JP5408818B1 - ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法 - Google Patents

ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5408818B1
JP5408818B1 JP2013528158A JP2013528158A JP5408818B1 JP 5408818 B1 JP5408818 B1 JP 5408818B1 JP 2013528158 A JP2013528158 A JP 2013528158A JP 2013528158 A JP2013528158 A JP 2013528158A JP 5408818 B1 JP5408818 B1 JP 5408818B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas barrier
barrier layer
group
barrier structure
range
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013528158A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2013125351A1 (ja
Inventor
悠太 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Lintec Corp
Original Assignee
Lintec Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Lintec Corp filed Critical Lintec Corp
Priority to JP2013528158A priority Critical patent/JP5408818B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5408818B1 publication Critical patent/JP5408818B1/ja
Publication of JPWO2013125351A1 publication Critical patent/JPWO2013125351A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B05SPRAYING OR ATOMISING IN GENERAL; APPLYING FLUENT MATERIALS TO SURFACES, IN GENERAL
    • B05DPROCESSES FOR APPLYING FLUENT MATERIALS TO SURFACES, IN GENERAL
    • B05D1/00Processes for applying liquids or other fluent materials
    • B05D1/62Plasma-deposition of organic layers

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Plasma & Fusion (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)

Abstract

優れたガスバリア性や透明性が得られるとともに、密着性や耐クラック性等に優れたガスバリア層を備えたガスバリア構造体、およびそのようなガスバリア構造体の効率的な形成方法を提供する。
基材上に、ガスバリア層を備えたガスバリア構造体、およびそのようなガスバリア構造体の形成方法であって、ガスバリア層が、ポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を含んでなるガスバリア層形成用材料に由来しており、当該ガスバリア層形成用材料に、プラズマイオン注入処理してあることを特徴とする。

Description

本発明は、ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の製造方法に関し、特に、所定の極性ポリマおよびポリシラザン化合物を含んでなるガスバリア層形成用材料に由来したガスバリア層を備えたガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法に関する。
従来、プラスチックフィルム等の高分子成形体は、低価格であり加工性に優れるため、所望の機能を付与して、種々の分野で用いられている。
例えば、食品や医薬品の包装用フィルムには、蛋白質や油脂等の酸化や変質を抑制して味や鮮度を保持するため、水蒸気や酸素の透過を防ぐガスバリア性のプラスチックフィルムが用いられている。
また、近年、液晶デバイスや有機エレクトロルミネッセンスデバイス(有機EL素子)を用いた画像表示装置において、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、電極形成用の基板として、ガラス板に代えて透明プラスチックフィルム、例えば、ポリエステルフィルムを用いることが検討されている。
しかしながら、ポリエステルフィルム等の透明プラスチックフィルムは、水蒸気や酸素等を透過しやすく、それに起因して、画像表示装置の内部に設けられた各種素子の性能劣化や電極腐蝕をひき起こしやすいという問題があった。
そこで、水蒸気や酸素等の透過を抑制すること等を目的として、透明プラスチックフィルムに金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、透明プラスチックフィルムの表面に金属酸化物からなるガスバリア層を積層する第1工程、形成したガスバリア層上に、透明保護層を積層する第2工程、および透明保護層上に透明導電層をさらに積層する第3工程、を包含するフレキシブルディスプレイ基板の製造方法であって、積層後の各層の変化を抑制するために、第1工程、第2工程、および第3工程を同一の真空装置内で行うことを特徴としている。
また、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に、ポリシラザン化合物からなるポリシラザン膜を形成し、当該ポリシラザン膜に、プラズマ処理を施して、ガスバリア膜とすることを特徴としたガスバリアフィルムの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、基材に対する密着性や屈曲性等を高めるために、ポリシラザン化合物に、アクリル樹脂を混合してなるコーティング組成物も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、溶剤として、ハロゲン化炭化水素等を用い、それに対して数平均分子量が100〜5万の所定構造を有するポリシラザンと、アクリル系樹脂と、を溶解してなるコーティング用組成物である。
特開2000−338901号公報 特開2007−237588号公報 特開平7−292321号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたフレキシブルディスプレイ基板の製造方法によれば、第1工程において、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等によって、透明プラスチックフィルムの表面に、金属酸化物のみからなるガスバリア層を積層するために、柔軟性が劣っており、例えば、得られたフレキシブルディスプレイ基板を丸めたり、折り曲げたりすると、ガスバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性が著しく低下するという問題が見られた。
また、特許文献2に開示されたガスバリアフィルムの製造方法は、フィルムに対してポリシラザン膜を形成した後に、プラズマ処理を施し、それをガスバリアフィルムとして用いているものの、ガスバリア性が未だ不十分であり、また、柔軟性も劣っているという問題が見られた。
さらにまた、特許文献3に開示されたコーティング用組成物は、塗布後、乾燥するだけであって、プラズマイオン注入処理までは行っていないために、ガスバリア性が不十分であるという問題が見られた。
すなわち、従来のガスバリア層を備えたガスバリアフィルムやフレキシブルディスプレイ基板は、繰り返し曲げると、柔軟性に欠けていることから、ガスバリア層にクラックが生じやすく、ガスバリア性が低下するという問題が見られた。
そこで、本発明者らは、このような問題を鋭意検討した結果、ガスバリア層が、所定極性ポリマおよびポリシラザン化合物を含んでなるガスバリア層形成用材料に対して、プラズマイオン注入処理してあることによって、柔軟性が、向上し、かつガスバリア性も優れるという事実を見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、柔軟性に優れたガスバリア層を備えたガスバリア構造体、およびそのようなガスバリア構造体の効率的な形成方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、基材上に、ガスバリア層を備えたガスバリア構造体であって、ガスバリア層が、ポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層(以下、プレバリア層と称する場合がある。)に、プラズマイオン注入処理してあり、水酸基含有ポリマが、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つであって、カルボキシル基含有ポリマが、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であって、ガスバリア層形成用材料の全体量に対して、極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値とすることを特徴とするガスバリア構造体が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、基材上に積層された、所定の極性ポリマおよびポリシラザン化合物を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層に対して、プラズマイオン注入処理して、ガスバリア層を形成していることから、柔軟性と、被膜強度がそれぞれ高まり、ひいては、耐クラック性を向上させたり、作成工程でのキズの発生を有効に防止したりすることができる。
また、このような水酸基含有ポリマやカルボキシル基含有ポリマを用いることによって、ポリシラザン化合物との相溶性が良好になって、柔軟性と、被膜強度とがそれぞれ高まり、ひいては、さらに優れた耐クラック性や作成工程でのキズの発生を有効に防止することができる。
また、このような極性ポリマの配合量とすることによって、ポリシラザン化合との相溶性が良好になって、ガスバリア層形成用材料の取り扱いや安定性が良好になるとともに、さらに優れた柔軟性や被膜強度を得ることができる。
また、本発明のガスバリア構造体を構成するにあたり、ガスバリア層が、膜厚が10〜30nmの少なくともケイ素、酸素、および窒素を含む表層を含んでおり、当該表層におけるXPSで測定されるこれら元素の全体量に対して、ケイ素量を25〜45mol%の範囲内の値、酸素量を5〜74mol%の範囲内の値、および窒素量を0.1〜15mol%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように所定組成の表層を含むガスバリア層とすることによって、さらに優れたガスバリア性が得られる。
さらにまた、本発明のガスバリア構造体を構成するにあたり、ガスバリア層(表層)における弾性率を1〜2.5GPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このような弾性率を有するガスバリア層とすることによって、優れた柔軟性と被膜強度を得ることができる。
また、本発明の別の発明は、基材上に、ガスバリア層を備えてなるガスバリア構造体の形成方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とするガスバリア構造体の形成方法である。
(1)ポリシラザン化合物と、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つである水酸基含有ポリマおよびエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を、ガスバリア層形成用材料の全体量に対して、極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値で含むガスバリア層形成用材料からなる層を、基材上に積層する積層工程
(2)ガスバリア層形成用材料からなる層にプラズマイオン注入して、ガスバリア層とするイオン注入工程
すなわち、工程(1)で、所定の極性ポリマおよびポリシラザン化合物を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層を基材上に積層し、工程(2)で、所定の極性ポリマおよびポリシラザン化合物を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層に対して、プラズマイオン注入処理して、ガスバリア層を形成することにより、柔軟性と、被膜強度とがそれぞれ高まり、ひいては、耐クラック性に優れ、作成工程でのキズの発生が少ないガスバリア層を備えたガスバリア構造体を得ることができる。
図1は、本発明のガスバリア構造体の断面を説明するために供する模式図である。 図2(a)〜(e)は、本発明のガスバリア構造体の製造方法を説明するために供する図である。 図3は、イオン注入装置の一例を説明するために供する図である。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、基材上に、ガスバリア層を備えたガスバリア構造体であって、ガスバリア層が、ポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層に、プラズマイオン注入処理してあり、水酸基含有ポリマが、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つであって、カルボキシル基含有ポリマが、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であって、ガスバリア層形成用材料の全体量に対して、極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値とすることを特徴とするガスバリア構造体である。
本発明のガスバリア構造体の一例を図1に示す。
ここで、図1に示すガスバリア構造体50は、基材12と、基材12上に、ガスバリア層10を備える。
以下、第1の実施形態のガスバリア構造体につき、適宜図面を参照して、具体的に説明する。
1.基材
基材の種類は、柔軟性を有するものであれば、特に制限されるものでなく、プラスチック樹脂フィルム、プラスチック樹脂プレート、ガラス基板(セラミック基板を含む)、等が挙げられる。
プラスチック樹脂フィルムまたはブラス樹脂プレートに使用される樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマ、芳香族系重合体等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
シクロオレフィン系ポリマとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。
基材の厚さは、使用目的等に応じて決定すればよいが、柔軟性および扱いが容易であるという点から、1〜1000μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましい。
2.ガスバリア層
本発明のガスバリア構造体におけるガスバリア層は、ポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層に由来しており、当該ガスバリア層形成用材料からなる層につき、プラズマイオン注入処理して得られるものである。
当該ガスバリア層は、酸素や水蒸気等の透過を抑制する特性(以下、「ガスバリア性」という)を有する層である。
(1)ガスバリア層形成用材料ポリシラザン化合物
ガスバリア層形成用材料の一部を構成するポリシラザン化合物は、分子内に−Si−N−結合(シラザン結合)を含む繰り返し単位を有する化合物であり、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する化合物である。具体的には、有機ポリシラザン、無機ポリシラザン、変性ポリシラザン等が挙げられる。
以下、好適なポリシラザン化合物をより具体的に説明する。
但し、各種ポリシラザン化合物が挙げられる中でも、Rx、Ry、Rzがすべて水素原子である無機ポリシラザンを用いることが特に好ましい。
この理由は、かかる無機ポリシラザン(パーヒドロポリシラザン)であれば、後述する所定の極性ポリマと混合使用した場合であっても、極性ポリマを過剰に反応することがなく、プラズマイオン注入法によってガスバリア層とした場合に、さらに優れたガスバリア特性や柔軟性等を有するガスバリア構造体を得ることができるためである。
また、用いるポリシラザン化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50000の範囲内の値であることが好ましい。
Figure 0005408818
(一般式(1)中、Rx、RyおよびRzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基またはアルキルシリル基等の非加水分解性基であり、添字nは任意の自然数を表わす。)
また、上述した無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
また、上述した無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。
また、上述した無置換若しくは置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
また、上述したアルキル基、シクロアルキル基、およびアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基等が挙げられる。
また、上述した無置換若しくは置換基を有するアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
また、上述したアリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基等が挙げられる。
また、上述したアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt−ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
なお、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
(i)無機ポリシラザン化合物
また、一般式(1)において、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン化合物(パーヒドロポリシラザン)が好ましい。
かかる、無機ポリシラザン化合物としては、下記一般式(2)〜(3)および式(4)で表わされる構造を含む化合物が挙げられる。
すなわち、下記一般式(2)で表わされる繰り返し単位を有する直鎖状構造を有するとともに、1分子中に3〜10個のSiH3基を有する数平均分子量が690〜2000の範囲内の値であるパーヒドロポリシラザン(特公昭63−16325号公報)が挙げられる。
Figure 0005408818
(一般式(2)中、添字bは任意の自然数を表わす。)
また、下記一般式(3)で表わされる繰り返し単位を有する直鎖状構造と分岐構造とを有するパーヒドロポリシラザンが挙げられる。
Figure 0005408818
(一般式(3)中、Y1は、水素原子または下記一般式(3´)で表わされる基であり、添字cおよびdはそれぞれ任意の自然数を表わす。)
Figure 0005408818
(一般式(3´)中、Y2は、水素原子、または一般式(3´)で表わされる基であり、添字eは任意の自然数を表わし、*は結合位置を表わす。)
さらに、例えば、下記式(4)で表わされるパーヒドロポリシラザン構造を有する、分子内に直鎖状構造、分岐構造および環状構造を有するパーヒドロポリシラザンが挙げられる。
Figure 0005408818
(ii)有機ポリシラザン化合物
また、一般式(1)中のRx、Ry、Rzの少なくとも一つが水素原子ではなく、有機基である有機ポリシラザン化合物も好適である。
かかる有機ポリシラザン化合物としては、下記一般式(5)〜(9)で表わされる構造を含む化合物が挙げられる。
すなわち、下記一般式(5)で表わされる構造を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 0005408818
(一般式(5)中、Rx´は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、またはアルキルシリル基を表わし、以下の一般式においても同様である。)
また、下記一般式(6)で表わされる構造を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 0005408818
(一般式(6)中、Rz´は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、またはアルキルシリル基である。)
また、下記一般式(7)で表わされる構造を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 0005408818
(一般式(7)中、Ry´は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、またはアルキルシリル基である。)
また、下記式(8)で表わされる構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザン化合物が挙げられる。
Figure 0005408818
さらに、下記一般式(9)で表わされる繰り返し構造を有するポリシラザン化合物が挙げられる。
Figure 0005408818
(一般式(9)中、Y3は、水素原子、または下記一般式(9´)で表わされる基であり、添字fおよびgは任意の自然数を表わす。)
Figure 0005408818
(一般式(9´)中、Y4は、水素原子、または一般式(9´)で表わされる基であり、添字hは任意の自然数を表わし、*は結合位置を表わす。)
なお、上述した有機ポリシラザン化合物は、公知の方法により製造することができる。
例えば、下記一般式(10)で表わされる無置換若しくは置換基を有するハロゲノシラン化合物と2級アミンとの反応生成物に、アンモニアまたは1級アミンを反応させることにより得ることができる。
なお、用いる2級アミン、アンモニアおよび1級アミンは、目的とするポリシラザン化合物の構造に応じて、適宜選択することができる。
Figure 0005408818
(一般式(10)中、Xは、ハロゲン原子を表わし、R1は、上述したRx、Ry、Rz、Rx´、Ry´およびRz´のいずれかの置換基であって、mは、1〜3の自然数を表す。)
(iii)変性ポリシラザン
また、本発明においては、ポリシラザン化合物として、変性ポリシラザンを用いることも好ましい。
かかる変性ポリシラザンとしては、例えば、金属原子(当該金属原子は架橋をなしていてもよい。)を含むポリメタロシラザン、繰り返し単位が[(SiH2i(NH)j)]および[(SiH2kO](添字i、jおよびkは、それぞれ独立して1、2または3である。)で表わされるポリシロキサザン、ポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造するポリボロシラザン、ポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、ポリシラザンに有機成分を導入した共重合シラザン、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加または添加した低温セラミックス化ポリシラザン、ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン、グリシドール付加ポリシラザン、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン等が挙げられる。
その他、上述したポリシラザン化合物またはその変性物に、アミン類および/または酸類を添加してなるポリシラザン組成物、パーヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコールあるいはヘキサメチルジシラザンを末端N原子に付加して得られる化合物等が挙げられる。
(2)ガスバリア層形成用材料極性ポリマ
また、ガスバリア層形成用材料の一部を構成する極性ポリマとして、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方を用いることを特徴とする。
すなわち、上述したポリシラザン化合物と、極性ポリマとの組み合わせによって、得られるガスバリア層において、柔軟性と、被膜強度とがそれぞれ高まり、かつ、バリア性にも優れるガスバリア層とすることができるためである。
したがって、水酸基含有ポリマあるいはカルボキシル基含有ポリマとして、水酸基およびカルボキシル基、あるいはいずれか一方を有する各種ポリマ、すなわち、アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタ−ル樹脂(PVAc)、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)、ビニルアルコール−(N−ビニルホルムアミド)共重合体、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
以下、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマに大別して、さらに詳細に説明する。
(i)水酸基含有ポリマ
本発明に用いる水酸基含有ポリマとしては、分子内に水酸基を有し、シラザン化合物との相溶性が良いものであって、すなわち、水酸基含有ポリマとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする。
この理由は、このような水酸基含有ポリマを用いることによって、ポリシラザン化合物との相溶性が良好になって、さらに優れたガスバリア性を得ることができるためである。
また、これら水酸基含有ポリマがポリビニルアルコールである場合、鹸化度(極性ポリマ中に存在する酢酸エステル等の加水分解程度を表わす指標)は10〜60%の範囲内であることが好ましい。
この理由は、ポリビニルアルコールの鹸化度が10%未満の値になると、所定量配合した場合であっても、ガスバリア層における柔軟性や耐クラック性の向上が不十分となる場合があるためである。
一方、ポリビニルアルコールの鹸化度が60%を超えた値になると、ポリシラザン化合物との相溶性やガスバリア層形成用材料の安定性が低下し、均一なガスバリア層を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、ポリビニルアルコールの鹸化度は、10〜60%の範囲内であることが好ましく、20〜50%の範囲内であることがより好ましく、30〜40%の範囲内であることがさらに好ましい。
(ii)カルボキシル基含有ポリマ
本発明に用いるカルボキシル基含有ポリマとしては、分子中にカルボキシル基を有し、シラザン化合物との相溶性が良いものであって、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であることを特徴とする。それによって、ポリシラザン化合物との相溶性が良好になって、さらに優れたガスバリア性を得ることができる。
また、これら極性ポリマの重量平均分子量を1,000〜500,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる極性ポリマの重量平均分子量が1,000未満の値になると、所定量配合した場合であっても、ガスバリア層における柔軟性や耐クラック性の向上が不十分となる場合があるためである。
一方、かかる極性ポリマの重量平均分子量が500,000を超えた値になると、ポリシラザン化合物との相溶性やガスバリア層形成用材料の安定性が低下し、均一なガスバリア層を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、極性ポリマの重量平均分子量を10,000〜150,000の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000〜100,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、これらの極性ポリマに対して、ガスバリア層のガスバリア性、透明性、耐クラック性等を過度に損なわない範囲で、アクリルポリマ、ウレタンポリマ、シリコーンポリマ、酢酸ビニルポリマ、塩化ビニルポリマ、エポキシポリマ、アクリルオリゴマ、ウレタンオリゴマ、シリコーンオリゴマ、酢酸ビニルオリゴマ、塩化ビニルオリゴマ、エポキシオリゴマ等のポリマやオリゴマの少なくとも一つを所定量配合することも好ましい。
また、極性ポリマの配合量は、特に制限はないが、ポリシラザン化合物および極性ポリマからなるガスバリア層形成用材料の全体量に対して、極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような極性ポリマの配合量とすることによって、ポリシラザン化合物との相溶性が良好になって、取り扱いが良好になるとともに、さらにポリシラザン化合物との反応性が高まることによる優れたガスバリア性を有し、柔軟性と被膜強度とが両立したガスバリア層を得ることができるためである。
より具体的には、かかる極性ポリマの配合量が1重量%未満の値になると、柔軟性が得られない場合があるためである。
一方、かかる極性ポリマの配合量が50重量%を超えた値になると、得られるガスバリア層のガスバリア性および被膜強度等が低下したりする場合があるためである。
したがって、ガスバリア層形成用材料の全体量に対して、極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値とすることが好ましく、10〜45重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜40重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(3)膜厚
また、ガスバリア層の膜厚を50〜10000nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような所定厚さのガスバリア層とすることによって、さらに優れたガスバリア性や密着性が得られるとともに、柔軟性と、被膜強度とを両立させることができるためである。
したがって、ガスバリア層の膜厚を70〜2000nmの範囲内の値とすることがより好ましく、100〜500nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
い。
また、本発明のガスバリア層は、表面に、後述する表層を有していることが好ましい。
そして、ガスバリア層の表面に、表層が形成された場合、その表層の膜厚を10〜30nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような所定厚さの表層を含むガスバリア層とすることによって、さらに優れたガスバリア性が得られるとともに、優れた透明性についても得ることができるためである。
したがって、ガスバリア層の表層の膜厚を13〜25nmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜20nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ガスバリア層の膜厚および所定表層の厚さについては、電子顕微鏡で実測することができる。
(4)弾性率
また、ガスバリア層における弾性率を1.0〜2.5GPaの範囲内の値とすることが好ましい。
すなわち、本発明において、ガスバリア層の表層として、ガスバリア層が設けてある基材の反対側におけるガスバリア層の表面から10〜30nmの深さ位置の弾性率(便宜上、かかる弾性率をガスバリア層の弾性率と称する。)を1.0〜2.5GPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような弾性率を有するガスバリア層とすることによって、優れた柔軟性と被膜強度が得られるためである。
また、ガスバリア層の弾性率が2.5GPaより大きいと、折り曲げたりした場合にガスバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性が著しく低下することがあり、好ましくない。
一方、ガスバリア層の弾性率が1.0GPaよりも小さいと被膜強度が低下し、傷が付き易くなるため好ましくない。
したがって、ガスバリア層の弾性率を1.0〜2.5GPaの範囲内の値とすることが好ましく、1.0〜2.4GPaの範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜2.0GPaの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ガスバリア層(表層)の弾性率については、便宜的に、基材(PETフィルム等)を含んだ形態において、実施例1に示す条件で測定することができる。
(5)表層
また、ガスバリア層10が、図1に示すように、少なくともケイ素、酸素、および窒素を含む表層11を含んでおり、当該表層におけるXPSで測定されるこれら元素の全体量に対して、ケイ素量を15〜30mol%の範囲内の値、酸素量を45〜70mol%の範囲内の値、炭素量を5〜30mol%の範囲内の値、および窒素量を1.5〜4.0mol%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように所定組成の表層を含むガスバリア層とすることによって、さらに優れたガスバリア性が得られるとともに、良好な透明性についても得ることができるためである。
なお、ガスバリア層10の表層11としては、表面から約10〜30nmの範囲の領域を意味するが、代表的には、表面から約10nmの深さ位置における元素量を問題とすることができる。
したがって、例えば、基材とは反対側におけるガスバリア層10の表面から10nmの深さ位置における元素量をXPSで測定した値を、ガスバリア層10の表層における元素組成比として算出することができる。
そして、ガスバリア層形成用材料にポリシラザン化合物を用いていることによって、このような表層を生成することが容易となる。
(6)プラズマイオン注入処理
本発明のガスバリア層は、前述のポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマとを含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層にプラズマイオン注入処理して得られものである。
プラズマイオン注入処理を施すことで、ガスバリア層形成用材料中のポリシラザンがセラミック化し、優れたガスバリア性が発現する。
プラズマイオン注入処理については、詳細には後述の第2の実施形態で説明する。
3.ガスバリア構造体
(1)水蒸気透過率(WVTR)
また、ガスバリア構造体の40℃、相対湿度90%の雰囲気化での水蒸気透過率を0.3g/(m2・day)以下の値とすることが好ましい。
この理由は、このような水蒸気透過率の値とすることによって、優れたガスバリア性が定量的に得られるためである。
但し、ガスバリア構造体の水蒸気透過率の値が過度に低くなると、使用可能な材料が過度に制限されたり、製造上の歩留まりが著しく低下したりする。
したがって、ガスバリア構造体の水蒸気透過率の値を0.001〜0.3g/(m2・day)の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜0.2g/(m2・day)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ガスバリア構造体の水蒸気透過率としては、公知の方法で測定することができ、例えば、実施例1に示す方法で測定することができる。
(2)その他の層
本発明のガスバリア構造体は、他の層を含んでいてもよい。他の層は、単層でもよく複数層であっても構わない。また、その他の層は、ガスバリア構造体の両面に形成されていてもよく、ガスバリア層側あるいは基材側の片面に形成されていてもよい。
(i)無機化合物層
無機化合物層は、無機化合物の一種又は二種以上の組み合わせからなる層であるが、かかる無機化合物層を、ガスバリア層と併設することが好ましい。
ここで、無機化合物層を構成する無機化合物としては、一般的に真空成膜可能で、ガスバリア性を有するもの、例えば無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機硫化物、これらの複合体である無機酸化窒化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
(ii)衝撃吸収層
また、衝撃吸収層は、成形体に衝撃が加わった時に、割れ発生を防止するためのものであるが、かかる衝撃吸収層を、ガスバリア層と併設することが好ましい。
ここで、衝撃吸収層を形成する素材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系材料等を用いることができる。
(iii)導電体層
また、導電体層は、ガスバリア層に対して、通常、面抵抗として、1〜1000Ω/□の導電性や帯電防止性等を付与するための層であるが、かかる導電体層を、ガスバリア層と併設することが好ましい。
ここで、導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。より具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料等が挙げられる。
(iv)プライマー層
プライマー層は、基材の表面と、ガスバリア層との層間密着性を高める役割を果たす。すなわち、このようなプライマー層を設けることにより、層間密着性及び表面平滑性に極めて優れるガスバリア層を得ることができる。
ここで、プライマー層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物、光重合性モノマ及び/又は光重合性プレポリマからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む光重合性組成物、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類、アルキルチタネート、エチレンイミン等が挙げられる。これらの材料は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、得られたプライマー層に、後述する、イオン注入層にイオンを注入する方法と同様な方法によりイオン注入を行ってもよい。この理由は、プライマー層に対してもイオン注入を行うことにより、より優れたガスバリア構造体を得ることができるためである。
本発明のガスバリア構造体は、柔軟性や被膜強度性等に優れているので、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパー等のディスプレイ部材、太陽電池用バックシート、太陽電池用ブロントシート等のフレキシブル電子デバイス用の部材として好適に用いることができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、基材上に、ガスバリア層形成用材料からなるガスバリア層を備えてなるガスバリア構造体の形成方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とするガスバリア構造体の形成方法である。
(1)ポリシラザン化合物と、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つである水酸基含有ポリマおよびエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を、ガスバリア層形成用材料の全体量に対して、極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値で含むガスバリア層形成用材料からなる層を、基材上に積層する積層工程
(2)ガスバリア層形成用材料からなる層にプラズマイオン注入して、ガスバリア層とするイオン注入工程
1.工程(1):積層工程
工程(1)は、図2(a)に示すように、ガスバリア性を所望する基材12を準備し、図2(b)に示すように、ガスバリア層形成用材料からなる層10aを、準備した基材12の上に形成する工程である。
ここで、ガスバリア層形成用材料からなる層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリシラザン化合物と、極性ポリマの少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する塗布液を、基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
塗布液を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェット法、スピンコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
また、得られた塗膜の乾燥は、80〜150℃で、数十秒から数十分行う(図2(c))。
さらに、使用するポリシラザン化合物、極性ポリマ、および基材については、上記のガスバリア構造体において記載した内容と同様とすることができる。
また、任意工程であるが、ガスバリア層形成用材料からなる層10aが形成された基材12を、所定条件でシーズニング処理することが好ましい。
ここで、シーズニング処理の条件として、温度15〜35℃、処理時間24〜480時間の処理条件であることが好ましく、温度20〜30℃、処理時間48〜240時間の処理条件であることがより好ましい。
このように、シーズニング処理を行うことで、ガスバリア層形成用材料からなる層中におけるポリシラザン化合物のセラミック化が進行し、優れたガスバリア性を得ることができるためである。
3.工程(2):プラズマイオン注入工程
工程(2)は、図2(d)に示すように、ガスバリア層形成用材料からなる層10に対して、プラズマイオン注入法を行い、矢印Pで表わされるように、外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを注入し、最終的に、図2(e)に示すように、所定のガスバリア層10を備えたガスバリア構造体50とする工程である。
より具体的には、プラズマイオン注入法は、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、負の高電圧パルスを印加することにより、ガスバリア層形成用材料からなる層の表面に、プラズマ中のイオン(陽イオン)を注入するのが基本方法である。
なお、図2(e)中、ガスバリア層10中に形成された表層11の形成位置が理解されやすいように、これらの境界領域を点線で表わしてある。
また、プラズマイオン注入法としては、外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ガスバリア層形成用材料からなる層に対して注入する方法、または外部電電界を用いることなく、ガスバリア層形成用材料からなる層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ガスバリア層形成用材料からなる層に注入する方法が好ましい。
また、ガスバリア層形成用材料からなる層にプラズマ中のイオンを注入する際には、公知のプラズマイオン注入装置を用いることができる。
したがって、一例であるが、図3に示すプラズマイオン注入装置200を用いることができる。
すなわち、かかるプラズマイオン注入装置200は、基本的に、真空チャンバー211と、マイクロ波電源(図示せず)と、マグネットコイル(図示せず)と、直流印加装置(パルス電源)208と、を備えている。
そして、真空チャンバー211は、その内部の所定位置に配置された、基材12上にガスバリア層形成用材料からなる層10が形成された基材フィルム16(以下、単に基材フィルム16ということがある)に対して、ガス導入口203から導入した所定ガスに由来したイオン注入を行うための容器である。
また、直流印加装置208は、オシロスコープ207が取り付けられた直流電源であって、基材である基材フィルム16に、高電圧パルスを印加するためのパルス電源である。
そのため、直流印加装置208は、基材である基材フィルム16がその上に配置された導体202に電気的に接続されている。
よって、このように構成されたプラズマイオン注入装置200によれば、マイクロ波電源(プラズマ放電用電極)およびマグネットコイルを駆動することによって、導体202および基材フィルム16の周囲で所定ガスのプラズマが発生する。
次いで、所定時間経過後、マイクロ波電源およびマグネットコイルの駆動が停止されるとともに、直流印加装置208が駆動され、所定の高電圧パルス(負電圧)が、高電圧導入端子210および導体202を介して、被処理物16に印加されることになる。
したがって、かかる高電圧パルス(負電圧)の印加によって、プラズマ中のイオン種(窒素イオン等)が誘引され、ガスバリア層形成用材料からなる層に注入することによって、少なくとも表面にガスバリア層を備えたガスバリア構造体とすることができる。
なお、図示しないものの、連続的にプラズマイオンを注入するための注入装置においては、被処理物16を、繰り返し、搬送、巻き取りを行い、順次、プラズマイオン注入することができる。
そして、上述した真空チャンバーに導入され、ひいては、ポリシラザン化合物に注入されるイオン種については特に制限されるものではないが、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;シラン(SiH)又は有機ケイ素化合物のイオン等が挙げられる。
これらの中でも、より簡便に注入することができ、優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
そして、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)、窒素(N)、ネオン(Ne)、および酸素(O)であれば、それぞれ深さ方向厚み(nm)に対するモンテカルロシミュレーション(乱数を用い行う数値解析)で算出されたイオン数のばらつきが小さく、所定深さ位置にイオン注入ができることが判明しており、注入されるイオン種として好適である。
なお、ポリシラザン化合物に注入されるイオン種、すなわち、イオン注入用ガスは、プラズマ生成ガスとしての機能も有することになる。
また、イオン注入する際の真空チャンバーの圧力、すなわち、プラズマイオン注入圧力を0.01〜1Paの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるプラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、優れた耐折り曲げ性やガスバリア性を兼ね備えたガスバリア層を効率よく形成することができるためである。
したがって、プラズマイオン注入圧力を0.01〜1Paの範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜0.8Paの範囲内の値とすることがより好ましく、0.03〜0.6Paの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、イオン注入する際の印加電圧(高電圧パルス/負電圧)を−1kV〜−50kVの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となる場合があって、所望のガスバリア性が得られない場合があるためである。
一方、印加電圧が−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時に被処理物が帯電し、また基材12やガスバリア層形成用材料からなる層10aへの着色等の不具合が生じる場合があって、所望のガスバリア性が得られない場合があるためである。
したがって、イオン注入する際の印加電圧を−1kV〜−50kVの範囲内の値とすることが好ましく、−1kV〜−15kVの範囲内の値とすることがより好ましく、−5kV〜−8kVの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、特段の理由なく以下の実施例の記載に制限されるものではない。
[実施例1]
1.ガスバリア構造体の製造
(1)工程1:ガスバリア層形成用材料からなる層形成工程
基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、「PET38 T−100」、厚さ38μm、以下、「PETフィルム」という。)を準備した。
次いで、ポリシラザン化合物としてのペルヒドロポリシラザン(クラリアントジャパン社製、「アクアミカNL110−20」、表中、PHPSと表記する。)100重量部に対して、ポリビニルアルコール系樹脂「ゴーセノールNH−26」(日本合成化学社製)を0.5MのNaOH水溶液中で加水分解し、得られた樹脂(鹸化度20%、表中、PVA1と表記する。)を50重量部の割合で含んでなるガスバリア層形成用材料(固形分濃度:10重量%)を準備した。
次いで、PETフィルム上に、ガスバリア層形成用材料をロール塗布し、さらに、120℃、2分間加熱して、厚さ150nm(膜厚)のガスバリア層形成用材料からなる層を形成した。
(2)工程2:プラズマイオン注入工程
次いで、図3に示すプラズマイオン注入装置(RF電源:日本電子(株)製、RF56000、高電圧パルス電源:栗田製作所(株)、PV−3−HSHV−0835)を用いて、得られたガスバリア層形成用材料からなる層に対し、下記条件にてプラズマイオン注入を行い、実施例1のガスバリア層(厚さ:50nm)を備えたガスバリア構造体とした。
チャンバー内圧:0.2Pa
プラズマ生成ガス:アルゴン
ガス流量:100sccm
RF出力:1000W
RF周波数:1000Hz
RFパルス幅:50μsec
RF delay:25nsec
DC電圧:−10kV
DC周波数:1000Hz
DCパルス幅:5μsec
DC delay:50μsec
Duty比:0.5%
処理時間:300sec
2.ガスバリア構造体の測定
得られたガスバリア構造体につき、以下の測定を行った。
(1)弾性率測定
得られたガスバリア構造体につき、23℃における弾性率(GPa)を、ナノインデンター(米国MTS社製、「Nanoindentor DCM」)にて測定し、ガスバリア層の表面から10nmの深さ位置の弾性率を求めた。
圧子形:三角錐
振動周波数:45Hz
ドリフト速度:0.5nm/sec.
試料ポワソン比:0.25
表面検出しきい値:5%
(2)XPS測定
得られたガスバリア構造体につき、ガスバリア層(表層)における原子の存在割合の測定は、X線光電子分光分析装置(アルバックファイ社製、Quantum2000、XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)を使用して下記に示す測定条件で行った。
X線源:AlKα
X線ビーム径:100μm
電力値:25W
電圧:15kV
取り出し角度:45°
真空度:5.0×10−8Pa
その結果、ガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、それぞれ、ケイ素22%、酸素55%、炭素21%、窒素2%であった。
3.ガスバリア構造体の評価
得られたガスバリア層を備えたガスバリア構造体につき、以下の評価を行った。
(1)柔軟性の評価
得られたガスバリア構造体につき、ガスバリア層が外側になるようにして、中央部分で半分に折り曲げて、その状態のガスバリア構造体を、ラミネーター(フジプラ社製、「LAMIPACKER LPC1502」)の2本のロール間を、ラミネート速度5m/min、温度23℃の条件で2回通過させた。
次いで、ガスバリア構造体におけるガスバリア層が内側になるようにして、中央部分で半分に折り曲げ、その状態のガスバリア構造体を、上記ラミネーターの2本ロールの間を、ラミネート速度5m/min、温度23℃の条件で、さらに1回通過させた。
その後、折り曲げた部分を、顕微鏡観察(100倍)して、ガスバリア層のクラック発生の有無を目視観察し、柔軟性を評価した。
(2)水蒸気透過率(WVTR)
得られたガスバリア構造体につき、水蒸気透過率測定装置(MOCON(株)製、AQUATRAN)を用いて、40℃、相対湿度90%の条件下における水蒸気透過率を測定した。
なお、上記耐クラック性評価における曲げ試験前後において、それぞれ水蒸気透過率を測定し、WVTR1およびWVTR2とした。
ガスバリア性の評価の指標として、WVTR1及びWVTR2が共に0.2g/m2/day以上の場合を×、WVTR1及びWVTR2のどちらか一方が0.2g/m2/day以下の場合を○、WVTR1及びWVTR2が共に0.2g/m2/day以下の場合を◎と評価した。
[実施例2〜4]
実施例2〜4では、所定の極性ポリマとして、鹸化度が異なるポリビニルアルコール樹脂(それぞれゴーセノールL-5407、ゴーセノールL-7514、ゴーセノールLL-02(全て日本合成化学社製、鹸化度30%、40%、50%、表中、PVA2〜4と表記する。))をそれぞれ用いたほかは、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、実施例2で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素22%、酸素55%、炭素21%、窒素2%であった。
また、実施例3で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素22%、酸素55%、炭素21%、窒素2%であった。
また、実施例4で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素22%、酸素55%、炭素21%、窒素2%であった。
[実施例5]
実施例5では、所定の極性ポリマとして、鹸化度が異なるポリビニルアルコール樹脂ゴーセノールKP-08R(日本合成化学社製、鹸化度60%、表中、PVA5と表記する)を0.5M NaOH水溶液中で加水分解し、得られた樹脂を用いるとともに、PVA5の配合量を、ポリシラザン化合物100重量部に対して、60重量部の割合としたガスバリア層形成用材料を用いたほかは、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、ガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素22%、酸素63%、炭素13%、窒素2%であった。
[実施例6]
実施例6では、所定の極性ポリマとして、ポリビニルアセタール樹脂エスレックBH-6(積水化学社製、水酸基含有率30mol%、表中、PVAC1と表記する。)を用いたほかは、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、ガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素22%、酸素52%、炭素24%、窒素2%であった。
[実施例7〜10]
実施例7〜10では、所定の極性ポリマとして、鹸化度が異なるポリビニルアルコール樹脂ゴーセノールL-5407(日本合成化学社製、鹸化度30%、表中、PVA2と表記する。)を用いるとともに、当該PVA2の配合割合を、ポリシラザン化合物100重量部に対して、それぞれ20、40、60、80重量部の割合としたガスバリア層形成用材料を用いたほかは、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、実施例7で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素27%、酸素61%、炭素9.3%、窒素2.7%であった。
また、実施例8で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素23%、酸素63%、炭素11.7%、窒素2.3%であった。
また、実施例9で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素20%、酸素64%、炭素14%、窒素2%であった。
また、実施例10で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素18%、酸素65%、炭素15.2%、窒素1.8%であった。
[比較例1]
比較例1では、ポリシラザン化合物を使用せず、所定の極性ポリマのみを使用して、当該極性ポリマとして、鹸化度が20%のポリビニルアルコール樹脂「ゴーセノールNH-26」(日本合成化学社製)を0.5M NaOH水溶液中で加水分解し、得られた樹脂(表中、PVA1と表記する。)を用いた以外は、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、ケイ素0%、酸素33%、炭素67%、窒素0%であった。
[比較例2〜4]
比較例2〜4では、ポリシラザン化合物を使用せず、所定の極性ポリマのみを使用して、当該極性ポリマとして、さらに鹸化度が異なるポリビニルアルコール樹脂ゴーセノールL-5407、ゴーセノールL-7514、ゴーセノールLL-02(全て日本合成化学、鹸化度30、40、50%、表中、PVA2〜4と表記する。)をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定されるケイ素、酸素、炭素および窒素は、比較例2では、ケイ素0%、酸素33%、炭素67%、窒素0%、比較例3では、ケイ素0%、酸素33%、炭素67%、窒素0%、比較例4では、ケイ素0%、酸素33%、炭素67%、窒素0%であった。
[比較例5]
比較例5では、ガスバリア層として、窒化シリコン材料からなるSiN膜をスパッタリング法で形成した以外は、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるケイ素、酸素、および窒素はそれぞれ、ケイ素45%、酸素0%、炭素0%、窒素55%であった。
[比較例6]
比較例6では、ガスバリア層形成用材料として、極性ポリマを用いずに、ポリシラザン化合物(PHPS)のみを用いたほかは、実施例1と同様に、ガスバリア構造体等を作成し、評価した。
なお、得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるケイ素、酸素、および窒素はそれぞれ、ケイ素30%、酸素62%、炭素5%、窒素3%であった。
Figure 0005408818
[実施例11〜12]
実施例11〜12では、所定の極性ポリマとして、アクリル酸の共重合比が異なるエチレン−アクリル酸共重合体ニュクレルAN4214C(デュポン社製、アクリル酸含有比4重量%、表中、EAA1と表記する。)および、エチレン−アクリル酸共重合体ニュクレルN1560C(デュポン社製、アクリル酸含有比12重量%、表中、EAA2と表記する。)をそれぞれ用いたほかは、実施例1と同様に、ガスバリア構造体を作成し、評価した。それぞれ得られた評価結果を、表2に示す。
なお、実施例11で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定される元素量は、ケイ素21%、酸素50%、炭素27%、および窒素2%であった。
同様に、実施例12で得られたガスバリア層の表面から10nmの深さ位置におけるXPSで測定される元素量は、ケイ素21%、酸素53%、炭素24%、および窒素2%であった。
Figure 0005408818
以上、詳述したように、本発明によれば、ガスバリア層が、所定極性ポリマおよびポリシラザン化合物を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層に対して、プラズマイオン注入処理してあることによって、柔軟性が高まり、折り曲げた際のガスバリア層クラックの発生を抑えることが出来た。また、水蒸気透過率もほとんど0.2g/m/day以下であり、ガスバリア性に優れていた。
しかも、本発明のガスバリア構造体の製造方法によれば、柔軟性や被膜強度がそれぞれ良好なガスバリア層を備えたガスバリア構造体を、安定的に製造することもできるようになった。
よって、本発明のガスバリア構造体は、所定のガスバリア性や柔軟性等が所望される電気製品、電子部品、画像表示装置(有機エレクトロルミネッセンス素子、液晶表示装置等)、太陽電池(太陽電池用バックシート)、透明導電材料、PETボトル、包装容器、ガラス容器等の各種用途において有効に使用されることが期待される。
10a:ガスバリア層形成用材料からなる層
10:ガスバリア層
11:表層
12:基材
50:ガスバリア構造体
200:プラズマイオン注入装置
16:ガスバリア層形成用材料からなる層10を形成した基材12(被処理物)
202:導体
203:ガス導入口
207:オシロスコープ
208:直流印加装置(パルス電源)
210:高電圧導入端子
211:真空チャンバー

Claims (8)

  1. 基材上に、ガスバリア層を備えたガスバリア構造体であって、
    前記ガスバリア層が、ポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマおよびカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を含んでなるガスバリア層形成用材料からなる層に、プラズマイオン注入処理してあり、
    前記水酸基含有ポリマが、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つであって、
    前記カルボキシル基含有ポリマが、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であって、
    前記ガスバリア層形成用材料の全体量に対して、前記極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値とすることを特徴とするガスバリア構造体。
  2. 前記ガスバリア層が、膜厚10〜30nmの少なくともケイ素、酸素、および窒素を含む表層を含んでおり、当該表層におけるXPSで測定されるこれら元素の全体量に対して、ケイ素量を15〜30mol%の範囲内の値、酸素量を45〜70mol%の範囲内の値、炭素量を5〜30mol%の範囲内の値、および窒素量を1.5〜4mol%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア構造体。
  3. 前記ガスバリア層における弾性率を1〜2.5GPaの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア構造体。
  4. 前記ガスバリア層が、前記カルボキシル基含有ポリマとして、前記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア構造体。
  5. 前記ポリビニルアルコールの鹸化度が10〜60%の範囲内の値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア構造体。
  6. 前記ガスバリア構造体をディスプレイ部材またはフレキシブル電子デバイスに用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスバリア構造体。
  7. 基材上に、ガスバリア層を備えてなるガスバリア構造体の形成方法であって、
    下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とするガスバリア構造体の形成方法。
    (1)ポリシラザン化合物と、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つである水酸基含有ポリマおよびエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であるカルボキシル基含有ポリマ、あるいはいずれか一方の極性ポリマと、を、前記ガスバリア層形成用材料の全体量に対して、前記極性ポリマの配合量を10〜50重量%の範囲内の値で含むガスバリア層形成用材料からなる層を、基材上に積層する積層工程
    (2)前記ガスバリア層形成用材料からなる層にプラズマイオン注入して、ガスバリア層とするイオン注入工程
  8. 前記ガスバリア層の膜厚を50〜10,000nmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項7に記載のガスバリア構造体の形成方法。
JP2013528158A 2012-02-21 2013-02-06 ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法 Active JP5408818B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013528158A JP5408818B1 (ja) 2012-02-21 2013-02-06 ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012035232 2012-02-21
JP2012035232 2012-02-21
PCT/JP2013/052747 WO2013125351A1 (ja) 2012-02-21 2013-02-06 ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法
JP2013528158A JP5408818B1 (ja) 2012-02-21 2013-02-06 ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5408818B1 true JP5408818B1 (ja) 2014-02-05
JPWO2013125351A1 JPWO2013125351A1 (ja) 2015-07-30

Family

ID=49005539

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013528158A Active JP5408818B1 (ja) 2012-02-21 2013-02-06 ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP5408818B1 (ja)
TW (1) TW201334967A (ja)
WO (1) WO2013125351A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI658943B (zh) 2014-06-04 2019-05-11 日商琳得科股份有限公司 氣阻性層積體及其製造方法、電子裝置用元件以及電子裝置
DE102014117764A1 (de) * 2014-12-03 2016-06-09 Osram Opto Semiconductors Gmbh Strahlungsemittierendes optoelektronisches Halbleiterbauteil und Verfahren zu dessen Herstellung
KR102330884B1 (ko) * 2016-03-29 2021-11-25 린텍 가부시키가이샤 가스 배리어성 적층체, 전자 디바이스용 부재 및 전자 디바이스

Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07305029A (ja) * 1994-05-09 1995-11-21 Tonen Corp コーティング用組成物
JPH11342566A (ja) * 1998-05-29 1999-12-14 Asahi Glass Co Ltd 透明被覆成形品およびその製造方法
JP2000153596A (ja) * 1998-09-14 2000-06-06 Sumitomo Chem Co Ltd フィルム積層体およびその製造方法
JP2000153597A (ja) * 1998-09-14 2000-06-06 Sumitomo Chem Co Ltd フィルム積層体およびその製造方法
JP2008107499A (ja) * 2006-10-24 2008-05-08 Fujifilm Corp 偏光板及び液晶表示装置
JP2009169132A (ja) * 2008-01-17 2009-07-30 Sony Corp 偏光板の製造方法及び表示装置
JP2009252574A (ja) * 2008-04-08 2009-10-29 Toyota Industries Corp El装置
WO2010107018A1 (ja) * 2009-03-17 2010-09-23 リンテック株式会社 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
WO2011122497A1 (ja) * 2010-03-31 2011-10-06 リンテック株式会社 透明導電性フィルムおよびその製造方法並びに透明導電性フィルムを用いた電子デバイス
WO2011122547A1 (ja) * 2010-03-29 2011-10-06 リンテック株式会社 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09175868A (ja) * 1995-12-27 1997-07-08 Tonen Corp ハードコート膜を被覆したポリカーボネート製品及びその製法
JP4574124B2 (ja) * 2003-05-01 2010-11-04 Azエレクトロニックマテリアルズ株式会社 コーティング組成物、多孔質シリカ質膜、多孔質シリカ質膜の製造方法及び半導体装置
JP4501451B2 (ja) * 2004-02-18 2010-07-14 株式会社豊田自動織機 塗料組成物、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラス
JP2006321052A (ja) * 2005-05-17 2006-11-30 Kuraray Co Ltd ガスバリア性積層体の製造方法
CN102159395B (zh) * 2008-08-19 2014-09-10 琳得科株式会社 成型制品、其制备方法、电子设备构件以及电子设备

Patent Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07305029A (ja) * 1994-05-09 1995-11-21 Tonen Corp コーティング用組成物
JPH11342566A (ja) * 1998-05-29 1999-12-14 Asahi Glass Co Ltd 透明被覆成形品およびその製造方法
JP2000153596A (ja) * 1998-09-14 2000-06-06 Sumitomo Chem Co Ltd フィルム積層体およびその製造方法
JP2000153597A (ja) * 1998-09-14 2000-06-06 Sumitomo Chem Co Ltd フィルム積層体およびその製造方法
JP2008107499A (ja) * 2006-10-24 2008-05-08 Fujifilm Corp 偏光板及び液晶表示装置
JP2009169132A (ja) * 2008-01-17 2009-07-30 Sony Corp 偏光板の製造方法及び表示装置
JP2009252574A (ja) * 2008-04-08 2009-10-29 Toyota Industries Corp El装置
WO2010107018A1 (ja) * 2009-03-17 2010-09-23 リンテック株式会社 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
WO2011122547A1 (ja) * 2010-03-29 2011-10-06 リンテック株式会社 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
WO2011122497A1 (ja) * 2010-03-31 2011-10-06 リンテック株式会社 透明導電性フィルムおよびその製造方法並びに透明導電性フィルムを用いた電子デバイス

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2013125351A1 (ja) 2015-07-30
TW201334967A (zh) 2013-09-01
WO2013125351A1 (ja) 2013-08-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5749344B2 (ja) 変性ポリシラザンフィルム、および、ガスバリアフィルムの製造方法
KR101382429B1 (ko) 투명 도전성 필름 및 그 제조 방법 및 투명 도전성 필름을 사용한 전자 디바이스
JP5326052B2 (ja) ガスバリアフィルム、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
JP4956692B1 (ja) 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
EP2832539B1 (en) Gas barrier film laminate, member for electronic device, and electronic device
JP5808747B2 (ja) 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
TWI618632B (zh) 氣體阻隔性層積體、電子裝置用構件及電子裝置
JP5704610B2 (ja) 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材および電子デバイス
JP5389255B2 (ja) 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
CN113226746B (zh) 阻气性层叠体
JP5408818B1 (ja) ガスバリア構造体、およびガスバリア構造体の形成方法
JP5697230B2 (ja) 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
JP5750441B2 (ja) 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス
CN113226750B (zh) 阻气性层叠体
WO2013175910A1 (ja) ガスバリア積層体、およびガスバリア積層体の製造方法
WO2011142454A1 (ja) 透明導電性フィルムおよびその製造方法並びに透明導電性フィルムを用いた電子デバイス
WO2013175911A1 (ja) ガスバリアシートおよびガスバリアシートの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131030

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131101

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5408818

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250