以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
本実施例においては、図1に概略的に示すように、複数台、例えば、3台のチップ搭載機10,12,14が互いに隣接して一列に配置されている。本実施例においては、チップ搭載機10,12,14の構成は同じであり、搭載機10を代表的に説明する。
チップ搭載機10においては、図2に示すように、基板20に半導体チップ22(以後、チップ22と略称する)が搭載される。本実施例においてチップ22は、図3に示すように、ウエハ24に同一の電子回路が複数形成された後、電子回路毎に切断されて成り、ベアチップの一種である。ウエハ24は、円形を成し、可撓性シート、例えば、合成樹脂製の粘着シート26に付着させられ、ダイシングされて多数のチップ22に分割されている。粘着シート26は保持シートであり、その外周縁を保持部材としての保持枠28により保持されている。このように複数のチップ22が粘着シート26に付着されるとともに、保持枠28により保持されたものをチップ集合体30と称する。
基板20は、本実施例では、長方形状を成し、図2に示すように、同一の配線パターン32を有する複数の小基板部としてのパッケージ基板34がマトリックス状に配列された構造を有する。パッケージ基板34は、基板20の幅方向および長手方向においてそれぞれ等間隔で複数個ずつ配列されている。基板20は複数のパッケージ基板34の集合体であり、これら複数のパッケージ基板34の各々にチップ22が搭載されてチップ付基板が製造される。パッケージ基板34はインタポーザルとも称し、チップ22の搭載後、チップ22とパッケージ基板34とのワイヤによる接続,チップ22およびワイヤ等の樹脂等のパッケージによる封入等が行われた後、パッケージ基板34毎に切断されてパッケージ電子回路部品が得られる。パッケージ基板34はパッケージ電子回路部品の一部を構成する。基板20は、電子回路部品を多数、形成することができる多数個取りの基板である。また、この基板20は、リード付電子回路部品製造用の基板である。
上記多数のパッケージ基板34の各々について、図2に示すように基準マーク36が複数、本実施例においては2個ずつ、対角線上に隔たった2個所にそれぞれ設けられている。また、基板20の製造後、複数のパッケージ基板34の各々について検査が行われ、不良なパッケージ基板34については、小基板部不良表示部としてのパッケージ基板不良表示マーク37(以後、不良表示マーク37と称する)が付される。本基板20においては、図2に二点鎖線で示すように、その長手方向に平行な一方の側縁部に沿って1列に、複数の不良表示マーク付設個所38が設定されている。不良表示マーク付設個所38は、複数のパッケージ基板34の各々について設けられており、基板不良表示マーク付設個所であり、検査の結果、パッケージ基板34が不良であった場合には、そのパッケージ基板34について設けられた不良表示マーク付設個所38に不良表示マーク37が付けられる。この不良表示マーク37は、後述する撮像装置による撮像により認識可能な態様で設けられる。
本チップ搭載機においては、図2に示す基板20の他に、図示は省略するが、例えば、ボールグリッドアレイ製造用の基板の複数のパッケージ基板への半導体チップの搭載が行われる。ボールグリッドアレイ製造用基板にも、基板20と同様に不良表示マーク付設個所が1列に設けられている。
チップ搭載機10は、本実施例では、図4に概略的に示すように、基板搬送装置40,基板保持装置42,接着剤塗布装置44,チップ保持装置46,チップ搭載装置48,基板支持加熱装置50(図12参照),チップ突上装置52(図22参照)およびこれら装置40等を制御する制御装置54(図27参照)を備えている。これら装置40〜54は、搭載機本体の一部を構成するベース56に設けられている。以下、各装置を説明する。
基板搬送装置40および基板保持装置42を説明する。
基板搬送装置40は、図4に示すように、チップ22が搭載されていない未搭載の基板20を基板供給装置60から作業エリアへ搬入し、チップ22の搭載の済んだ搭載済みの基板20を作業エリアから搬出し、基板収納装置62に収納する。これら基板供給装置60,作業エリアおよび基板収納装置62は、当該チップ搭載機の幅方向ないし間口方向に平行に、かつ直列に設けられている。本実施例においては、基板搬送装置40による基板搬送方向は、チップ搭載機の幅方向に平行であり、基板20は、その長手方向が基板搬送方向に平行な姿勢で搬送される。基板搬送方向に平行な方向をX方向、X方向に直角で水平な方向をY方向とする。Y方向は、基板20の幅方向であり、チップ搭載機の奥行方向である。以後、方向を説明する場合、場合に応じて、基板搬送方向,基板幅方向,X方向,Y方向等、方向を規定する用語のうち、適宜の用語を使用する。
基板供給装置60は、基板供給部材としての基板供給カートリッジ66(図11参照)および基板供給カートリッジ昇降装置68(図27参照)を含み、本実施例では、基板搬送装置40等と共にチップ搭載機を構成している。基板供給カートリッジ66のカートリッジ本体70は箱状を成し、図6および図7に示すように、2本を1対とするレール72が複数対、上下方向に等間隔に並ぶ状態で設けられ、それにより基板供給カートリッジ66には複数の棚74が上下方向に等間隔に設けられ、基板20が多段に収容される。基板20は、その長手方向に平行な両側縁部においてレール72上に載せられ、レール72の上向きで水平な支持面76(図7および図11参照)により下方から支持される。また、カートリッジ本体70の内側面により構成され、1対のレール72の各支持面76にそれぞれ直角な1対の鉛直な規定面78(図7参照)により幅方向の移動限度が規定される。本実施例では、図7に示すように、1対の規定面78間の距離L1は、基板20の幅Wより距離α大きく、1対の規定面78はそれぞれ、収納された基板20の両側面80に対応し、その間に僅かな隙間が設けられる。基板供給カートリッジ66は、レール72が基板搬送方向に平行となり、基板20を、その長手方向が基板搬送方向に平行な姿勢で供給するように配置される。基板供給カートリッジ昇降装置68は、本実施例では電動モータの一種であるサーボモータを駆動源とし、基板供給カートリッジ66を昇降させ、レール72により支持された複数の基板20を順次、上下方向において予め設定された基板供給位置に位置決めする。なお、図7においては、1対の規定面78を始めとする規定面と基板20の側面80との間の隙間は、理解を容易にするために誇張して図示されている。
基板収納装置62も同様に、基板収納部材としての基板収納カートリッジ84および基板収納カートリッジ昇降装置86(図27参照)を含む。基板収納カートリッジ84の箱状を成すカートリッジ本体88には、図7および図11に示すように、2本を1対とするレール90が複数対、上下方向に等間隔に並ぶ状態で設けられ、複数の棚92に基板20が多段に収容される。基板20は、その長手方向に平行な両側縁部においてそれぞれレール90により支持され、支持面94により下方から支持される。また、基板20は、支持面94に直角な規定面96により幅方向の移動限度が規定される。
これら1対の規定面96間の距離L2は、図7に示すように、基板供給カートリッジ66の1対の規定面78間の距離L1と等しく、1対の規定面96は基板20の両側面80に僅かな隙間を隔てて対向する。基板収納カートリッジ84は、基板20を、その長手方向が基板搬送方向に平行な姿勢で収納するように配置され、サーボモータを駆動源とする基板収納カートリッジ昇降装置86により昇降させられて、複数のレール90の各支持面84が順次、上下方向において予め設定された基板収納位置に位置決めされる。
前記基板保持装置42は、前記作業エリアに設けられている。基板保持装置42は、図5および図6に示すように、基板クランプ装置100を含む。基板クランプ装置100は、1対のクランプユニット102,104およびそれらユニット102,104に共通の押付部材昇降装置106を含む。クランプユニット102,104はそれぞれ、前記ベース56に固定の支持部材108,110に設けられ、基板幅方向において距離を隔てて設けられている。支持部材108,110は壁状を成し、基板搬送方向に平行に設けられ、ている。一方のクランプユニット102は支持部材108に固定して設けられた固定クランプユニットであり、他方のクランプユニット104は支持部材110に、クランプユニット102に接近,離間可能に設けられた可動クランプユニットであり、基板20の幅に応じてクランプユニット102,104の間隔が調節される。
固定クランプユニット102は、図5に示すように、基板押さえ部材120および基板押付部材122を含む。基板押さえ部材120は、無色透明の長手形状の板状を成し、本実施例ではガラス製であり、支持部材108に着脱可能に固定された固定保持部材126と、支持部材108に、固定保持部材126に対して接近,離間可能に設けられた可動保持部材128とにより上下両側から挟まれて保持されている。固定保持部材126は、基板搬送方向に平行な方向に長い板状の保持部130を備え、支持部材108から可動クランプユニット104側へ突出させられている。
可動保持部材128は長手形状の板状を成し、図6に示すように、その長手方向に隔たった複数箇所、本実施例においては2箇所においてそれぞれ、ブラケット132によって支持部材108に回動可能に取り付けられている。これらブラケット132は概してL字形を成し、支持部材108に基板搬送方向に平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられており、その一方のアーム部136に可動保持部材128が固定され、固定保持部材126の保持部130の下側に配設されて保持部130との間に基板押さえ部材120を挟む。ブラケット132の他方のアーム部138には、支持部材108に設けられた係合部材140が係合させられ、基板押さえ部材120を保持部130との間に挟んだ状態に保つ。基板押さえ部材120は、保持部材126,128により、その長手方向が基板搬送方向と平行なる姿勢で保持されるとともに、可動クランプユニット104側の縁部は保持部材126,128から基板押付部材122上に突出させられ、その下面であって、基板押付部材122と対向する面は、基板20を上下方向において予め設定された位置に位置決めする基準面144を構成する。また、可動保持部材128の鉛直で基板搬送方向に平行な側面が、基板20の側面80に対向し、基板20の幅方向の移動限度を規定する規定面146を構成する。
係合部材140は、支持部材108に回動可能に取り付けられ、レバー142が手動操作されることにより係合部材140が回動させられてブラケット132に係合,離間させられる。係合部材140が、図5に二点鎖線で示すように、ブラケット132から離間させられた状態において、作業者はブラケット132を回動させることができ、可動保持部材128を固定保持部材126から離れる向きに回動させて基板押さえ部材120の保持を解除し、基板押さえ部材120を着脱することができる。そのため、例えば、基板押さえ部材120が破損した場合に交換したり、清掃等のメンテナンスを容易に行うことができる。固定保持部材126は、図6においては図示が省略されているが、切欠が設けられ、ブラケット132および可動保持部材128との干渉を回避しつつ支持部材108に固定される。
基板押付部材122は、1対の支持部材108,110により昇降可能に支持された1対の昇降部材としての連結部材150に保持され、基板押さえ部材120の下方に配設されている。これら連結部材150は、図5および図6に示すように、長手形状の板状を成し、図6に示すように、支持部材108,110の基板搬送方向に隔たった両端部においてそれぞれ、基板幅方向に平行に配設されるとともに、連結部材150の各長手方向の両端部はそれぞれ、下方へ突出して設けられた脚部において、支持部材108,110に設けられたガイドロッド152に昇降可能に嵌合されている。これら1対の連結部材150の各支持部材108側の端部にそれぞれ、長手形状の板状を成す保持部材156の両端部が固定されるとともに、その保持部材156により、基板押付部材122が基板搬送方向に平行な姿勢で上下方向に相対移動可能に保持されている。ガイドロッド152は案内部材の一例であり、ガイドロッドが嵌合される案内部材としてのガイドスリーブと共に案内装置を構成する。本チップ搭載機について、以後に説明される他の装置のガイドロッドについても同様である。また、案内部材としてガイドレールおよびガイドブロックが用いられる場合にも、それらは案内装置を構成する。
基板押付部材122は、図5に示すように、横断面形状がL字形を成し、連結部材150との間に配設された付勢手段の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング160によって基板押さえ部材120に接近する向きに付勢されている。基板押付部材122の保持部材156に対する昇降は、保持部材156に基板幅方向に平行な姿勢で突設されて係合部を構成する複数のピン162(図6参照)と、基板押付部材122に設けられた上下方向に長い複数の長穴(図示省略)との嵌合により案内され、スプリング160の付勢による基板押付部材122の上方への移動限度は、長穴の下側端面がピン162に係合することにより規定される。基板押付部材122の上面は基板搬送方向に長く、前記基板押さえ部材120の基準面144の下方において基準面144と対向し、基板20を基板押さえ部材120に押し付ける押付面ないし基板搬送時に基板20の基板搬送方向に平行な一方の側縁部を下方から支持する支持面166を構成している。基板押付部材122は基板支持レールでもあり、基板押さえ部材120は、基板押付部材122により下方から支持された基板20の側縁部の上方に設けられている。
前記可動クランプユニット104は、図5に示すように、基板押さえ部材170および基板押付部材172を含む。基板押さえ部材170は支持部材110にボルト等、適宜の固定装置によって着脱可能に固定されており、長手形状の板状を成し、支持部材110から固定クランプユニット102側へ水平に延び出させられた押さえ部174を備えている。押さえ部174の下面は、前記基板押さえ部材122の基準面144と同一水平面内に位置させられて基準面176を構成している。また、基板押さえ部材170の鉛直で基板搬送方向に平行な側面は、基板20の側面80に対向し、基板20の幅方向の移動限度を規定する規定面178を構成している。
基板押付部材172は、その長手方向の両端部においてそれぞれ、前記1対の連結部材150に、基板幅方向に移動可能に保持され、基板押さえ部材170の押さえ部174の下方に配設されている。これら連結部材150にはそれぞれ、図6に示すように、基板幅方向に延び、連結部材150を厚さ方向に貫通する長穴180が形成されており、保持部材182が長穴180を通って当て板184に螺合されるボルト186により、連結部材150に対して任意の位置において固定される。
上記保持部材182は長手形状を成し、基板押付部材172が上下方向に相対移動可能に保持されるとともに、連結部材150の長穴180を通って当て板184との間に配設された圧縮コイルスプリング190により基板押さえ部材170に接近する向きに付勢されている。このスプリング190の付勢による基板押付部材172の移動限度は、前記基板押付部材122と同様に、複数ずつのピン192(図6参照)と長穴(図示省略)との嵌合により規定される。基板押付部材172の上面であって、基板押さえ部材170と下方から対向する面は、基板搬送方向に長く、基板20を基板押さえ部材170に押付ける押付面ないし基板20の基板搬送方向に平行な他方の側縁部を下方から支持する支持面196を構成している。基板押付部材172は、前記基板押付部材122と同様に基板支持レールでもあり、支持面196は、前記支持面166と同一水平面内に位置させられている。
基板押付部材172を保持部材182と共に連結部材150に対して移動させ、固定クランプユニット102の基板押付部材122に接近,離間させることにより、基板クランプ幅が基板20の幅に応じた大きさに調節される。この際、基板押さえ部材170は基板20の幅に応じたものに交換され、図7に示すように、規定面146,178間の距離L3が、基板幅Wに距離βを加えた大きさになり、基準面176が支持面196に対向し、基板押さえ部材170の押さえ部174が基板押付部材172との間に基板20を挟むようにされる。距離βは、前記基板供給カートリッジ66の1対の規定面78間の基板20に対する隙間を規定する距離αより大きくされており、距離L3は、基板供給カートリッジ66および基板収納カートリッジ84の1対ずつの規定面78,96間の距離L1,L2より大きい。
基板20は、その幅方向の位置を基板幅方向位置規定装置200により規定される。基板幅方向位置規定装置200は規定面178側に設けられ、本実施例においては、図6に示すように、上記保持部材182に設けられ、基板搬送方向に隔たって設けられた複数、本実施例においては2つの可動規定部材202と、それら可動規定部材202をそれぞれ、規定面146に接近,離間する方向に移動させる規定部材駆動装置としての2つのエアシリンダ204とを含む。可動規定部材202は、鉛直な規定面206を備えている。エアシリンダ204は、本実施例では単動のエアシリンダとされ、エアが供給されない状態ではスプリングの付勢により可動規定部材202を、規定面206が基板押さえ部材170の規定面178と同一面内に位置する後退位置に位置させ、エアが供給されれば可動規定部材202を前進させ、可動規定面206が固定クランプユニット102の基板押さえ部材120の規定面146に向かって突出した前進位置に移動させる。前進位置は、図7に示すように、可動規定面206と固定の規定面146との間の距離L4が、基板幅Wに距離γを加えた大きさとなる位置とされている。距離γは前記距離αより小さく、距離L4は前記距離L2,L3より小さい。
前記基板供給カートリッジ66は、図7に示すように、1対の規定面78がそれぞれ、基板保持装置42の1対の規定面146,178の内側に位置し、基板供給カートリッジ66が規定面146,178の間に開口する位置に設けられている。それに対し、前記基板収納カートリッジ84は、その1対の規定面96が、基板保持装置42の規定面146および可動規定面206の外側に位置するように設けられている。基板収納カートリッジ84は、基板保持装置42に対して基板幅方向において、可動規定部材202が設けられた側とは反対側の規定面146側へ微小距離オフセットさせられた位置に設けられているのであり、規定面146と可動規定面206とにより基板20の幅方向の移動限度が規定される部分は、規定面146と可動規定面206との距離L4が1対の規定面96間の距離L2より小さく、距離基板収納カートリッジ84の1対の規定面96の間の部分に開口させられている。
前記押付部材昇降装置106は、本実施例では、流体圧アクチュエータの一種である流体圧シリンダたるエアシリンダ220(図5参照)を駆動源とし、支持部材108,110の、基板搬送方向に平行な方向に隔たった両端部にそれぞれ設けられた駆動部材222(図5には一方の駆動部材200のみが図示されている)を含む。駆動部材222は、板状を成し、支持部材108,110により、基板幅方向に平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられるとともに、長手方向の中間部においてエアシリンダ220のピストンロッド224に回動可能に連結されている。1対の駆動部材222の各長手方向の両端部にはそれぞれ、回動軸線から外れた位置に係合部材としてのローラ228が回転可能に取り付けられている。また、1対の駆動部材222の一端部同士はリンク230によって連結されている。したがって、ピストンロッド224が伸縮させられれば、1対の駆動部材222が一斉に回動させられ、1対の駆動部材222の2個ずつのローラ228が一斉に昇降させられる。1対の駆動部材222の2個ずつのローラ228はそれぞれ、前記1対の連結部材150の各長手方向の両端部にそれぞれ下方から係合させられ、ローラ228の上昇により連結部材150が上昇させられ、前記基板押付部材122,172が同時に上昇させられ、基板押さえ部材120,170に向かって移動させられ、基板20を基準面144,176に押し付けてクランプする。また、ローラ228が下降させられれば、連結部材150,保持部材156,182が自重によりローラ228に追従して下降させられ、基板押付部材122,172が下降させられる。
ピストンロッド224が収縮させられた状態では、連結部材150等は下降端位置に位置させられ、基板押付部材122,172はスプリング160,190の付勢による移動限度位置に位置する。この位置において基板押付部材122,172は、支持面166,196上に基板20が載置され、基板支持レールとして機能し、支持面166,196を含む面が水平な基板搬送面である。押付部材昇降装置106による基板押付部材122,172の下降端位置は、基板20をクランプせず、開放する基板開放位置であり、基板支持位置ないしレール機能位置である。ピストンロッド224の伸長により、基板押付部材122,172は基板押さえ部材120,170と共に基板20をクランプするクランプ位置へ上昇させられる。前記基板供給カートリッジ66の基板供給位置は、供給される基板20を支持する1対の支持面76が、基板支持位置に位置する基板押付部材122,172の支持面166,196と同一水平面内に位置する位置であり、前記基板収納カートリッジ84の基板収納位置は、収納される基板20を支持する1対の支持面94が、基板支持位置に位置する基板押付部材122,172の支持面166,196と同一水平面内に位置する位置である。また、前記可動規定部材202の可動規定面206は、上下方向において、基板20が基板搬送装置40により搬送される状態でも、基板押さえ部材120,170および基板押付部材122,172によりクランプされる状態でも、基板20の側面に対向する長さを有する。
前記基板搬送装置40を説明する。
基板搬送装置40は、図7ないし図11に示すように、案内路240,可動フレーム242,作用部としての基板搬入・搬出ヘッド244および基板搬入・搬出ヘッド移動装置246を備えている。案内路240は、本実施例では、図7に示すように、主案内路247,上流案内路248および下流案内路249を含む。主案内路247は、前記基板保持装置42の基板押付部材122,172の各支持面166,196,規定面146,178,可動規定部材202およびエアシリンダ204を含む。支持面166,196は、基板押付部材122,172が下降端位置(基板支持位置)に位置する状態において、基板支持面として機能し、主案内路247の一部を構成する。基板保持装置42の一部が主案内路247を兼ねているのである。
上流案内路248は、本実施例では、基板搬送装置40および基板保持装置42の基板搬送方向において上流側に位置する前記基板供給カートリッジ66の1対の支持面76と1対の規定面78とを含む。基板供給カートリッジ66が基板供給位置に位置決めされた状態において、上記支持面166,196と同一平面内に位置する1対の支持面76が上流案内路248の一部を構成する。本実施例では、基板供給カートリッジ66と基板保持装置42とは基板搬送方向において極く近接して設けられ、基板20は基板供給カートリッジ66から直接基板搬送装置40により搬出されて基板保持装置42により保持され、基板供給カートリッジ66に上流案内路248が形成されている。
下流案内路249は、本実施例では、基板搬送装置40および基板保持装置42の基板搬送方向において下流側に位置する前記基板収納カートリッジ84の1対の支持面94と1対の規定面96とを含む。基板収納カートリッジ84が基板収納位置に位置決めされた状態において、上記支持面166,196と同一平面内に位置する1対の支持面94が下流案内路249の一部を構成する。本実施例では、基板供給カートリッジ84と基板保持装置42とは基板搬送方向において極く近接して設けられ、基板20は基板搬送装置40により基板収納カートリッジ84に直接収納され、基板収納カートリッジ84に下流案内路249が形成されている。上流案内路248,下流案内路249の各1対の規定面78,96間の距離は、前述の距離L1,L2であり、主案内路247の1対の規定面146,178間の距離L3より小さい。
可動フレーム242は、図8および図9に示すように、主案内路247の片側において鉛直に延びる鉛直部材250と、その鉛直部材250から片持ち状に水平に延びる水平部材252とを有する。鉛直部材250は板状を成し、前記支持部材110に設けられたガイドレール254により基板搬送方向に移動可能に支持されている。基板搬入・搬出ヘッド移動装置246は、無端の環状を成すベルト256およびベルト周回装置258を含む。ベルト周回装置258は、駆動源としてのベルト周回モータ260および複数のプーリ262を含み、鉛直部材250はベルト256に着脱可能に固定され、ベルト256がベルト周回装置258によって周回させられることにより鉛直部材250が基板搬送方向に平行な方向に移動させられ、基板搬入・搬出ヘッド244が基板供給カートリッジ66から基板収納カートリッジ84の基板保持装置42側とは反対側の端部に至る領域を移動させられる。支持部材110は、可動クランプユニット104の支持部材であるとともに、可動フレーム242の支持部材を兼ねており、その分、チップ搭載機の奥行方向の寸法を短くすることができる。
水平部材252は板状を成し、鉛直部材250に昇降可能に設けられ、エアシリンダ276(図8参照)を含む昇降装置274により昇降させられる。水平部材252は、鉛直部材250に設けられたガイドレール278(図9参照)により、鉛直部材250に昇降可能にかつ鉛直部材250から基板保持装置42上へ片持ち状に延び出す状態で支持され、昇降装置274により上昇端位置と下降端位置とに昇降させられる。
前記基板搬入・搬出ヘッド244は水平部材252に着脱可能に、かつ基板幅方向の位置を調節可能に搭載され、可動フレーム242が移動させられることにより基板搬送方向に平行な方向に移動させられる。基板搬入・搬出ヘッド244は、図10および図11に示すように、ヘッド本体290,1対の把持部材としての把持爪292,294および押出部材296を含む。ヘッド本体290は板状を成し、その板面が基板幅方向に平行に設けられ、水平部材252にボルト298等、適宜の固定装置により着脱可能に固定される。これらボルト298は、水平部材252に、基板幅方向に平行に設けられた長穴300(図8参照)を通ってヘッド本体290に螺合され、ヘッド本体290を水平部材252に固定しており、ボルト298の長穴300内における固定位置を調節することにより、ヘッド本体290、ひいては基板搬入・搬出ヘッド244の基板幅方向の位置が調節される。この位置は、基板20の幅に合わせて調節され、把持爪292,294が基板20の幅方向の中央部を把持し、押出部材296が基板20の幅方向の中央部を押すようにされる。
上記ヘッド本体290の基板供給装置60側の面の、基板幅方向に平行な方向の中央に1対の把持爪292,294が上下方向に開閉可能に設けられ、把持部を構成している。この基板供給装置60側の面には、図10に示すように、1対の昇降部材304,306が、基板幅方向において距離を隔てた位置にそれぞれ、ガイドレール308,310により案内されて昇降可能に設けられ、これら昇降部材304,306の各々に把持爪292,294が着脱可能に固定されている。把持爪292は、図11に示すように、概してL字形を成し、L字の鉛直なアーム部312において昇降部材304に着脱可能に固定され、ヘッド本体290の基板幅方向において中央に位置させられている。把持爪292の他方のアーム部314は基板供給装置60側へ水平に延び出させられ、その突出端部に係合部材としての複数、本実施例においては2本のピン316が鉛直に、かつ上向きであって、基板幅方向に距離を隔てて立設されている。
把持爪294も概してL字形を成し、L字の鉛直なアーム部320において、昇降部材306に着脱可能に固定され、ヘッド本体290の基板幅方向の中央に位置させられている。把持爪294の基板供給装置60側へ水平に延び出させられた他方のアーム部322は、図11に示すように、把持爪292のアーム部314の上方に位置させられるとともに、ピン316に軸方向に相対移動可能に嵌合されている。把持爪292,294の各アーム部314,322のピン316が嵌合された部分であって、互いに対向する面にはそれぞれ、高摩擦係数部材としてのゴム324,326が貼り付けられて高摩擦係数層が設けられ、摩擦係数の高い把持面328,330が設けられている。
上記2つの昇降部材304,306のうち、一方の昇降部材306は昇降駆動装置としてのエアシリンダ332により昇降させられる。この昇降部材306の昇降は、ヘッド本体290に設けられた運動伝達装置たる反転装置334により上下反転させられて昇降部材304に伝達される。反転装置334は、ヘッド本体290に軸336によって基板搬送方向に平行な軸線まわりに回動可能に設けられたリンク338,昇降部材304,306にそれぞれ突設され、リンク338の軸336から互いに逆向きに延び出させられた両端部に相対回動可能に嵌合されて係合部を構成するピン340,342を含む。昇降部材306が下降させられるとき、昇降部材304が上昇させられ、1対の把持爪292,294の把持面328,330が互いに接近させられて基板20を把持し、昇降部材306が上昇させられるとき昇降部材304が下降させられ、把持面328,330が互いに離間させられて基板20を開放する。
前記押出部材296は、ヘッド本体290の基板収納装置62側の面に、基板幅方向に平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられ、押出部を構成している。押出部材296は板状を成すとともに、図11に示すように、概してL字形を成し、ヘッド本体290に回動可能に支持された軸350の長手方向の中央部に固定され、ヘッド本体290の基板幅方向に平行な方向の中央部に位置させられている。押出部材296は、軸350より前方(基板収納装置62側)へ突出させられた当接面352を有する。1対の把持爪292,294と押出部材296とは、基板搬送方向において互いに背中合わせに設けられているのである。なお、図11においては、基板供給カートリッジ66により供給される基板20と、これを把持する把持爪292,294との関係および押出部材296と、それにより押されて基板収納カートリッジ84に収納される基板20との関係を示すために、便宜上、把持爪292,294および押出部材296と共に基板供給カートリッジ66および基板収納カートリッジ84が図示されている。
軸350にはまた、図11に二点鎖線で示すように、その軸方向の一端部に係止部材356が上方へ延び出す向きに固定され、その延出端部とヘッド本体290との間に配設された付勢手段の一種である弾性部材としての引張コイルスプリング358により軸350が付勢され、押出部材296が当接面352が押出方向、すなわち基板収納装置62側へ突出する向きに付勢されている。
軸350の他端部には、軸350から上方から延び出す向きに被検出部材366が固定され、ヘッド本体290に設けられた過大抵抗センサ368により検出されるようにされている。過大抵抗センサ368は、例えば、非接触型の検出装置の一種である光電センサにより構成される。いずれも軸350に固定された押出部材296,係止部材356および被検出部材366は一体的に回動し、スプリング358の付勢による軸350の回動が規定された状態において押出部材296は押出位置に位置し、当接面352は鉛直となり、被検出部材266は過大抵抗センサ368により検出される検出位置に位置する。この状態において、互いに背中合わせに設けられた前記1対の把持爪292,294と押出部材296とは、把持爪292,294の先端と当接面352との距離が、本実施例では39mmとされている。このように押出部材296が押出位置に位置する状態から、軸350がスプリング358の付勢力に抗して回動させられれば、被検出部材366が過大抵抗センサ368から外れて非検出位置へ移動し、過大抵抗センサ368の検出信号が変わり、押出部材296が押出位置から外れたことが検出される。なお、スプリング358の付勢による押出部材296の移動限度は、ヘッド本体290に設けられたストッパないし押出位置規定部材としてのピン部材370(図10および図11参照)に、被検出部材366の軸350からの延出部が当接することにより規定される。
前記基板支持加熱装置50を図12ないし図14に基づいて説明する。
基板支持加熱装置50は、本実施例では、図5に示すように、作業エリアに設けられ、図12に示すように、支持部材兼用ヒータ400およびヒータ移動装置402を備えている。ヒータ移動装置402は、図5および図12に示すように、前記支持部材110にX方向に移動可能に設けられた移動部材406および移動部材406を移動させる移動部材移動装置408を含む。移動部材移動装置408は、図5に示すように、周回ベルト410およびベルト周回装置412を含み、移動部材406は周回ベルト410に着脱可能に固定されている。ベルト周回装置412はベルト周回モータ414および複数のプーリ416(図5には1つのみ図示されている)を含み、周回ベルト410がベルト周回装置412によって周回させられることにより、移動部材406がガイドレール418(図12参照)により案内されてX方向(図5および図12においては紙面に直角な方向)に移動させられ、移動部材406上に設けられた支持部材兼用ヒータ400が基板搬送方向に平行な方向の任意の位置に移動させられる。
上記支持部材兼用ヒータ400は、図12に示すように、ヒータ昇降装置424と共に移動部材406上に設けられ、移動部材406上において昇降させられる。ヒータ昇降装置424は、本実施例では、第一昇降装置426および第二昇降装置428を含む。第一昇降装置426は、ガイドレール430により案内されて移動部材406上に昇降可能に設けられた昇降部材434および昇降部材昇降装置436を含む。昇降部材昇降装置436は、移動部材406上に、ガイドレール438により案内されてY方向に移動可能に設けられた駆動部材442と、駆動部材442に設けられたカム444と、移動部材460上にY方向に設けられ、駆動部材442を移動させる移動装置としてのエアシリンダ446と、昇降部材434に設けられたカムフォロワとしてのローラ448とを含む。カム444は、本実施例では溝状を成し、鉛直面内において傾斜して設けられた傾斜部を備え、ローラ448が回転可能に嵌合されており、駆動部材442がエアシリンダ446によって移動させられることにより、カム444とローラ448とがY方向に相対移動させられて昇降部材434が昇降させられる。
第二昇降装置428は、昇降部材434上に設けられたダンパシリンダ450を含む。ダンパシリンダ450は、推力が小さいエアシリンダであり、このダンパシリンダ450のピストンロッド452に支持部材兼用ヒータ400が揺動装置456を介して保持されている。ダンパシリンダ450の用途は後に説明する。揺動装置456は、ピストンロッド452の上端部に、軸458によりX方向に平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられた第一揺動部材460と、第一揺動部材460に、軸462によりY方向(図12においては紙面に直角な方向)に平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられた第二揺動部材464とを含み、第二揺動部材464上に固定された断熱部材としてのセラミックス体466および伝熱低減部材468を介して支持部材兼用ヒータ400が取り付けられている。
支持部材兼用ヒータ400は、本実施例では、図12および図13に示すように、加熱体470,発熱部材472および基板支持部材474を含む。上記第一,第二揺動部材460,464,セラミックス体466,伝熱低減部材468,加熱体470および基板支持部材474はいずれもY方向に長い長手形状を成し、前記基板20の基板幅方向に並ぶ1列分のパッケージ基板34の幅(基板搬送方向に平行な方向の寸法)よりやや大きい幅を有する。加熱体470は伝熱低減部材468に固定されるとともに、その内部に発熱部材472がY方向に平行に埋設され、加熱体470を温める。基板支持部材474は加熱体470に着脱可能に固定される。基板支持部材474は基板支持面476を備え、加熱体470からの熱伝導により温められる。基板支持部材474内には空気吸入通路478(図14参照)が支持面476に開口して設けられるとともに、加熱体470内に設けられた通路480(図12参照)等を介してバキュームポンプ等の負圧源482に接続されている。空気吸入通路478は、前記基板20の実体がある部分(例えば、チップ22が搭載される部分)に対応する部分に開口して設けられており、基板支持部材474は、基板保持装置42により保持されて静止している基板20の一部であって、基板幅方向に並ぶ1列分のパッケージ基板34を負圧の供給により下方から吸着して支持するとともに、加熱する。本実施例では、基板加熱装置と基板支持装置とが一体的に設けられているのである。両装置を別々に設けてもよいが、一体的に設けることによりチップ搭載機をコンパクトに構成することができる。
なお、基板を加熱することなく、接着剤の塗布およびチップの搭載が行われる場合には、基板を加熱する場合より空気吸入通路478の数が多い基板支持部材が加熱体470に取り付けられて基板の支持に用いられ、例えば、基板支持部材は、空気吸入通路478が3列設けられたものとされる。基板を加熱するか否かに応じて、段取替えにより基板支持部材が交換される。基板支持部材474は、基板加熱用である。基板を加熱しない場合には、発熱部材472は発熱させられない。
前記伝熱低減部材468内には複数の空気通路484が形成され、セラミックス体466への熱の伝達が低減させられる。それにより、加熱体470の熱が昇降部材434側へ伝達されることが防止され、基板支持部材474が効率良く加熱される。また、前記第二揺動部材464には、複数の空気通路486が形成されるとともに、空気供給装置488により空気が供給されて第二揺動部材464が冷却され、それにより、第二揺動部材464等、加熱の要のない部材が不要に加熱されることが防止される。第二揺動部材464は空気供給装置488と共に冷却装置を構成している。
上記伝熱低減部材468には、基板支持部材474の上昇端位置であって、基板支持位置を規定する位置決め装置494が設けられている。位置決め装置494は、複数、本実施例においては4つの位置決め部材496を含む。これら位置決め部材496のうちの2つは固定の位置決め部材であり、他の2つは基板幅方向に移動可能に設けられた可動位置決め部材496である。2つずつの固定位置決め部材496と可動位置決め部材496とは基板幅方向に隔たった位置にそれぞれ設けられるとともに、支持部材兼用ヒータ400の基板搬送方向に平行な方向の両側にそれぞれ設けられており、前記基板保持装置42の基板押付部材122,172に下方から当接して支持部材兼用ヒータ400の上昇端位置を規定し、基板支持面474が基板20に下方から接触して支持し、加熱する位置に位置決めされる。2つの可動位置決め部材496は、伝熱低減部材468に固定の1対の案内部材500により案内されて基板幅方向に移動可能に設けられ、固定装置としてのボルト502により伝熱低減部材468に固定される。可動位置決め部材496は、基板20の幅に応じた位置へ移動させられ、可動クランプユニット104の基板押付部材172に当接する位置に位置させられる。
前記接着剤塗布装置44を説明する。
接着剤塗布装置44は、図4に概略的に示すように、基板搬送装置40に対して、基板搬送方向に直角な方向に隣接する位置であって、本実施例ではチップ搭載機の正面側ないし手前側に設けられている。接着剤塗布装置44は、図15および図16に示すように、接着剤を塗布する塗布ヘッド520と塗布ヘッド520を移動させる塗布ヘッド移動装置522とを含む。塗布ヘッド移動装置522は、塗布ヘッド520をX方向(図16においては紙面に直角な方向)に移動させるX方向移動装置524,Y方向(図16においては左右方向)に移動させるY方向移動装置526および昇降させる昇降装置528を含む。
X方向移動装置524は、移動部材としてのXスライド530およびXスライド移動装置532を含む。Xスライド移動装置532は、図15に示すように、駆動源としてのX移動モータ534,ねじ軸の一種であるボールねじ536およびナット538を備え、ボールねじ536がX移動モータ534によって回転させられることにより、Xスライド530が1対のガイドレール540により案内されてX方向の任意の位置に移動させられる。Y方向移動装置526も同様に、Yスライド548およびYスライド移動装置550を備えている。Yスライド移動装置550は駆動源たるY移動モータ552,ボールねじ554およびナット556を含み、Yスライド548はXスライド530上において、1対のガイドレール558により案内されつつY方向の任意の位置に移動させられる。
図16に示すように、Xスライド530は、基板保持装置42より、Y方向においてチップ搭載機の正面側に設けられ、Yスライド548はY方向に長く、Yスライド548の基板保持装置42側の端部に搭載された塗布ヘッド520は、Yスライド548の移動により、Xスライド530上に引込み、基板保持装置42上から退避した退避位置と、基板保持装置42上へ突出し、基板保持装置42に保持されたパッケージ基板34への接着剤の塗布を行う作業位置とに移動させられる。塗布ヘッド520はまた、Xスライド530の移動により、X方向においても任意の位置へ移動させられる。
塗布ヘッド520は、本実施例では、図16に示すように、ニードル570,接着剤収容器572,接着剤ポンプ574およびそれらを保持する塗布ヘッド本体576を含む。塗布ヘッド本体576は、Yスライド548の基板保持装置42側の端部に、1対のガイドレール578により案内されて昇降可能に設けられており、塗布ヘッド移動装置522によりX方向およびY方向に移動させられる。塗布ヘッド本体576はまた、Yスライド548上に設けられた塗布ヘッド昇降装置528により昇降させられる。塗布ヘッド昇降装置528は、本実施例においては、駆動源としてのモータ588,カム590およびカムフォロワとしてのローラ592を含む。カム590は確動カムであり、そのカム溝594に、塗布ヘッド本体576に回転可能に取り付けられたローラ592が嵌合されており、カム590がモータ588によって回転させられることにより塗布ヘッド本体576が昇降させられ、ニードル570が塗布位置と退避位置とに昇降させられる。塗布位置は、本実施例では、基板保持装置42により保持された基板20の上面の僅かに上方に位置する位置である。
接着剤収容器572と接着剤ポンプ574とは共に塗布ヘッド本体576に搭載されて、互いに近接して設けられ、塗布ヘッド本体576の移動により共に移動させられる。接着剤収容器572には接着剤の一種であり、熱硬化性接着剤の一種である銀ペーストが収容されている。接着剤収容器572と接着剤ポンプ574とは接続チューブ600により接続され、ニードル570は接着剤ポンプ574に下向きに取り付けられており、接着剤ポンプ574は接続チューブ600を経て接着剤収容器572から接着剤を吸い込んでニードル570から吐出させ、パッケージ基板34に塗布させる。接続チューブ600と、接着剤ポンプ574に設けられて接続チューブ600とニードル570とを接続する通路(図示省略)とが、接着剤収容器572とニードル570とを接続する接続通路を構成する。
前記チップ保持装置46を図17ないし図21に基づいて説明する。
チップ保持装置46は、図4に概略的に示すように、基板搬送装置40および基板保持装置42に対して、基板搬送方向と直角な方向であって、接着剤塗布装置44とは反対側、すなわち基板保持装置42より当該チップ搭載機の奥側の部分に、X方向とY方向とに移動不能に設けられている。チップ保持装置46は、チップ集合体保持部材630,チップ集合体収納部材632,保持部材としての張力付与部材634および保持部材保持装置としての張力付与部材保持装置636を有し、チップ22を前述のチップ集合体30の状態で保持する。
張力付与部材保持装置636は、図18に示すように、前記ベース56に着脱可能に固定された支持部材640および支持部材640に設けられた取付装置642を含む。支持部材640は横断面形状が概して矩形の板状を成し、厚さ方向(上下方向)に貫通して嵌合穴644が設けられるとともに、嵌合穴644の開口周縁部に取付装置642が設けられている。取付装置642は、本実施例では、複数、例えば、4つの支持面646,それら支持面646のうちの2つにそれぞれ設けられた係合突部648および別の2つにそれぞれ設けられた押さえ部材650を備えている。支持部材640には、その上面および嵌合穴644の内周面に開口して、嵌合穴644の周方向に沿って4つの切欠が等角度間隔に設けられ、それら切欠の底面がそれぞれ上向きの支持面646を構成している。2つの係合突部648はそれぞれ段付状を成し、4つの支持面646のうち、直径方向に隔たった2つの、嵌合穴644の周方向の一端部に突設され、係合部を構成している。2つの押さえ部材650はそれぞれ板状を成し、他の2つの支持面646の周方向の一端部上に位置する状態で支持部材640に固定されている。
張力付与部材634は、図18および図19に示すように、張力付与部ないし保持部としての円筒部654および複数、本実施例では4つの係合部656を備えている。図18および図19に示す張力付与部材634は、直径が異なる複数種類のウエハ24のうち、最大のウエハ24を保持するものであり、円筒部654の内径は、ウエハ24の直径より大きくされており、上記支持部材640の嵌合穴644の直径は、最大の円筒部654の外径よりやや大きくされている。この張力付与部材634において4つの係合部656は円筒部654に直接に、かつ等角度間隔に設けられ、それらのうち、直径方向に隔たった2つの係合部656は、円筒部654の中心線に直角な姿勢で外向きに延び出す板状部658を備え、別の2つの係合部656は、円筒部654の周方向に延び、上下方向に貫通するとともに、周方向の一端部に開口する切欠660を有する。
張力付与部材634は、円筒部654が嵌合穴644に嵌合されるとともに、4つの係合部656が前記4つの支持面646上に載置された状態から支持部材640に対して回転させられることにより、切欠660が係合突部648の小径部に嵌合され、板状部658が押さえ部材650と支持面646とにより上下方向から挟まれた状態となり、浮き上がり不能に、かつX,Y方向に位置決めされた状態で支持部材640により支持される。
最大のウエハ24より小さいウエハ24を支持する張力付与部材は、張力付与部材634と同様に円筒部および4つの係合部を有するものとされるが、図18に二点鎖線で示す張力付与部材670のように、円筒部672はウエハ24の直径に応じた外径を有するものとされ、円筒部654より小さく、円筒部672の中心線方向の一端部である下端部から半径方向外向きに延び出させられたフランジ状の被保持部674を有する。被保持部674は、直径が円筒部654の外径と等しく、円筒部672に対して偏心して設けられるとともに、被保持部674に4つの係合部656が設けられている。被保持部674の外径は、円筒部の外径が異なっても同じであり、円筒部の大きさが異なる複数種類の張力付与部材は、いずれも係合部656により同様にして支持部材640に選択的に取り付けられる。また、円筒部の大きさが異なる複数種類の張力付与部材の各円筒部、例えば、張力付与部材634,670の各円筒部654,672および更に別の張力付与部材の円筒部であって、外径が円筒部672より小さい円筒部676は、図21に概略的に示すように、張力付与部材保持装置636により保持された状態において、各円筒部の中心が基板搬送方向と直交する水平な一直線上に位置し、かつ、直径が小さい円筒部ほど、中心が基板保持装置42側に位置し、基板保持装置42側に寄せて設けられている。図21において矢印は基板搬送方向を示す。また、各円筒部654等は、張力付与部材634等が張力付与部材保持装置636により保持された状態において、その先端面ないし上端面の前記支持面646からの高さが同じになるように設けられている。
チップ集合体収納部材632は、図17および図19に示すように、複数、例えば、3つの部材が一体的に組み付けられて成る。第一部材690は板状を成し、図19に示すように、厚さ方向に貫通して、円筒部654より大きく、張力付与部材634を挿入し、支持部材640に着脱可能な開口692が設けられている。第二部材694および第三部材696も板状を成し、第一部材690上に、第一部材690との間に前記チップ集合体保持部材630を収納可能な隙間を隔てて着脱可能に固定されている。図17に示すように、これら第二,第三部材694,696にわたって、直径が前記円筒部654より大きい開口702が嵌合穴644と同心に設けられている。
第一部材690には、複数、本実施例においては4本のガイドロッド710が下向きに設けられ、前記支持部材640に設けられた4つのガイド穴712(図18参照)の各々に昇降可能に嵌合されており、チップ集合体収納部材632は、これら案内部材としてのガイドロッド710およびガイド穴712を含む案内装置714により案内されつつ、チップ集合体昇降装置716により、張力付与部材保持装置636に対して昇降させられ、張力付与部材634に対して昇降させられる。チップ集合体昇降装置716は、チップ集合体保持部材630に保持されたチップ集合体30と張力付与部材634とを相対移動させる相対移動装置の一種であって、互いに接近,離間させる接近・離間装置である。
チップ集合体昇降装置716は、本実施例では、図18および図19に示すように、駆動源としてのエアシリンダ720および駆動部材としての4つのレバー722を含む。レバー722は、図18に示すように、前記支持部材640のX方向およびY方向のそれぞれに隔たった4箇所に、X方向に平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられており、それぞれ、図19に示すように、第一部材690にX方向に平行な軸線まわりに回転可能に取り付けられたローラ724に相対回転可能に係合させられている。また、4つのレバー722のうち、Y方向に隔たった2つずつのレバー722はそれぞれ、リンク726により相対回動可能に連結され、X方向に隔たった2つずつのレバー722のうちの一方の2つは、ロッド728により連結されて一体的に回動させられる。このロッド728がエアシリンダ720のピストンロッド730の伸縮によってY方向に移動させられることにより、4つのレバー722が一斉に回動させられ、チップ集合体収納部材632が昇降させられる。
チップ集合体収納部材632の上昇端位置は、エアシリンダ720のストロークエンドにより規定され、下降端位置は、図19に示すように、支持部材640に設けられたストッパ装置734により規定される。ストッパ装置734は、本実施例では、図18および図19に示すように、少なくとも1つ、例えば、2つのストッパ部材として板カム736を含む。板カム736は、支持部材640に1対のブラケット740,742(図18参照)によってX方向に平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられた軸744にY方向に距離を隔てて設けられ、軸744と共に回動させられる。2つの板カム736はそれぞれ、軸744の軸線からの距離が漸変させられるカム面746を有する。
前記チップ集合体収納部材632の第一部材690には、図19に示すように、Y方向に隔たった2箇所であって、板カム736,738に対応する位置にそれぞれ、回転係合部材としてのローラ750(図19には1つのみ図示されている)がX方向に平行な軸線まわりに回転可能に取り付けられており、チップ集合体収納部材632が下降させられるとき、ローラ750がカム面746の最上端部に当接して下降が止められる。カム面746の最上端部の高さは、板カム736の回転により調節され、チップ集合体収納部材632の下降端位置が調節される。この調節は、本実施例では作業者により行われ、軸744に取り付けられた操作レバー754を操作して軸744を回転させる。軸744には、図18に示すように、下降端位置を表す板状の目盛り756が設けられ、支持部材640に設けられた針758が指し示す目盛りの値により下降端位置を確認しつつ調節する。
軸744を保持する前記1対のブラケット740,742の一方であるブラケット740には、図19に示すようにスリット760が設けられており、ブラケット740のスリット760が設けられた部分にボルト762が螺合されている。作業者がレバー764を操作してボルト762を締め付け、スリット760を収縮させることにより軸744が締め付けられて回転が阻止され、板カム736がチップ集合体収納部材632の所定の下降端位置が得られる位置に回転させられた状態に維持される。下降端位置調節時には、ボルト762の螺合が緩められ、ブラケット740による軸744の保持が緩められて、その回転が許容される。ストッパ装置734は、下降端位置規定装置でもあり、後述する張力調節装置でもある。下降端位置の調節の理由は後述する。
前記チップ集合体保持部材630は、図17に示すように、横断面形状が概してコの字形の枠状を成し、コの字の1対の腕部770およびそれら腕部770の各一端部を連結する連結部772にはそれぞれ、上向きの水平なチップ集合体支持面774が設けられ、前記チップ集合体30は、保持枠28においてチップ集合体支持面774上に載置される。また、チップ集合体保持部材630には、連結部772に設けられたチップ集合体支持面774に、X軸方向に距離を隔てて2本の位置決めピン776が上下方向に突設されて位置決め部を構成し、チップ集合体30の保持枠28に形成されて位置決め部を構成する2つの切欠778が係合させられる。これら切欠778は、一方が横断面形状がV字形を成し、この切欠778に位置決めピン776の一方が嵌入させられ、切欠778の他方はX軸方向に対して傾斜した傾斜面を備え、位置決めピン776の他方に係合し、チップ集合体30をX軸方向において移動不能に位置決めするとともに、Y軸方向において位置決めする。
上記1対の腕部770にはそれぞれ、その下部に案内部材としてのガイドレール782(図19参照)がY方向に平行に設けられ、チップ集合体収納部材632の第一部材690上に設けられた案内部材としてのガイドブロック784に摺動可能に嵌合され、チップ集合体保持部材630は、前方に開放された状態でチップ集合体収納部材632によりY方向に移動可能に支持されている。1対の腕部770の各前端部にはそれぞれ、図17に示すように、操作部としての取手786が設けられており、作業者が取手786を持って手動でチップ集合体保持部材630をチップ集合体収納部材632に対してY方向に移動させ、チップ集合体保持部材630により保持されたチップ集合体30をチップ集合体収納部材632に収納し、チップ集合体収納部材632から引き出すことができる。
チップ集合体保持部材630のチップ集合体収納部材632に対するY方向の収納位置は、前記第一部材690の後部に設けられた1対のストッパ790(図17および図19参照)に、チップ集合体保持部材630の連結部772が当接することにより規定される。また、連結部772の後面には、図17に示すように、係合部としての係合突部792が突設されており、この係合突部792が、第一部材690の後部に設けられた係合部としての係合凹部794に嵌合されることにより、チップ集合体保持部材630がX方向に位置決めされる。ストッパ790は、例えばボルトを含み、その螺合量の調節によりチップ集合体保持部材630の収納位置を調節することができる。
前記チップ集合体収納部材632の第一部材690と第二部材694とは、チップ集合体30を保持したチップ集合体保持部材630が収納された状態において連結装置800により互いに連結される。連結装置800は、図19および図20に示すように、第一部材690の前部のX方向の中央に取り付けられた連結部材としての爪部材802を有する。爪部材802は、第一部材690にブラケット804によって、X方向に平行に設けられた軸806に軸方向に摺動可能にかつ相対回動可能に嵌合されており、軸806からの突出端部に爪部808(図19参照)を有する。
爪部材802は、図20に示すように、上記ブラケット804と、ブラケット804に固定された板状の保持部材810との間に挟まれた状態では、図19に実線で示すように、軸806から上方へ、第二部材694側へ延び出させられて、爪部808が第二部材694の上面に係合させられ、第二部材694を第一部材690にX,Y方向に位置決めされた状態で(開口702の中心と嵌合穴644の中心とが一致する状態で)抜け出し不能に連結する。この位置が爪部材802の連結位置ないし作用位置であり、作業者が爪部材802に設けられたつまみ812(図19参照)を持って爪部材802を軸806に沿って移動させ、図20に二点鎖線で示すように、保持部材810から外れた状態において軸806のまわりに回動させ、図19に二点鎖線で示すように、第二部材694から外すとともに、チップ集合体保持部材630の移動経路より下方へ退避した退避位置へ移動させることができる。また、爪部材802を回動させ、鉛直に起こして爪部808を第二部材694に係合させた状態で軸806に沿って移動させることにより、図20に実線で示すように、ブラケット804と保持部材810との間に進入させ、連結位置に位置する状態に保つことができる。チップ集合体収納部材632の第二部材694は、位置決め装置により、第一部材690に対してX方向,Y方向および上下方向において位置決めされるとともに、連結装置800により第一部材690に連結され、離脱不能に取り付けられる。
爪部材802にはまた、図20に示すように、凹部816が設けられ、押付部材818が軸820により鉛直軸線まわりに回動可能に取り付けられるとともに、付勢手段の一種である弾性部材としてのばね部材たる圧縮コイルスプリング822により、爪部材802から後方へ(第二部材694側へ)突出する向きに付勢されている。スプリング822の付勢による押付部材818の回動限度は、押付部材818が凹部816の底面に当接することにより規定される。
押付部材818は、上記のように爪部材802が連結位置へ回動させられるとき、チップ集合体保持部材630が保持するチップ集合体30の保持枠28に係合し、スプリング822の付勢により、チップ集合体30,位置決めピン776および切欠778を介してチップ集合体保持部材630を前記ストッパ790に押し付ける。それにより、チップ集合体30およびチップ集合体保持部材630がチップ集合体収納部材632に対してX,Y方向において移動不能に収容され、直径が最大のウエハ24の場合、その中心がチップ集合体収納部材632の開口702の中心および張力付与部材634の円筒部654の中心と一致する状態に位置決めされる。なお、図20において符号824はセンサであり、例えば、非接触型の検出装置の一種である近接センサにより構成され、爪部材802が連結位置に位置することが検出される。位置決めピン776,ストッパ790,係合突部792および係合凹部794がチップ集合体保持部材630をチップ集合体収納部材632に対してX,Y方向に位置決めし、チップ集合体30をチップ保持装置46に対して位置決めする位置決め装置を構成している。連結装置800は、チップ集合体30およびチップ集合体保持部材630がチップ集合体収納部材632に収納された状態に保つ収納状態維持装置でもある。
なお、チップ集合体収納部材632の第二部材694もウエハ24の直径に応じて複数種類、設けられている。ウエハ24の直径が小さくなれば、開口702は第二部材694のみに形成される。開口702は、ウエハ24の直径に応じた直径であって、そのウエハ24を含むチップ集合体30用の張力付与部材の円筒部の外径より大きい直径を備え、複数種類の第二部材694にはそれぞれ、ウエハ24の直径に応じた直径の開口702が、そのウエハ24を含むチップ集合体30用の張力付与部材であって、張力付与部材保持装置636により保持された張力付与部材の円筒部と同心になるように設けられている。したがって、開口702も、その直径が小さいほど、中心が、基板搬送方向と直交する水平な一直線上に位置するとともに、開口702の直径が小さいほど、その一直線上において基板保持装置42側に位置し、基板保持装置42側に寄せて設けられることとなる。
また、ウエハ24の直径が最大より小さいチップ集合体30をチップ集合体保持部材630に保持させる場合、図示は省略するが、補助保持部材を使用する。補助保持部材は、ウエハ24の直径が最大のチップ集合体30と同様に、1対ずつの位置決めピン776および切欠によりX,Y方向に位置決めされてチップ集合体保持部材630に着脱可能に保持される。補助保持部材には、位置決めピン等、チップ集合体30を位置決めする位置決め部が設けられ、チップ集合体30に設けられた位置決め穴等の位置決め部との係合によりチップ集合体30をX,Y方向に移動不能に位置決めして保持する。また、連結装置800が第二部材694を第一部材690に連結する場合、押付部材818はスプリング822の付勢により補助保持部材を押すこともあり、チップ集合体30を押すこともある。いずれにしても、チップ集合体30は、補助保持部材を介してチップ集合体保持部材630により保持されるとともに、X,Y方向において位置決めされた状態でチップ集合体収納部材632に収納される。補助保持部材は、チップ集合体30を、チップ集合体収納部材632に収納された状態において、ウエハ24が、チップ集合体30に張力を付与する張力付与部材の円筒部内に位置し、第二部材694の開口702内に位置するように保持するものとされ、チップ集合体30は、ウエハ24の直径が小さいほど、その中心が基板保持装置42側に寄った状態でチップ集合体保持部材630に保持され、チップ集合体収納部材632に収納される。
チップ保持装置46の下方には、図19に二点鎖線で示すように、前記チップ突上装置52が設けられている。チップ突上装置52は、図19および図22に示すように、突上ピン832,ピン駆動装置834およびピン移動装置836を備えている。ピン移動装置836は突上ピン832およびピン駆動装置834をX方向およびY方向の任意の位置に移動させる。そのため、ピン移動装置836は、図19に示すように、Y方向(図19においては左右方向)に移動可能に設けられたYスライド840,Yスライド移動装置842,Xスライド844およびXスライド移動装置846を備えている。Yスライド移動装置842は、駆動源たるY移動モータ850,ボールねじおよびナット(図示省略)を備え、Yスライド840をY方向の任意の位置に移動させる。Xスライド移動装置846は、駆動源としてのX移動モータ854,ボールねじ856およびナット858を備え、Xスライド844をYスライド840上においてX方向の任意の位置に移動させる。
ピン駆動装置834は、図22(a)に示すように、Xスライド844上に昇降可能に設けられた昇降部材864および昇降部材昇降装置866を含む。昇降部材昇降装置866は、ナット868,ボールねじ870およびピン昇降モータ872を含み、昇降部材864を、ガイドレール874により案内させつつ、上下方向において任意の位置へ移動させる。昇降部材864には、スプライン軸878が鉛直に固定して設けられ、その先である上部にアダプタ880が着脱可能に固定されるとともに、ピンホルダ882が相対回転不能に取り付けられ、突上ピン832を保持している。スプライン軸878にはまた、その内部に通路886が形成され、一端部において負圧源482に接続され、他端部は、アダプタ880内に形成された通路890により外部に連通させられている。
突上ピン832には、吸着部材としての吸着筒900が上下方向に相対移動可能に被せられている。前記スプライン軸878には、そのスプラインと噛み合うスプラインを有するナット902が軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に嵌合されるとともに、その外側に筒状の吸着部材保持部材904が嵌合され、固定されている。吸着部材保持部材904は、アダプタ880にも気密を保持されて嵌合されている。吸着筒900は有底円筒状を成し、その底部906を上にした状態でアダプタ880およびピンホルダ882に半径方向の隙間を残して嵌合されるとともに、吸着部材保持部材904に気密にかつ相対回転不能に嵌合されている。したがって、アダプタ880の外周面に開口させられた前記通路890から供給される負圧は、アダプタ880と吸着筒900との間の隙間に供給されるとともに、底部906に形成された負圧供給孔908に供給される。負圧供給孔908は、空気吸入孔でもある。また、吸着筒900は、吸着部材保持部材904およびナット902を介して、スプライン軸878により突上ピン832に対する相対回転を阻止される。
突上ピン832と吸着筒900とは、ナット902と昇降部材864との間に配設された付勢手段の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング910により、吸着筒900が突上ピン832に対して上方へ離間する向きに付勢されている。このスプリング910の付勢による吸着筒900の移動限度は、吸着部材保持部材904の上面である係合面912が、アダプタ880に設けられた下向きの係合面914に係合することにより規定される。また、前記昇降部材864が上昇させられるとき、Xスライド844に設けられたストッパ部916が吸着部材保持部材904の当接部918に当接して吸着筒900の上昇を阻止する。
吸着筒900の底部906の中央には、図23に示すように、開口920が設けられ、前記突上ピン832が通るようにされている。また、前記負圧供給孔908は、開口920のまわりに複数設けられている。これら負圧供給孔908は、図22および図23に示すように、底部906を吸着筒900の中心線に平行な方向に貫通するとともに、吸着筒900の中心線を中心として同心状に形成された複数、本実施例では4つの環状溝924に開口させられている。これら環状溝924は、吸着筒900の外面に開口する有底の溝であり、吸着筒900の外周側ほど広い間隔で形成されており、それにより吸着筒900の底部906には、幅(吸着筒900の半径方向の寸法)が、吸着筒900の外周側ほど大きい複数種類、本実施例では3種類の吸着面926,928,930が形成されている。これら吸着面926,928,930はまた、周方向において等角度間隔に複数に分割されている。さらに、吸着筒900の底部906の上記開口920が設けられた部分および環状の外周部もそれぞれ、吸着面932,934を構成する。これら吸着面926〜934は、本実施例では、吸着筒900の中心線に直角な一平面内に位置し、負圧供給孔908の外側(上側)開口より上方へ突出している。
図4に示すように、基板保持装置42とチップ保持装置46との間の部分には、撮像システム950が設けられている。撮像システム950は撮像装置952および照明装置954を備え、位置を固定し、上向きに設けられている。撮像装置952は、例えば、CCDカメラにより構成され、本実施例では、面撮像装置であって、多数の撮像素子が一平面上に並ぶ撮像面を有する。以後、撮像装置952を固定撮像装置952と称する。撮像装置は、撮像素子が一直線上に並び、撮像素子と撮像対象物との相対移動により、撮像対象物の二次元像が得られるライン撮像装置でもよい。
チップ搭載装置48を説明する。
チップ搭載装置48は、図4に示すように、搭載ヘッド960および搭載ヘッド移動装置962を備え、基板搬送方向と直角な水平方向において、基板保持装置42に対して前記接着剤塗布装置44とは反対側に設けられ、搭載ヘッド960は、チップ保持装置46と基板保持装置42との上方の位置まで移動可能に設けられている。接着剤塗布装置44とチップ搭載装置48とが、基板搬送方向に直角な方向に並べて配設され、本チップ搭載機の手前側から順に、接着剤塗布装置44,基板保持装置42,チップ保持装置46,チップ搭載装置48と配列されているのである。
搭載ヘッド移動装置962は、本実施例においては、図24および図25に示すように、搭載ヘッド960をX方向に移動させるX方向移動装置964,Y方向に移動させるY方向移動装置966およびX方向,Y方向と直交する鉛直なZ方向に昇降させる搭載ヘッド昇降装置968を含む。Y方向移動装置966は、Yスライド970およびYスライド移動装置972を含む。Yスライド移動装置972は、図24に示すように、駆動源としてのY移動モータ974,ボールねじ976およびナット978を含み、ボールねじ976がY移動モータ974によって回転させられることにより、Yスライド970が1対のガイドレール980により案内されてY方向の任意の位置へ移動させられる。
X方向移動装置964は、Xスライド986およびXスライド移動装置988を含む。Xスライド移動装置988は、図24および図25に示すように、駆動源としてのX移動モータ990,ボールねじ992およびナット994を含み、ボールねじ992がX移動モータ990によって回転させられることにより、Xスライド986が1対のガイドレール996により案内されて、Yスライド970上においてX方向の任意の位置へ移動させられる。搭載ヘッド960はXスライド986上に設けられ、搭載ヘッド移動装置962により、チップ保持装置46および基板保持装置42を含む領域を移動させられ、チップ保持装置46からチップ22を取り出し、基板保持装置42に保持されて接着剤が塗布されたパッケージ基板34に搭載する。パッケージ基板34への接着剤の塗布とチップ搭載とが同じエリアにおいて行われるのであり、作業エリアは、接着剤塗布エリアであり、チップ搭載エリアである。
搭載ヘッド960は、図26に示すように、チップ22を負圧により吸着して保持し、チップ保持部を構成する1つの吸着ノズル1010を備え、位置検出器内蔵荷重制御装置としてのエアアクチュエータ1012と共にXスライド986に搭載されている。エアアクチュエータ1012は、位置検出器としてのリニアエンコーダ1014(図27参照)を備えたエアシリンダ1016を有し、吸着ノズル1010の軸方向における位置とチップ22に対する接触荷重との両方を制御する。
エアシリンダ1016のピストン(図示省略)は、シリンダハウジング1018によりエア軸受を介して軸方向に摺動可能かつ相対回転可能に支持されている。また、ピストンから下方へ延び出させられたピストンロッド1020は、シリンダハウジング1018に機械的な軸受を介して回転可能かつ軸方向に相対移動不能に設けられたスリーブ1022により、エア軸受を介して軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に保持されており、これらピストンおよびピストンロッド1020は摩擦抵抗少なく軸方向に移動させられる。スリーブ1022の外周面の横断面形状は円形を成し、スリーブ1022の内周面の横断面形状およびピストンロッド1020の横断面形状は非円形、例えば、四角形、本実施例では正方形とされており、ピストンロッド1020はスリーブ1022に対して相対回転不能である。また、ピストンおよびピストンロッド1020の自重はエア圧により打ち消されており、それらの重量が吸着ノズル1010に加えられず、接触荷重が精度良く、かつ微小な大きさ(ピストンおよびピストンロッド1020の自重より小さい大きさ)に制御可能とされている。
エアアクチュエータ1012は、リニアエンコーダ1014の検出信号に基づいてエア室へのエアの供給を制御し、吸着ノズル1010の軸方向の位置を制御するとともに、圧力センサ1015(図27参照)により検出されるエア室のエア圧に基づいて供給エア圧力を制御し、吸着ノズル1010のチップ22への接触荷重を制御する。搭載ヘッド昇降装置968は、エアアクチュエータ1012の吸着ノズル1010を軸方向に移動させ、昇降させる部分を含む。
スリーブ1022は、回転装置1024により、その鉛直な軸線まわりに回転させられる。回転装置1024はエアアクチュエータ1012と共にXスライド986に搭載されており、回転用モータ1026および回転伝達装置1028を含む。回転伝達装置1028は、回転用モータ1026により回転させられる駆動歯車1030と、スリーブ1022に相対回転不能かつ軸方向に相対移動不能に取り付けられるとともに、駆動歯車1030に噛み合わされた従動歯車1032とを含み、スリーブ1022が回転させられることにより、ピストンおよびピストンロッド1020がそれらの軸線まわりに回転させられる。
ピストンロッド1020の下端部にノズルホルダ1040が設けられ、吸着ノズル1010が着脱可能に保持されており、ピストンロッド1020の伸縮により吸着ノズル1010が昇降させられる。ノズルホルダ1040は、本実施例では、複数、例えば2つの保持部材1042,1044が互いに組み付けられて成る。保持部材1042はピストンロッド1020に着脱可能に固定されるとともに、スリット1046がピストンロッド1020の軸線に直角に設けられている。このスリット1046の大きさ(ピストンロッド1020の軸線に平行な方向の寸法)は、保持部材1042に螺合された複数のねじ1048の螺合量の調節により調節される。
保持部材1044にもスリット1052が形成されている。このスリット1052は、スリット1046とは、90度位相を異にして設けられており、保持部材1044を保持部材1042に固定するねじ1054の螺合量の調節により、スリット1052の大きさが調節される。吸着ノズル1010は、ノズル本体1056および吸着管1058を備え、ノズル本体1056において保持部材1044により着脱可能に保持される。したがって、2つの保持部材1042,1044の各スリット1046,1052の大きさの調節により、吸着管1058の先端面である吸着面1060が水平となるようにされる。スリット付き保持部材1042,1044が吸着面1060の水平調節装置を構成している。ノズルホルダ1040は、水平調節機構付きノズルホルダなのである。このようにノズルホルダ1040に保持された吸着ノズル1010には、前記負圧源482から負圧が供給
されてチップ22を吸着するとともに、コンプレッサ等の正圧源1064から正圧が供給されてチップ22を積極的に開放する。吸着ノズル1010への負圧と正圧との供給の切換えは、切換バルブ1066により為される。
Xスライド986にはまた、図25に示すように、撮像システム1080が搭載されており、搭載ヘッド移動装置962により水平面内の任意の位置へ移動させられる。搭載ヘッド移動装置962が撮像システム移動装置を兼ねているのである。撮像システム1080は、撮像装置1082および照明装置1084を含む。撮像装置1082は、例えば、面撮像装置であるCCDカメラにより構成され、下向きに設けられている。以後、撮像装置1082を可動撮像装置1082と称する。
前記制御装置54は、図27に示すように、CPU1110,ROM1112,RAM1114およびそれらを接続するバスを有するコンピュータ1110を主体とするものである。バスには入出力インタフェース1112が接続されており、固定撮像装置952および可動撮像装置1082の各撮像により得られた画像データを処理する画像処理コンピュータ1118,固定撮像装置952,可動撮像装置1082,リニアエンコーダ1014等の各種センサおよび入力装置1120等が接続されている。
入力装置1120は、キーボードおよびポインティングデバイスの一種であるマウス等を含み、作業者は入力装置1120を用いて指令やデータ等をコンピュータ1110に入力し、チップ搭載時におけるチップ22の撮像モードを指示する。本チップ搭載機においては2種類のチップ撮像モードが選択的に実行可能にプログラムが設けられている。チップ撮像モードの1つは、可動撮像装置1082および第1補正部と、固定撮像装置952および第2補正部との両方を作動させる第1状態としての搭載位置精度重視モードであり、別の1つは、可動撮像装置1082および第1補正部のみを作動させる第2状態としてのタクト重視モードである。
第1補正部は、可動撮像装置1082の撮像結果に基づいてチップ保持装置46からチップ22を受け取る際の搭載ヘッド960の位置を補正する補正部であり、コンピュータ1110の画像処理コンピュータ1118から画像処理データを受け取ってチップ22の位置誤差を求め、その位置誤差が打ち消されるように搭載ヘッド960の移動位置を補正する部分により構成される。第2補正部は、固定撮像装置952の撮像結果に基づいて基板保持装置42に保持されている基板20にチップ22を搭載する際の搭載ヘッド960の位置を補正する補正部であり、コンピュータ1110の画像処理コンピュータ1118から画像処理データを受け取ってチップ22の保持姿勢誤差を求め、その誤差が打ち消されるように搭載ヘッド960の移動位置を補正する部分により構成される。作業者は、チップ搭載機における一連の基板20へのチップ搭載作業の開始に先立って、入力装置1120を用いて、2つのチップ撮像モードのうちのいずれを実行するかを入力し、指示し、コンピュータ1110は、指示されたチップ撮像モードに対応するプログラムを実行する。
入出力インタフェース1112にはまた、駆動回路1130を介して前記基板供給カートリッジ昇降装置68等、本チップ搭載機を構成する種々の装置の駆動源を構成する各種アクチュエータ等を駆動する。これら装置68等において駆動源を構成するモータはアクチュエータの一種であり、本実施例においては、電動モータの一種である電動回転モータであって、回転角度の精度の良い制御が可能なサーボモータにより構成されているものが多く、作動量検出装置としてのエンコーダの検出信号に基づいて、サーボモータにより駆動される部材の作動が制御される。サーボモータに代えてステップモータを用いてもよい。ROM1102およびRAM1104には、本チップ搭載機の基本動作プログラム,作業対象となる基板20に応じたチップ搭載作業のプログラム等、種々のプログラムおよびデータ等が記憶させられている。
次に、作動を説明する。
3つのチップ搭載機10,12,14の各々においては、並行してパッケージ基板34へのチップ22への搭載が行われる。これらチップ搭載機10,12,14においてはそれぞれ、例えば、異なる種類の基板20のパッケージ基板34に異なる種類のチップ22が搭載される。種類を異にする基板20は、例えば、大きさ,パッケージ基板34の配線パターン32,数等の少なくとも1つを異にする基板20であり、あるいはリード付電子回路部品製造用基板20であるか、ボールグリッドアレイ製造用基板であるかによっても種類を異にする。基板の種類がいずれであってもパッケージ基板34へのチップ22の搭載手順は同じであるため、チップ搭載機10における基板20のパッケージ基板34へのチップ22への搭載を代表的に説明する。また、チップ搭載機10においてパッケージ基板34へのチップ22への搭載が開始され、定常的に行われている状態を説明する。さらに、まず、撮像モードとして搭載位置精度重視モードが選択されていることとする。また、基板20が基板支持加熱装置50により加熱される態様を説明する。
作業エリアにおいて基板20の全部のパッケージ基板34へのチップ22の搭載が終了したならば、その基板20は基板保持装置42から搬出されて基板収納カートリッジ84に収納され、次にチップ22が搭載される基板20が基板供給カートリッジ66から取り出され、基板保持装置42に搬入される。この基板20の収納および取出しは、基板搬送装置40により同時に並行して行われる。作業エリアにおいて基板20へのチップ22の搭載が行われる間、基板搬送装置40において基板搬入・搬出ヘッド244は退避位置ないし待機位置に退避ないし待機させられている。待機位置は、基板搬送方向においては、基板収納カートリッジ84の主案内路247側ないし作業エリア側とは反対側の端部側に位置し、基板保持装置42に保持された基板20に対して接着剤の塗布を行う塗布ヘッド520およびチップ22の搭載を行う搭載ヘッド960と干渉せず、上下方向においては上昇端位置へ上昇させられ、基板保持装置42より上側であって、基板供給カートリッジ66側への移動時に基板保持装置42と干渉しない位置である。
チップ搭載終了後、基板搬入・搬出ヘッド244は、基板搬入・搬出ヘッド移動装置246により基板搬送方向に移動させられ、基板供給カートリッジ66へ移動させられる。基板供給カートリッジ66および基板収納カートリッジ84は、パッケージ基板34へのチップ22の搭載時には、全体が基板搬送面より下方に位置する退避位置へ移動させられており、全部のパッケージ基板34へのチップ22の搭載終了後、それぞれ基板供給位置および基板収納位置へ上昇させられる。基板供給カートリッジ66は、供給される基板20を支持する1対の支持面76が基板搬送面と同一平面内に位置する位置へ上昇させられるのであるが、基板供給カートリッジ66において基板20の供給は、下側の棚74から順に行われ、基板供給時の基板供給カートリッジ66の高さは、供給数が増えるほど低くなる。また、基板収納カートリッジ84は、収納される基板20を支持する1対の支持面94が基板搬送面と同一平面内に位置する位置へ上昇させられるのであるが、基板収納カートリッジ84においては、収納が上側の棚92から順に行われ、基板収納時の基板収納カートリッジ84の高さは、収納数が増えるほど高くなる。それにより、基板20を基板供給カートリッジ66から取り出す際にも、基板収納カートリッジ84に収納する際にも、基板供給カートリッジ66および基板収納カートリッジ84のそれぞれにおいて、出し入れされる基板20より下方に収納されている基板20がなく、カートリッジ66,84に現に収容されている基板20に基板屑等がかかることが回避される。
基板搬入・搬出ヘッド244は、基板供給カートリッジ66と、基板保持装置42に保持されている基板20との間の位置へ移動させられた後、下降端位置へ下降させられる。そして、小距離、基板供給カートリッジ66側へ移動させられ、把持爪292,294が基板20の第一端部であって、基板搬送方向において下流側の端部を把持する。この際、把持爪292,294は互いに離間させられて開かれており、基板搬入・搬出ヘッド244は、図11に示すように、1対のピン316が基板20の端面に当接するまで移動させられる。基板搬入・搬出ヘッド244の移動位置は、1対のピン316が基板20の端面に当接することが予定された位置より小距離、基板20側まで移動する位置に設定されており、ピン316が確実に基板20に当接させられる。基板搬入・搬出ヘッド244の余分な移動距離は、基板20が基板供給カートリッジ66の奥側へ後退することにより許容される。そして、把持爪292,294が閉じられて基板20を把持する。把持爪292,294は、その把持面328,330の摩擦係数が高くされており、基板20を確実に把持することができる。また、基板搬入・搬出ヘッド244の水平部材252に対する基板幅方向の位置は、基板20の幅に応じて予め調節されており、把持爪292,294は基板20の幅方向の中央部を把持し、基板20を安定して把持する。
把持爪292,294が基板20を把持した後、基板搬入・搬出ヘッド244は作業エリア側へ移動させられ、基板20が基板供給カートリッジ66から引き出される。基板供給カートリッジ66と基板保持装置42とは基板搬送方向において近接して設けられており、基板20は基板供給カートリッジ66の1対のレール72の各支持面76によって下方から支持されている状態で、基板保持装置42の1対の支持面166,196上に乗り移り、移動を案内される。チップ22の搭載終了後、基板保持装置42においては基板押付部材122,172が下降端位置へ下降させられて基板20のクランプが解除されるとともに、1対の支持面166,196は基板搬送面内に位置させられ、基板供給位置に位置決めされた基板20を支持する1対の支持面76と同一水平面内に位置し、基板20は支持面76から支持面166,196に乗り移る。また、基板押付部材122,172が基板開放位置へ下降させられるのと同時に2つの可動規定部材202が同時に後退位置へ後退させられる。そのため、主案内路247の幅は、いずれの部分もL3(図7参照)であり、基板供給カートリッジ66の1対の規定面78間の距離L1より広くされるとともに、主案内路247の1対の規定面146,178はそれぞれ、1対の規定面78の外側に位置し、主案内路247の間口は基板供給カートリッジ66より広いため、基板20は基板供給カートリッジ66から基板保持装置42へ、可動保持部材128や基板押さえ部材170の端面に当接することなく、スムーズに搬入される。
このように把持爪292,294が基板20を把持して移動させられるとき、押出部材296の当接面352がチップ22の搭載の済んだ基板20の基板搬送方向において上流側の端部である第2端部に当接し、押して基板収納カートリッジ84へ移動させる。当接面352は鉛直な姿勢で基板20に当接して押す。後述するように、基板20は基板保持装置42への搬入後、2つの可動規定部材202が前進位置へ同時に前進させられることにより規定面146側へ寄せられ、規定面146と、規定面146から距離L4離れた位置との間に位置させられている。距離L4は、基板収納カートリッジ84の1対の規定面96間の距離L2より狭く、基板収納カートリッジ84は、その1対の規定面96がそれぞれ、基板保持装置42の規定面146と、前進位置に位置する可動規定部材202の規定面206との外側に位置するため、基板20は、カートリッジ本体88の、基板搬送方向において上流側の端面に当接することなく、作業エリアから押し出されてスムーズに基板収納カートリッジ84に進入する。基板20が基板収納カートリッジ84に収納されるとき、可動規定部材202は後退位置へ後退させられているが、規定面146側に寄せられた基板20は、長手方向が基板搬送方向に平行な姿勢な状態を保つとともに、規定面146から距離L4内の位置に位置する状態を保って押出部材296により押されて基板保持装置42から押し出され、図11に示すように、基板収納カートリッジ84にスムーズに収納される。本実施例では、可動規定部材202は、前進位置において、上記のように基板20の幅方向の位置を基板収納カートリッジ84にスムーズに収納可能な位置に規定する。
なお、押出部材296は、その当接面352が鉛直な姿勢で基板20に当接して押し出すが、何らかの事情により、基板20の移動抵抗が過大となった場合、例えば、規定面146,178あるいは支持面166,196と基板20との間に異物が挟まれるとか、基板20の基板搬送方向において下流側の端部がカートリッジ本体88の端面に当接するとかの異常な事態が生じた場合には、押出部材296に基板搬送方向とは逆向きの力が加えられ、それにより、軸350がスプリング356の付勢力に抗して回動させられ、被検出部材366が過大抵抗センサ368から外れて過大抵抗センサ368の検出信号が変化し、基板20の移動抵抗が過大になったことが検出される。それに基づいて、例えば、基板20の搬送を停止したり、表示装置,警報装置等の報知装置により作業者に異常の発生が報知される等、適宜の処理が行われる。スプリング356のセット荷重の設定により、適宜に障害を検出することができる。
基板搬入・搬出ヘッド244は、基板供給カートリッジ66から取り出した基板20を予め設定された位置まで搬送し、停止する。基板搬入・搬出ヘッド244は、把持爪292,294が開かれて基板20を開放するとともに、基板収納カートリッジ84側へ更に移動させられて、搬入された基板20から離間させられる。次いで、2つの可動規定部材202が同時に前進位置へ移動させられ、基板20を規定面146側へ寄せて、その幅方向の位置を、規定面146から距離L4離れた範囲内に規定する状態とされる。この状態で基板押付部材122,172が押付部材昇降装置106により上昇させられ、基板20の基板搬送方向に平行な両側縁部を基板押さえ部材120,170の基準面144,176に下方から押し付け、基板押さえ部材120,170と共同して水平な姿勢でクランプする。この際、基板押付部材122,172を保持する連結部材150および保持部材156,182は、押付部材昇降装置106のエアシリンダ220のピストンロッド224の移動端に対応する位置まで上昇させられるが、この位置は、基板押付部材122,172が基板押さえ部材120,170との間に基板20をちょうど挟んだ状態での位置より高く、連結部材150および保持部材156,182の余分な上昇距離はスプリング160,190の圧縮により吸収される。そのため、基板20の厚さが異なる場合、その厚さの差はスプリング160,190の圧縮により吸収され、基板押付部材122,172はいずれの基板20も損傷することなく、基板押さえ部材120,170に確実に押し付けることができる。基板20の上下方向の位置決めは、その上面を基準にして行われるのであり、基板20を、位置固定に設けられた基準面144,176に押し当てて位置決めすることにより、位置決めの再現性が高く、いずれの基板20も、その上面が同じ高さに位置する位置に位置決めすることができる。
基板搬入・搬出ヘッド244は、搬入した基板20を開放した後、さらに基板収納カートリッジ84側へ移動させられ、押出部材296がチップ22の搭載の済んだ基板20を基板収納カートリッジ84内に押し込む。基板搬入・搬出ヘッド244は、所定の押込位置まで移動させられたならば、小距離、作業エリア側へ移動させられて押出部材296の当接面352が基板20から離間させられるとともに、待機位置へ移動させられ、次の搬送に備えて待機させられる。また、基板供給カートリッジ66および基板収納カートリッジ84は、退避位置へ下降させられ、その後、基板20への接着剤の塗布およびチップ22の搭載が行われる。
上記のように基板保持装置42により保持され、一個所に、すなわち作業エリアに静止している基板20に対して、パッケージ基板34への接着剤の塗布およびチップ22の搭載が行われるのであるが、それに先立って基板20に前記不良表示マーク37が付けられているか否かが検出される。この検出は、可動撮像装置1082によって全部の不良表示マーク付設個所38を撮像し、不良表示マーク37が付けられているか否かを判定することにより行われる。本実施例では、基板20の搬入時に可動撮像装置1082が不良表示マーク付設個所38の上方に位置させられ、移動する不良表示マーク付設個所38を撮像する。
本チップ搭載機において基板20は、その不良表示マーク付設個所38が設けられた側の縁部が基板押さえ部材120および基板押付部材122によってクランプされるように基板収納カートリッジ60に収納され、供給される。そのため、基板20の不良表示マーク付設個所38が設けられた縁部は基板押さえ部材120により上方から押さえられるが、基板押さえ部材120は無色透明であり、可動撮像装置1082は基板押さえ部材120を通して不良表示マーク付設個所38および不良表示マーク37を撮像することができる。
前述のように複数の不良表示マーク付設個所38は、基板20の長手方向に沿って1列に設けられており、可動撮像装置1082は、基板搬送方向と直角な水平方向(Y方向)において不良表示マーク付設個所38に対応する位置に静止して位置させられて、搬入時に移動する不良表示マーク付設個所38を複数ずつ、順次撮像する。そのため、基板20の搬入速度は、可動撮像装置1082が移動する不良表示マーク付設個所38を撮像することができる速度とされる。あるいは基板20が間欠的に移動させられ、停止時に可動撮像装置1082が不良表示マーク付設個所38を撮像するようにしてもよく、搬入後、停止させられ、基板20がクランプされる前、あるいはクランプされた後に、可動撮像装置1082を移動させて不良表示マーク付設個所38撮像するようにしてもよい。
そして、画像データが画像処理コンピュータ1118により処理され、不良表示マーク37の像が得られれば、不良表示マーク37が付けられていることがわかり、その位置からいずれのパッケージ基板34が不良であるかがわかる。不良なパッケージ基板34を特定する不良パッケージ基板データは、RAM1104に記憶され、チップ22が搭載されないようにされる。
不良パッケージ基板34の検出後、正常なパッケージ基板34へのチップ22の搭載が行われる。本チップ搭載機においては、1つのパッケージ基板34への接着剤の塗布が行われる毎に、そのパッケージ基板34へのチップ22の搭載が行われる。接着剤の塗布とチップ22の搭載とが1つずつ交互に行われるのである。
また、基板20は、その一部が支持部材兼用ヒータ400により下方から支持されるとともに加熱された状態で接着剤塗布およびチップ搭載が行われる。基板支持部材474の温度は、基板20を支持するとき、既に基板20の加熱に適した設定温度に上昇させられており、基板20の複数のパッケージ基板34へのチップ22の搭載の間、設定温度に保たれる。基板20が基板保持装置42によって保持された後、支持部材兼用ヒータ400が上昇させられ、基板支持面476が基板20の一部に下方から接触させられる。本実施例において、上記「基板20の一部」は、基板20の幅方向に並ぶ一列分のパッケージ基板34に対応する部分である。本チップ搭載機においては、例えば、長手形状を成す基板20の基板搬送方向において一方の端部、例えば、下流側の端部から順にパッケージ基板34に、基板幅方向に並ぶ1列分ずつチップ22が搭載される。そのため、支持部材兼用ヒータ400はヒータ移動装置402によって基板搬送方向に平行な方向に移動させられ、基板保持装置42に保持されて静止している基板20に平行な方向に移動させられて、チップ22が搭載されるパッケージ基板34の列に対応する位置へ移動させられる。
移動後、支持部材兼用ヒータ400がヒータ昇降装置424により上昇させられる。この際、支持部材兼用ヒータ400はまず、第一昇降装置426により上昇させられ、第一昇降装置426による上昇端位置へ上昇させられた後、第二昇降装置428により上昇させられる。第二昇降装置428はダンパシリンダ450により支持部材兼用ヒータ400を上昇させる。そのため、支持部材兼用ヒータ400の上昇は、図12に示すように、位置決め部材496が基板押付部材122,172に当接することにより止められるのであるが、基板20の厚さに応じた位置において停止し、厚さが異なる複数種類の基板20に、それに応じた基板支持位置において下方から接触して支持する。
支持部材兼用ヒータ400はヒータ昇降装置424により揺動装置456を介して支持されており、ヒータ昇降装置424やヒータ移動装置402等の組付誤差等により、位置決め部材496や基板支持面476に傾きがあっても、第一,第二揺動部材460,464の少なくとも一方の揺動により、4つの位置決め部材496が基板押付部材122,172に当接するとともに、基板支持面476が、クランプされた基板20の一部(パッケージ基板1列分)の下面に沿って当接させられる。支持部材兼用ヒータ400,位置決め部材496,伝熱低減部材468およびセラミックス体466を含む支持・加熱ヘッドが揺動装置456により揺動可能に支持されて、基板20への密着性が確保されているのである。基板押さえ部材120,170,基板押付部材122,172,4つの位置決め部材496,基板支持部材474,加熱体470,伝熱低減部材468およびセラミックス体466は、寸法精度良く作られており、揺動装置456の揺動により基板支持面476が基板20の下面に精度良く沿う状態が得られる。また、基板20は、空気吸入通路478に供給される負圧により基板支持面476に吸着され、強固に支持される。さらに、基板支持面476は、発熱部材472の発熱によって加熱されており、基板20の一部であって、基板支持面476により支持された部分が効率良く加熱される。
基板20が支持部材兼用ヒータ400により支持されるとともに加熱される状態とされた後、塗布ヘッド520が退避位置から作業エリアへ移動させられて接着剤をパッケージ基板34のチップ搭載部位に塗布する。この際、基板搬送装置40の基板搬入・搬出ヘッド244は待機位置に位置させられており、塗布ヘッド520および搭載ヘッド960と干渉することはない。塗布ヘッド520は塗布ヘッド移動装置522により、基板搬送方向に直角な水平方向において基板保持装置42上から退避した退避位置から作業エリアへ移動させられ、ニードル570が支持部材兼用ヒータ400により支持されたパッケージ基板34の上に位置させられるとともに下降させられる。塗布ヘッド520は、カム590を含む塗布ヘッド昇降装置528により下降させられ、ニードル570がパッケージ基板34に対して僅かに上方に離れた位置に位置するまで下降させられる。この状態で接着剤ポンプ574が作動させられ、ニードル570から接着剤が吐出されつつ、塗布ヘッド520がX,Y方向に移動させられ、パッケージ基板34のチップ搭載部位に接着剤が所定の図形を描いて塗布される。塗布後、塗布ヘッド520は上昇させられるとともに、作業エリアから退避位置へ退避させられる。塗布ヘッド520の作業エリアへ移動させられて接着剤の塗布を行う位置が作業位置であって、塗布位置であり、予め設定された作業経路に沿って移動させられて所定の形状に接着剤を塗布する。
塗布後、塗布ヘッド520が上昇させられるとともに退避位置へ退避させられる一方、搭載ヘッド960が搭載ヘッド移動装置962により、基板20の上方位置へ移動させられ、チップ保持装置46から受け取ったチップ22を、接着剤が塗布されたパッケージ基板34に搭載する。上記チップ22の受取りは、パッケージ基板34への接着剤の塗布と並行して行われる。チップ保持装置46は、本実施例においては位置を固定して設けられており、搭載ヘッド960が所定のチップ22の位置へ移動させられ、吸着して保持する。
チップ保持装置46においては、ここではウエハ24の直径が最大であるチップ集合体30がチップ集合体保持部材630により保持され、チップ集合体収納部材632に収納された状態で、張力付与部材634により粘着シート26に張力が付与され、緊張状態に保たれている。特に、本実施例においては、粘着シート26が予め定められた量、延伸された状態に保たれる。チップ集合体収納部材632は、チップ集合体30が載置されたチップ集合体保持部材630が収納された後、チップ集合体昇降装置716により下降させられる。それにより、張力付与部材634の円筒部654が、開口692を通ってチップ収納部材632内に進入し、粘着シート26のウエハ24と保持枠28との間の部分に当接し、ウエハ24の下降を阻止する。チップ集合体収納部材632は、この状態から更に下降させられる。粘着シート26は伸縮性を備え、自身の延伸により、保持枠28およびチップ集合体収納部材632が円筒部654に対して下降することを許容する。それにより、粘着シート26があらゆる方向にほぼ均等に引き延ばされ、ダイシングにより切断された多数のチップ22の切断線が拡げられ、粘着シート26からの取外しが容易になる。
チップ集合体収納部材632は、ストッパ装置734により規定される下降端位置まで下降させられる。下降端位置は、上記のようにチップ集合体収納部材632が下降させられて粘着シート26に適切な引張力が作用し、隣接するチップ22間の間隔が適量拡げられる位置に調節されており、粘着シート26は、チップ集合体収納部材632が下降端位置に位置させられている間、延伸状態に保たれる。本実施例においては、チップ集合体収納部材632,張力付与部材634およびチップ集合体昇降装置716が、粘着シート26を延伸状態に保つシート保持装置ないし張力付与装置を構成している。
また、保持枠28が円筒部654に対して下降させられるとき、チップ集合体30の外周部には、上向きの反力が作用するが、チップ集合体30の反りは、チップ集合体収納部材632の第二部材694および第三部材696(ウエハ24の直径が小さい場合には第二部材694のみ)により押さえられ、チップ集合体収納部材632の下降に伴って張力が増大させられる。第三部材696は薄い板状を成すが、第一部材690に固定手段の一種であるボルトにより固定され、第二部材694は薄い板状を成すが、前述のように、チップ集合体保持部材630が収納された後、連結装置800によって第一部材690に連結されるため、チップ集合体30の反力が作用しても押さえることができる。連結装置800は補強装置でもあり、爪部材802が可動の連結部材ないし補強部材を構成し、保持部材810が連結状態ないし補強状態維持装置を構成している。
このように保持されたチップ集合体30の複数のチップ22のうち、パッケージ基板34に搭載すべきチップ22の位置へ吸着ノズル1010が移動させられる。この際、チップ22の吸着に先立って可動撮像装置1082がチップ22上方へ移動させられ、チップ22を撮像する。可動撮像装置1082は、予め設定されたチップ取出データに従ってチップ22上へ移動させられ、チップ22を撮像するのであり、それにより得られるチップ22の像データが画像処理コンピュータ1118により処理され、位置ずれのない正規の像データと比較されて、チップ22のX方向およびY方向における各位置誤差が検出される。また、不良なチップ22については、チップ22上に設けられたチップ不良表示マーク付設個所にチップ不良表示マークが付けられており、チップ不良表示マークが得られていれば、そのチップ22は不良チップであり、搭載ヘッド960は保持せず、次のチップ22を保持する。
搭載ヘッド960の移動位置は、チップ22の位置誤差が打ち消され、吸着ノズル1010がチップ22の中央を吸着することができるように修正され、吸着ノズル1010の移動位置が補正されてチップ22の中央位置上方へ精度良く移動させられる。移動後、吸着ノズル1010がエアアクチュエータ1012によりチップ受取位置ないしチップ吸着位置へ下降させられる。
このようにチップ吸着位置へ下降させられた吸着ノズル1010に対して、チップ22がチップ突上装置52により突き上げられて吸着ノズル1010により吸着され、保持される。チップ保持装置46は位置を固定して設けられており、突上ピン832がピン移動装置836により水平方向に移動させられ、吸着ノズル1010により吸着されるチップ22の下方へ移動させられるとともに、ピン駆動装置834により上昇させられてチップ22を突き上げる。
非突上げ時には、突上ピン832は、図22(a)に示すように待機位置に位置させられ、吸着筒900の吸着面926〜934より下方に位置させられている。突上げ時には、昇降部材864が昇降部材昇降装置866により上昇させられる。吸着部材保持部材904の当接部918がストッパ部916に当接するまでの間は、吸着筒900および突上ピン832が一体的に上昇するが、当接後は、昇降部材864がスプリング910の付勢力に抗して吸着部材保持部材904に対して上昇し、停止した吸着筒900に対して突上ピン832が上昇する。それにより、図22(b)に示すように、突上ピン832は開口920を通って吸着筒900から上方へ突出し、予め設定された突上位置へ上昇させられる。
吸着筒900は、負圧が供給されつつ上昇させられる。吸着筒900の上昇端位置は、当接部918のストッパ部916への当接によって決まり、吸着面926〜934が、前述のように張力が付与された粘着シート26の僅かに下方に位置する位置であり、負圧の供給により吸着面926〜934が粘着シート26の、供給されべきチップ22が付着した部分を下方から吸着して支持する。吸着面926〜934は、前述のように分割して多数設けられ、各々に近接して負圧供給孔908が開口させられており、多数の吸着面はそれぞれ、その全面において粘着シート26を吸着することができる。また、負圧供給孔908は、環状溝924の底面に開口させられて吸着面926〜934より引っ込んだ位置において負圧を供給するため、吸着面に直接負圧が供給される場合に比較して、吸着筒全体の吸着力は確保しつつ、個々の吸着面の吸着力を小さくすることができ、チップ22や粘着シート26を損傷の恐れなく、吸着することができる。さらに、吸着筒900は、突上ピン832に対する回転が阻止されているため、粘着シート26を吸着した状態で回転して、粘着シート26等を損傷させることがない。
突上ピン832が吸着筒900に対して上昇させられるとき、粘着シート26を、チップ22が付着させられた表面とは反対の裏面側から突き上げるのであるが、粘着シート26が吸着筒900によって吸着されているため、粘着シート26の突上ピン832が当たる部分およびその近傍部以外は突き上げられず、突上ピン832が当たる部分およびその近傍部のみが強く湾曲させられて吸着筒900から離間させられ、チップ22が突き上げられる。本実施例においては特に、吸着面926〜930の各幅が吸着筒900の中央部ほど小さくされるとともに、負圧供給孔908の形成密度が大きくされており、突上ピン832により突き上げられる部分の周辺を確実に吸着して、粘着シート26を強く湾曲させ、チップ22の剥離を促すようにされている。
突上ピン832を昇降させるピン駆動装置834はサーボモータにより構成されるピン昇降モータ872を駆動源としており、その回転角度の制御により、突上ピン832の上昇速度ないしチップ突上速度を無段階に制御することができ、チップ22の損傷を回避しつつ突き上げて粘着シート26から剥がし、浮き上がらせることができる。チップ22は薄く、損傷し易いため、チップ22の粘着シート26に対する粘着面積が大きく、粘着力が大きい突上開始当初ないし剥離開始当初は、低速で少しずつ突き上げることが望ましい。突上ピン832を多段階に上昇させ、1段階毎の上昇距離(突上量)を突上開始当初は小さくし、徐々に大きくしてもよいが、突上開始当初の突上ピン832の上昇速度を小さく抑えるには十分ではない。それに対し、サーボモータを駆動源として突上ピン832の上昇速度を無段階に制御すれば、突上開始当初の上昇速度(突上速度)を十分小さく抑えるとともに、上昇速度を徐々に滑らかに増大させ、時間に対する突上ピン832の高さ(上昇距離)が二次関数的に増大するように曲線動作制御することができる。それにより、突上開始当初はチップ22の突上量を小さく抑えて少しずつ突き上げ、チップ22がある程度、突き上げられて粘着シート26に対する貼着面積が減少させられ、粘着シート26の粘着力ないしチップ保持力が減少させられた状態では、突上速度を大きくしてチップ22を所定の上昇端位置(高さ位置)ないし供給位置へ迅速に移動させ、チップ22の破損を良好に回避しつつ、突き上げることができる。
突上ピン832の突上位置は、チップ吸着位置へ下降させられた吸着ノズル1010の吸着面1060よりやや上方の位置までチップ22を突き上げる位置に設定されている。そのため、チップ22は突上ピン832により突き上げられる途中で吸着面1060に接触し、その後、更に上昇させられることにより、吸着ノズル1010が後退させられる。この際、エアアクチュエータ1012により接触荷重が制御され、吸着ノズル1010とチップ22とが設定された接触荷重で接触するようにされる。このように吸着ノズル1010の接触荷重を適切な大きさに制御することにより、チップ22が吸着ノズル1010と突上ピン832とに挟まれて破損することを回避しつつ、確実に吸着ノズル1010に保持させることができる。ウエハ24は粘着シート26に電子回路が形成された側とは反対側の面において付着させられており、吸着ノズル1010はチップ22の電子回路が形成された側の面を吸着する。
このように吸着ノズル1010が負圧によりチップ22を吸着した後、搭載ヘッド960は上昇させられ、接着剤が塗布されたパッケージ基板34へ移動させられて搭載する。パッケージ基板34への接着剤の塗布は、搭載ヘッド960がチップ22を保持して基板20へ移動して来るまでの間に終了し、塗布ヘッド520は退避位置へ退避させられており、塗布ヘッド520に替わって搭載ヘッド960が基板20の上方へ移動させられてチップ22をパッケージ基板34に搭載する。この移動の途中で、搭載ヘッド960が固定撮像装置952上へ移動し、吸着ノズル1010により吸着されたチップ22が撮像される。そして、画像データが画像処理コンピュータ1118により処理され、吸着ノズル1010によるチップ22の保持姿勢誤差が演算される。保持姿勢誤差は、X方向およびY方向の各位置誤差およびチップ22のその面に直角な軸線まわりの位置誤差である回転位置誤差を含む。また、チップ22をパッケージ基板34に搭載するのに先立って、パッケージ基板34について設けられた基準マーク36が可動撮像装置1082により撮像され、パッケージ基板34のX方向およびY方向における各位置誤差およびパッケージ基板34の回転位置誤差(パッケージ基板34に直角な軸線まわりの位置誤差)が算出される。
吸着ノズル1010の移動位置は、チップ22のX,Y方向の各位置誤差,回転位置誤差の修正により生じるX,Y方向の位置ずれおよびパッケージ基板34のX,Y方向の各位置誤差が打ち消されるように補正される。また、吸着ノズル1010が、チップ22の回転位置誤差およびパッケージ基板34の回転位置誤差が打ち消されるように回転させられる。吸着ノズル1010は、スリーブ1022が回転装置1024により回転させられ、吸着ノズル1010を保持するピストンロッド1020が回転させられることにより回転させられる。これら誤差の修正により、チップ22はパッケージ基板34の接着剤が塗布された塗布部であるチップ搭載箇所に正規の姿勢で精度良く搭載される。
搭載時には、吸着ノズル1010がエアアクチュエータ1012により、予め設定された搭載位置へ下降させられる。この搭載位置は、チップ22が接着剤に接触した状態から更に僅かに下降する位置であり、接着剤が予め決められている設定厚さに精度良く押しつぶされる。また、この際、エアアクチュエータ1012により吸着ノズル1010のパッケージ基板34に対する接触荷重が適切な大きさに制御され、チップ22が破損することなく良好にパッケージ基板34上に搭載される。このようにチップ22がパッケージ基板34に搭載されるとき、パッケージ基板34は支持部材兼用ヒータ400によって加熱されており、接着剤が硬化させられ、チップ22が迅速にパッケージ基板34に接着される。吸着ノズル1010は、チップ22の電子回路が形成された面を吸着しており、チップ22は、その裏面であって、電子回路が形成されていない側の面においてパッケージ基板34上に搭載され、接着される。チップ22は、電子回路が形成された面を上向きにしてフェイスアップでパッケージ基板34に搭載されるのである。このように吸着ノズル1010が搭載位置へ下降させられ、チップ22が搭載された後、負圧の供給が遮断されるとともに、吸着ノズル1010に正圧源1064から正圧が供給されてチップ22を積極的に開放する。そして、吸着ノズル1010が上昇させられて次に搭載するチップ22を受け取るためにチップ保持装置46へ移動する。
基板20の複数のパッケージ基板34の各々への接着剤の塗布とチップ22の搭載とが交互に行われ、基板20の幅方向に平行な1列のパッケージ基板34の全部についてチップ22が搭載されたならば、支持部材兼用ヒータ400は下降させられ、基板20から離間させられるとともに、ヒータ移動装置402によりX方向に移動させられ、基板20の次にチップ22が搭載される部分、ここではチップ22の搭載が済んだパッケージ基板34の列に基板搬送方向において上流側に隣接する部分に対応する位置へ移動させられるとともに、ヒータ昇降装置424により上昇させられ、基板20のチップ22が搭載される部分を下方から支持するとともに加熱する。
基板20の全部のパッケージ基板34にチップ22が搭載されたならば、基板20の基板押さえ部材120,170および基板押付部材122,172によるクランプおよび可動規定部材202により位置規定が解除されて、基板20が基板搬送装置40により作業エリアから搬出され、基板収納カートリッジ84に収納されるとともに、基板供給カートリッジ66により供給される基板20が作業エリアに搬入される。
チップ集合体30のチップ22がなくなったならば、チップ集合体30がチップ22を保持したものに交換される。この交換は、作業者により行われる。交換時には、チップ集合体収納部材632がチップ集合体昇降装置716により上昇させられ、チップ集合体30は粘着シート26への張力付与が解除された状態とされる。そして、作業者は、連結装置800の爪部材802を退避位置へ移動させ、チップ集合体収納部材632の第一部材690と第二部材694との連結を解除する。その状態で作業者は、取手786を持ってチップ集合体保持部材630をチップ集合体収納部材632からチップ搭載機の前面側、すなわち接着剤塗布装置44側へ引っ張り出す。それにより、チップ集合体30も引き出されるため、チップ集合体保持部材630により保持されたチップ集合体30をチップ集合体保持部材630から取り外し、新しいチップ集合体30をチップ集合体保持部材630に保持させる。切欠778を位置決めピン776に係合させ、チップ集合体支持面774上に載置するのであり、その後、チップ集合体保持部材630をチップ集合体収納部材632内へ移動させ、収納後、連結装置800により第二部材694を第一部材690に連結する。チップ保持装置46は、チップ搭載機の作業エリアより奥側に設けられているが、チップ集合体保持部材630が前後方向に移動可能とされ、前側に引き出されることにより、容易にチップ集合体30の交換を行うことができる。
また、チップ集合体30の交換の他、基板保持装置42による基板保持幅の調節等、チップ搭載機10に対して作業者が行う作業は、1列に並べられた3台のチップ搭載機10,12,14について一人の作業者により行われるのであるが、チップ搭載機10,12,14においては、接着剤塗布装置44とチップ搭載装置48とが基板搬送方向に直角な方向に並べて配設されているため、それらを基板搬送方向に平行に配置する場合に比較してチップ搭載機10,12,14の各幅(間口)が短く、作業者の移動距離が短くて済み、作業者は一人でも3台のチップ搭載機10,12,14の管理を行うことができる。
さらに、チップ22が搭載される基板20の種類が変わり、チップ22の種類も変わる等により、チップ保持装置46により保持されるチップ集合体30の種類が変わり、ウエハ24の直径が変わる場合には、チップ集合体収納部材632の第二部材694および張力付与部材をそれぞれ、ウエハ24の直径に応じたものに交換する。また、必要であれば補助保持部材を用いてチップ集合体30をチップ集合体保持部材630に保持させる。いずれにしても、張力付与部材の円筒部は、円筒部の直径が小さいほど、その中心が基板保持装置42側へ寄せられ、円筒部の基板保持装置42側の端が基板保持装置42側に寄せられ、チップ集合体30は、ウエハ24が円筒部内に位置するようにチップ集合体保持部材630により保持されるため、チップ集合体30のウエハ24が小さくても基板保持装置42側に位置し、小さい円筒部に保持されたウエハ24のチップ22を搭載ヘッド960が基板保持装置42に保持された基板20へ搬送するための距離が短くて済む。
以上、チップ撮像モードとして搭載位置精度重視モードが選択された場合を説明したが、タクト重視モードが選択された場合には、吸着ノズル1010により吸着されたチップ22の固定撮像装置952による撮像は行われず、吸着後、直ちにパッケージ基板34に搭載され、チップ搭載サイクルタイムが短縮される。パッケージ基板34の基準マーク36の撮像,位置誤差の検出は行われる。
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、制御装置54のX方向,Y方向の各移動装置524,526およびX方向,Y方向の各移動装置964,966を制御し、塗布ヘッド520と搭載ヘッド960とを基板20の上方位置に交互に選択的に移動させる部分が塗布ヘッド・搭載ヘッド移動制御装置を構成し、ピン駆動装置834を制御して突上ピン832の高さ位置を無段階に制御する部分がピン制御装置を構成している。また、入力部としての入力装置1120および制御装置54の、入力装置1120の入力により選択されたチップ撮像モードを実行する部分が状態切換部を構成している。さらに、制御装置54の基板供給カートリッジ昇降装置68および基板収納カートリッジ昇降装置86を制御して基板供給カートリッジ66および基板収納カートリッジ84を昇降させ、予め設定された順序で基板20を供給させ、収納させる部分がそれぞれ基板供給順序制御部および基板収納順序制御部を構成している。
入力部は、入力装置1120に限らず、例えば、ホストコンピュータにより構成され、その指示に基づいてチップ撮像モードが自動的に切り換えられてもよい。あるいは基板とチップとの少なくとも一方の種類等やチップ付基板の製造数等に応じて予めチップ撮像モードが設定されていて、それに従ってチップ撮像モードが切り換えられてもよい。この場合、コンピュータ1110が、それに記憶されているチップ撮像モード設定データを読み出す部分が入力部を構成する。
なお、基板保持装置の基板押さえを透明とする場合、有色透明としてもよく、合成樹脂製としてもよい。
また、チップ搭載装置の搭載ヘッドは、チップ保持部を複数備えたものとし、搭載ヘッド移動装置を、それら複数のチップ保持部の各々にそれぞれチップ保持装置からチップを受け取らせ、基板保持装置に保持された基板上方へ一挙に搬送させ、1個ずつ順次搭載させる装置としてもよい。例えば、エアアクチュエータ1012のピストンロッドにノズル保持体を設け、複数の吸着ノズルを、ピストンロッドの軸線まわりに所定の間隔で、例えば、等角度間隔に保持させるとともに、それら複数の吸着ノズルの1つを他の吸着ノズルに対して選択的に下降させて、チップ搭載を行わせるチップ選択装置を設け、チップ選択装置による吸着ノズルの選択,エアアクチュエータによる吸着ノズルの昇降および接触荷重制御により、複数の吸着ノズルに順次、チップを吸着させた後、基板へ移動させ、順次、搭載させる。この場合、ピストンロッドの回転および回転により生ずるチップのX,Y方向の位置ずれの修正により、吸着ノズルに保持されたチップの回転位置誤差を修正することができる。
さらに、チップは、トレイに収容して保持し、供給してもよい。トレイは、複数のチップ収容凹部を備え、それらチップ収容凹部の各々にチップが1個ずつ収容される。
また、可動規定部材202は、基板押付部材122,172による基板20のクランプの解除の後も前進位置(可動規定面206と固定の規定面146との間の距離が、基板幅Wに距離γを加えた大きさとなる位置)に位置させたままとし、基板20が押出部材296により押されて基板収納カートリッジ84に収納される際、基板20の幅方向の移動限度を規定するようにしてもよい。この場合、基板供給カートリッジ66から基板保持装置42に搬入される基板20が、基板搬送方向において上流側の可動規定部材202に至る前に2つの可動規定部材202を共に後退位置へ後退させてもよく、上流側の可動規定部材202は、搬入される基板20が至る前に後退位置へ後退させ、下流側の可動規定部材202は、その後、基板20が更に搬入されて至る前に後退位置へ後退させてもよい。この場合、可動規定部材202は、基板幅方向位置規定装置,基板搬送幅規定装置ないし基板幅方向移動限度規定装置を構成する。