JP5429242B2 - 面発光型半導体レーザ、面発光型半導体レーザアレイ、画像形成装置、光ピックアップ、光送信モジュール、光送受信モジュール及び光通信システム - Google Patents

面発光型半導体レーザ、面発光型半導体レーザアレイ、画像形成装置、光ピックアップ、光送信モジュール、光送受信モジュール及び光通信システム Download PDF

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Description

本発明は、面発光型半導体レーザ、面発光型半導体レーザアレイ、画像形成装置、光ピックアップ、光送信モジュール、光送受信モジュール及び光通信システムに関する。
面発光型半導体レーザ(VCSEL)は、基板に対して垂直方向に光を出射する半導体レーザであり、端面発光型半導体レーザに比べて低コストで高性能が得られることから、光インタコネクションなどの光通信の光源、光ピックアップ用の光源、レーザプリンタ等の画像形成装置の光源など民生用途で用いられている。
このような面発光型半導体レーザには、活性層の利得が大きく低閾値・高出力であって、信頼性に優れ、偏光方向が制御された面発光型半導体レーザが必要となる。
ここに、850nm帯,980nm帯は活性層へのキャリア閉じ込めが良好である。具体的に、850nm帯では、量子井戸活性層にはGaAsが用いられ、障壁層やスペーサ層(クラッド層)にはAlGaAsが用いられている。さらに、高性能なAlGaAs系反射鏡(DBR)と、Al酸化膜を利用した電流狭窄構造を採用できるので、実用レベルの性能を実現している。偏光方向制御については、光出射方向から見た活性層の外周形状に異方性を持たせる方法など、多数が提案されている。中でも、非特許文献1に示されるように(311)B基板、つまり(100)から(111)B面方向に25°傾斜(off)した基板を用いることで、傾斜した方向の光学的利得が大きくなり、偏光方向制御が実現できているため、この方法が有力視されている。(311)A基板も同様な効果がある。しかし、大きく傾斜した(311)B基板上への結晶成長も(100)基板上への結晶成長に比べて難しくなるが、(311)A基板上への結晶成長はさらに困難であるといった欠点がある。ただし、何れの場合も、基板が大きく傾斜しているので基板の価格が2倍以上することや、へき開しにくくて扱いにくいなどのデメリットがある。
一方、850nmよりも短波長帯では、量子井戸活性層にAlを添加してバンドギャップを大きくして実現している。780nm帯では、Al組成12%程度が添加されている。しかし、障壁層やスペーサ層とのバンド不連続が小さくなり活性層へのキャリア閉じ込めが弱くなってしまうために、850nm帯に比べて、特に温度特性において良好な特性を得るのが困難であるといった問題点がある。また、活性層に活性なAlが添加されているので成長中や加工中等に酸素が取り込まれてしまい、非発光再結合センタが形成されて、発光効率や信頼性の低下を招いてしまう。
850nmよりも短波長帯の面発光型半導体レーザで非発光再結合センタの形成を抑える目的で、Alフリー活性領域(量子井戸活性層、及びそれに隣接する層)を採用する780nm帯面発光型半導体レーザの提案(特許文献1参照)がある。具体的には、量子井戸活性層には、引っ張り歪を有するGaAsPが用いられ、障壁層には、圧縮歪を有するGaInPが用いられ、スペーサ層(クラッド層と、第1及び第3量子井戸活性層との間の層)には、格子整合GaInPが用いられ、クラッド層には、AlGaInPが用いられている。これによれば、活性領域がAlフリーなので信頼性が改善される。
さらに、非特許文献2によれば、このような活性領域Alフリーによる効果に加えて、活性層の利得を大きくするために、量子井戸活性層に圧縮歪を有するGaInPAsを用い、障壁層に格子整合又は引っ張り歪を有するGaInPを用い、スペーサ層(クラッド層と、第1及び第3量子井戸活性層との間の層)に格子整合AlGaInPを用い、クラッド層にAlGaInP(スペーサ層よりAl組成大)を用いた780nm帯の面発光型半導体レーザが提案されている。この面発光型半導体レーザは、特許文献1の構造に比べて、障壁層が格子整合であり、圧縮歪組成よりもバンドギャップが大きいので、キャリア閉じ込めが良好になっている。
また、偏光方向制御について、特許文献2には、基板の面方位が(100)から(111)A面方向または(111)B面方向に15°乃至40°の範囲内の角度(傾斜角)に傾斜した基板を用い、光学利得異方性を利用し、更に圧縮歪を有するInAlGaAs,InGaAsPからなる多重量子井戸活性層を採用することで、傾斜した方向の光学的利得を大きくして、偏光方向の制御をすることが示されている。
また、特許文献3には、メサ形状を円形,楕円形または長円形として、長軸の方向を(100)から(111)A面方向または(111)B面方向とする方法が示されている。この場合、基板の面方位は(100)から[110]方向に2°off(−5°〜+5°含む)のものであり、A面,B面方向へ傾斜した基板ではない。
しかしながら、非特許文献2に記載されているように、上下の反射鏡で挟まれた共振器領域を形成する材料として、(Al)GaInP系材料を用いた場合、共振器領域とAlGaAs系材料とで構成された上部反射鏡との界面ではAlGaAs層へのInのキャリーオーバーなど、Inの分離(segregation)の影響が生じ、閾値電流の大幅増加が生じてしまう不都合がある。
また、4元混晶であるAlGaInPは熱抵抗が大きいという課題がある。また、(Al)GaInP系材料のp型ドーパントであるZn(亜鉛)は拡散し易い課題がある。
また、従来では、活性層の利得が大きく低しきい値,高出力であって、信頼性に優れ、偏光方向が制御された850nmよりも波長の短い面発光型半導体レーザは実現されていない。
すなわち、特許文献1では、活性領域がAlフリーなので信頼性が改善されるが、偏光制御方法が示されていない。また、非特許文献2では、キャリア閉じ込めが良好な構造であるが、偏光制御方法が示されていない。また、特許文献2では、偏光方向の制御が可能となるが、信頼性や、材料の特質にあった構成について、何ら考慮されていない。また、特許文献3では、偏光方向を制御できるが、850nmよりも波長の短い面発光型半導体レーザにおいて、高利得,長寿命化について、何ら考慮されていない。
本発明の目的は、GaAs基板上にAl、In、Pを主成分として含む半導体層が少なくとも1層設けられている面発光型半導体レーザにおいて、Inの分離の影響による閾値電流増加を抑制できる面発光型半導体レーザを提供することである。
さらなる目的は、GaAs基板上にAl、In、Pを主成分として含む半導体層が少なくとも1層設けられている面発光型半導体レーザにおいて、ドーピングプロファイルの制御が容易で低しきい値、高出力である面発光型半導体レーザ、放熱特性が優れ高出力である面発光型半導体レーザを提供することである。
また、850nmより波長の短い面発光型半導体レーザに関して、活性層の利得が大きく低閾値・高出力である面発光型半導体レーザ、信頼性に優れている面発光型半導体レーザ、偏光方向が制御されている面発光型半導体レーザを提供することである。
そして更には、上記面発光型半導体レーザを用いた、面発光型半導体レーザアレイおよび画像形成装置および光ピックアップおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、GaAs基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の量子井戸活性層と障壁層とを有する活性層を含んだ共振器領域と、その上部及び下部に設けられた上部反射鏡及び下部反射鏡とを有する共振器構造を有する面発光型半導体レーザにおいて、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、
該半導体分布ブラッグ反射鏡の少なくとも一部は、AlGa1−xAs(0<x≦1)による低屈折率層とAlGa1−yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層とからなり、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡を構成する前記低屈折率層のうちで少なくとも前記活性層に最も近い低屈折率層は、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなり、
前記(Al Ga 1−a In 1−b P(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層と前記Al Ga 1−y As(0≦y<x≦1)による高屈折率層との間に、前記(AlaGa 1−a In 1−b P(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層よりもAl組成の小さい(Al a1 Ga 1−a1 b1 In 1−b1 P(0≦a1<a≦1、0≦b1≦1)による中間層が設けられており、
前記共振器領域と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡の活性層に最も近い低屈折率層との界面を電界強度分布の腹の位置としたことを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の面発光型半導体レーザにおいて、下部反射鏡は、基板側から順番に、低屈折率層がAlAsからなる第1下部反射鏡と、低屈折率層がAlx1Ga1-x1As(0<x1<1)からなる第2下部反射鏡と、少なくとも1層からなる(AlGa1-aIn1-bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層とから構成されていることを特徴としている。
また、請求項記載の発明は、請求項1または2に記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記活性層と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡との間には、スペーサ層が設けられており、該スペーサ層の一部は、前記AlGaInP低屈折率層よりもバンドギャップが小さい(AlGa1−aIn1−bP(0≦a≦1、0≦b≦1)からなり、
前記量子井戸活性層は、GaIn1−cAs1−d(0≦c≦1、0≦d≦1)からなり、
前記障壁層は、GaIn1−eAs1−f(0≦e≦1、0≦f≦1)からなることを特徴としている。
また、請求項記載の発明は、請求項記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記量子井戸活性層は、圧縮歪を有することを特徴としている。
また、請求項記載の発明は、請求項記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記障壁層は、引っ張り歪を有することを特徴としている。
また、請求項記載の発明は、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記半導体分布ブラッグ反射鏡のAlGa1−xAs(0<x≦1)による低屈折率層とAlGa1−yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層とには、p型ドーパントとしてC(炭素)が添加され、前記(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層には、p型ドーパントとしてMg(マグネシウム)が添加されていることを特徴としている。
また、請求項記載の発明は、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層は、AlInPとGaInPとからなる短周期超格子構造により構成された半導体層であることを特徴としている。
また、請求項記載の発明は、請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記共振器構造による発振波長がおよそ680nmより長波長であることを特徴としている。
また、請求項記載の発明は、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、被成長基板の面方位は、(111)A面方向に5°から20°の範囲内で傾斜した(100)面であることを特徴としている。
また、請求項10記載の発明は、請求項記載の面発光型半導体レーザにおいて、光出射方向から見た活性層の外周形状は、(111)A面方向に長い形状となる形状異方性を有していることを特徴としている。
また、請求項11記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザが同一基板上に複数個配列させていることを特徴とする面発光型半導体レーザアレイである。
また、請求項12記載の発明は、請求項11記載の面発光型半導体レーザレイを書き込み光源として備えることを特徴とする画像形成装置である。
また、請求項13記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備えることを特徴とする光ピックアップである。
また、請求項14記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備えることを特徴とする光送信モジュールである。
また、請求項15記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備える光送受信モジュールである。
また、請求項16記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備えることを特徴とする光通信システムである。
請求項1乃至請求項10記載の発明によれば、GaAs基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の量子井戸活性層と障壁層とを有する活性層を含んだ共振器領域と、その上部及び下部に設けられた上部反射鏡及び下部反射鏡とを有する共振器構造を有する面発光型半導体レーザにおいて、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、
該半導体分布ブラッグ反射鏡の少なくとも一部は、AlGa1−xAs(0<x≦1)による低屈折率層とAlGa1−yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層とからなり、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡を構成する前記低屈折率層のうちで少なくとも前記活性層に最も近い低屈折率層は、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなり、
前記共振器領域と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡の活性層に最も近い低屈折率層との界面を電界強度分布の腹の位置とすることによって、Al,In,Pを主成分として含む半導体層の上にAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層を結晶成長したときに、Inの分離がある程度生じていても界面における光学的吸収の影響を大幅に低減させることができ、よって、閾値増加への悪影響を大幅に抑えることが容易に実現できる。
特に、請求項2記載の発明によれば、下部反射鏡は、低屈折率層に熱抵抗の小さいAlAsを含んでいるので、活性層で発生する熱の放熱性が改善し、駆動時の温度上昇が抑制され、温度特性が良好で高出力なVCSELが得られる。
また、請求項記載の発明によれば、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)スペーサ層を用いることで、スペーサ層をAlGaAs系で形成した場合に比べて、スペーサ層と量子井戸活性層とのバンドギャップ差を極めて大きく取ることができることにより、低閾値化するとともに高効率化(高出力化)することができる。また、量子井戸活性層はGaIn1−cAs1−d(0≦c≦1、0≦d≦1)、障壁層はGaIn1−eAs1−f(0≦e≦1、0≦f≦1)であり、Alを含んでいない材料から活性層が構成されており、Alフリー活性領域(量子井戸活性層、及びそれに隣接する層)としているので、酸素の取り込みを低減でき、非発光再結合センタの形成を抑制して、長寿命の面発光型半導体レーザを実現することができる。即ち、活性層の利得が大きく低閾値・高出力であって、信頼性に優れた850nmより波長の短い面発光型半導体レーザを容易に実現することができる。
また、請求項記載の発明によれば、量子井戸活性層を圧縮歪組成としており、歪の効果により低閾値化するとともに高効率化(高出力化)することができ、さらには、キャリア閉じ込めの向上と歪量子井戸活性層採用との相乗効果による高利得化によって低閾値化することで、光取り出し側DBRの反射率低減が可能となり、さらに高出力化を実現できる。
また、請求項記載の発明によれば、量子井戸活性層の歪を補償することで、より大きな歪の量子井戸活性層を採用できるなど、設計の幅が広がる。更に、GaInPAs系材料において、障壁層となる半導体材料は格子定数が小さい材料の方が大きなバンドギャップを取れるので、量子井戸活性層とのバンド不連続を大きくすることができ、利得が大きくなり、低閾値動作,高出力動作が可能になる。
また、請求項記載の発明によれば、Al,In,Pを主成分として含む半導体層にはp型ドーパントとしてMg(マグネシウム)が添加され、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層にはp型ドーパントとしてC(炭素)が添加されるので、ドーパントの拡散やメモリー効果を低減できることで制御性良くドーピングでき、設計に近いドーピングプロファイルが得られるとともに活性層の結晶性低下が抑えられ、低しきい値,高出力動作を容易に実現できる。
また、請求項記載の発明によれば、AlGaInP混晶を熱抵抗の小さいAlInPとGaInPとで擬似的に構成した構成しているので、放熱が改善され、高出力動作を容易に実現できる。
また、請求項記載の発明によれば、AlGaInP系スペーサ層を用いることで、組成波長が680nmよりも長波長であれば、Alフリー活性層(量子井戸活性層と障壁層)を用いても、AlGaAs系活性層による780nm面発光型半導体レーザの場合と同等以上のキャリア閉じ込めが可能となる上に、歪量子井戸活性層の効果も加わることから、同等以上の特性を得ることができる。
また、請求項記載の発明によれば、基板の面方位を考慮し、面方位が(111)A面方向に5°から20°の範囲内で傾斜した(100)GaAs基板を用いるようにしたので、自然超格子の形成によるバンドギャップの低下や、ヒロック(丘状欠陥)発生による表面性の悪化や非発光再結合センタの発生による半導体レーザなどのデバイス特性への悪影響を低減させることができる。さらには、異方性基板であり偏光制御に効果がある。即ち、現在、最有力視されている(311)B基板を用いた場合の効果を利用することができず、傾斜基板利用による光学利得異方性は小さくなるが、この低下分を量子井戸活性層に圧縮歪を与えることによる光学利得異方性の増大により補償することで偏光方向の制御性を向上させることができる。
また、請求項10記載の発明によれば、さらに、面発光型半導体レーザの光出射方向から見た活性層の外周形状に異方性を持たせ、(111)A面方向に長い形状としたので、基板傾斜方向((111)A面方向)の光学的利得増大の効果を加えることで、偏光方向の制御性をさらに改善することができる。
また、請求項11記載の発明によれば、閾値上昇が抑えられた、高出力動作可能な面発光型半導体レーザを同一基板上に多数集積することで、例えば、書き込み光学系の光源に応用した場合、同時にマルチビームでの書き込みが容易となり、書き込み速度が格段に向上し、書き込みドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷できる。また、同じ書き込みドット密度の場合であれば印刷速度を速くすることができる。また、光通信に応用した場合、同時に多数ビームによるデータ伝送が可能となるので高速通信ができる。さらに、面発光型半導体レーザは低消費電力で動作するので、特に機器の中に組み込んで利用した場合、温度上昇を低減させることもできる。
また、請求項12記載の発明によれば、光源を、閾値上昇が抑えられてしかも高出力化できることから、従来の面発光型半導体レーザレイを用いたレーザプリンタ等の画像形成装置に比べて高速印刷を可能にすることができる。若しくは、従来と同速度の場合であればアレイ数の低減が可能となり、面発光型半導体レーザレイチップの製造歩留まりが大きく向上するとともに、画像形成装置の低コスト化を図ることができる。さらに、Alフリー活性層により、850nm帯面発光型半導体レーザのような通信用面発光型半導体レーザと同等の寿命が達成可能となることから、光書き込み光学ユニット自体の再利用が可能となり、環境負荷の低減に貢献することもできる。
また、請求項13記載の発明によれば、光記録媒体への光書き込み、再生用光源である半導体レーザの波長はCDでは780nmが用いられており、面発光型半導体レーザは端面型半導体レーザに比べて1桁程度消費電力が小さいことから、本発明の780nmの面発光型半導体レーザを再生用光源とした電力が長持ちするハンディータイプの光ピックアップシステムを実現できる。
また、請求項14記載の発明によれば、容易に低閾値化可能であって、さらに活性層利得が高いために高出力であるとともに高温特性にも優れており、安い光源である面発光型半導体レーザ、安い光ファイバであるPOFを用いた経済的で高速な光送信モジュールを実現できる。
また、請求項15記載の発明によれば、容易に低閾値化可能であって、さらに活性層利得が高いために高出力であるとともに高温特性にも優れており、安い光源である面発光型半導体レーザ、安い光ファイバであるPOFを用いた経済的で高速な光送受信モジュールを実現できる。
また、請求項16記載の発明によれば、容易に低閾値化可能であって、さらに活性層利得が高いために高出力であるとともに高温特性にも優れており、安い光源である面発光型半導体レーザ、安い光ファイバであるPOFを用いた経済的で高速な光通信システムを実現できる。よって、極めて経済的であることから、特に、一般家庭やオフィスの室内、機器内などの光通信システムに用いることが効果的である。
本発明の第1の形態における第一の構成例の要部を示す原理的断面図である。 本発明の第1の形態における第二の構成例の要部を示す原理的断面図である。 本発明の第2の形態の構成例を示す原理的断面図である。 図3の活性層周辺構造を抽出して拡大して示す断面図である。 図3の一部の平面図である。 本発明の第3の形態の活性層周辺構造を抽出して拡大して示す断面図である。 本発明の第4の形態の面発光型半導体レーザアレイの構成例を示す原理的な平面図である。 本発明の第5の形態の光送信モジュールの構成例を示す概要図である。 本発明の第6の形態の光送受信モジュールの構成例を示す概要図である。 本発明の第7の形態のレーザプリンタの光走査書き込み部を中心に示す概略的な平面図である。 図10の面発光型半導体レーザアレイの構成例を示す原理的な正面図である。 第8,第9の形態においてAlGaInP層が上下の反射鏡で挟まれた共振器領域中に設けられた場合の面発光レーザの活性層の周辺断面構造の例を示す図である。 本発明の第10の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
(第1の形態)
本発明の第1の形態を図1及び図2に基づいて説明する。本発明の第1の形態は、本発明の面発光型半導体レーザの原理的構成例及びその動作例に関するものである。
(1) 第一の構成例
まず、本発明の第1の形態の面発光型半導体レーザは、第一の構成例として、GaAs基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の量子井戸活性層と障壁層とを有する活性層を含んだ共振器領域と、その上部及び下部に設けられた上部反射鏡及び下部反射鏡とからなる共振器構造を有する面発光型半導体レーザにおいて、
前記上述反射鏡および/または下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、
該半導体分布ブラッグ反射鏡の少なくとも一部は、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層からなり、
前記活性層とAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層との間であって、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層に接して、Al,In,Pを主成分として含む半導体層を有し、
Al,Ga,Asを主成分として含む前記半導体層とAl,In,Pを主成分として含む前記半導体層との界面を電界強度分布の節の位置としたことを特徴としている。
ここで、この第一の構成例の面発光型半導体レーザにおいて、Al,In,Pを主成分として含む前記半導体層は、例えば、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)である。
従来は、共振器領域と反射鏡との界面が電界強度分布の腹の位置となる構成であって、かつ、共振器領域の最上部にAl,In,Pを主成分として含む半導体層が設けられている。従って、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層からなる上部反射鏡との界面は腹の位置であり、光学的吸収の影響が大きい場所であった。ところが、Al,In,Pを主成分として含む半導体層上にAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層を結晶成長する場合、InのキャリーオーバーなどInの分離が生じやすく、これを抑える必要があるが、閾値上昇を避けるのは困難であった。なお、この問題は、Al,In,Pを主成分として含む半導体層上にAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層を結晶成長する場合に顕著である。
これに対し、上記第一の構成例の面発光型半導体レーザにおいては、図1に示すように、Al,In,Pを主成分として含む半導体層1とAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層(上部反射鏡の一部)2との界面3を電界強度分布の節の位置とすることで、界面3における光学的吸収の影響が大幅に低減するように設計してあるので、Inの分離がある程度生じていても、閾値増加への悪影響を大幅に抑えることができる。
なお、Al,In,Pを主成分として含む半導体層1とAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層(上部反射鏡の一部)2との間に薄いIn分離抑制層を設け、Inの分離を低減すると更に良い。
ここで、Al,In,Pを主成分として含む半導体層1としては、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)なる構成例が挙げられる。AlGaInP層を用いることが必須となる650nm帯などの赤色面発光型半導体レーザはもちろんのこと、780nm帯,850nm帯など、波長に関係なくAlGaInP層を用いた面発光型半導体レーザにおいて低閾値化の効果が得られる。
(2) 第二の構成例
本発明の第1の形態の面発光型半導体レーザは、第二の構成例として、GaAs基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の量子井戸活性層と障壁層とを有する活性層を含んだ共振器領域と、その上部及び下部に設けられた上部反射鏡及び下部反射鏡とからなる共振器構造を有する面発光型半導体レーザにおいて、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、
該半導体分布ブラッグ反射鏡の少なくとも一部は、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層からなり、
前記活性層とAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層との間であって、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層に接して、Al,In,Pを主成分として含む(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)層を有し、
Al,In,Pを主成分として含む(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)層には、p型ドーパントとしてMg(マグネシウム)が添加され、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層には、p型ドーパントとしてC(炭素)が添加されていることを特徴としている。
Al,In,Pを主成分として含む半導体層のp型ドーパントとしてはZn(亜鉛)が良く用いられているが、拡散係数が大きく、活性層、または活性層の近くまで拡散してしまい、結晶性が悪くなって発光効率が低下したり、吸収損失が増えるなどといった原因で素子特性を悪くしてしまう問題がある。一方、Mgは拡散係数がZnよりも小さく、上記問題を改善できる。しかし、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層においては、Cの拡散係数の方がより小さい。また、As系材料にMgを添加するとメモリー効果により制御性が悪くなる。したがって本構成例では、Al,In,Pを主成分として含む半導体層には主にMgを添加し、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層にはCを主に添加した。これにより、ドーパントの拡散やメモリー効果を低減できることで制御性良くドーピングでき、設計に近いドーピングプロファイルが得られるとともに活性層の結晶性低下が抑えられ、低しきい値,高出力動作を容易に実現できる。
(3) 第三の構成例
本発明の第1の形態の面発光型半導体レーザは、第三の構成例として、GaAs基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の量子井戸活性層と障壁層とを有する活性層を含んだ共振器領域と、その上部及び下部に設けられた上部反射鏡及び下部反射鏡とからなる共振器構造を有する面発光型半導体レーザにおいて、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、
該半導体分布ブラッグ反射鏡の少なくとも一部は、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層からなり、
前記活性層とAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層との間であって、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層に接して、Al,In,Pを主成分として含む(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)層を有し、
(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)層は、AlInPとGaInPとからなる短周期超格子構造により構成された半導体層であることを特徴としている。
材料によって熱抵抗が違うが、熱抵抗は半導体材料を構成する元素数が多いほど高くなる。したがって、4元材料であるAlGaInPは熱抵抗が高い。このため活性層で発生した熱は逃げにくく活性層にこもってしまい、活性層の温度上昇が早く、小さな注入電流で光出力が飽和してしまうという欠点があった。
面発光レーザの発振光の波長よりも充分薄い厚さの層を交互に積層した超格子構造にすると、光学的にはそれらが一様に混ざったとした時の平均組成の混晶が形成されている場合と同様であるとみなすことができる。ただし、屈折率については、超格子構造にすることで、わずかに高屈折率化するとの報告もある。したがって、このような超格子構造により構成された半導体層を用いて反射鏡などを構成することができる。
一方、4元材料であるAlGaInPよりも3元材料であるAlInPやGaInPの熱抵抗は小さい。しかも、AlGaInPと同様に、AlInPやGaInPもGaAs基板に格子整合させることができる。したがって、従来一様組成AlGaInPであった半導体層の変わりに、その平均組成より熱抵抗の小さくなる少なくとも2つの材料を選択して超格子構造を用いることで、熱抵抗が低下し、活性層で発生した熱を外部に逃がす効率が改善する。これにより、電流注入による活性層温度上昇を低減でき、従来よりも高電流注入まで光出力が上昇し、結果として高出力となる面発光レーザを得ることができる。
(4) 第四の構成例
本発明の第1の形態の面発光型半導体レーザは、第四の構成例として、GaAs基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の量子井戸活性層と障壁層とからなる活性層を含んだ共振器領域と、その上部及び下部に設けられた上部反射鏡及び下部反射鏡とを有する共振器構造を有する面発光型半導体レーザにおいて、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、
該半導体分布ブラッグ反射鏡の少なくとも一部は、AlGa1-xAs(0<x≦1)による低屈折率層とAlGa1-yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層とからなり、
前記上部反射鏡および/または下部反射鏡を構成する前記低屈折率層のうちで少なくとも前記活性層に最も近い低屈折率層は、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなり、
前記共振器領域と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡の活性層に最も近い低屈折率層との界面を電界強度分布の腹の位置としたことを特徴としている。
図2に当該第四の構成例の一例を示す。従来一般的である共振器領域4と上部反射鏡5との界面6が電界強度分布の腹の位置となる構成とした場合、上部反射鏡5を構成する最も活性層7に近い低屈折率層(λ/4の厚さ)8を(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)とすることで、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)層8上にAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層(上部反射鏡5)を結晶成長する場合の界面9を電界強度分布の節の位置とすることができるので、界面9における光学的吸収の影響が大幅に低減し、Inの分離がある程度生じていても、閾値増加への悪影響を大幅に抑えることができる。なお、図2において、符号10は下部反射鏡(一部)である。
また、下部反射鏡は、基板側から順番に、低屈折率層がAlAsからなる第一下部反射鏡と、低屈折率層がAlx1Ga1-x1As(0<x1<1)からなる第二下部反射鏡と、少なくとも1層からなる(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層とから構成することができる。
AlAsにGaをわずかに含ませるだけで熱抵抗は急激に大きくなっていく。下部反射鏡は、低屈折率層に熱抵抗の小さいAlAsを含んでいるので、活性層で発生する熱の放熱性が改善し、駆動時の温度上昇が抑制され、温度特性が良好で高出力なVCSELが得られる。なお、Al酸化膜を利用した電流狭窄構造を採用した構造の場合、AlAs低屈折率層を用いた第一下部反射鏡とInを含んだ層との間に、Al組成の小さいAlGaAs低屈折率層からなる第二下部反射鏡を設けたので、メサ形成のエッチングはAl酸化膜となる被選択酸化層と第一下部反射鏡のAlAsとの間で止まるように行えば良く、容易に制御できる。
また、AlGa1-yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層と(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)による低屈折率層とが積層される場合、その界面に(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層よりもAl組成の小さい(Ala1Ga1-a1b1In1-b1P(0≦a1<a≦1、0≦b1≦1)による中間層(In分離抑制層)を設けることができる。
Al組成の小さい中間層が挿入されることで、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層上にAlGa1-yAs(0≦y<x≦1)高屈折率層を積層する場合に、その界面でのAl組成が小さくなり、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層上にAlGa1-yAs(0≦y<x≦1)高屈折率層を広い条件範囲で容易に形成できる。更に、AlGaAs系材料とAlGaInP系材料とのヘテロ接合では、AlGaInP系材料のAl組成が大きい場合、価電子帯のバンド不連続が大きくなってしまうが、Al組成の小さい中間層を挿入しているので、価電子帯のバンド不連続を小さくでき、積層方向に電流を流す場合、抵抗を小さくできる。
また、AlGa1-xAs(0<x≦1)による低屈折率層とAlGa1-yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層とからなる前記半導体分布ブラッグ反射鏡には、p型ドーパントとしてC(炭素)が添加され、また、前記(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層8には、p型ドーパントとしてMg(マグネシウム)が添加されていても良い。
また、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層8は、AlInPとGaInPとからなる短周期超格子構造により構成された半導体層であっても良い。
(5) 第五の構成例
本発明の第1の形態の面発光型半導体レーザは、第五の構成例として、第四の構成例において、前記活性層と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡との間には、スペーサ層が設けられており、該スペーサ層の一部は、前記AlGaInP低屈折率層よりもバンドギャップが小さい(Ala’Ga1−a’b’In1−b’P(0≦a’≦1、0≦b’≦1)からなり、
前記量子井戸活性層は、GaIn1-cAs1-d(0≦c≦1、0≦d≦1)からなり、かつ、圧縮歪を有し、
前記障壁層は、GaIn1-eAs1-f(0≦e≦1、0≦f≦1)からなることを特徴としている。
即ち、図2の例では、上部反射鏡を構成する低屈折率層のうちで少なくとも活性層に最も近い低屈折率層をAlGaInPとし、障壁層や量子井戸活性層にはGaInPAs系材料を用いている。
そして、ワイドバンドギャップである(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層、及び(Ala’Ga1−a’b’In1−b’P(0≦a’≦1、0≦b’ ≦1)スペーサ層をキャリア閉じ込めのクラッド層とすることができる。この場合には、キャリア閉じ込めのクラッド層をAlGaAs系で形成した場合に比べて、クラッド層と量子井戸活性層とのバンドギャップ差を極めて大きく取ることができる。
次表(表1)には、AlGaAs(スペーサ層)/AlGaAs(量子井戸活性層)系780nm,850nm面発光型半導体レーザ、さらに、AlGaInP(スペーサ層)/GaInPAs(量子井戸活性層)系780nm面発光型半導体レーザの典型的な材料組成でのスペーサ層と井戸層、及び障壁層と井戸層とのバンドギャップ差が示されている。なお、スペーサ層とは、通常構成の場合には活性層と反射鏡の間にあたる層のことであって、キャリアを閉じ込めるためのクラッド層としての機能を有している層を指している。キャリア閉じ込め層としては、スペーサ層のほかに活性層に最も近いDBRの低屈折率層も機能を有している場合がある。第五の構成例の場合では、(Ala’Ga1−a’b’In1−b’P(0≦a’≦1、0≦b’ ≦1)スペーサ層と(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層がクラッド層としての機能を有することができる。
Figure 0005429242
表1に示すように、AlGaInP(スペーサ層)/GaInPAs(量子井戸活性層)系780nm面発光型半導体レーザによれば、AlGaAs/AlGaAs系780nm面発光型半導体レーザはもとより、AlGaAs/AlGaAs系850nm面発光型半導体レーザよりもバンドギャップ差を大きく取れることが判る。
また、量子井戸活性層を圧縮歪組成としている。歪が増加すると、ヘビーホールとライトホールのバンド分離が大きくなるため、利得の増加が大きくなり、低閾値化するとともに高効率化(高出力化)する。この効果は、AlGaAs/AlGaAs系850nm面発光型半導体レーザでは実現できないので、第五の構成例による提案材料系によれば、AlGaAs/AlGaAs系850nm面発光型半導体レーザよりも低閾値・高効率化(高出力化)可能であることが判る。
さらには、キャリア閉じ込め向上、歪量子井戸活性層による高利得化によって低閾値化することで、光取り出し側DBRの反射率低減が可能となり、さらに高出力化できる。
また、量子井戸活性層はGaIn1−cAs1−d(0≦c≦1、0≦d≦1)、障壁層はGaIn1−eAs1−f(0≦e≦1、0≦f≦1)であり、Alを含んでいない材料から構成されている。即ち、Alフリー活性領域(量子井戸活性層、及びそれに隣接する層)としているので、酸素の取り込みを低減させることで非発光再結合センタの形成を抑えることができ、長寿命の面発光型半導体レーザを実現できる。
このように、第五の構成例によれば、スペーサ層の一部にAlGaInP材料を用い、障壁層や量子井戸活性層にはGaInPAsを用いることで、活性層の利得が大きく、低閾値・高出力であって、信頼性に優れた850nmより波長の短い面発光型半導体レーザを実現できる。
なお、第五の構成例では、850nmよりも短い波長に限定しているが、これは従来に比べて優位差が極めて大きいからであって、850nmよりも長い波長であっても効果が得られる。
また、第五の構成例において、障壁層を引っ張り歪を有するものとすることも効果的である。即ち、障壁層となるGaInPAs系材料において、同一格子定数の場合はGaInPのバンドギャップが最も大きい。また、格子定数が小さい材料の方が大きなバンドギャップを取れる。これにより量子井戸活性層とのバンド不連続を大きくでき利得が大きくなるので、低閾値動作、高出力動作が可能となる。例えば、Ga0.6In0.4P引っ張り歪層のバンドギャップは2.02eV、Ga0.5In0.5P格子整合層のバンドギャップは1.87eVであり、150meV大きい。
なお、第五の構成例は、第四の構成例を元に説明した(AlGaInP層を活性層に最も近い低屈折率層として用いた)が、第一乃至第三の構成例において、前記活性層と前記反射鏡との間に設けられるスペーサ層の一部は、AlGaInP層よりなり、前記量子井戸活性層は、GaIn1−cAs1−d(0≦c≦1、0≦d≦1)からなり、かつ、圧縮歪を有し、前記障壁層は、GaIn1−eAs1−f(0≦e≦1、0≦f≦1)から構成しても、クラッド層をAlGaInPとし、障壁層や量子井戸活性層にGaInPAs系材料を用いた場合と同様な効果が得られる。
すなわち、第三の構成例において、前記活性層と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡との間には、スペーサ層が設けられており、該スペーサ層の一部は、AlGaInP層よりなり、前記量子井戸活性層は、GaIn1−cAs1−d(0≦c≦1、0≦d≦1)からなり、かつ、圧縮歪を有し、前記障壁層は、GaIn1−eAs1−f(0≦e≦1、0≦f≦1)からなるように構成できる。
このように、(Ala’Ga1−a’b’In1−b’P(0≦a’≦1、0≦b’≦1)スペーサ層を用いることで、スペーサ層をAlGaAs系で形成した場合に比べて、スペーサ層と量子井戸活性層とのバンドギャップ差を極めて大きく取ることができる。また、量子井戸活性層を圧縮歪組成としており、歪の効果により低閾値化するとともに高効率化(高出力化)することができ、さらには、キャリア閉じ込めの向上,歪量子井戸活性層による高利得化によって低閾値化することで、光取り出し側DBRの反射率低減が可能となり、さらに高出力化を実現できる。また、量子井戸活性層はGaIn1−cAs1−d(0≦c≦1、0≦d≦1)、障壁層はGaIn1−eAs1−f(0≦e≦1、0≦f≦1)であり、Alを含んでいない材料から活性層が構成されており、Alフリー活性領域(量子井戸活性層、及びそれに隣接する層)としているので、酸素の取り込みを低減でき、非発光再結合センタの形成を抑制して、長寿命の面発光型半導体レーザを実現することができる。即ち、活性層の利得が大きく低閾値・高出力であって、信頼性に優れた850nmより波長の短い面発光型半導体レーザを容易に実現することができる。
(6) 第六の構成例
本発明の第1の形態の面発光型半導体レーザは、第六の構成例として、第五の構成例に適用可能であるが、発振波長がおよそ680nmより長波長とされている。
AlGaAs/AlGaAs系活性層による780nm面発光型半導体レーザの場合と比較する。AlGa1-xAs(0<x≦1)系スペーサ層(クラッド層)の典型的な組成範囲で最もバンドギャップが大きいAlGa1-xAs(x=0.6、Eg=2.0226eV)と、組成波長780nm(Eg=1.5567eV)の活性層とのバンドギャップ差は、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)スペーサ層(クラッド層)の典型的な組成範囲で最もバンドギャップが大きい(AlGa1−aIn1−bP(a=0.7、b=0.5、Eg=2.289eV)と、組成波長680nm(Eg=1.8233eV)の活性層とのバンドギャップ差(460meV)とほぼ等しい。
また、障壁層と量子井戸活性層とのバンドギャップ差については、例えば、障壁層をGaIn1−eAs1−f(e=0.6、f=1、Eg=2.02eV)とすれば、組成波長680nmの活性層とのバンドギャップ差がおよそ200meVとなり、AlGaAs/AlGaAs系活性層による780nm面発光型半導体レーザの場合とほぼ同等となる。
つまり、AlGaInP系スペーサ層(クラッド層)を用いることで、組成波長が680nmよりも長波長であれば、Alフリー活性層(量子井戸活性層と障壁層)を用いても、AlGaAs/AlGaAs系活性層による780nm面発光型半導体レーザの場合と同等以上のキャリア閉じ込めが可能となる、さらに、歪量子井戸活性層の効果も加わることから、同等以上の特性を得ることが可能となる。
(7) 第七の構成例
本発明の第1の形態の面発光型半導体レーザは、第七の構成例として、第一乃至第六の構成例の何れにも適用可能であるが、被成長基板の面方位が、(111)A面方向に5°から20°の範囲内で傾斜した(100)面として構成されている。
Al,In,Pを含んだ材料や、GaInPの結晶成長においては、特に、基板の面方位を考慮した方が良い。特に、AlGaInPやGaInPにおいては、面方位が(111)A面方向に5°から20°の範囲内で傾斜した(100)GaAs基板が適している。(100)面に近い場合、自然超格子の形成によるバンドギャップの低下や、ヒロック(丘状欠陥)発生による表面性の悪化や非発光再結合センタの発生が生じ、半導体レーザなどのデバイス特性に悪影響を及ぼす。一方、(100)面から(111)A面方向に傾斜させると、傾斜角に応じて自然超格子の形成が抑えられる。10°から15°位まで急激に変化し、その後は徐々に正規のバンドギャップ(完全に混ざった混晶の値)に近づく。ヒロックも徐々に発生しなくなっていく。しかし、(111)A面方向の傾斜角が20°を超えると結晶成長が困難になっていく。そこで、赤色レーザ(630nmから680nm)の材料系で使われているAlGaInP材料は5°から20°(より多くの場合、7°から15°)の範囲内で傾斜させた基板が一般に使われている。スペーサ層(クラッド層)であるAlGaInPはもとより、表1の例のように障壁層をGaInPとした場合も当てはまる。さらには、障壁層や量子井戸活性層がGaInPAsの場合であっても悪影響が懸念されるので、これら材料の成長には面方位が(111)A面方向に5°から20°(より望ましくは、7°から15°)の範囲内で傾斜した(100)GaAs基板を用いることが好ましい。
ちなみに、偏光方向制御については、特開2001−60739公報に、基板の面方位が(100)から(111)A面方向又は(111)B面方向に15°〜40°傾斜した基板を用い、光学利得異方性を利用し、さらに圧縮歪を有するInAlGaAs,InGaAsPからなる多重量子井戸活性層を採用することで、傾斜した方向の光学的利得を大きくして、偏光方向の制御をしている。また、特開2001−168461公報に示されているように、メサ形状を円形、楕円形、長円形として、長軸の方向を(100)から(111)A面方向又は(111)B面方向とする方法も示されている。基板の面方位は(100)から[110]方向に2°off(−5°〜+5°含む)のものであり、A面,B面方向へ傾斜した基板ではない。
この点、この第七の構成例における偏光角制御の手段の一つは、基板の面方位を(111)A面方向に傾斜させることによる光学利得異方性を利用するものである。しかし、現在、最有力視されている(311)B基板を用いた場合の効果を利用することができない。当該第七の構成例では、(311)B基板(25°)より小さい傾斜角(5°から20°の範囲内)であるので、基板コストを抑えられることやへき開し易く扱い易いものの、光学利得異方性は小さくなる。第七の構成例では、この低下分を量子井戸活性層に圧縮歪を与えることによる光学利得異方性の増大により補償することができる。
当該第七の構成例に関して、光出射方向から見た活性層の外周形状として、(111)A面方向に長い形状となる形状異方性を持たせることが効果的である。即ち、上記の偏光制御について、さらに、面発光型半導体レーザの光出射方向から見た活性層の外周形状自体に異方性を持たせ、(111)A面方向に長い形状とすることによって、傾斜角方向((111)A面方向)の光学的利得がさらに増大し、偏向角の制御性が向上する。
(第2の形態)
本発明の第2の形態を図3乃至図5に基づいて説明する。この第2の形態は、前述の第一の構成例をより具体化した構成例に関するものである。図3は、本発明の第2の形態の面発光型半導体レーザの構造例を示す原理的断面図、図4は、その活性層周辺構造を抽出して拡大して示す断面図、図5は、その一部の平面図である。
本発明の第2の形態における面発光型半導体レーザは、面方位が(111)A面方向に15°傾斜したn−(100)GaAs基板11上に、n−Al0.9Ga0.1Asとn−Al0.3Ga0.7Asとを媒質内における発振波長の1/4倍の厚さで交互に例えば35周期積層した周期構造12と、その上部の1/4倍の厚さからなるn−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層(クラッド層)13とからなるn−半導体分布ブラッグ反射鏡(下部反射鏡)14が形成(図1では詳細は省略)されている。なお、周期構造12を構成するn−Al0.9Ga0.1Asとn−Al0.3Ga0.7Asとの間には、Al組成を一方の値から他方の値に徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層を挿入しており、傾斜層を含めて媒質内における発振波長の1/4倍の厚さとしている。これによれば、DBRに電気を流す場合、両者のバンド不連続を滑らかにすることができ、高抵抗化を抑制できる。
その上に、図4に示すように、格子整合する(Al0.2Ga0.80.5In0.5P下部スペーサ層15、圧縮歪組成であってバンドギャップ波長が780nmとなる3層のGaInPAs量子井戸活性層16と格子整合する4層のGa0.5In0.5P障壁層17とからなる活性層18、及び、(Al0.2Ga0.80.5In0.5P上部スペーサ層19が形成されている。さらにその上に、1/4倍の厚さからなるp−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層(クラッド層を兼ねる)20と、p−AlGa1-xAs(x=0.9)とp−AlGa1-xAs(x=0.3)とを交互に例えば24.5周期積層した周期構造21とからなるp−半導体分布ブラッグ反射鏡(上部反射鏡)22が形成(図1では詳細は省略)されている。こちらにも同様に組成傾斜層を挿入している。最上部には、電極とコンタクトを取るp−GaAsコンタクト層23が形成されている。下部反射鏡14と上部反射鏡22との間は、発振波長の1波長分の厚さ(いわゆるラムダキャビティー)の共振器領域24とした。これらの共振器領域24と下部反射鏡14と上部反射鏡22とにより共振器構造が構成されている。
ここに、この第2の形態の面発光型半導体レーザにおいては、p−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層(クラッド層を兼ねる)20上に形成される、AlGaAs系材料からなる上部反射鏡22を構成するp−AlGa1-xAs(x=0.3)25との界面26(界面3に相当)を電界強度分布の節の位置としている。
ちなみに、従来は、共振器領域の最上部にAlGaInPクラッド層(スペーサ層)が設けられていた。従って、AlGaAs系材料からなる上部反射鏡との界面は腹の位置であり、光学的吸収の影響が大きい場所であった。しかしながら、Al,In,Pを主成分として含む半導体層上にAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層を結晶成長する場合、InのキャリーオーバーなどInの分離が生じやすく、これを抑える必要があるが、困難な課題であり、閾値上昇を避けるのは困難であった。
この点、この第2の形態の構成によれば、界面26を電界強度分布の節の位置させており、界面26における光学的吸収の影響が大幅に低減するように設計してあるので、Inの分離がある程度生じていても、閾値増加への悪影響を大幅に抑えることができる。なお、p−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層20とp−AlGa1-xAs(x=0.3)25との間にIn分離抑制層として上記低屈折率層よりAl組成が小さいかAlを含まない、薄い(Al)GaInPを設け、Inの分離を低減すると更に良い。
なお、この第2の形態では、構造の対称性から、下部反射鏡14の活性層18に最も近い低屈折率層も(Al0.7Ga)0.5In0.5P層としたが、Inの分離の問題の改善だけであればAlGaAs系材料でも構わない。
また、この第2の形態の面発光型半導体レーザのウエハは以下のように作製される。結晶成長はMOCVDにより成長した。原料にはTMG(トリメチルガリウム),TMA(トリメチルアルミニウム),TMI(トリメチルインジウム),PH(フォスフィン)、AsH(アルシン)を用い、n型のドーパントとしてHSe(セレン化水素)を用い、p型のドーパントとしてDMZn又はCBrを用いた。キャリアガスにはHを用いた。MOCVD法は、組成傾斜層のような構成は原料ガス供給量を制御することで容易に形成できるので、DBRを含んだ面発光型半導体レーザの結晶成長方法として適している。また、MBE法のような高真空を必要とせず、原料ガスの供給流量や供給時間を制御すれば良いので、量産性にも優れている。
この第2の形態では、p側DBR中で活性層18に近い低屈折率層の一部をAlAs層とした。そして、所定の大きさのメサ26を少なくともp−AlAs被選択酸化層27の側面を露出させて形成し、側面の現れたAlAsを水蒸気で側面から酸化してAl電流狭窄層28を形成した。次に、ポリイミドでエッチング部を埋め込んで平坦化し、pコンタクト層23と光出射部29のある上部反射鏡22上のポリイミドを除去し、pコンタクト層23上の光出射部29以外にp側電極30を形成し、裏面にn側電極31を形成した。32はポリイミド絶縁膜である。
AlとAsを主成分とした被選択酸化層27の選択酸化により電流狭窄を行ったので閾値電流は低かった。被選択酸化層27を選択酸化したAl酸化膜からなる電流狭窄層28を用いた電流狭窄構造によると、電流狭窄層28を活性層18に近づけて形成することで電流の広がりを抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。さらに、酸化してAl酸化膜となることで屈折率が小さくなり、凸レンズの効果でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉じ込めることができ、極めて効率が良くなり、閾値電流は低減される。また、容易に電流狭窄構造を形成できることから、製造コストを低減できる。
なお、面発光型半導体レーザの光出射方向から見たメサ形状を、図5に示すように、(111)A面方向に長い長楕円形状となるように異方性を持たせて形成した。これは長方形など他の形状でも良い。これにより、Al酸化膜により形成された電流注入領域の形状も(111)A面方向に長い形状となった。
この第2の形態の面発光型半導体レーザでは、活性層18に最も近い反射鏡22の低屈折率層25やスペーサ層19にAlGaInP材料を用い、障壁層17や量子井戸活性層16にはGaInPAsを用いている。面方位が(111)A面方向に15°傾斜した(100)GaAs基板11上に形成したので、自然超格子の形成によるバンドギャップの低下や、ヒロック(丘状欠陥)発生による表面性の悪化や非発光再結合センタの影響を低減できた。
また、キャリア閉じ込めのためのクラッド層(活性層18に最も近い反射鏡22の低屈折率層)20としてワイドバンドギャップである(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pを用いている。クラッド層20と活性層18とのバンドギャップ差は、クラッド層20をAlGaAsで形成した場合の466meV(Al組成0.6の場合)に比べて、743meVであり極めて大きい。障壁層17と活性層18とのバンドギャップ差も同様に優位差があり、良好なキャリア閉じ込めとなる。また、活性層18が圧縮歪を有しているので、ヘビーホールとライトホールのバンド分離により利得の増加が大きくなった。これらにより高利得となるので、この第2の形態の面発光型半導体レーザは低閾値で、高出力であった。
なお、(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層20と活性層18との間のスペーサ層として(Al0.2Ga0.80.5In0.5P層19を1層で形成したが、複数の半導体層で形成しても良い。また、AlGaInP低屈折率層20やAlGaInPスペーサ層19は、微量に他の構成元素を含んでいても構わない。
また、活性層18と障壁層17は、Alを含んでいない材料から構成されており、Alフリー活性領域(量子井戸活性層、及びそれに隣接する層)としているので、酸素の取り込みが低減することで非発光再結合センタの形成を抑えることができ、長寿命化を図れる。
また、偏向角制御については、基板11の傾斜による光学利得異方性を利用している。現在、最有力視されている(311)B基板(25°)を用いた場合に比べて、小さい傾斜角(15°)であるので光学利得異方性は小さくなる。この第2の形態では、この低下分を量子井戸活性層16に圧縮歪を与えることによる光学利得異方性の増大、及び、面発光型半導体レーザの光出射方向から見た量子井戸活性層16の外周形状に異方性を持たせ、(111)A面方向に長い形状とすることによる基板傾斜方向((111)A面方向)の光学的利得増大により補償しており、(311)B基板利用と比べて劣らない偏向角制御ができた。
このように、第2の形態によれば、活性層18の利得が大きく、低閾値,高出力,優れた信頼性,偏光方向制御を同時に満たした780nm面発光型半導体レーザを実現することができる。なお、Al,In,Pを主成分として含む半導体層20上にAl,Ga,Asを主成分として含む半導体層25を結晶成長する場合に生じるInの分離に関わる閾値上昇が生じにくいように設計しているので容易に実現できた。
なお、この第2の形態のAlフリー活性層の効果は、短波長化とともに小さくなっていくが、680nmより長波長であれば得ることができる。例えば、AlGaAs/AlGaAs系活性層による780nm面発光型半導体レーザの場合と比較する。AlGa1-xAs(0<x≦1)系スペーサ層(キャリア閉じ込めのクラッド層)の定型的な組成範囲で最もバンドギャップが大きいAlGa1-xAs(x=0.6、Eg=2.0226eV)と、組成波長780nm(Eg=1.5567eV)の活性層とのバンドギャップ差は、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)スペーサ層(キャリア閉じ込めのクラッド層)の定型的な組成範囲で最もバンドギャップが大きい(AlGa1−aIn1−bP(a=0.7、b=0.5、Eg=2.289eV)と、組成波長680nm(Eg=1.8233eV)の活性層とのバンドギャップ差(460meV)とほぼ等しい。
また、障壁層と量子井戸活性層とのバンドギャップ差については、例えば、障壁層をGaIn1−eAs1−f(e=0.6、f=1、Eg=2.02eV)とすれば、組成波長680nmの活性層とのバンドギャップ差がおよそ200meVとなり、AlGaAs/AlGaAs系活性層による780nm面発光型半導体レーザの場合とほぼ同等となる。
つまり、AlGaInP系スペーサ層19を用いることで、組成波長が680nmよりも長波長であれば、Alフリー活性層(量子井戸活性層16と障壁層17)を用いても、AlGaAs/AlGaAs系活性層による780nm面発光型半導体レーザの場合と同等以上のキャリア閉じ込めが可能となる、さらに、歪量子井戸活性層の効果も加わることから、同等以上の特性を得ることが可能となる。
また、障壁層17にAlを含ませた場合には、650nm帯など680nmより波長の短い赤色面発光型半導体レーザ作製が可能となる。この場合、Alフリーの効果は得られないが、前述のInの分離の問題は、この第2の形態によって改善できる。
(第3の形態)
本発明の第3の形態を図6に基づいて説明する。この第3の形態は、前述の第三の構成例をより具体化した構成例に関するものである。図6は、本発明の第3の形態の面発光型半導体レーザの活性層周辺構造を抽出して拡大して示す断面図である。基本的には、前述の第2の形態に準ずるものであるが、この第3の形態は、障壁層17aの材料として引っ張り歪を有するGa0.6In0.4Pとした点で異なり、他の点は第2の形態(図4)の場合と同様である。
GaInPAs系材料において、同一格子定数ではGaInPのバンドギャップが最も大きい。また、格子定数が小さい組成の方が大きなバンドギャップを取れるので、量子井戸活性層16とのバンド不連続をさらに大きくでき、利得が大きくなるので、さらに、低閾値動作,高出力動作が可能となる。例えば、この第3の形態のGa0.6In0.4P引っ張り歪障壁層17aのバンドギャップは2.02eV、第2の形態のGa0.5In0.5P格子整合層17のバンドギャップは1.87eVであり、150meV大きい。なお、障壁層を引っ張り歪組成としてバンド不連続が大きくなる効果は、量子井戸活性層が圧縮歪組成の時だけでなく、格子整合組成や引っ張り歪組成であっても得られる。
(第4の形態)
本発明の第4の形態を図7に基づいて説明する。本発明の第4の形態は、前述したような面発光型半導体レーザを利用した面発光型半導体レーザアレイに関する。図7は本発明の第4の形態の面発光型半導体レーザアレイの構成例を示す原理的な平面図である。
本発明の第4の形態の面発光型半導体レーザアレイ41は、アレイチップ基板42上に前述の各形態で説明したような構成の複数個の面発光型半導体レーザ43を一列(1次元)に配列させて搭載させることにより構成されている。44は各面発光型半導体レーザ43毎に設けられた電極パッドである。ただし、この第4の形態では、面発光型半導体レーザ43に関して前述した構成例の場合とはpとnとが逆とされている。即ち、p型GaAs半導体基板上に形成されており、表面にn側個別電極、裏面にp側共通電極が形成されている。なお、面発光型半導体レーザアレイ41を構成する上で、面発光型半導体レーザ43は2次元配列であっても構わない。
この第4の形態によれば、閾値上昇が抑えられた、高出力動作可能な面発光型半導体レーザ43を同一基板42上に多数集積することで、例えば、書き込み光学系の光源に応用した場合、同時にマルチビームでの書き込みが容易となり、書き込み速度が格段に向上し、書き込みドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷できる。また、同じ書き込みドット密度の場合であれば印刷速度を速くすることができる。また、光通信に応用した場合、同時に多数ビームによるデータ伝送が可能となるので高速通信ができる。さらに、面発光型半導体レーザは低消費電力で動作するので、特に機器の中に組み込んで利用した場合、温度上昇を低減させることもできる。
(第5の形態)
本発明の第5の形態を図8に基づいて説明する。本発明の第5の形態は、前述の第4の形態で説明した面発光型半導体レーザアレイ41を光源として安価なアクリル系POF(プラスチック光ファイバ)51とを組み合わせた光送信モジュール52への適用例を示し、図8はその構成例を示す概要図である。
本発明の第5の形態の光送信モジュール52では、各面発光型半導体レーザ43からのレーザ光が対応するPOF51に入力され、伝送される。アクリル系POFは650nmに吸収損失のボトムがあり、650nmの面発光型半導体レーザが検討されているが、高温特性が悪く実用にはなっていない。LEDが使われているが高速変調が困難で1Gbpsを超えた高速伝送実現のためには半導体レーザが必要である。
この第5の形態の面発光型半導体レーザ43の波長は780nmであるが、活性層利得が大きいので高出力であるとともに高温特性にも優れており、ファイバの吸収損失は大きくなるが短距離であれば伝送可能である。
光通信の分野では、同時により多くのデータを伝送するために複数の半導体レーザが集積したレーザアレイを用いた並列伝送が試みられている。これにより、高速な並列伝送が可能となり、従来よりも多くのデータを同時に伝送できるようになった。
この第5の形態では、面発光型半導体レーザ43と光ファイバ51とを1対1に対応させたが、発振波長の異なる複数の面発光型半導体レーザ素子を1次元又は2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより伝送速度をさらに増大させることも可能である。
さらに、本発明による安価な面発光型半導体レーザアレイ41と安価なPOF51とを組み合わせたので、これを光通信システムに用いると、低コストな光送信モジュール52を実現できる他、これを用いた低コスト光通信システムを実現できる。極めて低コストであることから、家庭用,オフィスの室内用,機器内用等の短距離のデータ通信に有効である。
(第6の形態)
本発明の第6の形態を図9に基づいて説明する。本発明の第6の形態は、前述したような面発光型半導体レーザ43を光源とし、受信用フォトダイオード61を受光素子とし、アクリル系POF62と組み合わせた光送受信モジュール63への適用例を示し、図9はこの光送受信モジュール63の構成例を示す概要図である。
前述したような面発光型半導体レーザ43を光通信システムに用いる場合、面発光型半導体レーザ43とPOF62は低コストであるので、図9に示すように送信用の面発光型半導体レーザ43と、受信用フォトダイオード61と、POF62とを組み合わせた光送受信モジュール63を用いた低コストの光通信システムを実現できる。また、POF62はファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。また、この第6の形態に係る面発光型半導体レーザ43の場合,温度特性が良いこと、及び、低閾値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えるより低コストのシステムを実現できる。
この第6の形態に係る面発光型半導体レーザ43を用いた光通信システムとしては、光ファイバを用いた、LAN(Local Area Network)などのコンピュータ等の機器間伝送、さらには機器内のボード間データ伝送、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等、光インタコネクションとして特に短距離通信に用いることができる。
近年LSI等の処理性能は向上しているが、これらを接続する部分の伝送速度が今後ボトルネックとなる。システム内の信号接続を従来の電気接続から光インターコネクトに変えると、例えばコンピュータシステムのボード間、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等を本発明に係る光送信モジュール52や光送受信モジュール63を用いて接続すると、超高速コンピュータシステムが可能となる。
また、複数のコンピュータシステム等を本発明に係る光送信モジュール52や光送受信モジュール63を用いて接続した場合、超高速ネットワークシステムが構築できる。特に、面発光型半導体レーザ43は端面発光型レーザに比べて桁違いに低消費電力化でき、2次元アレイ化が容易なので、並列伝送型の光通信システムに適している。
(第7の形態)
本発明の第7の形態を図10及び図11に基づいて説明する。本発明の第7の形態は、前述の第4の形態に準ずる2次元の面発光型半導体レーザアレイ71を書き込み用光源として用いた画像形成装置、例えば、レーザプリンタへの適用例を示す。図10は当該レーザプリンタの光走査書き込み部を中心に示す概略的な平面図、図11はその面発光型半導体レーザアレイ71の構成例を示す原理的な正面図である。
この第7の形態のレーザプリンタでは、面発光型半導体レーザアレイ71からの複数のビームを、レンズ72,走査用ポリゴンミラー73,fθレンズ74等からなる同じ光学系を用い走査用ポリゴンミラー73を高速回転させるとともに、ドット位置を点灯のタイミングを調整して副走査方向に分離した複数の光スポットとして被走査面である感光体75上に集光して一度に複数のビームを走査させる構成例とされている。
ここに、この第7の形態の面発光型半導体レーザアレイ71は、例えば図11に示すように使用波長780nmの面発光型半導体レーザ43を40μm間隔で副走査方向に10μmずつの重なりを持たせて4×4の2次元にチップ基板42上に配置させたものであり、点灯のタイミングを調整することで感光体75上では図のように副走査方向に10μm間隔で光源が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
この第7の形態によれば、副走査方向に約10μm間隔で感光体75上に書き込み可能であり、2400DPI(ドット/インチ)に相当する。主走査方向の書き込み間隔は、光源43の点灯のタイミングで容易に制御できる。16ドットを同時に書き込み可能であり、高速印刷できた。アレイ数を増加させることでさらに高速印刷可能である。また、面発光型半導体レーザ43の素子間隔を調整することで副走査方向の間隔を調整でき、2400DPIよりも高密度にすることができ、より高品質の印刷が可能となる。この第7の形態による面発光型半導体レーザ43は従来の面発光型半導体レーザよりも高出力化されているので、印刷速度を従来よりも速くすることができた。
なお、この第7の形態では面発光型半導体レーザアレイ71(或いは、面発光型半導体レーザ43)のレーザプリンタへの応用例を示したが、光ピックアップ(図示せず)に搭載させることで、CD等の記録,再生用光源としても用いることができる。
(第8の形態)
本発明の第8の形態は、p−半導体分布ブラッグ反射鏡における、p−AlGa1-xAs(x=0.9)とp−AlGa1-xAs(x=0.3)からなる多層構造部のドーパントはCであるが、p−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層のドーパントをMgとした点で異なり、他の点は第2の形態(図4)の場合と同様である。
(Al)GaInP層のp型ドーパントとしてZn(亜鉛)が良く用いられているが、拡散係数が大きく、上部反射鏡成長中にZnが活性層、または活性層の近くまで拡散してしまい、結晶性が悪くなって発光効率が低下したり、吸収損失が増えるなどといった原因で素子特性を悪くしてしまう問題がある。これはp側が下部の場合はより一層影響が出る。また、面発光型半導体レーザは、端面発光型半導体レーザに比べて膜厚が数倍厚くなるので、成長時間も長く、熱拡散の影響は極めて大きい。一方、Mgは拡散係数がZnより小さく上記問題を改善できる。しかし、Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層においては、Cの拡散係数の方がより小さい。また、As系材料にMgを添加するとメモリー効果により制御性が悪くなる。したがって、この第8の形態では、AlGaInP層にはMgを添加し、AlGaAs多層膜にはCを添加した。これにより、ドーパントの拡散やメモリー効果を低減できることで、制御性良くドーピングでき、設計に近いドーピングプロファイルが得られるとともに活性層の結晶性低下が抑えられ、低しきい値,高出力動作を容易に実現できる。
なお、AlGaInPのドーパントをMgとし、AlGaAsのドーパントをCとした場合の効果は、AlGaInPを反射鏡の低屈折率層として用いた場合でなくとも、図12に示すような上下の反射鏡で挟まれた共振器領域中に設けられた場合であっても効果が得られる。また、650nm帯等可視領域の面発光型半導体レーザのように、共振器領域を本願と同様にAlGaInP系材料で形成し、反射鏡をAlGaAs系材料で形成している面発光型半導体レーザにおいても効果が得られる。
(第9の形態)
本発明の第9の形態は、n−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層とp−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層を、Al0.5In0.5PとGa0.5In0.5Pとの短周期超格子構造とした点で異なり、他の点は第2の形態(図4)の場合と同様である。
材料によって熱抵抗が違うが、熱抵抗は半導体材料を構成する元素数が多いほど高くなる。したがって、4元材料であるAlGaInPは熱抵抗が極めて高い。このため活性層で発生した熱は逃げにくく活性層にこもってしまい、活性層の温度上昇が早く、小さな注入電流で光出力が飽和してしまうという欠点があった。
面発光レーザの発振光の波長よりも充分薄い厚さの層を交互に積層した超格子構造にすると、光学的にはそれらが一様に混ざったとした時の平均組成の混晶が形成されている場合と同様であるとみなすことができる。ただし、屈折率については超格子構造にすることで、わずかに高屈折率化するとの報告もある。したがって、このような超格子構造により構成された半導体層を用いて反射鏡などを構成することができる。
一方、4元材料であるAlGaInPと比べて、3元材料であるAlInPやGaInPの熱抵抗は小さい。しかも、AlGaInPと同様にAlInPやGaInPもGaAs基板に格子整合させることができる。したがって、従来一様組成AlGaInPであった半導体層のかわりに、その平均組成より熱抵抗の小さくなる少なくとも2つの材料を選択して超格子構造を用いることで、熱抵抗が低下し、活性層で発生した熱を外部に逃がす効率が改善する。これにより電流注入による活性層温度上昇を低減でき、従来よりも高電流注入まで光出力が上昇し、結果として高出力となる面発光レーザを得ることができる。
なお、AlGaInPをAlInPとGaInPとによる短周期超格子構造で形成した場合の効果はAlGaInPを反射鏡の低屈折率層として用いた場合でなくとも、図12に示すような上下の反射鏡で挟まれた共振器領域中に設けられた場合であっても効果が得られる。また、650nm帯等可視領域の面発光型半導体レーザのように、共振器領域をAlGaInP系材料で形成している面発光型半導体レーザにおいても効果が得られる。また、活性層からの放熱は基板側が主なので、少なくとも基板側のAlGaInP層に適用することが好ましい。
(第10の形態)
本発明の第10の形態を図13に基づいて説明する。この第10の形態と前述の第3の形態の面発光型半導体レーザとの違いは、次に2点である。
第一点は、下部反射鏡を、基板側から順番に、n−AlAs低屈折率層とn−Al0.3Ga0.7As高屈折率層とを31周期積層した第1下部反射鏡と、n−Al0.9Ga0.1As低屈折率層とn−Al0.3Ga0.7As高屈折率層とを9周期積層した第2下部反射鏡と、その上のn−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層(クラッド層)13とから構成したことである。
下部反射鏡は、低屈折率層に熱抵抗の小さいAlAsを含んでいるので、活性層で発生する熱の放熱性が改善し、駆動時の温度上昇が抑制され、温度特性が良好でかつ高出力となった。
なお、もしも、メサ形成時のエッチング面が第1下部反射鏡のAlAsまで達すると、後工程のAlAs被選択酸化層の酸化工程時に、メサ側壁に露出しているAlAs層の端面からも同時に酸化が進み、素子が絶縁化するか高抵抗化する事態となってしまう。これは、AlGaAsの酸化速度はAl組成依存性が極めて大きく、Al組成が大きいほど酸化速度が大きく、AlAsが最も酸化速度が大きいからである。このため酸化速度が小さいAlGaAsを用いた第2下部反射鏡を設けた。なお、第1下部反射鏡の低屈折率層の酸化速度が被選択酸化層よりも速い材料・厚さの場合に第2下部反射鏡を設ける必要が出てくる。例えば被選択酸化層がAlAsにわずかにGaを添加した材料である場合など、第1下部反射鏡の低屈折率層としてAlAsではなくGaが含まれていても、酸化速度が被選択酸化層よりも速い場合がある。この場合、第2下部反射鏡が必要であり、第1下部反射鏡の低屈折率層が第2下部反射鏡の低屈折率層より熱抵抗の小さい組成(材料)であれば放熱の効果がある。
メサ形成のエッチングはロットごとのばらつきがあるが、Al酸化膜となる被選択酸化層と第1下部反射鏡のAlAsとの間で止まるように行えば良い。エッチングはClガスを導入し、反応性イオンビームエッチング法(RIBE)法で行った。この時プラズマ発光分光器でInの発光(451nm)とAlの発光(396nm)の比をとり、その時間変化をモニタした。エッチング開始から数分経過すると、Inの発光(451nm)が検出され、やがてなくなった。この時点でエッチングを終了したところ、第2下部反射鏡中でエッチングが停止した。このように容易に再現性良く制御できた。
また、第二点は、n側及びp側のAl0.3Ga0.7As高屈折率層と(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層との界面に、例えば20nmの厚さの(Al0.1Ga0.90.5In0.5P中間層を設けたことである。
Al組成の小さい中間層を挿入したので、特に、p−(Al0.7Ga0.30.5In0.5P低屈折率層上にp−Al0.3Ga0.7As高屈折率層を積層する場合、平坦で結晶性良く成長できる成長条件の範囲が広くなり、容易に形成できた。更にAlGaAs系材料とAlGaInP系材料のヘテロ接合では、AlGaInP系材料のAl組成が大きい場合、価電子帯のバンド不連続が大きくなってしまうが、Al組成の小さい中間層を挿入しているので小さくでき、抵抗を小さくできた。なお、中間層としてAsが含まれていても良い。
1 Al,In,Pを主成分として含む半導体層
2 Al,Ga,Asを主成分として含む半導体層
3 界面
4 共振器領域
5 上部反射鏡
7 活性層
8 低屈折率層
9 界面
11 基板
13 低屈折率層
14 下部反射鏡
15 スペーサ層
16 量子井戸活性層
17 障壁層
18 活性層
19 スペーサ層
20 半導体層、低屈折率層
22 上部反射鏡
24 共振器領域
25 半導体層
26 界面
41 面発光型半導体レーザアレイ
43 面発光型半導体レーザ
特開平9−107153号公報 特開平2001−60739 特開平2001−168461 IEEE Photonics Technology Letters, Vol.10, No.12, pp.1676−1678, 1998(東工大) IEEE Photonics Technology Letters, Vol.12, No.6, pp.603−605, 2000(Wisconsin Univ.)

Claims (16)

  1. GaAs基板上に、レーザ光を発生する少なくとも1層の量子井戸活性層と障壁層とを有する活性層を含んだ共振器領域と、その上部及び下部に設けられた上部反射鏡及び下部反射鏡とを有する共振器構造を有する面発光型半導体レーザにおいて、
    前記上部反射鏡および/または下部反射鏡は、屈折率が周期的に変化し入射光を光波干渉によって反射する半導体分布ブラッグ反射鏡を含み、
    該半導体分布ブラッグ反射鏡の少なくとも一部は、AlGa1−xAs(0<x≦1)による低屈折率層とAlGa1−yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層とからなり、
    前記上部反射鏡および/または下部反射鏡を構成する前記低屈折率層のうちで少なくとも前記活性層に最も近い低屈折率層は、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなり、
    前記(Al Ga 1−a In 1−b P(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層と前記Al Ga 1−y As(0≦y<x≦1)による高屈折率層との間に、前記(AlaGa 1−a In 1−b P(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層よりもAl組成の小さい(Al a1 Ga 1−a1 b1 In 1−b1 P(0≦a1<a≦1、0≦b1≦1)による中間層が設けられており、
    前記共振器領域と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡の活性層に最も近い低屈折率層との界面を電界強度分布の腹の位置としたことを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  2. 請求項1記載の面発光型半導体レーザにおいて、下部反射鏡は、基板側から順番に、低屈折率層がAlAsからなる第1下部反射鏡と、低屈折率層がAlx1Ga1−x1As(0<x1<1)からなる第2下部反射鏡と、少なくとも1層からなる(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)低屈折率層とから構成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  3. 請求項1または2に記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記活性層と前記上部反射鏡および/または下部反射鏡との間には、スペーサ層が設けられており、該スペーサ層の一部は、前記AlGaInP低屈折率層よりもバンドギャップが小さい(AlGa1−aIn1−bP(0≦a≦1、0≦b≦1)からなり、
    前記量子井戸活性層は、GaIn1−cAs1−d(0≦c≦1、0≦d≦1)からなり、
    前記障壁層は、GaIn1−eAs1−f(0≦e≦1、0≦f≦1)からなることを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  4. 請求項記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記量子井戸活性層は、圧縮歪を有することを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  5. 請求項記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記障壁層は、引っ張り歪を有することを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  6. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記半導体分布ブラッグ反射鏡のAlGa1−xAs(0<x≦1)による低屈折率層とAlGa1−yAs(0≦y<x≦1)による高屈折率層とには、p型ドーパントとしてC(炭素)が添加され、前記(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層には、p型ドーパントとしてMg(マグネシウム)が添加されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  7. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、(AlGa1−aIn1−bP(0<a≦1、0≦b≦1)からなる低屈折率層は、AlInPとGaInPとからなる短周期超格子構造により構成された半導体層であることを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  8. 請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、前記共振器構造による発振波長がおよそ680nmより長波長であることを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  9. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザにおいて、被成長基板の面方位は、(111)A面方向に5°から20°の範囲内で傾斜した(100)面であることを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  10. 請求項記載の面発光型半導体レーザにおいて、光出射方向から見た活性層の外周形状は、(111)A面方向に長い形状となる形状異方性を有していることを特徴とする面発光型半導体レーザ。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザが同一基板上に複数個配列させていることを特徴とする面発光型半導体レーザアレイ。
  12. 請求項11記載の面発光型半導体レーザレイを書き込み光源として備えることを特徴とする画像形成装置。
  13. 請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備えることを特徴とする光ピックアップ。
  14. 請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備えることを特徴とする光送信モジュール。
  15. 請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備える光送受信モジュール。
  16. 請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ又は請求項11記載の面発光型半導体レーザアレイを光源として備えることを特徴とする光通信システム。
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