JP7331556B2 - 体積ホログラム、頭部装着型センサ装置 - Google Patents
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Description
図1は、本発明による体積ホログラムを用いた頭部装着型センサ装置の第1実施形態である視線検出装置1の概要を示す図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張又は省略して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において規定する具体的な数値には、一般的な誤差範囲は含むものとして扱うべきものである。すなわち、±10%程度の差異は、実質的には違いがないものであって、本件の数値範囲をわずかに超えた範囲に数値が設定されているものは、実質的には、本件発明の範囲内のものと解釈すべきである。
本実施形態の偏向部30は、体積ホログラム30を用いて構成されている。この偏向部30は、不図示の支持体、例えば、ガラス板上に重ねて配置されている。なお、ガラス板を基板とする代わりに、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)樹脂、チオウレタン系樹脂等により形成された基板を用いてもよい。視線検出装置1を例えばメガネ状の形態として構成することにより、偏向部30は、メガネのレンズ部分に相当する位置に配置することができる。体積ホログラム30により構成された偏向部30は、薄膜状であることから、小型かつ軽量である。なお、本実施形態では、偏向部30の全てが体積ホログラム30により構成されているので、以下、同じ符号30を付けて説明を行う。
本発明に係るホログラム形成用感光材料は、光重合性モノマーと、光重合開始剤と、前記光重合開始剤を増感せしめる増感色素と、バインダー樹脂と、を含有し、前記光重合性モノマーが少なくとも光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含む。
本発明における光重合性モノマーは、光照射によって重合又は二量化反応が進行し、かつ、ホログラム記録層中で拡散移動できる化合物である。
本発明における光重合性モノマーとしては、例えば、光ラジカル重合性モノマー、光カチオン重合性モノマー及び光二量化性化合物等を挙げることができるが、少なくとも光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーを含む。
以下、光ラジカル重合性モノマー及び光カチオン重合性モノマーについて説明する。
本発明に用いられる光ラジカル重合性モノマーとしては、本発明のホログラム形成用感光材料を用いてホログラム記録層を形成する際に、例えばレーザー照射等によって、後述する光ラジカル重合開始剤から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であれば、特に限定されるものではないが、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を持つ化合物を使用することが好ましい。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物等を挙げることができる。
本発明に用いられる光カチオン重合性モノマーは、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。例えば、エポキシ基やオキセタン基等の官能基を有する環状エーテル類、チオエーテル類、ビニルエーテル類等を挙げることができる。
また、光ラジカル重合性モノマーと光カチオン重合性モノマーとを併用する場合、上記光ラジカル重合性モノマーの重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、本発明における光カチオン重合性モノマーは、常温で液状であることが好ましい。
光重合性モノマーの合計の含有量が上記範囲よりも少ないと、大きい屈折率変調量(Δn)を得ることができず、高輝度の体積ホログラム記録体を得ることができない可能性があるからである。一方、光重合性モノマーの含有量が上記範囲よりも大きいと、バインダー樹脂の含有量が相対的に減少し、ホログラム記録層を保持できない可能性があるからである。
本発明のホログラム形成用感光材料を構成する光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、及び光カチオン重合開始剤を用いることができる。
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、さらに具体的には、1,3-ジ(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3-フェニル-5-イソオキサゾロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5-トリフェニル)イミダゾール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名イルガキュア651、BASF社製)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名イルガキュア184、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名イルガキュア369、BASF社製)、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム(商品名イルガキュア784、BASF社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記光重合開始剤の含有量が、上記範囲よりも少ない場合、上述した光重合性モノマーが十分に重合せず、所望の屈折率変調量(Δn)が得られない可能性があるからである。一方で上記範囲よりも多い場合、未反応の光重合開始剤がホログラム特性を悪化させる可能性があるからである。
本発明における増感色素は、一般的に光を吸収する成分であり、光重合開始剤の記録光に対する感度を増感させる働きを有する。ホログラム形成用感光材料は、増感色素を用いることによって可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いてホログラムを記録することが可能となるからである。
上記増感色素の含有量が上記範囲よりも多い場合、高透明性が要求される際に、光照射による色素の分解が十分になされず、着色されたホログラム記録層となる可能性があり、一方、上記範囲よりも少ない場合、光重合開始剤の感度を十分に増感させることができず、ホログラム形成用感光材料が可視光に不活性となる可能性があるからである。
バインダー樹脂は、ホログラム記録層の成膜性、膜厚の均一性を向上させ、光照射による重合で形成されたホログラムを安定化させる働きを有し、ホログラム記録層の屈折率変調量(Δn)の増加、耐熱性及び機械物性等の向上に寄与するものである。
本発明において用いられるバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂より選択される1種以上が好適に用いられる。中でも、少なくとも熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、さらに、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を併用することが屈折率変調量(Δn)の増加、耐熱性及び機械物性等の向上の点から好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメタクリロニトリル、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ-1,2-ジクロロエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シンジオタクチック型ポリメチルメタクリレート、ポリ-α-ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリ-o-メチルスチレン、ポリ-p-メチルスチレン、ポリ-p-フェニルスチレン、ポリ-2,5-ジクロロスチレン、ポリ-p-クロロスチレン、ポリ-2,5-ジクロロスチレン、ポリアリーレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニリデン、水素化スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、透明ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC)測定のポリスチレン換算値をいう。
ガラス転移温度(Tg)が上記範囲よりも高いと、光重合性モノマーの拡散移動能が劣り、所望の屈折率変調量(Δn)が得られず、輝度の高い体積ホログラム記録体が得られない可能性があるからである。一方、ガラス転移温度(Tg)が上記範囲よりも低いと、高温保存下にて、バインダー樹脂が軟化し、干渉縞が乱れるため、所望の屈折率変調量(Δn)が得られない可能性があるからである。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析計(DSC)等を用いて測定することができる。
本発明におけるバインダー樹脂に熱硬化性樹脂を用いると、加熱工程において硬化されることにより、ホログラム記録層の強度を高め、体積ホログラム記録特性が向上し、安定した層構造を形成させることができる。また、上記熱硬化性樹脂の官能基の一部は、光照射により光重合性モノマーの官能基の一部との間で相互作用が起こり、化学結合を形成することができる。この場合、体積ホログラム記録後の光照射工程により、光重合性モノマーが固定されるため、体積ホログラム記録体の強度を高めることができる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサジン基、及び金属アルコキサイド等を含有する化合物等を挙げることができる。本発明においては、中でも、エポキシ基及びオキセタン基を含有する化合物を用いることがより好ましく、エポキシ基含有化合物を用いることがさらに好ましい。本発明で用いられるエポキシ基含有化合物としては、一分子中にエポキシ基を1個以上含有する樹脂であれば特に限定されるものではない。
その他、エポキシ基含有ポリマーも好適に用いられる。エポキシ基含有ポリマーとしては、例えば、エポキシ基やグリシジル基を有する単量体を共重合成分として用いた共重合体等が挙げられる。上記エポキシ基やグリシジル基を有する単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸グリシジルエステル等のα,β-不飽和カルボン酸のグリシジルエステル等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のホログラム形成用感光材料は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、微粒子、熱重合防止剤、シランカップリング剤、着色剤等を併用してよい。
例えば、良好な箔切れ性を付与したい場合には、微粒子が用いられることが好ましい。
微粒子としては、例えば、樹脂骨格として低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリル等を含む有機微粒子、シリカ、マイカ、タルク、チタニア等の無機粒子等を用いることができ、これらの微粒子を1種、又は2種以上を混合して使用してもよい。上記の中でも、上記有機微粒子の樹脂中の骨格又は、側鎖の水素の一部又は全部をフッ素原子で置換した含フッ素系樹脂の微粒子であるフッ素系微粒子、又は、チタニア微粒子であることが好ましい。
上記溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、又はそれらの混合溶媒等が挙げられる。
また、このようなホログラム形成用感光材料を用いた体積ホログラム30の形成は、従来公知の反射型ホログラムの形成方法と同様とすることができる。
この図からわかるように、体積ホログラムのピーク波長における回折効率が高くても半値幅10nm未満の場合は、LED光の935nm以下の光、及び、945nm以上の光の回折効率は、非常に小さいものとなってしまい、LEDから出光されている赤外光全体で考えた場合に利用効率は低くなってしまう。そのため体積ホログラムの半値幅は10nm以上が好ましい。
また、さらに好ましくは、体積ホログラム30は、分光分布曲線において半値幅が30nm以上あることが望ましい。
また、さらに好ましくは、体積ホログラム30は、分光分布曲線において半値幅が50nm以上あることが望ましい。
また、さらに好ましくは、体積ホログラム30は、分光分布曲線において半値幅が70nm以上あることが望ましい。
(体積ホログラムのピーク回折効率)×(体積ホログラムの半値幅)/(光源の照射光の半値幅)>8%
この関係を満たすことにより、回折光の光量を透明基材の表裏面における界面反射光の光量と同等以上とすることができ、界面反射によるノイズ光に対して十分な感度を得ることができる。
より望ましくは、以下の関係を満たすことが望ましい。
(体積ホログラムのピーク回折効率)×(体積ホログラムの半値幅)/(光源の照射光の半値幅)>10%
より望ましくは、以下の関係を満たすことが望ましい。
(体積ホログラムのピーク回折効率)×(体積ホログラムの半値幅)/(光源の照射光の半値幅)>15%
より望ましくは、以下の関係を満たすことが望ましい。
(体積ホログラムのピーク回折効率)×(体積ホログラムの半値幅)/(光源の照射光の半値幅)>20%
体積ホログラム30の回折光の半値幅は、その膜厚と屈折率変調量Δnとの影響を大きく受けることが考えられるので、先ず、これらの最適な範囲を規定する。
図3は、シミュレーション条件を示す図である。図3(a)は、シミュレーション条件の一覧を示し、図3(b)は、入射角と出射角の条件を示している。
ここでは、図3に示す条件下で体積ホログラム30のシミュレーションを行い、半値幅への膜厚と屈折率変調量Δnとの影響を調べた。なお、屈折率変調量Δnについては、露光前の材料の選定、配合によって大きく変わるものであるが、露光条件によっても変化させることができるので、所望の値とすることが十分に可能である。なお、以下に示すシミュレーションの結果は、P偏光とS偏光の平均値を用いている。
反射型ホログラムの回折効率ηは、媒質での吸収が無視できる場合に、次式(A)で与えられる。
ここで、νとξは次式で与えられる。
ξ=t/2×(kRz+Kz-kSz)
ただし、
t:感光材料の厚み
λ:真空中の波長
θR:入射光とホログラム面法線ベクトルのなす角
θS:回折光とホログラム面法線ベクトルのなす角
kRz:入射光の波数ベクトルのホログラム面法線方向の成分
kSz:回折光の波数ベクトルのホログラム面法線方向の成分
Kz:回折格子ベクトルのホログラム面法線方向の成分
Δn:ホログラム媒質の屈折率変調の振幅
n:ホログラム媒質の平均屈折率
である。
図4は、膜厚tとΔnとを変化させて半値幅を求めたシミュレーションの結果をまとめた図である。図4では、膜厚tを15種類、Δnを20種類、それぞれ組み合わせて、計300種類のシミュレーションを行った結果をまとめている。
図4を見ると、膜厚tは薄い方が望ましく、Δnは高い値が望ましいことは解るが、定量的に把握することが難しい。そこで、図4に示した結果から、膜厚tとΔnとの組み合わせで好ましい範囲を数式化した。
具体的には、図4に示した半値幅は、その数値範囲で複数領域に分けることが可能であるので、境界とする半値幅が得られる膜厚tとΔnとの組み合わせからなるデータ群を集めて、そのデータ群を表す近似式を求めた。境界としては、半値幅が10nm、20nm、30nm、50nm、70nmとなる境界を設定した。
上述した境界値となる半値幅10nm、20nm、30nm、50nm、70nm毎に多項式近似を行った結果を図5中に併記した。
Δn≧1.86×10-6t3-1.56×10-4t2+4.37×10-3t-3.56×10-2
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を10nm以上とすることができる。
ただし、Δnがマイナスの値となることはあり得ないので、上記式において、Δn<0の場合には、Δn=0であるものとする。
Δn≧4.72×10-6t3-3.62×10-4t2+9.60×10-3t-6.38×10-2
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を20nm以上とすることができる。
ただし、上記式において、Δn<0の場合には、Δn=0であるものとする。
Δn≧1.10×10-5t3-7.57×10-4t2+1.70×10-2t-8.52×10-2
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を30nm以上とすることができる。
ただし、上記式において、Δn<0の場合には、Δn=0であるものとする。
Δn≧9.11×10-6t3-6.08×10-4t2+1.32×10-2t-1.73×10-2
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を50nm以上とすることができる。
ただし、上記式において、Δn<0の場合には、Δn=0であるものとする。
Δn≧9.75×10-8t5-9.55×10-6t4-3.60×10-4t3-6.53×10-3t2+5.66×10-2t-9.22×10-2
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を70nm以上とすることができる。
ただし、上記式において、Δn<0の場合には、Δn=0であるものとする。
膜厚t及びΔnが変わると、上述した半値幅のみならず、回折効率も影響を受ける。そこで、回折効率を考慮して、膜厚tとΔnとの適切な範囲をさらに限定する。
図6は、膜厚tとΔnとを変化させて回折効率の最大値を求めたシミュレーションの結果をまとめた図である。図6についても、図5の場合と同様に膜厚tを15種類、Δnを20種類、それぞれ組み合わせて、計300種類のシミュレーションを行った結果をまとめている。
図6を見ると、膜厚tは厚い方が望ましく、Δnは高い値が望ましいことは解るが、定量的に把握することが難しい。そこで、図5の場合と同様に、図6に示した結果から、膜厚tとΔnとの組み合わせで好ましい範囲を数式化した。
具体的には、境界としては、回折効率の最大値が0.2、0.4、0.6、0.8となる境界を設定した。
上述した境界値となる回折効率の最大値0.2、0.4、0.6、0.8毎に多項式近似を行った結果を図7中に併記した。
Δn≧0.140t(-1.07)
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.2以上とすることができる。
Δn≧0.259t(-1.12)
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.4以上とすることができる。
Δn≧0.324t(-1.06)
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.6以上とすることができる。
Δn≧0.473t(-1.07)
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.8以上とすることができる。
上述したシミュレーションは、入射角と出射角とをそれぞれ、0°と120°とに固定したものであった。この入射角0°及び出射角120°は、ヘッドマウント型の視線検出装置1を想定すると、最も好適な組み合わせのひとつである。しかし、当然ながら入射角と出射角との組み合わせは、これに限らず、適宜設計変更可能である。そこで、入射角及び出射角が変わった場合を想定してシミュレーションを行った。
ここでは、図8に示す条件下で体積ホログラム30のシミュレーションを行い、半値幅への入射角θ1と出射角θ2との影響を調べた。
図9を見ると、入射角θ1は、大きい方が(85°に近い方が)半値幅を広くでき、出射角θ2は、小さい方が(100°に近い方が)半値幅を広くできることは解るが、定量的に把握することが難しい。そこで、図9に示した結果から、入射角θ1と出射角θ2との組み合わせで好ましい範囲を先に説明した膜厚tとΔnとの場合と同様にして数式化した。境界としては、半値幅が28nm、30nm、32nm、34nmとなる境界を設定したが、半値幅28nm、30nmについては図9を見て解るように、出射角θ2が小さい側と大きい側との2領域に分かれて存在している。よって、半値幅が15nmを境界とする近似式は、2つとしている。
上述した境界値となる半値幅28nmを2つ(28nm-A、28nm-B)と、
半値幅30nmを2つ(30nm-A、30nm-B)と、32nmと、34nm
のそれぞれに多項式近似を行った結果を図10中に併記した。
θ2≧-0.200θ1 2+θ1+1.10×102
かつ、
θ2≦-2.48×10-4θ1 3+3.51×10-2θ1 2-1.06θ1+2.48×102
の双方の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を28nm以上とすることができる。
θ2≧-6.67×10-3θ1 3+0.143θ1 2-0.976θ1+1.41×102
かつ、
θ2≦-2.02×10-4θ1 3+2.75×10-2θ1 2-0.599θ1+2.16×102
の双方の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を30nm以上とすることができる。
θ2≦9.29×10-6θ1 5-2.83×10-3θ1 4+0.337θ1 3-19.6θ1 2+5.59×102θ1-6.03×103
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を32nm以上とすることができる。
θ2≦1.90×10-3θ1 3-0.431θ1 2+32.9θ1-6.45×102
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、半値幅を34nm以上とすることができる。
入射角θ1及び出射角θ2が変わると、上述した半値幅のみならず、回折効率も影響を受ける。そこで、回折効率を考慮して、入射角θ1と出射角θ2との適切な範囲をさらに限定する。
図11は、入射角θ1と出射角θ2とを変化させて回折効率の最大値を求めたシミュレーションの結果をまとめた図である。図11についても、図9の場合と同様に入射角θ1を0°から85°まで18種類、出射角θ2を100°から260°まで17種類、それぞれ組み合わせて、計306種類のシミュレーションを行った結果をまとめている。
図11を見ると、入射角θ1は小さい方(0°に近い方が)が望ましく、出射角θ2は大きい方(260°に近い方が)が望ましいことは解るが、定量的に把握することが難しい。そこで、図9の場合と同様に、図11に示した結果から、入射角θ1と出射角θ2との組み合わせで好ましい範囲を数式化した。
具体的には、境界としては、回折効率の最大値が0.6、0.7、0.8、0.9となる境界を設定した。
上述した境界値となる回折効率の最大値0.6、0.7、0.8、0.9のそれぞれに多項式近似を行った結果を図12中に併記した。
θ2≧8.08×10-4θ1 3-0.173θ1 2+13.0θ1-2.15×102
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.6以上とすることができる。
θ2≧6.94×10-4θ1 3-0.137θ1 2+9.27θ1-75.1
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.7以上とすることができる。
θ2≧3.44×10-4θ1 3-6.30×10-2θ1 2+3.82θ1+91.0
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.8以上とすることができる。
θ2≧3.52×10-4θ1 3-4.89×10-2θ1 2+1.03θ1+2.80×102
の関係を満たすことが望ましいといえる。この関係を満たすことにより、回折効率の最大値を0.9以上とすることができる。
なお、実際に作製された体積ホログラムについて、膜厚の測定を行うには、断面のSEM観察より測定するとよい。また、Δnの測定方法としては膜厚、回折角度、波長の測定結果を元にした回折効率のシミュレーション演算を行い、回折効率測定結果とのフィッティングからΔnを算出するとよい。
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
10 光源
20 撮影部
30 偏向部(体積ホログラム)
Claims (6)
- 赤外光源及び受光部の少なくとも一方とセンシング対象の眼との間の光路中に配置され、赤外光の向きを偏向させる偏向部として用いられる体積ホログラムであって、
分光分布曲線において半値幅が30nm以上であり、
当該体積ホログラムへ入射角θ 1 で入射した赤外光の出射角をθ 2 としたときに、
0°≦θ 1 ≦85°、かつ、100°≦θ 2 ≦260°の範囲内において、
θ 2 ≧-6.67×10 -3 θ 1 3 +0.143θ 1 2 -0.976θ 1 +1.41×10 2
かつ、
θ 2 ≦-2.02×10 -4 θ 1 3 +2.75×10 -2 θ 1 2 -0.599θ 1 +2.16×10 2
の双方の関係を満たす、体積ホログラム。 - 請求項1に記載の体積ホログラムにおいて、
当該体積ホログラムの膜厚をt(μm)、屈折率変調量をΔnとしたときに、
Δn≧1.86×10-6t3-1.56×10-4t2+4.37×10-3t-3.56×10-2
の関係を満たすこと、
を特徴とする体積ホログラム。 - 請求項1又は請求項2に記載の体積ホログラムにおいて、
当該体積ホログラムの膜厚をt(μm)、屈折率変調量をΔnとしたときに、
Δn≧0.140t(-1.07)
の関係を満たすこと、
を特徴とする体積ホログラム。 - 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の体積ホログラムにおいて、
当該体積ホログラムへ入射角θ1で入射した赤外光の出射角をθ2としたときに、
0°≦θ1≦85°、かつ、100°≦θ2≦260°の範囲内において、
θ2≧8.08×10-4θ1 3-0.173θ1 2+13.0θ1-2.15×102
の関係を満たすこと、
を特徴とする体積ホログラム。 - 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の体積ホログラムを偏向部に含む、頭部装着型センサ装置。
- 請求項5に記載の頭部装着型センサ装置において、
前記体積ホログラムへ検出光を照射する赤外光源を備え、
分光分布曲線における前記体積ホログラムの半値幅と、前記赤外光源の照射光の半値幅と、前記体積ホログラムのピーク回折効率とは、
(体積ホログラムのピーク回折効率)×(体積ホログラムの半値幅)/(赤外光源の照射光の半値幅)>8%
の関係を満たすこと、
を特徴とする頭部装着型センサ装置。
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