本発明は、式Iに示される化合物:
式中、
R
1は、F、Cl、又はCF
3であり、
R
2は、F、Cl、又はCF
3であり、
R
3は、F、Cl、又はCF
3であり、
R
4は、H、F、Cl、又はCF
3であり、
並びに、溶媒和物、水和物、エステル、及びそれらの医薬上許容される塩に関する。
本発明の一実施形態では、
R1は、Fであり、
R2は、F、Cl、又はCF3であり、
R3は、CF3であり、
R4は、H、F、Cl、又はCF3であり、
並びに、溶媒和物、水和物、エステル、及びそれらの医薬上許容される塩である。
本発明の別の実施形態は、
(R)−2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸、
(S)−2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸、
2−[5−(4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸、
2−[4’−クロロ−5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−3’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸、
からなる群から選択される、化合物、並びに、溶媒和物、水和物、エステル、及びそれらの医薬上許容される塩である。
当業者であれば、式Iの化合物は1以上の不斉炭素原子をその構造中に有しうる点は認識されるであろう。本発明はその範囲内に、化合物の単一のエナンチオマー、ラセミ混合物、及びエナンチオマー過剰が存在するエナンチオマーの混合物を含むものとする。
本発明の化合物、及び/又はその塩若しくはエステルの一部のものは、異なる光学異性体として存在する。これらの形態はすべて本発明の対象である。
本明細書に含まれる本発明に基づく化合物の例示的な塩について下記に述べる。下記に述べる異なる塩の一覧は、完全なもの及び限定することを意図したものではない。
1以上の酸性基を有する本発明に基づく化合物は、例えば化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩として、本発明に基づいて使用することができる。これらの塩のより正確な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又は、アンモニア若しくはエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン若しくはアミノ酸などの有機アミン類との塩が挙げられる。
「医薬上許容される」なる用語は、EMEA(欧州)及び/又はFDA(米国)などの監督官庁、及び/又は他の任意の国内監督官庁によって動物、好ましくはヒトにおける使用が認可されていることを意味する。
本発明に基づく化合物のそれぞれの塩は、例えば溶媒又は分散媒中でこれらの塩を有機又は無機塩基と接触させる、あるいは他の塩とカチオン交換するなどの当業者には周知の従来の方法によって得ることができる。
更に、本発明は、生理学的適合性が低いことにより医薬品での使用には直接適していないが、例えば化学反応の中間体として、若しくは医薬上許容される塩の調製に使用することができるか、又は、任意の適当なインビトロアッセイなどの任意の適当な方法によって本発明に基づく化合物のγ−セクレターゼ調節活性を研究するのに適した、本発明に基づく化合物のすべての塩を含むものである。
本発明は更に、本発明に基づく化合物のすべての溶媒和物を含む。
本発明は更に、生理学的に許容される開裂可能な基を有し、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて本発明に基づく化合物に代謝される、本発明に基づく化合物の誘導体/プロドラッグ(それらの塩を含む)を含む。
本発明は更に、本発明に基づく化合物の代謝産物を含む。
「代謝産物」なる用語は、細胞又は生物、好ましくは哺乳動物によって本発明に基づく化合物の任意のものから誘導されるすべての分子を指す。
好ましくは、「代謝産物」なる用語は、生理学的条件下で任意のこうした細胞又は生物に存在するあらゆる分子とは異なる分子に関連する。
本発明に基づく化合物の代謝産物の構造は、各種の適当な方法を用いることにより当業者には明らかとなろう。
一般式(I)の化合物は、文献に発表されている方法又はこれに類する方法にしたがって調製することができる。
個々の場合の状況に応じて、一般式(I)の化合物を合成する間の副反応を防止する目的で、保護基を導入することによって官能基を一時的にブロックし、合成の後の段階で官能基を脱保護するか、あるいは、前駆体基の形で官能基を導入し、後の段階で前駆体基を所望の官能基に転換することが必要又は有利となる場合がある。好適な合成法、保護基、及び前駆体基は当業者には周知のものである。
必要に応じ、式(I)の化合物は、例えば再結晶化又はクロマトグラフィーによる従来の精製法によって精製することができる。式(I)の化合物を調製するための開始物質は市販のものを用いるか、又は文献の方法に従うか若しくはこれに類する方法によって調整することができる。
これらは、当業者には周知の幾つかの方法による本発明に基づく他の化合物の調製の基礎をなし得るものである。
本発明は、本発明の化合物の薬剤としての使用にも関する。化合物は上記に定義したものであり、更に薬剤に関しては本発明の使用に関して下記に述べる、例えば製剤、用途、及び組み合わせなどの実施形態もまた本発明のこの態様に該当する。
詳細には、本発明に基づく化合物はアルツハイマー病の治療に適している。
前記使用に関する詳細については更に後述する。
本化合物はγ−セクレターゼ活性を調節するために使用することができる。
本明細書で用いる「γ−セクレターゼ活性の調節」なる用語は、γ−セクレターゼ複合体によるAPPのプロセシングに対する作用のことを指す。好ましくは、この用語は、APPの全体のプロセシング速度が本化合物を用いない場合とほぼ同じに保たれるが、プロセシングされた産物の相対量が変化する作用、より好ましくは、生成されるAβ42ペプチドの量が減少するように変化するような作用のことを指す。例えば、異なるAベータ種(例、Aベータ42の代わりにAベータ38又はより短いアミノ酸配列を有する他のAベータ種)が生成するか、あるいは、生成物の相対量が異なる(例、Aベータ42に対するAベータ40の比が変化、好ましくは大きくなる)。
γ−セクレターゼ活性は、例えば生成するAベータペプチド種の濃度、最も重要なものとしてAベータ42の濃度(下記実施例の項を参照)を求めることで、例えば、APPプロセシングを求めることによって測定することができる。
γ−セクレターゼ複合体はノッチ(Notch)タンパク質のプロセシングにも関与していることがこれまでに示されている。ノッチは、発生過程において重要な役割を担うシグナル伝達タンパク質である(Schweisguth F(2004)Curr.Biol.14,R129にまとめられている)。
治療法においてγ−セクレターゼ活性を調節するための前記化合物の使用に関し、想定される望ましくない副作用を防止するにはγ−セクレターゼ活性のノッチプロセシング活性を阻害しないことが特に有利であると考えられる。
したがって、γ−セクレターゼ複合体のノッチプロセシング活性に作用を及ぼさない化合物が好ましい。
本発明の意味の範囲内では、「ノッチプロセシング活性への作用」とは、特定の因子によるノッチプロセシング活性の阻害又は活性化の両者を含む。
ある化合物は、Shimizu et al(2000)Mol.Cell.Biol,20:6913に述べられる対応するアッセイにおいて30μMの濃度における前記因子が20未満、好ましくは10未満、より好ましくは5未満、最も好ましくは2未満である場合にノッチプロセシング活性に対する作用を有さないものと定義される。
このようなγ−セクレターゼの調節は例えば哺乳動物などの動物において行うことができる。哺乳動物の例としては、マウス、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコがある。この調節はヒトで行うこともできる。本発明の特定の実施形態では、前記調節はインビトロ又は細胞培養中で行われる。当業者には周知であるように、複数のインビトロ及び細胞培養アッセイが利用可能である。
特定の細胞株又は形質転換動物によるC末端APPフラグメントの産生をウエスタンブロット分析によって測定するうえで有用なアッセイの例としては、これに限定されるものではないがYan et al.,1999,Nature 402,533〜537に述べられるようなものがある。
インビトロでのγ−セクレターゼアッセイの一例が国際特許出願公開第WO03/008635号に述べられている。このアッセイでは、適当なペプチド基質にγ−セクレターゼ調製物を接触させ、基質を開裂する能力を測定する。
γ−セクレターゼによる開裂の異なる産物(Aβペプチド)の濃度を当業者には周知の様々な方法によって求めることが可能である。こうした方法の例としては、質量分析又は抗体による検出によるペプチドの判定法が挙げられる。
培養細胞培地又は生物学的液体中の可溶性Aβペプチドのプロファイルの特徴付けに有用なアッセイの例としては、これに限定されるものではないが、Wang et al.,1996,J.Biol.Chem.271,31894−31902に述べられるものがある。このアッセイでは、特定の抗体によるAベータペプチドの免疫沈降と、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析法によるペプチド種の検出及び定量化の組み合わせを用いる。
ELISAによってAベータ40及びAベータ42ペプチドの産生を測定するうえで有用なアッセイの例としては、これに限定されるものではないが、Vassar et al,1999,Science 286,735−741に述べられるものがある。更なる情報が例えば、N.Ida et al.(1996)J.Biol.Chem.271,22908,and M.Jensen et al.(2000)Mol. Med.6,291に開示されている。好適な抗体は例えばザ・ジェネティクス・カンパニー社(The Genetics Company, Inc.)(スイス)から販売されている。抗体を用いたキットがイノジェネティクス社(Innogenetics)(ベルギー)からも販売されている。
こうしたアッセイで使用できる細胞としては、γ−セクレターゼ複合体を内因性に発現する細胞、及びγ−セクレターゼ複合体の相互作用因子の一部またはすべてのものを一過性又は安定的に発現するトランスフェクト細胞が挙げられる。こうしたアッセイに適した多くの入手可能な細胞株が当業者に知られている。神経細胞及びグリア細胞由来の細胞及び細胞株が特に好適である。更に、脳の細胞及び組織、並びに脳のホモジネート及び膜調製物を使用することもできる(Xia et al., 1998, Biochemistry 37, 16465〜16471)。
こうしたアッセイは、例えば、異なる実験条件及び構成における本発明に基づく化合物の作用を調べる目的で行うことができる。
更に、こうしたアッセイはγ−セクレターゼ複合体についての機能的研究の一部として行うこともできる。
例えば、動物、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトのγ−セクレターゼ複合体の1以上の相互作用因子(野生型、又は特定の突然変異及び/又は改変を有するもの)を特定の細胞株で発現させ、本発明に基づく化合物の作用を調べることができる。
用いる相互作用因子の突然変異型は、特定の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいてこれまでに述べられているものであってもよく、これらの動物においてこれまでに述べられていないものであってもよい。
γ−セクレターゼの相互作用因子の改変には、相互作用因子のあらゆる生理学的改変、及び生物学的システムにおけるタンパク質の改変としてこれまでに述べられている他の改変の両方が含まれる。
こうした改変の例としてはこれらに限定されるものではないが、グリコシル化、リン酸化、プレニル化、ミリスチル化、及びファルネシル化が挙げられる。
更に、本発明に基づく化合物はγ−セクレターゼ活性を調節するための薬剤の調製に使用することができる。
本発明は更に、γ−セクレターゼ活性を調節するための薬剤の調製における前記化合物の使用に関する。
γ−セクレターゼの活性は異なる方法で調節することが可能であり、これにより異なるAβペプチドが異なるプロファイルで得られる。
Aβ42ペプチドの相対量が減少するようにγ−セクレターゼ活性を調節するような化合物の使用が好ましい。
それぞれの用量、投与経路、処方などについて下記に更に開示する。
本発明は、Aβ42産生レベルの上昇に伴う疾患の治療における本発明に基づく化合物の使用に更に関する。Aベータ産生レベルの上昇及び脳への沈着に伴う疾患は、一般的にはアルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症、多発脳梗塞性認知症、ボクサー認知症又はダウン症候群であり、好ましくはADである。
本明細書で用いる「治療」なる用語は、必ずしもすべての症状の完全な消失を示すものではないが疾患の進行を遅延、妨害、阻止、又は停止させうるすべてのプロセスを指すものである。
本明細書で用いる「Aβ42産生レベルの上昇」なる用語は、APPのプロセシングの全体的な増大によりAβ42ペプチド産生の速度が増大する状態を指し、好ましくは、野生型APP及び非病原性の状況と比較してAPPのプロセシングプロファイルの改変によってAβ42ペプチド産生の速度が増大する状態を指す。
上記に概略を述べたように、こうしたAβ42レベルの上昇は、アルツハイマー病を発症又は罹患している患者の特徴である。
本発明の化合物又は化合物の一部の利点の1つは、CNSへの浸透性が高いことにある。
更に、本発明は、本発明に基づく化合物を不活性担体との混合物中に含む医薬組成物に関する。
好ましい一実施形態では、本発明は、本発明に基づく化合物を不活性担体との混合物中に含む医薬組成物であって、前記不活性担体が医薬用担体である医薬組成物に関する。
「担体」なる用語は、本化合物が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は溶媒を指す。こうした医薬用担体は、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などを含むがこれらに限定されない、石油、動物油、植物油又は合成油由来の油及び水などの滅菌液であってよい。医薬組成物が経口投与される場合には水が好ましい担体である。医薬組成物が静脈内投与される場合には生理食塩水及びD−グルコース水溶液が好ましい担体である。生理食塩水及びD−グルコース水溶液及びグリセリン溶液が、注射溶液用の液体担体として好ましく用いられる。好適な医薬用賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。必要に応じ、組成物は少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を更に含んでもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形を取りうる。組成物は、従来の結合剤及びトリグリセリドなどの担体とともに坐剤として処方することもできる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含みうる。好適な医薬用担体の例は、E.W.Martinによる「レミントンの医薬品科学」(Remington's Pharmaceutical Sciences)に述べられている。こうした組成物は、治療上の有効量の本化合物を、好ましくは精製された形態で、適量の担体とともに含むことによって患者に適切に投与される形態を与えるものである。その配合は、投与方法に適したものである必要がある。
場合に応じて他の医薬的に活性な化合物と組み合わされる本発明に基づく化合物及び医薬上許容されるその塩は、アルツハイマー病又はその症状を治療又は防止する上で適している。こうした更なる化合物としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例、ドネペジル、タクリン、ガランタミン、リバスチグミン)、NMDAアンタゴニスト(例、メマンチン)、PDE4阻害剤(例、アリフロ)などの認知能力向上薬、又はアルツハイマー病の治療又は防止に適した当業者には周知の他の任意の薬剤が挙げられる。こうした化合物には、スタチン(例、シンバスタチン)などのコレステロール低下薬も含まれる。これらの化合物は、動物、好ましくは哺乳動物、特にヒトに、それ自体で薬剤として、互いの混合物として、又は医薬製剤の形態で投与することが可能である。
例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入などの各種の送達システムが知られており、アルツハイマー病の治療又はγ−セクレターゼ活性の調節のために本発明の化合物を投与する目的で使用することができる。
医薬化合物が中枢神経系、好ましくは脳に直接送達されない場合には、医薬化合物が血液脳関門を通過できるように投与方法を選択及び/又は改変することが有利である。
導入方法としてはこれらに限定されるものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられる。
本化合物は、例えば輸液、ボーラス注入、上皮又は皮膚粘膜ライニングを通じた吸収などの任意の便宜よい経路によって投与することができ、他の生物学的に活性な物質と共に投与することができる。
投与は全身性又は局所的であってよい。更に、本発明の医薬組成物は、脳室内注射及びくも膜下腔内注射などの任意の適当な経路によって中枢神経系に導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、例えばオンマイヤリザーバなどのリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易に行うことができる。例えば、吸入器又はネブライザー、及びエアロゾル化剤の配合による経肺投与を用いることもできる。
別の実施形態では、化合物を小胞、特にリポソームで投与することができる(Langer (1990)Science 249, 1527)。
更なる別の実施形態では、化合物を放出制御システムによって投与することができる。一実施形態ではポンプを使用することができる(Sefton(1987)CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14, 201; Buchwald et al.(1980)Surgery 88, 507; Saudek et al.(1989)N. Engl. J. Med. 321, 574)。別の実施形態では高分子材料を使用することができる(Ranger and Peppas(1983)Macromol. Rev. Macromol. Chem. 23, 61; Levy et al.(1985)Science 228,190; During et al.(1989)Ann. Neurol. 25,351; Howard et al.(1989)J. Neurosurg. 71,858)。更に別の実施形態では、放出制御システムを治療ターゲット、すなわち脳の近傍に配置することによって全身投与用の用量の何分の1かの量のみを要するだけとなる(例、Goodson,1984,In:Medical Applications of Controlled Release,前出,Vol.2,115)。他の放出制御システムがLanger(1990, Science 249, 1527)による概説において考察されている。
適切な投与方法を選択するため、当業者であれば他の公知の抗アルツハイマー薬に対して選択されている投与経路も考慮されよう。
例えば、アリセプト/ドネペジル及びコグネクス/タクリン(いずれもアセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は経口で服用されており、アクスラ/メマンチン(Axura/Memantine)(NMDA受容体アンタゴニスト)はいずれも錠剤/液剤及びIV溶液として発売されている。
更に、当業者であれば、臨床治験及びアルツハイマー病に対するその効果を調べた他の研究におけるNSAIDファミリーのメンバーの投与経路に関して入手可能なデータが考慮されるであろう。
適切な用量を選択するため、当業者であれば、前臨床及び/又は臨床研究において毒性のないことが示され、かつ事前に与えられた値に基づいた用量、あるいはこれらとは異なりうる用量を選択するであろう。
製剤において使用される正確な用量は、投与経路、及び病気又は疾患の重篤度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に基づいて決定されなければならない。しかしながら、静脈内投与に適した用量の範囲は一般的に体重1kg当たり活性化合物が約20〜500μgである。鼻腔内投与に適した用量の範囲は一般的に約0.01mg/kg体重〜1mg/kg体重である。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から外挿することができる。
動物モデルの一例として、2重突然変異KM670/671NLを有するAPP695型を有する形質転換マウス系統「Tg2576」がある。参考として、米国特許第5877399号、及びHsiao et al.(1996)Science 274,99、更に Kawarabayahsi T(2001)J.Neurosci.21,372;Frautschy et al.(1998)Am.Pathol.152,307;Irizarry et al.(1997)J.Neuropathol.Neurol.56,965;Lehman et al.(2003)Neurobiol.Aging 24,645を参照されたい。
複数の研究からの相当のデータが当業者に利用可能であり、当業者が選択された治療レジメンに対する適切な用量を選択するうえで有益である。
γ−セクレターゼ活性に対する分子の作用について述べた多くの研究が発表されている。こうした研究の例としては以下のものがある。Lim et al.(2001)Neurobiol.Aging 22,983;Lim et al.(2000)J Neurosci.20,5709;Weggen et al.(2001)Nature 414,212;Eriksen et al.(2003)J Clin Invest.112,440;Yan et al.(2003)J Neurosci. 23,7504。
一般的な合成法の説明
以下の一般的説明はあくまで説明を目的としたものであって決して発明を限定するためのものではない。
R1、R2、R3、及びR4が式Iに定義されるような式Iの化合物は、室温で数時間、水、テトラヒドロフラン(THF)及びメタノールなどの適当な溶媒混合物中でNaOHと反応させるなどの標準的な酸性又は塩基性の加水分解条件下でエステルIIの加水分解によって得ることができる。
アルキルがメチル及びエチルを含む化合物IIは、一般的なベンジル化条件下、例えば、25〜120℃の温度範囲で炭酸カリウム又は炭酸セシウムなどの塩基の存在下、DMF又はTHF中で、臭化ベンジル、塩化ベンジル、ベンジルトシラート、又はベンジルメシラートによる化合物IIIのアルキル化によって得ることができる。化合物IIは、光延条件下、例えばカルボン酸ジエチル及びトリフェニルホスフィンの存在下、THF又はトルエン中で、化合物IIIとベンジルアルコールとの反応によっても得られる。
化合物IIIは、Pd−Cの存在下、例えばメタノール(MeOH)又はエタノール(EtOH)などのアルコール中で水素化することによって化合物IVを脱ベンジル化することによって調製することができる。脱ベンジル化は、DCM中、BBr3、DMSO中、NaCN/120〜200℃、又はDMF中、LiCN/120〜200℃などの他の条件で行うこともできる。
化合物IVは、臭化sec−ブチル又は臭化sec−ブテニルにより化合物Vをアルキル化することによって調製することができる。化合物Vを、THF又は別の非プロトン性溶媒中、例えばビス(トリスメチルシリル)リチウムアミド、ビス(トリスメチルシリル)ナトリウムアミド、又はリチウムジイロプロピルアミドなどの塩基により−78℃で処理した後、臭化sec−ブチル又は臭化sec−ブテニルを加えることによってアルキル化された化合物IVが得られる。
化合物Vは、Pd(PPh3)4の存在下、炭酸ナトリウム水溶液をDMEに加える鈴木条件下でアリールボロン酸とのカップリング反応によって化合物VIから調製することができる。
中間化合物VIは、化合物VIIを、1当量のピリジンの存在下、0℃で無水トリフルオロメタンスルホン酸とDCM中で反応させることによって調製することができる。
中間フェノール性エステルVIIは、化合物VIIIのモノ脱ベンジル化によって調製することができる。化合物VIIIの選択的モノ脱ベンジル化は、Parrシェーカー中で水素雰囲気(413.7 kPa (<60psi))下、Pd−C触媒の存在下、1.1当量の例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの塩基により、エタノール又はメタノール溶液中で処理することによって行うことができる。この反応を1当量の水素が消費されるまで進行させる。
中間体VIIIは、3,5−ジヒドロキシフェニル酢酸メチルエステル(市販されている)を、室温でDMF中、臭化ベンジル及び炭酸カリウムと反応させることによって容易に調製することができる。
化合物Iは、カルボキシル基のα位にキラル中心を有し、2つのエナンチオマーの一方として存在しうる(又はエナンチオマー過剰が存在するかあるいはしないエナンチオマーの混合物として)。エナンチオマーIa(Rエナンチオマー)及びIb(Sエナンチオマー)を示す。純粋なエナンチオマーIa及びIbはキラルカラムを用いたキラル分離によって得られる。エナンチオマーIaとIbとは、分別再結晶によってキラルアミン塩を形成する分割法によって分離することもできる。エナンチオマーIa及びIbは、例えば水性DMF、DMSO、t−ブチル−エチルエーテル、又はトリトンX−100水溶液などの水性有機溶媒中で、例えば、AmanoAk、AmanoリパーゼPS、AmanoリパーゼA、AmanoリパーゼM、AmanoリパーゼF−15、AmanoリパーゼG(バイオカタリティックス社(Biocatalytics Inc))を用いて、対応するエステルのラセミ体を反応速度論的に分割することによっても得られる。
化合物Iの両方のエナンチオマーを、不斉合成によって調製することができる。化合物Ia及びIbは、水性THF中、過酸化水素の存在下で水酸化リチウムによってそれぞれ化合物IXa及びIXbからキラル補助基を除去することによって得ることができる。
化合物IXa及びIXbは、一般的な塩基性条件下、例えば25〜120℃の温度範囲で例えば炭酸カリウム又は炭酸セシウムなどの塩基の存在下、DMF又はTHF中で、臭化ベンジル、塩化ベンジル、ベンジルトシラート、又はベンジルメシラートと化合物Xa及びXbをカップリングすることによって得ることができる。化合物IXa及びIXbは、光延条件下、例えばアゾジカルボン酸ジエチル及びトリフェニルホスフィンの存在下、THF又はトルエン中で、化合物Xa及びXbをベンジルアルコールとカップリング反応させることによっても得られる。
化合物Xa及びXbは、Pd−Cの存在下、例えばMeOH又はEtOHなどのアルコール溶媒中での水素化により化合物XIa及びXIbをそれぞれ脱ベンジル化することによって調製することができる。
化合物XIa及びXIbは、臭化sec−ブチル又は臭化sec−ブテニルで化合物XIIa及びXIIbをそれぞれアルキル化することによって調製することができる。化合物XIIa及びXIIbを、THF又は別の非プロトン性溶媒中、例えばビス(トリスメチルシリル)リチウムアミド、ビス(トリスメチルシリル)ナトリウムアミド、又はリチウムジイロプロピルアミドなどの塩基により−78℃で処理した後、臭化sec−ブチル又は臭化sec−ブテニルなどの求電子物質を加えることによってアルキル化された化合物XIa及びXIbがそれぞれ得られる。
化合物XIIa及びXIIbは、エバンス法によって、4−ベンジル−オキサゾリジン−オンのR異性体XIVa、又は4−ベンジル−オキサゾリジン−オンのS異性体XIVbとカップリングすることによって共通の中間体XIIIから調製することができる。中間体XIIIは、例えばトリエチルアミン又はN−メチルモルフォリンなどの塩基の存在下、THF中で塩化ピバロイル、塩化オキザリル、又はクロロギ酸イソプロピルと反応させて、混合無水物又は酸塩化物とした後、これをXIVa又はXIVbのリチウム塩とTHF中で反応させる。A.G.マイヤーズ(Myers)条件により、例えば偽エフェドリンなどの他のキラル補助基を不斉合成に使用することもできる(J.Chem.Soc.1994,116,9361−9362)。偽エフェドリンのエナンチオマーの一方をカルボン酸塩化物又は無水物で処理することによりアミド誘導体XVが得られる。このアミドを塩化リチウムの存在下で例えばリチウムジイソプロピルアミドなどの強塩基で処理した後、アルキル化剤を加えることによって、対応するアルキル化生成物が得られる。次いでキラル補助基を酸加水分解で除去することによってキラルな標的化合物が得られる。
中間化合物XIIIは、例えば水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムの水性メタノール溶液などの塩基の水性アルコール溶液で化合物Vをエステル加水分解することによて得ることができる。
合成法
特に断らないかぎり、反応はすべて不活性雰囲気中で行った。NMRスペクトルはBruker dpx400によって得た。LCMSは、A法についてZORBAX(登録商標)SB−C18、4.6×75mm、3.5ミクロンのカラムを使用し、Agilent1100で行った。カラム流量を1ml/分とし、溶媒として水及びアセトニトリル(0.1%TFA)を10μlの注入体積で使用した。波長は254及び210nmとした。キラルカラムによってキラル純度分析を行った。
(実施例1)
(R)2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
ラセミ体合成及びキラル分離
a) (3,5−ビス−ベンジルオキシ−フェニル)−酢酸メチルエステル
(3,5−ジヒドロキシ−フェニル)−酢酸メチルエステル(アルドリッチ社(Aldrich)、70g、0.385mol)、臭化ベンジル(137mL、1.16mol)、炭酸カリウム(160g、1.16mol)、及びDMF(1.5L)の混合物をN2下、室温で一晩、機械的に攪拌した。得られた反応混合物を攪拌しながら1.5Lの氷水混合物中に注いだ。濾過により沈殿物を得て、ヘプタンで連続して洗浄して臭化ベンジルを除去することによって標題化合物(123.7g)を褐色固体として得た。これを風乾して次の反応で用いた。1H−NMR(CDCl3):δ3.60(s,2H),3.71(s,3H),5.05(s,4H),6.60(s,3H),7.35−7.50(m,10H);C23H22O4(M+H)に対する計算値363.15,実測値363
b) 3−ベンジルオキシ−5−ヒドロキシ−フェニル)−酢酸エチルエステル
50g(1.38mol)の3,5−ビス−ベンジルオキシ−フェニル)−酢酸メチルエステル及び水酸化ナトリウム(6.6g、1.65mol)を1Lのエタノール(EtOH)に加えた溶液を10%のPd−Cの存在下、Parrシェーカー中で1当量の水素が消費されるまで水素化した。混合物を濃塩酸で酸性とした後、触媒及び溶媒を除去して油状残渣を得た。粗生成物を、酢酸エチル−ヘプタンを溶離剤(酢酸エチルが10%〜75%の勾配)として用いてISCOシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO)で精製して25g(収率65%)の標題化合物(1b)を得た。1H−NMR(CDCl3):δ1.15−1.20(t,3H),3.4−(s,2H),4.05−4.1(q,2H),4.9(s,2H),5.5(s,1H),6.4(s,2H),6.5(s,1H),7.207.35(m,5H);C17H18O4(M+H)に対する計算値287.3,実測値287
c) (3−ベンジルオキシ−5−トリフロオロメタンスルホニルオキシ−フェニル)−酢酸エチルエステル
3−(ベンジルオキシ−5−ヒドロキシ−フェニル)−酢酸エチルエステル(74.4g、0.26mol)をジクロロメタン(700mL)に加えた溶液に、ピリジン(62.5mL、0.78mol)を加えた。混合物を0℃にまで冷却した。内温を5℃より低く保ちながらこの冷却溶液に無水トリフロオロメタンスルホン酸(65.6mL、0.39mol)を1.5時間かけて加えた。この反応混合物を1NのHCl(420mL)と湿氷(105g)との混合物に注ぎ、0.5時間攪拌した。水層をジクロロメタン(2×100mL)で抽出した。合わせた画分を水(2×100mL)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の飽和水溶液(2×100mL)、及び食塩水(2×100mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で濃縮して赤茶色の液体(108g)を得、これを更に精製することなく次の工程で用いた。
C18H17F3O6S(M+H)に対する計算値419.07,実測値419.1
d) (5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸エチルエステル
(3−ベンジルオキシ−5−トリフロオロメタンスルホニルオキシ−フェニル)−酢酸エチルエステル(108g、0.26mol)、4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(55.6g、0.29mol)、1,2−ジメトキシエタン(1.1L)、及び炭酸ナトリウム水溶液(2M、129mL、0.26mol)の混合物を、N2でパージしながら室温で10分間、機械的に攪拌した。この系に、Pd(Ph3)4(480mg、0.42mmol)を加え、加熱して(95℃)2.5時間環流した。得られた赤褐色の混合物を酢酸エチル(0.5L)で希釈し、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の飽和水溶液(3×200mL)及び食塩水(2×200mL)で洗浄した。有機画分を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。粗混合物をISCOカラムクロマトグラフィーで精製して(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸エチルエステルを得た(107g、100%)。
1H−NMR(CDCl3):δ1.26(t,3H),3.66(s,2H),4.17(q,2H),5.12(s,2H),6.99(s,1H),7.12(s,2H),7.34−7.49(m,5H),7.67(s,4H);C24H21F3O3(M+H)に対する計算値415.14,実測値415.2
e) 2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタ−4−エン酸エチルエステル
化合物1d(4.9g、11.8mmol)をTHF(50mL)に加えた溶液に−78℃で、Li[N(SiMe3)2](1N THF中、14.2mL、14.2mmol)を滴下した。反応混合物を−78℃で1時間攪拌した後、3−ブロモ−2−メチル−プロペン(1.25mL、12.4mmol)を滴下した。この溶液を−35℃にまで徐々に昇温し、−35℃で0.5時間攪拌した。反応を飽和塩化アンモニウム溶液で停止させ、酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮、及びカラムクロマトグラフィーにより精製して化合物1eを透明な油状物として得た(5.1g、92%)。1H NMR(400MHz,CHLOROFORM−D)δppm 1.19−1.29(m,3H),1.74(s,3H),2.47(m,1H),2.85(m,1H),3.83(m,1H),4.11(m,2H),4.72(s,1H),4.77(s,1H),5.12(s,2H),7.03(s,1H),7.10(s,1H),7.15(s,1H),7.35−7.48(m,5H),7.67(s,4H);C28H27F3O3(M+H)に対する計算値469.19,実測値469
f) 2−(5−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタン酸エチルエステル
化合物1e(5.1g、10.9mmol)と10%Pd/C(500mg)のエタノール(EtOH)溶液(50mL)との混合物を、Parシェーカー中、H2下(275.8kPa(40psi))で20時間水素化した。得られた反応混合物をセライトで濾過し、濾液を濃縮して化合物1fを透明な油状物として得た(4.2g、100%)。1H NMR(300MHz,CHLOROFORM−D)δppm 0.92(d,J=6.6Hz,6H),1.25(m,3H),1.49−1.61(m,1H),1.65−1.70(m,1H),1.95−2.05(m,1H),3.67(t,J=7.7Hz,1H),4.10−4.29(m,2H),6.91(s,1H),6.97(t,J=2.0Hz,1H),7.08(s,1H),7.65(s,4H);C21H23F3O3(M+H)に対する計算値381.16,実測値381
g) 2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
化合物1f(4g、10mmol)のDMF溶液に、炭酸セシウム(g、15mmol)、次いで臭化3,5−ジフルオロベンジルを加えた。得られた溶液を室温で18時間攪拌した後、水で反応を停止させた。この水溶液を酢酸エチルで抽出した。有機層を洗浄、乾燥、及び蒸発させて残渣を得た(5g)。次いで粗生成物を1N水酸化カリウム(KOH)/メタノール溶液(MeOH)(3当量)中、室温で一晩置いた。溶液を濃塩酸で酸性とした後、酢酸エチルで抽出した。次いで有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレータで蒸発させて粗生成物を得た。粗生成物をヘプタン中で粉砕し、4.3g(収率91%)の(R)及び(S)生成物を得た。
このラセミ混合物を、メタノール及び0.1%のギ酸を含むアセトニトリルを溶離剤として用いてChiralpakADカラムによりキラル分離して(R)エナンチオマーである化合物1及び(S)エナンチオマーである化合物2をそれぞれ得た。
(R)エナンチオマーはメタノール中での旋光度が−27.29°であり、(S)エナンチオマーはメタノール中での旋光度が+25.2°であった。絶対的な立体化学中心を、以下に述べる合成用物質との関連によって指定した。
(R)−2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸の不斉合成
h)5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸
(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸エチルエステル(120g、0.29mol)をTHF(1.2L)に加えた溶液に、水(240mL)、LiOH.H2O(16g、0.32mol)を加え、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。この溶液を濾過し、真空下で濃縮してTHFを除去した。得られた粘稠液に2N塩酸水溶液を加えてpH2まで酸性化し、得られた白色懸濁液を室温で1時間機械的に攪拌した。濾過により湿った白色生成物を回収し、これを酢酸エチル(500mL)に溶解した。有機層を水から分離し、硫酸マグネシウム上乾燥()して、真空下で濃縮することによって(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(105g、94%)を得た。
1H−NMR(d6−DMSO):δ3.64(s,2H),5.18(s,2H),7.02(s,1H),7.24(d,2H),7.34−7.50(m,5H),7.81(d,2H),7.89(d,2H),12.25(bs,0.6H);C22H17F3O3(M+H)に対する計算値387.11,実測値387.1
i) 4−ベンジル−3−[2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−アセチル]−オキサゾリジン−2−オン
(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(20g、52mmol)をTHF(104mL)に加えたものを機械的に攪拌した溶液に−78℃でN−メチルモルホリン(NMM)(6.3mL、57mmol)及びトリメチルアセチルクロリド(7.0mL、57mmol)を、内温を−70℃より低く保ちながら加えた。この混合物を−78℃で15分、更に0℃で1時間攪拌した。白色固体を濾去して濾液中に無水物を得、これを再び−78℃に冷却した。別のフラスコ中で、(R)−(+)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(9.6g、54.4mmol)をTHF(109mL)に加えた溶液に−78℃で、内温を−70℃より低く保ちながらnBuLi(1.6M、ヘキサン中、34mL、54.4mol)を滴下し、−78℃で45分間攪拌した。この金属化されたキラル補助剤を上記の無水物に−78℃でカニューレで加え、1.5時間かけて0℃にまで昇温した。得られた混合物を更に0℃で30分間攪拌し、過剰量の飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることによって反応を停止させた。この溶液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3×100mL)及び食塩水(2×100mL)で洗浄した。溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を真空下で除去した。粗物質をISCOシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して20.3g(72%)の4−ベンジル−3−[2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−アセチル]−オキサゾリジン−2−オンを白色の固体として得た。
1H−NMR(CDCl3):δ2.76(dd,1H),3.26(dd,1H),4.19(m,2H),4.35(q,2H),4.69(m,1H),5.13(s,2H),7.04−7.46(m,13H),7.67(s,4H);C32H26F3NO4(M+H)に対する計算値546.18,実測値546.3
j) 4−ベンジル−3−[2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタ−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン
4−ベンジル−3−[2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−アセチル]−オキサゾリジン−2−オン(6.0g、11.00mmol)を乾燥THF(22mL)に加えた無色の溶液に−78℃でヘキサメチルジシラザンナトリウム(NaHMDS)(1M、THF溶液中、12.11mL、12.11mmol)を、内温を−75℃よりも低く保ちながら滴下した。得られた赤色の溶液を−78℃で30分攪拌した。これに3−ブロモ−2−メチル−プロペン(4.44mL、44mmol)を内温を−75℃よりも低く保ちながら加えた。添加がほぼ完了に近くなった時点で反応混合物は緑色に変わった。この時点でドライアイス槽を速やかに取り外し、水/氷浴槽と交換して添加を完了した。反応混合物を0℃で更に30分攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止させた。反応系を酢酸エチル(100mL)で希釈し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を真空下で除去し、粗混合物をISCOシリカゲルカラムにより精製して4−ベンジル−3−[2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタ−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(6.3g、95 %)を得た。
1H−NMR(CDCl3):δ1.80(s,3H),2.46(dd,1H),2.75(dd,1H),3.05(dd,1H),3.32(dd,1H),4.08(m,2H),4.59(m,1H),4.80(d,2H),5.13(s,2H),5.48(dd,1H),7.11(d,2H),7.21−7.49(m,11H),7.67(s,4H);C36H32F3NO4(M+H)に対する計算値600.23,実測値600.3
k) 4−ベンジル−3−[2−(5−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタノイル]−オキサゾリジン−2−オン
4−ベンジル−3−[2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタ−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(6.7g、11.2mmol)をメタノール(150mL)に加えた溶液に10%Pd/C(670mg、10w%)を加えた。得られた黒色懸濁液を310.3〜310.3kPa(45〜45psi)で一晩水素化した。この混合物をセライトで濾過し、溶媒を真空下で除去して比較的純度の高い4−ベンジル−3−[2−(5−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタノイル]−オキサゾリジン−2−オン(5.4g、93%)を得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.94(d,3H),0.98(d,3H),1.54(m,1H),1.74(m,1H),2.12(m,1H),2.79(dd,1H),3.36(dd,1H),4.11(m,2H),4.62(m,1H),5.25(t,1H),6.97(m,2H),7.21−7.37(m,6H),7.67(s,4H);C29H28F3NO4(M+H)に対する計算値512.20,実測値512.3
l) 4−ベンジル−3−{2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)− 4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オン
4−ベンジル−3−[2−(5−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタノイル]−オキサゾリジン−2−オン(18.77g、36.73mmol)をアセトニトリル(184mL)に加えた溶液に、0℃で1−ブロモメチル−3,5−ジフルオロ−ベンゼン(7.13mL,55.10mmol)及びCs2CO3 (23.94g、73.46mmol)を少量ずつ、5分間かけて加えた。得られた白色懸濁液を室温で2時間攪拌した。得られた白色固体を濾去し、溶媒を真空下で除去して比較的純度の高い4−ベンジル−3−{2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オンを得た。
m) 2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
4−ベンジル−3−{2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オン(23.40g、36.73mmol)をTHF(180mL)に加えた溶液に水(60mL)を加えた。この系を0℃に冷却した。この冷却溶液に、LiOH.H2O(1.54g、36.73mmol)及び30%H2O2(16.65mL、146.92mmol)を内温を5℃よりも低く保ちながら滴下した。得られた濁った溶液を0℃で20分間攪拌した。過剰なH2O2に1.5Mの亜硫酸ナトリウム水溶液(97.9mL、146.92mmol)を加えることにより反応を停止させ、室温で15分間攪拌した。有機溶媒を真空下で除去した。得られた液体に1N塩酸水溶液を加えることによってpH2にまで酸性化した。水層を酢酸エチル(3×200mL)で抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥して真空下で濃縮して得られた粗混合物をISCOシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して(R)−2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸(12.25g、70%)を得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.93(d,6H),1.51(m,1H),1.72(m,1H),1.98(m,1H),3.72(t,1H),5.09(s,2H),6.76(m,1H),6.98(m,3H),7.07(t,1H),7.17(s,1H),7.66(m,4H);C26H23F5O3(M+H)に対する計算値479.45,実測値479.2
(実施例2)
(S)−2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
a) 4−ベンジル−3−[2−(5−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタノイル]−オキサゾリジン−2−オン
実施例1のパート(k)の合成法と同様の手順にしたがって標題化合物を4−ベンジル−3−[2−(5−ベンジルオキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタ−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オンから調製した。
1H−NMR(CDCl3):δ0.94(d,3H),0.98(d,3H),1.54(m,1H),1.74(m,1H),2.12(m,1H),2.79(dd,1H),3.36(dd,1H),4.11(m,2H),4.62(m,1H),5.25(t,1H),6.97(m,2H),7.21−7.37(m,6H),7.67(s,4H);C29H28F3NO4(M+H)に対する計算値512.20,実測値512.3
b) 4−ベンジル−3−{2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)− 4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オン
4−ベンジル−3−[2−(5−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタノイル]−オキサゾリジン−2−オン(0.400g、0.78mmol)をアセトニトリル(3mL)に加えた溶液に、室温で1−ブロモメチル−3,5−ジフルオロ−ベンゼン(0.243g、1.17mmol)及びCs2CO3(0.508g、1.56mmol)を加えた。得られた白色懸濁液を1時間攪拌した。得られた白色固体を濾去し、溶媒を真空下で除去して比較的純度の高い4−ベンジル−3−{2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オンを得た。
c) 2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
4−ベンジル−3−{2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)− 4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オン(0.425g、0.67mmol)をTHF(10mL)に加えた溶液に水(3.5mL)を加えた。この系を0℃に冷却した。この冷却溶液に、LiOH.H2O(0.028g、0.67mmol)及び30%H2O2(304mL、2.68mmol)を内温を5℃よりも低く保ちながら滴下した。得られた濁った溶液を0℃で20分間攪拌した。過剰なH2O2に1.5Mの亜硫酸ナトリウム水溶液(1.79mL、2.68mmol)を加えることにより反応を停止させ、室温で5分間攪拌した。有機溶媒を真空下で除去した。得られた液体に1N塩酸水溶液を加えることによってpH2にまで酸性化した。水層を酢酸エチル(3×25mL)で抽出して硫酸マグネシウムで乾燥した。混合物を真空下で濃縮して粗生成物を得、これをISCOシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して(S)−2−[5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸を得た(0.295g,92%)。
1H−NMR(CDCl3):δ0.93(d,6H),1.51(m,1H),1.72(m,1H),1.98(m,1H),3.72(t,1H),5.09(s,2H),6.76(m,1H),6.98(m,3H),7.07(t,1H),7.17(s,1H),7.66(m,4H);C26H23F5O3(M+H)に対する計算値479.45,実測値479.2
(実施例3)
(R)−2−[5−(4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
a) 4−ベンジル−3−{2−[5−(4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オン
4−ベンジル−3−[2−(5−ヒドロキシ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル)−4−メチル−ペンタノイル]−オキサゾリジン−2−オン(実施例1の工程(k)と同様に調製したもの)(0.400g、0.78mmol)をアセトニトリル(3.9mL)に加えた溶液に1−ブロモメチル−4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンゼン(0.181mL、1.17mmol)及びCs2CO3(0.508g、1.56mmol)を加えた。得られた白色懸濁液を室温で1時間攪拌した。得られた白色固体を濾去し、溶媒を真空下で除去して比較的純度の高い4−ベンジル−3−{2−[5−(4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オンを得た。
b) 2−[5−(4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
4−ベンジル−3−{2−[5−(4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)− 4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタノイル}−オキサゾリジン−2−オン(0.535g,0.78mmol)をTHF(9mL)に加えた溶液に水(3mL)を加えた。この系を0℃に冷却した。この冷却溶液にLiOH.H2O(33mg、0.78mmol)及び30%H2O2(0.354mL、3.12mmol)を加え、0℃で20分攪拌した。過剰なH2O2に1.5Mの亜硫酸ナトリウム水溶液(2.08mL、3.12mmol)を加えることにより反応を停止させ、室温で5分間攪拌した。有機溶媒を真空下で除去した。得られた液体に1N塩酸水溶液を加えることによってpH2にまで酸性化した。水層を酢酸エチル(3×50mL)で抽出して硫酸マグネシウムで乾燥した。混合物を真空下で濃縮して粗生成物を得、これをISCOシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して(R)−2−[5−(4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸(310mg)を得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.92(d,6H),1.52(m,1H),1.71(m,1H),1.99(m,1H),3.73(t,1H),5.27(s,2H),6.98(bs,1H),7.06(bs,1H),7.17(bs,1H),7.29(m,1H),7.42(m,1H),7.68(m,5H);C27H23F7O3(M+H)に対する計算値529.46,実測値529.2
(実施例4)
2−[4’−クロロ−5−(3,5−ジフルオロ−2−ベンジルオキシ)−3’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
a) 2−(3,5−ビス−ベンジルオキシ−フェニル)−4−メチル−ペンタ−4−エン酸メチルエステル
(3,5−ビス−ベンジルオキシフェニル)酢酸メチルエステル(実施例1の工程(a)で調製したもの)(13.0g,35.9mmol)をTHF(80mL)中で攪拌した溶液に、THF−ヘプタン−エチルベンゼン(21.5mL、43.0mmol)に2MのLDAを加えた溶液を−78℃で12分かけて窒素雰囲気下で滴下した。温度を更に50分間−70℃よりも低く保った後、3−ブロモ−2−メチルプロペン(4.0mL,39.7mmol)を一度に加え、反応混合物を0℃にまで昇温した。2時間後に混合物を真空下で濃縮し、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で希釈し、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥して、真空下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル中0〜10%酢酸エチル)により精製して標題化合物を黄色の油状物として得た(14.1g、94%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.42−7.25(m,10H),6.58(s,2H),6.52(s,1H),5.02(s,4H),4.74(s,1H),4.66(s,1H),3.74(t,1H),3.64(s,3H),2.79(dd,1H),2.38(dd,1H),1.70(s,3H).
b) 2−(3−ベンジルオキシ−5−ヒドロキシ−フェニル)−4−メチル−ペンタン酸エチルエステル
中間体4a(20g、48mmol)、水酸化ナトリウム(2.3g、57mmol)をエタノール(500mL)に加えた混合物にN2下、活性炭に吸着させた0.5gのPd−C(10%)を加えた。混合物を275.8kPa(40psi)で30分水素化した。LC/MSによってこの時点で開始物質が消費されたことが示された。触媒を濾去してエタノールを蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(0〜40%酢酸エチル/ヘプタン)により、11.8g(収率75%)の無色の油状物を、メチル及びエチルエステルと未還元の二重結合エステルとの混合物として得た。MH+341(未還元の二重結合を有するエチルエステル);343(還元されたイソプロピル分枝を有するエチルエステル);327(未還元の二重結合を有するメチルエステル)
c) 2−[3−ベンジルオキシ−5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−フェニル]−4−メチル−ペンタン酸エチルエステル
エチルエステル(メチルエステルと混合された)4b(5g、15mmol)、炭酸カリウム(4.1g、30mmol)及び臭化3,5−ジフルオロベンジル(2.9mL、22mmol)をDMF(70mL)に加えた溶液を80℃に1時間加熱した。DMFを真空により除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(0〜30%酢酸エチル/ヘプタン)で精製して4.5gの生成物を得た(収率66%)。MH+453.1及び他の分子イオン(メチルエステル及び対応するオレフィン)
d) 2−[3−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−5−トリフロオロメタンスルホニルオキシ−フェニル]−4−メチル−ペンタン酸エチルエステル
中間体4c(4.5g、10mmol)のメタノール(100mL)溶液にN2下、活性炭に吸着させた0.45gのPd−C(10%)を加え、混合物を137.9kPa(20psi)で2時間水素化した。触媒を濾去し、メタノールを蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(0〜50%酢酸エチル/ヘプタン)により、3.0gのフェノールを無色油状物として得た。これを50mLのDCMに溶解して0℃に冷却した。ピリジン(2mL、40mmol)及び無水トリフルオロメタンスルホン酸(2mL、12mmol)を加えた。この溶液を0℃で1時間攪拌した後、1N塩酸溶液(20mL)に注ぎ、DCM(200mL)で抽出し、炭酸水素ナトリウム/塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。DCM層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発させて4.0gの黄色油状物を得た(2工程での収率78%)。MH+511.2
e) 2−[4’−クロロ−5−(3,5−ジフルオロ−ベンジルオキシ)−3’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸エチルエステル
3−CF3−4−Cl−ベンゼンボロン酸(3.6g、16mmol)、トリフラート4d(4g、7.8mmol)、(PPh3)4Pd(0.5g、0.4mmol)、炭酸カリウム(2.2g、16mmol)をトルエン/エタノール/水(20/10/5mL)に加えた溶液を密封された反応チューブに入れ、80℃に1時間加熱した。酢酸エチル(200mL)を加えて食塩水で洗浄した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウム上で乾燥して蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(0〜20%/酢酸エチル/ヘキサン)により3.05gの無色油状物が得られた(74%)。MH+541.3
f) 2−[4’−クロロ−5−(3,5−ジフルオロ−2−ベンジルオキシ)−3’−トリフルオロメチル−ビフェニル−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸
中間体4e(3g、5.5mmol)、1N水酸化ナトリウム(16mL)をTHF/メタノール(50/50mL)に加えた溶液を室温で1日攪拌した。溶液を濃縮し、酢酸エチル(500mL)を加えた。1N塩酸及び食塩水で洗浄した後、酢酸エチル層を硫酸マグネシウム上で乾燥して蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(0〜30%/酢酸エチル/ヘキサン)により2.7gの白色固体(71%)を得た。次いでこの固体を酢酸エチル(100mL)に溶解し、1N水酸化ナトリウム(5.26mL、5mmol)に加え、室温で10分攪拌した。次いで溶媒を真空により除去し、化合物をナトリウム塩として得た。MH+513.2(弱いピーク).1HNMR(300MHz,CD3OD):δ0.94(d,6H,J=6.51Hz),δ1.5−1.67(m,2H),δ1.9−2.0(m,1H),δ3.67(t,1H,J=7.85Hz),δ5.2(s,2H),δ6.89(m,1H),δ7.1(m,4H),δ7.27(s,1H),δ7.68(d,1H,J=8.42Hz),δ7.85(m,1H),δ7.97(d,1H,J=2.0Hz).
シクロオキシゲナーゼ−1及びシクロオキシゲナーゼ−2(Cox−1、Cox−2)に対する本発明の化合物の作用の決定
Cox−1及びCox−2の阻害を、ケイマンケミカル社(Cayman Chemical Company)(米国ミシガン州アナーバー所在)によって提供されるColorimetric Cox inhibitorスクリーニングアッセイ(カタログNo.7609111)を製造者の指示にしたがって使用して調べた。
本発明の実施例1は100μMで50%阻害率を示した。
本発明の化合物のγ−セクレターゼ活性についてのスクリーニング
1%非必須アミノ酸を添加した5%血清/Feを含む、ギブコ社(Gibco)によって提供されるDMEM/Nut−mix F12(HAM)培地(カタログNo.31330−38)で増殖させた、APP695−野生型を有するSKNBE2細胞を用いてスクリーニングを行った。
細胞はコンフルエンス近くにまで増殖させた。
スクリーニングは、Citron等(1997年)Nature Medicine 3:67に述べられるようなアッセイを用いて行った。
上記と比較して、選択されたR1及びR2の値を有さず、sec−ブチル基も有さない
では、上記のWTAPP細胞アッセイにおけるIC
50は2.5uMであった。
インビボの有効性の実証
本発明のAβ42低下剤は、ヒトなどの哺乳動物におけるADを治療するために使用することが可能であるか、あるいは、これらに限定されるものではないがマウス、ラット又はモルモットなどの動物モデルにおける有効性を実証するものである。その場合の哺乳動物はADを診断されていなくともよく、ADの遺伝的素因を有していなくともよいが、ADを発症したヒトに見られるのと同様にAβを過剰生産してやがて沈着するような形質転換体であってよい。
Aβ42低下剤は任意の標準的な方法を用いて任意の標準的な形態で投与することができる。例えば、Aβ42低下剤は、これらに限定されるものではないが経口又は注射により投与される液体、錠剤又はカプセル剤の形態であり得る。Aβ42低下剤は血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、又は脳内のAβ42の濃度を有意に低下させるうえで充分な任意の容量で投与することができる。
Aβ低下剤の急性投与がインビボでAβ42濃度を低下させるか否かを調べるため、例えばマウス又はラットなどの形質転換されていないげっ歯類を用いた。別法として、「Swedish」変異を含むAPP695を発現する生後2〜3ヶ月のTg2576マウス、又は、フレッド・バン・ルーベン(Fred Van Leuven)博士(K.U.ルーベン社(K. U. Leuven)ベルギー)と共同研究者らによって開発された、ヒトアミロイド前駆体タンパク質の臨床的突然変異体[V717I]を神経細胞特異的に発現する形質転換マウスモデルを用いることができる(Moechars等,1999 J.Biol.Chem.274,6483)。若齢の形質転換マウスは脳に高濃度のAβが見られるが検出可能なAβの沈着は認められない。形質転換マウスは、生後約6〜8ヶ月で脳内に自然発生的に進行性のβ−アミロイド(Aβ)の沈着が見られ始め、やがて鉤状回、海馬及び皮質内にアミロイドプラークが形成される。Aβ低下剤で処理した動物を調べ、非処理の動物又は賦形剤で処理した動物と比較し、例えばELISAの使用など標準的な方法によって脳内の可溶性Aβ42及び全Aβレベルを定量化する。処理期間は数時間〜数日で異なり得るものであり、作用の出現の時間的経過が一旦確立されれば、Aβ42低下の結果に基づいて調節することができる。
インビボでのAβ42低下を測定するための一般的なプロトコールを示すが、これは検出可能なAβの濃度を最適化するために使用することが可能な多くの変形例の内の1つに過ぎない。例として、Aβ42低下化合物を遊離酸又はナトリウム塩として5%Solutol水溶液又は20%ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンに配合した。Aβ低下剤は例えば、経験的に求められているように屠殺及び分析の3〜4時間前に単回の経口投与として又は任意の許容可能な投与経路によって投与するか、あるいは、数日間にわたって投与して最後の投与を行った3〜4時間後に動物を屠殺してもよい。
マウスをケタラー(ケタミン)、ロムパン(キシラジン2%)及びアトロピン(2:1:1)の混合物で麻酔し、4℃の生理学的血清を経心臓的に灌流する。屠殺して血液を採取する。血液の採取は、麻酔下に心臓穿刺によりEDTA処理した採取用チューブに行う。血液を4℃、4000gで5分間遠心し、血漿を回収して後の分析用に急速冷凍する。脳を頭蓋から取り外し、後脳と前脳を前頭面に切れ目を入れて分離する。小脳を取り出し、試験化合物濃度の定量的分析のために確保しておく。前脳を正中矢状断して左右の半球に均等に分割する。
両半球を直ちに液体窒素に浸漬し、生化学的アッセイ用にホモジナイズするまで−70℃で保存する。
マウスの脳を、組織1g当たりプロテアーゼ阻害剤(Roche−11948699)を含んだ10検体の0.4%DEA(ジエチルアミン)/50mM NaCl pH10(非形質転換動物に対して)、又は、TBS中0.1%CHAPS(形質転換動物に対して)に再懸濁する(例えば0.158gの脳には1.58mlの0.4%DEAを加える)。試料はすべて、30%の出力で30秒間氷上で超音波処理する。ホモジネートを355,000×gで30分、遠心する。次いで得られた高速上清を後の精製又は直後に行われるアッセイ用に新しいチューブに移す。
得られた上清はWaterOasis HLB逆相カラム(ウォーターズ社(Waters Corp.)マサチューセッツ州ミルフォード所在)で精製することによって、後のAβ検出に先立って脳破砕物から非特異的な免疫反応物質を除去する。真空マニホルドを用い、真空圧が実験全体を通じて適宜調節されるようにして、すべての溶液を約1mL/分の速度でカラムに通過させた。各カラムは1mLの100%メタノールで予め調整した後、1mLの水で平衡化した。中和していない脳破砕物をカラムに導入した。導入した試料は、最初の洗浄を1mLの5%メタノールで行い、2回目の洗浄を1mLの30%メタノールで行うことで2回洗浄した。最後に、Aβを2%NH4OHを含む90%メタノール溶液でカラムから100×30mmのガラスチューブに溶出させた。次いで溶出液を1.5mLのチューブに移し、高温のSpeedVac濃縮装置で約2時間濃縮した。次いで濃縮されたAβを、製造者の推奨するところにしたがってプロテアーゼ阻害剤を加えたUltraCULTURE汎用無血清培地(カムブレックス社(Cambrex Corp.)メリーランド州ウォーカーズビル所在)に再懸濁した。
脳ホモジネートの可溶性画分中のAβ42の量を定量化するため、市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)用キットを使用する(Innotest(登録商標)β−Amyloid(1〜42)、イノジェネティクス社(Innogenetics N. V.)ゲント(Ghent,)、ベルギー)。Aβ ELISAは製造者のプロトコールに基本的にしたがって行う。簡単に述べると、スタンダード(合成Aβ1−42の希釈液)及び試料を、キットと共に供給される96穴ポリプロピレンコーティングプレート上に調製する(Nunc−Immuno MaxiSorp、A/Sナンク社(A/S Nunc)、デンマーク)。最終濃度を1000、500、250、125、62.5、31.3、及び15.6pg/mlとしたスタンダード希釈液及び各試料を、ELISAキットに同梱された試料希釈剤中で最終体積が60μlとなるように調製する。各試料、スタンダード、及びブランク(50μl)を抗Aβ42コーティングしたプレート(捕捉された抗体が抗原のC末端を選択的に認識する)に加える。プレートを4℃で一晩インキュベートして抗体−アミロイド複合体を形成させる。このインキュベーション及びこれに続く洗浄工程の後、選択的抗Aβ抗体複合体(ビオチン化検出抗体、例、ビオチン化4G8(コバンス・リサーチプロダクツ社(Covance Research Products)マサチューセッツ州デドハム所在))を加え、最低でも1時間インキュベートすることによって抗体−アミロイド−抗体複合体を形成させる。インキュベーション及び適当な洗浄工程の後、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体を加え、その30分後にTMB/ペルオキシド混合物を加えることで、基質が着色生成物に変換される。この反応を硫酸(1M)を加えることで停止させ、450nmのフィルターを用いたELISAリーダーによる光度測定によって色の強度を測定する。吸光度を、合成Aβ1−42について作成した基準曲線と比較することによって試料のAβ含量を定量化することができる。また、Pierce QuantBlu蛍光性ペルオキシダーゼ基質及び検出試薬(ピアース社(Pierce Corp.)イリノイ州ロックフォード所在)を製造者の指示にしたがって使用することによって検出を行うこともできる。
こうしたモデルでは、非処理の動物と比較して少なくとも20%のAβ42の低下率が有利である。
インビボのデータ
4時間の時点における経口用量30mg/kg
上記と比較して、
は、マウスにおけるAβ42の血漿濃度を40%低下させるのに100mg/kgの投与を必要とした。
上記の明細書は説明を目的として与えられる実施例と共に本発明の原理を教示するものであるが、本発明の実施には、以下の特許請求の範囲及びその均等物の範囲に含まれるすべての通常の変形例、適合例及び/又は改変例が包含される点は理解されるであろう。
上記明細書で開示したすべての刊行物はその全容を本明細書に援用するものである。