を含む。発光装置100は、さらに、例えば、基板102と、バッファ層104と、コンタクト層112と、を含むことができる。
基板102としては、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaAs基板などを用いることができる。
バッファ層104は、例えば図2に示すように、基板102上に形成されていることができる。バッファ層104は、例えば、その上方に形成される層の結晶性を向上させることができる。バッファ層104としては、例えば、基板102よりも結晶性の良好な(例えば欠陥密度の低い)第1導電型(n型)のGaAs層、InGaP層などを用いることができる。
第1クラッド層106は、バッファ層104上に形成されている。第1クラッド層106は、例えば、第1導電型の半導体からなる。第1クラッド層106としては、例えばn型AlGaP層などを用いることができる。
活性層108は、第1クラッド層106上に形成されている。活性層108は、例えば、InGaPウェル層とInGaAlPバリア層とから構成される量子井戸構造を3つ重
ねた多重量子井戸(MQW)構造を有する。
活性層108の一部は、複数の利得領域を構成している。複数の利得領域の各々は、対を成している。例えば図示の例では、活性層108は、2つの利得領域(第1利得領域180及び第2利得領域190)を有し、これらが利得領域対160を構成している。隣り合う利得領域対160の各々は、例えば図示の例のように、互いに重なっていないことができる。
利得領域180,190には、光を生じさせることができ、この光は、利得領域180,190内で利得を受けることができる。活性層108の形状は、例えば直方体(立方体である場合を含む)などである。活性層108は、図1に示すように、第1側面140、第2側面142を有する。第1側面140と第2側面142とは、例えば、対向している。図示の例では、第1側面140と第2側面142とは、平行である。利得領域180,190に生じる光の波長帯において、第1側面140の反射率は、第2側面142の反射率よりも高い。例えば、図1に示すように、第1側面140をミラー130によって覆うことにより、高い反射率を得ることができる。ミラー130は、例えば、誘電体多層膜ミラーなどである。具体的には、ミラー130としては、例えば、第1側面140側からAl2O3層、TiO2層の順序で4ペア積層したミラーなどを用いることができる。この場合の第1側面140の反射率は、例えば90%である。第1側面140の反射率は、100%、あるいはそれに近いことが望ましい。これに対し、第2側面142の反射率は、0%、あるいはそれに近いことが望ましい。例えば、第2側面142を反射防止部(図示せず)によって覆うことにより、低い反射率を得ることができる。反射防止部としては、例えばAl2O3単層などを用いることができる。なお、ミラー130及び反射防止部としては、上述した例に限定されるわけではなく、例えば、SiO2層、SiN層、Ta2O5層や、これらの多層膜などを用いることができる。
第1利得領域180は、図1に示すように、第1側面140から第2側面142まで、第1側面140の垂線Pに対して傾いた一の方向(以下「第1方向」ともいう)Aに向かって設けられている。第1利得領域180は、第1側面140の垂線Pに対して傾いた方向に向かって設けられていることにより、利得領域180,190に生じる光のレーザ発振を抑制または防止することができる。なお、第1利得領域180が一の方向に向かって設けられている場合とは、当該一の方向が、平面的に見て、第1利得領域180の第1側面140側の第1端面170の中心と、第2側面142側の第2端面171の中心とを結ぶ方向に一致する場合をいう。このことは、他の利得領域およびその部分についても同様である。
第2利得領域190は、第1部分192と第2部分194とを有する。第1部分192は、図1に示すように、第1側面140から反射面179まで、第1方向Aとは異なる他の方向(以下「第2方向」ともいう)Bに向かって設けられる。第2部分194は、反射面179から第2側面142まで、第3方向Cに向かって設けられる。例えば、第2部分194は、一の方向に設けられることができる。第2部分194が一の方向に設けられる場合とは、第1方向Aと第3方向Cが、単一の方向である場合である。すなわち、第2部分194と第1利得領域180は、例えば、第2側面142に対して単一の方向に向かって設けられることができる。
第1部分192と第2部分194とは、第1部分192の反射面179側の第4端面173と第2部分194の反射面179側の第5端面174とが、反射面179において重なっている。図示の例では、反射面179で完全に重なっているが、第1部分192の第4端面173の少なくとも一部と、第2部分194の第5端面174の少なくとも一部とが、重なっていてもよい。第1部分192および第2部分194の平面形状は、例えば図
1に示すような台形などである。
第1利得領域180は、図1に示すように、第1利得領域180の第1側面140側の第1端面170が、第2利得領域190の第1部分192の第1側面140側の第3端面172と、重なり面178において重なっている。図示の例では、重なり面178で完全に重なっているが、第1利得領域180の第1端面170の少なくとも一部と、第1部分192の第3端面172の少なくとも一部とが、重なっていてもよい。第1利得領域180の平面形状は、例えば図1に示すような平行四辺形などである。
第1部分192と第1利得領域180は、図1に示すように、第1側面140に対して傾いている。第1部分192の第1側面140に対する反射面179側の第3傾き角θ20が、第1利得領域180の第1側面140に対する反射面179側と反対側の第1傾き角θ10と、等しい。なお、図示の例では、第3傾き角θ20と第1傾き角θ10とは、等しいが、異なっていてもよい。
第1部分192と第2部分194は、図1に示すように、反射面179に対して傾いている。第1部分192の反射面179に対する第1側面140側の第4傾き角θ22が、第2部分194の反射面179に対する第2側面142側の第5傾き角θ24と、等しい。なお、図示の例では、第4傾き角θ22と第5傾き角θ24とは、等しいが異なっていてもよい。
図3は、図1〜図2の例における活性層108を第1側面140側から平面的に見た図である。本実施形態に係る第1利得領域180では、図3に示すように、第1側面140側の第1端面170と、第2側面142側の第2端面171とは、重なっていない。これにより、利得領域180,190に生じる光を、第1端面170と第2端面171との間で、直接的に多重反射させないことができる。その結果、直接的な共振器を構成させないことができるため、利得領域180,190に生じる光のレーザ発振をより確実に抑制または防止することができる。なお、この場合には、図3に示すように、第1利得領域180において、第1端面170と、第2端面171とのずれ幅xが正の値であれば良い。
また、第2利得領域190は、第1側面140と第2側面142との間までに、それぞれの面に対して平行ではない反射面179に接して設けられる。すなわち、第2利得領域190の第1部分192の端面172,173は、互いに平行ではない。また、第2部分194の端面174,175は、互いに平行ではない。図示の例では、第1部分192の端面172,173は、互いに垂直であり、第2部分194の端面174,175は、互いに垂直である。従って、第2利得領域190は、利得領域180,190で発生した光をそれぞれの端面で直接的に多重反射させないため、レーザ発振を抑制または防止することができる。したがって、2つの利得領域180,190ともにレーザ発振を抑制または防止することができるため、発光素子100は、レーザ光ではない光を発することができる。
公知のフレネルの式により得られる第2端面171の反射率r2、第6端面175の反射率r6、及び第2端面171から第6端面175までの間の重なり面178の反射率R1と反射面179の反射率R2は、下記式(1)を満たすことができる。下記式(1)の左辺が1未満であることにより、利得領域180,190に生じる光のレーザ発振をより確実に抑制または防止することができる。
r2r6(R1R2)2exp{2(g−α)L}<1 ・・・(1)
但し、gは、利得定数であり、αは、内部損失であり、Lは、利得領域180,190に生じる光の第2端面171から第6端面175までの光路長である。
利得領域180,190の第2側面142側の2つの端面171,175の幅は、第1側面140側の端面170,172の幅と同じであっても、異なっていてもよい。また、利得領域180,190の幅は、各々同じであっても、異なっていてもよい。
溝部150は、図1に示すように、第1側面140と第2側面142との間に設けられる。溝部150の側面の一部は、利得領域180,190で発生した光を反射させる反射面179とすることができる。反射面179が溝部150の側面で構成されることで、例えば、利得領域180,190で生じた光を、反射面179で全反射させることができる。溝部150の平面形状は、例えば、第1側面140の垂線に対して平行な辺を有する長方形とすることができる。溝部150の深さは、図2に示すように、例えば、少なくとも活性層108の側面が完全に露出する深さとすることが望ましい。溝部150は、例えば、第1部分192および第2部分194の反射面179側の端面173,174を露出させることが望ましい。溝部150の内部は、例えば、空洞である。溝部150は、反射面179を保護層(図示せず)で覆ってもよい。これにより、活性層108の露出部分を保護することができる。なお、図1に示すように、活性層108の第1側面140と垂直な第3側面144側の端に設けられた利得領域対160は、反射面179が、活性層108の第3側面144に設けられることができる。また、例えば、第3側面144にミラー130を設けることで反射率を高くしてもよい。
第2クラッド層110は、活性層108上に形成されている。第2クラッド層110は、例えば第2導電型(例えばp型)の半導体からなる。第2クラッド層110としては、例えばp型AlGaP層などを用いることができる。
例えば、p型の第2クラッド層110、不純物がドーピングされていない活性層108、及びn型の第1クラッド層106により、pinダイオードが構成される。第1クラッド層106及び第2クラッド層110の各々は、活性層108よりも禁制帯幅が大きく、屈折率が小さい層である。活性層108は、光を増幅する機能を有する。第1クラッド層106及び第2クラッド層110は、活性層108を挟んで、注入キャリア(電子および正孔)並びに光を閉じ込める機能を有する。
発光装置100では、第1電極120と第2電極122との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、活性層108の利得領域180,190において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。この生じた光を起点として、連鎖的に誘導放出が起こり、利得領域180,190内で光の強度が増幅される。例えば、第1利得領域180に生じる光の一部は、重なり面178において反射された後、第2利得領域190の反射面179で反射され第2部分194の第6端面175から第2出射光135として出射されることができる。このように、第1利得領域180に生じる光の一部は、利得領域180,190内を進行し、その間に光強度が増幅されることができる。なお、上述した光路の途中に生じる光の一部も、同じ光路を進行することができる。
また、同様に、例えば、第2利得領域190に生じる光の一部は、反射面179において反射された後、重なり面178で反射され、第1利得領域180の第2端面171から第1出射光133として出射されることができる。このように、第2利得領域190に生じる光の一部は、利得領域180,190内を進行し、その間に光強度が増幅されることができる。なお、上述した光路の途中に生じる光の一部も、同じ光路を進行することができる。
また、第1利得領域180に生じる光には、直接、第2端面171から第1出射光133として出射されるものもある。同様に、第2利得領域190に生じる光には、直接、第
6端面175から第2出射光135として出射されるものもある。
利得領域180,190に生じる光は、例えば、反射面179で全反射することができる。利得領域180,190に生じる光が全反射する場合とは、例えば、入射角αが全反射の臨界角θC以上である場合である。すなわち、利得領域180,190に生じる光が反射面179で全反射する場合とは、例えば、反射面179に対する傾き角θ22,θ24が、90°−θC以下に設けられる場合である。
利得領域180,190に生じる光は、第1利得領域180の第2側面142側の第2端面171および第2部分194の第2側面142側の第6端面175で、全反射しない。利得領域180,190に生じる光は、入射角αが臨界角θC未満で全反射しない。すなわち、第1利得領域180および第2部分194の第2側面142に対する傾き角θ26,θ12は、例えば、90°−θCを超える角度に設けられることで、各々の端面171,175で全反射しないことができる。これにより、発光装置100は、利得領域180,190に生じる光を、第2端面171および第6端面175から、効率的に出射することができる。
コンタクト層112は、例えば図2に示すように、第2クラッド層110上に形成されていることができる。コンタクト層112としては、第2電極122とオーミックコンタクトする層を用いることができる。コンタクト層112は、例えば、第2導電型の半導体からなる。コンタクト層112としては、例えば、p型GaAs層などを用いることができる。
第1電極120は、例えば図2に示すように、基板102の下の全面に形成されている。第1電極120は、基板102およびバッファ層104を介して、第1クラッド層106と電気的に接続されている。第1電極120は、発光装置100を駆動するための一方の電極である。第1電極120としては、例えば、基板102側からCr層、AuGe層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。なお、第1クラッド層106とバッファ層104との間に、第2コンタクト層(図示せず)を設け、ドライエッチングなどにより第2コンタクト層を露出させ、第1電極120を第2コンタクト層上に設けることもできる。これにより、片面電極構造を得ることができる。この形態は、基板102が半絶縁性である場合に特に有効である。この形態では、基板102としては、例えば、半絶縁性GaAs基板などを用いることができる。第2コンタクト層としては、例えばn型GaAs層などを用いることができる。また、図示しないが、例えば、エピタキシャルリフトオフ(ELO)法、レーザリフトオフ法などを用いて、基板102とその上に設けられた部材とを切り離すことができる。すなわち、発光装置100は、基板102を有しないこともできる。この場合には、例えば、バッファ層104の直接下に第1電極120を形成することができる。この形態も、基板102が半絶縁性である場合に特に有効である。
第2電極122は、コンタクト層112上に形成されている。第2電極122は、コンタクト層112を介して、第2クラッド層110と電気的に接続されている。第2電極122は、発光装置100を駆動するための他方の電極である。第2電極122としては、例えば、コンタクト層112側からCr層、AuZn層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。第2電極122の下面は、図2に示すように、利得領域180,190と同様の平面形状を有している。言い換えるならば、図示の例では、第2電極122の下面の平面形状によって、電極120、122間の電流経路が決定され、その結果、活性層108の利得領域180,190の平面形状が決定されるのである。また、図示しないが、例えば、第1電極120の上面が、利得領域180,190と同じ平面形状を有していてもよい。
利得領域対160は、複数(例えば図1の例では3つ)配列されることができる。図示の例では、6つの出射面(3つの第2端面171および3つの第6端面175)は、すべえて第2側面142に設けられている。複数の利得領域対160の第2側面142側の端面171,175は、例えば、互いに重なっていないことができる。
本実施形態に係る発光装置は、例えば、プロジェクタ、ディスプレイ、照明装置、計測装置などの光源に適用されることができる。このことは、後述する実施形態についても同様である。
発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
本実施形態に係る発光装置100では、上述したように、利得領域180,190に生じる光のレーザ発振を抑制または防止することができる。従って、スペックルノイズを低減させることができる。さらに、本実施形態に係る発光装置100では、利得領域180,190に生じる光は、利得領域180,190内において利得を受けながら進行して、外部に出射されることができる。従って、従来の一般的なLEDよりも高い出力を得ることができる。以上のように、本実施形態によれば、スペックルノイズを低減でき、かつ高出力である新規な発光装置を提供することができる。
本実施形態に係る発光装置100では、第1利得領域180に生じる光の一部は、重なり面178において反射されて、第2利得領域190内においても利得を受けながら進行し、最終的に出射されることができる。また、第2利得領域190に生じる光の一部に関しても同様である。従って、本実施形態の発光装置100によれば、例えば、重なり面178において積極的に反射させないような場合に比べ、光強度の増幅距離が長くなるため、高い光出力を得ることができる。
本実施形態に係る発光装置100では、利得領域180,190で生じた光の一部を反射面179で反射させることにより、1つの側面(第2側面142)から出射光133,135を出射させることができる。また、第2部分194と第1利得領域180とが、第2側面142に対して単一の方向に向かって設けられることができる。したがって、発光装置100は、1つの側面から単一の方向に進む第1出射光133および第2出射光135を出射することができる。これにより、図示しない後段の光学系(出射光133,135が入射する光学系)の構成を簡素化することができ、かつ、後段の光学系の光軸合わせを容易化することができる。
本実施形態に係る発光装置100では、反射面179が、溝部150の側面で構成されることができる。したがって、利得領域180,190で生じた光を、反射面179で全反射させることができる。これにより、利得領域180,190において、光強度を効率よく増幅させることができる。
本実施形態に係る発光装置100では、利得領域対160が複数配列されることができる。したがって、発光装置全体の高出力化を図ることができる。
1.2. 第1の実施形態に係る発光装置の製造方法
次に、第1の実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図4は、発光装置100の製造工程を概略的に示す断面図であり、図2に示す断面図に対応している。
図4に示すように、例えば、基板102上に、バッファ層104、第1クラッド層106、活性層108、第2クラッド層110およびコンタクト層112を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。
図2に示すように、例えば、少なくとも活性層108の側面が完全に露出する深さの溝部150を形成する。溝部150は、例えば、エッチング技術を用いて形成することができる。例えば、溝部150の側面に活性層108を保護する保護層(図示せず)を形成することができる。
次に、例えば、コンタクト層112上に第2電極122を形成する。第2電極122は、例えば、真空蒸着法により全面に導電層を形成した後、該導電層をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより形成される。また、第2電極122は、例えば、真空蒸着法およびリフトオフ法の組み合わせなどにより、所望の形状に形成されることもできる。
次に、基板102の下面下に第1電極120を形成する。第1電極120の製法は、例えば、上述した第2電極122の製法の例示と同じ製法で形成される。なお、第1電極120と第2電極122との形成順序は、特に限定されない。
以上の工程により、発光装置100が得られる。
発光装置100の製造方法によれば、スペックルノイズを低減でき、かつ1つの側面から単一の方向に進む光を出射することができる発光装置100を得ることができる。
1.3. 次に、本実施形態に係る発光装置の変形例について説明する。なお、上述した図1〜図2に示す発光装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
(1)まず、第1の変形例について説明する。
図5は、本変形例に係る発光装置300を概略的に示す平面図である。
発光装置100の例では、図1に示すように、隣り合う利得領域対160の各々は、互いに重なっていない場合について説明した。これに対し、本変形例では、隣り合う利得領域対160が、互いに重なっていることができる。具体的には、図5に示すように、隣り合う利得領域対160のうち、一方の利得領域対160の第2側面142側の2つの端面171,175の間に、他方の利得領域対160の第2側面142側の2つの端面171,175の一方が設けられることができる。これにより、発光装置300は、発光装置100の例と比べ、活性層108を有効に利用することができるため、発光装置のサイズを小さくすることができる。
(2)次に、第2の変形例について説明する。
図6は、本変形例に係る発光装置400を概略的に示す断面図である。なお、図6に示す断面図は、発光装置100の例における図2に示す断面図に対応している。
発光装置100の例では、図1及び図2に示すように、第2電極122の上面も下面も
、利得領域180,190と同じ平面形状を有する場合について説明した。これに対し、本変形例では、例えば、図6に示すように、第2電極122の上面は、利得領域180,190と異なる平面形状を有することができる。本変形例では、コンタクト層112上に、開口部を有する絶縁層202を形成し、該開口部を埋め込む第2電極122を形成することができる。第2電極122は、開口部内および絶縁層(開口部含む)202上に形成されている。本変形例では、第2電極122の下面は、利得領域180,190と同じ平面形状を有し、第2電極122の上面は、絶縁層202上の全面である。
絶縁層202としては、例えば、SiN層、SiO2層、ポリイミド層などを用いることができる。絶縁層202は、例えば、CVD法、塗布法などにより成膜される。
本変形例によれば、発光装置100の例に比べ、第2電極122の体積が増えるため、放熱性に優れた発光装置400を提供することができる。
(3)次に、第3の変形例について説明する。
発光装置100の例では、発光素子100がInGaAlP系の半導体発光素子である場合について説明したが、本変形例では、発光利得領域が形成可能なあらゆる材料系を用いることができる。半導体材料であれば、例えば、AlGaN系、InGaN系、GaAs系、InGaAs系、GaInNAs系、ZnCdSe系などの半導体材料を用いることができる。また、本変形例では、例えば有機材料などを用いることもできる。
2. 第2の実施形態
2.1. 次に、第2の実施形態に係る発光装置600について説明する。
図7は、発光装置600を概略的に示す断面図である。図7は、第1の実施形態に係る発光装置100における図2に示す断面図に対応している。なお、第2の実施形態に係る発光装置600において、上述した第1の実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
発光装置600は、図7に示すように、第1クラッド層106と、活性層108と、第2クラッド層110と、第1電極120と、第2電極122と、溝部150と、絶縁部602と、を含む。発光装置600は、さらに、例えば、基板102と、バッファ層104と、コンタクト層112と、を含むことができる。
活性層108の全部は、第1利得領域180及び第2利得領域190を構成している。例えば、第1クラッド層106、活性層108、第2クラッド層110、コンタクト層112、及び第2電極122は、第1利得領域180及び第2利得領域190と同じ平面形状を有している。例えば、第1クラッド層106、活性層108、第2クラッド層110、及びコンタクト層112は、柱状の半導体堆積体(以下「柱状部」という)610を構成することができる。
絶縁部602は、図7に示すように、柱状部610の側方に設けられている。絶縁部602は、例えば、柱状部610の第2電極122側とは反対側に接する層(図示の例ではバッファ層104)の上に形成されている。絶縁部602は、例えば、活性層108の側面のうち、第1〜第6端面170,171,172,173,174,175以外の側面を覆うことができる。絶縁部602は、図7に示すように、柱状部610の側面と溝部150の側面に接している。電極120,122間の電流は、絶縁部602を避けて、該絶縁部602に挟まれた柱状部610を流れることができる。活性層108の側面が絶縁部602により覆われていることにより、第1利得領域180と第2利得領域190のクロ
ストークを防ぎ易くすることができる。
絶縁部602は、例えば、活性層108の屈折率よりも低い屈折率を有することができる。これにより、活性層108内に効率良く光を閉じ込めることができる。本実施形態に係る発光装置600では、利得領域180,190において発生した光は、屈折率差によって形成された、利得領域180,190の軸方向(第1方向A、第2方向B、第3方向C)(図2参照)に伝搬する伝搬モードに結合する。そのため、利得領域180,190の軸方向と異なる方向へ伝搬するような光はほとんど存在しない。例えば、第1利得領域180において対向する第1端面170と第2端面171とが、第1側面140側から平面的に見て重なっている場合に、その重なり部分において第1端面170と第2端面171とを垂直に結ぶ方向は、第1利得領域180の軸方向とは異なる。そのため、この第1端面170と第2端面171とを垂直に結ぶ方向へ伝搬するような光はほとんど存在しない。従って、第1利得領域180を第1側面140の垂線Pに対して傾いた方向に向かって設け、光の多重反射を抑制または防止することができる。また、第2利得領域190は、第1側面140と第2側面142との間までに、それぞれの面に対して平行ではない反射面179に接して設けられる。すなわち、第2利得領域190の第1部分192の端面172,173は、互いに平行ではない。また、第2部分194の端面174,175は、互いに平行ではない。従って、利得領域180,190で発生した光の多重反射を抑制または防止することができる。利得領域180,190の光の多重反射を抑制または防止することにより、レーザ光ではない光を発する発光装置600を得ることができる。また、第2利得領域190は、絶縁部602としては、例えば、SiN層、SiO2層、ポリイミド層などを用いることができる。
公知のフレネルの式により得られる第2端面171の反射率r2、第6端面175の反射率r6、及び第2端面171から第6端面175までの間の重なり面178の反射率R1と反射面179の反射率R2は、下記式(1)を満たすことができる。下記式(1)の左辺が1未満であることにより、利得領域180,190に生じる光のレーザ発振をより確実に抑制または防止することができる。
r2r6(R1R2)2exp{2(g−α)L}<1 ・・・(1)
但し、gは、利得定数であり、αは、内部損失であり、Lは、利得領域180,190に生じる光の第2端面171から第6端面175までの光路長である。
発光装置600は、発光装置100と同様に、スペックルノイズを低減でき、かつ1つの側面から単一の方向に進む光を出射することができる。
2.2. 次に、第2の実施形態に係る発光装置600の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1の実施形態に係る発光装置100の製造方法と異なる点について説明し、同様の点については詳細な説明を省略する。
図8は、発光装置600の製造工程を概略的に示す断面図であり、図7に示す断面図に対応している。
まず、基板102上に、バッファ層104、第1クラッド層106、活性層108、第2クラッド層110、及びコンタクト層112を形成する。
次に、図8に示すように、例えば、第1クラッド層106、活性層108、第2クラッド層110、及びコンタクト層112をパターニングすることができる。パターニングによる開口は、例えば、少なくとも第1クラッド層106の上面に達する深さまで行われることができる。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術
などを用いて行われる。本工程により、柱状部610を形成することができる。
次に、図7に示すように、柱状部610の側面を覆うように絶縁部602を形成することができる。具体的には、まず、例えば、CVD法、塗布法などにより、バッファ層104の上方(コンタクト層112上を含む)の全面に絶縁層(図示せず)を成膜する。次に、例えば、エッチング技術などを用いて、コンタクト層112の上面を露出させる。以上の工程により、絶縁部602を得ることができる。
次に、例えば、少なくとも活性層108の側面が完全に露出する深さの溝部150を形成する。溝部150は、例えば、エッチング技術を用いて形成することができる。例えば、溝部150の側面に反射面179を保護する保護層(図示せず)を形成することができる。なお、溝部150は、例えば、第1クラッド層106、活性層108、第2クラッド層110、及びコンタクト層112をパターニングする前に形成してもよい。
次に、例えば、ミラー130、反射防止部、第1電極120、及び第2電極122を形成する。
以上の工程により、図7に示すように、本実施形態の発光装置600が得られる。
発光装置600の製造方法によれば、発光装置100と同様に、スペックルノイズを低減でき、かつ1つの側面から単一の方向に進む光を出射することができる発光装置600を得ることができる。
2.3. 次に、本実施形態に係る発光装置の変形例について説明する。なお、上述した図7に示す発光装置600の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
(1)まず、第1の変形例について説明する。
図9は、本変形例に係る発光装置700の製造工程を概略的に示す断面図である。図10は、本変形例に係る発光装置700を概略的に示す断面図である。なお、図9及び図10に示す断面図は、発光装置600の例における図7に示す断面図に対応している。また、便宜上、図10には、後述する第2の変形例の特徴も併せて示してある。
発光装置600の例では、図8に示すように柱状部610を形成した後、絶縁層(図示せず)を成膜し、その後、コンタクト層112を露出させることにより、絶縁部602を形成する場合について説明した。これに対し、本変形例では、まず、例えば、図9に示すように、コンタクト層112上であって、第1利得領域180及び第2利得領域190の上方の領域を、フォトレジスト等のマスク層704で覆う。次に、例えばプロトン等のイオン706を、マスク層704をマスクとして、少なくとも第1クラッド層106の上面に達する深さまで注入する。以上の工程により、例えば図10に示すように、本変形例に係る発光装置700の絶縁部602を形成することができる。なお、図示の例では、絶縁部602の下面の位置は、第1クラッド層106の上面の位置よりも下であって、第1クラッド層106の下面の位置よりも上である。また、絶縁部602の下面の位置は、例えば、活性層108の上面の位置より上であることもできる。
(2)次に、第2の変形例について説明する。
図10は、本変形例に係る発光装置700を概略的に示す断面図である。
本変形例では、図10に示すように、第2電極122を、柱状部610及び絶縁部602の上の全面に形成することができる。絶縁部602は、例えば、柱状部610の側方であって、柱状部610の第2電極122側とは反対側に接する層(図示の例では第1クラッド層106のうちの下層)と、第2電極122との間に形成されている。
本変形例によれば、発光装置600の例に比べ、第2電極122の体積が増えるため、放熱性に優れた発光装置700を提供することができる。また、第2電極122は、平坦な面上の全面に成膜すれば良いため、第2電極122の断線リスクを低減することができる。また、第2電極122のパターニング工程が不要となるため、製造工程を簡素化することができる。
(3)次に、第3の変形例について説明する。
図11は、本変形例に係る発光装置800を概略的に示す断面図である。
発光装置600の例では、図7に示すように、絶縁部602は、第1側面140と第2側面142との間において、少なくとも活性層108の側面を覆う場合について説明した。これに対し、本変形例では、図11に示すように、絶縁部602は、活性層108の側面を覆わないことができる。本変形例では、例えば、少なくともコンタクト層112のうちの第2電極122との接触面側の部分(コンタクト層112の上部)が、柱状部610を構成することができる。例えば、柱状部610は、図示のように、第2クラッド層110の上部およびコンタクト層112から構成されることができる。絶縁部602は、例えば、第2クラッド層110の上面の一部、第2クラッド層110の側面の一部、及びコンタクト層112の側面の一部を覆っている。絶縁部602の下面の位置は、例えば、活性層108の上面の位置よりも上である。図示の例では、上述した第2の変形例と同様に、第2電極122は、柱状部610及び絶縁部602の上の全面に形成されている。なお、図示しないが、柱状部610及び絶縁部602は、基板102側に形成されることもできる。
本変形例においても、電極120,122間の電流は、絶縁部602に挟まれた柱状部610を流れることができる。本変形例では、この柱状部610の平面形状によって、電極120,122間の電流経路が決定され、その結果、利得領域180,190の平面形状が決定されることができる。
(4)次に、第4の変形例について説明する。
図12は、本変形例に係る発光装置900を概略的に示す断面図である。
発光装置800の例では、溝部150の内部は、空洞である場合について説明したが、発光装置900は、溝部150の内部が、絶縁部602と同じ部材で埋め込まれていることができる。すなわち、絶縁部602と同じ部材が埋め込まれた溝部150の側面の一部を反射面179とすることができる。利得領域180,190に生じた光の反射面179における臨界角θCは、絶縁部602の部材の屈折率によって変わる。したがって、例えば、利得領域180,190に生じた光を反射面179で全反射させる場合、第2利得領域190の反射面179に対する傾き角θ22,θ24は、絶縁部602の部材の屈折率によって決定されることができる。
発光装置900の製造工程は、図12に示すように、まず、第2クラッド層110及びコンタクト層112をパターニングし、柱状部610を形成する。次に、少なくとも活性層108の側面が完全に露出する深さの溝部150を形成する。次に、絶縁部602の部
材を第2クラッド層110の全面を覆い、さらに溝部150を埋め込むように成膜する。パターニングおよび成膜は、例えば、公知の方法で行われる。その後の工程は、発光装置600の製造方法と同様の工程であるため省略する。
溝部150の内部を絶縁部602と同じ部材で埋め込む場合について説明したが、溝部150の内部は、例えば、絶縁部602と異なる絶縁材料で埋め込まれていてもよい。
また、発光装置800の溝部150を埋め込む場合について説明したが、発光装置100およびその変形例に係る発光装置の溝部150の内部が、絶縁材料で埋め込まれていてもよい。
(5)なお、上述した変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、必要に応じて、上述した実施形態にもこれらの変形例を適用できる。
3. 上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。