JP5427818B2 - 軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Description

本発明は、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関し、さらに詳しくは、プロセスオイルなどのオイル類を、樹脂成分に実質的に含有せずに、適度の柔軟性を有する上に、耐糸引き性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐高温傷付性に優れ、耐衝撃性及び流動性(成形性)にも優れた軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
従来から、柔軟性やエラストマー的な弾性に優れる高分子材料としては、エラストマーのほか、熱可塑性エラストマー組成物をはじめとする軟質系ポリオレフィン系樹脂組成物が広く用いられている。
ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂と、エチレンとプロピレンなどのα−オレフィンとの共重合体などとからなる熱可塑性エラストマー材料などの軟質系ポリオレフィン系樹脂組成物は、柔軟性があり、エラストマー的性質に優れ、加硫工程が不要であるなどのため、通常の射出成形、押出成形、中空成形などにて成形することにより比較的容易に各種の成形体を得ることができる。そのため、近年、自動車部品、電気電子機器部品などの工業分野部品や建材などに需要が拡大している。
これらの軟質系ポリオレフィン系樹脂組成物は用途の拡がりに連れ、該成形体の長期使用の場合などにおいて、耐糸引き性、柔軟性や耐衝撃性の向上とともに、成形体表面における変色性やベタツキ性の防止、抑制や高温時の耐傷付性が求められている。
一方、軟質系ポリオレフィン系樹脂組成物においては、柔軟性を付与させるなどのため、パラフィン系、ナフテン系などのプロセスオイル(加工油、鉱物油、鉱油軟化剤などと称される場合もある。)などのオイル類を含有させることが広く行われている。
これらのオイル類は、柔軟性を付与させるなどの点で効果的であるが、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂成分などとの相溶性が不十分などの理由で樹脂の成形体表面などへブリードアウトしたり滲み出したりして、変色やベタツキを生じたり、成形体外観を損なう可能性を有している。
そこで、例えば特許文献1には、オイルブリード性が抑制された非架橋型の熱可塑性エラストマー組成物とその成形品として、(A1)エチレン・α−オレフィン系共重合体、又は(X)油展ゴム、(B)結晶性ポリエチレン系樹脂、(C)第一の水添ブロック共重合体、及び(D)第二の水添ブロック共重合体を含有する組成物が開示されている。この組成物は、良好なゴム弾性(圧縮永久歪み)、押出加工性や耐オイルブリード性を有するが、鉱物油系軟化剤や油展共重合ゴムを含有するほか、流動性(MFR)が比較的低く、特に耐糸引き性を加えた射出成形性に制約を受ける可能性があるほか、耐衝撃性(低温衝撃)、耐高温傷付性及びマッドガードやバンパーなどに代表される自動車外装部材の様に比較的柔軟であって高温且つ紫外線曝露される雰囲気下におけるいわゆる耐候変色性については、いずれも記載が無く明らかでない。
又、特許文献2には、耐候性と低温柔軟性を兼ね備え、流動性に優れ、且つ高温化での使用においてもベタツキを生じることのないオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物として、エチレン系共重合エラストマーに、プロピレンホモポリマー100重量部に対してエラストマー用プロセスオイル組成物を20重量部ブレンドしたときのプロピレンホモポリマーの融点が、ブレンドしないときに比べて2〜4.5℃低下する、精製鉱物油と合成油との混合物であるエラストマー用プロセスオイル組成物を配合してなる油展エラストマーと、ポリプロピレン系樹脂からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。しかしながら、この組成物は、成形外観、低温衝撃及び耐高温ベタツキ性は良好であるが、耐糸引き性の水準が明らかでないほか、製造工程が比較的複雑で多く高コストになり易かったり、油展エラストマーの配合量が比較的多いほか、前記同様耐高温傷付性及び耐候変色性について記載が無く明らかでない。
一方、例えば特許文献3には、樹脂成分との相溶性が不十分などの理由で樹脂の成形体表面などへブリードアウトしたり滲み出したりして、変色やベタツキを生じたり、成形体外観を損なうなどの懸念があるプロセスオイルなどのオイル類の柔軟性などの付与のための含有を全く必要としない共重合体が提案されている。
すなわち、ブロックタイプのリアクターTPOにおいて、冷凍低温における耐衝撃性及び耐白化性を向上させ、柔軟性や常温耐衝撃性及び耐熱性などをバランス良く改良し、ベタツキやブリードアウトも抑制する共重合体として、メタロセン系触媒を用いて、第1工程で結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜70重量%、第2工程で成分(A)よりも12〜20重量%エチレンを多く含む低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜30重量%逐次重合することにより得られ、次の条件を満たすプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が開示されている。条件(i)成分(A)が示差走査型熱量計による融解ピーク温度105〜145℃を有する。条件(ii)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、0℃以下にtanδ曲線が2つのピークを有し、高温側のピーク温度のTg1と低温側のピーク温度のTg2とにおいて、Tg1−Tg2<30℃である。
この共重合体は、良好な低温衝撃、耐白化性、柔軟性及び抑制されたベタツキ性やブリードアウト性を有するが、耐糸引き性や前記の耐高温傷付性、耐高温ベタツキ性及び耐候変色性について記載が無くこれらの物性を向上させる方法についても明らかでない。
さらに、特許文献4には、耐熱性や透明性に優れ、さらにはベタツキ性も低減したポリプロピレン系樹脂組成物として、成分(A)として、メタロセン系触媒による逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であって、第1工程でエチレン含量1〜7重量%の結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分を30〜70重量%、第2工程で第1工程よりも6〜15重量%多くのエチレンを含む低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分を70〜30重量%逐次重合され、以下の条件(i)を満たすプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を99〜70重量%、及び成分(B)として、プロセスオイル成分を1〜30重量%含有してなり、曲げ弾性率が250MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物で条件(i)固体粘弾性測定により得られる、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する、樹脂組成物が開示されている。
このポリプロピレン系樹脂組成物は、一部にプロセスオイル成分を含有し、柔軟性が格別に向上され、併せて耐熱性や透明性などがバランスよく充分に改良され、さらにはベタツキ性も低減され耐ブロッキング性も高いレベルで付与されるが、成形性(耐糸引き性)や前記の耐高温傷付性、耐高温ベタツキ性及び耐候変色性について記載が無く明らかでない。
以上の様に、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関しては、その性能向上のために、様々な手法が試みられているが、耐糸引き性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐高温傷付性が、とりわけ自動車部品などの工業部品分野用途などにおいて、不十分であったり、それらと、柔軟性と耐衝撃性、とりわけ低温耐衝撃性とのバランスが不十分であった。
国際公開WO2005/066264号パンフレット 国際公開WO2007/060843号パンフレット 特開2005−314621号公報 特開2006−188563号公報
本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑み、プロセスオイルなどのオイル類を、樹脂成分に実質的に含有せずに、適度の柔軟性を有する上に、耐糸引き性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐高温傷付性に優れ、耐衝撃性及び流動性(成形性)にも優れた軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
なお、本発明において、「オイル類を実質的に含有しない」とは、プロセスオイルなどのオイル類の含有量が、樹脂組成物全体の1重量%以下のことをいう。
また、「適度の柔軟性」とは、成形体が工業分野の各種部品の構造体として適正且つ十分な剛性と、良好な衝撃吸収性に優れた必要な剛性を両立し得る柔軟性能をいい、具体的には、曲げ弾性率値で200〜500MPaの領域を定義する。
また、「耐糸引き性」とは、成形性に関する性質であり、例えば射出成形において、冷却工程を終了後、成形体を離型する際、成形体の残存スプルー先端などから溶融状態又は半溶融状態の樹脂材料が糸状に引き延ばされるいわゆる「糸引き」現象を生じ、成形作業性を低下させることがあるが、この現象の生じ難さをいう。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体100重量部に対して、特定のプロピレン系重合体樹脂30〜80重量部、特定のオレフィン系エラストマー又はスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー50〜150重量部及びエチレン系重合体0〜60重量部を含有し、オイル類を実質的に含有しない軟質系プロピレン系樹脂組成物とその成形体が、上記の課題を解決できることを見出し、これらの知見に基き、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(ア)100重量部に対して、下記のプロピレン系重合体樹脂(イ)30〜80重量部、下記の熱可塑性エラストマー(ウ)50〜150重量部及びエチレン系重合体(エ)0〜60重量部を含有し、オイル類を実質的に含有しないことを特徴とする軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(ア):次の(ア−i)〜(ア−iv)に規定する要件を有する。
(ア−i):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−A)を30〜95重量%、第2工程で成分(ア−A)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−B)を70〜5重量%逐次重合することで得られたものである。
(ア−ii):DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃である。
(ア−iii):固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(ア−iv):メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が2〜200g/10分である。
プロピレン系重合体樹脂(イ):上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(ア)に該当せず、かつ、次の(イ−i)及び(イ−ii)に規定する要件を有する。
(イ−i):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が5〜300g/10分である。
(イ−ii):プロピレン単独重合体部を60〜95重量%及びエチレン−プロピレン共重合体部を5〜40重量%(但し、プロピレン単独重合体部とエチレン−プロピレン共重合体部の合計量は100重量%である。)を含み、前記エチレン−プロピレン共重合体部のエチレン含量が25〜60重量%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂である。
熱可塑性エラストマー(ウ):次の(ウ−i)及び(ウ−ii)に規定する要件を有するオレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーから選ばれる。
(ウ−i):密度が0.86〜0.92g/cmである。
(ウ−ii):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜70g/10分である。
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、プロピレン系重合体樹脂(イ)が、さらに次の(イ−iii)に規定する要件を有することを特徴とする軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
(イ−iii):プロピレン単独重合体部の重量平均分子量(Mw−H)とプロピレン系重合体樹脂全体の重量平均分子量(Mw−W)の比[(Mw−H)/(Mw−W)]が、0.7未満である。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、熱可塑性エラストマー(ウ)が、さらに次の(ウ−iii)及び(ウ−iv)に規定する要件を有することを特徴とする軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
(ウ−iii):密度が0.860〜0.875g/cmである、
(ウ−iv):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が2〜15g/10分である。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、エチレン系重合体が(エ)が、高密度ポリエチレンであることを特徴とする軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体が提供される。
本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体は、前記した様な懸念を有するプロセスオイルなどのオイル類を、樹脂成分に実質的に含有させること無く適度の柔軟性を有し、さらに耐糸引き性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐高温傷付性に優れ、耐衝撃性及び流動性(成形性)にも優れる。
そのため、自動車部品や電気電子機器部品などの工業分野の各種部品、とりわけ比較的柔軟であって高温且つ紫外線曝露される雰囲気下において、耐候変色性、耐高温ベタツキ性などの性能を長期間保持する必要がある、マッドガードやバンパーなどに代表される自動車外装部品などの用途に、好適に用いることができる。
温度昇温溶離分別(TREF)による溶出量及び溶出量積算を示す図である。
本発明は、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体(ア)(以下、単に成分アともいう。)100重量部に対して、特定のプロピレン系重合体樹脂(イ)(以下、単に成分イともいう。)30〜80重量部、特定のオレフィン系エラストマー又はスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(ウ)(以下、単に成分ウともいう。)50〜150重量部及びエチレン系重合体(エ)(以下、単に成分エともいう。)0〜60重量部を含有し、オイル類を実質的に含有しないことを特徴とする軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体である。
以下、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物の各成分、その製造方法、及びその成形体の製造方法などについて、詳細に説明する。
I.軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分
1.成分ア:プロピレン−エチレンブロック共重合体(ア)
本発明において用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)は、次の(ア−i)〜(ア−iv)に規定する要件を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体であり、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、良好な成形性、柔軟性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐衝撃性などの機能を付与する特徴を有する。
なお、ここでいうプロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−A)(以下、成分(ア−A)ともいう。)と、該成分(ア−A)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−B)(以下、成分(ア−B)ともいう。)を、逐次重合することにより得られる、通称でのブロック共重合体であり、必ずしも成分(ア−A)と成分(ア−B)とが完全にブロック状に結合されたものでなくてもよい。
(ア−i):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−A)を30〜95重量%、第2工程で成分(ア−A)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−B)を70〜5重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ア−ii):DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃である。
(ア−iii):固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(ア−iv):メルトフローレート(以下、MFRとも記す)(230℃、2.16kg荷重)が2〜200g/10分である。
(1)製造
(i)メタロセン系触媒
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)の製造は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである。
メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する成分アを製造できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示す様な成分(a)、(b)、および必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物。
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分。
(b−1):有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体。
(b−2):成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体。
(b−3):固体酸微粒子。
(b−4):イオン交換性層状珪酸塩。
成分(c):有機アルミニウム化合物。
成分(a)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4−a )(C4−b )MeXY (1)
[ここで、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよい。R、Rは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を示す。a及びbは、置換基の数である。]
中でも、成分アの製造に好ましいものとしては、Qとして炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基を用いて架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物が挙げられ、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物が挙げられる。
成分(b)としては、前記した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
前記成分(b)の中で、特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式(2)
AlR3−a (2)
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Pは、水素、ハロゲン又はアルコキシ基、aは、0<a≦3の数を表わす。)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。又この他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
触媒の形成方法としては、前記の成分(a)と成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。なお、その接触方法は触媒を形成することができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
又、成分(a)と(b)及び(c)の使用量は、任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。
さらに、本発明にて使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
(ii)逐次重合
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)の製造に際しては、成分(ア−A)と成分(ア−B)を逐次重合することが必要である。
すなわち、本発明において成分アは、第1工程と第2工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、良好な成形性、柔軟性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐衝撃性を発現するために必要である。
又、本発明では、反応器への反応生成物の付着等の問題を防止するなどのために、成分(ア−A)を重合した後で、成分(ア−B)を重合する方法を用いることが必要である。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより、単一の反応器を用いても成分(ア−A)と成分(ア−B)を重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には、成分(ア−A)と成分(ア−B)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効果を阻害しない限り成分(ア−A)と成分(ア−B)の夫々について複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
(iii)重合プロセス
プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)の重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
成分(ア−B)は、炭化水素等の有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(ア−B)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
成分(ア−A)の製造に対しては、どのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(ア−A)を製造する場合には、反応器への反応生成物の付着等の問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
従って、連続法を用いて、先ず成分(ア−A)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き成分(ア−B)を気相法にて重合することが最も望ましい。
(iv)その他の重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって最適な圧力には差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
第1工程で成分(ア−A)、第2工程で成分(ア−B)の逐次重合を行う場合、第2工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する場合には、第2工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については、各種技術検討がなされており、一例として、特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などの公報に記載の方法を例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
(2)条件
(ア−i)
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)は、前記の様にメタロセン系触媒を用いて、第1工程で、プロピレン単独またはエチレン含量7重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−A)を30〜95重量%、第2工程で、成分(ア−A)よりも3〜20重量%多くのエチレンを、好ましくは6〜18重量%多くのエチレンを、より好ましくは8〜16重量%多くのエチレンを、含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−B)を70〜5重量%逐次重合する必要がある。ここで、第2工程成分(ア−B)と、第1工程成分(ア−A)のエチレン含量の差異が3重量%未満であると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の耐衝撃性、耐候変色性や耐高温ベタツキ性が低下するおそれがある。一方、20重量%を超えると、成分(ア−A)と成分(ア−B)との相溶性が低下するおそれがある。
すなわち、成分アにおいて、第1工程と第2工程でエチレン含量が所定の範囲で異なる成分を逐次重合することが、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、良好な成形性、柔軟性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐衝撃性を発現するために必要であり、又、反応器への反応生成物の付着等の問題を防止するなどのために、成分(ア−A)を重合した後で、成分(ア−B)を重合する方法を用いることが必要である。
(ア−ii)
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)のDSC(示差走査熱量計)法により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜150℃、好ましくは115〜148℃、より好ましくは120〜145℃の範囲にあることが必要である。
Tmが110℃未満であると、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の耐候変色性や耐高温ベタツキ性が低下するおそれがある。一方、150℃を超えると、柔軟性及び耐衝撃性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、融解ピーク温度(Tm)は、DSC(例えば、セイコー・インスツルメンツ社製DSC6200型及びそれと同等の機器)を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させる方法にて測定される。
(ア−iii)
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)は、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが必要である。
すなわち、本発明においては、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の成形性、柔軟性、耐衝撃性などを発現するなどのために、成分アにおける、成分(ア−A)と成分(ア−B)とが相分離していないことが必要であるが、その場合に、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを示すのである。
因みに、成分(ア−A)と成分(ア−B)とが相分離構造にある場合には、成分(ア−A)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(ア−B)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。
なお、本発明において、固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い、測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは、非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
(ア−iv)
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、2〜200g/10分、好ましくは3〜150g/10分、より好ましくは5〜50g/10分の範囲にあることが必要である。MFRが2g/10分未満であると、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、成形性(流動性)が低下するおそれがある。一方、200g/10分を超えると、耐糸引き性、耐高温ベタツキ性及び耐衝撃性が低下するおそれがある。
なお、この成分アは、2種以上を併用することもできる。
(3)配合量比
本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物における配合量は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)100重量部を基準とする。
2.成分イ:プロピレン系重合体樹脂(イ)
本発明において用いられるプロピレン系重合体樹脂(成分イ)は、前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(ア)に該当せず、かつ、(イ−i)に規定する要件を有するプロピレン系共重合体樹脂であり、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、良好な流動性及び耐糸引き性、適度の柔軟性、耐衝撃性などの機能を付与する特徴を有する。
(イ−i):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が5〜300g/10分である。
(1)条件
本発明に用いられる成分イは、前記の様にそのMFR(230℃、2.16kg荷重)が5〜300g/10分の範囲にあることが必要であり、好ましくは6〜250g/10分、さらに好ましくは10〜200g/10分の範囲である。MFRが5g/10分未満であると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の流動性や成形外観などが低下するおそれがある。一方、300g/10分を超えると耐糸引き性、耐高温ベタツキ性や耐衝撃性などが低下するおそれがある。なお、この成分イは、2種以上を併用することもできる。
(2)種類
本発明に用いられる成分イの種類は、特に限定されず、公知のプロピレン系重合体樹脂を用いることができる。例えば、プロピレン単独重合体樹脂、プロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂やプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂などのプロピレンとα−オレフィンとの共重合体樹脂、プロピレンとビニル化合物との共重合体樹脂、プロピレンとビニルエステルとの共重合体樹脂、プロピレンと不飽和有機酸又はその誘導体との共重合体樹脂、プロピレンと共役ジエンとの共重合体樹脂、プロピレンと非共役ポリエン類との共重合体樹脂及びこれらの混合物などが挙げられる。
中でも、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の流動性、耐糸引き性、耐候変色性、柔軟性、耐衝撃性などから、プロピレン単独重合体樹脂又はプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂が好ましく、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂がさらに好ましい。
このプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂においては、プロピレン単独重合体部(「結晶性ポリプロピレン部」ともいう。)を60〜95重量%及びエチレン−プロピレン共重合体部を5〜40重量%(但し、プロピレン単独重合体部とエチレン−プロピレン共重合体部の合計量は100重量%である。)を含み、前記エチレン−プロピレン共重合体部のエチレン含量が25〜60重量%、好ましくは30〜55重量%、さらに好ましくは35〜50重量%であるものが、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の流動性、耐糸引き性や耐衝撃性などをより高め、適度の柔軟性を付与できる点などから、好ましい(条件(イ−ii))。
さらに、プロピレン系重合体樹脂樹脂(イ)が、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂である場合においては、プロピレン単独重合体部の重量平均分子量(Mw−H)とプロピレン系重合体樹脂全体の重量平均分子量(Mw−W)の比[(Mw−H)/(Mw−W)]が通常は0.9未満、好ましくは0.8未満、さらに好ましくは0.7未満であるものが、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の流動性、耐糸引き性や耐衝撃性などをより一層高め、適度の柔軟性を付与できる点などから、好ましい(条件(イ−iii))。
本発明において、プロピレン系重合体樹脂全体の重量平均分子量(Mw−W)及びプロピレン単独重合体部の重量平均分子量(Mw−H)は、以下の方法にて求める。すなわち、特許文献:特開2008−189893号公報に記載されている方法にて、プロピレン系重合体樹脂全体の重量平均分子量(Mw−W)及びプロピレン単独重合体部の重量平均分子量(Mw−H)を測定して求める。具体的には、成分イの100℃から140℃において、オルトジクロルベンゼン(ODCB)に溶出する成分をプロピレン単独重合体部と定義する。
すなわち、溶媒として、オルトジクロロベンゼンを用いて昇温し、100℃〜140℃以下で溶出する成分を抽出し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量を求め、(Mw−H)とする。
また、140℃までのオルトジクロルベンゼンにて溶出する全ての成分をGPCにより重量平均分子量を求め、プロピレン系重合体樹脂全体の重量平均分子量(Mw−W)とする。
(3)製造
本発明に用いられる成分イの製造方法は、本願規定の成分イを製造することができれば、特に限定されず、例えば以下に示す方法で製造することができる。
(i)重合用反応器
重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる撹拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、撹拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
(ii)重合触媒
重合触媒は、その必要とする全量を重合開始時に存在させ、重合当初から重合に関与させることが好ましく、重合開始後、新たに触媒を追加しないことが好ましい。この場合、パウダー性状の悪化やゲル発生を抑制ことができる。
重合触媒の種類は、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、或いはメタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報に開示。)が使用できる。
ここで、助触媒として例えば有機アルミニウム化合物を使用することができる。
又、前記の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御などを目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチルなどを挙げることができる。
(iii)重合形式及び重合溶媒
重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエンなどの不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、又、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。又、これらの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。
例えば、成分イが、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂の場合、プロピレン重合体部分の重合をバルク重合で行い、エチレン−プロピレン共重合体部分の重合を気相重合で行う方法や、プロピレン重合体部分の重合をバルク重合と続いて気相重合で行い、エチレン−プロピレン共重合体部分の重合は気相重合で行う方法などが挙げられる。
(iv)重合圧力
本発明の成分イの重合においては、重合圧力は特に限定されず、一定で行うことも随時変化させることも可能である。通常、大気圧に対する相対圧力で0.1〜5MPa、好ましくは0.3〜2MPa程度で実施するのが好ましい。
(v)重合温度
本発明において、成分イの重合温度に関しては、特に限定されないが、通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲から選択される。この重合温度は、重合開始時と重合終了時において同一でも異なっていても良い。
(vi)重合時間
本発明において、成分イの重合時間も、特に限定されないが、通常30分〜10時間で実施される。例えば、成分イが、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂の場合、プロピレン重合体部分の製造は、気相重合で2〜5時間、バルク重合で30分〜2時間、スラリー重合で4〜8時間を標準とし、また、エチレン−プロピレン共重合体部分は、気相重合で1〜3時間、バルク重合で20分〜1時間、スラリー重合で1〜3時間を標準とする。
ここで、成分イが、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂の場合、プロピレン重合体部分は、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の適度の柔軟性付与の点などから、プロピレンの単独重合体樹脂であることが好ましいが、成形性などの点からプロピレンと少量のコモノマーとの共重合体樹脂であってもよい。
この共重合体樹脂にあっては、具体的には、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、及びビニルノルボルナンなどのビニル化合物からなる群から選ばれる1以上のコモノマーに相応するコモノマー単位を、好ましくは5重量%以下の含量で含むことができる。これらのコモノマーは、二種以上が共重合されていてもよい。コモノマーは、エチレン及び/又は1−ブテンであるのが好ましく、最も好ましいのはエチレンである。
ここで、コモノマー単位の含量は、赤外分光分析法(IR)にて求めた値である。
通常プロピレン重合体部分の重合に続いて、エチレン−プロピレン共重合体部分の重合を行う。
(4)配合量比
本発明に用いられる成分イの配合割合は、成分ア100重量部に対して、30〜80重量部、好ましくは35〜70重量部、さらに好ましくは40〜60重量部である。成分イが30重量部未満であると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の流動性、耐糸引き性、耐衝撃性などが低下し、適度の柔軟性が損なわれるおそれがある(過柔軟)。一方、80重量部を超えると耐糸引き性、耐衝撃性などが低下し、適度の柔軟性が損なわれるおそれがある(柔軟性不足)。
3.成分ウ:熱可塑性エラストマー(ウ)
本発明において用いられる熱可塑性エラストマー(成分ウ)は、下記条件(ウ−i)及び(ウ−ii)に規定する要件を有するオレフィン系エラストマー及び/又はスチレン系エラストマーであり、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、適度の柔軟性、良好な耐衝撃性及び流動性などの機能を付与する特徴を有する。
(ウ−i):密度が0.86〜0.92g/cmである。
(ウ−ii):MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜70g/10分である。
(1)条件
本発明に用いられる成分ウは、前記の様にその密度は、0.86〜0.92g/cm、好ましくは0.86〜0.90g/cm、さらに好ましくは0.860〜0.875g/cmの範囲内にある。
密度が0.86g/cm未満であると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、耐高温ベタツキ性が低下し、適度の柔軟性を得ることができず(過柔軟)、0.92g/cmを超えると、耐衝撃性が低下するおそれがある。
又、成分ウのMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.5〜70g/10分の範囲にあることが必要であり、好ましくは1.5〜50g/10分、さらに好ましくは2〜15g/10分の範囲内である。MFRが0.5g/10分未満であると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の成形性(流動性)、成形外観などが低下するおそれがあり、70g/10分を超えると、耐糸引き性、耐高温ベタツキ性、耐候変色性や耐衝撃性が低下するおそれがある。
(2)種類
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(成分ウ)は、オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどを挙げられることができる。
又、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体エラストマー(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(SEP)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(SEBC)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SBBS)、部分水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体エラストマー、部分水添スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体エラストマーなどのスチレン系エラストマー、さらにエチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(CEBC)などの水添ポリマー系エラストマーなどを挙げることができる。
中でも、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)及び/又はエチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)を使用すると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、適度の柔軟性などが付与し易く、耐衝撃性及び流動性などの性能がより優れ、経済性にも優れる傾向にあるなどの点から好ましい。
なお、この成分ウは、2種以上を併用することもできる。
(3)製造
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(成分ウ)は、例えばオレフィン系エラストマーにおいては、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーや、エチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどは、各モノマーを触媒の存在下、重合することにより製造される。触媒としては、例えばハロゲン化チタンの様なチタン化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体の様な有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、またはアルキルアルミニウムクロリドなどのいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号パンフレットなどに記載のメタロセン化合物触媒などを使用することができる。
重合法としては、気相流動床法、溶液法、スラリー法などの製造プロセスを適用して重合することができる。
又、成分ウのうち、スチレン系エラストマーは、通常のアニオン重合法及びそのポリマー水添技術などにより製造することができる。
(4)配合量比
本発明に用いられる成分ウの配合割合は、成分ア100重量部に対して、50〜150重量部、好ましくは60〜140重量部、さらに好ましくは70〜120重量部である。
成分ウが50重量部未満であると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の耐衝撃性が低下し、適度の柔軟性が損なわれるおそれがある(柔軟性不足)。一方、150重量部を超えると耐糸引き性、耐高温傷付性などが低下し、適度の柔軟性が損なわれるおそれがある(過柔軟)。
4.成分エ:エチレン系重合体(エ)
本発明において用いられるエチレン系重合体(成分エ)は、エチレン単独重合体、又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、良好な耐高温傷付性、耐衝撃性や寸法安定性などの機能を付与する特徴を有する。
(1)種類
本発明において用いられる成分エの種類としては、エチレン単独重合体や、エチレンと、各種のα−オレフィンすなわち例えばプロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ペンテン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1などとの共重合体が挙げられる。中でも高密度ポリエチレンや低密度ポリエチレンが前記性能を付与する効果が高く好ましく、高密度ポリエチレンがさらに好ましい。
該高密度ポリエチレンとしては、MFR(190℃、2.16kg荷重)が5g/10分以上50g/10分以下であるものが、耐高温傷付性をより向上させる点などから好ましい。
(2)製造
本発明において用いられる成分エは、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒などの公知の各種触媒を用いてエチレンを主として重合することにより得られる。例えば、一般的には、チタン、ジルコニウム等の遷移金属化合物、マグネシウム化合物からなるチーグラー触媒、酸化クロム系触媒を代表とするフィリップス触媒およびジルコニウム、ハフニウム、チタン等の遷移金属化合物に少なくとも1つのシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基を有するメタロセン系触媒が重合触媒として挙げられる。
(3)配合量比
本発明に用いられる成分エの配合割合は、成分ア100重量部に対して、0〜60重量部、好ましくは10〜50重量部、さらに好ましくは20〜40重量部である。
成分ウが60重量部を超えると、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の耐衝撃性が低下し、適度の柔軟性が損なわれるおそれがある(過柔軟)。
5.任意添加成分
本発明においては、前記成分ア〜成分エ以外に、さらに必要に応じ、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、例えば発明効果を一層向上させたり、他の効果を付与するなどのため、任意添加成分を配合することができる。
具体的には、顔料などの着色剤、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、タルク・ガラス繊維などの有機又は無機フィラー、ソルビトール系などの造核剤、フェノール系、リン系などの酸化防止剤、非イオン系などの帯電防止剤、無機化合物などの中和剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、可塑剤、有機金属塩系などの分散剤、脂肪酸アミド系などの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤や、前記成分ア、イ及びエ以外のポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、前記成分ウ以外のエラストマー(ゴム成分)などを挙げることができる。
これらの任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、組成物に添加してもよいし、前記成分ア〜成分エの各成分に添加されていてもよく、夫々の成分においても2種以上併用することもできる。
着色剤として、例えば無機系や有機系の顔料などは、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の、着色外観、見映え、風合い、商品価値、耐候性や耐久性などの付与、向上などに有効である。
具体例として、無機系顔料としては、ファーネスカーボン、ケッチェンカーボンなどのカーボンブラック;酸化チタン;酸化鉄(ベンガラ等);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物などが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
光安定剤や紫外線吸収剤として、例えばヒンダードアミン化合物、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系やサリシレート系などは、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の耐候性や耐久性などの付与、向上に有効であり、耐候変色性の一層の向上に有効である。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート;2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
ここで、前記光安定剤と紫外線吸収剤とを併用する方法は、耐候性、耐久性、耐候変色性などの向上効果が大きく好ましい。
タルク・ガラス繊維などの有機又は無機フィラーは、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体において、強度、寸法安定性や経済性などの向上に有効である。
例えば無機フィラーとして、シリカ、ケイ藻土、バリウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルンなどの酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイトなどのケイ酸塩、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維などを挙げることができる。
一方、有機フィラーとしては、例えば、モミ殻などの殻繊維、木粉、木綿、ジュート、紙細片、セロハン片、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、各種有機繊維、熱硬化性樹脂粉末などを挙げることができる。
中でも、強度、寸法安定性や経済性などの向上効果度合が大きいなどの点から、ガラス繊維、タルク及びポリエステル繊維などの各種有機繊維(含有樹脂ペレット、マスター樹脂ペレット含む)が好ましい。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系の酸化防止剤などは、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の、耐熱安定性、加工安定性、耐熱老化性などの付与、向上などに有効である。
帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の帯電防止性の付与、向上に有効である。
II.軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法、成形体の製造方法及び用途
本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物は、前記成分ア〜成分ウと、必要に応じ任意添加成分である成分エを、前記配合割合で、従来公知の方法で配合・溶融混練することにより製造することができる。混合は、通常、タンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機器を用いて行い、溶融混練は、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーなどの混練機器を用いて溶融混練し、造粒する。溶融混練・造粒して製造する際には、前記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば、先ず成分アの一部又は全部と、成分ウの一部とを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
本発明の成形体は、前記方法で製造された軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物を、例えば、射出成形(ガス射出成形、二色射出成形、コアバック射出成形、サンドイッチ射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、シート成形及び中空成形機などの周知の成形方法にて成形することによって得ることができる。この内、射出成形又は射出圧縮成形にて得ることが好ましい。
本発明の成形体は、適度の柔軟性を有し、耐糸引き性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐高温傷付性に優れ、耐衝撃性及び流動性(成形性)にも優れる。
そのため、これらの性能をバランスよく、より高度に必要とされる用途、例えば自動車部品や電気電子機器部品などの工業分野の各種部品、とりわけ比較的柔軟であって高温且つ紫外線曝露される雰囲気下において、耐候変色性、耐高温ベタツキ性などの性能を長期間保持する必要がある、マッドガードやバンパーなどに代表される自動車外装部品などの用途に、好適に用いることができる。
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
1.評価方法、分析方法
(1)耐糸引き性:下記要領にて評価する。
・成形機=東芝機械社製EC20型射出成形機。
・金型=物性評価用平板状試験片(10×80×4t(mm))2個取り。
・成形条件=成形温度220℃、金型温度30℃、射出圧力50MPa、
射出時間5秒、冷却時間20秒、成形機反復10mm、型開距離250mm。
・耐糸引き性の判定=上記試験片の成形スプルー先端からの糸引き(半)溶融樹脂の長さから次の様に判定した。この場合、○及び◎が良好及び非常に良好で実用的である。
◎:1cm未満、○:1cm以上、3cm未満、×:3cm以上。
(2)耐候変色性;下記要領にて評価する。
・試験片=150×150×3t(mm)のシート(東芝機械社製IS170型射出成形機にて成形)。
・耐候性試験機=スガ試験機社製S80H・B・BR
・耐候曝露条件=83℃、雨あり、曝露時間1000Hr。
・耐候変色性の判定=色差計(日本電色工業社製:SE−2000)でJIS Z−8722に準拠し、試験前後の試験片において色差ΔEを測定した。このΔEの値から次の様に判定する。この場合、○が良好で実用的である。
○:ΔEが3未満、×:ΔEが3以上。
(3)耐高温ベタツキ性;下記要領にて評価する。
・試験片=前記耐候変色性用と同一。
・送風定温乾燥器=ヤマト科学社製DK340S
・耐高温ベタツキ性の試験・判定=試験片を80℃設定の上記乾燥器中に500Hr静置後取り出し、表面状態を観察して次の様に判定する。この場合、○が良好で実用的である。
○:表面が高温処理前と変わらず、オイル成分などが認められない。
×:表面にオイル成分が認められ、べとつく。
(4)耐高温傷付性;下記要領にて評価する。
・試験片=前記耐候変色性用と同一。
・送風定温乾燥器=前記耐候変色性用と同一。
・耐高温傷付性の試験・判定=試験片を80℃設定の上記乾燥器中に1Hr静置し、取り出し後15秒後に、ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT社製の「SCRATCH & MAR TESTER」を用いて、荷重:10Nにて、形状(曲率半径0.5mm、ボール状)加工を施した引掻先端にて、引掻速度=100mm/分で耐傷付性試験を実施する。試験温度は23℃である。引掻傷の形態を目視判定する。この場合、◎及び○が良好で実用的である。
◎:ささくれが認められない、○:ささくれが僅かに認められるが目立ち難い、×:ささくれが明確に認められる。
(5)柔軟性;曲げ弾性率をJIS K7171に準拠して測定する。試験温度は23℃である。試験片は前記物性評価用試験片を用いる。
(6)耐衝撃性;シャルピー衝撃強度(ノッチ付)をJIS K7111に準拠して測定する。試験温度は−30℃である。試験片は前記物性評価用試験片を用いる。
(7)流動性(MFR):JIS K7210に準拠して、試験温度:230℃、荷重:2.16kgで測定する。該MFRは、主に成形性を表す指標であって、数値が大きい程、流動性が良好である。
(8)成分(ア−A)及び成分(ア−B)などの特定:
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布を、温度昇温溶離分別(TREF、以下、単にTREFともいう。)により評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明に用いられる成分アにおける、成分(ア−A)及び成分(ア−B)などの特定は、TREFによる。
具体的な方法を、図1のTREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図を用いて説明する。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(ア−A)と(ア−B)は結晶性の違いにより各々T(A)とT(B)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(A)+T(B)}/2)において、ほぼ分離が可能である。
又、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(ア−B)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(ア−B)の濃度は検出される。)。
このとき、T(B)は、測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することが出来ないため、このような場合にはT(B)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(B)重量%、T(C)以上で溶出する部分の積算量をW(A)重量%と定義すると、W(B)は結晶性が低いあるいは非晶性の成分(ア−B)の量とほとんど対応しており、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(A)は結晶性が比較的高い成分(ア−A)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は図1に例示するように行う。
(a)TREF測定方法
本発明においては、TREFの測定は具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でオルトジクロルベンゼン(ODCB(0.5mg/mLBHT入り))に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるODCB(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のODCBに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
装置などの概要は、下記の通りである。
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
注入方式:ループ注入方式
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
(b)成分(ア−A)及び成分(ア−B)中のエチレン含量の特定
(イ)成分(ア−A)と成分(ア−B)の分離:
先のTREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)における可溶成分(ア−B)とT(C)における不溶成分(ア−A)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
Macromolecules;21,314−319(1988)
具体的には、本発明において以下の方法を用いる。
(ロ)分別条件:
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。
次に、140℃で溶解したサンプルのODCB溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(C)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のODCBを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間保持後、140℃の溶媒(ODCB)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
(ハ)13C−NMRによるエチレン含量の測定:
前記分別により得られた成分(ア−A)と成分(ア−B)それぞれについてのエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製GSX−400(炭素核共鳴周波数400MHz)
溶媒:ODCB/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば以下の文献等を参考に行えばよい。
Macromolecules;17,1950(1984)
上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表の通りである。表中Sαα等の記号は以下の文献の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Carman,Macromolecules;10,536(1977)
Figure 0005427818
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の<1>〜<6>の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) <1>
[PPE]=k×I(Tβδ) <2>
[EPE]=k×I(Tδδ) <3>
[PEP]=k×I(Sββ) <4>
[PEE]=k×I(Sβδ) <5>
[EEE]=k×[I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} <6>
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば、[PPP]は、全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。
従って、[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 <7>である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記<1>〜<7>の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明に係るプロピレンランダム共重合体には、少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
Figure 0005427818
正確なエチレン含有量を求めるには、これら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本発明におけるエチレン含有量は、実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ触媒で製造された共重合体の解析と同じく、<1>〜<7>の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXは、モル%表示でのエチレン含有量である。また、プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量[E]Wは、上記より測定された成分(B−A)と成分(B−B)それぞれのエチレン含量[E]Aと[E]B及びTREFより算出される各成分の重量比率W(A)とW(B)重量%から以下の式により算出される。
[E]W={[E]A×W(A)+[E]B×W(B)}/100 (重量%)
(9)融解ピーク温度(Tm):
セイコー・インスツルメンツ社製DSC6200型を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させて測定する。
(10)tanδ曲線のピーク:
固体粘弾性測定により測定する。試料は下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いる。
装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いる。
規格番号:JIS−7152(ISO294−1)
周波数:1Hz
測定温度:−60℃から段階状に昇温し、試料が融解するまで。
歪:0.1〜0.5%の範囲
成形機:東洋機械金属社製TU−15射出成形機
成形機設定温度:ホッパ下から80,80,160,200,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:200mm/秒(金型キャビティー内の速度)
射出圧力:800kgf/cm
保持圧力:800kgf/cm
保圧時間:40秒
金型形状:平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
(11)密度:JIS K7112に準拠して測定する。
(12)成分イのエチレン−プロピレン共重合部の含有量及びエチレン含量:
クロス分別装置及びFT−IRなどを用いて測定する。その測定条件などは例えば特許文献:特開2008−189893号公報の記載に基づき決定される。
具体的条件は下記の通りである。
・使用する分析装置
(i)クロス分別装置:
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析:
FT−IR・パーキンエルマー社製 1760X
CFC検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT―IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm・光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルバーミエーションクロマトグラフィー(GPC):
CFCの後段に、GPCカラム(昭和電工社製 AD806MS)を3本直列に接続して使用する。
・CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:昇温溶出分別時の分別温度は、40,100,140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT―IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1ml/分
・FT―IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定あたりの積算回数:15回
(13)成分イの(Mw−H)/(Mw−W):
成分イの100℃から140℃において、オルトジクロロベンゼンに溶出する成分をプロピレン単独重合体部と定義する。
プロピレン系重合体全体の重量平均分子量(Mw−W)及びプロピレン単独重合体部の重量平均分子量(Mw−H)は、前記I−2−(2)項の方法にて求める。
2.材料
(1)成分ア:プロピレン−エチレンブロック共重合体
(以下いずれも酸化防止剤、中和剤を添加済のペレットである。)
ア−1:日本ポリプロ社製ポリプロピレンの下記組成・物性のグレードを用いた。
該材料は、メタロセン系触媒で重合され、第1工程でエチレン含量2.0重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−A)を56.2重量%、第2工程で成分(ア−A)よりも9.2重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−B)を43.8重量%逐次重合することで得られたもので、DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が135.5℃で、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が−8℃に単一のピークを有し、共重合体全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が20g/10分のもの。
(2)成分イ:プロピレン系重合体樹脂
イ−1:日本ポリプロ社製ノバテックPPの下記組成・物性のグレードを用いた。
該材料は、チーグラー・ナッタ触媒で重合されたプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂であり、共重合体樹脂全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が100g/10分であり、プロピレン単独重合体部を90.2重量%含み、エチレン−プロピレン共重合体部を9.8重量%含み、エチレン−プロピレン共重合体部のエチレン含量が35重量%であり、(Mw−H)/(Mw−W)が0.89であるもの。
イ−2:日本ポリプロ社製ノバテックPPの下記組成・物性のグレードを用いた。
該材料は、チーグラー・ナッタ触媒で重合されたプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂であり、共重合体樹脂全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が105g/10分であり、プロピレン単独重合体部を92.1重量%含み、エチレン−プロピレン共重合体部を7.9重量%含み、エチレン−プロピレン共重合体部のエチレン含量が36重量%であり、(Mw−H)/(Mw−W)が0.66であるもの。
(3)成分ウ:熱可塑性エラストマー
ウ−1:エンゲージ8200(ダウケミカル日本社製、エチレン−オクテン共重合体エラストマー、MFR(230℃、2.16kg荷重)10g/10分、密度0.872g/cm。形状=ペレット)。
ウ−2:タフマーA1050S(三井化学社製、エチレン−ブテン共重合体エラストマー、MFR(230℃、2.16kg荷重)2g/10分、密度0.862g/cm。形状=ペレット)。
(4)成分エ:エチレン系重合体
エ−1:日本ポリエチレン社製ノバテックHD(高密度ポリエチレン)の下記組成のグレードを用いた。MFR(190℃、2.16kg荷重)20g/10分、密度0.958g/cm。)。
(5)その他(成分オ):プロセスオイル
オ−1:ダイアナプロセスオイルPW−90(出光興産社製)。
3.実施例及び比較例
[実施例1〜4、比較例1〜4]
(1)軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物の製造
前記の成分ア〜成分オを、下記の添加剤、着色剤とともに表3に示す割合で配合し、下記の条件で混練、造粒し、製造した。
この際、該組成物全体100重量部当たり、BASF社製IRGANOX1010を0.1重量部、BASF社製IRGAFOS168を0.05重量部、ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートを0.3重量部、着色剤として、三菱化学社製三菱カーボンブラック#40を0.5重量部を夫々配合した。
混練装置:テクノベル社製「KZW−25−45−MG」型2軸押出機。
混練条件:温度=200℃、スクリュー回転数=400rpm、吐出量=15kg/Hr。
Figure 0005427818
(2)軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物の成形
前記の造粒したペレットを用い、前記評価方法に示した要領で、夫々の評価用試験片を成形した。
(3)評価
前記の成形したものについて、性能評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 0005427818
表3及び4に示す結果から、本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の発明要件を満たしている実施例1〜4は、適度の柔軟性を有し、耐糸引き性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐高温傷付性に優れ、耐衝撃性及び流動性(成形性)にも優れる。
そのため、これらの性能をバランスよく、より高度に必要とされる用途、例えば自動車部品や電気電子機器部品などの工業分野の各種部品、とりわけ比較的柔軟であって高温且つ紫外線曝露される雰囲気下において、耐候変色性、耐高温ベタツキ性などの性能を長期間保持する必要がある、マッドガードやバンパーなどに代表される自動車外装部品などの用途に、好適に用いることが明白になっている。
一方、上記本発明の特定事項を満たさない比較例において、比較例1〜4に示す組成を持った軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体は、これらの性能バランスが不良で、実施例1〜4のものに対して見劣りしている。
例えば、(1)成分アを含有しない比較例1は、耐高温傷付性及び柔軟性において、実施例1及び2と著しい差異が生じた。これは、成分アの含有量が、本発明の要件を満たさないためと考えられる。
又、(2)成分イを含有しない比較例2は、耐糸引き性及び柔軟性において、実施例1及び2と著しい差異が生じた。これは、成分イの含有量が、本発明の要件を満たさないためと考えられる。
又、(3)成分アを含有せず成分オを含有する比較例3は、耐候変色性、耐高温ベタツキ性及び柔軟性において、実施例1と著しい差異が生じた。これは、成分イの含有量及び成分オの含有が、本発明の要件を満たさないためと考えられる。
又、(4)成分オを含有する比較例4は、耐候変色性、耐高温ベタツキ性及び柔軟性において、実施例1と著しい差異が生じた。これは、成分オの含有が、本発明の要件を満たさないためと考えられる。
本発明の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体は、適度の柔軟性を有し、耐糸引き性、耐候変色性、耐高温ベタツキ性、耐高温傷付性に優れ、耐衝撃性及び流動性(成形性)にも優れるため、これらの性能をバランスよく、より高度に必要とされる用途、例えば自動車部品や電気電子機器部品などの工業分野の各種部品、とりわけ比較的柔軟であって高温且つ紫外線曝露される雰囲気下において、耐候変色性、耐高温ベタツキ性などの性能を長期間保持する必要がある、マッドガードやバンパーなどに代表される自動車外装部品などの用途に、好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 下記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(ア)100重量部に対して、下記のプロピレン系重合体樹脂(イ)30〜80重量部、下記の熱可塑性エラストマー(ウ)50〜150重量部及びエチレン系重合体(エ)0〜60重量部を含有し、オイル類を実質的に含有しないことを特徴とする軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物。
    プロピレン−エチレンブロック共重合体(ア):次の(ア−i)〜(ア−iv)に規定する要件を有する。
    (ア−i):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−A)を30〜95重量%、第2工程で成分(ア−A)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(ア−B)を70〜5重量%逐次重合することで得られたものである。
    (ア−ii):DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃である。
    (ア−iii):固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
    (ア−iv):メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が2〜200g/10分である。
    プロピレン系重合体樹脂(イ):上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(ア)に該当せず、かつ、次の(イ−i)及び(イ−ii)に規定する要件を有する。
    (イ−i):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が5〜300g/10分である。
    (イ−ii):プロピレン単独重合体部を60〜95重量%及びエチレン−プロピレン共重合体部を5〜40重量%(但し、プロピレン単独重合体部とエチレン−プロピレン共重合体部の合計量は100重量%である。)を含み、前記エチレン−プロピレン共重合体部のエチレン含量が25〜60重量%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂である。
    熱可塑性エラストマー(ウ):次の(ウ−i)及び(ウ−ii)に規定する要件を有するオレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーから選ばれる。
    (ウ−i):密度が0.86〜0.92g/cmである。
    (ウ−ii):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜70g/10分である。
  2. プロピレン系重合体樹脂(イ)が、さらに次の(イ−iii)に規定する要件を有することを特徴とする請求項に記載の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物。
    (イ−iii):プロピレン単独重合体部の重量平均分子量(Mw−H)とプロピレン系重合体樹脂全体の重量平均分子量(Mw−W)の比[(Mw−H)/(Mw−W)]が、0.7未満である。
  3. 熱可塑性エラストマー(ウ)が、さらに次の(ウ−iii)及び(ウ−iv)に規定する要件を有することを特徴とする請求項1または2に記載の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物。
    (ウ−iii):密度が0.860〜0.875g/cmである。
    (ウ−iv):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が2〜15g/10分である。
  4. エチレン系重合体(エ)が、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の軟質系ポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
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