JP5408704B2 - 金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含有する感光性組成物 - Google Patents
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Description
これまでに、金属ナノ粒子をガラスや結晶、ポリマー等の光学的に透明なマトリクス中に分散させることにより、3次の非線形光学特性を発現させた種々の材料が報告されている。
また、金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴周波数付近での局所電場の増強に起因する3次の光非線形性の増大効果を利用して、金、銀、銅などの金属ナノ粒子を無機材料マトリックス中に分散し、超高速光スイッチなどの純光学型デバイス応用を目指した報告がなされている(非特許文献1)。
なお、光スイッチ若しくは光変調器デバイス向けの非線形光学応答を示すポリマーに非線形効果を増強する目的で金属ナノ粒子を分散させた複合材料(特許文献4)が提案されているが、これはポリマー中に一様に分散させたものであって、金属ナノ粒子の回折格子は作製されていない。
なお、ここで非線形ブラッグ回折とは、物質に光を照射した際、その物質の吸収係数や屈折率などの光学特性が光の強度に応じて変化(所謂、非線形光学効果)する現象を意味する。
第2観点として、(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体含む非線形光学素子作成用の感光性組成物。
第3観点として、前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が、500乃至5000000の重量平均分子量を有しかつジチオカルバメート基を有する分岐状及び/又は線状高分子が、金属ナノ粒子に付着し又は配位して形成されてなる複合体である、第1観点又は第2観点記載の感光性組成物。
第4観点として、前記金属ナノ粒子が、金、銀、白金及び銅よりなる群より選択される少なくとも1種のナノ粒子である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第5観点として、前記金属ナノ粒子の平均粒径が1nm乃至10nmである、第1観点
乃至第4観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第6観点として、前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の平均粒径が3nm乃至100nmである、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第7観点として、前記感光性組成物を反応条件下においたとき、生成した前記(a)重合性化合物の重合体中に前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が粒子形態で分散しているものとなる、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第8観点として、前記(a)重合性化合物の重合体と(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の合計体積に占める(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の体積割合が、3体積%乃至60体積%である、第7観点記載の感光性組成物。
第9観点として、前記ジチオカルバメート基含有高分子が式(1):
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。A1は式(2)または式(3):
の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3又はY4は、それぞ
れ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。)で表される分岐状高分子である、第1観点乃至第8観点のうちいすれか一項に記載の感光性組成物。
第10観点として、前記ジチオカルバメート基含有高分子が式(4):
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。A1は式(5)または式(6):
の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3又はY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す
。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。)で表される線状高分子である第1観点乃至第8観点のうちいすれか一項に記載の感光性組成物。
第11観点として、前記(a)重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第12観点として、前記(a)重合性化合物が、カチオン重合性の部位を有する化合物であり、前記(b)光重合開始剤が光酸発生剤である、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第13観点として、第1観点乃至第12観点記載の感光性組成物を露光して得られる非線形光学効果を有する硬化物。
第14観点として、第1観点乃至第12観点記載の感光性組成物からなる薄膜をパターン露光し、該組成物の構成成分の空間分布が露光前のものとは変化している非線形光学薄膜。
第15観点として、第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形回折格子。
第16観点として、第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形光学効果を有するホログラム。
そして、本発明の感光性組成物にあっては、干渉露光などの光のパターンを用いて重合性化合物(感光性モノマー)を重合させることにより、金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が空間的な密度分布をもって存在する構造を有する回折格子又はホログラムを任意且つ容易に作成することができる。
そして、このような非線形光学特性を持つ(透過型又は反射型)回折格子又はホログラムは、光リミッター素子や超高速光スイッチング、光相安定(多安定)性、連続光から光パルス列や不規則パルス光の発生など、入出力に光のみを使う全光学型の光機能素子等の用途において使用することができる。
本発明における重合性化合物は、後述する(b)光重合開始剤の作用によって重合する重合性の部位を分子内に一個以上、好ましくは一個乃至六個有する化合物であれば特に制限はない。
前記重合性の部位を有する化合物としては、ラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合を有する化合物、あるいは、カチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造、ビニルチオエーテル構造、エポキシ環やオキセタン環等の環状エーテル構造等を有する化合物を挙げることができる。
なお、本発明における「重合性化合物」の意味するところは、所謂高分子物質でない化合物である。従って、狭義の単量体化合物だけでなく、二量体、三量体、オリゴマーや反応性高分子をも包含するものである。
以下、重合性化合物の具体例を挙げるが、これら化合物に限定されるものではない。
この中でも好ましいものとして、不飽和カルボン酸、また、上記不飽和カルボン酸との
各種エステル化合物として、炭素原子数2乃至6のオキシアルキレン基を3乃至20個有するエステル化合物が挙げられる。ここで炭素原子数2乃至6のオキシアルキレン基とはすなわち、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等であり、これらの基はヒドロキシ基及びハロゲン等で置換されていても良い。
ノールFジアクリレート、エトキシ−プロポキシ変性ビスフェノールFジアクリレート等が挙げられる。その他の芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物としては、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、p−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)キシリレン、及びピロガロールトリアクリレート等及びこれらのエトキシ、プロポキシ変性物が挙げられる。また、これらのアクリル酸エステル化合物のアクリレート部分をメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル化合物、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル化合物、クロトネートに代えたクロトン酸エステル化合物、及びマレエートに代えたマレイン酸エステル化合物等も挙げられる。
本発明においては、エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、特にアクリル酸エステル化合物またはメタクリル酸エステル化合物が特に好ましい。
これらのエチレン性不飽和結合を有する化合物は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレン−ジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−グリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、及びジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル等を挙げることができる。
本発明における(b)光重合開始剤としては、後述するパターン露光によって前記(a)重合性化合物の重合を開始することができる機能を有する化合物であれば特に限定はない。
また、前記(a)重合性化合物として前記のカチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造、エポキシ環またはオキセタン環等を有する化合物を使用する場合、光重合開始剤としては干渉露光時にルイス酸あるいはブレンステッド酸を生成する光酸発生剤が好ましい。
ンタジエニル)−チタン−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−チタン−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)、及びジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)等を挙げることができる。
2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム、及び3,3'−ジニトロフェニルヨードニウム等のヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、及びヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
本発明に用いられる金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体は、ジチオカルバメート基含有高分子化合物が、その有するジチオカルバメート基の作用により、金属ナノ粒子に接触又は近接した状態で両者が共存し、粒子状の形態を為すものであり、言い換えると、ジチオカルバメート基含有高分子化合物のジチオカルバメート基が金属ナノ粒子に付着又は配位した構造を有する複合体であると表現される。
従って、本発明において「金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体」には、上述のように金属ナノ粒子と高分子化合物が結合して一つの複合体を形成しているものだけでなく、金属ナノ粒子とジチオカルバメート基含有高分子化合物が結合部分を形成することなく、夫々独立して存在しているものも含まれていてもよい。
該複合体は、ジチオカルバメート基を有する高分子を溶解した溶液中で、金属塩の水溶液及び還元剤を添加して、金属イオンを還元することによって得られる。
銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金及び銅が好ましい。
金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、塩化第一白金、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、塩化イリジウム、酢酸イリジウム等が挙げられる。
上記還元剤の添加量は、上記金属イオン1molに対して1乃至50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5乃至10molである。
1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、また、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。また、A1は式(2)又は式(3)で表される構造を表す。式(2)及び式(3
)中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の
直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
また、本発明において、金属ナノ粒子と複合体を形成するジチオカルバメート基を有する(線状)高分子としては、例えば、上記式(4)で示すものが挙げられる。式(4)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素原
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、また、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。また、A1は式(5)又は式(6)で表される構造を表す。式(5)及び式
(6)中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至3
0の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
20のアルキル基が好ましい。
また、金属ナノ粒子の平均粒子径は1乃至10nmが好ましく、さらには1乃至5nmが好ましい。
本発明の感光性組成物を用いて薄膜又は回折格子等の光学素子を作るには、(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物に、必要に応じて、増感剤及びバインダ樹脂とともに混合し、このまま無溶剤で支持体上に塗布するか、これらの混合物に溶剤または添加剤を加えて混合してもよく、これを支持体上に塗布、乾燥して感光層を形成する。感光層の厚さとしては、例えば1乃至1000μmであり、または10乃至500μmであり、または15乃至200μmである。
続いて、感光層上に支持体、あるいは酸素遮断のための保護層を設けることもできる。
これら支持体や保護層は、本発明の感光性組成物で構成される感光層が露光重合することにより発現される非線形光学効果を利用するために、光を透過させる場合には透明な物質である必要がある。
パターン露光の方法としては、パターンを形成することのできる露光方法であれば特に制限はなく、例えば適当なマスクを通して露光するフォトマスク露光及びフェーズマスク露光、又は干渉露光等の方法が挙げられるが、非線形回折格子又はホログラムを得るには干渉露光が好適である。干渉露光の光源としては、一般に干渉性の高いレーザー光であり、前記(b)光重合開始剤に高感度であればよく、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、Nd:YAGレーザー(532nm)、Nd:YVO4レーザー(532nm)、In
GaNレーザー(405nm)、He−Cdレーザー(325nm、442nm)等が使用される。
したがって、該感光性組成物を露光すると、高い屈折率や高速光学応答などの非線形光学効果を有する硬化物が得られる。
そして、例えば、マスクを通して露光が行われると、露光された部分において重合性化合物の重合反応が起こり重合体となる。その結果、露光部分において重合性化合物の化学ポテンシャルが減少し、それを補うように非露光部から露光部へ重合性化合物の移動が起こる。
一方、露光部では重合性化合物の減少とともに、光重合に関与しない金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の化学ポテンシャルが増加するため、それを抑える
ように金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体は、露光部から非露光部への移動をする。
こうした各成分の移動は、光重合が完了するまで本質的に継続する。結果として、金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の空間分布は固定され、露光部と非露光部での成分と密度差によってパターンが形成される。
すなわち、本発明の感光性組成物より形成されるパターンは、パターン露光によって感光性組成物中の各成分の相互拡散が起こった結果、生じた各成分の空間分布の差を利用して形成されたものである。
2Lの反応フラスコに、クロロメチルスチレン[セイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]120g、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]181g、アセトン1400gを仕込み、撹拌下、40℃で1時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエンに再溶解させ、トルエン/水系で分液後、−20℃の冷凍庫内でトルエン相から目的物を再結晶させた。再結晶物を濾過、真空乾燥して、白色粉末の目的物206g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面百値)は100%であった。融点56℃。
300mLの反応フラスコに、参考例1で調製したN,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン108g、トルエン72gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]を点灯し、内部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で12時間行なった。次にこの反応液をメタノール3000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈させた後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン300gに再溶解した後、この溶液をメタノール3000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈させた。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物48gを得た。
得られた目的物(HPS)のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは20,900、分散度Mw/Mnは4.9であった。元素分析の結果は、炭素64.6%、水素7.4%、窒素5.0%、硫黄25.3%であった。熱重量分析より、5%重量減少温度は248℃であった。
下記の式(7)で表される参考例2で合成したジチオカルバメート基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマー(HPS)0.5gをテトラヒドロフラン(THF)溶液200mLに溶解し、これに30mM塩化金酸水溶液6.7mLを加えた。次いで0.1M水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mLを5分間程度かけて滴下した。滴下に伴って溶液は褐色へと変化した。30分間攪拌を行った後、THFを減圧により留去すると水に不溶の黒色の沈殿が析出した。これを濾過してイオン交換水で洗浄した後、THF20mlを加えて溶解し、メタノールにより再沈殿を行った。得られた粉末を回収し、乾燥を行った。
図1のUV−Visスペクトルにおいて、540nm付近に金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が観察されることから、金ナノ粒子−HPS複合体がnmオーダーのサイズで分散していることが確認された。
また、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により金ナノ粒子−HPS複合体中の金含有量を求めた結果、9.0質量%であった。この結果得られたHPSと金ナノ粒子からなる複合体において、金属核(金ナノ粒子)の平均粒径は3.7nmであった。
さらに、乾式密度計(Micromeritics社製、AccuPyc1330)より求められた金ナノ粒子−HPS複合体の密度は、1.5455(g/cm3)であった
。
さらに、図3中の矢印で示された領域をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により元素分析を行った結果を図4に示す。図4の分析結果より、コントラストの強い矢印で示された領域に金原子が多く含まれていることがわかった。また、コントラストの弱い領域で観測されているのは、HPSによるものであった。このことより、HPSと金ナノ粒子が複合体を形成していることが実証された。HPSのジチオカルバメート基が金ナノ粒子に付着又は配位することによって、複合体が形成していると考えられる。
上記参考例3と同様の手順を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体を調製した。
得られた上記粉末(金ナノ粒子−HPS複合体)のTHF溶液のUV−Visスペクトルを図2に示す。
図2のUV−Visスペクトルにおいて、520nm付近に金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が観察されることから、金ナノ粒子−HPS複合体がnmオーダーのサイズで分散していることが確認された。
また、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により金ナノ粒子−HPS複合体中の金含有量を求めた結果、5.3質量%であった。この結果得られたHPSと金ナノ粒子からなる複合体において、金属核(金ナノ粒子)の平均粒径は2.8nmであった
。
さらに、乾式密度計(Micromeritics社製、AccuPyc1330)より求められた金ナノ粒子−HPS複合体の密度は、1.2551(g/cm3)であった
。
1000mLの反応フラスコに、1,2−ジクロロエタン、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]109g、アセトン400gを仕込み、撹拌下、40℃で18時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエンに再溶解させ、トルエン/水系で分液後、トルエンを留去させて白色の粗結晶を得た。この粗結晶をトルエン180g用いて再結晶を行い、目的の白色結晶(EDC2)48g(収率75%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面百値)は99%であった。
100mLの反応フラスコに、クロロメチルスチレン[セイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]20g、トルエン20g、参考例4にて合成したEDC2 0.24gを仕込み、反応系内を窒素置換した。この溶液を100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]から距離5cmの位置に固定し、外部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で5時間行なった。この時の転化率は20%だった。トルエン60gをいれて希釈した後、この反応液を1000gのメタノールを用いて再沈精製を実施し、減圧濾過を行い、白色固体を得た。得られた固体をキシレン10gで再溶解し、メタノール1000gを用いて再沈精製を行い、減圧濾過、真空乾燥を実施して目的のLPS−Clを2.8g得た。得率14%。
100mLの反応フラスコに、比較例5にて合成したLPS−Cl 2.0g、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]4.0g、N−メチルプロパン(NMP)48gを仕込み、撹拌下、40℃で18時間反応させた。反応後、反応溶液からNMPを留去し、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエン20gに再溶解し、トルエン/水で分液後、トルエンを留去して白色固体を得た。この白色固体をトルエン20g用いて溶解し、メタノール600gを用いて再沈精製を行い、減圧濾過、真空乾燥を実施して目的のLPSを3.2g得た。得率91%。
得られたLPSの粘度測定にあたり、LPS 0.6g、トルエン0.9gの均一溶液(40質量%トルエン溶液)を作成し、粘度計(東機産業(株)VISCOMETER TV−22 TV−L)で粘度を測定したところ、該粘度は測定温度20℃で95mPa・sであった。
参考例3における式(7)で表されるスチレン系ハイパーブランチポリマー(HPS)の代わりに、下記の式(8)で表される直鎖状ポリスチレン(LPS)を用いたこと以外は参考例4と同様に複合体の調製を行った。得られた金ナノ粒子−LPS複合体のTHF
溶液のUV−Visスペクトルより、520nm付近に金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が観察されることから、金ナノ粒子−LPS複合体がnmオーダーのサイズで分散していることが確認された。
参考例3における塩化金酸の代わりに、硝酸銀を用いたこと以外は参考例3と同様の手順を用いて複合体の調製を行った。
ICP−AESを用いて得られた銀ナノ粒子−HPS複合体の銀含有量を求めた結果、1.3質量%であった。また、この結果得られたHPSと銀ナノ粒子からなる複合体の金属核(銀ナノ粒子)の平均粒径は、2.3nmであった。
[感光性組成物1の調製]
参考例3(Lot.071029)で調製した金ナノ粒子−HPS複合体0.064gを、トルエン1.255gに溶解し、重合性化合物としてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名:NKエステル DCP)0.256gを加え均一に分散した後、光重合開始剤としてビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェ
ニル)チタニウム(チバジャパン(株)製、商品名:Irgacure784)0.0026gを加えて溶解し、感光性組成物1を調製した。
波長589nmの光に対する、金ナノ粒子−HPS複合体の屈折率は1.68、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートから得られた重合体の屈折率は1.53であり、両者の屈折率の差は0.15であった。
なお、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の屈折率の測定は、以下の手順で行った。まず、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートに対してIrgacure784を1質量%溶解させた組成物を調製した。この組成物を、スライドグラスの両端部にスペーサとして厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼
ったスライドガラスの中央(スペーサに挟まれた領域)に滴下し、スライドグラスをかぶせ固定した。これに、波長532nmの連続光Nd:YVO4レーザーを、露光強度10
0mW/cm2で30分間一様露光して、フィルム形成した。得られたフィルムをスライ
ドグラスから剥離し、アッベ屈折計((株)アタゴ社製、DR−M4型、干渉フィルタ:589nm)を用いて屈折率を測定した。
金ナノ粒子−HPS複合体の密度は1.5455g/cm3であり、感光性組成物1に
おける該複合体の体積は0.064/1.5455=0.0414cm3である。
トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の密度は1.25g/cm3
であり、感光性組成物1における該重合体の体積は0.256/1.25=0.2048cm3である。
従って金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める、金ナノ粒子−HPS複合体の割合は、0.0414/(0.0414+0.2048)=0.168、即ち16.8体積%であった。
HPSと金原子の密度はそれぞれ1.17g/cm3、19.32g/cm3であるから、金ナノ粒子−HPS複合体の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は、0.59体積%となり、金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は16.8×0.0059=0.099体積%であった。
スライドガラスの両端部にスペーサとして厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り、スライドガラス中央(スペーサに挟まれた領域)に上記感光性組成物1を滴下し、オーブン中、80℃で約30分間乾燥し、ホログラム記録層を形成した。その後、スライドガラスをかぶせ、膜厚が約17μmの体積位相型ホログラム記録媒体を作製した。
本記録媒体に対し、図5に示す装置によって、二光束干渉露光を行い、体積ホログラムの記録を試みた。ホログラム記録媒体1に対し、波長532nmの連続光Nd:YVO4
レーザー2を用いて、露光強度300mW/cm2で二光束干渉露光(格子間隔1μm)
を行った。連続光Nd:YVO4レーザー2から出射した光は、ビームエキスパンダ3を
経てハーフミラー13で2本に分割され、それぞれミラー5〜11を経てホログラム記録媒体1に照射され、両光の干渉縞が記録されホログラムが形成される。
同時に、ホログラム記録媒体が感光しない波長632.8nmの連続光ヘリウムネオン(He−Ne)レーザー4をホログラム記録媒体に照射し回折光を光検出器で検出することによりホログラム形成過程をモニターし、回折効率を評価した。本サンプルの回折効率の時間による変化を表すグラフを図6に示す。回折効率は急激に増加し、約60秒で10%に達し、その後も高い回折効率が維持された。すなわち回折効率が約14%の体積位相型ホログラムが永続的に形成されることが確認できた。
[感光性組成物2の調製]
参考例3−2(Lot.071029)で調製した金ナノ粒子−HPS複合体0.1166gを、トルエン0.489gに溶解し、重合性化合物としてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート0.2234gを加え均一に分散した後、光重合開始剤としてビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(
1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバジャパン(株)製、商品名:
Irgacure784)0.002gを加えて溶解し、感光性組成物2を調製した。
波長589nmの光に対する金ナノ粒子−HPS複合体の屈折率は1.68、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートから得られた重合体の屈折率は1.53であり、両者の屈折率の差は0.15であった。
なお、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の屈折率の測定は実施例1と同様に行なった。
金ナノ粒子−HPS複合体の密度は1.2551g/cm3であり、感光性組成物2に
おける該複合体の体積は0.1166/1.2551=0.0929cm3である。
トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の密度は1.25g/cm3
であり、感光性組成物2における該重合体の体積は0.2234/1.25=0.1787cm3である。
従って金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める金ナノ粒子−HPS複合体の割合は、0.0929/(0.0929+0.1787)=0.342、即ち34.2体積%であった。
HPSと金原子の密度はそれぞれ1.17g/cm3、19.32g/cm3であるから、金ナノ粒子−HPS複合体の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は、0.336体積%となり、金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は34.2×0.00336=0.115体積%であった。
実施例1と同様の手順により、膜厚が約22μmの体積ホログラム記録媒体を作製した。そして、実施例1と同様の方法によって回折効率を測定した。本サンプルの回折効率の時間による変化を表すグラフを図7に示す。実施例1同様、回折効率は急激に増加し、約100秒で30%に達し、その後も高い回折効率が維持された。すなわち回折効率が約39%の体積位相型ホログラムが永続的に形成されることが確認できた。
[透過型電子顕微鏡での観測]
実施例1と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.070828−2)が16.8体積%となる感光性組成物3を調製した。この組成物3を実施例1と同様の方法で、体積位相型ホログラム記録媒体を作製し、体積位相ホログラムを作成した。
得られたフィルムを、直接、ミクロトームで面内方向に数10nm程度の厚みに薄片化し、透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、H8000)で観測した。その結果を図8に示す。図中の黒い影の箇所が金ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を表し、金ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体がホログラフィック露光により純光学的に周期配列していることが確認できた。
[非線形ブラッグ回折の観測1]
実施例1と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.070828−2)が16.8体積%となる感光性組成物3を調製した。この組成物3を実施例1と同様の方法で、体積位相型ホログラム記録媒体を作製し、膜厚17.4μmの体積ホログラム
を作成した。得られたフィルムに対して、図9に示す装置によって、非線形ブラッグ回折を測定した。
このホログラム記録媒体(格子間隔1μm)に対し、パルス幅が約35ピコ秒、繰り返し周波数が10Hz、パルス発振の波長が532nmのNd:YAGパルスレーザーを用いて、焦点距離20cmのレンズにより集光して1パルス当たりの入射光強度(Iin)0.1〜1GW/cm2、ブラッグ角θBで光をホログラム記録媒体へ入射し、その透過光強度(It)と回折光強度(Id)を光検出器で検出することにより、回折効率の入射光強度依存性を評価した。得られた結果を図10に示す。
このサンプルでは金ナノ粒子による表面プラズモン共鳴周波数が540nm付近にあり、プロープ光波長(532nm)よりも長波長であるため、3次の非線形屈折率変化は正の値となり、回折効率は入射光強度の増加とともに増加し、入射光強度に依存する非線形ブラッグ回折が生じていることが確認できた。
[非線形ブラッグ回折の観測2]
実施例2と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.071029)が34.2体積%となる感光性組成物4を調製した。この組成物4を実施例1と同様の方法で、体積位相型ホログラム記録媒体を作製し、膜厚21.8μmの体積ホログラムを作成した。得られたフィルムに対して、図9に示す装置によって、非線形ブラッグ回折を測定した。
このホログラム記録媒体に対して、実施例4と同様の手法を用いて回折効率の入射光強度依存性を評価した。得られた結果を図11に示す。
このサンプルでは金ナノ粒子による表面プラズモン共鳴周波数が520nm付近にあり、プロープ光波長(532nm)よりも短波長であるため、3次の非線形屈折率変化は負の値となり、回折効率は入射光強度の増加とともに減少し、入射光強度に依存する非線形ブラッグ回折が生じていることが確認できた。
[非線形吸収と非線形屈折率の測定]
実施例1と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.070828−2)が16.8体積%となる感光性組成物5を調製した。スライドガラスの両端部にスペーサとして厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り、スライドガラス中央(スペーサに挟まれた領域)にこの感光性組成物5を滴下し、オーブン中、80℃で約30分間乾燥し、記録層を形成した。その後、スライドガラスをかぶせ、膜厚が約27μmの記録媒体を作製した。この記録媒体に対し、波長532nmの連続光Nd:YVO4レーザーを用いて、露光パワー密度300mW/cm2で記録層全面に一様露光を行い、記録媒体を一様に光硬化させて、非線形吸収と非線形屈折率の測定のための測定試料とした。図12に示す装置によって非線形吸収と非線形屈折率を測定した。
パルスビーム(光パルス幅約30ピコ秒)を焦点距離20cmの凸レンズにより集光し、その焦点距離の位置あるいはその前後の位置に測定試料を設置して、測定試料からの透過光パワーを測定した。測定試料中の光パルスビームの光強度の大きさは測定試料の設置する位置z(集光点から前は−z方向、後は+z方向)に強く依存するので、測定試料中で生じる光吸収変化(非線形光吸収)あるいは屈折率変化(非線形屈折率)による透過光パルスビームのパワーや波面の変化も設置する位置に強く依存する。このように非線形光学効果を受けて測定試料を透過した光パルスビームは、測定試料の後方に設置された可変な開口を有する光検出器により透過光パルスビームの全てあるいは中心部分を含む一部の光パワーが検出され、測定試料の位置zの関数として透過率T0(=透過光パルス検出パワー/入射光パルス全パワー)が測定される。図12に示すように、可変な開口が測定試料を
透過した光パルスビームの全ての光パワーを検出するように開口を全開にする場合(オープンアパーチャー)には測定試料の非線形光吸収が、一部の光パワーを検出するように開口を開けた場合(クローズトアパーチャー)には非線形屈折率が精度良く測定できる。このような非線形吸収および非線形屈折率の測定方法はM.Sheik−Bahaeらにより1990年に提案され「zスキャン法 (z−scan method)」として知られている。その詳細は文献(IEEE J. Quantum Electronics 26,
760 (1990))に説明されているが、基本的な測定原理は次のように説明できる。光パルスビームはレンズの焦点位置でその光強度が一番高くなるため、そこに非線形光学効果を有する測定試料が設置されたときには集光された光パルスビームは非線形吸収を一番強く受ける。一方、測定試料がレンズの焦点位置以外に設置されている場合には測定試料中での光強度が低くなるために非線形吸収は低くなる。従って、図13に示すようにオープンアパーチャー検出の場合には、zの変化に対して透過率変化△T0(=T0(非線形効果が生じる高光強度入射のとき)−T0(非線形光学効果が無視できる低光強度入射の
とき))はレンズの焦点位置を中心とした谷型(光強度が高いと非線形吸収も高くなる場合)あるいは山型(光強度が高いと非線形吸収が低くなる場合)の依存性となる。また、非線形屈折率が生じる場合には、非線形屈折率が正の場合(光強度が高いと非線形屈折率変化が増加する場合)には光パルスビーム断面において最も光強度が高い中心部分の屈折率がより増加するために測定試料が凸レンズの役割を果たすことになる。従って、集光点の前側(後側)に測定試料が設置されると、図12に示すように測定試料を透過後の光パルスビームのビーム幅は光検出器が設置された場所において拡がる(狭まる)ことになる。すなわち、クローズトアパーチャー検出の場合には図14に示すように△T0はzの関
数としてS字型となる。一方、非線形屈折率が負の場合(光強度が高いと非線形屈折率変化が減少する場合)には△T0はzの関数として逆S字型となる。
負の非線形吸収特性を持つことが確認できた。このような結果を異なる光強度に対して同様に測定し、それらの結果をzスキャン法の理論式にフィッティングした結果、3次の複素非線形電気感受率の虚部として+1.1×10-10esuを得た。図16には測定試料
に対する非線形屈折率の測定としてクローズトアパーチャー検出の場合のzスキャン法の測定結果を示す。△T0はS字型を示すことから測定試料は正の非線形屈折率特性を持つ
ことが確認でき、実施例4での結果と一致した。このような結果を異なる光強度に対して同様に測定し、それらの結果をzスキャン法の理論式にフィッティングした結果、3次の複素非線形電気感受率の実部として+1.5×10-10esuを得た。
2 連続光Nd:YVO4レーザー
3 ビームエキスパンダ
4 He−Neレーザー
5、6、7、8、9、10、11 ミラー
12 ビームサンプラー
13 ハーフミラー
14、15 半波長板
16、17 偏光プリズム
18、19、20 光検出器
21 ピコ秒Nd:YAGレーザ
22、24 偏光プリズム
23 半波長板
25、26、 ミラー
27 アパーチャー(開口)
28 ハーフミラー
29 レンズ
30 ホログラム記録媒体
31、32、33 光検出器
Claims (21)
- (a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物であって、
前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体は、500乃至5000000の重量平均分子量を有しかつジチオカルバメート基を有する分岐状高分子が、金属ナノ粒子に付着し又は配位して形成されてなる複合体であり、
前記ジチオカルバメート基を有する分岐状高分子は式(1):
- 前記金属ナノ粒子が、金、銀、白金及び銅よりなる群より選択される少なくとも1種のナノ粒子である、請求項1に記載の感光性組成物。
- 前記金属ナノ粒子の平均粒径が1nm乃至10nmである、請求項1又は請求項2記載の感光性組成物。
- 前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の平均粒径が3nm乃至100nmである、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- 前記感光性組成物を重合反応条件下においたとき、生成した前記(a)重合性化合物の重合体中に前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が粒子形態で分散しているものとなる、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- 前記(a)重合性化合物の重合体と(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の合計体積に占める(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の体積割合が、3体積%乃至60体積%である、請求項5記載の感光性組成物。
- 前記(a)重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- 前記(a)重合性化合物が、カチオン重合性の部位を有する化合物であり、前記(b)光重合開始剤が光酸発生剤である、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- (a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物であって、
前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体は、500乃至5000000の重量平均分子量を有しかつジチオカルバメート基を有する線状高分子が、金属ナノ粒子に付着し又は配位して形成されてなる複合体であり、
前記ジチオカルバメート基を有する線状高分子は式(4):
- 前記金属ナノ粒子が、金、銀、白金及び銅よりなる群より選択される少なくとも1種の
ナノ粒子である、請求項9に記載の感光性組成物。 - 前記金属ナノ粒子の平均粒径が1nm乃至10nmである、請求項9又は請求項10記載の感光性組成物。
- 前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の平均粒径が3nm乃至100nmである、請求項9乃至請求項11のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- 前記感光性組成物を重合反応条件下においたとき、生成した前記(a)重合性化合物の重合体中に前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が粒子形態で分散しているものとなる、請求項9乃至請求項12のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- 前記(a)重合性化合物の重合体と(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の合計体積に占める(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の体積割合が、3体積%乃至60体積%である、請求項13記載の感光性組成物。
- 前記(a)重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である、請求項9乃至請求項14のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- 前記(a)重合性化合物が、カチオン重合性の部位を有する化合物であり、前記(b)光重合開始剤が光酸発生剤である、請求項9乃至請求項14のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
- 前記感光性組成物が非線形光学素子作成用の感光性組成物である、請求項1乃至請求項16記載の感光性組成物。
- 請求項1乃至請求項17記載の感光性組成物を露光して得られる非線形光学効果を有する硬化物。
- 請求項1乃至請求項17記載の感光性組成物からなる薄膜をパターン露光し、該組成物の構成成分の空間分布が露光前のものとは変化している非線形光学薄膜。
- 請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形回折格子。
- 請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形光学効果を有するホログラム。
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