JP5397154B2 - 高強度・高耐食性油井管用鋼材の溶製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼材中に含まれる介在物の組成範囲を適正な狭幅に制御することにより、生産性を低下することなく高強度・高耐食性油井管の製造を可能にする油井管用鋼材の溶製方法に関する。
近年、鋼材への品質要求は厳しくなってきており、その中でも特に油井管用鋼材への要求はより厳しくなってきている。すなわち油田開発の際に必要な高強度・高耐食性グレードの油井管を製造するための鋼材の開発が求められている。
油井管用鋼材には従来に比べ、使用環境が苛酷になってきていることから耐水素誘起割れ性(耐HIC性)だけではなく、耐硫化物応力割れ性(耐SSC性)も求められてきている。従来の油井管の製造においては、耐SSC性を付与するためにCa無添加にしてCa系酸硫化物の溶解によるSSC発生を防止するとともに、高強度を得るために複数回熱処理する方法が行われてきた。しかしながら、この方法では熱処理工程に時間を要するため生産性が悪化するという問題が生じている。したがって、生産性を低下させることなく高強度・高耐食性油井管を製造することができる鋼材の溶製が求められている。
従来の高強度・高耐食性油井管用鋼材の溶製においては、耐HIC性に加えて耐SSC性を付与するために、製管後に2度の熱処理を行うことを前提として、先ず精錬工程において溶鋼を極低硫・極低燐化し、かつ、その溶鋼にはCaを添加しないことによりCa系酸硫化物の生成を抑制し、そのような溶鋼を連続鋳造して油井管用鋼材を製造している。これにより、高強度・高耐食性をもつ鋼材を得ることができる。
しかし、この方法では、溶鋼をCa処理して介在物の形態制御を行う利点を享受することが出来ないほか、製管後に2回の熱処理を行う必要があるので、油井管の生産性が低下してしまう。また、その生産性の低下を防ぐためにオンラインで一度の熱処理を実施するだけにした場合には、強度や耐食性にばらつきが発生してしまう。
特許文献1には、C:0.05〜0.35%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.5〜2%に加えてCaを0.0005〜0.008%とAlを0.005〜0.1%含有し残部Fe及び不純物からなりS、O、Caの含有量が、
1.0≦(%Ca)(1-72(%O))/1.25(%S)≦2.5
を満足するように脱酸生成物を(CaO)(Al)の複合介在物とし、その分子構成比をm/n<1の範囲とする耐サワー性の優れた高靭性電縫鋼管用鋼板が開示されている。しかしながら、この方法では介在物の組成範囲が比較的広い。鋼中酸素の分析方法が明確にされていないことから組成範囲が広くなっているものと推測され、介在物制御による製品品質の向上の観点から改善の余地がある。
特許文献2には、Ca添加に際して、鋼中のCa、S、O成分を目標範囲におさめるため、脱硫処理後のS成分濃度を迅速分析により調査し、脱ガス処理後のO成分濃度を例えば15ppmとして、
[%Ca]×[%S]0.28≦3.5×10-4・・・・(i)
1≦{[%Ca]-(0.18+130[%Ca])×[%O]}/1.25/[%S]・・・・(ii)
の2つの式から目標カルシウム組成範囲を決定して投入量を決定する鋼の溶製法が開示されている。
しかし、この発明が目指す鋼中の介在物は、CaO含有量を40〜80質量%とするものであって、これも比較的に組成範囲が広い。その背景には上記(ii)式に代入すべきO濃度を正確に得る手段に欠けていて、上述のように「平均値として15ppm」(特許文献2段落0017)を使わざるを得なかったことがあると推測できる。
特許文献3には、鋼中非金属介在物の成分組成を制御し、特に、炭窒化物の影響を低減して耐サワー性能を向上させた高強度鋼管用鋼およびその製造方法が記載されている。その方法においては、鋼中酸素含有率が0.002%以下、介在物中のCaO含有率が30〜80%などの条件下において、鋼中N含有率と介在物中のCaO含有率との比を、0.28≦[N]/(%CaO)≦2.0に制御することなどが必要である。但し、そのように制御するためには、鋼中のN含有率と溶鋼中へのCa添加量との比を一定範囲内とする方法が記載されていて、その制御を容易に行うためには、鋼中酸素の含有率を0.0003〜0.0015%の範囲とすることが好ましいと記載されている。しかし、その酸素の含有率を制御する方法やその含有率のオンラインでの確認方法に関しては説明されていない。したがって、その方法にも介在物中CaO含有率の制御に関し、まだ改善の余地が残されていると考えられる。
特開平02-290947号公報 特開2001-11528号公報 特開2009−120899号公報 特開2002−328125号公報 特開平10−311782号公報
以上説明したように、高強度・高耐食性油井管用鋼材を製造するにあたり、従来のCaを添加しない方法では、溶鋼のCa処理の利点を享受できないほか、製管後に複数回の熱処理を要するために油井管の生産性が低下してしまうという問題がある。また、特許文献1ないし特許文献3に開示された方法では、介在物組成の狭幅制御の観点で改善の余地が残されている。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、溶鋼をCa処理して介在物組成を狭幅の適正範囲に制御することにより、生産性を低下させることなく高強度・高耐食性油井管を製造することを可能にする、油井管用鋼材の溶製方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために提供される本発明では、溶鋼の二次精錬終了前に溶鋼を所定の成分範囲に調整し、その二次精錬終了後から該溶鋼を連続鋳造機のタンディッシュへ注入を開始するまでの間に、該溶鋼中の全酸素含有率(T.[O])を迅速かつ正確に測定し、そのT.[O]測定値に応じて最適量のCaを取鍋またはタンディッシュへ添加して、鋼材に含まれる介在物の組成を狭幅の適切範囲に制御することを特徴とする。
すなわち、本発明は次のとおりである。
(1)一次精錬終了後の溶鋼に対して二次精錬を行い、さらに該二次精錬終了後の溶鋼にCaを添加して介在物の制御を行うことにより、質量%で、C:0.15%以上0.35%以下、Si:0.10%以上1.5%以下、Mn:0.10%以上2.0%以下、P:0.025%以下、S:0.002%以下、Al:0.005%以上0.100%以下、Ca:0.0005%以上0.0035%以下、N:0.008%以下、O(酸素):0.002%以下を含有し残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する高強度・高耐食性油井管用鋼材を溶製する方法であって、前記二次精錬を終了する前に前記溶鋼に含まれるSの質量濃度を20ppm以下、T.[O]の質量濃度を20ppm以下とし、さらに前記二次精錬終了後に該溶鋼のT.[O]の質量濃度分析用のサンプルを採取し、その後、該溶鋼を連続鋳造機のタンディッシュへと注入を開始する前にその分析値を知って、前記Caの添加量を、該分析値を下記(1)式に代入して求められるA値の範囲内として添加することを特徴とする高強度・高耐食性油井管用鋼材の溶製方法。
A = B × T.[O] + 0.025・・・(1)
0.0015≦B≦0.0045・・・(2)
ここで、A:溶鋼質量トン当たりのCa添加質量(単位:kg/t)
B:係数
T.[O]:溶鋼中酸素の質量濃度分析値(単位:ppm)
(2)前記鋼材中に含まれるFeの一部に代えて、下記の(a)〜(c)群の1つ以上の群から選ばれる1種以上の成分元素を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の高強度・高耐食性油井管用鋼材の溶製方法。
(a)質量%で、Ti:0.20%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.05%以下、V:0.30%以下、W:1.0%以下、B:0.0030%以下およびZr:0.10%以下
(b)質量%で、Mg:0.005%以下
(c)質量%で、Ni:0.30%以下およびCu:0.40%以下
(3)前記したCaの添加方法によって、前記鋼材に含まれる介在物中のCaO含有率が30質量%以上55質量%以下に制御されていることを特徴とする、上記(1)または上記(2)に記載の高強度・高耐食性油性管用鋼材の溶製方法。
(4)前記二次精錬を終了した後の溶鋼のT.[O]の質量濃度を分析する方法として、該溶鋼からサンプル鋼塊を採取して含有成分濃度を分析するための試料とし、鉄鋼試料を黒鉛るつぼに入れて不活性ガス中で加熱融解し、発生した一酸化炭素または二酸化炭素のいずれかひとつあるいは両方の赤外線吸収度から該試料中の酸素濃度を測定する方法であって、該試料表面の酸化皮膜を除去、清浄化する前処理として真空アークプラズマ処理をアークプラズマ放電開始時の真空度を5Pa以上35Pa以下かつ、アークプラズマ出力電流を15A以上55A以下とする条件下において、溶鋼から採取した鋼塊に対して、高さ1.5mm以上7mm以下、表面積Sと体積Vの比(S/V)が1.05以上1.30以下となるように機械加工して得た小片を試料とし、前記アークプラズマ放電を前記試料に、合計4回以下であって、かつ合計処理時間として0.2秒以上1.2秒以下施した後、該試料を大気と接触させることなく、直接、分析時の温度よりも高い温度で加熱、清浄化した後、分析する温度に下げて待機させた黒鉛るつぼへ投入する鉄鋼中酸素分析方法を用いることを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)のいずれか1項に記載の高強度・高耐食性油性管用鋼材の溶製方法。
本発明では、溶鋼の精錬終了後から該溶鋼を連続鋳造機のタンディッシュへの注入を開始するまでの間に溶鋼中T.[O]測定を迅速かつ正確に行い、判明したT.[O]値に応じて、最適量のCaを溶鋼に添加するため、介在物中CaO濃度の適正化を短時間で実施することが可能である。したがって、製管後に2回の熱処理を行うなどの生産性を低下させる工程を必要とせずに高強度・高耐食性を有する油井管を製造することができる鋼材を、安定して溶製することができる。
本発明に係る鉄鋼中酸素分析設備を模式的に示す図である。 T.[O]とCa添加量との関係を示すグラフである。 T.[O]と介在物中CaO含有量との関係を示すグラフである。
本発明の高強度・高耐食性油井管用鋼材の溶製方法について以下に説明する。
1.鋼材の組成
以下に、本発明に係る油井管用鋼材の化学組成について説明する。以下の説明において、鋼材の成分の含有量を示す「%」は、質量%を意味する。
C:0.15%以上0.35%以下
Cは、鋼管の強度を確保するために必要な元素で、0.15%未満では焼入性が不足して、焼戻し温度を低下させ、必要とする性能を確保することが難しい。また、0.35%を超えると焼き割れが発生し、さらに靱性も劣化する。したがって、C含有率の適正範囲を0.15%以上0.35%以下とした。望ましくは、0.20%以上0.30%以下である。
Si:0.10%以上1.5%以下
Siは、脱酸を目的に添加する。また、焼戻軟化抵抗を高めて強度上昇にも寄与する。脱酸の目的では0.10%以上含有させる必要がある。また、1.5%を超えて含有させると、熱間加工性が著しく乏しくなるので上限を1.5%とした。望ましくは、0.10%以上0.50%以下である。
但し、Siは鋼中のTiの活量に影響を与える元素である。このため、後述するようにTiを0.005%以上含有させる場合には、Siの含有率が1.0%を超えて高くなると、Tiの活量を増加させすぎて、TiNの生成を抑制することができなくなる。したがって、Si含有率の適正範囲は、Tiを0.005%以上含有する鋼材の場合には0.10%以上1.0%以下である。また、その場合のSi含有率の好ましい範囲は、0.10%以上0.50%以下である。
Mn:0.10%以上2.0%以下
Mnは、鋼の焼入性を増し、鋼管の強度確保に有効な元素である。0.10%未満では焼入性の不足によって強度、靱性ともに低下する。一方、2.0%を超えて含有させると偏析が増して靱性を低下させるため、上限2.0%とした。望ましくは、0.20%以上1.0%以下である。
P:0.025%以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する。0.025%を超えると、粒界に偏析して靱性を低下させるので0.025%以下とする。低ければ低いほど望ましい。
S:0.002%以下
Sは、耐HIC鋼において問題となる硫化物系介在物の構成元素であることから、その含有率は低いことが好ましい。S含有率が0.002%を超えて高くなると、Caの添加を行った場合には、介在物中のCaSの含有率が高くなり、問題が生じる場合がある。したがって、S含有率は0.002%以下とする必要がある。その含有率の好ましい範囲は0.001%以下である。
O(酸素):0.002%以下
O含有率は、酸化物系介在物中に含有される酸素を含めた全酸素含有率(T.[O])を意味し、介在物量の尺度となる濃度である。その含有率が0.002%を超えて高いと、介在物量が多くなりすぎて、高強度鋼においてHICの発生を抑制することは困難となる。O含有率は低いほど酸化物系介在物は少なくなるので、低ければ低いほど望ましい。
N:0.008%以下
Nは、不可避的に鋼中に存在する。NはAl、TiやNbと結合して窒化物を形成する。特に、AlNやTiNが多量に析出すると、靱性や耐SSC性、耐HIC性に悪影響を及ぼすため、0.008%以下とするのがよい。
Al:0.005%以上0.100%以下
Alは、強い脱酸作用を有する元素であり、鋼の低酸素化のために重要な元素である。その含有率が0.005%未満では、脱酸作用が不十分であり、介在物量を十分に低減することはできない。他方、Al含有率が0.100%を超えて高くなると、脱酸効果が飽和することに加えて、硫化物の生成を促進させる結果となる。そこで、Al含有率の適正範囲は、0.005%以上0.100%以下とした。その含有率の好ましい範囲は、0.008%以上0.040%以下である。なお、本発明におけるAlの表示は、酸可溶性Al(sol.Al)を意味する。
Ca:0.0005%以上0.0035%以下
Caは、硫化物介在物の改質およびアルミナ介在物の球状化に有効な作用を有する元素である。Ca含有率が0.0005%未満では、これらの効果を得ることができず、MnSやアルミナクラスターに起因するHICの発生を抑制することはできない。また、Ca量がこれ以下ではCa系非金属介在物に起因したSSCの問題がないことから、Caの下限は0.0005%となる。他方、その含有率が0.0035%を超えて高くなると、CaSクラスターが生成する場合がある。そこで、Ca含有率の適正範囲を0.0005%以上0.0035%以下とした。その含有率の好ましい範囲は、0.0008%以上0.002%以下である。
以上は、本発明における鋼管用鋼材の必須調整成分およびその調整範囲であってその残部はFeおよび不純物であるが、鋼材の用途および使用環境に応じて、下記の(a)〜(c)群の1つ以上の群から選んだ1種以上の成分元素を前記Feの一部に代えて含有させることができる。すなわち、(a)群:Ti,Cr、Mo、Nb、V、W、BおよびZr、(b)群:Mg、(c)群:NiおよびCu、である。上記の各群の元素は、含有させてもさせなくてもよいが、含有させる場合には、それぞれ、下記の含有率の範囲で含有させることによりそれらの効果を得ることができる。
(a)群の元素は、主に鋼の強度、焼入性、靱性などを向上させる効果を有する。
Ti:0.20%以下
Tiは、鋼中においてTiNとして析出し、鋼の靭性を向上させる作用を有する元素である。しかし、Tiの過度の添加は、析出するTiNの粗大化を招く。したがって、Ti含有率は、0.2%以下とする必要がある。靭性を確保する観点から、その含有率は0.005%以上とすることが好ましい。上記の理由から、Ti含有率は0.005%以上とすることが好ましく、かつ、0.20%以下とする必要がある。
Cr:1.5%以下
Crは、焼入性を高めるのに有用な元素であるが、他の元素により最低限の焼入性が確保される場合には含有させなくてもよい。しかし、より厚肉の鋼管を製造する場合に含有させると有利である。含有させる場合には、Cr含有量を0.10%以上にすると焼入性および焼戻軟化抵抗を高める効果がある。また、1.5%を超える量を含有させると、靱性が劣化する。よってCrを含有させる場合には0.10%以上1.5%以下とする。望ましくは、0.20%以上1.2%以下である。
Mo:1.0%以下
Moは、厚肉の鋼管を製造する場合に、焼入性および焼戻軟化抵抗を高めることを目的として含有させるのが好ましい。また、耐サワー性能を向上させる効果もある。含有させる場合には、0.10%未満では効果が現れないので、0.10%以上含有させるのが望ましい。また、1.0%を超えると靱性が悪化するため1.0%以下とするのがよい。望ましくは、0.20%以上0.80%以下である。
Nb:0.05%以下
Nbは、オフライン熱処理プロセスでは、再加熱時に結晶粒の成長をピンニング効果で抑制して、オーステナイト粒の細粒化に有効である。含有させる場合には、0.01%未満では効果が現れないので、0.01%以上含有させることが望ましい。望ましくは、0.015%以上0.05%以下である。
V:0.30%以下
Vは、耐SSC性を高めるのに有効な元素である。Vは、含有させると二次析出強化により強度を高める効果があり、所定の強度を得る場合には、より高温で焼戻すことができ、これが耐SSC性の向上に寄与する。また、オーステナイト領域でのVCの溶解度が大きいため、インラインでの焼入れ時に全て固溶しており、強度バラツキの原因にはならない。含有量が、0.01%未満ではその効果がなく、0.30%を超えて含有させると靱性が大きく劣化する。よって含有させる場合には0.01%以上0.30%以下とする。望ましくは、0.02%以上0.20%以下である。
W:1.0%以下
Wは、Moと同様、焼入性を改善し高強度を得ることができると共に、焼戻軟化抵抗を高めて耐SSC性を向上させる効果があり、必要により含有させる。含有量が1.0%を超えると効果が飽和するので、含有量の上限は1.0%とするのがよい。
B:0.0030%以下
Bは、含有させると著しく焼入性が向上するので、厚肉の鋼管を製造する際に含有させることにより、要求強度を確保できる。含有させる場合には、0.0030%を超えると、粒界に炭窒化物が析出しやすくなり、靱性劣化の原因となる。このため、上限を0.0030%とするのがよい。
Zr:0.10%以下
Zrは、含有させると、Tiと同様に鋼中の不純物であるNを窒化物として固定するので、Bの焼入性を十分確保できる。また、炭化物を形成し難いので、強度バラツキの原因とはならない。一方、含有量が0.10%を超えると、介在物が増加して靱性が低下するので、含有量の上限は0.10%とするのがよい。
(b)群の元素は、主に介在物の改質効果を有する。
Mg:0.005%以下
Mgは、含有させると鋼中のSと反応して溶鋼中で硫酸化物を生成する。この硫酸化物は圧延加工後も球状であり、圧延方向に伸びることがない。このため、圧延直角方向の衝撃性質を向上させ、さらには水素誘起割れを抑制する作用もある。しかしながら、含有量が0.005%を超えると鋼中の介在物量が増え、清浄度が低下し、種々の性能が低下するため、0.005%以下とするのがよい。
(c)群の元素は、主に硫化水素環境下において水素の侵入を抑制する作用を有する。
Ni:0.30%以下
Niは、硫化水素環境下において、鋼中への水素の侵入を抑制する作用を有する。その効果を得たい場合には、Niを0.10%以上含有させることにより上記の効果を得ることができる。しかし、その含有率が0.30%を超えて高くなると、水素侵入抑制効果が飽和するため、Niを含有させる場合には、その含有率を0.30%以下とするのがよい。また、その含有率は0.10%以上の範囲とすることが好ましい。
Cu:0.40%以下
Cuも、Niと同様に、硫化水素環境下において、鋼中への水素の侵入を抑制する作用を有する。その効果を得たい場合には、Cuを0.10%以上含有させることにより上記の効果を得ることができる。しかし、その含有率が0.40%を超えて高くなると、高温で融解し、結晶粒界の強度を低下させるため、Cuを含有させる場合には、その含有率を0.40%以下とするのがよい。また、その含有率は0.10%以上の範囲とすることが好ましい。
2.Ca添加量とT.[O]との関係について
本発明に係る鋼材の溶製方法では、前記した化学組成の鋼材を得るにあたり、転炉などでの一次精錬終了後にRH式真空脱ガス処理装置などを用いて、いわゆる二次精錬(本発明においてこの精錬処理を「二次精錬」という。)を行って溶鋼中の成分含有率を調整するほか、特に、二次精錬を終了する前に、溶鋼に含まれるSの質量濃度を20ppm以下、T.[O]の質量濃度を20ppm以下に低減しておく。溶鋼中のSやT.[O]は、Ca添加によってCaを含む介在物(硫化物・酸化物)を構成するものであるから、それらの含有量は介在物の組成を適正に制御するために必要なCa添加量に大きな影響を与える。したがって、その鋼中介在物の組成のバラツキを抑えるためにも、また、介在物の存在量自体を少なくするためにも、Caを添加する前の溶鋼中S及びT.[O]を低減しておくことが不可欠である。
なお、Ca以外の添加成分は、二次精錬終了前に調整しておくことを基本とするが、一部の成分は、Caの添加前に、またはCaの添加とともに溶鋼へ添加しても構わない。
従来、鋼管の耐サワー性能を向上させる方法としては、特許文献1〜3に記載されているように、Ca添加により鋼中介在物の成分組成を制御し、さらに炭窒化物の影響を低減する方法が公知である。
Caを溶鋼に添加することにより、溶鋼に含有されるMnSがCa系介在物に変化する。このため、MnS起因のHICが抑止され、鋼材の耐HIC性能が向上する。しかしながら、Caを含有する介在物、具体的にはCa系酸化および硫化物介在物(酸硫化物介在物)、例えば、Ca−Al−O−S、Ca−S、Ca−S−Oといった介在物もHICの原因となるため、過度に多いCa添加はむしろ鋼材の耐HIC性能を低下させてしまう。例えば特許文献3に開示されているように、介在物中のCaO含有率が適正範囲内に存在しない場合には集合炭窒化物の生成を抑制することができず、HICの発生に至ってしまうことも認められている。
また、SSCの発生原因として、Ca系酸硫化物の溶解による孔食およびTiN系炭窒化物によるガルバニック作用による腐食が挙げられる。
介在物中CaO含有量を適切に制御することにより、Ca系酸硫化物のみならず、TiN系炭窒化物の含有量や形態、さらには分散状態をも制御することが可能である。
このように溶鋼へのCa添加量は高い耐サワー性を有する鋼材を製造するにあたり重要な操作因子であり、その添加量の適切な操作によって介在物の組成が適切に制御されるほど、得られる鋼の耐割れ性を高めることができると期待される。
ところで、溶鋼にCaを添加すると、溶鋼中のSやT.[O]などと反応して、Ca系の酸硫化物介在物を生成する。したがって、その生成介在物の成分組成を適切に制御するためには、溶鋼中の化学成分、とりわけSやT.[O]の含有量に応じて、適切な量のCaを添加しなければならない。
このうち、T.[O]を除けば、溶鋼中の化学成分の質量濃度はサンプルを採取して分析することにより、数分間以内という短時間で精度良く知ることが従来から可能である。しかし、T.[O]に関しては、短時間で精度良く知る方法は、従来知られていなかった。
目標とする介在物組成にするために必要なCa値(Ca含有量)は、溶鋼の成分(溶鋼中介在物を含む)により決まっているので、二次精錬を終了した溶鋼についてT.[O]濃度を測定し、その測定値に基づいて適切なCa添加量を決定し、連続鋳造開始までにその適量のCaを添加することで、最適な介在物組成の鋼を製造することが可能となる。
3.T.[O]の迅速分析
本発明に係る鋼材の溶製方法では、前記した化学組成の鋼材を得るにあたり、RH処理などの二次精錬を終了した後の溶鋼からサンプルを採取してそのT.[O]を迅速かつ正確に分析し、その分析値に基づいて溶鋼に添加するCa量を決定する。このCa添加は、連続鋳造設備のタンディッシュ内で行うことを想定しているが、時間的な余裕がある場合には取鍋内溶鋼にワイヤーなどを用いて添加しても良い。
溶鋼の二次精錬を終了してから、連続鋳造設備のタンディッシュにその溶鋼の供給が開始されるまでの時間は、一般的に5〜15分間程度であるため、この時間内にT.[O]を精度よく分析する方法として、本発明では並行して開発していた鉄鋼中酸素の迅速分析方法を使用する。
以下にその分析方法について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1はこの本発明に係る分析方法を実施するための鉄鋼中酸素分析装置を模式的に示したものである。
本発明に係る分析方法に求められる短時間かつ高精度分析を実現するために、本発明で組み合わせる要素技術の内、迅速かつ再現性の高い試料前処理方法として、真空アークプラズマ処理を選択した。例えば、特許文献4に開示された金属中成分分析用試料の調整方法及び装置を適用すればよい。予め真空に保った試料前処理装置1内に、隔離バルブ4を介して、真空度をほとんど変化させることなく、処理前試料投入口3から試料を挿入することができる。その後、真空アークプラズマ処理により、試料表面の酸化皮膜を数秒で除去する。該装置では、試料を自動搬送するため、試料形状を円柱またはブロック(直方体)に限定する。試料は、試料台に載置して処理するため、試料台と接する面は処理されない。そこで、試料を反転させて処理する必要がある。つまり、ひとつの試料に対して、少なくとも2回は放電する必要がある。放電回数が増えると、試料が長時間加熱されることになり、一旦、酸化皮膜除去された試料表面は再び酸化されてしまう。したがって、試料表面の酸化皮膜を確実、正確かつ再現性良く除去し、精錬操業上必要とされる分析精度を確保するため、下記の条件でアークプラズマ処理する必要がある。
(a)真空度:5Pa以上35Pa以下。真空アークプラズマによる試料表面酸化皮膜除去反応は真空度が高いほど促進されるが、35Paを超えると、試料温度上昇に伴う再酸化反応が顕著になるため好ましくない。一方、5Paより低いと、酸化皮膜除去反応自体が進行しなくなるため、好ましくない。したがって、最適な真空度が存在する。
なお、処理時に真空度が一定値に保持されるよう、真空排気バルブとガス導入バルブの開閉を制御する圧力制御機構を有することがなお好ましい。
(b)アークプラズマ出力電流:15A以上55A以下とする。
(c)処理時間:ひとつの試料に対して、合計の処理時間は0.2秒以上1.2秒以下とする。
(d)処理回数:ひとつの試料に対して、合計の処理回数は4回以下とする。
処理後の試料は、大気と接触させることなく、分析装置2に配置した前処理済試料投入口5を通じて、最終的に黒鉛るつぼに投入する。試料前処理チャンバーと分析装置の試料投入口は真空または不活性ガスで内部を置換した連結管8で連結する。不活性ガス種としては、空気との比重差を考慮して、連結管内を確実にガス置換して、処理後の試料の再酸化を防止する観点、さらには経済的な観点から、Arが好ましい。特許文献4に開示された装置構成では、前処理済試料は払い出された後、別置きの酸素分析装置に移送される。しかし、本発明の目的では迅速性が要求されることから、試料前処理装置1と酸素分析装置2を、それぞれ鉛直上下に配置し、連結管8内を自由落下させて、試料を移送する方法、すなわち図1のような装置構成を採用した。
この本発明の装置構成では、酸素分析装置2が床面に近い位置に配置され、分析装置2内部の清掃がガス中の不純物吸着剤の交換等、装置の維持管理作業に支障をきたす。そこで、架台6に組み込まれた装置全体をリフター7に載せて昇降可能とし、当該作業の際には装置全体を上げて、作業性を確保した。このリフター7の駆動方式は特に問わないが、装置全体では相当な重量であることから、操作性の観点で、自動油圧式が好ましい。また、リフター7の可動部は伸縮可能な材料で覆い、作業者が挟まれることのないよう、安全性に配慮した構造を有することが望ましい。
さらに、連結した酸素分析装置2が故障して使えない場合や、分析待ちの前処理済試料を別の酸素分析装置で分析する場合に備えて、試料前処理装置1と酸素分析装置2の連結管8途中に、前処理済試料の取出口9を設ける。
本発明で組み合わせる要素技術の内、溶鋼から採取した鋼塊より簡便かつ迅速に分析試料を得る方法として、溶鋼から採取した鋼塊を切断して作製した高さ(厚さ)が1.5mm以上7mm以下のスライスに対して、打ち抜いた円柱状小片を試料として用いる。具体的には、例えば、特許文献5に開示された分析試料の調整方法及び装置を適用すればよい。試料表面の酸化皮膜を確実、正確かつ再現性良く除去するためには、試料底面の直径と高さから計算される表面積Sと体積Vの比S/Vが、「1.05≦S/V≦1.30」を満たすような形状を確保する必要がある。
この理由は現時点で十分解明できていないが、電極形状などアーク処理部の形状に依存して、アークプラズマの空間分布において効率的な処理に好適な位置が限定されることに対応しているものと推察される。
本発明で組み合わせる要素技術の内、高精度な鋼中酸素分析方法として、不活性ガス中加熱融解−赤外線吸収法を動作原理とする酸素分析装置を選択した。この分析法では、試料ホルダと試料の脱酸反応剤(炭素)供給源を兼ねる黒鉛るつぼを使用する。
分析に先立って、るつぼ表面に吸着した酸素や汚染を除去するため、分析時よりもやや高い温度でるつぼだけを予め加熱する、いわゆる「空焼き」処理を実施する。「空焼き」処理により、黒鉛るつぼから発生する酸素、一酸化炭素あるいは二酸化炭素が分析値を変動させる影響を低減できる。市販の酸素分析装置で鋼中の酸素を分析する際には、通常、るつぼ、すなわち試料を1800℃〜2200℃程度の温度に加熱する。本発明で要求される高い分析精度を実現するためには、例えば、分析時の温度よりも100℃以上高い温度で、かつ、15秒以上加熱すればよい。
また、市販の酸素分析装置では、まず、分析装置内に試料を取り込み、試料周辺の雰囲気をキャリアガスであるヘリウムガスで置換する間に、るつぼの交換、電極の清掃および「空焼き」処理を実施する。したがって、試料を投入してから分析値が判明するまで、比較的長い時間を要する。るつぼの交換および電極の清掃、さらに「空焼き」処理を先行して実施させ、分析装置が分析可能な状態で清浄化前処理した試料を投入することで、要求される分析所要時間に応じた迅速化を実現させることができる。
通常、酸素分析に際して、検出したガス量を試料中の酸素濃度に変換するため、試料重量を精密に秤量する必要がある。真空アークプラズマ処理前後での試料重量変化を評価した結果、試料の形状や表面酸化度合いによって多少ばらつきはあるものの、高々1mg程度の減量であったことから、試料重量0.5〜1.0gに対しては実用上無視できる程度の誤差しか与えないことが判明した。そこで、本発明を実施する際には、機械加工して得た後に予め秤量した分析試料を、真空アークプラズマ処理し、大気と接触させることなく、そのまま酸素分析装置に挿入することとした。
4.二次精錬後に溶鋼に添加されるCa量
本発明では、二次精錬後にタンディッシュ内等で溶鋼に添加するCa量(以下、単に「Ca添加量」という。)を、二次精錬を終了した後に溶鋼からサンプルを採取してそのT.[O]を分析して得た値に基づいて、下記(1)式により求められるA値の範囲とする。
A = B × T.[O] + 0.025・・・(1)
0.0015≦B≦0.0045・・・(2)
ここで、A:溶鋼質量(t)当たりのCa添加質量(単位:kg/t)、
B:係数、
T.[O]:二次精錬終了後であってCa添加前の溶鋼の酸素濃度分析値(単位:ppm)。
前記した成分組成を有する鋼材を溶製するに際し、Ca添加する前の溶鋼中SとT.[O]の質量濃度をそれぞれ20ppm以下に低減した溶鋼に、(1)式で求められるA値の範囲でCaを添加することによって、介在物中のCaO質量濃度を30%以上55%以下という狭幅に制御することができる。この場合、鋼中介在物は主としてCaO・Alからなる複合介在物のほか、CaO,CaS等になっているが、それらの介在物全部を合わせた中でのCaO成分の濃度が,30%以上55%以下の範囲内であることを意味している。
鋼材の成分を前記した所定の成分範囲とし、Ca添加量を(1)式の範囲とすることによって、安定して高い耐SSC性を有する鋼を得ることが実現される。
前述のように、介在物中CaO含有量を適切に制御することにより、Ca系酸硫化物のみならず、TiN系炭窒化物の含有量や形態、さらには分散状態をも制御することが可能であるが、Caを添加する前に溶鋼中S及びT.[O]を低減し、かつ、Caを添加するときのT.[O]に基づいてその添加量を決定すれば、介在物中CaO含有量をその適切な範囲に精度良く制御することができる。すなわち、Caを添加してもSCCを効果的に抑制することができるようになる。
溶製は、機械撹拌式溶銑脱硫装置(KR)を用いた溶銑脱硫、転炉型脱燐専用炉を用いた溶銑脱燐、転炉を用いた脱炭および仕上げ脱燐の後、溶鋼循環式真空脱ガス装置(RH)を用いて二次精錬をするという順で行った。溶製量は、1チャージ当たり240tであった。この二次精錬終了後、丸鋳型の連続鋳造機を経て、マンネスマン・マンドレルミル方式の製管法により、外径244.5mm、肉厚13.8mmの継目無鋼管を製造し、その鋼管に焼入れ、焼戻しの熱処理を適当な条件で1回のみ施して、耐SSC性を比較した。
本発明の実施例では、そのRHを用いた二次精錬を終了する前に溶鋼中のSおよびT.[O]を20ppm以下に低減し、そのRHにおける溶鋼環流を終了した直後に溶鋼からサンプルを採取して、直ちに前記した方法により鋼中酸素の迅速分析を行った。基本的には溶鋼環流終了から10分以内に該サンプル中の全酸素質量濃度の分析値を得たが、この分析値判明までの所要時間10分間は、二次精錬終了後に行う連続鋳造工程の都合により6分間以内とした場合もあった。但し、そのいずれの場合でも、別途オフラインで詳細分析して後日確認した全酸素濃度との分析濃度誤差は±3ppm以内であった。その後、連続鋳造機のタンディッシュ内に、前記した(1)式の範囲でCaを添加した。なお、Caは、Ca純分が30%のCaSi合金を内装したワイヤーを添加する方法により添加した。
評価対象とした鋼材の化学組成は、いずれも下記の表1に示したとおりである。なお、表1における含有量の単位は質量%であり、残部はFeおよび不純物である。
鋳片の耐食性について従来技術と本発明による評価結果の一例を表2ならびに図2および3に示す。
Figure 0005397154
ここで、試験No.1〜5においては、RH処理終了後のT.[O]を分析することなく、従来からの経験に基づいてCaの必要添加量を推測して、そのCa量をタンディッシュ内溶鋼に添加した。一方、試験No.6〜17においては、RH処理終了後のT.[O]を分析し、その分析値ならびに上記(1)式および(2)式に基づいてCa添加量を決定し、その方法により決定された添加量のCaを添加した。したがって、表2中のT.[O]欄の数値は、試験No.1〜5については、試験終了後のオフライン分析による結果を意味し、試験No.6〜17については、RH処理終了後に採取したサンプルのT.[O]を前記方法により6〜10分間で分析して得た結果を意味している。なお、表2中の「CaSi添加量」は上記のCaSi合金の溶鋼1tあたりの添加量を意味し、「Ca添加量」は添加したCaSi合金中のCa純分の溶鋼1tあたりの添加量を意味する。
耐食性の評価方法は次のとおりである。
熱処理後の鋼管から、平行部が6.35φ×25.4mmの引張試験片を各2本採取して、NACE TM0177 Method Aに従ってSSC試験を実施した。すなわち、1気圧の硫化水素が飽和した25℃の0.5%酢酸+5%食塩水中で、それぞれ規格最小降伏応力(SYS)no85%の応力を付加して、単軸引張試験を実施した。720hの試験期間内に破断しないものを耐SSC性良好と判定した(表2中の耐食性欄における「○」)。一方、この試験期間内に1つでも破断したものは耐SSC性不良と判定した(表2中の耐食性欄における「×」)。
Figure 0005397154
表2ならびに図2および3から明らかなように、従来は、Ca添加前の溶鋼中酸素濃度が不明であるため、Caの添加効果にばらつきが生じていた。このため、目的とするCa系酸硫化物組成が得られず、結果的にSSC耐食性を満足出来ない場合が生じていた。
これに対し、目標としているCa系酸硫化物の組成を得るために、必要なCa添加量を図2に示したようにCa添加前のT.[O]に応じて変化させることで、図3に示すように目標とする介在物中CaO濃度が達成でき、安定してSSC発生を抑制することが可能となった。
1 前処理装置
2 酸素分析装置
3 処理前試料投入口
4 隔離バルブ
5 前処理済試料投入口
6 架台
7 リフター
8 連結管
9 前処理済試料途中取出口

Claims (4)

  1. 一次精錬終了後の溶鋼に対して二次精錬を行い、さらに該二次精錬終了後の溶鋼にCaを添加して介在物の制御を行うことにより、
    質量%で、C:0.15%以上0.35%以下、Si:0.10%以上1.5%以下、Mn:0.10%以上2.0%以下、P:0.025%以下、S:0.002%以下、Al:0.005%以上0.100%以下、Ca:0.0005%以上0.0035%以下、N:0.008%以下、O(酸素):0.002%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する高強度・高耐食性油井管用鋼材を溶製する方法であって、
    前記二次精錬を終了する前に前記溶鋼に含まれるSの質量濃度を20ppm以下、T.[O]の質量濃度を20ppm以下とし、
    さらに前記二次精錬終了後に該溶鋼のT.[O]の質量濃度分析用のサンプルを採取し、
    その後、該溶鋼を連続鋳造機のタンディッシュへと注入を開始する前にその分析値を知って、
    前記Caの添加量を、該分析値を下記(1)式に代入して求められるA値の範囲内として添加することを特徴とする高強度・高耐食性油井管用鋼材の溶製方法。
    A = B × T.[O] + 0.025・・・(1)
    0.0015≦B≦0.0045・・・(2)
    ここで、A:溶鋼質量トン当たりのCa添加質量(単位:kg/t)
    B:係数
    T.[O]:溶鋼中酸素の質量濃度分析値(単位:ppm)
  2. 前記鋼材中に含まれるFeの一部に代えて、下記の(a)〜(c)群の1つ以上の群から選ばれる1種以上の成分元素を含有することを特徴とする、請求項1に記載の高強度・高耐食性油井管用鋼材の溶製方法。
    (a)質量%で、Ti:0.20%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.05%以下、V:0.30%以下、W:1.0%以下、B:0.0030%以下およびZr:0.10%以下
    (b)質量%で、Mg:0.005%以下
    (c)質量%で、Ni:0.30%以下およびCu:0.40%以下
  3. 前記したCaの添加方法によって、前記鋼材に含まれる介在物中のCaO含有率が30質量%以上55質量%以下に制御されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の高強度・高耐食性油性管用鋼材の溶製方法。
  4. 前記二次精錬を終了した後の溶鋼のT.[O]の質量濃度を分析する方法として、
    該溶鋼からサンプル鋼塊を採取して含有成分濃度を分析するための試料とし、
    鉄鋼試料を黒鉛るつぼに入れて不活性ガス中で加熱融解し、発生した一酸化炭素または二酸化炭素のいずれかひとつあるいは両方の赤外線吸収度から該試料中の酸素濃度を測定する方法であって、
    該試料表面の酸化皮膜を除去、清浄化する前処理として真空アークプラズマ処理をアークプラズマ放電開始時の真空度を5Pa以上35Pa以下かつ、アークプラズマ出力電流を15A以上55A以下とする条件下において、
    溶鋼から採取した鋼塊に対して、高さ1.5mm以上7mm以下、表面積Sと体積Vの比(S/V)が1.05以上1.30以下となるように機械加工して得た小片を試料とし、
    前記アークプラズマ放電を前記試料に、合計4回以下であって、かつ合計処理時間として0.2秒以上1.2秒以下施した後、
    該試料を大気と接触させることなく、直接、分析時の温度よりも高い温度で加熱、清浄化した後、分析する温度に下げて待機させた黒鉛るつぼへ投入する鉄鋼中酸素分析方法を用いることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の高強度・高耐食性油性管用鋼材の溶製方法。
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