JP5443162B2 - 肝細胞ベースの応用のための生物活性表面 - Google Patents

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Description

本発明は生物活性基層を介する肝細胞単層培養物の安定化に関する。さらに本発明は肝細胞ベースの応用のための肝細胞単層培養物の使用に関する。
(関連出願)
本願は、2006年5月24日出願の米国仮出願番号第60/802,768号の利益を主張する。この特許仮出願の開示は、参照によりその全体が本願明細書に引用されたものとする。
乳腺、膵島、肺または肝臓などの種々の組織から解離した細胞は、適切な実験条件下で、そのもとの組織に似た組織体(organization)および構造を有する多細胞凝集体へと自己組織化することができることが実証されている。これらの三次元組織様構造の形態形成を理解し制御することができることは、細胞生物学および発生生物学および組織工学研究の基本的な目的である。
肝組織工学の分野では、単離した一次肝細胞の自己集合したスフェロイド状凝集体は、懸濁培養物として、または天然もしくは人工の細胞外マトリックス(ラミニン、フィブロネクチンまたはI型コラーゲンなど)の中程度に接着性の基層を利用することにより、得られている。この細胞外マトリックスタンパク質は、Arg−Gly−Asp(RGD)およびTyr−Ile−Gly−Ser−Arg(YIGSR)などの細胞接着性ペプチドと結合されていてもよい。しかしながら、肝細胞はこれらの基層にしっかりと接着し、これにより拡張され広がった細胞モルホロジーがもたらされ、そして肝細胞の脱分化の結果である可能性がある肝臓特異的な活性のレベルの低下が引き起こされる。
対照的に、肝細胞が基層にあまりに緩やかに繋がれる場合には、肝細胞は、生体内でのような3D構造を形成し、かつ組織様の細胞−細胞および細胞−マトリックス接合性および高められた肝臓特異的な活性、細胞膜極性および肝臓の超微細構造(例えば、毛細胆管、密着結合およびギャップ結合)を呈するスフェロイドへと凝集する。肝細胞スフェロイドの特徴は、バイオ人工肝臓補助装置(bioartificial liver aided device、BLAD)および薬物代謝/肝毒性研究における肝細胞スフェロイドの潜在的な応用を示唆する。
しかしながら、3D肝細胞スフェロイドの有用性は、これらの大きい細胞凝集体へのまたは細胞凝集体からの栄養素、酸素、生体異物および代謝産物の物質移動の乏しさに起因して、限定的なものとなっている。細胞消失も、基層上でのスフェロイドの接着性の低さに起因して、これらのスフェロイドを形成し維持する上で非常に重要な問題である。従って、スフェロイドの有利な特性のいくつかを提供するがスフェロイドの欠点のいくつかを回避する、肝細胞スフェロイドを生成することに代わるものが望ましい。
第1の態様によれば、(i)ポリマー基材ならびに(ii)前記基材に連結された糖基およびペプチド基を含む、表面が提供される。
別の態様によれば、第1の態様に係る表面を有する装置が提供される。
別の局面によれば、肝細胞の安定化された培養物を提供するためのプロセスであって、糖基およびペプチド基が連結されたポリマー基材を含む表面を準備するステップと、前記肝細胞が前記表面に接着するのに好適な時間および条件の下で、肝細胞の存在下で生体外で前記表面をインキュベーションするステップと、前記表面に接着している前記肝細胞を培養して肝細胞の安定化された培養物を生成するステップと、を含むプロセスが提供される。
別の局面によれば、糖基およびペプチド基をポリマー基材に連結するステップを含む、ポリマー表面を作製するためのプロセスが提供される。
前記プロセスは、さらに、第2のポリマーを第1のポリマー上にグラフト化して、前記連結するステップに先立って前記ポリマー基材を形成するステップを含むことができる。前記第2のポリマーを前記第1のポリマー上にグラフト化するステップは、プラズマ処理および/またはUV誘導グラフト重合を含むことができる。前記プラズマ処理はアルゴンプラズマ処理であってもよい。
前記連結するステップは、
a)前記ポリマー基材を活性化して活性化されたポリマー基材を形成するステップと、
b)前記活性化されたポリマー基材を、前記糖基を含む第1の試薬および前記ペプチド基を含む第2の試薬と反応させて前記表面を形成するステップと
を含むことができる。
前記活性化するステップは、前記ポリマー基材を活性化剤と反応させて、活性化する基を前記ポリマー基材の前記表面に結合するステップを含むことができる。
前記連結するステップは、さらに、前記ポリマー基材をクエンチ剤でクエンチし、これにより未反応の活性化する基をクエンチするステップを含むことができる。
前記活性化剤はN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を含むことができ、前記第1の試薬および前記第2の試薬はともに、各々、少なくとも1つのアミン基を含むことができる。
前記クエンチ剤はアミン基を含むことができる。
さらなる態様によれば、肝細胞を培養するためのバイオリアクターであって、(i)ポリマー基材、ならびに(ii)前記基材に連結された糖基およびペプチド基、を含む表面を備えるバイオリアクターが提供される。前記バイオリアクターは、膜、管、マイクロタイターウェル、カラム、中空糸、ローラーボトル、組織培養プレートまたはマイクロキャリアの形態であってもよい。
別の態様によれば、バイオ人工肝臓補助装置(BLAD)における、(i)少なくとも1つのポリマー基材ならびに(ii)前記基材に連結された糖基およびペプチド基を含む、表面の使用が提供される。前記BLADはバイオリアクターであってもよい。
本発明の別の態様によれば、肝細胞を増殖させるための装置であって、(i)少なくとも1つのポリマー基材、ならびに(ii)前記基材に連結された糖基およびペプチド基、を含む表面を備える装置が提供される。前記装置はBLADであってもよい。前記BLADはバイオリアクターであってもよい。
上記の態様のいずれかによれば、前記ポリマー基材は熱可塑性ポリマー(ポリエステルなど)を含むことができる。前記ポリマー基材は、プラズマ方法またはUV方法によってグラフト化できるポリマーを含むことができる。一実施形態では、前記ポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。前記ポリマー基材は第1のポリマー、および前記第1のポリマーにグラフトされた第2のポリマーを含むことができる。前記糖基およびペプチド基は前記第2のポリマーに連結されていてもよい。前記第2のポリマーがポリアクリル酸であってもよい。
前記糖基は少なくとも1つの単糖基を含むことができる。一実施形態では、前記単糖基はヘキソース(ガラクトースなど)である。さらに別の実施形態では、前記ガラクトースは乳糖であってもよい。
上記の態様のいずれかのうちの一実施形態によれば、前記ペプチド基は3アミノ酸残基〜10アミノ酸残基の長さであるペプチドを含む。これらのペプチド基は天然由来のものであっても合成的に誘導したものであってもよい。前記ペプチド基は、RGDペプチド、および/またはYIGSRペプチド、および/またはGFOGERペプチドであってもよい。前記ペプチド基は、RGDペプチド(GRGDSなど)であってもよい。一実施形態では、前記ペプチド基はGRGDSである。別の実施形態では、前記ペプチド基はYIGSRである。さらに別の実施形態では、前記ペプチド基はGFOGERである。
上記の態様のいずれかのうちのある実施形態によれば、前記表面は、水、塩またはブドウ糖の通過にとっては多孔性であってもよい。他の実施形態では、前記表面は不透過性であってもよい。
本発明の好ましい実施形態が、具体例のみとしての添付の図面を参照して、これより説明される。
2ステップ反応スキーム(実線の矢印)によるPET−pAA(ポリアクリル酸)フィルムへのリガンド結合、および逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP−HPLC;点線の矢印)による結合されたリガンドの定量分析の模式図である。 成功裏のアクリル酸のグラフト化および引き続くそのPETフィルムへのRGDおよびGalリガンドの結合を示すPET、PET−g−AA、PET−galおよびPET−RGDのXPS広角走査スペクトルである。 RP−FIPLCによる結合されたRGDペプチド(GRGDS)およびGalリガンド(1−O−(6’−アミノへキシル)−D−ガラクトピラノシド;AHG)の定量分析を示すグラフである。アルギニン(a)、可溶性RGDペプチドの加水分解生成物(b)、Galリガンド(c)およびPET−ハイブリッドの加水分解生成物(d)の代表的なRP−HPLCクロマトグラム。 RP−FIPLCによる結合されたRGDペプチド(GRGDS)およびGalリガンド(1−O−(6’−アミノへキシル)−D−ガラクトピラノシド;AHG)の定量分析を示すグラフである。PETpAAc上へのRGDペプチドの結合効率曲線。 RP−FIPLCによる結合されたRGDペプチド(GRGDS)およびGalリガンド(1−O−(6’−アミノへキシル)−D−ガラクトピラノシド;AHG)の定量分析を示すグラフである。pAAc−PET基層へのガラクトースリガンドの結合効率曲線。 肝細胞スフェロイド形成の間の異なる段階における、ガラクトシル化された基層上で培養された肝細胞のモルホロジーを示す顕微鏡写真である。位相コントラスト写真および基層被覆率。 肝細胞スフェロイド形成の間の異なる段階における、ガラクトシル化された基層上で培養された肝細胞のモルホロジーを示す顕微鏡写真である。走査型電子顕微鏡写真。 ガラクトシル化された基層上での肝細胞3Dスフェロイド形成(上段)およびコラーゲンコーティングされた基層上での従来の2D単層形成(下段)の間の種々の時間点におけるF−アクチン再組織化の図である。 肝細胞3Dスフェロイド形成の間のp−FAKおよびE−カドヘリン発現ならびに分布を示す図である。3dスフェロイドおよび2D単層形成の間にELISAによって定量されたp−FAK発現の動的変化の図である。 肝細胞3Dスフェロイド形成の間のp−FAKおよびE−カドヘリン発現ならびに分布を示す図である。E−カドヘリンおよびβ−アクチン発現のウエスタンブロット分析の図である。GAPDHを装填量対照として使用した。 肝細胞3Dスフェロイド形成の間のp−FAKおよびE−カドヘリン発現ならびに分布を示す図である。従来の2D単層、プレスフェロイド(pre−spheroid)3D単層、3Dスフェロイドのp−FAK/E−カドヘリン二重染色法の図である。 従来の2D単層、プレスフェロイド3D単層、3Dスフェロイドにおける肝細胞の極性および密着結合形成の図である。毛細胆管トランスポーターMRP2および側底マーカーCD143の二重染色法。この写真は加工されており、各加工された写真の隅の数字は、材料および方法において説明するアルゴリズムによる、極性マーカーとしての細胞境界に沿ったMrp2局在化の定量的測定値である。 従来の2D単層、プレスフェロイド3D単層、3Dスフェロイドにおける肝細胞の極性および密着結合形成の図である。密着結合タンパク質ZO−1および側底マーカーCD143の二重染色法。この写真は加工されており、各加工された写真の隅の数字は、材料および方法において説明するアルゴリズムによる、極性マーカーとしての細胞境界に沿ったZO−1局在化の定量的測定値である。 従来の2D単層、プレスフェロイド3D単層、3Dスフェロイドにおける肝細胞の肝臓特異的な機能の図である。(A)アルブミン分泌;(B)尿素産生;(C)7−エトキシレゾルフィン O−デエチラーゼ(EROD)シトクロムP450活性。 2D単層およびプレスフェロイド単層において(A)アセトアミノフェンおよび(B)肝細胞のアフラトキシンB1によって誘発される肝毒性感度の図である。 播種から2時間後の様々な基材上での肝細胞の付着性を示す図である。データは平均値±標準偏差である。n10。(*):P<0.05、(**):P<0.01、(N.S):有意ではない。 様々な基層に付着した肝細胞を示すための、7日間の培養の間の種々の時間点における、様々な基層上で培養された肝細胞の全DNA含有量の図である。 7日間の培養の間の種々の時間点における様々な基材上で培養された一次肝細胞の位相コントラスト写真である(スケールバー=5μm)。 3Dスフェロイド、3D単層および2D単層としての3日間培養後の肝細胞のF−アクチン、p−FAKおよびE−カドヘリンの共焦点Z−スタック投影図(スケールバー:20μm)である。E−カドヘリン分布を明瞭に示すために、Z−スタック図からの単一のスライスの一部が対応する投影図の隅に置かれている。 可溶性GRGDSペプチドにより不安定化することができた、ハイブリッドGRGDS/ガラクトース−PET基層(PET−ハイブリッド)上のプレスフェロイド3D単層の安定化の図である。6日間にわたる培養の間のPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞のp−FAK発現は、PET−ハイブリッド上の安定化された3D単層の高められた細胞−基層相互作用を示した。 可溶性GRGDSペプチドにより不安定化することができた、ハイブリッドGRGDS/ガラクトース−PET基層(PET−ハイブリッド)上のプレスフェロイド3D単層の安定化の図である。可溶性GRGDSペプチドを含む培地および対照としての通常の培地中でのPET−Gal、PET−ハイブリッドおよびコラーゲン基層の、4日目の肝細胞の位相コントラスト写真である。 7日間の培養の間の種々の時間点における様々な基層上の肝細胞のアルブミン分泌レベルを示す図である。機能データは1サンプルあたりのDNAの総量に対して規格化された。データは平均値±標準偏差である。n=6。(*):P<0.05、(**):P<0.01、(N.S):有意ではない。 7日間の培養の間の種々の時間点における様々な基層上の肝細胞の尿素合成を示す図である。機能データは1サンプルあたりのDNAの総量に対して規格化された。データは平均値±標準偏差である。n=6。(*):P<0.05、(**):P<0.01、(N.S):有意ではない。 7日間の培養の間の種々の時間点における様々な基層上の肝細胞の3MC誘発性EROD活性を示す図である。機能データは1サンプルあたりのDNAの総量に対して規格化された。データは平均値±標準偏差である。n=6。(*):P<0.05、(**):P<0.01、(N.S):有意ではない。 様々な基層上で培養された肝細胞のアセトアミノフェン誘発性肝毒性に対する反応の図である。異なる濃度のAPAPおよび3MCと同時投与されたAPAPの24時間投与量の下での培養された肝細胞の細胞毒性を示すためのMTS検定。データは平均値±標準偏差である。n=10。(*):P<0.05、(**):P<0.01、(N.S):有意ではない。 様々な基層上で培養された肝細胞のアセトアミノフェン誘発性肝毒性に対する反応の図である。異なる濃度のAPAPおよび3MCと同時投与されたAPAPの48時間投与量の下での培養された肝細胞の細胞毒性を示すためのMTS検定。データは平均値±標準偏差である。n=10。(*):P<0.05、(**):P<0.01、(N.S):有意ではない。
(定義)
本願明細書全体を通して、文脈が別段の定義を必要としていないかぎり、「含む(comprise)」との用語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(compromising)」などの変化形は、述べられたステップもしくは要素もしくは整数またはステップもしくは要素もしくは整数の郡の包含を含み、いかなる1つのステップもしくは要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の排除を含まないと理解される。
本願明細書中で使用する場合の用語「に由来する」は、特定された整数が特定の供給源から入手することができるが、必ずしもその供給源から直接に入手できる必要はないことを示すと解釈されるものとする。
本願明細書中で使用する場合の用語「RGDペプチド」は、アミノ酸残基Arg−Gly−Aspを含むペプチドを意味すると解釈されるものとする。RGDを含有するペプチドは、RGD認識部位を介して細胞の表面に発現されたインテグリンに特異的に結合することができる(Plowら,J Biol Chem,2000)。RGDペプチドはRGDモチーフのそばにある1つ以上のアミノ酸を含有していてもよい。
本願明細書中で使用する場合の「3Dスフェロイド」との用語は、以下の特徴の少なくとも1つが存在する、3D構造における(通常は丸まった凝集体の形態にある)培養された肝細胞の形成を意味すると解釈されるものとする:(i)E−カドヘリンの極性ある発現などの確立した細胞−細胞/細胞−マトリックス相互作用、(ii)肝臓に特異的な活性を有する、(iii)細胞膜極性を呈する、および(iv)コラーゲン基材上で培養された肝細胞よりも高い程度で、生体内で肝細胞により示される超微細構造を有する。
「3D肝細胞単層」との用語は、本願明細書において糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)を含む表面上で肝細胞が培養されたときに生成する培養物における肝細胞の単層を意味するために使用されることが理解されるであろう。3D肝細胞単層中の肝細胞は、細胞の広がりを呈するだけでなく、上で説明したような3Dスフェロイド中に存在する肝細胞の特徴の多くをも呈する。
本願明細書中で使用する場合の、用語「安定化する(stabilizing)」または「安定な(stable)」または「安定化された(stabilized)」は、細胞集合相の2サイクルの間に起こる一過性の細胞が広がった相(cell−spreading phase)がより一過性でない細胞が広がった相となるような、上で説明したような3D肝細胞単層の長期間にわたる存在を意味すると解釈されるものとする。肝細胞の安定化された培養物は、少なくとも約24時間で発生する細胞が広がった相を含む単層である。
本願明細書中で使用する場合の、用語「インテグリン」は、RGDリガンドに結合することにより細胞接着を媒介する原形質膜受容体を表す。
本願明細書中で使用する場合の、用語「ガラクトース」または「ガラクトースリガンド」は、糖基の例である。糖基およびペプチド基は、ポリマー基材上に連結することができる。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本願明細書に記載されるとおり、本発明は、(i)少なくとも1つのポリマー基材(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、ならびに(ii)このポリマー基材に結合される(連結される)糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)を含む表面を提供する。ポリマー基材上のRGDペプチドおよびガラクトースは、本願明細書に記載されるような、基材への細胞接着および肝臓特異的な活性を高める。
(ポリマー基材の前処理)
ポリマー基材は、それに糖基およびペプチド基を連結するのに先立って活性化することができる。この活性化は、基材が糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)と反応できるようにし上記表面を形成できるようにする前処理ステップを実行することにより行うことができる。基材は、活性化剤の付加である化学反応により活性化することができる。好適な活性化剤は、ポリマー基材に連結することができる官能基ならびにそれぞれ糖基およびペプチド基を含有する第1の試薬および第2の試薬と反応することができる別の官能基を有することができる。あるいは、その活性化剤は、第1の試薬および第2の試薬のポリマー基材との反応を活性化することができるものであってもよい。一実施形態では、第1の試薬および第2の試薬は少なくとも1つのアミン基を含み、ポリマー基材は表面カルボキシル基を有する。この実施形態において、好適な活性化剤はN−ヒドロキシスクシンイミドである。この試薬は、第1の試薬および第2の試薬をアミド基を介してポリマー基材に連結するために、ポリマー上の表面カルボキシル基と反応することができ、引き続いて第1の試薬および第2の試薬上のアミン基によって置換され得る。別の好適な試薬はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)である。他の類似の活性化剤は当業者には明らかであろう。
(ポリマー基材)
本発明で準備されるポリマー基材は、熱可塑性ポリマーとして公知のポリマーの群に属するものであってよい。一実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリエステルであってよい。別の実施形態では、ポリエステルはポリエチレンテレフタレートであってよい。ポリマー基材は、第2のポリマーがグラフトされた第1のポリマーを含んでいてよい。第2のポリマーは付加ポリマーであってよい。それはポリアクリル酸またはポリメタクリル酸などのポリ酸であってもよい。一実施形態では、第1のポリマー(PETなど)は、ポリアクリル酸またはポリメチルアクリル酸(必要に応じてメチル基上で置換されている)でグラフト化することにより官能化され、カルボン酸基が導入されてもよい。第2のポリマーは、グラフト重合により第1のポリマーに結合されていてもよい。しかしながら、結合するための他の好適な技法は、当業者が想起するとおり、使用することができる。グラフト化は、例えば、プラズマ処理(アルゴンプラズマ処理など)および/またはUV誘導共重合を使用して実施することができる。
(糖基)
本願明細書において、糖基は単糖であってよいことが想起される。単糖は、ヘキソースまたはその誘導体であってよい。このヘキソースはガラクトースであってよい。糖基は、ガラクトース部分を含む任意の糖(乳糖など)であってよい。
(ペプチド基)
本発明ではペプチド基を準備する。これらのペプチド基は、インテグリンに結合できるものとすることができる。これらのペプチド基の例はトリペプチドまたはYIGSRペプチドである。トリペプチドは、RGDペプチドであってよい。(Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg(YIGSR)[Carlisleら,Tissue Eng 2000]、Gly−Phe−Hyp−Gly−Glu−Arg(GFOGER)[Reyesら J Biomed Mater Res A 2003]。
(表面)
本発明では、多孔性であってもよくまたは不透過性であってもよい表面を準備する。この表面は単層であってもよく、多層であってもよい。この表面は、膜、管、マイクロタイターウェル、カラム、中空糸、ローラーボトル、プレートおよびマイクキャリアの形態であってもよい。
(結合)
本願明細書に記載される場合、結合は、糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)を結合するために使用される任意の化学であり得る。これらの基は本発明を実施するのに好適な表面を生成するために互いに、および/または基層へと結合することができる。本願明細書に記載されるとおり、連結(coupling)は結合(conjugation)であってもよい。
本願明細書に記載される特定の具体例に限定されないが、以下の例は、糖基およびペプチド基を基材に連結するために使用することができる化学を説明するということが理解されるであろう。
基層上のカルボン酸基は、アミン基を含有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、アミド基を形成することができる。
基層上のカルボン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、アミン基を含有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、アミド基を形成することができる。
基層上のアミン基は、酸クロリドを有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、アミド基を形成することができる。
基層上のアジド基は、アセチレン基を有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、トリアゾール基を形成することができる。
基層上のマレイミド基は、Michael型の付加によってチオール基を有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、N−ヒドロキシスクシンイミドチオエーテル基を生成することができる。
しかしながら、生体分子をポリマー表面に特異的に固定化するために当該技術分野で一般に用いられる多くの他の官能基および活性化戦略もまた用いることができることは理解されるであろう。当該技術分野で周知の他の連結反応もまた使用することができる。これらは、化学基を分子または機能化された固体の上に導入する周知の方法のいずれを含んでいてもよい。これらとしては、ベンジルハライド(例えば、クロリドまたはブロミド)基の求核置換反応、「クリック」化学などが挙げられる。好適なクリック化学としては、例えば環化付加反応(Huisgen 1,3−双極子環化付加反応、Cu(I)触媒によるアジド−アセチレン環化付加反応、Diels−Alder反応、ひずみがかかった小環(例えば、エポキシ環およびアジリジン環)への求核置換反応、尿素およびアミドの形成ならびに二重結合への付加反応(例えば、エポキシ化、ジヒドロキシ化)を挙げることができる。
本発明は、ガラクトース結合された生物活性基層上で培養された肝細胞が2サイクルの細胞集合および広がりを経て大きいスフェロイドを形成するという驚くべき発見に基づく。肝細胞が単層として基層に付着するが、3Dスフェロイドの上述の制限(乏しい物質移動および様々な特徴をもつ細胞の不均一な空間分布など)なしに3Dスフェロイドの多くの特徴(確立した細胞−細胞/細胞−マトリックス相互作用、高レベルの代謝機能、合成機能、解毒機能および***機能など)を呈する、細胞が広がった相が第1の細胞集合相と第2の細胞集合相との間に存在する。この細胞が広がった相(「3D肝細胞単層」と名付ける)は、2つの細胞集合相の間に一過性に発生するに過ぎず、1日間〜3日間発生し、約24時間しか存続しない。
ポリマー表面ならびに糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)を含む表面を用いる際に、その表面が、約1週間までの期間にわたって細胞が広がった相の中で3D肝細胞単層を約1週間までの期間にわたって安定化することが見出され、このためこの3D肝細胞単層の有用な応用が可能になる。
肝細胞ベースの応用のためにこの3D肝細胞単層の安定化を実現するために、本発明者らは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に結合されたガラクトースを含む生物活性のガラクトシル化された基層(米国特許出願公開第2005−0058685(A1)号明細書。これは、参照により本願明細書に引用されたものとする)を、RGDペプチドおよびガラクトースをPETフィルム上へと同時結合することにより改変した。
提案されたメカニズムに何ら束縛されることはないが、培養された肝細胞の表面にあるRGDペプチドおよびインテグリンによって媒介されるより強固な細胞−基層相互作用が、細胞が広がる3D単層相を選択的に安定化すると考えられる。この3D単層構造は1週間までこのハイブリッド基層上で安定であり、これは、薬物代謝、肝毒性の研究またはBLADにおけるような効果的な物質移動、および細胞支持の両方を必要とする種々の肝細胞ベースの応用/肝臓工学的応用に有用であろう。例示的な肝毒性研究において、PET−ハイブリッド基層上で培養された3D肝細胞単層は、モデル薬物アセトアミノフェンによって誘発された肝毒性に対して高レベルの感度を呈した。この感度は3Dスフェロイドと同程度であるが、コラーゲンコーティングされた基層上で培養された2D肝細胞単層よりも高い。
スフェロイド形成の間のE−カドヘリンの動態、リン酸化された接着斑キナーゼ(p−FAK)およびF−アクチンの分布および発現を研究することにより、ガラクトシル化された基層上での肝細胞形態形成が、主に、細胞骨格の再組織化を介した細胞−細胞相互作用と細胞−基層相互作用との間の均衡によって調節されることが見出された。肝細胞スフェロイド形成の異なる段階において、プレスフェロイド(pre−spheroid)単層段階の肝細胞は、コラーゲンコーティングされた基層上で培養された従来の肝細胞2D単層と比べて強固な細胞−基層相互作用および細胞−細胞相互作用を保有した。この一過性のプレスフェロイド単層段階の肝細胞は、改善された細胞組織および細胞極性、高められた細胞−細胞相互作用およびより良好な分化した活性を呈した。これらは、[発明が解決しようとする課題]の項において述べた物質移動の問題がない場合の3Dスフェロイド中の肝細胞に匹敵する。
プレスフェロイド単層構造をより長期間の適用の間(例えば約1日から5−10日間まで、例えば約7日間)安定化するために、RGDペプチドは、ガラクトシル化された基層上へ同時結合され、RGD−インテグリン結合により媒介される細胞−基層相互作用が高められる。一次肝細胞は、バイオ人工肝臓補助装置(BLAD)、薬理学的研究、毒物学研究および代謝研究において広く使用されている。これらの応用における肝細胞は、通常、最適の細胞付着性および機能維持を実現するための適切な基層上で増殖される[Allenら,Hepatology,2001;Sep;34(3):447−455;LeCluyseら,Pharma Biotechnol,1996;8:121−159;Luら,Biomaterials,2003 Dec;4(27)4893−4903]。種々の天然または合成物のポリマー基層が肝細胞培養物のために用いられてきた(例えば、細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなど)でコーティングされているか、または細胞接着ペプチド(Arg−Gly−Asp(RGD)[Tashiroら,J Cell Physiol,1991,Mar;146(3)451−459]およびTyr−Ile−Gly−Ser−Arg(YIGSR)[Carlisleら,Tissue Eng.2000,Feb;6(1):45−52]など)と結合されたプラスチック表面または膜)。肝細胞はこれらの基層にしっかりと繋がり、拡張され広がった細胞モルホロジーを呈する。低レベルの肝臓特異的機能は肝細胞の脱分化によるようである[Yingら,Biomacromolecules 2003,Jan−Feb;4(1):157−165]。これらの基層はミクロプレートでの薬物スクリーニングのために[Gebhardtら,Drug Metab Rev 2003,May−Aug;35(2−3):145−213;Coeckeら,ATLA 1999;27:579−638;Kikkawaら,J Toxicol Sci 2005,Feb;30(1):61−72]、およびBLADバイオリアクター[Parkら,J Biosci Bioeng 2005,Apr;99(4)311−319]のために広範に使用されてきた。ガラクトース結合された基層は、ガラクトース−アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)相互作用を介する肝細胞付着性についての魅力的な代替物である。
本発明の一実施形態は、3D肝細胞スフェロイドにおいて通常観察される肝細胞が広がっていない(non−spread)細胞モルホロジー、密接な細胞−細胞相互作用および高レベルの肝臓特異的な活性を維持しつつ、基層上に単層として安定的に繋がることができるように、RGDペプチド基およびガラクトースの両方をポリマーに結合することによる生物活性基層に関する。
一実施形態では、PETフィルムは、ポリアクリル酸(pAA)で表面改質され(実施例1A参照)、次いで「2ステップ」「EDC」化学を使用して結合され(実施例1B参照)、そしてX線光電子分光法(XPS)および逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によって特性解析された。RGDペプチドおよびガラクトースの両方と結合されたこのPETフィルム(PET−ハイブリッド)は、対照としてのRGDペプチドのみと結合されたPETフィルム(PET−RGD)、ガラクトシル化されたPET(PET−Gal)およびコラーゲンコーティングされたミクロプレートとともに、肝細胞培養のために96ウェルミクロプレートに挿入された。鍵となるマーカー(F−アクチン、E−カドヘリン、P−FAK)の発現の分析により、PET−ハイブリッド膜上の細胞は、2D基層に接着しているにもかかわらず、3Dスフェロイド状の細胞のような挙動をすることが示された。このPET−ハイブリッド上で培養された3D肝細胞単層は、アセトアミノフェンが誘発した肝細胞毒性に対して、2Dの対照よりはむしろ3D肝細胞スフェロイドと同様の感度を呈した。このハイブリッドRGD/ガラクトース生物活性基層は、単層上でスフェロイド様肝細胞の挙動を支持し、通常の3Dスフェロイドの細胞消失および物質移動の制限を回避し、そして種々の応用のためのミクロプレートまたは他の普及している2D培養装置またはバイオリアクターに直ちに適合させることができる。
本発明の一態様は、付着促進のためのペプチド基(RGDペプチドなど)およびモルホロジー改善および機能改善のための糖基(ガラクトースなど)の両方を含有する肝細胞培養のためのハイブリッド生物活性基層の開発である。一次肝細胞がRGDおよびガラクトースの両方を含むハイブリッド基層上で培養された場合、これらの2つのリガンド−受容体相互作用間の戦略的相互作用が観察された。
肝細胞が密接な細胞−細胞相互作用を持って、同時に基層への効果的な接着を伴って互いに接する、広がった単層と3D単層との間の中間のモルホロジー状態が観察された。肝細胞「3D単層」の分化した活性、解毒能力および肝毒性に対する応答感度は3Dスフェロイドと同様であった。興味深いことに、PET−Gal上での動的なスフェロイド形成の肝臓画像化研究に基づくと、細胞播種後1日以内のプレスフェロイド段階と細胞播種から3日後に発生するコンパクトな3Dスフェロイド段階との間に「単層」段階も存在(exit)する。小さいプレスフェロイドが徐々に広がり、互いに合体して一時的に単層を形成し、これが後でより大きくかつよりコンパクトな成熟したスフェロイドをもたらすときに、3Dスフェロイドが形成される。
肝臓組織工学の分野におけるバイオリアクターのための細胞培養表面も、本発明において想定されている。それは、3D肝細胞単層(より良好な細胞付着性および機能を備えた培養物の構成である)を得るために表面を改善する方法を提供する可能性がある。
(組織形態形成のメカニズムを研究するためのモデル系)
3D組織様構造の形態形成を理解し制御することができることは、細胞生物学および発生生物学および組織工学研究の基本的な目的である。肝細胞スフェロイド形成には、組織形成のプロセスに似た細胞の移送(translocation)および細胞形状の変化が関与する。ハイブリッドポリマー基層中の生物活性リガンドによって肝細胞スフェロイド形成を調節することができれば、スフェロイド形成のメカニズム研究が可能になる。
(バイオ人工肝臓バイオリアクターのための「支持表面」)
バイオ人工肝臓装置のためのバイオリアクターは、膜、管、ミクロタイターウェル、カラム、中空糸、ローラーボトル(roller bottler)、プレート、およびマイクロキャリアなどの任意の好適な形態であってよい。バイオリアクターの「支持表面」は、細胞と物理的に接して細胞の付着を支持することが意図されている。好適な支持体材料は、剛直性、表面積、調製および使用の容易さ、ならびにコストなどの特性の最適の組合せを示す表面を提供する。
本発明は、より適切な生物活性生体材料の設計につながる可能性があるガラクトシル化された生物活性基層上のスフェロイド自己集合のメカニズムを明らかにするための商業的推進力を提供する。加えて、プレスフェロイド単層の同定および安定化は、BLADおよび薬物代謝/肝毒性研究などの肝臓組織工学的応用のための有用な構成を提供する。
プレスフェロイド3D肝細胞単層の同定およびRGD/ガラクトースハイブリッド基層を使用することによるこの構成の安定化は、現在の2D系および3D系に対して以下の利点の1つ以上を提供する。
コラーゲンコーティングされた基層上で培養された従来の2D肝細胞単層と比べて、RGD/ガラクトースハイブリッド基層上で培養された3D肝細胞単層は、生体内での肝細胞と同様の細胞構造および細胞極性、細胞−細胞相互作用ならびに分化機能を呈した。
3D肝細胞単層は3Dスフェロイドよりも良好な付着性および物質移動を呈した。
3D肝細胞単層は、Primara皿上の肝細胞スフェロイドおよび肝細胞単層の混合物[Tzanakakis ESら Cell Transplant.2001;10:329−42.1]に比べて、より均一な単層モルホロジーを呈した。
3D肝細胞単層は、「コラーゲンを欠く」生物活性サンドイッチ培養物構成よりもより効果的な物質移動を呈した。
3D肝細胞単層を生成するために必要とされる表面は、未同定の成分を有しバッチ毎に変動する天然の細胞外マトリックスに比べて、単純で定量的な制御可能な生物活性の手掛かりを含有する。
合成ポリマー表面は、長期保存および低温保存のために化学的にかつ力学的に安定である。
合成ポリマー表面で増殖した肝細胞は、高濃度のDEXにより維持されるPrimara皿で培養された光度に官能化された単層と比べて、高レベルのホルモンに曝露することなく通常の培養培地で培養することができる。
合成ポリマー表面は、生体適合性でありかつ光学的に透明である。このため、その表面はミクロプレートベースのADME/TOXスクリーニングプラットフォームまたは膜ベースのバイオリアクターに直ちに適合させることができる。
複数のリガンドをPETフィルム上へと結合するという同一の技術を使用して、肝細胞ベースの応用のための基底膜組成物をよりよく模倣するために、他の生物活性リガンドを結合することができる。
(応用)
本願明細書に記載されるとおり、プレスフェロイド3D単層段階は、応用への大きな潜在能力を示す従来の2D単層よりも、相対的に強固な細胞−基層相互作用、高められた細胞−細胞相互作用、改善された極性および肝臓特異的な機能を特徴とした。ガラクトース/RGDハイブリッド基層を使用してこの構成を安定化することにより、本発明者らは、この3D単層段階を1週間まで維持することができた。その化学的かつ力学的安定性および定量的に制御可能な生物活性の手掛かりをもとに、透明なハイブリッドポリマー基層は、コラーゲンコーティングされた基層の代替物として、高スループット薬物代謝/肝毒性スクリーニングのための現在のミクロプレートベースの自動化プラットフォームに簡単にかつ直ちに組込まれる。例示的な薬物肝毒性研究が示すとおり、提供された3D肝細胞単層構成は、生体内での生物反応をよりよく要約する、生体異物の薬物動態/動態学データの生体外予測を改善した。このハイブリッド基層は、より良好な細胞付着性および機能を備えた3D肝細胞単層を得るためのバイオ人工肝臓装置用のバイオリアクターの細胞培養表面としても有用である可能性がある。
基層への一次肝細胞の効果的な接着および3D細胞の特徴をもとに、RGD/ガラクトースハイブリッド基層上で安定化されたプレスフェロイド3D肝細胞単層は、以下の代表的な応用において(これらに限定されない)有用であり得る。その応用とは、肝細胞ベースの高スループットの(i)生体異物の代謝または肝毒性スクリーニング、(ii)薬物研究、(iii)高含有量スクリーニング、ならびに(iv)ミクロプレートベースの代謝および毒性の研究である。
(i)肝細胞ベースの高スループットの生体異物の代謝または肝毒性スクリーニング
3D肝細胞単層は、例えば[AP.Li Drug Discovery Today 2005;2:179−185;White RE. Annu Rev Pharmacol Toxicol.2000;40:133−57;Battersby BJ Trends Biotechnol.2002;20:167−73]に記載されているような肝細胞ベースの高スループットの生体異物の代謝または肝毒性スクリーニングのために使用することができる。
(ii)薬物研究
ADME/TOX薬物特性、つまり吸収、体内動態、代謝、***および毒性、は臨床における成功に関連しかつそれにとって重大な、重要な薬物特性である。薬物ADME/Tの正確な予測は、製薬業界にとっては依然として主要な課題のままである。予想されなかった副作用に起因する市販されている薬物の毎年の使用中止または厳しい使用制限から明らかなように、臨床前および臨床時の薬物ADME/T評価の日常的な実施では、明らかに不十分である。肝臓は生物変換および生体異物(薬物を含む)の解毒の主たる臓器であるので、肝臓の実質細胞として、肝細胞ベースの薬物スクリーニングは、薬物候補の代謝および毒性を評価するために広く使用されてきた。生体異物の現在の肝細胞ベースの高スループット代謝/肝毒性スクリーニングのほとんどは、基材調製の容易さおよび一貫性に起因して、I型コラーゲンがコーティングされた96ウェルまたは384ウェルのミクロプレート上で培養された肝細胞を使用して行われている。いくつかの他の生体外培養物構成は、肝細胞ベースの系の機能性および生体模倣性を改善しようとしており、それらとしては、3Dミクロカプセル、サンドイッチ培養物、3Dスフェロイド培養物マイクロキャリア培養物、バイオリアクター内部での潅流培養物および非実質細胞との共培養が挙げられる。しかしながら、それらの複雑な系は、プレート取扱いロボット、色素ベースの分析のための高密度ミクロプレートおよびプレート走査型リーダーなどの平行プロセスを支持する自動化および機器分析をもたらしている標準的な高スループットスクリーニングプラットフォームに容易には適合できない技術的複雑さという問題を抱えている。
その化学的かつ力学的安定性および定量的に制御可能な生物活性の手掛かりをもとに、3D肝細胞単層を生成するために本願明細書において提供される透明なハイブリッドポリマー基層は、コラーゲンコーティングされた基層の代替物として、高スループットの薬物代謝/肝毒性スクリーニングのための現在のミクロプレートベースの自動化プラットフォームに簡単にかつ直ちに組込まれる。3D肝細胞単層構成は、生体内での生物反応をよりよく要約する、生体異物の薬物動態/動態学データの改善された生体外予測を提供することが予想される。
一次肝細胞は、3Dスフェロイドの細胞を想起させる高レベルの肝細胞活性、細胞モルホロジーおよび細胞−細胞相互作用を呈しつつ、96ウェルプレートにおいて透明なハイブリッド基層の上に単層として効果的に接着する。ハイブリッド基層上で培養された肝細胞はまた、ガラクトシル化された基層上で発現している肝細胞スフェロイドと同様の、アセトアミノフェンに対する高感度を呈する。この平坦なハイブリッド基層上で3D細胞の挙動を呈する肝細胞の単層は、高スループットの生体異物スクリーニングまたは他の応用について確立されている任意の既存の2D細胞培養プラットフォームと適合性である。
(iii)高含有量スクリーニング
高含有量スクリーニングは、自動化された画像ベースの技術を使用する細胞検定の解析を指す、細胞ベースの系に適用できる高スループットアプローチである。これによって、複数の検定パラメータをモニタリングすること、および細胞情報(細胞形状および生存能力、標的の動きおよびその化合物と他の生体分子との相互作用を含む)をワンステップで捕捉することが可能になる。差は、2D撮像装置を使用すると1ウェルあたり数1000であるのに対して、通常の観察時間測定を使用して1ウェルあたり数データポイントである。このように、高含有量アプローチは、多くの細胞の特徴が一度に追跡できるため、細胞ベースのスクリーニングのコストを下げることができる。
光学的に透明なハイブリッド生物活性RGD/ガラクトース基層上に維持される3D肝細胞単層の均一性に起因して、この系はまた、肝細胞ベースの高含有量スクリーニングにおけるコラーゲンコーティングされた基層のための代替物として使用することもできる。これによって、肝臓における肝細胞を示す3D肝細胞単層における細胞事象および細胞応答を評価しつつ、複数の検定パラメータ(ミトコンドリア膜電位、細胞内の遊離のカルシウム、原形質膜の完全性など)をワンステップでモニタリングすることが可能になる。
(iv)ミクロプレートベースの代謝および毒性の研究
ハイブリッド基層上で培養された肝細胞3D単層のスフェロイドを模倣する特性、単層構造、および効果的な付着のために、本願明細書に記載されるハイブリッド基層は、肝細胞ベースの応用(ミクロプレートベースの代謝および肝毒性試験ならびに平坦プレートバイオ人工補助装置など)のための従来のコラーゲンコーティングされた2D基層についての優れた代替物となる。APAPの例示的な肝毒性研究に示されるように、ハイブリッド基層上で培養された肝細胞は、APAPに対して、コラーゲン上で培養された肝細胞よりもより高い感度を示した。
アセトアミノフェン(APAP)により誘発された肝毒性に対する、PET−ハイブリッド上およびPET−Gal上で培養された肝細胞のより高い感度は、より高いシトクロムP450(CYP45O)酵素活性によって引き起こされているのかも知れない。同時投与した誘導因子(3MC)の「肝毒性の増幅効果」は、PET−ハイブリッドおよびPET−Gal上で培養された肝細胞のCYP450酵素のより高い誘発性に起因するかも知れないと考えられる。
(実施例1:ガラクトシル化された基層上のプレスフェロイド3D肝細胞単層段階の同定および特性解析)
(実施例1A:アクリル酸をグラフトしたPETフィルムの製作)
厚みが約100μmの二軸配向させたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを英国、ケンブリッジのGoodfellow Inc.から購入した。ガラクトースリガンド、1−O−(6’−アミノへキシル)−D−ガラクトピラノシド(AHG、M.W.279)を以前に開発された方法[Yingら,Biomacromolecules 2003,Jan−Feb;4(1):157−165;Findeis MA、Int J Pept Protein Res,1994,May;43(5):477−485;Weigelら,Carbohydr Res,1979;70:83−91]に従って合成し、NMRスペクトルにより確認した。RGDペプチド(GRGDS)をPeptides Internationalから購入した。別段の記載がないかぎり、すべての他の化学物質をSigma−Aldrich Singaporeから購入した。
生物活性リガンドを結合するための改変した手順[Yingら,Biomacromolecules 2003,Jan−Feb;4(1)157−165;Guptaら,Biomaterials,2002,Feb;23(3):863−871]を用いて、ポリアクリル酸(pAA)をPETフィルム表面にグラフトした(図1)。手短に言えば、PETフィルムを2cm×8cmのストリップに切り、エタノール中で洗浄した。風乾したPETストリップを、13.6MHzの無線周波数(RF)で動作するSAMCO Basic Plasma Kit(Samco International Inc.)で実施したアルゴンプラズマ処理にかけた。アルゴンを、50ml/分の流量でSAMCOキットのチャンバの中へ導入し、チャンバ圧力を20Paに維持した。プラズマを、40Wの電力で1分間発生させた。プラズマ処理の後、PETストリップを10分間大気に曝して表面の過酸化物およびヒドロペルオキシドの形成を促し、これを引き続くpAAのUV誘導グラフト化に使用した。UV処理のために、長さ12cm、直径2.5cmの石英管を使用した。プラズマ処理したPETストリップを石英管中のアクリル酸を含む30mlの水溶液に浸漬した。アルゴンを溶液に吹き込んで徹底的に酸素を除き、アルゴン下でふたをした。この石英管を28℃の一定温度の水槽に置き、UV−F 400ユニット(Panacol−Elosol GmbH)の400W投光機を使用してこれを30分間UV照射した。グラフト化後、PETストリップを管から取り出し、脱イオン水で24時間徹底的に洗浄して表面に吸収された残留するホモポリマーを除いた。
(実施例1B:生物活性基層の製作および特性解析)
pAA−g−PET(すなわちpAAをグラフトしたPET)ストリップを、96ウェルのミクロプレートにフィットさせるために直径6.4mmの円形のディスクに切った。RGDペプチドおよびガラクトースリガンド(AHG)を、「2ステップ」EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)化学を使用して、別々にまたは同時にアミド結合を介してpAAc−g−PET基層に結合した(図1)。手短に言えば、第1のステップで、1.5mg EDCおよび0.3mgスルホ−NHSを含有する100μlのMES緩衝液(50mM、pH5.5)をpAA−g−PETディスクを含む各96ウェルに加え、NHSエステルを形成することにより表面カルボキシル基を活性化した。室温での2時間の活性化後、MES溶液を完全に除去し、リガンドを含む100μl リン酸緩衝液(0.1M、pH7.4)で再び満たし、サーモミキサー(Eppendorf)中で4℃で48時間、300rpmで振盪することにより活性化された基層と反応させた。
PET−RGDまたはPET−Galを、それぞれ、RGDペプチド(GRGDS)またはガラクトースリガンド(1−O−(6’−アミノへキシル)−D−ガラクトピラノシド、AHG)との反応により製作した。PET−ハイブリッドを、様々な比のGRGDSおよびAHGの均一な混合物との反応により製作した。
生物活性リガンドの結合後、各サンプルを0.5%エタノールアミン溶液で1〜5分間クエンチし、未反応のカルボキシル基と肝細胞との非特異的相互作用をブロックした。様々な基層を含むミクロプレートを、70%エタノールに3時間浸すことにより滅菌し、PBSで3回リンスした。コラーゲンコーティングされた基層を、96ウェルミクロプレートの各ウェルにて100μlの1.5mg/mlコラーゲン溶液を4℃で一晩インキュベーションすることにより調製した。過剰のコラーゲン溶液を吸引し、各ウェルをPBSで3回リンスした。
PETフィルム上のカルボキシル基のグラフト密度を、以前に報告されたトルイジンブルー染色[Yingら,Biomacromolecules 2003,Jan−Feb;4(1)157−165;Uchidaら,Langmuir,1993;9:1221−1124]を使用して、比色法により決定した。
XPSを、PET上へのpAAグラフト化およびリガンド結合を定量的に確認するために使用した。測定は、Mg Kα X線源(1253.6eV 光子)を備えたVG ESCALAB Mk II分光計で40の一定の遅延比で行った。
最初のPETフィルムのXPS広角走査スペクトルは、C 1s(結合エネルギー、285eV)およびO 1s(結合エネルギー、532eV)に対応するピークを示し、これは炭素および酸素のシグナルの存在を明らかにした。PET−pAAcフィルムのスペクトル(図2上段、左の図)は、最初のPETフィルムと同一のピークを示した。しかしながら、炭素ピークに対する酸素ピークの相対強度比は、最初のPETフィルムにおける比よりもPET−pAAフィルムにおいてのほうが高い。pAAcグラフト化密度を、TBO比色分析[Yingら,Biomacromolecules 2003,Jan−Feb;4(1)157−165;Uchidaら,Langmuir,1993;9:1221−1124]により定量した。8.2±2.3から258.2±24.2nmol/cmまでのカルボキシル基密度を有するPET−pAA基層を、アクリル酸モノマー溶液の初期濃度を1%−5%で変えることにより得ることができた。
カルボキシル基および結合されるガラクトースリガンドの密度の差は、密度がある値を超えれば、肝細胞3Dスフェロイド形成および機能維持においては有意な差につながらないと予想された[Yingら、Biomacromolecules 2003を参照]。比較的非効率的な2ステップの「ΕDC化学」[Herselら,Biomaterials,2003,Nov;24(24):4385−4415]を使用して適度に高いリガンド結合密度を実現するために、3.75%アクリル酸モノマー溶液を選択して、以下のリガンド結合および細胞培養研究のための78.5±10.2nmol/cmのカルボキシル基密度のPET−pAAを製作した。
RGDペプチド(GRGDS)および/またはGalリガンド(AHG)をPET−pAAフィルム上に結合し(図1)、リガンドの結合が成功したことをXPS(図2)により確認した。最初のPETおよびPET−pAAとは対照的に、N 1s(結合エネルギー、400eV)に対応する新しいピークがPET−RGD、PET−GalおよびPET−ハイブリッドフィルムのスペクトルに現れた。フィルム上に結合されたGRGDSおよび/またはAHGの量を測定するために、結合されたGRGDSおよび/またはAHGを酸加水分解によってフィルムから取り除き、加水分解したGRGDSおよびAHG上のα−アミンを蛍光物質に誘導体化した後に、この加水分解したGRGDSおよびAHGを蛍光検出器を備えたRP−HPLCで定量した。様々なサンプルの代表的なクロマトグラムを図3Aに図示する。PET−ハイブリッド中のGRGDSおよびAHGの比を、フィルム上のGRGDSおよびAHGの結合効率をモニタリングすることにより制御した。
PET上のRGDおよび/またはGalリガンドを、Acid Hydrolysis Station(C.A.T.GmbH & Co.)を使用して、真空下、6N HCl中で110℃で24時間、基層から加水分解した。冷却した加水分解した溶液を新しいバイアルへ濾過し、窒素下でエバポレーションした。PETから加水分解したリガンドを50μl脱イオン水に再懸濁し、HPLC(Agilent Technology)の逆相C−18カラム上での分離後の蛍光検出のためのATTO−TAG(商標)CBQCA Amine−Derivatization Kit(Molecular Probes)を使用して誘導体化した。最適化された動作条件:移動相:A:水+0.1%TFA、B:アセトニトリル+0.1%TFA;勾配:A/B(98:2)から45分後(70:30);流量:1ml/分;蛍光検出:450nmでの励起、550nmでの発光。標準曲線を、可溶性RGDペプチドおよびGalリガンドに対して作成した。RGDペプチドの加水分解生成物の中で、アルギニンに対応するピークを、その鋭さおよびクロマトグラフにおける早い溶出時間に起因して、RGDペプチドを表し定量するために選択した。
GRGDSはAHGよりも高い結合効率を呈した(図3B)。3mg/ml(96ウェルあたり0.3mg)のAHGに対して、0.6mg/ml(96ウェルあたり0.06mg)のGRGDSが活性化されたPET−pAAcフィルムと反応し、約1:1の結合比を達成した。フィルム上に結合されたGRGDSおよびAHGの最終密度は、それぞれ、5.63±0.86nmol/cmおよび6.94±0.74nmol/cmであった。PET−pAAcフィルム上で利用可能な78.5±10.2nmol/cmのカルボキシル基に対して、約16%がリガンドに結合された。1:5および5:1の比の結合されたGRGDSおよびAHGを実現するために、それぞれ0.12mg/mlおよび3mg/mlのGRGDSを使用して、PET−pAAフィルム上で3mg/ml AHGと結合させた。GRGDS/AHGの最終密度は、19.40±3.19/4.36+0.45nmoll/cmおよび1.31±0.49/5.38±0.89nmol/cmであった。PET−GalおよびPET−RGDフィルムについて、それぞれ3mg/ml AHGおよび0.6mg/ml GRGDSがPET−pAAフィルムに結合された。PET−GalのAHGの最終密度は、5.92±0.74nmol/cmであり、PET−RGDのGRGDSは7.04±0.96nmol/cmである。
(実施例1C:ガラクトシル化された基層上での肝細胞自己集合の動的プロセス)
ガラクトシル化された基層上での肝細胞自己集合のプロセスを、以下の方法を使用して調べた。
「底がガラクトシル化された」培養皿を、WillCo−dish Kit(WillCo Wells B.V.、オランダ)を使用し、(実施例1Bに示した)ガラクトシル化されたPETフィルムを底の中央領域が空の特別の皿に貼って組立てた。使用したこの特別の皿は35mm皿であった。肝細胞を、ガラクトシル化されたフィルム上に1×10細胞/cmの密度で播種し、温度およびCOを制御したライブ画像化チャンバ(Carl Zeiss)中で培養した。肝細胞モルホロジーの透過画像を、Zeiss Meta 510共焦点顕微鏡の10×対物レンズを使用して、3日目まで5分毎に捉えた。広がりの傾向に関する細胞モルホロジーの動的変化を画像加工(Imaging Process Probe)により、細胞が覆う基層の総面積として定量し、0時間における播種後細胞の面積で規格化することによって計算した基層被覆率として表現した。
3.7%パラホルムアルデヒドで固定したサンプルをPBSでリンスし、酸化オスミウム(VIII)で1時間、後固定した。脱水は、段階系列(graded series)のエタノール(25%、50%、75%、95%、および100%)を使用して行った。サンプルを、無水アルコール中で2時間、臨界点乾燥し、真鍮の台上にマウントし、白金でスパッターコーティングし(JFC−1600、JEOL)、その後、電界放射型走査電子顕微鏡(JSM−7400F、JEOL)で観察した。
共焦点透過画像(図4A)およびSEM写真(図4B)が示すとおり、肝細胞自己集合の間、細胞モルホロジーおよび基層被覆率に劇的な変化が起こった。ガラクトシル化された基層上の肝細胞は2サイクルの細胞集合を経て、成熟したスフェロイドを形成した。このガラクトシル化された基層上に播種された単一の肝細胞が、12時間以内にいくつかの肝細胞を含む小さい凝集体をまず形成し、基層の被覆率の面積が小さくなった。細胞の移行が、細胞−細胞の接触の確立および小さい凝集体間の収縮を促し、1日後、これが徐々に、より大きい「島様の」クラスターへと合体した。この「島様の」クラスターはさらに広がり、2日間以内に最大基層被覆率を有する単層を形成する。強固な細胞−細胞収縮に起因して、プレスフェロイド単層の端縁の細胞は、引き伸ばされて多層へと折り畳まれ、成熟したより大きい3Dスフェロイドへと密集し、3日後には最終的には基層から剥がれる。
(実施例1D:肝細胞スフェロイド自己集合の間の細胞骨格再組織化)
細胞骨格は細胞の広がり、移行および組織形成を媒介する主要な動力源(force apparatus)であるため、ガラクトシル化された基層上での肝細胞3Dスフェロイド自己集合の間、および比較としてのコラーゲンコーティングされた基層の上での従来の2D単層形成の間、主要な骨格タンパク質の1つであるアクチンフィラメントの動的再組織化を調べた。
F−アクチン染色については、細胞を3.7%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、10% ウシ胎仔血清(FCS)中で室温で1時間ブロックし、1% ウシ血清アルブミン(BSA)を加えた0.1% Triton X−100中で5分間透過化し、TRITC−ファロイジン(1μg/ml)とともに20分間インキュベーションし、3回リンスした後、画像化した。p−FAK、およびE−カドヘリンの染色ならびにMRP2/CD147およびZO−1/CD147の二重染色法については、3.7%パラホルムアルデヒドで固定した細胞を10% FCS中で室温で1時間ブロックした。サンプルを一次抗体(ZO−1/CD147およびMRP2/CD147二重染色法については1:10;E−カドヘリンおよびp−FAK染色については1:20;一次ウサギ抗p−FAK抗体はUpstate(米国、シャーロッツビル)から購入し、一次ウサギ抗E−カドヘリン抗体はSanta Cruz(米国、カリフォルニア州)から購入した)とともに4℃で一晩インキュベーションし、その後PBSで3回リンスした。次いでサンプルを、二次抗体とともにインキュベーションした。二次のTRITC結合したヤギ抗ウサギIgGおよびFITC結合したヤギ抗マウスIgGをMolecular Probes(Invitrogen、シンガポール)から購入し、室温で1時間、PBSで3回リンスし、その後FluorSave(商標)(Calbiochem、カリフォルニア州、サンディエゴ)でマウントした。サンプルを、63×水レンズを使用して共焦点顕微鏡(Fluoview 300、オリンパス)で観察した。
アクチンフィラメントは多段階の3Dスフェロイド形成の間に顕著な再配置を経た。播種から12時間後の小さい凝集体中の肝細胞について、アクチンフィラメントはすでに細胞−細胞接触領域に局在しており(図5)、これは細胞−細胞相互作用の確立を示す。小さい肝細胞凝集体が、1日後に「島様の」クラスターに合体するとき、アクチンストレスファイバーが細胞−基層接触領域全体に観察された。これらは徐々に、クラスターとして細胞周辺に再局在化し、このクラスターは、観察されたアクチンストレスファイバーが有意に小さくなり単層の端縁の細胞だけに見られるようになるまで、広がってプレスフェロイド単層を形成する。プレスフェロイド単層の細胞−細胞接触領域におけるアクチンフィラメントの皮層分布は、成熟した3Dスフェロイドにおいても観察され、これはプレスフェロイド単層の3D細胞的な特徴を示す。対照的に、アクチンフィラメントは徐々にストレスファイバーを形成し、それは、コラーゲンコーティングされた基層中の従来の2D単層形成の間、細胞−基層接触領域全体で強度を増した(図5)。
(実施例1E:細胞−細胞相互作用および細胞−基層相互作用の均衡による肝細胞自己集合の調節)
アクチン細胞骨格はアダプタータンパク質(α−アクチニン、タリン、フィラミン)を介して細胞−基層相互作用を媒介するための接着斑(focal adhesion complex)およびカテニンを介して細胞−細胞相互作用を媒介するためのカドヘリンの両方に連結されているため、様々なアクチン構成の存在は、細胞−細胞相互作用によりもたらされる力と細胞−基層相互作用によりもたらされる力との間の競合を示す。この競合を、肝細胞3D単層および従来の2D単層の形成の間のリン酸化された接着斑キナーゼ(p−FAK)およびE−カドヘリン(ELISAによる)の発現レベルの変化を(ELISAにより)定量することにより調べた(図6A)。接着斑キナーゼ(FAK)は、インテグリンを介した基層への付着の際に細胞骨格によってもたらされる力に反応して接着斑の集合を調節することに関与する、鍵となるタンパク質である。細胞外マトリックス(ECM)への細胞のインテグリン媒介性接着は、FAKのTyr−397残基での自己リン酸化を開始させる。p−FAKの発現を、細胞−基層相互作用のインジケータとして定量した。細胞−細胞相互作用を媒介するための主要な細胞接着タンパク質として、E−カドヘリンを細胞−細胞相互作用のインジケータとして選択した。
p−FAKのELISAを、FACE(商標)p−FAK ELISAキット(Active Motif,Inc.,米国)の手順に従って実施した。手短に言えば、96ウェルプレートで様々な基層上で培養された肝細胞を、p−FAKのELISAのために3.7% パラホルムアルデヒドで室温で20分間固定し、またはメタノール/アセトン(1:1)溶液で15分間固定した。0.1% Triton−X 100でリンスして1% BSAで室温で1時間ブロックした後に、細胞を、1:200希釈した抗p−FAK一次抗体とともに4℃で一晩インキュベーションした。この細胞を0.1% Triton−X 100で3回洗浄し、1:2500希釈した抗IgM−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)二次抗体とともに室温で1時間、インキュベーションした。0.1% Trition−X 100で3回、PBSで2回リンスした後、100μl/ウェルのTMB(テトラメチルベンジジン、BETHYL Laboratories)基質溶液で発色させることによりHRP活性を比色測定した。吸収を450nmで測定した。
ウエスタンブロッティング研究のために、培養された肝細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、シンガポール)を補ったRIPA緩衝液(50mm Tris−HCL、150mM NaCl、1% NP−40、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS)で、4℃で30分間溶解させた。溶解液を、10,000gで4℃で20分間遠心分離することにより清澄にした。1サンプルあたりのタンパク質濃度を、サンプル装填緩衝液(2% SDS、80mM Tris−HCl、10% グルセロール、0.1% ブロモフェノールブルー、5% 2−メルカプトエタノール)中に希釈して95℃で5分間加熱したD protein Reagent assay(Bio−rad、U.S)によって定量した。1レーンあたり10μgのタンパク質サンプルを装填し、7.5% SDS−PAGEゲルにより分画し、半乾式エレクトロブロッティング(electro−blotting)によりPVDF膜(Millipore、米国)に移した。この膜をTBS−T中の5% 無脂肪乳を用いて室温で1時間ブロックし、一次ウサギ抗E−カドヘリンまたは抗β−アクチンもしくは抗GAPDH(TBS−T緩衝液中に1:1000希釈した)とともに4℃で一晩インキュベーションした。TBS−T緩衝液で3回洗浄した後、この膜を、2.5%無脂肪乳に1:10,000希釈した二次の、ロバペルオキシダーゼ(donkey peroxidase)に結合された抗ウサギIgGとともに室温で1時間インキュベーションした。TBS−T緩衝液で4回洗浄した後、この膜をAmersham ELC plus reagent (GE Healthcare、英国)で処理し、この膜をHyperfilm(GE Healthcare、英国)に露出することにより発光を検出した。フィルムをKODAK Medical X−ray Processor(KODAK、米国)を使用して現像し、KODAK IMAGE Station 2000MM(KODAK、米国)を使用して画像化した。
肝細胞スフェロイド自己集合のプロセスの間、p−FAK発現のレベルは初期にはプレスフェロイド単層の形成とともに高まったが、3D成熟したスフェロイドの形成とともに低下した。対照的に、p−FAK発現の一定の増加が従来の2D単層形成の間観察された。
E−カドヘリンはPET−galフィルム上で培養されたすべての4段階での肝細胞において高度に発現し、プレスフェロイド単層および3Dスフェロイドに由来する細胞においてはわずかのアップレギュレーションを伴った(図6B)。これは強固な細胞−細胞相互作用を示す。コラーゲン基層上で培養された肝細胞におけるE−カドヘリンの発現は、初期には稀であったが、後に2D肝細胞単層形成の間、有意にアップレギュレーションされた(図6B)。これは徐々に細胞−細胞相互作用が高まったことを示す。
細胞骨格組織化およびp−FAK/E−カドヘリン発現を観察したことにより、肝細胞スフェロイド形成の4段階の中で、プレスフェロイド単層が3Dスフェロイドに類似のアクチン分布およびE−カドヘリン発現レベルを呈するが、それは3Dスフェロイドよりもより強いp−FAK発現であることが示された。プレスフェロイド単層、3Dスフェロイドおよび従来の2D単層のE−カドヘリン/p−FAKのダブルイムノアッセイ(double−immunoassaying)により、ELISAの結果が確認された(図6C)。E−カドヘリンは、プレスフェロイド3D単層の側方境界および3Dスフェロイドに局在し、これは2D単層におけるよりもはるかに少なかった。p−FAKクラスターは、2D単層では観察し、プレスフェロイド3D単層ではより低いレベルで観察したが、3Dスフェロイドでは観察されなかった。すべての上記の知見は、プレスフェロイド単層が肝細胞ベースの応用のための優れた構成であることを示す。
(実施例1F:プレスフェロイド3D単層、3Dスフェロイドおよび従来の単層における肝細胞極性および密着結合形成)
様々な培養構成の間の機能的構造の特徴を、極性および密着結合形成によって評価した。これらは、それらが生体内での状況を予想するものであれば、生体外構成についての貴重な基準である。細胞極性の形成の研究は、多剤耐性関連タンパク質(Mrp2)および側底CD147をそれぞれ頂端(apical)マーカーおよび側底(basolateral)マーカーとして、毛細胆管トランスポーターを調べることにより行った。共焦点画像を、これらの2マーカーの共局在化を定量するために加工した。一次抗CD147モノクローナル抗体をSerotec(ノースカロライナ州、ローリー)から購入した。一次ウサギ抗ZO−1抗体をZymed laboratories(米国、サンフランシスコ)から購入した。
蛍光二重染色法に加えて、細胞境界(側底CD147)に沿ったMrp2またはZO−1局在化の定量を、Visual C++ 6.0で開発された画像加工アルゴリズムを実行することにより実施した。CD147染色からの各画像の緑色ピクセルを、まずセグメント化に閾値を設けることにより2値化して1ピクセルの厚みを有する細胞境界を得て、Mrp2またはZO−1染色からの同一の画像における赤色ピクセルを2値化してそれぞれのマーカーの有意な濃度を含む領域を得、そして画像における赤色ピクセルの総数をI全量として算出した。各赤色ピクセルについて、最近接の細胞境界ピクセルまでの距離を距離マップから得た(Lingら,Information Processing Letters 51,1994)。毛細胆管様構造に存在する細胞外の赤色ピクセルを同定し、「領域成長」アルゴリズム(Bischofら,IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence 1994)を使用することにより、細胞内の赤色ピクセルから判別した。最近接の境界ピクセルからの2ピクセルの距離内にある細胞内の赤色ピクセルおよび細胞外赤色ピクセルをI局在化としてカウントした。I局在化とI全量との間の比を使用して、細胞境界に沿ったMrp2またはZO−1の局在化を記述した。
細胞本体内部のMrp2のランダム分布をコラーゲン上の従来の2D単層において観察したが、他方、プレスフェロイド3D単層において、Mrp2は細胞−細胞接触領域に局在した(これは極性の確立のプロセスにおいて後の事象の1つである)。3Dスフェロイドにおいて、極性構造が完全に構築され、より多くのMrp2がいくつかの接触した細胞の間に確立された毛細胆管様構造を満たした。密着結合タンパク質ZO−1および側底マーカーCD147を使用する密着結合染色は、同一の傾向を示した。プレスフェロイド3D単層において、密着結合タンパク質ZO−1は細胞−細胞接触に沿って局在化した領域に濃縮されたが、従来の2D単層においては、ZO−1はより拡散している(図7Aおよび図7B)。
(実施例1G:プレスフェロイド3D単層、3Dスフェロイドおよび従来の単層の分化機能)
プレスフェロイド3D単層構成の潜在的な応用の可能性を評価するために、2日目で培養されたこの一過性の段階における肝細胞の肝臓特異的な機能(合成、解毒および代謝活性など)を2日目の従来の2D単層、および3日目の3Dスフェロイドと比較した。
すべての機能データを10細胞に対して規格化した。細胞数を、Pico−green DNA定量キット(Invitrogen)を使用してDNAの全量に基づき算出した。毎日のアルブミン産生を、Rat Albumin ELISA Quantitation Kit(Bethyl Laboratories Inc.、テキサス州、モンゴメリー)を使用して測定した。2mM NHClとともに培養培地中で90分間インキュベーションした肝細胞培養物の尿素産生を、Urea Nitrogen Kit(Stanbio Laboratory、テキサス州、Boerne)を使用して測定した。シトクロムP450(CYP)1Aと会合したモノオキシゲナーゼ酵素の脱エチル化活性の尺度である7−エトキシレゾルフィン O−脱エチル化(EROD)検定を、測定の前より1日早く3−MCによる誘発がある場合およびない場合ともに、培養物を39.2μMの7−エトキシレゾルフィンとともに培養培地の中で37℃で4時間インキュベーションすることにより、開始した。酵素が変換したレゾルフィンの量を、ミクロプレートリーダー(Tecan Trading AG、スイス)を使用して、レゾルフィン標品に対するインキュベーション培地におけるレゾルフィン蛍光を543nmの励起/570nmの発光で測定することにより算出した。
図8は、プレスフェロイド3D単層としての肝細胞の、アルブミン分泌および3MCにより誘発される7−エトキシレゾルフィン O−脱エチル化シトクロムP450活性は従来の2D単層のそれよりも有意により高く、3Dスフェロイドのそれに匹敵することを示す。尿素合成は、これらの3つの構成の間で有意な差を示さなかった。
(実施例1H:アセトアミノフェンに誘発される肝毒性に対するプレスフェロイド3D単層および従来の単層の感度)
一般に使用される鎮痛剤であるアセトアミノフェン(APAP)は、動物およびヒトにおいて大量に摂取した場合、特に慢性的なエタノール消費後に投与した場合に、肝毒性を引き起こすことが知られている。肝毒性は、組織高分子に結合し、それにより細胞壊死を開始することができる毒性のある中間体へと、アセトアミノフェンがシトクロムP450(P450)酵素によって生物変換されることに由来する。CYP1A、CYP2EおよびCYP3Aは、アセトアミノフェンを代謝することができることが示されているもっとも活性なアイソフォームである。CYP活性の誘発は、APAP毒性の高まりをもたらすことが示された。アフラトキシンB1は、ヒトおよび実験動物において急性肝毒性および肝臓癌を引き起こす。アフラトキシンは、通常、CYP2C11および3A2によって酸化され、中間体の反応性エポキシドを生成し、このエポキシドは、細胞高分子に結合し肝臓の門脈周辺領域に損傷を与える。プレスフェロイド単層および2D単層に対してアセトアミノフェンまたはアフラトキシンB1が引き起こす肝毒性に対する反応を調べた。
肝毒性試験では、培地中のDMSOの最終濃度が各薬物濃度において0.2%未満であるようにアセトアミノフェン(APAP)をDMSOに溶解した。PET−Galフィルム上で培養された2日目のプレスフェロイド3D肝細胞単層およびコラーゲン上で培養された2日目の従来の肝細胞を種々の濃度で24時間APAPに曝露し、このとき細胞の生存能力を測定した。
水溶性テトラゾリウム塩MTS(3−[4,5,ジメチルチアゾール−2−イル]−5−[3−カルボキシメトキシ−フェニル]−2−[4−スルホフェニル]−2Hテトラゾリウム、内部塩)の還元を細胞生存能力を測定するために使用し、CellTiter 96 Aqueous One Solution Reagent(Promega)を使用して測定した。試験毒素での処理後、細胞を、フェノールレッドを欠くWilliam’s E培養培地中の5×希釈したMTS試薬の100μl/ウェルに曝露し、37℃で3時間インキュベーションした。MTSの吸収を、ミクロプレートリーダー(Tecan Safire)を使用して450nmで測定した。様々な基層上で培養された肝細胞のAPAPに誘発された肝毒性の反応を、APAPに誘発された肝細胞でのMTS値をAPAPに曝露していない肝細胞でのMTSデータに対して規格化することにより算出した「生存率」として表現した。
薬物を欠く条件下で、すべての培養物構成における肝細胞は同様のベースとなるレベルの生存能力を示した。すべての薬物投与量において、プレスフェロイド単層は、2D単層よりも高い、(低生存率によって決定したとおり)アセトアミノフェンまたはアフラトキシンB1に誘発された肝毒性に対する感度を呈した(図9)。2D単層と比べて、アセトアミノフェンまたはアフラトキシンに誘発された肝毒性に対するより高い感度は、3Dスフェロイドにおいても観察された(データは示さず)。このことは、プレスフェロイド単層の薬物反応は3Dスフェロイドの反応に似ていることを示す。
(実施例2:ハイブリッドRGD/ガラクトース基層上の3D肝細胞単層の安定化)
実施例1で同定したプレスフェロイド3D単層は肝細胞自己集合の動的プロセスの間の一過性の段階にすぎないため、本発明者らは、それらが長期の応用で使用できるように、GRGDSペプチドおよびガラクトースリガンドをPET基層上へ結合すること(RGD/ガラクトースPET−ハイブリッド)によるプレスフェロイド3D単層の安定化の実行可能性を調べた。様々な生物活性基層(PET−Gal、PET−RGD、PET−ハイブリッド)を製作するための方法は実施例1Bで説明した。
(実施例2A:生物活性基層上の肝細胞の付着性)
様々な生物活性基層(PET−Gal、PET−RGD、PET−ハイブリッド)上の肝細胞付着性を調べた。
最初に、肝細胞を、2ステップのin situコラゲナーゼ潅流法[Seglenら,Method Cell Biol 1976;13:29−83]により、体重が250−300gの雄性Wistarラットから採取した。肝細胞の生存能力をトリパンブルー排斥法(Trypan Blue exclusion assay)により90%超と、収量を>10細胞/ラットと決定した。
新たに単離したラット肝細胞(3.2×10)を96ウェルミクロプレート内に1×10細胞/cmで様々な基層の上に播種し、10mM NaHCO、1mg/ml BSA、10ng/mlの上皮成長因子(EGF)、0.5μg/mlのインスリン、5nM デキサメタゾン、50ng/ml リノール酸、100単位/ml ペニシリン、および100μg/ml ストレプトマイシンを補った100μlのWilliam’s E培養培地中で培養した。細胞を、37℃で5% COおよび95%の湿度でインキュベーションした。2時間のインキュベーション後、付着しなかった細胞を含む培養培地を除去し、ウェルをPBSでリンスし、新しい培養培地で満たした。肝細胞の初期の培養物を2時間インキュベーションし、付着しなかった細胞を除去した。
2時間後の様々な基層上の肝細胞付着性(未付着の細胞を除去した後のものである)を、DNA分析方法[Brunkら,Anal Biochem,1979,Jan 15;92(2):497−500に基づき算出した。付着した細胞を、DNAを欠く脱イオン水中で−80℃で一晩凍結し、37℃で融解させることによる凍結−融解サイクルによって基層上で溶解させた。DNA濃度を、PicoGreen(登録商標) dsDNA定量キット(Molecular Probe)を使用して測定した。付着した細胞数を、既知数の細胞のDNA濃度から生成した標準曲線を使用して決定した。様々な基層上の肝細胞付着性を播種効率(付着した細胞数を最初に播種した全細胞数で割ったもの)として表現した。
図10Aに示すように、リガンド結合によって、播種の2時間後の生物活性基層上への肝細胞付着性は有意に増加した。肝細胞は、PET−Gal、PET−ハイブリッドおよびコラーゲンに付着し、適度にPET−RGDに付着したが、pAAc−PETおよび組織培養プレート(TCP)にはほんのわずかしか付着しなかった。同様の数の肝細胞が、1:5、5:1または1:1のRGD:Gal比のPET−ハイブリッドに対して付着した。
培養した肝細胞は、全DNA含有量の変化(図10B)が示すように、7日間の培養の間に種々の基層上への異なる付着性を示した。全DNA含有量を、基層に付着した生存できる細胞の見積もりとして使用した[Dunnら,Faseb J,1989,Feb;3(2):174−177;Hasirciら,Tissue Eng,2001,Aug;7(4)385−394]。全DNA含有量が徐々に低下したことは、主に、毎日の培地の変更の間の細胞消失に起因していると考えた。3Dスフェロイドが3日後に基層から剥がれ始めたのにつれて、PET−gal上で培養された肝細胞のDNA含有量の急激な低下が3日目以降に観察された。他方、他の基層では、DNA含有量の滑らかな低下が観察された。PET−RGD上で培養された肝細胞の全DNA含有量が低いことは、最初に播種した細胞数が少なかったことによる。コラーゲン基層およびPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞は、1週間の培養の間、5日目以降からPET−Gal上よりも有意により良好な付着性(P<0.01)を示した。これらの結果は、生物活性リガンド(RGDペプチド、ガラクトースリガンド、またはRGD/ガラクトースハイブリッド)の存在に起因して、播種後の細胞付着性が高まったことを示す。
(実施例2B:生物活性基層上の肝細胞の経時的なモルホロジー変化)
肝細胞モルホロジーに対する基層特徴(結合される生物活性リガンドの存在など)の重大な影響が観察された。
図11は、細胞播種から1日目、3日目および6日目の培養された肝細胞の位相コントラスト画像を提示する。播種後1日以内では、肝細胞は、PET−Gal上に小さいプレスフェロイドを形成し、PET−ハイブリッド(RGD:Gal=1:1)上には広がっていない凝集体を形成したが、肝細胞は、PET−RGDおよびコラーゲン基層上には広がり始めた。
3日間の培養後、あまりコンパクトでない3DスフェロイドがPET−Gal上に生成し、そのうちのいくつかは基層から剥がれた。PET−ハイブリッド上の肝細胞は、明確な細胞−細胞境界を有するあまり広がっていない2D単層を生成した。PET−RGDおよびコラーゲン基層上では、肝細胞は完全に広がって平らになりコンフルエントな単層を生成した。
6日後、ほとんどが基層から剥がれた成熟したスフェロイドをPET−Gal上に観察した。PET−ハイブリッド上で培養された肝細胞単層は、PET−RGDおよびコラーゲン上で培養された肝細胞の完全に広がった2D単層とは明らかに異なる「島様の」単層へと引き伸ばされた。PET−ハイブリッド上の引き伸ばされた[島様の」単層は、細胞が基層から剥がれるまで少なくとも1週間維持することができた。PET−ハイブリッド上で培養された肝細胞の動的モルホロジーを「3D単層」と名付ける。これは、PET−RGDおよびコラーゲン基層上で見られる広がった2D単層とは明らかに異なっていた。様々なRGDペプチドを備えたPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞では有意なモルホロジーの差は観察されなかった。それゆえ、RGD:Gal 1:1比を有するハイブリッド基層のみを、本願明細書に記載する研究において肝細胞培養物のために使用した。これらの結果は、3D肝細胞単層をPET−ハイブリッド上で安定化できることを示した。
(実施例2C:生物活性基層上で培養された肝細胞のF−アクチン、p−FAKおよびE−カドヘリン分布および発現)
いかなる提案された作用メカニズムにも拘束されることはないが、PET−ハイブリッド上で培養された肝細胞は、2D単層より強固な細胞−細胞相互作用およびより弱い細胞−基層相互作用を経験し、このためにPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞は3D細胞モルホロジーを維持することができると考えられる。PET−ハイブリッド上で培養された3D単層は、上で観察したように、培養基層により良好に接着するので、PET−Gal上の3Dスフェロイドよりも強固な細胞−基層相互作用をも有するはずである。コラーゲン基層上で培養された肝細胞の2D単層は、細胞全体にわたって強いアクチンストレスファイバーを示し、これは強固な細胞−基層相互作用を示す(図12)。3D単層としてPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞は、コラーゲン基層上の2D単層よりも少ないアクチンストレスファイバーを有したが、3Dスフェロイドより多くのストレスファイバーを有しており、これは細胞−基層相互作用の中間の強さを示す。PET−ハイブリッド上の3D単層は、PET−Gal上で培養された3Dスフェロイドと同様の皮質F−アクチン分布を呈し、これは、生体内の肝細胞の強固な細胞−細胞相互作用の特徴を示す。細胞内のクラスターとしてのp−FAK分布は、細胞−基層相互作用の特異的なインジケータである。点状のp−FAKクラスターのシグナルは、2D単層および3D単層では強く、3Dスフェロイドでは非常に弱い(図12)。これは、3D単層は3Dスフェロイドより強固な細胞−基層相互作用を経験し、基層により良好に接着することができたことを確認させる。細胞−細胞相互作用の特異的インジケータとしてのE−カドヘリン発現を調べた。E−カドヘリンは、3D単層およびスフェロイドでは細胞−細胞境界に局在化するが、2D単層では肝細胞の細胞質全体にわたって細胞内に存在することが見出された。これは、3D単層およびスフェロイドにおける2D単層よりも強固な細胞−細胞相互作用を確認する。
(実施例2D:プレスフェロイド3D単層の安定化および不安定化)
いかなる提案された作用メカニズムに拘束されることはないが、このハイブリッド基層におけるGRGDSペプチドの役割は、インテグリン膜受容体と結合することを通して「単層」段階を安定化すること、および「単層」が3Dスフェロイドへと開くのを防ぐことと考えられる。
実施例2Bに示すように、肝細胞は、基層から剥がれるまでの1週間までスフェロイド形成なしに単層構成を維持した。本願明細書に記載されるPET−ハイブリッドにおけるGRGDSペプチドの役割は、肝細胞のインテグリン膜受容体に結合することを通して細胞−基層相互作用を高め、そして、プレスフェロイド肝細胞単層が3Dスフェロイドを形成するのを防ぐことであるのかも知れない。
まず、PET−ハイブリッド上で1週間培養された肝細胞についてELISA(方法の説明についての実施例1Eを参照)を使用してp−FAK発現を定量することにより、これを検討した。肝細胞のp−FAK発現は、PET−ハイブリッドでの最初の3日間(すなわちD3)培養の間徐々に上昇し、6日間(すなわちD6;図13A)にわたって持続した。3日目のPET−Gal上の3Dスフェロイド形成につれてのp−FAK発現の減少(図6A)とは対照的に、PET−ハイブリッド上の肝細胞の持続したp−FAK発現は、GRGDSペプチドの導入を許容する高められた細胞−基層相互作用を示唆した。
GRGDSがプレスフェロイド単層の安定化を担うのかどうかを知るために、可溶性GRGDSペプチドを培養培地に加え、PET−ハイブリッドの結合されたGRGDSペプチドと潜在的に競合させた(図13B)。
100μM濃度で、可溶性GRGDSペプチドはPET−ハイブリッド上に維持された肝細胞単層を不安定化し、コンパクトな3Dスフェロイドの形成を可能にする。可溶性GRGDSペプチドは、恐らく肝細胞の細胞表面の結合部位を求めて結合されたGRGDSペプチドと競合したためである。可溶性GRGDSペプチドはまた、PET−Gal上で培養された3Dスフェロイドが基層から剥がれるのを促した。可溶性GRGDSで24時間処理すると、肝細胞に対してわずかな毒性をも引き起こした。なぜなら、対照におけるよりも処理したサンプルにおいてより単一な死細胞が観察されたからである。対照的に、可溶性ガラクトースリガンドは、ガラクトシル化された基層上の3Dスフェロイド、またはハイブリッド基層上のプレスフェロイド単層またはコラーゲン基層上の2D肝細胞単層のモルホロジー変化をまったく引き起こさなかった。
(実施例2E:生物活性基層に反応した肝細胞機能)
PET−ハイブリッド上の安定化した3D肝細胞単層の肝臓特異的な機能を調べた。
PicoGreen DNA分析によって測定した1サンプルあたりの全DNA含有量を使用して、7日間の培養全体にわたる様々な基層からの細胞消失を説明するために機能データを規格化した。[Dunnら,Faseb J,1989,Feb;3(2):174−177;Jiangら,Tissue Eng,2004,Sep−Oct;10(9−10):1577−1586]。
図14Aおよび図14Bに示すように、PET−GalおよびPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞のアルブミンおよび尿素分泌は、7日間の培養にわたってコラーゲン基層上で培養されたものよりも高かった。コラーゲン上で培養された肝細胞のアルブミンおよび尿素分泌が劇的に低下した3日目から7日目までm有意な差が存在した。シトクロムP450は、多くの内在性基質ならびに多数の生体異物および治療薬(以下の肝毒性研究のモデル薬物であるアセトアミノフェン[Black SD,Faseb J,1992]を含む)を代謝する構成型(constitutive)および誘導型(inducible)ヘムタンパク質酵素のクラスに属する。CYP1Aは、7−エトキシレゾルフィン O−脱エチル化(EROD)の代謝を担う一次酵素であり、この酵素の活性は3−MCによって誘発されることが公知である。図14Cに示すように、すべての基層上で培養された肝細胞は、誘発されたEROD活性を7日間の培養にわたって維持することができた。誘発されたERODレベルは、コラーゲン基層上よりもPET−GalおよびPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞についてのほうが有意に高い。
(実施例2F:種々の基層上で培養された肝細胞による、アセトアミノフェンに誘発された肝毒性への反応)
PET−Gal上で培養された3Dスフェロイドおよびコラーゲン基層上の2D肝細胞単層と比較した、PET−ハイブリッド上で培養された3D肝細胞単層に対する、APAPのみおよび3MCと同時投与により引き起こされる肝毒性の効果を調べた。CYP1Aの誘導物質である3−MCとの同時投与を、より高い毒性につながる薬物−薬物相互作用の評価として実施した。アセトアミノフェンの肝毒性試験を、実施例1Hに記載した方法に従って実施した。
図15は、MTS生存能力検定を実施するまで、APAPまたは3MCを同時投与したAPAPに24時間(図15A)または48時間(図15B)曝露した後の様々な基層上で培養された肝細胞の生存率を示す。薬物を欠く条件では、すべての基層上で培養された肝細胞は、MTS生存能力検定において同様の読取り値を示し、ベースとなるレベルの生存能力が同程度であることを示した。本願明細書に記載されるすべての薬物投与量条件において、PET−ハイブリッド上で培養された肝細胞3D単層は、肝毒性に対してPET−Gal上で培養された分化中の肝細胞スフェロイドと同様の反応を示した。これらの培養物はともに、コラーゲン基層上で培養された2D単層よりもより「肝毒性に敏感」であった。低濃度のAPAP(2mM)に24時間曝露した場合は、コラーゲン基層上で培養された肝細胞に対してはほとんど無毒(生存率98%)であったが、PET−gal(生存率84%)およびPET−ハイブリッド(生存率89%)上の細胞に対してはわずかに毒性があった。2mM APAPに48時間曝露すると、コラーゲン上で培養された肝細胞に対してかなりの肝毒性を引き起こし(生存率64%)、PET−gal(生存率57%)およびPET−ハイブリッド(生存率59%)上で培養された肝細胞に対してはより重篤な毒性を引き起こした。高濃度のAPAP(10mM)に24時間曝露すると、PET−Gal(生存率44%)およびPET−ハイブリッド(生存率38%)上で培養された肝細胞は、コラーゲン基層(生存率80%)上で培養された肝細胞よりも約2倍の肝毒性に対する感度を示した。10mM APAPへ48時間曝露すると、様々な基層上の細胞のほとんどは死滅した。
APAPと同時投与した場合の3MCの肝毒性の増幅効果は、24時間では明瞭には示されなかったが、48時間後には顕著であった。様々な基層上で、3MCを加えた10mM APAPに曝露すると、ほとんどすべての細胞は死滅した。3MCを加えた2mM APAPに48時間曝露したとき、PET−Gal(生存率19%)およびPET−ハイブリッド(生存率28%)上で培養された肝細胞は、コラーゲン基層(生存率48%)上で培養された肝細胞よりも、それぞれ、ほぼ3倍および2倍肝毒性に対して鋭敏であった。

Claims (35)

  1. (i)合成ポリマー基材ならびに(ii)前記基材に連結された糖基およびRGDペプチド基を含む表面であって、前記糖基が3D肝細胞単層を形成するのに十分な密度でガラクトース、ガラクトース部分またはこれらの組合せを含み、前記RGDペプチド基が前記ガラクトース、ガラクトース部分またはこれらの組合せと共結合されて、前記3D肝細胞単層を安定化する、表面。
  2. 前記ポリマー基材が熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の表面。
  3. 前記熱可塑性ポリマーがポリエステルを含む、請求項2に記載の表面。
  4. 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項3に記載の表面。
  5. 前記ポリマー基材が第1のポリマー、および前記第1のポリマーにグラフト化された第2のポリマーを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表面。
  6. 前記糖基およびペプチド基が前記第2のポリマーに連結されている、請求項5に記載の表面。
  7. 前記第2のポリマーがポリアクリル酸を含む、請求項6に記載の表面。
  8. 前記ガラクトース部分が乳糖である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表面。
  9. さらに、YIGSRペプチド、GFOGERペプチドまたはこれらの組合せを含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の表面。
  10. 前記RGDペプチドがアミノ酸配列GRGDSを含む、請求項9に記載の表面。
  11. 前記RGDペプチド基がアミノ酸配列GRGDSからなる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の表面。
  12. 前記表面が多孔性である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の表面。
  13. 前記表面が非多孔性である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の表面。
  14. 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面を含む、装置。
  15. 肝細胞を増殖させるための装置であって、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面を含む、装置。
  16. 前記装置がバイオ人工肝臓補助装置(BLAD)である、請求項14または請求項15に記載の装置。
  17. 前記BLADがバイオリアクターである、請求項16に記載の装置。
  18. 安定化された3D肝細胞単層を提供するためのプロセスであって、
    (i)糖基およびペプチド基が連結された合成ポリマー基材を含む表面を準備するステップと、
    (ii)前記肝細胞が前記表面に接着するのに好適な時間および条件の下で、肝細胞の存在下で生体外で前記表面をインキュベーションするステップと、
    (iii)前記表面に接着している前記肝細胞を培養して安定化された3D肝細胞単層を生成するステップと、
    を含むプロセス。
  19. 糖基およびRGDペプチド基をポリマー基材に連結するステップを含む、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のポリマー表面を作製するためのプロセス。
  20. さらに、第2のポリマーを第1のポリマー上にグラフト化して、前記連結するステップに先立って前記ポリマー基材を形成するステップを含む、請求項18または請求項19に記載のプロセス。
  21. 前記第2のポリマーを前記第1のポリマー上にグラフト化するステップが、プラズマ処理および/またはUV誘導グラフト重合を含む、請求項20に記載のプロセス。
  22. 前記第1のポリマーがプラズマ処理またはUV方法によってグラフト化できる、請求項21に記載のプロセス。
  23. 前記プラズマ処理がアルゴンプラズマ処理である、請求項22に記載のプロセス。
  24. 前記連結するステップが、
    a)前記ポリマー基材を活性化して活性化されたポリマー基材を形成するステップと、
    b)前記活性化されたポリマー基材を、前記糖基を含む第1の試薬および前記ペプチド基を含む第2の試薬と反応させて前記表面を形成するステップと
    を含む、請求項19から請求項23のいずれか1項に記載のプロセス。
  25. 前記活性化するステップが、前記ポリマー基材を活性化剤と反応させて、活性化する基を前記ポリマー基材の前記表面に結合するステップを含む、請求項24に記載のプロセス。
  26. 前記連結するステップが、さらに、前記ポリマー基材をクエンチ剤でクエンチし、これにより未反応の活性化する基をクエンチするステップを含む、請求項25に記載のプロセス。
  27. 前記活性化剤がN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を含み、前記第1の試薬および前記第2の試薬がともに少なくとも1つのアミン基を含む、請求項26に記載のプロセス。
  28. 前記クエンチ剤がアミン基を含む、請求項27に記載のプロセス。
  29. 前記糖基がガラクトースおよび/もしくは乳糖またはこれらの組合せを含む、請求項18から請求項28のいずれか1項に記載のプロセス。
  30. さらに、YIGSRペプチド、GFOGERペプチドまたはこれらの組合せを含む、請求項18から請求項29のいずれか1項に記載のプロセス。
  31. 肝細胞を培養するためのバイオリアクターであって、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面を備えるバイオリアクター。
  32. 前記バイオリアクターが、膜、管、マイクロタイターウェル、カラム、中空糸、ローラーボトル、組織培養プレートまたはマイクロキャリアの形態である、請求項31に記載のバイオリアクター。
  33. バイオ人工肝臓補助装置(BLAD)における、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面の使用。
  34. 前記BLADがバイオリアクターである、請求項33に記載の使用。
  35. 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面の使用であって、前記使用が、ミクロプレートベースのプラットフォームでの高スループット薬物試験、高含有量スクリーニング、肝毒性試験、代謝試験、平板バイオ人工補助装置、および/または膜ベースのバイオリアクターからなる群から選択される、表面の使用。
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