JP5435160B2 - ベルト式無段変速機 - Google Patents

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Description

この発明は、ベルト式無段変速機に関し、さらに詳しくは、作動油供給排出弁のフェールセーフを有効に行うことにより製品の信頼性を向上させ得るベルト式無段変速機に関する。
近年のベルト式無段変速機は、作動油により駆動されてベルトの挟圧力を変化させる可動シーブと、作動油の油圧を制御する油圧制御装置と、油圧制御装置から可動シーブへの作動油の油路上に配置されて作動油の流通を規制する作動油供給排出弁とを備えている。そして、変速比の遷移時にて、作動油供給排出弁が開弁すると共に、油圧制御装置が所定の供給油圧を有する作動油を作動油供給排出弁を介して可動シーブに供給する。これにより、可動シーブが駆動されてベルトの挟圧力が制御されている(ノーマルオープン型の流体閉じ込み式シーブ位置決め機構)。かかる構成を採用する従来のベルト式無段変速機として、特許文献1に記載される技術が知られている。
特開2007−57033号公報
ここで、変速比の遷移時には、上記のように、作動油供給排出弁が常時開弁状態に設定される。しかしながら、作動油供給排出弁の弁体を支持するスプリングの経年劣化や、過大な流体力(想定範囲を超える作動油の流量、低油温時における作動油の高粘度などに起因する流体力)によって、作動油供給排出弁の開弁状態が適正に保持されない場合が想定され得る。かかる場合には、変速比の遷移が実行されない或いは実行継続されないため、好ましくない。また、変速比が高速側にあるときに作動油供給排出弁がフェールして閉弁状態となると、ダウンシフトが実施できないため、車両の再発進あるいは再加速時にて必要な駆動力を確保できないおそれがある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作動油供給排出弁のフェールセーフを有効に行うことにより製品の信頼性を向上させ得るベルト式無段変速機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる無段変速機は、作動油により駆動されてベルトの挟圧力を変化させる可動シーブと、作動油の油圧を制御する油圧制御装置と、前記油圧制御装置から前記可動シーブへの作動油の油路上に配置されて作動油の流通を規制する作動油供給排出弁とを備えるベルト式無段変速機であって、変速比の遷移時にて、前記作動油供給排出弁が開弁すると共に前記油圧制御装置が所定の供給油圧Pinの作動油を前記可動シーブに供給することにより、前記可動シーブが駆動されて前記ベルトの挟圧力が制御され、且つ、前記作動油供給排出弁の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときに、変速比の変速速度の上限値が設定されることを特徴とする。
この発明にかかるベルト式無段変速機では、作動油供給排出弁の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときには、変速比の変速速度の上限値が設定されて、変速比の遷移が行われる。かかる構成では、作動油供給排出弁のフェール時にて、変速比の遷移が行なわれない事態が回避される。これにより、作動油供給排出弁のフェールセーフが有効に行われて、製品の信頼性が向上する利点がある。
図1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機を搭載する車両の概略構成図である。 図2−1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリの概略構成を示す模式的断面図である。 図2−2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリの概略構成を示す模式的断面図である。 図3は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の油圧制御装置の概略構成を模式的に示す概念図である。 図4−1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャートである。 図4−2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャートである。 図5−1は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャートである。 図5−2は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャートである。 図6は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比マップである。 図7−1は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャートである。 図7−2は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャートである。 図8は、この発明の実施例2にかかるベルト式無段変速機を示す概念図である。 図9は、本発明の実施形態4にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャートである。 図10は、本発明の実施形態4にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャートである。 図11は、本発明の実施形態5にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャートである。 図12は、本発明の実施形態5にかかるベルト式無段変速機の作用を示すタイムチャートである。 図13は、本発明の実施形態6にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャートである。 図14は、本発明の実施形態6にかかるベルト式無段変速機の作用を示すタイムチャートである。 図15は、本発明の実施形態7にかかるベルト式無段変速機の作用を示す説明図である。 図16は、本発明の実施形態7にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャートである。 図17は、本発明の実施形態7にかかるベルト式無段変速機の作用を示すタイムチャートである。 図18は、本発明の実施形態7にかかるベルト式無段変速機の変形例を示す説明図である。 図19は、本発明の実施形態8にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャートである。 図20は、本発明の実施形態8にかかるベルト式無段変速機の作用を示すタイムチャートである。 図21は、本発明の実施形態9にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャートである。 図22は、本発明の実施形態9にかかるベルト式無段変速機の作用を示すタイムチャートである。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
ここで、下記の実施形態におけるベルト式無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源として内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として用いても良い。また、下記の実施形態では、一方のプーリをプライマリプーリとし、他方のプーリをセカンダリプーリとするが、一方のプーリをセカンダリプーリとし、他方のプーリをプライマリプーリとしても良い。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機を搭載する車両の概略構成図、図2−1及び図2−2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリの概略構成を示す模式的断面図、図3は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の油圧制御装置の概略構成を模式的に示す概念図、図4−1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャート、図4−2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャートである。
図1に示すように、車両10の動力伝達機構は、内燃機関12と、トルクコンバータ16と、前後進切換機構20と、ベルト式無段変速機22と、減速装置24と、差動装置28とを備える。
内燃機関12は、円筒形状に形成されるシリンダの中心軸方向にピストンが往復運動し、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト14から回転を出力する。なお、内燃機関12は、ピストンとシリンダとを備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関に限定されない。内燃機関12は、回転力を出力できるものであればよく、例えば、ロータリー式の内燃機関であってもよい。
トルクコンバータ16は、流体クラッチの一種であり、作動油により、内燃機関12から取り出された回転を前後進切換機構20に伝える。また、トルクコンバータ16は、内燃機関12から取り出されたトルクを増幅する。
前後進切換機構20は、トルクコンバータ16から取り出された回転をベルト式無段変速機22に伝える機構であり、必要に応じてトルクコンバータ16から取り出した回転の方向を切り替えてベルト式無段変速機22に伝達する。
ベルト式無段変速機22は、前後進切換機構20から入力される回転の回転速度(回転数)を所望の回転速度(回転数)に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機22の詳細な説明は後述する。
減速装置24は、ベルト式無段変速機22からの回転の回転速度を減速して差動装置28に前記回転を伝える。
差動装置28は、車両10が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪34と、外側の駆動輪34との回転速度の差を吸収する。
上記構成要素によって車両10の動力伝達機構は形成される。すなわち、内燃機関12から取り出された回転は、クランクシャフト14を介してトルクコンバータ16に伝えられる。トルクコンバータ16によってトルクが増幅された回転は、トルクコンバータ16のインプットシャフト18を介して前後進切換機構20に伝えられる。
前後進切換機構20によって回転方向が切り替えられた回転は、入力側のシャフトとしてのプライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機22に伝えられる。ベルト式無段変速機22によって、回転速度を変更された回転は、減速装置24に伝えられる。
減速装置24によって減速された回転は、減速装置24のファイナルドライブピニオン26と、ファイナルドライブピニオン26に噛み合う差動装置28のリングギヤ30とを介して差動装置28に伝えられる。
差動装置28に伝えられた回転は、ドライブシャフト32に伝達される。ドライブシャフト32の差動装置28側とは反対側には、駆動輪34が取り付けられる。ドライブシャフト32に伝えられた回転は駆動輪34に伝達される。これにより、駆動輪34は回転し、駆動輪34が路面に前記回転を伝達することにより車両10は走行する。
ベルト式無段変速機22は、2つのプーリ、すなわち、一方のプーリとしてのプライマリプーリ50及び他方のプーリとしてのセカンダリプーリ60と、ベルト80とを含んで構成される。また、このベルト式無段変速機22は、さらに、切換機構100(図2−1参照)と、油圧制御手段としての油圧制御装置130(図3参照)とを備える。
ベルト式無段変速機22は、プライマリプーリ50に回転が入力される。プライマリプーリ50に入力された回転は、ベルト80を介してセカンダリプーリ60に伝えられる。この時、前記回転は、その回転速度(回転数)を調整される。
セカンダリプーリ60に伝えられた回転は、減速装置24に伝えられる。なお、入力軸であるプライマリシャフト51の回転速度を出力側のシャフトとしてのセカンダリシャフト61の回転速度で除算した値を変速比という。つまり、変速比は、プライマリシャフト51とセカンダリシャフト61との回転速度比に相当する。
プライマリプーリ50は、プライマリシャフト51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54とを備える。一方、セカンダリプーリ60は、セカンダリシャフト61と、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、挟圧力発生油圧室としてのセカンダリ油圧室64とを備える。プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によってインプットシャフト18の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。セカンダリシャフト61は、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
なお、このベルト式無段変速機22は、このプライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とがほぼ同様に構成される。よって、本実施形態では、プライマリプーリ50を主に説明し、セカンダリプーリ60の説明はできるだけ省略する。
プライマリプーリ50は、図2−1及び図2−2に示すように、上述のプライマリシャフト51、プライマリ固定シーブ52、プライマリ可動シーブ53及びプライマリ油圧室54に加え、さらに、スプライン55と、プライマリ隔壁56とを備える。
プライマリシャフト51は、筒状に形成される。プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によって回転軸線RLを回転中心として回転可能に支持されている。
プライマリ固定シーブ52は、通常は、プライマリシャフト51と一体に形成される。したがって、プライマリ固定シーブ52は、回転軸線RLを軸にプライマリシャフト51と一体に回転する。ここで、回転軸線RLと直交する方向を径方向という。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周から径方向外側に突出して形成される。なお、プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51とは別個に形成され、プライマリシャフト51に固定して設けられてもよい。
プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51とは別個に形成される。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51が嵌め込まれる貫通孔を有して形成される。前記貫通孔の内周面には、スプライン55が形成される。プライマリ可動シーブ53は、スプライン55を介してプライマリシャフト51に嵌め込まれて取り付けられる。プライマリ可動シーブ53は、回転軸線RLに沿った方向、すなわち、軸方向に対してプライマリ固定シーブ52と対向してプライマリシャフト51に嵌め込まれる。
スプライン55は、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を回転軸線RLに沿って摺動できるようにプライマリ可動シーブ53を支持する。加えて、スプライン55は、プライマリシャフト51からプライマリ可動シーブ53へ回転軸線RLを回転中心とする回転を伝達する。よって、プライマリ可動シーブ53は、スプライン55を介してプライマリシャフト51に支持されることで、プライマリシャフト51上を軸方向に移動可能かつプライマリシャフト51と一体回転可能となる。
プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間には、略V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を摺動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。ここで、セカンダリプーリ60(図1参照)にも、プライマリ溝80aと同様のセカンダリ溝80b(図1参照)が形成される。
プライマリ溝80aとセカンダリ溝80bとの間には、金属製の無端ベルトであるベルト80が巻き掛けられている。ベルト80は、プライマリプーリ50の回転をセカンダリプーリ60へ伝達する。
プライマリ油圧室54は、プライマリシャフト51と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁56とによって囲まれて形成される空間部である。プライマリ隔壁56は、貫通孔を有して形成される。プライマリ隔壁56は、前記貫通孔にプライマリシャフト51が嵌め込まれてプライマリシャフト51に設けられる。プライマリ隔壁56は、プライマリ可動シーブ53を境にして、プライマリ固定シーブ52側とは反対側に設けられる。
プライマリ油圧室54は、プライマリ油圧室54に供給される作動油により、プライマリ可動シーブ53に対してプライマリ固定シーブ52側への押圧力を作用させる。これにより、プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51に沿って、プライマリ固定シーブ52側へ押される。したがって、プライマリ油圧室54は、プライマリ溝80aに巻き掛けられるベルト80に対してプライマリ可動シーブ53を介してベルト挟圧力を作用させることができる。
プライマリ油圧室54によりプライマリ可動シーブ53が移動され、プライマリ可動シーブ53とプライマリ固定シーブ52との距離が変化すると、セカンダリプーリ60が備えるセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との距離もベルト80の張力を一定に保つように変化する。これにより、プライマリプーリ50に対するベルト80の接触半径と、セカンダリプーリ60に対するベルト80の接触半径とが変化する。このようにして、ベルト式無段変速機22は、内燃機関12から取り出された回転を変速することができる。
ここで、プライマリシャフト51は、第1油路86を有する。第1油路86は、プライマリ油圧室54に作動油を供給およびプライマリ油圧室54から作動油を排出する供給排出経路の一部をなす。第1油路86は、一方の端部が後述する切換機構100に接続され、他方の端部がプライマリ油圧室54に接続されている。これにより、第1油路86は、切換機構100とプライマリ油圧室54との間で作動油を流すことができる。なお、この第1油路86は、プライマリシャフト51の回転軸線RLに沿う方向に形成される軸方向油路88と、回転軸線RLと直交する方向に形成される径方向油路90とを含んで形成される。
切換機構100は、プライマリ油圧室54と後述する油圧制御装置130との間の作動油の流路に配置され、プライマリ油圧室54と後述する油圧制御装置130との間で作動油の流通が可能な状態と、流通が禁止された状態とを切り換えるものである。つまり、切換機構100は、図2−1に示すようにプライマリ油圧室54と油圧制御装置130とが連通された状態と、図2−2に示すようにプライマリ油圧室54と油圧制御装置130とが遮断された状態とを切り換える。この切換機構100は、第2油路102と、作動油供給排出弁110と、アクチュエータ120とを有する。
第2油路102は、プライマリ油圧室54に作動油を供給およびプライマリ油圧室54から作動油を排出する供給排出経路の一部をなす。第2油路102は、一方の端部が第1油路86と接続されており、他方の端部が後述する油圧制御装置130のプライマリ油圧室用制御装置135と接続されている。また、第2油路102と第1油路86とは、第1油路86が回転しても第2油路102は回転しないように、例えばロータリージョイントで連結されている。
作動油供給排出弁110は、供給排出経路の一部をなす第2油路102に設けられ、第2油路102においてプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向、すなわち、プライマリ油圧室54側(第1油路86側)から油圧制御装置130側に向かって開弁可能なものである。作動油供給排出弁110は、弁座112と、弁体114とを有する。
弁座112は、第2油路102においてプライマリ油圧室54側(第1油路86側)から油圧制御装置130側に向かうにしたがって流路面積が大きくなるようなテーパ面として形成される。つまり、弁座112は、第2油路102を形成する内壁面と連続しており、プライマリ油圧室54側(第1油路86側)に向かうに伴い、径方向内側に向かって傾斜するテーパ面である。
弁体114は、弁座112の第1油路86側の端部の開口内径よりも直径が大きい球状の部材である。弁体114は、第2油路102において弁座112の油圧制御装置130側に配置され、弁座112に対して接近、離間可能である。
したがって、作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に移動し弁座112に接近して、弁体114と弁座112とが接触することで閉弁状態となる。作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向に移動し弁座112から離間して、弁体114と弁座112とが非接触となることで開弁状態となる。
アクチュエータ120は、作動油供給排出弁110をプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に強制的に閉弁可能なものである。アクチュエータ120は、ピストン122と、駆動油圧室124と、スプリング126とを有する。
ピストン122は、受圧部122aと、棒状部122bとを有する。受圧部122aは、板状部材であり、後述する駆動油圧室124の内部に配置され、駆動油圧室124内の作動油の油圧による押圧力が作用する。棒状部122bは、一方の端部が受圧部122aに固定され、他方の端部が弁体114に固定されている。
駆動油圧室124は、油圧室壁面により区画され作動油が供給される空間部であり、上述したように内部にピストン122の受圧部122aが配置されている。駆動油圧室124は、内部の空間部分の受圧部122aの表面に平行な面の面積が、受圧部122aの面積と略同一となる形状である。また、駆動油圧室124は、駆動油圧室用制御装置136と接続され、駆動油圧室用制御装置136から作動油が供給、排出される。駆動油圧室124は、内部に作動油が供給されることで、作動油の油圧により受圧部122aに押圧力を作用させこの受圧部122aを弁座112側に押し出す。したがって、駆動油圧室124内の作動油の油圧により受圧部122aが押されることで、ピストン122が弁座112側に移動し、弁体114がこのピストン122と共に弁座112側に移動する。
スプリング126は、例えば、コイルばねであり、第2油路102内に弁体114と接触するようにして設けられる。スプリング126は、弁体114を弁座112から離間する側に付勢している。
上記のように構成される切換機構100は、駆動油圧室124に作動油が供給され、内部の作動油の油圧により受圧部122aが弁座112側に押し出される。ここで、駆動油圧室124の内部の作動油の油圧が一定以上となると、図2−2に示すように、受圧部122aが弁座112側に一定距離移動され、弁体114が弁座112の開口を塞ぐ。つまり、作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に移動し弁座112に接近して、弁体114と弁座112とが接触することで閉弁状態となり、プライマリ油圧室54と油圧制御装置130との連通が遮断された状態となる。これにより、プライマリ油圧室54に作動油が閉じ込められた状態となり、基本的には、プライマリ油圧室54の内部に作動油を供給することも、プライマリ油圧室54の内部から作動油を排出することもできず、プライマリ油圧室54の内部の作動油の量が変化しない状態となる。
一方、駆動油圧室124内の作動油の油圧が一定以下の場合は、図2−1に示すように、スプリング126により弁体114が弁座112から離間する側に押され、弁体114と弁座112の開口との間に空間ができる。つまり、作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向に移動し弁座112から離間して、弁体114と弁座112とが非接触となることで開弁状態となり、プライマリ油圧室54と油圧制御装置130とが連通した状態となる。これにより、プライマリ油圧室54の内部に作動油を供給することができ、また、プライマリ油圧室54の内部から作動油を排出することができる状態となる。
油圧制御装置130は、油圧制御手段であり、ベルト式無段変速機22および内燃機関12が搭載されている車両10において作動油の供給を必要とする作動油供給部分に作動油を供給するものである。油圧制御装置130は、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室54に対する作動油の供給排出を制御し、かつ、他方の挟圧力発生油圧室であるセカンダリ油圧室64に対する作動油の供給排出を制御するものである。油圧制御装置130は、プライマリ油圧室54およびセカンダリ油圧室64のそれぞれに供給される作動油の油圧である供給油圧を制御するものでもある。油圧制御装置130は、アクチュエータ120により強制的に作動油供給排出弁110が開弁されると、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室54に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室54から作動油を排出することで変速比を変更するものである。また、本実施形態の油圧制御装置130は、駆動油圧室124に作動油を供給し、駆動油圧室124の作動油の油圧である駆動油圧を制御するものでもある。
油圧制御装置130は、図3に示すように、プライマリ油圧室54、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室124などに作動油を供給し、これらの油圧、作動油の供給流量、作動油の排出流量を制御することで、ベルト式無段変速機22の変速比を制御するものでもある。なお、同図では、プライマリ油圧室54、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室124を除く作動油供給部分(上述した作動油供給部分や、内燃機関12の作動油供給部分(例えば、可動部品との間に摺動部を有する静止部品、可動部品あるいは静止部品との間に摺動部を有する可動部品、加熱される部品やオイルにより駆動する駆動装置))の図示は省略する。油圧制御装置130は、オイルパン131と、オイルポンプ132と、ライン圧制御装置133と、一定圧制御装置134と、プライマリ油圧室用制御装置135と、駆動油圧室用制御装置136と、セカンダリ油圧室用制御装置137とを含んで構成される。
オイルポンプ132は、オイルパン131に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。オイルポンプ132は、油路R1を介してライン圧制御装置133に接続されている。オイルポンプ132によって加圧され、吐出された作動油は、ライン圧制御装置133に供給される。つまり、オイルポンプ132の吐出圧は、ライン圧制御装置133に導入される。オイルポンプ132は、図1に示すように、トルクコンバータ16と前後進切換機構20との間に配置されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aと、ハブ132bと、ボディ132cとにより構成されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aにより円筒形状のハブ132bを介して、上記トルクコンバータ16のポンプに接続されている。また、ボディ132cは、ベルト式無段変速機22等を支持する筐体に固定されている。また、ハブ132bは、トルクコンバータ16の中空軸にスプライン嵌合されている。したがって、オイルポンプ132は、内燃機関12からの出力トルクがトルクコンバータ16のポンプを介してロータ132aに伝達されるので、駆動することができる。つまり、オイルポンプ132は、内燃機関12の回転数の上昇に応じて、吐出される作動油の吐出量が増量、すなわち吐出圧が上昇する。
ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132から吐出圧で供給される作動油の圧力を所定のライン圧PLとなるように調圧するものである。つまり、ライン圧制御装置133は、入力油圧である油路R1の油圧、すなわち吐出圧を調圧して、ライン圧制御装置133からの出力油圧をライン圧PLとするものである。ライン圧制御装置133は、油路R2を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側流量制御弁135cの第2ポート135lと接続され、油路R2および分岐油路R21を介して一定圧制御装置134と接続され、油路R2および分岐油路R22を介してセカンダリ油圧室用制御装置137と接続されている。したがって、ライン圧制御装置133により調圧されたライン圧PLは、供給側流量制御弁135cの第2ポート135l、一定圧制御装置134、セカンダリ油圧室用制御装置137に導入される。
ライン圧制御装置133は、内燃機関12の出力トルクに応じてライン圧PLを調圧する。ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132から吐出された作動油の圧力を調圧する図示しない電磁弁、例えばリニアソレノイド弁が備えられている。ライン圧制御装置133は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により、リニアソレノイド弁の弁開度が制御されることで、ライン圧PLを調圧することができる。
一定圧制御装置134は、ライン圧制御装置133から出力されたライン圧PLを常に一定の圧力となるように調圧するものである。つまり、一定圧制御装置134は、入力油圧である油路R2および分岐油路R21の油圧、すなわちライン圧PLを調圧して、一定圧制御装置134からの出力油圧を一定圧とするものである。一定圧制御装置134は、油路R3を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側制御弁135aの第1ポート135eと接続され、油路R3および分岐油路R31を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する排出側制御弁135bの第1ポート135hと接続され、油路R3および分岐油路R32を介して駆動油圧室用制御装置136と接続されている。したがって、一定圧制御装置134により調圧された一定圧は、供給側制御弁135aの第1ポート135e、排出側制御弁135bの第1ポート135h、駆動油圧室用制御装置136に導入される。
プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室54への作動油の供給あるいはプライマリ油圧室54からの作動油の排出を制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室54へ供給される作動油の供給流量およびプライマリ油圧室54から排出された作動油の排出流量を制御するものである。さらに言えば、プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室54の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのプライマリ油圧Psを制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、供給側制御弁135aと、排出側制御弁135bと、供給側流量制御弁135cと、排出側流量制御弁135dとを含んで構成される。
供給側制御弁135aは、供給側流量制御弁135cによりプライマリ油圧室54に供給される作動油の供給流量制御を行うものである。供給側制御弁135aは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135eと、第2ポート135fと、第3ポート135gとの連通を切り換えるものである。第1ポート135eは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135fは、油路R4を介して供給側流量制御弁135cの後述する第1ポート135kと接続されている。また、第2ポート135fは、油路R4および分岐油路R41を介して排出側流量制御弁135dの後述する第4ポート135uと接続されている。第3ポート135gは、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135gは、大気圧に解放されている。
供給側制御弁135aは、ONとなると、第1ポート135eと第2ポート135fとが連通する。したがって、供給側制御弁135aに導入された一定圧が供給側流量制御弁135cの第1ポート135kに導入される。つまり、供給側制御弁135aに導入された一定圧が第1ポート135kと連通する供給側流量制御弁135cの後述する制御油圧室135oに導入される。また、供給側制御弁135aに導入された一定圧が排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに導入される。一方、供給側制御弁135aは、OFFとなると、第2ポート135fと第3ポート135gとが連通する。したがって、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される。つまり、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kを介して制御油圧室135oが大気圧に解放される。また、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される。ここで、供給側制御弁135aは、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。したがって、供給側制御弁135aは、ECU140からの制御信号により、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oを一定圧から大気圧までの間で調圧することができる。
排出側制御弁135bは、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室54から排出される作動油の排出流量制御を行うものである。排出側制御弁135bは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135hと、第2ポート135iと、第3ポート135jとの連通を切り換えるものである。第1ポート135hは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135iは、油路R6を介して排出側流量制御弁135dの後述する第1ポート135rと接続されている。また、第2ポート135iは、油路R6および分岐油路R61を介して供給側流量制御弁135cの後述する第4ポート135nと接続されている。第3ポート135jは、油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135jは、大気圧に解放されている。
排出側制御弁135bは、ONとなると、第1ポート135hと第2ポート135iとが連通する。したがって、排出側制御弁135bに導入された一定圧が排出側流量制御弁135dの第1ポート135rに導入される。つまり、排出側制御弁135bに導入された一定圧が第1ポート135rと連通する排出側流量制御弁135dの後述する制御油圧室135vに導入される。また、排出側制御弁135bに導入された一定圧が供給側流量制御弁135cの第4ポート135nに導入される。一方、排出側制御弁135bは、OFFとなると、第2ポート135iと第3ポート135jとが連通する。したがって、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される。つまり、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rを介して制御油圧室135vが大気圧に解放される。また、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される。ここで、排出側制御弁135bは、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。したがって、排出側制御弁135bは、ECU140からの制御信号により、排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを一定圧から大気圧までの間で調圧することができる。
供給側流量制御弁135cは、プライマリ油圧室54に供給される作動油の供給流量を制御するものである。供給側流量制御弁135cは、第1ポート135kと、第2ポート135lと、第3ポート135mと、第4ポート135nと、制御油圧室135oと、スプール135pと、スプール弾性部材135qとにより構成されている。第1ポート135kは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。第2ポート135lは、上述のように、ライン圧制御装置133と接続されている。第3ポート135mは、油路R7を介してプライマリ油圧室54と接続されている。実施形態1では、第3ポート135mは、油路R7、供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86を介してプライマリ油圧室54と接続されている。第4ポート135nは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。なお、図3に示すように、供給側制御弁135aの第2ポート135fと供給側流量制御弁135cの第1ポート135kとの間、ライン圧制御装置133と供給側流量制御弁135cの第2ポート135lとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、供給側制御弁135aから供給側流量制御弁135cへ流入する作動油およびライン圧制御装置133から供給側流量制御弁135cへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135oは、第1ポート135kと連通するものであり、その油圧によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち一方向(図3では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。スプール135pは、供給側流量制御弁135c内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135lと第3ポート135mとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を遮断するものである。スプール弾性部材135qは、スプール135pと、スプール135pに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。したがって、スプール弾性部材135qは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち他方向(図3では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。
供給側流量制御弁135cは、スプール135pに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135pが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、供給側流量制御弁135cは、スプール135pの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通の度合い、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、供給側流量制御弁135cは、供給側制御弁135aにより調圧された制御油圧室135oの油圧により、スプール135pが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御し、供給流量を制御するものである。
排出側流量制御弁135dは、プライマリ油圧室54から排出される作動油の排出流量を制御するものである。排出側流量制御弁135dは、第1ポート135rと、第2ポート135sと、第3ポート135tと、第4ポート135uと、制御油圧室135vと、スプール135wと、スプール弾性部材135xとにより構成されている。第1ポート135rは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。第2ポート135sは、合流油路R52、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第2ポート135sは、大気圧に解放されている。第3ポート135tは、分岐油路R71および油路R7を介してプライマリ油圧室54と接続されている。実施形態1では、第3ポート135tは、分岐油路R71、油路R7、供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86を介してプライマリ油圧室54と接続されている。第4ポート135uは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。なお、図3に示すように、排出側制御弁135bの第2ポート135iと排出側流量制御弁135dの第1ポート135rとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、排出側制御弁135bから排出側流量制御弁135dへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135vは、第1ポート135rと連通するものであり、その油圧によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち一方向(図3では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。スプール135wは、排出側流量制御弁135d内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135sと第3ポート135tとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を遮断するものである。スプール弾性部材135xは、スプール135wと、スプール135wに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。したがって、スプール弾性部材135xは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち他方向(図3では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。
排出側流量制御弁135dは、スプール135wに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135wが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、排出側流量制御弁135dは、スプール135wの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通の度合い、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、排出側流量制御弁135dは、排出側制御弁135bにより調圧された制御油圧室135vの油圧により、スプール135wが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御し、排出流量を制御するものである。
駆動油圧室用制御装置136は、駆動油圧室124の油圧である駆動油圧Pcvを調圧するものである。駆動油圧室用制御装置136には、上述のように、一定圧制御装置134から一定圧が導入される。また、駆動油圧室用制御装置136は、油路R8を介して駆動油圧室124と接続されている。駆動油圧室用制御装置136は、ソレノイド弁(本発明のソレノイド弁)136aが備えられている。駆動油圧室用制御装置136は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により、ソレノイド弁136aをON/OFF制御する。本実施形態のソレノイド弁136aは、いわゆるノーマルオープン型のソレノイド弁である。すなわち、駆動油圧室用制御装置136は、OFF制御される、すなわちソレノイド弁136aがOFFとされると非通電状態となり、このソレノイド弁136aが開弁状態となることで、分岐油路R32と油路R8とが連通し、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧が駆動油圧室124に導入され、駆動油圧室124の油圧である駆動油圧Pcvが増圧され所定の大きさの一定圧となる。一方、駆動油圧室用制御装置136は、ON制御される、すなわちソレノイド弁136aがONとされると通電状態となり、このソレノイド弁136aが閉弁状態となることで、分岐油路R32と油路R8との連通が遮断されるとともに、油路R8が外部に解放され、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが減圧され大気圧となる。つまり、ソレノイド弁136aは、OFF制御され非通電状態となることで駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧となり作動油供給排出弁110を閉弁するための駆動油圧PcvがON状態となる一方、ON制御され通電状態となることで駆動油圧Pcvが大気圧となり、駆動油圧PcvのON状態が解除される。
セカンダリ油圧室用制御装置137は、セカンダリ油圧室64への作動油の供給あるいはセカンダリ油圧室64からの作動油の排出を制御するものであり、プライマリ油圧室用制御装置135とほぼ同様な構成をしている。さらに言えば、セカンダリ油圧室用制御装置137は、セカンダリ油圧室64の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのセカンダリ油圧Pdを制御するものである。セカンダリ油圧室用制御装置137には、上述のように、ライン圧制御装置133からライン圧PLが導入される。セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。実施形態1では、セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9、セカンダリシャフト61の図示しない作動油通路および図示しない作動流体供給孔を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。セカンダリ油圧室用制御装置137は、図示しない流量制御弁などを備える。セカンダリ油圧室用制御装置137は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により制御され導入されたライン圧PLを調圧する。
油圧制御装置130は、内燃機関12などの運転制御を行う制御手段としてのECU(Electronic Control Unit)140と接続されている。ECU140は、油圧制御装置130と内燃機関12とに接続されており、油圧制御装置130および内燃機関12を制御するものである。油圧制御装置130は、ECU140からの制御信号に基づいて、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、作動油供給排出弁110を開弁し、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室54に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室54から作動油を排出し、少なくともベルト式無段変速機22の変速比を制御するものである。また、ECU140は、内燃機関12に出力した制御信号により、内燃機関12の図示しない燃料噴射弁、点火プラグ、スロットル弁を制御することで、内燃機関12の出力トルクを制御する。
ECU140は、運転条件、および、記憶部(不図示)に記憶された各種データ、例えば、機関回転数とスロットルバルブのスロットル開度に基づく最適燃費曲線などに基づいて、油圧制御装置130および内燃機関12を制御する。このECU140は、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160、車速センサ170が電気的に接続されている。
入力回転数センサ150は、駆動源からの駆動力が入力されるプーリ、すなわち内燃機関12からの出力トルクが入力されるプライマリプーリ50の入力回転数Ninを検出するものである。入力回転数センサ150は、プライマリプーリ50のプライマリシャフト51の回転数を検出し、プライマリシャフト51の回転数を入力回転数Ninとするものである。入力回転数センサ150は、同図に示すように、ECU140と接続されている。したがって、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninは、ECU140に出力される。なお、入力回転数センサ150は、プライマリシャフト51の回転数を入力回転数Ninとするものに限られるものではなく、例えば内燃機関12の機関回転数Neを検出し、機関回転数Neから入力回転数Ninを算出するものであっても良い。
出力回転数センサ160は、プライマリプーリ50に入力された駆動源からの駆動力、すなわち内燃機関12の出力トルクがベルト80を介して伝達されるセカンダリプーリ60の出力回転数Noutを検出するものである。出力回転数センサ160は、実施形態1では、セカンダリプーリ60のセカンダリシャフト61の回転数を検出し、セカンダリシャフト61の回転数を出力回転数Noutとするものである。出力回転数センサ160は、同図に示すように、ECU140と接続されている。したがって、出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutは、ECU140に出力される。
車速センサ170は、このベルト式無段変速機22を搭載する車両10の速度、すなわち車速vを検出するものである。車速センサ170は、同図に示すように、ECU140と接続されている。したがって、車速センサ170により検出された車速vは、ECU140に出力される。
ここで、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Nin(言い換えれば、入力回転速度)と、出力回転数センサ160により検出された出力回転数Nout(言い換えれば、出力回転速度)との比は、ベルト式無段変速機22の変速比となる。つまり、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160は、変速比を検出するものである。したがって、ECU140は、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninおよび出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutが入力されることで、検出された変速比γが入力されることとなる。
ECU140は、現状の実際の変速比である実変速比、目標とする変速比である目標変速比等の運転条件、および、記憶部(不図示)に記憶された各種データに基づいて、ライン圧制御装置133、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137の制御信号を生成し、油圧制御装置130に出力する。このように、ECU140は、油圧制御装置130に出力した制御信号により、ライン圧制御装置133、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninおよび出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutに基づく実変速比γが目標変速比γoとなるように、油圧制御装置130を制御する。
次に、実施形態1にかかるベルト式無段変速機22の動作について説明する。まず、一般的な車両10の前進、後進について説明する。車両10に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が前進ポジションを選択した場合は、ECU140が油圧制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチをON、リバースブレーキをOFFとし、前後進切換機構20を制御する。これにより、インプットシャフト18とプライマリシャフト51が直結状態となる。これにより、内燃機関12からの出力トルクがプライマリプーリ50に伝達され、プライマリシャフト51が内燃機関12のクランクシャフト14の回転方向と同一方向に回転される。プライマリプーリ50に伝達された内燃機関12からの出力トルクは、ベルト80を介してセカンダリプーリ60に伝達され、このセカンダリプーリ60のセカンダリシャフト61を回転させる。
セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関12の出力トルクは、ベルト式無段変速機22のセカンダリシャフト61から減速装置24に伝達され、減速装置24から差動装置28を介してドライブシャフト32に伝達され、ドライブシャフト32の端部に取り付けられた駆動輪34に伝達される。駆動輪34が路面に対して回転することで、車両10は前進する。
一方、車両10に設けられたシフトポジション装置により、運転者が後進ポジションを選択した場合は、ECU140が、油圧制御装置130から供給された作動油により前後進切換機構20のフォワードクラッチをOFF、リバースブレーキをONとする。これにより、プライマリシャフト51が、インプットシャフト18と逆方向に回転する。これにより、セカンダリプーリ60のセカンダリシャフト61、減速装置24、差動装置28、ドライブシャフト32などは、運転者が前進ポジションを選択した場合とは逆方向に回転し、車両が後進する。
ここで、ECU140は、車両10の速度や運転者のアクセル開度などの諸条件とECU140の記憶部に記憶されているマップ(例えば、機関回転数とスロットルバルブのスロットル開度に基づく最適燃費曲線など)とに基づいて、内燃機関12の運転状態が最適となるように、油圧制御装置130を介して、ベルト式無段変速機22の変速比を制御する。ECU140は、内燃機関12の運転状態が最適となるように目標変速比を設定し、現状のプライマリ油圧室54及びセカンダリ油圧室64の状態と、記憶部(不図示)に記憶されている油圧制御装置130とプライマリ油圧室54との間を流通する作動油の量とプライマリ油圧室54内の油圧との関係から、ベルト式無段変速機22の変速比が目標変速比となるプライマリ油圧室54の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのプライマリ油圧Psおよびセカンダリ油圧室64の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのセカンダリ油圧Pdを算出する。ECU140は、さらに、算出した油圧から、油圧制御装置130からプライマリ油圧室54およびセカンダリ油圧室64に供給する作動油の量、または、プライマリ油圧室54およびセカンダリ油圧室64から油圧制御装置130に排出する作動油の量を算出し、算出結果に基づいて油圧制御装置130を制御する。
ここで、ベルト式無段変速機22の変速比の制御には、変速比の変更と、変速の固定(変速比γ定常)とがある。変速比の変更、変速比の固定は、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで行われる。なお、油圧制御装置130を用いた変速比の制御は、制御周期ごとに行われるものである。
ECU140は、変速比を固定する状態でない、すなわち変速比を変更する状態では、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvを減圧して、作動油供給排出弁110を開弁状態とする。
具体的には、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御する。駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがECU140によりON制御されると、このソレノイド弁136aが通電状態となり、分岐油路R32と油路R8との連通が遮断されるとともに、油路R8が外部に解放され、駆動油圧室124が大気圧に解放され、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが減圧され大気圧となる。したがって、アクチュエータ120をなすスプリング126の付勢力によって作動油供給排出弁110の弁体114が弁座112から離間し、作動油供給排出弁110が開弁する。
次に、ECU140は、油圧制御装置130により変速比変更制御を行う。変速比変更制御は、主に油圧制御装置130からプライマリ油圧室54への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室54から油圧制御装置130を介してプライマリプーリ50の外部への作動油の排出により行われ、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが調圧されることで、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51の軸方向の所定の位置に摺動し、プライマリ固定シーブ52とこのプライマリ可動シーブ53との間の間隔、すなわちプライマリ溝80aの幅が調整される。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が変化し、プライマリプーリ50の回転数、すなわち入力回転数Ninとセカンダリプーリ60の回転数、すなわち出力回転数Noutとの比である変速比が無段階(連続的)に制御される。
なお、セカンダリプーリ60においては、ECU140によりセカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、セカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを調圧し、セカンダリ固定シーブ62とこのセカンダリ可動シーブ63とによりベルト80を挟み付けるベルト挟圧力が調整される。これにより、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60との間に巻き掛けられたベルト80のベルト張力が制御される。
ここで、変速比変更制御には、アップシフト、すなわち変速比を減少させる変速比減少変更制御と、ダウンシフト、すなわち変速比を増加させる変速比増加変更制御とがある。以下、それぞれについて説明する。
変速比減少変更制御(アップシフト制御)では、油圧制御装置130からプライマリ油圧室54へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行われる。すなわち、油圧制御装置130は、上述のように開弁された作動油供給排出弁110を介してプライマリ油圧室54に作動油を供給する。具体的には、ECU140は、減少変速比と変速速度とを算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を油圧制御装置130に出力する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御され、ONとOFFとを繰り返し、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oの制御油圧を供給時所定圧に調圧し、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに供給時所定圧を導入する。ここで、供給時所定圧は、スプール135pに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御することで制御される供給流量を減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量とすることができる圧力である。したがって、供給側流量制御弁135cは、制御油圧室135oの制御油圧、すなわち供給時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、スプール135pが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通する。これにより、供給側流量制御弁135cが開弁され、プライマリ油圧室54への作動油の供給流量が減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量となる。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nおよび排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを大気圧に解放する。したがって、排出側流量制御弁135dは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135wに作用するため、スプール135wが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通しない。これにより、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54からの作動油の排出流量が0となる。
したがって、供給側流量制御弁135cにライン圧PLで導入された作動油は、供給側流量制御弁135cにより減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量に制御されて、油路R7、作動油供給排出弁110、供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86を介してプライマリ油圧室54に供給される。そして、作動油供給排出弁110等を介して供給された作動油によりプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが上昇し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が上昇し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト80の接触半径が減少し、変速比が減少され、減少変速比となり、アップシフトが実行される。
変速比増加変更制御(ダウンシフト制御)では、プライマリ油圧室54から油圧制御装置130を介して作動油を外部に排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。すなわち、油圧制御装置130は、上述のように開弁された作動油供給排出弁110を介してプライマリ油圧室54から作動油を排出する。具体的には、ECU140は、増加変速比と変速速度とを算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を油圧制御装置130に出力する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oおよび排出側流量制御弁135dの第4ポート135uを大気圧に解放する。したがって、供給側流量制御弁135cは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135pに作用するため、スプール135pが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持されるため、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通しない。これにより、供給側流量制御弁135cが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54への作動油の供給流量が0となる。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御され、ONとOFFとを繰り返し、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nに排出時所定圧を導入し、排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vの制御油圧を排出時所定圧に調圧する。ここで、排出時所定圧は、スプール135wに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御することで制御される排出流量を増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量とすることができる圧力である。したがって、排出側流量制御弁135dは、制御油圧室135vの制御油圧、すなわち排出時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、スプール135wが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通する。これにより、排出側流量制御弁135dが開弁され、プライマリ油圧室54からの作動油の排出流量が増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量となる。
したがって、プライマリ油圧室54内の作動油は、プライマリ油圧室54から供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86、作動油供給排出弁110、油路R7、分岐油路R71を介して排出側流量制御弁135dに流入し、排出側流量制御弁135dにより増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量に制御されて、合流油路R52,R51および油路R5を介して、オイルパン131、すなわちプライマリ油圧室54の外部に排出される。したがって、作動油供給排出弁110を介してプライマリ油圧室54から作動油が排出されることにより、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト80の接触半径が増加し、変速比が増加され、増加変速比となり、ダウンシフトが実行される。
一方、ECU140は、車両10の走行状態が安定している場合など、大幅な変速比の変更を行う必要がないと、変速比を固定、すなわち変速比を定常とする制御を行う。ECU140は、変速比を固定する状態であると判定すると、作動油供給排出弁110を閉弁する。つまり、ECU140は、作動油供給排出弁110を閉弁状態にして、変速比を固定する。
ここで、作動油供給排出弁110を閉弁状態にして変速比を固定する場合、すなわち閉弁状態における変速比の固定は、プライマリ油圧室54へ作動油を供給せず、かつこのプライマリ油圧室54から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。
変速比の固定時では、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvを増圧して、作動油供給排出弁110を閉弁し、作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54への作動油の供給および作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54からの作動油の排出を禁止する。
具体的には、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをOFF制御する。駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがECU140によりOFF制御されると、このソレノイド弁136aが非通電状態となり、分岐油路R32と油路R8とが連通し、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧が駆動油圧室124に導入され、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが増圧され所定の大きさの一定圧となる。したがって、所定の一定圧となった駆動油圧室124の作動油の駆動油圧Pcvにより作動油供給排出弁110の弁体114が弁座112と接触し、作動油供給排出弁110が閉弁する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oおよび排出側流量制御弁135dの第4ポート135uを大気圧に解放する。従って、供給側流量制御弁135cは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135pに作用するため、スプール135pが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通しない。これにより、供給側流量制御弁135cが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54への作動油の供給流量が0となる。これにより、作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54への作動油の供給が禁止される。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nおよび排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを大気圧に解放する。従って、排出側流量制御弁135dは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135wに作用するため、スプール135wが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通しない。これにより、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54からの作動油の排出流量が0となる。これにより、作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54からの作動油の排出が禁止される。
したがって、作動油供給排出弁110の閉弁状態における変速比の固定時には、プライマリ油圧室54への作動油の供給およびこのプライマリ油圧室54からの作動油の排出を禁止することで、プライマリ油圧室54内の作動油を閉じ込めて保持する。ここで、閉弁状態における変速比の固定時においても、ベルト80のベルト張力が変化するため、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が変化しようとし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化する虞がある。しかし上述のように、作動油供給排出弁110が閉弁状態となることで、プライマリ油圧室54内には、作動油が閉じ込められ保持された状態となるため、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化しようとしても、ベルト80からプライマリ可動シーブ53を介して作用するベルト反力に応じてプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psも変化することで、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置は一定に維持される。したがって、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、プライマリ油圧室54に作動油を供給することによるプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psの上昇を行わなくても良い。これにより、閉弁状態における変速比の固定時に、プライマリ油圧室54に作動油を供給するためにオイルポンプ132を駆動させなくても良いため、オイルポンプ132の駆動損失の増加を抑制することができる。
ところで、上述したようなベルト式無段変速機22では、図2−2に示すように、作動油供給排出弁110の閉弁状態における弁体114には、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとが作用している。スプリング開弁方向押圧力Fspは、スプリング126の付勢力に応じた開弁方向への押圧力であり、弁体114に作用する。駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvは、駆動油圧室124内の作動油の駆動油圧Pcvに応じた閉弁方向への押圧力であり、ピストン122を介して弁体114に作用する。プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsは、プライマリ油圧室54の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのプライマリ油圧Psに応じた開弁方向への押圧力であり、第2油路102において弁体114よりプライマリ油圧室54側の作動油を介して弁体114に作用する。
そして、作動油供給排出弁110は、この3つの押圧力、すなわち、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が下記の関係式(1)を満たす場合に、弁体114と弁座112とが接触し閉弁状態となる。逆に言えば、作動油供給排出弁110は、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が下記の関係式(2)を満たす場合に、弁体114と弁座112とが離間し開弁状態となる。

Fpcv>Fsp+Fps ・・・(1)

Fpcv<Fsp+Fps ・・・(2)
ここで、仮に、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aに電気的フェール(ショートなど)等が発生した場合、上述したようにこのソレノイド弁136aがノーマルオープン型のソレノイド弁であることから、ソレノイド弁136aをON制御しても、通電状態にならず非通電状態が継続しソレノイド弁136aの開弁状態が継続することで、分岐油路R32と油路R8とが連通を維持し、駆動油圧室124に一定圧が導入され続け、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧のままになるおそれがある。この場合、このベルト式無段変速機22は、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらず、駆動油圧室124への一定圧の導入が継続され駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧のままで継続することで、この駆動油圧室124の作動油の駆動油圧Pcvにより作動油供給排出弁110の弁体114が弁座112と接触した状態で維持され、作動油供給排出弁110が閉弁状態のまま維持され、この結果、変速比が固定されたままとなるおそれがある。
そこで、本実施形態のベルト式無段変速機22は、制御手段としてのECU140が駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し変速比を制御することで、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御している。
上述したように、作動油供給排出弁110の閉弁状態においては、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係は、関係式(1)を満たす状態となっている。このとき、弁体114が閉弁位置にある際のスプリング開弁方向押圧力Fspは、変動せず常に一定である。また、ソレノイド弁136aのフェール時の駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvは、ソレノイド弁136aの非通電状態が継続しソレノイド弁136aの開弁状態が継続することで駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧のままになることから、変動せず常に一定である。このため、作動油供給排出弁110は、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが調節され、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が関係式(2)を満たすようになれば、弁体114と弁座112とが離間し開弁状態となる。
そこで、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する。作動油供給排出弁110の閉弁状態では、プライマリ油圧室54内に作動油が閉じ込められて保持されていることから、ベルト80のベルト張力が変化すると、ベルト80からプライマリ可動シーブ53を介して作用するベルト反力に応じてプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psも変化し、この結果、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsもこれに伴って変化する。つまり、作動油供給排出弁110の閉弁状態においてセカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されると、セカンダリ油圧Pdによる推力に応じてベルト80のベルト張力が増加し、ベルト80からプライマリ可動シーブ53を介して作用するベルト反力に応じてプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psも増圧し、この結果、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsもこれに伴って増加する。なおここでは、セカンダリ油圧Pdによる推力は、セカンダリ油圧Pdによりセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との間に生じるベルト80を挟み付けるベルト挟圧力に相当する。
そして、このベルト式無段変速機22は、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されプライマリ油圧Psも所定の圧力まで増圧されプライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsが所定の大きさまで増加すると、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が関係式(2)を満たすようになり、作動油供給排出弁110は、弁体114と弁座112とが離間し開弁状態となる。この結果、ベルト式無段変速機22は、作動油供給排出弁110が開弁状態となることから、油圧制御装置130からプライマリ油圧室54への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室54から油圧制御装置130を介してプライマリプーリ50の外部への作動油の排出が可能となり、ECU140により油圧制御装置130を制御することにより適正な変速比の制御が可能となる。
次に、図4−1のフローチャート及び図4−2のタイムチャートを参照してベルト式無段変速機22のソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御について説明する。図4−2は、縦軸を作動油供給排出弁110の開弁指示のON・OFF、変速比γ、駆動油圧Pcv、供給油圧Pin、セカンダリ油圧Pd及び車速vとし、横軸を時間軸としている。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。またここで、供給油圧Pinは、プライマリ油圧室54へ供給される作動油の供給圧力であり、作動油供給排出弁110の開弁状態においては、供給排出経路における作動油供給排出弁110の弁体114よりも上流側(弁体114を挟んでプライマリ油圧室54側と反対側)の作動油である上流側作動油の油圧である。
まず、ECU140は、作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御し、変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S100、例えば図4−2の時刻t11)。
次に、ECU140は、変速比が遷移していないか否か、すなわち、変速比が変更されていないか否かを判定する(S101、例えば図4−2の時刻t12)。ECU140は、例えば、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160の検出信号などに応じて種々の公知の方法に基づいて変速比γが遷移していないか否かを判定すればよい。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S101:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S101:Yes)、作動油供給排出弁110の開弁動作が失敗したと判定し、駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず、所定の大きさの一定圧の駆動油圧Pcvが継続して作用しソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定する(S102、例えば図4−2の時刻t13)。ECU140は、例えば、ECU140が出入力する種々の制御信号などに応じて種々の公知の方法に基づいてソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、ソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定すればよい。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したことで駆動油圧PcvのON解除ができると判定した場合(S102:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないと判定した場合(S102:Yes)、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する(S103、例えば図4−2の時刻t14)。
次に、ECU140は、変速比が遷移したか否かを判定する(S104、例えば図4−2の時刻t15)。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S104:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S104:Yes)、変速比が最減速比、すなわち、最大変速比γmaxになったか否かを判定する(S105)。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になっていないと判定した場合(S105:No)、S104に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になったと判定した場合(S105:Yes、例えば図4−2の時刻t16)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
なお、本実施形態のベルト式無段変速機22では、この間(例えば時刻t11から時刻t16)、供給油圧Pinは、一定としている。また、車速vは、時刻t15にて、作動油供給排出弁110が開弁すると共に、プライマリ油圧室54から作動油が排出されダウンシフトされ、すなわち変速比が増加されることで、徐々に低下している。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機22によれば、車両10に搭載される2つのプーリとしてのプライマリプーリ50及びセカンダリプーリ60と、プライマリプーリ50、セカンダリプーリ60に巻き掛けられ、内燃機関12からの駆動力を伝達するベルト80と、プライマリプーリ50、セカンダリプーリ60それぞれに形成され、油圧によりベルト80に対してベルト挟圧力を発生するプライマリ油圧室54及びセカンダリ油圧室64と、一方の挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54に作動油を供給およびこのプライマリ油圧室54から作動油を排出する供給排出経路としての第1油路86、第2油路102と、供給排出経路としての第2油路102に設けられ弁体114がプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向に移動し弁座112から離間することで開弁可能な作動油供給排出弁110と、駆動油圧室124の作動油の油圧である駆動油圧Pcvによりピストン122を移動させることで、弁体114をプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に移動させ弁座112に接触させて作動油供給排出弁110を閉弁可能なアクチュエータ120と、プライマリ油圧室54、セカンダリ油圧室64の作動油の油圧であるプライマリ油圧Ps、セカンダリ油圧Pdを制御可能であると共に、駆動油圧Pcvをソレノイド弁136aを介して制御し、ソレノイド弁136aを非通電状態とし駆動油圧Pcvを増圧することでアクチュエータ120により作動油供給排出弁110を閉弁させ変速比を固定する一方、ソレノイド弁136aを通電状態とし駆動油圧Pcvを減圧することで作動油供給排出弁110を開弁させプライマリ油圧室54に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室54から作動油を排出して変速比を変更する油圧制御装置130と、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御するECU140とを備える。
したがって、ベルト式無段変速機22は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御することから、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらずソレノイド弁136aが通電状態とならず駆動油圧Pcvを減圧できない場合であっても、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されることで、ベルト張力が増加しプライマリ油圧室54の作動油に作用するベルト反力が増加しプライマリ油圧Psが増圧するので、作動油供給排出弁110を開弁状態とし変速比を変更することができ、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御することができる。この結果、ベルト式無段変速機22は、ソレノイド弁136aのフェール時に、例えば、変速ができず変速比がハイ側(最小変速比側)で固定されてしまうことを防止することができ、よって、例えば、加速時のもたつきや再発進時のエンジンストールを防止することができ、信頼性を向上することができる。
(実施形態2)
図5−1は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャート、図5−2は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャート、図6は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比マップである。実施形態2に係るベルト式無段変速機は、実施形態1に係るベルト式無段変速機と略同様の構成であるが、ソレノイド弁のフェール時に車両の速度に応じて段階的に変速比を変更する点で実施形態1に係るベルト式無段変速機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態に係るベルト式無段変速機222のECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し車両10の速度に応じて段階的に変速比を変更する。ECU140は、車速センサ170が検出した車速vを取得し、この車速vに応じて目標となる変速比を設定し、実際の変速比がこの目標となる変速比になるように油圧制御装置130を制御する。このとき、ECU140は、車速vに応じて段階的に目標となる変速比を変更して設定する。さらに言えば、ECU140は、車速vの減速に応じて段階的に目標となる変速比を増加させる。
この結果、ベルト式無段変速機222は、ソレノイド弁136aのフェール時に、車速vに応じて段階的に変速比を変更することから、フェール発生時に、急激な変速(減速)が生じることを防止することができるので、安全に変速(減速)することができフェールセーフとして作用し、信頼性を向上することができる。ベルト式無段変速機222は、また、ソレノイド弁136aのフェール時に、セカンダリ油圧Pdを相対的に高い油圧に保持した状態を継続的に維持しなくてもよいことから、ベルト80に作用するベルト挟圧力が相対的に高い状態が長期間継続することが抑制されるので、このベルト80の寿命が短くなることを抑制することができ、この結果、耐久性を向上することができる。
次に、図5−1のフローチャート及び図5−2のタイムチャートを参照してベルト式無段変速機222のソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御について説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU140は、作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御し、変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S200、例えば図5−2の時刻t21)。
次に、ECU140は、変速比が遷移していないか否か、すなわち、変速比が変更されていないか否かを判定する(S201、例えば図5−2の時刻t22)。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S201:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S201:Yes)、作動油供給排出弁110の開弁動作が失敗したと判定し、駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず、所定の大きさの一定圧の駆動油圧Pcvが継続して作用しソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定する(S202、例えば図5−2の時刻t23)。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したことで駆動油圧PcvのON解除ができると判定した場合(S202:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないと判定した場合(S202:Yes)、車速センサ170が検出した現在の車速vを読み出し、この車速vに基づいて目標変速比γを設定し(S203)、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する(S204、例えば図5−2の時刻t24−1、t24−2、t24−3)。
ここでECU140は、例えば、図6に示す変速比マップに基づいて、目標変速比γを求める。この変速比マップは、車速vと目標変速比γとの関係を記述したものである。この変速比マップでは、各目標変速比γは、車速vに対してダウンシフトによる減速加速度αが予め設定される許容減速加速度を超えないような変速比に設定されている。許容減速加速度は、例えば、車両10の安定性、制御性等を十分に確保できる値に設定すればよい。変速比マップは、ECU140の記憶部に格納されている。ECU140は、この変速比マップに基づいて、車速vから目標変速比γを求める。なお、本実施形態では、ECU140は、変速比マップを用いて車速vに応じた目標変速比γを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。ECU140は、例えば、変速比マップに相当する数式に基づいて車速vに応じた目標変速比γを求めてもよい。
次に、ECU140は、S203で設定された目標変速比γに基づいて変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S205)。
次に、ECU140は、実際の変速比がS203で設定された目標変速比γに収束したか否かを判定する(S206)。
ECU140は、実際の変速比がS203で設定された目標変速比γに収束していないと判定した場合(S206:No)、S205に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、実際の変速比がS203で設定された目標変速比γに収束したと判定した場合(S206:Yes)、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdの増圧を解除する(S207、例えば図5−2の時刻t25−1、t25−2、t25−3)。
次に、ECU140は、変速比が最減速比、すなわち、最大変速比γmaxになったか否かを判定する(S208)。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になっていないと判定した場合(S208:No)、S203に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になったと判定した場合(S208:Yes、例えば図5−2の時刻t26)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
なお、本実施形態のベルト式無段変速機222では、この間(時刻t21から時刻t26)、供給油圧Pinは、一定としている。また、変速比γは、時刻t24−1から時刻t25−1、時刻t24−2から時刻t25−2、時刻t24−3から時刻t25−3において段階的に増加しており、これに伴って、車速vは、時刻t24−1から時刻t25−1、時刻t24−2から時刻t25−2、時刻t24−3から時刻t25−3で減速度が大きくなって、段階的に減速している。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機222によれば、ベルト式無段変速機222は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御することから、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらずソレノイド弁136aが通電状態とならず駆動油圧Pcvを減圧できない場合であっても、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されることで、ベルト張力が増加しプライマリ油圧室54の作動油に作用するベルト反力が増加しプライマリ油圧Psが増圧するので、作動油供給排出弁110を開弁状態とし変速比を変更することができ、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機222によれば、ECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し車両10の速度に応じて段階的に変速比を変更する。したがって、ベルト式無段変速機222は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し車速vに応じて段階的に変速比を変更することから、フェール発生時に、急激な変速が生じることを防止することができ、信頼性を向上することができると共に、セカンダリ油圧Pdを相対的に高い油圧に保持した状態を継続的に維持しなくてもよいことから、ベルト80の寿命が短くなることを抑制することができ、この結果、耐久性を向上することができる。
(実施形態3)
図7−1は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャート、図7−2は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャートである。実施形態3に係るベルト式無段変速機は、実施形態1に係るベルト式無段変速機と略同様の構成であるが、ソレノイド弁のフェール時に供給油圧を挟圧力発生油圧室油圧と同等に設定する点で実施形態1に係るベルト式無段変速機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態に係るベルト式無段変速機322のECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し一方の挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54に供給される作動油の油圧である供給油圧Pinをプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等に設定する。ここで、供給油圧Pinは、上述したように、プライマリ油圧室54へ供給される作動油の供給圧力であり、作動油供給排出弁110の開弁状態おいては、供給排出経路における作動油供給排出弁110の弁体114よりも上流側(弁体114を挟んでプライマリ油圧室54側と反対側)の作動油である上流側作動油の油圧である。つまり、ECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御して供給油圧Pinをプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等になるまで増圧することで、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと供給油圧Pinとの圧力差を小さくする。
この結果、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと供給油圧Pinとの圧力差が小さくなるように供給油圧Pinが制御されることで、供給排出経路、ここでは第2油路102における作動油供給排出弁110の弁体114よりも上流側と下流側との圧力差が小さくなる。このため、このベルト式無段変速機322は、弁体114よりも上流側と下流側との圧力差が小さくなるように供給油圧Pinがプライマリ油圧Psと同等に設定されることで、例えば、ソレノイド弁136aのフェールが断続的に発生する場合、すなわち、ソレノイド弁136aをON制御した際にこのソレノイド弁136aが通電状態と非通電状態とを断続的に繰り返し作動油供給排出弁110の開閉動作が断続的に繰り返されるような場合に、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことを防止することができる。したがって、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことが確実に防止されることから、急減圧にともなって急変速が行われたりベルト80にすべりが発生したりすることを防止することができるので、信頼性、耐久性を向上することができる。さらに、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことが確実に防止されることから、車両10に不連続な減速挙動が現れることを防止することができ、操縦安定性が低下することを防止することができるので、この点でも、信頼性、安全性を向上することができる。
次に、図7−1のフローチャート及び図7−2のタイムチャートを参照してベルト式無段変速機322のソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御について説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU140は、作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御し、変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S300、例えば図7−2の時刻t31)。
次に、ECU140は、変速比が遷移していないか否か、すなわち、変速比が変更されていないか否かを判定する(S301、例えば図7−2の時刻t32)。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S301:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S301:Yes)、作動油供給排出弁110の開弁動作が失敗したと判定し、駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず、所定の大きさの一定圧の駆動油圧Pcvが継続して作用しソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定する(S302、例えば図7−2の時刻t33)。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したことで駆動油圧PcvのON解除ができると判定した場合(S302:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないと判定した場合(S302:Yes)、油圧制御装置130を制御しプライマリ油圧室54に供給される供給油圧Pinを増圧しプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等に設定する(S303、例えば図7−2の時刻t34)。ここで、ECU140は、例えば、内燃機関12が発生させるエンジントルク(出力トルク)Te、入力回転数センサ150が検出する入力回転数Nin、セカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pd、変速比γなどに基づいて、種々の公知の方法でプライマリ油圧室54内に閉じ込められたプライマリ油圧Psを推定演算すればよい。
次に、ECU140は、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する(S304、例えば図7−2の時刻t35)。
次に、ECU140は、変速比が遷移したか否かを判定する(S305、例えば図7−2の時刻t36)。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S305:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S305:Yes)、変速比が最減速比、すなわち、最大変速比γmaxになったか否かを判定する(S306)。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になっていないと判定した場合(S306:No)、S305に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になったと判定した場合(S306:Yes、例えば図7−2の時刻t37)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機322によれば、ベルト式無段変速機322は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御することから、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらずソレノイド弁136aが通電状態とならず駆動油圧Pcvを減圧できない場合であっても、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されることで、ベルト張力が増加しプライマリ油圧室54の作動油に作用するベルト反力が増加しプライマリ油圧Psが増圧するので、作動油供給排出弁110を開弁状態とし変速比を変更することができ、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機322によれば、ECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し一方の挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54に供給される作動油の油圧である供給油圧Pinをプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等に設定する。したがって、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、ECU140がプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと供給油圧Pinとの圧力差が小さくなるように供給油圧Pinを制御することで、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことを確実に防止することができるので、急減圧にともなって急変速が行われたりベルト80にすべりが発生したりすることを防止することができると共に、車両10に不連続な減速挙動が現れることを防止することができ、操縦安定性が低下することを防止することができる。この結果、ベルト式無段変速機322は、信頼性、耐久性、安全性を向上することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
以上の説明では、作動油供給排出弁110は、供給排出経路の一部をなす第2油路102に設けられるものとして説明したが、供給排出経路の一部をなす第1油路86に設けられていてもよい。つまり、作動油供給排出弁110は、プライマリシャフト51の内部の第1油路86に設けられていてもよい。この場合、例えば、アクチュエータ120も作動油供給排出弁110と同様にプライマリシャフト51の内部の第1油路86に設けるようにすればよい。つまり、作動油供給排出弁110とアクチュエータ120とからなる切換機構100をプライマリシャフト51の内部にプライマリシャフト51と同軸上に設けてもよい。
図8は、この発明の実施例2にかかるベルト式無段変速機を示す概念図である。同図において、上記した実施形態1のベルト式無段変速機22と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、この実施例2では、一例として、プライマリプーリ50側の構成について説明するが、同様の構成がセカンダリプーリ60側に適用されても良い(図示省略)。
上記のように、このベルト式無段変速機22では、プライマリプーリ50の作動油の油圧制御が行われることにより、ベルト80の挟圧力が調整されて変速比制御が行われる(図8参照)。具体的には、プライマリプーリ50が作動油を閉じ込めるためのプライマリ油圧室54を有し、油圧制御装置130(図3参照)がこのプライマリ油圧室54の作動油の油圧(プライマリ油圧Ps)を制御する。これにより、プライマリプーリ50の可動シーブ53が駆動制御され、プライマリ溝80aの溝幅が調整されてベルト80の挟圧力が変化する(流体閉じ込み式シーブ位置決め機構)。
また、油圧制御装置130からプライマリ油圧室54への作動油の油路(第二油路102)上に、作動油供給排出弁110が配置される。この作動油供給排出弁110は、弁体114および弁座112から成る逆止弁であり、その開閉動作により油圧制御装置130とプライマリ油圧室54との連通をON/OFFする。この作動油供給排出弁110の開閉動作は、切換機構100により行われる。切換機構100は、ピストン122およびスプリング126から成るアクチュエータ120を有し、ピストン122の押圧力(駆動油圧Pcv)とスプリング126の反発力Fspとにより作動油供給排出弁110の弁体114を変位させて作動油供給排出弁110を開閉動作させる。
このベルト式無段変速機22では、変速比の非遷移時にて、切換機構100の作動油供給排出弁110が閉弁状態にある(図2−2参照)。すると、作動油がプライマリ油圧室54に閉じ込められて、プライマリ油圧Psが一定となる。これにより、可動シーブ53が固定されて、変速比が一定となる。
一方、変速比の遷移時には、作動油供給排出弁110が常時開弁状態となる(図2−1参照)。具体的には、作動油供給排出弁110の開弁指示がONに設定されると、アクチュエータ120の駆動油圧PcvがOFFになり、弁体114が作動油のプライマリ油圧Psとスプリング126の反発力Fspとにより弁座112から押し離されて、作動油供給排出弁110が開弁する。このとき、油圧制御装置130が変速比に応じた供給油圧Pinの作動油を第二油路102に供給する。すると、この供給油圧Pinの作動油がプライマリ油圧室54に供給されて、プライマリ油圧Psが変化する。これにより、可動シーブ53が駆動されてベルト80の挟圧力が変化し、変速比が遷移する。
ここで、変速比の遷移時には、上記のように、作動油供給排出弁110が常時開弁状態に設定される。しかしながら、作動油供給排出弁110の弁体114を支持するスプリング126の経年劣化や、過大な流体力(想定範囲を超える作動油の流量、低油温時における作動油の高粘度などに起因する流体力)によって、作動油供給排出弁110の開弁状態が適正に保持されない場合が想定され得る。かかる場合には、変速比の遷移が実行されない或いは実行継続されないため、好ましくない。また、変速比が高速側にあるときに作動油供給排出弁がフェールして閉弁状態となると、ダウンシフトが実施できないため、車両の再発進あるいは再加速時にて必要な駆動力を確保できないおそれがある。
そこで、この実施例2のベルト式無段変速機22では、かかる課題を解決するために、以下の実施形態4〜実施形態6に示す構成が採用されている。
(実施形態4)
図9および図10は、本発明の実施形態4にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャート(図9)およびタイムチャート(図10)である。この実施形態4のベルト式無段変速機22では、変速比γの遷移指示(作動油供給排出弁110の開弁指示)がONであるときに、作動油供給排出弁110の開弁状態保持動作がフェールしているか否かの判定が行われる(作動油供給排出弁110の開弁状態保持動作のフェールの検出)。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが行われて、製品の信頼性が向上する。この制御は、例えば、以下のように行われる(図9および図10参照)。
ステップS400では、変速比γの遷移指示がONに設定される(t=t41)。変速比γの遷移指示は、ECU140が作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御することにより行われる(変速比変更制御)。このステップS400の後に、ステップS401に進む。
ステップS401では、実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移したか否かが判定される(t=t42)。この判定では、変速比γが遷移指示時(t=t41)から所定時間の経過後(t=t42)にて目標変速比γtrgに到達していないときに、作動油供給排出弁110の開弁操作が失敗したと推定されて、否定判定が行われる。なお、変速比γは、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160などの検出信号に基づいて算出される。このステップS401にて、肯定判定が行われた場合には、処理が終了され、否定判定が行われた場合には、ステップS402に進む。
ステップS402では、アクチュエータ120の駆動油圧PcvがOFFであるか否かが判定される(t=t43)。駆動油圧PcvのON/OFFは、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON/OFF状態により判定される。このステップS402にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS403に進み、否定判定が行われた場合には、ステップS404に進む。
ステップS403では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしていると判定される(t=t44)。すなわち、作動油供給排出弁110の開閉動作が正常であれば、変速比γの遷移指示がONとなると、アクチュエータ120の駆動油圧PcvがOFFに設定されて作動油供給排出弁110が開弁する。しかしながら、変速比γの遷移指示(作動油供給排出弁110の開弁指示)がONとなり、アクチュエータ120の駆動油圧PcvがOFFに設定されてから所定時間が経過したにも関わらず、実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移していない場合(ステップS400、ステップS401の否定判定およびステップS402の肯定判定)には、作動油供給排出弁110が何らかの原因により閉弁状態にあると考えられる。したがって、かかる場合には、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしていると判定されて、その旨のフラグがONに設定される(作動油供給排出弁110の開弁状態保持動作フェールの検出)。このステップS403の後に、処理が終了される。
ステップS404では、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがフェールしているか否かが判定される。ソレノイド弁136aのフェールは、ソレノイド弁136aの電流値あるいは抵抗値の監視、アクチュエータ120の駆動油圧Pcvの監視などにより行われる。このステップS404にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS100〜ステップS300のいずれかに進む(図4−1、図5−1および図7−1参照)。すなわち、変速比γの遷移指示がONであるにも関わらずアクチュエータ120の駆動油圧PcvがOFFとなっていない場合(ステップS400およびステップS402の否定判定)には、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがフェールしていると考えられる。例えば、ノーマルオープンソレノイドでは断線フェールが、ノーマルクローズソレノイドではショートフェールが発生していると考えられる。したがって、かかる場合には、ソレノイド弁136aのフェール発生時における変速比制御が行われる(実施形態1〜実施形態3参照)。これにより、変速比制御が適正に行われるので、製品の信頼性が向上する。一方、このステップS404にて、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
以上説明したように、この実施形態4のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁指示(変速比γの遷移指示)がONとなってから所定時間が経過しても実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移していないときに、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしていると判定される(ステップS400、ステップS401の否定判定およびステップS403)(図9参照)。かかる構成では、(1)プライマリプーリ50(セカンダリプーリ60)に流入する作動油の流体力に起因して作動油供給排出弁110の開弁状態を保持できないときに、例えば、変速比γの遷移動作を再開させる必要性について適切に判断できる。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが有効に行われて、製品の信頼性が向上する利点がある。また、(2)作動油供給排出弁110の動作不良に起因して作動油供給排出弁110の開弁状態を保持できないときに、作動油供給排出弁110のフェール検出が適正に行われる。これにより、例えば、エンジン回転数が異常な高回転数となる事態を未然に防止できるので、製品の信頼性が向上する利点がある。
(実施形態5)
図11および図12は、本発明の実施形態5にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャート(図11)およびタイムチャート(図12)である。これらの図において、上記した実施形態1のベルト式無段変速機22と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態5のベルト式無段変速機22では、上記した実施形態4にて、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしていると判定されたときに、供給油圧Pinの減圧が行われる。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが行われて、油圧制御装置130が高圧な作動油を供給する事態が防止される。例えば、この実施例では、以下のような変速比制御が行われている(図11および図12参照)。
ステップS500では、変速比γの遷移指示がONに設定される(t=t51)。変速比γの遷移指示は、ECU140が作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御することにより行われる(変速比変更制御)。このステップS500の後に、ステップS501に進む。
ステップS501では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしているか否かが判定される(t=t52)。この判定には、実施形態4の制御が用いられる(図9および図10参照)。このステップS501にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS502に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS502では、供給油圧Pinの減圧が行われる(t=t53)。供給油圧Pinの減圧方法には、例えば、(1)徐々に供給油圧Pinを減圧する方法、(2)減圧によるベルト滑りが起こらない範囲に設定された所定値αにて供給油圧Pinを減圧する方法などが採用され得る。このステップS502の後に、ステップS503に進む。
ステップS503では、変速比γの遷移が再開されたか否かが判定される(t=t54)。この判定では、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160の出力値に基づいて実変速比γが算出され、この実変速比γに基づいて変速比γの遷移の有無が推定される。このステップS503にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS504に進み、否定判定が行われた場合には、ステップS502に戻る。
ステップS504では、供給油圧Pinの供給が再開される(t=t55)。すなわち、供給油圧Pinの減圧(ステップS503)後に変速比の遷移が再開された場合には、作動油供給排出弁110が開弁状態にある(フェールによる閉弁状態が解除された)と推定される。したがって、作動油の供給油圧Pinを減圧前の油圧に復帰(昇圧)させることにより、変速比の遷移が適正に行われる。このステップS504の後に、ステップS505に進む。
ステップS505では、実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移したか否かの判定が行われる(t=t56)。このステップS505にて、肯定判定が行われた場合には、処理が終了され、否定判定が行われた場合には、ステップS501に戻る。
以上説明したように、この実施形態5のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしたときに、供給油圧Pinの減圧が行われる(ステップS501の肯定判定およびステップS502)(図11参照)。かかる構成では、作動油供給排出弁110がフェールして変速比の遷移が不能なときに、油圧制御装置が高圧な作動油を供給する事態が防止される。これにより、例えば、エンジン回転数が異常な高回転数となる事態を未然に防止できるので、製品の信頼性が向上する利点がある。また、かかる構成では、作動油供給排出弁110がフェールして変速比の遷移が行われないときに、作動油の供給油圧Pinを減圧させることにより、変速比の遷移を再開させ得る。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが有効に行われて、製品の信頼性が向上する利点がある。
(実施形態6)
図13および図14は、本発明の実施形態6にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャート(図13)およびタイムチャート(図14)である。これらの図において、上記した実施形態1のベルト式無段変速機22と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態6のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作のフェールが所定時間内に発生したとき或いは発生する可能性があるときに、
変速比γの変速速度の上限値が設定されて、変速比γの遷移が行われる。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが行われて、変速比の遷移が不能となる事態が回避される。例えば、この実施例では、以下のような変速比制御が行われている(図13および図14参照)。
ステップS600では、変速比γの遷移指示がONに設定されているか否かが判定される(t=t61)。すなわち、作動油供給排出弁110の開弁指示がONに設定されているか否かが判定される。このステップS600にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS601に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS601では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作のフェールが所定時間内に発生する可能性があるか否かが判定される(t=t62)。この判定では、例えば、(1)過去の所定時間内にフェールが発生したとき(フェールフラグがあるとき)、(2)コールドフラグがあるときなどに、肯定判定が行われる。このステップS601にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS602に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS602では、変速比γの変速速度Δ(dγ/dt)の上限値αが設定される(t=t63)。この上限値αは、変速速度の許容値であり、以下の数式(3)により定義される。なお、この数式(3)では、Toilが作動油の油温であり、Fspがスプリング126の反発力であり、Asが可動シーブ53の受圧面積である。このステップS602の後に、ステップS603に進む。
α=f(Toil,Fsp,As) (3)
ステップS603では、変速比γの遷移指示(ステップS600)に基づいて、変速比γの遷移が実行される(t=t64)。このステップS603の後に、ステップS604に進む。
ステップS604では、実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移したか否かの判定が行われる(t=t65)。このステップS604にて、肯定判定が行われた場合には、処理が終了され、否定判定が行われた場合には、ステップS603に戻る。
以上説明したように、この実施形態6のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときには、変速比γの変速速度Δ(dγ/dt)の上限値αが設定されて、変速比γの遷移が行われる(ステップS602およびステップS603)(図13参照)。かかる構成では、作動油供給排出弁110のフェール時にて、変速比の遷移が行なわれない事態が回避される。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが有効に行われて、製品の信頼性が向上する利点がある。また、かかる構成では、作動油供給排出弁110のフェールにより変速比の遷移が実行されないときに、エンジンストールの発生が防止される。これにより、製品の信頼性が向上する利点がある。
(実施形態7)
図15〜図17は、本発明の実施形態7にかかるベルト式無段変速機の作用を示す説明図(図15)、フローチャート(図16)およびタイムチャート(図17)である。これらの図において、上記した実施形態1のベルト式無段変速機22と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態7のベルト式無段変速機22では、供給油圧Pinとプライマリ油圧Psとのアンバランスにより作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしていると推定されるときに、供給油圧Pinが減圧される。これにより、変速比の遷移の再開を可能とする。例えば、この実施例では、以下のような変速比制御が行われている(図15〜図17参照)。
ステップS700では、変速比γの遷移指示がONに設定される(t=t71)。これにより、作動油供給排出弁110の開弁指示がONになり、供給油圧Pinの作動油が油圧制御装置130から作動油供給排出弁110を介して可動シーブ53(63)のプライマリ油圧室54に供給され始める。このステップS700の後に、ステップS701に進む。
ステップS701では、作動油供給排出弁110の開弁操作が失敗したか否かが判定される(t=t72)。この判定では、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160の検出信号に基づいて実変速比γが算出され、この実変速比γが遷移指示時(t=t71)から所定時間の経過後(t=t72)にて目標変速比γtrgに到達していないときに、肯定判定が行われる。例えば、変速比γの遷移指示(ステップS700)により作動油供給排出弁110の開弁指示がONになったにも関わらず、作動油供給排出弁110の開弁動作が遅れて、変速比γの遷移が開始されない場合などが想定される。このステップS701にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS702に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS702では、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがフェールしているか否かが判定される(t=t73)。ソレノイド弁136aのフェールは、ソレノイド弁136aの電流値あるいは抵抗値の監視、アクチュエータ120の駆動油圧Pcvの監視などにより行われる。このステップS702にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS100〜ステップS300のいずれかに進む(図4−1、図5−1および図7−1参照)。すなわち、変速比γの遷移指示がONであるにも関わらず作動油供給排出弁110が開弁状態にない場合(ステップS700およびステップS701の肯定判定)には、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがフェールしていると考えられる。したがって、かかる場合には、ソレノイド弁136aのフェール発生時における変速比制御が行われる(実施形態1〜実施形態3参照)。これにより、変速比制御が適正に行われるので、製品の信頼性が向上する。一方、このステップS702にて、否定判定が行われた場合には、ステップS703に進む。
ステップS703では、油圧制御装置130の供給油圧Pinと可動シーブ53(63)のプライマリ油圧PsとがPin>Psの関係を有するか否かが判定される(t=t74)。例えば、この実施例では、作動油の油圧を計測する一対の油圧センサ181、182が、第二油路102内であって作動油供給排出弁110よりも油圧制御装置130側およびプライマリ油圧室54側にそれぞれ配置される(図15参照)。そして、油圧制御装置130側の油圧センサ181の出力信号が供給油圧Pinとして取得され、プライマリ油圧室54側の油圧センサ182の出力信号がプライマリ油圧Psとして取得される。そして、これらの出力信号に基づいてECU140が供給油圧Pinとプライマリ油圧Psとの関係(Pin>Ps)を判定する。このステップS703にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS704に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS704では、供給油圧Pinの減圧が行われる(t=t75)。すなわち、供給油圧Pinとプライマリ油圧PsとがPin>Psの関係を有する場合(ステップS703の肯定判定)には、油圧Pin、Psのアンバランスに起因して作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしていると考えられる。そこで、かかる場合には、油圧制御装置130が作動油の供給油圧Pinを減圧させる。なお、供給油圧Pinの減圧方法には、例えば、(1)徐々に供給油圧Pinを減圧する方法、(2)減圧によるベルト滑りが起こらない範囲に設定された所定値αにて供給油圧Pinを減圧する方法などが採用され得る。このステップS704の後に、ステップS705に進む。
ステップS705では、変速比γの遷移が再開されたか否かが判定される(t=t76)。この判定では、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160の出力値に基づいて実変速比γが算出され、この実変速比γに基づいて変速比γの遷移の有無が推定される。このステップS705にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS706に進み、否定判定が行われた場合には、ステップS704に戻る。
ステップS706では、供給油圧Pinの供給が再開される(t=t77)。すなわち、供給油圧Pinの減圧(ステップS704)後に変速比の遷移が再開された場合には、作動油供給排出弁110が開弁状態にある(フェールによる閉弁状態が解除された)と推定される。したがって、作動油の供給油圧Pinを減圧前の油圧に復帰(昇圧)させることにより、変速比の遷移が適正に行われる。このステップS706の後に、ステップS707に進む。
ステップS707では、実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移したか否かの判定が行われる。そして、実変速比γが目標変速比γtrgに遷移(γ=γtrg)した後に、処理が終了される。
以上説明したように、この実施形態7のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールしており、且つ、油圧制御装置130の供給油圧Pinと可動シーブ53のプライマリ油圧PsとがPin>Psの関係を有するときに、供給油圧Pinの減圧が行われる(ステップS701の肯定判定、ステップS703の肯定判定およびステップS704)(図16参照)。かかる構成では、供給油圧Pinとプライマリ油圧Psとのアンバランスにより作動油供給排出弁110がフェールしたときに、供給油圧Pinを減圧させることにより、変速比の遷移を再開させ得る。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが有効に行われて、製品の信頼性が向上する利点がある。また、かかる構成では、作動油供給排出弁110がフェールして変速比の遷移が不能なときに、油圧制御装置が高圧な作動油を供給する事態が防止される。これにより、例えば、エンジン回転数が異常な高回転数となる事態やエンジンストールが発生する事態を未然に防止できるので、製品の信頼性が向上する利点がある。
なお、この実施形態7のベルト式無段変速機22では、一対の油圧センサ181、182が第二油路102内に配置されて、油圧制御装置130の供給油圧Pinと可動シーブ53のプライマリ油圧Psとが取得されている(図15参照)。かかる構成では、供給油圧Pinおよびプライマリ油圧Psが各油圧センサ181、182による実測値として取得されるので、供給油圧Pinとプライマリ油圧Psとの比較判定(ステップS703)の精度が向上する点で好ましい。
しかし、これに限らず、供給油圧Pinを計測する油圧センサ181のみが設置され、プライマリ油圧Psを計測する油圧センサ182が省略されても良い(図18参照)。そして、供給油圧Pinが油圧センサ181による実測値として取得され、プライマリ油圧Psが他のセンサの出力信号に基づいて算出された推定値として取得される。かかる構成では、プライマリ油圧Psを計測する油圧センサ182を省略できるので、製品の低コスト化が可能となる利点がある。
なお、プライマリ油圧Psの推定値は、例えば、以下の数式(4)が用いられて算出される。なお、数式(4)では、Teがエンジントルク、Ninが入力回転数、Pdがセカンダリ油圧、γが変速比である。
Ps=f(Te,Nin,Pd,γ) (4)
(実施形態8)
図19および図20は、本発明の実施形態8にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャート(図19)およびタイムチャート(図20)である。これらの図において、上記した実施形態1のベルト式無段変速機22と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態8のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときには、供給油圧Pinの供給開始に先立って、作動油供給排出弁110の開弁動作が開始される。そして、変速比γの遷移の開始が確認された後に、供給油圧Pinの供給が開始される。これにより、作動油供給排出弁110のフェール時におけるフェールセーフが実現される。例えば、この実施例では、以下のような変速比制御が行われている(図19および図20参照)。
ステップS800では、変速比γの遷移指示がONであるか否かが判定される(t=t81)。すなわち、作動油供給排出弁110の開弁指示がONであるか否かが判定される。このステップS800にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS801に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS801では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作のフェールが所定時間内に発生する可能性があるか否かが判定される(t=t82)。このステップS801では、例えば、(1)過去の所定時間内にフェールが発生したとき(フェールフラグがあるとき)、(2)コールドフラグがあるときなどに、肯定判定が行われる。このステップS801にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS802に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS802では、アクチュエータ120の駆動油圧PcvがOFF(解除)に設定される(t=t83)。これにより、作動油供給排出弁110の開弁動作が開始される。このステップS802の後に、ステップS803に進む。
ステップS803では、変速比γの遷移が開始されたか否かが判定される(t=t84)。この判定では、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160の出力値に基づいて実変速比γが算出され、この実変速比γに基づいて変速比γの遷移開始の有無が判定される。このステップS803にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS804に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS804では、供給油圧Pinの供給が開始される(t=t85)。なお、この実施例では、供給油圧PinがエンジントルクTe、入力回転数Nin、セカンダリ油圧Pdおよび変速比γに基づいて算出された推定値として取得される。また、この供給油圧Pinの推定値の算出には、数式(5)が用いられる。このステップS804の後に、ステップS805に進む。
Pin=f(Te,Nin,Pd,γ) (5)
ステップS805では、実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移したか否かの判定が行われる(t=t86)。そして、実変速比γが目標変速比γtrgに遷移(γ=γtrg)した後に、処理が終了される。
以上説明したように、この実施形態8のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁指示がONであり且つ作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときには、供給油圧Pinの供給開始に先立って、作動油供給排出弁110の開弁動作が開始される(ステップS801およびステップS802)(図19参照)。そして、変速比γの遷移の開始が確認された後に、供給油圧Pinの供給が開始される(ステップS803およびステップS804)。かかる構成では、作動油供給排出弁110のフェール時にて、変速比の遷移を実行できなくなる事態が回避される。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが有効に行われて、製品の信頼性が向上する利点がある。また、かかる構成では、作動油供給排出弁110のフェールにより変速比の遷移が実行されないときに、エンジンストールの発生が防止される。これにより、製品の信頼性が向上する利点がある。
(実施形態9)
図21および図22は、本発明の実施形態9にかかるベルト式無段変速機の作用を示すフローチャート(図21)およびタイムチャート(図22)である。これらの図において、上記した実施形態1のベルト式無段変速機22と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態9のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110がフェールする可能性が高いときに、作動油の供給油圧Pinが可動シーブのプライマリ油圧Psよりも低く設定される。これにより、変速比の遷移が実行可能となり、作動油供給排出弁110のフェールセーフが有効に行われる。例えば、この実施例では、以下のような変速比制御が行われている(図21および図22参照)。
ステップS900では、変速比γの遷移指示がONであるか否かが判定される(t=t91)。すなわち、作動油供給排出弁110の開弁指示がONであるか否かが判定される。このステップS900にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS901に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS901では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作のフェールが所定時間内に発生する可能性があるか否かが判定される(t=t92)。このステップS901では、例えば、(1)過去の所定時間内にフェールが発生したとき(フェールフラグがあるとき)、(2)コールドフラグがあるときなどに、肯定判定が行われる。このステップS901にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS902に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップS902では、可動シーブ53のプライマリ油圧Psが取得される(t=t93)。プライマリ油圧Psは、油圧センサ182の出力信号に基づいて取得されても良いし(図15参照)、エンジントルクTe、入力回転数Nin、セカンダリ油圧Pdおよび変速比γに基づいて算出された推定値として取得されても良い(数式(4)参照)。
ステップS903では、供給油圧PinがステップS902にて取得されたプライマリ油圧Psに対して所定の差圧α=Ps−Pinを有する低い油圧に設定される(t=t94)。この供給油圧Pin(差圧α)は、作動油供給排出弁110の開弁状態にて、差圧αによる供給油圧Pinの不足に伴って発生する変速比γの遷移量、可動シーブ53の移動量、エンジン回転数の変動量などに基づいて算出される。このステップS903の後に、ステップS904に進む。
ステップS904では、アクチュエータ120の駆動油圧PcvがOFFに設定(解除)される(t=t95)。これにより、作動油供給排出弁110の開弁動作が開始される。このステップS904の後に、ステップS905に進む。
ステップS905では、変速比γの遷移が開始されたか否かが判定される(t=t96)。この判定では、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160の出力値に基づいて実変速比γが算出され、この実変速比γに基づいて変速比γの遷移開始の有無が判定される。このステップS905にて、肯定判定が行われた場合には、ステップS906に進み、否定判定が行われた場合には、実施形態7のステップS700に進む(図16参照)。
ステップS906では、実変速比γが目標変速比γtrgまで遷移したか否かの判定が行われる(t=t97)。そして、実変速比γが目標変速比γtrgに遷移(γ=γtrg)した後に、処理が終了される。
以上説明したように、この実施形態9のベルト式無段変速機22では、作動油供給排出弁110の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときに、供給油圧Pinが可動シーブ53のプライマリ油圧Psに対して所定の差圧α=Ps−Pinを有する油圧に設定される(ステップS901の肯定判定およびステップS903)。かかる構成では、作動油供給排出弁110がフェールする可能性が高いときに、作動油の供給油圧Pinが可動シーブのプライマリ油圧Psよりも低く設定されることにより、変速比の遷移が実行可能となる。これにより、作動油供給排出弁110のフェールセーフが有効に行われて、製品の信頼性が向上する利点がある。また、かかる構成では、作動油供給排出弁110がフェールして変速比の遷移が不能なときに、油圧制御装置が高圧な作動油を供給する事態が防止される。これにより、例えば、エンジン回転数が異常な高回転数となる事態を未然に防止できるので、製品の信頼性が向上する利点がある。
以上のように、この発明にかかるベルト式無段変速機は、作動油供給排出弁のフェールセーフを有効に行うことにより製品の信頼性を向上させ得る点で有用である。
10 車両、12 内燃機関、14 クランクシャフト、16 トルクコンバータ、18 インプットシャフト、20 前後進切換機構、22 ベルト式無段変速機、24 減速装置、26 ファイナルドライブピニオン、28 差動装置、30 リングギヤ、32 ドライブシャフト、34 駆動輪、50 プライマリプーリ、51 プライマリシャフト、52 プライマリ固定シーブ、53 プライマリ可動シーブ、54 プライマリ油圧室、55 スプライン、56 プライマリ隔壁、60 セカンダリプーリ、61 セカンダリシャフト、62 セカンダリ固定シーブ、63 セカンダリ可動シーブ、64 セカンダリ油圧室、80 ベルト、80b セカンダリ溝、80a プライマリ溝、80a 溝、81〜84 軸受、86 油路、88 軸方向油路、90 径方向油路、100 切換機構、102 第二油路、110 作動油供給排出弁、112 弁座、114 弁体、120 アクチュエータ、122 ピストン、124 駆動油圧室、126 スプリング、130 作動油供給排出弁110 油圧制御装置、131 オイルパン、132 オイルポンプ、133 ライン圧制御装置、134 一定圧制御装置、135 プライマリ油圧室用制御装置、136 駆動油圧室用制御装置、137 セカンダリ油圧室用制御装置、150 入力回転数センサ、160 出力回転数センサ、170 車速センサ、181、182 油圧センサ、222 ベルト式無段変速機、322 ベルト式無段変速機、R1〜R9 油路、RL 回転軸線

Claims (3)

  1. 作動油により駆動されてベルトの挟圧力を変化させる可動シーブと、作動油の油圧を制御する油圧制御装置と、前記油圧制御装置から前記可動シーブへの作動油の油路上に配置されて作動油の流通を規制する作動油供給排出弁とを備えるベルト式無段変速機であって、
    変速比の遷移時にて、前記作動油供給排出弁が開弁すると共に前記油圧制御装置が所定の供給油圧Pinの作動油を前記可動シーブに供給することにより、前記可動シーブが駆動されて前記ベルトの挟圧力が制御され、且つ、前記作動油供給排出弁の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときに、変速比の変速速度の上限値が設定されることを特徴とするベルト式無段変速機。
  2. 前記作動油供給排出弁の開弁指示がONであり且つ前記作動油供給排出弁の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときに、前記作動油供給排出弁の開弁動作が開始されると共に変速比の遷移の開始が確認され、その後に、供給油圧Pinの供給が開始される請求項1に記載のベルト式無段変速機。
  3. 前記作動油供給排出弁の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときに、供給油圧Pinが前記可動シーブのプライマリ油圧Psに対して所定の差圧α=Ps−Pinを有する油圧に設定される請求項1または2に記載のベルト式無段変速機。
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