JP5403256B2 - 多結晶金属材の疲労強度評価装置と方法 - Google Patents

多結晶金属材の疲労強度評価装置と方法 Download PDF

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本発明は、実在する多結晶金属材について異方性を加味した疲労強度を評価する疲労強度評価装置と方法に関する。
鍛造や鋳造により製作された部品は集合組織を形成し、一方向凝固に近い多結晶金属となっている。このような多結晶金属は弾性特性及び塑性特性が異方性を示すため、異方性を加味した疲労強度評価法が必要になる。
そのような多結晶金属材を対象とする疲労強度評価法は、例えば、特許文献1、非特許文献1,2等に開示されている。
特許文献1は、多結晶金属について、結晶方位を仮定したモデルの応力から結晶のすべり面のせん断応力を算出するものである。
非特許文献1,2は、多結晶金属の結晶粒と結晶方位を方位像顕微鏡で特定した後に、高サイクル疲労試験を実施してすべり挙動を観察し、さらに有限要素法(FEM)を用いてすべり発生部における応力を解析したものである。
特開2008−197852号公報、「塑性加工における被加工材の組織発展の解析装置、解析システムおよび記録媒体」
北村隆行、澄川貴志、大石和義、「銅多結晶の高サイクル疲労下における粒界近傍すべり挙動と局所応力」、日本機械学会論文集(A編)、67巻663号(2001)1819−1824 北村隆行、澄川貴志、大石和義、「銅多結晶の三次元局所応力分布と疲労における固執すべり帯」、日本機械学会論文集(A編)、69巻677号(2003)203−209
特許文献1の手段は、多結晶金属について結晶方位を仮定したモデルを用いているため、計算と実体の対応をとることが考慮されておらず、具体的には実在の材料についてすべり面のせん断応力を算出することができない。
一方、非特許文献1,2により、多数の結晶粒間相互の変形拘束が強固になっている場合において、高サイクル疲労で粒界近傍に現われる特有なすべりは、その拘束に起因するせん断応力の上昇によるものであることが示された。
しかし、これらの従来技術では、多結晶金属材の疲労強度評価手段が提案されていないため、その確立が要望されていた。
本発明は、上述した要望に応えるために創案されたものである。
すなわち、本発明の目的は、実在する多結晶金属材について異方性を加味した疲労強度を評価する装置と方法を提供することにある。
本発明によれば、実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得する結晶方位解析手段と、
前記結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位から有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、
前記有限要素モデルを用いて各結晶粒に作用する応力分布を算出するFEM解析手段と、
前記応力分布と結晶方位から各結晶粒の結晶すべり面のせん断応力を算出するせん断応力算出手段と、
前記応力分布と前記せん断応力から多結晶金属の疲労強度を評価する疲労強度評価手段とを備え
前記疲労強度評価手段により、
各結晶粒に対して、多結晶のヤング率で規格化した長手方向の規格化ヤング率と、シュミット因子とを求め、
各結晶粒に対して、前記規格化ヤング率とシュミット因子の積をクラック発生指数として算出し、
前記クラック発生指数が全体に対して大きい結晶粒をクラック予測結晶として疲労強度を評価する、ことを特徴とする多結晶金属材の疲労強度評価装置が提供される。
また本発明によれば、結晶方位解析手段により、実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得し、
モデル作成手段により、前記結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位から有限要素モデルを作成し、
FEM解析手段により、前記有限要素モデルを用いて各結晶粒に作用する応力分布を算出し、
せん断応力算出手段により、前記応力分布と結晶方位から各結晶粒の結晶すべり面のせん断応力を算出し、
疲労強度評価手段により、前記応力分布と前記せん断応力から、
各結晶粒に対して、多結晶のヤング率で規格化した長手方向の規格化ヤング率と、シュミット因子とを求め、
各結晶粒に対して、前記規格化ヤング率とシュミット因子の積をクラック発生指数として算出し、
前記クラック発生指数が全体に対して大きい結晶粒をクラック予測結晶として疲労強度を評価する、ことを特徴とする多結晶金属材の疲労強度評価方法が提供される。
上記本発明の装置及び方法によれば、結晶方位解析手段により、実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得し、その結果に基づいて多結晶金属の疲労強度を評価するので、実在する多結晶金属材について異方性を加味した疲労強度を評価することができる。
また、結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位から有限要素モデルを作成し、このモデルを用いて各結晶粒に作用する応力分布を算出し、前記応力分布と結晶方位から各結晶粒の結晶すべり面のせん断応力を算出するので、その結果に基づく疲労強度評価により、実在の結晶について、すべり面のせん断応力と実験による材料の疲労強度特性との比較が可能となる。
また、単純応力の場合に、各結晶粒に対して、多結晶のヤング率で規格化した長手方向の規格化ヤング率と、シュミット因子とを求め、規格化ヤング率とシュミット因子の積をクラック発生指数として算出し、クラック発生指数が全体に対して大きい結晶粒をクラック予測結晶とすることにより、クラックの発生しやすい結晶粒を特定し、容易に疲労強度を評価することができる。
また、単純応力ではない場合に、応力分布から応力6成分を12個のすべり系座標系に変換し、各結晶粒の結晶すべり面に作用するせん断応力を算出することにより、単純応力ではない場合でも実在する多結晶金属材について異方性を加味した疲労強度を評価することができる。
結晶面のすべり応力算出のイメージ図である。 本発明による疲労強度評価装置のブロック図である。 本発明による疲労強度評価方法を示すフロー図である。 単結晶FEMモデルの説明図である。 単結晶FEMモデルの結晶方位模式図である。 2結晶FEMモデルの説明図である。 2結晶FEMモデルの結晶方位模式図である。 EBSP測定で得られた結晶粒マップである。 図8の結晶粒マップに、各結晶粒の番号とクラック位置を追記した図である。 各結晶粒の長手方向ヤング率を多結晶のヤング率で規格化した値(A)、シュミット因子(B)、及び規格化した長手方向ヤング率とシュミット因子の積(C)を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、結晶面のすべり応力算出のイメージ図であり、(A)はシュミット因子模式図、(B)は面心立方晶のすべり応力説明図である。
金属原子が3次元的に規則正しく並んでいる場合、特定の面に原子が密に並ぶ。このうち最も密に並んだ面はすべりが起こりやすく、そのすべり方向は原子が最も密に並んだ(原子同士が接している)方向が最も有利である。このような面と方向の関係をまとめて「すべり系」と呼び、面心立方晶では4個の{111}面がありそれぞれ3個の<011>方向を持つので、12個のすべり系が存在する。
単一の結晶にある応力が作用するとき、前述のすべり系に対してすべりを起こさせようとするせん断応力(以下「すべり応力」と呼ぶ)は、結晶と応力の幾何学的関係を用いることで算出できる。
単軸応力状態、つまり垂直応力のうちひとつがσ、他の応力成分5つが全てゼロの場合には図1(A)の模式図で示したようなすべり面1(法線n)、すべり方向(方向ベクトルd)と荷重F、断面積Aの関係において、数1の式(1)ですべり応力τが算出できる。ここでσは公称応力である。cosθ・cosφはシュミット因子と呼ばれ、最大で0.5の値を持つ。
Figure 0005403256
単軸応力ではなく応力6成分がある値を持つ場合には、式(1)を用いることはできない。そこで本発明では応力6成分を12個のすべり系座標系に変換して、「すべり面をすべり方向にずらせようとするせん断応力」を算出してすべり応力とする。
なおここですべり系座標系とは、すべり面法線n、すべり方向ベクトルd、t(=n×d)の3方向を基準軸に持つ座標系のことである。この場合のイメージ図を図1(B)に示す。図中では応力は矢印で表示しているが、実際にはテンソルのためベクトルのように内積で投影することはできず、座標変換を行なう必要がある。
図2は、本発明による疲労強度評価装置のブロック図である。
この図において、本発明の疲労強度評価装置は、結晶方位測定装置10、結晶方位解析プログラム12、有限要素解析プログラム14、すべり面せん断応力算出プログラム16、及びプログラム14,16をインストールしたコンピュータ18からなる。
結晶方位測定装置10は、例えばEBSP解析装置であり、結晶方位解析プログラム12を内蔵する結晶方位解析手段に相当する。
プログラム14,16をインストールしたコンピュータ18は、モデル作成手段、FEM解析手段、せん断応力算出手段及び疲労強度評価手段に相当する。
図3は、本発明による疲労強度評価方法を示すフロー図である。この図において、本発明の方法は、S1〜S5の各ステップ(工程)からなる。
結晶方位取得ステップS1では、結晶方位解析手段により、実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得する。
モデル作成ステップS2では、モデル作成手段により、前記結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位から有限要素モデルを作成する。
応力分布算出ステップS3では、FEM解析手段により、前記有限要素モデルを用いて各結晶粒に作用する応力分布を算出する。
せん断応力算出ステップS4では、せん断応力算出手段により、前記応力分布と結晶方位から各結晶粒の結晶すべり面のせん断応力を算出する。
疲労強度評価ステップS5では、疲労強度評価手段により、前記応力分布と前記せん断応力から多結晶金属の疲労強度を評価し出力する。
(単結晶FEM解析)
図4は、単結晶FEMモデルの説明図である。この図において、単結晶FEMモデルは1辺が10mmの立方体であり、底面にZ拘束、原点Oの節点にXY拘束、A節点にY拘束、B節点にX拘束を与えている。また応力はZ方向に+100MPaを付与している。
図5は単結晶FEMモデルの結晶方位模式図である。この図において、(A)を結晶方位1、(B)を結晶方位2、(C)を結晶方位3と呼ぶ。
この結晶方位1〜3に対し、所定のミラー指数で結晶方位を与えて、FEM解析を実施した。表1は、FEM解析結果とその理論値を示している。
Figure 0005403256
表1から、FEM解析結果と理論値の垂直ひずみが高い精度で一致していることがわかる。また、せん断ひずみ成分はFEM解析、理論値ともにゼロであった。
また、12個のすべり系のすべり応力を算出したところ、FEM解析結果から座標変換して得られたすべり応力は、単軸応力下でシュミット因子により生じるすべり応力の理論値と高い精度で一致した。従って、上述した単結晶FEM解析は、弾性応力解析と同様、すべり応力の算出においても高い精度が得られることがわかる。
(2結晶FEM解析)
単結晶の場合、表1から明らかなように、結晶方位が異なるとヤング率および変形挙動が大きく異なる。そのため、異なる方位の結晶粒が隣り合う場合、その境界には特異な応力分布が発生することが予想され、隣り合った結晶粒の方位が大きく異なる場合に顕著な応力分布変化が起こると考えられる。
そこで、結晶方位の異なる単結晶要素集合を2個結合して、仮想2結晶の弾性応力解析を行なった。
図6は、2結晶FEMモデルの説明図である。2結晶FEMモデルの拘束条件は、単結晶FEMモデルと同一である。
また、図7は、2結晶FEMモデルの結晶方位模式図である。この図において、(A)は結晶方位1,2を組み合わせた2結晶FEMモデルA、(B)は結晶方位1,3を組み合わせた2結晶FEMモデルB、(C)は結晶方位2,3を組み合わせた2結晶FEMモデルCである。
これらのモデルA,B,Cに対し、FEM解析を実施し、結晶粒界の応力分布とすべり応力分布を理論値と比較した。その結果を以下に説明する。
(長手方向応力分布)
FEM解析で得られた長手方向応力分布は、Z方向の公称応力は100MPaであるにも関わらず、結晶粒界付近には113〜129MPaの長手応力が発生していた。これは結晶粒が相互に拘束しあうことで応力分布の不均一が生じ、公称応力よりも高い部分が生じたと考えられる。
また単純な2結晶FEMモデルの検討で応力が約30%上乗せされることが明らかになったが、実際の多結晶体では3次元的に拘束が生じることから、さらに大きな応力の不均一が生じ、より高い応力が発生することが予測される。
(すべり応力分布)
FEM解析で得られたすべり応力分布は、2結晶FEMモデルAでは、シュミット因子で算出される理論的最大値(50MPa)を越える51MPaという大きなすべり応力が発生した。また、2結晶FEMモデルBでは、理論すべり応力値が27MPaに対して42MPa(156%)という大きなすべり応力が発生した。さらに2結晶FEMモデルCでも理論値より大きなすべり応力が発生しており、結晶粒界の一部では理論値よりも大きなすべり応力が発生することが確かめられた。
以上の結果から、複数の結晶粒が隣り合っている場合の応力分布とすべり応力分布について、上述したFEM解析は、単結晶FEMモデルと同様、2結晶FEMモデルにおいても高い精度が得られることが確認された。
(多結晶FEM解析)
上述した結晶方位解析手段により、実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得した。
図8は、EBSP測定で得られた結晶粒マップである。この図では、結晶粒界を図中の線で描いている。従って、線で囲まれた領域は各結晶粒に相当する。また、同時にFEM解析により各結晶粒の長手方向応力分布を得た。
なお、多結晶金属材(試験片)は、Ni合金を用い、試験片形状が正方形断面4mm×4mm、長さは40mmのものを使用した。
図9は、図8の結晶粒マップに、各結晶粒の番号とクラック位置を追記した図である。
この図において、結晶粒番号は解析対象領域以外の番号も含んでいることから、7〜20という中途半端な値である。また、クラックは、後述する疲労試験で発生した位置に太線で示している。
結晶粒11と19は長手方向のヤング率が低く、応力の負担が少ないと予想され、FEM解析による結果はそれに合致する結果となった。そしてその周囲の結晶粒は応力負担が大きくなっており、特に結晶粒12番と20番はヤング率が高いため、高い応力が発生していた。
(疲労試験結果)
上述した試験片を用いて4点曲げ疲労試験を、5kNモジュール試験機を用いて荷重制御で実施した。
疲労試験後、光学顕微鏡で観察したところ、特定の場所に固執すべり帯(PSB:Parsistent Slip Band)が発生し、これがクラックに成長する様子が確認できた。
試験後のEBSP観察によりクラックの分布と結晶粒分布の位置関係を調査した(図9参照)ところ、ほとんどのクラックが結晶粒界手前あるいは粒界を過ぎた位置で停滞している様子が確かめられた。これは結晶粒が異なるとすべり変形の幾何学的が変化してしまうため、大きな抵抗になると考えられる。図9でCとDのクラックは連結して成長し破断に至ったが、いずれも結晶粒内でクラックが成長し、疲労試験の最終段階で連結した。
(多結晶FEM解析結果と疲労試験結果の比較)
図9のA、B、C、Dの位置のクラックは、いずれもFEM解析で応力が高いところに発生し、FEM解析と試験結果の整合性が得られた。
結晶粒12番、13番、14番、20番は長手方向のヤング率が高く、FEM解析でも長手方向に高い応力が発生していた。12番以外の粒ではクラックが発生しており、十分な転位の運動が生じたと考えられる。特に20番は隣り合った19番のヤング率が低いため、応力負担が高く、疲労試験の早い段階で複数のクラックが発生していた。
Bの位置に注目すると、結晶粒16番と18番にまたがる高応力の領域にPSBが形成されており、図8の解析結果(長手方向応力分布)と良い一致を示していた。Cの位置については結晶粒13番、14番、15番をクラックが横切って破断に至った。試験途中の観察により、初めに結晶粒13番と14番の粒内に複数のクラックが発生し、それらが連結して進展し最終的に結晶粒15番を横切ったことが明らかになっている。この実験結果は、結晶粒13番と14番は応力が高くクラックが発生しやすいが、結晶粒15番は応力が低くクラックが発生しづらいというFEM解析結果との整合性が得られるものだった。
ここまでは長手方向応力の分布とクラックの発生位置の対応について述べた。
以下では結晶の原子配列に起因する異方性、すなわち結晶学的なすべり応力の分布と、疲労クラックの対応を検討する。
図10(A)は各結晶粒の長手方向ヤング率を多結晶のヤング率で規格化した図であり、図10(B)は各結晶粒のシュミット因子、図10(C)は規格化した長手方向ヤング率とシュミット因子の積を示す図である。
ある方位の結晶粒があり、単軸応力状態と仮定すると、結晶面のすべりを起こさせるせん断応力「すべり応力」が算出できる。対象とする結晶粒7〜20について、主すべり系のすべり応力を公称応力で規格化した値(シュミット因子)を図10(B)に示す。シュミット因子の最大値は0.5であり、ほぼ全ての結晶粒が0.45以上の値となったが、結晶粒12番だけは0.3という低い値を示した。この結晶粒は図9(C)の通り長手方向のヤング率が最も高く、発生応力も高かったが、すべり応力が小さいためにクラックが発生しなかったと考えられる。
上述したように、結晶粒の方位と単軸応力との関係から、発生応力の大小とすべり応力の大小の傾向がわかる。これを総合して評価するために、長手方向のヤング率(多結晶のヤング率で規格化した値)とシュミット因子をかけた値を算出した。これを図10(C)に示す。
結晶粒9番、10番、13番、14番、17番、20番が高く、そのうち9番、10番以外にはクラックが発生しており、「規格化ヤング率×シュミット因子」の値がクラック発生領域の目安になると言える。
応力が単軸応力の場合には上記のように応力方向のヤング率とシュミット因子から、すべり変形→クラックの起こりやすい結晶粒が推定できる。しかし現実の部材は多軸応力の場合が多く、また巨視的には単軸応力でも結晶粒界を詳細に見ると多軸応力状態になっている。そのような場合にはFEM解析により得られた応力テンソルから、各結晶粒のすべり応力を算出する手段が有効になると考えられる。
また、すべり応力分布からいずれも粒内の広い範囲で高いすべり応力が発生しており、クラック発生位置との一致が見られた。
複数発生したクラックの中で、CとDの位置(それぞれ結晶粒14番と13番の粒内に対応)のクラックは結晶粒界を横切って連結、成長し、破断に至った。このように図10(C)で示した「長手方向規格化ヤング率×シュミット因子」の値が大きい粒が並んだ領域は他になく、すべり変形が生じやすい結晶粒が並んでいるため、他のクラックよりも優先的に成長が進み、破壊に至ったと考えられる。
上述した本発明の装置及び方法によれば、結晶方位解析手段により、実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得し、その結果に基づいて多結晶金属の疲労強度を評価するので、実在する多結晶金属材について異方性を加味した疲労強度を評価することができる。
多結晶金属材に作用する応力が単軸応力である場合には、疲労強度評価ステップS5において、疲労強度評価手段により、(1)各結晶粒に対して、多結晶のヤング率で規格化した長手方向の規格化ヤング率と、シュミット因子とを求め、(2)次いで、各結晶粒に対して、前記規格化ヤング率とシュミット因子の積をクラック発生指数として算出し、(3)前記クラック発生指数が全体に対して大きい結晶粒をクラック予測結晶として疲労強度を評価する。
これにより、クラックの発生しやすい結晶粒を特定し、容易に疲労強度を評価することができる。
また、多結晶金属材に作用する応力が単純応力ではない場合には、せん断応力算出ステップS4において、せん断応力算出手段により、応力分布から応力6成分を12個のすべり系座標系に変換し、各結晶粒の結晶すべり面に作用するせん断応力を算出する。
これにより、単純応力ではない場合でも実在する多結晶金属材について異方性を加味した疲労強度を評価することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
10 結晶方位測定装置、
12 結晶方位解析プログラム、
14 有限要素解析プログラム、
16 すべり面せん断応力算出プログラム、
18 コンピュータ

Claims (2)

  1. 実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得する結晶方位解析手段と、
    前記結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位から有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、
    前記有限要素モデルを用いて各結晶粒に作用する応力分布を算出するFEM解析手段と、
    前記応力分布と結晶方位から各結晶粒の結晶すべり面のせん断応力を算出するせん断応力算出手段と、
    前記応力分布と前記せん断応力から多結晶金属の疲労強度を評価する疲労強度評価手段とを備え
    前記疲労強度評価手段により、
    各結晶粒に対して、多結晶のヤング率で規格化した長手方向の規格化ヤング率と、シュミット因子とを求め、
    各結晶粒に対して、前記規格化ヤング率とシュミット因子の積をクラック発生指数として算出し、
    前記クラック発生指数が全体に対して大きい結晶粒をクラック予測結晶として疲労強度を評価する、ことを特徴とする多結晶金属材の疲労強度評価装置。
  2. 結晶方位解析手段により、実在する多結晶金属材の解析対象面の結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位を取得し、
    モデル作成手段により、前記結晶粒マップと各結晶粒の結晶方位から有限要素モデルを作成し、
    FEM解析手段により、前記有限要素モデルを用いて各結晶粒に作用する応力分布を算出し、
    せん断応力算出手段により、前記応力分布と結晶方位から各結晶粒の結晶すべり面のせん断応力を算出し、
    疲労強度評価手段により、前記応力分布と前記せん断応力から、
    各結晶粒に対して、多結晶のヤング率で規格化した長手方向の規格化ヤング率と、シュミット因子とを求め、
    各結晶粒に対して、前記規格化ヤング率とシュミット因子の積をクラック発生指数として算出し、
    前記クラック発生指数が全体に対して大きい結晶粒をクラック予測結晶として疲労強度を評価する、ことを特徴とする多結晶金属材の疲労強度評価方法。
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