JP5411024B2 - 防水材及び防水層の改修方法 - Google Patents
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Description
前記水系塗材は、低温での伸びを出すために塗材を構成するエマルションのガラス転移温度(以下、Tg)を低く設定することが一般的に行われている。
しかし、防水材に高沸点溶剤を入れることで塗膜自体は軟らかくなるが、その一方で加熱伸縮性状が悪くなることが本発明者らにより明らかとなった。このような防水材は、塩化ビニルシートからなる防水層の改修には適さず、伸縮によるストレスから塩化ビニルシートに破断が生じてしまう。
(2)本発明の防水材は、前記エマルションを40〜70質量%および前記体質顔料を10〜40質量%含有することが好ましい。
(3)本発明の防水材は、前記体質顔料の平均粒径が2〜20μmであることが好ましい。
(4)本発明の防水層の改修方法は、前記本発明の防水材を防水層に施工することを特徴とする。
(5)本発明の防水層の改修方法は、前記防水層が塩化ビニルシートからなることが好ましい。
(6)本発明の防水層の改修方法は、前記防水層がFRPからなることが好ましい。
(7)本発明の防水層の改修方法は、前記防水層がウレタン防水材からなることが好ましい。
(8)本発明の防水層の改修方法は、前記防水層が合成ゴムシートからなることが好ましい。
本発明の防水材は、Tg(ガラス転移温度)が−40℃〜−20℃であるコアシェル型エマルションと吸油量が10〜40mg/100gである体質顔料を含有することが必須である。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、α位に水素原子が結合したアクリレートと、α位にメチル基が結合したメタクリレートの一方あるいは両方を意味する。
ビニルエステルやアリル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレート等が挙げられる。
ニトリル基含有ビニル系単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
エポキシ基含有ビニル系単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有ビニル系単量体としては、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシスチレン、アロニクス5700(東亜合成化学社製)、placcelFA−1、placcelFA−4、placcelFM−1、placcelFM−4(以上、ダイセル化学社製)、HE−10、HE−20、HP−10、HP−20(以上日本触媒社製)、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーNKH−5050、ブレンマーGLM(以上、日本油脂社製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマー等が挙げられる。
その他の単量体としては、東亜合成化学社製のマクロモノマーである、AS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物、ビニルメチルエーテル、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
前記ビニル系単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が挙げられる。
ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体としては、ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
アンモニウム塩としては、イミダゾリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
本発明の防水材においては、Tgが−40℃〜−20℃であるコアシェル型エマルションを用いているため、引張強度を上げる目的で体質顔料を加えるが、塗膜防水材としての要求性能である伸びも確保する必要がある。
尚、本発明における体質顔料の吸油量は、JIS K5101の規定に準拠した煮あまに油法によって測定して求められるものである。
本発明の防水材は、着色顔料を含有してもよい。
着色顔料としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などを挙げることができる。
光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができる。
また、本発明においては、可塑成分として高沸点溶剤を加えてもよい。
前記高沸点溶剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエーテルポリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエステル等が挙げられ、沸点200℃以上のものが好ましく、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールノルマルブチルエーテルがより好ましく、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート特に好ましい。
かかる高沸点溶剤については、防水材に可塑性を付与する観点から使用してもよいが、加熱伸縮の観点から使用しないほうがよい。
本発明において、形成塗膜の仕上がり性、塗料製造段階において発生する泡を抑制、破泡する等を目的として消泡剤を含有することが好ましい。
本発明においては消泡剤として、疎水性シリカ又は脂肪族アミド消泡剤等が挙げられ、脂肪族アミド消泡剤が好ましい。
また、本発明において、塗布作業性、顔料沈降防止等の観点から粘性調整剤を含むことが好ましい。
また、本発明において、分散剤を含むことが好ましい。
前記分散剤の使用量としては、0.1〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜1.5質量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明の防水材に配合可能な有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類などが挙げられ、アルコール類が好ましい。
本発明の防水材は、必要に応じて、硬化触媒、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
本発明の防水材を適用することのできる素材(被塗物)としては、特に限定されず、具体的には、モルタル、コンクリート、ALC(軽量気泡コンクリート)、ウレタン、アクリルウレタン、塩化ビニル、FRPを含む各種プラスチック、合成ゴム、砂付きルーフィング、等が挙げられる。
本発明の防水層の改修方法は、前記本発明の防水材を塩化ビニルシートからなる防水層(以下、塩化ビニルシート防水層)表面に直接施工する方法である。
雨水、風、日射等により経年劣化した塩化ビニルシート防水層の改修方法としては、既設防水層の上に新たに塩化ビニルシートを施工する方法や、劣化した塩化ビニルシートを撤去した後に新たに塩化ビニルシートを施工する方法が挙げられる。
既設防水層の上に新たに塩化ビニルシートを施工する方法においては、新設防水層と既設防水層との間に生じる膨れを考慮しなければならない点に難がある。
劣化した塩化ビニルシートを撤去した後に新たに塩化ビニルシートを施工する方法においては、撤去後、ポリマーセメントやポリマーモルタル等により被補修面を平滑に仕上げる等の下地処理を行う必要があり、作業に熟練を要する。
さらに、接着剤を用いて施工する場合には、接着剤の臭気が環境面から問題となっている。
更に、防水層に用いる塩化ビニルシートは浮かし張りにより施工されていることが多く、ウレタン塗膜防水の経年劣化による収縮や液状の超速硬化ウレタン塗布時の加温により、塩化ビニルシートに過剰なストレスがかかり、施工後に塩化ビニルシートの膨れや破断が生じやすいといった問題点がある。
本発明の防水材は、付着性、耐候性、加熱伸縮性状に優れている。そのため、本発明の防水層の改修方法によれば、塗布防水材施工前のプライマーの塗布が不要である。またトップコートが不要であり、施工後に塩化ビニルシートに物理的なストレスが生じることがない。
更に、本発明の防水材は水性であるため、塩化ビニルシートを劣化させる恐れがない。
本発明の防水層の改修方法は、前記本発明の防水材をFRPからなる防水層(以下、FRP防水層)表面に直接施工する方法である。
近年、建造物の屋上、ベランダ等には、前記FRP防水施工が施されている。このような建造物に施工されたFRP防水層が経年劣化した場合、既設のFRP防水層の上に新たにFRPを施工するのが一般的である。
しかしながら、FRP防水施工は上記構成からなる工法であるため、前記施工方法には臭気や混合攪拌の手間、硬化不良等の問題があり、更に、作業に熟練を要する。
本発明の防水材は、一液型水性塗材であり、ローラー刷毛により塗布可能であるため、本発明のFRP防水層の改修方法によれば、前記問題点を全て解消することができる。
対策としては、接着性に優れたプライマーを防水層表面に塗布した後に、前記塗膜防水材を接着させる方法や、サンディングにより前記防水層表面を目荒らしした後、前記塗膜防水材を物理的に接着させる方法が挙げられる。
しかしながら、環境汚染を考慮して水性プライマーを用いる場合、前記水性プライマーは接着性を十分に満たさない。また、目荒らしをする場合、ガラス繊維が飛散するため施工時に難がある。
本発明の防水材は、付着性及び耐候性に優れているため、本発明のFRP防水層の改修方法によれば、塗膜防水材施工前のプライマーの塗布及び塗膜防水材施工後のトップコート処理が不要である。更に、本発明の防水材は水性であるため、居住環境での改修においても安全に作業をすることができる。
本発明の防水層の改修方法は、前記本発明の防水材をウレタン塗膜防水材からなる防水層(以下、ウレタン塗膜防水層)表面に直接施工する方法である。
上述したように、本発明の防水材は、既存のウレタン塗膜に対しても付着性に優れている。よって、本発明のウレタン塗膜防水層の改修方法によれば、塗膜防水材施工前のプライマーの塗布が不要である。
本発明の防水層の改修方法は、前記本発明の防水材を合成ゴムシートからなる防水層(以下、合成ゴムシート防水層)表面に直接施工する方法である。
上述したように、本発明の防水材は、合成ゴムに対しても付着性に優れている。よって、本発明の合成ゴムシート防水層の改修方法によれば、塗膜防水材施工前のプライマーの塗布が不要である。
分散剤(ロームアンドハース社製;プライマル850FF)0.8部、二酸化チタン7.6部、炭酸カルシウム(平均粒径5.4μm、吸油量24mg/100g)24.3質量部および水2部を混合分散して、分散ペーストを調製した。コアシェル型エマルション組成物(ロームアンドハース社製、エラスティン2885)54.7部、消泡剤としてSNデフォーマーを0.5部、増粘剤0.3部と分散ペーストを混合撹拌して、塗料を得た。
(1) 標準養生後の付着
実施例1の塗料を基材に塗布後、23℃50%RH中で24時間養生し、(3)に示す付着試験を行った。
(2) 耐水試験後の付着
(1)の試験後、実施例1の塗料を塗布した基材を水に24時間浸漬し、取り出した後、23℃50%RH中で24時間養生し、(3)に示す付着試験を行った。
(3)付着試験方法(JISK5600−5−6に準拠)
基材に形成させた塗膜にカッターで、2mm幅の碁盤目状の切込みを100マス分入れた。切り込みの上にセロテープ(登録商標)を貼り、そのセロテープ(登録商標)をすばやく剥がし、100マス中何マス剥がれたかを確認した。表中、剥がれたマス数/100マスを記載した。
比較例1としてアトミクス社製、アトレーヌ水性トップLを用いた。
比較例2として東亜合成社製、アロンコートを用いた。
(1) 汚染性試験
実施例1及び比較例1〜2の塗料を30milアプリケーターで塗布し、各温度で1週間養生した。その後、カーボン紙を塗膜上に置き、その上に500gの錘を24時間乗せ、カーボン紙の張り付き状況を下記基準で目視評価した。
○:張り付きが全くない
△:張り付きが目立たない程度にある
×:張り付きが目立たつ
コアを有しない構造でTgが約20℃の樹脂(ボンコートYG−609(DIC社製)Tg19℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗料を得た。
コアを有しない構造でTgが約0℃の樹脂(ボンコート550EF(DIC社製)Tg0℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗料を得た。
コアを有しない構造でTgが約−20℃の樹脂(アクロナールYJ−2741D(BASFジャパン社製)Tg−14℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗料を得た。
コアを有しない構造でTgが約−40℃以下の樹脂(ポリゾールAP−5575(昭和高分子社製)Tg−60℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗料を得た。
(1) 塗膜強度
塗膜引張強度を下記基準で評価した。
○:23℃引張試験測定値に対する−20℃引張測定値の比率が100%以上400%以下、且つ23℃引張試験測定値に対する60℃引張測定値の比率が30%以上
△:23℃引張試験測定値に対する−20℃引張測定値の比率が401%以上500%以下、且つ23℃引張試験測定値に対する60℃引張測定値の比率が30%以上
×:23℃引張試験測定値に対する−20℃引張測定値の比率が501%以上、且つ23℃引張試験測定値に対する60℃引張測定値の比率が30%以上
−20℃における塗膜引張伸び率を下記基準で評価した。
○:70%以上
△:60%以上70%未満
×:60%未満
(3) 付着性
塩ビシートに対する付着性を上述した付着試験方法を用いて評価した。
○:剥がれたマス数が10マス以下/100マス
△:剥がれたマス数が11マス以上30マス以下/100マス
×:剥がれたマス数が31マス以上/100マス
(4) 耐汚染性
表2に示される試験項目の記載と同様であるため、省略する。
炭酸カルシウム(平均粒径5.4μm、吸油量24mg/100g)を30.3質量部
用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗料を得た。
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを2部用いた以外は、実施例2と同様の方法で塗料を得た。
(1) 加熱伸縮性状試験
JIS A6021に準拠し、80℃で168時間加熱後、測長器で樹脂の長さを測定し、加熱処理前の樹脂の長さに対する伸縮率を算出した。
消泡剤として脂肪族アミノ酸を1部、ポリシロキサンを1部用いた以外は、比較例7と同様の方法で塗料を得た。
(1) 増粘性試験
塗料を入れた容器を55℃で14日間養生する。その後、粘度測定を行った。
炭酸カルシウム(平均粒径1.0μm、吸油量27mg/100g)を30.3質量部
用いた以外は、比較例8と同様の方法で塗料を得た。
(1)アルカリ処理後の引張性能試験
JIS A6021建築用塗膜防水材屋根用アクリルゴム系に準拠し、アルカリ処理後、引張試験機で、樹脂の引張強さを測定し、引張性能の引張強さに対する比(百分率)の平均値を示した。
Claims (8)
- Tgが−40℃〜−20℃であるコアシェル型エマルションと吸油量が10〜40mg/100gである体質顔料を含有することを特徴とする防水材。
- 前記エマルションを40〜70質量%および前記体質顔料を10〜40質量%含有する請求項1記載の防水材。
- 前記体質顔料の平均粒径が2〜20μmである請求項1又は2に記載の防水材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の防水材を防水層に施工することを特徴とする防水層の改修方法。
- 前記防水層が塩化ビニルシートからなる請求項4記載の防水層の改修方法。
- 前記防水層がFRPからなる請求項4記載の防水層の改修方法。
- 前記防水層がウレタン塗膜防水材からなる請求項4記載の防水層の改修方法。
- 前記防水層が合成ゴムシートからなる請求項4記載の防水層の改修方法。
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