以下、本願に開示する技術内容をその実施例を示す図面に基づいて詳述する。本願に係る手書き入力装置は、パーソナルコンピュータ等の据え置き型装置、携帯電話、携帯型コンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯型装置、金融機関の現金自動預け払い機等の設置型装置等の各種装置に適用される。適用方法としては、プログラムを実行することにより実現するソフトウェアとして適用しても良く、また各種組み込み回路、周辺機器等のハードウェアとして適用するようにしても良い。
(実施例1)
先ず、実施例1に係る手書き入力装置のハードウェア構成について説明する。図1は、本願実施例1に係る手書き入力装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図1中1は、据え置き型装置、携帯型装置、設置型装置等の各種装置を用いた手書き入力装置である。なお以下の説明においては、据え置き型のパーソナルコンピュータを用いて本願に係る手書き入力装置1を実現する例を説明する。手書き入力装置1は、制御部10、記録部11、操作入力部12、手書き入力部13、表示部14等の各種機構を備えている。
制御部10は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit )等の演算機構である。制御部10は、内部通信線を介して手書き入力装置1のハードウェア各部と接続されており、手書き入力プログラムPRG等の各種プログラムの手順に従って所定の処理を実行する。制御部10は、命令レジスタ(Instruction Register)、命令解読回路(Instruction Decoder)、演算回路(Arithmetic Logic Unit)、アキュムレータ(Accumulator)、番地レジスタ(Address Register)、プログラムカウンタ(Program Counter)等の各種回路を備えている。命令レジスタは、記録部11から読み込んだ命令を一時的に格納する。命令解読回路は、命令レジスタに格納されている機械語命令(2進数)を解読し、その命令に応じて手書き入力装置1が有するハードウェア各部を制御する。演算回路は、命令解読回路からの制御に従って加算、減算、数値の比較等の演算を行う。アキュムレータは、演算対象のデータ、演算の結果等の情報を一時的に格納する。番地レジスタは、制御部10が読み書きする記録部11が有する記録領域の番地を格納する。プログラムカウンタは、次に実行すべき命令が格納されている記録部11が有する記憶領域の番地を示す。また制御部10は、計時に要するタイマを備えている。
記録部11は、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録機構、SSD(Solid State Disk)等の不揮発性半導体記録機構等の記録機構、及びRAM(Random Access Memory)等の揮発性記録機構等の記録機構である。記録部11には、本願に係る手書き入力プログラムPRGが記録されており、記録部11に記録されている手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することで、手書き入力装置1は、本願に係る各種機能を実現する。手書き入力プログラムPRGは、例えばCD−ROM等の記録媒体からの読み込み、インターネット等の通信網を介してのダウンロード等の方法で記録部11に記録される。なお、記録部11には、本願に係る手書き入力プログラムPRGだけでなく、様々な処理を実行する様々なコンピュータプログラムが記録されている。
操作入力部12は、入力者の操作を受け付けるインターフェース機構である。操作入力部12は、入力者の操作に応じた信号を、内部通信線を介して制御部10へ出力する。操作入力部は、例えばキーボード、マウス、及びその付属回路、付属プログラム等の機構として構成される。
手書き入力部13は、入力者の手書き入力を受け付けるインターフェース機構である。手書き入力部13は、入力者の入力に応じた信号を、内部通信線を介して制御部10へ出力する。手書き入力部13は、ペン入力型タブレット、液晶タッチパネル、及びその付属回路、付属プログラム等の機構として構成され、例えばタッチパネルの入力面に対するスタイラスペン等の入力具又は指先の軌跡を、筆跡の入力として受け付ける。
表示部14は、画像を出力するインターフェース機構である。表示部14は、制御部10からの制御命令に基づいて映像を出力する液晶ディスプレイ、液晶タッチパネル、及びその付属回路、付属プログラム等の機構にて構成される。
次に、実施例1に係る手書き入力装置1の機能構成について説明する。図2は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の機能構成例を示す機能ブロック図である。手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g等の機能を実行させる。なお、手書き入力プログラムPRGの実行ではなく、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g等の機能を実現する回路を組み込むようにしても良い。
受付部10aは、手書き入力部13から入力された筆跡を受け付けるように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。受付部10aは、例えば、手書き入力部13又は表示部14上での位置を示す座標のデータ及び移動を示す命令として筆跡の入力を受け付ける。
表示出力部10bは、受付部10aが受け付けた筆跡等の画像を表示部14に表示するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。
筆跡長算出部10cは、表示部14に表示させている筆跡の長さを算出するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。筆跡長は、例えば、表示させている筆跡の画素数の合計値、筆跡から抽出された抽出点間の距離の積算値等の値を求めることにより算出される。
消去判定部10dは、筆跡長算出部10cが算出した筆跡長を所定長と比較するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。消去判定部10dの比較結果に基づいて、筆跡の消去の要否が決定される。
消去処理部10eは、消去判定部10dの比較により、筆跡長が所定長を超えると判定した場合に、表示させている筆跡を先に表示させた部分から消去するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。消去処理部10eは、筆跡の長さが所定長を超える場合に、所定長以下となるように筆跡を消去する。なお、筆跡の受付が完了した場合に、表示させている筆跡を全て消去する等のように所定条件を満足した場合にも消去処理が行われる。消去処理部10eの処理により一部又は全部を消去後の筆跡は、表示出力部10bから表示部14に表示(消去)命令として出力され、表示部14に表示されている筆跡の一部又は全部が消去される。
完了判定部10fは、筆跡の入力の受付を完了したか否かを判定するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。完了判定部10fは、例えば筆跡の入力に用いている入力具が手書き入力部13から離れた(ペンアップ)ことを検出した場合に、筆跡の入力の受付を完了したと判定する。
認証処理部10gは、入力を受け付けた筆跡に基づいて認証処理を実行するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。認証処理部10gは、筆跡を示す筆跡情報に基づいて、文字認識処理、筆跡パターンのマッチングによる認証処理、パスワード照合処理等の各種認証処理を実行する。
また、手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、記録部11の記録領域の一部を、筆跡情報記録部11a、認証用情報記録部11b、消去条件保持部11c、完了条件保持部11d等の情報記録領域として使用可能にする。
筆跡情報記録部11aは、入力を受け付けた筆跡を筆跡情報として記録する情報記録領域である。筆跡情報記録部11aには、消去により表示部14には表示していない筆跡も含め、入力を受け付けた全ての筆跡を記録している。記録している筆跡情報は、認証処理部10gによる認証処理等の各種処理に用いられる。なお、制御部10のレジスタ等の揮発性メモリの一部を、筆跡情報記録部11aとして用いる情報記録領域として使用にするようにしても良い。
認証用情報記録部11bは、認証処理部10gによる認証に用いる認証用情報を記録する情報記録領域である。例えば、筆跡から文字認識をするために用いられる情報、筆跡認証に用いられる個人の筆跡の特徴を示した情報、照合に用いられるパスワード等の情報が認証用情報記録部11bに記録される認証用情報となる。
消去条件保持部11cは、消去判定部10dが筆跡長と比較する所定長等の消去条件を記録する情報記録領域である。なお、消去条件保持部11cは、必ずしも独立した記録領域として確保する必要はない。例えば、消去判定部10dとして実行されるプログラムモジュール内に消去条件を作り込むようにしても良い。
完了条件保持部11dは、完了判定部10fが完了したか否かを判定する条件を記録する情報記録領域である。なお、完了条件保持部11dは、必ずしも独立した記録領域として確保する必要はない。例えば、完了判定部10fとして実行されるプログラムモジュール内に完了条件を作り込むようにしても良い。
ここで、手書き入力装置1における基本的な処理として、筆跡長算出部10cの処理及び筆跡情報記録部11aの記録内容について説明する。図3は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の筆跡長算出部10cの処理の一例を概念的に示す説明図である。筆跡長算出部10cによる処理として、筆跡から抽出された抽出点間の距離の積算値として筆跡長を算出する方法を説明する。図3Aは、筆跡として手書き入力を受け付けた文字「あ」を示している。図3B〜図3Dは、「あ」を構成する各筆画を示している。受付部10aは、手書き入力の受付に際し、所定の時間間隔又は所定の長さ毎等、事前に定められたタイミングで入力された点の座標を抽出する。図3B〜図3Dにおいて、実線は、入力を受け付けた筆跡を示し、黒丸は、抽出された点を示している。筆跡長算出部10cは、一の筆画から点を抽出する都度、前回抽出した点と今回抽出した点との座標間の距離を算出する。そして筆跡長算出部10cは、算出した距離の積算値を筆跡長として制御部10に出力する。なお、筆跡長の算出方法は、図3に示す方法に限らず、筆画毎の画素数の合計値を用いる等、適宜設定することが可能である。
図4は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の筆跡情報記録部11aの記録内容の一例を概念的に示す説明図である。筆跡情報記録部11aには、入力を受け付けた筆跡の情報が、筆画単位で記録されている。そして、筆画毎の情報として、当該筆画に係る筆跡を構成する各点の座標、更に、各点とその一つ前の点との距離が記録されている。図4に示す例では、1画目の筆画は、6の点で構成されることが示されており、各点の座標として、(x10,y10)、(x11,y11)等のX座標及びY座標が示されている。また、図4に示す例において、1画目の筆記点番号1は、当該筆記点番号1の座標(x11,y11)と、その1つ前の点となる筆記点番号0の座標(x10,y10)とに基づいて算出された距離が記録されている。点と点の間の距離は、例えば、座標により定まる論理平面上のユークリッド距離として表される。
次に、本願実施例1に係る手書き入力装置1の主となる処理について説明する。図5は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の筆跡表示及び消去処理の一例を示すフローチャートである。本願実施例1に係る筆跡表示及び消去処理は、入力を受け付けた筆跡を表示し、かつ筆跡長に応じて筆跡を消去する処理である。図5の処理は、手書き入力部13から入力された筆跡を受け付ける度に実行される。
手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを実行する制御部10の制御により、筆跡の入力の受付に際し、以下に示す筆跡表示及び消去処理を実行する。
入力者は、入力具又は指先の軌跡として、筆跡の入力を行い、手書き入力部13は、筆跡の入力を受け付ける。制御部10は、受付部10aにより、手書き入力部13から入力された筆跡を受け付ける(S101)。受け付けた筆跡は、筆跡情報として、筆跡情報記録部11aに記録される。例えば、図4に示すように、受け付けた筆跡に係る点の座標を取得し、取得した座標を筆画番号、筆記点番号に対応づけて記録する。さらに、筆跡に係る1つ前の点がある場合には、筆跡に係る1つ前の点の座標と、受け付けた筆跡に係る点の座標とに基づいて、点と点との間の距離を算出し、算出した距離を記録する。また、受け付けた筆跡に係る点が、筆記の開始点である場合、その点を「消去開始点」と設定する(S102)。例えば、図4に示す例では、筆画番号:1の筆記点番号0に示される点が、消去開始点として設定される。
制御部10は、表示出力部10bにより、受付部10aが受け付けた筆跡を表示部14に表示させる(S103)。表示部14への表示は、例えば、受け付けた筆跡に係る座標に基づいて、当該座標に対応する表示部14上の位置に、背景色と異なる色又は異なる階調の点を表示させることにより行われる。このような表示により、入力者は、入力した筆跡通りの筆跡を、表示部14に表示された筆跡として視認することができる。
制御部10は、筆跡長算出部10cにより、表示部14に表示させている筆跡の長さを算出する(S104)。ステップS104における筆跡の長さの算出は、例えば、下記の式1を用いて算出する。
式1は、筆記点の総数点をNとし、現在の筆記点から、ある点xまでの筆跡長TL(x)を算出するための計算式を示している。即ち、筆跡情報記録部11aに記録された筆跡情報に基づいて、受付部10aが受け付けた筆跡に係る点に対応付けて記録された距離と、それ以前に受付部10aが受け付けた筆跡に係る点に対応付けて記録された距離とを加算する。加算した結果が、筆跡長TL(x)となる。
制御部10は、消去判定部10dにより、筆跡長算出部10cが算出した筆跡長を所定長と比較し、筆跡長が所定長を超えるか否かを判定する(S105)。所定長は、例えば、消去条件保持部11cに予め記録されている情報を抽出して用いる。
ステップS104〜S105の処理として、具体的には、まず、受付部10aが受け付けた筆跡に係る点と、その一つ前に受付部10aが受け付けた点との距離を式1にて算出し、制御部10は、消去判定部10dにより、ステップS105の判定処理を行う。ステップS105にて、筆跡長が所定長を超えていないと判定されると、受付部10aが受け付けた筆跡に係る点と、その2つ前に受け付けた筆跡に係る点との距離を算出し、というように、受付部10aが受け付けた筆跡に係る点との距離を算出し、ステップS105の判定処理を行う。この処理を、ステップS105の判定処理にて、算出した筆跡長が所定長を超えたと判定されるまで行う。
より具体的には、図4に示す例では、受付部10aが、筆画番号:1の筆記点番号6の点を受け付けたとする。消去開始点は、筆画番号:1の筆記点番号0の点に設定されている。制御部10は、まず、筆跡長算出部10cにより、筆記点番号6の一つ前である筆記点番号5に対応づけて記憶されている1つ前の点との距離、すなわち、L6の値を、筆跡長として算出する。算出した筆跡長に基づいて、ステップS105の判定処理を行う。ステップS105にて、算出した筆跡長が所定長を超えていないと判定された場合、制御部10は、次に、筆跡長算出部10cにより、筆記点番号6の二つ前である筆記点番号4に対応づけて記憶されている1つ前の点との距離、すなわち、L5及びL6の値を加算した結果を筆跡長とし、S105の判定処理を行う。ステップS105の判定処理にて、算出した筆跡長が所定長を超えたと判定されるまで、筆跡長算出部10cは、1つずつ前の筆跡に係る点と、受付部10aが受け付けた筆跡に係る点との間の距離を加算し、筆跡長を算出することを繰り返す。
フローチャートに戻り、ステップS105にて、消去判定部10dが、筆跡長算出部10cにより算出された筆跡長が所定長を超えると判定した場合(S105:YES)、制御部10は、消去処理部10eにより、受付部10aが受け付けた筆跡のうち、消去すべき部分を特定し、消去する(S106)。具体的には、消去処理部10eは、筆跡長が所定値を超えると判定された点の1つ後に受け付けた点から消去開始点と設定された点までの筆跡を、消去対象とする。例えば、図4に示す例において、受付部10aが受け付けた筆記に係る点が、筆画番号:1の筆記点番号6であって、筆跡長算出部10cが算出した筆跡長が所定値を超えると判断された点が、筆画番号:1の筆記点番号3であったとする。消去処理部10eは、消去開始点と設定されている筆画番号:1の筆記点番号0から筆画番号:1の筆記点番号4を消去対象として特定し、表示部14に表示している、特定された筆画番号:1の筆記点番号0から筆画番号:1の筆記点番号4までの筆跡を、消去する。ステップS106において、消去処理部10eは、筆跡長が所定長となるように消去するが、所定長以下であれば良く、例えば、時間等の他の消去条件も設定し、所定長未満となるまで消去しても良い。筆跡は、先に表示させた部分から順に消去する。従って、新たに筆跡を表示した箇所、即ち入力具のペン先が手書き入力部13に接している位置に対応する位置から所定長の筆跡が表示部14上に表示されることになる。そして、消去後、後述するステップS108の処理を行う。
ステップS105において、ステップS104にて筆跡長算出部10cにより算出された筆跡長が所定長を超えないと判定した場合(S105:NO)、制御部10は、ステップS104の処理に戻る。
制御部10は、完了判定部10fにより、完了条件を満たしているか否かを判定する(S107)。完了条件は、完了条件保持部11dに記録されている完了条件が用いられる。ここでは、完了条件として、入力具が手書き入力部13に接触し(ペンダウン)、筆跡の入力を受け付け、更に、入力具が手書き入力部13から離れた(ペンアップ)ことを検出した場合に、筆跡の入力の受付を完了したと判定するものとする。即ち、一画分の筆画の入力が完了し、入力者が入力具を手書き入力部13から離した段階で完了条件を満たしたと判定する。なお、入力具ではなく指先にて入力している場合も同様である。あるいは、手書き入力した内容についてパターンマッチングによる認証処理を開始させる操作の入力を操作入力部12又は手書き入力部13から受け付けた場合、筆跡の受付を完了したと判定するようにしてもよい。
ステップS107にて、完了条件を満たしていると判定した場合(S107:YES)、制御部10は、消去処理部10eにより、表示させている筆跡を消去する(S108)。ステップS108の消去は、表示している筆跡を全て消去する処理である。従って、一画分の筆画の入力が完了する都度、表示されている筆跡が消去されることになる。
なお、ステップS107にて、完了条件を満たしていないと判定した場合(S107:NO)、制御部10は、ステップS108の筆跡消去処理を行うことなく、ステップS101へ進み、以降の処理を繰り返す。このようにして、実施例1に係る筆跡表示及び消去処理が実行される。
次に、実施例1に係る手書き入力装置1の適用に際しての具体例について説明する。図6は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の表示部14に表示される画面例を示す説明図である。図6に示す画面例は、筆跡表示及び消去処理を開始した場合に、表示部14に表示される画面を示している。外側の枠線にて囲まれる外枠領域14aは、手書き入力用のウィンドウ(表示用窓)を示している。外枠領域14a内の中央付近から上側にかけて表示されている長方形の領域は、手書き入力に基づく筆跡が表示される筆跡表示欄14bである。筆跡表示欄14bの下方には、認証ボタン14c及び消去ボタン14dを示す画像が表示されている。手書き入力装置1は、認証ボタン14cを指示する入力を受け付けた場合、筆跡表示及び消去処理のステップS108において、終了可と判定し、筆跡表示及び消去処理を終了して、認証処理を実行する。また、手書き入力装置1は、消去ボタン14dを指示する入力を受け付けた場合、ステップS108において、終了可と判定し、筆跡表示及び消去処理を終了し、入力を受け付けている筆跡、即ち、筆跡情報記録部11aに記録している筆跡情報を消去する。この場合、認証処理等の以降の処理は実行されない。図6に示す筆跡表示欄14b並びに認証ボタン14c及び消去ボタン14dは、表示例の一例であり、例えば、筆跡表示欄14bのみを外枠領域14aに表示し、認証ボタン14c及び消去ボタン14dの指示に相当する操作は、操作入力部12を用いた他の方法による等、適宜設定することが可能である。
図7及び図8は、本願実施例1に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図7のA1〜A3及び図8のA4〜A6は、液晶タッチパネルのように手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具であるスタイラスペンを示している。図7のB1〜B3及び図8のB4〜B6は、表示部14に表示される筆跡を示している。A1〜A6とB1〜B6とは夫々対応している。なお、B1〜B6は、入力者が入力している筆跡を破線で示し、入力している文字のうちで表示されている箇所を実線で示している。
図7及び図8は、「太郎」という文字を手書き入力する状況を示している。A1(B1)は、「太」の一画目の横棒の入力の受付を開始した状況を示している。A1(B1)からA2(B2)にかけては、横棒の入力の受付が継続し、筆跡として横棒が表示されている状況を示している。A3(B3)からA4(B4)にかけては、横棒の筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。A5(B5)は、「太」二画目の上から左にかけてのはらいの入力の受付を開始した状況を示している。なお、A5(B5)において、一画目の横棒は、A4(B4)の後、入力具が手書き入力部13から離れた時点で消去されている。A6(B6)は、はらいの筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。本願実施例1に係る手書き入力装置1では、文字「太郎」を手書き入力する際に、図7及び図8に示すように筆跡が表示される。
図9及び図10は、本願実施例1に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図9のA1〜A3及び図10のA4〜A5は、手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具を示している。図9のB1〜B3及び図10のB4〜B5は、表示部14に表示される筆跡を示している。A1〜A5とB1〜B5とは夫々対応している。なお、B1〜B5は、入力者が入力している筆跡を破線で示し、入力している文字のうちで表示されている箇所を実線で示している。
図9及び図10は、「Fujitsu」という文字を筆記体で手書き入力する状況を示している。A1(B1)は、「F」の入力の受付を開始した状況を示している。A1(B1)からA2(B2)にかけては、入力の受付が継続し、筆跡として文字の一部が表示されている状況を示している。A3(B3)からA5(B5)にかけては、筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。なお、「F」の横線を書き終えた後、入力具が手書き入力部13から離れたため、横線が消去され、A5(B5)では、右上から左下へかけての線のみが表示されている。本願実施例1に係る手書き入力装置1では、文字「Fujitsu」を手書き入力する際に、図9及び図10に示すように筆跡が表示される。
図7〜図10に示す例では、完了条件として、入力具が手書き入力部13から離れたことの検出を設定しているが、完了条件は適宜設定することが可能である。例えば、入力具が手書き入力部13から離れた後、次に入力具が手書き入力部13に接したことの検出を完了条件として設定することにより、一の筆画の入力後、次の筆画の入力を開始した段階で、表示されている所定長以下の筆跡が全て消去される。このような完了条件を設定してステップS107の処理を実行した場合には、次の筆画の入力に際し、直前に入力した筆画の位置を視認することが可能となる。
また、入力者からの所定の操作の入力を完了条件と設定してステップS107の処理を実行することも可能である。例えば、所定の画像を指示する等の操作を行うことにより、表示されている所定長以下の筆跡が全て消去するようにする。このような完了条件を設定した場合には、表示されている筆跡を確認した上で、筆跡を消去することが可能となる。
さらに、入力具が手書き入力部13から離れた後、一定時間の経過を完了条件と設定してステップS107の処理を実行することも可能である。一定時間の経過を完了条件とすることにより、入力者は筆跡の入力後、一定時間表示されている筆跡を確認することが可能となる。なお、一定時間が経過する前に、次の筆画の入力を受け付けた場合、入力具が手書き入力部13に接した段階で、直前の筆画に係る筆跡を消去するようにしても良い。また、入力部の接離に関わらず筆跡の長さの合計が所定長以下となるように、先に表示させた部分から筆跡を消去していくようにしても良い。
また、ステップS107にて完了条件を満たした後、表示されている残りの筆跡を一度に消去するのではなく、徐々に消去するようにステップS108の処理を設定することも可能である。具体例として、入力具が手書き入力部13から離れた時点から、0.1秒等の所定の単位時間毎に、表示されている筆跡を所定の単位長ずつ消していく処理について説明する。
図11は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の筆跡表示及び消去処理の他の例を示すフローチャートである。手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを実行する制御部10の制御により、筆跡の入力の受付に際し、以下に示す筆跡表示及び消去処理を実行する。なお、ステップS101〜S106の処理は、図5を用いて説明した処理の例と同様であるので、説明を省略する。
ステップS106の消去処理を実行後、制御部10は、完了判定部10fにより、完了条件を満たしているか否かを判定する(S107)。ステップS107の完了条件は、入力具が手書き入力部13から離れたことの検出として設定されている。なお、図5を用いて説明した処理とは、ステップS107にて完了条件を満たしていると判定した場合以降の処理が異なるため、その場合の処理について以下に説明する。
ステップS107にて、完了条件を満たしていると判定した場合(S107:YES)、制御部10は、所定の単位時間待機する(S201)。所定の単位時間は、例えば、完了条件保持部11dに予め記録しておく。また、入力者の筆記速度に比して短い0.1秒等の微少な時間を設定することが好ましい。
所定時間経過後、制御部10は、消去処理部10eにより、表示されている筆跡を先に表示させた部分から所定の単位長分消去する(S202)。所定の単位長は、例えば、完了条件保持部11dに予め記録しておく。また、例えば、単位長は、ステップS201の単位時間に基づいて決定される。単位時間及び単位長を短くする程、滑らかに消去されるとの印象を入力者に与えることができる。あるいは、単位長は、筆跡に係る点から点としてもよい。この場合、単位時間経過毎に、筆跡情報記録部11aに記録されている筆記点のうち、表示中の筆跡のうち、取得された時点が古い筆跡に係る点から、その直後に取得された筆跡に係る点までの筆跡を、消去の対象とする。消去処理部10eは、消去の対象となった筆跡を、表示部14上から消去する。
制御部10は、表示部14上の筆跡を全て消去したか否かを判定する(S203)。
ステップS203にて、筆跡を全て消去したと判定した場合(S203:YES)、筆跡表示及び消去処理を終了する。
ステップS203にて、消去されていない筆跡が表示されていると判定した場合(S203:NO)、制御部10は、次の筆画の入力を受け付けているか否かを判定する(S204)。
ステップS204にて、次の筆画の入力を受け付けていると判定した場合(S204:YES)、制御部10は、消去処理部10eにより、表示させている筆跡を消去して(S205)、図5のステップS101へ戻り、以降の処理を実行する。筆跡が完全に消去されていない段階で、次の入力が開始された場合、表示されている筆画を完全に消去した上で、次の筆画の表示を実行するのである。なお、ステップS205にて、残りの筆跡を全て消去するのではなく、次の筆画の筆跡との合計の筆跡長が所定長を超えるまで、表示した状態を維持する等の処理とすることも可能である。
ステップS204にて、次の筆画の入力を受け付けていないと判定した場合(S204:NO)、制御部10は、入力終了の操作を受け付けているか否かを判定する(S206)。ステップS206の入力終了の操作とは、例えば、手書き入力した内容についての認証を開始させる操作である。
ステップS206にて、入力終了の操作を受け付けていると判定した場合(S206:YES)、表示されている残りの筆跡を消去し(S207)、筆跡表示及び消去処理を終了する。
ステップS206にて、入力終了の操作を受け付けていないと判定した場合(S206:NO)、制御部10は、ステップS201へ進み、以降の処理を実行する。このようにして実施例1に係る他の筆跡表示及び消去処理が実行される。
次に、本願実施例1に係る入力装置1の筆跡表示及び消去処理の更に他の例について説明する。図12は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の筆跡表示及び消去処理の他の例を示すフローチャートである。図5の例では、取得された筆跡に係る点のうち、直近に取得された筆跡に係る点を起点として、筆跡長の算出や、算出された筆跡長が所定長を超えるか否かの判定等を行っている。本実施例では、筆記の開始点を起点として、筆跡長の算出及び消去の対象とする筆跡の特定を行う。なお、ステップS101〜S103、S105、S107〜S108の処理は、図5を用いて説明した処理の例と同様であるので、図5と同様の番号を付し、その説明を省略する。また、図12の処理は、図5の処理と同様に、手書き入力部13から入力された筆跡を受け付ける度に実行される。
図13は、本願実施例1に係る手書き入力装置1の筆跡情報記録部11aの記録内容の他の例を概念的に示す説明図である。図4の例に加え、消去開始点の欄が追加されている。これは、筆跡長を算出する際の起点となる点が、いずれの点に設定されているかを示す。図13の例では、筆画番号:1の筆記点番号:2の点が、消去開始点として設定されていることを示している。
フローチャートに戻り、制御部10は、ステップS101〜S103の処理を実行後、筆跡長算出部10cにより、表示部14に表示させている筆跡の長さを算出する(S1041)。ステップS1041における筆跡の長さの算出は、例えば、下記の式2を用いて算出する。
式2は、消去開始点をnとし、消去開始点nから、ある点xまでの筆跡長TS(x)を算出するための計算式を示している。即ち、筆跡情報記録部11aに記録された筆跡情報に基づいて、消去開始点と設定されている点から、受付部10aにて受け付けた筆跡に係る点までの、距離を算出する。算出した結果が、筆跡長TS(x)となる。
制御部10は、消去判定部10dにより、筆跡長算出部10cにより算出された筆跡長が所定長を超えるか否かを判定する(S105)。
ステップS105にて、筆跡長算出部10cにより算出された筆跡長が所定長を超えないと判定した場合(S105:NO)、ステップS101に戻って、次の筆跡の入力の受け付けを待機する。
ステップS105にて、筆跡長算出部10cにより算出された筆跡長が所定長を超えると判定した場合(S105:YES)、制御部10は、消去処理部10eにより、算出した筆跡長から所定長を差し引いた残りの長さを求める(S1061)。
制御部10は、消去処理部10eにより、筆跡情報記録部11aを参照し、消去開始点として設定されている点から、その後に受け付けられた筆跡に係る点までの長さを順に算出し、算出された長さが残りの長さを超える点を特定し、消去開始点として設定された点から、残りの長さに基づいて特定された点との間の筆跡を、消去対象とし、消去対象とされた筆跡を表示部14から消去する。さらに、制御部10は、消去処理部10eにより、算出された残りの長さを超える点と設定された点を、新たな消去開始点として設定する(S1062)。そして、ステップS107以降の処理を実行する。
図13に示す例において、消去開始点は、筆画番号:1の筆記点番号2に設定されている。受付部10aが、新たな筆跡として筆画番号:1の筆記点番号6を受け付けたとする。筆跡長算出部10cは、消去開始点である筆画番号:1の筆記点番号2から新たに受け付けた点である筆画番号:1の筆記点番号6までの筆跡長を、筆跡情報記録部11aに記録された内容に基づいて、L3、L4、L5、L6を加算することにより算出する。消去判定部11dにより、算出された筆跡長が所定長よりも長いと判定されると、消去処理部10eは、算出された筆跡長から所定長を差し引いた値を残りの長さとして算出する。消去処理部10eは、消去開始点である筆画番号:1の筆記点番号2から、次の点である筆画番号:1の筆記点番号3までの筆跡の長さL3と、算出された残りの長さとを比較する。消去開始点である筆画番号:1の筆記点番号2から、次の点である筆画番号:1の筆記点番号3までの筆跡の長さL3が、算出された残りの長さよりも大きい場合、筆画番号:1の筆記点番号2から、次の点である筆画番号:1の筆記点番号3までの筆跡を、消去の対象とし、表示部14から消去する。さらに、筆画番号:1の筆記点番号2の消去開始点欄を空白にし、新たに、筆画番号:1の筆記点番号3の消去開始であることを示すフラグを設定する。消去開始点である筆画番号:1の筆記点番号2から、次の点である筆画番号:1の筆記点番号3までの筆跡の長さL3が、算出された残りの長さよりも小さい場合、筆画番号:1の筆記点番号2から、さらに次の点である筆画番号:1の筆記点番号4までの筆跡の長さを算出する。算出後の筆跡の長さに基づいて、前述と同様の判定および処理を繰り返す。
以上のように、本願実施例1では、筆跡表示及び消去処理として、表示させている筆跡長が所定長を超える場合に、筆跡を先に表示させた部分から消去する。これにより、手書き文字の入力時に、入力内容を第三者に視認される可能性を低減し、安全性を向上させることが可能である。特に、入力者の筆記速度に関わらず所定長の筆跡が表示されるため、筆記速度の遅速に関わらず、入力者は入力状況を把握し易く、第三者は入力内容を視認し難いというマンマシンインターフェースを提供することができる。また、入力具が手書き入力部13から離れてもすぐに筆跡を消去しないように完了条件及び以降の処理を適宜設定することにより、次の筆画の入力に際し、直前に入力した筆画の位置を視認することが可能となる。このような設定は、特に、「憂鬱」、「薔薇」、「顕微鏡」等の画数が多く、かつ個々の筆画が短い文字の入力時に有効である。
(実施例2)
実施例2は、実施例1において、消去した筆画に係る筆跡に含まれていた一部の点を痕跡点として表示する形態である。実施例2において、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号を付し、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
実施例2に係る手書き入力装置1のハードウェア構成は、実施例1と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
次に、実施例2に係る手書き入力装置1の機能構成について説明する。図14は、本願実施例2に係る手書き入力装置1の機能構成例を示す機能ブロック図である。手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、痕跡点抽出部10h、痕跡点表示部10i等の機能を実行させる。なお、手書き入力プログラムPRGの実行ではなく、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、痕跡点抽出部10h、痕跡点表示部10i等の機能を実現する回路を組み込むようにしても良い。
痕跡点抽出部10hは、消去した筆跡に含まれていた点の一部を、消去した筆跡の痕跡を示す痕跡点として抽出するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。痕跡点抽出部10hは、消去した筆画単位の筆跡から、一の筆画の始点及び終点、並びに始点及び終点の位置に対して所定の関係にある筆跡上の点を痕跡点として抽出する。例えば、一の筆画の始点及び終点、並びに始点及び終点を通る直線からの距離が最大となる点を痕跡点として抽出する。
痕跡点表示部10iは、痕跡点抽出部10hが抽出した点を表示部14に表示するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。痕跡点表示部10iの処理により表示させる痕跡点は、表示出力部10bから表示部14に表示命令として出力され、表示部14に痕跡点が表示される。
また、手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、記録部11の記録領域の一部を、筆跡情報記録部11a、認証用情報記録部11b、消去条件保持部11c、完了条件保持部11d、痕跡点抽出条件保持部11e等の情報記録領域として使用可能にする。
痕跡点抽出条件保持部11eは、痕跡点抽出部10hが、痕跡点を抽出する際の条件を記録する情報記録領域である。なお、痕跡点抽出条件保持部11eは、必ずしも独立した記録領域として確保する必要はない。例えば、痕跡点抽出部10hとして実行されるプログラムモジュール内に抽出条件を作り込むようにしても良い。
ここで、本実施例についての特徴的な処理となる痕跡点抽出部10hによる痕跡点の抽出について説明する。図15及び図16は、本願実施例2に係る手書き入力装置1の痕跡点抽出部10hの処理の一例を概念的に示す説明図である。痕跡点抽出部10hの処理として、一の筆画の始点及び終点、並びに始点及び終点を通る直線からの距離が最大となる点を痕跡点として抽出する例を説明する。図15Aは、入力を受け付けた筆跡に含まれる一の筆画を示している。図15Bは、図15Aに示す筆画と、当該筆画から痕跡点として抽出される点P1〜P3を示している。点P1は、筆画の始点であり、点P2は筆画の終点である。点P1及びP2を通る直線L1からの距離が最大となる筆画上の点がP3である。図15に示す例において、痕跡点抽出部10hは、点P1〜P3を痕跡点として抽出する。
他の例について説明する。図16Aは、入力を受け付けた筆跡に含まれる一の筆画と、痕跡点として抽出した点P1〜P3及び直線L1を示している。図16Aに示す痕跡点P1〜P3は、図15に示した例と同様の方法により抽出した点である。図16Bは、図16Aから更なる点P4を痕跡点として抽出する例を示している。痕跡点抽出部10hは、終点であるP2及び直前に抽出したP3を通る直線L2からの距離が最大となる筆画上の点P4を痕跡点として抽出する。図16Cは、図16Bから更なる点P5を痕跡点として抽出する例を示している。図16Bに示した処理と同様の処理により、痕跡点抽出部10hは、点P3及びP4を通る直線L3からの距離が最大となる筆画上の点P5を痕跡点として抽出する。このように図16に示す例において、痕跡点抽出部10hは、点P1〜P5を痕跡点として抽出する。
なお、筆画に対して抽出する痕跡点の数、痕跡点の抽出に用いる点の選定方法等の抽出に係る条件は、適宜設定することが可能であり、設定された条件は痕跡点抽出条件保持部11eに記録される。また、図15及び図16を用いて説明した抽出方法に限らず、例えば、一定の筆跡長毎の点を痕跡点として抽出する等、適宜設定することが可能である。
次に、本願実施例2に係る手書き入力装置1の主となる処理について説明する。図17は、本願実施例2に係る手書き入力装置1の筆跡表示及び消去処理の一例を示すフローチャートである。
手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを実行する制御部10の制御により、筆跡の入力の受付に際し、以下に示す筆跡表示及び消去処理を実行する。なおステップS101〜S108の処理は、図5を用いて説明した実施例1に係る筆跡表示及び消去処理と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
ステップS108にて、表示部14に表示させている残りの筆跡を消去後、制御部10は、消去処理部10eにより、表示部14に表示させている痕跡点を消去する(S301)。
制御部10は、痕跡点抽出部10hにより、消去した筆画単位の筆跡に含まれていた点の一部を痕跡点として抽出する(S302)。ステップS302にて抽出する痕跡点は、筆跡情報記録部11aから取得する筆跡に係る情報を基に抽出される。
制御部10は、痕跡点表示部10iにより、痕跡点抽出部10hが抽出した痕跡点を表示部14に表示する(S303)。
ステップS301において、消去すべき痕跡点が存在しない場合、例えばステップS107にて消去した筆跡に係る筆画が一画目である場合、消去の対象が存在しないため、実質的にステップS301の処理は行われない。ステップS302では、直前のステップS107の処理にて消去した筆画に係る筆跡のみから痕跡点を抽出する。従って、ステップS301〜S303の処理により、直前に消去した筆画に係る筆跡から抽出した点のみが痕跡点として表示されることになる。
そして、筆跡表示及び消去処理を終了する。このようにして、実施例2に係る筆跡表示及び消去処理が実行される。
次に、実施例2に係る手書き入力装置1の適用に際しての具体例について説明する。図18及び図19は、本願実施例2に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図18及び図19は、手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具であるスタイラスペンを示している。図18及び図19では、表示されている筆跡を実線で示し、消去された筆跡を破線で示している。また、痕跡点を黒丸で示している。
図18及び図19は、「口」という文字を手書き入力する状況を示している。図18Aは、「口」の一画目の縦棒の入力の受付を開始した状況を示している。図18Aから図18Bにかけては、縦棒の入力の受付を継続し、筆跡として縦棒が表示されている状況を示している。図18Cから図18Dにかけては、縦棒の筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。図18Eは、入力具が手書き入力部13から離れた時点を示しており、表示していた筆跡が消去されている。図18Fは、図18Eにて消去した筆跡から抽出された痕跡点P1〜P3が表示されている状況を示している。図18Fに示した痕跡点P1、P2及びP3は、夫々一画目の筆画の始点、終点及び筆画上の点である。
図19Gは、二画目の入力の受付を開始した状況を示している。二画目の入力に際し、痕跡点P1〜P3が表示されているため、入力者は、一画目の筆跡が表示されていた位置を認識することができる。図19Hは、二画目の筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。図19Iは、入力具が手書き入力部13から離れた時点を示しており、表示していた筆跡が消去されている。図19Jは、図19Iの後、表示されていた痕跡点P1〜P3が消去された状況を示している。図19Kは、図19Jの後、直前に消去した筆画、即ち、二画目の筆画に係る筆跡から抽出した痕跡点P4〜P6のみが表示された状況を示している。図19Lは、三画目の入力の受付を開始した状況を示している。図19Lに示した痕跡点P4、P5及びP6は、夫々二画目の筆画の始点、終点及び筆画上の点である。三画目の入力に際し、二画目の痕跡点P4〜P6が表示されているため、入力者は、二画目の筆跡が表示されていた位置を認識することができる。
図20及び図21は、本願実施例2に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図20及び図21は、手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具であるスタイラスペンを示している。図20及び図21では、表示されている筆跡を実線で示し、消去された筆跡を破線で示している。また、痕跡点を黒丸で示している。
図20及び図21は、「F」という文字を手書き入力する状況を示している。図20Aは、「F」の一画目の入力の受付を開始した状況を示している。図20Aから図20Bにかけては、一画目の入力の受け付けた継続し、一画目が筆跡として表示されている状況を示している。図20Cから図20Dにかけては、一画目の筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。図20Eは、入力具が手書き入力部13から離れた時点を示しており、表示していた筆跡が消去されている。図20Fは、図20Eにて消去した筆跡から抽出された痕跡点P1〜P3が表示されている状況を示している。図20Fに示した痕跡点P1、P2及びP3は、夫々一画目の筆画の始点、終点及び筆画上の点である。
図21Gは、二画目の入力の受付を開始した状況を示している。二画目の入力に際し、痕跡点P1〜P3が表示されているため、入力者は、一画目の筆跡が表示されていた位置を認識することができる。図21Hは、二画目の筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。図21Iは、入力具が手書き入力部13から離れた時点を示しており、表示していた筆跡が消去されている。図21Jは、図21Iの後、表示されていた痕跡点P1〜P3が消去された状況を示している。図21Kは、図21Jの後、直前に消去した筆画、即ち、二画目の筆画に係る筆跡から抽出した痕跡点P4〜P6のみが表示された状況を示している。図21Kに示した痕跡点P4、P5及びP6は、夫々二画目の筆画の始点、終点及び筆画上の点である。図21Lは、三画目の入力の受付を開始した状況を示している。三画目の入力に際し、二画目の痕跡点P4〜P6が表示されているため、入力者は、二画目の筆跡が表示されていた位置を認識することができる。
なお、痕跡点を消去する時期については、直前の二画分のみを表示させるようにする等、筆跡の消去の時期をも含めて適宜設定することが可能である。
以上のように、本願実施例2では、筆跡表示及び消去処理として、消去した筆跡に含まれていた点の一部を抽出し、抽出した点を表示する。これにより、一方で、入力者は、自らが入力した筆画の代表的な点が表示されているため、消去された筆画の大凡の位置を把握することが可能であるという効果を奏し、他方、第三者は、幾つかの点のみが表示されているだけであるので、入力内容を推定し難いという効果を奏する。例えば、アルファベットを入力する場合に、実施例1は、筆記体の入力に適しているのに対し、実施例2は、活字体の入力に適している。
(実施例3)
実施例3は、実施例1において、消去した筆画に係る筆跡に外接する所定の外接図形を表示する形態である。実施例3において、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号を付し、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
実施例3に係る手書き入力装置1のハードウェア構成は、実施例1と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
次に、実施例3に係る手書き入力装置1の機能構成について説明する。図22は、本願実施例3に係る手書き入力装置1の機能構成例を示す機能ブロック図である。手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、位置取得部10j、外接図形表示部10k等の機能を実行させる。なお、手書き入力プログラムPRGの実行ではなく、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、位置取得部10j、外接図形表示部10k等の機能を実現する回路を組み込むようにしても良い。
位置取得部10jは、消去した筆跡が表示されていた位置を取得するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。位置取得部10jは、消去した筆画単位の筆跡が表示されていた位置として座標を取得する。
外接図形表示部10kは、位置取得部10jが取得した位置に基づいて、消去した筆跡に外接する所定の外接図形を表示部14に表示させるように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。外接図形表示部10kの処理により、表示させる外接図形は、表示出力部10bから表示部14に表示命令として出力され、表示部14に外接図形が表示される。外接図形としては、矩形等の多角形の他、円、長円、楕円等の図形が設定される。以下の説明では、表示部14に、矩形の手書き入力用のウィンドウを表示し、当該ウィンドウを形成する枠と平行な四辺にて形成される矩形を外接図形として設定する例について示す。
また、手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、記録部11の記録領域の一部を、筆跡情報記録部11a、認証用情報記録部11b、消去条件保持部11c、完了条件保持部11d等の情報記録領域として使用可能にする。
次に、本願実施例3に係る手書き入力装置1の主となる処理について説明する。図23は、本願実施例3に係る手書き入力装置1の筆跡表示及び消去処理の一例を示すフローチャートである。
手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを実行する制御部10の制御により、筆跡の入力の受付に際し、以下に示す筆跡表示及び消去処理を実行する。なおステップS101〜S108の処理は、図5を用いて説明した実施例1に係る筆跡表示及び消去処理と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
ステップS108にて、表示部14に表示させている残りの筆跡を消去後、制御部10は、消去処理部10eにより、表示部14に表示させている外接図形を消去する(S401)。
制御部10は、位置取得部10jにより、消去した筆画単位の筆跡が表示されていた位置を取得する(S402)。ステップS402にて取得する位置とは、例えば消去した筆画に係る筆跡の座標であり、筆跡の座標は、筆跡情報記録部11aから取得される。なお、当該筆画に係る筆跡の座標を全て取得する必要はなく、外接図形の特定に必要な座標のみを取得するようにしてもよい。例えば、X座標及びY座標にて示される直交座標系を用いている場合、対象となる筆跡の座標の内から、X座標の最大値及び最小値、並びにY座標の最大値及び最小値を取得することにより、矩形に設定した外接図形を特定することができる。
制御部10は、外接図形表示部10kにより、位置取得部10jが取得した位置に基づいて、消去した筆跡に外接する外接図形を表示部14に表示する(S403)。
ステップS401において、消去すべき外接図形が存在しない場合、例えばステップS108にて消去した筆跡に係る筆画が一画目である場合、消去の対象が存在しないため、実質的にステップS401の処理は行われない。ステップS402では、直前のステップS108の処理にて消去した筆画に係る筆跡のみから位置を取得する。従って、ステップS401〜S403の処理により、直前に消去した筆画に係る筆跡に外接する外接図形のみが表示されることになる。
そして、筆跡表示及び消去処理を終了する。このようにして、実施例3に係る筆跡表示及び消去処理が実行される。
次に、実施例3に手書き入力装置1の適用に際しての具体例について説明する。図24は、本願実施例3に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図24は、手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具であるスタイラスペンを示している。図24では、表示されている筆跡及び外接図形を実線で示し、消去された筆跡を破線で示している。
図24は、「ふ」という文字を手書き入力する状況を示している。図24Aは、「ふ」の一画目の入力の受付を開始した状況を示している。図24Bは、一画目の筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。図24Cは、入力具が手書き入力部13から離れた時点を示しており、表示していた筆跡が消去されている。図24Dは、図24Cにて消去した筆跡から取得した位置に外接する外接図形が表示されている状況を示している。
図24Eは、二画目の入力の受付を開始した状況を示している。二画目の入力に際し、外接図形として矩形が表示されているため、入力者は、一画目の筆跡が表示されていた位置を認識することができる。図24Fは、二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れた後に表示される外接図形を示している。二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れることにより、一画目の筆跡に係る外接図形が消去され、二画目の筆跡に係る外接図形のみが表示されている。
図25は、本願実施例3に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図25は、手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具であるスタイラスペンを示している。図25では、表示されている筆跡及び外接図形を実線で示し、消去された筆跡を破線で示している。
図25は、「A」という文字を手書き入力する状況を示している。図25Aは、「A」の一画目の入力の受付を開始した状況を示している。図25Bは、一画目の筆跡長が所定長を超えたことにより、先に表示させた部分から消去されてきている状況を示している。図25Cは、入力具が手書き入力部13から離れた時点を示しており、表示していた筆跡が消去されている。図25Dは、図25Cにて消去した筆跡から取得した位置に外接する外接図形が表示されている状況を示している。
図25Eは、二画目の入力の受付を開始した状況を示している。二画目の入力に際し、外接図形として矩形が表示されているため、入力者は、一画目の筆跡が表示されていた位置を認識することができる。図25Fは、二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れた後に表示される外接図形を示している。二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れることにより、一画目の筆跡に係る外接図形が消去され、二画目の筆跡に係る外接図形のみが表示されている。
なお、外接図形を表示する時期については、直前の二画分のみを表示させるようにする等、筆跡の消去の時期をも含めて適宜設定することが可能である。
以上のように、本願実施例3では、筆跡表示及び消去処理として、消去した筆跡に外接する外接図形を表示する。これにより、入力者は、自らが入力した筆跡に外接する図形が表示されているため、消去された筆画の位置を把握することが可能であるという効果を奏し、他方、第三者は、図形の外枠のみが表示されているだけであるので、入力内容を推定し難いという効果を奏する。
(実施例4)
実施利4は、実施例1において、消去した筆画に係る筆跡を、筆跡の表示色とは異なる色で表示する形態である。実施例4において、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号を付し、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
実施例4に係る手書き入力装置1のハードウェア構成は、実施例1と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
次に、実施例4に係る手書き入力装置1の機能構成について説明する。図26は、本願実施例4に係る手書き入力装置1の機能構成例を示す機能ブロック図である。手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、痕跡色表示部10l等の機能を実行させる。なお、手書き入力プログラムPRGの実行ではなく、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、痕跡色表示部10l等の機能を実現する回路を組み込むようにしても良い。
痕跡色表示部10lは、消去した筆跡を、背景色及び筆跡を表示していた表示色と異なる痕跡表示色にて表示するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。痕跡色表示部10lの処理により表示させる痕跡表示色の筆跡は、表示出力部10bから表示部14に表示命令として出力され、表示部14に痕跡表示色の筆跡が表示される。痕跡表示色は、背景色と見分け難い近似色を用いることが望ましい。痕跡表示色に背景色の近似色を用いた場合、近傍から視た場合には、背景色との差を視認することができるが、距離をとって視ると背景色との差を視認することが困難となる。従って、表示部14を近傍から視る入力者は、痕跡表示色で表示された筆跡を視認できるが、入力者より離れた位置から表示部14を視る第三者は、痕跡表示色で表示された筆跡を視認することが困難となる。
次に痕跡色の設定例について説明する。表示部14に表示する色を、R(Red)成分、G(Green)成分及びB(Blue)成分を夫々256段階の階調で表現する場合、明度を下記の式3にて定義する。
{(R×299)+(G×587)+(B×114)}/1000 …式3
但し、R:R成分の階調
G:G成分の階調
B:B成分の階調
上記式3にて算出される背景色と痕跡表示色との明度差を、125等の所定値未満となるように痕跡表示色を設定する。例えば、RGB(255,128,64)である背景色に対し、背景色から各成分の値を約10%低下させたRGB(229,115,58)を痕跡表示色として設定した場合、明度差は、166−143=23となり、所定値である125未満となる。なお、背景色と、筆跡を表示する表示色との明度差は、500以上の差となるように設定することが望ましい。また、上記式3を用いた明度差以外に、RGB各成分の階調値に基づく色差を所定値未満とする等、様々な定義に基づいて設定することが可能である。ただし、背景色との見分けやすさは、個人差、表示部14の設置場所等の要因による影響を受けるため、適宜設定することが望ましい。
また、手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、記録部11の記録領域の一部を、筆跡情報記録部11a、認証用情報記録部11b、消去条件保持部11c、完了条件保持部11d等の情報記録領域として使用可能にする。
次に、本願実施例4に係る手書き入力装置1の主となる処理について説明する。図27は、本願実施例4に係る手書き入力装置1の筆跡表示及び消去処理の一例を示すフローチャートである。
手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを実行する制御部10の制御により、筆跡の入力の受付に際し、以下に示す筆跡表示及び消去処理を実行する。なおステップS101〜S108の処理は、図5を用いて説明した実施例1に係る筆跡表示及び消去処理と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
ステップS108にて、表示部14に表示させている残りの筆跡を消去後、制御部10は、消去処理部10eにより、表示部14に表示させている痕跡表示色の筆跡を消去する(S501)。
制御部10は、痕跡色表示部10lにより、消去した筆画単位の筆跡を、設定されている痕跡表示色にて表示部14に表示する(S502)。ステップS502では、筆跡情報記録部11aから取得した筆跡に係る情報に基づいて筆跡を表示する。
ステップS501において、消去すべき痕跡表示色の筆跡が存在しない場合、例えばステップS108にて消去した筆跡に係る筆画が一画目である場合、消去の対象が存在しないため、実質的にステップS501の処理は行われない。ステップS502では、直前のステップS108の処理にて消去した筆画に係る筆跡のみを痕跡表示色にて表示する。従って、ステップS501〜S502の処理により、直前に消去した筆画に係る筆跡のみが痕跡表示色にて表示されることになる。
そして、筆跡表示及び消去処理を終了する。このようにして、実施例4に係る筆跡表示及び消去処理が実行される。
次に、実施例4に手書き入力装置1の適用に際しての具体例について説明する。図28は、本願実施例4に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図28は、手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具であるスタイラスペンを示している。図28では、表示されている筆跡で示し、消去された筆跡を破線で示し、痕跡表示色にて表示されている筆跡を一点鎖線で示している。
図28は、「ふ」という文字を手書き入力する状況を示している。図28A〜図28Cは、実施例3にて示した図24における図24A〜図24Cと同様の状況を示している。図28Dは、図28Cにて消去した筆跡が痕跡表示色にて表示されている状況を示している。
図28Eは、二画目の入力の受付を開始した状況を示している。二画目の入力に際し、一画目の筆跡が痕跡表示色にて表示されているため、入力者は、一画目の筆跡を認識することができる。図28Fは、二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れた後に痕跡表示色にて表示される筆跡を示している。二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れることにより、痕跡表示色にて表示された一画目の筆跡が消去され、二画目の筆跡のみが痕跡表示色にて表示されている。
図29は、本願実施例4に係る手書き入力装置1に関する入力状況の一例を示す説明図である。図29は、手書き入力部13と表示部14とが一体となっている手書き入力装置1に適用した場合に、表示部14に表示される筆跡及び入力具であるスタイラスペンを示している。図29では、表示されている筆跡で示し、消去された筆跡を破線で示し、痕跡表示色にて表示されている筆跡を一点鎖線で示している。
図29は、「A」という文字を手書き入力する状況を示している。図29A〜図29Cは、実施例3にて示した図25における図25A〜図25Cと同様の状況を示している。図29Dは、図29Cにて消去した筆跡が痕跡表示色にて表示されている状況を示している。
図29Eは、二画目の入力の受付を開始した状況を示している。二画目の入力に際し、一画目の筆跡が痕跡表示色にて表示されているため、入力者は、一画目の筆跡を認識することができる。図29Fは、二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れた後に痕跡表示色にて表示される筆跡を示している。二画目の入力が終わり、入力具が手書き入力部13から離れることにより、痕跡表示色にて表示された一画目の筆跡が消去され、二画目の筆跡のみが痕跡表示色にて表示されている。
なお、消去した筆跡を痕跡表示色にて表示する方法としては、筆跡長が所定長を超えて消去する段階から、痕跡表示色にて表示する等、適宜設定することが可能である。
以上のように、本願実施例4では、筆跡表示及び消去処理として、消去した筆跡を背景色に近似する痕跡表示色にて表示する。これにより、近傍から視る入力者には、痕跡表示色にて表示された筆跡を視認すること可能であるという効果を奏し、他方、離れて視る第三者は、痕跡表示色で表示された筆跡を視認することが困難であるという効果を奏する。
(実施例5)
実施例5は、実施例1において、筆跡の消去の基準となる筆跡長を動的に変更する形態である。実施例5において、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号を付し、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
実施例5に係る手書き入力装置1のハードウェア構成は、実施例1と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
次に、実施例5に係る手書き入力装置1の機能構成について説明する。図30は、本願実施例5に係る手書き入力装置1の機能構成例を示す機能ブロック図である。手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、表示領域取得部10m、所定長決定部10n等の機能を実行させる。なお、手書き入力プログラムPRGの実行ではなく、受付部10a、表示出力部10b、筆跡長算出部10c、消去判定部10d、消去処理部10e、完了判定部10f、認証処理部10g、表示領域取得部10m、所定長決定部10n等の機能を実現する回路を組み込むようにしても良い。
表示領域取得部10mは、表示部14の表示領域に係る長さ又は大きさを取得するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。
所定長決定部10nは、表示領域取得部10mが取得した長さ又は大きさに基づいて、消去処理部10eが消去の基準とする所定長を決定するように制御部10を動作させるプログラムモジュール、回路等の構成要素である。
また、手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを制御部10の制御に基づき実行することにより、記録部11の記録領域の一部を、筆跡情報記録部11a、認証用情報記録部11b、消去条件保持部11c、完了条件保持部11d等の情報記録領域として使用可能にする。
次に、本願実施例5に係る手書き入力装置1の処理について説明する。実施例5では、筆跡表示及び消去処理の前に、所定長決定処理を実行する。所定長決定処理は、筆跡の消去の基準となる所定長を決定する処理である。実施例1〜実施例4では、所定長は固定長として設定されているが、実施例5では、表示部14の表示領域に係る長さ又は大きさに基づいて動的に設定される。実施例5は、例えば、本願に係る手書き入力装置1において、大きさを変更することが可能なウィンドウとして、筆跡の表示領域を設定した場合に適用される。
図31は、本願実施例5に係る手書き入力装置1の所定長決定処理の一例を示すフローチャートである。手書き入力装置1は、手書き入力プログラムPRGを実行する制御部10の制御により、表示部14に筆跡の表示領域となるウィンドウを表示し、又は表示されているウィンドウの大きさを変更した場合に、以下に示す所定長決定処理を実行する。
制御部10は、表示領域取得部10mにより、表示部14に表示された筆跡の表示領域に係る長さ又は大きさを取得する(S601)。表示領域に係る長さとは、例えば表示領域が矩形である場合は、長辺の長さ、短辺の長さ、対角線の長さ等の長さである。また、例えば表示領域が、円である場合は、半径、直径等の長さであり、楕円である場合は、長径、短径等の長さである。表示領域に係る大きさとは、例えば表示領域の面積(画素数)である。
制御部10は、所定長決定部10nにより、取得した長さ又は大きさに基づいて、消去処理部10eが消去の基準とする所定長を決定する(S602)。例えば、短辺の長さの1/6の長さとして所定長が決定される。また、例えば、表示領域の面積の平方根の1/10の長さとして所定長が決定される。ステップS602にて決定された所定長は、消去条件保持部11cに記録される。このようにして、実施例5に係る所定長決定処理が実行される。なお、実施例5に係る筆跡表示部及び消去処理は、実施例1と同様であるので、実施例1を参照するものとし、その説明を省略する。
このように、表示領域の大きさに応じて所定長を決定することにより、適切な所定長を自動的に設定することが可能である。また、所定長の決定に係る具体的な方法としては、長辺及び短辺の双方を加味する、上限値又は下限値を決定する等、適宜設定することが可能である。
前記実施例1乃至5は、本願の無数にある実施例の一部を例示したに過ぎず、各種ハードウェア及びソフトウェア等の構成は、目的、用途等に応じて適宜設計することが可能である。また、前記実施例1乃至5は、それぞれ独立して実施されるものではなく、目的、用途に応じて適宜組み合わせて実行することが可能である。
以上の実施例に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
表示部と、
筆跡の入力を受け付ける受付部と、
該受付部が筆跡を受け付け中に、現筆記点から所定長の筆跡を、表示部に表示させる表示出力部と
を備える手書き入力装置。
(付記2)
筆跡の入力を受け付ける受付部と、
該受付部が受け付けた筆跡を表示部に表示させる表示出力部と、
前記表示部に表示させている筆跡の長さを算出する筆跡長算出部と、
前記算出した筆跡の長さより、所定長を差し引いた筆跡長を算出し、該差し引いた筆跡長分の筆跡を、表示させている筆跡の始点から消去させる消去部と
を備える手書き入力装置。
(付記3)
筆跡の受付を完了したか否かを判定する完了判定部を更に備え、
該完了判定部が、筆跡の受付を完了したと判定した場合に、前記消去部は、表示させている筆跡を消去させるようにしてある付記1又は2に記載の手書き入力装置。
(付記4)
消去した筆跡に含まれていた点の一部を、消去した筆跡の痕跡を示す痕跡点として抽出する痕跡点抽出部と、
該痕跡点抽出部が抽出した痕跡点を前記表示部に表示させる痕跡点表示部と
を更に備える付記1乃至3のいずれかに記載の手書き入力装置。
(付記5)
前記痕跡点抽出部は、消去した筆画単位の筆跡から、一の筆画の始点及び終点、並びに該始点及び終点の位置に対して所定の関係にある筆跡上の点を痕跡点として抽出するようにしてある付記4に記載の手書き入力装置。
(付記6)
前記痕跡点抽出部は、消去した筆画単位の筆跡から、一の筆画の始点及び終点、並びに該始点及び終点を通る直線からの距離が最大となる筆跡上の点を痕跡点として抽出するようにしてある付記4に記載の手書き入力装置。
(付記7)
前記痕跡点表示部は、直前に消去した筆画に係る筆跡から抽出した痕跡点のみを表示させるようにしてある付記4乃至6のいずれかに記載の手書き入力装置。
(付記8)
消去した筆跡が表示されていた位置を取得する位置取得部と、
該位置取得部が取得した位置に基づいて、消去した筆跡に外接する所定の外接図形を前記表示部に表示させる外接図形表示部と
を更に備える付記1乃至7のいずれかに記載の手書き入力装置。
(付記9)
前記位置取得部は、直前に消去した筆画に係る筆跡が表示されていた位置のみを取得するようにしてある付記8に記載の手書き入力装置。
(付記10)
前記表示出力部は、予め設定されている背景色及び該背景色と異なる表示色の筆跡を前記表示部に表示するようにしてあり、
消去した筆跡を、前記背景色及び表示色と異なり、前記背景色に基づいて設定されている痕跡表示色にて前記表示部に表示させる痕跡色表示部を更に備える付記1乃至9に記載の手書き入力装置。
(付記11)
前記痕跡表示色は、前記背景色と色差又は明度差が所定値以下の近似色である付記10に記載の手書き入力装置。
(付記12)
前記表示出力部は、直前に消去した筆画に係る筆跡のみを痕跡表示色にて表示するようにしてある付記10又は付記11に記載の手書き入力装置。
(付記13)
前記表示部の表示領域に係る長さ又は大きさを取得する表示領域取得部と、
該表示領域取得部が取得した長さ又は大きさに基づいて、前記消去部が消去の基準とする所定長を決定する所定長決定部と
を更に備える付記1乃至付記12のいずれかに記載の手書き入力装置。
(付記14)
受け付けた筆跡の入力に基づく画像を表示部に表示させる手書き入力装置に用いられる手書き入力方法であって、
筆跡の入力を受け付け、
受付部により筆跡を受け付け中に、現筆記点から所定長の筆跡を、表示部に表示させる
手書き入力方法。
(付記15)
受付部にて受け付けた筆跡の入力に基づく画像を表示部に表示させる手書き入力装置に用いられる手書き入力方法であって、
前記受付部により筆跡の入力を受け付け、
前記受け付けた筆跡を前記表示部に表示させ、
該表示部に表示させている筆跡の長さを算出させ、
前記算出した筆跡の長さより、所定長を差し引いた筆跡長を算出し、該差し引いた筆跡長分の筆跡を、前記表示部に表示させている筆跡の始点から消去させる
手書き入力方法。
(付記16)
受け付けた筆跡の入力に基づく画像を表示部に表示させるコンピュータに、
筆跡の入力を受け付ける手順と、
筆跡の入力の受け付け中に、現筆記点から所定長の筆跡を、表示部に表示させる手順と
を実行させる手書き入力プログラム。
(付記17)
受け付けた筆跡の入力に基づく画像を表示部に表示させるコンピュータに、
筆跡の入力を受け付ける手順と、
前記受け付けた筆跡を前記表示部に表示させる手順と、
該表示部に表示させている筆跡の長さを算出させる手順と、
前記算出した筆跡の長さより、所定長を差し引いた筆跡長を算出し、該差し引いた筆跡長分の筆跡を、前記表示部に表示させている筆跡の始点から消去させる手順と
を実行させる手書き入力プログラム。